以下、本発明に係るリソース割当方法の各実施の形態を、図を参照して説明する。
実施の形態1.
図1は、本発明の実施の形態1に係るリソース割当方法による各セルへの通信リソースの通常時の割り当ての例を説明する図である。
本実施の形態1では、衛星通信で衛星に照射させる全サービスエリアを対象範囲とし、その全サービスエリアをセルに分割して、セル毎に通信リソースを割り当てることを前提とする。それにより、本実施の形態1は、衛星通信用の通信システムに適用されることを前提とする。つまり、通信リソースの割り当て、及びその割り当ての変更は通信システムにより行われる。より具体的には通信システムの構築に用いられるコンピュータが通信リソースの割り当てを決定し、決定した割り当てに従って通信システム内での制御が行われる。衛星に搭載されたアンテナ装置は、その制御に従って動作する。
図1では、計16個のセルをそれぞれ丸で示し、11−1〜14−4の符号を付している。図1に16のセルのみを示したのは、この16のセルが周波数リソースを割り当てるうえでの単位となるからである。以降、特定のセルを指す場合にのみ、そのセルに付した符号を併せて表記する。
本実施の形態1では、各セルをセルグループ10に分け、セルグループ10単位で通信リソースの繰り返しを行っている。そのセルグループ10は、以降「クラスタ」と表記する。図1に示す例では、クラスタ10は16のセルで構成されている。以降、セルと同様に、特定のクラスタを指す場合にのみ、そのクラスタに付した符号を併せて表記する。
クラスタ10は、4つのサブクラスタ10−1〜10−4で構成されている。各サブクラスタ10−1〜10−4は、隣接する4つのセルで構成されている。以降、セルと同様に、特定のサブクラスタを指す場合にのみ、そのサブクラスタに付した符号を併せて表記する。サブクラスタは以降「セルグループ」と表記する。
図1では、サブクラスタとそのサブクラスタに属するセルとの対応関係を明確にするために、サブクラスタ別にセルの符号を異ならせている。具体的には、セルグループ10−1では、そのセルグループ10−1に属するセルには符号として11−1〜11−4を付している。同様に、セルグループ10−2では、そのセルグループ10−2に属するセルには符号として12−1〜12−4、セルグループ10−3では、そのセルグループ10−3に属するセルには符号として13−1〜13−4、セルグループ10−4では、そのセルグループ10−4に属するセルには符号として14−1〜14−4をそれぞれ付している。
本実施の形態1では、通信リソースとして、周波数領域のリソース、及び時間領域のリソースを各セルに割り当てるようにしている。図1中に表記の「F1」〜「F4」はそれぞれ異なる内容の周波数リソースを表している。同様に図1中に表記の「T1」〜「T4」もそれぞれ異なる内容の時間リソースを表している。丸内に表記の「F1」〜「F4」、及び「T1」〜「T4」は、その丸が示すセルに割り当てられた周波数リソース、及び時間リソースを表している。例えばセル11−1に表記の「F1,T1」は、そのセル11−1に周波数リソースF1、及び時間リソースT1が割り当てられていることを表している。以降、周波数領域のリソースは「周波数リソース」、時間領域のリソースは「時間リソース」とそれぞれ表記する。
図2は、周波数リソースの例を説明する図である。ここで図2を参照し、周波数リソースの例について具体的に説明する。
受信側では、異なる周波数帯域の信号成分を分離することができる。周波数帯域が同じであっても、偏波が異なれば信号成分を分離することができる。このことから、本実施の形態1では、周波数リソースは、図2に示すように、周波数帯域と偏波の組み合わせとしている。周波数リソースF1は、右旋偏波で比較的に低い周波数帯域である。周波数リソースF2は、右旋偏波で周波数リソースF1の周波数の高い側に隣接する形の周波数帯域である。周波数リソースF3は、左旋偏波で比較的に低い周波数帯域である。周波数リソースF4は、左旋偏波で周波数リソースF3の周波数の高い側に隣接する形の周波数帯域である。以降、セル及びセルグループと同様に、特定の周波数リソースを指す場合にのみその周波数リソースに対応するシンボルを併せて表記する。
