JP6868903B2 - パラジウム同位体の偶奇分離イオン化方法と装置 - Google Patents

パラジウム同位体の偶奇分離イオン化方法と装置 Download PDF

Info

Publication number
JP6868903B2
JP6868903B2 JP2017556476A JP2017556476A JP6868903B2 JP 6868903 B2 JP6868903 B2 JP 6868903B2 JP 2017556476 A JP2017556476 A JP 2017556476A JP 2017556476 A JP2017556476 A JP 2017556476A JP 6868903 B2 JP6868903 B2 JP 6868903B2
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
palladium
level
laser
laser beam
excitation
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Active
Application number
JP2017556476A
Other languages
English (en)
Other versions
JPWO2017104825A1 (ja
Inventor
小林 徹
徹 小林
緑川 克美
克美 緑川
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
RIKEN Institute of Physical and Chemical Research
Original Assignee
RIKEN Institute of Physical and Chemical Research
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by RIKEN Institute of Physical and Chemical Research filed Critical RIKEN Institute of Physical and Chemical Research
Publication of JPWO2017104825A1 publication Critical patent/JPWO2017104825A1/ja
Application granted granted Critical
Publication of JP6868903B2 publication Critical patent/JP6868903B2/ja
Active legal-status Critical Current
Anticipated expiration legal-status Critical

Links

Images

Classifications

    • BPERFORMING OPERATIONS; TRANSPORTING
    • B01PHYSICAL OR CHEMICAL PROCESSES OR APPARATUS IN GENERAL
    • B01DSEPARATION
    • B01D59/00Separation of different isotopes of the same chemical element
    • B01D59/34Separation by photochemical methods
    • BPERFORMING OPERATIONS; TRANSPORTING
    • B01PHYSICAL OR CHEMICAL PROCESSES OR APPARATUS IN GENERAL
    • B01JCHEMICAL OR PHYSICAL PROCESSES, e.g. CATALYSIS OR COLLOID CHEMISTRY; THEIR RELEVANT APPARATUS
    • B01J19/00Chemical, physical or physico-chemical processes in general; Their relevant apparatus
    • B01J19/08Processes employing the direct application of electric or wave energy, or particle radiation; Apparatus therefor
    • B01J19/12Processes employing the direct application of electric or wave energy, or particle radiation; Apparatus therefor employing electromagnetic waves
    • B01J19/121Coherent waves, e.g. laser beams
    • HELECTRICITY
    • H01ELECTRIC ELEMENTS
    • H01SDEVICES USING THE PROCESS OF LIGHT AMPLIFICATION BY STIMULATED EMISSION OF RADIATION [LASER] TO AMPLIFY OR GENERATE LIGHT; DEVICES USING STIMULATED EMISSION OF ELECTROMAGNETIC RADIATION IN WAVE RANGES OTHER THAN OPTICAL
    • H01S3/00Lasers, i.e. devices using stimulated emission of electromagnetic radiation in the infrared, visible or ultraviolet wave range
    • H01S3/0007Applications not otherwise provided for
    • YGENERAL TAGGING OF NEW TECHNOLOGICAL DEVELOPMENTS; GENERAL TAGGING OF CROSS-SECTIONAL TECHNOLOGIES SPANNING OVER SEVERAL SECTIONS OF THE IPC; TECHNICAL SUBJECTS COVERED BY FORMER USPC CROSS-REFERENCE ART COLLECTIONS [XRACs] AND DIGESTS
    • Y10TECHNICAL SUBJECTS COVERED BY FORMER USPC
    • Y10STECHNICAL SUBJECTS COVERED BY FORMER USPC CROSS-REFERENCE ART COLLECTIONS [XRACs] AND DIGESTS
    • Y10S423/00Chemistry of inorganic compounds
    • Y10S423/07Isotope separation

Landscapes

  • Chemical & Material Sciences (AREA)
  • Chemical Kinetics & Catalysis (AREA)
  • Life Sciences & Earth Sciences (AREA)
  • Biophysics (AREA)
  • Physics & Mathematics (AREA)
  • Electromagnetism (AREA)
  • Optics & Photonics (AREA)
  • Health & Medical Sciences (AREA)
  • General Health & Medical Sciences (AREA)
  • Toxicology (AREA)
  • Organic Chemistry (AREA)
  • Lasers (AREA)
  • Other Investigation Or Analysis Of Materials By Electrical Means (AREA)

