JP6900889B2 - 無方向性電磁鋼板 - Google Patents

無方向性電磁鋼板 Download PDF

Info

Publication number
JP6900889B2
JP6900889B2 JP2017230471A JP2017230471A JP6900889B2 JP 6900889 B2 JP6900889 B2 JP 6900889B2 JP 2017230471 A JP2017230471 A JP 2017230471A JP 2017230471 A JP2017230471 A JP 2017230471A JP 6900889 B2 JP6900889 B2 JP 6900889B2
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
oriented electrical
steel sheet
electrical steel
inclusions
present
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Active
Application number
JP2017230471A
Other languages
English (en)
Other versions
JP2019099854A (ja
Inventor
屋鋪 裕義
裕義 屋鋪
義顕 名取
義顕 名取
美穂 冨田
美穂 冨田
陽介 正木
陽介 正木
政樹 宮田
政樹 宮田
水上 和実
和実 水上
智 鹿野
智 鹿野
鉄州 村川
鉄州 村川
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
Nippon Steel Corp
Original Assignee
Nippon Steel Corp
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by Nippon Steel Corp filed Critical Nippon Steel Corp
Priority to JP2017230471A priority Critical patent/JP6900889B2/ja
Publication of JP2019099854A publication Critical patent/JP2019099854A/ja
Application granted granted Critical
Publication of JP6900889B2 publication Critical patent/JP6900889B2/ja
Active legal-status Critical Current
Anticipated expiration legal-status Critical

Links

Images

Landscapes

  • Manufacturing Of Steel Electrode Plates (AREA)
  • Soft Magnetic Materials (AREA)

