以下、図面を参照して、実施例に基づき本開示を説明するが、本開示は実施例に限定されるものではなく、実施例における種々の数値や材料は例示である。尚、説明は、以下の順序で行う。
1.本開示の表示装置及び本開示の表示装置の初期設定方法、全般に関する説明
2.実施例1(本開示の表示装置及び本開示の表示装置の初期設定方法)
2.実施例1(本開示の表示装置、第1−A構造の光学装置、第1構成の画像形成装置)
3.実施例2(実施例1の表示装置の変形、第1−A構造の光学装置、第2構成の画像形成装置)
4.実施例3(実施例1の表示装置の別の変形、第1−B構造の光学装置、第1構成の画像形成装置)
5.実施例4(実施例1の表示装置の更に別の変形、第1−B構造の光学装置、第2構成の画像形成装置)
6.実施例5(実施例1〜実施例4の変形)
7.実施例6(実施例1〜実施例4の別の変形、第2構造の光学装置、第2構成の画像形成装置)
8.実施例7(実施例1〜実施例6の変形)
9.実施例8(実施例1〜実施例6の別の変形)
10.実施例9(実施例1〜実施例8の変形)
11.実施例10(実施例1〜実施例9の変形)
12.実施例11(実施例10の変形)
13.実施例12(本開示の表示装置の初期設定方法)
14.その他
〈本開示の表示装置及び本開示の表示装置の初期設定方法、全般に関する説明〉
本開示の表示装置において、「調光装置への虚像の投影像」とは、具体的には、観察者が虚像を眺めたときの(即ち、観察者の瞳を基準とした)調光装置への虚像の投影像(即ち、虚像の背景)を意味する。本開示の表示装置の初期設定方法において、テストパターンは、本質的に任意の形状とすることができるが、具体的には、例えば、光学装置の虚像形成領域の中央部及び四隅に表示される文字や記号を例示することができる。また、テストパターンの虚像と調光装置の遮光率が高い領域とを相対的に移動させるが、具体的には、光学装置におけるテストパターンの虚像の位置を画素単位で移動させるように、テストパターンの画像信号を処理してもよいし、調光装置の遮光率が変化する最小単位領域(後述する)を移動単位として調光装置の遮光率が高い領域を移動させる処理としてもよいし、これらの処理を組み合わせてもよい。テストパターンの虚像と調光装置の遮光率が高い領域とを相対的に移動させるためには、観察者が手動にて操作を行えばよい。具体的には、観察者がスイッチやボタン、ダイアル、スライダ、ノブ等を操作することで手動にて行うことができる。相対的な移動には、後述するX軸方向への移動、Y軸方向への移動、回転移動、拡大、縮小、変形が含まれる。調光装置において、虚像投影領域の位置は固定されたものでなく、虚像の位置に依存して変化するし、また、虚像投影領域の数も、虚像の数に依存して変化する。
本開示の表示装置の初期設定方法にあっては、テストパターンの虚像と調光装置の遮光率が高い領域とを相対的に移動させたときの移動量を基準として、光学装置における虚像の形成位置と調光装置の虚像投影領域の位置との位置関係を補正する形態とすることができる。具体的には、光学装置におけるテストパターンの虚像の位置を画素単位で移動させるようにテストパターンの画像信号を処理したときの画像信号処理量に基づき、あるいは、最小単位領域を移動単位として調光装置の遮光率が高い領域を移動させる処理に基づき、あるいは、これらの処理の組合せに基づき、光学装置における虚像の形成位置と調光装置の虚像投影領域の位置との位置関係を補正すればよい。即ち、光学装置における虚像の形成位置を固定し、調光装置の虚像投影領域の位置を移動させてもよいし、調光装置の虚像投影領域の位置を固定し、光学装置における虚像の形成位置を移動させてもよいし、これらを組み合わせてもよい。
上記の好ましい形態を含む本開示の表示装置の初期設定方法にあっては、併せて、調光装置の動作時の調光装置の他の領域の遮光率を決定する形態とすることができる。尚、この遮光率は、観察者が決定した一種の初期値である。
更には、以上に説明した各種好ましい形態を含む本開示の表示装置の初期設定方法にあっては、併せて、調光装置の動作時の調光装置の虚像投影領域の遮光率を決定する形態とすることができる。尚、この遮光率は、観察者が決定した一種の初期値である。そして、この遮光率の値を、一定のままとしてもよいし、後述するように表示装置の置かれた環境の照度に依存して変化させてもよい。
更には、以上に説明した各種好ましい形態を含む本開示の表示装置の初期設定方法にあっては、光学装置に形成される虚像に外接する仮想矩形を想定したとき、仮想矩形の横方向及び縦方向の長さをL1-T及びL1-Lとし、調光装置の虚像投影領域の形状を、横方向及び縦方向の長さがL2-T及びL2-Lの矩形形状としたとき、併せて、L2-T/L1-Tの値及びL2-L/L1-Lを決定する形態とすることができる。この決定は、観察者によって行われる。
以上に説明した各種好ましい形態を含む本開示の表示装置の初期設定方法における表示装置、あるいは、本開示の表示装置(以下、これらを総称して、『本開示の表示装置等』と呼ぶ場合がある)において、調光装置の動作時、調光装置の他の領域の遮光率は、調光装置への虚像の投影像が含まれる調光装置の虚像投影領域の遮光率を「1」としたとき、例えば、0.95以下であることが好ましい。あるいは又、調光装置の他の領域の遮光率は、例えば、30%以下であることが好ましい。
上記の好ましい形態を含む本開示の表示装置等において、調光装置の動作時、調光装置の虚像投影領域の遮光率は、例えば、35%乃至99%であることが好ましい。虚像投影領域の遮光率は、一定であってもよいし、表示装置の置かれた環境の照度に依存して変化させてもよい。後者の場合、観察者の操作によって虚像投影領域の遮光率を変化させてもよいし、後述するように、表示装置は、表示装置の置かれた環境の照度を測定する照度センサ(環境照度測定センサ)を更に備えており、照度センサ(環境照度測定センサ)の測定結果に基づき、調光装置の遮光率を制御する形態とすることもできる。
更には、以上に説明した各種好ましい形態を含む本開示の表示装置等にあっては、画像形成装置から出射された光に基づき光学装置に虚像が形成される前に、調光装置の虚像投影領域の遮光率が増加される形態とすることができる。調光装置の虚像投影領域の遮光率が増加されてから虚像が形成されるまでの時間として、0.5秒乃至30秒を例示することができるが、この値に限定するものではない。このように、予め、虚像が光学装置のどの位置に、いつ、形成されるかを観察者は知ることができるので、観察者の虚像視認性の向上を図ることができる。調光装置の虚像投影領域の遮光率は、時間の経過に従い、順次、増加する形態とすることができる。即ち、所謂フェードイン状態とすることができる。
更には、以上に説明した各種好ましい形態を含む本開示の表示装置等にあっては、画像形成装置から出射された光に基づき光学装置に一の虚像が形成され、次いで、一の虚像と異なる次の虚像が形成されるときであって、一の虚像に対応する調光装置の虚像投影領域の面積をS1、次の虚像に対応する調光装置の虚像投影領域の面積をS2としたとき、
S2/S1<0.8、又は、1<S2/S1の場合、次の虚像が形成される調光装置の虚像投影領域は、調光装置への次の虚像の投影像が含まれる調光装置の領域であり、
0.8≦S2/S1≦1の場合、次の虚像が形成される調光装置の虚像投影領域は、調光装置への一の虚像の投影像が含まれた調光装置の領域である形態とすることができる。即ち、一の虚像の形成から次の虚像の形成において、虚像投影領域の面積が0%減乃至20%減の場合には、一の虚像に対応した虚像投影領域を保持する形態とすることができる。
更には、以上に説明した各種好ましい形態を含む本開示の表示装置等にあっては、光学装置に形成される虚像に外接する仮想矩形を想定したとき、調光装置の虚像投影領域は、仮想矩形よりも大きい構成とすることができる。そして、この場合、光学装置に形成される虚像に外接する仮想矩形の横方向及び縦方向の長さをL1-T及びL1-Lとし、調光装置の虚像投影領域の形状を、横方向及び縦方向の長さがL2-T及びL2-Lの矩形形状としたとき、
1.0≦L2-T/L1-T≦1.5
1.0≦L2-L/L1-L≦1.5
を満足することが好ましい。
虚像が形成されていない場合、調光装置全体の遮光率を、調光装置の他の領域の遮光率と同じ値とすればよい。虚像の形成が終了し、虚像が消滅したとき、調光装置への虚像の投影像が含まれていた調光装置の虚像投影領域の遮光率を、直ちに、調光装置の他の領域の遮光率と同じ値としてもよいが、経時的に(例えば、3秒間で)調光装置の他の領域の遮光率と同じ値となるように制御してもよい。即ち、所謂フェードアウト状態とすることができる。
尚、横方向、縦方向とは、水平方向、垂直方向を意味し、あるいは又、後述するX軸方向、Y軸方向を意味する。通常、光学装置に文字列から成る虚像を形成する場合、文字列の高さ(垂直方向あるいはY軸方向の長さ)よりも高い領域を虚像が形成される領域とする。具体的には、複数行の文字列から成る虚像を光学装置に形成する場合、適切な行間を設定する。この行間に相当する画素数(あるいは、例えば、行間の1/2,1/3等に相当する画素数)と文字列の高さに相当する画素数を加えた値を、仮想矩形の縦方向の長さL1-Lとすればよい。また、文字列から成る虚像を光学装置に形成する場合、文字と文字との間には隙間が存在する。この隙間に相当する画素数の整数倍の画素数を、文字列に相当する画素数の右側及び左側(あるいは前後)に加えた値を、仮想矩形の横方向の長さL1-Tとすればよい。
更には、以上に説明した各種好ましい形態を含む本開示の表示装置等において、調光装置は、
第1基板、
第1基板と対向する第2基板、
第2基板と対向する第1基板の対向面に設けられた第1透明電極、
第1基板と対向する第2基板の対向面に設けられた第2透明電極、及び、
第1透明電極と第2透明電極とによって挟まれた調光層、
から成る形態とすることができる。そして、この場合、
第1透明電極は、第1の方向に延びる複数の帯状の第1透明電極セグメントから構成されており、
第2透明電極は、第1の方向とは異なる第2の方向に延びる複数の帯状の第2透明電極セグメントから構成されており、
第1透明電極セグメントと第2透明電極セグメントの重複領域(調光装置の遮光率が変化する最小単位領域)に対応する調光装置の部分の遮光率の制御は、第1透明電極セグメント及び第2透明電極セグメントに印加する電圧の制御に基づき行われる形態とすることができる。即ち、遮光率の制御を単純マトリクス方式に基づき行うことができる。第1の方向と第2の方向とは直交している形態を例示することができる。
あるいは又、調光装置の遮光率が変化する最小単位領域の遮光率の制御のために、最小単位領域のそれぞれに薄膜トランジスタ(TFT)を設けてもよい。即ち、遮光率の制御をアクティブマトリクス方式に基づき行ってもよい。
光学装置における虚像形成領域の横方向の画素数をM0、縦方向の画素数をN0としたとき、調光装置の遮光率が変化する最小単位領域の数M1×N1は、M0=M1,N0=N1であってもよいし、M1/M0=k,N1/N0=k’としたとき(但し、k,k’は正の整数)、1.1≦k、好ましくは1.1≦k≦1.5、より好ましくは1.15≦k≦1.3、1.1≦k’、好ましくは1.1≦k’≦1.5、より好ましくは1.15≦k’≦1.3を満足することが望ましい。kの値とk’の値とは、同じであってもよいし、異なっていてもよい。
