JP6870851B2 - 機能的な一本鎖抗体の製造方法 - Google Patents

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本発明は、一本鎖抗体(scFv)の製造方法に関し、より詳しくは、scFvとフィブロインタンパク質との融合タンパク質を発現させた絹糸を精練せずに溶解し、得られた溶解液を希釈して、前記融合タンパク質を線維化させることなく塩濃度を低下させることを特徴とする、scFvの製造方法に関する。
抗体は、抗原と結合するドメイン(Fab)と免疫グロブリン受容体に結合するドメイン(Fc)より構成され、Fabドメインを介して病原体の抗原に結合し、それを排除して中和する免疫調節作用を発揮する。そして、その作用の根幹は、ペプチド、核酸、糖鎖、糖脂質、低分子化合物等の種々様々な抗原に対して特異的に結合できることにある。そのため、抗体は、前記免疫調節作用を目的とした医薬品(抗体医薬)のみならず、ウェスタンブロッティング、免疫沈降(プルダウンアッセイ)、フローサイトメトリー、免疫組織染色等の各種検出・精製方法に適したツールとしても利用され、開発が進められており、これらの市場は急速に拡大している。
通常、抗体は、検出・精製の対象とする抗原をウサギやマウス等の免疫動物に接種し、該動物の免疫系を刺激した後、その動物の血清(ポリクローナル抗体)を回収することで得ることができる。また、このように免疫系を刺激した動物から脾臓細胞等の抗体産生細胞を回収し、該抗体産生細胞とミエローマ細胞とを融合し、得られたハイブリドーマを選択することにより所望の抗原のみを検出・精製することのできる抗体(モノクローナル抗体)を作製することもできる。しかしながら、かかる動物や動物細胞を利用した方法には、活性を有する抗体を安定的に取得できる反面、大量生産に適していない、生産コストが非常に高くなるといった欠点がある。
これに対し、所望の抗体をコードする遺伝子をクローニングすることにより、タンパク質の大量生産に適した大腸菌等で抗体を生産することも試みられている。しかし、大腸菌で生産した場合には、得られる抗体がしばしば不溶化することが知られており、その精製にあたっては、ドデシル硫酸ナトリウム(SDS)等の変性剤でタンパク質を可溶化させる工程やその変性剤を取り除く透析等の工程が必要となる。さらにそのような多くの工程を経て得られた抗体は概して活性が低くなる傾向にあるため、大腸菌等を利用した方法には、活性を有する抗体を大量に生産しにくいという欠点がある。
一方、カイコは蛹化する際に自身を保護する目的で繭を作り出す。この繭はフィブロイン(Fibroin)という繊維構造とそれを取り巻くセリシンとの2種の構造からなる絹糸から作られている構造体である。絹糸は、およそ1.5kmに達する単繊維として存在するため、人類はこれをほどいて繊維とし、衣類等に利用してきた。近年では、絹糸を構成するするフィブロイン及びセリシンをそれぞれ加工することによって、パウダー(特許文献1)やフィルム(特許文献2及び3)、及びスポンジ様構造体(特許文献4)として利用することも可能となってきた。
2000年にカイコの遺伝子組換え技術が確立され(非特許文献1)、外来遺伝子を導入することによりカイコのシルクタンパク質を改変し、物性の向上や、機能性の付加を実現した新しいシルクを設計・創出することが可能となった。現在では目的のタンパク質を絹タンパク質の主成分であるフィブロイン層とセリシン層のどちらにでも発現させることが可能となり、これまでにフィブロインと蛍光タンパク質やサイトカイン等との融合タンパク質を発現する組換えカイコや(非特許文献2〜4)、セリシン層にヒト血清アルブミンや抗体分子を発現する組換えカイコの作出に成功している(非特許文献5及び6)。
その一方、カイコの絹糸から、発現させたタンパク質を機能的な状態で調製するための方法の開発も行われている。例えば、飯塚らは、マウスモノクローナル抗体のH鎖及びL鎖を中部絹糸腺細胞で発現させ、セリシン層にそれら抗体分子を分泌する組換えカイコを作製した。そして、該組換えカイコが作出した絹糸を3M 尿素(Urea)を含む50mM Tris−HCl(pH7.4)溶液で処理し、抗体分子を含んだセリシン溶液を透析後、プロテインGセファロースを用いてアフィニティー精製することにより、抗原特異的な結合活性を有する抗体分子を得ている(非特許文献6)。
また、日野らは、フィブロインL鎖にヒトbFGFを融合させた組換えタンパク質を絹糸に発現させ、絹糸を精練し、セリシン成分を除去した後、高濃度のチオシアン酸リチウムに溶解し、2−メルカプトエタノールを用いて内在性フィブロインから遊離させ、さらに透析を施し、変性剤の濃度を徐々に下げていくことで、活性のあるbFGFを獲得している(非特許文献4)。
