本発明は、多数の方法で実施可能であり、多数の方法は、プロセスとして、装置、システム、組成物、コンピュータ可読記憶媒体上で具現化されるコンピュータプログラム製品、および/または、プロセッサ、例えばプロセッサに結合されたメモリに記憶されるおよび/またはメモリによって提供される命令を実行するように構成されたプロセッサを含む。この明細書では、これらの実施態様または本発明がとり得る他の任意の形は、技術と称されることがある。一般に、開示されたプロセスのステップの順序は、本発明の範囲内で変更されてもよい。別途記載されていない限り、タスクを実行するように構成されたものとして記載されるプロセッサまたはメモリのような構成要素は、そのタスクを所定の時間に実行するように一時的に構成される一般的な構成要素またはそのタスクを実行するために製造された特定の構成要素として実施されてもよい。本明細書において、「プロセッサ」という用語は、データ、例えばコンピュータプログラム命令を処理するように構成された1つまたは複数の装置、回路および/または処理コアを意味する。
以下、本発明の1つまたは複数の実施形態の詳細な説明が、本発明の原理を示す添付の図面とともに提供される。本発明は、この種の実施形態に関連して記載されているが、本発明は、任意の実施形態に限定されるものではない。本発明の範囲は、特許請求の範囲によってのみ限定され、本発明は、多数の代替物、変更物および均等物を包含する。多数の具体的な詳細は、以下の説明に記載され、本発明の完全な理解を提供する。これらの詳細は、例のために提供され、本発明は、これらの具体的な詳細の一部または全部を用いずに特許請求の範囲に従って実施され得る。明確性のために、本発明に関連する技術分野において公知である技術的な材料は、本発明が不必要に不明瞭にならないように詳述されていない。
内径が1ナノメートル程度のポアサイズを有するナノポア膜装置は、迅速なヌクレオチド配列決定において見込みを示してきた。電位が導電性流体に浸漬されたナノポア全体に印加されたとき、ナノポア全体のイオンの伝導に起因するわずかなイオン電流が観察可能である。電流の量は、ポアサイズに影響される。
ナノポアベースの配列決定チップは、DNA配列決定のために用いられてもよい。ナノポアベースの配列決定チップは、アレイとして構成される多数のセンサセルを組み込む。例えば、100万個のセルのアレイは、1000行×1000列のセルを含み得る。
図1は、ナノポアベースの配列決定チップ内のセル100の一実施形態を示す。膜102は、セルの表面にわたって形成される。いくつかの実施形態では、膜102は、脂質二重層である。可溶性タンパク質ナノポア膜貫通分子複合体(PNTMC)および対象の分析物を含むバルク電解質114は、セルの表面上に直接配置される。単一のPNTMC104は、電気穿孔法によって膜102内に挿入される。アレイ内の個々の膜は、化学的にも電気的にも互いに接続されていない。それゆえ、アレイ内の各セルは、独立した配列決定機械であり、PNTMCと結合した単一のポリマー分子に固有のデータを生成する。PNTMC104は、分析物上で作用し、そうでなければ不透過性の二重層を介してイオン電流を調整する。
図1を続けて参照すると、アナログ測定回路112は、電解質の薄膜108によって覆われた金属電極110に接続されている。電解質の薄膜108は、イオン不浸透性膜102によって、バルク電解質114から分離される。PNTMC104は、膜102を横切り、イオン電流がバルク液体から作用電極110へと流れるための唯一の経路を提供する。セルは、電気化学的電位センサである対電極(CE)116も含む。
いくつかの実施形態では、ナノポアアレイは、合成による単分子ナノポアベースの配列決定(ナノ−SBS)技術を用いる並行配列決定を可能にする。図2は、ナノ−SBS技術を用いてヌクレオチド配列決定を実行するセル200の一実施形態を示す。ナノ−SBS技術では、配列決定されるべき鋳型202およびプライマーは、セル200に導入される。この鋳型−プライマー複合体に対して、異なってタグ付けされた4つのヌクレオチド208は、バルク水相に添加される。正しくタグ付けされたヌクレオチドがポリメラーゼ204と複合体を形成すると、タグの尾部は、ナノポア206の筒内に位置決めされる。ナノポア206の筒内に保たれるタグは、固有のイオン遮断信号210を生成し、それにより、付加された塩基を、タグの異なる化学構造により電子的に同定する。
図3は、予め装填されたタグを用いたヌクレオチド配列決定を実行しようとしているセルの一実施形態を示す。ナノポア301は、膜302内に形成される。酵素303(例えば、DNAポリメラーゼのようなポリメラーゼ)は、ナノポアと結合している。いくつかの場合では、ポリメラーゼ303は、ナノポア301に共有結合している。ポリメラーゼ303は、配列決定されるべき核酸分子304と結合している。いくつかの実施形態では、核酸分子304は環状である。いくつかの場合では、核酸分子304は線状である。いくつかの実施形態では、核酸プライマー305は、核酸分子304の一部にハイブリダイズしている。ポリメラーゼ303は、ヌクレオチド306のプライマー305上への、一本鎖核酸分子304を鋳型として用いる取り込みを触媒する。ヌクレオチド306は、タグ種(「タグ」)307を備える。
図4は、予め装填されたタグを用いた核酸配列決定のためのプロセス400の一実施形態を示す。段階Aは、図3において説明したような構成要素を示す。段階Cは、ナノポア内に装填されるタグを示す。「装填された」タグは、認識可能な長さの時間、例えば、0.1ミリ秒(ms)から10000msの間、ナノポア内に位置決めされる、および/または、ナノポア内または近くに留まるタグでもよい。いくつかの場合では、予め装填されるタグは、ヌクレオチドから放出される前に、ナノポア内に装填される。いくつかの例では、タグが、ヌクレオチド組み込み事象の際に放出された後にナノポアを通過する(および/またはナノポアにより検出される)確率が適度に高い、例えば90%から99%である場合、タグは予め装填される。
段階Aにおいて、タグ付けされたヌクレオチド(4つの異なるタイプ:A、T、GまたはCのうちの1つ)は、ポリメラーゼと結合していない。段階Bにおいて、タグ付けされたヌクレオチドは、ポリメラーゼと結合している。段階Cにおいて、ポリメラーゼは、ナノポアにドッキングする。タグは、ドッキングの間、電気的な力、例えば、膜および/またはナノポア全体に印加される電圧により生成される電界の存在下で生成される力によってナノポア内に引き込まれる。
結合したタグ付けされたヌクレオチドのいくつかは、核酸分子と塩基対合しない。これらの塩基対合しなかったヌクレオチドは、典型的には、正しく対合したヌクレオチドがポリメラーゼと結合したままである時間スケールより短い時間スケール内で、ポリメラーゼによって拒絶される。対合しなかったヌクレオチドは、一時的にのみポリメラーゼと結合するので、図4に示すプロセス400は、典型的には、段階Dを越えて進行しない。例えば、対合しなかったヌクレオチドは、段階Bにおいて、または、プロセスが段階Cに入った少し後に、ポリメラーゼによって拒絶される。
ポリメラーゼがナノポアにドッキングする前、ナノポアのコンダクタンスは、約300ピコジーメンス(300pS)である。段階Cにおいて、ナノポアのコンダクタンスは、約60pS、80pS、100pSまたは120pSであり、タグ付けされたヌクレオチドの4つのタイプのうちの1つに対応する。ポリメラーゼは、異性化およびリン酸基転移反応を経て、ヌクレオチドを成長している核酸分子内に組み込み、タグ分子を放出する。特に、タグがナノポア内に保たれるとき、固有のコンダクタンス信号(例えば、図2の信号210を参照)は、タグの異なる化学構造により生成され、それにより、付加された塩基を電子的に同定する。サイクル(すなわち、段階AからEまたは段階AからF)を繰り返すことにより、核酸分子の配列決定が可能になる。段階Dにおいて、放出されたタグは、ナノポアを通過する。
いくつかの場合では、図4の段階Fに見られるように、成長している核酸分子内に組み込まれていないタグ付けされたヌクレオチドも、ナノポアを通過することになる。組み込まれていないヌクレオチドは、いくつかの例では、ナノポアによって検出され得るが、その方法は、組み込まれたヌクレオチドと組み込まれなかったヌクレオチドとを、ヌクレオチドがナノポア内で検出される時間に少なくとも一部基づいて区別するための手段を提供する。組み込まれなかったヌクレオチドに結合したタグは、ナノポアを迅速に通過し、短期間(例えば、10ms未満)の間検出され、一方、組み込まれたヌクレオチドに結合したタグは、ナノポア内に装填され、長期間(例えば、少なくとも10ms)の間検出される。
2つのタイプ、すなわち、ファラデー性伝導および非ファラデー性伝導のイオン流は、PNTMCを通じて流すことができる。ファラデー性伝導において、化学反応は、金属電極の表面で発生する。ファラデー電流は、電極でのいくつかの化学物質の還元または酸化によって生成される電流である。非ファラデー性伝導では、化学反応が金属の表面で発生しない。金属電極と電解質の薄膜との間の二重層キャパシタンスにおける電位を変化させることで、イオンは流れる。
ファラデー性伝導によるイオン流には、多くの欠点が存在する。以下にさらに詳細に説明するように、イオン電流が、PNTMCを介して流れるとき、電極の金属が消費され、枯渇するため、電極の運転寿命は、制限される。
図5Aは、ファラデー性伝導中の小信号回路モデルの一実施形態を示す。PNTMCおよびWEは、小信号回路モデルで単純な抵抗器として表される。図5Bは、ファラデー性伝導を用いたPNTMCの異なる状態を示す。イオン電流i(t)は、5つの状態、すなわち開放ナノポアチャネル(図示せず)を備えた最大電流状態と、PNTMCの活性な位置に結合したヌクレオチドの4つの異なるタイプの各々に対応する4つの低電流状態、を有する。正電流i(t)は、VCE,REノードに入る電子と、VWEノードを離れる電子を説明する。陰イオン(例えば、Cl−)は、CEを離れ、バルク電解質を通過し、PNTMCを介して脂質二重層を横切り、続いて電解質の薄膜を通過して流れ、WEの金属と結合する。
例えば、金属銀(Ag)を用いた電極の化学反応は、
である。
上記の式1に示すように、金属銀の原子は、PNTMCを通過する塩化物陰イオン(Cl−)ごとに不溶性塩である塩化銀(AgCl)に変換される。いくつかの場合では、銀は、数分の運転において枯渇する。
金属電極の枯渇を回避するために、イオン電流の方向が、同様の持続時間だけ負電圧を印加することによって逆転され得るようになり、その結果、塩化銀(AgCl)は、変換され金属銀に戻る。しかしながら、この方法における再充電または再生では、銀が、金属電極表面上に毛髪状に再堆積されることになり、このことが、特に、より小さいセル形状と、それゆえより小さい電極とを有するチップ内で、全体の性能に影響し得る。
電圧を印加し金属電極の枯渇を遅らせる別の方法は、ポリメラーゼをナノポアに引き寄せ、検出のためにナノポアを通じてまたはナノポアの近傍にタグを引っ張り、次に、電圧をある期間オフにし、タグをナノポアから放出されるようにすることである。電圧がオフにされている間、電流は存在しないので、変換される銀原子はほとんどなく、金属電極の寿命が引き延ばされる。しかしながら、それゆえ、検出時間が削減される。
金属電極の枯渇に加えて、ファラデー性伝導はまた、時間とともにセル内のバルク電解質濃度に不均衡をもたらす。例えば、一方の電極ではKCl分子の正味のゲインが存在するが、もう一方の電極ではKCl分子の正味の損失が存在する。一方の電極での塩濃度の増加と、もう一方の電極での塩の枯渇は、セル内部に望ましくない浸透圧を発生させる。
代替のタイプのPNTMCを通じたイオン流は、非ファラデー性伝導を介する。非ファラデー性伝導では、化学反応(化学物質の還元または酸化)が、金属の表面で発生しない。金属電極と電解質の薄膜との間の二重層キャパシタンス全体の電位を変化させることで、イオンは流れる。
非ファラデー性伝導のために、金属電極は、腐食および酸化に耐性を示す金属で形成され得る。例えば、白金または金のような貴金属は、酸化しにくく、酸化したとしてもプロセスは、容易に反転する。わずかな電位(例えば、VCEに対して±1V未満)が、電解質内の白金/金に印加されるとき、初期の容量性過渡電流は別として、イオン電流は流れない。このことによって、金属から、電解質内に混合されたレドックス(酸化還元)活性種内へとトンネリングする電子の測定が、可能になる。電解質内のレドックス活性種(フェリシアン化物またはフェロシアン化物など)なしでは、定常状態のイオン(または電子もしくは正孔)電流は、金属−液体界面を横切って流れない。白金/金と電解質との間の化学的な(すなわち、結合の)相互作用の欠如にもかかわらず、印加される電位に応じて、金属−液体界面でのイオン空乏領域の成長および収縮からの電解質内での過渡的なイオンの物理的置換が存在する。このイオン空乏領域は、電気化学用語で「二重層」と称される。電気工学モデルを用いて、平行平板コンデンサは、金属が一方のプレート、空乏領域が誘電体、液体内のイオン拡散分布がもう一方のプレートである形をとる。
図6は、非ファラデー性で容量結合された測定用に構成されたナノポアベースの配列決定チップ内セルの一実施形態を示す。脂質二重層602は、セルの表面にわたって形成される。可溶性タンパク質ナノポア膜貫通分子複合体(PNTMC)および対象614の分析物を含む電解質は、セルの表面上に直接配置される。単一のPNTMC604は、電気穿孔法によって脂質二重層602内に挿入される。アレイ内の個々の脂質二重層は、化学的にも電気的にも互いに接続されていない。それゆえ、アレイ内の各セルは、独立した配列決定機械であり、PNTMCと結合した単一のポリマー分子に固有のデータを生成する。セルは、非ファラデー性で容量結合された測定をするためにアナログ測定回路612を備える。測定は、デジタル情報に変換され、セル外部へ送信される。いくつかの実施形態では、送信データ速度は、ギガビット毎秒程度である。いくつかの実施形態では、フィールドプログラマブルゲートアレイ(FPGA)または特定用途向け集積回路(ASIC)が送信データを受け取り、データ処理を行い、そのデータをコンピュータに転送する。
