以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。以下に記載する実施形態の構成、ならびに当該構成によってもたらされる作用および結果(効果)は、あくまで一例であって、以下の記載内容に限られるものではない。
まず、実施形態の構成について説明する。
図1は、実施形態による車両100の概略構成を示した例示的なブロック図である。以下では、一例として、前輪FLおよびFRと、後輪RLおよびRRと、を有した4輪の自動車としての車両100に実施形態の技術を適用する例について説明する。また、以下では、特に区別する必要が無い場合、前輪FLおよびFRと後輪RLおよびRRとを単に車輪と標記することがある。
図1に示されるように、実施形態による車両100は、ドライバによるブレーキペダル3の踏み込み操作に応じて制動力を発生させるサービスブレーキ1と、ドライバによるEPB(Electric Parking Brake)スイッチ23の操作に応じてサービスブレーキ1とは別個に制動力を発生させる電動駐車ブレーキ2と、の2種類のブレーキ機構を有している。
図1に示される例では、サービスブレーキ1は、前輪FLおよびFRと、後輪RLおよびRRと、の両方に制動力を付与するように構成されており、電動駐車ブレーキ2は、後輪RLおよびRRのみに制動力を付与するように構成されている。なお、詳細は後述するが、サービスブレーキ1および電動駐車ブレーキ2は、いずれも、車輪とともに回転するブレーキディスク12にブレーキパッド11を押し付けることで、車輪に摩擦力による制動力を付与するような構造になっている。
より具体的に、サービスブレーキ1は、ドライバによるブレーキペダル3の踏み込みに基づいてマスタシリンダ5内に液圧を発生させ、当該マスタシリンダ5内の液圧を、各車輪に設けられるホイールシリンダ6に伝達することで、各車輪に液圧による制動力を付与する。なお、図1に示される例では、ブレーキペダル3の踏み込み力がブレーキブースタ4によって増幅されるので、マスタシリンダ5内には、ブレーキブースタ4によって増幅された踏み込み力に応じた液圧が発生する。
また、図1に示される例では、マスタシリンダ5とホイールシリンダ6との間に、液圧制御回路7が設けられている。この液圧制御回路7は、電磁弁やポンプなどを含み、サービスブレーキ1による制動力の調整などといった、車両100の安全性を向上させるためのESC(Electronic Stability Control)などといった各種の制御を実現する。また、液圧制御回路7は、ESC−ECU(Electronic Control Unit)8の制御に基づいて駆動する。
一方、電動駐車ブレーキ2は、キャリパ13に設けられるEPBモータ10をEPB−ECU9の制御に基づいて駆動することで、後輪RLおよびRRに、サービスブレーキ1による制動力とは別個の制動力を付与する。したがって、図1に示される例では、以下に説明するように、後輪RLおよびRRには、サービスブレーキ1による制動力と、電動駐車ブレーキ2による制動力と、の双方が付与されうる。
図2は、実施形態による車両100の後輪RLおよびRRに設けられるブレーキ機構の構成を示した例示的な断面図である。図2には、後輪RLおよびRRのキャリパ13内の構造の具体例が示されている。
まず、サービスブレーキ1によって制動力が増減するメカニズムについて簡単に説明する。
図2に示されるように、実施形態では、ホイールシリンダ6のボディ14に、当該ボディ14の内側の中空部14aにブレーキ液を導入する孔部14bが設けられている。中空部14aには、ボディ14の内周面に沿って往復移動可能なピストン19が設けられている。ピストン19は、有底筒状に構成されており、ピストン19の底部には、ブレーキディスク12に面するブレーキパッド11が設けられている。
ここで、ホイールシリンダ6のボディ14の内側には、ピストン19の外周面とボディ14の内周面との間からブレーキ液が外に漏れるのを抑制するためのシール部材22が設けられている。これにより、中空部14aに発生する液圧は、ピストン19のブレーキパッド11とは反対側の端面に付与される。
このような構造により、サービスブレーキ1の操作としてブレーキペダル3の踏み込み操作が行われると、中空部14a内にブレーキ液による液圧が発生し、ブレーキパッド11を押圧する方向(図2の紙面左方向)にピストン19が移動する。そして、ピストン19がブレーキパッド11を押圧する方向に移動すると、ブレーキパッド11がブレーキディスク12に接触して押し付けられ、当該ブレーキディスク12に対応した車輪に、摩擦力による制動力が付与される。
逆に、サービスブレーキ1の操作としてブレーキペダル3の踏み込みを解除する操作が行われると、中空部14a内の液圧が減少し、ブレーキパッド11の押圧を解除する方向(図2の紙面右方向)にピストン19が移動する。そして、ピストン19がブレーキパッド11の押圧を解除する方向に移動すると、ブレーキパッド11のブレーキディスク12への押し付け力が弱められ、当該ブレーキディスク12に対応した車輪に付与された制動力が減少する。なお、ブレーキパッド11がブレーキディスク12から完全に離れると、当該ブレーキディスク12に付与される制動力はゼロとなる。
次に、電動駐車ブレーキ2によって制動力が増減するメカニズムについて簡単に説明する。
図2に示されるように、実施形態では、ホイールシリンダ6のボディ14に、EPBモータ10が固定されている。このEPBモータ10の駆動軸10aには、平歯車15が接続されている。これにより、EPBモータ10が駆動されて駆動軸10aが回転すると、当該駆動軸10aを回転中心として平歯車15も回転する。
また、平歯車15には、回転軸17を有した平歯車16が噛み合わされている。回転軸17は、平歯車16の回転中心に位置しており、ホイールシリンダ6のボディ14の挿入孔14cに挿入された状態で、当該挿入孔14cに設けられたOリング20および軸受け21によって支持されている。
ここで、回転軸17の平歯車16とは反対側の端部の外周面には、雄ネジ溝17aが形成されている。この雄ネジ溝17aは、ピストン19の内側で往復移動する有底筒状の直動部材18の内周面に設けられる雌ネジ溝18aと螺合する。これにより、EPBモータ10の駆動によって平歯車15が回転すると、平歯車16とともに回転軸17が回転し、雄ネジ溝17aと雌ネジ溝18aとの噛合いにより、直動部材18が回転軸17の軸方向に往復移動する。
