JP6895552B1 - 試料支持体、イオン化方法及び質量分析方法 - Google Patents

試料支持体、イオン化方法及び質量分析方法 Download PDF

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Abstract

【課題】高感度な質量分析を可能にする試料支持体、イオン化方法及び質量分析方法を提供する。【解決手段】試料支持体1は、試料Sの成分S1のイオン化に用いられる試料支持体である。試料支持体1は、基板2と、導電層5と、カチオン化剤6と、を備えている。基板2は、第1表面2a、及び第1表面2aとは反対側の第2表面2b、並びに、第1表面2a及び第2表面2bに開口する複数の貫通孔2cを有している。導電層5は、少なくとも第1表面2aに設けられている。カチオン化剤6は、複数の貫通孔2cに設けられ、成分を所定の原子によってカチオン化する。【選択図】図2

Description

本発明は、試料支持体、イオン化方法及び質量分析方法に関する。
試料の成分のイオン化に用いられる試料支持体として、第1表面、及び第1表面とは反対側の第2表面、並びに、第1表面及び第2表面に開口する複数の貫通孔を有する基板を備えるものが知られている(例えば、特許文献1参照)。
特許第6093492号公報
上述したような試料支持体を用いた質量分析では、試料の成分が、空気又は溶媒等に含まれる様々な種類の原子によってカチオン化される場合がある。そのような場合には、同じ分子量を有する成分(分子)であっても、異なる分子量を有する複数種の試料イオンとして検出されることになるため、同じ分子量を有する成分について、信号強度が分散された結果、質量分析の感度が低下するおそれがある。
そこで、本発明は、高感度な質量分析を可能にする試料支持体、イオン化方法及び質量分析方法を提供することを目的とする。
本発明の試料支持体は、試料の成分のイオン化に用いられる試料支持体であって、第1表面、及び第1表面とは反対側の第2表面、並びに、第1表面及び第2表面に開口する複数の貫通孔を有する基板と、少なくとも第1表面に設けられた導電層と、複数の貫通孔に設けられ、成分を所定の原子によってカチオン化するためのカチオン化剤と、を備える。
この試料支持体は、第1表面、及び第1表面とは反対側の第2表面、並びに、第1表面及び第2表面に開口する複数の貫通孔を有する基板を備えている。これにより、複数の貫通孔に試料の成分が導入されると、試料の成分が第1表面側に留まる。さらに、導電層に電圧が印加されつつ基板の第1表面に対してレーザ光等のエネルギー線が照射されると、第1表面側における試料の成分にエネルギーが伝達される。このエネルギーによって、試料の成分がイオン化されることで、試料イオンが生じる。ここで、試料支持体は、複数の貫通孔に設けられ、成分を所定の原子によってカチオン化するためのカチオン化剤を備えている。そのため、試料の成分は、カチオン化剤の一部と混合した状態で第1表面側に留まる。これにより、上記のエネルギーが成分及びカチオン化剤の一部に伝達されると、成分は、空気又は溶媒等に含まれる様々な種類の原子よりも、所定の原子によってカチオン化されやすくなる。つまり、同じ分子量を有する成分は、同じ分子量を有する一種の試料イオンにイオン化されやすくなる。したがって、同じ分子量を有する成分について、信号強度が分散されるのが抑制される。よって、この試料支持体によれば、高感度な質量分析が可能となる。
本発明の試料支持体では、カチオン化剤は、少なくとも第2表面側に設けられていてもよい。この構成によれば、試料を構成する分子の二次元分布を画像化するイメージング質量分析を高感度にすることができる。すなわち、第2表面が試料に対向し且つカチオン化剤が試料に接触するように、試料上に試料支持体が配置されると、試料の成分は、カチオン化剤の一部と混合すると共に第2表面側から各貫通孔を介して第1表面側に移動する。そのため、第1表面側のそれぞれの位置において、カチオン化剤の一部の分布が均一となる。これにより、第1表面側のそれぞれの位置において、成分を均一にカチオン化することができる。したがって、試料を構成する分子の二次元分布の画像にムラが生じることを抑制することができ、質量分析を高感度にすることができる。
本発明の試料支持体では、カチオン化剤は、少なくとも第1表面側に設けられていてもよい。この構成によれば、マススペクトルを分析する質量分析を高感度にすることができる。すなわち、例えば液状の試料の成分が第1表面側から各貫通孔に導入された場合、及び、液状の試料の成分が第2表面側から各貫通孔に導入された場合のいずれにおいても、試料の成分は、カチオン化剤の一部と確実に混合した状態で第1表面側に留まる。そのため、成分を確実にカチオン化することができ、質量分析を高感度にすることができる。
本発明の試料支持体では、カチオン化剤は、少なくとも第2表面側及び第1表面側に設けられていてもよい。この構成によれば、イメージ質量分析、及びマススペクトルを分析する質量分析のいずれも高感度にすることができる。
本発明の試料支持体では、カチオン化剤は、蒸着膜、スパッタ膜又は原子堆積膜として設けられていてもよい。この構成によれば、カチオン化剤の結晶の平均粒径を相対的に小さくすると共にカチオン化剤の結晶の分布を均一にすることができる。これにより、質量分析における空間分解能を高めることができる。
本発明の試料支持体では、カチオン化剤は、塗布乾燥膜として設けられていてもよい。この構成によれば、カチオン化剤を容易に設けることができる。