図6を続けて参照すると、アナログ測定回路612は、電解質の薄膜608によって覆われた金属電極610に接続されている。電解質の薄膜608は、イオン不浸透性の脂質二重層602によって、バルク電解質614から分離される。PNTMC604は、脂質二重層602を横切り、イオン電流がバルク液体から金属電極610へと流れるための唯一の経路を提供する。金属電極610は、作用電極(WE)とも称される。非ファラデー性伝導のために、金属電極は、腐食および酸化に耐性を示す、例えば、白金、金、および黒鉛などの金属で形成され得る。以下で詳述するように、金属電極610は、スポンジ状の電極であってもよい。セルは、電気化学的電位センサである対電極/参照電極(CE/RE)116も含む。
図7は、非ファラデー性伝導の小信号回路モデルの一実施形態を示す。PNTMCは、小信号回路モデルで単純な抵抗器702として表される。二重層キャパシタンスは、小信号回路モデルでコンデンサ704として表される。いくつかの実施形態では、図7のV1は、例えば500mVのグラウンドからの増分電圧となるように、一方、V2は、V1に印加信号、例えば10Hzから1kHzの印加AC信号、を加えた電圧になるように設定される。
いくつかの実施形態では、印加信号は、AC信号である。片方の極性において、印加AC信号は、ポリメラーゼをナノポアへ引き寄せ、タグを、検出のためのナノポアを通じて、または検出のためのナノポアの近傍に引き寄せる。印加AC信号の極性が逆転したとき、タグは、ナノポアから放出され、電極は、再充電/再生され、その場合、金属電極に電気化学的変化は生じない。AC信号が繰り返し極性を変化させるとき、タグ付けされたヌクレオチドと結合しているタグの一部は、複数回にわたり、ナノポア内に向かい、ナノポア外に向かう。この単一のタグの繰り返しの装填および排除によって、タグを複数回読み取ることができる。複数回の読取りは、ナノポア内に装填したおよび/またはナノポアの外にある、タグに関連付けられた誤差などの、誤差の補正を可能にする。
いくつかの実施形態では、AC信号の周波数は、タグ付けされたヌクレオチドがポリメラーゼと結合している間の期間に少なくとも一部基づいて、選択される。AC信号の周波数は、ポリメラーゼと結合しているタグ付けされたヌクレオチドが、十分な長さの時間にわたり少なくとも1回、ナノポア内に引き寄せられ装填されることを可能にしなければならず、その結果、タグは、検出され、そうでなければ、ポリメラーゼと結合しているタグのうちのいくつかは、システムによって検出することができない。言い換えると、サンプリングは、事象が失敗しないように、一連の事象が発生する速度よりも速い速度である必要がある。
図6を続けて参照すると、脂質二重層602が形成される前は、バルク電解質614は、作用電極610と直接接触しており、それゆえ、電解質と作用電極との間に短絡回路を形成する。図8Aおよび図8Bは、二重層の容量性応答の一実施形態を示す。図は、電解質と作用電極との間に短絡回路を有する二重層の特性を示す。この例では、電解質は、0.5Mの酢酸カリウムと、10mMのKClとを含む。対電極116は、AgClを含む。作用電極610は、白金を電気めっきした白金電極である。水の粘性は、印加される電界に応じてイオンが流れやすくなるのを妨げ、このことは、二重層の容量性応答における直列抵抗を示す。この抵抗は、図8Aに示すように、ピーク電流を制限する。RC電気化学的接続の直列形状が、RC時定数を特徴とする応答減衰に見られる。図8Bでは、電流は、システムの検出限界より低いexp(−25)=13.8pAまで低下することを示している。このことは、シャント抵抗(電気的な観点から)およびファラデー電流(電気化学的な観点から)の両方の欠如を説明する。
作用電極610は、その表面積を所与の容積で最大となるように構成される。表面積が増加するので、二重層のキャパシタンスが増加し、コンデンサが充電済みになる前、より多くの量のイオンが、同一の印加電位により変位され得る。図7を参照すると、インピーダンスは、
であり、ここでf=周波数、C=C二重層であり、f、C、またはfおよびCの両方を大きくすることにより、コンデンサのインピーダンスは、RPNTMCに対して非常に小さくなり、測定される電流は、より大きくなる。小信号モデルのインピーダンスは、RPNTMCによって支配されるので、測定される電流は、5つの状態、すなわち開放ナノポアチャネルを備えた最大電流状態と、PNTMCの活性な位置内に結合したヌクレオチドの4つの異なるタイプの各々に対応する4つの低電流状態、をより良好に区別することができる。
例えば、作用電極の表面積は、電極を「スポンジ状」にすることによって、増大され得る。いくつかの実施形態では、バルク液体に対する二重層のキャパシタンスは、界面活性剤の存在下で直径5マイクロメーターの平坦な白金電極上に白金金属を電気めっきすることによって、増大させ得る。界面活性剤は、白金金属内のナノサイズの格子間の空間を形成し、それを「スポンジ状」にする。白金スポンジは、電解質を吸収し、より大きな有効表面積(例えば、電極の上部から下部の面積の1平方マイクロメーターあたり33pF)を形成する。二重層表面積を最大化することが、「DCブロック」コンデンサを形成し、二重層での電圧は、定常状態に到達し、動作中ほとんど変化しない。直列のPNTMC抵抗(図7でのRPNTMC)および二重層キャパシタンス(図7でのC二重層)は、ハイパスフィルタとして役割を果たす、低周波数零点を形成する。ある実施例では、RPNTMCは約10ギガオーム、C二重層は約800pFにすると、約10ギガオーム×約800pF=約8秒の時定数がもたらされる。測定信号を100Hzでチョッピングすることにより、DCドリフトを拒絶し、測定されるタグにおける低周波数情報成分を1000分の1に減衰させる。
タグの存在なしで、PNTMCは、 アルファ溶血素タンパク質ナノポアと同様に振る舞う。溶血素ナノポアは、整流特性を有し、そのバイアスを方形波出力のデューティサイクルに応じて変化させる。ファラデー性伝導の場合と異なり、電極に印加される絶対電圧は、ナノポアに印加される電圧と同一でなく、すなわち、二重層の電圧が、ナノポアに印加される電位をバイアスし、このバイアスは、デューティサイクルで変化する。
図9Aおよび図9Aは、非ファラデー性AC調整を用いたナノポア電流を示す。この例では、印加信号は、ピーク間200mVの、5Hzで50%のデューティサイクルを有する方形波である。電解質は、0.5Mの酢酸カリウムと、10mMのKClとを含む。対電極116は、AgClを含む。作用電極610は、白金を電気めっきした白金電極である。
図9Aは、正の極性の200mVがナノポアに印加されたときの、開始時の過渡電流を示し、直接印加される200mVの開放チャネル電流は、約70pAであることを示している。図9Aは、約20秒後に定常状態に到達することを示している。図9Bでは、二重層コンデンサの電圧の減衰率が、観察可能である。減衰率は、二重層キャパシタンスのサイズ、およびナノポアの負荷抵抗によって決定される。
図10は、定常状態のピーク正電流が、デューティサイクルおよび印加電圧に応じて変化することを示す。プロット1010は、印加電圧が、ピーク間200mVの方形波であるときの、異なる負荷デューティサイクルに対してプロットされる定常状態のピーク電流をアンペア(A)単位で示している。プロット1020は、印加電圧が、ピーク間100mVの方形波であるときの、異なる負荷デューティサイクルに対してプロットされる定常状態のピーク電流を(A単位で)示している。この例では、電解質は、0.5Mの酢酸カリウムと、10mMのKClとを含む。対電極616は、AgClを含む。作用電極610は、白金を電気めっきした白金電極である。溶血素ナノポアは、整流特性(または非オーム性)を有するので、同じ大きさの電流を通過させるために、正極性電圧が印加されるときよりも大きな負極性電圧が必要である。ピーク正電流は、デューティサイクルが増大するにつれて降下する。デューティサイクルが低くなるにつれ、二重層キャパシタンスを介してナノポアに印加される正電圧が高くなる。
図11は、図10のデータにマッチさせたシミュレーションモデルの一実施形態を示す。シミュレーションは、二重層コンデンサがナノポアと直列に接続されるので、作用電極に印加される電圧とは同一でないナノポアの実電圧を見積もるために構成される。この電圧は、非ファラデー性の場合、直接測定できない。酢酸カリウムでの非線形性は、1Mの塩化カリウムの非線形性に正比例すると想定された。図12Aおよび図12Bは、印加信号が50%デューティサイクルを有するときのシミュレーション結果を示す。図12Bでは、図11の多項式B1およびB2によりモデル化された溶血素ナノポアの整流特性のため、正電流での減衰の傾きが、負電流での傾きよりも急である。
図13Aは、印加信号が25%デューティサイクルを有するときの測定電流を示す。図13Bは、印加信号が25%デューティサイクルを有するときのシミュレーション電流を示す。これらの図は、25%の低いデューティサイクルでの、ナノポアを通過する正電流の大きさ(43pA)が、ナノポアを通過する負電流の大きさ(−13pA)よりもかなり大きいことを示している。定常状態でのシャント抵抗なし(ファラデー電流なし)を実現するために、一振動周期中に二重層を通過する正および負の電荷の和は、零であるべきである。i=dQ/dt、ここでiは電流、Qは電荷であるので、時間に対する電流のグラフでは、電荷は、曲線の下の面積である。例えば、正極性の時間に対する電流のプロット曲線の下の面積(図13Bの面積1302)が、負極性の時間に対する電流のプロット曲線の下の面積(図13Bの面積1304)と、およそ同じである場合、振動の一周期中に二重層を通過する正および負の電荷の和は、およそ零である。
図14Aは、印加信号が50%デューティサイクルを有するときの時間に対するナノポアに印加される電圧を示す。図14Bは、印加信号が25%デューティサイクルを有するときの時間に対するナノポアに印加される電圧を示す。図14Bでのより低いデューティサイクルでは、ナノポアに印加される電圧はより高く、ポリメラーゼおよびタグをより効果的にナノポアへと引き寄せる。図14Aでのより高いデューティサイクルでは、ヌクレオチド特有の尾部が、所定の位置にある間にタグを読み取り、検出するのに、より長い時間が費やされる。
図15は、分子を同定するプロセスの一実施形態を示す。1502では、分子が、第1の期間中に第1の電圧信号を電極対(例えば、作用電極および対電極/参照電極)に印加することによって、ナノポアに引き寄せられ、第1の電圧信号は、ナノポアに近接する分子の一部(例えば、タグ付けされたヌクレオチド)の特性を指示する、ナノポアを通過する第1のイオン電流をもたらす。例えば、タグ付けされたヌクレオチドの4つのタイプは、異なる特性を有し、特定のタイプのタグ付けされたヌクレオチドが、ナノポア内に引き寄せられるとき、特性を示すイオン電流が、ナノポアを通じて流れる。
1504では、分子が、第2の期間中に第2の電圧信号を電極対に印加することによって、ナノポアから放出され、第2の電圧信号は、ナノポアを通過する第2のイオン電流をもたらす。
1506では、第1の期間および第2の期間が、第1のイオン電流および第2のイオン電流を含むナノポアを通過する正味のイオン電流に、少なくとも一部基づいて決定される。例えば、第1の期間および第2の期間は、正味のイオン電流が減少するように決定され得る。いくつかの実施形態では、正味のイオン電流は、第2の電圧信号をオフに設定することによって減少する。第2の電圧信号がオフにされるとき、第2のイオン電流は、零になり、金属電極の空乏は、上述のように、遅延される。いくつかの実施形態では、正味のイオン電流は、第2の電圧信号を、第1の電圧信号の反対の極性を有する信号に設定することによって減少する。例えば、第1の電圧信号と第2の電圧信号との間での交番が、AC信号を形成する。第2のイオン電流は、第1のイオン電流を埋め合わせ、それゆえ、ナノポアを通過する正味のイオン電流を減少させる。図10に示すように、電流は、デューティサイクルおよび印加電圧に応じて変化する。したがって、デューティサイクル(すなわち、第1の期間および第2の期間)は、第1のイオン電流の曲線の下の面積が、第2のイオン電流の曲線の下の面積と、実質的に同じであるように調整され得るようにし、その結果、振動の一周期中(すなわち、第1の期間および第2の期間)に二重層を通過する正および負の電荷の和は、およそ零になる。
図16は、ナノポアベースの配列決定チップのセル内の回路1600の一実施形態を示す。上述したように、タグがナノポア1602内に保たれるとき、固有のコンダクタンス信号(例えば、図2の信号210参照)は、タグの異なる化学構造により生成され、それにより、付加された塩基を電子的に同定する。図16の回路は、電流が測定されるとき、ナノポア1602全体の定電圧を維持する。特に、回路は、演算増幅器1604およびパスデバイス1606を含み、これらによって、ナノポア1602全体にわたり、定電圧をVaまたはVbに維持する。ナノポア1602を通じて流れる電流は、コンデンサncap1608に蓄積され、アナログデジタル変換器(ADC)1610により測定される。
しかしながら、回路1600には、多くの欠点が存在する。欠点の1つは、回路1600が一方向電流のみを測定するということである。他の欠点は、回路1600の演算増幅器1604が多くの性能問題を導入し得るということである。例えば、演算増幅器1604のオフセット電圧および温度ドリフトによって、ナノポア1602全体に印加される実際の電圧が、異なるセル全体にわたり変化する場合がある。ナノポア1602全体に印加される実際の電圧は、目標値の上下に数十ミリボルトもドリフトし得るので、それにより、測定が著しく不正確になる。さらに、演算増幅器のノイズによって、さらなる検出エラーが生じる場合がある。他の欠点は、電流測定の間、ナノポア全体の定電圧を維持するための回路の部分が、領域集中的(area−intensive)であるということである。例えば、演算増幅器1604は、他の構成要素より著しく多くのセル内の空間を占有する。ナノポアベースの配列決定チップが、ますます多くのセルを含むために拡大されるので、演算増幅器によって占有される領域は、到達不能なサイズに増加する場合がある。残念なことに、大型のアレイを有するナノポアベースの配列決定チップ内の演算増幅器のサイズを縮小することは、他の性能問題を引き起こす可能性がある。例えば、セル内のオフセットおよびノイズの問題をさらに悪化させ得る。