なお、直動部材18は、回転軸17との関係での回り止め構造を有することで、回転軸17が回転しても当該回転軸17と共には回転しないような構造となっている。同様に、ピストン19も、直動部材18との関係での回り止め構造を有することで、仮に直動部材18が回転軸17を中心として回転しても当該直動部材18と共には回転しないような構造となっている。
このように、実施形態では、EPBモータ10の回転をピストン19の内側での直動部材18の往復移動に変換する運動変換機構が設けられている。なお、直動部材18は、EPBモータ10の駆動が停止されると、雄ネジ溝17aと雌ネジ溝18aとの噛合いによる摩擦力により、同じ位置で止まるようになっている。
このような構造により、電動駐車ブレーキ2の作動時においてEPBモータ10が正方向に回転すると、直動部材18がピストン19に当接する方向(図2の紙面左方向)に移動する。そして、ブレーキパッド11がブレーキディスク12に押し付けられた状態で直動部材18とピストン19とが当接すると、直動部材18によってピストン19が支持されるので、たとえブレーキペダル3(図1参照)の踏み込みが解除されて中空部14aの液圧が減少したとしても、車輪に付与されている制動力は保持(ロック)される。
逆に、EPBモータ10が逆方向に回転すると、直動部材18がピストン19から離れる方向(図2の紙面右方向)に移動する。そして、直動部材18がピストン19から離れると、その分、ピストン19によるブレーキパッド11のブレーキディスク12への押し付けが弱まり、車輪に付与されている制動力が解放(リリース)されていく。
このように、実施形態では、後輪RLおよびRRに設けられるブレーキ機構が、サービスブレーキ1と電動駐車ブレーキ2とで共用される。
図1に戻り、ESC−ECU8は、プロセッサやメモリなどといったコンピュータ資源を有しており、メモリなどに記憶されたプログラムをプロセッサによって実行することで、液圧制御回路7を制御するための各種の機能を実現する。ESC−ECU8は、車載ネットワークなどを介して、EPB−ECU9と通信可能に接続されている。
また、ESC−ECU8と同様に、EPB−ECU9も、プロセッサやメモリなどといったコンピュータ資源を有しており、メモリなどに記憶されたプログラムをプロセッサによって実行することで、EPBモータ10を制御するための各種の機能を実現する。
ここで、実施形態において、EPB−ECU9は、EPBスイッチ23の操作状態(オン/オフ)に応じた信号や、車両100の前後方向の加速度を検出する前後加速度センサ24の検出値や、マスタシリンダ5の液圧を検出する液圧センサ25の検出値などの情報を取得し、取得した情報を、EPBモータ10の制御に利用することが可能なように構成されている。
さらに、実施形態において、EPB−ECU9は、制動力のロックの状態を通知するためのロック表示ランプ26を制御することが可能なように構成されている。たとえば、EPB−ECU9は、電動駐車ブレーキ2による制動力のロックが完了した場合、ロック表示ランプ26を点灯し、電動駐車ブレーキ2による制動力のロックが完了していない場合、ロック表示ランプ26を消灯する制御を実行する。
ところで、サービスブレーキ1と電動駐車ブレーキ2とで共用される図2に示されたようなブレーキ機構では、サービスブレーキ1によって発生するホイールシリンダ6内の液圧が通常想定される範囲を超えて大きくなっている状況で、電動駐車ブレーキ2による制動力のロックが行われると、液圧が解除された際に、直動部材18などといった電動駐車ブレーキ2の機構に過大な負荷が発生することがある。
そこで、実施形態によるEPB−ECU9は、メモリなどに記憶された所定の制御プログラムをプロセッサによって実行し、次のような機能を有したブレーキ制御装置300を実現することで、ホイールシリンダ6内の液圧が通常想定される範囲を超えて大きくなっている状況で電動駐車ブレーキ2が作動した場合でも、電動駐車ブレーキ2の機構に過大な負荷が発生するのを抑制する。
図3は、実施形態によるブレーキ制御装置300の機能を示した例示的なブロック図である。図3に示されるように、実施形態によるブレーキ制御装置300は、センサ情報取得部301と、アクチュエータ制御部302と、記憶部303と、を備えている。なお、実施形態では、図3に示された機能の一部または全部が、専用のハードウェア(回路)によって実現されてもよい。
センサ情報取得部301は、前後加速度センサ24や液圧センサ25などといった、車両100に設けられる各種のセンサの出力値を取得する。前後加速度センサ24の出力値からは、車両100が位置している路面の勾配などを算出可能であり、液圧センサ25の出力値からは、ブレーキペダル3の踏み込み操作に応じてホイールシリンダ6内に発生している液圧を算出可能である。
アクチュエータ制御部302は、EPBモータ10を制御する。たとえば、アクチュエータ制御部302は、EPBモータ10を正回転させたり逆回転させたり停止させたりすることが可能である。
記憶部303は、ブレーキ制御装置300によって実行される各種の処理に用いられるデータを記憶する。たとえば、記憶部303は、第1マップ(MAP1)303aと、第2マップ(MAP2)303bと、第3マップ(MAP3)303cと、第4マップ(MAP4)303dと、の4種類のマップ情報を記憶する。以下、これら4種類のマップ情報の詳細について説明する。
図4は、実施形態による第1マップ303aを示した例示的な図である。図4に示されるように、第1マップ303aは、路面の勾配と、目標電流と、の対応関係を設定している。
第1マップ303aで設定される目標電流は、電動駐車ブレーキ2による制動力のロックを実現するためのロック制御処理の実行時にEPBモータ10に与える電流の目標値を意味する。したがって、実施形態によるアクチュエータ制御部302は、EPBスイッチ23の操作に応じてロック制御処理を実行する場合、センサ情報取得部301によって取得される情報、より具体的には前後加速度センサ24の出力値に基づいて算出される路面の勾配を引数として第1マップ303aを参照することで、EPBモータ10を正回転させるために与えるべき目標電流を取得する。
