JP6869632B2 - 精子運動活性及び/又は精子生産能力の向上方法 - Google Patents

精子運動活性及び/又は精子生産能力の向上方法 Download PDF

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Description

本発明は、ヒトを除く哺乳動物であって、様々な原因により精子運動活性及び/又は精子生産能力が低下して受精能が低下した雄の、精子運動活性及び/又は精子生産能力の向上方法に関する。
ヒトを除く哺乳動物において、優秀な個体あるいは人気種、希少種等の繁殖には、自然交配以外にも、該当の雄(オス)個体から精子を採取して人工授精等により繁殖させることが行われている。この優秀個体等の雄が何らかの病気、あるいは人工授精のための精子採取のストレス等でその精子運動活性が低下したり、精子生産能力が低下したり、又はこの両者を併発したりして、受精(繁殖)能も連動して低下する問題がある。
ホルスタイン、黒毛和種等における優秀な種雄牛、優秀競走馬の種牡馬等において、優秀雄個体の繁殖能力の低下は経済的損失が大きく解決策が望まれている。
特許文献1には、ウシ精子やブタ精子等の哺乳動物の精子の懸濁液にカテキンを加えることによる、哺乳動物の精子の活性化方法が開示されている。具体的には、人工授精及び体外受精において、採取した哺乳動物の精子を活性化する際に、過剰に存在すると阻害的な働きをする活性酸素をカテキンで除去することによって、効率良く活性化し得ることが記載されている。
特許文献2には、採取したブタの精液にプロタミンを添加することにより、ブタの精子運動を活性化し得ることが開示されている。
特開2005−213147号公報 特開2010−6785号公報
しかしながら、特許文献1及び2に開示の精子の活性化方法は、採取した精子に体外でカテキンやプロタミンを添加することにより精子運動を活性化したり、体外受精での卵子への精子侵入率を向上させたりする方法である。また、いずれも受精能力が大きく低下した個体の精子運動を活性化する方法ではない。
すなわち、射精又は精子採取によって得られる精子の運動活性が極端に低下しているために、受精能力がほとんど期待できないヒトを除く哺乳動物の個体に対し、その射精後又は精子採取直後の精子運動活性を向上させる方法については、いまだ有効な方法は存在していない。同様に、精子生産能力が極端に低下しているため、射精又は精子採取によって得られる精子の量が極めて少なく、受精能力がほとんど期待できないヒトを除く哺乳動物の個体に対し、その精子生産能力を回復・向上させる有効な方法は存在していない。
そこで、本発明は、精子運動活性及び/又は精子生産能力が極端に低下して受精能力がほとんど期待できないヒトを除く哺乳動物の個体に対し、その射精後又は精子採取後の精子運動活性を向上させる方法及び/又は精子生産能力を回復・向上させる方法を提供することを課題とする。
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意検討を行った結果、ヒトを除く哺乳動物から採取した皮下脂肪組織を特定の酵素で処理して得る、脂肪組織由来間質細胞含有細胞を対象個体に投与することにより、射精後又は精子採取直後の精子運動活性を向上させることができることを見出し、本発明を完成するに至った。また、該脂肪組織由来間質細胞含有細胞を対象個体に投与することにより、精子生産能力を回復・向上させることができることを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明によれば、ヒトを除く哺乳動物(A)から採取した皮下脂肪組織を酵素処理して得る、脂肪組織由来間質細胞含有細胞を精子運動活性及び/又は精子生産能力が低下したヒトを除く哺乳動物(B)に投与する、ヒトを除く哺乳動物の精子運動活性及び/又は精子生産能力の向上方法が提供される。以後、特に断らない限り、間質細胞含有細胞と称した場合、本発明に係る脂肪組織由来間質細胞含有細胞を指すものとする。
