JP6900449B2 - 空冷プラズマトーチのための電極 - Google Patents

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Description

本発明と一致する装置、システム及び方法は切断に関し、より具体的にはプラズマ切断トーチ及びその部品に関する装置、システム及び方法に関する。より具体的には、本発明は、請求項1のプリアンブル及び請求項10のプリアンブルのそれぞれに記載の空冷プラズマトーチのための電極及び空冷プラズマトーチに関する。
多くの切断作業、溶射(spraying)作業及び溶接作業でプラズマアークトーチが利用されている。これらのトーチでは、プラズマガスの噴流が高温で周囲の雰囲気に噴出される。噴流はノズルから噴出され、噴流がノズルを離れると、噴流は高不足膨張状態にあるとともに非常に集束されている。しかしながら、イオン化プラズマジェットに関連する高温に起因して、トーチの部品の多くは不具合が起こりやすい。この不具合はトーチの動作を大きく阻害し、切断作業の開始時に適切なアークの点弧を妨げる。
本願の残りの部分に記載の本考案の実施形態と、従来のアプローチ、既存のアプローチ及び既に提案されているアプローチとを図面を参照しながら比較することにより、それらのアプローチのさらなる限界やデメリットが当業者に明らかになる。
本発明の例示の実施形態は空冷プラズマトーチであり、該トーチの性能及び耐久性を最適化するように設計された部品を有する。具体的には、本発明の例示の実施形態は改善された電極、ノズル、シールド及び/又は旋回リング(swirl ring)の構成を有することができる。より具体的には、本発明は請求項1及び10のそれぞれに記載の電極及びトーチを提供する。さらなる実施形態は下記の説明、図面及び特許請求の範囲に記載されている。
本発明の上記の及び/又は他の態様は、添付の図面を参照しながら本発明の例示の実施形態を詳細に説明することによって一層明らかになる。
図1は、本発明の実施形態を用いることが可能な例示の切断システムの図である。 図2は、既知の部品を用いるトーチのヘッドの一部の図である。 図3は、本発明のトーチの例示の実施形態のヘッドの一部の図である。 図4a〜図4cは、本発明の電極の例示の実施形態の図である。 図5a〜図5bは、本発明のノズルの例示の実施形態の図である。 図6は、本発明のシールドの例示の実施形態の図である。 図7は、本発明の旋回リングの例示の実施形態の図である。 図8は、既知の空冷トーチの構成と比べた場合の、本発明の実施形態のプラズマアーク及びプラズマジェット流との比較の図である。
様々な代替的な例示の実施形態及び添付の図面を詳細に参照する。同様の符号は実質的に同一の構成要素を表す。各例は限定ではなく説明を目的としたものである。実際に、当業者であれば、本開示及び請求項の範囲又は精神から逸脱することなく変更及び改良を加えることができるのが分かる。例えば、一実施形態の一部として図示又は説明する特徴は、さらに別の実施形態を得るために別の実施形態で用いられ得る。そのため、本願開示は添付の請求項及びその同等物の範囲に含まれる変更及び改良を含むことを意図している。
本開示は一般に、様々な切断作業、溶接作業及び溶射作業に有用な空冷プラズマアークトーチに関する。具体的には、本発明の実施形態は空冷プラズマアークトーチに関する。さらなる例示の実施形態は、引き込み式(retract)アークトーチである空冷プラズマアークトーチに関する。一般的に理解されているように、引き込み式アークトーチはアーク起動のために電極がノズルと接触しており、その後アークがノズルのどを通れるように電極が引き込まれるトーチである。他の種類の引き込み式トーチでは、電極が固定されていてノズルが動く。本発明の実施形態はそれら双方の種類に適用される。これらのトーチの構成及び動作は一般的に知られているため、本明細書ではそれらの詳細な構成及び動作については説明を省略する。また、本発明の実施形態は手持ち式の又は機械化されたプラズマ切断作業のいずれにも使用可能である。なお、簡潔性又は明確性のために、以下の説明は、主として切断のための手持ち式プラズマトーチに関する本発明の例示の実施形態に関する。しかしながら、本発明の実施形態はこの点に限定されず、本発明の実施形態は、本発明の精神又は範囲から逸脱することなく溶接トーチ及び溶射トーチでも用いることができる。所望により、電力レベルが異なる様々な種類及びサイズのトーチが可能である。例えば、本発明の例示の実施形態は、40〜100アンペアの範囲の切断電流を利用する切断作業で用いることができ、厚さが最大で0.075インチのワークピースを切断することができ、他の実施形態では、厚さが最大で1.5インチのワークピースを切断することができる。また、本明細書で説明するトーチ及び部品はマーキング、切断又は金属除去のために用いることができる。それに加えて、本発明の実施形態は様々な電流及び様々な電力レベルで用いることができる。本発明の実施形態で用いることができる種類の冷却空気システムの構成及び利用は既知であり、本明細書ではその詳細な説明を省略する。
