以下、図面を参照して、実施形態に係る磁気共鳴イメージング装置(以下、MRI装置:Magnetic Resonance Imaging)に関する説明を行う。
本実施形態におけるMRI装置100では、プロトンの核磁気共鳴信号(以下、NMR(Nuclear Magnetic Resonance)信号)だけでなく、後述する受信コイル109やケーブル201上のバラン(balun)202内に配置された物質のNMR信号を取得することで当該バランの位置情報の把握を行う。
(実施形態)
図1は、実施形態に係るMRI装置100の構成を示すブロック図である。図1に示すように、MRI装置100は、静磁場磁石101と、静磁場電源102と、傾斜磁場コイル103と、傾斜磁場電源104と、寝台装置105と、寝台制御回路106と、送信コイル107と、送信回路108と、受信コイル109と、受信回路110と、シーケンス制御回路111と、入力装置112と、表示装置113と、記憶回路114と、処理回路115とを含む。なお、MRI装置100に、被検体P(例えば、人体)は含まれない。また、図1に示す構成は一例に過ぎない。例えば、寝台制御回路106、シーケンス制御回路111、及び処理回路115の各構成要素は、適宜統合若しくは分離して構成されても良い。例えば、寝台制御回路106、シーケンス制御回路111、及び処理回路115のそれぞれの機能を兼ね備える1つの処理回路を設けて本実施形態を実施しても構わない。また逆に、処理回路115を4つの独立した処理回路に分け、それぞれの回路がシステム制御機能115a、データ処理機能115b、判定機能115c、及び警告機能115dを実行するように構成しても構わない。
静磁場磁石101は、中空の略円筒形状(円筒の中心軸に直交する断面が楕円状となるものを含む)に形成された磁石であり、内部の空間に静磁場を発生する。以降の実施形態で中空の略円筒形状と述べる場合には、円筒の中心軸に直交する断面が楕円状になるものを含むものとする。静磁場磁石101は、例えば超伝導磁石であり、静磁場電源102から電流の供給を受けて励磁する。静磁場電源102は、静磁場磁石101に電流を供給する電源装置である。なお、静磁場磁石101には、永久磁石を用いることも可能である。この場合、MRI装置100は静磁場電源102を備える必要は無い。また、静磁場電源102は、MRI装置100とは別体にて備えられることも可能である。
傾斜磁場コイル103は、中空の略円筒形状に形成されたコイルであり、静磁場磁石101の内側に配置される。傾斜磁場コイル103は、互いに直交するX、Y、及びZの各軸に対応する3つのコイルが組み合わされて形成される。これら3つのコイルは、傾斜磁場電源104から個別に電流の供給を受けて、X、Y、及びZの各軸に沿って磁場強度が変化する傾斜磁場を発生する。傾斜磁場コイル103によって発生するX、Y、及びZの各軸の傾斜磁場は、例えばスライスエンコード用傾斜磁場Gs、位相エンコード用傾斜磁場Ge、及び読み出しエンコード用傾斜磁場Grである。また、傾斜磁場電源104は、傾斜磁場コイル103に電流を供給する電源装置である。
寝台装置105は、被検体Pが載置される天板105a、及び図示しない基台と寝台駆動装置を備えている。基台は、寝台駆動装置によって天板105aを上下方向(被検体Pの体軸方向と直交する方向)に移動することが可能なモータ或いはアクチュエータを持つ筐体である。寝台駆動装置は、被検体Pが載置された天板105aを、MRI装置100に設けられる略円筒形状の開口領域20内に挿抜するモータ或いはアクチュエータである。天板105aは、寝台駆動装置によって被検体Pの体軸方向及び体軸方向に直交する方向に移動することが可能な被検体Pを載置する板状部材である。また、寝台装置105は寝台部の一例である。
寝台制御回路106は、寝台制御機能106a(寝台制御部)を有する。例えば、寝台制御回路106は、プロセッサによって実現される。寝台制御機能106aを実現する寝台制御回路106は、寝台装置105に接続され、制御用の電気信号を寝台装置105へ出力することで、寝台装置105の動作を制御する。例えば、寝台制御機能106aは、入力装置112を介して、天板105aを長手方向、上下方向、又は左右方向へ移動させる指示をオペレータから受け付けて、受け付けた指示信号に従って天板105aを移動するように、寝台装置105が有する天板105aの駆動機構を動作させる。また、寝台制御回路106は第1の処理部の一例であり、寝台制御機能106aは寝台制御部の一例である。
送信コイル107は、中空の略円筒形状に形成されたコイルであり、傾斜磁場コイル103の内側に配置される。送信コイル107は、送信回路108からRF(Radio Frequency)の供給を受けて、高周波磁場を発生する。また、送信コイル107は第1の送信コイルの一例である。第1の送信コイル107は、MRI装置100の本体である架台装置における撮像空間に置かれた被検体P内の第1の核種の共鳴周波数に対応した第1のRFパルスを送信する。第1の核種とは、例えば、プロトンである。第1の送信コイル107は、例えば、撮像空間を包含する全身コイルである。
送信回路108は、対象とする原子の種類及び静磁場磁石101によって発生される磁場の強度によって決定される共鳴周波数(ラーモア周波数)に対応するRFパルスを送信コイルに供給する電気回路である。本実施形態では、送信コイル107は被検体内に含まれるプロトンのエネルギー状態を励起しNMR信号を発生させるためのRFパルスを送信する機能を有する。また、送信回路108は送信部の一例である。
受信コイル109は、傾斜磁場コイル103の内側に配置され、高周波磁場の影響によって被検体Pから発せられるプロトンのNMR信号を受信するコイルである。受信コイル109は、被検体P内のプロトンからのNMR信号を受信すると、受信したNMR信号を受信回路110へと出力する。なお、受信コイル109、及び受信コイル109の回路構成に関しては、図2及び図4を用いて詳述する。また、受信コイル109は第1の受信コイルの一例である。第1の受信コイル109は、第1の核種による第1のNMR信号を受信する。
受信回路110は、受信コイル109から出力されるNMR信号を検出し、検出したNMR信号からMRデータを生成する。具体的には、受信回路110は、受信コイル109から出力されるNMR信号をデジタル変換する。本実施形態では、被検体Pの画像化を行うためのプロトンのNMR信号とコア材304のNMR信号の両方をデジタル化した状態でシーケンス制御回路111へと送信する。また、受信回路110は受信部の一例である。