Description

本発明は、無方向性電磁鋼板に関する。
昨今、地球環境問題が注目されており、省エネルギーへの取り組みに対する要求は、一段と高まってきている。なかでも、電気機器の高効率化は、強く要望されている。このため、モータや発電機の鉄心材料として広く使用されている無方向性電磁鋼板においても、磁気特性の向上に対する要請が更に強まっている。近年、高効率化が進展する電気自動車やハイブリッド自動車用のモータや発電機、及び、コンプレッサ用モータにおいては、その傾向が顕著である。
電気機器の高効率化のために、無方向性電磁鋼板の磁気特性の中では、鉄損、特に高周波鉄損を低減することが求められている。鉄損は、渦電流損とヒステリシス損に大別できる。渦電流損を低減するためには、鋼中に合金元素を添加することで鋼板の電気抵抗を上げることが有効である。そのため、例えば以下の特許文献1、特許文献2及び特許文献3に開示されているように、Si、Al、Mnといった電気抵抗を上昇させる効果を有する元素を添加して、磁気特性(鉄損、磁束密度等)の改善を図ることが行われている。一方、ヒステリシス損を低減するためには、結晶粒径の適正化や微細析出物低減が有効である。そのため、例えば渦電流損低減と同じく特許文献1、特許文献2及び特許文献3に開示されるように、不純物を低減させたり、Ca又は希土類元素を含有させたりすることで微細析出物を低減し、結晶粒成長性を改善することが行われている。
国際公開第2016/027565号 特開2016−130360号公報 特開2000−129409号公報
ここで、同一の含有量(質量%)で合金元素を添加することを考えた場合に、Siは、電気抵抗を上昇させやすく、渦電流損低減による鉄損低減に有効な元素である。そのため、上記特許文献1では、Siの含有量を6質量%以下とすることが開示されており、上記特許文献2では、Siの含有量を5質量%以下とすることが開示されており、上記特許文献3では、Siの含有量を7質量%以下とすることが開示されている。本発明の狙いである鉄損低減、特にW10/400のような高周波鉄損の低減には、高合金化が不可欠である。しかしながら、上記の特許文献1、特許文献2及び特許文献3では、高周波鉄損低減に必要な合金量の下限値や、Si、Al、Mnの適正な添加量の配分が考慮されておらず、本発明の狙いであるW10/400のような高周波鉄損の低減が望めない。
また、Alも、Siと同様に電気抵抗の上昇効果を示す合金元素であるが、SiとともにAlを大量に含有した場合、冷間圧延性の低下が生じることも明らかとなった。更に、Alの含有量が2質量%を超えてしまうと、ヒステリシス損が劣化して磁気特性が低下してしまう傾向にあり、合金元素としてAlを大量に含有させることは、困難である。
ヒステリシス損低減による鉄損低減には、結晶粒径の適正化や微細析出物の低減が必要であり、上記の特許文献1、特許文献2及び特許文献3に開示されるように、不純物を低減させたり、Ca又は希土類元素を含有させたりすることが有効である。しかしながら、高純度化、又は、Caもしくは希土類元素の添加は、製造コストの上昇を招くために限界がある。
そこで、本発明は、上記問題に鑑みてなされたものであり、本発明の目的とするところは、製造コストの増加を抑制しつつ、冷間圧延性及び鉄損、特に高周波鉄損により優れる無方向性電磁鋼板を提供することにある。
上記課題を解決するために、本発明者が鋭意検討を行った結果、Alの含有量を所定の値以下とし、かつ、冷間圧延性の低下が少ないMnをSiとともに複合添加した上で、鋼中の比較的粗大なSiOとMnSとを複合析出させることにより、極低硫化や、Ca又は希土類の積極的な添加を行わずに、低コストで結晶粒成長性を向上させることが出来るとの知見を得て、本発明を完成するに至った。
上記知見に基づき完成された本発明の要旨は、以下の通りである。
[1]質量%で、C:0%超〜0.0050%以下、Si:2.5%〜4.0%、Mn:1.0%〜3.3%、P:0%超〜0.030%以下、S:0.0010%〜0.0100%以下、Sol.Al:0%超〜0.0030%以下、N:0%超〜0.0040%以下、Ti:0.0005%〜0.0100%を含有し、Si−0.5×Mn:2.0%以上であり、残部が、Fe及び不純物からなり、鋼中に、直径1μm〜3μmの介在物が、1mmあたり1〜100個存在し、前記直径1μm〜3μmの介在物のうち、SiOとMnSとが結合した複合介在物の個数割合が、40%以上である、無方向性電磁鋼板。
[2]残部のFeの一部に換えて、更に、Sn:0.005%〜0.10%、Sb:0.005%〜0.10%の少なくとも1種を含有する、[1]に記載の無方向性電磁鋼板。
以上説明したように本発明によれば、製造コストの増加を抑制しつつ、冷間圧延性及び鉄損により優れた無方向性電磁鋼板を提供することが可能となる。
本発明の実施形態に係る無方向性電磁鋼板の構造を模式的に示した説明図である。 同実施形態に係る無方向性電磁鋼板の地鉄中の複合介在物について説明するための説明図である。 同実施形態に係る無方向性電磁鋼板の地鉄中の複合介在物について説明するための説明図である。 同実施形態に係る無方向性電磁鋼板の製造方法の流れの一例を示した流れ図である。
以下に添付図面を参照しながら、本発明の好適な実施の形態について詳細に説明する。なお、本明細書及び図面において、実質的に同一の機能構成を有する構成要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略する。
(無方向性電磁鋼板について)
無方向性電磁鋼板においては、先だって説明したように、鉄損を低減するために、一般的には、鋼中に合金元素を含有させて鋼板の電気抵抗を上げ、渦電流損を低減させることが行われる。ここで、同一の含有量(質量%)で合金元素を添加することを考えた場合に、Siが、電気抵抗を上昇させやすく、鉄損の低減に有効な元素である。しかしながら、本発明者らによる検討の結果、Siの含有量が4質量%を超える場合には、無方向性電磁鋼板の冷間圧延性が著しく低下することが明らかとなった。
また、Alも、Siと同様に電気抵抗の上昇効果を示す合金元素であるが、SiとともにAlを大量に含有した場合、冷間圧延性の低下が生じることも明らかとなった。また、Alの含有量が2質量%を超えてしまうと、ヒステリシス損が劣化して磁気特性が低下してしまう傾向にあり、合金元素としてAlを大量に含有させることは、困難である。そのため、無方向性電磁鋼板において磁気特性の低下を抑制するためには、Alの含有量は、少なくすることが好ましいことが明らかとなった。
そこで、本発明者らは、粒成長性の低下を抑制しながら、冷間圧延性と磁気特性とを共に向上させることが可能な方法について鋭意検討を行った結果、Alの含有量を所定の値以下とし、冷間圧延性の低下が少ないMnをSiとともに複合添加し、更に、鋼中に存在する比較的粗大な介在物の中で、SiOとMnSとが結合した複合介在物の割合を一定以上とすることに想到したのである。
以下では、図1〜図2Bを参照しながら、上記のような知見に基づき完成された本発明の実施形態に係る無方向性電磁鋼板について、詳細に説明する。図1は、本発明の実施形態に係る無方向性電磁鋼板の構造を模式的に示した説明図である。図2A及び図2Bは、本実施形態に係る無方向性電磁鋼板の地鉄中の複合介在物について説明するための説明図である。