ところで、サービスブレーキ1による液圧が大きい状態でロック制御処理を実行すると、液圧の作用によってピストン19がブレーキパッド11を押圧する方向に既に大きく移動している分、直動部材18がピストン19に当接するまでに時間が掛かる。また、EPBモータ10の電流値は、直動部材18がピストン19に当接するまでは略一定値(無負荷電流)を保つが、直動部材18がピストン19に当接して負荷が発生すると、当該負荷に応じて上昇する。
したがって、EPBモータ10に与える目標電流を状況によらず常に一定として制御すると、サービスブレーキ1による液圧が大きい状態でロック制御処理を実行する上記のような状況では、ブレーキパッド11を押圧する方向に既に大きく移動しているピストン19が、目標電流に応じた量だけ直動部材18によってさらに押し込まれることになる。この場合、ピストン19の押し込みによる制動力のロックが完了した後に液圧を解除すると、直動部材18を含む電動駐車ブレーキ2の機構に大きな負荷がかかる。
そこで、実施形態は、サービスブレーキ1による液圧の影響によって発生しうる上記のような大きな負荷を抑制するため、ロック制御処理の実行時に第1マップ303aを用いて取得される目標電流を、第2マップ303bを用いて補正する。
図5は、実施形態による第2マップ303bを示した例示的な図である。図5に示されるように、第2マップ303bは、マスタシリンダ5内の液圧を意味するM/C圧と、目標電流減算値と、の対応関係を設定している。
第2マップ303bで設定される目標電流減算値は、上記の第1マップ303aを用いて取得された目標電流を補正するために用いられる値である。つまり、実施形態によるアクチュエータ制御部302は、センサ情報取得部301によって取得される情報、より具体的には液圧センサ25の出力値が示す液圧を引数として第2マップ303bを参照することで、液圧に応じた目標電流減算値を取得し、取得した目標電流減算値を、上記の第1マップ303aを用いて取得した目標電流の値から差し引いたものを、補正後の目標電流として設定する。
ただし、液圧が通常想定される範囲を超えるほど大きい場合は、補正後の目標電流の値が、EPBモータ10に負荷が発生していない状態の無負荷電流の値よりも小さくなってしまう場合もありうる。しかしながら、EPBモータ10を正回転させるためには、無負荷電流よりも大きい目標電流をEPBモータ10に与える必要がある。
そこで、実施形態によるアクチュエータ制御部302は、ロック制御処理を実行する場合、上記の第1マップ303aおよび第2マップ303bに基づいて求めた補正後の目標電流の値と、無負荷電流に所定値を加えた電流値と、のうちいずれか大きい方を、真の目標電流としてEPBモータ10に与える。
ところで、上述したように、補正後の目標電流の値が無負荷電流の値よりも小さいという状況は、液圧が通常想定される範囲を超える程大きい状況を意味している。したがって、補正後の目標電流の値が無負荷電流の値よりも小さい場合、制動力のロック後に液圧が解除されると、直動部材18を含む電動駐車ブレーキ2の機構に所定以上の大きな負荷がかかる可能性が高いと考えられる。
そこで、実施形態によるアクチュエータ制御部302は、ピストン19を押し込む方向に直動部材18を移動させるロック制御処理の実行時において、補正後の目標電流の値が無負荷電流の値よりも小さい場合、直動部材18を含む電動駐車ブレーキ2の機構に所定以上の負荷が発生すると判定する。
そして、アクチュエータ制御部302は、電動駐車ブレーキ2の機構に所定以上の負荷が発生すると判定された場合、その負荷を解放するため、ロック制御処理が完了した後、直動部材18を逆方向に移動させる、つまりピストン19の押し込みを解除する方向に直動部材18を戻す負荷解放制御処理を実行するように、EPBモータ10を駆動する。そして、アクチュエータ制御部302は、負荷解放制御処理が完了した後は、直動部材18の位置を保持するように、EPBモータ10の駆動を停止する。
ここで、負荷解放制御処理によって解放しようとしている負荷は、ロック制御処理の実行時に通常想定される範囲を超えた液圧が発生していることに起因するものであるため、負荷の適切な解放を実現するためには、負荷解放制御処理の終了タイミングを、液圧を考慮して設定する必要がある。したがって、実施形態によるアクチュエータ制御部302は、液圧センサ25の出力値が示す液圧を考慮して設定された移動量だけ直動部材18を移動させるように、負荷解放制御処理を実行する。
すなわち、実施形態によるアクチュエータ制御部302は、液圧センサ25の出力値が示す液圧が大きい程、直動部材18の移動量(戻し量)を大きく設定する。なお、直動部材18の移動量を大きく設定するためには、EPBモータ10の駆動時間を長く設定すればよい。したがって、アクチュエータ制御部302は、以下に説明する第3マップ303cを用いて、液圧センサ25の出力値が示す液圧が大きい程、負荷解放制御処理におけるEPBモータ10の駆動時間を長く設定することで、直動部材18の移動量を大きく設定する。
図6は、実施形態による第3マップ303cを示した例示的な図である。図6に示されるように、第3マップ303cは、マスタシリンダ5内の液圧を意味するM/C圧と、負荷解放制御終了時間と、の対応関係を設定している。
第3マップ303cで設定される負荷解放制御終了時間は、負荷解放制御処理の実行時間、つまり負荷解放制御処理におけるEPBモータ10の駆動時間を意味する。第3マップ303cは、M/C圧が大きい程、負荷解放制御終了時間が長くなるように設定されている。これにより、実施形態によるアクチュエータ制御部302は、液圧センサ25の出力値が示す液圧を引数として第3マップ303cを参照し、液圧が大きいほど長く設定された負荷解放制御終了時間を取得することで、適切なタイミングで負荷解放制御処理を終了することが可能になる。
ところで、ドライバによるブレーキペダル3の踏み込みが解除されるタイミングによっては、サービスブレーキ1による液圧が発生した状態で負荷解放制御処理を実行する状況が起こりうる。
上記のような状況において、サービスブレーキ1による液圧が比較的大きい場合は、負荷解放制御処理の実行時に、直動部材18におけるピストン19を押し込む面がピストン19から離れるため、EPBモータ10の出力がそれほど大きくならない。したがって、この場合、第3マップ303cを用いて取得した負荷解放制御終了時間が経過したタイミングでEPBモータ10の駆動を停止すれば、直動部材18を適切な位置で停止させることが可能である。
