JP6894381B2 - 伸長性調節剤を含むニトリルゴム手袋 - Google Patents

伸長性調節剤を含むニトリルゴム手袋 Download PDF

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Description

(関連出願)
本出願は、米国特許仮出願第62/153,546号(2015年4月28日出願)に基づく優先権を主張するものである。上記出願は、その全文を引用することを以って本明細書の一部となす。
(技術分野)
本発明は、ニトリルゴム組成物から作製されたエラストマー性物品に関する。特に、本発明は、天然ゴムラテックスから作製された同様な物品に匹敵する物理的特性を示すニトリルゴム物品に関する。
新しいゴム材料の開発により、様々な強度及び耐化学性を有する多様なエラストマー性物品の作製が可能となった。合成ラテックス材料が開発されたことにより、各種の製品の作製に、様々な弾性及び重合体材料が使用されるようになった。合成ゴム材料に有用な化合物の種類の1つとしては、手袋及び耐油性シールなどの物品の作製に幅広く使用されているニトリルゴムがある。
高い伸長性及び伸長の容易さが求められるエラストマー性物品(例えば、手術用手袋、実験用手袋、バルーン、コンドームなど)は、従来は天然ゴムラテックスから作製されていた。ニトリルゴム製品は一般的に天然ゴムラテックスよりも伸長させにくいが、ニトリルゴムの天然ゴムラテックス基材に対する利点の1つは、ニトリルゴム製品が、一部のユーザにとっては重大なアレルギー問題となり得る天然ラテックスタンパク質を含まないことである。ニトリル材料の天然ゴムラテックスに対する他の利点は、ニトリル材料が、とりわけ脂肪及び油性材料に対して、優れた耐化学性を示すことである。そのため、天然ゴム製品の代わりに、ニトリルゴム系の手袋が望まれるようになってきている。
病院、研究所、またはゴム手袋を使用し得る他の作業環境では、作業者をより良く保護するために「ラテックス・フリー」へ移行することが望まれるが、ニトリルゴム製品は一般的に高価であるため、天然ゴムラテックス製品からニトリルゴム製品への切り替えは制限される場合が多い。ニトリルゴム製品への切り替えの他の障害は、従来のニトリルゴム手袋は硬いため、天然ゴムラテックス材料から作製された同様の種類の手袋と比較すると着け心地が悪いことである。
現在、天然ゴムラテックス手袋の応力−ひずみ特性及び力−ひずみ特性と同様または同一の応力−ひずみ特性及び力−ひずみ特性を有する合成ラテックス製の実験用手袋が市販されていないことは言うまでもなく、天然ゴムラテックス手袋の応力−ひずみ特性及び力−ひずみ特性に近い応力−ひずみ特性及び力−ひずみ特性を有する合成ラテックス製の実験用手袋も市販されていない。応力−ひずみ特性(stress-strain property)は、材料の単位断面積あたりの、材料に加えられた力に対する応答を測定したものである。一方、力−ひずみ特性(force-strain property)は、材料の厚さに関係なく、材料に加えられた力に対する応答(伸長)を直接的に測定したものである。例えば、天然ゴムラテックス(Natural Rubber Latex:NRL)製の実験用手袋は、その元の寸法の約500%まで伸長させるためには一般的に、約4.5Mpaの応力を必要とする。これは一般的に、手袋の500%係数と呼ばれている。一方、従来のニトリルゴム製の実験用手袋は、NRL製手袋と同様の約500%の伸長率を達成するためには一般的に、NRL製手袋の2倍以上の応力(例えば、約10MPa)を必要とする。加えて、NRL製の実験用手袋は、約400%の伸長率まで伸長させるためには一般的に、約1.2Nの力を必要とする。一方、従来のニトリルゴム製の実験用手袋は、約400%の伸長率まで伸長させるためには一般的に、約2.25Nの力を必要とする。
医療用及び産業用手袋を作製するために大抵の場合はエマルジョン(ラテックス)状態で使用される合成重合体であるニトリルゴムは、アクリロニトリル、ブタジエン、及びカルボン酸(例えば、メタクリル酸)のランダム三元重合体である。ニトリルゴムは、その強度及び耐化学性を向上させるために、2つの別個の構造で架橋することができる。一方の架橋構造は、多価金属イオンを使用して、カルボン酸基を互いにイオン結合させることにより形成される。多価金属イオンは一般的に、エマルジョンに酸化亜鉛を加えることにより供給される。一般的に、前記重合体の剛性/柔軟性は、このタイプの架橋に大きく影響される。他方の架橋構造は、硫黄と加硫促進剤として知られる触媒とを使用した、前記重合体のブタジエン部分の共有架橋である。この共有架橋は、耐化学性の向上のために特に重要である。手袋は、大抵の場合、まず、セラミック製の手袋型の表面を凝固剤溶液(硝酸カルシウム、炭酸カルシウム、またはそれらの組み合わせを含み得る)で被覆し、その後、前記手袋型をニトリルラテックス中に浸漬して前記手袋型の表面上のニトリルゴムを局所的にゲル化させることで作製される。
ニトリルゴム物品を柔軟化させるためのいくつかの従来の方法では、特許文献1及び特許文献2に記載されているように、酸化亜鉛、及びカルボキシル化ニトリルゴムをイオン架橋することができる他の材料の使用を著しく制限するか、または完全に省略することを含む。この従来の方法は、上述したような天然ゴム製品と同様の力−ひずみ特性が得られないばかりか、材料の強度が低下する、より高温の硬化温度が必要となる、皮膚炎を引き起こす可能性のある非常に高濃度の他の化学材料が必要となる、あるいは、浸漬前のニトリルゴムが厚くなるなどの処理上の困難が生じる、という問題があった。
また、特許文献3及び特許文献4に記載されているようなニトリルゴム手袋の柔軟性や柔らかさを高めるための方法は、長時間に及ぶ応力緩和に依存しており、所望の応力緩和または柔軟化を引き起こすためには、様々なレベルのひずみを継続的に加える必要がある。しかし、このような判定尺度(様々なレベルのひずみ)を維持することは困難であり、また現実世界での実施及び使用は非現実的である。
そこで、ニトリルゴム材料の利点と、天然ゴムラテックスの優れた柔軟性及び柔らかさとを良好に組み合わせた、かつ応力緩和による柔軟化を必要としないニトリル系物品が求められている。また、ニトリルゴムの保護性及び非アレルギー性を保持しながら、天然ゴムラテックス製品と同様の快適さ及び柔らかさを得るために、重合体組成物及び製品特徴を取り入れたニトリルゴム手袋が求められている。このようなニトリルゴム手袋は、着用時に、そのエラストマー性材料が、天然ゴム手袋に関連する問題を生じさせることなく、天然ゴム手袋と同様の物理的なひずみ特性または応力特性を示すことが望ましい。
米国特許第6,031,042号 米国特許第6,451,893号 米国特許第5,014,362号 米国特許第6,566,435号
本発明は、従来のニトリルゴム物品の引張強度及び保護性を保持しながら、従来のニトリルゴム物品と比べて向上した力−ひずみ特性を示し、かつ天然ゴムラテックス(NRL)またはポリイソプレン物品に匹敵するまたは同様の力−ひずみ特性を示す、エラストマー性のニトリルゴム物品に関する。特に、本発明は、従来のニトリルゴム手袋よりも薄く、柔らかく、かつ柔軟であり、ニトリルゴム手袋が一般的に使用される産業、クリーンルーム、または研究室での作業及び全ての医療処置において保護性及び十分な強度を保持するように設計された、手袋などの比較的薄いエラストマー性物品に関する。言い換えれば、本発明に係るニトリルゴム手袋は、NRL手袋と比べて同様のまたは向上した力−ひずみ応答特性を示すとともに、NRL手袋と同様の応力−ひずみ応答特性を示す。
