以下、添付図面を参照しながら本発明の実施形態を詳細に説明する。なお、図面の説明において同一または同等の要素には同一の符号を付し、重複する説明を省略する。
データ提供システムは、複数の流通業者に散らばっている顧客の購入データを集約し、集約データを上流企業に提供するコンピュータ・システムである。「顧客」とは商品を購入する一般消費者(最終消費者)である。「商品」とは有償または無償で取引される有体物または無体物であり、したがってサービスを含む概念である。「購入データ」とは顧客が商品を購入したことを示すデータである。「顧客の購入データを集約する」とは、複数の記憶装置(例えばデータベース)に記憶されているある顧客の購入データを一つに統合する処理である。例えば、集約とは、ある顧客についての複数の購入データを一つの購入データ(一つのレコード)にまとめる処理である。「流通業者」とは顧客に直接に商品を販売する業者であり、例えば百貨店、スーパーマーケット、コンビニエンスストア、または電子商店街(オンライン・ショッピング・サイト)を運営する企業である。「上流企業」とは商品の流通において流通業者よりも上流に位置する企業であり、例えばメーカおよび商社である。したがって本実施形態では、商品が上流企業から顧客に直接に渡るのではなく、流通業者を介して渡ることを想定する。
一般に流通業者はPOSシステムおよびポイント管理システムを持ち、購入データを蓄積しているので、顧客の消費動向を詳細に把握できる。しかし、商品の流通の大元である上流企業はその動向を直接的にかつ正確に捉えることが難しい。加えて、流通業者は多数存在するので、POSシステムおよびポイント管理システムも多く、しかもそれらのシステムは互いに独立しているので、上流企業が顧客の消費動向を正確に知ることは非常に困難である。
データ提供システムの特徴の一つは、そのような立場にある上流企業に顧客の購入データを一括して提供することである。したがって、上流企業はそのデータ(集約データ)の需要者である。「購入データを一括して提供する」とは、複数の流通業者から得た複数の購入データを集約することで得られる集約データを上流企業に提供することを意味する。このデータ提供システムにより、上流企業は個々の顧客の消費動向がまとめられた集約データを取得することができる。
図1は上流企業への集約データの提供の概念を示す。この図に示すように、本実施形態では集約サーバがデータ提供システムの要であるとする。この集約サーバは、例えば、流通業者および上流企業とは独立したデータ集約機関により運営されるが、集約サーバの運営者および管理者はそれに限定されない。図1は集約データの2種類の提供方法を示す。一方の例を示す実線矢印は、集約サーバが個々の流通業者の購入データに基づいて集約データを生成し、その集約データを直接的に上流企業に提供する処理を示す。他方の例を示す破線矢印は、集約サーバがその集約データをいったん統合データベースに格納し、その後、統合データベースから集約データを読み出して上流企業に提供する処理を示す。
このように集約データの提供方法は一つに限定されるものではないが、いずれにしても上流企業はその集約データを任意の方法で利用できる。例えば、上流企業はその集約データを分析することで、複数の流通企業での自社商品の売上をまとめて把握することができる。また、上流企業は顧客生涯価値(Life Time Value(LTV))を向上させるための販促活動を企画することもできる。
上流企業がその販促活動を行うことで、顧客は例えば、上流企業からポイントやマイレージなどの特典を得ることができる。顧客はその特典を得るために新たなポイントカードおよび支払手段を用意する必要がなく、これまでの購入行動を変える必要がない。
流通業者から上流企業への購入データの提供の見返りとして、上流企業から流通業者に対価(データ提供料)が支払われてもよい。上流企業が上記の販促活動を行うことで、流通業者は上流企業の特典プログラム(ポイントプログラムまたはマイレージプログラム)に間接的に参加することになり、その結果、顧客に提供するサービスを増やすことができる。
このように、データ提供システムは上流企業にだけでなく顧客および流通業者にも利点がある。