図17は、ナノポアベースの配列決定チップのセル内の回路1700の一実施形態を示し、ナノポア全体に印加される電圧は、ナノポアが特定の検出可能な状態にある期間を通じて変化するように構成可能である。ナノポアの可能な状態の1つは、タグが取り付けられたポリホスフェートがナノポアの筒に存在しない場合の開放チャネル状態である。ナノポアの別の4つの可能な状態は、タグが取り付けられたポリホスフェートヌクレオチドの4つの異なるタイプ(A、T、GまたはC)がナノポアの筒内に保たれるときの状態に対応する。ナノポアのさらに別の可能な状態は、膜が断裂するときのものである。図18Aおよび図18Bは、ナノポアベースの配列決定チップのセル内の回路(1800および1801)の追加の実施形態を示し、ナノポア全体に印加される電圧は、ナノポアが特定の検出可能な状態にある期間を通じて変化するように構成可能である。上述した回路では、演算増幅器は、もはや必要ではない。
図17は、膜1712内に挿入されるナノポア1702を示し、ナノポア1702および膜1712は、セル作用電極1714と対電極1716との間にあり、その結果、電圧は、ナノポア1702全体に印加される。いくつかの実施形態では、パスデバイス1706は、ナノポア1702全体にわたり、定電圧をVaまたはVbに維持する。ナノポア1702を通じて流れる電流は、コンデンサncap1708に蓄積され、アナログデジタル変換器(ADC)1710により測定される。ナノポア1702は、バルク液体/電解質1718とも接触する。ナノポア1702および膜1712が、図1のナノポアおよび膜と比較して、上下反対に描かれていることに留意されたい。以下、セルは、少なくとも膜、ナノポア、作用セル電極および関連回路を含むことを意味する。いくつかの実施形態では、対電極は、複数のセル間で共有され、それゆえ、共通電極とも称される。共通電極は、共通の電位を、測定セル内のナノポアと接触するバルク液体に印加するように構成可能である。共通の電位および共通電極は、測定セルのすべてに共通である。共通電極とは対照的に、作用セル電極は、各測定セル内に存在し、作用セル電極1714は、他の測定セル内の作用セル電極から独立して、異なる電位を印加するように構成可能である。
図18Aおよび18Bでは、膜内に挿入されるナノポアおよびナノポアを囲む液体を示す代わりに、電気モデル1802が、ナノポアおよび膜の電気特性を表す。電気モデル1802は、異なる状態(例えば、開放チャネル状態またはナノポア内に異なるタイプのタグ/分子を有することに対応する状態)において、膜(C膜)に関連付けられたキャパシタンスをモデル化するコンデンサ1806と、ナノポアに関連付けられた抵抗をモデル化する抵抗器1804と、を含む。作用電極に関連付けられたキャパシタンスは、二重層キャパシタンス(Cdl)と称され得る。図18Aおよび18Bでは、それぞれの回路は、オンチップで作製された余分のコンデンサ(例えば、図16のncap1608)を必要とせず、それにより、ナノポアベースの配列決定チップのサイズの減少を容易にし得る点に留意されたい。
図19は、膜内に挿入されているナノポア内の分子を分析するプロセス1900の一実施形態を示す。プロセス1900は、図17、18Aまたは18Bに示される回路を用いて実行されてもよい。図20は、プロセス1900が実行され、3回繰り返される時間に対する、ナノポア全体に印加される電圧のプロットの一実施形態を示す。以下で詳述するように、ナノポア全体に印加される電圧は、一定に保たれない。対照的に、ナノポア全体に印加される電圧は、時間とともに変化する。電圧減衰率(すなわち、時間に対するナノポア全体の印加電圧のプロットの傾きの程度)は、セル抵抗(例えば、図18Aの抵抗器1804の抵抗)に依存する。より詳しくは、異なる状態(例えば、開放チャネル状態、ナノポア内の異なるタイプのタグ/分子を有することに対応する状態、および、膜が断裂するときの状態)のナノポアに関連付けられた抵抗が、分子「/タグ」の異なる化学構造により異なるので、異なる対応する電圧減衰率が観察され得るようになり、それゆえ、ナノポアの異なる状態を識別するために用いられてもよい。
図19および図18Aを参照し、プロセス1900の1902において、ナノポアを電圧源に結合することによって、電圧はナノポア全体に印加される。例えば、図18Aに示すように、スイッチS1 1808が閉じられると、電圧Vpre1810は、セル作用電極に印加される。図20に示すように、ナノポア全体に印加される初期電圧は、Vpre−V液体であり、V液体は、ナノポアと接触するバルク液体の電圧である。電圧源が作用電極に接続されると、膜に関連付けられたコンデンサは充電され、エネルギーは膜全体の電界に保存される。
プロセス1900の1904において、ナノポアおよび膜を電圧源から切り離すことによって、膜に関連付けられたコンデンサ(コンデンサ1806)は放電し、これにより、膜全体の電界に保存されたエネルギーは消散する。例えば、図18Aに示すように、スイッチS1 1808が開けられると、電圧源は切断される。スイッチS1 1808が開けられた後、図20に示すように、ナノポア全体の電圧は、指数関数的な減衰を開始する。指数関数的減衰は、RC時定数τ=RCを有し、Rは、ナノポアに関連付けられた抵抗(抵抗器1804)であり、Cは、Rに並列の膜に関連付けられたキャパシタンス(コンデンサ1806)である。
プロセス1900の1906において、ナノポア全体に印加される電圧の減衰率が決定される。図20に示すように、電圧減衰率は、時間に対するナノポア全体の印加電圧の曲線の傾きの程度である。電圧減衰率は、異なる方法で決定されてもよい。
いくつかの実施形態では、電圧減衰率は、一定の時間間隔の間に発生する電圧減衰を測定することによって決定される。例えば、作用電極で印加される電圧は、最初に時間t1でADC1812により測定され、次に、電圧は、時間t2でADC1812により再び測定される。時間に対するナノポア全体の電圧曲線の傾きがより急であるとき、電圧差ΔV印加はより大きく、電圧曲線の傾きがより緩やかなとき、電圧差ΔV印加はより小さい。それゆえ、ΔV印加は、ナノポア全体に印加される電圧の減衰率を決定するための測定基準として用いられてもよい。いくつかの実施形態では、電圧減衰率の測定の精度を向上させるために、電圧は、追加の回数、一定の間隔で測定されてもよい。例えば、電圧は、t3、t4等で測定されてもよく、複数の時間間隔の間のΔV印加の複数の測定値は、ナノポア全体に印加される電圧の減衰率を決定するための測定基準として一緒に用いられてもよい。いくつかの実施形態では、電圧減衰率の測定の精度を向上させるために、相関二重サンプリング(CDS)を用いてもよい。
いくつかの実施形態では、電圧減衰率は、選択された電圧減衰量のために必要な持続時間を測定することによって決定される。いくつかの実施形態では、電圧が一定電圧V1から第2の一定電圧V2に降下するのに必要な時間が測定されてもよい。電圧曲線の傾きがより急であるとき、必要な時間はより少なく、電圧曲線の傾きがより緩やかなとき、必要な時間はより大きい。このように、必要な測定時間は、ナノポア全体に印加される電圧の減衰率を決定するための測定基準として用いられてもよい。
プロセス1900の1908において、ナノポアの状態は、決定された電圧減衰率に基づいて決定される。ナノポアの可能な状態の1つは、タグが取り付けられたポリホスフェートがナノポアの筒には存在しない開放チャネル状態である。ナノポアの他の可能な状態は、異なるタイプの分子がナノポアの筒内に保たれるときの状態に対応する。例えば、ナノポアの別の4つの可能な状態は、タグが取り付けられたポリホスフェートヌクレオチドの4つの異なるタイプ(A、T、GまたはC)がナノポアの筒内に保たれるときの状態に対応する。ナノポアのさらに別の可能な状態は、膜が断裂するときのものである。ナノポアの状態は、決定された電圧減衰率に基づいて決定可能である。なぜなら、電圧減衰率は、セル抵抗、すなわち、図18Aの抵抗器1804の抵抗に依存するからである。より詳しくは、異なる状態のナノポアに関連付けられた抵抗が、分子/タグの異なる化学構造に起因して異なるので、異なる対応する電圧減衰率は、観察され得るようになり、それゆえ、ナノポアの異なる状態を識別するために用いられてもよい。
図21は、ナノポアが異なる状態にある時間に対する、ナノポア全体に印加される電圧のプロットの一実施形態を示す。曲線2102は、開放チャネル状態の間の電圧減衰率を示す。いくつかの実施形態では、開放チャネル状態のナノポアに関連付けられた抵抗は、100Mohmから20Gohmまでの範囲内にある。4つの異なるタイプのタグが取り付けられたポリホスフェートヌクレオチド(A、T、GまたはC)がナノポアの筒内に保たれるとき、曲線2104、2106、2108および2110は、4つの捕獲状態に対応する異なる電圧減衰率を示す。いくつかの実施形態では、捕獲状態のナノポアに関連付けられた抵抗は、200Mohmから40Gohmまでの範囲内にある。プロットの各々の傾きが互いに区別可能であることに留意されたい。
プロセス1900の1910において、プロセス1900が繰り返されるか否かが判定される。例えば、プロセスは、複数回繰り返され、ナノポアの各状態を検出するようにしてもよい。プロセスが繰り返されない場合、プロセス1900は終了し、さもなければ、プロセスは、再び1902において再開する。1902において、電圧は、電圧源に接続することによって、ナノポア全体に再びアサートされる。例えば、図18Aに示すように、スイッチS1 1808が閉じられると、電圧Vpre1810は、ナノポア全体に印加される。図20に示すように、印加電圧2002は、Vpreのレベルまで迅速に戻る。プロセス1900が複数回繰り返されるので、鋸歯状の電圧波形は、時間とともにナノポア全体に印加される。図20は、また、電圧Vpre1810が再びアサートされない場合の時間に伴うRC電圧減衰を示す外挿曲線2004を説明する。
上述したように、ナノポア全体に印加される電圧を、ナノポアが特定の検出可能な状態にある期間を通じて変化するように構成することは、多くの利点を有する。利点の1つは、そうでなければセル回路内にオンチップ作製される演算増幅器、パスデバイスおよび、コンデンサ(例えば、図16のncap1608)をなくすことにより、ナノポアベースの配列決定チップ内の単一のセルのフットプリントを著しく減少させることであり、それにより、(例えば、ナノポアベースの配列決定チップ内の数百万ものセルを有する)ますます多くのセルを含むためにナノポアベースの配列決定チップの拡大を容易にする。ナノポアに並列させたキャパシタンスは、2つの部分、すなわち、膜に関連付けられたキャパシタンスおよび集積チップ(IC)に関連付けられたキャパシタンスを含む。膜の薄い形状のため、膜に関連付けられたキャパシタンスのみで、追加のオンチップのキャパシタンスを必要とすることなく必要なRC時定数を生み出すのに十分とすることができ、それにより、セルサイズおよびチップサイズの著しい減少を可能にする。
他の利点は、Vpreが任意の介在回路なく、作用電極に直接印加されるので、セルの回路がオフセットされた不正確性を被らないということである。他の利点は、スイッチが測定間隔の間に開閉されていないので、電荷注入量が最小化されるということである。
さらに、上述した技術は、正電圧または負電圧を用いて同じように良好に動作する。二方向測定は、分子複合体を特徴付けるのに有効なことを示した。さらに、ナノポアを通じて流されるイオン流のタイプが非ファラデー性伝導を介するとき、二方向測定が必要とされる。2つのタイプ、すなわち、ファラデー性伝導および非ファラデー性伝導のイオン流は、ナノポアを通じて流すことができる。ファラデー性伝導において、化学反応は、金属電極の表面で発生する。ファラデー電流は、電極でのいくつかの化学物質の還元または酸化によって生成される電流である。非ファラデー性伝導の利点は、化学反応が金属電極の表面で発生しないということである。
図22は、ナノポアベースの配列決定チップのセルの回路の一実施形態を示す回路図であり、配列決定チップが測定値保存用アナログメモリを備える。
あるアプローチでは、ナノポアのアナログ回路値の測定値(例えば、電圧、電流、抵抗、電荷、キャパシタンス、時間など)は、一定間隔で取得され、処理のためのデジタル表現に返還され得る。多くの場合、注目すべき事象がナノポアに対して検出されたか否かを判定するために、2つの測定値が、互いに減じられる。100万個のセルを備える大規模な高度並列システムでは、プロセッサを使用してデジタル的に減じられることになる値を出力することは、時間が掛かり、帯域幅に制限される。いくつかの実施形態では、すべての回路測定値を、保存され、デジタル処理されるための、デジタル形式で出力するのではなく、少なくとも2つの測定値が、アナログ構成要素を使用して、異なる時間に異なる測定値サンプルに対して取得され、減じられ、2つの測定値の両方の絶対値をデジタルで出力するのではなく、2つの測定値間の差分値だけをデジタルで出力する。例えば、2つの回路測定値が、デジタルの差分値を出力するために、アナログデジタル変換器(すなわち、ADC)によって互いに減じられた測定値に対応するレベルにコンデンサを充電/放電することによって、2つの独立したコンデンサに保存される。いくつかの場合では、絶対値でなく差分を出力することが、通信、記憶、およびデジタル処理のリソースを節約するだけでなく、アナログ保存およびADCの示差測定は、一般に、注入されるノイズ(例えば、基板からの)の影響をより受けにくい。
差分の大きさは、対象の事象を識別するために利用され得る。例えば、差分値がしきい値よりも大きい場合、差分値の大きさは、ナノポアが装填されている(例えば、開放ナノポアチャネルからタグが装填されたナノポアへ)ことを識別するのに利用され、差分値がしきい値よりも小さい場合、ナノポアの状態が変化しないままであることが識別される(例えば、状態の差分が検出されない場合、差分および関連付けられた値が、棄却され得る)。いくつかの実施形態では、差分値は、AC刺激電圧源の正位相における開放ナノポアチャネルよりもたらされる値から、AC刺激電圧源の負位相における開放ナノポアチャネルよりもたらされる値への変化を示し得る。いくつかの実施形態では、差分値は、AC刺激電圧源の負位相における開放ナノポアチャネルよりもたらされる値から、AC刺激電圧源の正位相におけるタグが装填されたナノポアよりもたらされる値への変化を示し得る。