一実施形態では、本発明は、配合ニトリルゴム組成物を含むエラストマー性物品に関する。前記配合ニトリルゴム組成物は、ニトリルゴム、アルカリ剤、金属酸化物、硫黄系架橋剤、加硫促進剤、及び伸長性調節剤を含む。
特定の実施形態では、前記ニトリルゴムは、カルボキシル化アクリロニトリルブタジエンゴムを含む。別の実施形態では、前記アルカリ剤は、水酸化カリウム、水酸化アンモニウム、またはそれらの組み合わせを含む。別の実施形態では、前記アルカリ剤は、前記配合ニトリルゴム組成物中に、前記ニトリルゴムの100乾燥部あたり、約0.1〜0.99部の範囲の量で含まれる。さらなる別の実施形態では、前記金属酸化物は、酸化亜鉛を含む。さらに、前記金属酸化物は、前記配合ニトリルゴム組成物中に、前記ニトリルゴムの100乾燥部あたり、約0.01〜0.5部の範囲の量で含まれる。加えて、前記アルカリ剤と前記金属酸化物との組み合わせは、前記配合ニトリルゴム組成物中に、前記ニトリルゴムの100乾燥部あたり、1部以下の量で含まれる。さらに別の実施形態では、前記硫黄系架橋剤は、前記配合ニトリルゴム組成物中に、前記ニトリルゴムの100乾燥部あたり、約0.1〜5部の範囲の量で含まれる。
さらなる別の実施形態では、前記加硫促進剤は、ジチオカルバマート、チアゾール、グアニジン、またはそれらの組み合わせを含む。加えて、前記加硫促進剤は、前記配合ニトリルゴム組成物中に、前記ニトリルゴムの100乾燥部あたり、約0.1〜5部の範囲の量で含まれる。
本発明の1以上の実施形態では、前記伸長性調節剤は、乳化ワックスを含む。例えば、前記乳化ワックスは、微粒化ワックスを含む。前記微粒化ワックスは、約0.1〜50マイクロメートルの範囲の平均粒径を有する。さらに、前記微粒化ワックスは、ポリエチレンワックス、酸化ポリエチレンワックス、改質ポリエチレンワックス、高密度ポリエチレンワックス、酸化高密度ポリエチレンワックス、改質高密度ポリエチレンワックス、ポリプロピレンワックス、ポリアミドワックス、ポリテトラフルオロエチレンワックス、またはそれらの組み合わせを含む。また、前記伸長性調節剤は、前記配合ニトリルゴム組成物中に、前記ニトリルゴムの100乾燥部あたり、約0.1〜10部の範囲の量で含まれる。
さらなる別の実施形態では、前記エラストマー性物品は、約9〜11の範囲のpHを有する配合ニトリルゴム組成物を含む。加えて、前記配合ニトリルゴム組成物は、いくつかの実施形態では、約28〜38%の範囲の全固形分を有する。
本発明の1以上の実施形態では、前記エラストマー性物品は、その元の寸法の約500%まで伸長させるのに、約8MPa以下の応力が必要とされる。
さらに、前記エラストマー性物品は、その元の寸法の約400%まで伸長させるのに、約2N以下の応力が必要とされる。また、前記エラストマー性物品は、約8〜14Nの破断荷重を示し、かつ、手の平の領域において約0.05〜0.15mmの厚さを有する。また、前記エラストマー性物品は、約20〜50MPaの破断引張強度を示し、かつ、手の平の領域において約0.05〜0.15mmの厚さを有する。さらなる実施形態では、前記エラストマー性物品は、約650〜800%の範囲の破断伸びを示す。追加的な実施形態では、前記エラストマー性物品は、その元の寸法の300%まで伸長させた場合に約2.8〜5MPaの弾性係数を示す。
また、本発明は、エラストマー性物品の作製方法に関する。本発明に係る方法は、(a)ニトリルゴム、アルカリ剤、金属酸化物、硫黄系架橋剤、加硫促進剤、及び伸長性調節剤を含む配合ニトリルゴム組成物を用意するステップと、(b)前記配合ニトリルゴム組成物の溶液中に型を浸漬させるステップと、(c)前記配合ニトリルゴム組成物を硬化させてエラストマー性物品を形成するステップとを有する。
特定の実施形態では、前記ニトリルゴムは、カルボキシル化アクリロニトリルブタジエンゴムを含む。また、前記アルカリ剤は、水酸化カリウム、水酸化アンモニウム、またはそれらの組み合わせを含む。さらに、前記アルカリ剤は、前記配合ニトリルゴム組成物中に、前記ニトリルゴムの100乾燥部あたり、約0.1〜0.99部の範囲の量で含まれる。また、前記金属酸化物が、酸化亜鉛を含む。前記金属酸化物は、前記配合ニトリルゴム組成物中に、前記ニトリルゴムの100乾燥部あたり、約0.01〜0.5部の範囲の量で含まれる。加えて、前記アルカリ剤と前記金属酸化物との組み合わせは、前記配合ニトリルゴム組成物中に、前記ニトリルゴムの100乾燥部あたり、1部以下の量で含まれる。さらなる別の実施形態では、前記硫黄系架橋剤は、前記配合ニトリルゴム組成物中に、前記ニトリルゴムの100乾燥部あたり、約0.1〜5部の範囲の量で含まれる。
さらに別の実施形態では、前記加硫促進剤は、ジチオカルバマート、チアゾール、グアニジン、またはそれらの組み合わせを含む。加えて、前記加硫促進剤は、前記配合ニトリルゴム組成物中に、前記ニトリルゴムの100乾燥部あたり、約0.1〜5部の範囲の量で含まれる。
1以上の実施形態では、前記伸長性調節剤は、乳化ワックスを含む。前記乳化ワックスは、微粒化ワックスを含む。加えて、前記微粒化ワックスは、約0.1〜50マイクロメートルの範囲の平均粒径を有する。さらに、前記微粒化ワックスは、ポリエチレンワックス、酸化ポリエチレンワックス、改質ポリエチレンワックス、高密度ポリエチレンワックス、酸化高密度ポリエチレンワックス、改質高密度ポリエチレンワックス、ポリプロピレンワックス、ポリアミドワックス、ポリテトラフルオロエチレンワックス、またはそれらの組み合わせを含む。
また、前記伸長性調節剤は、前記配合ニトリルゴム組成物中に、前記ニトリルゴムの100乾燥部あたり、約0.1〜10部の範囲の量で含まれる。
さらなる別の実施形態では、前記エラストマー性物品は、約9〜11の範囲のpHを有する配合ニトリルゴム組成物を含む。加えて、前記配合ニトリルゴム組成物は、いくつかの実施形態では、約28〜38%の範囲の全固形分を有する。
特定の実施形態では、前記エラストマー性物品は、その元の寸法の約500%まで伸長させるのに、約8MPa以下の応力が必要とされる。さらなる別の実施形態では、前記エラストマー性物品は、その元の寸法の約400%まで伸長させるのに、約2N以下の力が必要とされる。さらに、前記エラストマー性物品は、約8〜14Nの破断荷重を示し、かつ、手の平の領域において約0.05〜0.15mmの厚さを有する。また、前記エラストマー性物品は、約20〜50MPaの破断引張強度を示し、かつ、手の平の領域において約0.05〜0.15mmの厚さを有する。加えて、前記エラストマー性物品は、約650〜800%の範囲の破断伸びを示す。さらに、前記エラストマー性物品は、その元の寸法の300%まで伸長させた場合に約2.8〜5MPaの弾性係数を示す。
本発明のさらなる特徴及び利点は、以下の詳細な発明によってさらに明らかになるであろう。上述した要約及び以下の詳細の説明は両方とも本発明の単なる例示であり、添付の特許請求の範囲に記載した本発明を理解するための概念を提供することを意図したものである。
当業者を対象にした本開示の完全かつ実現可能な開示(ベストモードを含む)が、添付図面を参照して、本明細書の残りの部分により詳細に説明される。
3つの応力−ひずみ曲線を示すグラフであり、天然ゴムラテックス、従来のニトリルゴム組成物、及び本発明のニトリルゴム組成物から作製された各サンプルに対して幅広い応力を加えたときに生じる伸長変形の相対量の差を示す。 各サンプルについての力−ひずみの関係を示すグラフであり、手袋をその元の寸法の400%まで伸長させるのに必要な力を示す。
