以下、本発明に係るエレベータの実施形態について、図面を参照しながら説明する。
<エレベータの全体構成>
実施形態に係るエレベータ10は、例えば、図1に示すように、昇降路12の最上部に機械室14を備えたトラクション式エレベータであって、機械室14に設置された巻上機16の主シーブ18に掛けられた主ロープ20の一端部に乗りかご22が連結され、他端部に釣合い錘24が連結された構成を有している。
不図示の電動機からの回転動力が、不図示の動力伝達機構を介し、巻上機16の主シーブ18に伝達されて、主シーブ18が回転駆動されると、主シーブ18に掛けられた主ロープ20に連結されている乗りかご22が、不図示のガイドレールに案内されて、昇降路12内を昇降する。
乗りかご22は、上枠26、下枠28、上枠26と下枠28とを連結する一対の竪枠30(図面には、手前の竪枠30のみが現れている)からなる方形の枠体を有し、主ロープ20は、上枠26に取り付けられている。
下枠28は、平面視で方形をした床受枠32を支持しており、床受枠32上にかご室34の構成部材である床36が設置されている。
かご室34の出入口には、かごドア装置38が設けられている。かごドア装置38は、竪枠30の各々に水平に固定された一対の支持部材40(図面には、手前の支持部材40のみが現れている)の一端部に取り付けられている。
異なる階毎に設けられている乗り場42a、42b、42c各々には、乗り場ドア装置44a、44b、44cが設置されている。乗り場42aが最上階の乗り場であり、乗り場42cが最下階の乗り場である。乗り場42a、42b、42cの構造、および乗り場ドア装置44a、44b、44cの構成は、いずれも、基本的に同じなので、階毎に区別する場合は、アルファベットa,b,cの符号を付し、区別する必要のない場合は、当該符号を省略して説明する。
乗りかご22の各停止階床の乗り場42は、乗りかご22に設けられたかごドア46,48(図2、図3)に連動して開閉される乗り場ドア(不図示)が設置されている。
乗り場ドアは、かごドア46,48の水平移動に伴い、かごドア46,48と係合して開閉される。この係合のための係合装置は、かごドアと乗り場ドアのいずれか一方に、ローラや凹状のブロックを設け、他方にその凹部等に係合する板状の金物(ベーン)を設けた構成を有しており、かごドアの駆動により動力を持たない乗り場ドアを駆動するようにしている。係合装置は、特許文献2に記載されているように公知の装置なので、これ以上の説明は省略する。
かごドア装置38について、主として図2、図3を参照しつつ、適宜、図1、図4〜図6を参照しながら説明する。なお、図3(a)において、後述するドア駆動装置62の図示は省略している。図2、図3に示すように、かごドア装置38は、2枚のかごドア46,48を有する中央両開き方式のかごドア装置である。
出入口50にかごドア装置38が設けられているかご室34は、床36(図1)、床36に立設された壁パネル52、および天井(不図示)等で構成されている。壁パネル52は、方形をした床36三方を囲むと共に、一方の一部が開放されていて、当該開放部が出入口50となっている。出入口50における壁パネル52の左右両側部分は、直角に3回折り返されて縦枠部54A,54B(図4(b)、図4(c)も参照)が形成されている。出入口50における壁パネル52の上部部分は、直角に2回折り返されて(図5)上枠部56が形成されている。
上枠部56において折り返された内側には、出入口50の正面から視て、間口方向(左右方向)に細長い二等辺三角形状をした取付板58が立設されている(図3、図5)。取付板58には、二つの等辺に沿って、L型アングル材からなる一対のバー部材60,61が取り付けられている(図3、図5)。バー部材60は、図3に示すように、出入口50の間口方向において、出入口50中央ほど高く右端ほど低くなるように傾斜しており、バー部材61は、出入口50中央ほど高く左端ほど低くなるように傾斜している。バー部材60,61は、かごドア46,48全閉中におけるかご室34内の気密を出入口50上部にて確保するために設けられているが、この点については後述する。
次に、2枚のかごドア46,48を開閉駆動するドア駆動装置62について説明する。
図2に示すように、ドア駆動装置62は、サポートフレーム64を有する。サポートフレーム64は、一対の支持部材40(図1)間に掛け渡されて、設置されている。
サポートフレーム64には、駆動プーリ66と従動プーリ68とが設けられており、駆動プーリ66と従動プーリ68の間には、無端ベルトであるタイミングベルト70が張架されている。駆動プーリ66は、電動機164(図7)からの回転動力が不図示の動力伝達機構を介して伝達されて、矢印Sの向きに正転され、または矢印Gの向きに逆転される。駆動プーリ66の回転に伴って、タイミングベルト70が走行する。
サポートフレーム64の下部には、出入口50の上方にて間口方向に延びるハンガレール80が設置されている。
ハンガレール80には、一対のドアハンガ82,84が支持されている。ドアハンガ82,84の各々は、ハンガプレート86,88とハンガプレート86,88の各々に回転自在に取り付けられた一対のハンガローラ90,92、94,96とを有する。ドアハンガ82,84は、ハンガローラ90,92、94,96がハンガレール80上を転動することによって、間口方向に案内される。
そして、駆動プーリ66と従動プーリ68との間で平行に掛け渡されているタイミングベルト70の上側部分とハンガプレート86とが、連結板98を介して連結されており、下側部分とハンガプレート88とが、連結板100を介して連結されている。
上記の構成を有するドア駆動装置62において、図2に示す状態から、駆動プーリ66が矢印Sの向きに正転されると、タイミングベルト70は、全体的に時計方向に走行するため、ドアハンガ82とドアハンガ84とは、互いに離れる向きにスライドする。これにより、ドアハンガ82とドアハンガ84にそれぞれ後述するように取り付けられて、ハンガレール80から吊り下げられたかごドア46とかごドア48とが開かれる。
一方、かごドア46とかごドア48とが開かれた状態から、駆動プーリ66が矢印Gの向きに逆転されると、タイミングベルト70は、全体的に反時計方向に走行するため、ドアハンガ82とドアハンガ84とは、互いに接近する向きにスライドし、これに伴って、かごドア46とかごドア48とが閉じられることとなる。
サポートフレーム64には、連結板100によってオン・オフされ、かごドア46,48の全閉状態を検知する全閉検知スイッチ101およびかごドア46,48の全開状態を検知する全開検知スイッチ102が取り付けられている。
ここで、電動機164(図2において不図示)および駆動プーリ66からドアハンガ82,84に至る動力伝達機構をまとめて、開閉ユニット103と称することとする。
続いて、かごドア46,48の詳細な構造、およびかごドア46,48の全閉状態において、かご室34を気密にする構成について説明する。なお、かごドア46とかごドア48とは、同様の構造をしているので、かごドア46について詳細に説明した後、かごドア48については簡単に言及するに止める。
図2、図3に示すように、かごドア46は、ドアパネル104を有する。ドアパネル104は、長方形をした1枚の金属板の両長辺端部が互いに内向きに「コ」字状に屈曲された形状をしている(図4(b))。かごドア46が全開された、図3に示す状態で、出入口50に近い側の屈曲部を戸当り側端部104A、出入口50から遠い側の屈曲部を戸袋側端部104Bと称することとする(図4(b))。
ドアパネル104の上部と下部には、それぞれ、横断面が「コ」字形をしたチャネル材106,108が接合されている。
上側のチャネル材106がハンガプレート86に不図示の締結部材(例えば、ボルト・ナット)によって取り付けられ、ドアパネル104、ひいては、かごドア46がドアハンガ82によって、ハンガレール80から吊り下げられている。
ドアパネル104のかご室34側主面(以下、「表(おもて)面104C」とする。)には、バー部材60と同じ傾斜角で、軟質ゴム製のバー材からなる上部封止部材110が取り付けられている。上部封止部材110は、かごドア46が開かれると、バー部材60から離れ、かごドア46が閉じられて、全閉状態になると、バー部材60に当接し、圧縮されて弾性変形し、バー部材60に密着する(図5)。これにより、かごドア46の上部における気密性が確保される。
図4(b)、図4(c)に示すように、ドアパネル104の戸袋側端部104Bには、取付部材112によって、中空の軟質ゴムチューブからなる戸袋側封止部材114が取り付けられている。戸袋側封止部材114は、かごドア46が開かれると、壁パネル52の縦枠部54Aから離れ、かごドア46が閉じられて、全閉状態になると、図4(c)に示すように、縦枠部54Aに当接し、圧縮されて弾性変形し、縦枠部54Aに密着する。これにより、かごドア46の戸袋側端部における気密性が確保される。
図4(a)に示すように、かごドア46のドアパネル104の戸当り側端部104Aには、戸当りゴム116が設けられている。もう一方のかごドア48のドアパネル122の戸当り側端部122Aにも、戸当りゴム132が設けられている。戸当りゴム116と戸当りゴム132とは、相じゃくりとなっていて、かごドア46,48の全閉状態における封止部材として機能し、これによって、両かごドア46,48の戸当り側端部における気密性が確保される。
図6(a)に示すように、ドアパネル104に接合された下側のチャネル材108には、下部封止部材118が取り付けられている。下部封止部材118は、軟質の合成樹脂からなり、横断面形状において、下方に向かって「ハ」字状に拡開する拡開部118Aを有し、間口方向においてドアパネル104の略全長に亘って設けられている。