Description

本発明は、複数種類のパラジウム同位体のうち奇数質量数の同位体を選択的にイオン化する方法と装置に関する。
放射性廃棄物の放射線量(線量)を低減化したり、放射性廃棄物から資源として利用可能な物質を取り出したりするシステムの研究開発が進められている(下記の特許文献1と非特許文献1を参照)。
放射性廃棄物から、放射性のパラジウム同位体107Pdを取り出すことにより、放射性廃棄物の線量を低減できる。
また、放射性廃棄物に104Pd、105Pd、106Pd、107Pd、108Pd、110Pdが含まれている場合、放射性廃棄物から107Pdを除去することにより、その後の放射性廃棄物に含まれるパラジウム同位体の資源化が可能となる。
特公平7−16584号公報
http://www.jst.go.jp/impact/program08.html 「パラジウムのレーザー同位体分離試験報告書」,報告書番号PNC−TN8410 95−077,1995年4月,動力炉・核燃料開発事業団 東海事業所 N.KARAMATSKOS et al, "RYDBERG SERIES IN THE PHOTOIONIZATION SPECTRUM OF Pd I", PHYSICS LETTERS, volume 102A, number 9, pages 409−411(11 June 1984)
原子炉の使用済核燃料(放射性廃棄物)から、奇数質量数のパラジウム同位体を次のように分離する方法が特許文献1または非特許文献2に記載されている。まず、使用済核燃料の一部を、再処理工程において、不溶解残渣としてフィルターに補集する。不溶解残渣には、質量数が奇数と偶数のパラジウム同位体が含まれている。不溶解残渣に、第1〜第3の波長をそれぞれ有するレーザ光を照射する。この時、第1の波長(276.3nm)のレーザ光により、不溶解残渣に含まれる複数種類のパラジウム同位体104Pd,105Pd,106Pd,107Pd,108Pd,110Pdが第1の励起準位へ励起される。第2の波長(521.0nm)のレーザ光により、第1の励起準位にある複数種類のパラジウム同位体のうち、奇数質量数のパラジウム同位体105Pd,107Pdが選択的に第2の励起準位に励起される。さらに、第3の波長のレーザ光により、第2の励起準位にある105Pd,107Pdがイオン化される。このように生じたパラジウムイオンは、電場によって中性の他の種類のパラジウム同位体から分離される。
複数種類のパラジウム同位体を含む物質(上述の放射性廃棄物や天然の物質など)から、奇数質量数のパラジウム同位体を選択的にイオン化する場合に、このイオン化を効率よく行えるようにすることが望まれる。なお、天然の物質から、奇数質量数のパラジウム同位体105Pdをイオン化する場合には、当該パラジウムイオンを、電場により天然の物質から取り出し、資源として活用できる。
本発明の目的は、複数種類のパラジウム同位体を含む物質から、奇数質量数のパラジウム同位体を、効率よく、選択的にイオン化できる方法と装置を提供することにある。
本願の発明者は、奇数質量数のパラジウム同位体を選択的に自動イオン化準位(すなわち自然にイオン化する準位)に励起する場合に、イオンコア状態を考慮した励起に着目し、パラジウム同位体のイオンコア状態の同一性を保ちつつパラジウム同位体を励起することによりイオン化効率を高められることを知見した。
すなわち、イオンコア状態が同じエネルギー準位の間ではパラジウム同位体がレーザ照射により遷移しやすいことが発明者により判明した。このようなイオンコア状態それ自体及びその考慮については、特許文献1と非特許文献1〜3には記載されていない。本発明は、このような着目とその検証に基づいたものである。
すなわち、上述の目的を達成するため、複数種類のパラジウム同位体を含むパラジウム含有物質に複数の波長のレーザ光を照射することによりパラジウム含有物質から質量数が奇数のパラジウム同位体を選択的にイオン化する、パラジウム同位体の偶奇分離イオン化方法であって、
第1の波長を有する第1のレーザ光を用いて、基底準位にあるパラジウム同位体を、第1の励起準位に励起する第1の励起ステップと、
第2の波長を有する第2のレーザ光を用いて、第1の励起準位のパラジウム同位体を、第2の励起準位に励起する第2の励起ステップとを含み、
第1および第2の励起ステップにより、質量数が奇数のパラジウム同位体が第2の励起準位へ選択的に励起され、当該パラジウム同位体のイオンコア状態の同一性が第1の励起準位と第2の励起準位の間で保たれ、
かつ、
(A)第2の励起準位が自動イオン化準位となるように第1および第2の波長が選択され、又は、
(B)第2の励起準位が自動イオン化準位ではない場合には、第3の励起ステップにおいて、第3の波長を有する第3のレーザ光を用いて、第2の励起準位の前記パラジウム同位体を自動イオン化準位へ励起するように、第1、第2および第3の波長が選択される、パラジウム同位体の偶奇分離イオン化方法が提供される。
また、上述の目的を達成するため、複数種類のパラジウム同位体を含むパラジウム含有物質に複数の波長のレーザ光を照射することによりパラジウム含有物質から質量数が奇数のパラジウム同位体を選択的にイオン化する、パラジウム同位体の偶奇分離イオン化装置であって、
第1の波長を有する第1のレーザ光をパラジウム含有物質に照射することにより、基底準位にあるパラジウム同位体を第1の励起準位に励起する第1のレーザ照射装置と、
第2の波長を有する第2のレーザ光をパラジウム含有物質に照射することにより、第1の励起準位のパラジウム同位体を、第2の励起準位に励起する第2のレーザ照射装置と、を備え、
第1および第2のレーザ光により、質量数が奇数のパラジウム同位体が第2の励起準位へ選択的に励起され、当該パラジウム同位体のイオンコア状態の同一性が第1の励起準位と第2の励起準位の間で保たれ、
かつ、
(A)第2の励起準位が自動イオン化準位となるように第1および第2の波長が選択され、又は、
(B)第2の励起準位が自動イオン化準位ではない場合には、第3の波長を有する第3のレーザ光をパラジウム含有物質に照射することにより、第2の励起準位にある前記パラジウム同位体を自動イオン化準位に励起する第3のレーザ照射装置を備え、第1、第2および第3のレーザ光により前記パラジウム同位体を自動イオン化準位へ励起するように、第1、第2および第3の波長が選択される、パラジウム同位体の偶奇分離イオン化装置が提供される。
1の波長を有する第1のレーザ光と、第2の波長を有する第2のレーザ光により、複数種類のパラジウム同位体のうち、奇数質量数のパラジウム同位体が選択的に第1の励起準位を経て第2の励起準位に励起される。第2の励起準位は、自動イオン化準位であり、そうでない場合には、第3の波長を有する第3のレーザ光を用いて、第2の励起準位の前記パラジウム同位体が自動イオン化準位へ励起される。
パラジウム同位体を、上述のように基底準位から二段階または三段階で自動イオン化準位に励起する場合に、少なくとも第1の励起準位と第2の励起準位の間で、パラジウム同位体のイオンコア状態を同じに保たれる。これにより、第1の励起準位から第2の励起準位へ奇数質量数のパラジウム同位体を励起させる効率を高めることができる。その結果、奇数質量数のパラジウム同位体を、効率よく、基底準位から二段階または三段階で選択的に自動イオン化準位に励起できる。
第1参考例のイオン化方法により奇数質量数のパラジウム同位体を三段階で励起する場合の説明図である。 イオンコアの説明図である。 イオンコアの別の説明図である。 第1および第2の波長がそれぞれ247.7nmおよび835.6nmである場合に奇数質量数のパラジウム同位体が遷移するエネルギー準位の微細構造を示す。 第1参考例のイオン化方法の実験結果を示す。 第2参考例に対応する実験結果を示す。 第1参考例による、パラジウム同位体の偶奇分離イオン化装置を示す概略図である。 第1および第2の波長がそれぞれ244.9nmおよび576.2nmである場合に奇数質量数のパラジウム同位体が遷移するエネルギー準位の微細構造を示す。 第1および第2の波長がそれぞれ244.9nmおよび560.5nmである場合に奇数質量数のパラジウム同位体が遷移するエネルギー準位の微細構造を示す。 パラジウム原子を基底準位からnが9以上の準位に直接励起した場合において、各準位にあるパラジウム原子がイオン化する確率の理論値を示す。 パラジウム原子を各準位に励起した場合に、生成されたパラジウムイオンの強度を示す公知の測定データである。 第2参考例のイオン化方法により奇数質量数のパラジウム同位体を三段階で励起する場合の説明図である。 奇数質量数のパラジウム同位体を三段階に励起した場合において、生成されたパラジウムイオンの強度の測定結果を示す。 図10Aの結果を数値で示した表である。 図10Aの部分拡大図であり、n=9のイオン強度のピーク付近を示す。 図10Aの部分拡大図であり、n=10のイオン強度のピーク付近を示す。 図10Aの部分拡大図であり、n=11のイオン強度のピーク付近を示す。 図10Aの部分拡大図であり、n=12のイオン強度のピーク付近を示す。 図10Aの部分拡大図であり、n=13のイオン強度のピーク付近を示す。 第2参考例による、パラジウム同位体の偶奇分離イオン化装置を示す概略図である。 第3のレーザ光の強度分布を一例として示す。 本発明の実施形態のイオン化方法により、奇数質量数のパラジウム同位体を二段階で自動イオン化準位へ励起する場合の説明図である。 二段階励起例1の場合において奇数質量数のパラジウム同位体が遷移するエネルギー準位の微細構造を示す。 二段階励起例2の場合において奇数質量数のパラジウム同位体が遷移するエネルギー準位の微細構造を示す。 二段階励起例3の場合において奇数質量数のパラジウム同位体が遷移するエネルギー準位の微細構造を示す。 二段階励起例4の場合において奇数質量数のパラジウム同位体が遷移するエネルギー準位の微細構造を示す。 本発明の実施形態によるイオン化装置の構成例1を示す。 本発明の実施形態によるイオン化装置の構成例2を示す。
本発明の好ましい実施形態を図面に基づいて説明する。なお、各図において共通する部分には同一の符号を付し、重複した説明を省略する。
[第1参考例
第1参考例によるイオン化方法は、複数種類のパラジウム同位体を含むパラジウム含有物質から質量数が奇数のパラジウム同位体を選択的にイオン化する方法である。複数種類のパラジウム同位体として、パラジウム同位体102Pd,104Pd,105Pd,106Pd,107Pd,108Pd,110Pdがある。
(三段階の励起によるイオン化)
図1は、第1参考例のイオン化方法により、奇数質量数のパラジウム同位体を三段階で励起する場合の説明図である。三段階の励起は、基底準位から第1の励起準位への励起と、第1の励起準位から第2の励起準位への励起と、第2の励起準位から自動イオン化準位への励起とからなる。
図1に示すように、第1参考例のイオン化方法は、実線の3つの矢印で示す第1〜第3の励起ステップS1〜S3を有する。第1参考例では、第1〜第3の波長をそれぞれ有する第1〜第3のレーザ光を同時にパラジウム含有物質に照射することにより、第1〜第3の励起ステップS1〜S3が生じる。第1参考例において、第1のレーザ光の波長が247.7nmであり第2のレーザ光の波長が835.6nmである場合に、第1および第2のレーザ光は、直線偏光の状態でパラジウム含有物質に照射され、かつ、パラジウム含有物質において、第1のレーザ光の偏光方向は、第2のレーザ光の偏光方向と平行である。
第1参考例では、三段階励起において、奇数質量数のパラジウム同位体のイオンコア状態は同じに保たれる。図2Aと図2Bは、パラジウム同位体のイオンコアの説明図である。図2Aは、パラジウム同位体を構成するn個の電子のうちいずれの電子も光の吸収により励起されていない場合を示す。図2Bは、図2Aの状態から1つの電子が光を吸収して励起された場合を示す。パラジウム同位体のイオンコアとは、パラジウム同位体を構成する原子核と複数の電子のうち、光を吸収して励起された電子を除く電子と、原子核とを合わせたものを意味する。イオンコア状態とは、イオンコアにおける電子の配置の状態を意味する。したがって、図2においては、イオンコア状態は、n個の電子の配置の状態を意味し、図2においては、イオンコア状態は、イオンコアにおける(n−1)個の電子の配置の状態を意味する。また、パラジウム同位体が、イオンコア状態を同じに保ちつつ第1の励起準位から第2の励起準位へ励起される場合には、このパラジウム同位体のイオンコアにおける全ての電子の配置の状態は、第1の励起準位と第2の励起準位の間で同じである。
第1の励起ステップS1では、247.7nmである第1の波長を有する第1のレーザ光により、質量数が奇数のパラジウム同位体だけでなく、質量数が偶数のパラジウム同位体も、第1の励起準位に励起される。第1の励起準位に励起された奇数質量数のパラジウム同位体の状態は、4d3/2)5p[3/2]で表わされる。
このように第1の励起準位に励起された奇数質量数のパラジウム同位体のイオンコア状態は、3/2で表わされる。なお、以下で、第1参考例において、「第1のレーザ光」は、第1の励起ステップS1で用いるレーザ光を意味する。