図1を参照して、例示の切断システム100を示す。システム100は電源10を含み、電源10はトーチアセンブリ14が接続された筐体12を含む。筐体12は、電源、プラズマ始動回路、空気レギュレーター、ヒューズ、トランジスタ、電気及びガスの入力及び出力コネクタ、コントローラ並びに回路基板等といったプラズマアークトーチを制御するための様々な従来の部品を含む。トーチアセンブリ14は筐体の前側16に取り付けられている。トーチアセンブリ14は、筐体12内の電気コネクタにトーチ端部18内のノズル及び電極を接続するために内部に電気コネクタを含む。筐体12内に切り替え素子を設けて、パイロットアーク及び作業アークのために別個の電気経路を設けてもよい。後で説明するように、プラズマアークとなるガスをトーチの先端に移動させるためにトーチアセンブリ内にはガス導管も存在している。様々な電気コネクタ及びガスコネクタと共に、ボタン、スイッチ及び/又はダイアル等の様々なユーザー入力装置20が筐体12に設けられ得る。
なお、図1に示す筐体12は、本明細書で開示する本発明の概念の態様を用いることができるプラズマアークトーチ装置の1つの例にすぎない。従って、上記の一般的な開示及び説明は、開示したトーチの要素を用いることができるプラズマアークトーチ装置の種類又はサイズに何ら限定されるものではない。
図1に示すように、トーチアセンブリ14は、筐体12の嵌め合わせコネクタ23に取り付けるためのコネクタ22を一端に含む。そのように接続されると、トーチアセンブリ14のホース部24を通る様々な電気及びガスの通路が接続され、トーチ200の関連部分が筐体12内の関連部分と接続される。図1に示すトーチ200はコネクタ201を有する。トーチ200は手持ち式であるが、前で説明したように、トーチ200は機械式のものであってもよい。取っ手、トリガー等のトーチ200の一般的な構成は既知のトーチの構成のものと同様であり得る。そのため、本明細書ではその詳細な説明を省略する。しかしながら、トーチ端部18内には、切断目的のためにアークの生成及び維持を促進するトーチ200の部品が存在し、これらの部品の一部については下記でより詳細に説明する。具体的には、下記で説明する一部の部品はトーチ電極、ノズル、シールド及び旋回リングを含む。
図2は、既知の構成の例示のトーチヘッド200aの断面を示す。なお、分かり易くするためにトーチヘッド200aの部品の一部は図示を省略する。図示のように、トーチ200aは、電極205が電気的に連結された陰極体203を含む。電極205はノズル213の内部空洞に挿入されており、ノズル213は旋回リング211内に据え付けられている。旋回リング211は、陰極体203から旋回リング、ノズル等を絶縁する絶縁体構造209に連結されている。ノズル213は保持キャップアセンブリ217a〜217cによって適所に保持されている。前で説明したように、この構成は一般的に知られたものである。
図示のように、電極205は、電極205を陰極体203内にねじ込むためのねじ部205aを有する。電極205は中央の螺旋部205bも有する。螺旋部205bは、螺旋部205bのまわりに空気の流れを提供する螺旋状の粗くねじ様のパターンを有する。しかしながら、この螺旋部のために、陰極体203から電極205を取り外すのに特殊な工具が必要になる。中央部205bの下流には円筒部205cがある。円筒部205cは電極205の遠位端205dまで延びている。図示のように、円筒部は遠位端205dがノズル213ののど213bに近づくようにノズル213に挿入されている。円筒部は、特殊な工具で電極205を掴んで陰極から取り出すことができるように中央部205bに平端面を含むことができる。一般に、円筒部205cから遠位端205dへの遷移部分は遠位端205dの平端面に至る湾曲した端部を含む。引き込み式のアークトーチにおいて、この平端面はアークの始動を開始するためにノズル213の内面と接触している。アークが点弧すると電極205が引き込まれて、電極205とノズル213との間に(図示のように)間隙ができる。その時に、プラズマジェットがノズル213ののど213bを通ってワークピースに送られる。一般的に理解されているように、このような構成では、既知の電極205はアーク開始の間にアークの始動から約300の後に故障し始める。一般に、電極205は、電極205の寿命を延ばすのを助けるためにクロム又はニッケルのメッキが施されている。このイベントが始まると、電極205を交換する必要があり得る。