図3は、時間リソースの例を説明する図である。次に図3を参照し、本実施の形態1で採用の時間リソースについて具体的に説明する。
各セルに割り当てる時間リソースは、時間領域での通信可能範囲を制限するためのリソースである。本実施の形態1では、図3に示すように、時間領域で通信可能範囲を制限するための単位となる制御期間である制御単位期間Pを設け、その制御単位期間P内を4分割し、分割した各期間(=P/4)を時間リソースT1〜T4としている。時間リソースT1〜T4の制御単位期間P内での配置は、先頭から、T1→T2→T3→T4、となっている。以降、時間リソースT1〜T4は「時分割スロットT1〜T4」とも表記する。周波数リソースと同様に、特定の時分割スロットを指す場合にのみ、その時分割スロットに対応するシンボルを併せて表記する。
図4は、制御単位期間の配置例を説明する図である。図4中に表記の「P(n)」は、任意の制御単位期間を示し、「P(n+1)」は、その制御単位期間P(n)に続く制御単位期間Pを示している。本実施の形態1では、図4に示すように、時間領域を予め定めた時間で分割し、分割した時間をそれぞれ制御単位期間Pとしている。それにより、制御単位期間Pは連続する形となっている。各周波数リソースF1〜F4に設定される時分割スロットT1〜T4は同期させている。
上記のように、各時分割スロットT1〜T4は、制御単位期間Pを4分割して得られる期間である。そのため、各時分割スロットT1〜T4は、時間領域で排他的な関係となっている。つまり、各時分割スロットT1〜T4は、時間領域で別の時分割スロットと重なる部分のない期間となっている。
このような時分割スロットを時間リソースとして割り当てる場合、電磁波であるアンテナビームの各セルへの照射は、そのセルに割り当てられた時分割スロットの期間のみ行えば良い。そのため、隣接する2つのセルに割り当てる周波数リソースを同じとしても、異なる時分割スロットを割り当てることにより、その2つのセル間での干渉は回避できるか、或いは大幅に抑制できる。具体的には、例えば或るセルに周波数リソースF2を割り当てた場合、その隣接セルに同じ周波数リソースF2を割り当てたとしても、時分割スロットを異ならせることにより、その2つのセル間での干渉は回避できるか、或いは大きく抑制できる。
このようなことから、時分割スロットを時間リソースとして割り当て可能とすることにより、隣接するセル間での干渉は、回避できるか、或いは大幅に抑制でき、その時間リソース以外の通信リソースを割り当てるうえでの自由度は向上する。その自由度の向上により、周波数リソースとして割り当て可能な周波数帯域の選択肢は増え、その周波数帯域の設定上の自由度も向上する。
図1では、各セルへの通常時に割り当てられる通信リソースの例を示している。その通常時とは、各セルで通信が良好に行える状況下のことである。各セルには、周波数リソースF1〜F4のうちの何れか、及び時分割スロットT1〜T4のうちの何れかがそれぞれ通信リソースとして割り当てられている。本実施の形態1では、図1に示すように、通常時にはセルグループ毎に同じ周波数リソースを割り当てるようにしている。具体的には、セルグループ10−1には周波数リソースF1を割り当て、同様にセルグループ10−2には周波数リソースF2、セルグループ10−3には周波数リソースF3、セルグループ10−4には周波数リソースF4をそれぞれ割り当てている。そのようにして、隣接するセルグループ間では互いに異なる周波数リソースを割り当てている。
時分割スロットは、隣接するセルグループ間で隣接するセルで同じとしている。それにより、例えばセル11−2とセル12−1には同じ時分割スロットT2が割り当てられている。また、セル11−4とセル13−2には同じ時分割スロットT4が割り当てられている。この結果、セルグループ内の各セルには、互いに異なる時分割スロットが割り当てられている。