このように、従来、外来タンパク質を発現させた絹糸から活性を有する該タンパク質を調製するためには、アフィニティー精製、プロテアーゼ処理、還元剤の添加及び精練等を行い、外来タンパク質から内在性タンパク質を遊離・除去する工程が必要であった。また、絹糸から外来タンパク質を抽出するために、変性剤(尿素、臭化リチウム溶液、塩化カルシウム/エタノール溶液、チオシアン酸リチウム、塩酸グアニジン、SDS等)が利用されていたため、外来タンパク質の抽出後に、変性剤を除去して、その活性を回復させるための再構成処理を施す必要があった。しかしながら、このような多工程を経て調製されたタンパク質、特に抗体は概してその活性が低くなる傾向にある。
そこで、絹糸から、発現させた抗体等の外来タンパク質を、内在性タンパク質を遊離・除去する工程等を要せずに簡便に調製する方法も開発された(特許文献5)。この方法においては、まず、一本鎖抗体とフィブロインタンパク質との融合タンパク質を発現させた絹糸を、そのまま臭化リチウムで溶解する。その後、透析により脱塩処理を行い、当該融合タンパク質におけるフィブロインタンパク質と内在性の他のフィブロインタンパク質との親和性を利用して複合体を形成させることにより、再構成された一本鎖抗体が線維化(ゲル化)した組成物として調製される。
この方法は、内在性タンパク質を遊離・除去する必要がない点で簡便であると言えるが、発現させた一本鎖抗体を再構成させるための透析処理において、透析外液として大量の脱イオン水を消費するとともに、透析平衡化に長時間を要するという問題点があった。
特開2004−123683号公報 特開2008−173312号公報 特開平9−192210号公報 特開2002−186847号公報 特許第5812256号公報
Tamura,T.ら、Nat.Biotechnol.、2000年、18巻、81〜84ページ Inoue,S.ら、Insect Biochem.Mol.Biol.、2005年、35巻、51〜59ページ Kojima,K.ら、Biosci.Biotechnol.Biochem.、2007年、71巻、2943〜2951ページ Hino,R.ら、Biomaterials.、2006年、27巻、5715〜5724ページ Ogawa,S.ら、J.Biotechnol.、2007年、128巻、531〜544ページ Iizuka,M.ら、FEBS J、2009年、276巻、5806〜5820ページ
本発明は、このような従来技術の状況に鑑みてなされたものであり、その目的は、機能的な一本鎖抗体を含む組成物を、より簡便かつ迅速に調製する方法を提供することにある。
本発明者らは、前記目的を達成すべく鋭意研究を重ねた結果、一本鎖抗体(scFv)をフィブロインタンパク質と融合させて絹糸に発現させ、得られた絹糸を精練せずに溶解し、この溶解液を希釈して塩濃度を低下させることにより、意外にも、抗原への結合活性を高く保持した一本鎖抗体を含む組成物を、線維化(ゲル化)させることなく、簡便かつ迅速に製造できることを見出し、本発明を完成するに至った。
本発明は、より詳しくは、下記を提供するものである。
[1]抗原に対して結合活性を有する一本鎖抗体の製造方法であって、
(a)一本鎖抗体とフィブロインタンパク質との融合タンパク質を発現させた絹糸を精練せずに溶解する工程と、
(b)工程(a)で得られた前記融合タンパク質の溶解液を希釈して、前記融合タンパク質を線維化させることなく塩濃度を低下させる工程と、
を含む方法。
[2]抗原に対して結合活性を有する一本鎖抗体を保持する担体の製造方法であって、
(a)一本鎖抗体とフィブロインタンパク質との融合タンパク質を発現させた絹糸を精練せずに溶解する工程と、
(b)工程(a)で得られた前記融合タンパク質の溶解液を希釈して、前記融合タンパク質を線維化させることなく塩濃度を低下させる工程と、
(c)工程(b)で得られた希釈された溶解液を担体に接触させる工程と
を含む方法。
[3]分子内又は分子間の水素結合を切断する性質を有する溶液で絹糸を溶解する、[1]または[2]に記載の製造方法。
[4]前記フィブロインタンパク質が、フィブロインL鎖及びフィブロインH鎖からなる群から選択される少なくとも一のタンパク質であることを特徴とする、[1]から[3]のいずれかに記載の製造方法。
本発明の一本鎖抗体の製造方法においては、機能的な一本鎖抗体を調製するために、透析による線維化(ゲル化)といった工程は不要であり、希釈により塩濃度を低下させればよい。このため、本発明によれば、絹糸から一本鎖抗体をその活性を維持したまま、非常に簡便かつ迅速に調製することが可能となる。精練処理を行わず、かつ、線維化させることなく、機能的な一本鎖抗体を含む組成物を調製できたことは、驚くべきことである。本発明により、一本鎖抗体を発現させた絹糸を塩濃度の高い溶媒に溶かした状態で長期保存し、使用時に、希釈により塩濃度を低下させて機能的な一本鎖抗体を調製することが可能となった。
