以下、図面を参照して、実施形態に係るX線CT装置を説明する。なお、以下の実施形態では、重複する説明は適宜省略する。
(第1の実施形態)
図1を参照しながら、第1の実施形態に係るX線CT装置1の構成について説明する。図1は、第1の実施形態に係るX線CT装置の構成例を示す図である。X線CT装置1は、図1に示すように、架台2と、寝台20と、コンソール30とを備える。なお、X線CT装置1の構成は、下記の構成に限定されるものではない。
架台2は、高電圧発生回路3と、コリメータ調整回路4と、架台駆動回路5と、X線管6aと、ウェッジ7と、コリメータ8と、検出器9と、データ収集回路10と、回転部11と、コイル制御回路12とを備える。
高電圧発生回路3は、第1の整流回路と、インバータ回路と、変圧器と、第2の整流回路とを備える。第1の整流回路は、交流電源に接続されている。第1の整流回路は、交流を整流し、直流に変換する。インバータ回路は、第1の整流回路が出力した直流を交流に変換する。変圧器は、インバータ回路が出力した交流を昇圧する。第2の整流回路は、変圧器が昇圧した交流を直流に変換し、X線管6aに直流電圧を供給する。この直流電圧は、管電圧と呼ばれる。
コリメータ調整回路4は、コリメータ8の開口度及び位置を調整することにより、X線管6aが発生させたX線の照射範囲を調整する。コリメータ調整回路4は、コリメータ8に接続され、開口度及び位置を調整する機構と、この機構を制御する回路とを含む。この機構は、例えば、モータと、このモータが発生させた動力をコリメータ8に伝達する機械要素とを含む。また、上述した回路は、例えば、モータに電力や制御信号を供給する回路と、この回路を制御するプロセッサとを含む。
架台駆動回路5は、回転部11を回転させることにより、被検体Pを中心とする円軌道上でX線管6a及び検出器9を旋回させる。架台駆動回路5は、回転部11に接続され、これを回転させる機構と、この機構を制御する回路とを含む。この機構は、例えば、モータと、このモータが発生させた動力を回転部11に伝達する機械要素とを含む。また、上述した回路は、例えば、モータに電力や制御信号を供給する回路と、この回路を制御するプロセッサとを含む。
X線管6aは、高電圧発生回路3が供給する管電圧によりX線を発生させる。X線管6aの詳細は、後述する。
ウェッジ7は、X線管6aが発生させたX線の線量を調節するためのX線フィルタである。
コリメータ8は、X線の照射範囲を調整するためのスリットである。コリメータ8は、X線管6aが発生させたX線を遮蔽することができる材料で作製されている。このような材料は、例えば、鉛である。コリメータ8の開口度及び位置は、コリメータ調整回路4により調整される。
検出器9は、X線を検出する。検出器9は、複数の検出素子を有する。検出器9は、X線管6aが発生させたX線を検出素子により検出する。検出素子は、入射したX線を電気信号に変換し、この電気信号をデータ収集回路10へ出力する。検出器9が有する検出素子の大きさ、形状及び数は、特に限定されない。なお、検出器9は、直接変換型及び間接変換型のいずれでもよい。データ収集回路10は、検出素子が出力した電気信号に基づいて投影データを生成する。
回転部11は、円環状のフレームである。回転部11は、X線管6a及び検出器9を支持する。X線管6aと検出器9は、対向している。回転部11は、架台駆動回路5により駆動され、被検体Pを中心とする円軌道上でX線管6a及び検出器9を旋回させる。つまり、回転部11は、X線管6aを保持し、X線管6aと共に被検体Pの周囲を回転する。なお、回転部11は、回転フレームとも呼ばれる。
コイル制御回路12は、コイルに流す電流を制御する。ここで、コイルとは、浮上コイル609a、推進コイル610a及び推進コイル611aである。コイル制御回路12の詳細は、後述する。
寝台20は、天板21と、寝台駆動回路22とを備える。天板21は、被検体Pが載せられる板状の部材である。寝台駆動回路22は、被検体Pが載せられた天板21を移動させることにより、被検体Pを架台2の撮影口内で移動させる。
コンソール30は、入力回路31と、ディスプレイ32と、投影データ記憶回路33と、画像記憶回路34と、記憶回路35と、処理回路36とを備える。
入力回路31は、指示や設定を入力するユーザにより使用される。入力回路31は、例えば、マウス、キーボードである。入力回路31は、ユーザが入力した指示や設定を処理回路36に転送する。
ディスプレイ32は、ユーザが参照するモニタである。ディスプレイ32は、例えば、液晶ディスプレイである。液晶ディスプレイは、偏光フィルタ、ガラス基板、透明電極、配向膜、液晶層、カラーフィルタ及びバックライトを積層したディスプレイである。ディスプレイ32は、例えば、CT画像、ユーザが指示や設定を入力する際に使用するGUI(Graphical User Interface)を表示する旨の指示を処理回路36から受ける。ディスプレイ32は、この指示に基づいてCT画像やGUIを表示する。
投影データ記憶回路33は、後述する前処理機能363により生成された生データ(Raw Data)を記憶する。画像記憶回路34は、後述する画像生成機能364により生成されたCT画像を記憶する。
記憶回路35は、高電圧発生回路3、コリメータ調整回路4、架台駆動回路5、データ収集回路10及びコイル制御回路12が上述した機能を実現するためのプログラムを記憶する。記憶回路35は、寝台駆動回路22が上述した機能を実現するためのプログラムを記憶する。記憶回路35は、処理回路36が後述するスキャン制御機能361、補正機能362、前処理機能363、画像生成機能364、表示制御機能365、制御機能366及びその他の機能それぞれを実現するためのプログラムを記憶する。したがって、高電圧発生回路3、コリメータ調整回路4、架台駆動回路5、データ収集回路10、コイル制御回路12、寝台駆動回路22及び処理回路36は、記憶回路35に記憶されているプログラムを読み出して実行することにより、その機能を実現する。