上記のように、クラスタ10は、通信リソースの繰り返しの単位である。このことから、クラスタ10以外のクラスタでも、通常時には図1に示すような通信リソースの割り当てが行われる。このような通信リソースの割り当てにより、クラスタ間、セルグループ間、及びセル間の何れも干渉を抑制することができる。
電磁波(アンテナビーム)はセルの境界に近づくほど弱くなるのが普通である。このため、環境変化により通信不能となるのは、多くの場合、セルの境界付近である。ここでの通信不能とは、通信が行えない状態だけでなく、通信が良好に行えない状態を含む意味で用いている。
電磁波強度が低くなることによる通信不能状態は、その電磁波強度をより高くすることで解消することができる。このことから、本実施の形態1では、通信不能状態を挟む形で隣接する複数のセル、或いは通信不能状態が存在するエリアが含まれる複数のセルを一つのセルとして電磁波を照射するビームフォーミングを行うようにしている。ここでは、その一つのセルは、以降「拡大セル」と表記する。
通信不能状態となるエリアは、例えば気象衛星が撮影した画像から推定することができる。また、そのエリアは、地上での観測結果からも推定することができる。このことから、拡大セルの形成は、通信不能状態となるエリアが発生、或いはそのエリアの発生が予想される場合に行われる。形成した拡大セルの廃棄、つまりその拡大セルにカバーさせた複数のセルの再形成は、通信不能状態が解消されたことの確認等により行えば良い。これらは、通信システムの制御により、アンテナ装置を動作させることにより実現される。
隣接する複数のセルとは、エリアが連続して連なる複数のセルのことである。このことから、図1に示す例では、セル11−1、及びセル11−2の隣接する2個のセルだけでなく、例えばセル11−1、セル11−2、及びセル11−3の3個のセルも隣接する複数のセルに相当する。同様に、セル11−2、セル12−1、セル12−2、セル12−3及びセル12−4の5個のセルも隣接する複数のセルに相当する。
アンテナビームとする電磁波の形成は、反射鏡を備えたアンテナ装置を用いて行うことができる。そのアンテナ装置は、反射鏡を用いずにアンテナ素子である一次放射器から電磁波をセルに直接、照射するタイプであっても良い。何れのタイプであっても、拡大セルに照射するアンテナビームの形成は、その拡大セルに含まれる複数のセルに対応付けられた複数の一次放射器に同じ周波数リソースの電磁波を放射させることで実現される。
拡大セルとする隣接する複数のセルは、同一セルグループ内に存在する場合、隣接するセルグループ内に存在する場合、及び隣接するクラスタ内に存在する場合の3つに大別することができる。以降、場合分けして、形成される拡大セル、その拡大セルに割り当てる通信リソースについて具体的に説明する。
図5は、同一セルグループ内で拡大セルを形成する場合に、実際に形成する拡大セルの第1の例、及びその拡大セルに割り当てる通信リソースを説明する図である。図6は、同一セルグループ内で拡大セルを形成する場合の第1の例で形成された拡大セルに割り当てる通信リソースを説明する図である。
この図5に示す第1の例は、セルグループ10−1のセル11−3とセル11−4をカバーする拡大セル11−5を形成する例であり、セル11−3、及び11−4を示す丸は破線で描いている。この拡大セル11−5は、例えばセル11−2〜11−4がカバーするエリア内で降雨が発生するか、或いはその降雨が予想される場合に形成される。ここでの降雨は、降雪を含む意味で用いている。
セルグループ10−1の各セル11−1〜11−4には、周波数リソースF1が割り当てられている。セル11−3及び11−4には、それぞれ、時分割スロットT3及びT4が割り当てられている。このことから、拡大セル11−5には、図6に示すように、周波数リソースF1、時分割スロットT3及びT4が割り当てられる。図6では、割り当てられた時分割スロットT3及びT4を示す枠を網掛けして表している。これは、他の図でも同様である。