概して言えば、本発明は、ニトリルゴム組成物から作製され、天然ゴムラテックス物品と同様の物理的特性を示すエラストマー性物品(例えば、手袋など)の作製を開示する。身体に着用するエラストマー性物品に所望される特性は、その重合体材料の柔らかさ及び柔軟性である。本発明は、従来のニトリルゴム組成物よりも柔軟である(すなわち、より低い弾性係数を有する)とともに、優れた物理的強度及び耐化学性を有する物品を作製するためのニトリルゴム組成物の使用を開示する。本明細書で使用される「弾性」または「エラストマー性」という用語は一般的に、所定の伸長力を加えたときに、所定の伸長長さまで伸長させることができる材料を指す。伸長力を解除すると、伸長された材料は、ネット形状またはその元の寸法の近くまで、あるいは、ひずんだまたは伸長した分の少なくとも約50%が実質的に復元される。本明細書で使用される「伸長率(stretch-elongation)」は、エラストマー基材または膜をその元の寸法から伸長させた量またはパーセンテージを指す。「変形パーセント(%)」または「伸長パーセント(%)」は、下記の計算式にしたがって求めることができる。
変形(伸長)パーセント=[(最終寸法−初期寸法)/初期寸法]×100
従来、より良い柔らかさ及び柔軟性を有するエラストマー性物品を作製するために、2つの方法が用いられてきた。第1の方法は、物品の基材または膜壁をより薄くすることである。第2の方法は、エラストマー性材料の弾性係数を低下させることである。この2つの方法はそれぞれ、利点と欠点がある。例えば、手袋及びコンドームは両方とも、重合体膜を薄くすれば薄くするほど、着用者の触覚感度は向上する。また、大抵の場合は、弾性合成重合体壁を薄くすれば薄くするほど、物品を屈曲、伸長または変形させるのに必要な力は減少する。しかしながら、物品を薄くすると、大抵の場合は、引張強度の低下または使用時に裂けやすくなるなどの問題が生じる。一方、弾性係数またはヤング率を低下させることより、基材を比較的厚く保ったままで、手袋を手に着用したときの柔軟性を得ることができる。しかしながら、重合体の架橋濃度を減少させることによりゴム組成物の弾性係数を低下させると、大抵の場合は、強度または耐化学性が低下する。
従来のニトリルゴム手袋の力応答挙動は一般的に、同様の天然ゴムラテックス手袋の力応答挙動とは大きく異なる。この2種類の材料の両方に対して同様の力を加えると、瞬間的な伸長量は、天然ゴムラテックス手袋の方が大きくなる。この伸長量の差は、金属酸化物架橋の量を減少させるか、または金属酸化物架橋を除去するなどの様々な方法によって減少させることができる。しかし、金属酸化物の濃度を、上記の2種類の材料の比較的大きな差異(瞬間的な伸長量)が互いに近づくような非常に低いレベルまで減少させると、天然ゴムラテックスと同様の力応答が実現されないばかりか、物品の強度が決定的に損なわれるか、または作製時の浸漬工程に悪影響を及ぼす(すなわち、ゲル化の遅れ、共有架橋の遅れ、粘度の増加など)。
したがって、本願発明者は、特定の成分を特定の量で含んでいるエラストマー性手袋組成物を使用することにより、従来のニトリルゴム手袋により提供される強度及び保護性を損なうことなく、柔軟性及び伸長性に関して天然ゴムラテックス手袋に匹敵するニトリルゴム手袋が得られることを見出した。
本発明に係るニトリルゴム組成物を使用して作製した手袋は、従来のニトリルゴム手袋と比べて、より柔らかく、かつ着用するのにより柔軟である。したがって、着用者に対して、より優れた快適さを提供することができる。さらに、本発明に係る手袋は、通常の手袋よりも、着用者の手及び指先の触覚感覚が向上する。柔らかさ及び柔軟性は、ニトリルゴム組成物の特定の成分を変更することにより調節することができる。さらに、これらの利点は、手袋の強度を損なうことなく、実現可能である。
一般的に、本発明にしたがって作製された手袋は、約0.05〜0.15mmの範囲の手の平領域の厚さと、約0.03〜0.13mmの範囲のカフ領域(袖口領域)の厚さと、約0.07〜0.17mmの範囲の指領域の厚さとを有する。さらに、本発明にしたがって作製された手袋は、その元の寸法の500%まで伸長させるのに、8MPa以下、例えば1〜7MPa、例えば1.5〜6MPa、例えば2〜5.57MPaの応力しか必要としない。全く対照的に、図1を参照して、従来のニトリルゴム手袋は、その元の寸法の500%まで伸長させるのに、少なくとも約10MPaの応力を必要とする。一方、天然ゴムラテックス手袋は、その元の寸法の500%まで伸長させるのに、少なくとも約4.5MPaの応力を必要とする。さらに、本発明にしたがって作製された手袋は、その元の寸法の400%まで伸長させるのに、2N(ニュートン)以下、例えば0.1〜1.75N、例えば0.25〜1.5N、例えば0.5〜1.1Nの力しか必要としない。全く対照的に、図2を参照して、従来のニトリルゴム手袋は、その元の寸法の400%まで伸長させるのに、少なくとも約2.25Nの力を必要とする。一方、天然ゴムラテックス手袋は、その元の寸法の400%まで伸長させるのに、約1.75Nの力を必要とする。したがって、本発明により意図される手袋は、その元の寸法の400%まで伸長させるのに必要とされる力は、天然ゴムラテックス手袋及び従来のニトリルゴム手袋の両方よりも小さく、その元の寸法の500%まで伸長させるのに必要とされる応力は、天然ゴムラテックス手袋と同等であり、かつ従来のニトリルゴム手袋よりも大幅に小さい。
加えて、本発明に係るニトリルゴム組成物から作製され、手の平領域において約0.13mmの厚さを有する手袋は、約8〜14N、例えば約8.5〜13N、または約9〜12Nの破断荷重(force-at-break)を有する。さらに、本発明に係るニトリルゴム組成物から作製された手袋は、約20〜50MPa、例えば約25〜40MPa、または例えば約28〜35MPaの破断引張強度(tensile strength at break)を有する。さらに、本発明に係るニトリルゴム組成物から作製された手袋は、約650〜800%、例えば約675〜775%、または例えば約690〜750%の破断伸び(elongation at break)を有する。加えて、本発明に係るニトリルゴム組成物から作製された手袋は、その元の寸法の300%まで伸長させた場合に、約2.8〜5MPa、例えば約2.9〜4.5MPa、または例えば約3〜4MPaの弾性係数を有する。
上記のデータを測定するための正確な測定ポイントは、アメリカ材料試験協会(American Society for Testing and Materials:ASTM)の試験基準D−412−98a(2002年改定)の「Standard Test Methods for Vulcanized Rubber and Thermoplastic Elastomers - Tension, 2003年1月出版」(この参照により、本明細書に組み込まれるものとする)に規定されている。これらの試験方法は、加硫熱硬化性ゴム及び熱可塑性エラストマーの引張(張力)特性を評価するために用いられる。引張特性の測定は、試料材料から取得した試験片に対して行われ、試験試料を用意するステップと、その試験試料を試験するステップとを有する。試験試料は、断面積が均一なダンベル状、リング状、または直線状の形状を有する断片であり得る。引張応力、所定の伸長状態での引張応力、引張強度、降伏点、及び極限伸びの測定は、予め応力が加えられていない試験試料に対して行われる。引張応力、引張強度、及び降伏点は、試験試料の均一な断面の元の断面積に基づく。
本発明により意図されるニトリルゴム組成物、手袋作製方法、及びいくつかの実施例は、以下に詳細に説明される。