抗WASPモノクローナル抗体を産生するハイブリドーマ細胞から一本鎖抗体(scFv)DNAを調製する過程を示す概念図である。 フィブロインL鎖−抗WASP−scFv融合タンパク質を絹糸に発現させるためのベクター(pBac[3XP3−DsRed2afm]−LLL−anti−WASP−scFv−Myc)の構造を示す図である。 図3上は、フィブロインL鎖−抗WASP−scFv融合タンパク質を発現させるためのベクターとコントロールとして用いたフィブロインL鎖−EGFP融合タンパク質を発現させるためのベクターの構造を示す図である。図3下は、これらベクターを導入した組換えカイコ系統(それぞれ「S01」、「K27」と称する)と野生型系統を明視野観察及び蛍光観察した結果を示す写真である。 組換えカイコ系統(S01、K27)と野生型系統のシルク溶液における組換えタンパク質の発現を検出した結果を示す電気泳動像である。 組換えカイコ産生繭から、シルク溶液でコーティングされたELISAプレートを作製するまでの過程を示す概要図(参考写真を含む)である。 組換えカイコ系統(S01、K27)と野生型系統のシルク溶液でコーティングされたELISAプレートを利用して、抗原への結合活性を評価した結果を示すグラフである。
本発明は、抗原に対して結合活性を有する一本鎖抗体の製造方法であって、一本鎖抗体とフィブロインタンパク質との融合タンパク質を発現させた絹糸を精練せずに溶解する工程(工程(a))と、工程(a)で得られた前記融合タンパク質の溶解液を希釈して、前記融合タンパク質を線維化させることなく塩濃度を低下させる工程(工程(b))と、を含む方法を提供する。
本発明において「一本鎖抗体(single chain fragment variable:scFv)」とは、抗体分子の抗原と結合するドメイン(Fab)を構成する重鎖(H鎖)及び軽鎖(L鎖)から可変領域(V及びV)を取り出して、リンカーを介して結合させた分子を意味する。本発明の一本鎖抗体には、単一のポリペプチド鎖中に複数のVとVとを有している抗体も含まれる。一本鎖抗体としては、例えば、二つのVと二つのVとを前記リンカー等で結合した一本鎖抗体(sc(FV))が挙げられる。このような一本鎖抗体においては、通常複数のリンカーが必要となるが、全て同じリンカーであってもよく、異なるリンカーであってもよい。また、本発明の一本鎖抗体には、リンカーペプチドの長さを短く(例えば5アミノ酸程度)設定して、同一ポリペプチド鎖内でのVとVとの結合を抑制することにより形成される二量体(ダイアボディ、diabody)も含まれる。
本発明の一本鎖抗体におけるリンカーは、その両端に連結されたV及びVの発現や、VとVとの結合を阻害するものでなければ特に制限されない。リンカーペプチドの長さは、通常、1〜100アミノ酸、好ましくは1〜50アミノ酸、より好ましくは1〜30アミノ酸、特に好ましくは12〜18アミノ酸(例えば15アミノ酸)である。本発明においては、「(GGGGS)×3」という15アミノ酸からなるポリペプチドをリンカーとして好適に用いることができる(なお、GはグリシンをSはセリンを表わす)。
一本鎖抗体の調製は、例えば、次のようにして行うことができる。まず、目的の抗原と特異的に結合するモノクローナル抗体を発現しているハイブリドーマよりmRNAを単離し、そのmRNAを用いて作製したcDNAライブラリーから、そのモノクローナル抗体のV及びVをコードするcDNAをそれぞれ単離する。次いで、VをコードするcDNAとVをコードするcDNAの間にリンカーをコードするDNAを挿入し、遺伝子組換え技術により、一本鎖抗体をコードする組換えDNAを構築する。
cDNAライブラリーを作製せずに、mRNAよりRT−PCRを用いて、V及びVをコードする遺伝子を直接増幅させ、こうして増幅して得られた断片を用いて、遺伝子組換え技術により、一本鎖抗体をコードするDNAを構築することもできる。
本発明において「フィブロインタンパク質」とは、フィブロインL鎖、フィブロインH鎖及びフィブロヘキサメリン(P25)からなる群から選択される少なくとも一のタンパク質を意味する。フィブロインタンパク質は、フィブロインL鎖とフィブロインH鎖とがジスルフィド結合し、この結合した分子6個に対し1つの割合でフィブロヘキサメリンが結合し、複合体(フィブロイン複合体)が形成されることが知られている。
本発明の「フィブロインL鎖」は、分子量が約3万Daのフィブロインタンパク質であり、典型例として、GenBankアクセッション No.NP_001037488.1で特定されるタンパク質のうちの17〜262番目のアミノ酸配列からなるタンパク質(GenBankアクセッション No.NM_001044023.1で特定されるDNAのうちの90〜827番目の塩基配列からなる遺伝子)が挙げられる。また、このタンパク質は、シグナルペプチド(GenBankアクセッション No.NP_001037488.1で特定されるタンパク質のうちの1〜16番目のアミノ酸配列からなるタンパク質)が前駆体より切断、除去されることにより得られる成熟型であるから、本発明の「フィブロインL鎖」としては、例えば、GenBankアクセッション No.NP_001037488.1で特定されるタンパク質(GenBankアクセッション No.NM_001044023.1で特定される遺伝子)が挙げられる
