JP6912845B2 - 金属膜形成用組成物の製造方法、金属膜の製造方法、金属膜、金属膜積層体及び金属膜形成用組成物の製造装置 - Google Patents

金属膜形成用組成物の製造方法、金属膜の製造方法、金属膜、金属膜積層体及び金属膜形成用組成物の製造装置 Download PDF

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Description

本開示は、金属膜形成用組成物の製造方法、金属膜の製造方法、金属膜、金属膜積層体及び金属膜形成用組成物の製造装置に関する。
電気伝導性および熱伝導性に優れる金属膜、或いは金属酸化物膜は種々の用途に使用される。金属膜等は厚みを薄くすることにより光透過性を有する膜とすることができる。
例えば、電気伝導性が高く、抗菌性を有する銅膜は、基材表面における導電層、電磁波シールド、抗菌性部材等の形成に有用である。また、金属膜は熱伝導性が良好であり、例えば、照明設備等に使用することで放熱部材としての機能を発現させることができる。
金属膜或いは金属酸化物膜、特にミクロンオーダー或いはナノオーダーの厚みの金属薄膜は、気相法で形成されることが一般的である。しかしながら、スパッタリング等の気相法は、製膜に大がかりな装置を使用することから、湿式法による金属膜の製造方法が各種検討されている。
一般に用いられる湿式法による金属膜の製造方法としては、電解メッキ法、無電解メッキ法等が挙げられ、いずれの方法によっても、ミクロンオーダーの厚みの金属膜を形成することができる。
しかし、電解メッキ法では、基材を電極として用いて金属膜を形成することから、基材の電気伝導性が不可欠であり、ガラス基材等の無機材料の基材には適用し難い。
無電解メッキ法によれば、無機材料の基材上に金属膜を析出させることができる。しかし、無電解メッキ液に含まれる触媒等の種類によっては、形成された金属膜の物性に影響を与えることがある。
基材上に金属膜形成用組成物を付与して金属膜を形成する方法によれば、メッキ法の如き湿式法にて基材上に金属膜を析出させる方法に比較して、金属膜の組成、基材等の選択の自由度が高い。
金属膜形成用の組成物としては、銅元素にヒドロキシル基が結合したアモルファス化合物と有機溶媒を含むゲルが提案され、得られたゲルを用いて金属膜を形成する方法が提案されている(特開2015−158007号公報参照)。
また、本発明者らは、先に、金属膜の形成に有用な特定構造の金属錯体を含む金属膜形成用組成物を提案した(国際公開第2017/134769号参照)。
しかしながら、特開2015−158007号公報に記載の技術では、金属イオンを含む電解反応溶液を、金属イオンに配位する配位子の存在下で、特定のpH範囲として金属微粒子の前駆物質であるアモルファス化合物を析出させ、得られたアモルファス化合物を単独にて回収し、さらに有機溶媒を加えてアモルファス化合物ゲルを調整するなど、金属膜形成用の組成物を得るための製造工程が煩雑である。さらに、アモルファス化合物ゲルの製膜は、加熱、光照射などを特定の条件下で行う必要があり、汎用性に乏しいという問題がある。
国際公開第2017/134769号に記載の金属膜形成用組成物は、緻密な金属膜の形成に有用である。しかし、金属膜形成用組成物の製造に際しては、金属錯体を形成しうる金属塩化合物を溶媒に溶解して調製することが必要であり、製造方法の観点からはなお改良の余地がある。このため、金属塩化合物を経ることなく、目的とする金属錯体を得る方法が望まれている。
近年、半導体を用いた回路の作製に用いる金属膜形成用組成物については種々検討されている。しかし、電気伝導性及び熱伝導性を有する銅等の、半導体以外の金属を用いた金属膜形成用組成物の製造方法、及び金属膜の製造方法については、未だ実用上満足できるものは得られていないのが現状である。
金属膜形成用組成物についての検討により、本発明者らは、形成しうる金属の前駆体としての金属錯体を高濃度で含む金属膜形成用組成物が望ましいことを見出した。
本発明のある実施形態の課題は、金属膜の形成に有用な金属前駆体を含む金属膜形成用組成物を、簡易に、且つ、効率よく製造しうる金属膜形成用組成物の製造方法を提供することである。
本発明の別の実施形態の課題は、基材との密着性に優れた金属膜を簡易に形成しうる金属膜の製造方法を提供することである。
本発明の別の実施形態の課題は、金属の純度が高く、金属膜の性能に影響を与える不純物を含有しない薄層の金属膜、及び、非導電性基材と、金属膜とを有する金属膜積層体を提供することである。
本発明の別の実施形態の課題は、金属膜の形成に有用な金属前駆体を含む金属膜形成用組成物を、簡易に、且つ、効率よく製造しうる金属膜形成用組成物の製造装置を提供することである。
上記課題の解決手段は、以下の実施形態を含む。
<1> 金属イオンが透過せず水素イオンが透過するフィルタを備えた流路を介して連結された一対の電解液槽を備える反応装置を準備する工程、前記一対の電解液槽のそれぞれに電解液を貯留させ、且つ、金属製の電極を、前記電解液に少なくとも一部が接触する位置に配置し、一対の前記電極間を、直流電源を介して接続する工程、及び、一対の前記電極間に前記直流電源により電圧を印加して、陽極(アノード)となる電極が浸漬された電解液槽内において、前記電解液と金属イオンとを反応させて金属前駆体を得る工程、を含む金属膜形成用組成物の製造方法。
<2> 前記電圧を、0Vを超え100V以下の条件で印加する<1>に記載の金属膜形成用組成物の製造方法。
<3> 前記電極は、銅製の電極である<1>又は<2>に記載の金属膜形成用組成物の製造方法。
<4> 前記電解液は、エチレンジアミン四酢酸の水溶液を含む<1>〜<3>のいずれか1つに記載の金属膜形成用組成物の製造方法。
<5> <1>〜<4>のいずれか1つに記載の金属膜形成用組成物の製造方法により金属膜形成用組成物を得る工程、得られた金属膜形成用組成物を、基材上に付与して、金属膜形成用組成物層を形成する工程、及び、基材上に形成された前記金属膜形成用組成物層を、100℃以上の温度条件にて加熱して金属膜を形成する工程、を含む金属膜の製造方法。
<6> 前記金属膜形成用組成物を、基材上に付与して、金属膜形成用組成物層を形成する工程は、前記金属膜形成用組成物を、基材上にスプレー塗布する工程を含む、<5>に記載の金属膜の製造方法。
<7> 形成された金属膜を200℃〜500℃の温度条件にてアニールする工程をさらに含む<5>又は<6>のいずれか1つに記載の金属膜の製造方法。
<8> 銅を80.0質量%以上100質量%未満、炭素原子を0質量%を超え10質量%以下、及び、酸素原子を0質量%を超え10質量%以下含み、膜厚が30nm〜1μmである金属膜。
<9> 非導電性基材と、前記非導電性基材上に、膜厚が30nm〜1 μmである金属膜とを有し、前記金属膜は、 銅を80.0質量%以上100質量%未満、炭素原子を0質量%を超え10質量%以下、及び、酸素原子を0質量%を超え10質量%以下含む、金属膜積層体。
<10> 金属イオンが透過せず水素イオンが透過するフィルタを備えた流路を介して連結され、電解液が貯留される一対の電解液槽と、前記一対の電解液槽の一方に配置された陽極及び前記一対の電解液槽の他方に配置された陰極からなる金属製の一対の電極と、前記金属製の一対の電極間に電圧を印加する直流電源と、を備える金属膜形成用組成物の製造装置。