第2の励起ステップS2では、835.6nmである第2の波長を有する第2のレーザ光により、第1の励起準位にある複数種類のパラジウム同位体のうち、奇数質量数のパラジウム同位体が、選択的に第2の励起準位へ励起される。これは、奇数質量数のパラジウム同位体が核スピンを有していることによる。奇数質量数のパラジウム同位体では、核スピンがパラジウム原子の電子軌道に作用することにより、その第1および第2の励起準位に微細構造が生じている。この微細構造が存在するので、第1および第2のレーザ光により、奇数質量数のパラジウム同位体を、第1の励起準位から第2の励起準位へ励起できる。
これに対し、偶数質量数のパラジウム同位体は、第2のレーザ光を吸収して励起できるエネルギ準位の微細構造を有しない。すなわち、第1の励起準位にある偶数質量数のパラジウム同位体は、第2のレーザ光によっては第2の励起準位へ実質的に励起されない。
第2の励起準位に励起された奇数質量数のパラジウム同位体の状態は、4d3/2)6s[3/2]で表わされる。
第2の励起ステップS2では、第1の励起準位の奇数質量数のパラジウム同位体は、イオンコア状態の同一性を保ちつつ第2の励起準位へ励起される。すなわち、第2の励起準位の奇数質量数のパラジウム同位体のイオンコア状態は、第1の励起準位に励起された奇数質量数のパラジウム同位体のイオンコア状態と同じである。なお、以下で、第1参考例において、「第2のレーザ光」は、第2の励起ステップS2で用いるレーザ光を意味する。
第3の励起ステップS3では、第3の波長を有する第3のレーザ光により、第2の励起準位の奇数質量数のパラジウム同位体は、イオンコア状態の同一性を保ちつつ自動イオン化準位へ励起される。この第3のレーザ光は、パラジウム含有物質に照射される時に直線偏光の状態であってもよいし、円偏光または楕円偏光の状態であってもよい。なお、以下で、第1参考例において、「第3のレーザ光」は、第3の励起ステップS3で用いるレーザ光を意味する。
これについて、上述した第2の励起準位の奇数質量数のパラジウム同位体が、第3のレーザ光によりイオンコア状態が3/2である自動イオン化準位に励起されるように、第3のレーザ光の波長(すなわち第3の波長)が選択される。実施例では、第3のレーザ光により奇数質量数のパラジウム同位体が励起される自動イオン化準位は、リュードベリ準位のうち、主量子数n(以下で単にnともいう)が9以上のエネルギー準位である。好ましくは、第3の波長が652.2nmであることにより、奇数質量数のパラジウム同位体は、nが9である自動イオン化準位に励起されて4d3/2)9p[3/2]で表わされる状態になる。ただし、この自動イオン化準位は、nが9よりも大きいリュードベリ準位であってもよい。例えば、この自動イオン化準位は、nが10、11、12、または13のリュードベリ準位であってもよい。第3の波長が617.9nmである場合、奇数質量数のパラジウム同位体は、nが10である自動イオン化準位に励起されて4d3/2)10p[3/2]で表わされる状態になる。なお、第3の波長は、652.5nmであってもよい。この波長でもパラジウムイオンの強度が大きくなった。
なお、第1、第2および第3の波長をそれぞれ有する第1、第2および第3のレーザ光の各々は、当該波長を含む波長範囲で実質的な強度を有しているものであってよい。この波長範囲の幅は、0.6nm以上であって1.5nm以下(例えば0.1nm程度)であってよい。この場合、当該レーザ光は、この波長範囲内の波長で強度が最大値となり、この波長範囲内のどの波長でも、強度が当該最大値の所定の割合(例えば50%、好ましくは75%、より好ましくは90%)以上になる。なお、当該レーザ光は、この波長範囲外では、どの波長でも、上記最大値の上記所定の割合より小さくてよい。
(エネルギー準位の構造)
図3は、第1参考例における奇数質量数のパラジウム同位体が遷移するエネルギー準位の微細構造を示す。
図3における第1の励起準位は、基底準位の奇数質量数のPd同位体(パラジウム同位体)が、247.7nmの波長を持つ第1のレーザ光により励起される準位である。また、図3における第2の励起準位は、図3における第1の励起準位の奇数質量数のPd同位体が、835.6nmの波長を持つ第2のレーザ光により励起される準位である。
奇数質量数のPd同位体のエネルギー準位は、図3のように複雑な微細構造になっている。これは、奇数質量数のPd同位体の核スピンIが0でないため、全角運動量F(=J+I)が多数のm準位に分裂するためである。全角運動量Fの場合、Fのz成分mは(2F+1)種類の値を取ることができるので、(2F+1)個の微細準位に分裂している。図3において、基底準位から第1の励起準位への励起と、第1の励起準位から第2の励起準位への励起は、Fのz成分mが変化しない励起である(Δm=0)、
奇数質量数のPd同位体が基底準位(J=0)で取り得る全角運動量Fの値は5/2である。したがって、基底準位では、F=5/2のz成分mがそれぞれ−5/2、−3/2、−1/2、1/2、3/2、5/2である6つの微細準位が存在している。
図3の第1の励起準位(J=1)で取り得る全角運動量Fの値には3/2、5/2、7/2の3種類がある。したがって、第1の励起準位では、F=3/2について4つの微細準位が存在し、F=5/2について6つの微細準位が存在し、F=7/2について8つの微細準位が存在している。
図3の第2の励起準位(J=1)で取り得る全角運動量Fの値にも3/2、5/2、7/2の3種類がある。したがって、第2の励起準位でも、F=3/2について4つの微細準位が存在し、F=5/2について6つの微細準位が存在し、F=7/2について8つの微細準位が存在している。
図3において、基底準位から第1の励起準位への励起は、いずれかの実線矢印が示す励起となり、第1の励起準位から第2の励起準位への励起は、いずれかの破線矢印が示す励起となる。
(実験)
図4Aは、第1参考例によるイオン化方法の実験結果を示す。図4Aは、上述した第1参考例のイオン化方法において、第1〜第3の波長を、それぞれ、247.7nm、835.6nmおよび652.2nmにした場合に得られた奇数質量数のパラジウム同位体のイオンの強度を示す。図4Aにおいて、横軸は、第3のレーザ光の強度を示し、縦軸は、得られた奇数質量数のパラジウム同位体105Pdのイオンの強度(量)の常用対数を示す。
図4Bは、後述の第2参考例に対応する場合である。すなわち、図4Bでは、波長がそれぞれ276.4nm、521.0nmおよび730.9nmである3つのレーザ光を同時にパラジウム含有物質に照射することにより奇数質量数のパラジウム同位体105Pdを選択的にイオン化した場合を示す。図4Bにおいて、横軸は、第3のレーザ光の強度を示し、縦軸は、得られた奇数質量数のパラジウム同位体105Pdのイオンの強度(量)の常用対数を示す。
図4Bでは、図1において、奇数質量数のパラジウム同位体は、破線の矢印で示す(1)〜(3)の経路で自動イオン化準位へ励起される(詳しくは後述の第2参考例を参照)。したがって、図4Bでは、奇数質量数のパラジウム同位体は、第1の励起準位と第2励起準位との間で同じイオンコア状態(5/2)を保つが、第2の励起準位から自動イオン化準位へ遷移する時に、イオンコア状態は5/2から3/2に変化する。
図4Aと図4Bとで、各レーザ光の波長は上述のように異なっているが、それ以外の条件(例えばレーザ光の強度)は同じにした。図4Aと図4Bから分かるように、図4Aの第1参考例では、イオン化されたパラジウム同位体の強度(量)は、図4Bの場合の100倍以上になっている。例えば、自動イオン化準位への励起に用いたレーザ光の強度が300μJ/cmの場合では、第1参考例の図4Aは図4Bの場合よりも約330倍になっている。自動イオン化準位への励起に用いたレーザ光の強度が500μJ/cmの場合では、第1参考例の図4Aは図4Bの場合よりも約260倍になっている。
(イオン化装置の構成)
図5は、第1参考例によるイオン化装置100の構成を示す。上述した第1参考例によるイオン化方法は、イオン化装置100により行われてよい。第1参考例によるイオン化装置100は、第1レーザ照射装置103と第2レーザ照射装置105と第3レーザ照射装置121を備える。
図5において、パラジウム含有物質1は気体であってよい。図1では、パラジウム含有物質1は、複数種類のパラジウム同位体を含む物体(例えば上述した放射性廃棄物の不溶解残渣)が電子銃や加熱装置などにより蒸気となったものである。例えば、真空チャンバーに坩堝102を配置し、この坩堝102に上記物体を入れて、電子ビームを上記物体に当てる。これにより、この物体の蒸気をパラジウム含有物質1として発生させる。
第1レーザ照射装置103は、第1のレーザ光を生成し、奇数質量数と偶数質量数のパラジウム同位体を含むパラジウム含有物質1に直線偏光の第1のレーザ光を照射する。
第2レーザ照射装置105は、第2のレーザ光を生成して直線偏光の第2のレーザ光をパラジウム含有物質1に照射する。
パラジウム含有物質1の位置で、第1のレーザ光の偏光方向が第2のレーザ光の偏光方向と平行になるように、第1レーザ照射装置103と第2レーザ照射装置105は構成されている。なお、偏光方向は電場の振動方向である。
第1参考例では、第1レーザ照射装置103は、レーザ射出部107と複数のミラー109a,109bと偏光素子111と偏光方向調整素子113を備える。
レーザ射出部107は、直線偏光の第1のレーザ光を射出する。レーザ射出部107は例えば色素レーザである。
複数のミラー109a,109bは、それぞれ、レーザ射出部107からの第1のレーザ光を反射することにより、この第1のレーザ光をパラジウム含有物質1へ案内する。
偏光素子111は、レーザ射出部107から射出された第1のレーザ光の直線偏光度を向上させる。偏光素子111は例えば偏光プリズムであってよい。なお、レーザ射出部107が直線偏光でないレーザ光を射出する場合には、偏光素子111は、レーザ射出部107から射出された第1のレーザ光を直線偏光に変換する。レーザ射出部107が直線偏光の第1のレーザ光を射出する場合には、図5において偏光素子111を省略してもよい。
偏光方向調整素子113は、偏光素子111を通過した第1のレーザ光の偏光方向を変える。これにより、偏光方向調整素子113を通過した直線偏光の第1のレーザ光の偏光方向と、第2のレーザ光の偏光方向は、パラジウム含有物質1の位置で互いに平行になる。偏光方向調整素子113は、例えば2分の1波長板であってよい。
第2レーザ照射装置105は、レーザ射出部115と複数のミラー117a,117bと偏光素子119を備える。
レーザ射出部115は、直線偏光の第2のレーザ光を射出する。レーザ射出部115は例えば色素レーザである。
複数のミラー117a,117bは、それぞれ、レーザ射出部115からの第2のレーザ光を反射することにより、第2のレーザ光をパラジウム含有物質1へ案内する。
偏光素子119は、レーザ射出部115から射出された直線偏光の第2のレーザ光の直線偏光度を向上させる。偏光素子119は例えば偏光プリズムであってよい。なお、レーザ射出部115が直線偏光でない第2のレーザ光を射出する場合には、偏光素子119は、レーザ射出部115から射出された第2のレーザ光を直線偏光に変換する。レーザ射出部115が直線偏光の第2のレーザ光を射出する場合には、図1において偏光素子119を省略してもよい。
第1および第2のレーザ光がパラジウム含有物質1における同じ位置に照射されるように、第1レーザ照射装置103と第2レーザ照射装置105が構成される。そのために、一例では、複数のミラー109a,109b,117a,117bにより、第1のレーザ光と第2のレーザ光とは、パラジウム含有物質1を貫通する同じ仮想直線上を互いに逆方向に進行してパラジウム含有物質1に入射する。
第3レーザ照射装置121は、第3のレーザ光をパラジウム含有物質1に照射する。第3のレーザ光は、直線偏光の第1および第2のレーザ光により二段階に励起された奇数質量数のパラジウム同位体を、主量子数nが9以上のリュードベリ準位に励起する。これにより、奇数質量数のパラジウム同位体は自動的にイオン化する。
図5の例では、第3レーザ照射装置121は、第3のレーザ光を射出するレーザ射出部123とミラー125を有する。レーザ射出部123からの第3のレーザ光は、ミラー125で反射されてミラー117bへ入射する。ミラー125は、特定の波長の光を反射し他の波長の光を透過させるダイクロイックミラーである。すなわち、ダイクロイックミラー125は、第2のレーザ光を透過させ、第3のレーザ光を反射する。これにより、第2および第3のレーザ光は、同じ経路を伝播するように重なり、ミラー117bで反射してパラジウム含有物質1に入射する。
イオン化装置100は、収集装置127を備えていてもよい。収集装置127は、イオン化されたパラジウム同位体を所望の箇所に集める。収集装置127は、例えば金属電極128と金網状電極129と収集基板131を備える。金属電極128に正電圧が加えられ、金網状電極129が接地されていることにより、イオン化されたパラジウム同位体は、金網状電極129を通過して収集基板131に堆積する。
(他の波長の例1)
第1のレーザ光の波長(第1の波長)は244.9nmであり、第2のレーザ光の波長(第2の波長)は576.2nmであってもよい。この場合は、以下で述べない点は上述と同じである。
第1および第2のレーザ光は、それぞれ、第1レーザ照射装置103と第2レーザ照射装置105により、直線偏光の状態で、かつ、偏光方向が互いに平行な状態で、パラジウム含有物質1における同じ位置に照射される。これによっても、パラジウム含有物質1に含まれる複数種類のパラジウム同位体のうち、奇数質量数のパラジウム同位体が、選択的に、第1の励起準位を経て第2の励起準位へ励起される。この時、奇数質量数のパラジウム同位体のイオンコア状態は、第1の励起準位と第2の励起準位との間で同じになる。
