JP6908428B2 - レーザー脱離イオン化質量分析法及びレーザー脱離イオン化質量分析用の有機シリカ多孔膜基板 - Google Patents
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本発明のレーザー脱離イオン化質量分析法は、照射レーザー光を吸収可能な有機基を骨格に有し、平均細孔径が5〜50nmの細孔を有し、かつ、表面開口率が33〜70%である有機シリカ多孔膜に対して、測定対象分子を含む試料を担持せしめた後、該膜の試料担持部位にレーザー光を照射することにより、前記測定対象分子をイオン化して質量分析を行うことを特徴とする方法である。
本発明において質量分析に利用する有機シリカ多孔膜は、照射レーザー光を吸収可能な有機基を骨格に有し、平均細孔径が5〜50nmの細孔を有し、かつ、表面開口率が33〜70%である有機シリカ多孔膜である。
で表される有機ケイ素化合物(照射レーザー光を吸収可能な有機基を有する有機ケイ素化合物)が好ましい。
で表されるような反応により、重合後に得られる有機シリカ多孔膜は、有機基(X)によりシロキサン構造(式:−(Si−O)y−で表される構造)を形成するケイ素原子が架橋された構造の繰り返し単位を有するものとなる(なお、pの数は特に制限されないが、一般的には10〜1000程度の範囲であることが好ましい。)。なお、このような架橋構造が形成された場合(有機シリカ多孔膜が前記架橋型有機シリカ多孔膜となる場合)には、照射レーザー光をより効率よく吸収し、有機シリカ多孔膜の細孔内に担持された測定対象分子に対して、より効率良く励起エネルギーを移動できる傾向にある。
で表される有機基が特に好ましい。なお、このような一般式(101)〜(132)で表される有機基において、記号*で表される結合手は直接ケイ素に結合していることがより好ましい。そのため、有機ケイ素化合物としては、上記一般式(1−i)で表される化合物であることがより好ましい。また、上記一般式中のRaとして選択され得るアルキル基は炭素数が1〜18(より好ましくは1〜12)のものである。このような炭素数が前記上限を超えると多孔膜としての構造形成が困難となる傾向にある。このようなRaとしてはメチル基が特に好ましい。
一般式(A2)中、Xはそれぞれ異なっていてもよいハロゲン基であり、R23はそれぞれ異なっていてもよい、炭素原子を少なくとも1つ有しケイ素原子と結合する1価の有機基であり、mは1以上3以下の整数であり、nは1以上3以下の整数であり、mとnはm+n=4という条件を満たす。]
で示される化合物が挙げられる。このような他の有機ケイ素化合物としては、公知のものを適宜利用できるが、中でも、入手の容易性、加水分解反応の容易性等の観点から、Si(OR21)4[R21は炭化水素基(より好ましくは炭素数1〜4のアルキル基、更に好ましくはメチル基又はエチル基)を示す。]で表されるケイ素化合物がより好ましい。
本発明にかかる試料は、測定対象分子を含むものである。このような測定対象分子としては特に制限されないが、本発明により、より高い検出感度で測定することが可能となることから、生体由来の分子又は生体試料中の分子であることが好ましい。このような生体由来の分子又は生体試料中の分子としては、糖、タンパク質、ペプチド、糖タンパク質、糖ペプチド、核酸、糖脂質等がより好ましく、これらの分子に対しては、本発明の効果をより高度なものとすることが可能となる傾向にある。また、このような測定対象分子としては、天然物から調製されるもの、天然物を化学的又は酵素学的に一部改変して調製されるものの他、化学的又は酵素学的に調製されるものであってもよい。また、生体に含まれる分子の部分構造を有するものや生体に含まれる分子を模倣して作製されたものであってもよい。