<11> 前記金属製の一対の電極の配置位置は、前記一対の電解液槽のそれぞれに貯留される電解液に接触する位置である<10>に記載の金属膜形成用組成物の製造装置。
本発明のある実施形態によれば、金属膜の形成に有用な金属前駆体を含む金属膜形成用組成物を、簡易に、且つ、効率よく製造しうる金属膜形成用組成物の製造方法を提供することができる。
本発明の別の実施形態によれば、基材との密着性に優れた金属膜を簡易に形成しうる金属膜の製造方法を提供することができる。
本発明の別の実施形態によれば、金属の純度が高く、金属膜の性能に影響を与える不純物を含有しない薄層の金属膜、及び、非導電性基材と、金属膜とを有する金属膜積層体を提供することができる。
本発明の別の実施形態によれば、金属膜の形成に有用な金属前駆体を含む金属膜形成用組成物を、簡易に、且つ、効率よく製造しうる金属膜形成用組成物の製造装置を提供することができる。
本開示の金属膜形成用組成物の製造方法に用いる反応装置の一例を示す概略図である。 図1に示す金属膜形成用組成物の製造方法に用いる反応装置において、電極間に電圧を印加して経時した状態示す概略図である。 実施例1において、陽極側に生成された金属前駆体を含む液の、電圧の印加時間毎の吸収スペクトルを示すグラフである。 基材上に金属膜形成用組成物を付与するスプレー装置の一例を示す概略図である。 実施例3で得た銅膜のオージェ電子分光スペクトルである。
以下、本開示の金属膜形成用組成物の製造方法、金属膜形成用組成物を用いた金属膜の製造方法、金属膜、金属膜積層体及び金属膜形成用組成物の製造装置について、具体的な実施形態を挙げて詳細に説明する。本開示は、以下の実施形態に限定されず、その主旨に反しない限りにおいて、種々の変型例により実施することができる。
本開示において「〜」を用いて記載した数値範囲は、「〜」の前後の数値を下限値および上限値として含む数値範囲を表す。
本開示において「工程」との語は、独立した工程だけでなく、他の工程と明確に区別できない場合であっても工程の所期の目的が達成されれば、本用語に含まれる。
本開示において組成物中の各成分の量は、組成物中に各成分に該当する物質が複数存在する場合、特に断らない限り、組成物中に存在する当該複数の物質の合計量を意味する。
本明細書中に段階的に記載されている数値範囲において、ある数値範囲で記載された上限値又は下限値は、他の段階的な記載の数値範囲の上限値又は下限値に置き換えてもよい。また、本明細書中に記載されている数値範囲において、ある数値範囲で記載された上限値又は下限値は、実施例に示されている値に置き換えてもよい。
また、本開示において、2以上の好ましい態様の組み合わせは、より好ましい態様である。
本開示の各図面において、同一の符号を用いて示される構成要素は、同一の構成要素であることを意味する。
<金属膜形成用組成物の製造方法>
本開示の金属膜形成用組成物の製造方法(以下、本開示の製造方法(I)と称することがある)は、金属イオンが透過せず水素イオンが透過するフィルタを備えた流路を介して連結された一対の電解液槽を備える反応装置を準備する工程(以下、工程Aと称することがある)、前記一対の電解液槽のそれぞれに電解液を貯留させ、且つ、金属製の電極を、前記電解液に少なくとも一部が接触する位置に配置し、一対の前記電極間を、直流電源を介して接続する工程(以下、工程Bと称することがある)、及び、一対の前記電極間に前記直流電源により電圧を印加して、陽極(アノード)となる電極が浸漬された電解液槽内において、前記電解液と金属イオンとを反応させて金属前駆体を得る工程(以下、工程Cと称することがある)、を含む。
前記金属製の一対の電極は、一対の電解液槽の一方に配置された陽極(アノード)及び前記一対の電解液槽の他方に配置された陰極(カソード)からなる。
〔工程A〕
以下、図面を参照して本開示の製造方法(I)を説明する。
図1は、本開示の製造方法(I)に用いる反応装置の一例を示す概略図である。
図1に示す反応装置10は、金属イオンが透過せず水素イオンが透過するフィルタ12を備えた流路14を介して連結された、電解液を貯留する一対の電解液槽である電解液槽16と、電解液槽18とを備える。
電解液槽16及び電解液槽18は、それぞれ電解液20を貯留するために用いられる。
工程Aでは、図1に示す如き反応装置10を準備する。
(金属イオンが透過せず水素イオンが透過するフィルタ)
一対の電解液槽16と、電解液槽18とを連結する流路14に備えられたフィルタ12の機能により、本開示の製造方法(I)では、金属膜形成用組成物を効率よく製造しうる。
フィルタ12は、金属イオンが透過せず水素イオンが透過する半透膜としてのフィルタであれば、特に制限なく使用することができる。
フィルタとしては、例えば、再生セルロース膜(セロファン)、アセチルセルロース膜、コロジオン膜などのセルロース系フィルタ、素焼き板、多孔質セラミック等のセラミックフィルタ、ポリアクリロニトリル、ポリスルホン、ポリエステル系ポリマーアロイなどの多孔質膜、フッ素樹脂、セルロースアセテート等を含むメンブレンフィルタ等の半透膜が挙げられる。
フィルタは市販品を用いてもよい。フィルタの市販品としては、例えば、人工透析に用いられるセルロースフィルタとして市販されている日本メデカルサイエンス(株)、ヴィスキングチューブなどが挙げられる。
上記で例示した半透膜から、目的とする金属膜を形成する金属、詳細には金属イオンのサイズを考慮して、適宜選択してフィルタとして用いることができる。
なかでも、電解液と常時接触しても耐久性が良好であるという観点からは、セラミックフィルタ、透析用セルロースチューブなどから選ばれるセルロースフィルタ等が好ましい。
後述の工程Cにおいて電極として機能する金属に直流電流を印加することで生成する金属イオンの透過を抑制することができれば、フィルタの種類、厚みには特に制限はない。
〔工程B〕
工程Bでは、一対の電解液槽16と電解液槽18とのそれぞれに電解液20を貯留させ、且つ、金属製の電極22及び電極24を、前記電解液20に少なくとも一部が接触する位置に配置し、一対の前記電極22と電極24との間を、直流電源26を介して接続する。
即ち、前記一対の電解液槽の一方16に配置された陽極22及び前記一対の電解液槽の他方18に配置された陰極24からなる金属製の一対の電極22及び電極24間に電圧を印加する直流電源26と、を備える態様をとり、金属製の一対の電極の配置位置は、前記一対の電解液槽のそれぞれに貯留される電解液に接触する位置とする。
一対の電解液槽16と電解液槽18とのそれぞれに電解液を貯留することと、電解液槽16に前記電極22を配置し、且つ、電解液槽18に前記電極24を配置することは、いずれを先に行なってもよく、同時に行ってもよい。後述の工程Cにて電圧を印加して金属イオンを生成させる目的で、前記電極22及び電極24は、その少なくとも一部がそれぞれ電解液槽16中に貯留された電解液20と電解液槽18中に貯留された電解液20とに接触する位置に配置される。
(電極)
