本明細書に開示される実施形態は、様々な変更および代替の形態が可能であり、その特定の実施形態が、例として図示され、本明細書で詳細に説明される。しかしながら、本発明は、開示された特定の形態に限定することを意図するものではなく、むしろ、本発明は、特許請求の範囲によって規定される、本発明の実施形態の全ての変更、等価物、および代替物を包含するものであることが理解されるべきである。本開示は図面を参照して説明され、同様の参照番号は実質的に同様の要素を示す。
波長選択フィルタリングは、より高性能の画像強調を提供し得る。角度安定性、低迷光、および低コストで、従来の技術を用いて波長選択フィルタリングを達成するための挑戦が重要である。本願発明者は市場の要求を満たすレンズを提供しようとするものである。本明細書には、従来技術のアイウェアレンズ技術の限界を克服し、特に、最適な屋外観察に必要とされるスペクトル選択フィルタリングを実施するために、偏光干渉フィルタリング(PIF)を使用することに関連する技術およびシステムが開示されている。特定の実施形態では、本発明は事実上、太陽光のスペクトルを変更し、人間の視覚システムのために最適化する。すなわち、大量の視覚研究および人的因子研究によって確立されたように、重要な望ましい波長を正確な比率で透過する一方で、望ましくない波長を実質的に減衰させる。望ましくない波長は、スペクトルの高エネルギーの青色、スペクトルの青緑色、およびスペクトルの黄色の部分を含み得る。望ましい波長は、(ほとんどの場合)スペクトルの波長の長い青色、緑色および赤色の部分に相当する。全体的に最適化されたレンズの利点は、眼の安全、視覚の快適またはリラクゼーション、気分の改善、フルカラー観察、彩度の増大、視力の改善、および奥行知覚の向上、を含む。
一実施形態では、1つ以上のリターダフィルム(または、位相差フィルム)を含む積層体は、1つの偏光入力から2つの時間的な出力インパルスを生成するために使用され得る。出力側偏光子におけるそれらふたつのインパルスの干渉は、次のフィルタリングを行う。
スペクトルの高エネルギーの青色の部分(たとえば、400〜450nm)で最小の透過率を提供する。
スペクトルのスペクトル青緑色の部分(たとえば、485〜515nm)で最小の透過率を提供する。
スペクトルのスペクトル黄色の部分(たとえば、565〜590nm)で最小の透過率を提供する。
スペクトルの波長の長い青色の部分(たとえば、455〜480m)で最大の透過率を提供する。
スペクトルの緑色の部分(たとえば、520〜555m)で最大の透過率を提供する。
スペクトルの赤色の部分(たとえば、610〜680m)で最大の透過率を提供する。
上に列挙された波長領域は近似のものであり、それぞれの範囲からの5〜10nmの偏差は許容され得ることが理解されるべきである。
2つのインパルスPIF手法は、単純な構造で、可視スペクトル内の複数の透過帯域および阻止帯域を可能にするという単純さの利点を有する。したがって、これらの特徴は、平坦領域、または帯域あたりの複数の最大値または最小値によって特徴付けられ、インパルス数の増加を必要とする従来技術のフィルタリングとは対照的に、図1に示すように、上述の帯域のそれぞれにおいて単一の波長の最大値または最小値を示す。特定の実施形態では、色強調度が高いフィルタの中心波長でのピーク透過率の2%より小さい好ましい透過量を伴って、最小値は光学濃度が顕著に高い。本明細書で開示された技術は、上述の要件に従って、最大値および最小値を最適に配置するように最適化されたリタデーションパラメータを伴って、2ビーム(2つのインパルス)干渉の周期的性質に依存する。
さらに、広範囲の入射円錐角にわたって、軸上(垂直入射)フィルタリング特性を維持する実施形態が示されている。このようなスペクトル安定性は、視野全体にわたって最適な視認強調および色均一性が維持されることを保証するために不可欠である。PIF手法の利点は、オフノーマルのスペクトル安定性の機能上の利点を伴って、相対振幅および経路長差を維持する構造が実現可能なことである。一実施形態は、4つのリターダ層を使用して単一のリターダ層に事実上一致するが、30度の角度までに(最小可知差異内に)維持される垂直入射性能を達成する。
全体的に最適化されたレンズを作製するために、低スペクトル勾配(LSG)フィルタリングのフィルタ(たとえば、色彩偏光子)と、比較的高いスペクトル勾配(HSG)のPIF、または強調された彩度のための急峻な遷移傾斜フィルタリングと、を組み合わせたアイウェアレンズが記載される。彩度強調は、画像のカラフルさの増大、および/または、彩度の増大、を含み得る。HSGフィルタは、準中性の白色点を伴う、加法3原色(赤色、緑色および波長の長い青色)を通過させることができ、LSGフィルタは、特定の環境および/または活動において最適な視認経験を与えるために必要に応じて、それぞれの相対的なレベルの確立に役立てることができる。このように、HSGフィルタは任意の白色点の色相のレンズの構成要素として使用され得る。
強固で、産業で使用される従来のプロセスおよび材料に実質的に適合する、機能的なシートストックおよびレンズブランクを作製するための実用的な製造方法が記載される。積層体は、フォトクロミック、色バランスを形成する種々のLSGフィルタ(偏光子の機能に含まれていてもよい)、UVまたはIRフィルタ、および補助の高エネルギーブルーブロッキングフィルタ、などの他の機能材料を含み得る。このようなシートは、平坦なフィルタ製品、または一軸の湾曲した製品に要求されるように、切断され、および、様々な機械的マウント(たとえば、フレーム)に固定され得る。積層体は、平坦に加工され、または弛緩状態にあるときに一軸の湾曲を伴うように製造され得る。前述のシートストックは、複合湾曲を有する製品(たとえば、球形またはトロイダル)を提供するために、熱成形され得る。そのようなレンズはまた、反射防止性、疎水性、疎油性、勾配または均一な金属反射コーティング、誘電体ミラー、などを含む、当技術分野で周知の外面の機能コーティングを受けることができる。
本明細書で教示される技術は、偏光およびスペクトルフィルタリングの両方を提供するために偏光干渉を組み込んだフィルタおよびレンズ、特にポリマーの平坦または処方のアイウェアレンズに関する。リターダ材料は、他の機能の中でも、観察された光景の彩度およびカラフルさを強調するスペクトルフィルタリングのための波長依存性の位相シフトを誘発するために使用される。
図2に示される、2ビームPIF20は、入力側偏光子24と出力側偏光子26との間にリターダンスΓのリターダ22を含む。典型的なPIF構成では、一軸リターダは、平行な(または時に交差する)直線偏光子の間で±45度に方向づけられる。平行な偏光子の構成は、従来のリヨPIFの構成要素を形成する。1段フィルタの透過率(T)は、
等振幅固有モード間の光路長差によって、位相差またはリタデーションが決定される場合は、すなわち、
そして、T0(λ)は、(色彩)偏光子吸収を含む、他の減衰原因を説明できる包絡関数である。逆波長依存性に加えて、リタデーションは、固有モード間の屈折率差である、複屈折の分散にも依存する。
ここでn
eは異常軸における屈折率であり、n
oは通常軸における屈折率である。
単純なPIFは、等振幅の2ビーム(または2つのインパルス)干渉を表すので、図1に示されるように、透過関数は、リターダの「オーダー」(位相差の波数)によって決定される単一の振幅および周波数で振動する。歴史的には、フィルターユニットを縦繋ぎにして、研磨された無機結晶(たとえば石英)を用いた高分解能(マルチインパルス)バンドパスフィルタを作製した。近年では、ディスプレイ産業向けに生産された有機フィルムが、より大きな開口、薄さ、およびより低コストのPIFを作製するために使用されてきた。
設計されたリタデーションを有するように大量生産されたフィルムは、一般的にディスプレイ産業で使用され、ポリカーボネート(PC)、またはポリオレフィン(商品名、シクロオレフィンコポリマー(COC)、またはシクロオレフィンポリマー(COP))樹脂、のいずれかで構成されるが、たいていの製造されたプラスチックは複屈折を示す。他の材料もリターダフィルムを作るために使用されており、そのいくつかはディスプレイ産業において補償フィルムとして使用されている。これらには、ポリビニルアルコール(PVA)、セルロースジアセテート、Transfan、および各種液晶ポリマー(たとえば、Nippon Oil、Fuji、およびRolic製)が含まれる。製造された(たとえば、キャスト、押出成形、またはコートされた)いくつかの材料は、所望の光学特性を提供する。しかし、より典型的には、準等方性基板は加熱および延伸され(通常、縦方向(MD)、横方向(TD)、または斜め方向)、分子を配向させ、所望のリタデーション値を生成させる。PCとオレフィン樹脂の両方において、延伸方向(異常軸)の屈折率が増加するので、等方性基板を単一の方向に延伸すると、正の一軸材料が得られる。
ポリカーボネート(PC)は、広範囲のリタデーション値(100nmから10,000nm以上まで)を提供するものとして特徴付けられ、比較的高い可視の複屈折分散を有し、機械的荷重に対してより敏感で(製造されたリタデーション値および光軸配向を変更するという見地から)、屈折率が高く(典型的にはおよそ1.6)、ヘイズが適度に低い。PCは機械的に良好な基板であり、環境的にも安定しているが、湿気にさらされたときに膨張する傾向を有する。一軸延伸、二軸平面内延伸、さらには厚さ方向延伸、を伴う製品が開発されている。後者は、入射角の機能として、安定なリタデーションおよび振幅分割を有する、単一のフィルムを作るために重要である。PCは、アイウェア産業で基板として定常的に使用され、熱成形可能であり、しばしば必要とされる機能性コーティングを受けることができる。ディスプレイPCフィルムは、典型的には50〜100μmの厚さの範囲で製造されるが、任意の厚さが製造可能である。歴史的には、製造者には、(たとえば)Teijin、Kaneka、Nitto Denko、およびSumitomoなどが含まれていた。
COPは、より狭い範囲のリタデーション値(典型的には50nmから300nm)を提供するものとして特徴付けられ、比較的低い可視の複屈折分散を有し、機械的荷重に影響されにくく(製造されたリタデーション値および光軸配向を変更するという見地から)、屈折率が中程度(典型的には約1.5)であり、ヘイズが低い。より高いリタデーション値(700nmより小さい)を有するCOPフィルムも実証されている。一軸延伸および二軸平面内延伸を伴う製品が開発されている。本開示の日付現在、COPの厚さ方向延伸は利用できないので、入射角の関数として安定なリタデーションおよび振幅分割を提供する、という特徴もない。COPはアイウェア産業において基板としてはあまり使用されていないが、熱成形が可能である。COPが機能性コーティングを受けることを可能にするプロセスを明らかにすることが進められている。ディスプレイCOPフィルムは、典型的には20〜100μmの厚さ範囲で製造されるが、任意の厚さが製造可能である。製造者にはZeonとJSRが含まれる。
リターダは、前述のフィルタリング要件を満たすのに十分なリタデーションを供給し得る。これには、可視リタデーションの数波、たとえば、PCを用いた4波から6波が必要である。したがって、単一のPCフィルムは少なくとも軸上で要件を満たすことができるが、COPは今のところできない。また、十分なリタデーションを有する単一のPCフィルムでさえも、今のところ、外国産であり供給が困難であると考えられている。このように、いずれかの材料を有する製品は、垂直入射においてさえ、フィルタリング要件を満たすために、2つ以上のフィルムの積層体を必要とされ得ることが予期される。したがって、高リタデーションフィルムは、ロールツーロール積層プロセスを用いて、特に溶剤接着を用いて、製造することができる。