また、図示のように、電極205の遠位端205dにはハフニウム挿入体207が挿入されている。一般的に知られているように、プラズマジェット/アークはこのハフニウム挿入体から始まり、ハフニウム挿入体は遠位端205dの平坦面を中心とする。
前で簡潔に説明したように、トーチ200aはのど213bを有するノズル213も含む。切断の間、プラズマジェットはのど213bを通って送られる。また、図示のように、ノズル213は円筒状の突出部213aを含む。円筒状の突出部213aを通じてのど213bが延びている。この突出部213aは比較的長いのど213bを提供し、シールド215内の円筒状の開口内に延びている。シールド215も円筒突出部215aを有する。図示のように、各突出部213a/215aの間に気流間隙が形成され、切断の間にシールドガスがプラズマジェットを取り囲むように送られる。空冷トーチでは、これらの突出部213a/215aのぞれぞれはプラズマジェット及びシールドガスを切断作業に送る。しかしながら、ノズル213及びシールドキャップ215のそれぞれの形状に起因して、これらの突出部は非常に高温になる傾向がある。この熱はノズル213上の熱バンド(heat band)をその長さの沿って大幅に伸長させる。この伸長した熱バンド及高熱は部品を劣化及び故障させ得る。そのため交換の必要が生じる。また、それらの性能が経時的に劣化して最適な切断結果が得られない。従って、既知の空冷トーチの構成には改善が必要である。
図3を参照して、トーチヘッド300の例示の実施形態を示す。トーチヘッド300は、図1に示すトーチ200で用いることができ、図2と同様に図を簡略化するために全ての部品及び構造を図示していない(例えば、取っ手、アウターケーシング等)。また、多くの点で(下記で説明するものを除く)、トーチヘッド300の構成及び動作は既知のトーチヘッドと同様であるため、本明細書ではその構成の全ての詳細を説明しない。しかしながら、下記でより詳細に説明するように、トーチヘッド300の電極305、ノズル313、シールドキャップ315及び旋回リング311のぞれぞれは、既知のトーチ及びトーチの部品とは異なった構成を有し、最適な切断性能及び耐久性を有する切断トーチを提供する。また、図2のトーチ200aのように、図3のトーチ300は引き込み式の空冷トーチである。下記の説明は、本発明の例示の実施形態のさらなる理解を提供するものである。下記の説明では、電極、ノズル、シールドキャップ及び旋回リングのそれぞれを説明する。
図4a〜図4cを参照して、本発明の空冷電極305の例示の実施形態を示す。電極はトーチヘッド内の陰極体に電極305を固定させるねじ部305aを有する。ねじ部305aの近傍には幅広固定部305bがあり、固定部305bはねじ部305a及び下流の円筒部305c(下記でさらに説明する)よりも直径が大きい。既知の電極とは異なり、固定部305bは、標準的なソケット型工具で電極305の取り外し及び取り付けができるように構成されたナット部305eを有する。前で説明したように、既知の電極はそのような構成を有しておらず、取り付け及び取り外しに特殊な工具を必要とする。本発明の実施形態は、ナット部305eのおかげで標準的な工具を用いることができる。図示の実施形態では、六面六角頭ナット構成が用いてられている。当然ながら、他の標準的なナット構成を用いることもできる。図示のように、ナット部305eの近傍には据え付け部305fがあり、据え付け部305fは電極305の最も大きい直径D’を有する。この部分は、陰極体内に電極305を据え付けるのを支援するのに用いられる。
ナット部305eの近傍には円筒部305cがある。円筒部305cは平端面305gを持つ端部305dを有する。円筒部305cは直径Dを有し、直径Dに対する最大直径D’の比の範囲は1.4〜1.8であり、他の例示の実施形態では1.4〜1.6である。また、40〜100アンペアの範囲の切断用途に用いられる既知の空冷電極と比較して、円筒部305cの直径Dの範囲は、既知の電極の円筒部の直径よりも15〜25%大きい。例示の実施形態では、円筒部305cの最大直径の範囲は0.2〜0.4インチである。電極305の端部305は平面部305gを有し、平面部305gは、平面部305gの中心点に挿入されたハフニウム挿入体307を有する。ハフニウム挿入体307の用途及び機能は一般的に知られており、本明細書ではその詳細な説明を省略する。