本発明のレーザー脱離イオン化質量分析法においては、質量分析に際して、先ず、上記有機シリカ多孔膜に対して、測定対象分子を含む試料を担持せしめる。このような試料の担持方法としては特に制限されないが、例えば、上記有機シリカ多孔膜の上記表面開口率(33〜70%の表面開口率)を有する表面に対して試料を載置することにより、該膜に試料を担持する方法を採用することが好ましい。このようにして、試料を有機シリカ多孔膜の上記表面開口率を有する表面上に載置することで試料は細孔の内部に容易に侵入して行き、これにより前記有機シリカ多孔膜に効率よく試料を担持することが可能となる。例えば、測定対象分子を含む水溶液を準備し、該水溶液を前記有機シリカ多孔膜の上記表面開口率を有する表面上に滴下することによって前記有機シリカ多孔膜上に試料前駆体(水溶液)を載置した後、溶媒である水を乾燥除去することで、前記膜に試料を担持することができる(この例では、水を除去した後に残る測定対象分子そのものが前記有機シリカ多孔膜に担持される試料となる)。また、前述のように、試料前駆体(酵素処理前の分子)を有機シリカ多孔膜に担持した後に酵素処理を行なって、該膜上で測定対象分子(酵素処理物)を調製することにより、結果的に前記有機シリカ多孔膜上に測定対象分子(酵素処理物)を含む試料を担持してもよい。このように、前記有機シリカ多孔膜上に最終的に測定対象分子を含む試料(測定対象分子そのもの、測定対象分子の誘導化物、測定対象分子と標準物質との混合物等)を担持することが可能であれば、試料を担持する方法は特に制限されない。
本発明においては、上述のように前記有機シリカ多孔膜に対して測定対象分子を含む試料を担持せしめた後、該膜の試料担持部位にレーザー光を照射することにより、前記測定対象分子をイオン化して質量分析を行う。
本発明のレーザー脱離イオン化質量分析用の有機シリカ多孔膜基板は、レーザー光を吸収可能な有機基を骨格に有し、平均細孔径が5〜50nmの細孔を有し、かつ、表面開口率が33〜70%である有機シリカ多孔膜を含むことを特徴とするものである。
〈有機シリカ多孔膜前駆体の調製工程〉
ポリスチレン−ポリエチレンオキシドジブックポリマー(polymer source社製の「20kPS−b−14kPEO」:界面活性剤)30mgと、トリエトキシシリルトリフェニルアミン(TPA有機シラン:上記一般式(1−i)で表される有機シラン化合物[式中、mは3であり、nは3であり、R1はエトキシ基であり、かつ、Xは上記一般式(126)で表される有機基である。])を8.17質量%の割合で含有するエタノール溶液(TPA有機シラン/EtOH溶液、含有割合:0.089g/g)337mgと、テトラヒドロフラン(THF)1mLと、エタノール(EtOH)0.611mLとを混合して溶解液を得た後、該溶解液にイオン交換水6mLと2mol/L(2M)のHCl2mLを滴下し、室温(25℃程度)で24時間撹拌してゾルを得た。次いで、得られたゾルをシリコン基板(Si基板:SUMCO社製、P型で面方位[100]、抵抗率:0〜0.02Ωcm以下)にスピンコート(回転数:2000rpm、回転時間:30秒)して、Si基板上に塗膜を形成して積層体を得た。次いで、得られた積層体を室温(25℃程度)で一晩(15時間程度)静置することにより乾燥させた。乾燥後の積層体をアンモニア蒸気に60℃で12時間曝露させた後、ホットプレート上、100℃で1時間加熱して、塗膜中においてTPA有機シランの縮合反応(重合反応)を進行させて、Si基板上にTPA有機シランの重合体からなる薄膜を得た。次いで、前記薄膜が形成されたSi基板をトルエンに浸漬し、トルエン中で110℃の温度条件で24時間加熱する処理を3回繰り返し行うことで、薄膜中に導入された界面活性剤を除去して、Si基板上に有機シリカ多孔膜前駆体(TPA−PMO薄膜)を調製した。
上述のようにして得られた有機シリカ多孔膜前駆体(TPA−PMO薄膜)の表面に対して、エッチング装置としてサムコ社製の商品名「RIE−10NR」を用いて、エッチングガスとしてCF4とO2とを含むガス(CF4/O2混合ガス)を利用し、該混合ガスの組成が59/10(CF4/O2)となるようにエッチングガスを59sccm/10sccm(CF4/O2)の流量で用い、雰囲気圧を10Paとし、RF電源の出力(RF出力)を30Wとし、処理時間を10秒とする条件で反応性イオンエッチング(RIE)処理を施した。このようにしてRIE処理を行なった後の膜を備えるSi基板をトルエンに浸漬させて、110℃で24時間加熱処理した後、真空乾燥して、RIE処理した表面を有する有機シリカ多孔膜を得た。このようにして、Si基板上にRIE処理した表面を有する有機シリカ多孔膜が積層された質量分析用の基板を得た。