図6は、奇数質量数のパラジウム同位体が遷移するエネルギー準位の微細構造を示す。
図6における第1の励起準位は、基底準位の奇数質量数のPd同位体が、244.9nmの波長を持つ第1のレーザ光により励起される準位である。また、図6における第2の励起準位は、図6における第1の励起準位の奇数質量数のPd同位体が、576.2nmの波長を持つ第2のレーザ光により励起される準位である。図6において、基底準位から第1の励起準位への励起と、第1の励起準位から第2の励起準位への励起は、Fのz成分mが変化しない励起である(Δm=0)。
図6の第1の励起準位(J=1、4d3/2)5p[1/2])で取り得る全角運動量Fの値には3/2、5/2、7/2の3種類がある。したがって、第1の励起準位では、F=3/2について4つの微細準位が存在し、F=5/2について6つの微細準位が存在し、F=7/2について8つの微細準位が存在している。
図6の第2の励起準位(J=1、4d3/2)5d[1/2])で取り得る全角運動量Fの値にも3/2、5/2、7/2の3種類がある。したがって、第2の励起準位でも、F=3/2について4つの微細準位が存在し、F=5/2について6つの微細準位が存在し、F=7/2について8つの微細準位が存在している。
図6において、基底準位から第1の励起準位への励起は、いずれかの実線矢印が示す励起となり、第1の励起準位から第2の励起準位への励起は、いずれかの破線矢印が示す励起となる。
第3のレーザ光の波長(第3の波長)は、次の(a)および(b)を満たすように選択され、例えば1051.3nm、967.7nm、または920.8nmである。
(a)第1および第2のレーザ光により、第2の励起準位に励起された奇数質量数のパラジウム同位体を、第3のレーザ光によりnが9以上のリュードベリ準位である自動イオン化準位へ励起する。
(b)自動イオン化準位に励起される奇数質量数のパラジウム同位体は、第1の励起準位および第2の励起準位と自動イオン化準位との間でイオンコア状態が同じになる。
第3の波長が1051.3nmの場合には、奇数質量数のパラジウム同位体は、nが9である自動イオン化準位に励起され、4d3/2)9p[1/2]で表わされる状態になる。第3の波長が967.7nmの場合には、奇数質量数のパラジウム同位体は、nが10である自動イオン化準位に励起され、4d3/2)10p[1/2]で表わされる状態になる。第3の波長が920.8nmの場合には、奇数質量数のパラジウム同位体は、nが11である自動イオン化準位に励起され、4d3/2)11p[1/2]で表わされる状態になる。
(他の波長の例2)
第1のレーザ光の波長(第1の波長)は244.9nmであり、第2のレーザ光の波長(第2の波長)は560.5nmであってもよい。この場合は、以下で述べない点は上述と同じである。
第1および第2のレーザ光は、それぞれ、第1レーザ照射装置103と第2レーザ照射装置105により、直線偏光の状態で、かつ、偏光方向が互いに直交する状態で、パラジウム含有物質1における同じ位置に照射される。あるいは、第1および第2のレーザ光は、それぞれ、第1レーザ照射装置103と第2レーザ照射装置105により、円偏光または楕円偏光の状態で、パラジウム含有物質1における同じ位置に照射される。このような第1および第2のレーザ光によっても、パラジウム含有物質1に含まれる複数種類のパラジウム同位体のうち、奇数質量数のパラジウム同位体が、選択的に、第1の励起準位を経て第2の励起準位へ励起される。この時、奇数質量数のパラジウム同位体のイオンコア状態は、第1の励起準位と第2の励起準位との間で同じになる。
図7は、第1参考例における奇数質量数のパラジウム同位体が遷移するエネルギー準位の微細構造を示す。
図7における第1の励起準位は、基底準位の奇数質量数のPd同位体が、244.9nmの波長を持つ第1のレーザ光により励起される準位である。また、図7における第2の励起準位は、図7における第1の励起準位の奇数質量数のPd同位体が、560.5nmの波長を持つ第2のレーザ光により励起される準位である。図7において、基底準位から第1の励起準位への励起は、Fのz成分mが変化しない励起であり、第1の励起準位から第2の励起準位への励起は、Fのz成分mが1だけ変化する励起である(Δm=±1)。
図7の第1の励起準位(J=1、4d3/2)5p[1/2])で取り得る全角運動量Fの値には3/2、5/2、7/2の3種類がある。したがって、第1の励起準位では、F=3/2について4つの微細準位が存在し、F=5/2について6つの微細準位が存在し、F=7/2について8つの微細準位が存在している。
図7の第2の励起準位(J=0、4d3/2)5d[1/2])で取り得る全角運動量Fの値は、5/2の1種類がある。したがって、第2の励起準位では、6つの微細準位が存在している。
図7において、基底準位から第1の励起準位への励起は、いずれかの実線矢印が示す励起となり、第1の励起準位から第2の励起準位への励起は、いずれかの破線矢印が示す励起となる。
第3のレーザ光の波長(第3の波長)は、次の(a)および(b)を満たすように選択され、例えば1108.0nm、1015.4nmまたは964.0nmである。
(a)第1および第2のレーザ光により、第2の励起準位に励起された奇数質量数のパラジウム同位体を、第3のレーザ光によりnが9以上のリュードベリ準位である自動イオン化準位へ励起する。
(b)自動イオン化準位に励起される奇数質量数のパラジウム同位体は、第1の励起準位および第2の励起準位と自動イオン化準位との間でイオンコア状態が同じになる。
第3の波長が1108.0nmの場合には、奇数質量数のパラジウム同位体は、nが9である自動イオン化準位に励起され、4d3/2)9p[1/2]で表わされる状態になる。第3の波長が1015.4nmの場合には、奇数質量数のパラジウム同位体は、nが10である自動イオン化準位に励起され、4d3/2)10p[1/2]で表わされる状態になる。第3の波長が964.0nmの場合には、奇数質量数のパラジウム同位体は、nが11である自動イオン化準位に励起され、4d3/2)11p[1/2]で表わされる状態になる。
(第1参考例による効果)
第1参考例によると、第1の励起準位から第2励起準位を経て自動イオン化準位へ励起するまで奇数質量数のパラジウム同位体は、同じイオンコア状態3/2を保つので、極めて高い効率で、奇数質量数のパラジウム同位体をイオン化することができる。例えば、図4Aの実験結果で示されるように、第1参考例では、励起過程でイオンコア状態が変わる場合よりも100倍以上の効率で奇数質量数のパラジウム同位体を選択的にイオン化することができる。
[第2参考例
第2参考例による、パラジウム同位体の偶奇分離イオン化装置(以下、単にイオン化装置ともいう)は、複数種類のパラジウム同位体を含むパラジウム含有物質から質量数が奇数のパラジウム同位体を選択的にイオン化するための装置である。複数種類のパラジウム同位体として、パラジウム同位体102Pd,104Pd,105Pd,106Pd,107Pd,108Pd,110Pdがある。
パラジウム含有物質に含まれるパラジウム同位体は、リュードベリ準位のうち、主量子数nが9以上の各エネルギー準位(すなわち自動イオン化準位)に励起された場合には、高い確率で自動的にイオン化される(以下、主量子数nを単にnで表現し、エネルギー準位を単に準位ともいう)。第2参考例によるイオン化装置は、質量数が奇数と偶数のパラジウム同位体のうち、奇数質量数のパラジウム同位体を選択的に、nが10、11、12、または13の準位に励起する。
この場合、理論に基づくと、nが9以上の準位に励起されたパラジウム原子が最も高い確率でイオン化する。しかし、本願の発明者は、nが10、11、12、または13の準位に励起されたパラジウム原子のほうが高い確率でイオン化することを見出した。
(理論に基づくイオン化の確率)
図8Aは、各準位にあるパラジウム原子がイオン化する確率の理論値を示す。図8Aでは、nが9の準位に励起されたパラジウム原子が自動的にイオン化(電離)する確率を1として、他の準位にあるパラジウム原子のイオン化確率の相対値を示している。nの準位にあるパラジウム同位体が自動的にイオン化する確率は、理論によると、1/nに比例する。
図8Bは、パラジウム原子を各準位に励起した場合に、生成されたパラジウムイオンの強度を示す公知の測定データである。図8Bは、非特許文献3に記載のデータに基づいている。図8Bのデータは、パラジウム原子の準位が、基底準位から、1回の励起で、nが9以上の各準位に移行した場合のものである。図8Bにおいて、横軸は、パラジウム原子を含む物質に照射したレーザ光の波長を示す。ここで、各波長のレーザ光の強度は同じである。図8Bにおいて、縦軸は、このレーザ光の照射により生成されたパラジウムイオンの強度(数)を示す。図8Bにおいてn=9、n=10、n=11の矢印で示すピークは、それぞれ、基底準位からn=9、n=10、n=11の準位に励起されたパラジウム原子によるイオン強度を示す。図8Bの結果は、図8Aの理論値と一致している。すなわち、理論の通り、図8Bでは、n=9の準位に励起されたパラジウム同位体によるイオン強度が最も高い。
(三段階の励起によるイオン化)
図9は、パラジウム含有物質において、奇数質量数のパラジウム同位体が、選択的に三段階で励起されてイオン化する場合を示す説明図である。三段階の励起は、基底準位から第1の励起準位への励起と、第1の励起準位から第2の励起準位への励起と、第2の励起準位からnが9以上の準位への励起とからなる。
基底準位から第1の励起準位への励起は、波長λが276.3nmであり左旋回の円偏光状態となっている第1のレーザ光をパラジウム含有物質に照射することにより行われる。この時、図9に示すように、質量数が奇数のパラジウム同位体だけでなく、質量数が偶数のパラジウム同位体も、第1の励起準位に励起される。
第1の励起準位から第2の励起準位への励起は、波長λが521.0nmであり左旋回(光の進行方向から見た場合に左旋回となる。以下、同様)の円偏光状態となっている第2のレーザ光をパラジウム含有物質に照射することにより行われる。この時、図9に示すように、質量数が奇数と偶数のパラジウム同位体のうち、奇数質量数のパラジウム同位体が選択的に第2の励起準位に励起される。すなわち、この時、質量数が偶数のパラジウム同位体は、第1の励起準位から第2の励起準位に実質的に励起されない。
これは、奇数質量数のパラジウム同位体が核スピンを有していることによる。奇数質量数のパラジウム同位体では、核スピンがパラジウム原子の電子軌道に作用することにより、そのエネルギー準位に微細構造が生じている。この微細構造により、奇数質量数のパラジウム同位体が選択的に第1の励起準位から第2の励起準位に励起される。
第2の励起準位からnが9以上の準位への励起は、この励起に対応する波長λの第3のレーザ光をパラジウム含有物質に照射することにより行われる。ここで、第3のレーザ光を円偏光状態にすることは不要である。
第1、第2、および第3のレーザ光をパラジウム含有物質に同時に照射することにより、奇数質量数のパラジウム同位体が、選択的に三段階で、nが9以上の準位へ励起される。
(実験)
本願の発明者は、三段階励起について、以下の実験をした。天然のパラジウム含有物質を用意した。このパラジウム含有物質は、104Pd,105Pd,106Pd,108Pd,110Pdを含むが、放射性の107Pdを含まない。天然のパラジウム含有物質に、3つの色素レーザ装置からそれぞれ第1、第2、および第3のレーザ光を同時に照射した。この時、生成されたパラジウムイオンの強度(数)を測定した。
第1のレーザ光の波長を、パラジウム同位体を基底準位から第1の励起準位へ励起させる一定の値(276.3nm)にした。
第2のレーザ光の波長を、パラジウム同位体を第1の励起準位から第2の励起準位へ励起させる一定の値(521.0nm)にした。
第3のレーザ光の波長を、各値に変化させた。すなわち、第1および第2のレーザ光の波長を一定にしたまま、第3のレーザ光の波長を変えて、第1、第2、および第3のレーザ光を同時にパラジウム含有物質に照射した。この時、第3のレーザ光の波長毎に、パラジウムイオンの強度を測定した。
図10Aは、この実験で生成されたパラジウムイオンの強度の測定結果を示す。図10Aにおいて、横軸は、パラジウム含有物質に照射した第3のレーザ光の波長を示す。縦軸は、第1〜第3のレーザ光の照射により生じたパラジウムイオンの強度(検出数)を示す。図10Aにおいて、n=9〜n=14の矢印が示す箇所は、それぞれ、nが9〜14の準位に励起されたパラジウム同位体のイオン強度を示す。
図10Bは、図10Aの結果を数値で示した表である。
図10Aと図10Bから分かるように、パラジウム同位体を基底準位から三段階で主量子数nが9以上の準位に励起させた場合には、n=9の準位に励起されたパラジウム同位体よりも、n=10、11、12または13の準位に励起されたパラジウム同位体のほうが高い頻度(確率)でイオン化することが実験により見出された。特に、n=10または11の準位に励起されたパラジウム同位体は、n=9の準位に励起されたパラジウム同位体のイオン化確率の2倍を超える高い確率(2.23倍または2.33倍の確率)でイオン化されることが分かる。