回路2200は、ナノポアおよび膜の電気特性を表す電気モデル2202と、作用電極の電気特性を表すコンデンサ2214とを含む。電気モデル2202は、異なる状態(例えば、開放チャネル状態またはナノポア内に装填された異なるタイプのタグ/分子に対応する状態)において、脂質二重層(C二重層)に関連付けられたキャパシタンスをモデル化するコンデンサ2206と、ナノポアに関連付けられた抵抗をモデル化する抵抗器2204と、を含む。キャパシタンスをモデル化するコンデンサ2214は、作用電極と結合している。作用電極に関連付けられたキャパシタンスは、二重層キャパシタンス(Cdbl)とも称される。
2202全体の電圧減衰率(例えば、時間に対するナノポア全体の印加電圧の傾きの程度)は、ナノポアの抵抗(すなわち、Rpore2204)に依存する。異なる状態(例えば、開放チャネル状態、ナノポア内の異なるタイプのタグ/分子を有することに対応する状態、および、膜が断裂するときの状態)のナノポアに関連付けられた抵抗が、分子「/タグ」の異なる化学構造により異なるので、異なる対応する電圧減衰率が、観察され得るようになり、それゆえ、ナノポアの異なる状態を識別するために用いられてもよい。
コンデンサ2208およびコンデンサ2210のそれぞれにより、モデルコンデンサ2206および2214全体の電圧が、異なる時点で測定されたサンプルとして、効果的に取得され、保存される(例えば、コンデンサ2208およびコンデンサ2210の各々が、ナノポアを通過する電流を効果的に「積分する」)ことが可能になり、事実上、アナログメモリを作成する。例えば、あるサンプル測定値のある電圧サンプル測定値は、コンデンサ2208に保存され、後続のサンプル測定値は、コンデンサ2210に保存される。これらの保存された値は、コンデンサ2208およびコンデンサ2210の両方の絶対値でなく(またはこれらに加えて)、差分値を出力するために、読み出され、減じられ得る。コンデンサ2208およびコンデンサ2210は、連続したサンプル値、または非連続のサンプル値を保存し得る。
スイッチのネットワークが、1つまたは複数のアナログメモリコンデンサでの、測定値サンプルの準備、取得、および保存を制御するために利用される。スイッチ2224は、ナノポアおよび電極を測定回路に対して接続および切断するために利用され得る。例えば、スイッチ2224は、二重層の形成後に閉じられ、スイッチ2224は、二重層が存在しないとき開のままである(例えば、二重層が存在しないとき、非常に低いインピーダンスのために)。サンプル測定値を取得するために、コンデンサ2208を初期化するとき、コンデンサ2208は、最初に予備充電される。スイッチ2220およびスイッチ2222が開のとき、スイッチ2216、スイッチ2218、およびスイッチ2224は閉じられる。この時点で、コンデンサ2208は、電圧源2212の電圧レベルに充電される。次に、取得を開始するために、スイッチ2216が、開けられ、コンデンサ2208に保存された電荷は、実効モデル抵抗器2204によって消費される。電圧減衰率は、抵抗器2204の値(例えば、ナノポア内のタグ/分子のタイプに対応するナノポアの抵抗)に依存し、減衰は、スイッチ2218をさらに開けることによって、取得のために止められ得る。この時点で、コンデンサ2208の保存された電圧/電荷は、最小限の減衰の影響を受けるだけあり(定量化および/または補正され得る電荷漏れの影響が少ない)、この電圧/電荷は、スイッチ2216および2218が開に留まる一方で、スイッチ2220および2222を使用して、別の測定値サンプルが決定されコンデンサ2210に保存される間、後の使用のために効果的に保存される。いくつかの実施形態では、コンデンサ2208およびコンデンサ2210に保存された測定値は、連続した測定値サンプルである。例えば、ナノポアの状態に対応する電荷/電圧の保存は、連続するサンプル測定ごとに、コンデンサ2208とコンデンサ2210との間で切り替えられる。いくつかの実施形態では、コンデンサ2208およびコンデンサ2210に保存された測定値は、連続した測定値サンプルではない。例えば、測定値が、あるアナログ保存コンデンサに保存された後、後続の測定値サンプルは、コンデンサに保存された電荷/電圧間の差分が、差分のしきい値よりも大きくなるまで、他のアナログ保存コンデンサに保存され、入れ替えられる。
コンデンサ2208に保存された電圧は、トランジスタ2228が電圧を出力できるようにスイッチ2232を閉じることによって、出力回路を用いて読み出され得る。
コンデンサ2210に保存された電圧は、トランジスタ2226が電圧を出力できるようにスイッチ2230を閉じることによって、読み出され得る。出力された電圧値は、出力された電圧を減じる比較回路(例えば、比較器、アナログデジタル変換器、など)に供給され得る。いくつかの実施形態では、2つの異なる測定値サンプルに対応する出力電圧の絶対値/実際値ではなく、差分値のみが、出力される。いくつかの実施形態では、2つの異なる測定値サンプルに対応する差分値および出力電圧の絶対値/実際値が、出力される。いくつかの実施形態では、差分値がしきい値よりも小さい場合、差分値は、破棄され出力されない。
回路2200は、バイオチップの複数のセルうちの1つの回路の一部だけを示し得る。いくつかの実施形態では、バイオチップのセルは、行および列の格子状に組織され(例えば、セル列ごとに、複数の列の値を出力してもよい)、各行のセルが、実質的に同時に読み出される。回路2200で示した出力は、読み出されつつあるバイオチップのセル行の複数の列の値のうちの2つの列の出力だけを示し得る。図22で示した例は、ナノポアの2つの電圧値だけを保存するために設計された回路を示しているが、他の実施形態では、図22の例は拡張されて、回路が、追加のコンデンサ、スイッチ、および出力回路を利用することによって、任意の数のナノポアの電圧値を保存できるようにし得る。図22で示したスイッチは、任意のタイプのスイッチであってもよい。トランジスタ2226および2228は、単なる例であり、他の任意のタイプの出力回路が、コンデンサ2208および/または2210の電気的な値を読み出すために利用され得る。
示された実施例では、電圧源2240は、AC電圧源である。例えば、対電極は、二重層の上方にある電解質に浸漬され、AC非ファラデー性モードが、Vliq2240としての方形波電圧源を調整するために利用される。方形波電圧源は、その対電極の電位を、方形波の正位相の間(すなわち、AC電圧源信号サイクルの暗期間)は、他の電極と比較して高いレベルにし、方形波の負位相(すなわち、AC電圧源信号サイクルの明期間)では、他の電極と比較して低いレベルにし得る。この電位差が与えられると、コンデンサ2208は、暗期間中に充電され、明期間中に放電される。一般に、明期間中に分子/タグは、ナノポア内に装填されるように引き寄せられ、一方、暗期間中に分子/タグは、一般に、ナノポアから排斥される(例えば、ナノポアが、暗期間中に開放チャネル状態になる原因となる)。それゆえ、いくつかの実施形態では、タグ検出は、タグがナノポアへと引き寄せられる明期間中にのみ実行される。
2つの異なる測定値サンプル間の電圧の差分を決定することによって、暗期間と明期間との間の遷移が、確認され得る(例えば、差分がしきい値よりも大きいときに確認する)。さらに、タグがナノポア内に装填されるための明期間中の時間の長さは、多様であり得る。待機期間中、ナノポアが装填されるのを待つ一方で、取得された電圧サンプルは、比較的一定に留まることができ、ナノポアの開放チャネル状態を表し、ナノポアが装填されるまで、対象とならない可能性がある。電圧サンプルの測定値間の差分を決定し、差分が一定のしきい値範囲内にある時点を検出することによって、ナノポアへの装填が検出され得るようになり、差分の大きさが装填の分子/装填物のタイプを示し得る。差分を決定するためにアナログメモリを利用することによって、処理および保存の効率性が得られ得る。いくつかの場合では、明期間中の装填が、迅速に起き得るようになり、装填状態が、明期間中の最初のナノポアのサンプリング/測定の前に達成されるので、開放チャネルのナノポア状態は、装填された状態を検出する前に、明期間中に検出/サンプリングされない可能性がある。この迅速な装填を検出するために、あるアナログコンデンサに保存された暗期間中の開放チャネル状態の電圧測定値と、別のアナログ保存コンデンサに保存された後続の明期間中の装填されたナノポア状態の電圧測定値との間の差分が、装填された状態を検出するために利用され(例えば、差分は、特定の範囲以内にある)、差分の大きさが、装填の分子/装填物のタイプを示し得る。
代替実施形態では、ファラデー性モードは、AC電圧源ではなく、DC電圧源とともに利用される。
図23は、ナノポアを測定するためのプロセスの一実施形態を示すフローチャートである。図23のプロセスは、図22の回路2200で実施される。図23の例は、図22の回路を用いて説明されているが、多様な実施形態では、図22の回路以外の回路が、図23のプロセスを実施し得る。
ナノポアに関連付けられた抵抗が、ナノポア内の異なる分子/タグによるその異なる状態(例えば、開放チャネル状態、ナノポア内の異なるタイプのタグ/分子を有することに対応する状態、膜が断裂するときの状態など)に応じて変化するので、異なる対応する電圧減衰率が、ナノポア全体で観察され、ナノポアの異なる状態を識別するために利用され得る。
2302では、ナノポア測定回路が、第1のアナログ保存装置に保存されることになる測定値サンプルのために準備される。例えば、図22の回路2200は、ナノポア電圧測定値をアナログメモリコンデンサ2208に保存するように構成される。いくつかの実施形態では、ナノポア測定回路を準備することは、第1のアナログ保存コンデンサを充電(または放電)するように1つまたは複数のスイッチを構成することを含む。例えば、スイッチ2216は、コンデンサ2208をVpreに充電(または放電)するために閉じられる(例えば、スイッチ2220は、コンデンサ2210に影響しないように開のままにされる)。いくつかの実施形態では、ナノポアを電圧源に結合することによって、電圧はナノポア全体に印加される。例えば、電圧Vpre2212が、スイッチ2218を同様に閉じることによってナノポアに印加され(例えば、一方、スイッチ2216も閉じられ)、モデルコンデンサ2214および2206の実効キャパシタンスを充電する。電圧源が作用電極に接続されると、膜に関連付けられたコンデンサは充電され、エネルギーは膜全体の電界に保存される。ナノポア全体に印加されるこの初期電圧は、Vpre−V液体であり得るものであり、ここで、V液体は、ナノポアと接触するバルク液体の電圧であり、V液体は、AC電圧(例えば、Vpreを中心にした方形波電圧源)であり得る。いくつかの実施形態では、ナノポアをナノポア測定回路に接続するスイッチが存在し、このスイッチは、2302で閉じたままに留まる。例えば、スイッチ2224は、二重層の形成後は閉じたままであり、スイッチ2224は、二重層が存在しないとき開のままである(例えば、二重層が存在しないとき、非常に低いインピーダンスのために)。
2304では、次に取得される回路測定値サンプルは、第1のアナログ保存装置に取得される。例えば、第1のアナログ保存コンデンサは、ナノポアの次の測定値サンプルを取得するために、さらに充電または放電される。例えば、ナノポアは、電圧源から切り離され、第1のアナログ保存コンデンサに保存されたエネルギーは、対電極のAC電圧基準の明期間中に、ナノポアの抵抗によって放電される。別の例では、ナノポアは、電圧源から切り離され、第1のアナログ保存コンデンサに保存されたエネルギーは、対電極のAC電圧基準の暗期間中に、ナノポアの抵抗によって充電される。ナノポアの電圧の減衰率または充電率は、ナノポアに挿入またはナノポアから除去され得る、分子/タグの状態を示すナノポアの抵抗および/または電流に、関連付けられる。各状態に関連付けられた周知の減衰率/充電率が与えられると、設定期間後に結果として得られた第1のアナログ保存コンデンサの電荷/エネルギー/電圧は、ナノポアのこの状態を識別し得る。第1のアナログ保存コンデンサに保存されたエネルギー/電荷/電圧は、ナノポアの抵抗および/または電流の測定値の代わりとしての役割を果たす。いくつかの実施形態では、図22のスイッチ2216は、電源2212をコンデンサ2208から切り離すために開けられ、ナノポアの抵抗は、コンデンサ2208の放電率または充電率(例えば、AC電圧基準の位相により)に影響する。
2306では、2304の取得された測定値が、第1のアナログ保存コンデンサに保存される。例えば、第1のアナログ保存コンデンサが、設定された長さの時間で消費されることを可能にすることによって、より大きいナノポア抵抗が、同じ長さの時間でのより小さい抵抗と比較して、より大きいエネルギー/電荷/電圧の量を消費することになる。別の例では、第1のアナログ保存コンデンサは、2302におけるナノポアの抵抗に基づく率での初期充電を超えて、AC電圧基準の低電圧位相中に充電される。第1のアナログ保存コンデンサに保存されたエネルギー/電荷/電圧は、ナノポアの状態を識別するために、ナノポアの抵抗/電流の測定値の代わりとしての役割を果たす。いくつかの実施形態では、測定を維持および停止し、測定値を保存するために、スイッチが設定時刻に開けられる。例えば、スイッチ2218は、第1のアナログ保存コンデンサに測定値サンプルを保存するために、ナノポアをコンデンサ2208から切り離すために開けられる。
2308では、保存された測定値の差分の差分値が、適用可能な場合、出力される。例えば、第1の保存コンデンサに保存される測定電圧に加えて、第2のアナログ保存コンデンサ(例えば、2316で保存される)に保存される事前に保存された測定電圧が、減じられるために提供される。このことがステップ2308の最初の実行段階である場合、測定値が、第2のアナログ保存コンデンサに保存されていないので、ステップ2308は、実行されない可能性がある。いくつかの実施形態では、差分値を供給することは、1つまたは複数のスイッチを閉じ、アナログ保存装置が保存する測定値サンプルの測定値が減じられるようにこれを提供することを含む。例えば、スイッチ2230および/またはスイッチ2232は、閉じられ、図22のコンデンサ2208および/またはコンデンサ2210の電圧を供給する。いくつかの実施形態では、バイオチップのセルは、行および列の格子状に組織され(例えば、セル列ごとに、複数の列の値を出力してもよい)、各行のセルが、実質的に同時に読み出される。出力は、読み出されつつあるバイオチップのセル行の複数の列の値の一部だけを示し得る。いくつかの実施形態では、保存される測定値は、アナログ保存コンデンサが保存する測定値の電荷/エネルギー/電圧の漏洩が補償される。例えば、アナログ保存コンデンサの電荷は、コンデンササイズの制限により、低率で自然に消散する可能性があり、この漏洩は、コンデンサの漏洩率を決定し、コンデンサの電圧出力に、決定された漏洩率および測定値がコンデンサによって保存された時間の長さに基づいた、見込みの漏洩量に対応した補償値を加えることによって補正される。いくつかの実施形態では、保存された測定値が供給された後、出力スイッチは、開けられる。例えば、スイッチ2230および2232は開けられる。