一方、上記のような状況において、サービスブレーキ1による液圧が比較的小さい場合は、負荷解放制御処理の実行時に、直動部材18がピストン19に当接し、ピストン19によって直動部材18が押し込まれるため、EPBモータ10の出力が大きくなりやすい。したがって、実施形態は、サービスブレーキ1による液圧が比較的小さい状態で負荷解放制御処理を実行する場合、EPBモータ10の出力に基づいてEPBモータ10を制御する。
ここで、第3マップ303cを用いて取得した負荷解放制御終了時間が経過したタイミングでEPBモータ10の駆動を停止すると、オーバーシュートによって直動部材18が戻り過ぎて、制動力が不足するおそれがある。
そこで、実施形態は、負荷解放制御処理の実行時に、以下に説明する第4マップ303dを用いた所定の判断処理を実行することで、EPBモータ10のオーバーシュートの影響を考慮した、適切なタイミングでの負荷解放制御処理の終了を実現する。
図7は、実施形態による第4マップ303dを示した例示的な図である。図7に示されるように、第4マップ303dは、EPBモータ10の駆動電圧を意味するモータ駆動電圧と、目標電流加算値と、の対応関係を設定している。
第4マップ303dで設定される目標電流加算値は、上記の第1マップ303aを用いて取得された目標電流の値に加算されることで、負荷解放制御処理の実行時にEPBモータ10の駆動を停止するか否かを判定するための閾値として用いられる。この閾値は、EPBモータ10のオーバーシュートを考慮したものである。すなわち、この閾値は、EPBモータ10の電流値が閾値よりも大きい状態から徐々に低下する場合、当該電流値が閾値に達したタイミングでEPBモータ10の駆動を停止すれば、EPBモータ10のオーバーシュートが起こったとしても、直動部材18の戻り過ぎを抑制することが可能になるように設定された値である。
したがって、実施形態によるアクチュエータ制御部302は、負荷解放制御処理の実行時に、EPBモータ10の駆動電圧を引数として第4マップ303dを参照することで目標電流加算値を取得し、取得した目標電流加算値を上記の第1マップ303aを用いて取得された目標電流の値に加算することで閾値を算出する。そして、アクチュエータ制御部302は、負荷解放制御処理の実行時に、EPBモータ10の電流値を監視し、当該電流値が上記の閾値を上回った状態から下回った状態に移行した場合、上記の第3マップ303cを用いて取得された負荷解放制御終了時間の経過前であっても、EPBモータ10の駆動を停止する。
次に、実施形態の制御動作について説明する。
図8は、実施形態によるブレーキ制御装置300が実行する一連の処理を示した例示的なフローチャートである。この図8の処理フローは、たとえば車両100の駐車時に実行される。
図8に示されるように、実施形態では、まず、S801において、ブレーキ制御装置300は、後述する各種タイマのカウントや各種フラグなどといった、制御に用いる各種データを初期化(リセット)する。
そして、S802において、ブレーキ制御装置300は、制御周期に対応した所定の時間tが経過したか否かを判断する。このS802の処理は、時間tが経過したと判断されるまで繰り返される。そして、S802において、時間tが経過したと判断された場合、S803に処理が進む。
S803において、ブレーキ制御装置300は、ロック制御処理の実行時間をカウントするロック駆動時間タイマ(CLT)のカウントがゼロより大きいという条件と、負荷解放制御処理の実行時間をカウントするリリース駆動時間タイマ(CRT)のカウントがゼロより大きいという条件と、のうち少なくとも一方が成立しているか否かを判断する。
S803において、CLT>0という条件と、CRT>0という条件と、の両方が成立していないと判断された場合、S804に処理が進む。一方、S803において、CLT>0という条件と、CRT>0という条件と、のうち少なくとも一方が成立していると判断された場合、S805に処理が進む。
S804において、ブレーキ制御装置300は、電動駐車ブレーキ2を作動させるための操作が行われたか否か、より具体的にはEPBスイッチ23をオンにする操作が行われたか否かを判断する。
S804において、EPBスイッチ23をオンにする操作が行われたと判断された場合、S805に処理が進む。一方、S804において、EPBスイッチ23をオンにする操作が行われていないと判断された場合、S809に処理が進む。
S805において、ブレーキ制御装置300は、制動力のロックの状態を示すロック状態フラグ(FLOCK)がオンになっているか否か、つまりロック制御処理(および負荷解放制御処理)の完了によって制動力が保持された状態になっているか否かを判断する。
S805において、FLOCKがオンになっていると判断された場合、S809に処理が進む。一方、S805において、FLOCKがオフになっていると判断された場合、S806に処理が進む。
S806において、ブレーキ制御装置300は、EPBモータ10を正回転させることで直動部材18によってピストン19をブレーキパッド11の方向に押し込むためのロック制御処理を実行する。ロック制御処理の詳細は、次の通りである。
図9は、実施形態によるブレーキ制御装置300が実行するロック制御処理の詳細を示した例示的なフローチャートである。
図9に示されるように、ロック制御処理では、まず、S901において、ブレーキ制御装置300は、所定の電流値上昇フラグ(FIUPS)がオフになっているか否かを判断する。FIUPSとは、直動部材18がピストン19に当接してEPBモータ10に負荷が発生することでEPBモータ10の電流値が上昇し始めたか否かを示すフラグである。FIUPSがオフの状態は、EPBモータ10の電流値が無負荷電流の値を保っている状態に対応する。
S901において、FIUPSがオフになっていると判断された場合、S902に処理が進む。一方、S901において、FIUPSがオンになっていると判断された場合、S909に処理が進む。
S902において、ブレーキ制御装置300は、EPBモータ10を正回転させるために与える目標電流(TMIUP)として、路面の勾配を引数として第1マップ303aから取得した目標電流を設定する。