拡大セル11−5に照射するアンテナビームの形成に用いられる一次放射器は、時分割スロットT3、及びT4の期間、周波数リソースF1の電磁波を放射させる。それにより、セル11−3とセル11−4が重なる領域では、電磁波の強度が特に大きく高くなる。この結果、その重なる領域、及びその付近が通信不能状態であっても、拡大セル11−5としてアンテナビームを照射することにより、その通信不能状態を解消することができる。
上記のように、隣接するセルグループ間では互いに異なる周波数リソースを割り当てている。そのため、同一セルグループ内で拡大セルを形成する場合、その拡大セルに置き換えられるセルに割り当てられていた周波数リソース、及び時分割スロットを使用することができる。従って、拡大セルの形成に伴い通信容量が低下するのは回避できる。拡大セルに置き換えない他のセルは、通信リソースを変更する必要はない。これらのことから、通信容量の低下の回避、及びハンドオーバによるシステム負荷の抑制を行いつつ、拡大セルの形成に伴う通信リソースの割り当て変更を容易に行うことができる。このような利点により、本実施の形態1では、通常時、セルグループを構成する各セルに同じ周波数リソースを割り当てている。
図7は、同一セルグループ内で拡大セルを形成する場合に、実際に形成する拡大セルの第1の例の変形例、及びその拡大セルに割り当てる通信リソースを説明する図である。
この変形例でも、セル11−3及びセル11−4をカバーする拡大セル11−5を形成する。しかし、この拡大セル11−5は、セル11−4のみと置き換えるものとして使用する。このことから、図7では、セル11−4を示す丸のみ破線で表している。
セル11−4のみと置き換える拡大セル11−5には、そのセル11−4に割り当てられていた周波数リソースF1と時分割スロットT4を割り当てている。セル11−3の通信リソースは変更しない。しかし、セル11−3、及び11−4の照射にそれぞれ用いる一次放射器は、上記第1の例と同様に、時分割スロットT3、及びT4の期間、周波数リソースF1の電磁波を放射させる。
このような用途の拡大セル11−5を形成する場合、セル11−3、及び11−4共に、通信リソースはそのまま使用する形となる。このため、上記第1の例とは異なり、ハンドオーバによるシステム負荷の増大を回避することができる。また、上記第1の例と同様に、セル11−3、及び11−4全体で通信不能状態となっている部分は無くすことができる。このような拡大セル11−5の形成、及び通信リソースの割り当ては、セル11−3に要求される通信容量よりセル11−4に要求される通信容量のほうが大きい場合に特に有効である。
図8は、同一セルグループ内で拡大セルを形成する場合に、実際に形成する拡大セルの第2の例、及びその拡大セルに割り当てる通信リソースを説明する図である。図9は、同一セルグループ内で拡大セルを形成する場合の第2の例で形成された拡大セルに割り当てる通信リソースを説明する図である。この図8に示す第2の例は、セルグループ10−1のセル11−2〜11−4をカバーする拡大セル11−6を形成する例である。この拡大セル11−6は、例えばセル11−2〜11−4がカバーするエリア内で降雨が発生するか、或いはその降雨が予想される場合に形成される。
セルグループ10−1の各セル11−2〜11−4には、それぞれ時分割スロットT2〜T4が割り当てられている。このことから、拡大セル11−6には、図8及び図9に示すように、周波数リソースF1、及び時分割スロットT2〜T4が割り当てられる。
図10は、同一セルグループ内で拡大セルを形成する場合に、実際に形成する拡大セルの第3の例、及びその拡大セルに割り当てる通信リソースを説明する図である。図11は、同一セルグループ内で拡大セルを形成する場合の第3の例で形成された拡大セルに割り当てる通信リソースを説明する図である。この図10に示す第3の例は、セルグループ10−1のセル11−1、2及び4をカバーする拡大セル11−7を形成する例である。この拡大セル11−7は、例えばセル11−1及び2の境界付近、並びにセル11−2及び4の境界付近の通信不良状態が予想される場合に形成される。