PIFを実現するために必要とされる他の技術は、偏光子である。リターダと同様に、初期のPIFは研磨された無機結晶を利用していた。今日では、大きな開口のPIFは、有機フィルムを利用している。機能層は典型的には厚さ約25μmのポリビニルアルコール(PVA)基板であり、長鎖有機染料を配向するように延伸される。PolaroidCorporationによって発明されたこのようなフィルムは、現在、ディスプレイ産業をサポートする企業によって製造されている。ヨウ素偏光子は(高偏光効率(PE)、高透過率、および中性色のために)直視型ディスプレイ産業の主力製品であるが、染料物質偏光子は高温耐性のためアイウェア産業にとって魅力的である。アイウェアレンズに必要とされる十分なPEを有する、著しく任意の透過率レベルおよび色相を有する、染料偏光子を製造することができる。PolatechnoとSanritzは、サングラス産業向けにPVA偏光子を製造している。台湾と中国には、いくつかのサングラス偏光子の製造者がある。
2つの偏光子が使用され得る。入力側偏光子は入射光を偏光し、光景(scene)からの鏡面反射するグレアを実質的に除去しながら、PIFを実現するのに必要な偏光入力を提供する。第2の偏光子は、リターダによって誘起された位相差を分析する。これらの偏光子は、レンズの機能的要件に応じて、非常に異なった特性を有することができる。入力側偏光子は鏡面反射するグレアを除去するために使用されるので、水平吸収軸を有し、可視スペクトル全体にわたって適度に高いPEを提供する傾向がある。それは中性の外観を有し得るが、レンズの所望の色相および分析偏光子の色に依存して、著しく有彩色であり得る。分析偏光子は、偏光干渉がフィルタリングに使用される任意の波長において、適度に高いPEを有するべきである。しかしながら、一様の高い透過率を必要とする波長に対しては、適度に高いPEを有する必要はない。さらに、PIF機能を損なう手段として低いPEのスペクトル領域を有することが、実際には望ましいことがある。具体的には、PIFは、可視帯域の一部にわたって振動スペクトルを提供することができ、可視帯域の別の部分には振動がない。後者は、特定の拡張された帯域にわたって高い透過率を維持する必要があり得る。
原則として、フィルタは、必要な機能要件を示す任意の偏光子を使用して実現することができ、その多くは従来技術で知られている。これには、吸収性(たとえば、染料物質またはヨウ素)偏光子、または反射型偏光子が含まれる。後者の例としては、たとえば、MoxtekまたはAsahi−Kaseiのワイヤグリッド偏光子、3MのDBEF、およびChelixのコレステリックLC偏光子が挙げられる。いくつかの実例では、偏光子は中性であり、補助のフィルタに頼ってレンズ効率および色相を確立する。他の場合では、偏光子の一方または両方が有彩色であり、2重の目的を有する。複合曲面レンズの場合、偏光子は熱成形プロセスに耐えるほど、耐久性がなければならない。光学的性能、コスト、厚さ、製造性、耐久性、および入手可能性の理由から、PVA偏光子フィルムが最も魅力的である傾向がある。
PIFおよび偏光子スペクトル(ならびに他の機能的フィルタ層)は、相補的な様式で用いて、所望の複合スペクトル応答を決定することができる。PIFスペクトルに関連するレンズの外観は、準中性(すなわち、偏光子が中性であると仮定)であってよい。すなわち、所望される場合、白色のオブジェクトは、色相または色温度のわずかなシフトを有することが観察され得る。PIFの振動特性のみを考慮すると、リターダ材料、リタデーション値、および偏光子の配向の適切な選択によって、白色点を実質的に維持することができる。逆に、PIFの振動特性が白色点において望ましくないシフトを引き起こす場合(たとえば、過度の黄色フィルタリングが色相の青色シフトを引き起こす)、白色点の忠実度は、LSGフィルタリング(たとえば、偏光子中の比較的高い青色の吸収)を経て復元され得る。したがって、所望の全体的な結果を達成するために、PIFからの相対的HSGフィルタリングとLSG偏光子吸収の組み合わせを記載する。所望であれば、LSGフィルタは、PIFによって確立された、3つの主要な帯域に対して「カラーバランス」機能を実行できる。あるいは代替的に、残りの原色に対して特定の原色の明るさを強調するために、使用され得る。
フィルタ白色点におけるシフトは(たとえば)、ランバート(たとえば、スペクトラロン)ターゲットから散乱された標準白色光源の色座標を測定すること、およびフィルタを挿入して得られた色座標と比較することによって計算され得る。中性フィルタ機能は、実質的に中性なオブジェクトの色座標を維持する。これには、輝度の適切な調整が行われた、フィルタリングされていない光と比較して実質的に同一の色の一致を提供する、フィルタ透過率スペクトルのセット全体が含まれる。本発明は、フィルタ機能のサブセットを識別することを目的とし、非中性オブジェクトのセットのカラフルさを増大させながら、これを達成する。
3刺激(またはマルチノッチ)フィルタリングを実施する技術は、典型的には反射または吸収ベースのテクノロジーのいずれかである。本質的に、反射ベースのフィルタは(たとえば)誘電体スタック、コレステリックLC、ルーゲートフィルタ、およびファブリペロー構造を含む。吸収ベースのフィルタは(たとえば)有機色素、フォトクロミック、特定の液晶、および希土類ドープ材料を含む。偏光干渉フィルタ(PIF)は、先に検討したように、反射ベースの偏光子で実現することができるが、典型的には吸収ベース(すなわち、出力側偏光子がスペクトルのリジェクト部分を吸収する)である。上記の技術は、PIFが現在の要件に特に良く適合しうることが示されるが、アイウェアフィルタに使用される場合、長所と短所を有する。
任意の干渉フィルタの特性は、スペクトルプロファイル(すなわち、透過率スペクトル)が、2つ以上の相互作用波の間の位相関係と密接に結合していることにある。合成の誘電体スタックのような等方性干渉フィルタの場合、スペクトルプロファイルは、光がオフノーマルな構造を通過すると、変化するかまたは歪む。構造が等方性である場合、このプロファイルの変化は、方位とは無関係であり、入射角にのみ依存する。異方性干渉フィルタの場合、透過機能は方位依存性を有し得る。構造の詳細によってスペクトル変化の性質が決まる。特定の等方性干渉フィルタ設計は、垂直入射スペクトルプロファイルの実質的に純粋な青色シフトを示す。他の設計は、所望のノッチスペクトル、透過帯域の歪み、またはその両方の、光学濃度の損失(または破壊)を示し得る。いずれにしても、そのような現象はアイウェアレンズとして使用されるときに、画像の外観の知覚可能な角度依存変化(すなわち、明るさ、色相、および彩度シフト)として現れる。高スペクトル勾配(HSG)または急峻な遷移勾配、および高い光学濃度を有する、干渉フィルタ設計は、スペクトル歪みがしばしばより深刻であって、したがってより知覚されるので、特に問題となり得る。視野内で目立つシフトは視覚的に好ましくなく、レンズ技術または設計を受け入れ難いものにする可能性さえある。
図2に示される、2つのインパルス(異方性)PIFの場合、スペクトル歪みは、方位および入射角の両方の作用である。これらのスペクトル歪みは、正弦波プロファイルにおける純粋なシフトに関連する傾向がある。0または90度の方位(偏光子吸収軸を含む、またはそれに直交する入射平面(POI))では、そのようなシフトは比較的重要ではない。ポジティブの一軸材料を仮定すると、POIに光軸が含まれているときに、著しい青色シフトが発生する。逆に、POIが光軸に対して直交している場合、著しい赤色シフトが発生する。また、そのようなスペクトルシフトは、アイウェアレンズの視覚FOV内で顕著である可能性があり、したがって許容できない。
これらのアーチファクトを扱うために、一軸リターダ30は、図3に示す構成を用いて「ワイドフィールド」にすることができる。具体的には、リターダは半分に分割され(リターダ32および34のペアを形成)、光軸は交差し、その間に半波長(HW)リターダ36が、光軸が偏光子38、40と平行または垂直になるように挿入されている。機能的には、半波長リターダ36は偏光子吸収軸に関しての偏光状態(SOP)を反射し、SOPの方向利き手を切り替える。これは、リターダ32および34を平行な光軸(および付加リタデーション)を有するように見せる効果を有する。しかしながら、第1のリターダ32からオフノーマルに蓄積された追加の増加リタデーションは、HWリターダ36の作用により、反対符号であり第2のリターダ34に蓄積されたものと実質的に同じ大きさである。このように、リターダ32、34のペアからオフノーマルに蓄積された追加の最終のリタデーションは、実質的に無効にされる。これは、プロファイルは0または90度の方位にあるように、±45度の方位において事実上安定するように、角度を有するフィルタスペクトル出力を大きく安定させる。
ワイドフィールドリターダ30は、3つのリタデーションフィルムを含むが、所望のインパルス応答は、単一のリターダ、または2つのインパルス(N=2)のものに縮退する。Nは、ここではインパルスの数を表し、従来技術のいくつかにおけるリターダの数(N+1のインパルスを与える)を表すことに留意されたい。HWリタデーションが波長および入射角(δ=0)に関して安定である限り、スペクトルプロファイルは安定したままである。しかし、リタデーションが波長、入射角、またはその両方(後者が最も一般的である)の作用である場合、スペクトルは、レンズの明るさ、色相、および彩度、のように不安定になる。不安定性は、スペクトルプロファイルのシフト、ヌルの光学濃度の損失、およびピーク透過率の損失として現れ得る。HWの色彩的性質は、N=2の目的の失敗を引き起こす可能性があるが、インパルスの数を増やすことによってスペクトルプロファイルの品質を高めるために利用される設計パラメータではない。むしろ、それは、N=2の目的を回復するために追加の半波長リターダを使用することで、理想的に緩和される性能に、望ましくない影響を与える。
上記の3層のワイドフィールド構造の機能は、二軸延伸されたリターダ(たとえば、Nitto Denkoが開発したNRZ製品)を用いて、単一のフィルムで達成され得る。具体的には、得られた屈折率が面内の屈折率の中間となるようにフィルムを厚み方向に延伸すると、オフノーマルのスペクトルシフトが減少する。面内の平均値に近い場合、スペクトルプロファイルは、任意の方位における入射角で非常に安定する。より精巧なスペクトルプロファイルを有するマルチインパルス(N≧3)のリターダスタックフィルタ(RSF)を製造するために、多層積層が必要とされる実例では、ワイドフィールドの構造に層を追加する必要がないという点で魅力的である。面内のリタデーションと結合された、製造において達成可能な厚さ方向の屈折率の範囲があることが留意されるべきである。別の言い方をすれば、リタデーションの最適な角度非感受性の条件は、限定することができる面内のリタデーション値の特定の範囲に結びついている。したがって、所望の高いリタデーション値を、最適な厚さ方向のリタデーションで製造することは挑戦的であり得る。このような二軸フィルムは、PCを使用してディスプレイ産業に供給されてきたが、それらは外国産であり一軸性のカウンターパートよりも高価である。この開示の日付現在、少なくとも1つの大手製造者は、量的要求の不足のために生産を停止している。