I ニトリルゴム組成物
上述した特性を有する手袋の作製に使用することができる本発明に係るニトリルゴム組成物は、カルボキシル化ニトリルゴムと、カルボキシル化ニトリルゴムに配合される様々な成分(カルボキシル化ニトリル100部にあたりに配合される)とを含む。本発明の組成物に含まれる、カルボキシル化ニトリルゴムと、カルボキシル化ニトリルゴムに配合される様々な成分について、以下に詳細に説明する。
A カルボキシル化ニトリルゴム
ブタジエン、アクリロニトリル、及び有機酸単量体の三元重合体であるカルボキシル化ニトリルは、エラストマー性物品の作製に有用な少なくとも2つの特性を有する。この2つの特性は、高い強度と、特定の炭化水素溶剤及び油に対する不浸透性である。ゴム(手袋やコンドームなどの製品を作製するための浸漬のためにラテックス形態で使用される)と、他の成分(硬化剤、促進剤、活性剤など)との混合及び硬化は一般的に、上記の特性を最適化するために行われる。重合体における各単量体の数量及び硬化のレベルは、完成品の強度及び耐化学性のレベルに影響を及ぼす。アクリロニトリルの含有量が多い重合体は、脂肪酸及び溶剤に対してより優れた耐性を示す傾向があるが、アクリロニトリルの含有量が少ない重合体よりも硬い。重合体を形成する単量体の化学的特性はある程度の耐化学性を提供するが、重合体分子が化学的に架橋している場合は、化学的な膨潤、浸透、及び溶解に対する耐性が著しく増大する。
本発明に係るニトリル材料に使用される基本重合体は、アクリロニトリル、ブタジエン、及びカルボン酸成分を含む三元重合体組成物である。本発明に係る柔軟なニトリルゴム材料に特有の利点は、一部には、組成物中のアクリロニトリル成分の混合物の特性及び相互作用に起因すると考えられる。この混合物は、2つのアクリロニトリル組成物、すなわち第1アクリロニトリル組成物及び第2のアクリロニトリル組成物を含んでおり、両者の比は、約60:40〜40:60の範囲である。ニトリル重合体分子におけるカルボキシル基の向き及び配置(外側または内側のいずれでも)は、カルボキシル基の亜鉛イオンに対する反応性に影響を及ぼす。したがって、ある成分が柔軟性と低い弾性係数を示し、別のある成分が優れたフィルム形成能力を示すと考えられる。
混合または合成された三元重合体組成物中のアクリロニトリル成分は、約17〜45重量%、例えば約20〜40重量%、または約例えば20〜35重量%の範囲であり得る。一実施形態では、例えば、アクリロニトリル成分は約22〜28重量%であり、メタクリル酸成分は約10重量%未満であり、重合体の残りの成分はブタジエンであり得る。メタクリル酸成分は、約15重量%未満にするべきであり、約10重量%未満であることが好ましく、重合体の残りの成分はブタジエンであり得る。この基本重合体は、エマルション重合法を用いて作製され、手袋または他のエラストマー性物品を作製するためにエマルション形態のままで使用することができる。
さらに、本発明で使用されるアクリロニトリル重合体組成物は、約−30〜−10℃、例えば約−28〜−12℃の範囲のガラス転移温度(Tg)を有する。いくつかの実施形態では、望ましいニトリル重合体組成物、例えばポリマーラテックスGmbH社(PolymerLatex GmbH)及びシンソマー社(Synthomer Ltd.)からそれぞれ入手可能なPolymerLatex X-1133またはSynthomer 6311は、約−26〜−18℃の範囲のTgを有する。別のニトリル組成物、例えば台湾(中華民国)のナンテックス・インダストリ社(Nantex Industry Co., Ltd.)から入手可能なNantex 635tは、約−25.5〜−23.4℃のTgを有する。本発明に係るエラストマー性物品への使用が意図される別の適切なニトリル重合体は、LG化学社(LG Chem)製のLutex 111であり、約−22〜−14℃のTg、約44.5〜45.5%全固形分、及び約8.2〜8.8のpHを有する。
しかしながら、ニトリルブタジエン重合体の特性は、その成分には由来せず、その構造に由来すると考えられる。ニトリルブタジエン重合体の構造は、重合条件によって決定される。つまり、重合体の特性は、重合体の構造に大きく影響される。重合体の分子量、分子量分布、分岐の数、重合時の架橋数、添加されるジエン単量体の種類などは様々であるため、重合体の分子構造は非常に複雑になる。いくつかの種類の単量体が、手袋の作製に使用されるカルボキシル化アクリロニトリルブタジエン重合体などの重合体に組み合わされると、その重合体の構造はさらに複雑になる。また、各単量体の数量及び単量体単位の配列も、最終的な重合体の特性に影響する。手袋に使用されるニトリルゴムのように単量体単位の反復構造がランダムである場合は、重合体の直線性(分岐性に対しての)及び分子量に影響されて、重合体の物理的特性はホモ重合体と比べて向上する。これは、各単一単量体のみから形成される重合体の規則的な反復構造から予期される特性が、他の種類の単量体単位の付加によって前記反復構造が遮断されるかまたは改変されることによって変化するためである。ある特定の単量体の数量が多いと、前記反復構造の類似性が高まるので、その単量体から作製されるホモ重合体から期待される特性が寄与する可能性が高くなる。
薄型手袋の作製に使用されるカルボキシル化ニトリルゴムでは、アクリロニトリル及びカルボン酸(一般的には、全体の35%)は、弾性力(復元力)、永久ひずみ、及び応力緩和に関してプラスチックのような特性を重合体にもたらす。また、アクリロニトリル及びカルボン酸は、ポリブタジエンの復元力を最大にし、かつ永久ひずみ/応力緩和を最小にする規則的なシス−1,4反復構造を防止する。
このようなカルボキシル化ニトリルゴムは、一般的には、3つの成分単量体がランダムに配列され、分岐鎖及び架橋を有する長鎖である。これらの分岐されたランダムな三元重合体は、水中で乳化する個別の微粒子を形成する。重合体の構造に加え、粒子の構造もまた、手袋の最終的な特性に影響を及ぼす。粒子サイズ、粒子サイズ分布、粒子凝集レベル、粒子密度などのパラメータが、製品の形成及びその最終的な特性に影響を及ぼす。
本発明では、重合体構造は、アクリロニトリル、ブタジエン、及びカルボン酸のランダムな三元重合体(ブロックまたは交互三元重合体とは対照的に)を含む。この重合体の特性は、平均分子量、分子量分布、直線性または分岐の程度、ゲル含有量(重合中の架橋)、及び微細構造(重合体鎖の短区間で単量体単位が互いに隣接する)に左右される。
本発明に使用されるニトリルゴムの特定の構造に関わらず、所望の特性を有する物品を得るために、ニトリルゴム組成物の配合中に様々な追加的な成分を含めることができる。
B アルカリ剤
ニトリルゴム組成物のpHを調節するために、アルカリ剤をニトリルゴム組成物に加えることができる。任意の適切なアルカリ剤を使用することができ、一実施形態では、アルカリ剤は、水酸化カリウム、水酸化アンモニウム、またはそれらの組み合わせであり得る。いずれの場合でも、アルカリ剤は、ニトリルゴム組成物のpHを約9〜11、例えば約9.2〜10.5、または例えば約9.5〜10.2に調節するために使用することができる。pH調節剤としての役割を果たすことに加えて、アルカリ剤は、後述する金属酸化物と組み合わせて使用することにより、高い強度を有するニトリルゴム組成物の調製を容易にする。具体的には、アルカリ剤は、K、NaまたはHなどの一価イオンを含み得る。これらの一価イオンは、第2のメタクリル酸単位との結合に対応するのに十分な電子キャパシティを有していないため、形成される結合は弱くなる。そのため、ニトリルゴム組成物のpHを増加させるのに使用することができるアルカリ剤(例えば、一価塩)はまた、ニトリルゴム粒子を膨張させ得る。これにより、より多くのカルボン酸基が他の架橋剤(例えば、後述する金属酸化物)に接近することが可能となる。カチオンの正の電荷により、酸性のカルボン酸基の陰電子のバランスを良好に保つことができる。