上述したように、データ提供システムは、互いに独立した複数の購入データベース、すなわち複数のPOSシステムまたは複数のポイント管理システムで管理されている購入データを集約する。これは、複数の流通業者の間で共通のポイントを用いる仕組みとは全く異なるものである。
以下では、統合データベースを使うことなく集約データを即時に上流企業に提供する処理を第1実施形態として説明し、統合データベースを用いる処理を第2実施形態として説明する。
(第1実施形態)
図2は第1実施形態に係るデータ提供システム1の全体構成を示す。データ提供システム1は集約サーバ10と、流通業者が所有または管理する購入データベース20と、上流企業が所有または管理する需要者端末30とを備える。複数の流通業者および少なくとも一つの上流企業が存在することを前提とするので、データ提供システム1は少なくとも二つの購入データベース20と少なくとも一つの需要者端末30とを備える。これらの装置はインターネットやイントラネットなどの通信ネットワークを通じて互いにデータを送受信することができる。通信ネットワークの具体的な構成、すなわち装置間の具体的な接続の態様は何ら限定されない。以下では、必要に応じて、個々の流通業者の購入データベースを購入データベース201、購入データベース202、…というように区別する。
購入データベース20は購入データを記憶するデータベースである。「データベース」とは、プロセッサまたは外部のコンピュータからの任意のデータ操作(例えば、抽出、追加、削除、上書きなど)に対応できるようにデータ集合を記憶する機能要素(記憶部)である。購入データベース20の実装方法は限定されないが、例えば購入データベース20はデータベース管理システムにより構築されてもよい。個々の流通業者に対応する個々の購入データベース20は互いに独立したものである。「個々の購入データベースが互いに独立したものである」とは、任意の一つの購入データベース内のデータを新規作成、更新、または削除しても、他の購入データベース内のデータに影響が及ばないことを意味する。
それぞれの購入データベース20は、顧客データを記憶する顧客テーブル20aと、購入詳細データを記憶する購入詳細テーブル20bとを備える。したがって、本実施形態では購入データは少なくとも顧客データおよび購入詳細データにより構成される。図3はその購入データベース20の例を示し、より具体的には、流通業者Aの購入データベース201および流通業者Bの購入データベース202を示す。購入データベース201は顧客テーブル201aおよび購入詳細テーブル201bを備え、購入データベース202は顧客テーブル202aおよび購入詳細テーブル202bを備える。
顧客データは顧客に関する様々な情報を示し、各レコードは顧客ID、顧客属性、及び更新日時を含む。顧客IDは、購入データベース20内で顧客を一意に特定するための識別子である。顧客属性は顧客の性質または特徴を示す1以上のデータ項目であり、例えば、氏名、電話番号、メールアドレスなどを含む。個々の流通業者に対応する個々の顧客データは互いに独立したものなので、特定の一人の顧客に付与される顧客IDは一般に流通業者毎に異なり、顧客属性のデータ項目または値も流通業者毎に異なり得る。例えば図3は、一人の顧客「鈴木花子」に付与される顧客IDおよび電話番号が顧客テーブル201a,202aの間で異なることを示す。また、図3は、顧客属性の一部が顧客テーブル201a,202aで異なることも示す。更新日時はレコードが新規に作成されたかまたは最後に更新された日時である。
購入詳細データは各顧客の購入記録である。本実施形態では、購入詳細データの各レコードは顧客ID、購入日時、購入場所、および購入商品の詳細(品目、価格、数量など)を含む。購入場所は実店舗または仮想店舗(ウェブサイト)を示す。図3では購入詳細テーブル201b,202bの間でデータ項目が同じである。しかし、個々の流通業者に対応する個々の購入詳細データは互いに独立したものなので、購入詳細データのデータ項目は流通業者毎に異なり得る。
顧客データおよび購入詳細データは顧客IDを介して関連付けられるので、購入データベース20を参照すれば、どのような特徴または性質を持つ顧客がどのような購入傾向を持つかという情報を得ることができる。