上述の二軸性リターダフィルムが存在しない場合、ワイドフィールドRSFを実現するのに必要なフィルムの数は3倍になる。先行技術の例によれば、7つの基本層(N=8)を有するワイドフィールドRSFは、21層を必要とする。さらに、半波長リターダはスペクトル範囲全体にわたって十分に、上述の偏光操作を実行することが好ましい。高濃度の最小値を達成し、可視域全体にわたって高いピーク透過率を維持し、入射角でその性能を維持するためには、前述のことが必要となり得る。スペクトル範囲は本発明では広い(すなわち、可視スペクトル全体)ため、1層ゼロオーダー半波長リターダは十分に無色ではない可能性がある。これはPCを使用する場合、その比較的高い複屈折分散のために、特にそうである。しかしながら、この問題を潜在的に解決することができる、TeijinからのWB140製品(たとえば、OLED円形偏光子に使用される)のような、1層の無色リターダが存在する。このタイプの、広帯域の1層無色半波長は、本発明では、3層のワイドフィールドフィルタを製造するために使用され得る。
1層無色HWフィルムが存在しない場合、従来技術の複合HWリターダ(半波あたり3フィルム)が必要とされ、これはワイドフィールドリターダあたり最低5層を必要とする。この場合、7つの基本層を有するRSFは、ワイドフィールドバージョンに対して35層を必要とする。この多くの層を有するアイウェアフィルタは製造するのが比較的高価であり、おそらく非実用的に厚く、および/または、熱成形が困難である。
先行技術のアイウェアRSF設計は、2つのインパルスPIF設計で可能であるよりも精巧なスペクトルプロファイルを達成するために、追加のインパルス(N>2)を使用する。しかし、それらは比較的複雑であり、したがって製造コストが高い。注意深く選択されたリタデーション特性の単純な2つのインパルス設計は、所望のフィルタリング操作を達成するために使用され得る。さらに、実用的な層数を有するこのフィルタのワイドフィールドバージョンは、入射角での均一なフィルタリングのために実施され得る。また、これらの構造が最小限3つのリターダを含むとしても、フィルタ機能は概して2つのインパルス干渉を有するものとして特徴付けられる。
前述した干渉フィルタのスペクトルおよび角度挙動を決定する特性に加えて、迷光に影響を及ぼすものがある。誘電体スタックフィルタは、複数の相互作用波を生成するために、法線方向に沿った屈折率の(典型的には急激な)ステップを利用する。特定の波長における、これらの波の複雑な重ね合わせ(すなわち、振幅および位相関係)は、透過または反射された波がどの程度強化されるかを決定する。したがって目的は、望ましくない波長を強く反射しながら、所望の波長の透過率を強化するスタックを設計することである。たとえば、HSG(急峻な遷移勾配)、拡張された帯域にわたる高密度ノッチング、およびフラットトップパスバンド、を示すフィルタが日常的に製造されている。「6プライマリ」スペクトルベースの3Dシネマに使用されるアイウェアフィルタの場合がそうである。しかし、拒絶帯域が反射されるので、光が、吸収された光よりも迷光に寄与する機会がはるかに大きい。そして、光の拒絶された部分が透過される光のかなりの部分を占める限り、眼精疲労および不快感を引き起こす重大な迷光の可能性がある。コーティングされていない表面から反射された光の最小限4%のみに抑えるように設計された、反射防止コーティングを使用することの重大な影響を考慮すると、誘電体スタックレンズは入射光の50%以上を反射するように要求され得る。
誘電体スタックフィルタでコーティングされたアイウェアレンズの背面(観察者側)に直接入射する光では、反射のレベルは非常に強くなり得る。いくらかの遮光はこれを軽減するテンプルのデザインによって提供され得るが、それはフレームスタイルの選択を制限し効果がほとんどない。さらに、レンズを透過した光は、観察者から広範囲の角度に散乱され、レンズの前にあるリリーフ距離(目からレンズまでの距離)で観察者の画像を粗く生成する。このゴースト画像は透過した画像と競合して目の疲労および不快感を生じさせる。反射干渉フィルタスペクトルの角度感度は、最初にレンズを通して効率的に透過された光が、異なる角度でレンズに戻されたときには、そうでない可能性があるので状況を悪化させる。また、反射からのフィルタリングを分離することによりレンズの反射を大幅に低減することができるだけでなく、いずれの表面にも反射防止コーティングが可能になり、レンズの透明さをさらに高めることができる。一般に、好ましいレンズは、低い外部反射(すなわち、ARコーティング)と組み合わせて、低曇り、低蛍光、吸収ベースのフィルタを使用することにより、迷光を完全に消滅させる。
本明細書に開示されたレンズまたはフィルタは、それが吸収ベースのフィルタであるので、迷光の問題からは比較的免れ得る。背面に直接入射する光に関して、4%の反射はARコーティングによって大幅に減少され得る。迷光の別の原因は、レンズを透過し、観察者から散乱され、両面から反射されるものである。また、背面のARコーティングは、その表面の寄与を大きく減少させ得る。前面から反射された光は、吸収フィルタを2回通過する必要がある。したがって、観察者の散乱効率(反射率)、および、コーティングされていない前面の4%反射率に加えて、複合フィルタのダブルパス減衰がある。最初に透過された画像の比率として、このレベルは非常に弱くてよい。たとえば、典型的な15%の明順応透過吸収フィルタを仮定すると、コーティングされていない前面は意図された画像に関連する輝度のわずかな割合を回復させる。このように、背(内側)面表面上のARコーティングは迷光を低減する上で、前面上のARコーティングよりも非常に重要である。吸収フィルタは、迷光の低いダブルパス効率により、入力面上の反射コーティングを実現可能にすることができる(すなわち、迷光の観点から)ことに留意されたい。
レンズを通して観察されるオブジェクトの知覚される明度、色相、および彩度は、光源(たとえば、太陽)のパワースペクトルおよび角度の分布、オブジェクトのスペクトル反射率(表面および体積散乱)、アイウェアフィルタのスペクトル透過率、そしてもちろん人間の視覚システムの応答、に依存する。これを網羅的に分析するには、オブジェクトと光の相互作用を記述するために双方向反射率分布関数(BRDF)を使用する必要がある。そして、光景内のオブジェクトの知覚は、それらを孤立して考えないが、視覚システムの空間依存性に基づく関係を必要とする。徹底的に分析することは非常に複雑な問題である。しかし、本目的のため、アイウェアフィルタは、世界を見るための「より良い」光源にするために太陽光を変更する(比較的実用的な)手段と考えることができる。安全性の目的にもかかわらず、これを行うためのいくつかのよく知られた理由がある。
太陽が強すぎると、サングラスレンズは明るさを快適なレベルに低下させる。フィルタリング操作は、スペクトル的に中性であるかまたは平坦であり得る。フィルタはまた、太陽の色温度を効果的に変化させることができ、これにより、より快適、および/または、快活な方法で、すべてのオブジェクトの色相をシフトさせることができる。このようなフィルタリングは、透過率のスペクトルの低い吸収密度の小さな勾配を介して、成し遂げられ得る。たとえば、茶色のレンズは透過率が可視領域全体にわたって増加する、準線形のスペクトル傾斜路である。色の不変性はこのような色相シフトを視覚システムに許容可能または望ましいものにすることができるが、限界がある。任意の原色にまたがる高密度の減衰(S、M、およびL錐状受容体、および、続く色の知覚を決定する処理に関連)は、画像の演色およびフルカラーの評価を大幅に減少させるので、望ましくない。たとえば、400〜500nm帯域の全ての光を吸収する「青色ブロッカー」レンズは、S錐体励起を実質的に排除し、飽和した黄色の外観を生成し、光景内の青色コンテンツを評価する能力を排除する。S錐体の密度は、中心窩の外側で増加するため、周辺視野にも影響を及ぼし得る。逆に、本明細書で教示されるレンズ設計は、世界をより愉快で、魅力的で、観察し易くする一方、いままで通りにフルカラーの知覚を可能にする、高密度ブロッキングの領域を提供する。
従来のサングラスフィルタリングに加えて、人間が肉眼で観察するよりもよりカラフルな世界を好むという証拠が増えている。このようなフィルタ機能は、前に議論したものよりも選択的なスペクトル勾配を必要とする。強調された彩度の好ましい例は以下の通りである。彩度を増加させる写真フィルムは、風景写真のためのアーティストの間では古くから知られており(たとえば、Fujiのベルビア)、消費者は通常、デジタルでキャプチャされた画像を処理するときに彩度を不自然なレベルに増加させ、近代的なテレビ(OLEDおよび量子ドットバックライト)は、不自然に「パンチアップ」された色を含む光景を繰り返して表示させ、固体照明を設計する研究者は、消費者が彩度を増加させる波長選択源を好むことを発見した。これは、肌の色調などの挑戦的な画像を観察する場合にも当てはまる。最近のヒューマンファクターの研究では、人々はしばしば、色の忠実をよりよく維持するものよりも、彩度が強調された画像を好むことが確認されている。より高い彩度を好むこと、および視力に対する3色照明の利点は、しばらくの間知られていた。ソートンは、蛍光灯の設計時にこれを観測した。従って、消費者は、より多くの波長選択光源を生成するフィルタを介して、自然な世界をより豊かな色彩と彩度で見ることを好むだろうと、予想することはかなり合理的であると思われる。最近のヒューマンファクターのテストでは、研究者はまた、相関色温度(CCT)および演色評価数(CRI)などの業界標準が、現在検討中の提案された新しい基準で、視聴者の彩度強調の好みを十分に捕捉していないことを認識するようになってきている。
さらに、スペクトルフィルタリングを補足するオブジェクト依存フィルタリングを実行するために、偏光子が組み込まれることが、指摘されるべきである。機能的には、偏光子は、光景内の特定のオブジェクトであって、通常は視覚上の快適さのために最も必要とされるオブジェクトの明度を選択的に減衰させるフィルタと考えることができる。グレアを除去することにより、表面散乱が大きい直接照射されたオブジェクトをより快適に見ることができ、オブジェクトの色にさらに関連する体積散乱を容易に観察することができる。このフィルタリングの形態は、光景の幾何学的配置(たとえば、観察者の位置、光源の位置、およびそれぞれに対して反射するオブジェクトの向き)に依存するという意味で独特である。
しばしばCRIに関連する、光景の色忠実度を維持することは、多くの場合、本発明の目的と矛盾する。すなわち、レンズは、カラフルさ、および/または、彩度を強調する目的を達成するために、意図的にオブジェクトの色相を歪ませることが多い。たとえば、裸眼では淡褐色または黄緑色であるように見えるオブジェクトは、フィルタを通して見ると、色相が赤色または緑色にそれぞれシフトし、彩度が増大したように見えることがある。自然界を観察するときのこの歪みの結果、そうでなければ準均質であるように見える、並置されたオブジェクトに関連する境界がより明白になり得る。たとえば、密集した植物の場面では、さまざまな種類の樹木や低木が無作為に空間に配置されている場合がある。フィルタを使用しないと、コントラストと色の多様性がほとんどなく、光景は単調に見え得る。したがって、植物は混ざり合って平坦に見える傾向がある。このフィルタは、スペクトル反射率の微妙な差異(たとえば、葉の特定の色)、ならびに構造の差異(たとえば、樹木内の枝および葉の特定の分布)を強調することができる。これらの増幅された彩度ステップ(およびある程度までの輝度ステップ)は、オブジェクトの境界の識別、および、構造または質感の分類またはクラスタ化を容易にすることができ、視覚システムが空間内でそれらをよりよく位置付けるのを助ける。したがって、光景をより興味深く魅力的にすることに加えて、本発明のフィルタは、奥行知覚における良好な感覚を提供する。