反応性イオンエッチング(RIE)処理の際に、エッチングガスを前記CF4/O2混合ガスからCF4のみからなるガスに変更し、エッチングガスの流量を60sccm(エッチングガスはCF4のみであり、O2は0sccm)とし、RF出力を30Wから25Wに変更し、処理時間を10秒から15秒に変更した以外は実施例1と同様にして、RIE処理した表面を有する有機シリカ多孔膜を得た。このようにして、Si基板上にRIE処理した表面を有する有機シリカ多孔膜が積層された質量分析用の基板を得た。なお、処理条件がより明確となるように、実施例1及び実施例2において採用した反応性イオンエッチング(RIE)の処理条件を表1に示す。
反応性イオンエッチング(RIE)処理を行わなかった以外は実施例1と同様にして、Si基板上にTPA−PMO薄膜を調製し、そのまま比較のための質量分析用の基板とした。このように、比較のための質量分析用の基板として、Si基板上にRIE未処理の有機シリカ多孔膜(TPA−PMO薄膜)が積層されたものを調製した。なお、かかる質量分析用の基板が備えるRIE未処理の有機シリカ多孔膜は、実施例1に記載の「有機シリカ多孔膜前駆体(TPA−PMO薄膜)」と同様のものである。
〈SEM測定(有機シリカ多孔膜の平均細孔径、厚み等の測定)〉
実施例1〜2及び比較例1で得られた質量分析用の基板の断面をそれぞれ、走査電子顕微鏡(日立ハイテクノロジーズ社製:高分解能電解放射形走査電子顕微鏡 SEM S−5500)を用いて、加速電圧10kVの条件で測定することにより、有機シリカ多孔膜の平均細孔径及び厚みを測定し、更に、膜の表面状態や細孔の状態を確認した。
実施例1〜2及び比較例1で得られた質量分析用の基板の有機シリカ多孔膜の表面の開口率(表面開口率)を以下のようにして測定した。すなわち、先ず、測定装置として走査型プローブ顕微鏡(SPM/AFM:日立ハイテクサイエンス社製のNanoNavi E−sweep)を利用し、質量分析用の基板の有機シリカ多孔膜の表面上の1μm角(1μm×1μm)の大きさの任意の4点の測定領域に対して、カンチレバーとしてシリコン製のマイクロカンチレバー(日立ハイテクサイエンス社製の商品名「SI−DF20」)を用いて、ダイナミックフォースモードにて、縦(X):256ピクセル、横(Y):256ピクセルの走査条件で表面状態を解析して、原子間力顕微鏡(AFM)像を得た。このようにして得られたAFM像(256ピクセル×256ピクセル)に記録されている各ピクセル(画素)の縦(X)、横(Y)、高さ(Z)の位置情報から、高さ(Z)(前述の基準面からの垂直方向の距離[単位:nm])の値を縦軸とし、度数(全ピクセル数に対する特定の高さを有するピクセルの数の割合:特定の高さの値を有するピクセルの存在率[単位:%])を横軸とするグラフ(高さの度数分布曲線のグラフ)を求めた。そして、得られた高さの度数分布曲線のグラフから、最大の度数(最大度数)を有する高さの値(H1)よりも低い高さの値を有しかつ最大度数の1/2の度数を有する高さの値(H2)を求めた。次いで、かかる最大度数の1/2の度数を有する高さの値(H2)を閾値として、AFM像を二値化した。このような二値化により、任意の4点の測定領域ごとに、高さの値がH2以上となるピクセルの部分と、高さの値がH2未満となるピクセルの部分とにおいて色分けされた画像(AFM像を二値化した画像)をそれぞれ得た。そして、このような二値化した画像に基づいて、画像中の高さの値がH2以上となるピクセルの部分(領域)が有機シリカ多孔膜の骨格部分(多孔膜の表面を形成する有機シリカ部分)であるものと判断し、高さの値がH2未満となる部分(領域)が有機シリカ多孔膜の表面の細孔の開口部分(細孔に基づく空隙部分)であるものと判断して、測定領域ごとに開口率(各測定領域の表面画像に占める細孔の開口部分の割合、計算式:([細孔の開口部分の面積]/[測定領域の総面積])×100[単位:%]))をそれぞれ算出し、それらの平均値を求めることにより表面開口率(任意の4点の測定領域の開口率の平均値)を求めた。