電極に用いる金属は、金属膜形成用組成物を用いて形成しようとする金属膜に応じて選択すればよい。電極に用いる金属としては、例えば、銀(Ag)、銅(Cu)、リチウム(Li)、ニッケル(Ni)、マンガン(Mn)、亜鉛(Zn)、コバルト(Co)等が挙げられる。金属イオンを生成しやすいこと、形成された金属膜の電気及び熱の伝導性が良好であるという観点からは、電極としては、Cu、Ag等が好ましく、Cuがより好ましい。
一対の電解液槽16と電解液槽18とに配置される電極22と電極24とは、同じ金属であることが反応性の観点から好ましい。
(電解液)
電解液は、生成された金属イオンと反応して金属前駆体である金属イオンの錯体を形成しうる電解液を用いる。
電解液は、金属錯体を生成しうるNH配位子、RNH配位子(Rはアルキレン基を表す)、OH配位子、エチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン等のジアミン由来の配位子を部分構造として有する化合物から選ばれる金属錯体形成用の化合物(以下、錯体形成用の化合物と称することがある)を1種以上含有する水溶液であることが好ましい。
錯体形成用の化合物としては、より具体的には、アンモニア、ギ酸アンモニウム、及びエチレンジアミン四酢酸(下記構造、以下、HEDTAと称することがある)から選ばれる少なくとも1種を含む水溶液であることが好ましく、HEDTAの水溶液を含むことがより好ましい。
Figure 0006912845
電解液は、錯体形成用の化合物を1種のみ含んでもよく、2種以上を含んでもよい。
なかでも、NH配位子を有するアンモニア、又は、RNH配位子を有するギ酸アンモニウムなどのアンモニウム誘導体の少なくとも1種と、ジアミン由来の配位子を有するHEDTAの少なくとも1種と、を含むことが好ましい。
電解液の溶媒は、水、水とアルコールとの混合物などの水性溶媒を用いることができる。
水は、不純物、特に金属イオン以外のイオンの含有量が少ないことが好ましく、そのような観点からは、精製水、イオン交換水、純水などを用いることが好ましい。
アルコールとしては、例えば、メタノール、エタノール、イソプロパノール、n−プロパノール、イソブタノール、n−ブタノール等の炭素数1〜10の1価のアルコール、エチレングリコール、プロピレングリコール、ジエチレングリコール、ポリエチレングリコール、グリセリン等の多価アルコールが挙げられる。
金属錯体の溶解性及びハンドリング性の観点からは、水性溶媒として、水、又は、水と炭素数1〜5の1価のアルコールとの混合物が好ましく、水、水とメタノール、エタノール、及びプロパノールから選ばれるアルコールとの混合物がより好ましく、水がさらに好ましい。
水とアルコールとの混合物を用いる場合の混合比率は目的に応じて適宜選択される。なかでも、水とアルコールとの混合物全量に対するアルコールの含有量は1質量%〜60質量%であることが好ましい。
本開示の製造方法(I)により得られる金属膜形成用組成物は、溶媒として水を用いた場合も、金属錯体を含む均一な金属膜形成用組成物であり、緻密な金属膜を形成しうることも、利点の一つである。
電解液中における錯体形成用の化合物の含有量としては、0.1質量%〜20質量%の範囲が好ましく、0.5質量%〜10質量%がより好ましく、1.0質量%〜8質量%がさらに好ましい。
電解液は、少なくとも水を含む溶媒と、錯体形成用の化合物とを混合し、撹拌することで調製することができる。調製は、常温(25℃)で行なってもよく、溶解を促進する目的で、溶媒を30℃〜60℃に加温して行ってもよい。
溶媒と錯体形成用の化合物との混合物の撹拌は、錯体形成用の化合物が溶解し、電解液が目視で均一な溶液となるまで継続することが好ましい。常温にて電解液を調製する場合には、30分間〜90分間程度撹拌することが好ましく、50分間〜80分間程度撹拌することがより好ましい。
撹拌は公知の撹拌装置を用いて行うことができる。公知の撹拌装置としては、スターラー、パドルミキサー、インペラーミキサー等が挙げられるが、これに限定されない。
〔工程C〕
工程Cでは、一対の前記電極22と電極24との間に前記直流電源26により電圧を印加して、陽極(アノード)となる電極22が浸漬された電解液槽16内において、前記電解液と金属イオンとを反応させて金属前駆体を得る。
工程Bにて、既述の如くして調製した電解液を、一対の電解液槽16と電解液槽18との中にそれぞれ貯留し、電解液槽に貯留された電解液に浸漬される位置に電極22と電極24(例えば、銅板)とをそれぞれ配置しておく。工程Cでは、電極22と電極24との間に直流電源26により電圧を印加する。電圧は、0Vを超え、100V以下で印加することができ、1V〜80Vの範囲が好ましく、10V〜60Vの範囲がより好ましい。
電源としては、公知の直流電源を適宜選択して用いることができる。本開示に用いうる公知の直流電源としては、例えば、直流安定化電源(PMC18-2、商品名、菊水電子工業(株))などが挙げられる。
電極に直流電流を印加した場合の一般的な反応としては、例えば、銅電解精錬等における反応と同様に、金属としての銅を陽極(アノード)及び陰極(カソード)とした場合には、陽極の金属は酸化されて金属イオンとして溶解し、陰極では、還元反応が生じる。この場合の反応を以下に示す。
陽極:Cu→Cu2++2e
陰極:H+2e→H
なお、同じ一組の電極を1つの電解液槽に配置し、電圧を印加した場合も、同様に上記反応が生じる。同じ一組の電極を1つの電解液槽に配置した場合、その後、反応が進行し、経時により、電解液中の銅イオン濃度が高くなると、陰極では、上記水素(H)の生成反応に比較し、Cu2++2e→Cuの反応が優先的におきる。これは、生成された銅イオン(Cu2+)が、陰極側で生成する水素イオン(H)よりもイオン化傾向が小さいことから生じる事象である。
従って、以下に示すように、電解液中の銅イオン濃度が所定量を超えると、陰極側に銅が析出し、電解液に含まれる銅イオン濃度は、所定量よりも増加せず、電圧の印加を継続すると、経時により金属錯体の生成効率が低下する傾向がある。
陽極:Cu→Cu2++2e
陰極:Cu2++2e→Cu
本開示の製造方法によれば、一対の電解液槽間を連結する流路に前記金属イオンが透過せず水素イオンが透過するフィルタが備えられる。このため、陽極となる電極が配置された一方の電解液槽にて生成された金属イオンは、陰極が存在する他方の電解液槽には移動せず、陽極が存在する側の電解液槽における電解液中に留まり、電解液中の錯体形成用の化合物と反応して、金属錯体を形成する。
既述のように、前記一対の電解液槽にそれぞれ備えられる前記金属製の一対の電極は、一対の電解液槽の一方に配置された陽極(アノード)及び前記一対の電解液槽の他方に配置された陰極(カソード)からなる。
例えば、金属として銅(Cu)を用い、錯体形成用の化合物として、HEDTAを用いた場合、以下のような反応が起こる。
Cu2++HEDTA→[Cu(HEDTA)]2−+2H
この反応で生成した水素イオンは、前記フィルタを透過するために、陰極が存在する側の他方の電解液槽へ移動し、陰極では、上記「H+2e→H」の反応が進行し、水素が発生する。
陽極が存在する一方の電解液槽にて発生した銅イオンは、銅錯体の形成に用いられるため、陽極側では、「Cu→Cu2++2e」の反応が進行し、金属前駆体としての金属錯体が効率よく生成されると考えられる。