好ましくは、(A)が牛(ウシ)、山羊(ヤギ)、羊(ヒツジ)、豚(ブタ)、及び馬(ウマ)、並びに伴侶動物から選択される1種であり、さらに好ましくは、(B)が牛、山羊、羊、豚、及び馬、並びに伴侶動物から選択される1種以上であり、特に好ましくは、(A)及び(B)が同一種である。
なお、以後、特に断らない限り、哺乳動物と称した場合はヒトを含まないものとする。
投与方法は、(B)への注射による投与が好ましく、注射部位としては特に制限はなく、精巣、蔓状静脈叢、静脈、及び骨盤動脈等の動脈への注射を挙げることができる。中でも、精巣への注射が好ましく、精巣の具体的部位としては、精巣網、精巣動脈、精巣静脈、及び精巣実質を挙げることができる。注入及び注入確認が容易な点で、精巣網への注射がより好ましい。
投与量としては、間質細胞含有細胞1.0×10〜1.0×10個/個(精巣)であることが好ましい。5.0×10〜1.0×10個/個(精巣)がより好ましい。この範囲であれば、投与による副作用がなく良好に精子運動活性及び/又は精子生産能力を向上させることができるからである。なお、「個(精巣)」とは精巣一つ当たりのことである。従って、両方の精巣に当該量ずつ投与してもよい。
本発明の哺乳動物の精子運動活性及び/又は精子生産能力の向上方法によれば、種々の原因で、精子運動活性及び/又は精子生産能力が低下し、受精能力がほとんど期待できない状態に陥った個体の精子運動活性及び/又は精子生産能力を回復・向上させることができる。具体的には、射精後又は精子採取後の精子運動活性及び/又は精液中の精子量を投与前に比較して飛躍的に向上させることができる。
実施例1における、哺乳動物(A)からの皮下脂肪組織の採取の一連の様子を示す写真を表した図である。 実施例1の精子運動活性の向上を示すグラフ図である。 実施例1の精子生産能力の向上を示すグラフ図である。 実施例1の精液中の精子量の向上を示す写真を表した図である。
以下、本発明を更に詳細に説明する。
本発明の哺乳動物の精子運動活性及び/又は精子生産能力の向上方法は、哺乳動物(A)から採取した皮下脂肪組織を酵素処理して得る、脂肪組織由来間質細胞含有細胞を精子運動活性及び/又は精子生産能力が低下した哺乳動物(B)に投与する方法である。以後、精子運動活性及び/又は精子生産能力を総称して精子活力と称する場合がある。
また、以後、哺乳動物(A)及び哺乳動物(B)を単に(A)及び(B)と称する。(A)及び(B)はヒト以外の哺乳動物であれば特に制限はないが、(A)は牛、山羊、羊、豚、及び馬、並びに伴侶動物から選択される1種であることが好ましい。また、(B)も牛、山羊、羊、豚、及び馬、並びに伴侶動物から選択される1種以上であることが好ましい。伴侶動物としては、犬(イヌ)、猫(ネコ)、及び兎(ウサギ)等を例示することができる。
経済的効果の点では、牛及び馬を好ましく挙げることができる。牛としては、ホルスタイン種等の乳牛、食肉用の黒毛和牛(黒毛和種)等を挙げることができる。馬としては、サラブレッド等の競走馬を挙げることができる。
また、(A)及び(B)は異種であっても同一種であってもよいが、同一種であることが好ましい。また、同一種の場合、同一個体であっても異なる個体であってもよい。血統等を重視する場合は、同一個体であることが好ましい。以後、同一種で(A)と(B)が異なる個体である場合を他家、同一個体である場合を自家と称することがある。
上記皮下脂肪組織は、(A)の肩、腰又は腹部等の部位から採取される。例えば、牛、山羊、羊、及び豚であれば胸壁第7肋間上部背側1/3の部位、馬であれば尾根部位の左右両側部、伴侶動物であれば腹部、を採取部位として挙げることができる。
(A)から皮下脂肪組織を採取し、間質細胞含有細胞を調製する方法としては、牛を例とした場合、以下の方法を例示できる。