拡開部118Aが嵌め込まれ、その先端(「ハ」字状をした両先端)が摺接する溝120Aを有する敷居120が、かご室34を構成する床36(図1参照、図6(a)において不図示)の出入口50側端に、ハンガレール80(図2)と平行に取り付けられている。下部封止部材118は、拡開部118Aの前記両先端が若干狭められた状態で溝120Aに嵌め込まれており、その復元力で、当該両先端が溝120Aの両側壁に密着している。これにより、全閉状態でのかごドア46の下部における気密性が確保されている。
また、下側のチャネル材108の両端部には、下部封止部材118の両端に密接させて、一対のガイドシュー(不図示)が取り付けられている。当該ガイドシューの各々は、略直方体をしたゴム部材の表面にフッ素樹脂を焼き付けてなるものであり、敷居120の溝120Aに嵌合されている。かごドア46が開閉される際には、溝120A内を間口方向に摺動する前記一対のガイドシューによって、ドアパネル104が敷居120に案内される。
図2、図3に示すように、もう一方のかごドア48も、長方形をした1枚の金属板の両長辺端部が「コ」字状に屈曲されて形成された戸当り側端部122Aおよび戸袋側端部122Bを含むドアパネル122を有する。
ドアパネル122の上部と下部には、それぞれ、チャネル材124,126が接合されており、チャネル材124とハンガプレート88とが不図示の締結部材によって締結されている。
ドアパネル122のかご室34側主面(表面)122Cには、バー部材61と同じ傾斜角で、上部封止部材128が取り付けられている。
ドアパネル122の戸袋側端部122Bには、かごドア48が全閉状態のときに、縦枠部54Bと当接する戸袋側封止部材130が取付部材(不図示)によって取り付けられている。
ドアパネル122の戸当り側端部122Aには、上述した通り、戸当りゴム116と相じゃくりとなる戸当りゴム132が設けられている。
なお、ドアパネル122に接合された下側のチャネル材126の長手方向における両端にも、前記ガイドシューと同じガイドシュー(不図示)が一対取り付けられており、当該一対のガイドシューの間には、下部封止部材118と同様の下部封止部材が取り付けられているのであるが、当該下部封止部材についての図示は省略する。
上記のように、かごドア全閉時にかご室内が気密になるように構成したエレベータには、昇降中の耳詰まりを緩和する目的で気圧調整装置150が設けられている。
図1に戻り、気圧調整装置150は、例えば、乗りかご22の上部に設置されている。図7に示すように、気圧調整装置150は、かご室34内を加圧する加圧ブロア152とかご室34内を減圧する減圧ブロア154を有している。
気圧調整装置150のオン・オフおよび加・減圧の程度(出力)は、制御装置156によって制御される。制御装置156は、CPU158にROM160およびRAM162が接続された構成を有している。制御装置156には、例えば、マイコンが用いられる。
制御装置156は、ドア駆動装置62において駆動源となる電動機164の回転制御も行う。電動機164には、その出力軸の回転角を検出するロータリエンコーダ166が設けられている。回転角をカウントすることで、開閉中におけるかごドア46,48の、開閉方向における位置が特定される。制御装置156には、このロータリエンコーダ166および全閉検知スイッチ101、全開検知スイッチ102(図2)が接続されており、全閉検知スイッチ101、全開検知スイッチ102の検知状態およびロータリエンコーダ166からの出力結果に基づいて、前記出力軸の回転角を制御することにより、かごドア46,48の開閉制御を実施する。
なお、電動機164は、その出力軸を一定速度で回転させようとするとき、電動機164への供給電流の大きさが前記出力軸にかかる負荷トルクの大きさにより変化する特性を有する電動機であり、例えば、DCブラシレスモータが用いられる。よって、前記供給電流(電動機164に流れる電流)の大きさは、電動機164に掛かる負荷の大きさの指標値として利用できる。
制御装置156は、また、電動機164への前記供給電流(電動機164に流れる電流)をモニタし、モニタ結果を利用して、後述するように、気圧調整装置150の点検処理を実行する。
エレベータ10は、また、機械室14に設置された主制御盤168を有している(図1)。主制御盤168は、巻上機16、電動機164、気圧調整装置150等に所定の電力を供給すると共に、これらを統括的に制御して、エレベータ10の円滑な運転を実現する。主制御盤168は、エレベータ10が所在するビルの監視室および当該ビルから離れたところにある保守センターにそれぞれ設置されたコンピュータとネットワークを介して接続されており、エレベータ10に故障が発生した場合、当該故障の内容を前記監視室、保守センターに連絡する。なお、図7では、制御・通信系統の関係のみを図示している。
<耳詰まり緩和のためのかご室内気圧調整>
気圧調整装置150(図1、図7)による、乗りかご22の昇降中におけるかご室34内の気圧調整について図8を参照しながら説明する。
図8に実線で示すのは、気圧調整装置150によって調整すべきかご室34内の気圧調整パターンであり、横軸に出発階から停止階までの時間経過[s]を、縦軸にかご室内の気圧[hPa]を採ったグラフである。図8において、破線は、乗りかご22の昇降位置に対応するかご室34外の大気圧の変化を示したグラフである。なお、かご室34内の気圧調整を行わずに乗りかご22が昇降すると、かご室34内も破線で示したのとほぼ同様のパターンで気圧が変化する。
図8(a)は、乗りかご22が最上階(乗り場42a)から最下階(乗り場42c)まで一気に下降する下降運転時における気圧調整パターンを示している。図8(b)は、乗りかご22が最下階(乗り場42c)から最上階(乗り場42a)まで一気に上昇する上昇運転時における気圧調整パターンを示している。気圧調整パターンは、ROM160(図7)に記憶されている。
下降運転時には、制御装置156(のCPU158)は、最上階で加圧ブロア152をオンし、中間点で加圧ブロア152をオフすると共に減圧ブロア154をオンして、図8(a)に示す気圧調整パターンに従って乗りかご22のかご室34内の気圧が変化するように加圧ブロア152および減圧ブロア154を制御する。乗りかご22が最下階に到着すると、制御装置156は、減圧ブロア154をオフする。
上昇運転時には、制御装置156(のCPU158)は、最下階で減圧ブロア154をオンし、中間点で減圧ブロア154をオフすると共に加圧ブロア152をオンして、図8(b)に示す気圧調整パターンに従って乗りかご22のかご室34内の気圧が変化するように減圧ブロア154および加圧ブロア152を制御する。乗りかご22が最上階に到着すると、制御装置156は、加圧ブロア152をオフする。
かご室34内の気圧調整をしない場合、乗りかご22の昇降に伴って、かご室34内の気圧が、破線で示すように細長いS字状(上昇運転時は逆S字状)に変化する。この場合、昇降の半ばにおいて、かご室34内の気圧の変化率が大きい時間が長く継続するため耳詰まりの程度が大きくなり不快感が強くなる。
そこで、出発階から到着階に至る間のかご室34内の気圧の変化率が一定になるように気圧調整することにより(直線状の気圧調整パターンとすることにより)、耳詰まりの程度が緩和されることとなる。なお、気圧調整パターンは、直線状に限らず、階段状(下降運転時は上り階段状、上昇運転時は下り階段状)にすることで耳詰まりの程度が緩和されることは知られており、エレベータ10において、階段状の気圧調整パターンを採用しても構わない。
<気圧調整具合の点検>
次に、気圧調整装置150によるかご室34内の気圧調整が正常に成し得る状態にあるのか否かの点検処理について説明する。
〔点検原理〕
具体的な点検処理の説明の前に、その原理について説明する。
かごドア46,48の開閉は、上記の通り、電動機164を駆動源としてなされる。かごドア46,48の開閉中には電動機に負荷が掛かる。負荷の大きさ(程度)は種々の要因によって変動する。
かごドア46,48が全閉のときに、気圧調整装置150の減圧ブロア154によって、かご室34内を減圧し、かご室34外の大気圧に対して負圧にするとかごドア46,48は、かご室34内外の気圧差に起因して、図6(a)に矢印F1で示すかご室内側に吸引される。そうすると、例えば、下部封止部材118および前記ガイドシュー(不図示)が敷居120の溝120Aの側壁120Bに押し付けられる。これにより、下部封止部材118および前記ガイドシューと敷居120との間の摩擦力が増大する。その結果、かごドア46,48を開き始めるのに要する力(以下、「戸開開始力」という。)が、減圧ブロア154を作動させていないとき(すなわち、かご室34内外の気圧に差がないとき)と比較して増大し、ひいては電動機164に掛かる負荷が増大する。
すなわち、減圧ブロア154が正常に作動した場合には、減圧ブロア154を作動させないときよりも電動機164に掛かる負荷が増大する。そこで、この負荷の程度を検出することにより、減圧ブロア154が正常に作動するかどうかの点検が行えることとなる。
なお、加圧ブロア152の点検も同様の原理で行うことができる。かご室34内を加圧し、かご室34外の大気圧に対して正圧にするとかごドア46,48は、かご室34内外の気圧差に起因して、図6(a)に矢印F2で示すかご室34外側に押圧される。そうすると、下部封止部材118および前記ガイドシューが敷居120の溝120Aの側壁120Cに押し付けられ、これにより、下部封止部材118および前記ガイドシューと敷居120との間の摩擦力が増大し、その結果、戸開開始力が増大して、電動機164に掛かる負荷が増大するからである。