図11A〜図11Eは、図10Aの部分拡大図であり、それぞれ、n=9、10、11、12、13の準位に励起されたパラジウム同位体のイオン強度を示す。図11の縦軸は、相対的なイオン強度を示す。図11Bにおいて、2つのピークが存在する。一方のピークは、波長が760.6nmで生じており、他方のピークは、波長が760.1nmで生じている。これら2つのピークのイオン強度は、それぞれ、n=9に相当する波長810.8nm(図10Bを参照)でのイオン強度の2.23倍と1.77倍である。
なお、上述の実験結果は、105Pdについてのものであるが、上述の実験結果は、105Pdと同じ核スピンを持つ107Pdにも当てはまる。すなわち、上記の実験において、仮に、105Pdを107Pdで置き換え、他の実験条件を同じにした場合にも、図10A、図10B、および図11A〜図11Eと同様の結果が得られる。
(イオン化装置の構成)
図12は、第2参考例による、パラジウム同位体の偶奇分離イオン化装置10を示す概略図である。イオン化装置10は、複数種類のパラジウム同位体を含むパラジウム含有物質1において奇数質量数のパラジウム同位体を選択的にイオン化する。特に、イオン化装置10は、上述の実験結果に基づいて、パラジウム同位体を三段階でnが10,11,12、または13の準位に励起するように構成される。パラジウム含有物質1は、一例では、原子力発電所の発電に利用された使用済核燃料(すなわち、放射性廃棄物)であるが、天然の物質または他の物質であってもよい。
イオン化装置10は、第1、第2、および第3のレーザ照射装置3,5,7を備える。第1のレーザ照射装置3は、第1の波長を持つ第1のレーザ光をパラジウム含有物質1に照射する。第2のレーザ照射装置5は、第2の波長を持つ第2のレーザ光をパラジウム含有物質1に照射する。第3のレーザ照射装置7は、第3の波長を持つ第3のレーザ光をパラジウム含有物質1に照射する。この構成で、第1、第2、および第3のレーザ照射装置3,5,7は、それぞれ第1、第2、および第3のレーザ光を、パラジウム含有物質1における同じ位置または範囲に同時に照射する。これらのレーザ光が、照射されるパラジウム含有物質1は、固体であっても、気体であってもよい。気体の場合、パラジウム含有物質1は、容器内において加熱装置により蒸発されたものであってよい。
第1の波長は276.3nmであり、第2の波長は521.0nmである。第3の波長は、760.1nm若しくは760.6nm、730.9nm、712.0nm、または、699.1nmである。好ましくは、第3の波長は、760.6nmまたは730.9nmである。さらに好ましくは、第3の波長は、730.9nmである。
第3の波長が760.1nm若しくは760.6nm、または、730.9nmである場合、第1、第2、および第3のレーザ照射装置3,5,7は、それぞれ、チタンサファイア結晶により固体レーザ装置であってよい。すなわち、この固体レーザ装置は、760.1nm若しくは760.6nm、または、730.9nmの波長のレーザ光を高い出力で射出可能である。
図13は、第3のレーザ照射装置7がパラジウム含有物質1に照射する第3のレーザ光の強度分布を一例として示す。この強度分布は、波長に対する分布である。図13において、横軸は、第3のレーザ光の波長を示し、縦軸は、各波長における、第3のレーザ光の強度である。図13において、第3のレーザ光の強度は、波長λpから波長λqまでの波長範囲Rにおいては、どの波長でも、当該強度の最大値Imaxの50%以上(好ましくは75%以上、さらに好ましくは90%以上)の強度を有する。なお、図13では、第3のレーザ光の強度は、波長範囲R内において最大値Imaxをとる。λpとλqとの差(すなわち、波長範囲Rの幅)の大きさは、0.6nm以上であって1.5nm以下の値(例えば約1nm)であってよい。
上述した第3の波長は、波長範囲Rに含まれる。すなわち、本願において、第3のレーザ光が第3の波長を持つことは、第3の波長が、波長範囲Rに含まれることを意味する。また、本願において、第3のレーザ光の波長(第3の波長)が特定の値(すなわち、760.1nm若しくは760.6nm、730.9nm、712.0nm、または、699.1nm)であることは、当該特定の値が、波長範囲Rに含まれることを意味する。
なお、例えば、波長範囲Rに含まれず、かつ、波長λpよりも1nm以上小さい波長の範囲では、どの波長であっても、第3のレーザ光の強度は、ゼロまたはゼロの近傍の値である。同様に、例えば、波長範囲Rに含まれず、かつ、波長λqよりも1nm以上大きい波長の範囲では、どの波長であっても、第3のレーザ光の強度は、ゼロまたはゼロの近傍の値である。
パラジウム同位体をn=10の準位に励起する場合には、波長範囲Rは、1.5nm以下の幅を有し、波長範囲Rには、760.1nmと760.6nmの一方または両方が含まれる。760.1nmと760.6nmは、図11Bにおいて2つのピークをそれぞれとる波長である。波長範囲Rが、760.1nmと760.6nmの両方を含む場合、λpが760.1nm(より厳密には、760.10nm)よりも小さく、λqが760.6nm(より厳密には、760.60nm)よりも大きいのがよい。これにより、効率よく、パラジウム同位体をn=10の準位に励起できる。
なお、第1の波長(276.3nm)を有する第1のレーザ光は、波長が276.25nm以上であり276.34nm以下の範囲で実質的な強度を有しているものであってよい。例えば、この範囲外では、どの波長でも、第1のレーザ光の強度はゼロであってよい。
同様に、第2の波長(521.0nm)を有する第1のレーザ光は、波長が520.95nm以上であり521.04nm以下の範囲で実質的な強度を有しているものであってよい。例えば、この範囲外では、どの波長でも、第2のレーザ光の強度はゼロであってよい。
イオン化装置10は、好ましくは、案内用光学素子9と、偏光用光学素子11とを備える。
案内用光学素子9は、第1、第2、および第3のレーザ照射装置3,5,7からそれぞれ射出された第1、第2、および第3のレーザ光を、パラジウム含有物質1の同じ位置または範囲に案内する。図12の例では、案内用光学素子9は、複数の反射ミラーであるが、他の構成を有していてもよい。
偏光用光学素子11は、第1および第2のレーザ光を左旋回の円偏光または楕円偏光にした状態でパラジウム含有物質1に照射させるためのものである。図12の例では、レーザ照射装置3,5から射出されたレーザ光は、直線偏光しているので、偏光用光学素子11は、第1および第2のレーザ光がそれぞれ通過する1/4波長板11であってよい。すなわち、直線偏光している第1および第2のレーザ光の各々は、1/4波長板11を通過することにより、左旋回の円偏光または楕円偏光の状態になる。これにより、第1および第2のレーザ光は、左旋回の円偏光または楕円偏光の状態でパラジウム含有物質1に照射される。なお、偏光用光学素子11は、1/4波長板以外のものであってもよい。
イオン化装置10は、好ましくは、パラジウム含有物質1に電場を印加する電場印加装置13を備える。電場印加装置13は、電極13aと電源13bを有する。電極13aは、好ましくは、パラジウム含有物質1の近傍に配置される。電源13bは、パラジウム含有物質1の電位よりも低い電位(例えば、負の電位)を電極13aに印加する。これにより、電極13aは、パラジウム含有物質1に電場を印加する。その結果、パラジウム含有物質1において生じたパラジウムイオンは、電極13aに引き寄せられて、電極13aに堆積する。
(イオン化方法)
第2参考例による、パラジウム同位体の偶奇分離イオン化方法を説明する。この方法は、上述したイオン化装置10を用いて行われる。
第1〜第3のレーザ照射装置3,5,7により、第1、第2、および第3のレーザ光をパラジウム含有物質1における同じ位置または範囲に同時に照射する。これにより、上述したように、パラジウム含有物質1に含まれている複数種類のパラジウム同位体のうち、奇数質量数のパラジウム同位体が、三段階で、主量子数nが10、11、12または13の準位に選択的に励起されて、自動的にイオン化する。すなわち、陽イオンであるパラジウムイオンが生成される。
この時、好ましくは、電場印加装置13により、パラジウム含有物質1に電場を印加する。すなわち、電源13bは、パラジウム含有物質1の電位よりも低い電位を電極13aに印加する。これにより、第1〜第3のレーザ照射装置3,5,7によりイオン化されたパラジウム同位体(パラジウムの陽イオン)は、電極13aが生成する電場により、パラジウム含有物質1から分離される。分離されたパラジウムイオンは電場印加装置13の電極13aに吸着される。したがって、パラジウムイオンを電極13aに堆積させることができる。
パラジウム含有物質1が使用済核燃料である場合には、例えば放射性パラジウム同位体107Pdおよび安定パラジウム同位体105Pdがパラジウム含有物質1から分離されて電極13aに堆積される。これにより使用済核燃料の線量を低減できる。パラジウム含有物質1が107Pdを含まない天然のである場合には、パラジウム同位体105Pdがパラジウム含有物質1から分離されて電極13aに堆積され、堆積された105Pdを資源として活用できる。
(第2参考例による効果)
第1のレーザ光により、奇数と偶数の質量数を持つパラジウム同位体が基底準位から第1の励起準位に励起され、第2のレーザ光により、第1の励起準位から、奇数の質量数を持つパラジウム同位体が選択的に第2の励起準位に励起され、第3のレーザ光により、第2の励起準位から、奇数の質量数を持つパラジウム同位体が、主量子数nが10、11、12、または13である準位に励起される。このように、nが10、11、12、または13の準位に三段階で励起されたパラジウム同位体は、高い確率で自動的にイオン化する。
これについて、三段階の励起において、nが9であるリュードベリ準位に励起されたパラジウム同位体よりも、nが10、11、12、または13であるリュードベリ準位に励起されたパラジウム同位体のほうが高い確率でイオン化する。
したがって、複数種類のパラジウム同位体を含む物質から、奇数質量数のパラジウム同位体を分離して効率よくイオン化できる。
本発明の実施形態]
本発明の実施形態によるイオン化方法は、複数種類のパラジウム同位体を含むパラジウム含有物質から質量数が奇数のパラジウム同位体を選択的にイオン化する方法である。本実施形態において、以下で説明しない点は第1参考例と同じである。例えば、以下において、第1参考例で用いたものと同じ用語や記号の意味は、第1参考例の場合と同じである。
(二段階の励起によるイオン化)
図14は、実施形態のイオン化方法により、奇数質量数のパラジウム同位体を二段階で自動イオン化準位へ励起する場合の説明図である。二段階の励起は、基底準位から第1の励起準位への励起と、第1の励起準位から第2の励起準位への励起とからなる。上述の第1参考例では、第2の励起準位は自動イオン化準位ではなかったが、実施形態では、第2の励起準位は自動イオン化準位である。
図14に示すように、実施形態のイオン化方法は、実線の2つの矢印で示す第1および第2の励起ステップS1,S2を有する。実施形態では、第1および第2の波長をそれぞれ有する第1および第2のレーザ光を同時にパラジウム含有物質に照射することにより、第1および第2の励起ステップS1,S2が生じる。実施形態では、第1および第2のレーザ光の各々は、少なくともパラジウム含有物質に照射される時に直線偏光である。
これについて、次の(1)〜(3)が満たされるように、第1および第2の波長が選択される。
(1)第2の励起準位が自動イオン化準位となる。
(2)複数種類のパラジウム同位体のうち実質的に奇数質量数のパラジウム同位体のみが選択的に第2の励起準位まで励起される。すなわち、偶数質量数のパラジウム同位体は、第1の励起準位に励起されても第2の励起準位へは実質的に励起されない。
(3)第2の励起準位の奇数質量数のパラジウム同位体のイオンコア状態は、第1の励起準位に励起された奇数質量数のパラジウム同位体のイオンコア状態と同じである。
<二段階励起例1>
実施形態の二段階励起例1を図15に基づいて説明する。
図15は、二段階励起例1の場合において奇数質量数のパラジウム同位体が遷移するエネルギー準位の微細構造を示す。図15の場合、第1のレーザ光の第1の波長λは244.9nmであり、第2のレーザ光の第2の波長λは、334.0nm<λ<378.8nmを満たす特定の値である。
図15における第1の励起準位は、基底準位の奇数質量数のパラジウム同位体が、第1のレーザ光により励起される準位であり、4d3/2)5p[1/2]で表わされる
また、図15における第2の励起準位(すなわち自動イオン化準位)は、図15における第1の励起準位の奇数質量数のパラジウム同位体が第2のレーザ光により励起される準位である。この自動イオン化準位は、4d3/2)ns[3/2]、4d3/2)nd[1/2]、および4d3/2)nd[3/2]でそれぞれ表わされる3つの準位のいずれかである。この自動イオン化準位が、当該3つの準位のいずれであるかは、波長λの上記特定の値によって決まる。
図15の場合、第1および第2のレーザ光が直線偏光として照射されるパラジウム含有物質において、第1のレーザ光の偏光方向は、第2のレーザ光の偏光方向と平行である。これにより、図15に示すように、第1の励起準位から第2の励起準位への励起は、Fのz成分mが変化しない励起となる(Δm=0)。
図15の第1の励起準位(J=1)では、F=3/2について4つの微細準位が存在し、F=5/2について6つの微細準位が存在し、F=7/2について8つの微細準位が存在している。図15の第2の励起準位(J=1)では、F=3/2について4つの微細準位が存在し、F=5/2について6つの微細準位が存在し、F=7/2について8つの微細準位が存在している。