しかしながら、本発明の実施形態では、ハフニウム挿入体307は円筒状の挿入体であり、直径に対する長さの比の範囲が2〜4であり、他の例示の実施形態では、直径に対する長さの比の範囲が2.25〜3.5である。そのため、本発明の例示の実施形態は、挿入体307への最適な電流の伝達を可能にすると同時に、最適な伝熱能力を提供する。そのため、既知の構成に比べて、本発明のハフニウム挿入体及び電極の使用可能な寿命が大幅に長くなる。なお、ハフニウム挿入体307を円筒状として説明したが、一部の例示の実施形態では、挿入体307の端部のいずれか又は双方は平坦でない場合がある。何故なら、一部の例示の実施形態では、端部は概して凹状又は凸状のいずれかであり得るからである。
図4a〜図4cに示すように、端部305dは概して湾曲した端部を通じて平面部305gに遷移する。平面部305gは、平面部305gを円筒部305cの側壁に遷移させる遷移端とは対照的に、電極305の端部の面の平坦な部分である。しかしながら、既知の電極とは異なり、平面部305gは、直径Dに対する直径dの比の範囲が0.8〜0.95の範囲になるような直径を有する。さらなる例示の実施形態では、比の範囲は0.83〜0.91である。そのような比は、アーク始動の間に平面部305gとノズル313の内側との間の表面接触を最適なものにすると同時に、熱集中を最小限に抑え、平面部305gと円筒部305cとの間の理想的な伝熱を確実なものにする。前で説明したように、引き込み式の空冷トーチでは、電極305は平面部305gを通じてノズル313との接触がもたらされる。これは一般にバネ式の機構(明確性のために図示せず)によりなされる。これは開始時に挿入体307とノズル317との間でアークを始動させることができ、シールドガスの気流が所望の圧力レベルに達すると、ノズル313から電極が引き込まれて間隙ができ、ノズル313からワークピースにアークを移動させる。上述した構成の電極305を有することにより、本発明の実施形態は電極305、ひいてはトーチの利用可能な寿命を大幅に伸ばすことができる。これは、ダウンタイム及び交換を最小限に抑えながら最適な始動及び切断の維持を確実にする。
なお、一部の例示の実施形態では、電極305は主に銅でできており、クロム又はニッケルのいずれによっても被覆されていない。
図5a及び図5bを参照して、本発明のノズル313の例示の実施形態を図示する。ノズル313は、リテーナアセンブリによりノズル313を固定させることができる端部313aを有する。主円筒部313bが端部313aの近傍にあり、主円筒部313bは端部313aから先端部313cに延びている。先端部313cはノズルを円筒部313bから先端表面部313hに遷移させる。既知のノズルとは異なり、先端部313cは図示のように傾斜部であり、付加的な円筒状の延長部(例えば、図2の213a参照)を何ら有していない。それよりも、先端表面部313hは、先端部313cが円錐台形になるように先端部313cの傾斜面に直接隣接している。これは、空冷トーチのための既知のノズルの構成と異なる。先端部313hの傾斜部は、図示のように30〜60°の範囲の角度Aを有する。他の例示の実施形態では、角度Aの範囲は40〜50°である。また、図示のように、ノズル313は、図3に示すように電極305が挿入される空洞313iを含む。ノズル313は、長さLを有する先端部313を通るのど313dも有する。のどの直径に対する長さの比の範囲は3〜4.5であり、係る直径はのど313dの最小直径である。他の例示の実施形態では、前記比の範囲は3〜4である。長さLは空洞313iの内面から先端面313hまでののど313dの長さである。本発明のノズルのこの態様は、のど313dの長さに沿ったプラズマジェット/アークの電圧低下を最小限に抑えるのを支援する。既知のノズルでは、かなりの電圧低下が生じ得るため、トーチの動作及び効率性に悪影響が及ぶ。本発明の例示の実施形態では、本発明の実施形態は、動作電流レベル並びにガスの流速及びパターンに関わらず、のど全体での最大電圧低下が20ボルト未満という最適な性能を提供できる。他の例示の実施形態では、最大電圧低下の範囲は5〜15ボルトであり、さらなる例示の実施形態では電圧低下は5ボルト未満である。即ち、本発明の実施形態のノズル及びのどの構成は、全ての既知の動作ガス流パターン及び流速を用いた40〜100アンペアの電流動作範囲に亘って上記の最適な電圧低下性能を実現することができる。この性能は既知の構成では得られていない。また、図示のように、のど313dは幅広開口から幅狭のど部313f(のど313dの最小直径を有する)に遷移する入口部313eを有する。幅狭のど部313fはより幅広の拡張部313gに遷移する。幅広の拡張部313gは幅狭のど部313fの直径よりも大きく、入口部313eへの入口の直径よりも小さい出口直径を有する。即ち、入口部313eへの入口の直径は拡張部313gの出口の直径よりも大きい。本発明の例示の実施形態では、出口の直径(拡張部313gの最も下流の点における直径)に対する入口の直径(入口313eの最も上流の点における直径)の比の範囲は1.5〜4である。