いくつかの実施形態では、アナログ保存コンデンサから供給される測定値は、測定値間の差を決定するために利用される。例えば、第1のアナログ保存コンデンサの電圧出力は、第2のアナログ保存コンデンサの電圧出力から減じられる。いくつかの実施形態では、アナログ保存コンデンサから供給される測定値は、アナログデジタル変換器、比較器、および他の任意の回路構成要素のうちの1つまたは複数を用いて、互いに減じられる。変換され、デジタル的に記憶された値を減じるためにデジタルマイクロプロセッサを用いずに、出力アナログ値を用いて差分を決定することによって、デジタルメモリ記憶およびデジタル計算のリソースの効率性が獲得され得る。差分は、ナノポアの状態での変化のタイミングおよび程度を検出するために利用され得る。例えば、ナノポアが周期的にサンプリングされる間、ナノポアの状態間の遷移が、重要となり得る。ナノポアの異なる状態間のこれらの遷移を検出するために、しきい値よりも大きい差分測定値は、変化が発生した(例えば、開放チャネルから、タグがナノポアに挿入された状態へのナノポアの遷移)旨を示すことができ、変化の差分値は、異なるナノポアの状態遷移変化に対して期待される周知の差分値が与えられると、ナノポアの正確な新しい状態を示し得る。いくつかの実施形態では、出力される差分値は、バイオチップの出力の一部として出力される。出力された差分は、2つの測定間の値の変化を示さない(例えば、しきい値より低い変化)可能性があり、開放ナノポアチャネルからタグが装填されたナノポアへの転換がもたらすナノポアの状態変化、AC参照電圧の位相の変化、またはAC参照電圧源の負位相における開放ナノポアチャネルからAC参照電圧源の正位相におけるタグが装填されたナノポアへの転換がもたらすナノポア状態の変化を示し得る。
いくつかの実施形態では、差分がしきい値よりも小さい場合、差分値は、出力されない。例えば、バイオチップは、それが出力できるデータ量で帯域幅制限される可能性があり、バイオチップから出力されることになるデータ量を節約するために、ナノポアの状態の変化が検出されなかったために差分値がしきい値より小さい場合、実際の差分値は、出力されない。いくつかの実施形態では、差分がしきい値よりも小さい場合、差分の実際の値を出力しないで、差分値がしきい値よりも小さいことの指示が供給される(例えば、ナノポアの状態が明期間中に変化しなかったことの指示)。いくつかの実施形態では、差分値の出力に加えて、アナログ保存コンデンサに保存された測定値の値が、同様に出力される(例えば、差分値を決定するために利用されたコンデンサ2208およびコンデンサ2210から供給される測定値のデジタル値)。
いくつかの実施形態では、差分値がしきい値よりも小さい場合、プロセスは2302に戻る。例えば、異なるアナログ保存コンデンサでのサンプル測定値の保存を切り替えるために、図23のプロセスを続けるのではなく、同じアナログ保存コンデンサは、次の測定値サンプルを保存するために利用される。このことは、アナログ保存コンデンサ間のスイッチング時間を低減し、かつ/または、他のアナログ保存コンデンサが、前の測定値サンプルを保存している場合、2つの連続していない測定値サンプルを比較することを可能にする。ナノポアの状態が一定に留まり、AC参照電圧源の位相が変化しなかった場合、測定値は、測定値サンプル間で比較的一定に留まるので、連続していない測定値サンプルを比較することは、許容可能であり得る。いくつかの実施形態では、差分値がしきい値よりも小さい場合、第2のアナログ保存コンデンサが、測定値を保存していて(例えば、2316で保存された)、AC参照電圧源の位相の変化が、2308で検出されなかった場合、プロセスは単に2302に戻る。
2312では、ナノポア測定回路が、第2のアナログ保存装置に保存されることになる測定値サンプルのために準備される。例えば、図22の回路2200は、ナノポア電圧測定値をアナログメモリコンデンサ2210に保存するように構成される。いくつかの実施形態では、ナノポア測定回路を準備することは、第2のアナログ保存コンデンサを充電(または放電)するように1つまたは複数のスイッチを構成することを含む。例えば、スイッチ2220は、コンデンサ2210をVpreに充電(または放電)するために閉じられる(例えば、スイッチ2216は、コンデンサ2208に影響しないように開のままにされる)。いくつかの実施形態では、ナノポアを電圧源に結合することによって、電圧はナノポア全体に印加される。例えば、電圧Vpre2212が、スイッチ2222を同様に閉じることによってナノポアに印加され(例えば、一方、スイッチ2220も閉じられ)、モデルコンデンサ2214および2206の実効キャパシタンスを充電する。電圧源が作用電極に接続されると、膜に関連付けられたコンデンサは充電され、エネルギーは膜全体の電界に保存される。ナノポア全体に印加されるこの初期電圧は、Vpre−V液体でもよく、ここで、V液体は、ナノポアと接触するバルク液体の電圧であり、V液体は、AC電圧(例えば、Vpreを中心にした方形波電圧源)であり得る。いくつかの実施形態では、ナノポアをナノポア測定回路に接続するスイッチが存在し、このスイッチは、2302で閉じたままに留まる。例えば、スイッチ2224は、二重層の形成後は閉じたままであり、スイッチ2224は、二重層が存在しないとき開のままである(例えば、二重層が存在しないとき、非常に低いインピーダンスのために)。
2314では、次の回路測定値サンプルが、第2のアナログ保存装置に取得される。例えば、第2のアナログ保存コンデンサは、ナノポアの次の測定値サンプルを取得するために、さらに充電または放電される。例えば、ナノポアは、電圧源から切り離され、第2のアナログ保存コンデンサに保存されたエネルギーは、対電極のAC電圧基準の明期間中に、ナノポアの抵抗によって放電される。別の例では、ナノポアは、電圧源から切り離され、第2のアナログ保存コンデンサに保存されたエネルギーは、対電極のAC電圧基準の暗期間中に、ナノポアの抵抗によって充電される。ナノポアの電圧の減衰率または充電率は、ナノポアに挿入され、またはナノポアから除去され得る、分子/タグの状態を示すナノポアの抵抗および/または電流に、関連付けられる。各状態に関連付けられた周知の減衰率/充電率が与えられると、設定期間後に、結果として得られた第2のアナログ保存コンデンサの電荷/エネルギー/電圧は、ナノポアのこの状態を識別し得る。第2のアナログ保存コンデンサに保存されたエネルギー/電荷/電圧は、ナノポアの抵抗および/または電流の測定値の代わりとしての役割を果たす。いくつかの実施形態では、図22のスイッチ2220は、電力源2212をコンデンサ2210から切り離すために開けられ、ナノポアの抵抗は、コンデンサ2208の放電率または充電率(例えば、AC電圧基準の位相により)に影響する。いくつかの実施形態では、測定値サンプルを取得するために、スイッチが設定時刻に開けられる。例えば、スイッチ2222は、ナノポアをコンデンサ2210から切り離すために開けられる。いくつかの実施形態では、第2のアナログ保存コンデンサに保存される電圧は、実効コンデンサ2214および2206全体の電圧差である。多様な実施形態では、2314での第2のアナログ保存コンデンサの消散を止めるために、スイッチが開けられる設定時間の長さは、2306での第1のアナログ保存コンデンサの消散を止めるために、スイッチが開けられる設定時間と同じである。
2316では、2314の取得された測定値が、第2のアナログ保存コンデンサに保存される。例えば、第2のアナログ保存コンデンサが、設定された長さの時間で消費されることを可能にすることによって、より大きいナノポア抵抗が、同じ長さの時間でのより小さい抵抗と比較して、より小さいエネルギー/電荷/電圧の量を消費することになる。別の例では、第2のアナログ保存コンデンサは、2312におけるナノポアの抵抗に基づく率での初期充電を超えて、AC電圧基準の低電圧位相中に充電される。第2のアナログ保存コンデンサに保存されたエネルギー/電荷/電圧は、ナノポアの状態を識別するために、ナノポアの抵抗/電流の測定値の代わりとしての役割を果たす。いくつかの実施形態では、測定を維持および停止し、測定値を保存するために、スイッチが設定時刻に開けられる。例えば、スイッチ2222は、第2のアナログ保存コンデンサに測定値サンプルを保存するために、ナノポアをコンデンサ2210から切り離すために開けられる。
2318では、保存された測定値の差分の差分値が、適用可能な場合、出力される。例えば、第2の保存コンデンサに保存された測定電圧に加えて、第1のアナログ保存コンデンサ(例えば、2306で保存される)に保存される事前に保存された測定電圧が、減じられるために提供される。いくつかの実施形態では、差分を供給することは、1つまたは複数のスイッチを閉じ、アナログ保存装置が保存する測定値サンプルの測定値が減じられるようにこれを提供することを含む。例えば、スイッチ2230および/またはスイッチ2232は、閉じられ、図22のコンデンサ2208および/またはコンデンサ2210の電圧を供給する。いくつかの実施形態では、バイオチップのセルは、行および列の格子状に組織され(例えば、セル列ごとに、複数の列の値を出力してもよい)、各行のセルが、実質的に同時に読み出される。出力は、読み出されつつあるバイオチップのセル行の複数の列の値の一部だけを示し得る。いくつかの実施形態では、保存される測定値は、アナログ保存コンデンサが保存する測定値の電荷/エネルギー/電圧の漏洩が補償される。例えば、アナログ保存コンデンサの電荷は、コンデンサの制限により、低率で自然に消散する可能性があり、この漏洩は、コンデンサの漏洩率を決定し、コンデンサの電圧出力に、決定された漏洩率および測定値がコンデンサによって保存された時間の長さに基づいた、見込みの漏洩量に対応した補償値を加えることによって補正される。いくつかの実施形態では、保存された測定値が供給された後、出力スイッチは、開けられる。例えば、スイッチ2230および2232は開けられる。
いくつかの実施形態では、アナログ保存コンデンサから供給される測定値は、測定値間の差を決定するために利用される。例えば、第2のアナログ保存コンデンサの電圧出力は、第1のアナログ保存コンデンサの電圧出力から減じられる。いくつかの実施形態では、アナログ保存コンデンサから供給される測定値は、アナログデジタル変換器、比較器、および他の任意の回路構成要素のうちの1つまたは複数を用いて、互いに減じられる。変換され、デジタル的に記憶された値を減じるためにデジタルマイクロプロセッサを用いずに、出力アナログ値を用いて差分を決定することによって、デジタルメモリ記憶およびデジタル計算のリソースの効率性が獲得され得る。差分は、ナノポアの状態での変化のタイミングおよび程度を検出するために利用され得る。例えば、ナノポアが周期的にサンプリングされる間、ナノポアの状態間の遷移が、重要となり得る。ナノポアの異なる状態間のこれらの遷移を検出するために、しきい値よりも大きい差分測定値は、変化が発生した(例えば、開放チャネルから、タグがナノポアに挿入された状態へのナノポアの遷移)旨を示すことができ、変化の差分値は、異なるナノポアの状態遷移変化に対して期待される周知の差分値が与えられると、ナノポアの正確な新しい状態を示し得る。いくつかの実施形態では、出力される差分値は、バイオチップの出力の一部として出力される。出力された差分は、2つの測定間の値の変化を示さない(例えば、しきい値より低い変化)可能性があり、開放ナノポアチャネルからタグが装填されたナノポアへの転換がもたらすナノポアの状態変化、AC参照電圧の位相の変化、またはAC参照電圧源の負位相における開放ナノポアチャネルからAC参照電圧源の正位相におけるタグが装填されたナノポアへの転換がもたらすナノポア状態の変化を示し得る。
いくつかの実施形態では、差分がしきい値よりも小さい場合、差分値は、出力されない。例えば、バイオチップは、それが出力できるデータ量で帯域幅制限される可能性があり、バイオチップから出力されることになるデータ量を節約するために、ナノポアの状態の変化が検出されなかったために差分値がしきい値より小さい場合、実際の差分値は、出力されない。いくつかの実施形態では、差分がしきい値よりも小さい場合、差分の実際の値を出力しないで、差分値がしきい値よりも小さいことの指示が供給される(例えば、ナノポアの状態が明期間中に変化しなかったことの指示)。いくつかの実施形態では、差分値の出力に加えて、アナログ保存コンデンサに保存された測定値の値が、同様に出力される(例えば、差分値を決定するために利用されたコンデンサ2208およびコンデンサ2210から供給される測定値のデジタル値)。
いくつかの実施形態では、差分値が2318でのしきい値よりも小さい場合、プロセスは2312に戻る。例えば、異なるアナログ保存コンデンサでのサンプル測定値保存を切り替えるために、図23のプロセスを続けるのではなく、同じアナログ保存コンデンサは、次の測定値サンプルを保存するために利用される。このことは、アナログ保存コンデンサ間のスイッチング時間を低減し、かつ/または、他のアナログ保存コンデンサが、前の測定値サンプルを保存している場合、2つの連続していない測定値サンプルを比較することを可能にする。ナノポアの状態が一定に留まり、AC参照電圧源の位相が変化しなかった場合、測定値は、測定値サンプル間で比較的一定に留まるので、連続していない測定値サンプルを比較することは、許容可能であり得る。いくつかの実施形態では、差分値がしきい値よりも小さい場合、AC参照電圧源の位相の変化が、2318で検出されなかった場合、プロセスは単に2312に戻る。
図23のプロセスは、停止基準に達するまで繰り返される。例えば、図23のプロセスは、所定の長さの時間、および/またはある量の測定値サンプルが出力された後に停止される。いくつかの実施形態では、図23のプロセスは、ナノポア測定が止められたとき、停止される。図23のステップは、周期的な割合で安定して発生し得る。例えば、ナノポアの測定値を周期的な割合で安定して取得することが望ましく、図23のステップは、所望の安定したサンプリング速度を実現するための速度に設定される。例えば、ステップ2306および/またはステップ2316間のタイミングは、安定した時間間隔にある。