なお、かごドア46,48が開き始めて、戸当りゴム116,132、上部封止部材110,128、および戸袋側封止部材114,130によって気密性が保持されている箇所に隙間が生じると、気圧調整装置150を作動し続けていても、一気に、かご室34内外の気圧差が略解消されるため、気圧調整装置150を作動していない場合と比較して、電動機164に掛かる負荷に差がなくなる。
〔点検処理〕
上記の原理に基づく点検は制御装置156によってなされる。すなわち、制御装置156は、気圧調整装置150によるかご室34内の気圧調整が正常に成し得る状態にあるのか否かを点検する点検手段として機能する。
制御装置156は、CPU158がROM160に格納されている点検処理プログラムを実行することにより気圧調整具合の点検を実行する。
<実施形態1>
実施形態1では、電動機164に流れる電流の大きさ(電流値)を電動機164に掛かる負荷の大きさの指標値として用いることとした。
点検処理プログラムの実行に際し、RAM162内には、図9に示すように、前記電流値を記憶する電流値記憶領域170が設定されている。この電流値記憶領域170に記憶される電流値については、点検処理プログラムの説明の中で順次言及する。点検処理プログラムは、基準負荷データ取得処理プログラムと正常・故障判定処理プログラムとを含む。
(基準負荷データ取得処理)
制御装置156(のCPU158)で実行される点検処理プログラムの内、先ず、基準負荷データ取得処理について、図10〜図13に示すフローチャートに基づいて説明する。
基準負荷データ取得処理プログラムは、主制御盤168からの指示を待って起動される(ステップS101)。主制御盤168は、乗りかご22を、最下階に停止させた状態で当該指示を出す。
主制御盤168からの基準負荷データの取得指示があると(ステップS101でYES)、CPU158は、全閉検知スイッチ101の検知信号を参照し(ステップS102)、かごドア46,48が全閉になっていなければ(ステップS102でNO)、かごドア46,48を全閉にし(ステップS103)、全閉になっていれば(ステップS102でYES)、ステップS103をスキップして、ステップS104へ進む。
CPU158は、電動機164に流れる電流の値(電流値)のモニタを開始する(ステップS104)と共に、電動機164を起動してかごドア46,48を開く(ステップS105)。
CPU158は、全閉検知スイッチ101の検知信号を参照し、当該検知信号が、かごドア46,48が全閉であることを示さなくなる時点まで(ステップS106でYES)、すなわち、かごドア46,48が開き始めるまで、電動機164に流れる電流の値(電流値)のモニタを継続する(ステップS104)。前記検知信号が、かごドア46,48が全閉であることを示さなくなる時点(ステップS106でYES)、すなわち、かごドア46,48が開き始める時点で、戸当りゴム116,132、上部封止部材110,128、および戸袋側封止部材114,130によって気密性が保持されている箇所に僅かに隙間生じる。
前記検知信号が、かごドア46,48が全閉であることを示さなくなると(ステップS106でYES)、CPU158は、その時点までにモニタした電流値の最高値(最高電流値)ID0を電流値記憶領域170に記憶する(ステップS107)。なお、ステップS101〜ステップS107の間、気圧調整装置150は作動させていない。
ステップS102〜S107の処理により、気圧調整装置150による気圧調整がなされていない状態で全閉状態のかごドア46,48が開き始めるまでに電動機164に掛かる負荷の大きさの指標値(オフ時基準指標値)として、最高電流値ID0が取得され、これが電流値記憶領域170に記憶されることとなる。
ステップS107が終了すると、CPU158は、かごドア46,48を全閉にする(ステップS108)。つぎに、CPU158は、減圧ブロア154をオンし、最高出力でかご室34内を減圧し(ステップS109)、所定時間が経過するのを待つ(ステップS110)。ここで、前記所定時間は、かご室34内が前記最高出力に見合うまで減圧されるのに要する時間である。
所定時間が経過すると(ステップS110でYES)、CPU158は、ステップS111〜S114を実行する。ステップS111〜S114は、上述したステップS104〜ステップS107と同様の処理である。
すなわち、CPU158は、電動機164に流れる電流の大きさ(電流値)のモニタを開始する(ステップS111)と共に、電動機164を起動してかごドア46,48を開く(ステップS112)。
CPU158は、全閉検知スイッチ101の検知信号を参照し、当該検知信号が、かごドア46,48が全閉であることを示さなくなる時点まで(ステップS113でYES)、電動機164に流れる電流の値(電流値)のモニタを継続する(ステップS111)。
前記検知信号が、かごドア46,48が全閉であることを示さなくなると(ステップS113でYES)、CPU158は、その時点までにモニタした電流値の最高値(最高電流値)ID1を電流値記憶領域170に記憶する(ステップS114)。
ステップS108〜S114の処理により、気圧調整装置150の減圧ブロア154が正常に作動してかご室34内の気圧が調整された状態で、全閉状態のかごドア46,48が開き始めるまでに電動機164に掛かる負荷の大きさの指標値(オン時基準指標値)として、最高電流値ID1が取得され、これが電流値記憶領域170に記憶されることとなる。
次に、CPU158は、(式1)により、ID1とID0の差分を演算し、演算結果(ΔIDs)を電流値記憶領域170に記憶する(ステップS115)。
ΔIDs=ID1−ID0 … (式1)
ΔIDsは、かご室34内が減圧されたことによって、全閉状態のかごドア46,48が開き始めるまでに電動機164に掛かる負荷の程度を指標する値として利用できる。ID1とID0の差分をとるのは、かご室34内が減圧されたことによって生じる戸開開始力の増分が抽出できるからである。
ΔIDsは、気圧調整装置150の減圧ブロア154が正常に作動してかご室34内の気圧が調整された状態で、全閉状態のかごドア46,48が開き始めるまでに電動機164に掛かる負荷の程度を指標する基準負荷データとして電流値記憶領域170に記憶される。
基準負荷データΔIDsが記憶されると(ステップS115)、CPU158は、減圧ブロア154をオフし(ステップS116)、かごドア46,48を全閉にした後(ステップS117)、主制御盤168に、最下階での基準負荷データの取得が終了したことを通知する(ステップS118)。
当該通知を受け取ると、主制御盤168は、乗りかご22を最上階まで上昇させた上で、制御装置156に対し、最上階での基準負荷データの取得指示を出す。
当該指示を受けると(ステップS201でYES)、制御装置156のCPU158は、ステップS202〜ステップS218の処理を実行する。
ステップS201〜ステップS218の各々は、基本的に上述したステップS101〜ステップS118とそれぞれ同様の処理である。よって、対応するステップ同士には、ステップ番号の下2桁に同じ番号を付して、ステップS202〜ステップS218の個々の詳細な説明は省略し、以下、ステップS101〜ステップS118と異なる部分を中心に説明する。
ステップS101〜S118は、乗りかご22が最下階に停止している状態で実行されたのに対し、ステップS201〜S218は、乗りかご22が最上階に停止している状態で実行される(ステップS201)。
ステップS202〜S206を経て取得された最高電流値IU0、すなわち、最上階において、気圧調整装置150による気圧調整がなされていない状態で全閉状態のかごドア46,48が開き始めるまでに電動機164に掛かる負荷の大きさの指標値(オフ時基準指標値)として取得された最高電流値IU0は、電流値記憶領域170に記憶される(ステップS207)。
ステップS109では、減圧ブロア154でかご室34内が減圧したのに対し、ステップS209では、加圧ブロア152でかご室34内を加圧する。ステップS210の所定時間とは、最高出力で加圧されたかご室34内が、当該最高出力に見合うまで加圧されるのに要する時間である。
ステップS208〜S213を経て取得された最高電流値IU1、すなわち、気圧調整装置150の加圧ブロア152が正常に作動してかご室34内の気圧が調整された状態で、全閉状態のかごドア46,48が開き始めるまでに電動機164に掛かる負荷の大きさの指標値(オン時基準指標値)として、取得された最高電流値IU1は、電流値記憶領域170に記憶される(ステップS214)。
CPU158は、取得したIU1とIU0の差分を(式2)により演算し、演算結果(ΔIUs)を電流値記憶領域170に記憶する(ステップS215)。
ΔIUs=IU1−IU0 … (式2)
ΔIUsは、かご室34内が加圧されたことによって、全閉状態のかごドア46,48が開き始めるまでに電動機164に掛かる負荷の程度を指標する値として利用できる。IU1とIU0の差分をとるのは、かご室34内が加圧されたことによって生じる戸開開始力の増分が抽出できるからである。
ΔIUsは、気圧調整装置150の加圧ブロア152が正常に作動してかご室34内の気圧が調整された状態で、全閉状態のかごドア46,48が開き始めるまでに電動機164に掛かる負荷の程度を指標する基準負荷データとして電流値記憶領域170に記憶される。