購入データベース20内の各テーブルおよび各レコードの構成は上記のものに限定されず、購入データベース20に対して任意の正規化または冗長化を行ってよい。
需要者端末30は、上流企業が所有または利用するコンピュータである。需要者端末30の例として、据置型または携帯型のパーソナルコンピュータと、タブレット端末および高機能携帯電話機(スマートフォン)などの携帯端末とが挙げられるが、需要者端末30の具体的な種類は限定されない。需要者端末30は集約データを要求、取得、または表示するための機能を有し、その機能は例えばウェブブラウザまたは専用アプリケーション・プログラムにより提供される。
集約サーバ10は、集約データを生成してそのデータを需要者端末30に提供するコンピュータである。集約サーバ10は1台のコンピュータで構成されてもよいし、複数台のコンピュータで構成されてもよい。複数台のコンピュータを用いる場合には、これらのコンピュータがインターネットやイントラネットなどの通信ネットワークを介して接続されることで、論理的に一つの集約サーバ10が構築される。
図4は、集約サーバ10として機能するコンピュータ100の一般的なハードウェア構成を示す。コンピュータ100は、オペレーティングシステムやアプリケーション・プログラムなどを実行するプロセッサ(例えばCPU)101と、ROMおよびRAMで構成される主記憶部102と、ハードディスクやフラッシュメモリなどで構成される補助記憶部103と、ネットワークカードまたは無線通信モジュールで構成される通信制御部104と、キーボードやマウスなどの入力装置105と、モニタなどの出力装置106とを備える。
集約サーバ10の各機能要素は、プロセッサ101または主記憶部102の上に所定のソフトウェア(例えば、後述するデータ提供プログラムP1)を読み込ませてそのソフトウェアを実行させることで実現される。プロセッサ101はそのソフトウェアに従って、通信制御部104、入力装置105、または出力装置106を動作させ、主記憶部102または補助記憶部103におけるデータの読み出し及び書き込みを行う。処理に必要なデータまたはデータベースは主記憶部102または補助記憶部103内に格納される。
図2に戻って、集約サーバ10は機能的構成要素として受信部11、データ取得部12、集約部13、および送信部14を備える。
受信部11は、需要者端末30から検索条件を受信する機能要素である。検索条件とは、集約データを取得するために設定された条件を示す1以上のまたは1種類以上の値の集合である。例えば、検索条件は顧客テーブル20aまたは購入詳細テーブル20bの1以上のデータ項目に対応する値の集合である。受信部11は受信した検索条件をデータ取得部12に出力する。
データ取得部12は、少なくとも二つの流通業者の少なくとも二つの購入データベース20から1以上の顧客の購入データを抽出する機能要素である。まず、データ取得部12は受信部11から入力された検索条件を、各購入データベース20用の検索条件に変換する。図2の例では、データ取得部12は入力された検索条件から、購入データベース201用の検索条件と、購入データベース202用の検索条件と、購入データベース203用の検索条件と、購入データベース204用の検索条件とを生成する。このように検索条件を個々の購入データベース20用の検索条件に変換する理由は、購入データのデータ項目が購入データベース20毎に異なり得るからである。図3の例では、購入データベース201は顧客データのデータ項目として「職業」を含み「趣味」を含まないが、購入データベース202は逆に、「趣味」を含み「職業」を含まない。したがって、入力された検索条件が職業に関する値を含む場合には、データ取得部12は購入データベース201用の検索条件にはその値を含めるが、購入データベース202用の検索条件にはその値を含めない。入力された検索条件が趣味に関する値を含む場合には、データ取得部12は購入データベース201用の検索条件にはその値を含めないが、購入データベース202用の検索条件にはその値を含める。
続いて、データ取得部12は各購入データベース20にアクセスして、対応する検索条件に合致する購入データを抽出する。そして、データ取得部12は各購入データベース20から取得した購入データを集約部13に出力する。