シーケンス制御回路111は、シーケンス制御機能111a(シーケンス制御部)を有する。例えば、シーケンス制御回路111は、プロセッサによって実現される。シーケンス制御機能111aを実現するシーケンス制御回路111は、各種パルスシーケンスを実行する。具体的には、シーケンス制御機能111aを実現するシーケンス制御回路111は、処理回路115から出力されるシーケンス実行データを読み込んで傾斜磁場電源104、送信回路108及び、受信回路110を駆動することで、各種パルスシーケンスを実行する。また、シーケンス制御回路111は第2の処理部の一例であり、シーケンス制御機能111aはシーケンス制御部の一例である。
ここでシーケンス実行データとは、MRデータを収集するための手順を示すパルスシーケンスを定義した情報である。具体的には、シーケンス実行データは、傾斜磁場電源104が傾斜磁場コイル103に電流を供給するタイミング及び供給される電流の強さ、送信回路108が送信コイル107に供給するRFパルス電流の強さや供給タイミング、受信回路110がMR信号を検出する検出タイミング等を定義した情報である。
また、シーケンス制御機能111aを実現するシーケンス制御回路111は、各種パルスシーケンスが実行された結果として、受信回路110からデジタル化されたプロトン及びコア材304のNMR信号を受信する。シーケンス制御回路111は、受信したプロトン及びコア材304のNMR信号を記憶回路114に記録する。
入力装置112は、オペレータからの各種指示や情報入力を受け付ける。入力装置112は、例えば、マウスやトラックボール等のポインティングデバイス、モード切替スイッチ等の選択デバイス、或いはキーボード等の入力デバイスである。また、入力装置112は、GUI(Graphical User Interface)を用いることにしても良い。また、入力装置112は入力部の一例である。
表示装置113は、処理回路115のシステム制御機能115aによる制御の下、撮像条件の入力を受け付けるためのGUIや、処理回路115のデータ処理機能115bによって生成された画像等を表示する。表示装置113は、例えば液晶ディスプレイにて構成される。また、表示装置113は、後述する警告表示を表示する機能も有する。なお、表示装置113はMRI装置100の本体である架台装置側に設けられても構わないし、架台装置とは別室に設けられMRI装置100の操作を行うコンソール装置側に設けても構わない。また、表示装置113は表示部の一例である。
記憶回路114は、各種データを記憶する。例えば、記憶回路114は、RAM(Random Access memory)、フラッシュメモリ等の半導体メモリ素子や、ハードディスク、光ディスク等によって実現される。記憶回路114は、シーケンス制御回路111及び受信回路110を介して、デジタル化されたプロトン及びコア材304のNMR信号を受け付けて記憶する。また、記憶回路114は、後述するT2 *値に関する所定の閾値も記憶する。また、記憶回路114は記憶部の一例である。
処理回路115は、システム制御機能115aと、データ処理機能115bと、判定機能115cと、警告機能115dから構成される。例えば、処理回路115はプロセッサによって実現される。また、処理回路115は第3の処理部の一例である。
システム制御機能115aを実現する処理回路115は、MRI装置100が有する各構成要素及び機能を制御することで、MRI装置100の全体制御を行う。例えば、システム制御機能115aは、入力装置112を介してオペレータからパルスシーケンスに関する各種のパラメータの入力を受け付け、受け付けたパラメータを読み込んでシーケンス実行データを生成する。そして、システム制御機能115aは、生成したシーケンス実行データをシーケンス制御回路111に送信することで、各種のパルスシーケンスを実行する。また、システム制御機能115aはシステム制御部の一例である。
データ処理機能115bを実現する処理回路115は、記憶回路114からデジタル化されたプロトンのNMR信号(第1のNMR信号)を読み込んで、当該プロトンのNMR信号に対して後処理、すなわち、フーリエ変換等の再構成処理を施すことによって、被検体P内における所望の核スピンのスペクトラムデータ或いは画像データを生成する。また、データ処理機能115bは、記憶回路114からデジタル化されたコア材304のNMR信号を読み込んで、当該コア材304のNMR信号(第2のNMR信号)に基づいて、T2 *値を計算し、判定機能115cへと出力する。T2 *値については、図9を用いて詳述する。また、データ処理機能115bはデータ処理部の一例である。
判定機能115cを実現する処理回路115は、データ処理機能115bから、コア材304から出されるT2 *値を受け取り、当該T2 *値が所定の閾値を下回っているか否かの判定を行う。また、判定機能115cは判定部の一例である。
ここで、T2 *値の所定の閾値は事前の実験によって予め定めておくことが可能である。例えば、各MRI装置100の据付時に、MRI装置100の開口領域20内の所定の各位置にコア材304相当のNMR信号を出力する物質が配置される。そして、各物質に対してRFパルスを送信することでNMR信号が受信され、開口領域20内の各位置の物質から出力されるNMR信号から、T2 *値を測定しておく。これにより、開口領域20の側壁から所定の距離以内の領域に対応したT2 *値を当該閾値として設定することが可能である。具体的には、処理回路115は、バラン202が上記開口領域20における撮像空間において第1の送信コイル107から離れた状態で、第2の送信コイルから上記物質に第2のRFパルスを送信することによって得られた第2のNMR信号に基づいてT2 *値を計算し、計算されたT2 *値を上記閾値として設定する。このとき、決定されたT2 *値に関する閾値は記憶回路114に記憶され、バラン202内に配置される物質のT2 *値と比較する際に用いられる。また、後述するケーブル201及び受信コイル109には複数のバラン202が配置されるため、判定機能115cは、複数のバラン202内に配置されるコア材304それぞれに関するT2 *値が閾値を下回るか否かの判定をそれぞれ実行する。
判定機能115cによって所定の閾値を下回ったT2 *値が検出されると、警告機能115d(警告部)を実現する処理回路115は複数のバラン202に配置されるコア材304の内、閾値を下回るコア材304を含むバラン202を特定し、警告を行う。例えば、警告機能115dは、警告情報を表示装置113の表示画面上に表示させることで警告をオペレータに対して通知する。また、警告機能115dが行う警告は、上述の方法に限定されない。例えば、検出されたT2 *値が所定の閾値を下回った場合には、処理回路115は、スキャンを中止させることや、スキャンの合間であれば、次のスキャンを開始させないように、各種回路等を制御しても構わない。また、警告機能115dは警告部の一例である。