図24は、AC電圧源が、ナノポアの対電極の参照電圧として利用されるときの回路測定のグラフを示す図である。例えば、方形波AC電圧源が、図22の電圧源2240として利用される。図24のグラフは、タグを導入する前のグラフを示し、結果としてグラフは、ナノポア内の何れのタグの挿入も示していない。ナノポアは、実際上安定した開放チャネル状態にある。グラフ2402は、AC電圧源のグラフを示す。ラベル付けされた明期間および暗期間を有する方形波電圧源が示されている。信号のほんの一部が、示されている。グラフ2404は、ナノポア全体の対応する電圧を示している。例えば、図22の実効的なコンデンサ2206および抵抗器2204全体の電圧が示される。電圧の「鋸歯」形状は、明期間および暗期間中の測定値サンプルの、ナノポアの二重層に関連付けられるキャパシタンスの放電(明期間中)および充電(暗期間中)からもたらされる。各「鋸歯」は、取得される各測定値サンプルに対応する。グラフ2406は、ナノポア全体の対応する電流を示している。例えば、図22の実効的な抵抗器2204全体の電流がグラフで示される。グラフ2408は、アナログ保存コンデンサ全体の対応する電圧を示している。各「鋸歯」は、取得される各サンプル測定値に対応する。例えば、各測定値サンプルの明期間中に、アナログ保存コンデンサは、0.90Vまで予備充電され、次の測定値サンプルのためのコンデンサの次の予備充電まで、この電圧/電荷は、ナノポアの抵抗によって消費される。この例では、各測定値サンプルの暗期間中に、アナログ保存コンデンサは、最初に0.90Vまで予備充電/放電(リセット)され、次の測定値サンプルのためのコンデンサの次の予備充電/リセットまで、この電圧/電荷は、ナノポアの抵抗に関連付けられた速度で増加される。グラフ2410は、予備充電/消散信号の対応する電圧を示している。
図25は、ナノポアの状態を検出し、出力されることになるデータを最適化するためにナノポア状態のデータを順応的に処理するためのシステムの一実施形態を示すブロック図である。図25に示すように、図25で示した構成要素は、バイオチップ内に含まれる。バイオチップは、任意の数の図25で示した構成要素を含み得る。例えば、バイオチップは、順応的分析器2512に接続された複数のナノポアセル、測定回路、およびローカル事象検出器を備える。バイオチップは、DNA配列決定バイオチップであってもよい。例えば、バッファ2514を用いてバイオチップから出力されるデータは、DNA内に含まれるヌクレオチドの配列を検出するためにさらに処理され得る。図25で示した構成要素の任意のものは、回路、回路構成要素、電気的構成要素、回路モジュール、プロセッサ、比較器、計算モジュール、メモリ、保存装置、マイクロアレイ、およびバイオチップ構成要素のうちの1つまたは複数の任意に数を用いて実施され得る。
いくつかの実施形態では、図25で示したシステムは、ナノポアセルのバイオチップから出力されることになるデータを削減および管理するために利用される。例えば、DNA配列決定バイオチップによって出力可能なデータの量は、バイオチップの最大出力データレートによって制限され得る。バイオチップ上の多数のセルを用いて、場合によってはバイオチップによって出力され得るデータの量は、バイオチップの最大出力データレート超え得る。いくつかの実施形態では、出力されることになるデータのタイプおよび量は、動的な方法で管理され、必要とされる場合に、出力されることになるデータの量を動的に削減する。例えば、データを圧縮および圧縮解除することに処理コストがかかるため、バイオチップによって出力されることになる現在のデータの量がしきい値を超えることで、出力されることになる情報は、必要となる場合にのみ圧縮されてもよい。別の例では、ある事象が、バイオチップのセル上で検出されるとき、出力されることになる関連情報は、情報が情報の損失なしに後で出力可能である場合、破棄され、出力されなくてもよい。別の例では、ある事象が、バイオチップのセル上で検出されるとき、出力されることになる関連情報は、情報が情報の損失なしに後で出力が不可能である場合でさえ、破棄され、出力されなくてもよい。
ナノポアセル2502は、測定回路2504に接続されている。ナノポアセル2502は、図1のナノポアセル100、図2のセル200でもよく、および/または明細書で説明される任意のナノポアを含み得る。いくつかの実施形態では、ナノポアセル2502は、図16の1602、図17の1702、図18Aおよび18Bの1802、および/または図22の2202として電子的にモデル化され得る。
測定回路2504は、ナノポアセル2502の電気的測定値を検出する。電気的測定値は、ナノポアセル2502のナノポアの状態を検出するために利用され得る。例えば、測定回路2504によって測定される電圧変化は、タグがナノポア内に装填されたか、どのタグが装填されたのかを示す。測定回路2504の例は、図16の1600、図17の1700、図18Aの1800、図18Bの1801、または図22の2200を含む。
ローカル事象検出器2506は、検出された電気的測定値を測定回路2504から受け取る。いくつかの実施形態では、ローカル事象検出器2506は、測定回路2504からの電気的測定値がナノポアの状態変化を示すかどうかを判断する。例えば、電気的測定値は、ナノポア内に挿入されたタグのタイプを決定するために利用され、タグがナノポアに入るときのみ、重要であり得る。ナノポアの状態が変わっていないと分かっている場合、実際の測定値は、重要でない可能性がある。
いくつかの実施形態では、周期的な電気的測定値サンプルごとのバイオチップの電気的測定値から出力するのではなく、測定値は、必要なときのみ出力される(例えば、ナノポアの装填状態への状態変化が検出されたとき)。状態変化が、特定の測定値サンプルによって示されないと判断される場合、実際の測定値サンプルの値を報告するのではなく、状態が変化しなかったことの指示が、報告され得る。いくつかの実施形態では、以前の測定値サンプル(例えば、ナノポアの開放チャネル状態に対応する保存された測定値サンプル値)と新しい測定値サンプルとの間の電気的な測定値の差分を決定することによって、差分の大きさは、状態変化が発生したのか(例えば、差分が、しきい値よりも大きい、一定の範囲内にある、など)、かつどのタグがナノポア内に挿入されたのかを示し得る。いくつかの実施形態では、開放チャネルのナノポアの基準の期待される電気的測定値が、決定され/知られ、新しく受け取られる電気的測定値サンプルと比較するために利用され、新しい電気的測定値サンプルが、タグがナノポアに挿入されたか、またはナノポアから除去されたかを示しているか判定する。
いくつかの実施形態では、状態メモリ2508が、測定回路2504から先に受け取られた1つまたは複数の電気的測定値サンプルを保存する。例えば、状態メモリ2508から回収された先に受け取られた電気的測定値サンプルの値は、ローカル事象検出器2506によって、新しく受け取られた電気的測定値サンプルの値が状態の変化を示すのかを判定するのに利用される。いくつかの実施形態では、状態メモリ2508は、1つまたは複数のナノポアの状態に対応する1つまたは複数の参照測定値を保存する(例えば、ナノポアの開放チャネル状態に対応する測定値)。
いくつかの実施形態では、参照AC電圧源の信号期間の現在の明期間において、状態メモリ2508は、ナノポア内へのタグの挿入が、ローカル事象検出器2506によって報告されたかどうかの識別子を保存する。例えば、ナノポア内へのタグの挿入に対応する電気的測定値サンプルの値が検出され、参照AC電圧源信号サイクルの同じ明期間中の同じ事象に対して一度報告されると、タグがナノポア内にまだ挿入されている間に取得される後続の電気的測定値サンプルは、状態変化が、ナノポア内に挿入されたタグのタイプを示す関連付けられた電気的測定値とともに、すでに報告されているので、再び報告される必要がない可能性がある。したがって、タグが挿入された状態がローカル事象検出器2506によって、現在の参照AC電圧源信号サイクルの現在の明期間の間にすでに報告されたことを、保存された識別子が示す場合、同じタグが挿入された状態に同様に対応する後続で受け取られる電気的測定値は、報告される必要がない。この保存される識別子は、参照AC電圧源信号の新しいサイクルごとにリセットされてもよい。
順応的分析器2512は、ローカル事象検出器2506から(例えば、さらなる処理/検出のためのバイオチップから)出力されることになるデータを受け取る。いくつかの実施形態では、順応的分析器2512は、複数のローカル事象検出器からデータを受け取る。例えば、各ナノポアセルの各ローカル事象検出器は、各ナノポアセルの状態変化をそれぞれ検出し、報告し、順応的分析器2512は、バイオチップのすべてのローカル事象検出器から報告されるデータを収集し、必要とされる場合、出力されることになるデータのサイズを削減することを試みる際に、出力されることになるデータを分析する。いくつかの実施形態では、順応的分析器2512は、ナノポアセルの電気的測定値が周期的に取得されるとき、データが周期的に供給される。
例えば、バイオチップの各ナノポアごとの状態変化が検出されたかを示すビットベクトルは、周期的測定段階ごとの出力のために生成される(例えば、ベクトルの各ビットは、異なるナノポアセルに対応し、タグがそれぞれのナノポアに挿入されたかを示す)。ビットベクトルとともに、タグが挿入された状態に変化したことが検出された任意のナノポアには、対応する電気的測定値サンプルの値(例えば、あるタイプのタグに対応する値)が、出力用に選択される。順応的分析器2512は、(例えば、バイオチップから)出力されることになるデータをバッファ2514に置く。
バッファ2514は、バイオチップから出力されることになるデータを記憶する。データは、あるデータ出力レートでバッファ2514を用いてバイオチップから頻繁に出力され得る。しかしながら、出力されるために生成されるデータ量は、時間とともに(例えば、タグがナノポア内に挿入される時点に応じて)変化する可能性があり、時として、データ出力率を超えることがある。バッファ2514は、出力されることを待機するデータを記憶する。バッファ2514内のデータ量により、順応的分析器2512は、出力のためにバッファ2514内に置かれることになる新しいデータのサイズを削減しようと順応的に試みる。例えば、バッファ2514が比較的空いている場合、順応的分析器2512は、データを圧縮するのに必要とされる計算リソースを節約するために、バッファ2514内にデータ置く前にデータを圧縮せず、一方バッファ2514がしきい値を満たすレベルにある場合、順応的分析器2512は、出力されることになるデータをバッファ2514内に置く前に、データを圧縮する。いくつかの実施形態では、バッファ2514は、圧縮されることになるデータの特性(例えば、エントロピー)に基づいて、圧縮技術(例えば、圧縮アルゴリズム)および/または圧縮設定(例えば、圧縮の表の記号)を順応的に選択する。
いくつかの実施形態では、順応的分析器2512がデータを所望のサイズに削減/圧縮する(例えば、ロスレス圧縮を使用して)ことができない場合、順応的分析器2512は、機能/情報での損失が最終的にもたらされない場合、出力されることになるデータを選択的に変更する。例えば、ナノポア内へのタグの挿入の報告は、否定的な結果なしに遅延されてもよく(例えば、タグは、複数の測定サイクルに対してナノポアに挿入される)、タグの挿入を報告するデータおよびその関連する測定データは、それが次の電気的測定値サンプルのサイクルで報告されることを可能にするために落とされる。このことは、現在の参照AC電圧源信号サイクルの現在の明期間中に、タグの挿入された状態の測定値が報告されたかを示す、状態メモリ2508に保存された指標をリセットすることによって達成され得るようになり(順応的分析器2512によって)、タグの挿入された状態を示す以前の測定値サンプルの値が以前に報告され、順応的分析器2512によって落とされているので、ナノポアの次の測定値サンプルの値が、同じ明期間中に報告されることが可能になる。いくつかの実施形態では、順応的分析器2512は、報告されることになるデータの一部(例えば、非可逆圧縮を使用した、無作為に選択された部分、など)を、出力されることになるデータの所望のサイズ/帯域幅に一致するように減らす。
代替実施形態では、図25で示した1つまたは複数の構成要素は、バイオチップから分離された1つまたは複数の他のチップを含み得る。例えば、バイオチップは、ナノポアセル2502と、図25で示した他の構成要素のうちの1つまたは複数を含むバイオチップと通信する分離された同類のチップとを含む。
図26は、ナノポア状態データを報告するためのプロセスの一実施形態を示すフローチャートである。図26のプロセスは、図25のローカル事象検出器2506で実行され得る。例えば、図26のプロセスは、バイオチップのナノポアセルの複数のローカル事象検出器の各々で実行される。
2602では、ナノポアの電気的測定値サンプルデータが、受け取られる。例えば、ナノポアの抵抗に対応する電圧測定値が受け取られる。いくつかの実施形態では、電気的測定値サンプルデータは、図25の測定回路2504から受け取られた電気的測定値サンプルの値(例えば、数値)を含む。受け取られた電気的測定データは、受け取られる周期的測定値サンプルのうちの1つの測定値サンプルに対応し得る。いくつかの実施形態では、電気的測定値サンプルデータは、アナログ保存コンデンサ(例えば、図22のアナログ保存コンデンサ)に保存される電荷/電圧の大きさの値である。いくつかの実施形態では、電気的測定値サンプルデータは、図23の2308または2318で供給される差分値である。電気的測定値サンプルの例は、電圧値、電流値、抵抗値、電荷量値、容量値、または時間値のうちの1つまたは複数を含む。