集約部13は、少なくとも二つの購入データベース20に対応する少なくとも二つの購入データを顧客毎に集約することで集約データを生成する機能要素である。ある一人の顧客についての購入データが2以上の購入データベース20に記憶されている可能性があり、かつ、その顧客に付与される顧客IDは購入データベース20毎に異なり得る。したがって、データ取得部12により抽出された購入データをそのまま需要者端末30に送信すると、上流企業に提供される購入データは非常に取り扱いにくいものになる。集約部13は複数の購入データを一つに統合する処理を各顧客について実行することで、各顧客の購入データの操作性を高める。
購入データを統合するためには、各顧客について、複数の購入データベース20から抽出された複数の顧客データを一つに統合する必要がある。この統合のためには顧客の同一性を判定する必要があるが、その判定方法は限定されない。例えば、集約部13は2以上の顧客データの間で複数のデータ項目が一致する場合にはそれらの顧客データを一つの顧客データに統合してもよい。例えば、集約部13は、ある顧客について、2以上のデータ項目(例えば、氏名、電話番号、メールアドレス、および住所)のうち少なくとも二つのデータ項目が一致する場合に、複数の顧客データを統合してもよい。あるいは、集約部13は2以上の顧客データの間で任意の一つデータ項目が一致する場合にそれらの顧客データを一つの顧客データに集約してもよい。
ある一人の顧客についての顧客データを集約した場合には、集約部13はその顧客データの顧客IDを含む購入詳細データを組み合わせることで、該顧客の購入詳細データを集約する。
図3に示す顧客「鈴木花子」に関する購入データが購入データベース201,202から抽出されたことを前提に、この購入データに対する集約処理の例を説明する。例えば、氏名、電話番号、メールアドレス、および住所のうち少なくとも二つが一致することが条件である場合には、集約部13は「鈴木花子」の二つの顧客データを集約することで、氏名、電話番号、メールアドレス、住所、職業、および趣味を含む一つの顧客データを生成する。続いて、集約部13は、顧客IDが「A002」で購入場所が「スーパーマーケットB」であるレコードと、顧客IDが「A002」で購入場所が「コンビニエンスストアC」であるレコードと、顧客IDが「B100」で購入場所が「ウェブサイトD」であるレコードとを組み合わせる。そして、集約部13は顧客データから生成した一つの顧客データと1以上の購入詳細データの組合せとを関連付け、これにより、顧客「鈴木花子」に関する集約データが生成される。図5は、その集約データを模式的に示す。
あるデータ項目について2以上の顧客データの間で値が相違する場合の処理は限定されない。例えば、集約部13は最新の値(更新日時が最近のレコードに含まれる値)を採用してもよく、各顧客データの値をそのまま採用してもよい。図3の例では鈴木花子の電話番号が二つ存在するので、集約部13は最新の値である「03−3333−1111」のみを集約データに含めてもよいし、集約部13は「03−2222−3333」および「03−3333−1111」の双方を集約データに含めてもよい。図5は、電話番号が最新の値のみを含む集約データを示す。
各顧客について集約データを生成すると、集約部13はその集約データを送信部14に出力する。
送信部14は、入力された集約データを、検索条件を送ってきた需要者端末30に送信する機能要素である。集約データは、検索条件に対する応答、すなわち検索結果である。
次に、図6を参照しながら、データ提供システム1(集約サーバ10)の動作を説明するとともに本実施形態に係るデータ提供方法について説明する。
ある需要者端末30が検索条件を集約サーバ10に送信すると、受信部11がその検索条件を受信する(ステップS11、受信ステップ)。続いて、データ取得部12がその検索条件を、各購入データベース20用の検索条件に変換する(ステップS12、データ取得ステップ)。そして、データ取得部12は変換された各検索条件を用いて各購入データベース20を検索することで、それぞれの購入データベース20から購入データを抽出する(ステップS13、データ取得ステップ)。続いて、集約部13が複数の購入データを顧客毎に集約することで集約データを生成し(ステップS14、集約ステップ)、送信部14がその集約データを検索条件への応答(検索結果)として需要者端末30に送信する(ステップS15、送信ステップ)。この一連の処理により、上流企業はその集約データを任意に利用することができる。