本明細書で説明したように、ノズル313の実施形態は、既知のノズルの構成よりも大幅に改善した熱特性を有する。具体的には、本発明のノズルは既知のノズルよりもはるかに低温で動作するとともに、はるかに小さい熱バンドを有する。既知のノズルの構成に起因して、それらの先端は非常に高い熱レベルに達し得る。これは、溶融スパッタをノズルの先端に付着させノズルの早期の故障につながり得る。具体的には、本発明の実施形態は、先端部313c内に閉じ込められ、円筒部313bへの伸長が最小限に抑えられる熱バンドを提供する。実際に、一部の例示の実施形態では、ノズル313及び先端313cは、動作時に熱バンドが円筒部313bに全く伸長しないように構成されている。なお、熱バンドは、先端面313hから測定したノズル313の最も短いバンド(又は長さ)であり、100アンペアでの持続的動作の間にノズル313の平均温度は350℃に達する。持続的動作は少なくともノズル313の温度が動作の間に温度平衡に達する時間の動作である(当然ながら、通常の動作は100アンペアでの通常の冷却ガス及びシールドガス流を含む)。これは既知のノズル構造及び構成で実現することはできない。図5bに例示の熱バンド313zを示す。熱バンド313zは通常の動作の間は先端部313c内に留まり、円筒部313bに伸長しない。そのため、本発明の例示の実施形態は、最適な切断性能及び部品の寿命を実現するために最適な熱特性を提供する。誤解がないように言うと、作業の間、ノズル313の先端の温度が最も高くなり、600℃に達し得る。従来のノズルの構成では、熱バンドは通常ノズル延長部213a及びテーパー部(図2参照)を越えて伸長し、円筒部内に伸長する。本発明の例示の実施形態は、図5bに示すように、熱バンドが全体的にノズルの最も遠位部である円錐部内にあるため大幅に改善されている。
図6は、トーチの端部に取り付けられて、ノズル313を守るシールドキャップ315の例示の実施形態を示す。シールドキャップの機能は一般的に知られており、本明細書ではその詳細な説明を省略する。しかしながら、上述したノズル313のように、シールドキャップ315は図2に示す延長部215aを有していない。その代わりに、ノズル313のように、シールドキャップの先端は図6に示すように円錐台である。シールドキャップ315は、リテーナアセンブリ217cにシールドキャップを固定できるようにするねじ付端部315aを有する。シールドキャップ315は、端部315aとシールドキャップ先端部315cとの間に位置する円筒部315bも有する。トーチが組み立てられると、図6に示すように、ノズル313とシールドキャップ315との間に間隙ができるようにシールドキャップ315の円筒部315bがノズル313の円筒部313bに隣接している。シールドガスは切断の間はこの間隙を通って送られる。本発明の例示の実施形態では、円筒部間の間隙の範囲は0.01〜0.06インチであり、他の例示の実施形態では、間隙の範囲は0.2〜0.4インチである。また、図示のように、シールドキャップ315は先端面315dを有する円錐台として形成された先端部315cを有する。既知のシールドキャップとは異なり、図2に示すような円筒状の延長部がない。また、シールドキャップ315は、図示のように部品が組み立てられた場合に、のど313dを中心とする円形開口315eを有する。本発明の例示の実施形態では、開口は、ノズルのど313dの最小直径(幅狭のど部313fの直径)の1.25〜4.1倍の範囲の直径Dsを有する。他の例示の実施形態では、直径Dsの範囲はのど313dの最小直径の1.75〜2.5倍である。また、本発明の例示の実施形態では、直径Dsはのど拡張部313gの出口直径よりも大きいが、先端面部313hの直径よりも小さい。本発明の例示の実施形態では、ノズル313の先端面部313hの直径に対する直径D2の比の範囲は0.98〜.9である。