また、本開示の製造方法(I)によれば、金属の前駆体を高濃度で安定に含む金属膜形成用組成物を、金属塩化合物などの中間体を経ずに効率よく製造することも利点の一つであるといえる。
このようにして、本開示の製造方法により、金属前駆体としての金属錯体が含まれる金属膜形成用組成物を効率よく製造することができる。
本開示の製造方法により得られる金属膜形成用組成物は、金属錯体を1種のみ含有してもよく、2種以上含有してもよい。
2種以上含有する場合、例えば、同じ金属を含み配位子の異なる金属錯体同士の組み合わせ、異なる金属を含む金属錯体同士の組み合わせなどが挙げられる。
得られた金属膜形成用組成物は、金属膜の形成に有用である。
金属膜形成用組成物における金属錯体の含有量は、金属膜形成用組成物の製造方法における電解液の種類、電解液の濃度、工程Bにおける直流電流の印加エネルギー、印加時間などを調整することで制御することができる。
一般に、金属膜形成用組成物全量に対する金属錯体の含有量を測定することは困難である。しかし、金属膜形成用組成物により形成される金属膜の物性は、金属膜形成用組成物における金属の含有量に依存する。
緻密で、均一な金属膜を形成しうるという観点からは、金属膜形成用組成物全量に対する金属の含有量は、0.5質量%〜10質量%の範囲であることが好ましく、1質量%〜8質量%の範囲であることがより好ましい。
金属の含有量が上記範囲であることで、金属膜形成用組成物により形成される金属膜の組織がより均一となり、電気伝導性、および熱伝導性がより良好となる。
金属膜形成用組成物中の金属の含有量は、例えば、「錯体化学の基礎 ウェルナー錯体と有機金属錯体」(KS化学専門書:講談社、1989年)に記載の方法で測定することができる。
本開示の製造方法により得られた金属膜形成用組成物は、金属錯体が水性の溶媒中に均一に高濃度で存在することから、緻密な組織を有する金属膜を形成することができる。例えば、金属として銅を用いた場合には、形成された銅膜は、電気伝導性および熱伝導性に優れたものとなる。
また、金属錯体がアンモニウム基、エチレンジアミンに由来する配位子等を有する場合には、金属錯体は、無機基材、特にガラス基材との密着性が良好となる。従って、当該金属錯体を用いて形成された金属膜は無機基材との密着性に優れることが期待できる。
<金属膜形成用組成物の製造装置>
本開示の金属膜形成用組成物の製造装置は、金属イオンが透過せず水素イオンが透過するフィルタを備えた流路を介して連結され、電解液が貯留される一対の電解液槽と、前記一対の電解液槽の一方に配置された陽極及び前記一対の電解液槽の他方に配置された陰極からなる金属製の一対の電極と、前記金属製の一対の電極間に電圧を印加する直流電源と、を備える。
本開示の金属膜形成用組成物の製造には、図1に一例で示される本開示の金属膜形成用組成物の製造装置を用いることが好ましい。
本開示の金属膜形成用組成物の製造装置の一例を、図1を参照して説明する。
図1に示す金属膜形成用組成物の製造装置10は、金属イオンが透過せず水素イオンが透過するフィルタ12を備えた流路14を介して連結され、電解液が貯留される電解液槽16及び電解液槽18と、前記一対の電解液槽の一方に配置された陽極及び前記一対の電解液槽の他方に配置された陰極からなる金属製の一対の電極22及び電極24と、前記金属製の一対の前記電極間に電圧を印加する直流電源26と、を備える。
前記金属製の一対の電極22及び電極24の配置位置は、前記一対の電解液槽である電解液槽16及び電解液槽18に貯留される電解液に少なくとも一部が接触する位置である。
電極22及び電極24が、電解液槽16及び電解液槽18のそれぞれに貯留される電解液に接触する位置にあることで、電極22及び電極24間に電圧が印加されて電解液の電解反応が進行する。
図1に示す金属膜形成用組成物の製造装置において、電極22及び電極24間に電圧が印加されて、経時した状態を図2に示す。
電解液槽16及び電解液槽18にそれぞれ貯留された図1に示す電解液20のうち、陰極となる金属製の電極22が配置された電解液槽16に貯留された電解液20は、経時により反応が進行し、生成された金属錯体を含むため、金属に起因する着色、例えば、銅を電極として用いた場合、銅イオンにより青色に着色する。図2では、電解液槽16に貯留された金属錯体を含む電解液20Aが模式的に示される。
他方、図2に示すように、陽極となる金属製の電極24が配置された電解槽18における電解液20Bには、着色は認められず、反応前の図1に示す電解液20と外観上の変化は認められない。
電解液槽及び流路を構成する材料は、液不透過性であって、電解液による影響を受け難い硬質材料であれば特に制限はない。材料としては、金属、ガラス、樹脂などが挙げられ、耐久性、強度、加工性、電解液の組成等を考慮して適宜選択去ればよい。
電解液槽及び流路は、1種の材料で構成されてもよく、2種以上の材料を組み合わせて用いてもよい。同種の材料、異種の材料同士を結合するための接着剤、液漏れ防止のための公知のパッキング材料などを併用してもよい。
フィルタ及び直流電源は、既述の金属膜形成用組成物の製造方法において述べたフィルタ及び直流電源と同じものを使用することができ、好ましい態様も同じである。
電極に用いる金属は、金属膜形成用組成物を用いて形成しようとする金属膜に応じて選択すればよい。電極に用いる金属としては、例えば、銀(Ag)、銅(Cu)、リチウム(Li)、ニッケル(Ni)、マンガン(Mn)、亜鉛(Zn)、コバルト(Co)等が挙げられる。
なお、図1及び図2では、電極22及び電極24は電解液20との接触面積をより大きくする目的で、1枚の金属板を折り曲げた形状をとる。しかし、電極の形状はこれに限定されず、板状、メッシュ状など、種々の形状としてもよい。
一対の電極22及び電極24は、同じ金属からなる電極であってもよく,互いに異なる金属からなる電極同士を組み合わせてもよいが、反応性の観点からは、同じ金属からなる一対の電極を用いることが好ましい。
電解液槽に貯留される電解液は、生成された金属イオンと反応して金属前駆体である金属イオンの錯体を形成しうる電解液を用いる以外に特に制限はない。電解液は、既述の金属膜形成用組成物の製造方法において述べたとおりである。
図2では、生成した金属錯体を含む電解液20Aである金属膜形成用組成物は、電解液槽16に貯留される。本開示の製造装置によれば、電解液槽16に貯留される電解液中の金属イオン濃度が上昇しても、陰極側(電極24側)への金属の析出に起因する反応性の低下が生じず、高濃度の金属錯体を含む金属膜形成用組成物を得ることができる。
陽極を配置した電解液槽には、さらに、金属錯体を含む金属膜形成用組成物を搬出するパイプと、新たな電解液を電解液槽に供給するパイプとをさらに備えてもよい。金属錯体を含む金属膜形成用組成物を搬出するパイプと、新たな電解液を電解液槽に供給するパイプとを連結することで、生成した金属錯体を含む金属膜形成用組成物を搬出し、新たな電解液を電解液槽に供給することで、金属膜形成用組成物の製造装置の連続運転を行うことができ、生産性をより向上しうる。
<金属膜の製造方法>