基準負荷データΔIUsが記憶されると(ステップS215)、CPU158は、加圧ブロア152をオフし(ステップS216)、かごドア46,48を全閉にした後(ステップS217)、主制御盤168に、最上階での基準負荷データの取得が終了したことを通知して(ステップS218)、一連の基準負荷データ取得処理プログラムを終了する。
以上の基準負荷データ取得処理は、作業員によって、かご室34内を気密にするための部材(上部封止部材110,128、戸袋側封止部材114,130、戸当りゴム116,132、下部封止部材118)に異常が無いことが確認され、気圧調整装置150が正常に作動することが確認されて間もなくの間に実行される。すなわち、気圧調整装置150が正常に作動してかご室34内の気圧が正常に調整された状態で実行される。「かご室34内の気圧が正常に調整された状態」とは、気圧調整装置150の出力に見合う分の気圧調整がなされた状態である。
基準負荷データ取得処理は、作業員による定期・不定期の点検の際に行われ、電流値記憶領域170に記憶された最高電流値ID0、ID1、IU0、IU1、基準負荷データΔIDs、ΔIUsが更新される。
ここで、最下階でかご室34内を減圧し(ステップS109)、最上階でかご室34内を加圧して(ステップS209)、基準負荷データΔIDs、ΔIUsを取得する理由は以下の通りである。最下階は、これ以外の階と比較して、かご室34外の気圧が最も高いため、かご室34内を減圧すれば、かご室34内外の気圧差を最も高くすることができる。その結果、電動機164に掛かる負荷を最も大きくできるため、上述した原理に基づく点検を効果的に行えるからである。また、最上階は、これ以外の階と比較して、かご室34外の気圧が最も低いため、かご室34内を加圧すれば、かご室34内外の気圧差を最も高くすることができる。その結果、電動機164に掛かる負荷を最も大きくできるため、上述した原理に基づく点検を効果的に行えるからである。
(正常・故障判定処理)
続いて、以上により取得された基準負荷データ(ΔIDs、ΔIUs)に基づく、気圧調整装置150(加圧ブロア152、減圧ブロア154)等の正常・故障判定処理について説明する。
本実施形態では、以下に記す(i)、(ii)、(iii)の3種類の故障(不具合)を検出することとしている。
(i) 気圧調整装置150を作動すべくオンしても、作動しない故障(以下、「オフ故障」と言う。)である。
このオフ故障には、気圧調整装置150は正常に作動するが、かご室34内を気密にするための部材(上部封止部材110,128、戸袋側封止部材114,130、戸当りゴム116,132、下部封止部材118、以下これらの部材を総称するときは「封止部材」と言う。)の脱落や重度の損傷のために、かご室34内の気圧調整(減圧および加圧)がなされないといった不具合も含めることとする。
封止部材が脱落したり重度に損傷したりしていて、かごドア46,48の全閉状態におけるかご室34内の気密性が大きく損なわれている場合、気圧調整装置150が正常に作動しても、かご室34内外の気圧差はほとんど生じない。このため、気圧調整装置150を作動させた場合とさせない場合とで、かごドア46,48を開き始めるのに電動機164に掛かる負荷の大きさの差が、気圧調整装置150が非作動となる故障を起こしたときと同程度になるからである。
(ii) 気圧調整装置150をオンしていないにも関わらず、または、作動中の気圧調整装置150を停止すべくオフしたにも関わらず、気圧調整装置150が作動し続ける故障(以下、「オン故障」と言う。)である。
(iii) (a)気圧調整装置150は、オンするものの、制御装置156のCPU158からの指示に見合うだけの出力が得られないか、(b)封止部材の軽度の損傷の為、かご室34の気密性が少し損なわれていて、加圧不足または減圧不足を来している不具合(以下、「調整不足」と言う。)である。
以下、制御装置156のCPU158が実行する正常・故障判定処理プログラムを、図14〜図19に示すフローチャートに基づいて説明する。
図14、図15に示すステップS301〜S318は、基本的に、制御装置156で実行する処理としては、図10、図11に示すステップS101〜S118と同様である。よって、ステップS301〜S318は、そのステップ番号の下2桁に対応するステップS101〜S118のステップ番号の下2桁と同じ番号を付して、詳細な説明については省略し、要点のみを述べることとする。
先ず、最下階において(ステップS301でYES)、気圧調整装置150は非作動とすべくオフした状態で(すなわち、制御装置156が気圧調整装置150を操作しない状態で)、全閉状態のかごドア46,48が開き始めるまでに電動機164に掛かる負荷の大きさの指標値(オフ時点検指標値)として、電動機164に流れる電流の最高電流値Id0を取得し、電流値記憶領域170に記憶する(ステップS302〜S307)。
続いて、気圧調整装置150の減圧ブロア154を作動すべくオンした状態で(ステップS309)、全閉状態のかごドア46,48が開き始めるまでに電動機164に掛かる負荷の大きさの指標値(オン時点検指標値)として電動機164に流れる電流の最高電流値Id1を取得し、電流値記憶領域170に記憶する(ステップS308〜S314)。なお、ステップS309において制御装置156(のCPU158)は、かご室34内を最高出力で減圧すべく、減圧ブロア154を操作する。
CPU158は、取得したId1とId0の差分を(式3)により演算し、演算結果(ΔIds)を電流値記憶領域170に記憶する(ステップS315)。
ΔIds=Id1−Id0 … (式3)
ΔIdsは、かご室34内を減圧すべく、減圧ブロア154がオンされた状態で、全閉状態のかごドア46,48が開き始めるまでに電動機164に掛かる負荷の程度を指標する値として利用できる。
ΔIdsは、制御装置156によって気圧調整装置150の減圧ブロア154を作動すべく減圧ブロア154をオンした状態で、全閉状態のかごドア46,48が開き始めるまでに電動機164に掛かる負荷の程度を指標する、減圧ブロア154に関するオン時負荷データとして電流値記憶領域170に記憶される。
オン時負荷データΔIdsが記憶されると(ステップS315)、CPU158は、減圧ブロア154をオフし(ステップS316)、かごドア46,48を全閉にした後(ステップS317)、主制御盤168に、最下階でのオン時負荷データの取得が終了したことを通知する(ステップS318)。
ステップS301〜S318に続いて、CPU158は、ステップS401〜S418を実行する。
図16、図17に示すステップS401〜S418は、基本的に、制御装置156で実行する処理としては、図12、図13に示すステップS201〜S218と同様である。よって、ステップS401〜S418は、そのステップ番号の下2桁に対応するステップS201〜S218のステップ番号の下2桁と同じ番号を付して、詳細な説明については省略し、要点のみを述べることとする。
先ず、最上階において(ステップS401でYES)、気圧調整装置150は非作動とすべくオフした状態で(すなわち、制御装置156が気圧調整装置150を操作しない状態で)、全閉状態のかごドア46,48が開き始めるまでに電動機164に掛かる負荷の大きさの指標値(オフ時点検指標値)として、電動機164に流れる電流の最高電流値Iu0を取得し、電流値記憶領域170に記憶する(ステップS402〜S407)。
続いて、気圧調整装置150の加圧ブロア152を作動すべくオンした状態で(ステップS409)、全閉状態のかごドア46,48が開き始めるまでに電動機164に掛かる負荷の大きさの指標値(オン時点検指標値)として電動機164に流れる電流の最高電流値Iu1を取得し、電流値記憶領域170に記憶する(ステップS408〜S414)。なお、ステップS409において制御装置156(のCPU158)は、かご室34内を最高出力で加圧すべく、加圧ブロア152を操作する。
CPU158は、取得したIu1とIu0の差分を(式4)により演算し、演算結果(ΔIus)を電流値記憶領域170に記憶する(ステップS415)。
ΔIus=Iu1−Iu0 … (式4)
ΔIusは、かご室34内を加圧すべく、加圧ブロア152がオンされた状態で、全閉状態のかごドア46,48が開き始めるまでに電動機164に掛かる負荷の程度を指標する値として利用できる。
ΔIusは、制御装置156によって気圧調整装置150の加圧ブロア152を作動すべく加圧ブロア152をオンした状態で、全閉状態のかごドア46,48が開き始めるまでに電動機164に掛かる負荷の程度を指標する、加圧ブロア152に関するオン時負荷データとして電流値記憶領域170に記憶される。
オン時負荷データΔIusが記憶されると(ステップS415)、CPU158は、加圧ブロア152をオフし(ステップS416)、かごドア46,48を全閉にした後(ステップS417)、主制御盤168に、最上階でのオン時負荷データの取得が終了したことを通知する(ステップS418)。
次に、制御装置156(のCPU158)は、電流値記憶領域170に記憶されている最下階で取得したデータに基づいて、減圧ブロア154によるかご室34内の気圧調整が正常に成し得る状態にあるのか否かの判定を行う(ステップS501〜S508)。
点検時に減圧ブロア154が正常に作動する状態、すなわち、制御装置156でオン操作されれば作動し、オン操作されなければ(オフのままであれば)非作動となる状態であり、かつ封止部材に問題がなければ、オン時負荷データΔIdsは、基準負荷データΔIDsと同等の大きさになるはずである。そこで、ΔIDsとΔIdsの大きさを比較する(ステップS500)。