使用されるアルカリ剤の種類に関わらず、アルカリ剤は、配合ニトリルゴム組成物中に、ニトリルゴムの100乾燥部あたり、約0.1〜0.99部、例えば約0.2〜0.95部、または例えば約0.3〜0.9部の範囲の量で含まれる。
C 金属酸化物
本発明に係るニトリルゴム組成物から作製された物品は、伸長性がより高いゴム膜を含むことができる。したがって、大きな手袋を通常必要とする人は、手袋がきつかったりフレキシブルな快適さを損なったりすることなく、本発明に係るニトリル系組成物から作製した中型サイズの手袋を使用することができる。さらに、ゴム膜がより薄くなることによって、温度及び表面テクスチャに対する触覚感度が向上する。しかしながら、これらの変化は、大抵の場合、強度、化学的耐性、またはその両方を損ない、多くの用途に不適な物品が作製される。したがって、より硬いゴムと同様の強度及び化学的耐性を有する柔軟性ニトリルゴム組成物が強く望まれており、ニトリルゴム組成物の弾性、強度、及び化学的耐性を高めるために架橋剤が使用される。
本発明に係るカルボキシル化ニトリルゴムは、少なくとも2つの方法で化学的に架橋することができる。第1の方法では、ブタジエンサブユニットが、硫黄及び促進剤によって共有架橋される。第2の方法では、カルボキシル化(有機酸)部位が、金属酸化物または塩によってイオン架橋される。イオン架橋は、例えば、ニトリルゴム組成物に酸化亜鉛などの金属酸化物を加えることにより実現され、これにより、引張強度、穿刺耐性、耐摩耗性、及び弾性係数(ゴム膜を伸長させるのに必要な力の測定値)は高いが、耐油性及び耐化学性は低いゴムが得られる。そのため、ニトリルゴム組成物に、後述する硫黄系架橋剤が加えられる。
金属酸化物または他の手段を用いないで柔軟なニトリル手袋を作製する方法が従来いくつか開示されているが、本発明は、浸漬工程の質と硬化速度とを向上させることができる酸化亜鉛などの金属酸化物を含む組成物を提供する。また、本発明に係る組成物中の金属酸化物は、従来の金属酸化物含有ニトリルゴム組成物と比べて少ない量で含まれる。対照的に、酸化亜鉛を使用しない場合、最適な硬化状態に達するために必要とされる硬化時間はより長くなり、硬化効率は低下する。これは、架橋がより長くなり(架橋あたりの硫黄原子の数がより多くなり)、重合体鎖と架橋しない硫黄が大量に存在することを意味する。この結果得られる効率的に硬化されなかったゴムは、耐熱性及び耐化学性が低くなる。
理論に束縛されることを望まないが、本発明に係るニトリルゴム組成物のマトリックス構造及び強度は、系に存在する全てのイオン(とりわけ、二価またはそれ以上の価数のカチオン)と重合体マトリックスのカルボン酸成分との相互作用に起因すると考えられる。Mg、Ca、Zn、Cu、Ti、Cd、Al、Fe、Co、Cr、Mn、及びPbなどの二価または多価のカチオンは、イオン化されたカルボン酸のカルボキシル基と架橋し、比較的安定な結合を形成することができる。上記のカチオンのうちの、Mg、Ca、Zn、Cu、またはCdを使用することがより望ましい。メタクリル酸単量体は、重合体マトリックス構造において、互いに比較的近接して配置することが好ましい。このようにすると、二価または多価のカチオンは、その近傍の2以上の酸単位と架橋することができる。カチオンの正の電荷により、酸性のカルボン酸基の陰電子のバランスを良好に保つことができる。二価または多価カチオンが存在しないと、ニトリルエマルジョン中の複数の重合体鎖が互いに良好に架橋しないと考えられる。
使用される金属酸化物の種類に関わらず、金属酸化物は、配合ニトリルゴム組成物中に、ニトリルゴムの100乾燥部あたり、約0.01〜0.5部、例えば約0.05〜0.4部、または例えば約0.08〜0.3部の範囲の量で含まれる。
いずれの場合でも、天然ゴムラテックス手袋に匹敵する強度、柔軟性、及び柔らかさの組み合わせを有する製品の作製を容易にするために、ニトリルゴム組成物中のアルカリ剤及び金属酸化物の組み合わせの量は、ニトリルゴムの100乾燥部あたり1部以下にする。
D 硫黄系架橋剤
上述したように、硫黄系架橋剤は、本発明に係るニトリルゴム組成物を含む最終製品に対して耐油性及び耐化学性を提供するめに、ニトリルゴム組成物に含まれる。硫黄系架橋剤は、化学的な膨潤、浸透、及び溶解に対する耐性を提供することができる。上述したアルカリ剤及び金属酸化物系の架橋剤とは対照的に、この硫黄系架橋剤は、カルボキシル化ニトリルゴムのブタジエンサブユニットを共有架橋するために使用される。
硫黄系架橋剤は、配合ニトリルゴム組成物中に、ニトリルゴムの100乾燥部あたり、約0.1〜5部、例えば約0.2〜2.5部、または例えば約0.5〜2部の範囲の量で含まれる。
E 加硫促進剤
加硫促進剤は、最終製品に対して所望のレベルの化学的耐性を提供するために、硫黄系架橋剤と組み合わせて使用される。硫黄系架橋剤と同様に、加硫促進剤は、カルボキシル化ニトリルゴムのブタジエンサブユニットを共有架橋するために使用される。加硫促進剤は、硫黄と共に加えられる一種類のジチオカルバマートであり得る。しかしながら、高レベルの化学的耐性が必要とされる他の場合では、複数種類の加硫促進剤の組み合わせが使用され得る。このような組み合わせは、ジチオカルバマート、チアゾール、及びグアニジンであり得、これらの比は、約1:1:2であり得る。例えば、加硫促進剤は、ジエチルジチオカルバミン酸亜鉛(ZDEC)、メルカプトベンゾチアゾール亜鉛(ZMBT)、ジフェニルグアニジン(DPG)、またはそれらの組み合わせであり得る。
使用される加硫促進剤または加硫促進剤の組み合わせに関わらず、加硫促進剤は、配合ニトリルゴム組成物中に、ニトリルゴムの100乾燥部あたり、約0.1〜5部、例えば約0.2〜2.5部、または例えば約0.5〜2部の範囲の量で含まれる。特定の実施形態では、加硫促進剤は、ジエチルジチオカルバミン酸亜鉛(ZDEC)、メルカプトベンゾチアゾール亜鉛(ZMBT)、及びジフェニルグアニジン(DPG)の組み合わせであり、それらは、ニトリルゴムの100乾燥部あたり、0.25部(ZDEC)、0.25部(ZMBT)、及び0.5部(DPG)の割合で含まれる。
F 伸長性調節剤
上述したように、本発明に係るニトリルゴム組成物は、金属酸化物によりイオン架橋を行う。しかしながら、イオン架橋を行うと、大抵の場合、そのゴムから作製された物品の剛性は高くなる。これは、柔軟なゴムが要求される用途では、不利となる。例えば、柔軟なゴムから作製された手術用手袋は、着用者に対して優れた触覚感度を提供することができる。このことは、手術中に外科医の「触感」を向上させたり、手の疲労を防止したりするのに望ましい。概して言えば、この伸長性調節剤は、本発明に係るニトリルゴム組成物中に本明細書で規定された量または割合で混合される乳化ワックスであり得る。手袋などの物品をコーティングするための従来の乳化ワックスの使用とは異なり、本発明では、本発明に係るニトリルゴム組成物から作製された物品の伸長特性が、伸長性調節剤が含まれていない同一の組成物と比べて異なるようにするのに十分な量の乳化ワックスを、ニトリルゴム組成物中に直接的に混合または配合する。伸長性調節剤の別の特性は、比較的不活性であり、ニトリルゴム組成物の架橋を著しく妨げたりまたは変更したりしないことである。