本開示の金属膜の製造方法(以下、本開示の製造方法(II)と称することがある)は、前記本開示の金属膜形成用組成物の製造方法により金属膜形成用組成物を得る工程(工程A+工程B+工程C)、得られた金属膜形成用組成物を、基材上に付与して、金属膜形成用組成物層を形成する工程(工程D)、及び、基材上に形成された前記金属膜形成用組成物層を、100℃以上の温度条件にて加熱して金属膜を形成する工程(工程E)を含む。
上記(工程A+工程B+工程C)は、既述の本開示の製造方法(I)における工程A、工程B及び工程Cと同様であり、好ましい態様も同じである。本開示の製造方法(II)は、更に後述の工程D及び工程Eを含む。
(工程D)
工程Dでは、得られた金属膜形成用組成物を、基材上に付与して、金属膜形成用組成物層を形成する。金属膜形成用組成物層を形成するための基材への金属膜形成用組成物の付与方法には特に制限はなく、公知の塗布方法、浸漬方法等を適用することができる。
塗布方法としては、例えば、スプレー塗布法、スピン塗布法、ブレード塗布法、バー塗布法、ロール塗布法、ダイ塗布法、フロー塗布法等が挙げられる。また、ディップ法等のように浸漬方法を適用してもよく、キャスト法にて金属膜形成用組成物を基材上に付与してもよい。なかでも、金属膜形成用組成物層の厚さの制御が容易であるという観点から、金属膜形成用組成物を、基材上にスプレー塗布する方法が好ましい。
また、基材上に局所的に金属膜形成用組成物を付与する方法として、スクリーン印刷、インクジェット印刷などの印刷法が挙げられる。印刷法を用いることにより、基材の所望の領域に、局所的に金属膜形成用組成物層を形成することができる。
基材上に形成される金属膜形成用組成物層の厚みは目的に応じて選択することができる。
一般的には、ウエット膜厚で、1μm〜10μmの範囲とすることが好ましく、3μm〜5μmの範囲とすることがより好ましい。
基材上に形成された金属膜形成用組成物層は、引き続き行われる工程Eにて加熱され、金属膜が形成される。なお、工程Eに先だって、任意の工程としての、形成した金属膜形成用組成物層を乾燥する工程(工程F)を行ってもよい。
(基材)
金属膜を形成するための基材は、目的に応じて適宜選択うることができる。
すなわち、金属膜の使用目的に応じて、耐熱性、寸法安定性、耐溶剤性、電気絶縁性、加工性、気体遮断性、低吸湿性、防水性等の各種物性を有する基材を選択して用いることができる。例えば、一般に回路基板として用いられる材料を、基材として用いることができる。
なかでも、加熱工程にて加熱した場合における、変質、寸法変化等が抑制され、熱安定性が良好であるという観点からは、ガラス、セラミックス、金属等の無機基材が好ましい。より具体的には、無アルカリガラス基材、ソーダガラス基材、パイレックス(登録商標)ガラス基材、石英ガラス基材等のガラス基材、シリコン基板等の半導体基板、ステンレス基材、アルミニウム基材、ジルコニウム基材等の金属基材、アルミナ基材等の金属酸化物基材、ポリアミド、高密度ポリエチレン等の樹脂基材等が挙げられる。
基材は単層構造でもよく、複数の異種素材を用いた積層構造を有していてもよい。また、金属を改質した基材を用いてもよい。金属を改質した基材としては、例えば、アルミニウム基材に酸化処理を施した酸化皮膜付きアルミニウム基材、イットリウム安定化ジルコニウム基材、ステンレス基材等が挙げられる。
なお、本開示の製造方法では、基材に導電性を必要としないために、無電解メッキ法などとは異なり、非導電性基材、例えば、上記ガラス基材、セラミック基材などにも直接金属膜を形成することができる。
基材の厚みは、使用目的に応じて選択することができる。また、既存の部材を基材として金属膜を形成することができる。
(工程E)
工程Eでは、工程Dにて基材に形成された金属膜形成用組成物層を、100℃以上の温度条件にて加熱して金属膜を形成する。100℃以上に加熱することにより、金属膜形成用組成物に含まれる金属錯体は金属に転化され、溶媒が除去されて、基材上に金属膜が形成される。
加熱条件は、金属の特性に応じて適宜選択される。
例えば、錯体が、Cu、Li、Ni、Mn、Zn、およびCoからなる群より選ばれる金属原子を含む場合には、加熱は、100℃以上の温度条件で行われ、200℃以上の温度条件にて行うことが好ましく、250℃以上の温度条件にて行うことがより好ましい。
加熱温度の上限値には特に制限はなく、金属の融点、軟化点等の物性、使用する基材の耐熱性に応じて適宜選択すればよい。一般的には、加熱温度は500℃以下とすることができる。500℃を超えた加熱温度で加熱した場合、金属膜の形成効果がそれ以上向上せず、却って基材などに影響を与えることがある。
工程Eにおける加熱条件、例えば、加熱における最高温度、昇温条件、加熱時間などは、金属錯体に含まれる金属の特性によって適宜選択することができる。
加熱は、大気雰囲気下で行なってもよく、不活性ガス雰囲気下で行なってもよい。不活性ガスを含む雰囲気下で行う場合の不活性ガスとしては、窒素ガス、ヘリウムカス、アルゴンガス等が挙げられる。
不活性ガス雰囲気下など、酸素濃度を低くする雰囲気下で加熱処理を行なう場合、酸素濃度は10ppm以下とすることが好ましい。
また、金属の種類によって選択された加熱温度まで昇温した後、当該加熱温度に数分間維持して、金属膜を加熱することも形成される金属膜の均一性の観点から好ましい。
また、より膜厚の厚い金属膜を形成する際には、金属膜形成用組成物を基材上に付与して金属膜形成用組成物層を形成する工程と加熱する処理とを複数回行ってもよい。
本開示の金属膜の製造方法(II)は、工程A〜工程Eに加え、その他の工程をさらに含むことができる。その他の工程としては、既述の、金属膜形成用組成物層を乾燥する工程(工程F)、形成された金属膜をアニール処理する工程(工程G)などが挙げられる。
(工程F)
工程Fは、工程Eにおいて形成した金属膜形成用組成物層を乾燥する工程である。
ここでいう乾燥とは、金属膜形成用組成物層に含まれる溶媒を減少させることを指し、必ずしも完全に乾燥させる必要はない。
乾燥は常法により行うことができる。
乾燥方法としては、室温における自然乾燥でもよく、加熱乾燥でもよい。加熱乾燥の際の温度には特に制限はないが、乾燥効率等を考慮すれば、30℃〜100℃の範囲とすることができる。
加熱乾燥を行う場合の加熱方法は、公知の加熱手段を適宜選択して適用することができる。加熱方法としては、例えば、基材裏面からプレート状ヒーター、ヒートロール等の加熱手段を接触させる方法、電気炉等の加熱ゾーンを通過させる方法、赤外線、マクロ波等のエネルギー線を照射する方法、温風を吹き付ける方法等が挙げられる。
乾燥時間は、生産性の観点から、10秒〜20分の範囲であることが好ましい。
(工程G)
本開示の金属膜の製造方法では、工程Dにおいて形成された金属膜を200℃〜500℃の温度条件にてアニールする工程(工程G)を含むことができる。
形成された金属膜をさらに加熱するアニール(焼成)処理を行うことで、形成された金属膜の均一性をより向上させることができる。アニールの際の焼成温度は、200℃〜500℃が好ましく、300℃〜500℃がより好ましい。
(金属膜)