実施例1〜2及び比較例1で得られた質量分析用の基板の有機シリカ多孔膜中の有機基の吸収スペクトルを求めるため、以下のような測定を行なった。すなわち、先ず、シリコン基板(Si基板)の代わりに石英基板(朝日テクニグラス社製の商品名「合成石英基板」)を用いた以外は、実施例1で採用している有機シリカ多孔膜前駆体の調製工程と同様の工程を採用して、石英基板上にTPA−PMO薄膜を形成し、測定用サンプルを得た。そして、かかる測定用サンプル(石英基板上にTPA−PMO薄膜を積層したもの)を用い、測定装置として日本分光社製の紫外可視分光光度計JASCO−V670を用いて、TPA−PMO薄膜の吸収スペクトルを測定した。なお、このようにして求められる吸収スペクトルは、TPA−PMO薄膜の骨格を考慮すれば、骨格内の有機基の吸収スペクトルであることは明らかである。このような測定により得られた吸収スペクトルを図8に示す。
上記測定結果より、実施例1〜2で得られた質量分析用の基板は、300〜400nmのレーザー光を吸収可能な有機基(トリフェニルアミン)を骨格に有し、平均細孔径が5〜50nmの細孔を有し、かつ、表面開口率が33〜70%である有機シリカ多孔膜を備えるものであることが分かった。他方、RIE処理を施さなかった有機シリカ多孔膜(RIE未処理膜)を備える比較例1で得られた質量分析用の基板は有機シリカ多孔膜の表面開口率(表面の平均開口率)が7%となっていることが分かった。このような結果から、前記TPA有機シランを利用した場合、これを単に重合して有機シリカ多孔膜を調製するのみでは平均細孔径が5〜50nmといった微細な細孔を有しつつ表面開口率が33%以上となるような多孔膜を形成することができなかったのに対して(比較例1)、前記TPA有機シランを重合して薄膜を形成した後にRIE等のエッチング処理を施すことによって(実施例1〜2)、表面開口率が33%以上となるような開口率が十分に増大された有機シリカ多孔膜を調製することが可能となることが分かった。
実施例1で得られた質量分析用の基板を用い、分析装置としてブルカー・ダルトニクス社製の商品名「autoflex」を用いて、以下のようにして質量分析を行なった。すなわち、先ず、前記質量分析用の基板中の有機シリカ多孔膜の表面(表面開口率が41%となっている表面)上に、測定対象分子である標準ペプチドを4pmol含む水溶液を1μL滴下し、自然乾燥させることにより、前記有機シリカ多孔膜に標準ペプチド(測定対象分子)を担持した。次いで、前記標準ペプチド(測定対象分子)を担持した膜を備える基板を、上記分析装置のカートリッジプレートに装着した後、上記分析装置におけるレーザー強度(Laser Power:LP)の設定が35%となるようにして、前記膜の試料(標準ペプチド)を担持(滴下)した箇所(試料の担持部位)に対して波長337nmのレーザー光を照射することにより、標準ペプチド(測定対象分子)をイオン化して質量分析を行った。なお、標準ペプチドとしては、ブルカー・ダルトニクス社製の製品番号8206195(Bruker #8206195)[Angiotensin II(M1:1046.5),Angiotensin I(M2:1296.7),Substance P(M3:1347.7),Bombesin(M4:1619.8),ACTH clip 1-17(M5:2093.1),ACTH clip 18-39(M6:2465.2),Somatostatin 28(M7:3147.5),前記括弧()の内部に記載された数値はH+体の分子量]を用いた。
実施例1で得られた質量分析用の基板を用いる代わりに比較例1で得られた質量分析用の基板を用いた以外は実施例3と同様にして質量分析を行なった。なお、測定対象分子は有機シリカ多孔膜の表面(表面開口率が7%となっている表面)上に担持した。
上記分析装置におけるレーザー強度(Laser Power)の設定を35%から30%に変更した以外は実施例3と同様にして質量分析を行なった。
実施例1で得られた質量分析用の基板を用いる代わりに実施例2で得られた質量分析用の基板を用いた以外は実施例4と同様にして質量分析を行なった。なお、測定対象分子は有機シリカ多孔膜の表面(表面開口率が40%となっている表面)上に担持した。
実施例1で得られた質量分析用の基板を用いる代わりに比較例1で得られた質量分析用の基板を用い、かつ、上記分析装置におけるレーザー強度(Laser Power)の設定を30%から40%に変更した以外は実施例4と同様にして質量分析を行なった。なお、測定対象分子は有機シリカ多孔膜の表面(表面開口率が7%となっている表面)上に担持した。