特定の実施形態では、任意の適切な乳化ワックスを、本発明に係るニトリルゴム組成物に使用することができる。特定の実施形態では、乳化ワックスは、水溶性ワックスであり得る。また、乳化ワックスは、ニトリルゴム組成物の他の成分と容易に混合することができるように、粉末形態であり得る。ニトリルゴム組成物への乳化ワックスの混合をさらに容易にするために、乳化ワックスは、微粒化ワックスであり得る。これらのワックスは、本発明に係るニトリルゴム組成物から作製された物品に対して、優れた潤滑性及び滑らかな手触りを提供するとともに、耐摩耗性を向上させることができる。
別の実施形態では、乳化ワックスは比較的不活性であり得、架橋結合はほとんど示さない。具体的には、ニトリルゴム組成物に混合される乳化ワックスは化学的に非活性または不活性であるので、乳化ワックスはニトリルゴム組成物の他の成分には干渉しない。したがって、ニトリルゴム組成物の他の成分の相乗効果は、不活性乳化ワックスの混合によって影響を受けない。この結果、所望の化学的耐性及び強度に加えて、不活性乳化ワックスにより提供される向上した潤滑性及び滑らかな手触りを有するエラストマー性物品を提供することができる。
本発明により意図される適切な微粒化ワックスは、約0.1〜50マイクロメートル、例えば約0.5〜25マイクロメートル、または例えば約1〜20マイクロメートルの範囲の平均粒子サイズを有する微粒化ワックスを含み得る。さらに、本発明に係る微粒化ワックスは、約90〜145℃、例えば約95〜140℃、または例えば約100〜135℃の範囲の融点を有し得る。
本発明により意図される微粒化ワックスの具体的な例としては、ポリエチレンワックス、酸化ポリエチレンワックス、改質ポリエチレンワックス、高密度ポリエチレンワックス、酸化高密度ポリエチレンワックス、改質高密度ポリエチレンワックス、ポリプロピレンワックス、ポリアミドワックス、ポリテトラフルオロエチレンワックス、またはそれらの組み合わせが挙げられる。本発明に係るニトリルゴム組成物中の乳化ワックスとして使用される微粒化ワックスの特定の例としては、米国ニューヨーク州タリータウン所在のマイクロパウダー社(Micro Powders Inc.)から入手可能なAQUA SUPERSLIP 6550、AQUA SYNFLUO 176、AQUAFLEX 212G、AQUAPOLY 215、AQUAPOLY 225、AQUAPOLY 250、AQUAPOLYFLUO 411、AQUAPOLYSILK 19、及びAQUAWAX 114が挙げられる。
使用される伸長性調節剤の種類に関わらず、伸長性調節剤は、配合ニトリルゴム組成物中に、ニトリルゴムの100乾燥部あたり、約0.1〜10部、例えば約0.2〜8部、または例えば約0.4〜6部の範囲の量で含まれる。
G 他の成分
必須ではないが、本発明に係るニトリルゴム組成物は、所望のレベルの白さまたは不透明さを提供するために、二酸化チタン、着色顔料、またはそれらの組み合わせを含み得る。二酸化チタンを含む場合、二酸化チタンは、配合ニトリルゴム組成物中に、ニトリルゴムの100乾燥部あたり、約0.1〜5部、例えば約0.2〜4部、または例えば約0.4〜3部の範囲の量で含まれる。着色顔料を含む場合、着色顔料は、配合ニトリルゴム組成物中に、ニトリルゴムの100乾燥部あたり、約0.1〜1部、例えば約0.2〜0.9部、または例えば約0.3〜8部の範囲の量で含まれる。
本発明に係るニトリルゴム組成物の調製に使用される成分の種類に関わらず、配合後のニトリルゴム組成物は、約28〜38%、例えば約30〜36%、または例えば約31〜35%の全固形分(TSC)を有し得る。約44.5〜45.5%のTSCを有するカルボキシル化ニトリルゴムと比べてTSCが減少したことにより、従来のニトリルゴム組成物と比べて厚さが減少した物品の作製が可能となる。
ニトリルゴム組成物の各成分は、該組成物に任意の順番で加えられる(配合される)。しかしながら、特定の実施形態では、カルボキシル化ニトリルゴムに、まずアルカリ剤を加え、次に金属酸化物、加硫促進剤、及び硫黄を加え、その後に乳化ワックスを加える。
ニトリルゴム組成物が配合された後、配合されたニトリルゴム組成物は、任意の適切なエラストマー性物品を作製するのに使用することができる。特定の実施形態では、ニトリルゴム組成物は、詳細については後述するように、手袋基材の作製に使用することができる。
II 手袋の作製
ニトリルゴム組成物の配合後、配合されたニトリルゴム組成物は、エラストマー性手袋を作製するための、凝固剤を用いた浸漬−コーティング方法に使用される。エラストマー性手袋の作製方法は、約55〜60℃、好ましくは約58℃に余熱された清潔な手袋のフォームまたは型(モールド)を用意するステップを有する。次に、用意した手袋の型を、凝固剤(例えば、硝酸カルシウム、炭酸カルシウム、またはそれらの組み合わせ)の水溶液中に浸漬させる。その後、凝固剤が表面に付着した手袋の型を乾燥させ、約70±5℃まで再加熱し、そして、配合ニトリルゴム組成物の溶液槽に浸漬する。これにより、ゲル状の手袋が作製される。全ての水溶性材料成分を除去するために、ゲル状の手袋基材が付着した手袋の型を水に浸す。次に、ゲル状の手袋基材が付着した手袋の型を、オーブンで約80〜100℃の範囲の温度で乾燥させる。その後、ゲル状の手袋基材が付着した手袋の型をさらに高い温度まで加熱すると、硫黄が他の成分と反応し、カルボキシル化ニトリルゴム中のメチルアクリル酸単位を架橋する。そして、手袋の型から手袋を取り出し、手袋の表面の粘着性を低下させるために、手袋の表面を塩素水で処理する。最後に、完成した手袋を乾燥させ、包装の準備をする。
この方法の実施中に、手袋の型をニトリルゴム組成物浸漬溶液中に入れる速度及び該溶液から取り出す速度を速くすると、手袋の厚さプロファイルはより均一になる。これは、ニトリルゴム組成物浸漬溶液中での手袋の型の指先領域とカフ領域との間の浸漬時間の差が減少するためである。手袋の型を、(浸漬溶液中に入れたときの)最初の垂直状態またはそれに近い状態で浸漬溶液から取り出す。そして、手袋の指先領域が水平になるようにまたは水平よりも上側に位置するように、手袋の型を傾かせ(例えば、水平に対して約20〜45°の角度で傾かせる)、その状態を数秒〜約40秒間維持する。その後すぐに、手袋の型をその長手方向軸に沿って回転させながら、指先領域の位置を水平状態と最初の垂直状態との間の位置または角度まで下げる。この上げ下げの操作を、正弦波的または波状的な動作で繰り返す。この方法により、手袋の型上でニトリルゴム組成物をより均一に広げることができ、これにより、全体的に厚さが薄い基材製品が作製される。
本発明は、以下の実施例を参照することにより、より良く理解できるであろう。
III 実施例
以下の実施例では、上述した、本発明に係るニトリルゴム組成物と、凝固剤を用いた浸漬−コーティング方法とを用いて作製したエラストマー性手袋に対して、機械的試験を行った。本発明に係るニトリルゴム組成物は、下記の表1に示す成分を含む。
Figure 0006894381
上記のニトリルゴム組成物は、9.47のpHと、32.74%の全固形分(TSC)とを有する。一方、最終製品の手袋は、100%のTSCを有する。手袋基材は、相当量(かなりの量)の水分を含まないようにするべきだからである。
以下の実施例についての引張試験のパラメータ及び方法は、アメリカ材料試験協会(ASTM)の試験基準D−412−98aに規定されている。本発明では、ASTMのプロトコルを変更せずにそのまま使用した。本発明で使用した試験装置は、約+/−100Nのキャパシティを有する静的負荷セルを備えたInstron(登録商標)張力計の5564型、及びXL伸び計である。しかしながら、他の同様の種類の装置も、上記のASTM試験基準を満たす限り使用可能である。