また、警告機能115dを実現する処理回路115は、別途設けられたランプを点滅、点灯させるなどしてオペレータに警告を通知することにしてもよい。例えば、バラン202にLED等の光源が設けられてもよい。このとき、警告機能115dを実現する処理回路115は、複数のバラン202の内、開口領域20の側壁に近づいたバラン202のみを検出(特定)し、当該バラン202に設けられた光源のみを選択的に光らせて、開口領域20の側壁に近づいたバラン202をオペレータに通知することにしても構わない。また、LED等の光源は、バラン202そのものに取り付けられる必要はなく、バラン202の位置に対応する所定の位置に配置することにしても構わない。例えば、バラン202の両端の近傍のケーブル201の表面上に光源が配置されても構わない。また、バラン202が受信コイル109に配置される場合には、後述する図3において示すバラン202の近傍のカバー204上に光源が配置されても構わない。すなわち、光源は、警告に応じて点灯または点滅し、バラン202に対応する位置に設けられる。また、光源は光源部の一例である。
また、警告機能115dを実現する処理回路115は、音声にてオペレータに警告を通知することにしても構わない。この場合、MRI装置100は、別途スピーカを構成要素として具備し、警告機能115dから入力情報を受け付けて、スピーカから警告音を送出することでオペレータに開口領域20の側壁に近付いているバラン202があることを通知することが可能である。すなわち、処理回路115は、警告に対応する音声をスピーカから出力させる。
図2は、実施形態に係る受信コイル109に付随する構成要素を説明するためのブロック図である。受信コイル109、受信回路110、及び天板105aの構成は既出のため説明は省略する。
ケーブル201は、受信コイル109によって取得されたNMR信号を受信回路110へと送信する際に用いられ、同軸ケーブルにて構成される。ケーブル201の一端は、受信コイル109に接続される。ケーブル201の他端はケーブル201の後述するコネクタ203に接続されており、天板105aを介して受信回路110と接続されている。
ケーブル201には、バラン202(平衡−不平衡変換器)が接続されている。バラン202は、ケーブル201及び受信コイル109に流れる不平衡電流を抑制するためのデバイスであり、コンデンサ301と、インダクタ302とを有する共振回路によって構成される。具体的には、ケーブル201や受信コイル109を流れる不平衡電流をバラン202の共振回路によって吸収し、不平衡電流の伝送を阻止する。
コア材304は、例えば、所定の球形容器内に配置されるフッ素の化合物にて構成される。コア材304にフッ素化合物が用いられる場合には、当該フッ素原子の共鳴周波数に対応したRFパルスが付加されると、フッ素原子からNMR信号が出力される。コア材304にフッ素化合物を用いることにより、フッ素原子を励起させるためのRFパルスを送信する送信回路や、フッ素原子のNMR信号を受信するための受信回路を、MRI装置100の送信回路108及び受信回路110とそれぞれ共有することが可能である。すなわち、静磁場強度が一定の条件においてプロトンに対するフッ素の感度はが約0.83倍であってプロトンの感度に近い。このため、簡単な構成でプロトン用のRFパルスの共鳴周波数を変更して、フッ素用のRFパルスに変調することにより、上記共有は実現される。コア材304は、球形容器内に格納され、球形容器を取り囲むように送受信コイル305が取り付けられる。コア材304は、例えば、バラン202とバラン202の近傍とのうち少なくとも一方に取り付けられ、第1の核種とは異なる共鳴周波数を有する第2の核種を含む物質である。また、コア材304はフッ素化合物等によって構成される部材の一例である。
なお、コア材304に用いられる化合物を構成するNMR信号を出力する元素としては、プロトンと共鳴周波数の異なる元素であればフッ素以外の元素が用いられても構わない。この場合、MRI装置100の送信回路108及び受信回路110とは、コア材304の共鳴周波数に対応した信号を送受信する、別の送信回路及び受信回路を用いることにすればよい。また、本実施形態における送信コイル107は、プロトンの共鳴周波数に対応したRFパルスを出力するために用いられる。このため、フッ素を励起するためのRFパルスを送信するための送信コイルは、先述した送信コイル107とは別体にて構成されることが望ましい。そこで、本実施形態ではフッ素の共鳴周波数に対応したRFパルスを送信し、且つ、コア材304から出力されるNMR信号を受信するために、別途、送受信コイル305がコア材304の周囲に設けられる。
送受信コイル305は、例えば、コア材304の共鳴周波数に対応したRFパルスの送信を行う送信コイルと、当該RFパルスによって励起されたフッ素から出力されるNMR信号を受信する受信コイル(第2の受信コイル)の機能を兼ね備えたコイルである。送受信コイル305は、ケーブル201を介してMRI装置100と接続されている。送受信コイル305の構成に関しては、次の図7に関する記載にて詳述する。また、送受信コイル305はコア材用送受信コイル及び第2の受信コイルの一例である。すなわち、送受信コイル305における送信コイル(第2の送信コイル)は、第2の核種の共鳴周波数に対応した第2のRFパルスをコア材304に相当する物質に送信する。送受信コイル305における受信コイル(第2の受信コイル)は、第2のRFパルスにより物質における第2の核種による第2のNMR信号を受信する。第2の受信コイルは、例えば、3つのループ面が互いに直交し、互いに独立した3つのループコイルを有する。
送受信コイル305は、コア材304の共鳴周波数に対応したRFパルスの送信を行う送信コイルと、当該RFパルスによって励起されたコア材304から出力されるNMR信号を受信する受信コイルの機能を兼ね備えたコイルである。送受信コイル305の構成に関しては、後述する図7に関する記載にて詳述する。
図3は、本実施形態に係る受信コイルユニット200の構成の一例を示す模式図である。また、図4は、天板105aの上に横臥する被検体Pに、受信コイルユニット200を装着した状態の一例を示す図である。