本発明の「フィブロインH鎖」は、分子量が約35万Daのフィブロインタンパク質であり、典型例として、GenBankアクセッション No.NP_001106733.1で特定されるタンパク質のうちの22〜5263番目のアミノ酸配列からなるタンパク質(GenBankアクセッション No.NM_001113262.1で特定されるDNAのうちの64〜15789番目の塩基配列からなる遺伝子)が挙げられる。また、このタンパク質は、シグナルペプチド(GenBankアクセッション No.NP_001106733.1で特定されるタンパク質のうちの1〜21番目のアミノ酸配列からなるタンパク質)が前駆体より切断、除去されることにより得られる成熟型であるから、本発明の「フィブロインL鎖」としては、例えば、GenBankアクセッション No.NP_001106733.1で特定されるタンパク質(GenBankアクセッション No.NM_001113262.1で特定される遺伝子)が挙げられる。
本発明の「フィブロヘキサメリン」は、分子量が約2.5万Daのフィブロインタンパク質であり、「P25」とも称されるフィブロインタンパク質である。その典型例として、GenBankアクセッション No.NP_001139413.1で特定されるタンパク質のうちの17〜220番目のアミノ酸配列からなるタンパク質(GenBankアクセッション No.NM_001145941.1で特定されるDNAのうちの49〜660番目の塩基配列からなる遺伝子)が挙げられる。また、このタンパク質は、シグナルペプチド(GenBankアクセッション No.NP_001139413.1で特定されるタンパク質のうちの1〜16番目のアミノ酸配列からなるタンパク質)が前駆体より切断、除去されることにより得られる成熟型であるから、本発明の「フィブロインL鎖」としては、例えば、GenBankアクセッション No.NP_001139413.1で特定されるタンパク質(GenBankアクセッション No.NM_001145941.1で特定される遺伝子)が挙げられる。
本発明の一本鎖抗体と融合する「フィブロインタンパク質」としては、融合タンパク質が前記フィブロイン複合体の構成要素となりうる限り、変異体であっても、部分的な断片であってもよい。従って、前記「フィブロインL鎖」、「フィブロインH鎖」又は「フィブロヘキサメリン」の変異体や部分的断片も、本発明の「フィブロインタンパク質」に含まれる。
なお、部分的断片としては、例えばフィブロインL鎖−GFP融合タンパク質において、下記部分的断片の有効性が実証されていることから、「フィブロインL鎖」においては、GenBankアクセッション No.NP_001037488.1で特定されるタンパク質のうちの1(メチオニン残基)〜242番目(アラニン残基)のアミノ酸配列からなるタンパク質であることが好ましい。また、「フィブロインH鎖」においては、フィブロインL鎖とヘテロダイマーを形成して(S−S結合を形成して)フィブロインタンパク質として分泌可能なことが確認されたフィブロインH鎖の最小単位であるという観点から、GenBankアクセッション No.NP_001106733.1で特定されるタンパク質のうちの、1(メチオニン残基)〜153番目(アラニン残基)のアミノ酸配列からなるタンパク質及び5205(セリン残基)〜5263番目(システイン残基)のアミノ酸配列からなるタンパク質であることが好ましい。
本発明の「一本鎖抗体とフィブロインタンパク質との融合タンパク質」としては、前記一本鎖抗体と、フィブロインL鎖、フィブロインH鎖、及びフィブロヘキサメリンからなる群から選択される少なくとも一のタンパク質とが融合しているタンパク質であればよい。一本鎖抗体が前記フィブロイン複合体の表面上に配置され易く、より高い抗原特異性の一本鎖抗体が得られ易くなるという観点から、前記一本鎖抗体と融合させるフィブロインタンパク質は、フィブロインL鎖及びフィブロインH鎖からなる群から選択される少なくとも一のタンパク質であることが好ましい。
フィブロインタンパク質は、一本鎖抗体のN末側、C末側のいずれに融合させてもよく、またN末側及びC末側の両方に融合させてもよい。さらに、直接的に一本鎖抗体に融合させてもよく、リンカーを介して間接的に融合させてもよい。リンカーペプチドの長さは、通常、1〜100アミノ酸、好ましくは1〜50アミノ酸、より好ましくは1〜30アミノ酸である。
「一本鎖抗体とフィブロインタンパク質との融合タンパク質」には、また他の機能性タンパク質が融合されていてもよい。この場合、他の機能性タンパク質は、融合タンパク質のN末側、C末側のどちらか一方若しくは両側、又は一本鎖抗体とフィブロインタンパク質との間に、直接的に又は間接的に融合させることができる。他の機能性タンパク質としては特に制限はなく、本発明の融合タンパク質に付与したい機能に応じて適宜選択される。例えば、融合タンパク質に付与したい機能が該融合タンパク質の精製や検出等であれば、緑色蛍光タンパク質(GFP)、ルシフェラーゼタンパク質、Myc−タグ(tag)タンパク質、His−タグタンパク質、ヘマグルチン(HA)−タグタンパク質、FLAG−タグタンパク質(登録商標、Sigma−Aldrich社)、グルタチオン−S−トランスフェラーゼ(GST)タンパク質が挙げられる。