本開示の金属膜の製造方法により得られる金属膜の厚みは目的に応じて選択される。本開示の金属膜形成用組成物の製造方法により得られる金属膜形成用組成物は、例えば、金属錯体が溶解した状態で均一に含まれるため、例えば、10nm〜200nmといった極めて薄い金属膜を形成することができる。
また、既述のスプレー塗布法、金属膜形成用組成物層の形成と加熱とを複数回繰り返す方法などを適用することで、より厚みの大きい金属膜、具体的には、数ミクロンオーダーの厚みのある金属膜を簡易に形成することができる。
既述の金属膜形成用組成物を用いて、1回の付与及び加熱により形成される金属膜の厚みは、50nm〜150nmであることが好ましい。
得られた金属膜の厚みは、基材上に形成された金属膜の断面を観察することで、公知の測定方法により測定することができる。
本開示の製造方法(II)により得られた金属膜は、本開示の製造方法(I)により得られた金属膜形成用組成物を用いて形成される。前記金属膜形成用組成物は、金属錯体のみを金属材料として含み、且つ、金属錯体は溶媒に溶解した状態から、加熱工程を経て金属膜に転化されるため、本開示の製造方法(II)によれば、組織が緻密な金属膜を形成することができる。このため、例えば、金属として銅を用いた場合、形成された銅膜は緻密な構造を有し、電気伝導性および熱伝導性に優れる。
金属膜を、単一の金属を有する特定金属錯体のみを含有する金属膜形成用組成物を用いて形成する場合、形成された金属膜における当該金属の含有量は80質量%以上であることが好ましく、90質量%以上であることがより好ましい。
金属膜中の目的とする金属の含有量は、例えば、X線回折(XRD)により測定することができる。
金属膜形成用組成物により得られた金属膜中には、不純物の含有量が極めて少ない。
溶剤由来の不純物が僅かに金属膜中に残存することがあるが、主として原料である溶剤由来の炭素原子程度であり、形成された金属膜の特性を損なう懸念がない。これは、還元剤等を必要とする無電解メッキ膜、アニオン性金属錯体を用いたプレカーサー法により形成される金属膜に比較して大きな利点であるといえる。
金属膜は、基材全面に亘り均一に形成されてもよく、パターン状に形成されてもよい。既述のように印刷法を用いて金属膜形成用組成物を基材上に適用することで任意のパターン状の金属膜を形成することができる。さらに、基材上に均一な金属膜を形成した後、目的に応じてエッチング等の公知の方法を用いてパターニングしてパターン状の金属膜を形成することもできる。
また、本開示の金属膜の製造方法は、当該金属を含む金属酸化物膜の形成にも応用することができる。
本開示の金属膜の形成用方法を適用して金属酸化物膜を形成する方法としては、金属膜形成用組成物により形成した金属膜を、さらに熱処理して酸化物膜とする方法、金属膜形成用組成物を用いて金属膜を形成する際に、積極的に酸化雰囲気とし、酸化雰囲気下で熱処理する方法等が挙げられる。
本開示の金属膜の製造方法によれば、緻密で基材との密着性に優れた金属膜を形成することができ、金属膜、特に銅の薄膜を必要とする分野に好適である。また、基材の種類及び金属の種類に対する選択の自由度が高いため、本開示の金属膜の製造方法は種々の分野に応用することができる。
<金属膜>
本開示の金属膜は、銅を80.0質量%以上100質量%未満、炭素原子を0質量%を超え10質量%以下、及び、酸素原子を、0質量%を超え10質量%以下含み、膜厚が30nm〜1μmである。
本開示の金属膜における銅の含有量は80質量%以上であり、90質量%以上であることが好ましい。
また、金属膜の膜厚は目的に応じて適宜選択することができる。膜厚は、一般的には、30nm〜1μmとすることができ、30nm〜950nmが好ましく、40nm〜500nmがより好ましい。透明の電気伝導性の銅膜とする場合には、30nm〜100nmが好ましく、30nm〜80nmがより好ましい。また、銅配線などを形成する場合の金属膜の膜厚は、500nm〜1μmが好ましく、600nm〜1μmがより好ましい。
本開示の金属膜は、既述の本開示の金属膜の製造方法により形成されるため、金属膜形成用組成物により得られた金属膜中には、不純物の含有量が極めて少ない。
本開示の金属膜である銅膜は、その製造方法に起因して、溶剤由来の不純物である炭素原子及び酸素原子を僅かに銅膜中に含む。そして、本発明者らの検討によれば、その他の不可避不純物は検出限界以下であった。
図5は、後述の実施例1で得た金属膜形成用組成物により製造された実施例3の金属膜である銅膜のオージェ電子分光法(Auger Electron Spectroscopy:AES) により得たスペクトルを示す。図5に明らかなように、銅膜の組成は殆どが銅であり、炭素原子と酸素原子との僅かな存在が確認され、他の元素は検出限界以下であった。
オージェ電子分光スペクトルの測定条件を以下に示す。
オージェ電子分光スペクトルは、10.0kVの加速電圧、10nAの照射電流、30°の照射角の条件で、装置として、オージェマイクロプローブ JAMP−9500F(商品名、日本電子(JEOL)(株)製)を用いて測定した。
本開示の金属膜である銅膜は、僅かな炭素原子及び酸素原子を含むことで、純粋な銅膜に比較して、酸化され難く、且つ、炭素原子及び酸素原子は、上記含有量の範囲では、得られた銅膜の電気伝導性、熱伝導性などの特性を損なう懸念がない。
また、本開示の金属膜は、光透過性を有する30nm程度の銅膜とすることができ、さらに、複数回の塗布を繰り返して得られた本開示の銅膜は、例えば、1μm程度の厚みとすることができ、電気伝導性が良好な膜となる。
公知の他の金属膜の製造方法、例えば、スパッタリング法により形成された銅膜では、銅以外の不純物は検出限界以下であり、炭素原子及び酸素原子を上記の量で含むことはない。
還元剤等を必要とする無電解メッキ膜により形成された銅膜では、触媒に由来する不純物、例えば、鉛、錫等が残存しており、炭素原子及び酸素原子以外の元素が検出される。
アニオン性金属錯体を用いたプレカーサー法により形成される銅膜では、アニオン性金属錯体から形成される金属粒子が不連続な膜となり易く、導電性膜を形成することが困難である。このため、得られた膜の電気抵抗値を測定することで、本開示の金属膜と区別することができる。
このため、得られた金属膜をオージェ電子分光スペクトルにより分析することで、本開示の金属膜の製造方法により得られた金属膜と、上記、他の製造方法で得られた金属膜とを識別することができる。
なお、電解メッキ法では、導電性基板以外に金属膜を形成することができず、無電解メッキ法により得られた銅膜及びプレカーサー法により得られた銅膜では、触媒に由来する成分又は対イオンに由来する成分の残存が、例えば、電気伝導性に影響を与える可能性があり、得られた銅膜の性能においても、本開示の製造方法により得られた本開示の金属膜である銅膜は、従来法により得られた銅膜に対して、性能がより良好である。
<金属膜積層体>
本開示の金属膜積層体は、非導電性基材と、前記非導電性基材上に、膜厚が30nm〜1μmである金属膜とを有し、前記金属膜は、銅を80.0質量%以上100質量%未満、炭素原子を0質量%を超え10質量%以下、及び、酸素原子を0質量%を超え10質量%以下含む、金属膜積層体である。
本開示の金属膜積層体は、非導電性基材と、前記非導電性基材上に、既述の本開示の金属膜とを有する。