そして、S903において、ブレーキ制御装置300は、CLTのカウントが、EPBモータ10の正回転の開始時に発生する突入電流が終了するのに要する時間(MINRT)よりも大きいか否かを判断する。なお、CLTが何を指しているかについては既に説明したため、ここでは説明を省略する。
S903において、CLTのカウントがMINRT以下であると判断された場合、S904に処理が進む。そして、S904において、ブレーキ制御装置300は、FLOCKをオフに設定する処理と、CLTのカウントをインクリメントする処理と、ロック制御処理のためのEPBモータ10の正回転駆動(モータロック駆動)を継続する処理と、を実行する。なお、FLOCKが何を指しているかについては既に説明したため、ここでは説明を省略する。
このように、突入電流が発生している期間は、EPBモータ10の電流値が目標値に達したか否かの判断の根拠とならないので、ブレーキ制御装置300は、突入電流が終了するまでは、特に何らの判断も行うことなく、モータロック駆動を継続する。
一方、S903において、CLTのカウントがMINRTよりも大きいと判断された場合、S905に処理が進む。そして、S905において、ブレーキ制御装置300は、EPBモータ10の電流値の変化の勾配を表す微分値(ID)が、所定の閾値(IDB)より大きいか否かを判断する。
S905において、IDがIDB以下であると判断された場合、EPBモータ10の電流値がほとんど変化していない、つまりEPBモータ10の電流値が無負荷電流の値を保っているといえる。ここで、EPBモータ10の電流値が無負荷電流の値を保っている状態は、直動部材18がピストン19に当接する位置までまだ到達していない状態に対応する。したがって、この場合、S904に処理が進み、当該S904において、モータロック駆動が継続される。
一方、S905において、IDがIDBより大きいと判断された場合、EPBモータ10の電流値が無負荷電流の値から上昇し始めたといえる。したがって、この場合、S906において、ブレーキ制御装置300は、FIUPSをオンに設定する。
そして、S907において、ブレーキ制御装置300は、センサ情報取得部301を用いてマスタシリンダ5内の液圧(M/C圧)を取得し、当該M/C圧がゼロより大きいか否かを判断する。
S907において、M/C圧がゼロより大きいと判断された場合、ホイールシリンダ6内にも液圧が発生しているといえる。この場合、前述したように、EPBモータ10に与える目標電流を補正する必要がある。ただし、この場合、前述したように、目標電流は、無負荷電流を下回らないように設定する必要がある。
したがって、S907においてM/C圧がゼロより大きいと判断された場合、S908に処理が進み、当該S908において、ブレーキ制御装置300は、S902で設定した目標電流としてのTMIUPとして、第1マップ303aの値から第2マップ303bの値を差し引いた値と、無負荷電流(NOC)に所定値(α)を加えた値と、のうちいずれか大きい方を設定する。さらに、S908において、ブレーキ制御装置300は、M/C圧を引数として第3マップ303cを参照することで、今後実行すべき負荷解放制御処理の実行時間としての負荷解放制御終了時間(TREND)を決定する。そして、S909に処理が進む。
一方、S907において、M/C圧がゼロであると判断された場合、ホイールシリンダ6内には液圧が発生していないといえる。したがって、この場合、S908のような目標電流の補正などを実行する必要がないと言えるので、S908をスキップしてS909に処理が進む。
S909において、ブレーキ制御装置300は、EPBモータ10の現在の電流値(MI)が、S902またはS908で設定したTMIUPより大きいか否かを判断する。
S909において、MIがTMIUP以下であると判断された場合、TMIUPに応じた位置まで直動部材18が到達していないといえる。したがって、この場合、S904に処理が進み、当該S904において、モータロック駆動が継続される。
一方、S909において、MIがTMIUPよりも大きいと判断された場合、TMIUPに応じた位置まで直動部材18が既に到達したといえる。したがって、この場合、負荷解放制御処理をさらに実行する必要があるか否かを判断するため、S910に処理が進む。
S910において、ブレーキ制御装置300は、S908において目標電流の候補として算出した、第1マップ303aの値から第2マップ303bの値を差し引いた値が、NOC以上であるか否かを判断する。
S910において、第1マップ303aの値から第2マップ303bの値を差し引いた値がNOC以上であると判断された場合、前述したように、ホイールシリンダ6内の液圧が通常想定される範囲を超える程には大きくないといえる。したがって、この場合、直動部材18を含む電動駐車ブレーキ2の機構に所定以上の負荷は発生しないので、以降の処理において負荷解放制御処理をさらに実行する必要はない。
そこで、S910において、第1マップ303aの値から第2マップ303bの値を差し引いた値がNOC以上であると判断された場合、S911に処理が進む。そして、S911において、ブレーキ制御装置300は、FLOCKをオンに設定する処理と、CLTのカウントをゼロにリセットする処理と、モータロック駆動を停止する処理と、FIUPSをオフに設定する処理と、TMIUPをゼロにリセットする処理と、を実行する。これにより、直動部材18がこれ以上ピストン19を押し込むように移動することが無くなり、直動部材18の位置が保持される。
一方、S910において、第1マップ303aの値から第2マップ303bの値を差し引いた値がNOCより小さいと判断された場合、前述したように、ホイールシリンダ6内の液圧が通常想定される範囲を超えているといえる。したがって、この場合、直動部材18を含む電動駐車ブレーキ2の機構に所定以上の負荷が発生するので、以降の処理において負荷解放制御処理をさらに実行する必要がある。
そこで、S910において、第1マップ303aの値から第2マップ303bの値を差し引いた値がNOCより小さいと判断された場合、S912に処理が進む。そして、S912において、ブレーキ制御装置300は、MAXFをオンに設定する。