以上に説明した各種好ましい形態、構成を含む本開示の表示装置等において、フレームは、観察者の正面に配置されるフロント部、フロント部の両端に蝶番を介して回動自在に取り付けられた2つのテンプル部、及び、ノーズパッドを備えており;調光装置はフロント部に配設されている形態とすることができる。また、光学装置は調光装置に取り付けられている形態とすることができる。尚、光学装置は、密着した状態で調光装置に取り付けられていてもよいし、隙間を開けた状態で調光装置に取り付けられていてもよい。更には、これらの場合、フロント部はリムを有し;調光装置はリムに嵌め込まれている形態とすることができる。あるいは又、第1基板及び第2基板の少なくとも一方を、例えば、フレームに取り付けてもよい。但し、これらに限定するものではない。また、以上に説明した種々の好ましい形態、構成を含む本開示の表示装置等において、観察者側から、光学装置、調光装置の順に配してもよいし、調光装置、光学装置の順に配してもよい。
本開示の表示装置等にあっては、画像形成装置において画像を表示するための信号に基づき、調光装置の虚像投影領域の大きさ及び位置を決定する。調光装置の大きさは、光学装置と同じ大きさでもよいし、大きくてもよいし、小さくともよい。調光装置の射影像内に虚像形成領域が位置していればよい。調光装置を構成する一方の基板が光学装置の構成部材を兼ねる構成とすれば、表示装置全体の重量の減少を図ることができ、表示装置の使用者に不快感を感じさせる虞が無い。尚、他方の基板は一方の基板よりも薄い構成とすることが好ましい。
更には、以上に説明した各種好ましい形態、構成を含む本開示の表示装置等において、光学装置は、
(b−1)画像形成装置から入射された光が内部を全反射により伝播した後、観察者に向けて出射される導光板、
(b−2)導光板に入射された光が導光板の内部で全反射されるように、導光板に入射された光を偏向させる第1偏向手段、及び、
(b−3)導光板の内部を全反射により伝播した光を導光板から出射させるために、導光板の内部を全反射により伝播した光を複数回に亙り偏向させる第2偏向手段、
を備えており、
第2偏向手段によって光学装置の虚像形成領域が構成される形態とすることができる。ここで、このような光学装置を、便宜上、『第1構造の光学装置』と呼ぶ。尚、「全反射」という用語は、内部全反射、あるいは、導光板内部における全反射を意味する。調光装置の射影像内に第2偏向手段(虚像形成領域)が位置する。調光装置を構成する基板の一方によって、第2偏向手段、あるいは、第1偏向手段及び第2偏向手段は被覆されている形態とすることができる。
本開示の表示装置等において、表示装置の置かれた環境の照度を測定する照度センサ(環境照度測定センサ)を更に備えており;照度センサ(環境照度測定センサ)の測定結果に基づき、調光装置の遮光率を制御する形態とすることができる。あるいは又、表示装置の置かれた環境の照度を測定する照度センサ(環境照度測定センサ)を更に備えており;照度センサ(環境照度測定センサ)の測定結果に基づき、画像形成装置によって形成される画像の輝度を制御する形態とすることができる。これらの形態を組み合わせてもよい。
あるいは又、外部環境から調光装置を透過した光に基づく照度を測定する第2の照度センサ(便宜上、『透過光照度測定センサ』と呼ぶ場合がある)を更に備えており;第2の照度センサ(透過光照度測定センサ)の測定結果に基づき、調光装置の遮光率を制御する形態とすることができる。あるいは又、外部環境から調光装置を透過した光に基づく照度を測定する第2の照度センサ(透過光照度測定センサ)を更に備えており;第2の照度センサ(透過光照度測定センサ)の測定結果に基づき、画像形成装置によって形成される画像の輝度を制御する形態とすることができる。尚、第2の照度センサ(透過光照度測定センサ)は、光学装置よりも観察者側に配置されている形態とすることが望ましい。第2の照度センサ(透過光照度測定センサ)を、少なくとも2つ、配置し、高遮光率の部分を通過した光に基づく照度の測定、低遮光率の部分を通過した光に基づく照度の測定を行ってもよい。これらの形態を組み合わせてもよい。更には、これらの形態と、上記の照度センサ(環境照度測定センサ)の測定結果に基づき制御を行う形態とを組み合わせてもよい。
照度センサ(環境照度測定センサ、透過光照度測定センサ)は、周知の照度センサから構成すればよいし、照度センサの制御は周知の制御回路に基づき行えばよい。
調光装置の最高光透過率は50%以上であり、調光装置の最低光透過率は30%以下である構成とすることができる。尚、調光装置の最高光透過率の上限値として99%を挙げることができるし、調光装置の最低光透過率の下限値として1%を挙げることができる。ここで、
(光透過率)=1−(遮光率)
の関係にある。
場合によっては、調光装置を通過する光は、調光装置によって所望の色に着色される構成とすることができる。そして、この場合、調光装置によって着色される色は可変である形態とすることができるし、あるいは又、調光装置によって着色される色は固定である形態とすることができる。尚、前者の場合、例えば、赤色に着色される調光装置と、緑色に着色される調光装置と、青色に着色される調光装置とを積層する形態とすればよい。また、後者の場合、調光装置によって着色される色として、限定するものではないが、茶色を例示することができる。
更には、場合によっては、調光装置が着脱自在に配設されている形態とすることができる。調光装置を着脱自在に配設するためには、例えば、透明なプラスチックから作製されたビスを用いて調光装置を例えばフレームに取り付け、あるいは又、フレームに溝を切っておき、この溝に調光装置を係合させ、あるいは又、フレームに磁石を取り付けることで調光装置をフレームに取り付けることができるし、フレームにスライド部を設け、このスライド部に調光装置を嵌め込んでもよい。また、調光装置にコネクタを取り付け、調光装置の遮光率(光透過率)を制御するための制御回路(例えば、画像形成装置を制御するための制御装置に含まれている)にこのコネクタ及び配線を介して調光装置を電気的に接続すればよい。調光装置を湾曲させてもよい。
調光装置は、無機又は有機のエレクトロクロミック材料の酸化還元反応によって発生する物質の色変化を応用した光シャッタから成る形態とすることができる。具体的には、調光層は無機又は有機のエレクトロクロミック材料を含む形態とすることができ、更には、調光層は、第2透明電極側から、WO3層/Ta2O5層/IrXSn1-XO層といった無機エレクトロクロミック材料層の積層構造、あるいは又、WO3層/Ta2O5層/IrOx層といった無機エレクトロクロミック材料層の積層構造を有する形態とすることができる。WO3層の代わりに、MoO3層やV2O5層を用いることができる。また、IrOx層の代わりに、ZrO2層、リン酸ジルコニウム層を用いることができるし、あるいは又、プルシアンブルー錯体/ニッケル置換プルシアンブルー錯体等を用いることもできる。有機のエレクトロクロミック材料として、例えば、特開2014−111710号公報や特開2014−159385号公報に開示されたエレクトロクロミック材料を用いることもできる。あるいは又、第1透明電極及び第2透明電極を設け、第1のエレクトロクロミック材料層と第2のエレクトロクロミック材料層とが、第1透明電極と第2透明電極との間に挟まれた構造とする。第1のエレクトロクロミック材料層は、例えば、プルシアンブルー錯体から構成され、第2のエレクトロクロミック材料層は、例えば、ニッケル置換プルシアンブルー錯体から構成されている。
あるいは又、調光装置は、帯電した多数の電気泳動粒子及び電気泳動粒子とは異なる色の分散媒から構成された電気泳動分散液によって構成される光シャッタ、金属(例えば、銀粒子)の可逆的な酸化還元反応によって発生する電着・解離現象を応用した電着方式(エレクトロデポジション・電界析出)による光シャッタ、即ち、調光層は金属イオンを含む電解質を含む形態とすることもできる。あるいは又、エレクトロウェッティング現象によって遮光率(光透過率)を制御する光シャッタを用いることもできる。更には、調光装置を、調光層が液晶材料層から成る光シャッタから構成することができ、具体的には、調光層を構成する材料として、限定するものではないが、TN(ツイステッド・ネマチック)型液晶材料、STN(スーパー・ツイステッド・ネマチック)型液晶材料を例示することができる。
ここで、電気泳動分散液は、帯電した多数の電気泳動粒子、及び、電気泳動粒子とは異なる色の分散媒から構成される。例えば、第1透明電極にパターニングを施し、第2透明電極にはパターニングを施さない場合(所謂ベタ電極構成)であって、電気泳動粒子を負に帯電させた場合、第1透明電極に相対的に負の電圧を印加し、第2透明電極に相対的に正の電圧を印加すると、負に帯電している電気泳動粒子は第2透明電極を覆うように泳動する。従って、調光装置における遮光率は高い値となる。一方、これとは逆に、第1透明電極に相対的に正の電圧を印加し、第2透明電極に相対的に負の電圧を印加すると、電気泳動粒子は第1透明電極を覆うように泳動する。従って、調光装置における遮光率は低い値となる。このような透明電極への印加を適切に行うことで、調光装置における遮光率の制御を行うことができる。電圧は直流であってもよいし、交流であってもよい。パターニングされた第1透明電極の形状は、電気泳動粒子が第1透明電極を覆うように泳動し、調光装置における遮光率が低い値となったとき、調光装置における遮光率の値の最適化を図れるような形状とすればよく、種々の試験を行い決定すればよい。必要に応じて、透明電極の上に絶縁層を形成してもよい。係る絶縁層を構成する材料として、例えば、無色透明な絶縁性樹脂を挙げることができ、具体的には、例えば、アクリル樹脂、エポキシ樹脂、フッ素樹脂、シリコーン樹脂、ポリイミド樹脂、ポリスチレン樹脂等を挙げることができる。
電気泳動分散液における分散液(分散媒)に対する電気泳動粒子の割合として、分散液(分散媒)100質量部に対して、電気泳動粒子、0.1質量部乃至15質量部、好ましくは、1質量部乃至10質量部を例示することができる。電気泳動粒子を分散させる分散液(分散媒)として、高絶縁性を有し、無色透明な液体、具体的には非極性分散媒、より具体的には、脂肪族炭化水素、芳香族炭化水素、ハロゲン化炭化水素、シリコーンオイル等を挙げることができる。ここで、脂肪族炭化水素として、ペンタン、ヘキサン、シクロヘキサン、ヘプタン、オクタン、ノナン、デカン、ドデカン、リグロイン、ソルベントナフサ、ケロシン、ノルマルパラフィン、イソパラフィン等を挙げることができる。また、芳香族炭化水素として、ベンゼン、トルエン、キシレン、アルキルベンゼン等を挙げることができる。シリコーンオイルとして、変成シリコーンオイルを含む各種ジメチルポリシロキサンを挙げることができる。より具体的には、エクソンモービル有限会社社製のアイソパーG、H、L、M、エクソールD30、D40、D80、D110、D130、出光石油化学株式会社製のIPソルベント1620、2028、2835、シェルケミカルズジャパン株式会社製のシェルゾール70、71、72、A、AB、日本石油株式会社製のナフテゾルL、M、H等を挙げることができる。尚、これらを単独、又は、2種以上を混合して用いることができる。