本発明の試料支持体では、カチオン化剤は、クエン酸、クエン酸水素二アンモニウム及び尿素から選択される少なくとも一つ、酸化物、フッ化物、塩化物、硫化物、水酸化物及び金属化合物から選択される少なくとも一つ、又は、銀を含んでもよい。この構成によれば、試料の成分の種類に応じて、当該試料の成分のイオン化に適したカチオン化剤を適用することで、試料の成分のイオン化を効率的に行うことができる。
本発明の試料支持体では、基板には、試料が配置される複数の測定領域が形成されていてもよい。この構成によれば、複数の測定領域ごとに試料の成分のイオン化を行うことができる。
本発明のイオン化方法は、上記の試料支持体を用意する第1工程と、試料の成分を複数の貫通孔に導入する第2工程と、導電層に電圧を印加しつつ第1表面に対してエネルギー線を照射することにより、試料の成分をイオン化する第3工程と、を備える。
このイオン化方法では、複数の貫通孔に試料の成分が導入されると、試料の成分が第1表面側に留まる。さらに、導電層に電圧が印加されつつ基板の第1表面に対してエネルギー線が照射されると、第1表面側における試料の成分にエネルギーが伝達される。このエネルギーによって、試料の成分がイオン化されることで、試料イオンが生じる。ここで、試料支持体は、複数の貫通孔に設けられ、成分を所定の原子によってカチオン化するためのカチオン化剤を備えている。そのため、試料の成分は、カチオン化剤の一部と混合した状態で第1表面側に留まる。これにより、上記のエネルギーが成分及びカチオン化剤の一部に伝達されると、成分は、空気又は溶媒等に含まれる様々な種類の原子よりも、所定の原子によってカチオン化されやすくなる。つまり、同じ分子量を有する成分は、同じ分子量を有する一種の試料イオンにイオン化されやすくなる。したがって、同じ分子量を有する成分について、信号強度が分散されるのが抑制される。よって、このイオン化方法によれば、高感度な質量分析が可能となる。
本発明の質量分析方法は、上記のイオン化方法の各工程と、イオン化された成分を検出する第4工程と、を備える。
この質量分析方法によれば、上述したように、高感度な質量分析が可能となる。
本発明の質量分析方法では、第4工程においては、イオン化された成分をポジティブイオンモードによって検出してもよい。これにより、イオン化された成分を適切に検出することができる。
本発明によれば、高感度な質量分析を可能にする試料支持体、イオン化方法及び質量分析方法を提供することが可能となる。
第1実施形態の試料支持体の平面図である。 図1に示されるII−II線に沿っての試料支持体の断面図である。 図1に示される試料支持体の基板の拡大像である。 図1に示される試料支持体を用いた質量分析方法の工程を示す図である。 比較例及び実施例のそれぞれの質量分析方法によって得られた特定イオンの二次元分布像を示す図である。 第2実施形態の試料支持体の平面図及び断面図である。 図6に示される試料支持体の断面図である。 図6に示される試料支持体を用いた質量分析方法の工程を示す図である。 第1比較例及び第1実施例のそれぞれの質量分析方法によって得られたマススペクトルを示す図である。 第2比較例及び第2実施例のそれぞれの質量分析方法によって得られたマススペクトルを示す図である。 変形例の試料支持体の断面図である。 変形例の試料支持体の断面図である。 変形例の試料支持体の断面図である。 変形例の質量分析方法の工程を示す図である。
以下、本発明の実施形態について、図面を参照して詳細に説明する。なお、各図において同一又は相当部分には同一符号を付し、重複する説明を省略する。
[第1実施形態]
[試料支持体の構成]
図1及び図2に示されるように、試料の成分のイオン化に用いられる試料支持体1は、基板2と、フレーム3と、導電層5と、カチオン化剤6と、を備えている。基板2は、第1表面2a及び第2表面2b並びに複数の貫通孔2cを有している。第2表面2bは、第1表面2aとは反対側の表面である。複数の貫通孔2cは、基板2の厚さ方向(第1表面2a及び第2表面2bに垂直な方向)に沿って延在しており、第1表面2a及び第2表面2bのそれぞれに開口している。本実施形態では、複数の貫通孔2cは、基板2に一様に(均一な分布で)形成されている。
基板2は、例えば、絶縁性材料によって円形板状に形成されている。基板2の直径は、例えば数cm程度であり、基板2の厚さは、例えば1〜50μmである。基板2の厚さ方向から見た場合における貫通孔2cの形状は、例えば略円形である。貫通孔2cの幅は、例えば1〜700nmである。
貫通孔2cの幅は、以下のようにして取得される値である。まず、基板2の第1表面2a及び第2表面2bのそれぞれの画像を取得する。図3は、基板2の第1表面2aの一部のSEM画像の一例を示している。当該SEM画像において、黒色の部分は貫通孔2cであり、白色の部分は貫通孔2c間の隔壁部である。続いて、取得した第1表面2aの画像に対して例えば二値化処理を施すことで、測定領域R内の複数の第1開口(貫通孔2cの第1表面2a側の開口)に対応する複数の画素群を抽出し、1画素当たりの大きさに基づいて、第1開口の平均面積を有する円の直径を取得する。同様に、取得した第2表面2bの画像に対して例えば二値化処理を施すことで、測定領域R内の複数の第2開口(貫通孔2cの第2表面2b側の開口)に対応する複数の画素群を抽出し、1画素当たりの大きさに基づいて、第2開口の平均面積を有する円の直径を取得する。そして、第1表面2aについて取得した円の直径と第2表面2bについて取得した円の直径との平均値を貫通孔2cの幅として取得する。