(第2実施形態)
上述した通り、第2実施形態は、集約サーバが集約データをいったん統合データベースに格納し、その後、統合データベースから集約データを読み出して上流企業に提供する点で、第1実施形態と異なる。以下では、第1実施形態と異なる点について特に説明し、第1実施形態と同様の機能及び構成については説明を省略する。
図7は第2実施形態に係るデータ提供システム1Aの全体構成を示す。データ提供システム1Aは集約サーバ10Aと、流通業者が所有または管理する購入データベース20と、上流企業が所有または管理する需要者端末30と、顧客が所有または管理する顧客端末40と、集約データを記憶する統合データベース50とを備える。データ提供システム1Aは少なくとも二つの購入データベース20と、少なくとも一つの需要者端末30と、少なくとも一つの顧客端末40とを備える。
統合データベース50は集約データを記憶するデータベースである。統合データベース50の実装方法は限定されないが、例えば購入データベース20はデータベース管理システムにより構築されてもよい。本実施形態では、集約データは、顧客属性を示すデータ項目と、該顧客の購入記録を示すデータ項目とを含む。図8は統合データベース50の例であり、より具体的には、図3に示す購入データから生成される集約データの例を示す。顧客属性を示すデータ項目は、顧客統合IDと、各購入データベース20(各顧客テーブル20a)の顧客属性の和集合と(図8の例では、氏名、電話番号、メールアドレス、住所、職業、および趣味など)、各購入データベース20(各顧客テーブル20a)から抽出された1以上の顧客ID(顧客オリジナルID)とを含む。購入記録を示すデータ項目は、顧客統合ID、購入日時、購入場所、および購入商品の詳細(品目、価格、数量など)を含む。顧客統合IDは、統合データベース50内において顧客を一意に特定するための識別子である。顧客属性および購入記録は顧客統合IDを介して関連付けられるので、統合データベース50を参照すれば、どのような特徴または性質を持つ顧客がどのような購入傾向を持つかという情報を得ることができる。
あるデータ項目について2以上の顧客データの間で値が相違する場合の処理は第1実施形態と同様である。図3の例では鈴木花子の電話番号が二つ存在するので、集約部13Aは最新の値である「03−3333−1111」のみを集約データに含めてもよいし、集約部13Aは「03−2222−3333」および「03−3333−1111」の双方を集約データに含めてもよい。図8は、各購入データベース20の電話番号を含む集約データを示す。
統合データベース50内のレコードの構成は図8の例に限定されるものではなく、統合データベース50に対して任意の正規化または冗長化を行ってよい。
顧客端末40は、顧客が所有または利用するコンピュータである。顧客端末40の例として、据置型または携帯型のパーソナルコンピュータと、タブレット端末および高機能携帯電話機(スマートフォン)などの携帯端末とが挙げられるが、顧客端末40の具体的な種類は限定されない。顧客端末40は集約データの生成を集約サーバ10Aに要求する機能を有し、その機能は例えばウェブブラウザまたは専用アプリケーション・プログラムにより提供される。
集約サーバ10Aは、集約データを生成してそのデータを需要者端末30に提供するコンピュータである。第1実施形態と同様に、集約サーバ10Aは1台のコンピュータで構成されてもよいし、複数台のコンピュータで構成されてもよい。集約サーバ10Aの一般的なハードウェア構成は集約サーバ10と同様であり、集約サーバ10Aの各機能要素の実現方法も集約サーバ10と同様である。
集約サーバ10Aは機能的構成要素として受信部11A、データ取得部12A、集約部13A、および送信部14Aを備える。集約部13Aは、集約データを生成するデータ統合部131と、集約データを需要者端末30に提供する検索部132を備える。
データ統合部131は、少なくとも二つの購入データを顧客ごとに集約することで集約データを生成し、その集約データを統合データベース50に格納する機能要素である。