図15において、奇数質量数のパラジウム同位体について、基底準位から第1の励起準位への励起は、いずれかの実線矢印が示す励起となり、第1の励起準位から第2の励起準位への励起は、いずれかの破線矢印が示す励起となる(このことは、後述する図16〜図18にも当てはまる)。
<二段階励起例2>
実施形態の二段階励起例2を図16に基づいて説明する。
図16は、二段階励起例2の場合において奇数質量数のパラジウム同位体が遷移するエネルギー準位の微細構造を示す。図16の場合も、第1のレーザ光の第1の波長λは244.9nmであり、第2のレーザ光の第2の波長λは、334.0nm<λ<378.8nmを満たす特定の値である。
図16における第1の励起準位は、図15の場合と同じである。一方、図16における第2の励起準位(すなわち自動イオン化準位)は、図16における第1の励起準位の奇数質量数のパラジウム同位体が第2のレーザ光により励起される準位である。この自動イオン化準位は、4d3/2)nd[1/2]で表わされる。
図16の場合、第1および第2のレーザ光が直線偏光として照射されるパラジウム含有物質において、第1のレーザ光の偏光方向は、第2のレーザ光の偏光方向と直交する。これにより、図16に示すように、第1の励起準位から第2の励起準位への励起は、Fのz成分mが1だけ変化する励起となる(Δm=±1)。
図16の第2の励起準位(J=0、4d3/2)nd[1/2])で取り得る全角運動量Fの値は、5/2の1種類がある。したがって、第2の励起準位では、6つの微細準位が存在している。
<二段階励起例3>
実施形態の二段階励起例3を図17に基づいて説明する。
図17は、二段階励起例3の場合において奇数質量数のパラジウム同位体が遷移するエネルギー準位の微細構造を示す。図17の場合、第1のレーザ光の第1の波長λは247.7nmであり、第2のレーザ光の第2の波長λは、328.8nm<λ<372.1nmを満たす特定の値である。
図17における第1の励起準位は、基底準位の奇数質量数のパラジウム同位体が、第1のレーザ光により励起される準位であり、4d3/2)5p[3/2]で表わされる
また、図17における第2の励起準位(すなわち自動イオン化準位)は、図15の場合と同じである。
図17の場合、第1および第2のレーザ光が直線偏光として照射されるパラジウム含有物質において、第1のレーザ光の偏光方向は、第2のレーザ光の偏光方向と平行である。これにより、図17に示すように、第1の励起準位から第2の励起準位への励起は、Fのz成分mが変化しない励起となる(Δm=0)。
図17の第1の励起準位(J=1)では、F=3/2について4つの微細準位が存在し、F=5/2について6つの微細準位が存在し、F=7/2について8つの微細準位が存在している。
<二段階励起例4>
実施形態の二段階励起例4を図18に基づいて説明する。
図18は、二段階励起例4の場合において奇数質量数のパラジウム同位体が遷移するエネルギー準位の微細構造を示す。図18の場合も、第1のレーザ光の第1の波長λは247.7nmであり、第2のレーザ光の第2の波長λは、328.8nm<λ<372.1nmを満たす特定の値である。
図18における第1の励起準位は、図17の場合と同じである。一方、図18における第2の励起準位(すなわち自動イオン化準位)は、図16の場合と同じである。
図18の場合、第1および第2のレーザ光が直線偏光として照射されるパラジウム含有物質において、第1のレーザ光の偏光方向は、第2のレーザ光の偏光方向と直交する。これにより、図18に示すように、第1の励起準位から第2の励起準位への励起は、Fのz成分mが1だけ変化する励起となる(Δm=±1)。
(イオン化装置の構成)
図19Aと図19Bは、それぞれ、実施形態によるイオン化装置200の構成例を示す。上述した実施形態によるイオン化方法は、イオン化装置200により行われてよい。イオン化装置200は、第1レーザ照射装置203と第2レーザ照射装置205を備える。第1レーザ照射装置203は、第1のレーザ光を生成し、パラジウム含有物質1に直線偏光の第1のレーザ光を照射する。第2レーザ照射装置205は、第2のレーザ光を生成して直線偏光の第2のレーザ光をパラジウム含有物質1に照射する。図19Aと図19Bにおいて、パラジウム含有物質1と坩堝102と収集装置127の構成と機能は図5の場合と同じである。
<二段階励起例1、3の場合>
第1レーザ照射装置203と第2レーザ照射装置205は、それぞれ第1および第2のレーザ光を、直線偏光の状態で、かつ、偏光方向が互いに平行な状態で、パラジウム含有物質1における同じ位置に照射するように構成されている。これにより、上述した図15の二段階励起例1と図17の二段階励起例3が実現される。このように二段階励起例1、3を実現する構成を、図19Aに基づいて説明するが、当該構成は図19Aに限定されない。二段階励起例1を実現する構成(例えば図19Aの構成例)において、第1のレーザ光の波長λは244.9nmであり、第2のレーザ光の波長λは、334.0nm<λ<378.8nmを満たす上記特定の値である。二段階励起例3を実現する構成(例えば図19Aの構成例)において、第1のレーザ光の波長λは247.7nmであり、第2のレーザ光の波長λは、328.8nm<λ<372.1nmを満たす上記特定の値である。
図19Aにおいて、第1レーザ照射装置203は、レーザ射出部207と複数のミラー209a,209bと偏光素子211を備える。複数のミラー209a,209bは、それぞれ、レーザ射出部207からの第1のレーザ光を反射することにより、この第1のレーザ光をパラジウム含有物質1へ案内する。偏光素子211は、例えば偏光プリズムであり、レーザ射出部207から射出された直線偏光の第1のレーザ光の直線偏光度を向上させる。すなわち、偏光素子211を通過した光は、1つの方向に偏光した直線偏光になる。
第2レーザ照射装置205は、第2のレーザ光を射出するレーザ射出部215とミラー217を有する。レーザ射出部215からの第2のレーザ光は、ミラー217で反射されてミラー209bへ入射する。ミラー217は、特定の波長の光を反射し他の波長の光を透過させるダイクロイックミラーである。すなわち、ダイクロイックミラー217は、第1のレーザ光を透過させ、第2のレーザ光を反射する。これにより、第1および第2のレーザ光は、同じ経路を伝播するように重なり、ミラー209bで反射して偏光素子211を通過し、偏光方向が互いに平行な直線偏光の状態でパラジウム含有物質1に入射する。
<二段階励起例2、4の場合>
第1レーザ照射装置203と第2レーザ照射装置205は、それぞれ第1および第2のレーザ光を、直線偏光の状態で、かつ、偏光方向が互いに直交する状態で、パラジウム含有物質1における同じ位置に照射するように構成されている。これにより、図16の二段階励起例2と図18の二段階励起例4が実現される。このように二段階励起例2、4を実現する構成を、図19Bに基づいて説明するが、当該構成は図19Bに限定されない。二段階励起例2を実現する構成(例えば図19Bの構成例)において、第1のレーザ光の波長λは244.9nmであり、第2のレーザ光の波長λは、334.0nm<λ<378.8nmを満たす上記特定の値である。二段階励起例4を実現する構成(例えば図19Bの構成例)において、第1のレーザ光の波長λは247.7nmであり、第2のレーザ光の波長λは、328.8nm<λ<372.1nmを満たす上記特定の値である。
図19Bにおいて、第1レーザ照射装置203の構成は、図19Aの場合と同じである。
第2レーザ照射装置205は、レーザ射出部215と複数のミラー219a,219bと偏光素子221と偏光方向調整素子223を備える。
レーザ射出部215は、直線偏光の第2のレーザ光を射出する。複数のミラー219a,219bは、それぞれ、レーザ射出部215からの第2のレーザ光を反射することにより、この第2のレーザ光を、第1のレーザ光が照射されるパラジウム含有物質1の位置へ案内する。偏光素子221は、例えば偏光プリズムであり、レーザ射出部215から射出された第2のレーザ光の直線偏光度を向上させる。すなわち、偏光素子221を通過した光は、1つの方向に偏光した直線偏光になる。偏光方向調整素子223は、偏光素子221を通過した第2のレーザ光の偏光方向を変える。これにより、偏光方向調整素子223を通過した直線偏光の第2のレーザ光の偏光方向と、第1のレーザ光の偏光方向は、パラジウム含有物質1の位置で互いに直交する。偏光方向調整素子223は、例えば2分の1波長板であってよい。
なお、二段階励起例2、4においては、第1レーザ照射装置203と第2レーザ照射装置205は、第1および第2のレーザ光を、円偏光または楕円偏光の状態で、パラジウム含有物質1における同じ位置に照射するように構成されてもよい。これによっても二段階励起例2、4を実現可能である。この場合、第1および第2の波長λ,λは、上述と同じである。
また、実施形態においても、第1および第2の波長λ,λをそれぞれ有する第1および第2のレーザ光の各々は、当該波長λまたはλを含む波長範囲で実質的な強度を有しているものであってよい。この波長範囲の幅は、0.6nm以上であって1.5nm以下(例えば0.1nm程度)であってよい。この場合、当該レーザ光は、この波長範囲内の波長で強度が最大値となり、この波長範囲内のどの波長でも、強度が当該最大値の所定の割合(例えば50%、好ましくは75%、より好ましくは90%)以上になる。なお、当該レーザ光は、この波長範囲外では、どの波長でも、上記最大値の上記所定の割合より小さくてよい。
上述の各二段階励起例1〜4において、第2の波長λは、質量分析法により特定できる。例えば、二段階励起例1または2において、第1のレーザ光の波長λを、上述の第1の波長λに固定し、第2のレーザ光の波長を、334.0nmから378.8nmまでの範囲内で変えながら、第1および第2のレーザ光をパラジウム含有物質1に照射する。これにより生じたパラジウム同位体のイオンに対して質量分析法を行って、第2のレーザ光の波長の値毎に、横軸が質量(または質量に相当する値)を示し縦軸がイオンの強度を示す質量スペクトルのグラフを求める。この質量スペクトルのグラフにおいて、イオンの強度のピークが、偶数質量数のパラジウム同位体の質量を示す横軸の位置では生じておらず、奇数質量数のパラジウム同位体の質量を示す横軸の位置では生じている場合には、この場合における第2のレーザ光の波長の値が、二段階励起例1または2を実現する第2の波長λ(すなわち、334.0nm<λ<378.8nmを満たす上記特定の値)になる。このようにして求めた図15の場合(二段階励起例1)における第2の波長の一例は、342.7nmである。二段階励起例3または4における第2の波長も同様に求めることができる。
実施形態による効果)
実施形態によると、奇数質量数のパラジウム同位体を二段階励起により選択的に自動イオン化準位へ励起できるので、第1参考例および第2参考例と比べてレーザ照射装置の台数を3台から2台に減らすことができる。したがって、装置の導入およびメンテナンスに要するコストを削減(2/3に削減)することができる。
また、第1および第2のレーザ光を、(例えば図19Aの構成により)重ねることが容易になる。その結果、第1および第2のレーザ光を、複数回、パラジウム含有物質1を通過させるためのマルチパス光学系も容易に実現できる。これについて、例えばマルチパス光学系を構成する各ミラーは、2つの波長(第1および第2の波長)対応したものでよくなる。
さらに、第1の励起準位と第2の励起準位(自動イオン化準位)との間で、奇数質量数のパラジウム同位体のイオンコア状態が3/2に保たれるので、極めて高い効率で、奇数質量数のパラジウム同位体をイオン化することができる。
本発明は上述した実施の形態に限定されず、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々変更を加え得ることは勿論である。
なお、上述した第1参考例、第2参考例、および本発明の実施形態の部分的な又は全体的な組み合わせを、これらが相反しなければ(又は矛盾しなければ)採用してもよい。
1 パラジウム含有物質、
3 第1のレーザ照射装置、
5 第2のレーザ照射装置、
7 第3のレーザ照射装置、
9 案内用光学素子(反射ミラー)、
10 イオン化装置、
11 偏光用光学素子(1/4波長板)、
13 電場印加装置、
13a 電極、
13b 電源、
102 坩堝、
103 第1レーザ照射装置、
105 第2レーザ照射装置、
107 レーザ射出部、
109a,109b ミラー、
110 同位体の選択的励起装置、
111 偏光素子、
113 偏光方向調整素子、
115 レーザ射出部、
117a,117b ミラー、
119 偏光素子、
100 イオン化装置、
121 第3レーザ照射装置、
123 レーザ射出部、
125 ミラー(ダイクロイックミラー)、
127 収集装置、
128 金属電極、
129 金網状電極、
131 収集基板、
200 イオン化装置、
203 第1レーザ照射装置、
205 第2レーザ照射装置、
207 レーザ射出部、
209a,209b ミラー、
211 偏光素子、
215 レーザ射出部、
217 ミラー(ダイクロイックミラー)、
219a,219b ミラー、
221 偏光素子、
223 偏光方向調整素子

