JP6864883B2 - 卵質評価方法、卵質評価装置及びプログラム - Google Patents
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Description
本発明者は、外形から容易に測定可能な卵黄直径及び卵黄高さという形状パラメータを用いて、卵黄膜の善し悪しの尺度、すなわち、卵黄膜の物性の一つである弾力性を求めることができることを発見した。
長半径aと短半径bは、直径Dと高さHを用いて以下のように表される。
a=1/2D (式1)
b=1/2H (式2)
V=4/3πa2b (式3)
ここで、卵黄について考えてみると、球体から扁平な回転楕円体への変形の過程で卵黄の体積Vは常に一定であるので、(式3)において、3/(4π)・V=a2b=v (ただし、v:一定値)とおく。
卵黄が球形である初期状態における長半径a0、短半径b0は、a0=b0の関係があり、卵黄の体積Vは、球体から扁平な回転楕円体への変形の過程で常に一定であるので、以下の式が成り立つ。
a0 3=b0 3=a0 2・b0=a2b=v (式4)
(式4)より、a0、b0は、以下のように表される。
a0=v1/3 (式5)
b0=v1/3 (式6)
a3y=a2b(=v) (式7)
(式7)より、aは以下のように表される。
a=v1/3y−1/3 (式8)
また楕円率の公式y=b/aより、bは以下のように表される。
b=v1/3y2/3 (式9)
回転楕円体の場合、表面積や赤道の長さや経線の長さは、長半径aと短半径bで決定される。さらに体積一定の条件のもとでは、長半径aと短半径bは、(式8)(式9)に示すように楕円率yで決まるので、表面積や赤道の長さや経線の長さは、体積一定の条件の
もとで、楕円率yのみで決まることになる。
半径aの円に相当する赤道の長さAは、(式8)を代入して、以下のように表される。
A=2πa=2πv1/3y−1/3 (式10)
L=π(a+b)(1+1/4・h2) (式13)
ここでhは、(式12)のhにy=b/aを代入して、以下のように表せる。
h=(1−y)/(1+y) (式14)
(式13)に(式14)とy=b/aを代入すれば、経線の長さLは、変数yのみで以下のように表される。
次に、卵黄Yが球体から扁平な回転楕円体への変形した後の卵黄膜の変形度合い(ひずみ)の求め方について説明する。
赤道方向のひずみεxは、以下の式で求められる。
εx=(A−A0)/A0 (式16)
ここでA0は、卵黄が球体の初期状態の赤道の長さであり、Aは変形時の赤道の長さである。この(式16)に(式5)、(式8)及び(式10)を代入すると、赤道方向のひずみεxは以下のように表される。
εx=y−1/3−1 (式17)
εy=(L−L0)/L0 (式18)
ここでL0は、卵黄が球体の初期状態の経線の長さであり、Lは変形時の経線の長さである。なお、L0=2πaであり、この(式18)に(式15)を代入すると、経線方向のひずみεyは以下のように表される。
εy=1/8・y−1/3{5y+1+4/(y+1)}−1 (式19)
赤道方向のひずみεxの変化率∂εx/∂yは、(式17)をyで微分して、以下の式で求められる。
∂εx/∂y=−1/3・y−4/3 (式20)
次に、卵黄膜の弾力性に関わる物性値の一つである卵黄膜のポアソン比νの求め方について説明する。
また、初期状態の球形のときの表面積をS0とする。
卵黄膜の厚さ方向のひずみεzは、卵黄膜の厚さT及び初期状態の球形のときの卵黄膜の厚さT0を用いて、以下のように表される。
εz=(T−T0)/T0 (式23)
ST=S0T0 (式24)
この(式24)と(式23)より、卵黄膜の厚さ方向のひずみεzは、表面積Sを用いて以下のように書き換えることができる。
εz=S0/S−1 (式25)
なお、(式25)におけるS0及びSは、(式22)に示すように、長半径a及び短半径bを用いて計算可能である。
用いて以下のように表される関係があることが知られている。
εz=−ν/E(σx+σy) (式26)
C=(1−S0/S)/(εx+εy) (式30)
ここで、S0/Sはyのみで表される関数であるとともに、εx及びεyについても、(式17)または(式19)により、yのみで表される関数である。
次に、後述する卵黄のポテンシャルエネルギーUを求めるにあたって必要となるひずみのエネルギーVEの求め方について説明する。
一般的に、弾性体のひずみのエネルギーVEは、単位体積あたりのひずみのエネルギーの密度εTDεを弾性体の全体で積分したものであり、非特許文献1のP.3中(2.8)によれば、以下のように表されることが知られている。
VE=1/2・STεTDε (式33)
VE=1/2・S0T0εTDε (式34)