データ統合部131は、購入データの集約を希望する顧客からの要求に基づいて集約データを生成してもよい。本実施形態ではこの処理を「手動集約」という。具体的には、データ統合部131は顧客端末40からの所定のHTTPリクエストに応じて、その顧客が集約しようとする少なくとも二つの顧客IDの入力を受け付けるためのウェブページ(登録ページ)をその顧客端末40に送信する。顧客端末40はその登録ページを表示する。顧客がその登録ページを介して少なくとも二つの顧客IDを入力すると顧客端末40はそれらの顧客IDを含むデータ信号を集約要求として集約サーバ10Aに送信する。データ統合部131はそれらの顧客IDを検索条件としてデータ取得部12Aに出力することで、データ取得部12Aに顧客の購入データを抽出させる。データ取得部12Aが各購入データベース20から購入データを抽出すると、データ統合部131はその顧客のための顧客統合IDを生成し、該顧客の顧客データおよび購入詳細データを集約することで集約データを生成する。そして、データ統合部131はその集約データを統合データベース50に格納する。
データ統合部131は、顧客からの要求を契機とするのではなく、定期的に、または集約サーバ10Aの管理者による操作を契機に集約データを生成してもよい。本実施形態ではこの処理を「自動集約」という。データ統合部131はデータ取得部12Aに検索指示を出力し、データ取得部12Aがその指示に応じて各購入データベース20から抽出した購入データを取得する。続いて、データ統合部131は第1実施形態における集約部13と同様にそれらの購入データを一つに統合する。すなわち、データ統合部131は2以上の顧客データの同一性を判定してそれらの顧客データを一つの顧客データに集約する処理を個々の顧客について実行する。ある一人の顧客についての顧客データを集約した場合には、データ統合部131はその顧客データに対して顧客統合IDを付与する。続いて、データ統合部131はその顧客データの顧客ID(顧客オリジナルID)を含む購入詳細データを集約し、集約した購入詳細データに対して顧客統合IDを付与する。これにより一人の顧客についての集約データが生成される。各顧客について集約データを生成すると、データ統合部131はその集約データを統合データベース50に格納する。
データ取得部12Aは少なくとも二つの流通業者の少なくとも二つの購入データベース20から1以上の顧客の購入データを取得する機能要素である。
データ統合部131から検索条件(複数の顧客ID)が入力された場合、すなわち手動集約の場合には、データ取得部12Aはそれらの顧客IDに合致する購入データを各購入データベース20から抽出し、その購入データをデータ統合部131に出力する。
データ統合部131から検索指示が入力される場合、すなわち自動集約の場合には、データ取得部12Aはその検索指示に備えて各購入データベース20用の検索条件を予め記憶している。図7の例では、データ取得部12Aは購入データベース201用の検索条件と、購入データベース202用の検索条件と、購入データベース203用の検索条件と、購入データベース204用の検索条件とを予め記憶している。検索指示が入力されると、データ取得部12Aは各購入データベース20にアクセスして、対応する検索条件に合致する購入データを抽出する。そして、データ取得部12Aは各購入データベース20から抽出した購入データをデータ統合部131に出力する。
受信部11Aは、需要者端末30から検索条件を受信する機能要素である。受信部11Aは受信した検索条件を検索部132に出力する。
検索部132は、受信部11Aから入力された検索条件に合致する集約データを統合データベース50から抽出する機能要素である。検索部132は抽出した集約データを送信部14Aに出力する。
送信部14Aは、入力された集約データを、検索条件を送ってきた需要者端末30に送信する機能要素である。本実施形態でも、集約データは、検索条件に対する応答、すなわち検索結果である。
次に、図9〜図11を参照しながら、データ提供システム1A(集約サーバ10A)の動作を説明するとともに本実施形態に係るデータ提供方法について説明する。