電気泳動分散液をマイクロカプセルに閉じ込める構造を採用してもよい。マイクロカプセルは、界面重合法、その場重合法(in−situ重合法)、コアセルベーション法等の周知の方法で得ることができる。マイクロカプセルを構成する材料には光を十分に透過させる特性が要求され、具体的には、尿素−ホルムアルデヒド樹脂、メラミン−ホルムアルデヒド樹脂、ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリアミド樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリビニルアルコール樹脂、ゼラチン、あるいは、これらの共重合体等を例示することができる。マイクロカプセルを基板上に配置する方法は、特に制限されず、例えば、インクジェット方式を挙げることができる。尚、基板上に配置されたマイクロカプセルの位置ずれを防止する目的で、マイクロカプセルを光透過性の樹脂バインダーを用いて基板上に固定してもよい。光透過性の樹脂バインダーとして、水溶性のポリマー、具体的には、例えば、ポリビニルアルコール、ポリウレタン、ポリエステル、アクリル樹脂、シリコーン樹脂等を挙げることができる。
電気泳動粒子には帯電制御剤を用いる必要は特に無いが、電気泳動粒子を正に帯電させるために正帯電制御剤を用いる場合、正帯電制御剤として、例えば、ニグロシンベースEX(オリエント化学工業社製)等のニグロシン系染料、P−51(オリエント化学工業株式会社製)、コピーチャージPX VP435(ヘキストジャパン株式会社製)等の第4級アンモニウム塩、アルコキシ化アミン、アルキルアミド、モリブデン酸キレート顔料、PLZ1001(四国化成工業株式会社製)等のイミダゾール化合物、透明又は白色のオニウム化合物等を挙げることができる。尚、オニウム化合物としては、第1級から第4級まで、自由に選択可能であり、アンモニウム化合物、スルホニウム化合物、ホスホニウム化合物より選ばれ、例えば、窒素、硫黄あるいはリン原子に結合している置換基は、アルキル基又はアリール基であり、塩としては、塩素に代表されるハロゲン系元素やヒドロキシ基、カルボン酸基等がカウンターイオンとして好適であるが、これらに限定されるものでない。中でも第1級から第3級アミン塩や第4級アンモニウム塩が特に好ましい。電気泳動粒子を負に帯電させるために負帯電制御剤を用いる場合、負帯電制御剤として、例えば、ボントロンS−22、ボントロンS−34、ボントロンE−81、ボントロンE−84(以上、オリエント化学工業株式会社製)、スピロンブラックTRH(保土谷化学工業株式会社製)等の金属錯体、チオインジゴ系顔料、コピーチャージNXVP434(ヘキストジャパン株式会社製)等の第4級アンモニウム塩、ボントロンE−89(オリエント化学工業株式会社製)等のカリックスアレーン化合物、LR147(日本カーリット株式会社製)等のホウ素化合物、フッ化マグネシウム、フッ化カーボン等のフッ素化合物、ステアリン酸アルミニウム、ステアリン酸カルシウム、ラウリン酸アルミニウム、ラウリン酸バリウム、オレイン酸ソーダ、オクチル酸ジルコニウム、ナフテン酸コバルト等の公知の金属石鹸や、アジン化合物のサリチル酸系金属錯体及びフェノール系縮合物を挙げることができる。帯電制御剤の添加量として、電気泳動粒子100質量部に対して、100質量部乃至300質量部を挙げることができる。
電気泳動分散液を構成する分散液(分散媒)として、ソルビタン脂肪酸エステル(例えば、ソルビタンモノオレエート、ソルビタンモノラウレート、ソルビタンセスキオレエート、ソルビタントリオレエート等);ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル(例えば、ポリオキシエチレンソルビタンモノステアレート、ポリオキシエチレンソルビタンモノオレエート等);ポリエチレングリコール脂肪酸エステル(例えば、ポリオキシエチレンモノステアレート、ポリエチレングリコールジイソステアレート等);ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル(例えば、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンオクチルフェニルエーテル等);脂肪族ジエタノールアミド系等のノニオン系界面活性剤を用いることができる。また、高分子系分散剤として、例えば、スチレン−マレイン酸樹脂、スチレン−アクリル樹脂、ロジン、ウレタン系高分子化合物BYK−160、162、164、182(ビックケミー社製)、ウレタン系分散剤EFKA−47、LP−4050(EFKA社製)、ポリエステル系高分子化合物ソルスパース24000(ゼネカ社製)、脂肪族ジエタノールアミド系高分子化合物ソルスパース17000(ゼネカ社製)等を挙げることができる。また、その他の高分子系分散剤として、分散媒に溶媒和する部分を形成することが可能なラウリルメタクリレート、ステアリルメタクリレート、2−エチルヘキシルメタクリレート、セチルメタクリレート等のモノマー、分散媒に溶媒和し難い部分を形成することが可能なメチルメタクリレート、エチルメタクリレート、イソプロピルメタクリレート、スチレン、ビニルトルエン等のモノマー及び極性の官能基を有するモノマーのランダム共重合体、特開平3−188469号公報に開示されているグラフト共重合体等を挙げることができる。極性の官能基を有するモノマーとして、アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、フマル酸、マレイン酸、スチレンスルホン酸等の酸性の官能基を有するモノマー;ジメチルアミノエチルメタクリレート、ジエチルアミノエチルメタクリレート、ビニルピリジン、ビニルピロリジン、ビニルピペリジン、ビニルラクタム等の塩基性の官能基を有するモノマー;これらの塩;スチレン−ブタジエン共重合体、特開昭60−10263号公報に開示されているスチレンと長鎖アルキルメタクリレートのブロック共重合体等を挙げることができる。また、特開平3−188469号公報に開示されているグラフト共重合体といった分散剤を添加してもよい。分散剤の添加量として、電気泳動粒子100質量部に対して、0.01質量部から5質量部を挙げることができる。電気泳動粒子の電気泳動を一層効果的に生じさせるために、イオン性界面活性剤を添加してもよい。アニオン界面活性剤の具体例として、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム、ドデシル硫酸ナトリウム、アルキルナフタレンスルホン酸ナトリウム、ジアルキルスルホコハク酸ナトリウム等を挙げることができる。また、カチオン界面活性剤の具体例として、アルキルベンゼンジメチルアンモニウムクロライド、アルキルトリメチルアンモニウムクロライド、ジステアリルアンモニウムクロライド等を挙げることができる。また、トリフルオロスルホニルイミド塩、トリフルオロ酢酸塩、トリフルオロ硫酸塩等のような、非極性分散媒に可溶なイオン性添加剤を添加してもよい。イオン性添加剤の添加量として、電気泳動粒子100質量部に対して、1質量部乃至10質量部を挙げることができる。
電気泳動粒子として、カーボンブラック(黒色)、各種金属酸化物類、フタロシアニン染料(シアン色)、ダイレクトブルー199(プロジェクトシアン色)、マゼンタ377(マゼンタ色)、リアクティブレッド29(マゼンタ色)、リアクティブレッド180(マゼンタ色)、アゾ染料(黄色であり、例えば、イエロー104、Ilford AG、Rue de l'Industrie、CH-1700 Fribourg、Switzerland)を例示することができる。
調光層を金属イオンを含む電解質層から構成する場合、金属イオンは銀イオンから成り、電解質は、LiX、NaX及びKX(但し、Xはフッ素原子、塩素原子、臭素原子又はヨウ素原子である)から成る群より選ばれた少なくとも1種類の塩(『支持電解質塩』と呼ぶ)を含むことが望ましい。
電解質中には、電気化学的な還元・酸化、及び、これに伴う析出・溶解によって発色する発色材料として金属イオンが含有されている。そして、金属イオンの電気化学的な析出・溶解反応により、発色及び消色がなされ、調光装置の遮光率が変化する。換言すると、このような表示装置における調光装置の動作は、所謂、電解メッキによる金属の析出と析出した金属の溶出反応とを可逆的に生じさせる動作であると云える。このように、電気化学的な析出・溶解によって発色と消色とが実現可能な金属イオンとして、特に限定されるものではないが、上述した銀(Ag)以外にも、ビスマス(Bi)、銅(Cu)、ナトリウム(Na)、リチウム(Li)、鉄(Fe)、クロム(Cr)、ニッケル(Ni)、カドミウム(Cd)の各イオン、これらのイオンの組合せを例示することができるが、中でも特に好ましい金属イオンは、銀(Ag)、ビスマス(Bi)である。銀やビスマスは、可逆的な反応を容易に進めることができ、しかも、析出時の変色度が高い。
そして、電解質に金属イオンが含まれているが、具体的には、金属イオンを含む物質が電解質に溶解している。より具体的には、金属イオンを含む物質として、例えば、AgF、AgCl、AgBr、AgI等のハロゲン化銀の少なくとも1種、好ましくはAgIあるいはAgBrを挙げることができ、この金属イオンを含む物質が電解質に溶解している。ハロゲン化銀の濃度として、例えば、0.03〜2.0モル/リットルを例示することができる。
第1基板と第2基板との間には金属イオンを含む電解質が封止されているが、ここで、電解質は、電解液あるいは高分子電解質から構成することができる。ここで、電解液として、溶媒に金属塩又はアルキル四級アンモニウム塩を含有させたものを用いることができる。具体的には、電解質として、水、エチルアルコール、イソプロピルアルコール、2−エトキシエタノール、2−メトキシエタノール、プロピレンカーボネート、ジメチルカーボネート、エチレンカーボネート、γ−ブチロラクトン、アセトニトリル、スルフォラン、ジメトキシエタン、ジメチルホルムアミド(DMF)、ジエチルホルムアミド(DEF)、ジメチルスルホキシド(DMSO)、N,N−ジメチルアセトアミド(DMAA)、N−メチルプロピオン酸アミド(MPA)、N−メチルピロリドン(MP)、ジオキソラン(DOL)、エチルアセテート(EA)、テトラヒドロフラン(THF)、メチルテトラヒドロフラン(MeTHF)、又は、これらの混合物を用いることができる。また、高分子電解質に用いるマトリクス(母材)高分子として、主骨格単位、若しくは、側鎖単位、若しくは、主骨格単位及び側鎖単位に、アルキレンオキサイド、アルキレンイミン、アルキレンスルフィドの繰り返し単位を有する高分子材料、又は、これらの異なる単位を複数含む共重合物、又は、ポリメチルメタクリレート誘導体、ポリフッ化ビニリデン、ポリ塩化ビニリデン、ポリアクリロニトリル、ポリカーボネート誘導体、又は、これらの混合物を挙げることができる。電解質が高分子電解質から成る場合、電解質は、単一層であってもよいし、複数の高分子電解質が積層された積層構造を有していてもよい。
水や有機溶剤を添加することで膨潤したマトリクス高分子を用いることもできる。特に応答速度等が要求されるような場合には、マトリクス高分子に水や有機溶剤を添加することにより、電解質中に含まれる金属イオンの移動がより容易になる。
尚、マトリクス高分子の特質並びに所望の電気化学的反応に応じて、親水性を要求される場合には、水、エチルアルコール、イソプロピルアルコールあるいはこれらの混合物等を添加することが好ましく、疎水性を要求される場合には、プロピレンカーボネート、ジメチルカーボネート、エチレンカーボネート、γ−ブチロラクトン、アセトニトリル、スルフォラン、ジメトキシエタン、エチルアルコール、イソプロピルアルコール、ジメチルフォルムアミド、ジメチルスルフォキシド、ジメチルアセトアミド、n−メチルピロリドン、あるいは、これらの混合物を添加することが好ましい。