前記融合タンパク質の絹糸における発現は、当業者は公知の手法により行うことができる。公知の手法としては、前記融合タンパク質を発現させるためのベクターを構築し、該ベクターをカイコに導入して前記融合タンパク質を発現させる方法が挙げられる。
フィブロインタンパク質を合成・分泌するカイコの後部絹糸腺において、前記融合タンパク質を発現させる場合、前記ベクターにおいて、前記融合タンパク質をコードするDNAは、カイコの後部絹糸腺における発現を保証するプロモーターの下流に連結されている。このようなプロモーターとしては、例えば、フィブロインL鎖遺伝子、フィブロインH鎖遺伝子又はフィブロヘキサメリン(P25)遺伝子のプロモーターを好適に用いることができる。ベクターは、その他の発現制御領域、エンハンサー、ターミネーター、ポリAシグナル、非翻訳領域(5’−UTR、3’−UTR)等を有していてもよい。
また、前記ベクターにおいて、前記融合タンパク質をコードするDNAとその制御領域とを備えた発現カセット以外に、他のタンパク質をコードするDNA及びその発現制御領域を備えていてもよい。他のタンパク質をコードするDNAとしては特に制限はなく、例えば、GFPやDsRed等のレポータータンパク質をコードする遺伝子、薬剤耐性遺伝子が挙げられる。他のタンパク質をコードするDNAの発現制御領域は、配列内リボソーム進入部位(Internal Ribosome Entry Site、IRES)を介して、前記融合タンパク質をコードするDNAのプロモーターやエンハンサーを共有していてもよく、前記融合タンパク質をコードするDNAの発現制御領域とは異なるプロモーター等を備えていてもよい。発現制御領域としては、例えば、3×P3プロモーター、カイコアクチンプロモーター、ショウジョウバエ由来のHSP70プロモーター、エンハンサー、ターミネーター、ポリAシグナル、非翻訳領域(5’−UTR、3’−UTR)が挙げられる。
前記ベクターにおける発現カセット等をカイコの染色体内に挿入することができるベクターとしては、例えば、トランスポゾンを利用したベクターを好適に用いることができる。トランスポゾンを利用したベクターとしては、例えば、piggyBac、Minos、Mariner等のDNAトランスポゾンを利用したベクターが挙げられる。なお、前記ベクターにおいて、DNAトランスポゾンの一対の末端反復配列(逆位末端反復配列)の間に前記発現カセットを配置することにより、転移酵素によって前記ベクターから該末端反復配列に挟まれた前記発現カセットが切り出され、カイコの染色体内の特定の配列(例えば、piggyBacを用いた場合には、TTAA配列)を標的としてランダムに挿入されるようになる。
従って、トランスポゾンを利用したベクターを用いる場合には、各トランスポゾンに対応した転移酵素もカイコに導入する。転移酵素はそのままカイコに導入してもよく、転移酵素をコードするmRNA又は転移酵素をコードするプラスミドベクター(ヘルパープラスミド)を導入してもよい。ヘルパープラスミドにおいて、前記転移酵素を発現させるためのプロモーターとしては、例えば、内在性の転移酵素遺伝子のプロモーター、カイコアクチンプロモーター、ショウジョウバエ由来のHSP70プロモーターが挙げられる。
本発明において、このように構築した前記融合タンパク質を発現させるためのベクターを導入し、該融合タンパク質が発現している絹糸を産生するカイコを調製する方法としては、例えば、該ベクター等をカイコの卵に注入し、該卵から孵化して成育させ得られたF0カイコを同胞交配又は野生型カイコと交配し、得られるF1カイコから前記融合タンパク質を絹糸に発現するカイコを選択する方法が挙げられる。
前記ベクター等のカイコの卵への注入は、当業者に公知の手法を適宜選択して行うことができる。公知の手法としては、例えば、DNA注入用の管を用いてカイコの発生初期卵に直接注入(マイクロインジェクション)する方法や、針やレーザー等を利用して物理的又は化学的に卵殻に穴を空けた後に、該穴から前記ベクター等を注入する方法が挙げられる。また、前記ベクターをカイコの卵の注入する際に、前記転移酵素や前記ヘルパープラスミドを併せて注入してもよい。
F1カイコから前記融合タンパク質を絹糸に発現するカイコを選択する方法としては、例えば、前記発現ベクターとしてGFPやDsRed等の蛍光タンパク質をコードする遺伝子を備えているものを用いた場合には、F1世代の卵や幼虫に励起光を照射することにより卵や幼虫から発せられる蛍光を指標に選択する方法が挙げられる。特に、3×P3プロモーターによって発現が制御されている蛍光タンパク質を利用した場合には、3×P3プロモーターは神経系統(特に眼)での遺伝子発現を促す作用を有するため、F1世代の卵や幼虫の神経系統や眼において蛍光を発する個体を選択することにより、前記融合タンパク質が発現している絹糸を産生するカイコを選択することができる。