レーザー強度(Laser Power)の設定を40%から30%に変更した以外は比較例3と同様にして質量分析を行なったところ(実施例4及び5と同様のレーザー強度で、比較例1で得られた質量分析用の基板を用いて質量分析を行なったところ)、マススペクトルのシグナルが確認できなかった(ペプチドの検出ができなかった)。
実施例3及び比較例2の質量分析の結果として、実施例3で得られたマススペクトルのグラフと、比較例2で得られたマススペクトルのグラフとを図9に示す。なお、実施例3と比較例2とは同じ強度でレーザー光を照射して質量分析しており、測定されたマススペクトルのグラフ中のピーク横の括弧内()内の数値はシグナル強度を示す。
実施例1で得られた質量分析用の基板を用い、分析装置としてShimadzu社製のAXIMA−QITを用いて、以下のようにして質量分析を行なった。すなわち、先ず、前記質量分析用の基板中の有機シリカ多孔膜の表面(表面開口率が41%となっている表面)上に、下記式:
で表される標識分子(標識色素)を固定した糖(AMAC−NA2)を10pmol含む水溶液を1μL滴下し、自然乾燥させることにより、前記有機シリカ多孔膜にAMAC−NA2(測定対象分子)を担持した。次いで、前記AMAC−NA2(測定対象分子)を担持した膜を備える基板を、上記分析装置のカートリッジプレートに装着した後、前記膜の試料(AMAC−NA2)を担持(滴下)した箇所に対して波長337nmのレーザー光を照射することにより、AMAC−NA2をイオン化して質量分析を行った。なお、測定は分析装置の正イオンモードにて行い、測定回ごとにレーザーの照射位置を変えて測定を3回行なった(3箇所に対して質量分析を行なった)。このような3回分の質量分析の測定結果としてマススペクトルのグラフを図11に示す(なお、測定回ごとに結果を(a)、(b)、(c)と分けて記載する)。なお、図11(a)、(b)、(c)のそれぞれにおいて(各回ごとに測定されたマススペクトルのそれぞれのグラフにおいて)、最大ピークにおけるシグナル強度はそれぞれ20mV、24mV、28mVであった。
実施例1で得られた質量分析用の基板を用いる代わりに実施例2で得られた質量分析用の基板を用いた以外は実施例6と同様にして質量分析を行なった。なお、測定対象分子は有機シリカ多孔膜の表面(表面開口率が40%となっている表面)上に担持した。このような質量分析(3回分)の測定結果としてマススペクトルのグラフを図12に示す(なお、測定回ごとに結果を(a)、(b)、(c)と分けて記載する)。なお、図12(a)、(b)、(c)のそれぞれにおいて(各回ごとに測定されたマススペクトルのそれぞれのグラフにおいて)、最大ピークにおけるシグナル強度はそれぞれ46mV、44mV、45mVであった。
実施例1で得られた質量分析用の基板を用いる代わりに比較例1で得られた質量分析用の基板を用いた以外は実施例6と同様にして質量分析を行なった。なお、測定対象分子は有機シリカ多孔膜の表面(表面開口率が7%となっている表面)上に担持した。このような質量分析(3回分)の測定結果としてマススペクトルのグラフを図13に示す(なお、測定回ごとに、結果を(a)、(b)、(c)と分けて記載する)。なお、図13(a)、(b)、(c)のそれぞれにおいて(各回ごとに測定されたマススペクトルのそれぞれのグラフにおいて)、最大ピークにおけるシグナル強度はそれぞれ1.5mV、0.6mV、1.1mVであった。
図11〜13に示す結果からも明らかなように、標識色素を固定した糖(AMAC−NA2、10pmol)に対して同条件でレーザーを照射して質量分析を行なった場合(実施例6〜7及び比較例5)には、RIE未処理の有機シリカ多孔膜を備える質量分析用の基板(比較例1で得られた質量分析用の基板)を用いた場合に測定されたマススペクトルの最大ピークのシグナル強度が0.6〜1.5mVであるのに対して(図13:比較例5)、RIE処理を施した有機シリカ多孔膜を備える質量分析用の基板(実施例1で得られた質量分析用の基板及び実施例2で得られた質量分析用の基板)をそれぞれ利用した場合に測定されたマススペクトルのピークのシグナル強度がそれぞれ20〜28mV(図11:実施例6)、44〜46mV(図12:実施例7)となっており、表面開口率がより高い実施例1及び2で得られた質量分析用の基板を利用することで、測定されるマススペクトルのシグナル強度を大幅に向上させることが可能となり、検出感度を一桁も向上させることが可能であることが分かった。このような結果から、実施例1〜2で得られた質量分析用の基板を利用することで、マトリックスを用いることなく質量分析することが可能であるとともに、その検出感度をより高いものとすることが可能であることが確認された。