上述したとおり、第1透明電極及び第2透明電極への電圧の印加に基づく、第2透明電極上における金属の析出及び電解質中への金属の溶解によって、調光装置(具体的には、エレクトロデポジション型の調光装置)の着色及び消色が生じる。ここで、一般に、第2透明電極上において析出した金属から成る層(金属層)の電解質と接する面には凹凸が生じ、黒味を帯びて見え一方、金属層の第2透明電極と接する面は鏡面状となる。従って、調光装置として用いる場合、金属層の電解質と接する面が観察者側を向くことが望ましい。云い換えれば、第1基板は第2基板よりも観察者側に配置されている形態とすることが好ましい。
上述したとおり、電解質に、析出・溶解させる金属イオン種とは異なるイオン種を含む塩(支持電解質塩)を添加することにより、電気化学的な析出・溶解反応をより効果的に、且つ、安定して行うことができる。このような支持電解質塩として、上述したリチウム塩、カリウム塩、ナトリウム塩や、テトラアルキル四級アンモニウム塩を挙げることができる。ここで、リチウム塩として、具体的には、LiCl、LiBr、LiI、LiBF4、LiClO4、LiPF6、LiCF3SO3等を挙げることができる。また、カリウム塩として、具体的には、KCl、KI、KBr等を挙げることができる。更には、ナトリウム塩として、具体的には、NaCl、NaI、NaBr等を挙げることができる。また、テトラアルキル四級アンモニウム塩として、具体的には、硼フッ化テトラエチルアンモニウム塩、過塩素酸テトラエチルアンモニウム塩、硼フッ化テトラブチルアンモニウム塩、過塩素酸テトラブチルアンモニウム塩、テトラブチルアンモニウムハライド塩等を挙げることができる。尚、上述の四級アンモニウム塩のアルキル鎖長は不揃いであってもよい。支持電解質塩は、金属イオンを含む物質の、例えば、1/2〜5倍程度の濃度で添加すればよい。また、高分子電解質から成る電解質に無機粒子を着色剤として混ぜてもよい。
また、電解質には、電気化学的な反応、特に金属の析出・溶解を可逆的、且つ、効率的に行うために、成長阻害剤、応力抑制剤、光沢剤、錯化剤、還元剤といった添加剤の少なくとも1種類を添加してもよい。このような添加剤としては、酸素原子又は硫黄原子を有する基を備えた有機化合物が好ましく、例えば、チオ尿素、1−アリル−2−チオ尿素、メルカプトベンゾイミダゾール、クマリン、フタル酸、コハク酸、サリチル酸、グリコール酸、ジメチルアミンボラン(DMAB)、トリメチルアミンボラン(TMAB)、酒石酸、シュウ酸及びD−グルコノ−1,5−ラクトンから成る群より選ばれた少なくとも1種類を添加することが好ましい。特に、メルカプトアルキルイミダゾールに準じるメルカプトベンゾイミダゾールを添加することによって、可逆性が向上すると共に、長期保存性、高温保存性においても優れた効果を得ることができるため好ましい。
調光装置を構成する透明な第1基板及び第2基板を構成する材料として、具体的には、ソーダライムガラス、白板ガラス等の透明なガラス基板や、プラスチック基板、プラスチック・シート、プラスチック・フィルムを挙げることができる。ここで、プラスチックとして、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリカーボネート、酢酸セルロース等のセルロースエステル、ポリフッ化ビニリデンあるいはポリテトラフルオロエチレンとヘキサフルオロプロピレンとの共重合体等のフッ素ポリマー、ポリオキシメチレン等のポリエーテル、ポリアセタール、ポリスチレン、ポリエチレン、ポリプロピレン、メチルペンテンポリマー等のポリオレフィン、ポリアミドイミドあるいはポリエーテルイミド等のポリイミド、ポリアミド、ポリエーテルサルフォン、ポリフェニレンサルファイド、ポリフッ化ビニリデン、テトラアセチルセルロース、ブロム化フェノキシ、ポリアリレート、ポリスルフォン等を挙げることができる。プラスチック・シート、プラスチック・フィルムは、容易に曲がらない剛性を有していてもよいし、可撓性を有していてもよい。第1基板及び第2基板を透明なプラスチック基板から構成する場合、基板内面に無機材料あるいは有機材料から成るバリア層を形成しておいてもよい。
第1基板と第2基板とは、外縁部において封止部材によって封止され、接着されている。シール剤とも呼ばれる封止部材として、エポキシ樹脂、ウレタン系樹脂、アクリル系樹脂、酢酸ビニル系樹脂、エン−チオール系樹脂、シリコーン系樹脂、変性ポリマー樹脂等の、熱硬化型、光硬化型、湿気硬化型、嫌気硬化型等の各種樹脂を用いることができる。
第1透明電極及び第2透明電極を構成する材料として、具体的には、インジウム−スズ複合酸化物(ITO,Indium Tin Oxide,SnドープのIn2O3、結晶性ITO及びアモルファスITOを含む)、フッ素ドープSnO2(FTO)、IFO(FドープのIn2O3)、アンチモンドープSnO2(ATO)、SnO2、ZnO(AlドープのZnOやBドープのZnOを含む)、インジウム−亜鉛複合酸化物(IZO,Indium Zinc Oxide)、スピネル型酸化物、YbFe2O4構造を有する酸化物、ポリアニリン、ポリピロール、ポリチオフェン等の導電性高分子等を挙げることができるが、これらに限定されるものではなく、また、これらを2種類以上組み合わせて用いることもできる。例えば平面形状が細線状の第1補助電極(第1バス電極)、第2補助電極(第2バス電極)を、第1透明電極、第2透明電極上に設けてもよく、これらの補助電極は、金、銀、銅、アルミニウム、ニッケル、チタン等の金属、あるいは、合金から構成することができる。第1補助電極及び第2補助電極は、第1透明電極及び第2透明電極よりも電気抵抗が低いことが要求される。第1透明電極、第2透明電極、第1補助電極及び第2補助電極は、真空蒸着法やスパッタリング法等の物理的気相成長法(PVD法)、各種化学的気相成長法(CVD法)、各種塗布等に基づき形成することができる。補助電極や透明電極のパターニングは、エッチング法、リフトオフ法、各種マスクを用いる方法等、任意の方法で行うことができる。
光学装置は半透過型(シースルー型)である。具体的には、少なくとも観察者の眼球(瞳)に対向する光学装置の部分を半透過(シースルー)とし、光学装置のこの部分及び調光装置を通して外景を眺めることができる。前述したように、観察者が、調光装置及び光学装置を通過した光の明るさを観察し、観察者が、スイッチやボタン、ダイアル、スライダ、ノブ等を操作することで手動にて遮光率を制御、調整することができるし、あるいは又、前述した外部環境から調光装置を透過した光に基づく照度を測定する第2の照度センサ(透過光照度測定センサ)の測定結果に基づき、遮光率を制御、調整することができる。尚、遮光率の制御、調整は、具体的には、第1透明電極及び第2透明電極に印加する電圧を制御すればよい。第2の照度センサ(透過光照度測定センサ)を、少なくとも2つ、配置し、高遮光率の部分を通過した光に基づく照度の測定、低遮光率の部分を通過した光に基づく照度の測定を行ってもよい。表示装置は、画像表示装置を1つ備えていてもよいし、2つ備えていてもよい。画像表示装置を2つ備えている場合、一方の調光装置と他方の調光装置のそれぞれにおいて、第1透明電極及び第2透明電極に印加する電圧を調整することで、一方の調光装置における遮光率及び他方の調光装置における遮光率の均等化を図ることができる。一方の調光装置における遮光率及び他方の調光装置における遮光率は、例えば、前述した外部環境から調光装置を透過した光に基づく照度を測定する第2の照度センサ(透過光照度測定センサ)の測定結果に基づき、制御することができるし、あるいは又、観察者が、一方の調光装置及び光学装置を通過した光の明るさ及び他方の調光装置及び光学装置を通過した光の明るさを観察し、観察者が、スイッチやボタン、ダイアル、スライダ、ノブ等を操作することで手動にて制御、調整することもできる。遮光率の調整を行う場合、光学装置にテストパターンを表示してもよい。
本明細書において、「半透過」という用語を用いる場合があるが、入射する光の1/2(50%)を透過し、あるいは反射することを意味するのではなく、入射する光の一部を透過し、残部を反射するといった意味で用いている。
第1構造の光学装置において、前述したとおり、第1偏向手段は、導光板に入射された光を反射し、第2偏向手段は、導光板の内部を全反射により伝播した光を、複数回に亙り、透過、反射する構成とすることができる。そして、この場合、第1偏向手段は反射鏡として機能し、第2偏向手段は半透過鏡として機能する構成とすることができる。尚、このような第1構造の光学装置を、便宜上、『第1−A構造の光学装置』と呼ぶ。
このような第1−A構造の光学装置において、第1偏向手段は、例えば、合金を含む金属から構成され、導光板に入射された光を反射させる光反射膜(一種のミラー)や、導光板に入射された光を回折させる回折格子(例えば、ホログラム回折格子膜)から構成することができる。あるいは又、第1偏向手段は、例えば、誘電体積層膜が多数積層された多層積層構造体、ハーフミラー、偏光ビームスプリッターから構成することができる。また、第2偏向手段は、誘電体積層膜が多数積層された多層積層構造体や、ハーフミラー、偏光ビームスプリッター、ホログラム回折格子膜から構成することができる。そして、第1偏向手段や第2偏向手段は、導光板の内部に配設されている(導光板の内部に組み込まれている)が、第1偏向手段においては、導光板に入射された平行光が導光板の内部で全反射されるように、導光板に入射された平行光が反射又は回折される。一方、第2偏向手段においては、導光板の内部を全反射により伝播した平行光が複数回に亙り反射又は回折され、導光板から平行光の状態で出射される。
あるいは又、第1偏向手段は、導光板に入射された光を回折反射し、第2偏向手段は、導光板の内部を全反射により伝播した光を、複数回に亙り、回折反射する構成とすることができる。そして、この場合、第1偏向手段及び第2偏向手段は回折格子素子から成る形態とすることができ、更には、回折格子素子は、反射型回折格子素子から成り、あるいは又、透過型回折格子素子から成り、あるいは又、一方の回折格子素子は反射型回折格子素子から成り、他方の回折格子素子は透過型回折格子素子から成る構成とすることができる。尚、反射型回折格子素子として、反射型体積ホログラム回折格子を挙げることができる。反射型体積ホログラム回折格子から成る第1偏向手段を、便宜上、『第1回折格子部材』と呼び、反射型体積ホログラム回折格子から成る第2偏向手段を、便宜上、『第2回折格子部材』と呼ぶ場合がある。また、このような第1構造の光学装置を、便宜上、『第1−B構造の光学装置』と呼ぶ。