それに加えて、図6に示すように、シールドキャップ315の先端部315は、シールドキャップ315とノズル313の外側と間の間隙Gの幅が、シールドキャップ及びノズルの先端領域において上流端Xから下流端Yまでの間隙Gの長さに沿って減少するように、先端部315cの内側傾斜面315fが、角度Aよりも大きい角度Bで傾斜されるように構成されている。(角度A及びBはトーチの中心線に平行な線から測定される)。本発明の例示の実施形態では、角度Bの範囲は35〜70°であるが角度Aよりも大きい。他の例示の実施形態では、角度Bの範囲は45〜60°である。即ち、先端部315cの始まり(点x)におけるシールドキャップ315の内側面とノズルの外側との間の間隙の(シールドキャップの内側面に対して法線方向に測定した)距離は、先端部315cの終わり(点y)におけるシールドキャップ315の内側面とノズルの外側との間の間隙の(シールドキャップの内側面に対して法線方向に測定した)距離よりも大きい。間隙Gの幅を小さくすることにより、シールドガス流はトーチの出口近傍で加速する。これはプラズマジェットの安定化を助けトーチの性能を改善する。本発明の例示の実施形態では、点Xにおける間隙の幅の範囲は0.03〜0.05インチである。また、例示の実施形態では、間隙Gの幅は点Xから点Yにかけて30〜60%減少する。誤解がないように、点Xは、シールドキャップ315の内側とノズル313の外側との間のそれぞれの先端部に沿った最も幅広の点に位置し、点Yは、シールドキャップ315の内側とノズル313の外側との間のそれぞれの先端部に沿った最も幅狭の点に位置する。なお、一部の例示の実施形態では、点Yはノズル先端部313cの外側傾斜面と先端面313hとの遷移部に位置するが、他の実施形態ではそれに該当しないことがある。上述した部品の例示の実施形態を組み込むことによって、改善したトーチ性能及び耐久性を得ることができる。
なお、一部の例示の実施形態では、シールドキャップ315は追加のガス流ポート319(図3に図示)を有し得る。これらのポート319は追加のガス流を切断領域に提供し、シールドキャップの冷却を助け、切断領域からデブリを遠ざける。
図7を参照して、旋回リング311の例示の実施形態を図示する。既存の旋回リングとは異なり、本発明の実施形態は上側領域311a及び下側領域311bという2つの領域を有する。既知の旋回リングは通常1つの領域を有し、該1つの領域はその全長に沿って外径が一定であり、リングの長さは、図7に示すものに比べて比較的短い。例えば、図2に示すように、旋回リング211はノズル205の上端から絶縁体209の底部に延びている。しかしながら、この構成は旋回リング211、とりわけ絶縁体209と連結される旋回リング211の上部で初期故障をもたらし得る。本発明の実施形態はこのような故障を解消するとともに、リング及びトーチの全体的な性能を改善する。図7に示すように、上側部311aは下側領域311bよりも大きな外径を有し、一部の例示の実施形態では、下側領域311bの長さよりも大きい長さを有する。この上側領域は絶縁体209が挿入される空洞311fを有する(図3参照)。この挿入は、旋回リング311の強化及びセンタリングを支援する。絶縁体209に対して旋回リング311を圧入、ねじ込み又は単に据え付けることができる。リング311の上側部311aの外面には複数の流路311cがある。流路311cは、旋回リング311の下側部311bへのガス流の安定化を支援する。既知のトーチではそのような流路が用いられていないため、ガス流は旋回リングに達すると乱れることがある。この乱流によりトーチの性能が損われる。本発明の実施形態では流路311cを用いて、トーチヘッドの上側領域からリング311の下側部311bへのガス流を安定化させる。その後、安定化されたガス流は下側部311bの孔311d/311eに送られる。そしてガス流は安定化されているため、これらの孔の性能が最適化される。図示のように、底部311bは、底部311bの外面から底部311bの内部空洞に至る複数のガス流孔311d/311eを有する。一部の例示の実施形態では、流路311cは上側部の全長に沿って延び、旋回リングの中心線と平行に延びる。しかしながら、他の例示の実施形態では、流路311cは上側部の長さの一部のみに沿って延びることができ、さらなる実施形態では、流路は流路を通過するガスに旋回流を付与できるように傾斜させることができる。図示のように、例示の実施形態は少なくとも4つの環状の孔を有し、少なくとも2つの上側の環状の孔311dは第1の孔構成を有し、少なくとも2つの下側の環状の孔311eは第2の構成を有する。孔の動作は下記で説明する。