また、投影データ記憶回路33、画像記憶回路34及び記憶回路35は、記憶されている情報をコンピュータにより読み出すことができる記憶媒体を有する。記憶媒体は、例えば、ハードディスクである。
処理回路36は、スキャン制御機能361、補正機能362、前処理機能363、画像生成機能364、表示制御機能365及び制御機能366を有する。これらの機能の詳細は、後述する。処理回路36は、例えば、プロセッサにより実現される。
図2を参照しながら、第1の実施形態に係るX線CT装置1の処理の一例について説明する。図2は、第1の実施形態に係るX線CT装置が行う処理の一例を示すフローチャートである。
処理回路36は、図2に示すように、スキャンを実行し、投影データを収集する(ステップS1)。ステップS1の処理は、例えば、次のようなものである。
処理回路36は、記憶回路35からスキャン制御機能361に相当するプログラムを読み出して実行する。スキャン制御機能361は、スキャンを実行するためにX線CT装置1を制御する機能である。例えば、処理回路36は、スキャン制御機能361を実行することにより、X線CT装置1を次のように制御する。
処理回路36は、寝台駆動回路22を制御することにより、被検体Pを架台2の撮影口内へ移動させる。ここで、撮影口とは、X線管6a及び回転フレーム11が旋回する軌道の内側に設けられた空洞である。処理回路36は、架台2に被検体Pのスキャンを実行させる。具体的には、処理回路36は、高電圧発生回路3を制御することにより、X線管6aへ管電圧を供給させる。処理回路36は、コリメータ調整回路4を制御することにより、コリメータ8の開口度及び位置を調整する。また、処理回路36は、架台駆動回路5を制御することにより、回転部11を回転させる。そして、処理回路36は、データ収集回路10を制御することにより、データ収集回路10に投影データを収集させる。X線CT装置1が実行するスキャンは、例えば、コンベンショナルスキャン、ヘリカルスキャン、ステップアンドシュートである。
処理回路36は、図2に示すように、投影データに前処理を施す(ステップS2)。ステップS2の処理は、例えば、次のようなものである。
処理回路36は、記憶回路35から前処理機能363に相当するプログラムを読み出して実行する。前処理機能363は、データ収集回路10により生成された投影データを補正する機能である。この補正は、例えば、対数変換、オフセット補正、感度補正、ビームハードニング補正、散乱線補正である。前処理機能363により補正された投影データは、投影データ記憶回路33に格納される。なお、前処理機能363により補正された投影データは、生データとも呼ばれる。
処理回路36は、図2に示すように、CT画像を生成し、表示する(ステップS3)。ステップS3の処理は、例えば、次のようなものである。
処理回路36は、記憶回路35から画像生成機能364に相当するプログラムを読み出して実行する。画像生成機能364は、投影データ記憶回路33に格納されている生データを再構成し、CT画像を生成する機能である。再構成方法は、例えば、逆投影処理、逐次近似法である。処理回路36は、記憶回路35から表示制御機能365に相当するプログラムを読み出して実行する。表示制御機能365は、画像記憶回路34に格納されているCT画像をディスプレイ32に表示する機能である。
なお、処理回路36は、上述した処理を実行する際、適宜、記憶回路35から制御機能366に相当するプログラムを読み出して実行する。制御機能366は、架台2、寝台20及びコンソール30の各構成要素を目的に応じて適切なタイミングで動作させる機能及びその他の機能を含む。
図3から図7を参照しながら、第1の実施形態に係るX線管6aの構造及び動作を説明する。以下の説明においては、次のように定義されたX方向、Y方向及びZ方向を使用する。後述する陽極の回転軸Zrと平行な方向をZ方向と定義する。X方向及びY方向は、Z方向と直交するものとする。X方向、Y方向及びZ方向は、右手系を形成している。また、この座標系は、X線管6aに固定されているものとする。
図3は、第1の実施形態に係るX線管の回転軸を通り、YZ平面に平行な平面により切断し、−X方向から見たときの図である。図4は、第1の実施形態に係るX線管を図3に示したA−A線を通り、XY平面に平行な平面により切断し、+Z方向から見たときの図である。図5は、第1の実施形態に係るX線管が有する磁石、浮上コイル及び推進コイルの位置関係を説明するための図である。図6は、第1の実施形態に係るX線管が陽極を宙に浮かせるための引力及び斥力を説明するための図である。図7は、第1の実施形態に係るX線管が陽極を回転軸周りに回転させるための引力及び斥力を説明するための図である。
X線管6aは、図3に示すように、陽極601aと、断熱材602aと、磁石603aと、スリップリング604aと、捕捉機構605aと、陰極606aと、第1の筐体607aと、第2の筐体608aと、浮上コイル609aと、推進コイル610aと、推進コイル611aとを備える。なお、X線管6aの構成は、下記の構成に限定されるものではない。
陽極601aは、図3に示すように、陰極606aが放出する電子Eを受けてX線Rを発生させる。陽極601aの形状は、図3に示すように、回転軸Zrを軸とする回転体である。陽極601aは、半径が大きな部分及び半径が小さな部分を有する。半径が大きな部分は、陽極601aの−Z方向側に位置する。半径が小さな部分は、陽極601aの+Z方向側に位置する。ここでいう半径とは、回転軸Zrに垂直な平面と陽極601aとの交線と回転軸Zrとの距離である。陽極601aは、半径が大きな部分で陰極606aが放出する電子Eを受ける。陽極601aが電子Eを受ける部分は、図3に示すように、陰極606aに近づくにつれて半径が小さくなっている。