受信コイルユニット200は、図3に示すように、被検体P内のプロトンのNMR信号を受信する受信コイル109と、受信コイル109にて受信したプロトンのNMR信号を受信回路110に伝送するケーブル201と、バラン202とを少なくとも有する。
受信コイル109は、図3に示すように、例えばループコイルによって構成される。図3に例示する受信コイルユニット200は2つの受信コイル109を有しているが、受信コイル109の数は2に限定されるものではなく、1であってもよいし、3以上であってもよい。受信コイル109は、適宜、カバー204に収納される。また、受信コイル109として、図3に示すようなループコイルに限られず、サーフェイスコイルや、フレキシブルコイル、ボディコイル、スパインコイル、及び天板設置型のヘッドコイルが用いられても構わない。
受信コイル109で受信したNMR信号は、通常同軸ケーブルによって受信回路110に伝送される。図3に示すように、受信コイル109の数が2の場合は、2本の同軸ケーブルによってNMR信号が伝送される。この場合、ケーブル201は、2本の同軸ケーブルを束ねたものでもよいし、複数本の同軸ケーブルの他、単線やペア線を纏め合わせ、さらに全体を導電性のシールド(外部導体)で覆った1本のケーブル(複合ケーブル)201としてもよい。ケーブル201の一端は、受信コイル109に接続され、ケーブル201の他端はケーブル201のコネクタ203に接続されている。また、ケーブル201は送受信コイル305から引き出される信号線も内蔵している。コア材304を励起するためのRFパルスは送受信コイル305へ伝送され、RFパルスによる励起に伴って送受信コイル305により取得されたコア材304のNMR信号は受信回路110へ伝送される。
コネクタ203は、図4に示すように、天板105aに設けられたコネクタ203aと嵌合する。つまり受信コイルユニット200は、コネクタ203、コネクタ203aによって、天板105aに対して着脱可能に構成されている。
さらに、本実施形態に係る受信コイルユニット200は、ケーブル201の長手方向の所定位置と、受信コイル109のカバー204の所定位置にバラン202を有する。図3及び図4の例では、カバー204に2つ、ケーブル201に3つのバラン202を有する構成となっているが、バラン202の数はこれに限定されるものではない。本実施形態におけるバラン202は、ケーブル201及びカバー204の所定位置において、ケーブル201及びカバー204の外周に配置されている。
送信コイル107によってRFパルスが撮像空間に送信されると、送信されたRFパルスは受信コイル109やケーブル201にも印加される。このとき、受信コイル109やケーブル201に不平衡電流が発生する。RFパルスの印加に伴う不平衡電流はNMR信号受信時の不平衡電流と比較すると大きな値を示すが、この大きな不平衡電流もバラン202の共振回路によって吸収される。このとき、バラン202の共振回路のうちの主にコンデンサによって不平衡電流が熱に変換されることで、不平衡電流が吸収される。特に、MRI装置100の開口領域20の側壁では、送信コイル107までの距離が短いため、送信コイル107から送信され、バラン202を通過するRFパルスの強度が大きくなる。これにより、バラン202に流れる不平衡電流が増大し、開口領域20の中心部にバラン202がある場合と比較してより発熱する。
図5は、実施形態に係るMRI装置100の開口領域20内における磁場の分布を模式的に示した図である。MRI装置100の開口領域20内では、開口領域20の中心付近において磁場の均一性が高く、開口領域20の側壁に近づくほど、磁場の均一性が低下する。例えば、図5に示すように、磁場の均一性が高い領域21と低い領域22とに分けることが可能である。判定機能115cは、後述するT2 *値を用いて、バラン202が磁場の均一性が低い領域22に位置したことを検出する。なお、図5に示した磁場均一性が高い領域21と、低い領域22とは、説明のために便宜上分けて表示したものである。実際には開口領域20内における磁場の均一性の分布は、開口領域20の中心付近で高く、側壁に近付くほど徐々に低下する。本実施形態では、開口領域20にバラン202が近付きすぎることを避けるため、開口領域20の側壁から所定の距離以内の領域を磁場均一性の低い領域とみなし、開口領域20の側壁から所定の距離以上の範囲で開口領域20の中心までの領域を磁場均一性の高い領域とみなす。
図6は、バラン202の長軸断面図を示している。なお図6では、バラン202の他、ケーブル201も含めて図示している。バラン202は、コンデンサ301とインダクタ302とを有する。バラン202において、コンデンサ301とインダクタ302とによりRFパルスの共振周波数で共振する共振回路が構成されている。また、コンデンサ301は、図6に示すようにケーブル201に対してインダクタ302を挟んで反対側に設けられる。このため、バラン202が開口領域20の側壁に近付くことでコンデンサ301が発熱すると、コンデンサ301に近接するバラン202の外周が高温となる。
また、コンデンサ301及びインダクタ302は、図6に示すようにバランケース303の内部に配置される。バランケース303は樹脂等で形成される中空又は中実構造のケースである。また、本実施形態におけるバランケース303の内部には、コンデンサ301及びインダクタ302に加えて、コア材304と送受信コイル305が更に配置される。
図7は、送受信コイル305の構成を説明するための説明図である。受信コイル109やケーブル201の位置は、被検体の位置によって異なり、また被検体の体動によって変化することがある。従って、受信コイル109やケーブル201に取り付けられた送受信コイル305の向きが静磁場に対してどのような向きとなるかは、被検体の位置および体動によって不確定である。その一方で、送受信コイル305のループ面が静磁場の向きに対して直交する場合には、コア材304から発生するNMR信号を受信することができない。そこで、送受信コイル305は、静磁場の向きにかかわらずNMR信号を検出可能なように、互いに直交した3方向に対応したサブ送受信コイル305a、305b、305cから構成される。送受信コイル305は、サブ送受信コイル305a、305b、及び305cを組み合わせて構成される。サブ送受信コイル305a、305b、305cが互いに直交する向きに構成されることで、例えばサブ送受信コイル305aのループ面が静磁場に対して直交しNMR信号を検出できない場合であっても、残るサブ送受信コイル305b、305cにてNMR信号を検出することができる。図7に示す送受信コイル305では図示の簡略化のためケーブル201に向う配線が別方向から伸びているが、当該配線は1箇所から取り出してケーブル201へと向うようにすることが望ましい。送受信コイル305は、図7に示すように、フッ素が格納されたコア材304を取り囲むように配置される。