これに加えて、本明細書に教示されているレンズは、運動能力および野外活動の楽しさを高めることができる。これは、向上された視力および奥行知覚、ならびに、より刺激的な画像を見るときに得られた肯定的な感情反応による心理学的利益、に起因し得る。その傾向は、強調された色を含む景色がより鮮やかで刺激的であるように見えることであり、幸福感を増大させる。彩度強調レンズは、木(および他のオブジェクト)の空間的位置をよりよく評価し、草の特徴の微妙な違いを評価し、視覚的にボールの位置決めをし、および単に環境をよりよく楽しむために、ゴルファーによって使用され得る。特定のバックグラウンドで動くオブジェクト(たとえば、ボールまたは競争者)を迅速に検出することを必要とする他の屋外スポーツは、本明細書で教示される技術から利益を得ることができる。視覚的エッジ検出を強調し、応答時間を向上させ得る。漁師は、水面下の活動をより良く観察するために、本発明の偏光およびスペクトルフィルタリングを組み合わせて使用することができる。サイクリスト、ハイカー、ランナー、およびシュノーケラーまたはスキューバダイバーはすべて、本発明を使用したアイウェアを着用することによって、体験の質を向上させ得る。
商業的または軍事的応用も、色彩オブジェクトまたはサブジェクトを含むタスクを、より速くかつより正確に完了すること、を実行可能にすることによって、本明細書の向上から利益を得ることができる。農産業で働く者は、植物の健康状態をより簡単に検出し、または、収穫する果物や野菜を見つけることができる。パイロットおよび軍人も、光景からの情報をより正確にまたは迅速に抽出するために、本発明の特徴から利益を得ることができる。色覚を使用する内容の操作または評価を含むタスクに従事する技術者または専門家は、本発明を使用して、効率および正確さを潜在的に向上させ得る。
本明細書で教示されるレンズは、色覚異常(CVD)に苦しんでいる多数の人(特に男性)の色の知覚の向上のためにも有用であり得る。(たとえば、非原色のスペクトル青緑色と黄色の)適切なノッチングにより、フィルタは、色知覚を決定する反対信号に大きく影響することができる。
特定の活動または環境に対する本発明のカスタマイズも成され得る。レンズ設計の変化には、リターダオーダーの選択、リターダ複屈折の分散、緑色中心波長の調整、偏光子の構成(入射または出力側偏光子の角度)、偏光子のタイプ(たとえば中性または彩色)、偏光効率のスペクトル特性、が含まれる。その目的は、特定の背景上のオブジェクト(たとえば、コートの背景色の上のテニスボールなど)をより良好に検出することであり得る。最適化は、色相、彩度および明度(明るさ)の組み合わせパラメータを含む、画像内の顕著な特徴と背景との間の知覚されるコントラストを最大にする、レンズ透過率スペクトルの識別を必要とする。後者は、当該技術分野において周知のLab色空間、HSV、HLSなどの、視覚応答を特徴付ける多数の標準的な技術を用いて定量することができる。
入力のスペクトルシグネチャに対するフィルタの視覚的影響は、特定の色彩オブジェクトを考慮することによって都合よく行われる。網膜は、通常、3種類のカラーフォトレセプターを含み、ショート(S)、ミディアム(M)、およびロング(L)波長の錐体と呼ばれることがあり、それらは局所的に処理されて和または差信号を生成する。たとえば、オブジェクトが飽和した黄色に見えるようにするには、青色(S)の反対信号に関して強い(M+L)信号を持たなければならない。したがって、青色波長を除くすべての波長を効率的に散乱するオブジェクトは、大きな潜在的(M+L)信号のために、高い黄色さと高い明度の両方を有することができる。たとえば、木の黄色になった葉は、通常、周囲の緑の葉よりもはるかに明るく見え、秋の色の美しさに実質的に寄与するのはこの明度である。このような広帯域(たとえば、黄色)のオブジェクトは、狭帯域(たとえば、黄色)のオブジェクトよりも自然界ではるかに一般的である。さらに、比較的弱いS錐体信号および平衡した赤色または緑色の反対信号を伴う任意のスペクトルシグネチャ(すなわち、反射スペクトルによって乗算された光源スペクトル)は、黄色のメタマーを示す。
本明細書で教示されるようなレンズによってフィルタリングされたそのような広帯域の飽和した黄色のオブジェクトについて検討する。ユニーク黄色(約577nm)を中心とする波長の狭帯域の抑制は、色相および彩度にほとんど影響を与えずに、知覚される明度を著しく減少させ得る。従って、広帯域のイエローオブジェクトのこのような明度の低下は、ノッチフィルタの影響を受けにくい、異なるスペクトル反射率の他のオブジェクトとのバランスに影響を及ぼし得る。たとえば、赤みがかったオブジェクトは、並置された黄色のオブジェクトよりもフィルタによってはるかに低い減衰を経験し得て、それによってそれらの相対的な明度のバランスに影響を及ぼす。ノッチは赤いオブジェクトの色相と彩度にも著しい影響を与え、より飽和した赤色にシフトさせる。フィルタリングされた黄色のオブジェクトに対して、赤色のオブジェクトの相対的な明度および増加した彩度は、印象的で満足のいく視覚的品質を作り出すことができる。
肉眼では、赤色−緑色の反対信号は、オブジェクトのスペクトルシグネチャと、それぞれLとMの曲線の積に関連する重なり積分間の差とによって決定される。原色赤色および緑色の間の帯域を減衰させることにより、長波緑色(または緑がかった黄色)、および黄色または橙色の波長は、赤色または緑色の反対信号に、したがって知覚される色相に比較的小さな影響しか及ぼし得ない。先に議論した光源スペクトルを変更するのと同じく、フィルタが目のカラーマッチング機能を変更しているかのようである。MおよびL錐体が光子を集める波長の範囲は、実質的に、原色緑色および原色赤色の波長に限定される。ユニーク黄色にほぼ中心化された情報が欠乏している場合、スペクトルのこの部分の色相を検出する能力は、ノッチフィルタのバンドエッジによって規定されるように、主に原色緑色から原色赤色の相対振幅に依存する。
準単色入力の小さなシフトを検出する視覚システムの能力は、スペクトルの青緑色および黄色部分において高められる。黄色では、これは、赤色−緑色の反対信号の差分変化が、知覚される色相に最も影響を与える場所である。たとえば、典型的な観察者は、準単色の黄色がかった光源で、0.5nmのシフトを検出することができ、波長の長い赤色の光源では5nmのシフトをほとんど検出することができない。しかし、視覚システムは、適切なバランスを有する、単一の単色光源と、(たとえば)準単色の赤色および緑色からなる2階調のメタメリック光源とを識別することができない。これは単純に、赤色と緑色の反対信号を同等の調和のとれたものにすることができるからである。このように、黄色における単色の色シフトに対する高められた感度は、2階調光源の相対的な振幅の間のバランスの感度を記述することにまで及ぶ。したがって、原色緑色と原色赤色を中心とする狭帯域のみを透過させることにより、フィルタは、オブジェクトのスペクトルシグネチャの詳細な構造と、特定の波長が、知覚される色相を決定する際のピーク(r/g)波長間のバランスにどのように影響するかをはるかに強調する。これは、視覚システムが最も感度が高い帯域で起こるため、知覚される色相の大きな歪みが導入され得る。
実際には、サングラスレンズが赤色、緑色および青色の狭い帯域の波長のみを抽出することは困難であり、望ましくないことさえある。サングラスは、原色透過帯域を広げる必要がある標準仕様に従って、光の一定割合を透過する必要がある。さらに、非常に狭い透過帯域は、反対色信号を決定する際に特定の波長を過度に強調することがあり、したがって過度の色相歪みを引き起こし得る。したがって、本明細書に開示された実施形態の帯域通過プロファイルは、振動または正弦関数であり、従って、1波長でのみPIFピークまたは最小値を有する、M曲線およびL曲線の連続加重抽出を表す。中性入力の存在下での赤色または緑色振幅の特定のバランスは、MおよびL曲線についての黄色の最小波長の配置によって、ノッチ(オーダー)の幅を選択しつつ、および追加のLSGフィルタリングを導入しつつ、設計され得る。
一方、浅い遷移勾配、不十分なノッチ幅、および低い減衰密度のために、赤色および緑色の帯域を実質的に分離しないフィルタは、所望の彩度強調効果を弱める傾向がある。不十分なフィルタリングはカラフルさへの影響を弱め、画像には「ポップ」が欠乏する。色素などの、プラスチックサングラスレンズを実現するための従来の技術を考慮すると、彩度強調のための最適なスペクトルプロファイルは、実際に実現するのが困難な場合がある。しかしながら、本発明は、十分に急峻な傾斜、幅および密度を有するノッチ透過率スペクトルが、原色プロファイルを明確に規定することを許容する。黄色のノッチは、原色緑色の長波長遷移および原色赤色の短波長遷移を規定する。青緑色のノッチは、原色緑色の短波長遷移および原色青色の長波長遷移を規定する。色彩的には知覚される色はこれらの原色の加重線形結合とみなすことができる。
自然界において観測されるオブジェクトのスペクトルシグネチャは、照明(太陽)パワースペクトルとオブジェクトのスペクトル反射率との積によって与えられる。本発明のフィルタは、自然界に見られる普及したオブジェクトに関連するスペクトルの特徴よりも典型的にはより選択的で光学濃度が高い方法で、このシグネチャの部分を減衰させる。比較的低いスペクトル勾配(LSG)を有する例には、空の青色、茶色(たとえば、弱った植物、乾燥した葉、木および土)、緑色および黄緑色(たとえば、健康な植物)、黄色−琥珀色(たとえば、特定の健康な植物 、麦わら、特定の乾燥した葉)、および赤色(たとえば、特定の植物、特定の紅葉、粘土、砕石)、が含まれる。これには、レンガ、家の塗料、色汚れ、および一般に屋外で観察される他の色素などの合成のオブジェクトも含まれ得る。典型的には、スペクトルシグネチャは一般的にLSGを伴ってすべての可視波長から顕著な表現を示し、両方とも中程度または低い彩度値に寄与する。たとえば、樹木の枝の茶色は、青色から赤色波長への顕著な寄与を伴う、LSG準線形傾斜と関連付けされ得る。草の緑色は、クロロフィル吸収のため、橙色または赤色の低密度浸漬を伴う類似のLSG傾斜であり得る。結果は単調な世界でカラフルさと差別化が欠乏している。
大部分の場合、自然界は彩度値の低い、茶色−黄色−緑色の色相を含んでなる。この例外で、より高い彩度シグネチャを有するものとしては、花、果物または果実、特定の紅葉、および当然、街路または事業標識、カラフルな織物、および(たとえば)自動車用塗料、などの高彩度の合成物を含み、これらは観察される屋外の重要な部分だが、一般的ではない。そのような高彩度のオブジェクトは、典型的には、HSG遷移と、可視スペクトルのある部分からの比較的低い表現とを有する。本発明は、異なる方法ではあるが、そのようなオブジェクトの外観にも影響を及ぼす。
ここで教示されたフィルタが中性の白色点を有することが望ましい場合、自然界で中性に見えるオブジェクトは、実質的にそのままであるべきである。任意の有意な彩度を有するオブジェクトの場合、知覚される色を歪ませる際のフィルタの影響は、特定のスペクトルシグネチャに依存する。また、同じ色を有するように見える(すなわち、メタマー)オブジェクトは、入力スペクトルシグネチャとフィルタ透過関数の積の影響を考慮すると、フィルタによって異なる影響を受ける可能性がある。フィルタの各ノッチは、一対の「トリムフィルタ」として考えることができる。黄色のノッチは、主に原色緑色を決定するショートパストリムフィルタ、および、主に原色赤色を決定するロングパストリムフィルタ、と考えることができる。緑色トリムフィルタとスペクトルシグネチャとの積は、知覚される緑色の色相と、画像内のオブジェクトへの原色緑色の寄与レベルを大きく決定する。赤色トリムフィルタとスペクトルプロファイルとの積は、知覚される赤色の色相と、画像内のオブジェクトへの原色赤色の寄与レベルを大きく決定する。この場合、光景内で黄色を知覚する唯一の方法は、ノッチフィルタによって設定された赤色と緑色の原色の適切な混合による。