(1)(A)の胸壁第7肋間上部背側1/3の部位より、図1に示したように、メスで1〜10cm程度の切り口を空け、ピンセットで皮下脂肪組織を掴み、メッツェンバウムにて皮下脂肪組織を採取する。
採取した皮下脂肪組織は、チューブに入れて酵素処理のための処理室に搬送する。
(2)採取した皮下脂肪組織を1〜2mm角程度に細断し、酵素処理することによって当該脂肪組織から細胞を分離する。酵素としては、脂肪組織から細胞を分離できる酵素であれば特に制限はないが、例えば、コラゲナーゼ タイプ1を挙げることができる。その他、Clostridium Histolyticum(クロストリジウム・ヒストリチカム)由来のコラゲナーゼ等も使用可能である。
(3)常法に従い、遠心分離によって目的とする細胞を回収し、次に、PBS(−)等のリン酸緩衝生理食塩水で細胞を洗浄して酵素を除去する。
(4)洗浄後、細胞を培養容器に入れ、市販の無血清又は血清入り液体培地を加えて、常法に従って培養する。このとき、自己血清を液体培地に対して10重量%以内で添加してもよい。また、必要により継代を実施する。以上のようにして間質細胞含有細胞を調製することができる。安定した本発明の効果が得られる点で、2〜6継代させた間質細胞含有細胞とすることが好ましい。
以上のようにして得られる間質細胞含有細胞には、脂肪由来間葉系幹細胞等が含まれる。間質細胞の特徴としては、接着性があること、線維芽細胞様形態を示すこと、及び脂肪・骨・軟骨への分化が可能なこと、を挙げることができる。
調製した間質細胞含有細胞は、輸液(リンゲル液等)により細胞濃度を1.0×10〜1.0×10個/mLとした細胞懸濁液としてすぐに使用することが望ましい。
使用まで保管する場合は、凍結保存することが好ましく、凍結温度としては−80〜−196℃が好ましい。凍結保存の場合には、凍結保存液により5.0×10〜1.0×10個/mL程度の細胞濃度の細胞懸濁液としたものを凍結させて保存することが望ましい。凍結保存液としては、セルリザーバーワン[ナカライテスク(株)製]を例示できる。凍結保存により、1年間程度の期間、精子活力の向上に有効な機能を維持させることができる。
凍結保存液中で凍結保存した間質細胞含有細胞懸濁液を使用する場合は、まず、10〜40℃程度に設定した恒温槽にて解凍した後、液体培地やリン酸緩衝生理食塩水等を使用して、遠心分離による凍結保存液の洗浄除去を行う。次に、間質細胞含有細胞を輸液(リンゲル液等)により細胞濃度1.0×10〜1.0×10個/mLとした細胞懸濁液として使用する。
間質細胞含有細胞の調製場所と(B)への投与処置場所とが離れている場合は、冷凍庫等に保管して凍結状態を保ったまま輸送することが好ましい。しかし、解凍後2日以内に使用するのであれば、上記のように、解凍してリンゲル液等により細胞濃度1.0×10〜1.0×10個/mLとした細胞懸濁液とし、注射用シリンジに密封充填した状態で輸送してもよい。
次に、間質細胞含有細胞を(B)に投与する方法について説明する。
まず、(B)は、何らかの病気あるいはストレス等でその精子活力が低下している哺乳動物の雄個体である。(B)の精子活力が低下する原因としては、様々な要因を挙げることができ、加齢、精子不動症、精子無力症、精子減少症、及び精巣内石灰化等の病気、人工授精のための精子採取等の種々のストレス、並びに原因不明の精巣機能減退、などが挙げられる。本発明の精子活力の向上方法は、これらの原因に関係なく効果を発揮することができる。
本発明において、上記病気等を原因とする精子運動活性の低下や、精液中の精子数減少を発現している個体が(B)の対象となり得る。また、それらの病態の軽度のものから、重度のもの、いずれもが対象である。
なお、精子運動活性及び/又は精子生産能力の評価方法の詳細については後述する。