次に、卵黄のポテンシャルエネルギーUの求め方について説明する。ここで、卵黄のポテンシャルエネルギーUは、前述したひずみのエネルギーVEと、位置エネルギーの和で表される。位置エネルギーは、卵黄の重量m、重力加速度g、卵黄の重心の高さbを用いて、mgbと表される。したがって、卵黄のポテンシャルエネルギーUは、以下の式で示される。
U=VE+mgb (式36)
この(式36)に、(式35)及び(式9)を代入すると、以下のように表される。
最後に、卵黄膜の弾力性に関わる物性値の一つである、卵黄膜のヤング率と卵黄膜の厚さの積(=ET0)の求め方について説明する。
前述したポテンシャルエネルギーUが最小値をとるときに、卵黄膜が平衡状態(卵黄膜の伸びを戻そうとする復元力と卵黄高さを押し下げる力とがつり合った状態)となる。したがって、平衡状態の際の卵黄係数yは、以下に示す∂U/∂y=0を計算すれば求められる。
m=ρV (式40)
卵黄の初期状態の表面積S0は、次式で表される。
S0=4πa0 2 (式41)
mg/S0=1/3v1/3ρg (式42)
w2/3G(y^)=v2/3G(y)(=ET0) (式45)
ここで、Gの逆関数をFとすると、換算卵黄係数y^は以下のように表される。
y^=F({v2/3/w2/3}G(y)) (式46)
以下、本発明の一実施形態について、図5及び図6を用いて説明する。
なお、ステップS6は、例えば図4に示すようなグラフデータを用いてもよい。この場合、内部メモリには予め、卵黄重量m(または、卵黄の体積V)をパラメータとした、卵黄係数yと卵黄膜のばね定数E・T0との関係を規定したグラフデータ(例えば、図4に示すようなもの)が格納されている。物性値算出部4は、卵黄Yの体積V(または、卵黄Yの体積Vに比重ρ=1.02を掛けた卵黄重量m)と、卵黄係数yをキーとして当該グラフデータを検索し、卵黄膜のばね定数E・T0を知得する。
なお、この変形例では、卵黄のポアソン比νの値を一定(ν=0.3)と仮定しており、この場合、前述したポアソン比νを算出するためのステップS5を省略することができる。
別の変形例としては、卵黄膜の弾力性に関わる物性値として、卵黄膜のばね定数E・T0を算出することなく、ポアソン比νのみを算出するようにしてもよい。この場合には、ステップS2で、物性値算出部4が卵黄Yの長半径aと短半径bを算出した後、ステップS3の卵黄Yの体積Vを算出する処理を行なうことなく、ステップS4の卵黄係数yを算出する処理を行なえばよい。
以上説明したように、本実施形態にかかる卵質評価方法は、割卵された状態で測定された卵黄Yの直径Dと卵黄Yの高さHに基づいて、卵黄膜の弾力性に関わる物性値を算出するものであるので、卵黄膜を破断させることなく、卵黄の形状データから卵黄膜の弾力性を評価することができる。なお、卵黄膜の弾力性を評価することは、細菌の増殖に対する防御性/抑制能力を評価することにつながる。すなわち、卵黄膜が脆弱化して、弾力性が小さくなったものは、栄養豊富な卵黄に含まれる鉄分などの栄養素が移動し、卵白内に細菌が存在する場合に、卵内で急激な増殖を起こすためである。
2…卵黄径測定部
3…卵黄高さ測定部
4…物性値算出部
D…卵黄の直径
H…卵黄の高さ
Claims (3)
- 割卵された状態で測定された卵黄の直径と卵黄の高さに基づいて、卵黄膜の弾力性に関わる物性値を算出する卵質評価方法であって、
前記物性値は、
卵黄膜のヤング率と卵黄膜の厚さの積で表される物性値、
卵黄膜のポアソン比で表される物性値、
卵黄膜のばね定数で表される物性値及び
卵黄の体積もしくは重量が基準の大きさであった場合の卵黄係数に換算した換算卵黄係数で表される物性値のいずれかである、卵質評価方法。 - 卵黄の直径を計測する卵黄径測定部と、
卵黄の高さを計測する卵黄高さ測定部と、
卵黄径測定部で計測された卵黄の直径及び卵黄高さ測定部で計測された卵黄の高さに基づいて、
卵黄膜の弾力性に関わる物性値を算出する物性値算出部とを備えた卵質評価装置であって、
前記物性値は、
卵黄膜のヤング率と卵黄膜の厚さの積で表される物性値、
卵黄膜のポアソン比で表される物性値、
卵黄膜のばね定数で表される物性値及び
卵黄の体積もしくは重量が基準の大きさであった場合の卵黄係数に換算した換算卵黄係数で表される物性値のいずれかである、卵質評価装置。 - コンピュータに、割卵された状態で測定された卵黄の直径と卵黄の高さに基づいて、卵黄膜の弾力性に関わる物性値を算出する機能を実現させるためのプログラムであって、
前記物性値は、
卵黄膜のヤング率と卵黄膜の厚さの積で表される物性値、
卵黄膜のポアソン比で表される物性値、
卵黄膜のばね定数で表される物性値及び
卵黄の体積もしくは重量が基準の大きさであった場合の卵黄係数に換算した換算卵黄係数で表される物性値のいずれかである、プログラム。
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