セルグループ10−1の各セル11−1、2及び4には、それぞれ時分割スロットT1、T2及びT4が割り当てられている。このことから、拡大セル11−7には、図10及び図11に示すように、周波数リソースF1、及び時分割スロットT1、T2及びT4が割り当てられる。
図12は、同一セルグループ内で拡大セルを形成する場合に、実際に形成する拡大セルの第4の例、及びその拡大セルに割り当てる通信リソースを説明する図である。図13は、同一セルグループ内で拡大セルを形成する場合の第4の例で形成された拡大セルに割り当てる通信リソースを説明する図である。この図12に示す第4の例は、セルグループ10−1の全セル11−1〜11−4をカバーする拡大セル11−8を形成する例である。この拡大セル11−8は、例えば全セル11−1〜11−4がカバーするエリアの中央付近が少なくとも通信不良状態となると予想される場合に形成される。
セルグループ10−1の各セル11−1〜11−4には、それぞれ時分割スロットT1〜T4が割り当てられている。このことから、拡大セル11−8には、図12及び図13に示すように、周波数リソースF1、及び時分割スロットT1〜T4が割り当てられる。
このように、同一セルグループ内で拡大セルを形成する場合、その拡大セルには、その拡大セルにカバーさせるセルの通信リソースを割り当てることができる。拡大セルに置き換えないセルは、割り当てた通信リソースをそのまま使用させることができる。これらのことから、通信リソースの割り当ての変更は最小限に抑えられ、その変更は容易となる。従って、ハンドオーバによるシステム負荷も最小限に抑えられる。また、拡大セルの形成に伴う通信容量の低下も回避することができる。
次に、隣接するセルグループ内に拡大セルを形成する場合について具体的に説明する。図14は、隣接するセルグループで拡大セルを形成する場合に、実際に形成する拡大セルの第1の例、及びその拡大セルに割り当てる通信リソースを説明する図である。図15は、隣接するセルグループで拡大セルを形成する場合の第1の例で形成された拡大セルに割り当てる通信リソースを説明する図である。
この図14に示す第1の例は、全てのセルグループ10−1〜10−4の一部をカバーする拡大セル141を形成する例である。その拡大セル141は、セル11−4、12−3、13−2及び14−1をカバーする。この拡大セル141の形成は、例えばセル11−4、12−3、13−2及び14−1によってカバーされるエリアの中央付近が少なくとも通信不能状態となると予想される場合に行われる。
各セルグループ10−1〜10−4には、それぞれ周波数リソースF1〜F4が割り当てられている。セル11−4、12−3、13−2及び14−1には、同じ時分割スロットT4が割り当てられている。拡大セル141と隣接する何れのセルにも時分割スロットT4は割り当てられていない。このことから、拡大セル141には時分割スロットT4が割り当てられる。周波数リソースは、周波数リソースF1〜F4のうちの1つ以上を割り当てることができる。図15は、拡大セル141に周波数リソースF1〜F4を全て割り当て、制御単位期間P毎に、用いる周波数リソースを変更しつつ、時分割スロットT4での通信を行う例を示している。具体的には、制御単位期間P(n)では周波数リソースF1を用い、次の制御単位期間P(n+1)では周波数リソースF2を用いていることを示している。図示しない制御単位期間P(n+2)では、例えば周波数リソースF3が用いられる。
図16は、隣接するセルグループ内で拡大セルを形成する場合に、実際に形成する拡大セルの第2の例、及びその拡大セルに割り当てる通信リソースを説明する図である。この図16に示す第2の例は、全てのセルグループ10−1〜10−4の一部、より具体的にはセル11−3、11−4、12−3、12−4、13−1、13−2、14−1及び14−2をカバーする拡大セル161を形成する例である。その拡大セル161は、例えばそれらのセル11−3、11−4、12−3、12−4、13−1、13−2、14−1及び14−2によってカバーされるエリア全体に降雨の発生が予想される場合に形成される。