ただし、各負荷データのバラツキを考慮し、例えば、基準負荷データに1割の余裕を見込んで、ΔIdsが(ΔIDs×0.9)以下か否かを判定する(ステップS500)。なお、余裕の程度は、1割に限らないことは勿論であり、実測データのバラツキの度合い等に基づいて適宜設定し得る。
Idsが(ΔIDs×0.9)を下回らなければ(ステップS500でNO)、CPU158は、減圧調整は正常に成し得る状態であると判定する(ステップS501)。
Idsが(ΔIDs×0.9)以下であれば(ステップS500でYES)、「調整不足」かどうかを判定すべく、25%の減圧不足を見込んで、Idsと(ΔIDs×0.75)とを比較する(ステップS502)。なお、減圧不足分は25%に限らず、適宜設定し得るものである。
Idsが(ΔIDs×0.75)を下回らなければ(ステップS502でNO)、すなわち、(ΔIDs×0.75)<Ids≦(ΔIDs×0.9)であれば、減圧時の「調整不足」であると判定する(ステップS503)。
Idsが(ΔIDs×0.75)以下であれば(ステップS502でYES)、「オフ故障」と「オン故障」の可能性が考えられる。そこで、先ず、オフ故障かどうかを調べる。
オフ故障であるかどうかは、Id1(オン時点検指標値)とID0(オフ時基準指標値)とを比較することによりなされる(ステップS504)。ID0とId1との間に有意差ISD1が無い場合はオフ故障と考えられる。有意差ISD1は、実測データに基づき定め得る。
そこで、ID0とId1の差の絶対値をISD1と比較し(ステップS504)、前記絶対値がISD1以下であれば(ステップS504でYES)、オフ故障であると判定し(ステップS505)、前記絶対値がISD1を超えていれば(ステップS504でNO)、次に、オン故障かどうかを調べる(ステップS506)。なお、オフ故障の判定に際し、Id1の比較対象は、ID0に代えて、Id0(オフ時点検指標値)を用いても構わない。
オン故障であるかどうかは、Id0(オフ時点検指標値)とID1(オン時基準指標値)とを比較することによりなされる(ステップS506)。ID1とId0との間に有意差ISD2が無い場合はオン故障と考えられる。有意差ISD2は、実測データに基づき定め得る。
そこで、ID1とId0の差の絶対値をISD2と比較し(ステップS506)、前記絶対値がISD2以下であれば(ステップS506でYES)、オン故障であると判定する(ステップS507)。一方、前記絶対値がISD2を超えていれば(ステップS506でNO)、その他の故障と判定する(ステップS508)。なお、オン故障の判定に際し、Id0の比較対象は、ID1に代えて、Id1(オン時点検指標値)を用いても構わない。
上記の判定(ステップS501、S503、S505、S507、S508のいずれか)が終了すると、CPU158は、判定結果を主制御盤168へ通知する(ステップS509)。
続いて、制御装置156(のCPU158)は、電流値記憶領域170に記憶されている最上階で取得したデータに基づいて、加圧ブロア152によるかご室34内の気圧調整が正常に成し得る状態にあるのか否かの判定を行う(ステップS510〜S518)。
ステップS510〜S519は、基本的に上述したステップS500〜S509と基本的に同様の処理なので、ステップS510〜S519の下1桁には、対応するステップS500〜S509の下1桁と同じ番号を付して、その詳細な説明は省略し、簡単に言及するに止める。
先ず、ΔIusが(ΔIUs×0.9)以下か否かを判定し(ステップS510)、Iusが(ΔIUs×0.9)を下回らなければ(ステップS510でNO)、CPU158は、加圧調整は正常に成し得る状態であると判定する(ステップS511)。なお、余裕の程度が、1割に限らないことは上記の場合と同様であり、実測データのバラツキの度合い等に基づいて適宜設定し得る。
Iusが(ΔIUs×0.9)以下であれば(ステップS510でYES)、「調整不足」かどうかを判定すべく、25%の減圧不足を見込んで、Iusと(ΔIUs×0.75)とを比較する(ステップS512)。なお、減圧不足分は25%に限らす、適宜設定し得るものであることは、上記の場合と同様である。
Iusが(ΔIUs×0.75)を下回らなければ(ステップS512でNO)、すなわち、(ΔIUs×0.75)<Ius≦(ΔIUs×0.9)であれば、加圧時の「調整不足」であると判定する(ステップS513)。
Iusが(ΔIUs×0.75)以下であれば(ステップS512でYES)、オフ故障であるかどうかを調べるべく、ステップS514に進み、Iu1(オン時点検指標値)とIU0(オフ時基準指標値)との間に有意差ISU1があるか否かを判定する。
ステップS514では、IU0とIu1の差の絶対値をISU1と比較し、前記絶対値がISU1以下であれば(ステップS514でYES)、オフ故障であると判定し(ステップS515)、前記絶対値がISU1を超えていれば(ステップS514でNO)、ステップS516に進み、オン故障かどうかを調べる。なお、オフ故障の判定に際し、Iu1の比較対象は、IU0に代えて、Iu0(オフ時点検指標値)を用いても構わない。
ステップS516では、IU1とIu0の差の絶対値を有意差ISU2と比較し、前記絶対値がISU2以下であれば(ステップS516でYES)、オン故障であると判定し(ステップS517)、前記絶対値がISU2を超えていれば(ステップS516でNO)、その他の故障と判定する(ステップS518)。なお、オン故障の判定に際し、Iu0の比較対象は、IU1に代えて、Iu1(オン時点検指標値)を用いても構わない。また、ISU1、ISU2は、それぞれISD1、ISD2と同趣旨の値である。
上記の判定(ステップS511、S513、S515、S517、S518のいずれか)が終了すると、CPU158は、判定結果を主制御盤168へ通知して(ステップS519)、一連の正常・故障判定処理を終了する。
なお、判定結果の通知(ステップS509、S519)を受けた主制御盤168は、その判定結果を監視室および保守センター(図7)に設置されたコンピュータ(不図示)に送信する。
ステップS301〜S318、S401〜418、S500〜S509、S510〜519は、自動定期点検として、例えば、毎日1回、その日の運転開始時など、未だ、乗客が利用しないようなタイミングで実行される。
以上、実施形態1に係るエレベータによれば、気圧調整装置150(減圧ブロア154、加圧ブロア152)が正常に作動してかご室34内の気圧が調整された状態で、全閉状態のかごドア46,48が開き始めるまでに駆動源である電動機164に掛かる負荷の程度を指標する基準負荷データΔIDs、ΔIUsが基準負荷データ記憶部であるRAM162内の電流値記憶領域170に記憶されていて、気圧調整装置制御手段である制御装置156によって気圧調整装置150(減圧ブロア154、加圧ブロア152)を作動すべく気圧調整装置150(減圧ブロア154、加圧ブロア152)をオンした状態で、全閉状態のかごドア46,48開き始めるまでに電動機164に掛かる負荷の程度を指標するオン時負荷データΔIds、ΔIusが取得され、オン時負荷データΔIds、ΔIusと基準負荷データΔIDs、ΔIUsとを比較して、気圧調整装置(減圧ブロア154、加圧ブロア152)によるかご室34内の気圧の調整が正常にし得る状態にあるか否かが判定される。これにより、かご室34内の気圧を測定することなく、気圧調整装置150(減圧ブロア154、加圧ブロア152)によるかご室34内の気圧の調整が正常にし得る状態にあるか否かを点検することができる。
(変形例)
ブロアにおいて、オン故障が起こるのは極めて稀であるため、上記実施形態1に関わらず、以下のようにしても構わない。
すなわち、上記実施形態1では、気圧調整装置150の減圧ブロア154によるかご室34内の気圧の調整が正常にし得る状態にあるか否かの判定に際し(ステップS500)、基準負荷データとしてID1とID0の差分(ΔIDs)を用い(ステップS115)、オン時負荷データとしてId1とId0の差分(ΔIds)を用いた(ステップS315)が、これに限らず、以下のようにしても構わない。
(A)基準負荷データとして、オン時基準指標値であるID1を用い、オン時負荷データとしてオン時点検指標値であるId1を用いることとしても構わない。すなわち、ID1とId1の比較に当たり、両者の差(ID1−Id1)の絶対値をとって、当該差がほとんど無ければ(所定値以下であれば)、減圧調整は正常に成し得る状態であると判定し、差が相当にあれば(前記所定値を超えていれば)、何らかの不具合が生じている(減圧調整が正常に成し得ない状態である)と判定するのである。前記所定値をどれくらいに設定すべきかについては、実験等により求め得る。
(B)上記(A)において、(ID1−Id1)の絶対値が所定値以下であっても、極めて稀に生じるオン故障が生じている可能性も皆無ではない。そこで、確認のため、さらに、上記(A)の処理に続けて、オン故障も検出するのであれば、以下のようにする。
すなわち、図18に示したステップS506の処理を実行する。その結果、オン故障でないと判定されると(ステップS506でNO)、間違いなく、減圧調整は正常に成し得る状態であると判定できる。ステップS506の処理は、上述した通りなので、その説明については省略する。
また、加圧ブロア152による気圧調整においても、減圧ブロア154について説明した上記(A)、(B)と同様の処理を行うこととしても構わない。
<実施形態2>