図3に示されるように、基板2には、略一定の幅を有する複数の貫通孔2cが一様に形成されている。測定領域Rにおける貫通孔2cの開口率(基板2の厚さ方向から見た場合に測定領域Rに対して全ての貫通孔2cが占める割合)は、実用上は10〜80%であり、特に20〜40%であることが好ましい。複数の貫通孔2cの大きさは互いに不揃いであってもよいし、部分的に複数の貫通孔2c同士が互いに連結していてもよい。
図3に示される基板2は、Al(アルミニウム)を陽極酸化することにより形成されたアルミナポーラス皮膜である。具体的には、Al基板に対して陽極酸化処理を施し、酸化された表面部分をAl基板から剥離することにより、基板2を得ることができる。なお、基板2は、Ta(タンタル)、Nb(ニオブ)、Ti(チタン)、Hf(ハフニウム)、Zr(ジルコニウム)、Zn(亜鉛)、W(タングステン)、Bi(ビスマス)、Sb(アンチモン)等のAl以外のバルブ金属を陽極酸化することにより形成されてもよいし、Si(シリコン)を陽極酸化することにより形成されてもよい。
図1及び図2に示されるように、フレーム3は、第3表面3a及び第4表面3b、並びに、開口3cを有している。第4表面3bは、第3表面3aとは反対側の表面であり、基板2側の表面である。開口3cは、第3表面3a及び第4表面3bのそれぞれに開口している。フレーム3は、基板2に取り付けられている。本実施形態では、基板2の第1表面2aのうち基板2の外縁に沿った領域と、フレーム3の第4表面3bのうち開口3cの外縁に沿った領域とが、接着層4によって互いに固定されている。
接着層4の材料は、例えば、放出ガスの少ない接着材料(低融点ガラス、真空用接着剤等)である。試料支持体1では、基板2のうちフレーム3の開口3cに対応する部分が、複数の貫通孔2cを介して第2表面2b側から第1表面2a側に試料の成分を移動させるための測定領域Rとして機能する。このようなフレーム3によって、試料支持体1のハンドリングが容易化すると共に、温度変化等に起因する基板2の変形が抑制される。
導電層5は、基板2の第1表面2a側に設けられている。導電層5は、第1表面2aに直接的に(すなわち、別の膜等を介さずに)設けられている。具体的には、導電層5は、基板2の第1表面2aのうちフレーム3の開口3cに対応する領域(すなわち、測定領域Rに対応する領域)、開口3cの内面、及びフレーム3の第3表面3aに一続きに(一体的に)形成されている。導電層5は、測定領域Rにおいて、基板2の第1表面2aのうち貫通孔2cが形成されていない部分を覆っている。つまり、測定領域Rにおいては、各貫通孔2cが開口3cに露出している。なお、導電層5は、第1表面2aに間接的に(すなわち、別の膜等を介して)設けられていてもよい。
導電層5は、導電性材料によって形成されている。ただし、導電層5の材料としては、以下に述べる理由により、試料との親和性(反応性)が低く且つ導電性が高い金属が用いられることが好ましい。
例えば、タンパク質等の試料と親和性が高いCu(銅)等の金属によって導電層5が形成されていると、試料のイオン化の過程において、試料分子にCu原子が付着した状態で試料がイオン化された結果、イオン化された試料がCu付加分子として検出されるため、検出結果がずれるおそれがある。したがって、導電層5の材料としては、試料との親和性が低い貴金属が用いられることが好ましい。
一方、導電性の高い金属ほど一定の電圧を容易に且つ安定して印加し易くなる。そのため、導電性が高い金属によって導電層5が形成されていると、測定領域Rにおいて基板2の第1表面2aに均一に電圧を印加することが可能となる。また、導電層5の材料としては、基板2に照射されたレーザ光のエネルギーを、導電層5を介して試料に効率的に伝えることが可能な金属であることが好ましい。例えば、MALDI(Matrix-Assisted Laser Desorption/Ionization)等で使用される標準的なレーザ光(例えば波長が355nm程度の三倍高調波Nd、YAGレーザ又は波長が337nm程度の窒素レーザ等)が照射される場合には、導電層5の材料としては、紫外域における吸収性の高いAl、Au(金)又はPt(白金)等であることが好ましい。
以上の観点から、導電層5の材料としては、例えば、Au、Pt等が用いられることが好ましい。本実施形態では、導電層5の材料は、Ptである。導電層5は、例えば、メッキ法、原子層堆積法(ALD:Atomic Layer Deposition)、蒸着法、スパッタ法等によって、厚さ1nm〜350nm程度に形成される。本実施形態では、導電層5の厚さは、例えば20nm程度である。なお、導電層5の材料としては、例えば、Cr(クロム)、Ni(ニッケル)、Ti(チタン)等が用いられてもよい。
カチオン化剤6は、複数の貫通孔2cに設けられている。カチオン化剤6が複数の貫通孔2cに設けられているとは、カチオン化剤6が各貫通孔2cの周辺に設けられていることを意味する。本実施形態では、カチオン化剤6は、基板2の第2表面2b側に設けられている。カチオン化剤6は、第2表面2bに直接的に設けられている。カチオン化剤6は、第2表面2bのうち複数の貫通孔2cが形成されていない領域を覆っている。カチオン化剤6は、蒸着膜、スパッタ膜又は原子堆積膜として設けられている。つまり、カチオン化剤6は、蒸着法、スパッタ法又は原子堆積法によって形成されている。カチオン化剤6は、酸化物、フッ化物、塩化物、硫化物、水酸化物及び金属化合物から選択される少なくとも一つを含んでいる。酸化物、フッ化物、塩化物、硫化物、水酸化物又は金属化合物は、試料の成分をLi(リチウム)付加分子、Na(ナトリウム)付加分子又はK(カリウム)付加分子として検出させるために機能する。本実施形態では、カチオン化剤6は、例えばNaCl等の塩化物を含んでいる。カチオン化剤6の厚さは、例えば15nm程度である。カチオン化剤6の結晶の平均粒径は、例えば10μm以下である。