Claims (11)

  1. 複数種類のパラジウム同位体を含むパラジウム含有物質に複数の波長のレーザ光を照射することによりパラジウム含有物質から質量数が奇数のパラジウム同位体を選択的にイオン化する、パラジウム同位体の偶奇分離イオン化方法であって、
    第1の波長を有する第1のレーザ光を用いて、基底準位にあるパラジウム同位体を、第1の励起準位に励起する第1の励起ステップと、
    第2の波長を有する第2のレーザ光を用いて、第1の励起準位のパラジウム同位体を、第2の励起準位に励起する第2の励起ステップとを含み、
    第1および第2の励起ステップにより、質量数が奇数のパラジウム同位体が第2の励起準位へ選択的に励起され第2の励起準位が自動イオン化準位となり、第2の励起準位に励起された質量数が奇数のパラジウム同位体が、 3/2 のイオンコア状態を有し、当該イオンコア状態が第1の励起準位と第2の励起準位との間で 3/2 に保たれるように第1および第2の波長が選択される、パラジウム同位体の偶奇分離イオン化方法。
  2. 前記パラジウム含有物質は、放射性パラジウム同位体107Pdを含む使用済核燃料である、請求項に記載のパラジウム同位体の偶奇分離イオン化方法。
  3. 第1の波長λは244.9nmであり、第2の波長λは、334.0nm<λ<378.8nmを満たし且つ第2の励起準位が自動イオン化準位となる特定の値であり、または、
    第1の波長λは247.7nmであり、第2の波長λは、328.8nm<λ<372.1nmを満たし且つ第2の励起準位が自動イオン化準位となる特定の値である、請求項1又は2に記載のパラジウム同位体の偶奇分離イオン化方法。
  4. 第1および第2のレーザ光は、
    直線偏光の状態で、かつ、偏光方向が互いに平行な状態で、パラジウム含有物質における同じ位置に照射され、または、
    直線偏光の状態で且つ偏光方向が互いに直交する状態で、または、円偏光もしくは楕円偏光の状態で、パラジウム含有物質における同じ位置に照射される、請求項に記載のパラジウム同位体の偶奇分離イオン化方法。
  5. 第1のレーザ射出部からの第1のレーザ光が、ダイクロイックミラーを透過し、第2のレーザ射出部からの第2のレーザ光が前記ダイクロイックミラーにより反射されることにより、第1および第2のレーザ光が同じ経路を伝播するように重なり、
    通過する光を1つの方向に偏光した直線偏光にする偏光素子が前記同じ経路に設けられ、第1および第2のレーザ光は、前記偏光素子を通過し、偏光方向が互いに平行な直線偏光の状態で、前記パラジウム含有物質に入射する、請求項1〜のいずれか一項に記載のパラジウム同位体の偶奇分離イオン化方法。
  6. 複数種類のパラジウム同位体を含むパラジウム含有物質に複数の波長のレーザ光を照射することによりパラジウム含有物質から質量数が奇数のパラジウム同位体を選択的にイオン化する、パラジウム同位体の偶奇分離イオン化装置であって、
    第1の波長を有する第1のレーザ光をパラジウム含有物質に照射することにより、基底準位にあるパラジウム同位体を第1の励起準位に励起する第1のレーザ照射装置と、
    第2の波長を有する第2のレーザ光をパラジウム含有物質に照射することにより、第1の励起準位のパラジウム同位体を、第2の励起準位に励起する第2のレーザ照射装置と、を備え、
    第1および第2のレーザ光により、質量数が奇数のパラジウム同位体が第2の励起準位へ選択的に励起され第2の励起準位が自動イオン化準位となり、第2の励起準位に励起された質量数が奇数のパラジウム同位体が、 3/2 のイオンコア状態を有し、当該イオンコア状態が第1の励起準位と第2の励起準位との間で 3/2 に保たれるように第1および第2の波長が設定されている、パラジウム同位体の偶奇分離イオン化装置。
  7. 前記パラジウム含有物質は、放射性パラジウム同位体107Pdを含む使用済核燃料である、請求項に記載のパラジウム同位体の偶奇分離イオン化装置。
  8. 第1の波長λは244.9nmであり、第2の波長λは、334.0nm<λ<378.8nmを満たし且つ第2の励起準位が自動イオン化準位となる特定の値であり、または、
    第1の波長λは247.7nmであり、第2の波長λは、328.8nm<λ<372.1nmを満たし且つ第2の励起準位が自動イオン化準位となる特定の値である、請求項6又は7一項に記載のパラジウム同位体の偶奇分離イオン化装置。
  9. 前記第1および第2のレーザ照射装置は、第1および第2のレーザ光を、直線偏光の状態で、かつ、偏光方向が互いに平行な状態で、パラジウム含有物質における同じ位置に照射するように構成されており、または、
    前記第1および第2のレーザ照射装置は、第1および第2のレーザ光を、直線偏光の状態で且つ偏光方向が互いに直交する状態で、または、円偏光もしくは楕円偏光の状態で、パラジウム含有物質における同じ位置に照射するように構成されている、請求項に記載のパラジウム同位体の偶奇分離イオン化装置。
  10. 前記第1のレーザ照射装置は、第1のレーザ光を射出する第1のレーザ射出部と、通過する光を1つの方向に偏光した直線偏光にする偏光素子と、を備え、
    前記第2のレーザ照射装置は、第2のレーザ光を射出する第2のレーザ射出部と、前記第2のレーザ射出部からの第2のレーザ光を反射し、前記第1のレーザ射出部からの第1のレーザ光を透過させることにより、第1および第2のレーザ光が同じ経路を伝播するように第1および第2のレーザ光を重ねるダイクロイックミラーと、を備え、
    前記偏光素子は、前記同じ経路上に設けられており、第1および第2のレーザ光は、前記偏光素子を通過し、偏光方向が互いに平行な直線偏光の状態で、パラジウム含有物質に入射する、請求項6〜8のいずれか一項に記載のパラジウム同位体の偶奇分離イオン化装置。
  11. 前記第1のレーザ照射装置は、第1のレーザ光を射出する第1のレーザ射出部と、前記第1のレーザ射出部からの第1のレーザ光を直線偏光にする第1の偏光素子と、を備え、
    前記第2のレーザ照射装置は、第2のレーザ光を射出する第2のレーザ射出部と、前記第2のレーザ射出部からの第2のレーザ光を直線偏光にする第2の偏光素子と、前記第2の偏光素子を通過した直線偏光の第2のレーザ光の偏光方向を第1のレーザ光の偏光方向と直交する方向に変える偏光方向調整素子と、を備え、
    前記第1の偏光素子を通過した第1のレーザ光と、前記偏光方向調整素子を通過した第2のレーザ光が、直線偏光の状態で且つ偏光方向が互いに直交する状態でパラジウム含有物質に入射する、請求項6〜8のいずれか一項に記載のパラジウム同位体の偶奇分離イオン化装置。
JP2017556476A 2015-12-17 2016-12-16 パラジウム同位体の偶奇分離イオン化方法と装置 Active JP6868903B2 (ja)