本実施形態に係る無方向性電磁鋼板10は、図1に模式的に示したように、所定の化学成分を含有している地鉄11を有している。また、本実施形態に係る無方向性電磁鋼板は、地鉄11の表面に、絶縁被膜13を更に有していることが好ましい。
<地鉄11の化学成分及び組織について>
以下では、まず、本実施形態に係る無方向性電磁鋼板10の地鉄11について、詳細に説明する。
本実施形態に係る無方向性電磁鋼板10の地鉄11は、質量%で、C:0%超〜0.0050%以下、Si:2.5%〜4.0%、Mn:1.0%〜3.3%、P:0%超〜0.030%以下、S:0.0010%〜0.0100%以下、Sol.Al:0%超〜0.0030%以下、N:0%超〜0.0040%以下、Ti:0.005%〜0.0100%を含有し、Si−0.5×Mn:2.0%以上であり、残部がFe及び不純物からなり、鋼中に、直径1μm〜3μmの介在物が、1mmあたり1〜100個存在し、直径1μm〜3μmの介在物のうち、SiOとMnSとが結合した複合介在物の個数割合が40%以上である。
また、本実施形態に係る無方向性電磁鋼板10の地鉄11は、残部のFeの一部に換えて、更に、Sn:0.005%〜0.10%、Sb:0.005%〜0.10%から選ばれる少なくとも1種を含有することが好ましい。
以下では、まず、本実施形態に係る地鉄11の化学組成が上記のように規定される理由について、詳細に説明する。なお、以下では、特に断りの無い限り、「%」は「質量%」を表すものとする。
[C:0%超〜0.0050%以下]
C(炭素)は、不可避的に含有される(すなわち、含有量が0%超となる)元素であるとともに、鉄損劣化を引き起こす元素である。Cの含有量が0.0050%を超える場合には、無方向性電磁鋼板において鉄損劣化が生じ、良好な磁気特性を得ることができない。従って、本実施形態に係る無方向性電磁鋼板では、Cの含有量を、0.0050%以下とする。Cの含有量は、好ましくは、0.0040%以下であり、更に好ましくは、0.0030%以下である。Cの含有量は、少なければ少ないほど良いが、Cの含有量を0.0005%よりも低減させようとすると、いたずらにコストアップを招くのみである。従って、Cの含有量は、好ましくは、0.0005%以上である。
[Si:2.5%〜4.0%]
Si(ケイ素)は、鋼の電気抵抗を上昇させて渦電流損を低減させ、鉄損を改善する元素である。また、Siは、固溶強化能が大きいため、無方向性電磁鋼板の高強度化にも有効な元素である。高強度化は、モータの高速回転時の変形抑制及び疲労破壊抑制といった観点から重要である。かかる効果を十分に発揮させるためには、2.5%以上のSiを含有させることが必要である。一方、Siの含有量が4.0%を超える場合には、加工性が著しく劣化し、冷間圧延を実施することが困難となる(すなわち、冷間圧延性が低下する。)。従って、Siの含有量は、4.0%以下とする。Siの含有量は、好ましくは、2.8%以上3.9%以下であり、更に好ましくは、3.0%以上3.8%以下である。
[Mn:1.0%〜3.3%]
Mn(マンガン)は、鋼の加工性を劣化させずに電気抵抗を上昇させることで渦電流損を低減し、鉄損を改善するために有効な元素である。また、Mnは、Siよりも固溶強化能は小さいものの、加工性を劣化させることなく、高強度化に寄与できる元素である。かかる効果を十分に発揮させるためには、1.0%以上のMnを含有させることが必要である。一方、Mnの含有量が3.3%を超える場合には、磁束密度の低下が顕著となる。従って、Mnの含有量は、3.3%以下とする。Mnの含有量は、好ましくは、1.2%以上3.0%以下であり、更に好ましくは、1.4%以上2.8%以下である。
[P:0%超〜0.030%以下]
P(リン)は、不可避的に含有される(すなわち、含有量が0%超となる)元素であるとともに、本実施形態の対象となるSi及びMnの含有量が多い高合金鋼において、著しく加工性を劣化させて冷間圧延を困難にする元素である。かかる加工性の劣化は、Pの含有量が0.030%を超えた場合に顕著となる。従って、Pの含有量は、0.030%以下とする。Pの含有量は、好ましくは、0.001%以上0.020%以下であり、更に好ましくは、0.001%以上0.010%以下である。
[S:0.0010%〜0.0100%]
S(硫黄)は、不可避的に含有される元素であるとともに、MnSの微細析出物を形成することで鉄損を増加させ、無方向性電磁鋼板の磁気特性を劣化させる元素である。しかしながら、本実施形態では、鋼中に存在する比較的粗大な介在物(すなわち、直径が1μm〜3μmの介在物)の中で、SiOとMnSとの複合介在物の比率(個数割合)を40%以上とすることにより、Sの含有量が高くとも微細MnSの析出量を低減して、脱硫コストの低減が可能である。従って、コスト低減の観点から、Sの含有量は0.0010%以上とする。Sの含有量は、好ましくは、0.0015%以上であり、更に好ましくは、0.0020%以上である。一方、Sの含有量が0.0100%を超えると、鋼中におけるMnSの体積分率が多くなりすぎて、磁気特性が劣化する。そのため、Sの含有量は、0.0100%以下とする。Sの含有量は、好ましくは、0.0080%以下であり、更に好ましくは0.0060%以下である。
[Sol.Al:0%超〜0.0030%以下]
Al(アルミニウム)は、鋼中に固溶されると、無方向性電磁鋼板の電気抵抗を上昇させることで渦電流損を低減し、高周波鉄損を改善する元素である。しかしながら、本実施形態では、Alよりも加工性を劣化させずに電気抵抗を上昇させる元素であるMnを積極的に含有させるため、Alを積極的に含有させることはしない。Alの含有量が0.0030%を超える場合には、鋼中に微細な窒化物が析出して熱延板焼鈍工程や仕上焼鈍工程での結晶粒成長を阻害し、磁気特性を劣化させる。従って、Alの含有量は、0%超0.0030%以下とする。一方、Alの含有量を0.0001%よりも低減させようとすると、いたずらにコストアップを招くのみである。従って、Alの含有量は、好ましくは、0.0001%以上0.0025%以下であり、更に好ましくは、0.0003%以上0.0020%以下である。
[N:0%超〜0.0040%以下]
N(窒素)は、不可避的に含有される(すなわち、含有量が0%超となる)元素であるとともに、微細な窒化物を形成して鉄損を増加させ、無方向性電磁鋼板の磁気特性を劣化させる元素である。そのため、Nの含有量は、0.0040%以下とする必要がある。Nの含有量は、少なければ少ないほど良いが、Nの含有量を0.0001%よりも低減させようとすると、いたずらにコストアップを招くのみである。従って、Nの含有量は、0.0001%以上とすることが好ましい。Nの含有量は、好ましくは、0.0001%以上0.0030%以下であり、更に好ましくは、0.0003%以上0.0020%以下である。
[Ti:0.0005%〜0.0100%]
Ti(チタン)は、上記MnやSiの原材料中に不可避的に含有される元素であり、地鉄中のC、N、Oなどと結合してTiN、TiC、Ti酸化物などの微小析出物を形成し、焼鈍中の結晶粒の成長を阻害して磁気特性を劣化させる元素である。そのため、従来、地鉄中のTi含有量を極力少なくするために、高純度化されたMnやSiの原材料を利用することが行われてきた。しかしながら、本発明者が検討を行った結果、以下で説明するSiOとMnSの結合した複合介在物が存在する場合には、Tiが含有されていたとしても、焼鈍中の結晶粒の成長を阻害せずに、粒成長性を保持可能であることが明らかとなった。その原因はまだ明確ではないが、生成したTiN、TiC、Ti酸化物等の微小析出物がSiOとMnSとの複合介在物と結合することで粗大化されて、より大きな析出物が生成されたためと考えられる。微小析出物と複合介在物とが結合した、より大きな析出物が生成されることで、原材料の過度の高純度化を図らなくともよくなる。その結果、本実施形態では、より高性能の無方向性電磁鋼板をより低コストで製造することが可能となる。