間質細胞含有細胞の(B)への投与時において、間質細胞含有細胞は輸液(リンゲル液等)により細胞濃度1.0×10〜1.0×10個/mLとした細胞懸濁液として使用することが好ましく、その投与方法としては、上記したように該細胞懸濁液を(B)の精巣へ直接注射することが好ましい。精巣内の精巣網への投与がより好ましい。
投与量としては、精巣一つ当たり、間質細胞含有細胞の細胞数として1.0×10〜1.0×10個が好ましく、5.0×10〜1.0×10個がより好ましく、1.0×10〜1.0×10個が特に好ましい。投与細胞数が当該範囲となるように濃度調整した細胞懸濁液を精巣に注射することが好ましい。従って、当該懸濁液の投与量としては、0.1〜10mL程度である。好ましくは0.3〜3mL程度である。
投与部位は左右いずれか一方の精巣であっても、両方の精巣であってもよく、精子活力の向上効果の点で両方の精巣に投与することが好ましい。
また、当該量に相当する量を精巣以外の、蔓状静脈層、静脈、又は骨盤動脈等の動脈に注射することも可能である。
なお、本発明の精子運動活性及び/又は精子生産能力の向上方法は、自家投与であっても効果を発揮するものでる。すなわち、精子活力が低下している個体であっても、自身から採取した皮下脂肪細組織由来の間質細胞含有細胞を自身の精巣等に投与することによって、精子活力を向上させることができる。
以上、牛を例として、皮下脂肪組織の採取、間質細胞含有細胞の調製、及びその投与について説明したが、その他の哺乳動物についても、皮下脂肪組織採取部位を上記した各哺乳動物の望ましい部位とする以外は、牛と同様にして各採取、調製、及び投与を行うことができる。伴侶動物等、牛と比較して極めて小さな個体の場合は、細胞懸濁液の投与量を少なくする、具体的には2mL以下とすることが好ましい。
つづいて、精子活力の評価方法について説明する。
本発明において、精子活力は、「家畜人工授精講習会テキスト(家畜人工授精編)(一般社団法人 日本家畜人工授精師協会、平成27年3月、全改訂版、牛精液の採取(p292−295)、牛の精液・精子の検査(296−297)」に記載の方法に準拠し、精子運動活性、及び精液中の精子数を検査することによって評価する。(B)が牛以外の哺乳動物の場合も、精液の採取方法を各哺乳動物種に好適な方法とする以外は、当該方法に準拠して、その精子活力を評価することができる。
[1]まず、擬牝台を使用し、牛の陰茎を人工膣の採精管に誘導し、精液を採取する。
[2]採精管内の射出精液の精液量、色調、臭気、夾雑物の有無を肉眼で検査する。
[3]採取精液を1/2〜1/3にリン酸緩衝生理食塩水で希釈して運動活性を光学顕微鏡観察して評価する。具体的には、約38℃のスライド加温盤上に精子活力検査盤を置き、検査盤中央の円形のステージに少量の希釈精液を載せ、カバーグラスをかけて顕微鏡下で前進運動を示す精子の割合を目算で算定する。なお、精子活力計算盤を使用せず、スライドグラスに10μLの希釈精液をおき、その上にカバーグラスを載せて、精子の運動活性を観察してもよい。
[4]観察は低倍率(対物4倍)からはじめ、精液全体を観察して精子運動活性が均一であることを確認してから、高倍率(20−40倍)の対物レンズに換えて、検査を行う。検査時には検査盤上の多数の視野を観察し、その平均値をとる。
[5]精子運動活性を以下の基準で判定する。
0;前進運動精子が全く観察されず、不動精子のみ。
1;前進運動精子の数が5%未満で、その他は不動精子及び非前進運動精子。
5〜100;前進運動精子の数を5%ごとに判定。すなわち、評点は5,10,15…100のように5の倍数となる。
ここで、前進運動精子、非前進運動精子、及び不動精子は次のように定義するものとする。
前進運動精子;尾部の鞭毛運動により非常に活発に、精子頭部を直線的に又は大きな円を描くように前進させて動く精子。
非前進運動精子:前進性を欠いた様々な運動性を有する精子。例えば小さな円を描くように動く精子、精子頭部の位置をほとんど動かさず尾部の弱い鞭毛運動だけが観察される精子。
不動精子:動きが認められない精子。