また、サブ送受信コイル305a、305b、305cは必ずしもRFパルスの送信時、及びNMR信号の受信時に全て使用される必要は無い。例えば、フッ素のエネルギー状態を励起しNMR信号を発生させるためのRFパルスは送受信コイル305の内、少なくとも1つの送受信コイル305から送信されればよい。送受信コイル305は、上述の通り各3次元方向に対応した数のサブ送受信コイルが使用されることが望ましい。ただし、送受信コイル305のループに対して静磁場が貫くこと無ければNMR信号を受信することは可能であるため、2方向に対応した送受信コイル305のみを使用することも可能である。また、サブ送受信コイルが複数設けられることによりNMR信号も複数得られることになる。後述するT2 *値の取得にあたっては、複数のNMR信号のうち最も振幅が大きいものからT2 *値を取得しても良いし、複数のT2 *値を求めそれらを平均化して最終的なT2 *値を求めても良い。
MRI装置100によってRFパルスが送受信コイル305によって送信されると、コア材304はNMR信号を出力する。本実施形態では、コア材304のNMR信号から後述するT2 *値を取り出し、T2 *値によってコア材304が取り付けられたバラン202の、MRI装置100の開口領域20内における位置情報を把握する。
図8は、本実施形態に係るフッ素の共鳴周波数に対応したRFパルスの送信タイミングを説明するための、パルスシーケンスの一例を示すタイミングチャートである。図8では、パルスシーケンスの一例としてスピンエコー法(SE法)を例に説明を行う。図8において、「RF」は、RFパルスが印加されるタイミングを示している。また、図8における「Gs」は、横軸がスライス傾斜磁場の印加タイミング及び印加時間を示しており、縦軸がスライス傾斜磁場の強度を示している。また、図8における「Gr」は、横軸がリードアウト傾斜磁場の印加タイミング及び印加時間を示しており、縦軸がリードアウト傾斜磁場の強度を示している。また、図8における「Gp」は、横軸が位相エンコード傾斜磁場の印加タイミング及び印加時間を示しており、縦軸が位相エンコード傾斜磁場の強度を示している。
例えば、図8に示すように、本実施形態に係るSE法のパルスシーケンスでは、90°パルスが印加された後に、180°パルスが印加される。90°パルスの印加により自由減衰信号(Free Induction Decay:FID信号)が発生し、180°パルスの印加よりEcho信号が発生する。被検体P内のプロトンのNMR信号は、上述のFID信号及びEcho信号から取得することが可能である。SE法によるパルスシーケンスでは繰り返し時間(TR)を1周期として、一連のパルスシーケンスを繰り返し実行する。図8に示すように、SE法では繰り返し時間TRの終了直前に全ての方向の傾斜磁場が付加されていないタイミングが存在する。この、図8中の矢印Fにて示されるタイミングにおいて、例えば、コア材304を励起させるための90°のRFパルスを送信する。すなわち、第2の送信コイルは、シーケンス制御回路111による制御のもとで、物質に対して傾斜磁場が印加されていない期間において、第2のRFパルスを物質に送信する。また第2の受信コイルは、この期間において、第2のNMR信号を受信する。傾斜磁場が印加されていないタイミングFでコア材に含まれる元素を励起させるためのRFパルスを送信する理由は、傾斜磁場が付加されると開口領域20内における静磁場の分布が傾斜磁場に沿って傾いてしまい、磁場均一性に依存するT2 *値が、静磁場そのものの磁場の均一性を反映しない値となってしまうためである。コア材304に対して先述した矢印Fにて示されるタイミングにて90°のRFパルスが送信されると、図8中にF信号として示しているような、コア材304からNMR信号が出力される。コア材304に送信されるRFパルスは上述した90°のRFパルスに限定される必要はない。
コア材304を励起させるためのRFパルスは、TR毎に毎回送信することにしてもよいし、一定のTRの間隔で送信することにしてもよい。また、図8ではコア材304を励起させるためのRFパルスは各パルスシーケンスにおいて、TR毎に1回付加されるものとして説明したが、当該コア材304励起のためのRFパルスは複数回付加されても構わない。
図9は、T2 *値を説明するための概略図である。例えば、図9に示す磁化M0に対して、静磁場B0が図中のZ‘方向に対して付加されている状態を想定する。また、90°のRFパルスがフッ素原子に対して送信される場合を例に説明を行う。このとき、磁化M0は図9(a)に示すZ’軸を中心に歳差運動を行う(図9(a)中のA方向)。次に、図9で示したように90°パルスを印加すると、この磁化M0はz’軸から90°傾いてy軸にて歳差運動を行う(図9(a)中のB方向)。90°パルスの印加後では、磁化M0は、x’−y‘平面状で各スピンが扇形状に拡がり(図9(a)中のC方向)、磁化M0のy’軸成分My’は指数関数的に減衰する。My’はx’−y‘平面でのベクトルであるから、この減衰の状態はx−y平面に平行なコイルに誘導される高周波電流によって、図8に示すFID信号として検出される。このFID信号の減衰状態は時定数T2で表される。図9(b)に示すように、T2とは、FID信号が減衰前の値の1/eに減衰するまでの時間を示している。
ただし、この時定数T2は静磁場の不均一性の影響を受けるため、実際にはより早く減衰する。不均一な静磁場の影響で実際にFIDが1/eに減衰するまでの時間がT2 *である。T2 *は、静磁場が不均一であるほど短くなる。そのため、MRI装置100の開口領域20側壁の近傍ではT2 *がより短くなる。これは、磁場が不均一な場合には、共振周波数が場所によって異なり、時間とともに位相が分散して減衰が促進されるためである。そのため、開口領域20内の各位置でコア材304を配置した場合のT2 *値を事前に測定しておき、T2 *値と開口領域20の側壁からの距離との関連を事前に特定しておく。そして、所定の距離に対応するT2 *値を閾値として設定することでT2 *値によって開口領域20の側壁から所定の距離の範囲を検出することが可能である。すなわち、処理回路115は、閾値として、撮像空間における複数の位置に対応する複数の値を設定する。判定機能115cは、T2 *値が事前に設定された閾値を下回ると、コア材304が取り付けられたバラン202が開口領域20の側壁に近づいたとして検出する。例えば、判定機能115cを実現する処理回路115は、T2 *値が閾値よりも小さい場合、複数の値と閾値より小さいT2 *値とを用いて、撮像空間におけるバランの位置を決定する。このとき、警告機能115dを実現する処理回路115は、警告として、バランの位置に応じた情報を、表示装置113に出力する。