また、陽極601aは、電磁力により宙に浮いて回転軸Zr周りに自転する。具体的には、陽極601aは、浮上コイル609aが磁石603aとの間に発生させる電磁力により宙に浮く。また、陽極601aは、推進コイル610a及び推進コイル611aが磁石603aとの間に発生させる電磁力により回転軸Zr周りに自転する。このため、陽極601aが電子Eを受ける部分は、回転軸Zr上の点を中心とする円軌道上を周回する。なお、陽極601aは、接地されている。
断熱材602aは、陽極601aで発生した熱が磁石603aに伝わることを抑制する。これにより、磁石603aが発生させる磁極の強さが低下することが抑制される。断熱材602aの形状は、円盤状である。断熱材602aは、図3に示すように、孔6021a及び孔6022aを有する。孔6021aには、陽極601aのうち半径が小さい部分の一部が挿入されている。孔6022aには、磁石603aが挿入されている。また、断熱材602aは、非磁性の材料で作製されている。
磁石603aは、磁極を発生させる。すなわち、磁石603aは、磁気モーメントを発生させる。磁石603aが発生させる磁気モーメントは、回転軸Zrと平行となる。磁石603aは、例えば、永久磁石、電磁石である。また、電磁石は、芯を有していなくてもよい。ただし、永久磁石を備えるX線管6aは、電磁石を備えるX線管6aより構成が簡易なものとなる。なぜなら、永久磁石は、電流を流すための配線や電源を必要としないからである。
磁石603aは、陽極601aに接続されている。すなわち、磁石603aは、断熱材602aが有する孔6022aに挿入されている。磁石603aは、図5に示すように、回転軸Zrを取り囲むように配置されている。磁石603aは、陽極601aの自転により回転軸Zr上の点を中心とする円軌道上を周回する。
スリップリング604aは、陽極601aを陰極606aと電気的に接続する。すなわち、スリップリング604aは、陽極601aと陰極606aを電気的に接続し、一つの閉回路を形成している。これにより、陽極601aと陰極606aとの間に電位差が設けられる。この電位差が大きい場合、陰極606aが放出した電子Eは、図3に示すように、陽極601aに向かってZ方向に略平行に飛行する。
また、陽極601aは、電子Eを受けることにより発熱する。このため、スリップリング604aは、熱に強い材料で作製されていることが好ましい。また、陽極601aは、推進コイル610a及び推進コイル611aが磁石603aとの間に発生させる引力及び斥力の少なくとも一方により、回転軸Zr周りに回転する。このため、スリップリング604aは、摩擦に強い構造であることが好ましい。摩擦に強い構造とは、例えば、ファイバーブラシである。
捕捉機構605aは、陽極601aを捕捉する。具体的には、捕捉機構605aは、例えば、瞬時停電時、X線管6aの立ち上げ時、X線管6aの立ち下げ時に、回転する陽極601aの半径が小さな部分を捕捉する。捕捉機構605aの構造は、回転する陽極601aの捕捉及び解放が可能な構造であれば、特に限定されない。また、捕捉機構605aは、陽極601aの回転を妨げない構造であることが好ましい。例えば、捕捉機構605aは、陽極601aと接触する部分に、ボールや円筒コロを備える。これにより、捕捉機構605aは、陽極601aの回転を妨げることなく、陽極601aを捕捉した状態を保つことができる。また、捕捉機構605aは、例えば、X線管6aが運搬される場合、陽極601aを捕捉する。捕捉機構605aは、例えば、専用の電源や瞬時停電時用のコンデンサから供給される電力により稼働する。
陰極606aは、図3に示すように、電子Eを放出する。陰極606aは、例えば、タングステンで作製されたフィラメントである。フィラメントは、熱電子を放出する。熱電子とは、フィラメントに流れる電流により発生した熱により励起され、フィラメントの外に飛び出す電子である。陰極606aが放出した電子Eは、陽極601aと陰極606aとの間に印加された電圧により加速され、陽極601aに衝突する。
第1の筐体607aは、図3に示すように、陽極601a、断熱材602a、磁石603a、捕捉機構605a及び陰極606aを収納する。第1の筐体607aは、例えば、ガラスで作製されている。また、第1の筐体607aは、第1のX線窓6071aを有する。第1のX線窓6071aは、陽極601aが発生させたX線Rを通過させる。なお、第1の筐体607aは、インサートとも呼ばれる。
第2の筐体608aは、図3に示すように、第1の筐体607a、浮上コイル609a、推進コイル610a及び推進コイル611aを収納する。第2の筐体608aは、陽極601aが発生させたX線Rを遮蔽することができる材料で作製されている。X線Rを遮蔽することができる材料は、例えば、鉛である。また、第2の筐体608aは、第2のX線窓6081aを有する。第2のX線窓6081aは、陽極601aが発生させたX線Rを通過させる。なお、第2の筐体608aは、ハウジングとも呼ばれる。
浮上コイル609aは、図3に示すように、第1の筐体607aと第2の筐体608aの間に設けられている。浮上コイル609aは、図3に示すように、第1の筐体607a、磁石603a及び断熱材602aを挟んで対向するように配置されている。また、浮上コイル609aは、図4及び図5に示すように、回転軸Zrを取り囲むように配置されている。浮上コイル609aは、互いに独立した二つのコイルを含む。これら二つのコイルの形状は、例えば、円形である。また、これら二つのコイルの形状は、任意の単純閉曲線でもよい。