本開示における画像表示装置によって、単色(例えば、緑色)の画像表示を行うことができる。そして、この場合、例えば、画角を例えば二分割(より具体的には、例えば二等分割)して、第1偏向手段は、二分割された画角群のそれぞれに対応する2つの回折格子部材が積層されて成る構成とすることができる。あるいは又、カラーの画像表示を行う場合、第1回折格子部材あるいは第2回折格子部材を、異なるP種類(例えば、P=3であり、赤色、緑色、青色の3種類)の波長帯域(あるいは、波長)を有するP種類の光の回折反射に対応させるために、反射型体積ホログラム回折格子から成るP層の回折格子層が積層されて成る構成とすることができる。各回折格子層には1種類の波長帯域(あるいは、波長)に対応する干渉縞が形成されている。あるいは又、異なるP種類の波長帯域(あるいは、波長)を有するP種類の光の回折反射に対応するために、1層の回折格子層から成る第1回折格子部材あるいは第2回折格子部材にP種類の干渉縞が形成されている構成とすることもできる。あるいは又、例えば、第1導光板に、赤色の波長帯域(あるいは、波長)を有する光を回折反射させる反射型体積ホログラム回折格子から成る回折格子層から構成された回折格子部材を配し、第2導光板に、緑色の波長帯域(あるいは、波長)を有する光を回折反射させる反射型体積ホログラム回折格子から成る回折格子層から構成された回折格子部材を配し、第3導光板に、青色の波長帯域(あるいは、波長)を有する光を回折反射させる反射型体積ホログラム回折格子から成る回折格子層から構成された回折格子部材を配し、これらの第1導光板、第2導光板及び第3導光板を隙間を開けて積層する構造を採用してもよい。あるいは又、画角を例えば三等分して、第1回折格子部材あるいは第2回折格子部材を、各画角に対応する回折格子層が積層されて成る構成とすることができる。そして、これらの構成を採用することで、各波長帯域(あるいは、波長)を有する光が第1回折格子部材あるいは第2回折格子部材において回折反射されるときの回折効率の増加、回折受容角の増加、回折角の最適化を図ることができる。反射型体積ホログラム回折格子が直接大気と接しないように、保護部材を配することが好ましい。
第1回折格子部材及び第2回折格子部材を構成する材料として、フォトポリマー材料を挙げることができる。反射型体積ホログラム回折格子から成る第1回折格子部材及び第2回折格子部材の構成材料や基本的な構造は、従来の反射型体積ホログラム回折格子の構成材料や構造と同じとすればよい。反射型体積ホログラム回折格子とは、+1次の回折光のみを回折反射するホログラム回折格子を意味する。回折格子部材には、その内部から表面に亙り干渉縞が形成されているが、係る干渉縞それ自体の形成方法は、従来の形成方法と同じとすればよい。具体的には、例えば、回折格子部材を構成する部材(例えば、フォトポリマー材料)に対して一方の側の第1の所定の方向から物体光を照射し、同時に、回折格子部材を構成する部材に対して他方の側の第2の所定の方向から参照光を照射し、物体光と参照光とによって形成される干渉縞を回折格子部材を構成する部材の内部に記録すればよい。第1の所定の方向、第2の所定の方向、物体光及び参照光の波長を適切に選択することで、回折格子部材の表面における干渉縞の所望のピッチ、干渉縞の所望の傾斜角(スラント角)を得ることができる。干渉縞の傾斜角とは、回折格子部材(あるいは回折格子層)の表面と干渉縞の成す角度を意味する。第1回折格子部材及び第2回折格子部材を、反射型体積ホログラム回折格子から成るP層の回折格子層の積層構造から構成する場合、このような回折格子層の積層は、P層の回折格子層をそれぞれ別個に作製した後、P層の回折格子層を、例えば、紫外線硬化型接着剤を使用して積層(接着)すればよい。また、粘着性を有するフォトポリマー材料を用いて1層の回折格子層を作製した後、その上に順次粘着性を有するフォトポリマー材料を貼り付けて回折格子層を作製することで、P層の回折格子層を作製してもよい。
あるいは又、本開示における画像表示装置において、光学装置は、画像形成装置から出射された光が入射され、観察者の瞳に向かって出射される半透過ミラーから構成されている形態とすることができるし、偏光ビームスプリッター(PBS)から構成されている形態とすることができる。半透過ミラーあるいは偏光ビームスプリッターによって光学装置の虚像形成領域が構成される。画像形成装置から出射された光は、空気中を伝播して半透過ミラーあるいは偏光ビームスプリッターに入射する構造としてもよいし、例えば、ガラス板やプラスチック板等の透明な部材(具体的には、後述する導光板を構成する材料と同様の材料から成る部材)の内部を伝播して半透過ミラーあるいは偏光ビームスプリッターに入射する構造としてもよい。半透過ミラーあるいは偏光ビームスプリッターを、この透明な部材を介して画像形成装置に取り付けてもよいし、半透過ミラーあるいは偏光ビームスプリッターを、この透明な部材とは別の部材を介して画像形成装置に取り付けてもよい。ここで、このような光学装置を、便宜上、『第2構造の光学装置』と呼ぶ。半透過ミラーとして、第1−A構造の光学装置における第1偏向手段、例えば、合金を含む金属から構成され、光を反射させる光反射膜(一種のミラー)や、回折格子(例えば、ホログラム回折格子膜)から構成することができる。あるいは又、光学装置は、画像形成装置から出射された光が入射され、観察者の瞳に向かって出射されるプリズムから構成されている形態とすることができる。
以上に説明した各種好ましい形態、構成を含む本開示における画像表示装置において、画像形成装置は、2次元マトリクス状に配列された複数の画素を有する形態とすることができる。尚、このような画像形成装置の構成を、便宜上、『第1構成の画像形成装置』と呼ぶ。
第1構成の画像形成装置として、例えば、反射型空間光変調装置及び光源から構成された画像形成装置;透過型空間光変調装置及び光源から構成された画像形成装置;有機EL(Electro Luminescence)、無機EL、発光ダイオード(LED)、半導体レーザ素子等の発光素子から構成された画像形成装置を挙げることができるが、中でも、反射型空間光変調装置及び光源から構成された画像形成装置とすることが好ましい。空間光変調装置として、ライト・バルブ、例えば、LCOS(Liquid Crystal On Silicon)等の透過型あるいは反射型の液晶表示装置、デジタルマイクロミラーデバイス(DMD)を挙げることができ、光源として発光素子を挙げることができる。更には、反射型空間光変調装置は、液晶表示装置、及び、光源からの光の一部を反射して液晶表示装置へと導き、且つ、液晶表示装置によって反射された光の一部を通過させて光学系へと導く偏光ビームスプリッターから成る構成とすることができる。光源を構成する発光素子として、赤色発光素子、緑色発光素子、青色発光素子、白色発光素子を挙げることができるし、あるいは又、赤色発光素子、緑色発光素子及び青色発光素子から出射された赤色光、緑色光及び青色光をライトパイプを用いて混色、輝度均一化を行うことで白色光を得てもよい。発光素子として、例えば、半導体レーザ素子や固体レーザ、LEDを例示することができる。画素の数は、画像表示装置に要求される仕様に基づき決定すればよく、画素の数の具体的な値として、320×240、432×240、640×480、1024×768、1920×1080等を例示することができる。
あるいは又、以上に説明した好ましい形態、構成を含む本開示における画像表示装置において、画像形成装置は、光源、及び、光源から出射された平行光を走査する走査手段を備えた形態とすることができる。尚、このような画像形成装置の構成を、便宜上、『第2構成の画像形成装置』と呼ぶ。
第2構成の画像形成装置における光源として発光素子を挙げることができ、具体的には、赤色発光素子、緑色発光素子、青色発光素子、白色発光素子を挙げることができるし、あるいは又、赤色発光素子、緑色発光素子及び青色発光素子から出射された赤色光、緑色光及び青色光をライトパイプを用いて混色、輝度均一化を行うことで白色光を得てもよい。発光素子として、例えば、半導体レーザ素子や固体レーザ、LEDを例示することができる。第2構成の画像形成装置における画素(仮想の画素)の数も、画像表示装置に要求される仕様に基づき決定すればよく、画素(仮想の画素)の数の具体的な値として、320×240、432×240、640×480、1024×768、1920×1080等を例示することができる。また、カラーの画像表示を行う場合であって、光源を赤色発光素子、緑色発光素子、青色発光素子から構成する場合、例えば、クロスプリズムを用いて色合成を行うことが好ましい。走査手段として、光源から出射された光を水平走査及び垂直走査する、例えば、二次元方向に回転可能なマイクロミラーを有するMEMS(Micro Electro Mechanical Systems)やガルバノ・ミラーを挙げることができる。
第1構造の光学装置を備えた画像表示装置における第1構成の画像形成装置あるいは第2構成の画像形成装置において、光学系(出射光を平行光とする光学系であり、『平行光出射光学系』と呼ぶ場合があり、具体的には、例えば、コリメート光学系やリレー光学系)にて複数の平行光とされた光を導光板に入射させるが、このような、平行光であることの要請は、これらの光が導光板へ入射したときの光波面情報が、第1偏向手段と第2偏向手段を介して導光板から出射された後も保存される必要があることに基づく。尚、複数の平行光を生成させるためには、具体的には、例えば、平行光出射光学系における焦点距離の所(位置)に、例えば、画像形成装置の光出射部を位置させればよい。平行光出射光学系は、画素の位置情報を光学装置の光学系における角度情報に変換する機能を有する。平行光出射光学系として、凸レンズ、凹レンズ、自由曲面プリズム、ホログラムレンズを、単独、若しくは、組み合わせた、全体として正の光学的パワーを持つ光学系を例示することができる。平行光出射光学系と導光板との間には、平行光出射光学系から不所望の光が出射されて導光板に入射しないように、開口部を有する遮光部を配置してもよい。
導光板は、導光板の軸線(長手方向、水平方向であり、X軸方向に該当する)と平行に延びる2つの平行面(第1面及び第2面)を有している。尚、導光板の幅方向(高さ方向、垂直方向)はY軸方向に該当する。光が入射する導光板の面を導光板入射面、光が出射する導光板の面を導光板出射面としたとき、第1面によって導光板入射面及び導光板出射面が構成されていてもよいし、第1面によって導光板入射面が構成され、第2面によって導光板出射面が構成されていてもよい。回折格子部材の干渉縞は、概ねY軸方向と平行に延びる。導光板を構成する材料として、石英ガラスやBK7等の光学ガラスを含むガラスや、プラスチック材料(例えば、PMMA、ポリカーボネート樹脂、アクリル系樹脂、非晶性のポリプロピレン系樹脂、AS樹脂を含むスチレン系樹脂)を挙げることができる。導光板の形状は、平板に限定するものではなく、湾曲した形状を有していてもよい。
本開示の表示装置等において、画像形成装置から出射された光が入射される光学装置の領域には、光学装置への外光の入射を遮光する遮光部材が配されている構成とすることができる。画像形成装置から出射された光が入射される光学装置の領域に、光学装置への外光の入射を遮光する遮光部材を配することで、調光装置の作動によって外光の入射光量に変化が生じても、そもそも、画像形成装置から出射された光が入射される光学装置の領域には外光が入射しないので、不所望の迷光等が発生し、表示装置における画像表示品質が低下するといったことが無い。尚、遮光部材の光学装置への射影像内に、画像形成装置から出射された光が入射される光学装置の領域が含まれる形態とすることが好ましい。
遮光部材は、光学装置の画像形成装置が配された側とは反対側に、光学装置と離間して配されている構成とすることができる。このような構成の表示装置にあっては、遮光部材を、例えば、不透明なプラスチック材料から作製すればよく、このような遮光部材は、画像表示装置の筐体から一体に延び、あるいは又、画像表示装置の筐体に取り付けられ、あるいは又、フレームから一体に延び、あるいは又、フレームに取り付けられている形態とすることができる。あるいは又、遮光部材は、画像形成装置が配された側とは反対側の光学装置の部分に配されている構成とすることができるし、遮光部材は、調光装置に配されている構成とすることもできる。尚、不透明な材料から成る遮光部材を、例えば、光学装置の面上に物理的気相成長法(PVD法)や化学的気相成長法(CVD法)に基づき形成してもよいし、印刷法等によって形成してもよいし、不透明な材料(プラスチック材料や金属材料、合金材料等)から成るフィルムやシート、箔を貼り合わせてもよい。遮光部材の光学装置への射影像内に、調光装置の端部の光学装置への射影像が含まれる構成とすることが好ましい。