たとえば、入力スペクトルシグネチャが赤色または緑色に及ぶLSGからなる場合、知覚される色相はフィルタピーク波長における相対的な寄与によって、強く影響を受け得る。しかしながら、オブジェクトのより高彩度の入力シグネチャが、ノッチ領域内にHSGを有する場合、歪みは非常に明白になり得る。黄色のノッチ内に存在する急峻な正のスペクトル勾配を有する、オブジェクトシグネチャ(たとえば、花)を考えてみる。このオブジェクトは、黄色または赤色の高い反射率を伴って、青色または緑色の比較的弱い反射率を有し、(たとえば)黄色−橙色で現れる。この場合、赤色トリムフィルタは、入力シグネチャの実際の遷移を実質的に除去または消去することができ、シグネチャからの黄色波長の寄与を実質的に除去することによって色相は赤色シフトする。シグネチャはより短い波長からの寄与が比較的小さいので、黄色の除去は著しい赤色の色相シフトを引き起こす。視覚的には、黄色−橙色の花は、鮮やかな赤色に現れる。図5は、ピンク色の花についてフィルタの有無の両方で測定されたスペクトルを示す。フィルタは遷移ハーフパワーポイントをはっきりと赤色シフトし、高光学濃度ノッチングを使用して、スペクトルコントラストを増加させる。
すでに高い彩度値を有するオブジェクトでさえも、レンズを通して観察された場合に、色がさらに著しく強調されたように見え得ることに留意すべきである。たとえば、蛍光繊維または黄色の街路標識を考えると、これは、比較的限定された、非常に効率的なスペクトル反射率シグネチャを有し得る。このようなオブジェクトは、フィルタリングがなくても非常に鮮明に見え得る。トリムフィルタリングの動作は、外観をさらに強調させることができ、単色のほぼ自己発光する(または、輝く)外観を与える。フィルタは明確に副単一の透過率を有するが、このようなオブジェクトは実際には明るく、またはコントラストの増加と彩度の増加の結果、よりいっそう明るく見え得る。
議論したように、本明細書におけるフィルタリングは、白色点の忠実度に事実上の変化を伴わずに達成され得る。黄色の(たとえば)フィルタリングされたメタマーは、知覚される色相または彩度の変化を実質的に伴わずに透過され得ることも指摘されている。より広くは、彩度の知覚可能な増加なしに透過され得る入力の範囲がある。実際、フィルタが実際に彩度を低下させ色差を弱める入力があり得る。具体的にはフィルタはより大きな色座標の分離を生成して、場合によっては有用な色空間の範囲を拡大し得て、他の場合には、色座標の分離を圧縮することができることが示される。したがって、画像彩度強調の全体的な目標を達成するためには、フィルタが全てのオブジェクトの彩度を強調することは、一般的には要求されていないかまたは望ましくないことは明らかである。
本発明のフィルタは、強調された彩度のために青緑色および黄色ノッチを提供することに加えて、高エネルギーの青色(HEB)部分のスペクトル(400〜450nm)に1つ以上の透過最小値を提供し得る。これらの波長はたやすく眼に散乱し、蛍光発光を引き起こし、網膜上に結像するのが困難であり、眼の健康に有害であり得ることが知られている。最近の研究は、HEBライトは、ディスプレイデバイスからの人工光源への長期間の曝露によって悪化する睡眠パターンを崩壊させ得ることを示している。HEBライトは、特定の腫瘍性疾患、糖尿病、肥満およびうつ病に関連する、サーカディアンリズムに影響を与えるメラトニン産生を抑制する。逆に長波の青色は、気分の改善、および演色のために有益である。本発明によれば、フィルタはこれらの理由により、長波の青色部分のスペクトル(たとえば、455〜485nm)に透過率ピークを有する。PIF構造は目の安全性を提供し、所望の視覚体験を生じさせるために、単独で、または他のフィルタと組み合わせて使用される。たとえば、すべての高エネルギーの青色またはUV光(たとえば、400〜450nm)を効果的に減衰させるために、補助のUVまたは青色ブロッキングフィルタをHEBブロッキングフィルタと組み合わせ得る。一実施形態ではより中性な白色点は、HEB光の減衰とユニーク黄色を中心とする帯域の減衰とのバランスをとることによって達成され、それによってb/yの反対信号が実質的にバランスがとられる。
フィルタリタデーション分析
図2に示されるPIFの最も単純な形態を使用して、設計オプションは、リタデーションの量、および偏光子の構成(平行または交差)を含む。コントラストを最大にするリターダおよび偏光子の角度が、他の角度が光学濃度を減少させる効果、ピーク透過率を減少させる効果、またはその両方を有し得ることを理解しながら、この分析に使用される。分析を単純化するために、リターダオーダーは特定の緑色波長(たとえば、532nm)に対して任意に選択され、この波長でオーダー(またはリタデーションの波数)が変えられる。交差した偏光子の場合、532nmにピークを作り出すために、追加の半波長リタデーションを加える。他のスペクトル特性のシフトを引き起こす、緑色波長での調節が行われ得ることが理解されるべきである。ここでの目的は、スペクトル基準を満たす可能性のある、リターダオーダーの基本的な範囲を特定することである。表1は、高エネルギーの青色(HEB)最小波長、青色ピーク波長、青緑色最小波長、緑色ピーク波長(完全性のために含まれる)、黄色−橙色最小波長、および赤色ピーク波長を含む、各スペクトルの特性を示す。暗い陰影をつけられたエントリは、目の保護と彩度強調の要件を満たしていない特徴を示す。明るい陰影を付けられたエントリは、許容可能性のボーダーラインにある特徴を表し、潜在的にリタデーションのわずかなシフトで許容され得る。陰影のないエントリは許容可能な基準の範囲内にある。結果は、緑色におけるPCリタデーションの4.0〜6.0波、より正確には緑色における5.0〜5.5波の範囲が好ましい場合があることを示している。
表1は、許容可能な解の範囲があり、5.0または5.5波が最良であることを示している。低オーダーでは、所望の原色(青色または赤色)付近のピークを達成するのに十分なリタデーション分散はなく、ノッチは青色およびスペクトルの橙色帯域上に侵入する。特に橙色から赤色へのスペクトル勾配は浅く赤色スループットは不十分である。リターダオーダーが最適値よりも高い場合、青色ピークは最適値の長波長側にシフトし、赤色ピークは最適値の波長の短い側にシフトする。後者の結果、波長の長い赤色側のロールオフが著しいため、赤色の損失が問題になり得る。赤色の明るさを評価する際には、明順応の重み付けが、スペクトルのこの部分で重要である、ことに留意されたい。すなわち、波長の長い赤色の効率が貧弱な、短いピーク波長は、より長いピーク波長およびより幅広い赤色プロファイルを有するプロファイルほど明るく見え得る。一般に、リターダオーダーを増加すると、各通過帯域ローブの幅が減少する(しばしば半値全幅(FWHM)として特徴付けられる)。これは、RGB帯域の各々に含まれるエネルギーを減少させる傾向があり、明るさを低下させ得るが、ノッチ幅も減少させる。FWHMを狭めることは、原理的に彩度を高めることができる選択性も向上させるが、プロファイルが正弦波であるとすると、先に議論したように中心波長をすべて最適化することはできない。
(たとえば)6.0波のリタデーションを使用するときに生じる、赤色のロールオフは、先に議論したように、従来技術の赤色の偏光子を置き換えることによって処理し得る。具体的には、分析偏光子のPEスペクトルは、PIFのピーク赤色透過率の付近で、シャープな遷移を示す。すなわち、これより短い波長に対して良好な偏光子として作用し、より長い波長に対しては偏光しない。先に議論したように、これによりPIFによって決定される遷移を有する、比較的短い赤色ピーク波長が可能になり、より長い波長すべてに対して高いピーク透過率が維持される。
先に議論したように、適切な二軸リターダが使用された場合、表1に示される最適解は、全ての入射角に対して良好に働くであろう。この材料がない場合、一軸の解が使用されなければならない。オフノーマルの基本動作は全エントリに共通であるが、表1の設計の各々は特定のスペクトル特性を有する。これには、±45度の方位におけるスペクトルの青色または赤色の大きなシフトを伴う、偏光子の平面内の(およびそれに直交する)透過率スペクトルの優れた安定性が含まれる。しかしながら、いずれの方位角に対しても光学濃度がオフノーマルでは著しい損失はない。
特徴的な挙動の共通性が与えられ、以下の実施例では平行偏光子間の緑色PCリタデーションが5.0波の、特定の設計解を詳細に考察する。特定の交差偏光子の解は詳細には評価されない。しかしながら、交差偏光子の解は、幾何学的な歪みに起因して、平行な偏光子のオフノーマルな構成と多少異なっていることに留意すべきである。すなわち、平行偏光子はどの方位においても平行であるように見えるが、交差偏光子は、幾何学的回転によって一般にオフノーマルに交差しているようには見えない。この回転は、±45度の方位において最も極端なものである。一般に、リターダの光軸の幾何学的回転は、偏光子の吸収軸に対して起こるが、その効果は極端ではない。
実施例1:平行偏光子を有する単層一軸PCリターダ
この実施例は、平行偏光子の間に単層一軸PCフィルムを使用する、最も単純な構造である。これはさらなる処置をとることなく達成可能な性能のベースラインとして役立つ。表2は垂直入射と特定のキー方位角に対するオフノーマルの30度とにおける出力特性を示す。L値は非偏光および理想的な単一透過偏光子(すなわち、正弦波寄与のみ)を仮定した、明順応の明るさに対するフィルタ透過関数の効果である。このように、ゼロリタデーションを有するL値は50%であり、低オーダーで振動し、非常に高いオーダーで25%に収束する。
ΔL値は垂直入射値のパーセンテージとしての明るさのオフノーマルの変化である。白色点の色座標はX−Y空間内にある。オフノーマルの白色点のシフトは、垂直入射の白色点座標に対する通常の二乗平均平方根差計算によって与えられる。
オフノーマルのスペクトルシフトのインジケータは、黄色の最小波長値と見なされ、実際のシフト(Δλ)は垂直入射値に対するシフトである。光学濃度が維持されるので、青緑色および黄色の透過量はこの場合はすべてゼロである。これらは、必ずしも光学濃度を維持しない後述のワイドフィールドの例と直接比較するための場所マーカーとして含まれる。
30度の入射における25nmより大きいシフト(青色および赤色の両方)は、輝度値の20%以上の損失を生じさせる。しかし、もっと重要なのは、それが非常に大きいカラーシフトを引き起こすことである。色の変化における最小可知差異(JND)が約0.01であることを考えれば、表は中心に対して10JNDを超えるシフトが起こることを示す。FOV内の任意の2点間の色の最大変化はΔxy=0.167である。
実施例2:単一ゼロオーダーHWを用いたワイドフィールドフィルタ
本明細書で教示される技術の最も単純なワイドフィールドの形態は、スプリットマルチオーダーリターダ間の、偏光子吸収軸に平行または垂直な、ゼロオーダーHWリターダである。この構成は図3に示される。この例では、それぞれが532nmにおいて2.5波のリタデーションを有するスプリットリターダを使用する。中心波長535nmのゼロオーダーHWリターダを使用して、垂直入射における青緑色と黄色の最小値の光学濃度をバランスさせる。偏光子は平行である。
HWリターダが完全に無色であった場合、垂直入射の性能は表1のものに近接して一致する。HWリターダの分散の影響には、ヌルの光学濃度の損失、ピーク透過率の損失、および増分スペクトルシフトが含まれ、これらのすべてが色度の変化に寄与する。したがって入射角の均一性を得るために、垂直入射スペクトルの性能においてさえも必要とされる犠牲がある。この表は、ヌル中心波長と密度を記録するが、ピーク透過率は記録しない。