前で説明したように、トーチの始動よりも前の段階ではノズルと電極とは互いに接触している。これは機械バネ付勢によって実現できる。作業が始まると、電流及びガスの双方が流れ出す。電流はアークを点弧し、ガス圧は陰極/電極を押して(バネ付勢に対して押す)ノズルから遠ざける。本発明の例示の実施形態では、上側孔311dはこのガス圧による引き込みを促進する。即ち、孔311dはそれらの中心線のそれぞれがリング311の中心線に垂直になるように形成されている。また、本発明の例示の実施形態では、孔311dの全てが同じ寸法(例えば直径)を有し、上側の列の孔311dのそれぞれは同じ数の孔311dを有する(即ち、径方向の間隔が同じ)。しかしながら、他の例示の実施形態では、孔311dの寸法は異なっていてもよく(例えば、2列の孔、第1の寸法及び第2の寸法)及び/又は各列の孔311dは異なる孔間隔を有していてもよい。即ち、一部の例示の実施形態では、上側部311aに最も近い列の孔311dは、隣接する列の孔よりも孔311dが少なくても多くてもよい。所望の性能を得るために、構成を最適化することができる。図7に示す実施形態では、孔311dは円筒形(円形断面)であるが、他の例示の実施形態では、孔の少なくとも一部は非円形断面を有する(例えば、長円、楕円等)。
上側の列の孔331dとは異なり、下側の列の孔311eは、ガスが電極305の近傍の空洞内に流れ込むときに旋回又は回転を与えるのに用いられる。そのため、本発明の例示の実施形態では、下側の列の孔311eは異なる孔の形状を有する。孔の中心線はリング311の中心線に対して傾斜している。この傾斜はガス流に改善した回転が付与されるようにガス流を送る。本発明の例示の実施形態では、孔311eは、各孔311eの中心線がリング311の中心線に対して15〜75°の範囲の角度を有するように傾斜されている。他の実施形態では、角度の範囲は25〜60°である。例示の実施形態では、孔311eは、リング311の中心線に対して傾斜しているが、それらはそれらの各中心線が孔311eの中心線でリング311を横断する面内にあるように方向付けられるように形成されている。即ち、全ての孔の中心線は同一平面上にある。しかしながら、他の例示の実施形態では、孔311eはそれらの中心線が同一平面上にないように傾斜させることができる。即ち、一部の実施形態では、孔の中心線はリング311の下端面の方に(即ち、トーチの端部の方に)傾斜されている。そのような実施形態はガス流に渦回流を付与するが、ガス流を下方に向ける。
上側の列の孔311dのように、下側の列の孔311eも同じ形状及び向きを有することができ、各列に同じ数の孔があってもよい。しかしながら、他の例示の実施形態ではこのような構成である必要はない。例えば、一部の実施形態では、孔311eは異なる直径及び/又は断面を有することができる。また、実施形態は各列で異なる数の孔を用いることができる。それに加えて、孔の角度を変えて、第1のグループの孔311eがリングの中心線に対して第1の角度を有し、第2のグループの孔311eがリングの中心線に対して第2の角度を有するようにすることができる。また、他の例示の実施形態では、孔311eは異なる向きを有することができ、一部の孔が下方に傾斜されている一方で、他の孔はそのようにされておらず、異なる角度で下方に傾斜させることができる。例えば、各列内の孔311eを1つおきに異なる形状/向きを有するようにすることができ又は1つの列(上側列に隣接する列)の孔311eは第1の形状/向きを有するのに対して、(上側の孔から離れた)最も遠位の列の孔311eは第2の形状/向きを有するようにすることができる。別の例として、一部の例示の実施形態では、(リング311の底部に最も近い)最も低い列の孔311eは径方向及び下方の双方に傾斜されているのに対して、隣接する列の孔311eは径方向のみに傾斜されている。当然ながら、逆の構成を用いることもできる。そのため、本発明の実施形態はガス流を最適化させることができ、それによってトーチの性能及びプラズマジェットの安定性が大幅に改善される。
図8は、既知のトーチの性能と本発明の例示のトーチの性能との例示の比較を示す。図から分かるように、本発明の実施形態により様々な利点が得られる。例えば、従来のトーチにおいて示すように、プラズマ中心部の主噴流は非常に短く、ノズルの出口において高い熱集中や急激なガス膨張がある。また、シールドガスがノズル出口から離れたシールドキャップを出て行くため、シールドガスとノズル噴流との間の領域で渦が形成され得る。この渦は、溶融スパッタをノズルの表面に付着させるのに十分長い期間この領域内に留まらせ、最終的にはトーチ及びその部品の初期故障をもたらすか、あるいは切断作業の劣化をもたらす。これを本発明の例示のトーチ(右側)と比較する。図示のように、ノズルの出口において流出速度がより制御されており、ノズルの出口には熱集中が殆どなく、主噴流コア部(primary jet core)もかなり長い。これは、厚さの大きい材料をより安定的に且つ一貫して切断することを可能にする。また、スパッタをノズル313に付着させる渦領域がない。