各セルグループ10−1〜10−4には、上記のように、それぞれ周波数リソースF1〜F4が割り当てられている。セル11−4、12−3、13−2及び14−1には、同じ時分割スロットT4が割り当てられている。セル11−3、12−4、13−1、及び14−2には、同じ時分割スロットT3が割り当てられている。しかし、この時分割スロットT3は、クラスタ10に隣接するクラスタを構成するセルのなかでセル11−3、12−4、13−1、及び14−2のうちの1つ以上と隣接するセルにも割り当てられている。これら隣接するセルには、周波数リソースF1〜F4のうちの何れかが割り当てられている。これらのことから、拡大セル161には、時分割スロットT4を割り当てる。この時分割スロットT4を割り当てることにより、拡大セル161には、周波数リソースF1〜F4のうちの1つ以上を割り当てることができる。全ての周波数リソースF1〜F4を割り当てる場合、例えば図15に示すように、制御単位期間P毎に、用いる周波数リソースを変更しつつ、時分割スロットT4での通信を行わせれば良い。
図17は、隣接するセルグループで拡大セルを形成する場合に、実際に形成する拡大セルの第3の例、及びその拡大セルに割り当てる通信リソースを説明する図である。図18は、隣接するセルグループで拡大セルを形成する場合の第2の例で形成された2つの拡大セルに割り当てる通信リソースを説明する図である。
この図17に示す第3の例では、セル11−2及び12−1をカバーする拡大セル171と、セル13−2、13−4、14−1及び14−3をカバーする拡大セル172とを形成する。拡大セル171は、例えばセル11−2及び12−1によってカバーされるエリアの中央付近が通信不能状態となるか、或いはそのエリア内での降雨の発生が予想される場合に形成される。拡大セル172も同様に、例えばセル13−2、13−4、14−1及び14−3によってカバーされるエリアの中央付近が通信不能状態となるか、或いはそのエリア内での降雨が予想される場合に形成される。
セル11−2及び12−1には、同じ時分割スロットT2が割り当てられている。このことから、拡大セル171には、時分割スロットT2が割り当てられる。時分割スロットT2の割り当てにより、拡大セル171には、周波数リソースF1及びF2を割り当てることができる。図17に示す例では、周波数リソースF1及びF2を拡大セル171に割り当てている。
一方、セル13−2、13−4、14−1及び14−3には、時分割スロットT2或いはT4が割り当てられている。このことから、拡大セル172には、時分割スロットT2及びT4のうちの1つ以上を割り当てることができる。セル13−2、13−4、14−1及び14−3には、周波数リソースF3或いはF4が割り当てられている。拡大セル172には、周波数リソースF3及びF4の何れも割り当てることができる。図17に示す例では、時分割スロットT2及びT4、周波数リソースF3及びF4を拡大セル172に割り当てている。
複数の周波数リソースを拡大セル171及び172にそれぞれ割り当てた場合、図18に示すように、制御単位期間P毎に、用いる周波数リソースを変更しつつ、割り当てた時分割スロットで通信を行わせることができる。1つの周波数リソースを割り当て、割り当てた時分割スロットで通信を行わせても良い。その場合、拡大セル172では、各制御単位期間P内で時分割スロットT2及びT4を用いるようにしても良い。
このように、隣接するセルグループ内に拡大セルを形成する場合、その拡大セルが他のクラスタと隣接するか否かにより、割り当てる通信リソースが異なる。その拡大セルが他のクラスタと隣接しない場合、その拡大セルにカバーさせる各セルに割り当てている通信リソースは割り当て可能である。この割り当て可能な通信リソースを割り当てた場合、拡大セルにカバーされないセルの通信リソースの割り当ての変更は必要なく、通信リソースの割り当ての変更は最小限に抑えることができる。従って、拡大セルの形成に伴う通信リソースの割り当ては容易に行うことができ、ハンドオーバによるシステム負荷も最小限に抑えられる。また、拡大セルの形成に伴う通信容量の低下も回避することができる。