[6]精子数を次のようにして測定する。採取精液をマイクロチューブ内の希釈液(リン酸緩衝生理食塩水)に添加し、約100倍に希釈する。該希釈精液をマイクロピペットで血球計算盤に流し込み、カバーグラスをかけて計算盤の1mm四方内の精子数を数える。計算盤とカバーグラスとの間隙は0.1mmであるので、0.1mm中の精子数を数えたことになる。この結果から、採取精液1mL中の精液数を計算によって求める。
実施形態
(A)から採取した皮下脂肪組織を酵素処理して得る、間質細胞含有細胞の(B)への具体的投与方法について、より詳細に牛の場合を例として以下に説明する。なお、以下の態様は本発明の一実施形態であり、当該態様に限定されるものではない。
(1)(B)の後ろ片足を縛って暴れないように固定し、投与部位の除毛及び消毒を行う。
(2)上記説明した間質細胞含有細胞懸濁液を、約1.0×10〜2.0×10個/mLの細胞濃度となるように調整し、該懸濁液0.5〜2mLを(B)の左右両精巣に注射により、第1回目の投与を行う。精巣内の投与部位としては、精巣網が好ましい。
なお、当該細胞懸濁液は、調製直後のものだけでなく、使用期限内であれば冷凍保存品を解凍したものであってもよい。
(3)投与1週間後に、(B)から第1回目の精液を、上記[1]の精液の採取法に従って、人工膣を用いて5〜15mL程度採取する。
(4)採取第1回目の精液中の精子の精子活力を上記の方法で検査及び評価し、評価結果を記録する。
(5)第1回目の精液採取後、採取日と同日又は数日以内に、第1回目と同様にして(B)に間質細胞含有細胞懸濁液の第2回目の投与を行う。
(6)第1回目と同様にして(B)から第2回目の精液を採取する。
(7)採取第2回目の精液中の精子の精子活力を上記の方法で検査及び評価し、評価結果を記録する。
なお、間質細胞含有細胞懸濁液投与前の(B)の精子活力について、一定期間検査・評価を実施し、投与前後の結果を比較する。
上記のようにして、間質細胞含有細胞の投与、精液の採取及び精子活力の検査、評価を数回繰り返す。繰り返す回数としては、1〜6回程度である。第1回目の投与から精子活力の向上(回復)が認められるが、4回以上投与することが好ましい。良好な精子活力の向上が持続的に認められるからである。
上記繰り返し回数は、対象となる哺乳動物の精子形成サイクルを考慮して決定してもよい。精子形成サイクルに相当する日数の間、間質細胞含有細胞の投与、および精液の採取を継続することが理想的ではあるが、(B)の負担も考慮して好ましい回数を適宜判断して決定する。
なお、精子形成サイクルは牛61日、ブタ39日、ウマ55日、ヒツジ47日、イヌ54日、ヒト74日といわれている。
以上説明した態様は、(A)と(B)が同一個体である自家の場合も、異なる個体である他家の場合も同様の方法で実施してよい。
また、牛以外の哺乳動物についても、至適な投与量に調整する以外は、上記方法に準拠して実施することができる。
以上のようにして間質細胞含有細胞の投与処置を実施された(B)は、その精子活力が顕著に向上(回復)するので、受精能力の顕著な向上を期待することができる。
以下に実施例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
哺乳動物として牛を用い、(A)と(B)が同一の自家について、精子活力の向上方法、すなわち、精子運動活性及び/又は精子生産能力の向上方法を施した。
実施例1
1.被験個体[(A)及び(B)]
品 種 ;ホルスタイン種
年 齢 ;6歳
体 重 ;約1,100kg
病 態 ;高度の精子減少症
2.皮下脂肪組織採取
図1(a)〜(f)に示すように、被験個体の肩部の左胸壁第7肋間上部背側1/3部の皮下脂肪組織を、メッツェンバウムを使用して約1.9g採取し、リン酸緩衝生理食塩水[PBS(−);ライフテクノロジーズジャパン(株)製]10mLで5回洗浄した。
3.皮下脂肪組織からの間質細胞含有細胞の分離及び培養