本実施形態に係る無方向性電磁鋼板では、SiOとMnSとの複合介在物を鋼中に存在させることにより、原材料からTiが混入したとしても結晶粒成長性が確保できる。そのため、コストの観点から、Ti含有量は、0.0005%以上とする。しかしながら、Tiの含有量が0.0100%を超える場合には、Tiによる悪影響を防止することが困難となる。従って、Tiの含有量は、0.0100%以下とする。SiOとMnSとの複合介在物を鋼中に存在させることによる粒成長性の改善効果をより確実に発現させ、かつ、低コスト化を図るために、Tiの含有量は、好ましくは、0.0008%以上0.0080%以下であり、より好ましくは、0.0010%以上0.0060%以下である。
[Si−0.5×Mn:2.0%以上]
合金元素であるSiは、フェライト相促進元素(いわゆる、フェライトフォーマー元素)である一方で、合金元素であるMnは、オーステナイト相促進元素(いわゆる、オーステナイトフォーマー元素)である。従って、Si及びMnそれぞれの含有量に応じて、無方向性電磁鋼板の金属組織は変化し、無方向性電磁鋼板は、変態点を有する成分系となったり、変態点を有しない成分系となったりする。本実施形態に係る無方向性電磁鋼板では、変態点を有しない成分系を実現して、地鉄における平均結晶粒径を適度に大きくすることが求められる。そのため、変態点を有しない成分系となるように、Si及びMnのそれぞれの含有量は、所定の関係性を満たすことが求められる。
ここで、経験的に、Mnによるオーステナイト相促進能(換言すれば、フェライト相促進能を打ち消す効果)は、Siによるフェライト相促進能を1としたときに、0.5程度と考えることができる。そのため、本実施形態におけるフェライト相促進能の等量は、Siの含有量を基準として、「Si−0.5×Mn」として表すことができる。
Si−0.5×Mnの値が2.0%未満である場合には、無方向性電磁鋼板は、変態点を有する成分系となってしまう。その結果、製造途中の高温処理時において鋼板の金属組織がフェライト単相ではなくなり、無方向性電磁鋼板の磁気特性が低下する懸念があるため、好ましくない。従って、Si−0.5×Mnの値は、2.0%以上とする。一方、Si−0.5×Mnの上限値は、特に規定するものではないが、本実施形態に係る無方向性電磁鋼板のSi含有量及びMn含有量の範囲から、Si−0.5×Mnの値は、3.5%を超えることはあり得ない。従って、Si−0.5×Mnの上限値は、実質的には、3.5%となる。Si−0.5×Mnの値は、好ましくは、2.0%以上3.4%以下であり、更に好ましくは、2.1%以上3.4%以下である。
[Sn:0.005%〜0.10%]
[Sb:0.005%〜0.10%]
Sn(スズ)及びSb(アンチモン)は、表面に偏析し焼鈍中の酸化や窒化を抑制することで、低い鉄損を確保するのに有用な任意添加元素である。従って、本実施形態に係る無方向性電磁鋼板では、かかる効果を得るために、残部のFeの一部に換えて、Sn又はSbの少なくとも何れか一方を、任意添加元素として地鉄中に含有させてもよい。かかる効果を十分に発揮させるためには、Sn又はSbの含有量を、それぞれ0.005%以上とすることが好ましい。一方、Sn又はSbの含有量がそれぞれ0.10%を超える場合には、地鉄の延性が低下して冷間圧延が困難となる可能性がある。従って、Sn又はSbの含有量は、それぞれ0.10%以下とすることが好ましい。Sn又はSbを地鉄中に含有させる場合に、Sn又はSbの含有量は、より好ましくは、それぞれ0.01%以上0.05%以下である。
なお、本実施形態に係る無方向性電磁鋼板において、上述した元素以外のNi(ニッケル)、Cr(クロム)、Cu(銅)、及び、Mo(モリブデン)等の元素の含有量に関しては、特に規定されるものではない。本実施形態に係る無方向性電磁鋼板では、これらの元素を0.5%以下で含有しても、本発明の効果に特に影響はない。また、Ca(カルシウム)やMg(マグネシウム)を0.002%以下の範囲で含有しても、本発明の効果に特に影響はなく、希土類元素(Rare Earth Metal:REM)を0.004%以下の範囲で含有しても、本発明の効果に特に影響はない。
また、上記の元素の他に、Pb(鉛)、Bi(ビスマス)、V(バナジウム)、As(ヒ素)、B(ホウ素)などの元素が0.0001%〜0.0050%の範囲で含まれていても、本発明の効果を損なうものではない。
以上、本実施形態に係る無方向性電磁鋼板における地鉄の化学成分について、詳細に説明した。
[SiOとMnSとが結合した複合介在物について]
本実施形態に係る無方向性電磁鋼板10において、地鉄11中には、直径1μm〜3μmの介在物が、1mmあたり1〜100個存在する。直径が1μm〜3μmの範囲内である介在物は、無方向性電磁鋼板10の地鉄11中において、インヒビターとなりにくく、本実施形態に係る無方向性電磁鋼板10において、結晶粒成長性に与える悪影響は少ない。地鉄11中における、直径1μm〜3μmの介在物が、1mmあたりに1つも存在しない場合には、結晶粒成長性を保持することが困難となるため、好ましくない。一方、地鉄11中における、直径1μm〜3μmの介在物が、1mmあたり100個を超えて存在する場合には、介在物そのものの磁気特性に与える悪影響が顕著となるため、好ましくない。本実施形態に係る無方向性電磁鋼板10において、地鉄11中における直径1μm〜3μmの介在物の個数は、好ましくは、1mmあたり5〜70個である。
また、上記のような直径1μm〜3μmの介在物中には、図2Aに模式的に示したような、SiOとMnSとが結合した複合介在物が存在する。かかる複合介在物は、SiO中に、MnSがあたかもオストワルド成長のように析出していくことで形成される複合析出物である。また、地鉄11中に存在するMnSについても、地鉄11に対して熱処理を施すほどSiOと結合したMnSへと引き寄せられて、SiOと結合したMnSは成長していく。その結果、SiOとMnSとが結合した複合介在物は、図2Aに示したように、SiO中にMnSが内包されているような形状のものの他に、図2Bに示したように、SiOの外部にMnSの部位が突出したような形状を有するものが存在しうる。
本実施形態に係る無方向性電磁鋼板10において、地鉄11中に存在する、上記のような直径1μm〜3μmの介在物の中での、SiOとMnSとが結合した複合介在物の個数割合は、40%以上とする。かかる複合介在物の個数割合が40%以上となることで、微細析出物を低減したり、焼鈍時の結晶粒成長性を改善したりすることが可能となり、鉄損を低減させることが可能となる。かかる効果が発現する理由は、未だ明確ではないが、MnSが、磁気特性や結晶粒成長性に大きな影響を与えない比較的粗大なSiO(すなわち、直径1μm〜3μmであるSiO)と結合した複合介在物の比率が高くなることで、磁気特性や結晶粒成長性に悪影響を及ぼす地鉄中の微細なMnSの析出量が減少するためと考えられる。更に、本実施形態に係るSiOとMnSとの複合介在物を詳細に検証したところ、かかる複合介在物には、Ti化合物も複合析出し易く、地鉄11中において、微細なTi化合物も減少すると考えられる。