浮上コイル609aは、通電されることにより、磁極を発生させる。すなわち、浮上コイル609aは、通電されることにより、磁気モーメントを発生させる。浮上コイル609aが発生させる磁気モーメントは、回転軸Zrと平行となる。なぜなら、浮上コイル609aは、図3、図4及び図5に示すように、コイル面が回転軸Zrと直交するように配置されているからである。なお、磁気モーメントとは、S極を始点とし、N極を終点とするベクトルに、S極及びN極の磁極の強さを掛けたベクトル量である。
浮上コイル609aが発生させた磁気モーメントの磁極の一方は、磁石603aとの間に引力及び斥力の少なくとも一方を発生させる。この電磁力は、陽極601aを宙に浮かせる。つまり、浮上コイル609aは、陽極601aを宙に浮いた状態にする電磁力として磁石603aとの間に引力及び斥力の少なくとも一方を発生させる。
図6を参照しながら、浮上コイル609aが陽極601aを宙に浮かせる方法について具体的に説明する。以下の説明では、X線管6aが架台2内において最も下方に位置している時を例に挙げて説明する。この時、X線管6aは、真上に向かってX線を発生させる。
図6の下方に示した磁石603aは、図5において回転軸Zrから見て+Y方向の位置にある磁石603aである。図6の上方に示した磁石603aは、図5において回転軸Zrから見て−Y方向の位置にある磁石603aである。図6に示した浮上コイル609a、推進コイル610a及び推進コイル611aは、図5に示すように、回転軸Zrから見て+Y方向又は−Y方向の位置にある磁石603aと重なっている浮上コイル609a、推進コイル610a及び推進コイル611aである。図6は、X線管6aが架台2内において最も下方に位置している時に、磁石603aと浮上コイル609aとの間に発生する電磁力を示している。
X線管6aが架台2内において最も下方に位置している時、陽極601aは、+Y方向に働く重力及び+Y方向に働く遠心力を受け、+Y方向へ並進しようとする。したがって、X線管6aは、陽極601aを宙に浮かせるため、これらの力を打ち消す力を陽極601aに作用させる必要がある。
浮上コイル609aは、図5及び図6に示すように、それぞれの磁石603aの+Z方向側及び−Z方向側に一つずつ配置されている。+Z方向側の浮上コイル609aが磁石603aに向かって発生させる磁極は、+Y方向側がS極であり、−Y方向側がN極である。−Z方向側の浮上コイル609aが磁石603aに向かって発生させる磁極は、+Y方向側がN極であり、−Y方向側がS極である。磁石603aが+Z方向側の浮上コイル609aに向かって発生させる磁極は、S極である。磁石603aが−Z方向側の浮上コイル609aに向かって発生させる磁極は、N極である。
−Z方向側の浮上コイル609aが発生させるS極は、磁石603aが発生させるN極との間に引力AT10を発生させる。−Z方向側の浮上コイル609aが発生させるN極は、磁石603aが発生させるN極との間に斥力RE10を発生させる。引力AT10と斥力RE10の合力NE10は、−Y方向に働く力である。
+Z方向側の浮上コイル609aが発生させるN極は、磁石603aが発生させるS極との間に引力AT20を発生させる。+Z方向側の浮上コイル609aが発生させるS極は、磁石603aが発生させるS極との間に斥力RE20を発生させる。引力AT20と斥力RE20の合力NE20は、−Y方向に働く力である。
架台2内でX線管6aが最も下方に位置する場合に、陽極601aに働く重力及び遠心力は、二つの合力NE10及び二つの合力NE20により打ち消される。このため、X線管6aは、陽極601aを宙に浮かせることができる。
上述した説明では、図5において回転軸Zrから見て+Y方向の位置にある磁石603aと、当該磁石603aと重なっている浮上コイル609aとの間に発生する電磁力及び図5において回転軸Zrから見て−Y方向の位置にある磁石603aと、当該磁石603aと重なっている浮上コイル609aとの間に発生する電磁力が陽極601aを宙に浮かせる場合について述べたが、これに限定されない。図5において回転軸Zrから見て+Y方向の位置にある磁石603a及び図5において回転軸Zrから見て−Y方向の位置にある磁石603a以外の磁石603aと、当該磁石603aと重なっている浮上コイル609aとの間に発生する電磁力が陽極601aを宙に浮かせてもよい。いずれの場合も、磁石603aと、当該磁石603aと重なっている浮上コイル609aとの間に発生する電磁力の合力が、陽極601aに働く重力及び遠心力を打ち消す。
また、磁石603aと、当該磁石603aと重なっている浮上コイル609aとの間に発生する電磁力の合力は、X線管6aの位置、X線管6aの向き及びX線管6aの速度に関係無く、陽極601aに働く重力及び遠心力を打ち消す。コイル制御回路12は、このような電磁力を発生させ続けるため、X線管6aの位置、X線管6aの向き及びX線管6aの速度に応じて浮上コイル609aに流す電流を制御する。
さらに、磁石603aと、当該磁石603aと重なっている浮上コイル609aとの間に発生する電磁力の合力は、X線管6a内における陽極601aの位置を調整することができる。X線管6a内における陽極601aの位置の調整は、陽極601aを宙に浮かせたままにすることを含む。また、X線管6a内における陽極601aの位置の調整は、X線管6a内における陽極601aの位置を所定の範囲内に収めた状態を維持することを含む。
X線管6a内における陽極601aの位置は、位置ずれセンサにより検出される。この位置ずれセンサは、例えば、第1の筐体607aの内壁に取り付けられる。また、この位置ずれセンサは、例えば、静電容量変位センサである。位置ずれセンサが検出した結果は、コイル制御回路12に送信される。コイル制御回路12は、位置ずれセンサが検出した結果に基づいて浮上コイル609aに流す電流を制御する。これにより、コイル制御回路12は、X線管6a内における陽極601aのX方向、Y方向及びZ方向の位置を調整することができる。