これに対し、拡大セルが他のクラスタと隣接する場合、この他のクラスタで隣接するセルに割り当てられている通信リソースを考慮し、拡大セルへの通信リソースの割り当てが行われる。それにより、拡大セルにカバーさせる各セルに割り当てられている周波数リソース、及び時分割スロットのなかで割り当て可能とする周波数リソース、及び時分割スロットを制限し、既存のセルとの間で発生する干渉を回避、或いは抑制する。割り当て可能とする周波数リソース、及び時分割スロットは、干渉を回避、或いは抑制可能な時分割スロット、或いは周波数リソースを選択し、残りのリソースをその選択結果に応じて決定する。それにより、図16に示す第2の例では、拡大セル161に割り当てる時分割スロットとして時分割スロットT4を選択し、その時分割スロットT4の選択により、周波数リソースF1〜F4を割り当て対象として決定している。
このような通信リソースの拡大セルへの割り当てにより、他のクラスタを構成するセルを含め、拡大セルにカバーされないセルの通信リソースの割り当ての変更は必要なくなり、通信リソースの割り当ての変更は最小限に抑えることができる。従って、拡大セルが他のクラスタと隣接する場合であっても、拡大セルの形成に伴う通信リソースの割り当ては容易であり、ハンドオーバによるシステム負荷も大きく抑制できる。
最後に、隣接するクラスタ内に拡大セルを形成する場合について具体的に説明する。図19は、隣接するクラスタ内に拡大セルを形成する場合に、実際に形成する拡大セルの例、及びその拡大セルに割り当てる通信リソースを説明する図である。図20は、隣接するクラスタ内に拡大セルを形成する場合の例で形成された拡大セルに割り当てる通信リソースを説明する図である。
この図19に示す例では、クラスタ10と、そのクラスタ10のセルグループ10−3及び10−4と隣接するクラスタ190とでカバーされるエリア内に拡大セル195が形成されている。この拡大セル195の形成は、例えばセル13−4、14−3、191−2、及び192−1によってカバーされるエリアの中央付近が通信不能状態となるか、或いはそのエリア内での降雨が予想された場合に行われる。
そのクラスタ10とクラスタ190内で隣接しているのはセル191−1、191−2、192−1、及び192−2である。拡大セル195は、クラスタ10内のセル13−4、14−3と、クラスタ190内のセル191−2、192−1をカバーする。
上記のように、クラスタは通信リソースを繰り返す単位である。そのため、同一セルグループを構成するセル191−1、及び191−2には同じ周波数リソースF1が割り当てられている。セル191−1には時分割スロットT1、セル191−2には時分割スロットT2がそれぞれ割り当てられている。一方、同一セルグループを構成するセル192−1、及び192−2には同じ周波数リソースF2が割り当てられている。セル192−1には時分割スロットT2、セル192−2には時分割スロットT1がそれぞれ割り当てられている。
セル13−4、14−3、191−2、及び192−1に割り当てられていた時分割スロットT2は、拡大セル195と隣接する何れのセルにも割り当てられていない。このことから、拡大セル195には時分割スロットT2が割り当てられる。この時分割スロットT2の割り当てにより、拡大セル195には、周波数リソースF1〜F4のうちの1つ以上を割り当てることができる。図20は、拡大セル195に周波数リソースF1〜F4を割り当て、制御単位期間P毎に、用いる周波数リソースを変更しつつ、時分割スロットT2での通信を行う例を示している。
このような通信リソースの拡大セル195への割り当てにより、拡大セルに置き換えないセルに対する通信リソースの割り当ての変更は不要となる。このため、通信リソースの割り当ての変更は最小限に抑えられ、その変更は容易となる。従って、ハンドオーバによるシステム負荷も最小限に抑えられる。また、拡大セルの形成に伴う通信容量の低下も回避することができる。