即ち、本開示の金属膜は、導電性基材のみならず、非導電性基材にも簡易に形成することができる。
また、本開示の前記金属膜は、高温の加熱を行うことなく緻密な金属膜となるため、耐熱性の比較的低い非導電性基材との積層体とすることができる。
非導電性基材としては、例えば、既述の基材の材料として例示した各素材のうち、非導電性であるガラス基材、セラミック基材、樹脂基材などが挙げられ、樹脂基材は熱硬化性の樹脂基材でもよく、熱可塑性の樹脂基材でもよい。
なお、本開示における非導電性基材における「非導電性」とは、四探針法により測定した電気抵抗率が10Ωcm以上であることを示す。
以下、本開示の金属膜形成用組成物の製造方法、及び、金属膜の製造方法を、実施例を挙げて具体的に説明するが、本開示は以下の実施例に制限されず、その主旨を超えない限りにおいて種々の変型例にて実施することができる。
〔実施例1〕
(1.電解液Aの調製)
500mL(ミリリットル)の三角フラスコに、300gの水を入れ、撹拌しながら、HEDTA(9.174g:31.39mmol)、及びアンモニア(4.773g:78.48mmol)をこの順に加えて、常温(25℃)にて1時間撹拌を継続し、電解液Aを得た。
得られた電解液Aは、目視で観察したところ、透明な均一溶液であった。
(2.金属膜形成用組成物の製造)
図1に示す如き、一対の電解液槽16、18として、2つの石英製のセル(幅:100mm×長さ:100mm×深さ:60mm)を準備した。一対の電解液槽16、18は、セルロース製の透析用フィルタ(日本メデカルサイエンス(株)製、ヴィスキングチューブ)12を備えた流路で連結されている。(工程A)
その後、電解液槽16、18のそれぞれに、前記で得た電解液A(電解液20)を150gずつ貯留した(工程B)。
次に、貯留された電解液Aに接するように、一対の電解液槽16及び電解液槽18のそれぞれに、電極22及び電極24を配置した。
電極22及び電極24として、銅板(長さ900mm×幅:37mm×厚さ:0.3mm)を用いた。
電極22と電極24とを、電源26に接続し、電圧を、0Vを超え18Vまで印加し2Aの電流を供給した。電源としては、直流安定化電源(PMC18-2(商品名)、菊水電子工業(株))を用いた。
電圧を印加することにより、陽極としての電極22が配置された電解液槽16では、電極22である銅板から溶出した銅イオンに起因して、図2に示す如く青色に変色した電解液20Aとなり、金属錯体を含む金属膜形成用組成物が得られたことが確認された(工程C)。
他方、陰極としての電極(銅板)24が配置された側の電解液槽18では、反応前の電解液20からの変色が認められない電解液20Bが貯留されていた。また、陰極としての電極24から気体が発生することが確認された。気体を収集して確認したところ、水素ガスであることがわかった。
このことから、本開示の金属膜形成用組成物の製造方法にて推定されたように、陽極としての電極22が配置された電解液槽16では金属錯体を含む金属膜形成用組成物が得られることがわかった。
(3.金属膜形成用組成物の評価)
実施例1の金属膜形成用組成物の製造方法において、直流電流の印加電圧を18Vとし、直流電流の印加時間を1時間、2時間、3時間、4時間、及び5時間とし、電流印加後の金属膜形成用組成物の吸光度と、吸収波長とを測定した。結果を図3に示す。
なお、図3では、印加時間を1時間としたグラフは点線(グラフ中に「1hr」と記載)、印加時間を2時間としたグラフは細線(グラフ中に「2hr」と記載)、印加時間を3時間としたグラフは破線(グラフ中に「3hr」と記載)、印加時間を4時間としたグラフは一点鎖線(グラフ中に「4hr」と記載)、印加時間を5時間としたグラフは実線(グラフ中に「5hr」と記載)にて、それぞれ表した。
液の吸収スペクトルは、吸光光度計(U−2800:日立製作所(株))にて測定した。
図3に明らかなように、電解液槽16に貯留された液は、647nm近傍に吸収ピークをもつスペクトルを示した。すなわち、実施例1の金属膜形成用組成物は銅錯体を含有することが裏付けられた。
また、電流の印加時間を長くすることで、吸収スペクトルの吸光度が上昇することがわかる。図3により、金属膜形成用組成物中において、電流の印加時間が長くなるに従い、生成した銅イオンに起因する青色の波長の吸光度が向上している。即ち、電流の印加時間を長くすることで、金属錯体の濃度が上昇し、金属の前駆体となる金属錯体を高濃度で含む、優れた金属膜形成用組成物を製造しうることがわかる。
また、電流の印加前と、電流を5時間印加した後の、陽極としての電極(銅板)22の質量及び陽極としての電極(銅板)22側の電解液槽16内の液のpHを測定したところ、銅板の質量は、陽極側では46.6gから45.0gに減少した。また、液のpHは、電解液20を貯留した当初のpH9.58に対し、金属イオンが生成された後の液のpHは9.34であり、金属錯体の形成に伴いpHが変化したことが確認された。
他方、電流の印加前と、電流を5時間印加した後の、陰極としての電極(銅板)24としての銅板の質量及び陰極としての電極(銅板)が配置された側の電解液槽18内の液のpHを測定したところ、銅板の質量は、44.2gから変化しなかった。また、液のpHも、電解液20を貯留した当初のpH9.58から変化しなかったことが確認された。
これにより、フィルタ12が存在することで、電解液槽16で生成した銅イオンは、陰極としての電極24が配置された側の電解液槽18には移動せず、従って、陰極における銅の析出に起因する銅イオン濃度の上昇抑制及び銅錯体の形成抑制が生じていないことが裏づけられたと考えられる。
〔実施例2〕
(1.電解液Bの調製)
500mL(ミリリットル)の三角フラスコに、300gの水を入れ、撹拌しながら、HEDTE(1.02g:3.48mmol)、ギ酸アンモニウム(3.54g:56.16mmol)及びアンモニア(4.32g:71.04mmolをこの順に加えて、常温(25℃)にて1時間撹拌を継続し、電解液Bを得た。
得られた電解液Bは、目視で観察したところ、透明な均一溶液であった。
実施例1において用いた電解液Aに変えて、電解液Bを用いた以外は、実施例1と同様にして金属膜形成用組成物を製造した。
その結果、電圧を印加することにより、陽極としての電極(銅板)22が配置された電解液槽16では、電解液が溶出した銅イオンに起因して青色に変色し、金属錯体を含む金属膜形成用組成物が得られたことが確認された。また、陰極としての電極(銅板)24が配置された側の電解液槽18では、電解液の変色は認められなかった。また、電極24から水素ガスが発生したことが確認できた。
〔実施例3〕
(1.金属膜の形成)
実施例1にて得られた金属膜形成用組成物を、図4に示すエアーブラシ(HP−SAR アネスト岩田製)30を用いて、基材としての(長さ:20mm×幅:20mm×厚さ:1.5mm)石英ガラス32の面上に、スプレーコート法により付与して金属膜形成用組成物層34を形成した。
図4は、本開示の金属膜の製造方法において、基材上に金属膜形成用組成物を付与するスプレー装置の一例であるエアーブラシの一実施形態を示す概略図である。