以上説明したような、磁気特性及び結晶粒成長性へのMnS及びTi化合物の悪影響をより適切に抑制するために、地鉄11中の直径1μm〜3μmの介在物におけるSiOとMnSとが結合した複合介在物の個数割合は、50%以上であることが好ましい。地鉄11中の直径1μm〜3μmの介在物におけるSiOとMnSとが結合した複合介在物の個数割合は、より好ましくは、60%以上である。
ここで、地鉄11中の直径1μm〜3μmの介在物におけるSiOとMnSとが結合した複合介在物の個数割合は、本実施形態に係る無方向性電磁鋼板10を製造する際の製鋼工程において、用いる脱酸剤の種類、及び、複数の脱酸剤を用いる際の配合比率を適切に調整することで、制御可能である。例えば、製鋼工程において、脱酸剤としてAlは極力使用せずに、Siを主体とした脱酸剤を用いることで、SiOとMnSとが結合した複合介在物の個数割合をより好ましく制御することができる。
なお、地鉄11中に存在する介在物の検証は、以下の測定法を利用して実施することができる。
すなわち、製品板(仕上焼鈍板)の圧延方向に平行な断面(L断面)において、公知の方法に則して、走査型電子顕微鏡(SEM)により形態観察と寸法測定を行い、SEMに付帯したエネルギー分散型X線分析装置(EDS)にて組成分析することで、地鉄11中に存在する介在物を評価することができる。
寸法測定に関しては、SEM観察した介在物の面積から円相当径に換算した値を、介在物の直径とすればよい。
また、地鉄11中に存在する直径1μm〜3μmの介在物の所定面積あたりの個数は、以下のようにして測定することができる。すなわち、上記SEM観察の際に、上記のL断面における合計で1mm以上の広さを有する任意の視野について、直径が1μm〜3μmである介在物の個数をカウントし、1mmあたりの直径1μm〜3μmの介在物の個数とすればよい。
SiOとMnSとが結合した複合介在物の判定は、直径が1μm〜3μmである介在物のEDS分析において、O、Mn、Siの各元素の含有量がそれぞれ10質量%以上であり、Sの含有量が5質量%以上であり、かつ、これら4元素の合計含有量が70質量%以上である介在物を、SiOとMnSとが結合した複合介在物とすればよい。介在物の組成分析は、複数に分割した各領域のEDS分析値を面積比率で加重平均した値を用いることにより、介在物中の位置により組成が変化する複合介在物であっても、正確に決定することができる。
<地鉄11の板厚について>
本実施形態に係る無方向性電磁鋼板10における地鉄11の板厚(図1における厚みt)は、渦電流損を低減させて鉄損を低減するために、0.50mm以下とすることが好ましい。一方、地鉄11の板厚tが0.10mm未満である場合には、板厚が薄いために焼鈍ラインの通板が困難となる可能性がある。従って、無方向性電磁鋼板10における地鉄11の板厚tは、0.10mm以上0.50mm以下とすることが好ましい。無方向性電磁鋼板10における地鉄11の板厚tは、より好ましくは、0.15mm以上0.35mm以下である。
以上、本実施形態に係る無方向性電磁鋼板10の地鉄11について、詳細に説明した。
<絶縁被膜13について>
続いて、本実施形態に係る無方向性電磁鋼板10が有していることが好ましい絶縁被膜13について、簡単に説明する。
無方向性電磁鋼板の磁気特性を向上させるためには、鉄損を低減することが重要であるが、かかる鉄損は、渦電流損とヒステリシス損とから構成されている。地鉄11の表面に絶縁被膜13を設けることで、鉄心として積層された電磁鋼板間の導通を抑制して鉄心の渦電流損を低減することが可能となり、無方向性電磁鋼板10の実用的な磁気特性を更に向上させることが可能となる。
ここで、本実施形態に係る絶縁被膜13は、無方向性電磁鋼板の絶縁被膜として用いられるものであれば、特に限定されるものではなく、公知の絶縁被膜を用いることが可能である。このような絶縁被膜として、例えば、無機物を主体とし、更に有機物を含んだ複合絶縁被膜を挙げることができる。ここで、複合絶縁被膜とは、例えば、クロム酸金属塩、リン酸金属塩又はコロイダルシリカ、Zr化合物、Ti化合物等の無機物の少なくとも何れかを主体とし、微細な有機樹脂の粒子が分散している絶縁被膜である。特に、近年ニーズの高まっている製造時の環境負荷低減の観点からは、リン酸金属塩やZrあるいはTiのカップリング剤、又は、これらの炭酸塩やアンモニウム塩を出発物質として用いた絶縁被膜が好ましく用いられる。
ここで、上記のような絶縁被膜13の付着量は、特に限定するものではないが、例えば、片面あたり0.1g/m以上2.0g/m以下程度とすることが好ましく、片面あたり0.2g/m以上1.8g/m以下とすることが更に好ましい。かかる付着量となるように絶縁被膜13を形成することで、優れた均一性を保持することが可能となる。なお、かかる絶縁被膜13の付着量を、事後的に測定する場合には、公知の各種測定法を利用することが可能である。なお、絶縁被膜13の付着量は、例えば、絶縁被膜13を形成した無方向性電磁鋼板10を熱アルカリ溶液に浸漬することで絶縁被膜13のみを除去し、絶縁被膜13の除去前後の質量差から算出することが可能である。
<無方向性電磁鋼板の磁気特性の測定方法について>
本実施形態に係る無方向性電磁鋼板10は、上記のような構造を有することで、優れた磁気特性を示すものとなる。ここで、本実施形態に係る無方向性電磁鋼板10の示す各種の磁気特性は、JIS C2550に規定されたエプスタイン法や、JIS C2556に規定された単板磁気特性測定法(Single Sheet Tester:SST)に則して、測定することが可能である。
以上、図1を参照しながら、本実施形態に係る無方向性電磁鋼板10について、詳細に説明した。
(無方向性電磁鋼板の製造方法について)
本実施形態に係る無方向性電磁鋼板10の製造方法は、以下の製法方法に限定されるものではないが、図3を参照しながら、簡単に説明する。図3は、本実施形態に係る無方向性電磁鋼板の製造方法の流れの一例を示した流れ図である。
本実施形態に係る無方向性電磁鋼板10の製造方法では、以上説明したような所定の化学成分を有する鋼塊を製鋼工程において製造し、熱間圧延、熱延板焼鈍、酸洗、冷間圧延、仕上焼鈍を順に実施する。また、絶縁被膜13を地鉄11の表面に形成する場合には、上記仕上焼鈍の後に絶縁被膜の形成が行われる。以下、本実施形態に係る無方向性電磁鋼板10の製造方法で実施される各工程について、詳細に説明する。
<製鋼工程>
本実施形態に係る無方向性電磁鋼板の製造方法では、まず、上記化学組成を有する鋼塊(スラブ)を製鋼工程で製造する(ステップS101)。ここで、転炉での一次精錬の後の二次精錬工程において、脱酸剤としてAlを使用せずに、Siを主体とした脱酸を実施し、その後、合金元素を添加して所定の組成に調整することが好ましい。脱酸剤として、Siを主に使用することにより、SiOとMnSとが結合した複合介在物を、所望の個数割合で形成させることが可能となる。
なお、Alを主体とした脱酸を行うと、酸化物に占めるAlの比率が高まり、MnSと結合した複合介在物を生じやすいSiOの比率が少なくなるため、好ましくない。
上記のような脱酸剤を用いた脱酸が終了した後で、合金元素を添加して所定の組成に調整する。調整された溶鋼は、連続鋳造により鋼塊とする。