なお、コイル制御回路12は、X線管6aの位置、X線管6aの向き、X線管6aの速度及びX線管6a内における陽極601aの位置の少なくとも一つに応じて浮上コイル609aに流す電流を制御してもよい。
これにより、コイル制御回路12は、X線管6aの位置、X線管6aの向き、X線管6aの速度及びX線管6a内における陽極601aの位置に関らず、陽極601aを宙に浮かせたままにすることができる。また、コイル制御回路12は、X線管6aの位置、X線管6aの向き、X線管6aの速度及びX線管6a内における陽極601aの位置に関らず、X線管6a内における陽極601aの位置を所定の範囲内に収めた状態を維持することができる。
推進コイル610a及び推進コイル611aは、図3に示すように、第1の筐体607aと第2の筐体608aの間に設けられている。推進コイル610aは、図3に示すように、第1の筐体607a、磁石603a、断熱材602a及び浮上コイル609aを挟んで互いに対向するように配置されている。推進コイル611aは、図3に示すように、第1の筐体607a、磁石603a、断熱材602a、浮上コイル609a及び推進コイル610aを挟んで互いに対向するように配置されている。また、推進コイル610a及び推進コイル611aは、図4及び図5に示すように、回転軸Zrを取り囲むように配置されている。推進コイル610a及び推進コイル611aは、図4及び図5に示すように、導線を長方形の四つの角を丸めた形状に巻くことにより形成されている。
推進コイル610a及び推進コイル611aは、通電されることにより、磁極を発生させる。すなわち、推進コイル610a及び推進コイル611aは、通電されることにより、磁気モーメントを発生させる。推進コイル610a及び推進コイル611aが発生させる磁気モーメントは、回転軸Zrと平行となる。なぜなら、推進コイル610a及び推進コイル611aは、図3、図4及び図5に示すように、コイル面が回転軸Zrと直交するように配置されているからである。
推進コイル610aが発生させた磁気モーメントの磁極の一方は、磁石603aとの間に引力及び斥力の少なくとも一方を発生させる。推進コイル611aが発生させた磁気モーメントの磁極の一方は、磁石603aとの間に引力及び斥力の少なくとも一方を発生させる。この電磁力は、陽極601aを回転軸Zr周りに回転させる。つまり、推進コイル610a及び推進コイル611aは、陽極601aを回転軸Zr周りに回転させる電磁力として磁石603aとの間に引力及び斥力の少なくとも一方を発生させる。
図7を参照しながら、推進コイル610a及び推進コイル611aが陽極601aを回転させる方法について具体的に説明する。
図7は、磁石603a、浮上コイル609a、推進コイル610a及び推進コイル611aを+Y方向から見たときの図である。図7に示した磁石603aは、図5において回転軸Zrから見て+Y方向の位置にある磁石603aである。図6に示した浮上コイル609a、推進コイル610a及び推進コイル611aは、図5において回転軸Zrから見て+Y方向の位置にある磁石603aと重なっている浮上コイル609a、推進コイル610a及び推進コイル611aである。
推進コイル610aは、図7に示すように、磁石603a、断熱材602a及び浮上コイル609aの+Z方向側及び−Z方向側に一つずつ配置されている。+Z方向側の推進コイル610aが磁石603aに向かって発生させる磁極は、S極である。−Z方向側の推進コイル610aが磁石603aに向かって発生させる磁極は、N極である。
推進コイル611aは、図7に示すように、磁石603a、断熱材602a、浮上コイル609a及び推進コイル610aの+Z方向側及び−Z方向側に一つずつ配置されている。+Z方向側の推進コイル611aが磁石603aに向かって発生させる磁極は、N極である。−Z方向側の推進コイル611aが磁石603aに向かって発生させる磁極は、S極である。
磁石603aが+Z方向側の推進コイル610a及び推進コイル611aに向かって発生させる磁極は、N極である。磁石603aが−Z方向側の推進コイル610a及び推進コイル611aに向かって発生させる磁極は、S極である。
+Z方向側の推進コイル610aが発生させるS極は、磁石603aが発生させるN極との間に引力AT50を発生させる。+Z方向側の推進コイル611aが発生させるN極は、磁石603aが発生させるN極との間に斥力RE50を発生させる。引力AT50と斥力RE50の合力NE50は、−X方向に働く力である。
−Z方向側の推進コイル610aが発生させるN極は、磁石603aが発生させるS極との間に引力AT60を発生させる。−Z方向側の推進コイル611aが発生させるS極は、磁石603aが発生させるS極との間に斥力RE60を発生させる。引力AT60と斥力RE60の合力NE60は、−X方向に働く力である。
合力NE50及び合力NE60は、右ネジが+Z方向に進む際に回転する方向へ陽極601aを回転させる。また、磁石603aと、当該磁石603aと重なっている推進コイル610a及び推進コイル611aとの間に発生する電磁力の合力も、右ネジが+Z方向に進む際に回転する方向へ陽極601aを回転させる。
陽極601aの回転数を上げる場合、推進コイル610a及び推進コイル611aは、上述した電磁力を発生させるように通電される。一方、陽極601aの回転数を下げる場合、上述した電磁力と反対方向の電磁力を発生させるように通電される。
第1の筐体607aと第2の筐体608aの間の領域は、図3に示すように、冷却オイルLで満たされている。冷却オイルLは、熱輻射により陽極601aで発生した熱を吸収する。