図9は手動集約を示す。まず、顧客端末40が手動集約のための登録ページを集約サーバ10Aに要求し(ステップS21)、データ統合部131がその要求に応じて登録ページを顧客端末40に送信する(ステップS22)。顧客端末40はその登録ページを表示し(ステップS23)、顧客がそのページを介して入力する少なくとも二つの顧客IDの入力を受け付け(ステップS24)、それらの顧客IDを含む集約要求を集約サーバ10Aに送信する(ステップS25)。
集約サーバ10Aでは、データ統合部131がその集約要求を受信し(ステップS25)、データ取得部12Aがその要求で示される複数の顧客IDを用いて各購入データベース20を検索することで複数の購入データを抽出する(ステップS26、データ取得ステップ)。データ統合部131はそれらの購入データを集約することで集約データを生成し(ステップS27、集約ステップ)、その集約データを統合データベース50に格納する(ステップS28、集約ステップ)。以上の処理により、登録ページから指示を出した顧客の購入データが集約される。
図10は自動集約を示す。まず、データ取得部12Aが所定のタイミングで各購入データベース20を検索してそれぞれの購入データベース20から購入データを抽出する(ステップS31、データ取得ステップ)。続いて、データ統合部131が複数の購入データを顧客毎に集約することで集約データを生成し(ステップS32、集約ステップ)、その集約データを統合データベース50に格納する(ステップS33、集約ステップ)。
図11は上流企業への集約データの提供を示す。ある需要者端末30が検索条件を集約サーバ10Aに送信すると、受信部11Aがその検索条件を受信する(ステップS41、受信ステップ)。続いて、検索部132がその検索条件を用いて統合データベース50を検索し、該条件に合致する集約データを抽出する(ステップS42、集約ステップ)。そして、送信部14Aがその集約データを検索条件への応答(検索結果)として需要者端末30に送信する(ステップS43、送信ステップ)。この一連の処理により、上流企業はその集約データを任意に利用することができる。
次に、図12を参照しながら、コンピュータを集約サーバ10または10Aとして機能させるためのデータ提供プログラムP1を説明する。
データ提供プログラムP1はメインモジュールP10、受信モジュールP11、データ取得モジュールP12、集約モジュールP13、および送信モジュールP14を含む。メインモジュールP10は、購入データの集約および提供を統括的に実行する部分である。受信モジュールP11、データ取得モジュールP12、集約モジュールP13、および送信モジュールP14を実行することにより実現される機能はそれぞれ、第1実施形態における受信部11、データ取得部12、集約部13、および送信部14の機能と同様であるか、または第2実施形態における受信部11A、データ取得部12A、集約部13A(データ統合部131および検索部132)、および送信部14Aと同様である。
データ提供プログラムP1は、例えば、CD−ROMやDVD−ROM、半導体メモリなどの有形の記録媒体に固定的に記録された上で提供されてもよい。あるいは、データ提供プログラムP1は、搬送波に重畳されたデータ信号として通信ネットワークを介して提供されてもよい。
以上説明したように、本発明の一側面に係るデータ提供システムは、少なくとも二つの流通業者の少なくとも二つの購入データベースから1以上の顧客の購入データを抽出するデータ取得部であって、該少なくとも二つの購入データベースが互いに独立したものである、該データ取得部と、データ取得部により少なくとも二つの購入データベースから抽出された購入データを顧客毎に集約することで集約データを生成する集約部と、集約データを上流企業の需要者端末に送信する送信部とを備える。
本発明の一側面に係るデータ提供方法は、プロセッサを備えるデータ提供システムにより実行されるデータ提供方法であって、少なくとも二つの流通業者の少なくとも二つの購入データベースから1以上の顧客の購入データを抽出するデータ取得ステップであって、該少なくとも二つの購入データベースが互いに独立したものである、該データ取得ステップと、データ取得ステップにおいて少なくとも二つの購入データベースから抽出された購入データを顧客毎に集約することで集約データを生成する集約ステップと、集約データを上流企業の需要者端末に送信する送信ステップとを含む。