ここで、MnSと結合した複合介在物を生じやすいSiOを、より確実に所望の比率で生成させるために、製鋼工程終了時における酸素(O)の含有量を、0.0005質量%以上とすることが好ましい。製鋼工程終了時におけるOの含有量は、0.0010質量%以上であることがより好ましく、0.0015質量%以上であることが更に好ましい。一方、製鋼工程終了時におけるOの含有量が0.0100質量%を超える場合には、鋼塊中における直径1μm〜3μmの介在物の生成量が多くなりすぎて、磁気特性が低下する可能性がある。従って、製鋼工程終了時におけるOの含有量は、0.0100質量%以下であることが好ましい。製鋼工程終了時におけるOの含有量は、0.0090質量%以下であることがより好ましく、0.0080質量%以下であることが更に好ましい。
<熱間圧延工程>
次に、本実施形態に係る無方向性電磁鋼板の製造方法では、上記の化学組成を有する鋼塊(スラブ)を加熱し、加熱された鋼塊について熱間圧延を行って、熱延板を得る(ステップS103)。ここで、熱間圧延に供する際の鋼塊の加熱温度については、特に規定するものではないが、例えば、1050℃〜1300℃とすることが好ましい。また、熱間圧延後の熱延板の板厚についても、特に規定するものではないが、地鉄の最終板厚を考慮して、例えば、1.4mm〜3.5mm程度とすることが好ましい。なお、かかる熱間圧延工程は、鋼板の温度が700℃〜1050℃の範囲にあるうちに終了することが好ましい。なお、鋼塊の加熱温度は、より好ましくは、1050℃〜1250℃であり、熱間圧延の終了温度は、より好ましくは、750℃〜1000℃である。
<熱延板焼鈍工程>
上記熱間圧延の後には、熱延板焼鈍が実施される(ステップS105)。ここで、熱延板焼鈍の均熱条件については、特に規定するものではないが、例えば、連続焼鈍の場合には、熱延鋼板に対して、900℃〜1150℃で、10秒〜10分の均熱による焼鈍が好ましい。より好ましくは、950℃〜1100℃で10秒〜10分の均熱である。箱焼鈍の場合には、熱延鋼板に対して、700℃〜950℃で、30分〜24時間の均熱による焼鈍が好ましい。より好ましくは、750℃〜900℃で30分〜24時間の均熱である。なお、熱延板焼鈍工程を実施した場合と比較して磁気特性は劣ることとなるが、コスト削減のために、かかる熱延板焼鈍工程を省略しても良い。
<酸洗工程>
上記熱延板焼鈍の後には、酸洗が実施される(ステップS107)。これにより、熱延板焼鈍により鋼板の表面に形成された、酸化物を主体とするスケール層が除去される。なお、熱延板焼鈍が箱焼鈍である場合、脱スケール性の観点から、酸洗工程は、熱延板焼鈍前に実施することが好ましい。
<冷間圧延工程>
上記酸洗の後(熱延板焼鈍が箱焼鈍で実施される場合は、熱延板焼鈍工程の後となる場合もある。)には、冷間圧延が実施される(ステップS109)。かかる冷間圧延では、地鉄の最終板厚が0.10mm以上0.50mm以下となるような圧下率で、スケールの除去された酸洗板が圧延される。
<仕上焼鈍工程>
上記冷間圧延の後には、仕上焼鈍が実施される(ステップS111)。本実施形態に係る無方向性電磁鋼板の製造方法では、かかる仕上焼鈍は、連続焼鈍炉を使用する。ここで、仕上焼鈍条件については、特に規定するものではないが、例えば、均熱温度を、700℃〜1100℃とし、均熱時間を、1秒〜300秒とし、雰囲気を、Hの割合が10体積%〜100体積%であるH及びNの混合雰囲気(すなわち、H+N=100体積%)とし、雰囲気の露点を20℃以下とすることが好ましい。均熱温度は、より好ましくは、750℃〜1050℃であり、雰囲気中のHの割合は、より好ましくは、15体積%〜90体積%であり、雰囲気の露点は、より好ましくは、10℃以下であり、更に好ましくは、0℃以下である。
上記のような各工程を経ることで、本実施形態に係る無方向性電磁鋼板10を製造することができる。
<絶縁被膜形成工程>
上記仕上焼鈍の後には、必要に応じて、絶縁被膜の形成工程が実施される(ステップS113)。ここで、絶縁被膜の形成工程については、特に限定されるものではなく、上記のような公知の絶縁被膜処理液を用いて、公知の方法により処理液の塗布及び乾燥を行えばよい。
なお、絶縁被膜が形成される地鉄の表面は、処理液を塗布する前に、アルカリなどによる脱脂処理や、塩酸、硫酸、リン酸などによる酸洗処理など、任意の前処理を施してもよいし、これら前処理を施さずに仕上焼鈍後のままの表面であってもよい。
以上、図3を参照しながら、本実施形態に係る無方向性電磁鋼板の製造方法について、詳細に説明した。
以下では、実施例及び比較例を示しながら、本発明に係る無方向性電磁鋼板について、具体的に説明する。なお、以下に示す実施例は、あくまでも本発明に係る無方向性電磁鋼板の一例であって、本発明に係る無方向性電磁鋼板が下記の例に限定されるものではない。
(実験例1)
まず、以下の表1に示す組成を含有し、残部がFe及び不純物からなる鋼スラブを製造した。ここで、製鋼工程において、試験番号1、8は、脱酸剤としてAlを使用し、脱酸後に合金を添加して組成を調整した。また、試験番号2、3、4、5、6、7、9、10、11、12、13、14、及び、15は、脱酸剤としてSiを使用し、脱酸後に合金を添加して組成の調整を行った。また、表1には、製鋼工程終了時におけるOの含有量をあわせて示した。ここで、表1に示した各化学組成について、CとSは、燃焼−赤外吸収法により測定したものであり、それ以外の元素は、スパーク放電発光分析法により測定したものである。
得られた鋼スラブを、1150℃に加熱後、熱間圧延にて1.9mm厚に圧延した。続いて、熱延板を1000℃で50秒の連続焼鈍式の熱延板焼鈍した後、冷間圧延で0.25mm厚として、1000℃で15秒の仕上焼鈍を行い、更にリン酸金属塩を主体とし、アクリル樹脂のエマルジョンを含む溶液を鋼板両面に塗布及び焼き付けし、複合絶縁被膜を形成することで無方向性電磁鋼板を製造した。ここで、上記の仕上焼鈍は、全て、30%H+70%N雰囲気とし、露点は−30℃で実施した。
その後、製造したそれぞれの無方向性電磁鋼板について、L方向断面にて、日本FEI社製のタングステン熱電子銃SEMと付帯したEDSを用い、加速電圧20keV、ワークディスタンス17mmの条件で介在物の直径及び組成を測定した。得られた測定結果から、それぞれの無方向性電磁鋼板について、直径1μm〜3μmの介在物の個数、及び、複合介在物の個数割合を特定した。また、製造したそれぞれの無方向性電磁鋼板について、JIS C2550に規定されたエプスタイン法により、磁束密度B50及び鉄損W10/400を評価した。更に、製造したそれぞれの無方向性電磁鋼板の冷間圧延性について、以下のような検証を行った。具体的な検証方法及び評価基準は、以下の通りである。得られた結果を、以下の表1にまとめて示した。
なお、以下の表1において、「製鋼工程」の欄の「O含有量」という項目は、製鋼工程終了時における溶鋼中のOの含有量を意味する。また、以下の表1における「介在物の個数」の項目は、mmあたりの直径1μm〜3μmの介在物の個数を意味する。
また、以下の表1に示した各鋼スラブについて、冷間圧延時に破断が生じたか否か(すなわち、冷間圧延を施すことができたか否か)に基づき、冷間圧延性を評価した。破断が生じることなく冷間圧延を施すことができたものは、冷間圧延性を合格と評価し、冷間圧延中に破断が生じたものは、冷間圧延性を不合格と評価した。以下の表1において、冷間圧延性が合格のものは「A」と表記し、不合格のものは「B」と表記した。