ワイドフィールディングに関連する1オーダーの向上は、表3に示されるように±45度の方位において大幅に低減されたスペクトルシフトで裏付けられる。これは垂直入射の場合を含めて、ピーク透過率および光学濃度の増分損失を犠牲にしている。さらにこの不安定性は、0または90度の方位において最大である半波長リターダンス中心波長に関連するシフトがあるので、オフノーマルの方位の作用である。方位を有する青緑色または黄色ノッチでの光学濃度の上昇または下降は表3に明白に表れている。この表には取り込まれていないが、このような濃度の変動は、彩度強調の有効性に影響を与え得る。しかし、おそらく最も重要なのは、スペクトルシフトが、すべての方位角の白色点のシフトがそうであるように、大幅に低減されていることである。一軸の場合と比較して、垂直入射からの色座標シフトは最大でΔxy=0.031、すなわち約3JNDである。これにより先の例が4.2倍に改良される。FOV内の任意の2つの点の間の最大差はΔxy=0.047であり、これは3.5倍に減少している。
色彩HWの影響が異なるので、平行偏光子(垂直入射)の挙動も交差偏光子を使用する設計と比較されるべきである。平行偏光子では理想的なピーク透過率が維持される一方で、(理想的な半波の波長から離れた)HWリタデーションの増分変化は最小の光学濃度の損失を引き起こす。交差偏光子のバージョンはスペクトルを反転させ高濃度のヌルを保証するが、半波の波長から離れてピーク透過率が低下する。可視全体にわたって、高いノッチ密度、または高いピーク透過率を選択することにより、好ましい構成が規定され得る。これらの記述は一般的には垂直入射に対して真実であるが、両方の構成はピーク透過率とオフノーマルの光学濃度の依存性を示す。ゼロオーダーHWリターダの色特性は、性能を妥協させるが単純さの利点を有し、スペクトルシフトを抑制する良好な働きをする。したがって、視野にわたるスペクトル性能が許容可能であると考えられる場合、これは実行可能な解となり得る。
実施例3:2層回転子を使用したワイドフィールドフィルタ
図4に示す別の設計では、フィルタ50のワイドフィールドの手段として、2層回転子を使用する。HWリターダの数を増やすことの利点は、中心偏光変換を可視にわたってより少ない色彩にすることができることである。この場合図4に示されるように、2つのゼロオーダーHWフィルム52および54は、スプリットリターダ(56および58)の間に配置され、偏光子60と62との間に配置される。2つのHWリターダは、偏光子を効果的に90度回転させる外観を有しているのでピークと最小が入れ替わる。この反転は各スプリットリターダ(図ではプライム記号で示される)に、1/4波長のリタデーションを加えるまたは減ずることによって打ち消され得る。回転子が可視にわたって無色である限り、それは交差偏光子の場合と同じように見える。しかし、変換は完全に無色ではないので、外側の各要素に1/4波長シフトを加えた(たとえば2.25波)平行偏光子の場合は、リタデーションシフトのない交差偏光子の場合(たとえば、2.5波のリタデーションを有する)と完全には一致しない。表4の例は図4の例に対応し、スプリットリターダは532nmで2.25波のリタデーションを有する。示されるように、HWリターダは偏光子に対して対称に配置され516nmの中心波長を有する。HWの角度が名目上±22.5°について対称に回転するので、回転子の色彩の挙動に微妙な変化がある。角度の大きさの変化は、変換(ポアンカレ球上で実証することができる)が完了した一対の波長のシフトを引き起こす。角度を減少させると、波長が離れ(より広い帯域の波長範囲が与えられるが、中間帯域の性能はいくらか犠牲になる)、角度を大きくするとスペクトル範囲がさらに狭くなる。可視をカバーするために必要とされる広い範囲が与えられれば、一般的にいくらかの減少が望ましい(たとえば、与えられた、±21.5の例)が、それ以上の増加は少ない傾向がある。実験およびシミュレーションを経て、少なくともHW角度が±19°からHW角度が±24°までの範囲で合理的な結果が達成されると判断されている。
第2の半波長リターダを追加することにより、ノーマルおよびオフノーマル特性の両方のさらなる向上が可能になる。この回転子の場合、角度による輝度の変化は非常に小さいままであるが、より重要なことに、白色点シフトはJND以下である。光学濃度は一般的に高く、透過率は2%未満にとどまる。前出の例と比較して性能の唯一の顕著な損失は1つの方位における黄色ヌルの3nmシフトである。したがって2層の例は単一の層の追加で理想に近い性能を提供する利点を有する。
実施例4:3層複合HWリターダを用いたワイドフィールドフィルタ
この実施例は実施例2と同じ構成を使用するが、ゼロオーダーのHWリターダを、3層の複合HWリターダで置き換えたものである。HWリターダは516nmの中心波長を有する。外側のHW層は、いずれも30度の配向を有し、中心のHWリターダは−30度の配向を有する。前述のようにスプリットリターダはそれぞれ532nmで2.5波のリタデーションを有する。
表5が示すように第3のHWリターダの追加は、垂直入射およびオフノーマルの垂直入射の両方の性能をさらに改良する。明るさのシフトは著しくはなく、白色点のシフトはJNDをかなり下回る。2層の解に対する改良は増分であり、そして問題は追加層を正当化するのに十分な重要性があるかどうかである。
具体的にはこの改良が製造環境において実際に実現されるかどうかを検討することが重要である。なぜならば、表に提供された全てのモデルの結果が、製造時の材料統計に関連する実用的な問題、ならびにラミネーションストレスおよび熱成形応力などの製造によって生じる変化の考慮なしに、所定の光軸配向およびリタデーションに基づいているためである。たとえ理想的な場合がより良い性能を示しても、光軸およびリタデーションの統計上の不確実性を伴うより多くの数のリターダ層を使用する場合、モンテカルロシミュレーションは時折実際より低い性能を予測し得ることが指摘されるべきである。
上記の分析は、非常に低い複屈折分散を有する、COPのような異なる光学特性を有するリターダ材料に対して繰り返すことができる。より高い複屈折分散の利点は、所望のフィルタプロファイルがより低いリターダオーダーで潜在的に達成され得ることである。代替的に、PCよりもさらに高い複屈折分散を有する材料は、潜在的に最適なリターダオーダーを減少させ得る。Teijinによって開発された、広帯域リターダ製品(たとえば、WB140)のような制御された複屈折分散を有する分子は、複屈折分散もまた分子レベルで設計できることを示している。表6は、表1のゼロ複屈折分散のカウンターパートであり、緑色リターダオーダーの最適範囲が6〜8波、潜在的に6.5〜7.5波に増加することを示している。より長い波長を抑制することが望ましい場合でなければ、分散がより低く、より高いオーダーの場合、波長の長い赤色のロールオフはより問題となる。あるいは先に議論したように、赤色でのPEが貧弱な分析器が使用される。
単純入力の例
上記に基づいて、HSGノッチは自然のオブジェクトの彩度値を著しく増加させ得る。レンズの緑色の通過帯域プロファイルを有する低彩度の緑色のオブジェクト(たとえば、草)の生成物は、より豊かでよりカラフルな緑色を与えることができる。これは、(所望の色相の)原色の緑色に関連する波長のみを通過させることによって達成される。しかし基本的な制限は、低彩度のオブジェクトは1つより多くの原色にまたがるブロードなスペクトルシグネチャを有する傾向があり、したがって3つの錐状受容体のすべてから有意な寄与を得ることである。HEBまたは青緑色または黄色ノッチフィルタリングよりほかは、光景内のすべてのオブジェクトの色相に影響を与えることなく、特定の色相を強調することはほぼし得ない。しかし、(たとえば)光景内のオブジェクトの赤色と光景内のオブジェクトの緑色との間の正確な相対的強調を得るためには、レンズ色相に影響を及ぼすバランスの意図的なシフトが有益または好ましい可能性がある。
フィルタは、増加した彩度および増加した画像のカラフルさの両方を介して、拡大された色空間の領域を開発することによって、彩度を強調させることを目指している。後者は、(たとえば、屋外の)光景では通常観察されない色空間の領域にアクセスする方法で、あるオブジェクトの色相を歪ませることを意味する。この、特に刺激的な実証は、茶色みまたは赤色みを帯びたオブジェクトの色相の、より深くより飽和した赤色へのシフトである。これは、色空間の統計的分布を変更することができ、その結果、通常いずれの有意な方法でも「ポピュレート」されない色空間の領域が大いに表現される。
ロングパスフィルタの走査は、オブジェクトの反射率スペクトルの単純な表現ではあるが、この点を示している。この場合の反射率スペクトルは、波長の短い場合には弱い信号を示し、比較的長い波長では比較的高いスペクトル反射率へ顕著に急峻に遷移する。この実施例では短波長での反射率は顕著ではなく(約0.1%)、長波長での反射率は1である。遷移帯域幅(10%〜90%)は、ハーフパワーポイント(HPP)波長の顕著に急峻な3.3%を平均化する。反射率スペクトルのHPPが走査されるにつれて、CIE1931色空間の2度色座標(CIE色空間または国際照明委員会(CIE)によって1931年に作成された色度図から)は、フィルタの有無にかかわらず記録される。各単一のHPPおよび関連する色座標は、光景に存在するオブジェクトを表すと考えることができる。ロングパスプロファイルの結果が図6aおよび6bに示される。
反射率スペクトルのHPPが赤色シフトされると、色は最初に白色点(すなわち、フィルタリングが完全に存在しない)から、S錐体信号の減少と共に、飽和した黄色(すなわち、青色光の消失)へとシフトする。さらに長い波長にHPPが走査されるにつれて、色座標は、この範囲全体にわたって事実上S錐体信号からの寄与がないことに留意すると、M錐体信号がL錐体信号に対して弱くなるので、CIE図の軌跡に実質的に追従する。(強いユニーク黄色の信号を含む)均一なスペクトル反射率の存在は、色座標シフトを緩和する。図6aは、フィルタがない場合のHPP波長の作用としての色座標のシフトを示し、フィルタリングされた場合との比較のために、マークされた特定の色座標を有する。HPPが波長の短い緑色(521nm)から波長の長い緑色(549nm)にシフトすると、色座標はΔxy=0.092だけシフトする。これは、576nmから588nm、またはΔλ=12nmの近似的に知覚される単色シフトに対応する。
図6bはHPP波長での同じ走査を示すが、フィルタは存在する。この場合フィルタは、先の実施例で議論した平行偏光子間の5波長緑色PCリターダに対応する。先述のように、色は白色点から飽和した黄色にシフトするが、点の分布は異なる。青緑色ノッチはこの領域のHPPの強調を抑制するので、より短いHPPで飽和した黄色が達成され、いくつかの続く色座標が圧縮されてほぼオーバーラップする。黄色の色座標は、緑色と赤色の光の相対的な混合によってのみ知覚されるが、フィルタリングされていない場合の色座標とほとんど同じであることに留意されたい。しかし、HPPが波長の短い緑色に侵入し始めると、図7に示されるように、M錐体信号が急速に減少する。緑色波長の光の不在は関連する色相歪みを伴い、r/g反対信号の急速な変化を引き起こす。HPPが波長の短い緑色(521nm)から波長の長い緑色(549nm)にシフトすると、色座標はΔxy=0.134だけシフトする。これは、577nmから604nm、またはΔλ=27nmの、近似的に知覚される単色シフトに対応する。比較の見地から、色座標シフトの比率は0.134/0.092=1.45xである。さらに、知覚される単色シフトにおける利得は、27/12=2.25xである。
同様の結果が、オブジェクト反射率スペクトルを表すショートパスプロファイルを青色シフトする(前述の実施例の逆)ときに得られる。反射率スペクトルのHPPが青色シフトされると、色は最初に白色点(すなわち、フィルタリングが完全に存在しない)から、L錐体信号の相対的な減少を伴って青緑色にシフトする。HPPが緑色に侵入すると、M錐体信号が弱められ、知覚される色は青色にシフトする。図8aはフィルタがない場合のHPP波長の作用としての色座標のシフトを示し、フィルタリングされた場合との比較のためにマークされたいくつかの特定の色座標を示す。HPPが波長の長い緑色(549nm)から波長の短い緑色(521nm)にシフトすると、色座標はΔxy=0.233だけシフトする。