(1)滅菌済みのメッツェンハサミで洗浄後の皮下脂肪組織を1〜2mm角に細断した。
(2)細断した組織に、コラゲナーゼ タイプ1[和光純薬工業(株)製]を約20mL添加し、振とう培養装置Shaking incubator S1-300[アズワン(株)製]にて約1時間振とう処理した。(処理温度;37℃、振とう回転数;1300rpm)
(3)振とう処理後、コラゲナーゼ細胞分散液をセルストレーナー(ポアサイズ 100μm、コーニング社製)にて濾過して濾液を採取した。
(4)該濾液を、遠心分離機AX−310[(株)トミー精工製]を用いて20℃下、1000×gで5分間遠心分離した。
(5)浮遊油分及び上澄み液(上清)を除去した後の沈殿物にPBS(−)25mLを加えて沈殿物を懸濁させた。
(6)該懸濁液を、AX−310を用いて20℃下、400×gで5分間遠心分離した。
(7)上澄み液を除去した後の、沈殿した間質細胞を含む細胞の集まり(以後、細胞又は間質細胞含有細胞と称する)に、2%自己血清を加えた無血清培地sf−DOT[(株)バイオミメティックスシンパシーズ製]6mLを加えて、該細胞を懸濁させた。
(8)細胞懸濁液をCell BIND T−25フラスコ(コーニング社製)に播種し、37℃、CO濃度5%下で、FORMA(登録商標) 310 ダイレクトヒート COインキュベータ[サーモフィッシャーサイエンティフィック(株)製]にて培養を開始した。
(9)2〜3日に1度の頻度で上記培地を交換し、サブコンフルエント(フラスコ底面積に占める細胞の占有面積が70〜80%となった状態)に達した時点で、以下の継体培養を行った。
(10)COインキュベータからフラスコを取り出し、フラスコ内の培養上清を安全キャビネット若しくはクリーンベンチ内で無菌的に除去した。
(11)PBS(−)を用いて細胞表面を洗浄した後、細胞剥離液Accutase[ライフテクノロジーズジャパン(株)製]を加えて、COインキュベータ内に戻し、細胞をフラスコ底部から剥離し、該剥離液中に懸濁させた。
(12)該剥離した細胞の懸濁液を、AX−310を用いて20℃下、400×gで5分間遠心分離した。
(13)剥離剤を含む上澄み液を除去した後の、沈殿した細胞にPBS(−)を加えて懸濁させ、AX−310を用いて20℃下、400×gで5分間遠心分離を行い、上澄み液を除去することによって細胞を洗浄した。
(14)(7)〜(13)を4回繰り返して(5継代)、投与用の間質細胞含有細胞を調製した。
4.間質細胞含有細胞の保存(保管)及び投与前準備
以上のようにして継代培養により調製した間質細胞含有細胞は、凍結保存液セルリザーバーワン[ナカライテスク(株)製]に懸濁させた後、凍結保存した。具体的には、細胞濃度を1.0〜2.0×10個/mLとなるように懸濁させ、該懸濁液1mLずつをクライオチューブ[サーモフィッシャーサイエンティフィック(株)製]に分注し、冷凍庫内、−80℃で保存した。保存期間は28日であった。
投与前準備として、冷凍保存懸濁液1mL(クライオチューブ1個)当たり、以下の処理を行った。
(1)凍結保存させた間質細胞含有細胞懸濁液を37℃恒温槽に3分間入れて解凍した。
(2)該懸濁液にPBS(−)3mLを加えて細胞をPBS(-)中に懸濁させた。
(3)PBS懸濁液を、AX−310を用いて20℃下、400×gで5分間遠心分離した。
(4)上澄み液を除去し、沈殿した細胞にリンゲル液[大塚製薬(株)製]を加えて25mLとし、細胞をリンゲル液中に懸濁させた。以下、リンゲル液としては同じものを使用した。
(5)リンゲル懸濁液を、AX−310を用いて20℃下、400×gで5分間遠心分離した。
(6)上澄み液を除去した後、間質細胞含有細胞濃度が1.5×10個/mLとなるようにリンゲル液約1mLを加えて懸濁液Xとした。該懸濁液Xを投与試料とした。
5.懸濁液Xの(B)[(A)]への投与