図8から図11を参照しながら、第1の実施形態に係るX線管6aが有する陽極601aの傾き及びこの傾きの影響を解消する方法を説明する。
図8は、陽極が遠心力により変形し、ターゲット角が変化した場合の例を示す図である。図9は、遠心力による陽極の傾きを補正する電磁力の例を示す図である。図10は、図9に示した電磁力、この電磁力のうち陽極を浮上させる力及びこの電磁力のうち遠心力による陽極の傾きを補正する力の関係を示す図である。図11は、遠心力により変形した陽極の傾きを補正した場合の例を示す図である。
上述したように、陽極601aは、電磁力により宙に浮いて回転軸Zr周りに自転する。同時に、陽極601aは、回転部11が被検体Pを中心とする円軌道上でX線管6aを旋回させるため、+Y方向の遠心力を受ける。また、陽極601aのうち半径が小さな部分は、磁石603aと浮上コイル609a、推進コイル610a又は推進コイル611aとの間に発生する電磁力により拘束される。一方、陽極601aのうち半径が大きな部分は、陽極601aのうち半径が小さな部分ほどこの電磁力により拘束されない。
したがって、陽極601aは、X線管6aが被検体Pを中心とする円軌道上を周回している間、図8に示すように、+Y方向に曲がった状態を保ちながら自転する。すなわち、陽極601aは、X線管6aが被検体Pを中心とする円軌道上を周回している間、−Z方向に進むにつれて半径が大きな部分の中心軸が回転軸Zrから+Y方向にずれるように変形した状態を保ちながら自転する。また、この時、ターゲット角は、常に一定となる。ここで、ターゲット角とは、回転軸Zrを通り、YZ平面に平行な平面と陽極601aが電子Eを受ける部分との交線と、回転軸Zrを通り、YZ平面に平行な直線とがなす角である。
しかし、ターゲット角は、遠心力の影響を受けない場合に比べ、小さくなってしまう。ターゲット角が変化すると、陽極601aのうちX線Rが透過する領域が変化する。このため、X線Rの線質が変化し、CT画像の画質に影響が出てしまうことがある。そこで、補正機能362は、回転部11の回転数に基づいて、回転部11の回転により発生する遠心力による陽極601aの傾きを補正する。
具体的には、補正機能362は、回転部11の回転数に基づいて、陽極601aが受ける遠心力を算出する。或いは、補正機能362は、回転部11の回転数に加え、陽極601aの形状、重量及び材質の少なくとも一つに基づいて、陽極601aが受ける遠心力を算出する。
次に、補正機能362は、例えば、回転部11の回転数に基づいて、この遠心力による陽極601aの各点の変位を算出する。或いは、補正機能362は、回転部11の回転数に加え、陽極601aの形状、重量及び材質の少なくとも一つに基づいて、この遠心力による陽極601aの各点の変位を算出する。
補正機能362は、上述したステップS1において、これらを算出する。或いは、補正機能362は、上述した少なくともステップS1が実行される前にこれらを算出する。
そして、補正機能362は、上述したステップS1において、コイル制御回路12を制御し、次のような電磁力が発生するように、浮上コイル609aに流す電流を制御する。ただし、補正機能362が上述した二つのコイルに流す電流の方向は、反対となる。また、この場合、補正機能362が上述した二つのコイルに流す電流の絶対値は、異なる。
図9の下方に示した磁石603aは、図5において回転軸Zrから見て−Y方向の位置にある磁石603aである。図9の上方に示した磁石603aは、図5において回転軸Zrから見て+Y方向の位置にある磁石603aである。図9に示した浮上コイル609a、推進コイル610a及び推進コイル611aは、図5に示すように、回転軸Zrから見て+Y方向又は−Y方向の位置にある磁石603aと重なっている浮上コイル609a、推進コイル610a及び推進コイル611aである。図9は、X線管6aが架台2内の任意の位置において、磁石603aと浮上コイル609aとの間に発生する電磁力を示している。
陽極601aは、上述したように、X線管6aが架台2内で旋回している時、+Y方向に曲がる。したがって、X線CT装置1は、ターゲット角が変化しないようにする必要がある。すなわち、X線CT装置1は、+Y方向の遠心力による陽極601aの傾きを補正する必要がある。
+Z方向側の浮上コイル609aが磁石603aに向かって発生させる磁極は、+Y方向側がS極であり、−Y方向側がN極である。−Z方向側の浮上コイル609aが磁石603aに向かって発生させる磁極は、+Y方向側がN極であり、−Y方向側がS極である。磁石603aが+Z方向側の浮上コイル609aに向かって発生させる磁極は、S極である。磁石603aが−Z方向側の浮上コイル609aに向かって発生させる磁極は、N極である。
+Z方向側かつ+Y方向側の浮上コイル609aが発生させるN極は、磁石603aが発生させるS極との間に引力AT1を発生させる。+Z方向側かつ+Y方向側の浮上コイル609aが発生させるN極は、磁石603aが発生させるN極との間に斥力RE1を発生させる。引力AT1と斥力RE1の合力NE1は、+Y方向成分及び−Z方向成分を有する力である。
−Z方向側かつ+Y方向側の浮上コイル609aが発生させるS極は、磁石603aが発生させるN極との間に引力AT2を発生させる。−Z方向側かつ+Y方向側の浮上コイル609aが発生させるS極は、磁石603aが発生させるS極との間に斥力RE2を発生させる。引力AT2と斥力RE2の合力NE2は、+Y方向成分及び−Z方向成分を有する力である。
+Z方向側かつ−Y方向側の浮上コイル609aが発生させるN極は、磁石603aが発生させるS極との間に引力AT3を発生させる。+Z方向側かつ−Y方向側の浮上コイル609aが発生させるN極は、磁石603aが発生させるN極との間に斥力RE3を発生させる。引力AT3と斥力RE3の合力NE3は、+Y方向成分及び+Z方向成分を有する力である。