図10は、実施形態に係るMRI装置100による操作の一例を示すフローチャートで
ある。
本フローチャートに記載の処理手順は一例であり、コア材304のT2 *値を取得するためのRFパルスが送信可能であれば、T2 *値は、任意のスキャンが実行されるタイミングにおいて取得することが可能である。
まず、システム制御機能115aを実現する処理回路115が、オペレータから入力された撮像条件を、入力装置112を介して受け付け、受け付けた撮像条件に従ってシーケンス情報を生成する(ステップS101)。
次に、被検体Pが寝台装置105の天板105a上に載置され、被検体Pに受信コイル109が装着され、受信コイル109がMRI装置100に電気的に接続される(ステップS102)。
次に、寝台制御機能106aを実現する寝台制御回路106が、寝台装置105を移動する(ステップS103)。具体的には、寝台制御機能106aが、天板105aを所定位置に移動させることで、天板105a上の被検体Pを開口領域20内へ導く。その後、投光器(図示を省略)の光が被検体Pに当てられる。オペレータは、この投光器の光が撮像部位(例えば、頭部)に当てられたタイミングにて、入力装置112を介して、撮像部位の位置を指定する。これにより、寝台制御機能106aは、指定された撮像部位が磁場中心に位置付けられるように、天板105aを移動させる。
次に、ステップS104からステップS106にてシーケンス制御機能111aを実現するシーケンス制御回路111は、ロケータスキャン、感度マップスキャン、及びシミングスキャンを実行する。ロケータスキャンでは、後述するイメージングスキャン時の標識化領域やイメージング領域を設定させるための位置決め画像が収集される。感度マップスキャンでは、RFコイルの受信感度マップが収集される。シミングスキャンでは、静磁場強度の均一補正用データが収集される。
次に、シーケンス制御機能111aを実現するシーケンス制御回路111によってイメージングスキャンが開始される(ステップS107)。イメージングスキャンが開始されると、図8に例示したようなパルスシーケンスが実行される。図8に示したように、送信コイル107によって被検体Pに対して90°パルス及び180°パルスが送信される。180°パルスが送信コイル107によって送信された後の、傾斜磁場が付加されないタイミングにおいてコア材304を励起させるためのRFパルスが送受信コイル305を介して送信される。このときに送信されるRFパルスは、プロトンの共鳴周波数ではなくコア材304の共鳴周波数(例えば、フッ素原子の共鳴周波数)に対応している。また、イメージングスキャン時に取得される被検体P内のプロトンのNMR信号は、受信回路110によって収集される。受信回路110は、受信したプロトンのNMR信号をデジタル化し、シーケンス制御回路111のシーケンス制御機能111aへと送信する。シーケンス制御機能111aは、受信回路110から受け付けた当該NMR信号を記憶回路114に記憶させる。
コア材304は、送受信コイル305からのRFパルスを受けると、励起してNMR信号を出力する。送受信コイル305は、当該NMR信号を受信すると、受信回路110へと出力する。受信回路110は、コア材304のNMR信号をデジタル化しシーケンス制御回路111のシーケンス制御機能111aへと送信する。また、バラン202はケーブル201及び受信コイル109上において複数個配置されるため、各バラン202内に配置される各コア材304についてそれぞれNMR信号が出力される。シーケンス制御機能111aへと出力された当該コア材304のNMR信号は記憶回路114に記憶される。
次に、データ処理機能115bを実現する処理回路115は、記憶回路114からコア材304からのNMR信号を受信し、当該NMR信号を解析して、T2 *値を抽出し(ステップS108)、抽出したT2 *値を判定機能115cへと出力する。
判定機能115cは、T2 *値を受け付けると、当該T2 *値を記憶回路114に予め記憶されている閾値と比較する(ステップS109)。各コア材304に対応する複数のT2 *値のうち、閾値を下回るT2 *値が含まれる場合には、判定機能115cはその旨の情報を警告機能115dへと出力する(ステップS109、Yes)。また、判定機能115cは、閾値を下回るT2 *値が含まれないと判定すると、ステップS111に進み処理が終了する(ステップS109、No)。
警告機能115dは、判定機能115cから閾値を下回るT2 *値が含まれていた旨の情報を受け付けると、表示装置113を介して警告表示を行う(ステップS110)。
イメージングスキャンが終了すると(ステップS111)、記憶回路114に記憶された被検体P内のプロトンのNMR信号を用いて、データ処理機能115bは被検体P内のMR画像を生成し(ステップS112)、生成したMR画像を表示装置113上に表示する。
以上一連の処理を行なうことにより、ケーブル201や受信コイル109がMRI装置100の開口領域20の側壁に所定の距離以下に近づいた場合に、オペレータに対して警告を行うことが可能となる。これにより、オペレータはケーブル201及び受信コイル109の現状の配置の危険性を把握することができ、必要に応じて各プロトコルの終了後等にケーブル201や受信コイル109の配置を調整することが可能となる。
以上説明した一連の処理は一例であり、実施形態は上述の記載に限定されることはない。例えば、T2 *値の取得は、被検体Pに受信コイル109が取り付けられた状態でMRI装置100の開口領域内に配置され、且つMRI装置100によるスキャン開始前に行われても構わない。例えば、図10に示したフローチャートにおけるステップS103の直後にT2 *値を取得し、スキャン前にケーブル201及び受信コイル109が開口領域20の側壁に近すぎない所定の位置に配置されていることを確認することにしても構わない。
以上説明した実施形態により、MRI装置100の開口領域20内において受信コイル109及び受信コイル109に接続されたケーブル201の位置をオペレータが把握することが可能となり、開口領域20の側壁に受信コイル109及びケーブル201が近づきすぎた場合にはオペレータに対して警告を行うことが可能となる。また、受信コイル109及びケーブル201の位置情報の検出にT2 *値を用いることにより、磁場の変動が大きい開口領域20の側壁において安定的に位置情報の検出を行うことが可能となる。