本開示の表示装置等において、フレームは、前述したとおり、観察者の正面に配置されるフロント部と、フロント部の両端に蝶番を介して回動自在に取り付けられた2つのテンプル部とから成る構成とすることができる。尚、各テンプル部の先端部にはモダン部が取り付けられている。画像表示装置はフレームに取り付けられているが、具体的には、例えば、画像形成装置をテンプル部に取り付ければよい。また、フロント部と2つのテンプル部とが一体となった構成とすることもできる。即ち、本開示の表示装置等の全体を眺めたとき、フレームは、概ね通常の眼鏡と略同じ構造を有する。パッド部を含むフレームを構成する材料は、金属や合金、プラスチック、これらの組合せといった、通常の眼鏡を構成する材料と同じ材料から構成することができる。更には、フロント部にノーズパッドが取り付けられている構成とすることができる。即ち、本開示の表示装置等の全体を眺めたとき、フレーム(リムを含む場合がある)及びノーズパッドの組立体は、通常の眼鏡と略同じ構造を有する。ノーズパッドも周知の構成、構造とすることができる。
また、本開示の表示装置等にあっては、デザイン上、あるいは、装着の容易性といった観点から、1つあるいは2つの画像形成装置からの配線(信号線や電源線等)が、テンプル部、及び、モダン部の内部を介して、モダン部の先端部から外部に延び、制御装置(制御回路あるいは制御手段)に接続されている形態とすることが望ましい。更には、各画像形成装置はヘッドホン部を備えており、各画像形成装置からのヘッドホン部用配線が、テンプル部、及び、モダン部の内部を介して、モダン部の先端部からヘッドホン部へと延びている形態とすることもできる。ヘッドホン部として、例えば、インナーイヤー型のヘッドホン部、カナル型のヘッドホン部を挙げることができる。ヘッドホン部用配線は、より具体的には、モダン部の先端部から、耳介(耳殻)の後ろ側を回り込むようにしてヘッドホン部へと延びている形態とすることが好ましい。また、フロント部の中央部分に撮像装置が取り付けられている形態とすることもできる。撮像装置は、具体的には、例えば、CCDあるいはCMOSセンサーから成る固体撮像素子とレンズから構成されている。撮像装置からの配線は、例えば、フロント部を介して、一方の画像表示装置(あるいは画像形成装置)に接続すればよく、更には、画像表示装置(あるいは画像形成装置)から延びる配線に含ませればよい。撮像装置を、フレームの中央部分や端部に取り付けてもよいし、テンプル部に取り付けてもよい。
あるいは又、本開示の表示装置等を両眼型とする場合、
導光板は、全体として画像形成装置よりも観察者の顔の中心側に配置されており、
2つの画像表示装置を結合する結合部材を更に有し、
結合部材は、観察者の2つの瞳の間に位置するフレームの中央部分の観察者に面する側に取り付けられており、
結合部材の射影像は、フレームの射影像内に含まれる構成とすることができる。
このように、結合部材が、観察者の2つの瞳の間に位置するフレームの中央部分に取り付けられている構造とすることによって、即ち、画像表示装置は、フレームに、直接、取り付けられた構造とはなっていなければ、観察者がフレームを頭部に装着したとき、テンプル部が外側に向かって広がった状態となり、その結果、フレームが変形したとしても、係るフレームの変形によって、画像形成装置あるいは導光板の変位(位置変化)が生じることがないか、生じたとしても、極僅かである。それ故、左右の画像の輻輳角が変化してしまうことを確実に防止することができる。しかも、フレームのフロント部の剛性を高める必要がないので、フレームの重量増加、デザイン性の低下、コストの増加を招くことがない。また、画像表示装置は、眼鏡型のフレームに、直接、取り付けられていないので、観察者の嗜好によってフレームのデザインや色等を自由に選択することが可能であるし、フレームのデザインが受ける制約も少なく、デザイン上の自由度が高い。加えて、結合部材は、観察者とフレームとの間に配置されており、しかも、結合部材の射影像は、フレームの射影像内に含まれる。云い換えれば、観察者の正面から頭部装着型ディスプレイを眺めたとき、結合部材はフレームによって隠されている。従って、高いデザイン性、意匠性を頭部装着型ディスプレイに与えることができる。
尚、結合部材は、観察者の2つの瞳の間に位置するフロント部の中央部分(通常の眼鏡におけるブリッジの部分に相当する)の観察者に面する側に取り付けられている構成とすることが好ましい。
結合部材によって2つの画像表示装置が結合されているが、具体的には、結合部材の各端部に、画像形成装置が、取付け状態調整可能に取り付けられている形態とすることができる。そして、この場合、各画像形成装置は、観察者の瞳よりも外側に位置している構成とすることが好ましい。更には、このような構成にあっては、一方の画像形成装置の取付部中心とフレームの一端部(一方の智、ヨロイ)との間の距離をα、結合部材の中心からフレームの一端部(一方の智)までの距離をβ、他方の画像形成装置の取付部中心とフレームの一端部(一方の智)との間の距離をγ、フレームの長さをLとしたとき、0.01×L≦α≦0.30×L、好ましくは、0.05×L≦α≦0.25×L、0.35×L≦β≦0.65×L、好ましくは、0.45×L≦β≦0.55×L、0.70×L≦γ≦0.99×L、好ましくは、0.75×L≦γ≦0.95×Lを満足することが望ましい。結合部材の各端部への画像形成装置の取付けは、具体的には、例えば、結合部材の各端部の3箇所に貫通孔を設け、貫通孔に対応した螺合部を画像形成装置に設け、各貫通孔にビスを通し、画像形成装置に設けられた螺合部に螺合させる。ビスと螺合部との間にはバネを挿入しておく。こうして、ビスの締め付け状態によって、画像形成装置の取付け状態(結合部材に対する画像形成装置の傾き)を調整することができる。
ここで、画像形成装置の取付部中心とは、画像形成装置が結合部材に取り付けられている状態において、画像形成装置及びフレームを仮想平面に射影したときに得られる画像形成装置の射影像が、フレームの射影像の重なっている部分のフレームの軸線方向に沿った二等分点を指す。また、結合部材の中心とは、結合部材がフレームに取り付けられている状態において、結合部材がフレームに接している部分のフレームの軸線方向に沿った二等分点を指す。フレームの長さとは、フレームが湾曲している場合、フレームの射影像の長さである。尚、射影方向は、観察者の顔に対して垂直な方向とする。
あるいは又、結合部材によって2つの画像表示装置が結合されているが、具体的には、結合部材が、2つの導光板を結合している形態とすることもできる。尚、2つの導光板が一体的に作製されている場合があり、このような場合、係る一体的に作製された導光板に結合部材が取り付けられているが、係る形態も、結合部材が2つの導光板を結合している形態に包含される。一方の画像形成装置の中心とフレームの一端部との間の距離をα’他方の画像形成装置の中心とフレームの一端部との間の距離をγ’としたとき、α’,γ’の値も上述したα,γの値と同様とすることが望ましい。尚、画像形成装置の中心とは、画像形成装置が導光板に取り付けられている状態において、画像形成装置及びフレームを仮想平面に射影したときに得られる画像形成装置の射影像が、フレームの射影像の重なっている部分のフレームの軸線方向に沿った二等分点を指す。
結合部材の形状は、結合部材の射影像がフレームの射影像内に含まれる限りにおいて、本質的に任意であり、例えば、棒状、細長い板状を例示することができる。結合部材を構成する材料も、金属や合金、プラスチック、これらの組合せを挙げることができる。
本開示の表示装置等にあっては、画像表示装置において画像を表示するための信号(光学装置において虚像を形成するための信号)を外部から受け取る形態とすることができる。このような形態にあっては、画像表示装置において表示する画像に関する情報やデータは、例えば、所謂クラウドコンピュータやサーバーに記録、保管、保存されており、表示装置が通信手段、例えば、携帯電話機やスマートフォンを備えることによって、あるいは又、表示装置と通信手段とを組み合わせることによって、クラウドコンピュータやサーバーと表示装置との間での各種情報やデータの授受、交換を行うことができるし、各種情報やデータに基づく信号、即ち、画像表示装置において画像を表示するための信号(光学装置において虚像を形成するための信号)を受け取ることができる。あるいは又、画像表示装置において画像を表示するための信号(光学装置において虚像を形成するための信号)は表示装置に記憶されている形態とすることができる。尚、画像表示装置において表示される画像には、各種情報や各種データが含まれる。あるいは又、表示装置は撮像装置を備えており、撮像装置によって撮像された画像を通信手段を介してクラウドコンピュータやサーバーに送出し、クラウドコンピュータやサーバーにおいて撮像装置によって撮像された画像に該当する各種情報やデータを検索し、検索された各種情報やデータを通信手段を介して表示装置に送出し、検索された各種情報やデータを画像表示装置において画像を表示してもよい。
撮像装置によって撮像された画像を通信手段を介してクラウドコンピュータやサーバーに送出する際、撮像装置によって撮像される画像を画像表示装置において表示し、光学装置において確認してもよい。具体的には、撮像装置によって撮像される空間領域の外縁を調光装置において枠状に表示する形態とすることができる。あるいは又、撮像装置によって撮像される空間領域に対応する調光装置の領域の遮光率を、撮像装置によって撮像される空間領域の外側に対応する調光装置の領域の遮光率よりも高くする形態とすることができる。このような形態にあっては、観察者には、撮像装置によって撮像される空間領域は、撮像装置によって撮像される空間領域の外側よりも暗く見える。あるいは又、撮像装置によって撮像される空間領域に対応する調光装置の領域の遮光率を、撮像装置によって撮像される空間領域の外側に対応する調光装置の領域の遮光率よりも低くする形態とすることもできる。このような形態にあっては、観察者には、撮像装置によって撮像される空間領域は、撮像装置によって撮像される空間領域の外側よりも明るく見える。そして、これによって、撮像装置が外部のどこを撮像するかを観察者は、容易に、且つ、確実に認識することができる。
撮像装置によって撮像される空間領域に対応する調光装置の領域の位置を校正することが好ましい。具体的には、表示装置が、例えば、携帯電話機やスマートフォンを備えることによって、あるいは又、表示装置と携帯電話機やスマートフォン、パーソナルコンピュータとを組み合わせることによって、携帯電話機やスマートフォン、パーソナルコンピュータにおいて、撮像装置によって撮像された空間領域を表示することができる。そして、携帯電話機やスマートフォン、パーソナルコンピュータにおいて表示された空間領域と、撮像装置によって撮像される空間領域に対応する調光装置の領域との間に差異が存在する場合、調光装置の遮光率(光透過率)を制御するための制御回路(携帯電話機やスマートフォン、パーソナルコンピュータによって代用することもできる)を用いて、撮像装置によって撮像される空間領域に対応する調光装置の領域を移動・回転させ、あるいは、拡大/縮小することで、携帯電話機やスマートフォン、パーソナルコンピュータにおいて表示された空間領域と、撮像装置によって撮像される空間領域に対応する調光装置の領域との間の差異を無くせばよい。