−Z方向側かつ−Y方向側の浮上コイル609aが発生させるS極は、磁石603aが発生させるN極との間に引力AT4を発生させる。−Z方向側かつ−Y方向側の浮上コイル609aが発生させるS極は、磁石603aが発生させるS極との間に斥力RE4を発生させる。引力AT4と斥力RE4の合力NE4は、+Y方向成分及び+Z方向成分を有する力である。
四つの合力NE1、合力NE2、合力NE3及び合力NE4は、図10に示すように、+Y方向の力NE(Y)と+Z方向又は−Z方向の力NE(Z)とに分解することができる。力NE(Y)は、陽極601aを浮上させる力である。力NE(Z)は、陽極601aの傾きを補正する力である。
補正機能362は、上述した力を発生させることにより、図11に示すように、+Y方向の遠心力による陽極601aの傾きを補正することができる。すなわち、補正機能362は、図11に示すように、+Y方向の遠心力により陽極601aが変形しても、適切なターゲット角を維持することができる。また、補正機能362は、+Y方向の遠心力により陽極601aが変形し、ターゲット角が変化しても、上述した力により、適切なターゲット角に補正することができる。
上述したように、第1の実施形態に係る補正機能362は、回転部11の回転数に基づいて、回転部11の回転により発生する遠心力による陽極601aの傾きを補正する。具体的には、補正機能362は、回転部11の回転数に基づいて、コイルに流す電流を制御することにより、陽極601aの傾きを補正する。このため、X線CT装置1は、+Y方向の遠心力により陽極601aが曲がり、X線Rの線質が変化し、CT画像の画質に影響が出ることを抑制することができる。また、補正機能362は、回転部11の回転数に基づいて、回転部11の回転により発生する遠心力による陽極601aの傾きを算出することができる。このため、X線CT装置1は、陽極601aの各点の変位を計測するセンサを有する必要が無い。
浮上コイル609a、推進コイル610a及び推進コイル611aの少なくとも一つは、第1の筐体607aの内側に配置されてもよい。ただし、浮上コイル609a、推進コイル610a及び推進コイル611aを第1の筐体607aの外側に配置した方が、ユーザは、容易にX線管6aの修理や手入れをすることができる。
浮上コイル609a、推進コイル610a及び推進コイル611aの少なくとも一つは、第2の筐体608aの外側に配置されてもよい。この場合、第2の筐体608aの外側に配置され浮上コイル609a、推進コイル610a及び推進コイル611aは、冷却オイルLと接触しない。しかし、冷却オイルLは、第2の筐体608aを介して第2の筐体608aの外側に配置され浮上コイル609a、推進コイル610a及び推進コイル611aから発生する熱を吸収することができる。このため、冷却オイルLは、第2の筐体608aの外側に配置され浮上コイル609a、推進コイル610a及び推進コイル611aを冷却することができる。
(第2の実施形態)
図12及び図13を参照しながら、第2の実施形態に係るX線管6bの構造及び動作を説明する。図12は、第2の実施形態に係るX線管の回転軸を通り、YZ平面に平行な平面により切断し、−X方向から見たときの図である。図13は、第2の実施形態に係るX線管を図12に示したB−B線を通り、XY平面に平行な平面により切断し、+Z方向から見たときの図である。
第1の実施形態では、陽極601a、断熱材602a及び磁石603aのみが回転軸Zr周りに回転する。第1の実施形態と同様、第2の実施形態でも、陽極601b、断熱材602b及び磁石603bのみが回転軸Zr周りに回転する。なお、第1の実施形態と重複する内容については、同一の符号を使用し、詳細な説明を省略する。
X線管6bは、図12に示すように、陽極601bと、断熱材602bと、磁石603bと、スリップリング604bと、捕捉機構605bと、陰極606bと、第1の筐体607bと、第2の筐体608bと、浮上コイル609bと、推進コイル610bと、推進コイル611bとを備える。なお、X線管6bの構成は、下記の構成に限定されるものではない。
陽極601bは、図12に示すように、陰極606bが放出する電子Eを受けてX線Rを発生させる。陽極601bの形状は、図12に示すように、回転軸Zrを軸とする回転体である。陽極601bは、陰極606bが放出する電子Eを受ける。陽極601bが電子Eを受ける部分は、図12に示すように、陰極606bに近づくにつれて半径が小さくなっている。
また、陽極601bは、電磁力により宙に浮いて回転軸Zr周りに自転する。具体的には、陽極601bは、浮上コイル609bが磁石603bとの間に発生させる電磁力により宙に浮く。また、陽極601bは、推進コイル610b及び推進コイル611bが磁石603bとの間に発生させる電磁力により回転軸Zr周りに自転する。
断熱材602bは、陽極601bで発生した熱が磁石603bに伝わることを抑制する。断熱材602bの形状は、円盤状である。断熱材602bは、図12に示すように、孔6021b及び孔6022bを有する。孔6021bには、陽極601bの一部が挿入されている。孔6022bには、磁石603bが挿入されている。なお、断熱材602bは、Z方向において陽極601bと重なっていない。
磁石603bは、磁極を発生させる。すなわち、磁石603bは、磁気モーメントを発生させる。磁石603bが発生させる磁気モーメントは、回転軸Zrと平行となる。磁石603bは、陽極601bに接続されている。すなわち、磁石603bは、断熱材602bが有する孔6022bに挿入されている。また、磁石603bは、+Z方向側と−Z方向側とに分けて配置されている。磁石603bは、回転軸Zrを取り囲むように配置されている。磁石603bは、陽極601bの自転により回転軸Zr上の点を中心とする円軌道上を周回する。