実施例1
実施例1では、上述した本発明に係るニトリルゴム組成物から作製された手袋サンプルに対して機械的試験を行った。この機械的試験では、手袋サンプルがその元の寸法の約500%まで伸長されるまで手袋サンプルに加える応力を増加させるとともに、応力を記録した。その後、この試験結果を、天然ゴムラテックス(NRL)手袋及び従来のニトリルゴム手袋(例えば、本発明に係るニトリルゴム組成物の乳化ワックスを含まない手袋)と比較した。
図1に示すように、本発明にしたがって作製された手袋(「Exp」で示す)は、その元の寸法の約500%まで伸長させるのに、約5MPaの応力しか必要としない。全く対照的に、従来のニトリルゴム手袋(「ニトリル」で示す)は、その元の寸法の約500%まで伸長させるのに、約10MPaの応力を必要とする。一方、天然ゴムラテックス手袋(「ラテックス」で示す)は、その元の寸法の約500%まで伸長させるのに、約4.5MPaの応力を必要とする。したがって、本発明に係るニトリルゴム組成物から作製された実施例1の「Exp」手袋は、天然ゴムラテックス手袋に匹敵する伸長変形特性を有することが実証された。また、実施例1の「Exp」手袋は、従来のニトリルゴム手袋と比べて半分以下の応力で、その元の寸法の約500%まで伸長させることができる。
さらに、図2に示すように、本発明にしたがって作製された手袋(「Exp」で示す)は、その元の寸法の約400%まで伸長させるのに、約1Nの力しか必要としない。全く対照的に、従来のニトリルゴム手袋(「ニトリル」で示す)は、その元の寸法の約400%まで伸長させるのに、2.27Nの力を必要とする。一方、天然ゴムラテックス手袋(「ラテックス」で示す)は、その元の寸法の約400%まで伸長させるのに、1.17Nの応力を必要とする。したがって、本発明により意図される手袋は、天然ゴムラテックス手袋及び従来のニトリルゴム手袋の両方よりも小さい力で、その元の寸法の約400%まで伸長させることができる。
要約すると、図1及び図2に示したグラフにより、本発明に係るニトリルゴム組成物から作製された製品は、応力及び力に関して、従来のニトリルゴム製品とは異なることが実証された。また、本発明に係るニトリルゴム組成物から作製された製品は、応力の測定値は天然ゴムラテックス手袋に匹敵し、力の測定値は天然ゴムラテックス手袋よりも低いことが実証された。この現象は、本発明に係るニトリルゴム組成物に含まれている成分の特定の組み合わせ及び量に起因すると考えられる。
実施例2
次に、実施例2では、本発明に係るニトリルゴム組成物を使用して、サイズ7、サイズ8、及びサイズ9の3つの手袋サンプルを作製した。各サイズの寸法は、下記の表2に示す。
Figure 0006894381
古くなる前の(unaged)手袋サンプル及び古くなった(aged)手袋サンプルの両方について、25%、50%、100%、200%、300%、400%、500%の各伸長率での弾性係数(MPa)を記録した。さらに、古くなる前の(古くなっていない)手袋サンプル及び古くなった手袋サンプルの両方について、破断引張強度(MPa)、その元の寸法の300%まで伸長させるのに必要な力(N)、その元の寸法の400%まで伸長させるのに必要な力(N)、破断荷重(N)、及び破断伸び(%)を記録した。古くなる前の手袋サンプルについての試験結果は下記の表3に示し、古くなった手袋サンプルについての試験結果は下記の表4に示す。表4のサンプルは、70℃で168時間経過して古くなったものである。
Figure 0006894381
Figure 0006894381
本明細書で使用する「強度」は、所定の形状及び寸法を有するサンプル(例えば、ASTMの試験基準D−142で使用されるサンプル)を破断するのに必要な力の量の関数として示すことができる。試験の結果、本発明に係るニトリルゴム組成物から作製され、手の平領域において約0.13の厚さを有する手袋は、古くなる前は、平均読み取り値で9.23〜9.90Nの範囲の破断荷重を示し、古くなったときは、平均読み取り値で、10.43〜11.11Nの範囲の破断荷重を示した。一方、現在市販されている手袋の破断荷重は、約6.7〜14.3Nの範囲、ほとんどの場合は7.5〜10.5Nの範囲である。したがって、本発明に係るニトリルゴム組成物から作製された手袋の破断荷重は、現在市販されている手袋と同様の破断荷重を示す。
また、本発明に係るニトリルゴム組成物から作製された手袋は、古くなる前は、28.32〜30.63MPaの範囲の破断引張強度を示し、古くなったときは、32.20〜34.90MPaの範囲の破断引張強度を示した。また、本発明に係るニトリルゴム組成物から作製された手袋は、古くなる前は、715〜724%の破断伸びを示し、古くなったときは、690〜732%の破断伸びを示した。加えて、本発明に係るニトリルゴム組成物から作製された手袋は、その元の寸法の300%まで伸長させた場合に、古くなる前は、3.08〜3.18MPaの弾性係数を示し、古くなったときは、3.69〜3.81MPaの弾性係数を示した。
本発明に係るニトリルゴム組成物は、アクリロニトリル材料から構成されるエラストマー性物品の作製方法において有用である。本発明によれば、天然ゴムラテックスから作製されたエラストマー性物品の物理的特性に非常に似ている物理的特性を有するニトリルゴム物品を作製することが可能となる。本発明は、医療検査用または手術用手袋、コンドーム、プローブカバー、デンタルダム、指サック、カテーテルなどの様々な製品の作製に有利に利用することができる。
以上、一例として、本発明を概略的に及び詳細に説明した。本発明の精神及び範囲から逸脱することなく、本発明の様々な変更及び変形が可能であることは、当業者にとって明らかであろう。加えて、様々な実施形態の態様は、全体的または部分的に相互互換され得ることを理解されたい。さらに、上述した説明は単なる例示であり、添付の特許請求の範囲においてさらに説明される本発明を限定することを意図したものではない。

Claims (40)

  1. エラストマー性物品であって、
    配合ニトリルゴム組成物を含んでおり、
    前記配合ニトリルゴム組成物が、ニトリルゴム、アルカリ剤、金属酸化物、硫黄系架橋剤、加硫促進剤、及び伸長性調節剤を含み、
    前記伸長性調節剤が、微粒化ワックスを含む乳化ワックスであり、0.5〜25マイクロメートルの範囲の平均粒径を有する粒子を含むことを特徴とするエラストマー性物品。
  2. 前記ニトリルゴムが、カルボキシル化アクリロニトリルブタジエンゴムを含むことを特徴とする請求項1に記載のエラストマー性物品。
  3. 前記アルカリ剤が、水酸化カリウム、水酸化アンモニウム、またはそれらの組み合わせを含むことを特徴とする請求項1または2に記載のエラストマー性物品。
  4. 前記アルカリ剤が、前記配合ニトリルゴム組成物中に、前記ニトリルゴムの100乾燥部あたり、約0.1〜0.99部の範囲の量で含まれることを特徴とする請求項1ないし3のいずれかに記載のエラストマー性物品。
  5. 前記金属酸化物が、酸化亜鉛を含むことを特徴とする請求項1ないし4のいずれかに記載のエラストマー性物品。
  6. 前記金属酸化物が、前記配合ニトリルゴム組成物中に、前記ニトリルゴムの100乾燥部あたり、約0.01〜0.5部の範囲の量で含まれることを特徴とする請求項1ないし5のいずれかに記載のエラストマー性物品。