このように調製した前記カイコから、一本鎖抗体とフィブロインタンパク質との融合タンパク質を発現させた絹糸を調製する方法としては、例えば、カイコの絹糸腺内腔内に蓄積された絹糸を回収する方法、カイコが吐糸した絹糸を回収する方法、またはカイコが形成した繭を回収する方法が挙げられる。
なお、後部絹糸腺で合成されたフィブロイン繊維は、中部絹糸腺に送られて濃縮され、さらに、ここで合成されているセリシンに包まれることになる。そして、このようにして合成された絹糸(液状絹糸)は吐糸口につながる前部絹糸腺に送られることになる。従って、絹糸腺内腔内に蓄積された絹糸(液状絹)は、絹糸腺をカイコから採取し、回収した絹糸腺から絹糸腺を構成する細胞(絹糸腺細胞)を除去することにより調製することができる。絹糸腺細胞の除去する方法としては、例えば、絹糸腺を純水に浸漬し、絹糸腺細胞をふやけさせた後に該細胞を取り除く方法、抽出した絹糸腺を30〜100%エタノールに浸漬し、フィブロイン及びセリシンを固定化した後に、絹糸腺細胞を除去する方法が挙げられる。
本発明においては、こうして調製した、一本鎖抗体とフィブロインタンパク質との融合タンパク質を発現させた絹糸を溶解する。「絹糸」は、カイコの後部絹糸腺で合成・分泌される3種のフィブロインタンパク質からなるフィブロイン繊維と、該繊維とを包むセリシン層とからなる動物繊維である。本発明において溶解する対象となる「絹糸」は、セリシン層が除去(精練)されていないものである。
一本鎖抗体とフィブロインタンパク質との融合タンパク質を発現させた絹糸の溶解においては、分子内又は分子間の水素結合を切断する性質を有する溶液を好適に用いることができる。このような溶液としては、例えば、臭化リチウム水溶液、塩化カルシウム水溶液、塩化エチレンジアミン水溶液、チオシアン酸ナトリウム水溶液、チオシアン酸リチウム水溶液、硝酸マグネシウム水溶液、塩化カルシウム/エタノール、MMNO(N−メチルモルホリン N−オキシド)、塩化リチウム/N,N−DMAc(N,N−ジメチルアセトアミド)、ヘキサフルオロイソプロパノール、硝酸カルシウム/メタノール、又はこれらの混合溶液が挙げられる。これら水溶液の中では、溶解中にタンパク質分子の分解が確認されず、溶解時に加熱の必要がなく、また溶解にかかるコストが低いという観点から、臭化リチウム水溶液を用いることが好ましい。
また、分子内又は分子間の水素結合を切断する性質を有する溶液のpHとしては特に制限はないが、pH2〜12の溶液であることが好ましい。さらに、前記絹糸の溶解に用いられる溶液の濃度としては、通常8〜10M、好ましくは9〜9.3Mである。また、前記絹糸の溶解は、20〜100℃で10分〜12時間かけて攪拌しながら行うことが好ましく、9M 臭化リチウム水溶液を用いて室温(20〜55℃)にて1〜4時間程度攪拌しながら行うことがより好ましい。
本発明においては、こうして得られた前記融合タンパク質の溶解液を希釈して、前記融合タンパク質を線維化させることなく塩濃度を低下させる。従来法(特許文献5)においては、前記融合タンパク質の溶解液を透析により徐々に脱塩して、融合タンパク質を非変性状態に戻し、前記融合タンパク質中のフィブロインタンパク質を介して、内在性の他のフィブロインタンパク質、及びセリシンとの複合体を形成させ、フィブロインタンパク質を繊維化(ゲル化)し、これにより活性を持つ一本鎖抗体を得ている。一方、本発明においては、繊維化(ゲル化)させることなく、希釈により溶解液の塩濃度を低下させている点で、本質的に異なる。このような簡便な処理により、抗原への優れた結合活性を有する一本鎖抗体を取得できたことは、驚くべきことである。
本発明における希釈液は、溶解液の塩濃度を低下させうるものであれば、特に制限はなく、例えば、トリス塩酸緩衝液(Tris−HCl)、トリスEDTA緩衝液(Tris−EDTA)、リン酸緩衝生理食塩水(PBS)、リン酸緩衝液、炭酸緩衝液、ELISA用コーティングバッファー(例えば、ELISA coating buffer(pH9.5)(BioLegend社))、水などが挙げられる。希釈液のpHは、通常、6〜10である。
希釈処理は、前記融合タンパク質の変性、分解、凝集等が生じにくいという観点から、4〜60℃の条件下で実施することが好ましい。
こうして調製された繊維化していない液状組成物は、担体に作用させることによって、抗原に対して結合活性を有する一本鎖抗体を保持する担体を製造することができる。従って、本発明は、抗原に対して結合活性を有する一本鎖抗体を保持する担体の製造方法であって、一本鎖抗体とフィブロインタンパク質との融合タンパク質を発現させた絹糸を精練せずに溶解する工程(工程(a))と、工程(a)で得られた前記融合タンパク質の溶解液を希釈して、前記融合タンパク質を線維化させることなく塩濃度を低下させる工程(工程(b))と、工程(b)で得られた希釈された溶解液を担体に接触させる工程(工程(c))と、を含む方法を提供する。