スリップリング604bは、陽極601bを陰極606bと電気的に接続する。捕捉機構605bは、陽極601bを捕捉する。陰極606bは、図12に示すように、電子Eを放出する。
第1の筐体607bは、図12に示すように、陽極601b、断熱材602b、磁石603b、捕捉機構605b及び陰極606bを収納する。また、第1の筐体607bは、第1のX線窓6071bを有する。
第2の筐体608bは、図12に示すように、第1の筐体607b、浮上コイル609b、推進コイル610b及び推進コイル611bを収納する。また、第2の筐体608bは、第2のX線窓6081bを有する。
浮上コイル609bは、図12に示すように、第1の筐体607bと第2の筐体608bの間に設けられている。浮上コイル609bは、図12に示すように、第1の筐体607b、磁石603b及び断熱材602bを挟んで対向するように配置されている。また、浮上コイル609bは、図13に示すように、回転軸Zrを取り囲むように配置されている。浮上コイル609bは、互いに独立した二つのコイルを含む。
コイル制御回路12は、X線管6bの位置、X線管6bの向き、X線管6bの速度及びX線管6b内における陽極601bの位置の少なくとも一つに応じて浮上コイル609bに流す電流を制御する。これにより、陽極601bは、常に宙に浮いていることができる。
推進コイル610b及び推進コイル611bは、図12に示すように、第1の筐体607bと第2の筐体608bの間に設けられている。推進コイル610bは、図12に示すように、第1の筐体607b、磁石603b、断熱材602b及び浮上コイル609bを挟んで互いに対向するように配置されている。推進コイル611bは、図12に示すように、第1の筐体607b、磁石603b、断熱材602b、浮上コイル609b及び推進コイル610bを挟んで互いに対向するように配置されている。また、推進コイル610b及び推進コイル611bは、図13に示すように、回転軸Zrを取り囲むように配置されている。
第1の筐体607bと第2の筐体608bの間の領域は、図12に示すように、冷却オイルLで満たされている。
陽極601bは、回転部11が被検体Pを中心とする円軌道上でX線管6bを旋回させるため、+Y方向の遠心力を受ける。また、陽極601bの+Z方向側は、磁石603bと浮上コイル609b、推進コイル610b又は推進コイル611bとの間に発生する電磁力により拘束される。一方、陽極601bの−Z方向側は、陽極601bの+Z方向側ほどこの電磁力により拘束されない。したがって、陽極601bは、+Y方向に曲がる。すなわち、陽極601bは、−Z方向に進むにつれて陽極601bの−Z方向側の中心軸が回転軸Zrから+Y方向にずれるように変形する。
これにより、ターゲット角は、小さくなってしまう。ターゲット角が変化すると、陽極601bのうちX線Rが透過する領域が変化する。このため、X線Rの線質が変化し、CT画像の画質に影響が出てしまうことがある。そこで、補正機能362は、第1の実施形態で述べたように動作する。
すなわち、第2の実施形態に係る補正機能362は、回転部11の回転数に基づいて、回転部11の回転により発生する遠心力による陽極601bの傾きを補正する。このため、第2の実施形態に係るX線CT装置1は、第1の実施形態に係るX線CT装置1と同様の効果を奏することができる。
上述したプロセッサは、例えば、CPU(Central Processing Unit)、GPU(Graphics Processing Unit)、特定用途向け集積回路(Application Specific Integrated Circuit:ASIC)、プログラマブル論理デバイス(Programmable Logic Device:PLD)、フィールドプログラマブルゲートアレイ(Field Programmable Gate Array:FPGA)である。また、プログラマブル論理デバイス(Programmable Logic Device:PLD)は、例えば、単純プログラマブル論理デバイス(Simple Programmable Logic Device:SPLD)、複合プログラマブル論理デバイス(Complex Programmable Logic Device:CPLD)である。
上述した実施形態では、高電圧発生回路3、コリメータ調整回路4、架台駆動回路5、データ収集回路10、コイル制御回路12、寝台駆動回路22及び処理回路36は、記憶回路35に保存されたプログラムを読み出して実行することにより、その機能を実現したが、これに限定されない。記憶回路35にプログラムを保存する代わりに、これらの回路それぞれにプログラムを直接組み込んでもよい。この場合、これらの回路は、直接組み込まれたプログラムを読み出して実行することにより、その機能を実現する。
図1に示した各回路は、適宜分散又は統合されてもよい。例えば、処理回路36は、スキャン制御機能361、補正機能362、前処理機能363、画像生成機能364、表示制御機能365及び制御機能366それぞれの機能を実行するスキャン制御回路、補正回路、前処理回路、画像生成回路、表示制御回路及び制御回路に分散されてもよい。また、例えば、高電圧発生回路3、コリメータ調整回路4、架台駆動回路5、データ収集回路10、コイル制御回路12、寝台駆動回路22及び処理回路36は、任意に統合されてもよい。
以上説明した少なくとも一つの実施形態によれば、遠心力による陽極の変形の影響を緩和することができるX線CT装置を提供することができる。
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。