カチオン化剤6の結晶の平均粒径は、SEMによって取得される値である。具体的には、まず、カチオン化剤6のSEM画像を取得する。続いて、取得したカチオン化剤6の画像に対して例えば二値化処理を施すことで、カチオン化剤6の複数の結晶に対応する複数の画素群を抽出し、1画素当たりの大きさに基づいて、複数の結晶の平均面積を有する円の直径を複数の結晶の平均粒径として取得する。
カチオン化剤6の一部は、試料の成分又は溶媒等に融ける(混合する)ことが可能である。カチオン化剤6は、試料の成分を所定の原子(例えば、Li、Na、K又はAg等)によってカチオン化する。本実施形態では、カチオン化剤6は、試料の成分をNaによってカチオン化する。つまり、試料の成分は、Na付加イオンとして信号が検出される。
[イオン化法及び質量分析方法]
次に、試料支持体1を用いたイオン化法及び質量分析方法について説明する。まず、試料支持体1を用意する(第1工程)。試料支持体1は、イオン化法及び質量分析方法の実施者によって製造されることにより用意されてもよいし、試料支持体1の製造者又は販売者等から譲渡されることにより用意されてもよい。
続いて、図4の(a)及び(b)に示されるように、試料Sの成分S1(図4の(c)参照)を試料支持体1の複数の貫通孔2cに導入する(第2工程)。具体的には、スライドグラス(載置部)7の載置面7aに試料Sを配置する。スライドグラス7は、ITO(Indium Tin Oxide)膜等の透明導電膜が形成されたガラス基板であり、載置面7aは、透明導電膜の表面である。試料Sは、例えば組織切片等の薄膜状の生体試料(含水試料)であり、凍結された状態にある。本実施形態では、試料Sは、マウスの脳S0をスライスすることによって取得される。なお、スライドグラス7に代えて、導電性を確保し得る部材(例えば、ステンレス等の金属材料等からなる基板等)を載置部として用いてもよい。続いて、試料Sに試料支持体1の第2表面2b(図2参照)が試料Sに対向し且つカチオン化剤6(図2参照)が試料Sに接触するように、載置面7aに試料支持体1を配置する。このとき、基板2の厚さ方向から見た場合に試料Sが測定領域R内に位置するように、試料支持体1を配置する。
続いて、導電性を有するテープ(例えば、カーボンテープ等)を用いて、スライドグラス7に試料支持体1を固定する。続いて、図4の(c)に示されるように、指Fによってスライドグラス7の裏面(載置面7aとは反対側の面)7bに接触する。これにより、指Fの熱Hがスライドグラス7を介して試料Sに伝わり、試料Sが解凍される。試料Sが解凍されると、試料Sの成分S1は、カチオン化剤6の一部61と混合すると共に、例えば毛細管現象によって、複数の貫通孔2cを介して第2表面2b側から第1表面2a側に移動し、例えば表面張力によって第1表面2a側に留まる。つまり、試料Sの成分S1は、カチオン化剤6の一部61と混合した状態で第1表面2a側に留まる。
続いて、図4の(d)に示されるように、試料Sの成分S1をイオン化させる(第3工程)。具体的には、試料S及び試料支持体1が配置されたスライドグラス7を質量分析装置の支持部(例えば、ステージ)上に配置する。続いて、質量分析装置の電圧印加部を動作させて、スライドグラス7の載置面7a及びテープを介して試料支持体1の導電層5に電圧を印加しつつ、質量分析装置のレーザ光照射部を動作させて、基板2の第1表面2aのうち測定領域Rに対応する領域に対してレーザ光(エネルギー線)Lを照射する。このとき、支持部及びレーザ光照射部の少なくとも1つを動作させることにより、測定領域Rに対応する領域に対してレーザ光Lを走査する。
以上のように導電層5に電圧が印加されつつ基板2の第1表面2aに対してレーザ光Lが照射されると、第1表面2a側に移動した試料Sの成分S1にエネルギーが伝達されて、試料Sの成分S1がイオン化されることで、試料イオンS2(イオン化された成分S1)が生じる。具体的には、第1表面2a側に移動した試料Sの成分S1及びカチオン化剤6の一部61にエネルギーが伝達されると、試料Sの成分S1が気化し、気化した成分S1の分子にNaイオンが付加されることにより、試料イオンS2が生じる。以上の工程が、試料支持体1を用いたイオン化方法(本実施形態では、レーザ脱離イオン化方法)に相当する。
続いて、放出された試料イオンS2を質量分析装置のイオン検出部において検出する(第4工程)。具体的には、放出された試料イオンS2が、電圧が印加された導電層5とグランド電極との間に生じる電位差によって、試料支持体1とイオン検出部との間に設けられた当該グランド電極に向かって加速しながら移動し、イオン検出部によって検出される。本実施形態では、導電層5の電位は、グランド電極の電位よりも高く、正イオンをイオン検出部へ移動させている。つまり、試料イオンS2は、ポジティブイオンモードによって検出される。そして、イオン検出部が、レーザ光Lの走査位置に対応するように試料イオンS2を検出することにより、試料Sを構成する分子の二次元分布が画像化される。質量分析装置は、飛行時間型質量分析方法(TOF−MS:Time-of-Flight Mass Spectrometry)を利用する走査型質量分析装置である。以上の工程が、試料支持体1を用いた質量分析方法に相当する。