図8bは、HPP波長における同じ走査を示すが、フィルタが存在する。この場合フィルタは、先の実施例で議論した平行偏光子間の5波長緑色PCリターダに対応する。色は白色点から青緑色にシフトするが、最初は点の分離がフィルタリングされていない場合よりもはるかに大きくなる(白色点が異なることに留意)。黄色の光の欠乏は赤色が減衰したときにr/g反対信号の急速なシフトを引き起こす。ノッチフィルタリングのために、最後の青緑色点もフィルタリングされていない場合よりも飽和する。更なる青色シフトを伴って、ノッチフィルタリングは、ほぼオーバーラップするいくつかの続く色座標の圧縮を引き起こす。HPPが波長の長い緑色(549nm)から波長の短い緑色(521nm)にシフトすると、色座標はΔxy=0.340だけシフトする。比較の見地から色座標シフトの比率はフィルタリングされていない場合の0.34/0.233=1.46xである。
以上のようにノッチフィルタリングは、増加されたカラフルさと増加された彩度の両方を提供することができる。増加された彩度を表す単純な方法は、固定された中心波長および変化するスペクトル幅(FWHM)を有するバンドパス反射率スペクトルプロファイルを伴うオブジェクトを考慮することである。オブジェクトを表すためにバンドパス(正弦二乗プロファイルを有する透過率ローブ)を取ると、ノッチフィルタスペクトル(この場合、平行偏光子間の5波532nmリタデーション)を有するプロファイルの結果は、変更されたプロファイルおよび関連する色座標を与える。図9aは裸眼で知覚される色の色座標(CIE1931)の分布を示し、図9bはフィルタを通して観察される色座標の分布を示す。フィルタリングがない場合、ブロードなプロファイルはFWHMが狭くなるにつれて、彩度が急速に増加する、不飽和の緑色がかった色相を生成する。約50nmのFWHM未満では、増加された彩度はよりさらに増加する。
フィルタリングされた場合に関しては、プロファイルが広い場合、結果は、青色または赤色で有意なサイドローブを有する、高透過率緑色ローブを与える。それにもかかわらず、これは、ブロードバンド(91nmのFWHM)の緑色がかったオブジェクトを観察する場合において、フィルタリングされていない場合と比較してはるかに飽和した緑色をもたらす。プロファイルをさらに狭くすると、サイドローブの振幅が大幅に減少するため、65nmのFWHMに関連する最初のカラーステップは大きく(ただし、フィルタリングされていない最初のステップよりも小さく)なる。FWHMが52nmに減少すると、サイドローブが除去され、彩度はノッチフィルタの緑色ローブによって決定される。このステップは、フィルタリングされていない場合よりも大きい。この第3のステップにより、前に見出された色座標の圧縮の結果、反射率スペクトルのFWHMの続く減少は色に対する影響が比較的少ない。逆にオブジェクトは、52nmのFWHMを有するフィルタリングされた場合と同じレベルの彩度を達成するために、約35nmの反射率スペクトル幅(図8aの6番目の点)を持たなければならない。
最適化されたフィルタリングの目的は、重要でないと考えられる色を選択的に低減すること、または視覚性能を低下させることであり、視覚にとって重要な色をより効率的に透過することである。この最適化へのアプローチは、入力スペクトルパワー分布(SPD)のセットについてΔEを最大化することである。2つのオブジェクト間の色差は、次のような式を用いることで計算できる。
これは、任意の2つのオブジェクト(下付き文字1と2で表される)間の明度差(L* 2−L* 1)と、反対色信号の差((a* 2−a* 1)および(b* 2−b* 1))によって影響を受ける。たとえば明るい日差しにおける、テニスボールとコートとの間の色の違いは、上記の式を用いて、フィルタリングのない場合において決定することができる。フィルタが挿入されると、計算は繰り返され得る。ΔEが増加すると、フィルタはコントラストを強調させると考えられる。色差を比較するとき、フィルタリングされた光レベルとフィルタリングされていない光レベルとの間の明度の違いを説明するために正規化が必要であることに留意されたい。代替的に、色座標シフトまたは色相または彩度シフトのみを使用して色差は計算され得る。
このような計算の結果は、照明のコンディション(レベル、スペクトル輝度および角度分布)、選択された目立ったオブジェクトのセットのBRDF、および観察者の視覚システムの特性に依存する。たとえば、通常の色覚を有するダウンヒルスキーヤーはゴルファーによって好まれるものとは全く異なるフィルタを好むことがある。また、色覚障害を有する人にとって望ましいフィルタは、通常の色覚を有するものには不愉快であり得る。
MまたはL反対信号を向上しようとしない(恐らくそれを抑制する)が、Sまたは(M+L)反対信号に特に集中するフィルタを考える。これは、正常の3色性色覚者にとって特定の場面の状況において有益であり得て、より一般的には2色性色覚者または正常ではない3色性色覚者にとっても好ましい。
1型2色覚のための画質の最大化の例
前提
L錐体は両眼で完全に欠けており、中心窩またはより大きな角度では三色視力は存在しない。
被験者は、CIE図の軌跡の緑色−赤色の部分に沿った等しい明るさの色を混同する。
被験者は、任意の混同色線に沿った、等しい明るさの任意の色を識別することができない。
1型2色覚者が識別することができる色の総数は17である(通常の3色性色覚者の場合は150である)。1型2色覚者の混同色線は点(x=0.747、y=0.253)に収束する。この点から最遠の色は、特に青緑色における色相のシフトに対して最大の感度を提供する。最大感度は、S錐体とM錐体のスペクトル感度間の、おおよそ中性な反対応答で発生する。480〜515nmの範囲は、色識別のための重要なスペクトル帯域である。より大きな彩度に向かう(CIE軌跡の青緑色部分に向かう)混同色線に沿った色相のシフトは有益である。これらのシフトは隣接する混同色線上の点間の分離を大きくし、したがって色の識別を向上させる。1型2色覚者は、約495nmの波長シフトに最も敏感であり、約2〜3nmのシフトを分解し得る。この感度はピークから逸脱すると急速に減衰する。対照的に、正常な3色性色覚者は495nmで約1nm、可視の大部分にわたって少なくとも2nmを分解することができる。
図13に示されるような、2ピーク透過率関数を供給するフィルタを考える。これは、平行偏光子間の440nmでの4.0波長ポリカーボネートリターダに対応する。ピーク中心波長は、SおよびM錐体のスペクトル感度のピークにほぼ対応する。これらの波長の間のヌルは波長の長い青色内であり、おおよそ中性な反対応答がある。中性波長付近の透過光(スペクトル青緑色付近)を大きく低減することにより、知覚される色相は、入力SPDにおける波長の短い青色と緑色の成分の相対的なバランスにより依存する。これは、多くのオブジェクトの色相を潜在的に歪ませながら、色の識別が良好な軌跡に、自然オブジェクトのフィルタリングされたSPDを近づける傾向がある。狭帯域のスペクトル青緑色のオブジェクトは、より暗くなる傾向があるが、自然界でのこのようなオブジェクトの発生は非常にまれである。
CIE軌跡の緑色−赤色部分またはその付近での、色相シフトに対する1型2色覚の感度は弱い。それはMまたはL反対信号がないために、混同色線と一致する。よって、入力SPDを軌跡の左部分にできるだけ遠くに向けて押すために、ピーク中心波長を選択することを除けば、知覚される明度を制御すること以外はほぼできない。明るさに対するピークの無色感度は、本質的に542nmにおけるピークを示すM曲線によって与えられる。それは、502または568nmで50%、450または620nmで10%、408または653nmで1%に減衰する。したがって、1型2色覚者は緑色のオブジェクトの明るさに非常に敏感で、より短い波長では正常の3色性色覚者と比較的似た応答だが、より長い波長では大きく異なる。L錐体がないと、より長い波長の赤色のオブジェクトは、正常の3色性色覚者にくらべて、はるかに暗く見える。黄色のオブジェクトは、同じ明度の緑色のオブジェクトの明るさの半分しか知覚されず、橙色−赤色のオブジェクトは、同じ明度の緑色のオブジェクトの明るさのわずか10%である。1型2色覚者は色相の違いを識別できないが、赤色または緑色の軌跡に沿った、似通った明度のオブジェクトを識別するために、無色のパスウェイを利用することができる。これはもちろん、オブジェクトの明度が可変であるため、多少のあいまいさを伴う。したがって、緑色−赤色の透過率プロファイルを最適化するには、目立ったオブジェクトの入力データセットに関する知識が要求される。ありふれているオブジェクトの外観とその明度の組み合わせは、2色性色覚者が色を識別できる、別の方法である。たとえば1型2色覚者は、熟したトマトが赤色で熟していないトマトが緑色であることを知っていて、より暗いトマトが比較的熟していると推測することができる。
色感度がない場合、(たとえば)自然界の、より頻繁に発生する色の間のコントラストを強調するために、緑色−赤色領域全体にわたって透過率のテーパを制御するフィルタを使用することが有益であり得る。M錐体が653nmを過ぎた情報をほとんど提供しないとすれば、より豊かな情報を提供するより短い波長の帯域における、より優れた識別を得るために、フィルタはより長い波長を強く弱めることができる。明るさと色の対応関係を確立することが目的であれば、入力データセットの明度統計の理解も重要である。図13のスペクトルは、579nmの50%ポイント、605nmの10%、および618nmの1%を伴う、このようなテーパを示す。透過率をM曲線のピークで高く保ち、それを626nmで最小にすることにより、コントラスト感度は、自然のオブジェクトのためのキーのスペクトル範囲で強調される。その結果、より長い波長でコントラストのいくらかの圧縮がもたらされ、より長い波長の赤色はすべて非常に暗く認識される。実際には、PIFベースのフィルタは、緑色−赤色での透過率の詳細なテーパを制御するために、偏光子の色合いと、(色彩偏光効率としても知られる)波長依存偏光効率とを組み合わせることができる。
ピーク中心波長が選択されると、青色および緑色のピークの相対的な振幅を調整するために、(たとえば)着色された偏光子を使用することによって、低スペクトル勾配フィルタリングが適用され得る。これはレンズの中立点を選択するために行うことができ、色の識別にはほとんど影響を与えない。最適比の、CIE図上のフィルタの2つのピーク中心波長を結ぶ線は、それが青緑色すぎるように見え得るので、正常の3色性色覚者には望ましくない中立点を生じさせ得る。1型2色覚者は白色と同等のものとして青緑色の色相を認知するので、レンズ色相の選択にはかなりの自由度がある。図13のスペクトルの固有の色は、x=0.248、y=0.416であり、正常の3色性色覚者にとっては、かなり青緑色または緑色であり、1型2色覚者の中性の混同色線より上でさえある。このように、中性の混同色線の交点に色座標をシフトさせるために、波長の短い青色ピークに比して緑色ピークを減衰させることが有益であり得る。これは、目的が中性の色相を得ることであると仮定している。もちろん本来の色相から、特定の観察者の好みを満たすための望まれ得る色に色をシフトするために、他のレンズ色相を選択し得る。さらに正常の3色性色覚者によって知覚される中性の白色点を生成するように、青色および黄色のピークを有するフィルタが調整され得る。このようなフィルタの一般的な色識別は最適ではないが特定の光景の状況では好ましいことがある。