(実施形態の変形例1)
以上説明した実施形態では、プロトンの共鳴周波数とは異なる共鳴周波数においてNMR信号を出力するコア材304に対して、当該コア材の共鳴周波数に対応したRFパルスを送信し、当該コア材304のT2 *値を取得し、その値を予め記憶回路114に記憶されたT2 *値に関する閾値と比較することでコア材304の位置を検出するものとして説明したが、実施形態は上述の構成に限定されない。
例えば、被検体PがMRI装置100の開口領域20内に配置されたスキャン前の状態においてT2 *値(第1のT2 *値)を取得しておき、第1のT2 *値をスキャン中におけるT2 *値(第2のT2 *値)と比較することでコア材304を格納したバラン202の移動を検出しても構わない。この場合、スキャン時におけるT2 *値がスキャン前におけるT2 *値と比較して小さな値となった場合に、当該バラン202が配置されたケーブル201又は受信コイル109が開口領域20の側壁に近付いたとして検出することが可能である。
図11は、上述した本変形例に係る処理の一例を示すフローチャートである。本フローチャートにおいて、ステップS201からステップS203に係る処理は、実施形態のフローチャートのステップS101からステップS103に係る処理と同じため説明を省略する。ステップS205からステップS208及びステップS211からステップS214に係る処理もステップS104からステップS107及びステップS110からステップS113に係る処理とそれぞれ同じであるため説明を省略する。
ステップS203に係る処理までが終了した状態において、ステップS204では被検体P内のプロトンを画像化する一連のスキャン開始前に、ケーブル201や受信コイル109の各部に取り付けられたコア材304のT2 *値を取得する。このとき取得されたコア材304のT2 *値(第1のT2 *値)は、後述するイメージングスキャン時に取得されるT2 *値(第2のT2 *値)と比較するために用いられる。
ステップS205からステップS208は、先述したステップS104からステップS
107に係る処理と同じため説明を省略する。
ステップS209において、イメージングスキャンの実行中にコア材304のT2 *値が再度取得される。第2のT2 *値の取得方法は、実施形態にて記載したT2 *値の取得方法と同じである。
ステップS210では、判定機能115cによって、ステップS209において取得された第2のT2 *値が、ステップS204にて取得された第1のT2 *値と比較される。判定機能115cは、第1のT2 *値と比較して第2のT2 *値が小さい値に変化した場合には、当該第2のT2 *値を出力したコア材304を有するバラン202がMRI装置100の開口領域20の内壁に近付いたとして検出する(ステップS210、YES)。
また、判定機能115cは、第2のT2 *値と第1のT2 *値とを比較して、変化が無い場合や、第2のT2 *値のほうが第1のT2 *値より大きい値の場合には、ステップS212へと進み処理が終了する。
以上説明した実施形態の変形例により、スキャン開始前と比較してT2 *値の値が小さい値になった場合に、コア材304を含んだケーブル201や受信コイル109がスキャン開始時に比べてMRI装置100の開口領域20の側壁に近付いたことを検出することが可能である。このとき、警告機能115dにより警告される内容は第2のT2 *値と第1のT2 *値の変化量に応じて変えても構わない。例えば、警告機能115dは、変化量が大きい場合には変化量が小さい場合よりも表示装置113に表示される警告表示をより大きく表示するように表示装置113を制御しても構わない。また、警告機能115dは、コア材304が配置された複数のバラン202の内、変化量が大きいT2 *値が取得されたバラン202に対応する光源を、変化量が小さいバラン202と判別可能なようにLED等で点灯、点滅表示させるように制御しても構わない。また、警告機能115dは、変化量の大小に応じてLED等で点滅させる色を変化させても構わない。例えば、警告機能115dは、変化量が大きいバラン202に対応する光源を赤色にて表示させ、変化量が小さいバラン202に対応する光源を黄色で表示させ、変化量が0である場合あるいは第2のT2 *値のほうが大きい値の場合には青色で表示させるなどしても構わない。
(実施形態の変形例2)
上述した変形例では、スキャン前に取得したT2 *値とスキャン中のT2 *値とを比較し、スキャン中に取得されたT2 *値がスキャン前よりも小さい値になった場合には警告を行うものとして説明した。本変形例では、開口領域20内における磁場の均一性が低い領域内においてバラン202が移動した場合について説明する。
図12は、開口領域20内における磁場の均一性の分布の一例を示す図である。図12は、開口領域20を床面に対して上方向から見た図である。
図12に示すように、開口領域20内では磁場の均一性が高い領域21と低い領域22が存在する。図12の磁場の均一性が低い領域22内において、コア材304を有するバラン202が移動し、開口領域20の側壁に近付くことも想定される。この場合、磁場の均一性の低い領域のみをコア材304は移動することになるため、取得されるT2 *値は、磁場の均一性の高い領域にて取得されるT2 *値よりも低い値を出力し続ける。また、上述した実施形態で説明した所定のT2 *値の閾値を超えることはないため、磁場均一性の低い領域22内において、バラン202が開口領域20の側壁に近付いたとしても、上述の実施形態の構成では検出することができない。
そのため、被検体Pが開口領域20内に挿入された状態にて、バラン202が磁場均一性の低い領域に存在する場合には、検査中にコア材304から取得されるT2 *値が時間変化し、T2 *値の時間変化が所定の値を超えた場合に、警告機能115dを実現する処理回路115は、警告を行っても構わない。これにより、磁場均一性の低い領域22内において、バラン202が開口領域20の側壁に近付いたとしても、警告を行うことが可能である。
具体的には、第2の送信コイルは、シーケンス制御回路111による制御の下で、異なる送信時刻で複数回に亘って、第2のRFパルスを上述した物質に送信する。第2の受信コイルは、上記送信時刻に応じた複数の第2のNMR信号を受信する。
記憶回路114は、上記所定の値を記憶する。