[作用及び効果]
以上説明したように、試料支持体1は、第1表面2a、及び第1表面2aとは反対側の第2表面2b、並びに、第1表面2a及び第2表面2bに開口する複数の貫通孔2cを有する基板2を備えている。これにより、複数の貫通孔2cに試料Sの成分S1が導入されると、試料Sの成分S1が第1表面2a側に留まる。さらに、導電層5に電圧が印加されつつ基板2の第1表面2aに対してレーザ光L等のエネルギー線が照射されると、第1表面2a側における試料Sの成分S1にエネルギーが伝達される。このエネルギーによって、試料Sの成分S1がイオン化されることで、試料イオンS2が生じる。ここで、試料支持体1は、複数の貫通孔2cに設けられ、成分S1を所定の原子(Na)によってカチオン化するためのカチオン化剤6を備えている。そのため、試料Sの成分S1は、カチオン化剤6の一部61と混合した状態で第1表面2a側に留まる。これにより、上記のエネルギーが成分S1及びカチオン化剤6の一部61に伝達されると、成分S1は、空気又は溶媒等に含まれる様々な種類の原子よりも、所定の原子によってカチオン化されやすくなる。つまり、同じ分子量を有する成分S1は、同じ分子量を有する一種の試料イオンS2にイオン化されやすくなる。したがって、同じ分子量を有する成分S1について、信号強度が分散されるのが抑制される。よって、試料支持体1によれば、高感度な質量分析が可能となる。
図5の(a)は、比較例の質量分析方法によって得られた特定イオンの二次元分布像を示す図である。図5の(b)は、実施例の質量分析方法によって得られた特定イオンの二次元分布像を示す図である。比較例の質量分析方法において用いられた試料支持体は、カチオン化剤6を備えていない点で、実施例の質量分析方法において用いられた試料支持体1と相違している。比較例の質量分析方法のその他は、実施例の質量分析方法と同じである。図5の(a)及び(b)に示されるように、実施例の質量分析方法でのイオンの検出強度は、比較例の質量分析方法でのイオンの検出強度よりも大きい(図5の(a)及び(b)のそれぞれの左側のマススペクトル参照)。m/z550〜1000の領域においては、実施例の検出強度が比較例の検出強度の約1.5倍となっている。また、試料Sの分子量(m/z790)の二次元分布の画像を取得した結果、比較例では分子量の分布が不明確であったのに対して、実施例では、分子量の分布が確認できた(図5の(a)及び(b)のそれぞれの右側の図参照)。
また、試料支持体1では、カチオン化剤6が、第2表面2b側に設けられている。この構成によれば、試料Sを構成する分子の二次元分布を画像化するイメージング質量分析を高感度にすることができる。すなわち、第2表面2bが試料Sに対向し且つカチオン化剤6が試料Sに接触するように、試料S上に試料支持体1が配置されると、試料Sの成分S1は、カチオン化剤6の一部61と混合すると共に第2表面2b側から各貫通孔2cを介して第1表面2a側に移動する。そのため、第1表面2a側のそれぞれの位置において、カチオン化剤6の一部61の分布が均一となる。これにより、第1表面2a側のそれぞれの位置において、成分S1を均一にカチオン化することができる。したがって、試料Sを構成する分子の二次元分布の画像にムラが生じることを抑制することができ、質量分析を高感度にすることができる。
また、試料支持体1では、カチオン化剤6は、蒸着膜、スパッタ膜又は原子堆積膜として設けられている。この構成によれば、カチオン化剤6の結晶の平均粒径を相対的に小さくすると共にカチオン化剤6の結晶の分布を均一にすることができる。これにより、質量分析における空間分解能を高めることができる。
また、試料支持体1では、カチオン化剤6は、酸化物、フッ化物、塩化物、硫化物、水酸化物及び金属化合物から選択される少なくとも一つを含んでいる。この構成によれば、試料Sの種類に応じて、当該試料Sの成分S1のイオン化に適したカチオン化剤を適用することで、試料Sの成分S1のイオン化を効率的に行うことができる。
また、試料支持体1は、導電層5に加えてカチオン化剤6を備えている。この構成によれば、導電層5及びカチオン化剤6のそれぞれの厚さを最適化することによって、導電層5及びカチオン化剤6のそれぞれを適切に機能させることができる。例えば、同一の材料(ここでは、例えばAg)によって導電層5及びカチオン化剤6を兼ねる場合には、当該材料の厚さを導電層及びカチオン化剤のそれぞれとしての最適な厚さにすることが困難な場合がある。すなわち、導電層としての最適な厚さは、カチオン化剤としての最適な厚さよりも大きい。例えば導電層を適切に機能させるために、当該材料の厚さを大きくする(例えば100nm以上)と、クラスターイオンとしてノイズが発生しやすくなり、信号の解析が困難になるおそれがある。
また、イオン化方法及び質量分析方法によれば、上述したように、高感度な質量分析が可能となる。
また、質量分析方法では、第4工程においては、試料イオンS2をポジティブイオンモードによって検出している。これにより、試料イオンS2を適切に検出することができる。