Applications Claiming Priority (5)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2015246175 2015-12-17
JP2015246175 2015-12-17
JP2016215009 2016-11-02
JP2016215009 2016-11-02
PCT/JP2016/087630 WO2017104825A1 (ja) 2015-12-17 2016-12-16 パラジウム同位体の偶奇分離イオン化方法と装置

Publications (2)

Publication Number Publication Date
JPWO2017104825A1 JPWO2017104825A1 (ja) 2018-10-04
JP6868903B2 true JP6868903B2 (ja) 2021-05-12

Family

ID=59056687

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP2017556476A Active JP6868903B2 (ja) 2015-12-17 2016-12-16 パラジウム同位体の偶奇分離イオン化方法と装置

Country Status (6)

Country Link
US (1) US11266952B2 (ja)
EP (1) EP3391956B1 (ja)
JP (1) JP6868903B2 (ja)
KR (1) KR20180102580A (ja)
CN (1) CN108697981B (ja)
WO (1) WO2017104825A1 (ja)

Family Cites Families (15)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
US3772519A (en) * 1970-03-25 1973-11-13 Jersey Nuclear Avco Isotopes Method of and apparatus for the separation of isotopes
IL39023A (en) * 1972-03-19 1977-02-28 Yeshaya Nebenzahl Isotope separation
US4032419A (en) * 1975-06-11 1977-06-28 Research Corporation Method and apparatus for separating uranium isotopes
CA1107232A (en) * 1977-12-19 1981-08-18 Robert E. Schlier Use of autoionization transitions in isotopically selective photoexcitation
US4419582A (en) * 1977-12-19 1983-12-06 Jersey Nuclear-Avco Isotopes, Inc. Use of autoionization transition absorption peaks in isotopically selective photoexcitation
JPH0286814A (ja) * 1988-09-26 1990-03-27 Nippon Atom Ind Group Co Ltd 同位体分離方法およびその分離装置
JPH0716584B2 (ja) * 1989-08-04 1995-03-01 動力炉・核燃料開発事業団 レーザー同位体分離装置
US5015848A (en) * 1989-10-13 1991-05-14 Southwest Sciences, Incorporated Mass spectroscopic apparatus and method
GB2256079B (en) * 1991-05-24 1994-10-05 Synergetic Resources Ltd A simple high selectivity, high dissociation system for laser isotope separation
US5202005A (en) * 1991-08-14 1993-04-13 The United States Of America As Represented By The United States Department Of Energy Gadolinium photoionization process
WO1995026584A1 (en) * 1992-12-02 1995-10-05 United States Department Of Energy Efficient mass-selective three-photon ionization of zirconium atoms
RU2119816C1 (ru) * 1996-06-10 1998-10-10 Василий Иванович Держиев Способ разделения изотопов иттербия
ATE527045T1 (de) * 2003-03-04 2011-10-15 Taiyo Nippon Sanso Corp Verfahren zur sauerstoffisotopkonzentration
KR100927466B1 (ko) * 2005-09-08 2009-11-19 한국원자력연구원 이터븀 동위원소 분리방법
KR101072798B1 (ko) * 2008-10-24 2011-10-14 한국수력원자력 주식회사 칼슘 동위원소 분리 방법

Also Published As

Publication number Publication date
EP3391956B1 (en) 2023-07-26
US20180290105A1 (en) 2018-10-11
WO2017104825A1 (ja) 2017-06-22
EP3391956A4 (en) 2019-08-28
CN108697981A (zh) 2018-10-23
JPWO2017104825A1 (ja) 2018-10-04
EP3391956A1 (en) 2018-10-24
KR20180102580A (ko) 2018-09-17
CN108697981B (zh) 2021-05-18
US11266952B2 (en) 2022-03-08

Similar Documents

Publication Publication Date Title
Ishikawa Photoemission and Ionization of H e+ under Simultaneous Irradiation<? format?> of Fundamental Laser and High-Order Harmonic Pulses
Christov et al. High-harmonic generation of attosecond pulses in the “single-cycle” regime
US4386274A (en) Isotope separation by standing waves
Nakashima et al. Large molecules in high-intensity laser fields
Silva et al. Autoionizing decay of H 2 doubly excited states by using xuv-pump–infrared-probe schemes with trains of attosecond pulses
EP2735063A2 (en) High flux, narrow bandwidth compton light sources via extended laser-electron interactions
Hafliðason et al. Two-color studies of CH 3 Br excitation dynamics with MPI and slice imaging
Palaniyappan et al. Ionization of methane in strong and ultrastrong relativistic fields
JP6868903B2 (ja) パラジウム同位体の偶奇分離イオン化方法と装置
WO2002091808A1 (en) Producing energetic, tunable, coherent x-rays with long wavelength light
US5110562A (en) Laser isotope separation apparatus
Horný et al. Attosecond betatron radiation pulse train
Raeder et al. In-source spectroscopy on astatine and radium for resonant laser ionization
Strelkov et al. High-harmonic generation in a dense medium
Moshammer et al. Non-sequential double ionization of Ne in intense laser pulses: a coincidence experiment
Chaudhry et al. Analysis of excitation and ionization of atoms and molecules by electron impact
EP0444336B1 (en) Laserisotope separation apparatus
Niki et al. Laser isotope separation of zirconium for nuclear transmutation process
JP2011204882A (ja) 真空紫外光発生装置
Khodorkovskiĭ et al. Study of the lowest electronic states of Xe 2, XeKr, and XeAr molecules by the method of multiphoton resonance ionization
JP2017209634A (ja) 同位体の選択的励起方法と装置
Williams et al. Excited ions in intense femtosecond laser pulses: Laser-induced recombination
Otsuka et al. Rare‐Earth Plasma Beyond Extreme Ultraviolet (BEUV) Sources at 6. x nm
JPS6150651B2 (ja)
Sjödin et al. Status of GISELE: a resonant ionization laser ion source for the production of radioactive ions at GANIL

Legal Events

Date Code Title Description
A521 Request for written amendment filed

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523

Effective date: 20180626

A521 Request for written amendment filed

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523

Effective date: 20191209

A621 Written request for application examination

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A621

Effective date: 20191209

A131 Notification of reasons for refusal

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A131

Effective date: 20210108

A521 Request for written amendment filed

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523

Effective date: 20210309

TRDD Decision of grant or rejection written
A01 Written decision to grant a patent or to grant a registration (utility model)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A01

Effective date: 20210402

A61 First payment of annual fees (during grant procedure)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A61

Effective date: 20210406

R150 Certificate of patent or registration of utility model

Ref document number: 6868903

Country of ref document: JP

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R150

R250 Receipt of annual fees

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250