以上に説明した種々の変形例を含む本開示の表示装置等は、例えば、電子メールの受信・表示、インターネット上の種々のサイトにおける各種情報等の表示、各種装置等の観察対象物の運転、操作、保守、分解時等における各種説明や、記号、符号、印、標章、図案等の表示;人物や物品等の観察対象物に関する各種説明や、記号、符号、印、標章、図案等の表示;動画や静止画の表示;映画等の字幕の表示;映像に同期した映像に関する説明文やクローズド・キャプションの表示;芝居や歌舞伎、能、狂言、オペラ、音楽会、バレー、各種演劇、遊園地(アミューズメントパーク)、美術館、観光地、行楽地、観光案内等における観察対象物に関する各種説明、その内容や進行状況、背景等を説明するための説明文等の表示に用いることができるし、クローズド・キャプションの表示に用いることができる。芝居や歌舞伎、能、狂言、オペラ、音楽会、バレー、各種演劇、遊園地(アミューズメントパーク)、美術館、観光地、行楽地、観光案内等にあっては、適切なタイミングで観察対象物に関連した画像としての文字を表示装置において表示すればよい。具体的には、例えば、映画等の進行状況に応じて、あるいは又、芝居等の進行状況に応じて、所定のスケジュール、時間配分に基づき、作業者の操作によって、あるいは、コンピュータ等の制御下、画像制御信号が表示装置に送出され、画像が表示装置にて表示される。また、各種装置、人物や物品等の観察対象物に関する各種説明の表示を行うが、撮像装置によって各種装置、人物や物品等の観察対象物を撮影(撮像)し、表示装置において撮影(撮像)内容を解析することで、予め作成しておいた各種装置、人物や物品等の観察対象物に関する各種説明の表示を表示装置にて行うことができる。あるいは又、本開示の表示装置等は、立体視ディスプレイ装置として用いることもできる。この場合、必要に応じて、光学装置に偏光板や偏光フィルムを着脱自在に取り付け、あるいは、光学装置に偏光板や偏光フィルムを貼り合わせればよい。
画像形成装置への画像信号には、画像信号(例えば、文字データ)だけでなく、例えば、表示すべき画像に関する輝度データ(輝度情報)、又は、色度データ(色度情報)、又は、輝度データ及び色度データを含めることができる。輝度データは、光学装置を通して眺めた観察対象物を含む所定の領域の輝度に対応した輝度データとすることができるし、色度データは、光学装置を通して眺めた観察対象物を含む所定の領域の色度に対応した色度データとすることができる。このように、画像に関する輝度データを含めることで、表示される画像の輝度(明るさ)の制御を行うことができるし、画像に関する色度データを含めることで、表示される画像の色度(色)の制御を行うことができるし、画像に関する輝度データ及び色度データを含めることで、表示される画像の輝度(明るさ)及び色度(色)の制御を行うことができる。画像表示装置を通して眺めた観察対象物を含む所定の領域の輝度に対応した輝度データとする場合、画像表示装置を通して眺めた観察対象物を含む所定の領域の輝度の値が高くなるほど、画像の輝度の値が高くなるように(即ち、画像がより明るく表示されるように)、輝度データの値を設定すればよい。また、画像表示装置を通して眺めた観察対象物を含む所定の領域の色度に対応した色度データとする場合、画像表示装置を通して眺めた観察対象物を含む所定の領域の色度と、表示すべき画像の色度とが、おおよそ補色関係となるように色度データの値を設定すればよい。補色とは、色相環(color circle)で正反対に位置する関係の色の組み合わせ指す。赤に対しての緑、黄に対しての紫、青に対しての橙など、相補的な色のことでもある。或る色に別の色を適宜の割合で混合して、光の場合は白、物体の場合は黒というように、彩度低下を引き起こす色についても云うが、並列した際の視覚的効果の相補性と混合した際の相補性は異なる。余色、対照色、反対色ともいう。但し、反対色は補色が相対する色を直接に指示するのに対し、補色の指示する範囲はやや広い。補色同士の色の組み合わせは互いの色を引き立て合う相乗効果があり、これは補色調和といわれる。
本開示の表示装置等によって、例えば、頭部装着型ディスプレイ(HMD,Head Mounted Display)を構成することができる。そして、これによって、表示装置の軽量化、小型化を図ることができるし、表示装置装着時の不快感を大幅に軽減させることが可能となり、更には、製造コストダウンを図ることも可能となる。あるいは又、車両や航空機のコックピット等に備えられるヘッドアップディスプレイ(HUD)に本開示の表示装置等を適用することができる。具体的には、画像形成装置から出射された光に基づき虚像が形成される虚像形成領域が車両や航空機のコックピット等のフロントガラスに配されたHUDにおいて、あるいは又、画像形成装置から出射された光に基づき虚像が形成される虚像形成領域を有するコンバイナが車両や航空機のコックピット等のフロントガラスに配されたHUDにおいて、係る虚像形成領域やコンバイナを調光装置の少なくとも一部分と重ならせればよい。
実施例1は、本開示の表示装置に関し、具体的には、第1−A構造の光学装置及び第1構成の画像形成装置に関する。実施例1の画像表示装置の概念図を図1に示し、実施例1等の表示装置(具体的には、頭部装着型ディスプレイ,HMD)を上方から眺めた模式図を図2に示し、側方から眺めた模式図を図3Aに示し、光学装置及び調光装置の部分を正面から眺めた模式図を図3Bに示し、実施例1の表示装置における調光装置の模式的な断面図及び光学装置及び調光装置の模式的な正面図を図4A及び図4Bに示す。また、画像表示装置を構成する導光板における光の伝播状態を図5に模式的に示す。
実施例1あるいは後述する実施例2〜実施例12の表示装置は、より具体的には、頭部装着型ディスプレイ(HMD)であり、
(A)観察者20の頭部に装着されるフレーム10(例えば、眼鏡型のフレーム10)、
(B)フレーム10に取り付けられた画像表示装置100,200,300,400,500、及び、
(C)外部から入射する外光の光量を調整する調光装置700、
を備えている。尚、実施例1あるいは後述する実施例2〜実施例12の表示装置を、具体的には、2つの画像表示装置を備えた両眼型としたが、1つ備えた片眼型としてもよい。また、画像形成装置111,211は、例えば、単色(例えば、緑色)の画像(虚像)を表示する。そして、実施例1あるいは後述する実施例2〜実施例12における画像表示装置100,200,300,400,500は、
(a)画像形成装置111,211、及び、
(b)画像形成装置111,211から出射される光に基づき虚像が形成される虚像形成領域を有する光学装置120,320,520、
を備えている。更には、実施例1あるいは後述する実施例2〜実施例5、実施例7〜実施例12の表示装置にあっては、
(c)画像形成装置111,211から出射された光を平行光とする光学系(平行光出射光学系)112,254、
を備えており、光学系112,254にて平行光とされた光束が光学装置120,320,520に入射され、導光され、出射される。
尚、画像表示装置100,200,300,400,500は、フレーム10に、固定して取り付けられていてもよいし、着脱自在に取り付けられていてもよい。ここで、光学系112,254は、画像形成装置111,211と光学装置120,320,520との間に配置されている。そして、光学系112,254にて平行光とされた光束が、光学装置120,320,520に入射され、導光され、出射される。また、光学装置120,320,520は半透過型(シースルー型)である。具体的には、少なくとも観察者20の両眼に対向する光学装置の部分(より具体的には、後述する導光板121,321及び第2偏向手段140,340)は、半透過(シースルー)である。
ここで、光学装置120,320,520の虚像形成領域は調光装置700と重なっており;画像形成装置111,211から出射される光に基づき虚像形成領域の一部分において虚像が形成されるとき、調光装置700への虚像の投影像が含まれる調光装置700の虚像投影領域711の遮光率が、調光装置700の他の領域712の遮光率よりも高くなるように、調光装置700が制御される。尚、調光装置700において虚像投影領域711の位置は固定されたものでなく、虚像の形成位置に依存して変化し、また、虚像投影領域711の数も、虚像の数(あるいは一連の虚像群の数、ブロック化された虚像群の数等)に依存して変化する。
実施例1あるいは後述する実施例2〜実施例4の表示装置において、光学装置120,320は、
(b−1)画像形成装置111,211から入射された光が内部を全反射により伝播した後、観察者20に向けて出射される導光板121,321、
(b−2)導光板121,321に入射された光が導光板121,321の内部で全反射されるように、導光板121,321に入射された光を偏向させる第1偏向手段130,330、及び、
(b−3)導光板121,321の内部を全反射により伝播した光を導光板121,321から出射させるために、導光板121,321の内部を全反射により伝播した光を複数回に亙り偏向させる第2偏向手段140,340、
を備えており、
第2偏向手段140,340によって光学装置の虚像形成領域が構成される。
実施例1あるいは後述する実施例2〜実施例4において、画像形成装置111,211の中心から出射され、光学系112,254の画像形成装置側節点を通過した光線(中心光線CL)の内、光学装置120,320に垂直に入射する中心入射光線が光学装置120,320に入射する点を光学装置中心点Oとし、光学装置中心点Oを通過し、光学装置120,320の軸線方向と平行な軸線をX軸、光学装置中心点Oを通過し、光学装置120,320の法線と一致する軸線をZ軸とする。尚、次に述べる第1偏向手段130,330の中心点が、光学装置中心点Oである。即ち、図5に示すように、画像表示装置100,200,300,400において、画像形成装置111,211の中心から出射され、光学系112,254の画像形成装置側節点を通過した中心入射光線CLは、導光板121,321に垂直に衝突する。云い換えれば、中心入射光線CLは、導光板121,321へ、入射角0度で入射する。そして、この場合、表示される画像(虚像)の中心は、導光板121,321の第1面122,322の垂線方向に一致する。
このように、第1偏向手段は、導光板121,321に入射された光を反射し、第2偏向手段は、導光板121,321の内部を全反射により伝播した光を、複数回に亙り、透過、反射する。具体的には、実施例1あるいは後述する実施例2において、第1偏向手段130及び第2偏向手段140は導光板121の内部に配設されている。そして、第1偏向手段130は、導光板121に入射された光を反射し、第2偏向手段140は、導光板121の内部を全反射により伝播した光を、複数回に亙り、透過、反射する。即ち、第1偏向手段130は反射鏡として機能し、第2偏向手段140は半透過鏡として機能する。より具体的には、導光板121の内部に設けられた第1偏向手段130は、アルミニウム(Al)から成り、導光板121に入射された光を反射させる光反射膜(一種のミラー)から構成されている。一方、導光板121の内部に設けられた第2偏向手段140は、誘電体積層膜が多数積層された多層積層構造体から構成されている。誘電体積層膜は、例えば、高誘電率材料としてのTiO2膜、及び、低誘電率材料としてのSiO2膜から構成されている。誘電体積層膜が多数積層された多層積層構造体に関しては、特表2005−521099に開示されている。図面においては6層の誘電体積層膜を図示しているが、これに限定するものではない。誘電体積層膜と誘電体積層膜との間には、導光板121を構成する材料と同じ材料から成る薄片が挟まれている。尚、第1偏向手段130においては、導光板121に入射された平行光が導光板121の内部で全反射されるように、導光板121に入射された平行光が反射(又は回折)される。一方、第2偏向手段140においては、導光板121の内部を全反射により伝播した平行光が複数回に亙り反射(又は回折)され、導光板121から平行光の状態で、観察者20の瞳21に向かって出射される。