なお、試料支持体1は、マススペクトルを分析する質量分析に用いられてもよい。この場合、試料Sを含む溶液が第2表面2bに対して滴下されるのが好ましい。試料支持体1がマススペクトルを分析する質量分析に用いられる場合には、高感度な質量分析が可能となり、且つ、マススペクトルの解析も容易となる。
[第2実施形態]
[試料支持体の構成]
図6の(a)、図6の(b)及び図7に示されるように、第2実施形態の試料支持体1Aは、基板2に代えて基板2Aを備えている点、フレーム3に代えてフレーム3Aを備えている点、及び、カチオン化剤6に代えてカチオン化剤6Aを備えている点において、第1実施形態の試料支持体1と主に相違している。
試料支持体1Aは、基板2Aと、フレーム3Aと、導電層5と、カチオン化剤6Aと、を備えている。基板2Aは、例えば長方形板状を呈している。基板2Aの一辺の長さは、例えば数cm程度である。基板2Aは、第1表面2d及び第2表面2e並びに複数の貫通孔2fを有している。フレーム3Aは、基板2Aの厚さ方向から見た場合に基板2Aとほぼ同じ外形を有している。フレーム3Aは、第3表面3d及び第4表面3e並びに複数の開口3fを有している。複数の開口3fのそれぞれは、複数の測定領域Rを画定している。つまり、基板2Aには、複数の測定領域Rが形成されている。それぞれの測定領域Rには、試料Sが配置される。
カチオン化剤6Aは、基板2Aの第1表面2d側に設けられている。カチオン化剤6Aは、第1表面2dに間接的に設けられている。カチオン化剤6Aは、導電層5を介して第1表面2dに設けられている。カチオン化剤6Aは、導電層5における基板2Aとは反対側の表面に直接的に設けられている。具体的には、カチオン化剤6Aは、各測定領域Rに対応する領域に形成された導電層5の表面5c、開口3fの内面に形成された導電層5の表面5b、及びフレーム3の第3表面3dに形成された導電層5の表面5aに一続きに(一体的に)設けられている。カチオン化剤6Aは、各測定領域Rにおいて、導電層5の表面5cのうち貫通孔2fが形成されていない部分を覆っている。つまり、各測定領域Rにおいては、各貫通孔2fが開口3fに露出している。なお、図6の(a)及び(b)においては、接着層4、導電層5及びカチオン化剤6Aの図示が省略されている。
カチオン化剤6Aは、Ag(銀)を含んでおり、カチオン化剤6Aの厚さは、例えば4.5nm程度である。Agは、試料の成分をAg付加分子として検出させるために機能する。カチオン化剤6Aは、試料の成分をAgによってカチオン化する。つまり、試料の成分は、Agが付加されることでAg付加イオンとして信号が検出される。
[イオン化法及び質量分析方法]
次に、試料支持体1Aを用いたイオン化法及び質量分析方法について説明する。まず、図8の(a)に示されるように、試料支持体1Aを用意する(第1工程)。続いて、試料Sの成分を試料支持体1Aの複数の貫通孔2f(図7参照)に導入する(第2工程)。具体的には、試料支持体1Aの各測定領域Rに試料Sを配置する。本実施形態では、例えばピペット8によって、試料Sを含む溶液を各測定領域Rに滴下する。これにより、試料Sの成分は、カチオン化剤6Aの材料と混合すると共に、複数の貫通孔2fを介して基板2Aの第1表面2d側から第2表面2e側に移動する。試料Sの成分は、カチオン化剤6Aの材料と混合した状態で第1表面2d側に留まる。続いて、図8の(b)に示されるように、試料Sの成分が導入された試料支持体1Aをスライドグラス7の載置面7a上に配置する。続いて、導電性を有するテープを用いて、スライドグラス7に試料支持体1Aを固定する。続いて、試料Sの成分をイオン化させる(第3工程)。以上の工程が、試料支持体1Aを用いたイオン化方法に相当する。続いて、放出された試料イオンS2を質量分析装置のイオン検出部において検出する(第4工程)。イオン検出部は、試料イオンS2を検出することにより、試料Sを構成する分子のマススペクトルを取得する。以上の工程が、試料支持体1Aを用いた質量分析方法に相当する。
以上説明したように、試料支持体1Aでは、基板2Aには、試料Sが配置される複数の測定領域Rが形成されている。この構成によれば、複数の測定領域Rごとに試料Sの成分のイオン化を行うことができる。
図9の(a)は、第1比較例の質量分析方法によって得られたマススペクトルを示す図である。図9の(b)は、第1実施例の質量分析方法によって得られたマススペクトルを示す図である。第1比較例の質量分析方法において用いられた試料支持体は、カチオン化剤6Aを備えていない点で試料支持体1Aと相違している。第1比較例の質量分析方法のその他は、第1実施例の質量分析方法と同じである。図9の(a)及び(b)に示されるように、第1実施例の質量分析方法でのイオンの検出強度は、第1比較例の質量分析方法でのイオンの検出強度よりも大きい。m/z400〜500程度の領域おいては、第1実施例の検出強度が第1比較例の検出強度の約60倍以上となっている。このように、試料支持体1Aによれば、高感度な質量分析が可能となり、且つ、マススペクトルの解析も容易となる。なお、第1比較例では、試料Sの成分がAgによってカチオン化されている。