そして、S913において、ブレーキ制御装置300は、FLOCKをオフに設定する処理と、CLTのカウントをゼロにリセットする処理と、モータロック駆動を停止する処理と、FIUPSをオフに設定する処理と、TMIUPをゼロにリセットする処理と、を実行する。これにより、S911の処理と同様に、直動部材18がこれ以上ピストン19を押し込むように移動することが無くなり、直動部材18の位置が保持されるという結果が得られる。
ただし、S912およびS913の処理では、S911の処理とは異なり、以降の処理において実行される負荷解放制御処理に備えて、MAXFがオンに設定され、FLOCKがオフに設定されるという結果が得られる。
そして、S904、S911、またはS913の処理が終了すると、ロック制御処理が終了する。
図8に戻り、S806のロック制御処理が終了すると、S807に処理が進む。そして、S807において、ブレーキ制御装置300は、直動部材18などの電動駐車ブレーキ2の機構に発生する負荷の状態を示すフラグ(MAXF)がオンになっているか否か、つまり電動駐車ブレーキ2の機構に所定状の負荷が発生するか否かを判断する。
S807において、MAXFがオフになっていると判断された場合、S809に処理が進む。一方、S807において、MAXFがオンになっていると判断された場合、S808に処理が進む。
S808において、ブレーキ制御装置300は、EPBモータ10を逆回転させることで直動部材18によるピストン19の押し込みを解除するための負荷解放制御処理を実行する。負荷解放制御処理の詳細は、次の通りである。
図10は、実施形態によるブレーキ制御装置300が実行する負荷解放制御処理の詳細を示した例示的なフローチャートである。
図10に示されるように、負荷解放制御処理では、まず、S1001において、ブレーキ制御装置300は、CRTのカウントがMINRTより大きいか否かを判断する。なお、MINRTは、EPBモータ10の逆回転の開始時に発生する突入電流が終了するのに要する時間である。
S1001において、CRTのカウントがMINRT以下であると判断された場合、S1002に処理が進む。そして、S1002において、ブレーキ制御装置300は、FLOCKをオフに設定する処理と、CRTのカウントをインクリメントする処理と、負荷解放制御処理のためのEPBモータ10の逆回転駆動(モータリリース駆動)を継続する処理と、を実行する。なお、FLOCKが何を指しているかについては既に説明したため、ここでは説明を省略する。
一方、S1001において、CRTのカウントがMINRTより大きいと判断された場合、S1003に処理が進む。そして、S1003において、ブレーキ制御装置300は、CRTのカウントが、上記のロック制御処理において設定されたTRENDよりも大きいか否かを判断する。
S1003において、CRTのカウントがTRENDよりも大きいと判断された場合、S1004に処理が進む。そして、S1004において、ブレーキ制御装置300は、FLOCKをオンに設定する処理と、CRTをゼロにリセットする処理と、モータリリース駆動を停止する処理と、を実行する。これにより、直動部材18がこれ以上ピストン19の押し込みを解除するように移動することが無くなり、直動部材18の位置が保持される。
一方、S1003において、CRTのカウントがTREND以下であると判断された場合、S1005に処理が進む。そして、S1005において、ブレーキ制御装置300は、MIの前回値が、第1マップ303aおよび第4マップ303dを用いて設定された前述の閾値よりも大きいという条件と、MIの今回値が当該閾値以下であるという条件と、の両方が成立するか否かを判断する。この閾値は、前述したように、EPBモータ10のオーバーシュートを考慮して設定されたものであり、第1マップ303aから取得される目標電流の値に、第4マップ303dから取得される目標電流加算値を加算することで算出される。
S1005において、上記の2つの条件の両方が成立すると判断された場合、つまりEPBモータ10の電流値が、第1マップ303aおよび第4マップ303dを用いて設定された閾値を上回った状態から下回った状態に移行したと判断された場合、S1004に処理が進む。
一方、S1005において、上記の2つの条件の少なくとも一方が成立しないと判断された場合、S1002に処理が進む。
そして、S1002またはS1004の処理が終了すると、負荷解放制御処理が終了する。
このように、図10に示される処理フローでは、直動部材18がこれ以上ピストン19の押し込みを解除するように移動することが無くなり、直動部材18の位置が保持されるS1004の処理に到達するまでのルートとして、S1003でYesと判断されることでS1004の処理に到達するルートと、S1003でYesと判断されることなく、S1005でYesと判断されることでS1004の処理に到達するルートと、の2種類のルートが存在する。
前者のルートは、サービスブレーキ1による液圧が比較的大きい状態で負荷解放制御処理が実行されるという状況に対応し、後者のルートは、サービスブレーキ1による液圧が比較的小さい状態で負荷解放制御処理が実行されるという状況に対応する。以下、前者のルートに対応した状況におけるEPBモータ10の電流値の経時変化と、後者のルートに対応した状況におけるEPBモータ10の電流値の経時変化と、についてより具体的に説明する。
図11は、実施形態において、サービスブレーキ1による液圧が比較的大きい状態で負荷解放制御処理が実行される状況におけるEPBモータ10の電流値の経時変化の一例を示した例示的な図である。
前述したように、サービスブレーキ1による液圧が比較的大きい状態では、EPBモータ10の出力がそれほど大きくならない。したがって、この状況におけるEPBモータ10の電流値は、図11のL1101に示されるように、突入電流の終了後は、第1マップ303aと第4マップ303dとを考慮して設定される上記の閾値を超えることなく徐々に低下していき、早々に無負荷電流の値に到達する。
そして、図11のL1101では、ロック制御処理において予め設定された負荷解放制御終了時間が終了するタイミングt1100になると、EPBモータ10の駆動が停止するので、EPBモータ10の電流値がゼロになる。なお、図11のL1102は、タイミングt1100でEPBモータ10の駆動が停止しなかった場合に想定されるEPBモータ10の電流値の経時変化を表す。