実施形態1では、電動機164に掛かる負荷の大きさの指標値として、電動機164に流れる電流の大きさ(電流値)を用いた。これに対し、実施形態2では、かごドア46,48が全閉状態の第1の位置から水平方向における所定の位置(第2の位置)まで移動される(開かれる)のに要する所要時間を、電動機164に掛かる負荷の程度を示す指標値として用いることとした。電動機164に掛かる負荷が大きいほど、かごドア46,48を開くのに時間がかかるからである。
かごドア46,48の水平方向における位置は、ロータリエンコーダ166から出力される回転角をCPU158の内部カウンタ(不図示)でカウントすることにより特定することとした。また、前記所要時間は、CPU158の内部タイマー(不図示)で計測することとした。
このため、実施形態2では、実施形態1の電流値記憶領域170(図9)に代えて、図20(a)に示すように、RAM162内には前記所要時間を記憶する所要時間記憶領域172が設定されている。また、図20(b)に示すように、RAM162内には、前記第2の位置のときに前記内部カウンタ(以下、単に「カウンタ」と言う。)が示すカウント値C1を記憶するカウント値設定領域174が設定されている。
以下、実施形態2における、基準負荷データ取得処理と正常・故障判定処理を含む点検処理プログラムをフローチャートに基づいて説明する。なお、実施形態2の点検処理プログラムは、実施形態1とは、取得するデータが異なる以外、例えば、かごドア46,48の開閉タイミングや気圧調整装置150(加圧ブロア152、減圧ブロア154)の制御態様は基本的に同様である。よって、実施形態2において、実施形態1と共通する処理については、その説明を省略するか必要に応じて簡単に言及するに止める。
先ず、基準負荷データ取得処理を、図21〜図24に示すフローチャートに基づいて説明する。
主制御盤168からの基準負荷データの取得指示があると(ステップS601でYES)、CPU158は、全閉検知スイッチ101の検知信号を参照し(ステップS602)、かごドア46,48が全閉になっていなければ(ステップS602でNO)、かごドア46,48を全閉にし(ステップS603)、全閉になっていれば(ステップS602でYES)、ステップS603をスキップして、ステップS604へ進む。
ステップS604では、CPU158はカウンタをリセットする。すなわち、カウンタは、かごドア46,48の全閉位置(第1の位置)をカウント値0(C=0)とし、かごドア46,48の水平方向の位置をロータリエンコーダ166から出力される回転角のカウント値として特定する。
次に、CPU158は、内部タイマー(以下、単に「タイマー」と言う。)をリセットした上で(ステップS605)、タイマーをスタートさせる(ステップS606)と同時に、電動機164を起動して(ステップS607)、かごドア46,48を開く。
CPU158は、カウンタを参照し(ステップS608)、カウント値がカウント値設定領域174で設定されている値「C1」になると(ステップS608でYES)、タイマーをストップする(ステップS609)。ここで、全閉の位置からカウント値がC1になるかごドア46,48の水平方向の位置とは、全閉検知スイッチ101の検知信号が全閉であることを示さなくなった後、前記係合装置によって、かごドアが乗り場ドアと係合する直前の位置(第2の位置)である。
CPU158は、ストップした時点(ステップS609)のタイマーの値「TD0」を所要時間として、所要時間記憶領域172に記憶する(ステップS610)。
ステップS602〜S610の処理により、気圧調整装置150による気圧調整がなされていない状態で、かごドア46,48が全閉状態の第1の位置から水平方向における第2の位置まで移動されるのに要する所要時間TD0が、電動機164に掛かる負荷の大きさの指標値(オフ時基準指標値)として取得され、これが所要時間記憶領域172に記憶されることとなる。
ステップS610が終了すると、CPU158は、かごドア46,48を全閉にした上で(ステップS611)、カウンタをリセットし(ステップS612)、タイマーをリセットする(ステップS613)。
つぎに、CPU158は、減圧ブロア154をオンし、最高出力でかご室34内を減圧し(ステップS614)、所定時間が経過するのを待つ(ステップS615)。ステップS614、S615は、ステップS109、S110(図11)と同じ処理である。
所定時間が経過すると(ステップS615でYES)、CPU158は、ステップS616〜S620を実行する。ステップS616〜S620は、上述したステップS606〜S610と同様の処理である。
すなわち、タイマーをスタートさせる(ステップS616)と同時に、電動機164を起動して(ステップS617)、かごドア46,48を開く。CPU158は、カウンタを参照し(ステップS618)、カウント値がカウント値設定領域174で設定されている値「C1」になると(ステップS618でYES)、タイマーをストップする(ステップS619)。CPU158は、ストップした時点(ステップS619)のタイマーの値「TD1」を所要時間として、所要時間記憶領域172に記憶する(ステップS620)。
ステップS611〜S620の処理により、気圧調整装置150の減圧ブロア154が正常に作動してかご室34内の気圧が調整された状態で、かごドア46,48が全閉状態の第1の位置から水平方向における第2の位置まで移動されるのに要する所要時間TD1が、電動機164に掛かる負荷の大きさの指標値(オン時基準指標値)として取得され、これが所要時間記憶領域172に記憶されることとなる。
次に、CPU158は、(式5)により、TD1とTD0の差分を演算し、演算結果(ΔTDs)を所要時間記憶領域172に記憶する(ステップS621)。
ΔTDs=TD1−TD0 … (式5)
ΔTDsは、かご室34内が減圧されたことによって、全閉状態のかごドア46,48が開き始めるまでに電動機164に掛かる負荷の程度を指標する値として利用できる。TD1とTD0の差分をとるのは、実施形態1と同様、かご室34内が減圧されたことによって生じる戸開開始力の増分が抽出できるからである。
ΔTDsは、気圧調整装置150の減圧ブロア154が正常に作動してかご室34内の気圧が調整された状態で、全閉状態のかごドア46,48が開き始めるまでに電動機164に掛かる負荷の程度を指標する基準負荷データとして所要時間記憶領域172に記憶される。
基準負荷データΔTDsが記憶されると(ステップS621)、CPU158は、減圧ブロア154をオフし(ステップS622)、かごドア46,48を全閉にした後(ステップS623)、主制御盤168に、最下階での基準負荷データの取得が終了したことを通知する(ステップS624)。
当該通知を受け取ると、主制御盤168は、乗りかご22を最上階まで上昇させた上で、制御装置156に対し、最上階での基準負荷データの取得指示を出す。
当該指示を受けると(ステップS701でYES)、制御装置156のCPU158は、ステップS702〜ステップS724の処理を実行する。
ステップS702〜ステップS724の各々は、基本的に上述したステップS602〜ステップS624とそれぞれ同様の処理である。よって、対応するステップ同士には、ステップ番号の下2桁に同じ番号を付して、ステップS702〜ステップS724の個々の詳細な説明は省略し、以下、ステップS602〜ステップS624と異なる部分を中心に説明する。
ステップS602〜S624は、乗りかご22が最下階に停止している状態で実行されたのに対し、ステップS702〜S724は、乗りかご22が最上階に停止している状態で実行される(ステップS701)。
ステップS702〜S709を経て取得された所要時間TU0、すなわち、最上階において、気圧調整装置150による気圧調整がなされていない状態で、かごドア46,48が全閉状態の第1の位置から水平方向における第2の位置まで移動されるのに要する所要時間TU0が、電動機164に掛かる負荷の大きさの指標値(オフ時基準指標値)として取得され、これが所要時間記憶領域172に記憶される(ステップS710)。
ステップS614では、減圧ブロア154でかご室34内が減圧したのに対し、ステップS714では、加圧ブロア152でかご室34内を加圧する。ステップS714、S715は、S209、S210(図13)と同様の処理である。
ステップS711〜S719を経て取得された所要時間TU1、すなわち、気圧調整装置150の加圧ブロア152が正常に作動してかご室34内の気圧が調整された状態で、かごドア46,48が全閉状態の第1の位置から水平方向における第2の位置まで移動されるのに要する所要時間TU1が、電動機164に掛かる負荷の大きさの指標値(オン時基準指標値)として取得され、これが所要時間記憶領域172に記憶される(ステップS720)。
次に、CPU158は、(式6)により、TU1とTU0の差分を演算し、演算結果(ΔTUs)を所要時間記憶領域172に記憶する(ステップS721)。
ΔTUs=TU1−TU0 … (式6)
ΔTUsは、かご室34内が加圧されたことによって、全閉状態のかごドア46,48が開き始めるまでに電動機164に掛かる負荷の程度を指標する値として利用できる。TU1とTU0の差分をとるのは、実施形態1と同様、かご室34内が加圧されたことによって生じる戸開開始力の増分が抽出できるからである。
ΔTUsは、気圧調整装置150の加圧ブロア152が正常に作動してかご室34内の気圧が調整された状態で、全閉状態のかごドア46,48が開き始めるまでに電動機164に掛かる負荷の程度を指標する基準負荷データとして所要時間記憶領域172に記憶される(ステップS721)。