  7. 前記アルカリ剤と前記金属酸化物との組み合わせが、前記配合ニトリルゴム組成物中に、前記ニトリルゴムの100乾燥部あたり、1部以下の量で含まれることを特徴とする請求項1ないし6のいずれかに記載のエラストマー性物品。
  8. 前記硫黄系架橋剤が、前記配合ニトリルゴム組成物中に、前記ニトリルゴムの100乾燥部あたり、約0.1〜5部の範囲の量で含まれることを特徴とする請求項1ないし7のいずれかに記載のエラストマー性物品。
  9. 前記加硫促進剤が、ジチオカルバマート、チアゾール、グアニジン、またはそれらの組み合わせを含むことを特徴とする請求項1ないし8のいずれかに記載のエラストマー性物品。
  10. 前記加硫促進剤が、前記配合ニトリルゴム組成物中に、前記ニトリルゴムの100乾燥部あたり、約0.1〜5部の範囲の量で含まれることを特徴とする請求項1ないし9のいずれかに記載のエラストマー性物品。
  11. 前記微粒化ワックスが、ポリエチレンワックス、酸化ポリエチレンワックス、改質ポリエチレンワックス、高密度ポリエチレンワックス、酸化高密度ポリエチレンワックス、改質高密度ポリエチレンワックス、ポリプロピレンワックス、ポリアミドワックス、ポリテトラフルオロエチレンワックス、またはそれらの組み合わせを含むことを特徴とする請求項に記載のエラストマー性物品。
  12. 前記伸長性調節剤が、前記配合ニトリルゴム組成物中に、前記ニトリルゴムの100乾燥部あたり、約0.1〜10部の範囲の量で含まれることを特徴とする請求項1ないし11のいずれかに記載のエラストマー性物品。
  13. 前記配合ニトリルゴム組成物が、約9〜11の範囲のpHを有することを特徴とする請求項1ないし12のいずれかに記載のエラストマー性物品。
  14. 前記配合ニトリルゴム組成物が、約28〜38%の範囲の全固形分を有することを特徴とする請求項1ないし13のいずれかに記載のエラストマー性物品。
  15. その元の寸法の約500%まで伸長させるのに、約8MPa以下の応力が必要とされることを特徴とする請求項1ないし14のいずれかに記載のエラストマー性物品。
  16. その元の寸法の約400%まで伸長させるのに、約2N以下の応力が必要とされることを特徴とする請求項1ないし15のいずれかに記載のエラストマー性物品。
  17. 約8〜14Nの破断荷重を示し、かつ、手の平の領域において約0.05〜0.15mmの厚さを有することを特徴とする請求項1ないし16のいずれかに記載のエラストマー性物品。
  18. 約20〜50MPaの破断引張強度を示し、かつ、手の平の領域において約0.05〜0.15mmの厚さを有することを特徴とする請求項1ないし17のいずれかに記載のエラストマー性物品。
  19. 約650〜800%の範囲の破断伸びを示すことを特徴とする請求項1ないし18のいずれかに記載のエラストマー性物品。
  20. その元の寸法の300%まで伸長させた場合に約2.8〜5MPaの弾性係数を示すことを特徴とする請求項1ないし19のいずれかに記載のエラストマー性物品。
  21. エラストマー性物品の作製方法であって、
    (a)ニトリルゴム、アルカリ剤、金属酸化物、硫黄系架橋剤、加硫促進剤、及び伸長性調節剤を含む配合ニトリルゴム組成物を用意するステップと、
    (b)前記配合ニトリルゴム組成物の溶液中に型を浸漬させるステップと、
    (c)前記配合ニトリルゴム組成物を硬化させてエラストマー性物品を形成するステップと
    を有し、
    前記伸長性調節剤が、微粒化ワックスを含む乳化ワックスであり、0.5〜25マイクロメートルの範囲の平均粒径を有する粒子を含むことを特徴とする方法。
  22. 前記ニトリルゴムが、カルボキシル化アクリロニトリルブタジエンゴムを含むことを特徴とする請求項21に記載の方法。
  23. 前記アルカリ剤が、水酸化カリウム、水酸化アンモニウム、またはそれらの組み合わせを含むことを特徴とする請求項21または22に記載の方法。
  24. 前記アルカリ剤が、前記配合ニトリルゴム組成物中に、前記ニトリルゴムの100乾燥部あたり、約0.1〜0.99部の範囲の量で含まれることを特徴とする請求項21ないし23のいずれかに記載の方法。
  25. 前記金属酸化物が、酸化亜鉛を含むことを特徴とする請求項21ないし24のいずれかに記載の方法。
  26. 前記金属酸化物が、前記配合ニトリルゴム組成物中に、前記ニトリルゴムの100乾燥部あたり、約0.01〜0.5部の範囲の量で含まれることを特徴とする請求項21ないし25のいずれかに記載の方法。
  27. 前記アルカリ剤と前記金属酸化物との組み合わせが、前記配合ニトリルゴム組成物中に、前記ニトリルゴムの100乾燥部あたり、1部以下の量で含まれることを特徴とする請求項21ないし26のいずれかに記載の方法。
  28. 前記硫黄系架橋剤が、前記配合ニトリルゴム組成物中に、前記ニトリルゴムの100乾燥部あたり、約0.1〜5部の範囲の量で含まれることを特徴とする請求項21ないし27のいずれかに記載の方法。
  29. 前記加硫促進剤が、ジチオカルバマート、チアゾール、グアニジン、またはそれらの組み合わせを含むことを特徴とする請求項21ないし28のいずれかに記載の方法。
  30. 前記加硫促進剤が、前記配合ニトリルゴム組成物中に、前記ニトリルゴムの100乾燥部あたり、約0.1〜5部の範囲の量で含まれることを特徴とする請求項21ないし29のいずれかに記載の方法。
  31. 前記微粒化ワックスが、ポリエチレンワックス、酸化ポリエチレンワックス、改質ポリエチレンワックス、高密度ポリエチレンワックス、酸化高密度ポリエチレンワックス、改質高密度ポリエチレンワックス、ポリプロピレンワックス、ポリアミドワックス、ポリテトラフルオロエチレンワックス、またはそれらの組み合わせを含むことを特徴とする請求項21に記載の方法。
  32. 前記伸長性調節剤が、前記配合ニトリルゴム組成物中に、前記ニトリルゴムの100乾燥部あたり、約0.1〜10部の範囲の量で含まれることを特徴とする請求項21ないし31のいずれかに記載の方法。
  33. 前記配合ニトリルゴム組成物が、約9〜11の範囲のpHを有することを特徴とする請求項21ないし32のいずれかに記載の方法。
  34. 前記配合ニトリルゴム組成物が、約28〜38%の範囲の全固形分を有することを特徴とする請求項21ないし33のいずれかに記載の方法。
  35. 前記エラストマー性物品をその元の寸法の約500%まで伸長させるのに、約8MPa以下の応力が必要とされることを特徴とする請求項21ないし34のいずれかに記載の方法。
  36. 前記エラストマー性物品をその元の寸法の約400%まで伸長させるのに、約2N以下の力が必要とされることを特徴とする請求項21ないし35のいずれかに記載の方法。
  37. 前記エラストマー性物品が、約8〜14Nの破断荷重を示し、かつ、手の平の領域において約0.05〜0.15mmの厚さを有することを特徴とする請求項21ないし36のいずれかに記載の方法。
  38. 前記エラストマー性物品が、約20〜50MPaの破断引張強度を示し、かつ、手の平の領域において約0.05〜0.15mmの厚さを有することを特徴とする請求項21ないし37のいずれかに記載の方法。
  39. 前記エラストマー性物品が、約650〜800%の範囲の破断伸びを示すことを特徴とする請求項21ないし38のいずれかに記載の方法。
  40. 前記エラストマー性物品が、その元の寸法の300%まで伸長させた場合に約2.8〜5MPaの弾性係数を示すことを特徴とする請求項21ないし38のいずれかに記載の方法。
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