図12は、実施形態において、サービスブレーキ1による液圧が比較的小さい状態で負荷解放制御処理が実行される状況におけるEPBモータ10の電流値の経時変化の他の一例を示した例示的な図である。
前述したように、サービスブレーキ1による液圧が比較的小さい状態では、EPBモータ10の出力が大きくなりやすい。したがって、この状況におけるEPBモータ10の電流値は、図12のL1201に示されるように、突入電流の終了に伴い、第1マップ303aと第4マップ303dとを考慮して設定される上記の閾値を超えた値まで急激に上昇し、その後徐々に低下していく。
ここで、前述したように、EPBモータ10の出力が大きい状況では、EPBモータ10のオーバーシュートを考慮して、ロック制御処理において予め設定された負荷解放制御終了時間が終了する前のタイミングで、EPBモータ10の駆動が停止される。したがって、図12のL1201では、負荷解放制御終了時間が終了する前の、EPBモータ10の電流値が閾値を上回った状態から下回った状態に移行するタイミングt1200で、EPBモータ10の駆動が停止され、EPBモータ10の電流値がゼロになる。なお、図12のL1202は、タイミングt1200でEPBモータ10の駆動が停止しなかった場合に想定されるEPBモータ10の電流値の経時変化を表す。
図8に戻り、S808の負荷解放制御処理が終了すると、S809に処理が進む。そして、S809において、ブレーキ制御装置300は、電動駐車ブレーキ2による制動力のロックの状態を表示するためのロック表示処理を実行する。ロック表示処理の詳細は、次の通りである。
図13は、実施形態によるブレーキ制御装置300が実行するロック表示処理の詳細を示した例示的なフローチャートである。
図13に示されるように、ロック表示処理では、まず、S1301において、上述したFLOCKがオンになっているか否かを判断する。
S1301において、FLOCKがオンになっていると判断された場合、制動力のロックは完了している。したがって、この場合、S1302において、ブレーキ制御装置300は、ロック表示ランプ26を点灯させる。
一方、S1301において、FLOCKがオフになっていると判断された場合、制動力のロックは完了していない。したがって、この場合、S1303において、ブレーキ制御装置300は、ロック表示ランプ26を消灯させる。
そして、S1302またはS1303の処理が終了すると、ロック表示処理が終了する。
図8に戻り、S809のロック表示処理が終了すると、S802に処理が戻る。そして、エンジンを停止する操作や、車両100を発進させる操作などがドライバにより行われるまで、S802〜S809の処理が繰り返し実行される。
以上の構成および処理により、実施形態では、以下のようなタイミングチャートに沿った走行制御が実現される。
図14は、実施形態においてサービスブレーキ1による液圧の大きさが通常の範囲内にある状態で電動駐車ブレーキ2が作動した場合に直動部材18にかかる負荷の経時変化を示した例示的なタイミングチャートである。
図14に示される例では、マスタシリンダ5の液圧が通常の範囲内のP0になるようにサービスブレーキ1が操作された後のタイミングt1401で、電動駐車ブレーキ2を作動させるためのEPBスイッチ23がオンに操作される(L1401およびL1404参照)。これにより、タイミングt1401で、ロック制御処理によるEPBモータ10の正回転駆動が開始し、これ以降、ピストン19を押し込む方向に向かって直動部材18の位置が徐々に進んでいく(L1402参照)。
そして、タイミングt1402で直動部材18がピストン19に当接すると、これ以降、直動部材18にかかる負荷が徐々に増加していく(L1403参照)。そして、タイミングt1403で、直動部材18が、サービスブレーキ1により発生するマスタシリンダ5の液圧などに応じて予め設定された位置X0に到達すると、ロック制御処理が終了する(L1402参照)。そして、タイミングt1403以降は、直動部材18の位置が保持され、この結果、直動部材18にかかる負荷も一定に保たれるようになる(L1402およびL1403参照)。
しかしながら、図14に示される例では、タイミングt1404で、マスタシリンダ5の液圧が解除される。これにより、液圧によるピストン19の支持が無くなるので、その分、直動部材18にかかる負荷が増加し始め、最終的な負荷はF0となる(L1403参照)。
図15は、実施形態においてサービスブレーキ1による液圧の大きさが通常の範囲を超えている状態で電動駐車ブレーキ2が作動した場合に直動部材18にかかる負荷の経時変化を示した例示的なタイミングチャートである。
図15に示される例では、マスタシリンダ5の液圧が所定以上のP1になるようにサービスブレーキ1が操作された後のタイミングt1501で、電動駐車ブレーキ2を作動させるためのEPBスイッチ23がオンに操作される(L1501およびL1504参照)。これにより、タイミングt1501で、ロック制御処理によるEPBモータ10の正回転駆動が開始し、これ以降、ピストン19を押し込む方向に向かって直動部材18の位置が徐々に進んでいく(L1502参照)。
そして、タイミングt1502で直動部材18がピストン19に当接すると、これ以降、直動部材18にかかる負荷が徐々に増加していく(L1503参照)。そして、タイミングt1503で、直動部材18が、サービスブレーキ1により発生するマスタシリンダ6の液圧などに応じて予め設定された位置X1に到達すると、ロック制御処理が終了する(L1502参照)。
なお、図15に示される例では、サービスブレーキ1の操作によって発生する液圧P1が、図14の液圧P0と同等の大きさの液圧P0´よりも大きくなっている。したがって、図15に示される例では、液圧P1に対応した位置X1が、液圧P0´に対応した位置X0´よりも深くなっている。
ここで、実施形態では、前述したように、サービスブレーキ1により通常の範囲を超えた所定以上の液圧が発生している状態で電動駐車ブレーキ2が作動した場合、ロック制御処理に次いで、負荷解放制御処理が実行される。したがって、図15に示される例では、ロック制御処理が終了したタイミングt1503で、負荷解放制御処理によるEPBモータ10の逆回転駆動が開始する。そして、タイミングt1503以降は、EPBモータ10の逆回転駆動に基づき、ピストン19の押し込みを解除する方向に直動部材18の位置が徐々に戻っていき、直動部材18にかかる負荷が徐々に減少していく(L1502およびL1503参照)。