基準負荷データΔTUsが記憶されると(ステップS721)、CPU158は、加圧ブロア152をオフし(ステップS722)、かごドア46,48を全閉にした後(ステップS723)、主制御盤168に、最上階での基準負荷データの取得が終了したことを通知して(ステップS724)、基準負荷データ取得処理プログラムを終了する。
以上の基準負荷データ取得処理が、作業員によって、かご室34内を気密にするための部材(上部封止部材110,128、戸袋側封止部材114,130、戸当りゴム116,132、下部封止部材118)に異常が無いことが確認され、気圧調整装置150が正常に作動することが確認されて間もなくの間に実行されるのは、実施形態1と同様である。
(正常・故障判定処理)
続いて、以上により取得された基準負荷データ(ΔTDs、ΔTUs)に基づく、気圧調整装置150(加圧ブロア152、減圧ブロア154)の正常・故障判定処理について説明する。
実施形態2において、3種類の故障(不具合)を検出するのは、実施形態1と同様である。
以下、制御装置156のCPU158が実行する正常・故障判定処理プログラムを、図25〜図30に示すフローチャートに基づいて説明する。
図25、図26に示すステップS801〜S824は、基本的に、制御装置156で実行する処理としては、図21、図22に示すステップS601〜S624と同様である。よって、ステップS801〜S824は、そのステップ番号の下2桁に対応するステップS601〜S624のステップ番号の下2桁と同じ番号を付して、詳細な説明については省略し、要点のみを述べることとする。
先ず、最下階において(ステップS801でYES)、気圧調整装置150は非作動とすべくオフした状態で(すなわち、制御装置156が気圧調整装置150を操作しない状態で)、全閉状態のかごドア46,48が開き始めるまでに電動機164に掛かる負荷の大きさの指標値(オフ時点検指標値)として、かごドア46,48が全閉状態の第1の位置から第2の位置まで移動される(開かれる)のに要する所要時間Td0を取得し、所要時間記憶領域172に記憶する(ステップS802〜S810)。
続いて、気圧調整装置150の減圧ブロア154を作動すべくオンした状態で(ステップS814)、全閉状態のかごドア46,48が開き始めるまでに電動機164に掛かる負荷の大きさの指標値(オン時点検指標値)として、かごドア46,48が全閉状態の第1の位置から第2の位置まで移動される(開かれる)のに要する所要時間Td1を取得し、所要時間記憶領域172に記憶する(ステップS811〜S820)。なお、ステップS814において制御装置156(のCPU158)は、かご室34内を最高出力で減圧すべく、減圧ブロア154を操作する。
CPU158は、取得したTd1とTd0の差分を(式7)により演算し、演算結果(ΔTds)を所要時間記憶領域172に記憶する(ステップS821)。
ΔTds=Td1−Td0 … (式7)
ΔTdsは、かご室34内を減圧すべく、減圧ブロア154がオンされた状態で、全閉状態のかごドア46,48が開き始めるまでに電動機164に掛かる負荷の程度を指標する値として利用できる。
ΔTdsは、制御装置156によって気圧調整装置150の減圧ブロア154を作動すべく減圧ブロア154をオンした状態で、全閉状態のかごドア46,48が開き始めるまでに電動機164に掛かる負荷の程度を指標する、減圧ブロア154に関するオン時負荷データとして所要時間記憶領域172に記憶される。
オン時負荷データΔTdsが記憶されると(ステップS821)、CPU158は、減圧ブロア154をオフし(ステップS822)、かごドア46,48を全閉にした後(ステップS823)、主制御盤168に、最下階でのオン時負荷データの取得が終了したことを通知する(ステップS824)。
ステップS811〜S824に続いて、CPU158は、ステップS901〜S924を実行する。
図27、図28に示すステップS901〜S924は、基本的に、制御装置156で実行する処理としては、図23、図24に示すステップS701〜S724と同様である。よって、ステップS901〜S924は、そのステップ番号の下2桁に対応するステップS701〜S724のステップ番号の下2桁と同じ番号を付して、詳細な説明については省略し、要点のみを述べることとする。
先ず、最上階において(ステップS901でYES)、気圧調整装置150は非作動とすべくオフした状態で(すなわち、制御装置156が気圧調整装置150を操作しない状態で)、全閉状態のかごドア46,48が開き始めるまでに電動機164に掛かる負荷の大きさの指標値(オフ時点検指標値)として、かごドア46,48が全閉状態の第1の位置から第2の位置まで移動される(開かれる)のに要する所要時間Tu0を取得し、所要時間記憶領域172に記憶する(ステップS902〜S910)。
続いて、気圧調整装置150の加圧ブロア152を作動すべくオンした状態で(ステップS914)、全閉状態のかごドア46,48が開き始めるまでに電動機164に掛かる負荷の大きさの指標値(オン時点検指標値)として、かごドア46,48が全閉状態の第1の位置から第2の位置まで移動される(開かれる)のに要する所要時間Tu1を取得し、所要時間記憶領域172に記憶する(ステップS911〜S920)。なお、ステップS914において制御装置156(のCPU158)は、かご室34内を最高出力で加圧すべく、加圧ブロア152を操作する。
CPU158は、取得したTu1とTu0の差分を(式8)により演算し、演算結果(ΔTus)を所要時間記憶領域172に記憶する(ステップS921)。
ΔTus=Tu1−Tu0 … (式8)
ΔTusは、かご室34内を加圧すべく、加圧ブロア152がオンされた状態で、全閉状態のかごドア46,48が開き始めるまでに電動機164に掛かる負荷の程度を指標する値として利用できる。
ΔTusは、制御装置156によって気圧調整装置150の加圧ブロア152を作動すべく加圧ブロア152をオンした状態で、全閉状態のかごドア46,48が開き始めるまでに電動機164に掛かる負荷の程度を指標する、加圧ブロア152に関するオン時負荷データとして所要時間記憶領域172に記憶される。
オン時負荷データΔTusが記憶されると(ステップS921)、CPU158は、加圧ブロア152をオフし(ステップS922)、かごドア46,48を全閉にした後(ステップS923)、主制御盤168に、最上階でのオン時負荷データの取得が終了したことを通知する(ステップS924)。
次に、制御装置156(のCPU158)は、所要時間記憶領域172に記憶されているデータに基づいて、気圧調整装置150(加圧ブロア152、減圧ブロア154)によるかご室34内の気圧調整が正常に成し得る状態にあるのか否かの判定を行う(ステップS1000〜S1019)。判定に用いるデータが異なるだけで、ステップS1000〜S1019は、実施形態1のステップS500〜S519(図18、図19)と同様である。よって、ステップS1000〜S1019各々のステップ番号の下2桁には、対応するステップS500〜S519の下2桁と同じ番号を付すこととする。
まず、最下階で取得したデータに基づいて、減圧ブロア154によるかご室34内の気圧調整が正常に成し得る状態にあるのか否かの判定を行う(ステップS1000〜S1008)。
点検時に減圧ブロア154が正常に作動する状態、すなわち、制御装置156でオン操作されれば作動し、オン操作されなければ(オフのままであれば)非作動となる状態であり、かつ封止部材に問題がなければ、オン時負荷データΔTdsは、基準負荷データΔTDsと同等の大きさになるはずである。そこで、ΔTDsとΔTdsの大きさを比較する(ステップS1000)。
ここで、各負荷データのバラツキを考慮し、例えば、基準負荷データに1割の余裕を見込んで、ΔTdsが(ΔTDs×0.9)以下か否かを判定する(ステップS1000)のは、実施形態1と同様である。また、余裕の程度は、1割に限らないことは勿論であり、実測データのバラツキの度合い等に基づいて適宜設定し得るのも実施形態1と同様である。
Tdsが(ΔTDs×0.9)を下回らなければ(ステップS1000でNO)、CPU158は、減圧調整は正常に成し得る状態であると判定する(ステップS1001)。
Tdsが(ΔTDs×0.9)以下であれば(ステップS1000でYES)、「調整不足」かどうかを判定すべく、25%の減圧不足を見込んで、Tdsと(ΔTDs×0.75)とを比較する(ステップS502)。なお、減圧不足分は25%に限らす、適宜設定し得るものである。
Tdsが(ΔTDs×0.75)を下回らなければ(ステップS1002でNO)、すなわち、(ΔTDs×0.75)<Tds≦(ΔTDs×0.9)であれば、減圧時の「調整不足」であると判定する(ステップS1003)。
Tdsが(ΔTDs×0.75)以下であれば(ステップS1002でYES)、「オフ故障」と「オン故障」の可能性が考えられる。そこで、先ず、オフ故障かどうかを調べる。
オフ故障であるかどうかは、Td1(オン時点検指標値)とTD0(オフ時基準指標値)とを比較することによりなされる(ステップS1004)。TD0とTd1との間に有意差TSD1が無い場合はオフ故障と考えられる。有意差TSD1は、実測データに基づき定め得る。
そこで、TD0とTd1の差の絶対値をTSD1と比較し(ステップS1004)、前記絶対値がTSD1以下であれば(ステップS1004でYES)、オフ故障であると判定し(ステップS1005)、前記絶対値がTSD1を超えていれば(ステップS1004でNO)、次に、オン故障かどうかを調べる(ステップS1006)。なお、オフ故障の判定に際し、Td1の比較対象は、TD0に代えて、Td0(オフ時点検指標値)を用いても構わない。