図10の(a)は、第2比較例の質量分析方法によって得られたマススペクトルを示す図である。図10の(b)は、第2実施例の質量分析方法によって得られたマススペクトルを示す図である。第2比較例の質量分析方法において用いられた試料支持体は、カチオン化剤6Aを備えていない点で試料支持体1Aと相違している。第2比較例の質量分析方法のその他は、第2実施例の質量分析方法と同じである。図10の(a)及び(b)に示されるように、第2実施例の質量分析方法でのイオンの検出強度は、第2比較例の質量分析方法でのイオンの検出強度よりも大きい。m/z140〜150程度の領域おいては、第2実施例の検出強度が第2比較例の検出強度の約3倍以上となっている。このように、試料支持体1Aによれば、高感度な質量分析が可能となり、且つ、マススペクトルの解析も容易となる。なお、第2比較例では、試料支持体がカチオン化剤を備えていなく、試料Sの成分がプロトン付加イオンとして信号が検出されている。また、第2実施例の試料支持体1Aのカチオン化剤6Aの材料は、30nm程度の厚さを有するLiF(フッ化リチウム)である。第2実施例では、試料Sの成分がLi付加イオンとして信号が検出されている。
[変形例]
本発明は、上述した各実施形態に限定されない。第1実施形態では、カチオン化剤6が第2表面2bに直接的に設けられている例を示したが、カチオン化剤6は、例えば導電層等を介して第2表面2bに間接的に設けられていてもよい。
また、第1実施形態では、カチオン化剤6が基板2の第2表面2b側に設けられている例を示したが、これに限定されない。図11に示されるように、試料支持体1Bでは、カチオン化剤6が、第1表面2a側に設けられていてもよい。カチオン化剤6は、第1表面2aに間接的に設けられている。カチオン化剤6は、導電層5を介して第1表面2dに設けられている。カチオン化剤6は、導電層5における基板2とは反対側の表面に直接的に設けられている。具体的には、カチオン化剤6は、各測定領域Rに対応する領域に形成された導電層5の表面5c、開口3cの内面に形成された導電層5の表面5b、及びフレーム3の第3表面3aに形成された導電層5の表面5aに一続きに(一体的に)設けられている。カチオン化剤6は、測定領域Rにおいて、導電層5の表面5cのうち貫通孔2cが形成されていない部分を覆っている。つまり、測定領域Rにおいては、各貫通孔2cが開口3cに露出している。この構成によれば、マススペクトルを分析する質量分析を高感度にすることができる。すなわち、例えば液状の試料Sの成分S1が第1表面2a側から各貫通孔2cに導入された場合、及び、液状の試料Sの成分S1が第2表面2b側から各貫通孔2cに導入された場合のいずれにおいても、試料Sの成分S1は、カチオン化剤6の一部61と確実に混合した状態で第1表面2a側に留まる。そのため、成分S1を確実にカチオン化することができ、質量分析を高感度にすることができる。なお、カチオン化剤6は、第1表面2dに直接的に設けられていてもよい。この場合、導電層5は、カチオン化剤6の表面に設けられていてもよい。
また、図12に示されるように、試料支持体1Cでは、カチオン化剤6が、試料支持体1と同様に第2表面2b側に設けられ、且つ、試料支持体1Bと同様に第1表面2a側に設けられていてもよい。この構成によれば、イメージ質量分析、及びマススペクトルを分析する質量分析のいずれも高感度にすることができる。
また、図13に示されるように、試料支持体1Dでは、カチオン化剤6が、試料支持体1Bと同様に第1表面2a側に設けられ、試料支持体1と同様に第2表面2b側に設けられ、且つ、複数の貫通孔2cの内面に設けられていてもよい。カチオン化剤6は、複数の貫通孔2cの内面に直接的に設けられている。この場合、カチオン化剤6は、原子堆積法によって形成され、貫通孔2cを塞がない程度の厚さを有している。つまり、カチオン化剤6の厚さが十分に小さいため、導電層5を適切に機能させることができる。また、カチオン化剤6は、複数の貫通孔2cの内面にのみに設けられていてもよい。なお、カチオン化剤6は、例えば導電層等を介して複数の貫通孔2cの内面に間接的に設けられていてもよい。
また、カチオン化剤6が蒸着膜、スパッタ膜又は原子堆積膜として設けられている例を示したが、カチオン化剤6は、例えば、塗布乾燥膜として設けられていてもよい。具体的には、カチオン化剤6は、例えばカチオン化剤6を含む液状の材料をスプレー等によって基板2に塗布した後、乾燥させることによって形成することができる。この場合、カチオン化剤6の結晶の平均粒径は、例えば数十μm程度である。カチオン化剤6の結晶の平均粒径は、SEMによって測定した場合の値である。この構成によれば、カチオン化剤6を容易に設けることができる。同様に、カチオン化剤6Aも、例えば、塗布乾燥膜として設けられていてもよい。
また、カチオン化剤6が、酸化物、フッ化物、塩化物、硫化物、水酸化物及び金属化合物から選択される少なくとも一つである例を示したが、カチオン化剤6は、クエン酸、クエン酸水素二アンモニウム及び尿素から選択される少なくとも一つを含んでいてもよい。クエン酸、クエン酸水素二アンモニウム又は尿素は、試料Sの成分S1をプロトン付加分子として検出させるために機能する。この場合、試料Sの成分S1は、プロトンが付加されたプロトン付加イオンとして検出される。この場合においても、試料Sの成分S1の種類に応じて、当該試料Sの成分S1のイオン化に適したカチオン化剤を適用することで、試料Sの成分S1のイオン化を効率的に行うことができる。同様に、カチオン化剤6Aも、クエン酸、クエン酸水素二アンモニウム及び尿素から選択される少なくとも一つを含んでいてもよい。
また、基板2の全体に複数の貫通孔2cが形成されている例を示したが、基板2のうち少なくとも測定領域Rに対応する部分に複数の貫通孔2cが形成されていればよい。同様に、基板2Aのうち少なくとも測定領域Rに対応する部分に複数の貫通孔2fが形成されていればよい。