Figure 0006900889
鋼板の化学組成と、1mmあたりの直径1μm〜3μmの介在物の個数と、SiOとMnSとが結合した複合介在物の個数割合と、が本発明の範囲内である試験番号2、3、4、7、10、11、12及び13は、鉄損と磁束密度が共に優れ、かつ、優れた冷間圧延性を有していることがわかった。
また、試験番号1及び試験番号2の結果を比較すると、鋼板の化学組成はほぼ同じで本発明の範囲にあることがわかる。しかしながら、SiOとMnSとが結合した複合介在物の個数割合が本発明の範囲から低めに外れた試験番号1は、鉄損、磁束密度ともに劣っていることがわかった。同様に、鋼板の化学組成がほぼ同じ試験番号7及び試験番号8の結果を比較すると、SiOとMnSとが結合した複合介在物の個数割合が本発明範囲から低めに外れた試験番号8は、試験番号7に比べて鉄損が劣っていることがわかった。
Pの含有量が本発明の範囲から高めに外れた試験番号5、6と、Siの含有量が本発明の範囲から高めに外れた試験番号15は、冷間圧延時に破断したために、磁気特性と、介在物に関する各種測定を実施できなかった。
sol.Alの含有量が高めに外れた試験番号9は、sol.Al以外の化学組成がほぼ同じで本発明の範囲内の化学組成を有しており、かつ、SiOとMnSとが結合した複合介在物の個数割合が本発明の範囲内である試験番号7と比較して、鉄損が劣っていることがわかった。
また、Si−0.5×Mnの含有量が本発明の範囲から低めに外れた試験番号14は、鉄損と磁束密度とが劣っていることがわかった。
(実験例2)
まず、以下の表2に示す組成を含有し、残部がFe及び不純物からなる鋼スラブを製造した。ここで、製鋼工程において、試験番号16、17は、脱酸剤としてSiを使用し、脱酸後に合金を添加して組成の調整を行った。また、表2には、製鋼工程終了時におけるOの含有量をあわせて示した。ここで、表2に示した各化学組成について、CとSは、燃焼−赤外吸収法により測定したものであり、それ以外の元素は、スパーク放電発光分析法により測定したものである。
得られた鋼スラブを、1130℃に加熱後、熱間圧延にて2.0mm厚に圧延した。続いて、熱延板を1050℃で30秒の連続焼鈍式の熱延板焼鈍した後、冷間圧延で0.25mm厚として、800℃で15秒の仕上焼鈍を行い、更にリン酸金属塩を主体とし、アクリル樹脂のエマルジョンを含む溶液を鋼板両面に塗布及び焼き付けし、複合絶縁被膜を形成することで無方向性電磁鋼板を製造した。ここで、上記の仕上焼鈍は、全て、20%H+80%N雰囲気とし、露点は−20℃で実施した。続いて、JIS C2550に規定された磁気測定用試験片をせん断加工にて作成し、800℃で2hrの歪取焼鈍を行った。
歪取焼鈍後の磁気特性測定用試験片について、JIS C2550に規定されたエプスタイン法により、磁束密度B50及び鉄損W10/400を評価した。また、製造した無方向性電磁鋼板のL方向断面にて、日本FEI社製のタングステン熱電子銃SEMと付帯したEDSを用い、加速電圧20keV、ワークディスタンス17mmの条件で介在物の直径と組成を測定した。得られた測定結果から、それぞれの無方向性電磁鋼板について、直径1μm〜3μmの介在物の個数、及び、複合介在物の個数割合を特定した。更に、製造したそれぞれの無方向性電磁鋼板の冷間圧延性について、上記実験例1と同様にして評価を行った。得られた結果を、以下の表2にまとめて示した。
なお、以下の表2において、「製鋼工程」の欄の「O含有量」という項目は、製鋼工程終了時における溶鋼中のO含有量を意味する。また、以下の表2における「介在物の個数」の項目は、1mmあたりの直径1μm〜3μmの介在物の個数を意味する。
Figure 0006900889
まず、歪取り焼鈍を実施した実験例2の磁気特性は、歪取り焼鈍を実施していない実験例1の磁気特性と比較して、全般的に優れていることがわかる。また、鋼板の化学組成と、SiOとMnSとが結合した複合介在物の個数割合が本発明の範囲である試験番号16、17は、鉄損と磁束密度がともに優れていることがわかった。
(実験例3)
下の表3に示す組成を含有し、残部がFe及び不純物からなる鋼スラブを製造した。ここで、製鋼工程において、試験番号20は、脱酸剤としてAlを使用し、脱酸後に合金を添加して組成を調整した。また、試験番号18、19は、脱酸剤としてSiを使用し、脱酸後に合金を添加して組成の調整を行った。また、表3には、製鋼工程終了時におけるOの含有量をあわせて示した。ここで、表3に示した各化学組成について、CとSは、燃焼−赤外吸収法により測定したものであり、それ以外の元素は、スパーク放電発光分析法により測定したものである。
得られた鋼スラブを、1100℃に加熱後、熱間圧延にて2.0mm厚に圧延した。続いて、熱延板を800℃で10時間の箱焼鈍式の熱延板焼鈍した後、冷間圧延で0.25mm厚として、820℃で5秒の仕上焼鈍を行い、更にリン酸金属塩を主体とし、アクリル樹脂のエマルジョンを含む溶液を鋼板両面に塗布及び焼き付けし、複合絶縁被膜を形成することで無方向性電磁鋼板を製造した。ここで、上記の仕上焼鈍は、全て、40%H+60%N雰囲気とし、露点は−40℃で実施した。続いて、JIS C2550に規定された磁気測定用試験片をせん断加工にて作成し、780℃で2hrの歪取焼鈍を行った。
歪取焼鈍後の磁気特性測定用試験片について、JIS C2550に規定されたエプスタイン法により、磁束密度B50及び鉄損W10/400を評価した。また、製造した無方向性電磁鋼板のL方向断面にて、日本FEI社製のタングステン熱電子銃SEMと付帯したEDSを用い、加速電圧20keV、ワークディスタンス17mmの条件で介在物の直径と組成を測定した。得られた測定結果から、それぞれの無方向性電磁鋼板について、直径1μm〜3μmの介在物の個数、及び、複合介在物の個数割合を特定した。更に、製造したそれぞれの無方向性電磁鋼板の冷間圧延性について、上記実験例1と同様にして評価を行った。得られた結果を、以下の表3にまとめて示した。
なお、以下の表3において、「製鋼工程」の欄の「O含有量」という項目は、製鋼工程終了時における溶鋼中のO含有量を意味する。また、以下の表3における「介在物の個数」の項目は、1mmあたりの直径1μm〜3μmの介在物の個数を意味する。
Figure 0006900889
鋼板の化学組成と、SiOとMnSとが結合した複合介在物の個数割合が本発明の範囲内である試験番号18、19は、鉄損と磁束密度がともに優れていることがわかった。一方、鋼板の化学組成は試験番号18、19とほぼ同じで本発明の範囲にあるが、SiOとMnSとが結合した複合介在物の個数割合が本発明の範囲から低めに外れた試験番号20は、鉄損及び磁束密度ともに劣っていることがわかった。
以上、添付図面を参照しながら本発明の好適な実施形態について詳細に説明したが、本発明はかかる例に限定されない。本発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者であれば、特許請求の範囲に記載された技術的思想の範疇内において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、これらについても、当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
10 無方向性電磁鋼板
11 地鉄
13 絶縁被膜