2604では、受け取られた電気的測定データが、ナノポアの状態の変化に対応するかを判定する(例えば、装填された状態への状態の変化、以前に検出された状態からの変化、など)。例えば、受け取られた電気的測定値サンプルデータが、受け取られた電気的測定データがナノポアの状態の変化に対応するかを判定するために分析される。いくつかの実施形態では、受け取られた電気的測定データがナノポア状態の変化に対応するかを判定することは、受け取られた電気的測定データを以前に受け取られた電気的測定データと比較することを含む。例えば、以前に受け取られた電気的測定値と2604で受け取られた電気的測定値との差分が計算され、差分値がナノポアの状態変化を示すかを判定するのに利用される(例えば、差分が、所定の範囲内にある、最小しきい値よりも大きい(例えば、小さな不均一性/ノイズによらずに)、最大しきい値よりも小さい(例えば、明期間と暗期間との間の変化によらずに)、など)。いくつかの実施形態では、受け取られた電気的測定データは、以前の電気的測定データサンプルと後続で取得された電気的測定データサンプルとの間の差分である。いくつかの実施形態では、受け取られた電気的測定データがナノポア状態の変化に対応するかを判定することは、受け取られた電気的測定データを参照電気的測定データと比較することを含む。例えば、開放チャネルナノポア状態に対応する参照電気的測定データ(例えば、所定のまたは以前に受け取られた測定データサンプル)は、電気的測定データが、ナノポアの状態のタグが装填された状態への変化に対応するかを判定するために、受け取られた電気的測定データと比較される。
いくつかの実施形態では、受け取られた電気的測定データがナノポア状態の変化に対応するかを判定することは、受け取られた電気的測定データが装填された状態に対応するかを判定することを含む。例えば、参照AC電圧源信号サイクルの明期間中の装填された状態は、DNAを配列決定する対象であり、DNAを配列決定するために検出されることが望まれる。いくつかの実施形態では、参照AC電圧源信号サイクルの明期間中のナノポアの状態変化のみが、検出されるように構成される。例えば、暗期間中、状態変化識別子および/または電気的測定値サンプルの値は、ローカル事象検出器によって出力されない。いくつかの実施形態では、受け取られた電気的測定データが、参照AC電圧源信号の現在のサイクルの暗期間に対応する場合、ナノポアの状態変化の検出は、実行されない。例えば、暗期間中、ナノポアの状態変化が検出されなかったと、自動的に判定される。
いくつかの実施形態では、受け取られた電気的測定データがナノポアの状態の変化に対応するかを判定することは、新しいナノポアの状態が維持されたか否かを判定することを含む。例えば、タグがAC電圧源信号サイクルの明期間中にナノポアに挿入されると、タグは、一定のサンプリング条件下(例えば、明/暗AC電圧源信号の電気的調整が、生物学的事象の速度と比較して速いとき)で、AC電圧源信号サイクルの暗期間まで、ナノポア内部に留まることが期待される。この例では、ナノポアの状態が、開放チャネル状態から装填された状態へ変化し、次に単一の明期間中に明期間の終了より前に開放チャネル状態に戻る場合、統計的に典型的でない事象が発生したと考えられる(例えば、装填された状態の検出は、信号ノイズによる可能性がある、またはタグが適切に装填されなかった)。それゆえ、ナノポア状態の装填された状態から開放チャネル状態への変化は、現在の明期間の終了前に検出され、装填された状態変化は、サンプリング状態に基づいて報告され得るか、またはされ得ない。例えば、より早く検出された現在の明期間中の装填された状態へのナノポアの状態変化は、さらに処理されること、および/または一定のサンプリング状態の下でバイオチップから出力されることを減らされ/回避され得る。
2604で、受け取られた電気的測定データが、ナノポア状態の変化に対応しないと判定された場合、プロセスは、2608に進む。2604で、受け取られた電気的測定データが、ナノポア状態の変化に対応すると判定された場合、2606において、検出されたナノポアの装填された状態に対応する受け取られた電気的測定値サンプルデータの電気的測定値サンプルの値が、現在のAC電圧源信号サイクルの現在の明期間中に、事前に報告されていたか否かが、判定される。例えば、同一の装填された状態に対応する電気的測定値サンプルの値は、全く同じである情報が報告されることを回避するために、タグが装填されたナノポアの測定値サンプルが取得されるごとでなく、一度だけ報告されることになる(測定値は、単一のタグが装填される事象ごとに一回のみ報告されることになる)。いくつかの実施形態では、保存された報告状態識別子(例えば、図25の状態メモリ2508に保存されている)が、装填された状態に対応する電気的測定値が、ナノポアセルの参照AC電圧源信号の現在のサイクルの現在の明期間中にすでに報告されたか(例えば、順応的分析器2512に報告された)を追跡する。いくつかの実施形態では、2608では、報告状態識別子が、検出されたナノポアの装填状態に対応する電気的測定値サンプルの値がすでに報告されたことを示すか否かを判定するために、保存された報告状態識別子は、取得される。報告状態識別子が、以前の電気的測定値サンプルの値がすでに報告されていることを示す場合、同一の装填されたナノポア状態に対応する後続の電気的測定値サンプルの値は、報告される必要がないこともある。この保存された報告状態識別子は、参照AC電圧源信号の新しいサイクルごとにリセットされてもよい。いくつかの実施形態では、保存された報告状態識別子が、リセットされ、以前の報告された電気的測定値が出力を棄却された場合、同一の装填されたナノポア状態の電気的測定値の第2の報告により、装填されたナノポア状態の電気的測定値を報告することを遅延させることが可能になる。
2608では、受け取られた電気的測定データが、ナノポアの状態の変化に対応するか否かの指示が、報告される。例えば、受け取られた測定値サンプルデータのために、受け取られた測定データが、参照AC電圧源信号の1サイクルの明期間中に装填されたナノポア状態を示すか否かを示すバイナリビットが報告される(例えば、順応的分析器2512に提供される)。この例では、受け取られた電気的測定データが、ナノポアが装填された状態に対応する場合「1」の値が報告され、そうでない場合は「0」の値が報告される。いくつかの実施形態では、受け取られた電気的測定データが、ナノポア状態の変化に対応しない場合は、データは報告されない。いくつかの実施形態では、参照AC電圧源信号の1サイクルの暗期間中、データは報告されない。いくつかの実施形態では、指示は、受け取られた電気的測定データが、装填された状態から開放チャネル状態への状態の変化に対応するか否かを示す。いくつかの実施形態では、指示の受取側が、セルのナノポアの状態のビットアレイ(例えば、ビットマップ、ビットセット、ビットストリング、ビットベクトル、など)の表現を生成するために、バイオチップの各ナノポアのセルからの各バイナリビット指示を共に結合させる。いくつかの実施形態では、指示は、受け取られた電気的測定値サンプルの値が報告されるか否かを示す(例えば、2606の判定に対応する指示)。例えば、受け取られた電気的測定値サンプルの値は、受け取られた電気的測定値サンプルの値が、明期間中の装填されたナノポア状態を示し、かつこの装填されたナノポア状態の以前の測定値が、まだ報告されていないと判断されたときのみ、報告される(例えば、保存された報告状態指標によって示されたように)。
2606で、以前の電気的測定値サンプルの値が、以前に報告されていると判定された場合、2610では、受け取られた電気的測定データの電気的測定値サンプルの値は、報告されない(例えば、順応的分析器2512に供給されない)。2606で、以前の電気的測定値サンプルの値が、以前に報告されていないと判定された場合、2612では、受け取られた電気的測定値の電気的測定値サンプルの値は、報告されない(例えば、順応的分析器2512に供給される)。
図26のプロセスは、受け取られた測定値サンプルごとに繰り返される。いくつかの実施形態では、図26のプロセスは、二重層およびナノポアが、バイオチップのセル内に存在する間のみ、実行される。
図27は、参照AC電圧源の1サイクル中に受け取られる周期的な電気的測定値サンプルの一例を示す図である。グラフ2700は、方形波AC電圧源信号2702(例えば、図22の電圧源2240の信号)のグラフ表現を示す。示された信号2702のサイクルは、明期間2704(例えば、極性がタグのナノポア内装填を促進するとき)と、暗期間2706(例えば、極性がタグのナノポアからの退出を促進するとき)とを含む。電気的測定値サンプル2711〜2722は、各電気的測定値サンプルが、周期的な間隔で検出されるときに順次受け取られる電気的測定値サンプルに、各々対応する。いくつかの実施形態では、電気的測定値サンプルは、図16の1600、図17の1700、図18Aの1800、図18Bの1801、または図22の2200のナノポア測定電圧出力に対応する。
測定値サンプル2711〜2713は、開放チャネルのナノポアの状態に対応する。タグが、ナノポア内に装填された状態になるとき、測定値は、変化し、測定値サンプル2714〜2716の上昇した電圧として示される。ナノポアの装填された状態のときの測定値サンプル2714〜2716の検出は、ナノポア内に装填されたタグのタイプを検出しようとするときに対象となり得る。タグが装填されている間の測定値サンプルの値は、同様であるので(例えば、測定値サンプル2714〜2716の値が同様である)、タグのタイプを検出するには、これらのうちの1つを報告するだけでよい。例えば、測定値サンプル2714の値が報告された場合、サンプル2715、2716の値は、報告される必要はない。しかしながら測定値サンプル2714が、特定の時点で出力されることになるデータ量を削減するために、出力されないように決定された場合、サンプル2715または2716の値は、現在の明期間中のナノポア内の、タグが装填された状態および装填されたタグのタイプを検出する能力を損なうことなしに、その後報告され得る。タグは、暗期間中にナノポアから排斥されるので(例えば2717〜2722が測定される間)、暗期間の測定値サンプルは、多くの場合対象とならず、報告される必要がない可能性がある。
示した例では、従来通り、未加工の電気的測定値サンプルの値ごとに報告することによって(サンプルごとに報告される測定値を表す8ビット値)、大容量の出力データ帯域幅(例えば、50GB/s)がバイオチップのために必要とされる可能性がある(例の出力2730)。しかしながら、出力されることになるデータの量は、電気的測定値を、意味があり必要なときだけ報告することによって、徹底的に削減され得る。サンプルごとの未加工の電気的測定値サンプルの値を報告するのではなく、測定値サンプルごとにバイナリ指示が、提供される(例の出力2732)。バイナリ指示は、測定値サンプルが、ナノポアの状態変化に対応するか否かを示す(例えば、明期間中に開放チャネル状態か、装填された状態かを示す)。暗期間中は、バイナリ指示は、供給される必要がない可能性がある。例の出力2732に加えて、必要な場合、実際の測定値サンプルの値が報告される(例の出力2734)。例えば、最初に装填された状態へのナノポアの状態変化が検出されると、対応する測定値サンプルの値が、測定値サンプルの値に対応するタグの識別を可能にするために、報告される。従来の未加工の報告(例の出力2730)と比較して、バイナリ指示の報告(例の出力2732)および選択的な測定値報告(例の出力2734)は、出力データ帯域幅の要件を顕著に削減する(例えば、50GB/sから7.3GB/s(すなわち、3.1GB/sと4.2GB/sの合計))。
図28は、出力されることになるデータを適応的に分析するためのプロセスの一実施形態を示すフローチャートである。図28のプロセスは、図25の順応的分析器2512で実施され得る。いくつかの実施形態では、図28のプロセスは、出力されることになる受け取られたデータセットごとに繰り返される。
2802では、出力されることになるデータが、受け取られる。受け取られたデータは、変化したナノポアの状態が、ナノポアセル群のナノポアセルごとに受け取られたか否かを示すデータを含む。例えば、バイオチップ上には複数のナノポアセルが存在し、ナノポアセルごとに、かつナノポアセルの電気的測定値サンプルが取得される段階ごとに、ナノポアセルのナノポアの状態を示す1ビット識別子が受け取られる。いくつかの実施形態では、1ビット識別子を利用せずに、ナノポアセルのナノポアの状態を示すマルチビット識別子が受け取られる。いくつかの実施形態では、周期的な間隔で、すべてのナノポアの電気的測定値サンプルは、群としてすべて一緒に取得され、電気的測定値の各群に対応する複数の1ビット識別子は、ナノポアセルの状態を示すビットアレイを形成するために共に連結される(例えば、ビットマップ、ビットセット、ビットストリング、ビットベクトル、など)。ビットアレイの各構成要素の位置は、測定値サンプルの後続のセットに対応するように生成される後続のビットマップごとの同一のナノポアセルに対応し得る。いくつかの実施形態では、受け取られたデータは、図26の2608および/または2612で報告されるデータを含む。例えば、図26のプロセスを用いて報告されるデータは、バイオチップのナノポアセルごとに、図25のローカル事象検出器2506によって供給される。
いくつかの実施形態では、受け取られたデータは、ナノポアの状態の検出された変化に対応する電気的測定値サンプルの値を含む。例えば、ナノポアの装填された状態が検出され、その対応する電気的測定値がまだ報告されていない場合(例えば、図25の状態メモリ2508に保存された状態報告指標よって示されるように)、受け取られたデータは、ナノポアに挿入されたタグのタイプを決定するために利用され得る対応する電気的測定値サンプルの値を含む。いくつかの実施形態では、ナノポアに対応する1ビット識別子は、ナノポアの対応する電気的測定値サンプルの値が、受け取られたデータ内に含まれることになるか否かを示す。いくつかの実施形態では、受け取られたデータは、図26の2612で報告される測定値サンプルの値を含む。