上記実施形態に示した方法に従って、懸濁液Xを1mLずつ、(B)の左右の精巣内の精巣網に注射によって第1回目の投与を行った。すなわち、間質細胞含有細胞数として、各1.5×10個を両精巣内の精巣網に投与した。
6.精液採取及び精子活力の検査・評価
第1回目の投与(第1投与)1週間後に、(B)からの第1回目の精液採取(第1採取)を、上記で説明した「精子活力の評価方法」の[1]に従って実施した。精液採取量は約9mLであった。
採取精液について、上記で説明した「精子活力の評価方法」の[2]〜[6]に従って、精子活力を検査し、評価した。精子運動活性及び精子数の評価結果を表1に示す。
精子活力評価には、オリンパス社製の光学顕微鏡BH−2を使用した。
精液採取から次の懸濁液X投与までの間を表1に示す間隔となるようにして、計4回の懸濁液X投与(第1〜4投与)と、5回の精液採取(第1〜5採取)を実施した。なお、各回における懸濁液X投与と精液採取の間隔は、表1に示すように1〜2週間とした。懸濁液Xの投与量は全て第1回目とほぼ同量とした。第2〜第5採取の精液採取量は12〜15mLであった。
各回における精子活力の検査・評価を第1回目と同様にして実施した。
比較例1
本試験個体(B)に懸濁液Xを投与する前の約1ヶ月の期間、比較例として精子活力の検査及び評価を実施した。精液採取及び精子活力の検査・評価は、実施例1と同様、「精子活力の評価方法」の[1]〜[6]に従って実施した。精子運動活性及び精子数の評価結果を表1に示す。
Figure 0006869632
間質細胞含有細胞(懸濁液X)投与前後の精子運動活性の変化を図2に、精液中の精子数の変化を図3に示す。
また、図4は採取精液の光学顕微鏡観察写真を表す図であり、(a)は表1の第1採取時、(b)は表1の第3採取時、(c)は表1の第5採取時の精液中の精子の観察写真である。
表1及び図2〜4から分かるように、実施例1は、比較例1に比較して、精子活力が顕著に向上した。精子運動活性に関しては、間質細胞含有細胞(懸濁液X)投与前の比較例1が、受精能力が全く期待できない「1」であったのに対し、懸濁液X投与後は最大「15」まで向上した。これは、前進運動精子が約15%存在することを意味し、人工授精によって高い確率の受精(受胎)を十分期待することができる。なお、精子運動活性5であっても、前進運動精子が約5%存在しているので、人工授精であれば受精(受胎)を十分期待することができる。
精液中の精子数も、間質細胞含有細胞の第1回目の投与後に、投与前の約3倍に増加しており、第5回目の精液採取・評価時には約76倍に増加していた。これにより、間質細胞含有細胞の投与によって精子生産能力が向上したことが確認できた。

Claims (5)

  1. ヒトを除く哺乳動物(A)から採取した皮下脂肪組織を酵素処理して得る、脂肪組織由来間質細胞含有細胞を精子運動活性及び子生産能力が低下したヒトを除く哺乳動物(B)の精巣に投与する方法であって
    前記投与が、前記(B)の精巣への注射により、前記脂肪組織由来間質細胞含有細胞を1.0×10 5 〜1.0×10 7 個/個(精巣)投与する方法であり、かつ
    前記(B)の精子形成サイクルに相当する日数の間に、前記投与を4〜6回実施する、
    ヒトを除く哺乳動物の精子運動活性及び子生産能力の向上方法。
  2. 前記(A)が牛、馬、ブタ及び伴侶動物から選択される1種である、
    請求項1に記載の精子運動活性及び子生産能力の向上方法。
  3. 前記(B)が牛、馬、ブタ及び伴侶動物から選択される1種以上である、
    請求項1又は2に記載の精子運動活性及び子生産能力の向上方法。
  4. 前記(A)及び(B)が同一種である、
    請求項1〜いずれか一項に記載の精子運動活性及び子生産能力の向上方法。
  5. 前記(A)及び(B)が同一個体である、
    請求項に記載の精子運動活性及び子生産能力の向上方法。
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