従って、本発明の様々な実施形態は、より長い期間に亘ってより高い精度とより大きな数の始動サイクルを提供可能な、改良された空冷引き込み式切断トーチを提供する。例えば、40〜100アンペアの範囲の切断電流を用いる本発明の実施形態では、本発明の実施形態は、アーク始動故障が起こる前に発生可能なアーク始動の数を2倍以上にすることができる。これは、既知の空冷トーチの構成に対して大幅な改善を表す。
特定の実施形態を参照しながら請求項に記載の主題を説明してきたが、当業者であれば、請求項に記載の主題の範囲から逸脱することなく様々な変更が加えられ、同等物が置換され得ることが分かる。それに加えて、特定の状況又は材料を請求項に記載の主題の教示に適合するために、請求項に記載の主題の範囲から逸脱することなく多くの変更が加えられ得る。従って、請求項に記載の主題は開示した特定の実施形態に限定すべきものでなく、請求項に記載の主題は添付の請求項の範囲に含まれる全ての実施形態を含む。
10 電源
12 筐体
14 トーチアセンブリ
18 トーチ端部
20 入力装置
23 コネクタ
24 ホース部
100 システム
200 トーチ
200a トーチヘッド
201 コネクタ
203 陰極体
205 電極
205a ねじ部
205b 部
205c 円筒部
205d 遠位端
207 ハフニウム挿入体
209 絶縁体構造
211 旋回リング
213 ノズル
213a 円筒突出部
311f 空洞
213b のど
215 シールド
215a 円筒突出部
217a リテーナアセンブリ
217b リテーナアセンブリ
217c リテーナアセンブリ
300 トーチヘッド
305 電極
305a ねじ部
305b 固定部
305c 下流円筒部
305d 端部
305e ナット部
305f 据え付け部
305g 平端面
307 ハフニウム挿入体
311 旋回リング
311a 上側領域
311b 下側領域
311c 流路
311d 孔
311e 孔
313 ノズル
313a 端部
313b 円筒部
313c 先端部
313d のど
313e 入口部
313f 幅狭のど部
313g 幅広拡張部
313h 先端面
313z 熱バンド
315 シールドキャップ
315a ねじ付端部
315b 円筒部
315c シールドキャップ先端部
315d 先端面
315e 円形開口
315f 内側傾斜面

Claims (9)

  1. 空冷プラズマトーチのための電極であって、当該電極は、
    当該電極を固定するための固定部と、
    前記固定部の下流にある円筒部であって、該円筒部は、該円筒部の最大直径に対する当該電極の最大直径の比の範囲が1.4〜1.8になるような最大外径を有し、該円筒部は円形平端面を有する遠位端を含む、円筒部と、
    前記円筒部の遠位端に挿入されるハフニウム挿入体であって、該ハフニウム挿入体は、直径に対する長さの比の範囲が2〜4の円筒形を有する、ハフニウム挿入体と、
    を含み、
    前記円形平端面は、前記円筒部の最大直径に対する前記円形平端面の直径の比の範囲が0.8〜0.95になるような直径を有する、電極。
  2. 前記円筒部の最大直径に対する前記電極の最大直径の比の範囲は1.4〜1.6である、請求項1に記載の電極。
  3. 前記電極は、40〜100アンペアの範囲の切断作業で用いるための空冷電極である、請求項1に記載の電極。
  4. 記円筒部の最大外径の範囲は0.508〜1.016cmである、請求項1に記載の電極。
  5. 前記ハフニウム挿入体の直径に対する長さの比の範囲は2.25〜3.5である、請求項1に記載の電極。
  6. 前記円形平端面は直径dを有し、該直径dの前記円筒部の最大外径に対する比の範囲は0.8〜0.95である、請求項1に記載の電極。
  7. 前記円形平端面は直径dを有し、該直径dの前記円筒部の最大外径に対する比の範囲は0.83〜0.91である、請求項1に記載の電極。
  8. 前記電極は、40〜100アンペアの範囲の切断作業のために用いられる空冷電極であり、
    前記円形平端面は直径dを有し、該直径dの前記円筒部の最大外径に対する比の範囲は0.8〜0.95であり、
    記円筒部の最大外径の範囲は0.508〜1.016cmである、請求項1に記載の電極。
  9. 前記固定部は、前記電極を固定するねじを有するねじ部である、請求項1に記載の電極。
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