Claims (2)

  1. 質量%で、
    C:0%超〜0.0050%以下
    Si:2.5%〜4.0%
    Mn:1.0%〜3.3%
    P:0%超〜0.030%以下
    S:0.0010%〜0.0100%以下
    Sol.Al:0%超〜0.0030%以下
    N:0%超〜0.0040%以下
    Ti:0.0005%〜0.0100%
    を含有し、
    Si−0.5×Mn:2.0%以上
    であり、残部が、Fe及び不純物からなり、
    鋼中に、直径1μm〜3μmの介在物が、1mmあたり1〜100個存在し、
    前記直径1μm〜3μmの介在物のうち、SiOとMnSとが結合した複合介在物の個数割合が、40%以上である、無方向性電磁鋼板。
  2. 残部のFeの一部に換えて、更に、
    Sn:0.005%〜0.10%
    Sb:0.005%〜0.10%
    の少なくとも1種を含有する、請求項1に記載の無方向性電磁鋼板。
JP2017230471A 2017-11-30 2017-11-30 無方向性電磁鋼板 Active JP6900889B2 (ja)

Priority Applications (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2017230471A JP6900889B2 (ja) 2017-11-30 2017-11-30 無方向性電磁鋼板

Applications Claiming Priority (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2017230471A JP6900889B2 (ja) 2017-11-30 2017-11-30 無方向性電磁鋼板

Publications (2)

Publication Number Publication Date
JP2019099854A JP2019099854A (ja) 2019-06-24
JP6900889B2 true JP6900889B2 (ja) 2021-07-07

Family

ID=66976093

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP2017230471A Active JP6900889B2 (ja) 2017-11-30 2017-11-30 無方向性電磁鋼板

Country Status (1)

Country Link
JP (1) JP6900889B2 (ja)

Families Citing this family (3)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
BR112022016302A2 (pt) * 2020-04-02 2022-11-29 Nippon Steel Corp Chapa de aço elétrico não orientada, e, método para fabricar chapa de aço elétrico não orientada
KR20240098914A (ko) * 2022-12-21 2024-06-28 주식회사 포스코 무방향성 전기강판 및 그 제조방법
KR20240098931A (ko) * 2022-12-21 2024-06-28 주식회사 포스코 무방향성 전기강판 및 그 제조방법

Family Cites Families (7)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2000160306A (ja) * 1998-11-30 2000-06-13 Sumitomo Metal Ind Ltd 加工性に優れた無方向性電磁鋼板およびその製造方法
JP4383181B2 (ja) * 2004-01-16 2009-12-16 新日本製鐵株式会社 コイル内の磁気特性の均一性に優れ製造歩留まりが高い無方向性電磁鋼板およびその製造方法
JP5515451B2 (ja) * 2009-06-24 2014-06-11 Jfeスチール株式会社 分割モータ用コア材料
JP6319574B2 (ja) * 2014-08-14 2018-05-09 Jfeスチール株式会社 磁気特性に優れる無方向性電磁鋼板
JP6402865B2 (ja) * 2015-11-20 2018-10-10 Jfeスチール株式会社 無方向性電磁鋼板の製造方法
CN105239005B (zh) * 2015-11-27 2017-03-22 武汉钢铁(集团)公司 一种高磁导率无取向硅钢及生产方法
KR102095142B1 (ko) * 2016-01-15 2020-03-30 제이에프이 스틸 가부시키가이샤 무방향성 전기강판과 그 제조 방법

Also Published As

Publication number Publication date
JP2019099854A (ja) 2019-06-24

Similar Documents

Publication Publication Date Title
KR102095142B1 (ko) 무방향성 전기강판과 그 제조 방법
US11021771B2 (en) Non-oriented electrical steel sheet and method for manufacturing non-oriented electrical steel sheet
JP6870687B2 (ja) 無方向性電磁鋼板
TWI721732B (zh) 無方向性電磁鋼板
CN112654723B (zh) 无取向电磁钢板
KR102656381B1 (ko) 무방향성 전자기 강판
JP6900889B2 (ja) 無方向性電磁鋼板
JP6724712B2 (ja) 無方向性電磁鋼板
TWI777498B (zh) 無方向性電磁鋼板及其製造方法
JP2023507592A (ja) 無方向性電磁鋼板およびその製造方法
JP2022074677A (ja) 磁気特性に優れた無方向性電磁鋼板およびその製造方法
TWI809799B (zh) 無方向性電磁鋼板及其製造方法
JP7328597B2 (ja) 無方向性電磁鋼板およびその製造方法
WO2024080140A1 (ja) 無方向性電磁鋼板とその製造方法
KR20230129476A (ko) 무방향성 전자 강판 및 그 제조 방법

Legal Events

Date Code Title Description
RD04 Notification of resignation of power of attorney

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A7424

Effective date: 20190208

RD04 Notification of resignation of power of attorney

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A7424

Effective date: 20190508

A621 Written request for application examination

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A621

Effective date: 20200703

A977 Report on retrieval

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A971007

Effective date: 20210426

TRDD Decision of grant or rejection written
A01 Written decision to grant a patent or to grant a registration (utility model)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A01

Effective date: 20210518

A61 First payment of annual fees (during grant procedure)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A61

Effective date: 20210531

R151 Written notification of patent or utility model registration

Ref document number: 6900889

Country of ref document: JP

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R151