このように、拡大セルの形成に伴う通信リソースの割り当ては、基本的に拡大セルに通信リソースを割り当てる局所的なものとなる。これは、図1に示すような通信リソースの通常時の設定により実現される。
図21は、各セルへの通信リソースの通常時の他の割り当て例を説明する図である。この図21に示す例は、各セルグループ10−1〜10−4を構成する各セルに対し、それぞれ周波数リソースF1〜F4のうちの何れか、及び時分割スロットT1〜T4のうちの何れかを割り当てるようにした場合の例である。それにより、各セルグループ10−1には、周波数リソースF1〜F4の全て、及び時分割スロットT1〜T4の全てが割り当てられている。
図21に示す例において、セル11−4、及び12−3をカバーする拡大セル211を形成する場合、セル11−4、または12−3に割り当てていた周波数リソースF4と時分割スロットT4の組み合わせ、または周波数リソースF3と時分割スロットT3の組み合わせを拡大セル211に通信リソースとして割り当てることが考えられる。しかし、何れの組み合わせも、拡大セル211に隣接するセル12−4、またはセル11−3と通信リソースが重複するため、拡大セル211に単に割り当てることはできない。つまり、何れかの組み合わせを拡大セル211に割り当てるのであれば、1つ以上のセルで通信リソースの割り当て変更が必要となる。図21では、拡大セル211は破線で表している。
この場合、例えば、拡大セル211に周波数リソースF3、時分割スロットT4を割り当てることで、隣接するセル群との通信リソースの重複が回避可能である。あるいは、拡大セル211に周波数リソースF4、時分割スロットT3を割り当てることで、隣接するセル群との通信リソースの重複が回避可能である。つまり、拡大セル211に割り当てる通信リソースは、セル11−4、及び12−3に割り当てていた周波数リソース、時分割スロットの少なくとも一方を変更する必要があり、ハンドオーバ等によるシステム負荷の増大を招くことになる。
これに対し、図1に示すような各セルへの通信リソースの割り当てでは、上記のように、拡大セル211でカバーするセルと同じ周波数リソース、かつ同じ時分割スロットを拡大セルに割り当てることが可能である。このため、拡大セル211に置き換えることに伴い、ハンドオーバ等によるシステム負荷の増大を抑えることが可能である。また、拡大セル211に置き換えることに伴う通信容量の低下は回避できるか、或いは抑制できる。これらのことから、クラスタをセルグループに分け、周波数リソース、及び時分割スロットのうちの一方をセルグループ単位で同じとし、他方をセルグループ間で隣接するセルで同じとする図1に示すような通信リソースの割り当ては、極めて有効なものである。
図21に示すような例であっても、セルに割り当てる通信リソースとして時分割スロットを加えている。この時分割スロットを加えることにより、割り当て可能な通信リソースの内容数は増大する。このため、通信リソースに時分割スロットが含まれない場合と比較して、拡大セルを含むセル間での干渉を抑制する通信リソースの割り当てはより容易に行うことができる。
なお、本実施の形態1では、上記のように、衛星通信システムに適用される。しかし、適用可能な通信システムは、衛星通信システムのみに限定されない。本実施の形態1は、通信状況によりセルを変更する必要のある通信システムに幅広く適用することができる。このことから、通信システムは、例えば地上の移動体通信システムであっても良い。
また、本実施の形態1では、通信リソースとして、時分割スロットと周波数リソースを各セルに割り当てるようにしているが、時分割スロットと組み合わせる異なる種類のリソースは周波数リソースに限定されない。つまり、周波数リソースとは異なる種類のリソースを時分割スロットに組み合わせても良く、その異なる種類のリソースを更に組み合わせるようにしても良い。通信方式によっては、拡散符号も通信リソースの一つである。
クラスタを構成するセルの数は特に限定されるものではない。その数は、例えば割り当て可能な通信リソースの数、例えば時分割スロットと周波数リソースの組み合わせの数に応じて決定すれば良いものである。