2804では、受け取られたデータのサイズが削減されるべきか否かが判定される。例えば、バイオチップの出力データレートが制限され、バイオチップによって出力されることになる追加のデータ量が、データ予定量が超過されたので、削減されるべきか否かが決定される。受け取られたデータのサイズの削減の一例は、データ圧縮を含む。しかしながら、必要がない場合はデータを圧縮しないことによって、データを圧縮および圧縮解除するために必要な計算リソースの量が、節約され得る。いくつかの実施形態では、受け取られたデータのサイズが削減されるべきか否かを決定することは、出力されることになるバッファ内に残るデータ量を決定することを含む。例えば、図25のバッファ2514は、バイオチップによって出力されることを待っているデータを記憶し、出力帯域幅が利用可能であるとき、バッファからのデータがバイオチップから出力され、バッファから除去される。いくつかの実施形態では、受け取られたデータのサイズが削減されるべきか否かを決定することは、出力バッファ内に残るデータ量がしきい値のレベル/量に達したか否かを判定することを含む。しきい値レベルに達した場合、受け取られた出力されることになるデータのサイズが低減されるべきであると決定され、そうでない場合、受け取られたデータのサイズが削減される必要がないと決定される。いくつかの実施形態では、受け取られたデータのサイズが削減されるべきか否かを判定することは、受け取られたデータを出力バッファに加えることが、バッファ内のデータ量をしきい値のレベル/量を超えて増加させることをもたらし得るか否かを判定することを含む。いくつかの実施形態では、受け取られたデータのサイズが削減されるべきか否かを判定することは、受け取られたデータのサイズが、しきい値を超えるか否かを判定することを含み、サイズがしきい値を超える場合、受け取られたデータが削減されることになる。いくつかの実施形態では、受け取られたデータのサイズが削減されるべきか否かを判定することは、受け取られたデータが圧縮されるべきか否かを判定することを含む。
2804で、受け取られたデータが削減されることになると判定された場合、2806で、受け取られたデータは、受け取られたデータのための圧縮技術を決定するために分析される。例えば、圧縮技術は、受け取られたデータの特性および/または内容に基づいて複数の技術の中から選択される。いくつかの実施形態では、圧縮技術は、非可逆でない。例えば、受け取られたデータの少なくとも一部分が、受け取られたデータを圧縮するとき、変更される、または失われる必要はない。いくつかの実施形態では、ステップ2804は、実行されない。例えば、ステップ2806が、図28のプロセスが実行されるとき、常に実行される。
2808では、受け取られたデータの圧縮されたデータサイズがデータ予定量を超える可能性があるか否かが判定される。例えば、選択された圧縮技術を適用することによってもたらし得る受け取られたデータのサイズが、決定される。データ予定量が超過され得るか否かを判定することは、出力バッファに圧縮済みの受け取られたデータを加えることが、バッファ内のデータ量をしきい値のレベル/量を超えて増加させることをもたらし得るか否かを判定することを含み得る。例えば、圧縮済みデータを加えることが、バッファの過剰利用をもたらし得る場合、データ予定量は、超過され得ると判定される。いくつかの実施形態では、データ予定量が超過され得るか否かを判定することは、圧縮済みの受け取られたデータのサイズがしきい値よりも大きいか否かを判定することを含む。例えば、圧縮済みの受け取られたデータのサイズは、最大データサイズまたは出力バッファ内に残っている容量と比較される。
2808で、圧縮済みデータサイズが、データ予定量を超え得ると判定された場合、2810では、受け取られたデータを変更する。いくつかの実施形態では、受け取られたデータを変更することは、受け取られたデータをフィルタリングすることを含む。いくつかの実施形態では、受け取られたデータを変更することは、ナノポアの装填された状態に対応する電気的測定値サンプルの値の報告を遅延させるように圧縮済みデータの内容を変更することを含む。例えば、装填されたナノポアの状態の電気的測定値サンプルの値が、ナノポアの装填された状態の間に取得された複数の電気的測定値サンプルの任意のもののために報告されることが可能である場合、電気的測定値サンプルのうちの1つの電気的測定値サンプルの値は、後続の電気的測定値サンプルの電気的測定値サンプルの値が、その代わりに報告され得るので、落とされ、報告されない可能性がある。いくつかの実施形態では、受け取られたデータを変更することは、電気的測定値サンプルの値を受け取られたデータから除去することと、装填されたナノポアの状態に対応する後続の電気的測定値サンプルの値が、出力のために報告されるべきであることを示すこととを含む。例えば、ナノポアの装填された状態の電気的測定値サンプルの値が、現在の参照AC電圧源信号サイクルの現在の明期間中に、すでに報告されているか否かを識別する状態報告識別子(例えば、状態メモリ2508に保存された状態報告識別子)は、装填された状態を示す後続の測定値サンプルの値の報告を可能にするために、リセットされる。
いくつかの実施形態では、受け取られたデータを変更することは、利用されることになる非可逆圧縮技術を選択することを含む。例えば、データ予定量が、超過された/されることになるが、測定値サンプルの値が、除去されること/出力を遅延されることが不可能である場合、受け取られたデータは、そのサイズをさらに削減するために、非可逆圧縮技術を使用して圧縮されることになる。いくつかの実施形態では、受け取られたデータの一部が、減らされる(例えば、それによりランダムノイズが導入される、データの精度が低減する)。例えば、他の変更技術が、データ予定量を超えないようにデータを削減できない場合、出力されないように、受け取られたデータのランダムな一部分が、選択される。いくつかの実施形態では、2808での判定は、任意選択である。例えば、ステップ2810が、図28のプロセスが実行されるとき、常に実行される。
2812では、受け取られたデータが、変更されたか(例えば、2810で)、変更されなかったか(例えば、2808でデータ予定量を超過しないと判定された)にかかわらず、圧縮される。例えば、データは、選択された圧縮技術を用いて圧縮される(例えば、非可逆でない、または非可逆)。
2814では、もたらされた受け取られたデータは、圧縮されたか(例えば、2812で)、圧縮されなかったか(例えば、2804で削減されないと判定された)にかかわらず、出力されることになる出力バッファ内に置かれる。例えば、データは、バイオチップからの出力のために、図25のバッファ2514に挿入される。代替実施形態では、もたらされた受け取られたデータは、圧縮されていない、圧縮されているにかかわらず、出力バッファ内に置かれることなく、バイオチップから出力される。
図29は、圧縮技術を決定するためのプロセスの一実施形態を示すフローチャートである。図29のプロセスは、図25の順応的分析器2512上で実施され得る。いくつかの実施形態では、図29のプロセスは、図28の2806内に含まれる。
2902では、受け取られたデータのエントロピーが、決定される。例えば、図28の2802で受け取られたデータは、最良のデータ圧縮技術を、受け取られたデータ用の適格な技術の中から決定するために、分析される。いくつかの実施形態では、エントロピーを決定することは、圧縮されるために受け取られたデータのシャノンエントロピーを決定することを含む。エントロピーを決定することは、受け取られたデータに含まれるデータのランダムさを決定することを含み得る。エントロピーは、受け取られたデータの圧縮性および/または受け取られたデータを圧縮するのに最も適した圧縮技術のタイプを示し得る(例えば、データのサイズを最も削減することになる技術)。エントロピーは、ロスレス圧縮技術を用いた受け取られたデータの期待される圧縮性を示し得る。いくつかの実施形態では、エントロピーを決定することは、受け取られたデータ内の同一の連続バイナリ値の長さの統計的測度(例えば、連続する零の平均の長さ)を決定することを含む。
2904では、圧縮技術は、エントロピーに少なくとも一部基づいて、選択される。受け取られたデータを圧縮するために利用されることになる圧縮技術の最良のタイプは、データの特性および/または内容に依存し得る。例えば、低エントロピーを有するデータは、ランレングス符号化圧縮技術を用いて最良に圧縮され得るものであり、一方、高エントロピーを有するデータは、Lempel−Zivに基づく符号化技術を用いて最良に圧縮され得る(例えば、記号一覧表を用いて)。いくつかの実施形態では、圧縮技術は、圧縮されるデータのサイズを最小限にする可能性のある複数の圧縮技術の中から選択される。圧縮技術の例は、任意の圧縮アルゴリズムまたはデータを符号化/コード化する技術を含み得る。
2906では、選択された圧縮技術のパラメータは、適用可能な場合、受け取られたデータに基づいて決定される。例えば、圧縮技術のパラメータは、決定されたエントロピーおよび/または受け取られたデータの内容に基づいて決定される。いくつかの実施形態では、圧縮一覧表内に含まれることになる1つまたは複数の記号は、受け取られたデータに含まれる内容の分析に基づいて選択される。
2908では、選択された圧縮技術およびその決定されたパラメータ(適用可能な場合)が、示される。例えば、選択された圧縮技術は、受け取られたデータの圧縮に用いるために示される。
図30は、出力されることになるデータを変更/フィルタリングするためのプロセスの一実施形態を示すフローチャートである。図30のプロセスは、図25の順応的分析器2512上で実施され得る。いくつかの実施形態では、図30のプロセスは、図28の2810内に含まれる。例えば、図30のプロセスは、データ予定量が超過され得る場合、出力されることになるデータを変更し、そのサイズを削減するために、実行される。
3002では、受け取られたデータが、ナノポアの装填された状態に対応する電気的測定値サンプルの値を含むか否かが判定される。
3002で、受け取られたデータが、ナノポアの装填された状態に対応する電気的測定値サンプルの値を含むと判定された場合、3004では、電気的測定値サンプルの値が、参照AC電圧源信号サイクルの明期間の最新の測定値サンプルに対応するか否かが判定される。例えば、測定値サンプルの値の報告は、ナノポアの装填された状態が、再び検出/測定されることになるので、ナノポアの次の測定値サンプルまで遅延させることができるか否かが判定される。
3004で、電気的測定値サンプルの値が、最新の測定値サンプルに対応しないと判定された場合、3006では、受け取られたデータが、電気的測定値サンプルの値を報告しないようにフィルタリング/変更される。例えば、受け取られたデータ内のナノポアの状態の指標(例えば、1ビット指標)が、状態変化および/または装填された状態を示さないように変更され、かつ/あるいは電気的測定値が、受け取られたデータから除去される。いくつかの実施形態では、変更済みの受け取られたデータは、最初の受け取られたデータを出力するのでなく、バイオチップから出力されることになるデータのバージョンである。
3008では、状態報告指標(例えば、装填された状態の測定値サンプルの値が、現在のAC電圧源サイクルの現在の明期間中にすでに報告されたか否かを示す)が、測定値サンプルの値が報告されなかったことを示すために変更される。このことにより、ナノポアの次の測定値サンプルが、その電気的測定値の報告を開始させることを可能にする。いくつかの実施形態では、図25の状態メモリ2508内に保存された状態報告指標が、変更される。
3002で、受け取られたデータが、ナノポアの装填された状態に対応する電気的測定値サンプルの値を含まないと判定された場合、または3004で、電気的測定値サンプルの値が、最新の測定値サンプルに対応すると判定された場合、3010では、受け取られたデータをフィルタリング/変更しないと決定される。例えば、図28の2810で、受け取られたデータは、装填されたナノポアの状態に対応する電気的測定値サンプルの値の報告を遅延させるように変更することができない場合、変更されない。
図31は、装填されたナノポアの多重状態の検出を扱うためのプロセスの一実施形態を示すフローチャートである。図31のプロセスは、図25の順応的分析器2512上で実施され得る。いくつかの実施形態では、図31のプロセスは、図28の2802の後に実行される。例えば、受け取られたデータは、先に検出されたナノポアの装填された状態が、統計的に典型的でないと見なされ、報告されなくてもよいか否かを判定するために、処理される。例えば、一定のサンプリング状態の下で、ある明期間内での装填された状態の複数の変化は、統計的に典型的でないと見なされ得る。このことは、バイオチップによって出力されることになるデータの量をさらに削減する。例えば、装填された状態を示すデータを出力し、次に装填された状態検出の取消しを示すデータを後で出力するのではなく、ナノポアの状態変化の切り替えは、報告されない。
3102では、受け取られたデータが、ナノポアの状態が明期間の終了の前に装填された状態から開放チャネル状態に変化したことを示すと判断される。タグが、AC電圧サイクルの明期間中に、ナノポアに挿入されると、タグは、一定のサンプリング条件下で(例えば、電気的に調整された明/暗AC信号が、生物学的事象の速度と比較して速いとき)、AC電圧サイクルの明期間の終了および暗期間の開始まで、ナノポア内部に留まることが期待される。報告されたナノポアの状態が、一定のサンプリング条件のAC電圧源信号のサイクルの明期間の終了前の単一の明期間中に、開放チャネルから装填された状態へ、次に、開放チャネル状態へ戻るように変化する場合、先に検出された装填された状態への状態変化は、統計的に重要でないと判定される(例えば、装填された状態のより早い検出は、ノイズによると見なされ得る)。
3104では、ナノポアの装填された状態を示したより早く受け取られたデータは、装填された状態を示さないように変更される。例えば、受け取られたデータに含まれる指示は、変更され、かつ/または、より早く受け取られたデータに含まれる対応する測定値は、減らされ/除去される。このことは、バイオチップから出力されることになるデータの量を削減し得る。より早く受け取られたデータは、図28のプロセスを用いて分析され、出力バッファ内に置かれることを待つプロセス中に(例えば、装填された状態検出エラーの場合の明期間の終了を待つ)、または出力バッファ内に(例えば、図25のバッファ2514内に)含まれるプロセス中に存在し得る。
3106では、適用可能な場合、装填された状態から開放チャネル状態へのナノポアの状態変化を示すデータは、出力されない。例えば、装填された状態を示すより早く受け取られたデータが、装填された状態を報告しないように変更されているので、開放チャネル状態へ戻る変化を示すデータは、出力されなくてもよい。例えば、装填された状態から開放チャネル状態への変化を報告する状態変化指標は、状態変化が検出されていないことを示すために、受け取られたデータ内で変更される(例えば、開放チャネル状態が維持されていたことを示す)。