本発明の一側面に係るデータ提供プログラムは、少なくとも二つの流通業者の少なくとも二つの購入データベースから1以上の顧客の購入データを抽出するデータ取得ステップであって、該少なくとも二つの購入データベースが互いに独立したものである、該データ取得ステップと、データ取得ステップにおいて少なくとも二つの購入データベースから抽出された購入データを顧客毎に集約することで集約データを生成する集約ステップと、集約データを上流企業の需要者端末に送信する送信ステップとをコンピュータに実行させる。
このような側面においては、互いに独立した各流通業者の購入データベースから抽出された購入データが顧客毎に集約されることで集約データが生成され、その集約データが上流企業に提供される。したがって、上流企業は、個々の流通業者に点在する購入データがまとまった集約データを得ることができる。すなわち、複数の流通業者に散らばっている購入データを、そのデータを所望する上流企業に一括で提供することができる。
需要者端末は集約サーバにアクセスさえすれば、個々の購入データベースにアクセスすることなくそれらの購入データベース内の購入データを集約データとして一括して得ることができる。データ提供システムを採用することで、需要者端末が各購入データベースにアクセスする場合と比べて、購入データを得るための通信回数が減るので、ネットワークの通信負荷を低減することができる。
他の側面に係るデータ提供システムでは、需要者端末から検索条件を受信する受信部をさらに備え、データ取得部が、検索条件の受信を契機として、少なくとも二つの購入データベースから、該検索条件に合致する1以上の顧客の購入データを抽出してもよい。この場合には、上流企業の要求(検索条件)に合致する集約データを上流企業に提供することができる。
他の側面に係るデータ提供システムでは、需要者端末から検索条件を受信する受信部をさらに備え、集約部が、データ取得部により少なくとも二つの購入データベースから抽出された購入データを顧客毎に集約することで集約データを生成し、該集約データを統合データベースに格納するデータ統合部と、受信部により受信された検索条件に合致する集約データを統合データベースから抽出する検索部とを備え、送信部が、検索部により抽出された集約データを需要者端末に送信してもよい。集約データを統合データベースに格納することで、上流企業の要求(検索条件)を受け付けた際に、各購入データベースにアクセスすることなくその要求に合致する集約データを該上流企業に提供することができる。
以上、本発明をその実施形態に基づいて詳細に説明した。しかし、本発明は上記実施形態に限定されるものではない。本発明は、その要旨を逸脱しない範囲で様々な変形が可能である。
上記実施形態では集約サーバ10,10Aが需要者端末30からの検索条件に応じて集約データをその需要者端末30に送信するが、集約サーバは需要者端末30から検索条件を受信することなく集約データを需要者端末30に送信してもよい。すなわち、上流企業への集約データの提供はプル型配信ではなくプッシュ配信でもよい。
上記第2実施形態の変形として、集約サーバ10Aは購入詳細データを集約することなく顧客データを集約して、その顧客データを統合データベース50に格納してもよい。この場合、データ統合部131は手動集約または自動集約のいずれかにより顧客データを集約し、集約された顧客データ(図8の上に示す、顧客属性を示すデータに相当)を統合データベース50に格納する。需要者端末30から検索条件を受信すると、集約部13Aは、検索条件に合致する顧客データを統合データベース50から抽出する。続いて、集約部13Aは、データ取得部12Aを介して、検索条件と抽出された顧客データとに対応する購入詳細データを各購入データベース20から取得する。そして、集約部13Aは、抽出された顧客データに基づいて複数の購入詳細データを一つに統合する処理を各顧客について実行する。送信部14Aはその処理により得られた集約データを需要者端末30に送信する。この変形においても、第2実施形態と同様に、集約サーバ10Aは顧客データおよび購入詳細データの双方が集約された集約データを需要者端末30に提供する。