データ処理機能115bを実現する処理回路115は、複数の第2のNMR信号にそれぞれ対応する複数のT2 *値を計算する。次いで、データ処理機能115bを実現する処理回路115は、計算された複数のT2 *値に基づいて、T2 *値の時間変化を計算する。判定機能115cを実現する処理回路115は、計算された時間変化が所定の値を超えた場合に、警告を表示装置113等に出力する。
以上説明した実施形態では、バラン202は、ケーブル201及び受信コイル109に取り付けられるものとして説明したが、原理的にはバランを用いずに上述の実施形態を実施することは可能である。例えば、NMR信号を出すコア材304をバランケース303内ではなく、ケーブル201及び受信コイル109に直接取り付けておくことで、判定機能115cを実現する処理回路115は、ケーブル201及び受信コイル109がMRI装置100の開口領域20の側壁に近付いたことを検出することは可能である。
なお、以上説明した実施形態では、バラン202がMRI装置100の開口領域20の側壁に近付くと、警告機能115dにより警告を行うものとして説明を行なったが、警告機能115dは、表示装置113にバラン202に対応するコア材304のT2 *値のみを表示させることにしても構わない。この場合、オペレータは表示装置113に表示されるT2 *値の大小を読み取ってバラン202の位置を把握することが可能である。
(実施形態の変形例3)
上記実施形態、変形例1、変形例2によれば、いずれも物質のT2 *値を用いて判定、警告等を行っていたが、本変形例では、フッ素化合物等の第2の核種(フッ素等)を含む物質からの第2のNMR信号の強度を用いて、判定、警告等を行うことにある。
データ処理機能115bを実現する処理回路115は、所定の周波数帯域を透過させる帯域通過フィルタ(Band Pass Filter)を有する。処理回路115は、第2のNMR信号に対して帯域通過フィルタを適用することにより、第2のNMR信号のうち所定の周波数帯域に含まれる信号を抽出する。ここで、所定の周波数帯域とは、例えば、第2の核種に関する共鳴周波数を中心周波数とした所定の周波数帯域である。この周波数帯域には、第1の核種(プロトン等)に関する共鳴周波数が包含されないことが好ましい。これにより、所定の周波数帯域を通過した信号は、主として第2の核種の共鳴周波数近傍の信号となる。このため、所定の周波数帯域を通過した信号の強度は、コア材304すなわち物質に含まれる第2の核種の総数および物質が位置する静磁場B0を反映した値となる。
判定機能115cを実現する処理回路115は、所定の周波数帯域を通過した第2のNMR信号の強度が基準値よりも小さいか否かを判定する。基準値は、撮像空間におけるバラン202近傍の物質の位置に応じた、所定の周波数帯域を通過した第2のNMR信号の強度に関する値であって、記憶回路114に記憶される。
処理回路115は、例えば、バラン202が撮像空間において第1の送信コイル107から離れた状態で、第2の送信コイルから物質に第2のRFパルスを送信することによって得られる第2のNMR信号のうち上記周波数帯域に含まれる信号の強度を、基準値として設定する。
警告機能115dを実現する処理回路115は、第2のNMR信号のうち上記周波数帯域に含まれる信号の強度が基準値よりも小さい場合に警告を出力する。
本変形例によれば、上記実施形態、変形例1および変形例2における効果に加えて以下に示す効果を奏する。
本変形例における磁気共鳴イメージング装置100によれば、第2のNMR信号のうち所定の周波数帯域に含まれる信号の強度が基準値よりも小さい場合に警告を出力することができる。また、本磁気共鳴イメージング装置100によれば、バラン202が撮像空間において第1の送信コイル107から所定の距離離れた状態で、第2の送信コイルから物質に第2のRFパルスを送信した結果得られる周波数帯域における強度を、基準値として設定することができる。これらのことから、本磁気共鳴イメージング装置100によれば第2のNMR信号に基づいてT2 *値を計算する必要がないため、警告の出力対するスループットを向上させることができる。
また、以上説明した実施形態ではMRI装置100の送信コイル107と受信コイル109は別体にて構成されるものとして説明したが、送信コイル107と受信コイル109の機能を兼ね備えた送受信コイルを用いることにしても構わない。この場合、当該送受信コイルは、プロトンの共鳴周波数に対応したRFパルスの送信と、プロトンからのNMR信号を取得する機能を兼ね備える。
なお、以上説明した実施形態において「部」として説明した構成要素は、その動作がハードウェアによって実現されるものであってもよいし、ソフトウェアによって実現されるものであってもよいし、ハードウェアとソフトウェアとの組み合わせによって実現されるものであってもよい。
また、上記説明において用いた「プロセッサ」という文言は、例えば、CPU(central processing unit)、GPU(Graphical Processing Unit)、或いは、特定用途向け集積回路(Application Specific Integrated Circuit:ASIC))、プログラマブル論理デバイス(例えば、単純プログラマブル論理デバイス(Simple Programmable Logic Device:SPLD)、複合プログラマブル論理デバイス(Complex Programmable Logic Device:CPLD)、及びフィールドプログラマブルゲートアレイ(Field Programmable Gate Array:FPGA)等の回路を意味する。プロセッサは記憶回路114に保存されたプログラムを読み出し実行することで機能を実現する。なお、記憶回路114にプログラムを保存する代わりに、プロセッサの回路内にプログラムを直接組み込むように構成しても構わない。この場合、プロセッサは回路内に組み込まれたプログラムを読み出し実行することで機能を実現する。なお、本実施形態の各プロセッサは、プロセッサごとに単一の回路として構成される場合に限らず、複数の独立した回路を組み合わせて1つのプロセッサとして構成し、その機能を実現するようにしても良い。さらに、図1における複数の構成要素を1つのプロセッサへ統合してその機能を実現するようにしても良い。
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することを意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これらの実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると共に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。