オン故障であるかどうかは、Td0(オフ時点検指標値)とTD1(オン時基準指標値)とを比較することによりなされる(ステップS1006)。TD1とTd0との間に有意差TSD2が無い場合はオン故障と考えられる。有意差TSD2は、実測データに基づき定め得る。
そこで、TD1とTd0の差の絶対値をTSD2と比較し(ステップS1006)、前記絶対値がTSD2以下であれば(ステップS1006でYES)、オン故障であると判定する(ステップS1007)。一方、前記絶対値がTSD2を超えていれば(ステップS1006でNO)、その他の故障と判定する(ステップS1008)。なお、オン故障の判定に際し、Td0の比較対象は、TD1に代えて、Td1(オン時点検指標値)を用いても構わない。
上記の判定(ステップS1001、S1003、S1005、S1007、S1008のいずれか)が終了すると、CPU158は、判定結果を主制御盤168へ通知する(ステップS1009)。
続いて、制御装置156(のCPU158)は、所要時間記憶領域172に記憶されている最上階で取得したデータに基づいて、加圧ブロア152によるかご室34内の気圧調整が正常に成し得る状態にあるのか否かの判定を行う(ステップS1010〜S1018)。
ステップS1010〜S1018は、基本的に上述したステップS1000〜S1008と基本的に同様の処理なので、ステップS1010〜S1018の下1桁には、対応するステップS1000〜S1008の下1桁と同じ番号を付して、その詳細な説明は省略し、簡単に言及するに止める。
先ず、ΔTusが(ΔTUs×0.9)以下か否かを判定し(ステップS1010)、Tusが(ΔTUs×0.9)を下回らなければ(ステップS1010でNO)、CPU158は、加圧調整は正常に成し得る状態であると判定する(ステップS1011)。なお、余裕の程度が、1割に限らないことは上記の場合と同様であり、実測データのバラツキの度合い等に基づいて適宜設定し得る。
Tusが(ΔTUs×0.9)以下であれば(ステップS1010でYES)、「調整不足」かどうかを判定すべく、25%の減圧不足を見込んで、Tusと(ΔTUs×0.75)とを比較する(ステップS1012)。なお、減圧不足分は25%に限らす、適宜設定し得るものであることは、上記の場合と同様である。
Tusが(ΔTUs×0.75)を下回らなければ(ステップS1012でNO)、すなわち、(ΔTUs×0.75)<Tus≦(ΔTUs×0.9)であれば、加圧時の「調整不足」であると判定する(ステップS1013)。
Tusが(ΔTUs×0.75)以下であれば(ステップS1012でYES)、オフ故障であるかどうかを調べるため、ステップS1014に進み、Tu1(オン時点検指標値)とTU0(オフ時基準指標値)との間に有意差TSU1があるか否かを判定する。
ステップS1014では、TU0とTu1の差の絶対値をTSU1と比較し、前記絶対値がTSU1以下であれば(ステップS1014でYES)、オフ故障であると判定し(ステップS1015)、前記絶対値がTSU1を超えていれば(ステップS1014でNO)、ステップS1016に進み、オン故障かどうかを調べる。なお、オフ故障の判定に際し、Tu1の比較対象は、TU0に代えて、Tu0(オフ時点検指標値)を用いても構わない。
ステップS1016では、TU1とTu0の差の絶対値を有意差TSU2と比較し、前記絶対値がTSU2以下であれば(ステップS1016でYES)、オン故障であると判定し(ステップS1017)、前記絶対値がTSU2を超えていれば(ステップS1016でNO)、その他の故障と判定する(ステップS1018)。なお、オン故障の判定に際し、Tu0の比較対象は、TU1に代えて、Tu1(オン時点検指標値)を用いても構わない。また、TSU1、TSU2は、それぞれTSD1、TSD2と同趣旨の値である。
上記の判定(ステップS1011、S1013、S1015、S1017、S1018のいずれか)が終了すると、CPU158は、判定結果を主制御盤168へ通知して(ステップS1019)、一連の正常・故障判定処理を終了する。
なお、判定結果の通知(ステップS1009、S1019)を受けた主制御盤168は、その判定結果を監視室および保守センター(図7)に設置されたコンピュータ(不図示)に送信する。
以上のステップS801〜S818、S901〜918、S1000〜S1009、S1010〜S1019は、実施形態1と同様、自動定期点検として、例えば、毎日1回、その日の運転開始時など、未だ、乗客が利用しないようなタイミングで実行される。
以上、実施形態2に係るエレベータによれば、実施形態1と同様の効果が得られる。すなわち、気圧調整装置150(減圧ブロア154、加圧ブロア152)が正常に作動してかご室34内の気圧が調整された状態で、全閉状態のかごドア46,48が開き始めるまでに駆動源である電動機164に掛かる負荷の程度を指標する基準負荷データΔTDs、ΔTUsが基準負荷データ記憶部であるRAM162内の所要時間記憶領域172に記憶されていて、気圧調整装置制御手段である制御装置156によって気圧調整装置150(減圧ブロア154、加圧ブロア152)を作動すべく気圧調整装置150(減圧ブロア154、加圧ブロア152)をオンした状態で、全閉状態のかごドア46,48開き始めるまでに電動機164に掛かる負荷の程度を指標するオン時負荷データΔTds、ΔTusが取得され、オン時負荷データΔTds、ΔTusと基準負荷データΔTDs、ΔTUsとを比較して、気圧調整装置(減圧ブロア154、加圧ブロア152)によるかご室34内の気圧の調整が正常にし得る状態にあるか否かが判定される。これにより、かご室34内の気圧を測定することなく、かご室34内の気圧を調整する気圧調整装置150(減圧ブロア154、加圧ブロア152)によるかご室34内の気圧の調整が正常にし得る状態にあるか否かを点検することができる。
なお、上記実施形態では、かごドア46,48が、全閉の位置から乗り場ドアと係合する直前の位置(カウンタのカウント値がC1になる位置)まで移動するのに(開くのに)
要する所要時間を計測したが、乗り場ドアと係合した以降の特定位置までの所要時間を計測することとしても良い。気圧調整装置150を作動させた場合とさせない場合とで、かごドア46,48の途中計時に差が生じるのは、かごドア46,48が開き始めるまでであり、その後であれば、いずれの位置まで計測したとしても計測結果には、前記の差が反映されるからである。
したがって、例えば、結果を得るまでに時間がかかるものの、全閉位置から全開位置までの移動に要する所要時間を計測することとしても構わない。なお、この場合、カウンタによらなくとも、電動機164の起動時から全開検知スイッチ102がオンになるまでの時間を計測することとしても構わない。
(変形例)
上記実施形態2では、(1)気圧調整装置150の減圧ブロア154によるかご室34内の気圧の調整が正常にし得る状態にあるのか否かの判定に際し(ステップS1000)、基準負荷データとしてTD1とTD0の差分(ΔTDs)を用い(ステップS621)、オン時負荷データとしてTd1とTd0の差分(ΔTds)を用い(ステップS821)、(2)気圧調整装置150の加圧ブロア152によるかご室34内の気圧の調整が正常にし得る状態にあるのか否かの判定に際し(ステップS1010)、基準負荷データとしてTU1とTU0の差分(ΔTUs)を用い(ステップS721)、オン時負荷データとしてTu1とTu0の差分(ΔTus)を用いた(ステップS921)が、これに限らず、実施形態1の前記変形例(上記(A)、(B))と同様にしても構わない。
以上、本発明に係るエレベータを実施形態に基づいて説明してきたが、本発明は、上記した形態に限らないことは勿論であり、例えば、以下の形態としても構わない。
(1)上記実施形態1、2では、気圧調整装置150(加圧ブロア152、減圧ブロア154)の制御および気圧調整装置150の点検処理プログラムを制御装置156で実行したが、これに限らず、主制御盤168で実行することとしても構わない。
(2)上記実施形態1、2では、気圧調整装置150を、給気機能を有する加圧ブロア152と排気機能を有する減圧ブロア154とで構成したが、これに限らず、一台で給気機能と排気機能を有する給・排気ブロアを用いることとしても構わない。
(3)実施形態1では、電動機164の起動後、全閉検知スイッチ101の検知信号が、かごドア46,48が全閉であることを示さなくなる時点まで、電動機164に流れる電流値をモニタしたが、モニタ終了のタイミングは、全閉検知スイッチ101の検知信号によらず、実施形態2のようにエンコーダから出力される回転角のカウント値で計っても構わない。
(4)また、実施形態2では、上記第2の位置をエンコーダから出力される回転角のカウント値で計ったが、これに限らず、実施形態1のように全閉検知スイッチ101の検知信号が、かごドア46,48が全閉であることを示さなくなる位置としても構わない。
(5)上記実施形態1、2では、乗かご22を最下階に停止させて減圧調整の検査を、最上階に停止させて加圧調整の検査を行ったが、減圧調整と加圧調整の検査を実行する階は、それぞれ最下階と最上階に限らず、最下階と最上階以外のいずれの階で行っても構わない。上述したように、最上階と最下階で行うのが最も効果的であるが、いずれの階でも、気圧調整装置150(加圧ブロア152、減圧ブロア154)の作動によって、かご室34内外に気圧差は生じる。よって、気圧調整装置150を作動させた場合とさせない場合とで、電動機164に掛かる負荷に差が生じ、この差を利用することで検査ができるからである。