担体としては特に限定はないが、例えば、プレート、ビーズ、ゲル、スポンジ、布、繊維、フィルター、マスク、シート等が挙げられる。より具体的には、ELISA(Enzyme−Linked ImmunoSorbent Assay)などの免疫学的測定法で用いられるウェルプレート、ラテックスビーズ、ポリスチレンビーズ、ガラスビーズ、磁性ビーズ、金属粒子、シリカビーズ、ジルコニアビーズ、セルロースゲル、アガロースゲル、ポリマーゲル、スポンジ用構造物、不織布、繊維等、及び、有害物質・有害微生物の除去等に用いられるフィルター、マスク、拭き取りシート等が挙げられる。一本鎖抗体の抗原への結合活性は、免疫学的手法(例えば、ELISA解析)を実施することにより評価することができる(実施例、図6を参照のこと)。
前記担体への固定化方法としては特に制限はなく、公知の方法を利用することができる。例えば、担体としてウェルプレートを用いる場合には、例えば、希釈された溶解液をウェルプレートに分注し、4〜37℃で2〜12時間静置すればよく、担体としてポリスチレンビーズを用いる場合には、例えば、希釈された溶解液をポリスチレンビーズと混合し、4〜37℃で2〜12時間撹拌し、遠心して沈殿物を回収し、さらに2%BSAを含むPBSに懸濁して(ブロッキング)、遠心して沈殿物を回収すればよく、さらに担体としてスポンジや布を用いる場合には、例えば、希釈された溶解液にスポンジや布を4〜37℃で1〜12時間浸したのち、20〜100%エタノールおよびメタノールにさらに浸して固定化すればよい。
以下、実施例に基づいて本発明をより具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
[方法]
(1)ヒトやマウスの免疫細胞において、シグナル伝達分子として機能することが知られているWiskott−Aldrich syndrome protein(WASP)に特異的なモノクローナル抗体を産生するハイブリドーマから全RNAを抽出し、SMARTTM RACE cDNA amplification kit(Clontech社)を用いて5’−RACE法によりモノクローナル抗体のH鎖及びL鎖の可変部(VH,VL)の遺伝子をクローニングした。VH及びVLのDNAフラグメントをフレキシブルなリンカー配列(GGGGS×3)を介して結合した一本鎖抗体(scFv)を構築した(図1)。
(2)この抗WASP−scFv DNAフラグメントのC末端にMycタグを付加し、抗WASP−scFv−Myc DNAフラグメントをpLLLベクターへ挿入し、フィブロインL鎖と抗WASP−scFvの融合タンパク質(FibL−anti−WASP−scFv−Myc)を発現するDNAコンストラクトを得た。さらに、この発現ユニットを組換えカイコ用ベクターに挿入してpBac[3XP3−DsRed2afm]−LLL−anti−WASP−scFv−Mycを構築した。このプラスミドDNAとpiggyBacの転移酵素をコードするヘルパープラスミドpHA3PIGのDNAをカイコ受精卵にマイクロインジェクションした(図2)。
なお、図2に記載のEcoRIサイトからBglIIサイトまでの塩基配列を配列表の配列番号:1にて示し、また該塩基配列がコードするアミノ酸配列を配列表の配列番号:2にて示す。なお、配列番号:1に記載の塩基配列において、1〜6bpはEcoRIサイトであり、7〜677bpはFib−L Pro(フィブロインL鎖遺伝子のプロモーター配列)であり、678〜1402bpはFib−L ORF(フィブロインL鎖の1位(メチオニン残基)〜242位(アラニン残基)からなるタンパク質をコードする塩基配列)であり、1403〜1772bpはVH(抗WASP−scFvのVHをコードする塩基配列)であり、1773〜1817bpはlinker(「フレキシブルなリンカー配列(アミノ酸配列:GGGGS×3)」をコードする塩基配列)であり、1818〜2165bpはVL(抗WASP−scFvのVLをコードする塩基配列)であり、2172〜2201bpはmyc−tag(Myc−tagをコードする塩基配列)であり、2205〜2210bpはHidIIIサイトであり、2211〜2678bpはFib−Lp(A)(フィブロインL鎖遺伝子の3’UTR及びポリAシグナル)であり、2679〜2684bpはBglIIサイトである。
(3)フィブロインL鎖と抗WASP−scFvの融合タンパク質を発現する組換えカイコS01系統を作出した。またコントロールとしてフィブロインL鎖と緑色蛍光タンパク質(EGFP)を発現する組換えカイコK27系統を作出した(図3)。
(4)野生型(W1)及び組換えカイコ(S01, K27)が産生した繭300mg(繭2〜3個)を2〜3mm角程度に切り、一度、5mLの70%エタノールで洗浄した後、3mLの9M臭化リチウム−90mM Tris−HCl(pH9.0)を加え、37℃で4時間撹拌させながら完全に溶解させた。最終的にシルク溶液の濃度を80mg/mL(9M LiBr中)に調製した。調製したシルク溶液を一部用いて、シルク溶液中の組換えタンパク質の発現量をSDS−PAGEでチェックした(図4)。