エアーブラシ30に、ガラスバイアルに収納した金属膜形成用組成物を、液注入口36から供給し、エア注入口38から加圧ガスを供給し、金属膜形成用組成物の吐出圧を0.2MPaとしてスプレーコートした(工程C)。金属膜形成用組成物の吐出口40から、基材である石英ガラス32の面上までの距離(図4中αで示す)は30cmとした。
石英ガラス32は、ステンレスディスク42上に配置した。ステンレスディスク42の裏面にはヒーター44を備え、ヒーター44により、ステンレスディスク42の温度は160℃−180℃の範囲に制御した。
このようにして、温度を100℃以上に制御された石英ガラス32の面上に配置された金属膜形成用組成物層34が加熱され、金属膜が形成された。(工程D)
形成された金属膜を、管状炉で、アルゴン(Ar)ガス雰囲気中にて、350℃の温度条件で15分間アニール処理して、石英ガラスの面上に銅薄膜を形成した。(工程F)
管状炉内において、最高温度350℃になるまで、昇温速度0.5℃/秒にて昇温し、最高温度を15分間維持した後、アニール処理した銅膜を室温(25℃)になるまで放冷した。
(銅膜の評価)
得られた銅膜について、以下の評価を行った。
1.成分分析
得られた銅膜に対し、X線回折(XRD)をSMART Lab装置(RIGAKU社)を用い、入射角0.3°の平行ビーム光学系で、2θが10°〜80°まで0.05°ステップで、固定時間5°/分ずつ強度を測ることで、測定した。
得られたXRDのパターンにより、形成された銅膜は、銅の単一相であることが確認された。
2.電気伝導率
得られた銅膜について、以下の方法で電気伝導性を測定した。銅膜の電気抵抗は、四探針法によって5点計測し、測定値の最大値と最小値を除いた3点で平均値を算出して得た値を銅膜の電気抵抗値とした。
測定は、デジタルマルチメーター:岩通計測株式会社、VOAC7512およびKEITHLEY、Model2010 Multimeterを用いて行なった。
その結果、電気伝導率は、1×10−4Ωcmであり、得られた銅膜は、薄膜でありながら、実用上十分な電気伝導性を示した。
3.オージェ分光スペクトルによる解析
得られた銅膜について、既述の方法でオージェ分光スペクトルを測定した。結果を図5に示す。図5のスペクトルより得られた銅膜は、銅を90質量%、炭素原子を6質量%、及び、酸素原子を4質量%含み、その他の元素は検出限界以下であった。
(産業上の利用分野)
本開示の金属膜形成用組成物の製造方法により得られた金属膜形成用組成物は、薄層でも緻密な構造を示す金属膜の形成に有用である。より具体的には、前記金属膜形成用組成物は、例えば、電気伝導性、熱伝導性が良好であったり、基材との密着性が良好であったりする種々の金属膜の形成に有用であり、種々の分野に応用することができる。
本開示の製造方法により製造される金属膜形成用組成物は、例えば、大規模集積回路(LSI)の回路、太陽電池配線、トレンチ埋入配線、電磁波シールド、赤外線遮断ガラス、熱反射ガラス、真空集熱器の熱伝導部材、金属としての、銀或いは銅の特性を利用した抗菌性材料、熱媒管等に好適に使用される。
また、当該金属膜形成用組成物を用いることで、均一であり、且つ緻密な組成の種々の金属膜の製造方法が提供され、種々の金属を含む、所望の厚みの金属膜の形成に有用である。
本開示の金属膜は、非導電性基材上にも形成することができる。従って、種々の素材、種々の形状の非導電性基材と本開示の金属膜とを有する積層体とすることができ、その応用範囲は広い。
〔符号の説明〕
10 反応装置
12 フィルタ
14 流路
16 電解液槽(陽極側の電解液槽)
18 電解液槽(陰極側の電解液槽)
20 電解液
22 電極(銅板、陽極)
24 電極(銅板、陰極)
26 直流電源
30 エアーブラシ
32 石英ガラス(基材)
34 金属膜形成用組成物層
36 液注入口
38 エア注入口
40 吐出口
42 ステンレスディスク
44 ヒーター
α エアーブラシにおける金属膜形成用組成物の吐出口から基材の面上までの距離
2018年8月28日に出願された日本国特許出願2018−159389の開示は参照により本開示に取り込まれる。
本開示に記載された全ての文献、特許出願、及び技術規格は、個々の文献、特許出願、及び技術規格が参照により取り込まれることが具体的かつ個々に記された場合と同程度に、本開示中に参照により取り込まれる。

Claims (11)

  1. 金属イオンが透過せず水素イオンが透過するフィルタを備えた流路を介して連結された一対の電解液槽を備える反応装置を準備する工程、
    前記一対の電解液槽のそれぞれに電解液を貯留させ、且つ、金属製の電極を、前記電解液に少なくとも一部が接触する位置に配置し、一対の前記電極間を、直流電源を介して接続する工程、及び、
    一対の前記電極間に前記直流電源により電圧を印加して、陽極となる電極が浸漬された電解液槽内において、前記電解液と金属イオンとを反応させて金属前駆体を得る工程、を含む金属膜形成用組成物の製造方法。
  2. 前記電圧を、0Vを超え100V以下の条件で印加する請求項1に記載の金属膜形成用組成物の製造方法。
  3. 前記電極は、銅製の電極である請求項1又は請求項2に記載の金属膜形成用組成物の製造方法。
  4. 前記電解液は、エチレンジアミン四酢酸を含む請求項1〜請求項3のいずれか1項に記載の金属膜形成用組成物の製造方法。
  5. 請求項1〜請求項4のいずれか1項に記載の金属膜形成用組成物の製造方法により金属膜形成用組成物を得る工程、
    得られた金属膜形成用組成物を、基材上に付与して、金属膜形成用組成物層を形成する工程、及び、
    基材上に形成された前記金属膜形成用組成物層を、100℃以上の温度条件にて加熱して金属膜を形成する工程、を含む金属膜の製造方法。
  6. 前記金属膜形成用組成物を、基材上に付与して、金属膜形成用組成物層を形成する工程は、前記金属膜形成用組成物を、基材上にスプレー塗布する工程を含む、請求項5に記載の金属膜の製造方法。
  7. さらに、形成された金属膜を200℃〜500℃の温度条件にてアニールする工程を含む請求項5又は請求項6に記載の金属膜の製造方法。
  8. 銅を80.0質量%以上100質量%未満、炭素原子を0質量%を超え10質量%以下、及び、酸素原子を0質量%を超え10質量%以下含み、膜厚が500nm〜1μmである金属膜。
  9. 非導電性基材と、前記非導電性基材上に、膜厚が500nm〜1μmである金属膜とを有し、
    前記金属膜は、銅を80.0質量%以上100質量%未満、炭素原子を0質量%を超え10質量%以下、及び、酸素原子を0質量%を超え10質量%以下含む、金属膜積層体。
  10. 金属イオンが透過せず水素イオンが透過するフィルタを備えた流路を介して連結され、電解液が貯留される一対の電解液槽と、
    前記一対の電解液槽の一方に配置された陽極及び前記一対の電解液槽の他方に配置された陰極からなる金属製の一対の電極と、
    前記金属製の一対の電極間に電圧を印加する直流電源と、を備える金属膜形成用組成物の製造装置。
  11. 前記金属製の一対の電極の配置位置は、前記一対の電解液槽のそれぞれに貯留される電解液に接触する位置である請求項10に記載の金属膜形成用組成物の製造装置。
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