そして、タイミングt1504で負荷解放制御処理が終了すると、これ以降は、直動部材18の位置が保持され、この結果、直動部材18にかかる負荷も一定に保たれるようになる(L1502およびL1503参照)。なお、負荷解放制御処理の終了タイミング(直動部材18の戻し量)がどのように決定されるかについては、フローチャートなどを用いて既に詳しく説明したため、ここでは説明を省略する。
そして、タイミングt1505で、サービスブレーキ1の操作によってマスタシリンダ5の液圧が解除される。これにより、液圧によるピストン19の支持が無くなるので、その分、直動部材18にかかる負荷が増加し始め、最終的な負荷は、図14のF0と同等のF0´となる(L1503参照)。
このように、実施形態によれば、サービスブレーキ1により通常の範囲を超えた所定以上の液圧が発生している状態で電動駐車ブレーキ2が作動した場合でも、直動部材18にかかる最終的な負荷を、サービスブレーキ1による液圧が通常の範囲内にある状態で電動駐車ブレーキ2が作動した場合と同等に抑えることが可能になる。
以下、比較例として、図15に示される例においてロック制御処理の後の負荷解放制御処理を実行しなかった場合に想定される各種のパラメータの経時変化を説明する。
図16は、比較例においてサービスブレーキ1による液圧の大きさが通常の範囲を超えている状態で電動駐車ブレーキ2が作動した場合に直動部材18にかかる負荷の経時変化を示した例示的なタイミングチャートである。なお、図16に表した符号P0´、P1、X0´、X1、およびF0´は、図15に表したものと同様である。
図16に示される例では、マスタシリンダ5の液圧が所定以上のP1になるようにサービスブレーキが操作された後のタイミングt1601で、電動駐車ブレーキ2を作動させるためのEPBスイッチ23がオンに操作される(L1601およびL1604参照)。これにより、タイミングt1601で、ロック制御処理によるEPBモータ10の正回転駆動が開始し、これ以降、ピストン19を押し込む方向に向かって直動部材18の位置が徐々に進んでいく(L1602参照)。
そして、タイミングt1602で直動部材18がピストンに当接すると、これ以降、直動部材18にかかる負荷が徐々に増加していく(L1603参照)。そして、タイミングt1603で、直動部材18が位置X1に到達すると、ロック制御処理が終了する(L1602参照)。そして、タイミングt1603以降は、直動部材18の位置が保持され、この結果、直動部材18にかかる負荷も一定に保たれるようになる(L1602およびL1603参照)。
しかしながら、図16に示される例では、タイミングt1604で、マスタシリンダ5の液圧が解除される。これにより、液圧によるピストン19の支持が無くなるので、その分、直動部材18にかかる負荷が増加し始め、最終的な負荷は、F0´よりも大きいF1となる(L1603参照)。
図15と図16とを比較すれば明らかなように、比較例では、ロック制御処理の後の負荷解放制御処理を実行しない分、サービスブレーキ1により所定以上の液圧を発生させた状態で電動駐車ブレーキ2が作動すると、直動部材18にかかる最終的な負荷が実施形態よりも大きくなる。これにより、液圧に応じてロック制御処理の後の負荷解放制御処理を実行する実施形態が、負荷解放制御処理を実行しない比較例よりも有利な効果を奏することが確認できる。
以上説明したように、実施形態によるブレーキ制御装置300は、センサ情報取得部301と、アクチュエータ制御部302と、を備える。センサ情報取得部301は、液圧センサ25の出力値などを取得する。また、アクチュエータ制御部302は、直動部材18を第1方向(ピストン19を押し込む方向)に移動させる際において、直動部材18を含む電動駐車ブレーキ2の機構に所定以上の負荷が発生すると判定された場合、直動部材18の第1方向への移動の完了に応じて、液圧センサ25の出力値が示す液圧を考慮して設定された移動量だけ直動部材18を第2方向(ピストン19の押し込みを解除する方向)に移動させ、直動部材18の第2方向への移動の完了に応じて直動部材18の位置を保持するように、EPBモータ10の駆動を制御する。これにより、液圧の大きさが所定以上の状態で電動駐車ブレーキ2が作動する場合でも、ピストン19を押し込むように移動した直動部材18の位置が必要に応じて戻るので、電動駐車ブレーキ2の機構に所定以上の過大な負荷が発生するのを抑制することができる。
また、実施形態によるブレーキ制御装置300において、アクチュエータ制御部302は、液圧センサ25の出力値が示す液圧が大きい程、ピストン19の押し込みを解除する方向への直動部材18の移動量(戻し量)を大きくする。これにより、液圧に応じた適切な戻し量を設定することができる。
また、実施形態によるブレーキ制御装置300において、アクチュエータ制御部302が、液圧センサ25の出力値が示す液圧が大きい程、EPBモータ10の駆動時間を長く設定することで、ピストン19の押し込みを解除する方向への直動部材18の移動量(戻し量)を大きくする。これにより、EPBモータ10の駆動時間を制御するだけで、容易に、液圧に応じた適切な戻し量を設定することができる。
また、実施形態によるブレーキ制御装置300において、アクチュエータ制御部302は、ピストン19の押し込みを解除する方向へ直動部材18を移動させるようにEPBモータ10を駆動する場合、EPBモータ10の電流値を監視し、突入電流が終了した後の電流値が、EPBモータ10のオーバーシュートを考慮して設定された閾値を上回った状態から下回った状態に移行した場合、上記で設定された駆動時間の経過前であっても、EPBモータ10の駆動を停止する。これにより、EPBモータ10のオーバーシュートによって直動部材18の位置が戻り過ぎるのを回避することができる。
以上、本発明の実施形態を説明したが、上述した実施形態はあくまで一例であって、発明の範囲を限定することは意図していない。上述した新規な実施形態は、様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。また、上述した実施形態およびその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。