(5)9M臭化リチウム溶液で溶解したシルク溶液(80mg/mL)を1mM Tris−HCl(pH8.0)を用いて0.25mg/mLの濃度まで希釈(320倍希釈)し、希釈したシルク溶液をそのまま96ウェルプレートに100μLずつ分注し、4℃で一晩コーティングした(図5)。
(6)シルク溶液をコーティングした96ウェルプレートをPBSで3回洗浄後、ブロッキング液(ELISA Assay Diluent(BioLegend社))を200μLずつ各ウェルに分注し、室温で60分間ブロッキングを行った。PBS−Tweenで5回洗浄後、大腸菌で発現させた組換えタンパク質GST−WASP15を抗原として分注し、室温で120分間反応させた。PBS−Tweenで5回洗浄後、抗GST抗体(MBL社)(1/5000希釈したものを100μL)を分注し、室温で60分間反応させた。さらにPBS−Tweenで5回洗浄後、HRP標識抗ウサギIg抗体(Dako社)(1/4000希釈したものを100μL)を分注し、室温で60分間反応させた。PBS−Tweenで5回洗浄後、ELISA発色基質(ELISA POD基質TMB溶液(Easy)(ナカライテスク社)を100μLずつ分注し、発色させた(室温、20分間)。発色確認した後、各ウェルに1mol/L−硫酸を100μLずつ加え、反応を停止し、マイクロプレートリーダー(iMrakTM Microplate Reader, Bio−Rad社)にて、測定波長450nmの吸光度を測定した(図6)。
[結果]
(1)野生型(W1)及び組換えカイコ(S01, K27)が産生した繭を9M臭化リチウム−90mM Tris−HClで溶解し、シルク溶液中の組換えタンパク質の発現量についてSDS−PAGEとクマシー染色により確認した。内在性フィブロインL鎖に対して、S01カイコ産生繭では約10%程度、K27カイコ産生繭では5−8%程度が組換えタンパク質に置き換わていると推測された(図4)。これらの数値は、フィブロインL鎖との融合タンパク質として組換えカイコで発現させた時の平均的な値である。
(2)9M臭化リチウム溶液で溶解した高濃度シルクタンパク質(80mg/mL)を1mM Tris−HCl(pH8.0)で0.25mg/mLまで希釈し(1/320希釈)、96ウェルプレートにコーティングしてELISAを行った結果、S01(FibL−anti−WASP−scFv)カイコ由来のシルク溶液において、抗原(GST−WASP15)の濃度依存的に吸光度の上昇が確認された(図6)。このことから、フィブロインL鎖と抗WASP−scFvの融合タンパク質を発現している繭に対して、高濃度の臭化リチウム溶液による溶解処理と、低塩濃度の水溶液による希釈処理を行うことのみで、得られた本鎖抗体に、抗原への結合性・特異性を発揮させることに成功した。
以上説明したように、本発明によれば、抗体をその結合活性を維持させたまま、非常に簡便かつ迅速に絹糸から調製することが可能となる。本発明により、抗体生産・精製・担体への固定化のプロセスが簡略化され、かつ、多くの透析液と時間を必要とする透析処理がないことから、従来の方法と比較して安価に、一本鎖抗体を保持したアフィニティー担体を提供することも可能となる。
本発明により得られる一本鎖抗体やそれを結合させた担体は、例えば、様々な病原体の検出・同定、除去や、疾病診断を目的とした新しいバイオマテリアルとして有効である。
配列番号:1
<223> 人工的なポリヌクレオチド配列
配列番号:2
<223> 人工的なポリペプチド配列

Claims (4)

  1. 抗原に対して結合活性を有する一本鎖抗体の製造方法であって、
    (a)一本鎖抗体とフィブロインタンパク質との融合タンパク質を発現させた絹糸を精
    練せずに溶解する工程と、
    (b)工程(a)で得られた前記融合タンパク質の溶解液を希釈して塩濃度を低下させる工程と
    (c)線維化していない状態で前記融合タンパク質を含む、希釈された溶解液を回収する工程と、
    を含む方法。
  2. 抗原に対して結合活性を有する一本鎖抗体を保持する担体の製造方法であって、
    (a)一本鎖抗体とフィブロインタンパク質との融合タンパク質を発現させた絹糸を精
    練せずに溶解する工程と、
    (b)工程(a)で得られた前記融合タンパク質の溶解液を希釈して塩濃度を低下させる工程と
    (c)線維化していない状態で前記融合タンパク質を含む、希釈された溶解液を回収する工程と、
    )工程()で回収された希釈された溶解液を担体に接触させる工程と
    を含む方法。
  3. 分子内又は分子間の水素結合を切断する性質を有する溶液で絹糸を溶解する、請求項1または2に記載の製造方法。
  4. 前記フィブロインタンパク質が、フィブロインL鎖、フィブロインH鎖およびフィブロヘキサメリンからなる群から選択される少なくとも一のタンパク質であることを特徴とする、請求項1から3のいずれかに記載の製造方法。
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