標識分子(標識色素)を固定した糖(AMAC−NA2)を10pmol含む水溶液を用いる代わりに、AMAC−NA2を1pmol含む水溶液を用い、かつ、測定回数を3回から2回に変更した以外は、実施例6と同様にして、質量分析(実施例1で得られた質量分析用の基板を用いた質量分析)を行なった。このような2回分の質量分析の測定結果としてマススペクトルのグラフを図14に示す(なお、測定回ごとに結果を(a)、(b)と分けて記載する)。なお、図14(a)、(b)のそれぞれにおいて(各回ごとに測定されたマススペクトルのそれぞれのグラフにおいて)、最大ピークにおけるシグナル強度はそれぞれ16mV、15mVであった。
実施例1で得られた質量分析用の基板を用いる代わりに比較例1で得られた質量分析用の基板を用いた以外は実施例8と同様にして質量分析を行なったところ、マススペクトルのシグナルが確認できなかった(AMAC−NA2の検出ができなかった)。
図14に示す結果からも明らかなように、AMAC−NA2担持量が1pmolである場合においても、RIE処理を施した有機シリカ多孔膜を備える質量分析用の基板(実施例1で得られた質量分析用の基板)を利用した場合(実施例8の場合)においては、測定ごとにマススペクトルのピークのシグナル強度(16mV、15mV)が確認された。これに対して、RIE未処理の有機シリカ多孔膜を備える質量分析用の基板(比較例1で得られた質量分析用の基板)を用いた場合(比較例6の場合)には、AMAC−NA2担持量が1pmolという条件下においてはマススペクトルのシグナルが確認できなかった。なお、AMAC−NA2の担持量が10pmolである比較例5の質量分析により測定されるマススペクトルのシグナル強度と、AMAC−NA2担持量が1pmolである実施例8の質量分析により測定されるマススペクトルのシグナル強度を比較した場合においても、実施例8の質量分析により、シグナル強度が大幅に向上されていることが確認された。このような対比から、比較例5と実施例8とでは測定対象分子(AMAC−NA2)の担持量に違いがあり、実施例8の質量分析では測定対象分子(AMAC−NA2)の担持量が少ないにもかかわらず、比較例5の質量分析と比較して検出感度が向上してることが分かった。このような結果から、本発明の質量分析用の基板(実施例1)を利用した場合には、検出感度をより高いものとすることが可能であり、測定対象分子の量が少ない場合においても十分に効率よく質量分析することが可能であることが分かった。
Claims (5)
- 照射レーザー光を吸収可能な有機基を骨格に有し、平均細孔径が5〜50nmの細孔を有し、かつ、表面開口率が33〜70%である有機シリカ多孔膜に対して、測定対象分子を含む試料を担持せしめた後、該膜の試料担持部位にレーザー光を照射することにより、前記測定対象分子をイオン化して質量分析を行うことを特徴とするレーザー脱離イオン化質量分析法。
- 前記有機基が200〜600nmの範囲に吸収極大波長を有することを特徴とする請求項1に記載のレーザー脱離イオン化質量分析法。
- 前記有機基が4個以上の炭素を含む芳香族有機基であることを特徴とする請求項1又は2に記載のレーザー脱離イオン化質量分析法。
- 前記有機基としてトリフェニルアミンを含むことを特徴とする請求項1〜3のうちのいずれか一項に記載のレーザー脱離イオン化質量分析法。
- レーザー光を吸収可能な有機基を骨格に有し、平均細孔径が5〜50nmの細孔を有し、かつ、表面開口率が33〜70%である有機シリカ多孔膜を含むことを特徴とするレーザー脱離イオン化質量分析用の有機シリカ多孔膜基板。
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