本発明のフィルタは、色バランスがとられた透過作用を有する必要はない。上で議論したように、CVDのためのフィルタは正常の色覚を有するものには望ましくないかもしれない許容可能な白色点を有し得る。また、フィルタは、より快適な白色点を生成するために、環境を補填する透過作用を有することができる。これは、水が効果的に光源を修正するために日光をフィルタリングする、スキューバダイビングやシュノーケリングにも適用できる。同様に、タスク固有のフィルタは白色点を犠牲にして特定の色差を解決することに、より大きな重みを割り当てることができる。その例は、外科手術で使用されるフィルタ(たとえば、O2−Amp)である。
レンズ製造方法
本明細書で教示されるような色彩強調アイウェアレンズは、より従来の偏光レンズと同様の多くのプロセスを使用して製造することができる。レンズは、図10の積層体を使用して示されるように、スタンドアローン彩度強調サングラスフィルタであってよい。あるいは、図11の積層体に示されるように、スタンドアローンフィルタとして、または別の偏光レンズと組み合わせて、彩度強調を生成するクリップオン偏光フィルタであり得る。後者が別個のレンズからの偏光に依存する場合には、クリップオンフィルタの両側の保護基板は偏光状態を維持しなければならない。
低い透過波面歪みを有する(すなわち、不均一な接着剤の厚さの問題が無い)、強固で可撓性のリターダスタックの高スループット製造は、溶剤接着を用いて最も良く行われる。PCの場合、これはケトンを使用するのが最も良く、リタデーションの損失がわずかで確かな接着をもたらす。オレフィンベースのリターダについても同様の解が存在する。その後、リターダスタックを図示のように機能的なフィルタスタックに挿入することができる。これは、偏光の入射状態(凸面)を維持するために、低い複屈折の外側基板を含む。あるいは偏光子の吸収軸に対して平行または垂直の光軸を有する、高度に延伸された基板が使用され得る。このようなポリカーボネートとポリエステルを用いた製品は容易に入手可能である(たとえばMitsubishi Gas and Chemical、Toyobo)。非偏光レンズが望まれる場合には、偏光子に対して45度に配向されたスタックに、1/4波長リターダ、または、高度に延伸されたリターダを加えることができる。この層は外側基板として機能するか、または、外側基板と入力側偏光子との間に配置され得る。偏光子は、理想的には機能性PVA層のみを使用する(たとえば、トリアセチルセルロース(TAC)層を有さない)、従来の偏光サングラスに使用される任意の材料であり得る。内部基板は、この時点でSOPが既に分析されているので、複屈折を示すことができる。いくつかの例では、この基板上への射出成形またはキャスティングが必要であり(たとえばプリズム補正のため)、材料はこのようなプロセスに適合する必要があり得る。
基板の光学的選好性には高い屈折率(好ましくは1.5より大)、低い曇り度、低いリタデーション(または制御されたリタデーション)、後工程での割れがないこと、および高い光学的な表面品質が含まれる。光のいくらかの吸収(たとえば、HEB)は、フィルタリングの目的を満たすのを容易にする程度に許容可能であるか、または、さらに好ましい。機械的な選好性には、耐衝撃性、寸法安定性、フレキシビリティ(可撓性)、軽量性、熱成形との適合性(Tg)、接着プロセスとの適合性(たとえば高表面エネルギー)、表面コーティング(たとえばハードコート)との適合性、過酷な環境(高い温度、流量、および湿度)下での信頼性が含まれる。
外側または内側保護基板、第1または第2の偏光子、およびリターダスタックを含む最終的な積層レンズスタックは、(たとえば)光学的に透明な熱硬化性ウレタン接着剤、を使用して接着され得る。便利に製造される所望の光学的、機械的、および耐久性の要件をもたらす任意の接着剤が実行可能である。これには、アクリル、ポリエステル、エポキシ、シリコーン、またはメラミン樹脂が含まれる。製造プロセスは熱硬化、放射線硬化、PSA、2液反応、Bステージ、およびシアノアクリレートを含む、様々な硬化方法を使用することができる。
積層スタックは、平坦または一軸に湾曲した製品(たとえば、レンズフィルタ、ゴーグルまたはシールド)のための、完成品の形状にダイカットすることができ、またはさらなる処理のために、適切な標準の形状に切断することができる。フィルタはその後、特定の用途のために、剛性基板(たとえば、ガラス)の間に積層することができる。アイウェアレンズの場合、幾何学的形状は典型的には円形のディスクであるが、楕円形または長方形のような他の幾何学的形状であってもよい。従来のプロセスを使用して、図12に示すようにディスクを熱成形して適切な3D幾何学形状のブランクにすることができる。これには(様々なベース曲率の)球面、非球面、トロイダル面、または楕円面が含まれる。形成されたブランクは、処方レンズへのさらなる処理のために別の要素に結合することもできる。ブランクはまたプレス研磨されてもよく、および/または、視覚品質の向上のための特定の所望の厚さの空間分布(たとえば、プリズム補正)を受けてもよい。このプロセスは内面への射出成形、または一方または両方の表面上の樹脂キャスティングを含み得る。ハードコート、反射防止コーティング、(等方性またはパターン化)ミラーコーティング、絶縁性フィルタコーティング、疎水性コーティング、および疎油性コーティングなどの追加の機能コーティングは、通常の方法で適用することができる。これらのブランクはその後、従来のプロセスを用いて完成形のレンズまたはアイウェアに処理され得る。
射出またはキャスティング(オーバーモールディング)プロセスを使用するレンズブランクでは、薄い機能性ブランクが、続いて両側に材料がキャストされることで製造され得る。4層のリターダスタックは典型的には280ミクロンの厚さであるが、160ミクロンの厚さも実現可能である。接着剤およびPVAの厚さおよび、ことによると機能構造を封止する薄い高度に延伸された層が与えられると、ブランクの全体の厚さは600ミクロンまたはそれ以下であり得る。適切な厚さのレンズブランクを形成するために、かようなウェハが形成され得て、次いでキャスティングプロセスに挿入される。
本発明は、眼前での、または同じ機能を達成する任意の適切な距離での、視覚強調のために使用され得る、色強調偏光干渉フィルタを記載する。また、他のタイプの(電子)画像形成装置にも使用することができる。図14に示されるようなディスプレイシステム100では、自己発光型(たとえば、OLED)、または受動照明型、いずれかのバックライト付きの表示装置(ディスプレイデバイス)のSPDを変更するために、フィルタ102は光源104とディスプレイ106との間に配置され得るか、またはディスプレイデバイスの上(ディスプレイのユーザが見る側)に配置され得る。そのようなフィルタリングの利点は向上された色域、増加されたコントラスト、または周囲光の排除を含むことができる。たとえば、ディスプレイSPDに適合するフィルタは光を効率的に通過させるが、照らすグレアに関連するSPDをより強く拒絶する。
本発明のフィルタは、図15に示されるように画像捕捉媒体(たとえば、フィルム)、電子センサ122、またはセンサアレイの前に配置することによって、画像システム120で使用することもできる。システム120は、レンズ124、(全体を通して説明したような)色強調フィルタ126、センサ122、およびプロセッサ128を含むように示されている。説明を容易にするために多くの詳細および構成要素を省略して、本明細書では簡略化して120が図示および説明されることが理解されるであろう。PIFの機能は、捕捉されたSPD内の特定の波長に重み付けを割り当てることである。視覚的な場合と同様に、このようなフィルタリングは適切に最適化された場合、色を強調し、境界の検出を向上し、シグナル−ノイズ比を高めることができる。この一例は、カモフラージュ検出であり得る。
本明細書で教示される光学フィルタによって達成される振動透過関数は、典型的には、リターダの「オーダー」(位相差の波数)によって決定される単一の振幅および周波数で振動する。図1に示すように、これは、透過率曲線の最大またはピークのそれぞれが同じ振幅であり、その波長では100%またはそれに近い透過率であり得ることを意味し得る。また、透過率曲線の最小または谷の各々は同じ振幅であり、その波長で0%またはそれに近い透過率であり得る。実際にはこれらの谷は、最大値の20%付近またはそれ以下、最大値の15%付近またはそれ以下、最大値の10%付近またはそれ以下、または最大値の5%付近またはそれ以下であり得る。見られるように、前の文に記載された各条件において、ピークでの透過率は谷での透過率の4倍より大きく、前の文で説明されたいくつかのケースまたは条件では、ピークでの透過率は谷での透過率の10倍よりも大きい。
さらに、振動透過関数は、(逆波長に起因して、Δnが上述のように波長によって変化する)波長が増加するにつれて増加する周期を有し得る。したがって、透過関数を波長に対して(図1に示すように)プロットすると、隣接する最大値は、波長スペクトルの短い方の端部で(波長において)より近くになり、波長スペクトルの長い方の端部で(波長において)より離れる。この効果は、透過率のスペクトルにおいて所望のピークおよび谷を選択する際に設計者によって使用され得る。したがって、図1に示されるように、黄色または橙色の谷を有する、赤色および緑色のピークを提供することができ、青緑色および高エネルギーの青色の谷を有する、波長の長い青色のピークを提供することができる。本明細書で開示されるフィルタの振動透過関数の性質の結果として、可視波長範囲外の追加の最小値および最大値が存在する。一つの例としてフィルタの大部分は、700nmと1400nmとの間の少なくとも1つの最小値を有する。図1に示されるピークおよび谷の代替として、図13の1型2色覚フィルタに示されるように、ピークは高エネルギーの青色、青緑色、および赤色の谷を伴って、青色および緑色で提供され得る。
振動透過関数を生成するために、一軸リターダ(N=2)を有するPIFを使用する光学フィルタによって達成される正味の効果を説明する別の方法は、3原色(赤色、緑色、青色)の波長範囲などのような所望の(比較的狭い)波長範囲を通過させるパッシブフィルタが提供されることである。
過去のPIFの使用は、N=2から生じるであろう望ましくない正弦の透過関数を避けるために、3以上のNを有する必要性を強調したと思われる。たとえばN=8を作り出すために、ダブルノッチPIFが7つのリターダ層で提案されている。しかしワイドフィールドではこのようなPIFは最低21層を必要とし、複雑で高価である。
本明細書に開示される光学フィルタを開発する動機の1つは、安価な一軸フィルムの使用に基づいて色強調フィルタを設計することの模索である。本発明は、単一の振動干渉を用いて、HEB、スペクトル青緑色、およびスペクトル黄色を(たとえば)ノッチングすることができる、単純なフィルタ構成でこれを達成し、入射角で中性および色均一性も維持することができる。また一軸フィルムに関わらず単純で安価な色強調フィルタが長らく望まれていた。さらに、所望の波長範囲を生成し望ましくない波長範囲が除去された色強調フィルタが長らく望まれてきた。他方、色素フィルタを用いて波長範囲の選択的フィルタリングを達成しようと試みられた。遺憾ながらこのようなフィルタは最適な中心波長において十分に低い最小値を生成しない。
本発明の実施形態は、図面および前述の説明において詳細に図示され、説明されてきたが、そのような図示および説明は例として考慮されるべきであり、限定的な特徴ではない。たとえば、上で説明した特定の実施形態は他の記載された実施形態と組み合わせることができ、および/または、他の方法にアレンジすることができる(たとえば、プロセス要素は他の順序で実行することができる)。したがって、例示的な実施形態およびその変形のみが示され説明されたことが理解されるべきである。