また、第1実施形態では、試料Sは、含水試料に限定されず、乾燥試料であってもよい。試料Sが乾燥試料である場合には、試料Sの粘性を低くするための溶液(例えばアセトニトリル混合液等)が試料Sに加えられる。これにより、例えば毛細管現象によって、複数の貫通孔2cを介して基板2の第1表面2a側に試料Sの成分S1を移動させることができる。
具体的には、まず、試料支持体1を用意する。続いて、図14の(a)及び(b)に示されるように、試料Sの成分を試料支持体1の複数の貫通孔2c(図2参照)に導入する。具体的には、スライドグラス7の載置面7aに試料Sを配置する。試料Sは、例えば組織切片等の薄膜状の生体試料(乾燥試料)であり、生体試料S9をスライスすることによって取得される。続いて、試料Sに試料支持体1の第2表面2b(図2参照)が試料Sに対向し且つカチオン化剤6(図2参照)が試料Sに接触するように、載置面7aに試料支持体1を配置する。続いて、導電性を有するテープを用いて、スライドグラス7に試料支持体1を固定する。続いて、図14の(c)に示されるように、例えば、ピペット8によって、溶媒80を測定領域Rに滴下する。これにより、試料Sの成分は、溶媒80及びカチオン化剤6の一部と混合すると共に、複数の貫通孔2cを介して基板2の第2表面2b側から第1表面2a(図2参照)側に移動する。試料Sの成分は、カチオン化剤6の一部と混合した状態で第1表面2a側に留まる。続いて、図14の(d)に示されるように、試料Sの成分をイオン化させる(第3工程)。続いて、放出された試料イオンS2を質量分析装置のイオン検出部において検出する(第4工程)。
また、第1実施形態では、質量分析装置は、走査型の質量分析装置であってもよいし、投影型の質量分析装置であってもよい。走査型の場合、照射部による1回のレーザ光Lの照射毎に、レーザ光Lのスポット径に対応する大きさの1画素の信号が取得される。つまり、1画素毎にレーザ光Lの走査(照射位置の変更)及び照射が行われる。一方、投影型の場合、照射部による1回のレーザ光Lの照射毎に、レーザ光Lのスポット径に対応する画像(複数の画素)の信号が取得される。投影型の場合においてレーザ光Lのスポット径に測定領域Rの全体が含まれる場合には、1回のレーザ光Lの照射によってイメージング質量分析を行うことができる。なお、投影型の場合においてレーザ光Lのスポット径に測定領域Rの全体が含まれない場合には、走査型と同様にレーザ光Lの走査及び照射を行うことにより、測定領域R全体の信号を取得することができる。
また、試料支持体1A,1B,1C,1Dが用いられる場合には、試料Sの成分は、カチオン化剤6A,6の一部と混合しなくてもよい。この場合、導電層5に電圧が印加されつつ基板2の第1表面2aに対してレーザ光Lが照射されると、試料Sの成分及びカチオン化剤6A,6の一部が気化し、試料Sの成分が気相上においてカチオン化(プロトン化を含む)される。
1,1A,1B,1C,1D…試料支持体、2,2A…基板、2a,2d…第1表面、2b,2e…第2表面、2c,2f…貫通孔、5…導電層、5c…表面、6,6A…カチオン化剤、L…レーザ光(エネルギー線)、R…測定領域、S…試料、S1…成分、S2…試料イオン。

Claims (11)

  1. 試料の成分のイオン化に用いられる試料支持体であって、
    第1表面、及び前記第1表面とは反対側の第2表面、並びに、前記第1表面及び前記第2表面に開口する複数の貫通孔を有する基板と、
    少なくとも前記第1表面に設けられた導電層と、
    前記複数の貫通孔に設けられ、前記成分を所定の原子によってカチオン化するためのカチオン化剤と、を備える、試料支持体。
  2. 前記カチオン化剤は、少なくとも前記第2表面側に設けられている、請求項1に記載の試料支持体。
  3. 前記カチオン化剤は、少なくとも前記第1表面側に設けられている、請求項1に記載の試料支持体。
  4. 前記カチオン化剤は、少なくとも前記第2表面側及び前記第1表面側に設けられている、請求項1に記載の試料支持体。
  5. 前記カチオン化剤は、蒸着膜、スパッタ膜又は原子堆積膜として設けられている、請求項1〜4のいずれか一項に記載の試料支持体。
  6. 前記カチオン化剤は、塗布乾燥膜として設けられている、請求項1〜4のいずれか一項に記載の試料支持体。
  7. 前記カチオン化剤は、クエン酸、クエン酸水素二アンモニウム及び尿素から選択される少なくとも一つ、酸化物、フッ化物、塩化物、硫化物、水酸化物及び金属化合物から選択される少なくとも一つ、又は、銀を含む、請求項1〜6のいずれか一項に記載の試料支持体。
  8. 前記基板には、前記試料が配置される複数の測定領域が形成されている、請求項1〜7のいずれか一項に記載の試料支持体。
  9. 請求項1〜8のいずれか一項に記載の試料支持体を用意する第1工程と、
    前記試料の前記成分を前記複数の貫通孔に導入する第2工程と、
    前記導電層に電圧を印加しつつ前記第1表面に対してエネルギー線を照射することにより、前記試料の前記成分をイオン化する第3工程と、を備える、イオン化方法。
  10. 請求項9に記載のイオン化方法の各工程と、
    イオン化された前記成分を検出する第4工程と、を備える、質量分析方法。
  11. 前記第4工程においては、イオン化された前記成分をポジティブイオンモードによって検出する、請求項10に記載の質量分析方法。
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