第1偏向手段130は、導光板121の第1偏向手段130を設ける部分124を切り出すことで、導光板121に第1偏向手段130を形成すべき斜面を設け、係る斜面に光反射膜を真空蒸着した後、導光板121の切り出した部分124を第1偏向手段130に接着すればよい。また、第2偏向手段140は、導光板121を構成する材料と同じ材料(例えば、ガラス)と誘電体積層膜(例えば、真空蒸着法にて成膜することができる)とが多数積層された多層積層構造体を作製し、導光板121の第2偏向手段140を設ける部分125を切り出して斜面を形成し、係る斜面に多層積層構造体を接着し、研磨等を行って、外形を整えればよい。こうして、導光板121の内部に第1偏向手段130及び第2偏向手段140が設けられた光学装置120を得ることができる。
ここで、実施例1あるいは後述する実施例2〜実施例4、実施例7〜実施例12において、光学ガラスやプラスチック材料から成る導光板121,321は、導光板121,321の内部全反射による光伝播方向(X軸)と平行に延びる2つの平行面(第1面122,322及び第2面123,323)を有している。第1面122,322と第2面123,323とは対向している。そして、光入射面に相当する第1面122,322から平行光が入射され、内部を全反射により伝播した後、光出射面に相当する第1面122,322から出射される。但し、これに限定するものではなく、第2面123,323によって光入射面が構成され、第1面122,322によって光出射面が構成されていてもよい。
実施例1あるいは後述する実施例3において、画像形成装置111は、第1構成の画像形成装置であり、2次元マトリクス状に配列された複数の画素を有する。具体的には、画像形成装置111は、反射型空間光変調装置150、及び、白色光を出射する発光ダイオードから成る光源153から構成されている。各画像形成装置111全体は、筐体113(図1では、一点鎖線で示す)内に納められており、係る筐体113には開口部(図示せず)が設けられており、開口部を介して光学系(平行光出射光学系,コリメート光学系)112から光が出射される。反射型空間光変調装置150は、ライト・バルブとしてのLCOSから成る液晶表示装置(LCD)151、及び、光源153からの光の一部を反射して液晶表示装置151へと導き、且つ、液晶表示装置151によって反射された光の一部を通過させて光学系112へと導く偏光ビームスプリッター152から構成されている。液晶表示装置151は、2次元マトリクス状に配列された複数(例えば、640×480個)の画素(液晶セル)を備えている。偏光ビームスプリッター152は、周知の構成、構造を有する。光源153から出射された無偏光の光は、偏光ビームスプリッター152に衝突する。偏光ビームスプリッター152において、P偏光成分は通過し、系外に出射される。一方、S偏光成分は、偏光ビームスプリッター152において反射され、液晶表示装置151に入射し、液晶表示装置151の内部で反射され、液晶表示装置151から出射される。ここで、液晶表示装置151から出射した光の内、「白」を表示する画素から出射した光にはP偏光成分が多く含まれ、「黒」を表示する画素から出射した光にはS偏光成分が多く含まれる。従って、液晶表示装置151から出射され、偏光ビームスプリッター152に衝突する光の内、P偏光成分は、偏光ビームスプリッター152を通過し、光学系112へと導かれる。一方、S偏光成分は、偏光ビームスプリッター152において反射され、光源153に戻される。光学系112は、例えば、凸レンズから構成され、平行光を生成させるために、光学系112における焦点距離の所(位置)に画像形成装置111(より具体的には、液晶表示装置151)が配置されている。
フレーム10は、観察者20の正面に配置されるフロント部11と、フロント部11の両端に蝶番12を介して回動自在に取り付けられた2つのテンプル部13と、各テンプル部13の先端部に取り付けられたモダン部(先セル、耳あて、イヤーパッドとも呼ばれる)14から成る。また、ノーズパッド(図2には図示せず)が取り付けられている。即ち、フレーム10及びノーズパッドの組立体は、基本的には、通常の眼鏡と略同じ構造を有する。更には、各筐体113が、取付け部材19によって、着脱自在にテンプル部13に取り付けられている。フレーム10は、金属又はプラスチックから作製されている。尚、各筐体113は、取付け部材19によってテンプル部13に着脱できないように取り付けられていてもよい。また、眼鏡を所有し、装着している観察者に対しては、観察者の所有する眼鏡のフレーム10のテンプル部13に、各筐体113を取付け部材19によって着脱自在に取り付けてもよい。各筐体113を、テンプル部13の外側に取り付けてもよいし、テンプル部13の内側に取り付けてもよい。あるいは又、フロント部11に備えられたリムに、調光装置700及び導光板121,321を嵌め込んでもよいし、調光装置700を嵌め込んでもよいし、導光板121,321を嵌め込んでもよい。
更には、一方の画像形成装置111Aから延びる配線(信号線や電源線等)15が、テンプル部13、及び、モダン部14の内部を介して、モダン部14の先端部から外部に延び、制御装置(制御回路、制御手段)18に接続されている。更には、各画像形成装置111A,111Bはヘッドホン部16を備えており、各画像形成装置111A,111Bから延びるヘッドホン部用配線16’が、テンプル部13、及び、モダン部14の内部を介して、モダン部14の先端部からヘッドホン部16へと延びている。ヘッドホン部用配線16’は、より具体的には、モダン部14の先端部から、耳介(耳殻)の後ろ側を回り込むようにしてヘッドホン部16へと延びている。このような構成にすることで、ヘッドホン部16やヘッドホン部用配線16’が乱雑に配置されているといった印象を与えることがなく、すっきりとした表示装置とすることができる。
配線(信号線や電源線等)15は、上述したとおり、制御装置(制御回路)18に接続されている。制御装置18には、例えば、画像情報記憶装置18Aが備えられている。そして、制御装置18において画像表示のための処理がなされる。制御装置18、画像情報記憶装置18Aは周知の回路から構成することができる。
フロント部11の中央部分11’に、CCDあるいはCMOSセンサーから成る固体撮像素子とレンズ(これらは図示せず)とから構成された撮像装置17が、適切な取付部材(図示せず)によって取り付けられている。撮像装置17からの信号は、撮像装置17から延びる配線(図示せず)を介して制御装置(制御回路)18に送出される。
調光装置700の動作時、調光装置700の他の領域712の遮光率は、調光装置への虚像の投影像が含まれる調光装置の虚像投影領域の遮光率を「1」としたとき、例えば、0.95以下である。あるいは又、調光装置の他の領域の遮光率は、例えば、30%以下である。一方、調光装置700の動作時、調光装置700の虚像投影領域711の遮光率は、35%乃至99%、例えば、80%とされる。このように、虚像投影領域711の遮光率は、一定であってもよいし、後述するように、表示装置の置かれた環境の照度に依存して変化させてもよい。
実施例1あるいは後述する実施例2〜実施例5、実施例7〜実施例12において、光学装置120,320,520の画像形成装置111,211が配された側とは反対側には、外部から入射する外光の光量を調整する調光装置700が配設されている。具体的には、一種の光シャッタである調光装置700は、接着剤708を用いて、光学装置120,320,520(具体的には、導光板121,321を保護する保護部材(保護板)126,326あるいは半透過ミラー520)に固定されている。具体的には、調光装置700の第1基板701の外縁部と保護部材126の外縁部とは、接着剤708によって接着されている。調光装置700の第1基板701を導光板121と同形とした。即ち、調光装置700の大きさは、光学装置120,320,520と同じ大きさとした。但し、これに限定するものではなく、大きくてもよいし、小さくともよく、要は、調光装置700の射影像内に虚像形成領域(第2偏向手段140,340等)が位置すればよい。以下に説明する実施例においても同様である。調光装置700は、観察者20とは反対側の光学装置120,320,520の領域に配置されている。即ち、観察者側から、光学装置120、調光装置700の順に配されているが、調光装置700、光学装置120,320の順に配してもよい。調光装置700にコネクタ(図示せず)を取り付け、調光装置700の遮光率を制御するための制御回路(具体的には、制御装置18)にこのコネクタ及び配線を介して調光装置700を電気的に接続する。
保護部材(保護板)126,326は、接着部材127,327によって導光板121,321の第2面123,323に接着されており、保護部材(保護板)126,326によって、第1偏向手段130,330及び第2偏向手段140,340は被覆されている。
場合によっては、図6に示すように、保護部材126を省略し、調光装置700の第1基板701が保護部材126を兼ねる構成としてもよく、これによって、表示装置全体の重量の減少を図ることができ、表示装置の使用者に不快感を感じさせる虞が無い。また、第2基板703を第1基板701よりも薄くすることができる。以下の実施例においても同様とすることができる。
実施例1あるいは後述する実施例2〜実施例12において、調光装置700は、模式的な断面図を図4Aに示し、模式的な平面図を図4Bに示すように、
第1基板701、
第1基板701と対向する第2基板703、
第2基板703と対向する第1基板701の対向面に設けられた第1透明電極702、
第1基板701と対向する第2基板703の対向面に設けられた第2透明電極704、及び、
第1透明電極702と第2透明電極704とによって挟まれた調光層705、
から成る。そして、
第1透明電極702は、第1の方向に延びる複数の帯状の第1透明電極セグメント702Aから構成されており、
第2透明電極704は、第1の方向とは異なる第2の方向に延びる複数の帯状の第2透明電極セグメント704Aから構成されており、
第1透明電極セグメント702Aと第2透明電極セグメント704Aの重複領域(調光装置の遮光率が変化する最小単位領域709)に対応する調光装置の部分の遮光率の制御は、第1透明電極セグメント702A及び第2透明電極セグメント704Aに印加する電圧の制御に基づき行われる。即ち、遮光率の制御を単純マトリクス方式に基づき行われる。第1の方向と第2の方向とは直交しており、具体的には、第1の方向は横方向(X軸方向)に延び、第2の方向は縦方向(Y軸方向)に延びる。
第1基板701及び第2基板703はプラスチック材料から成る。また、第1透明電極702及び第2透明電極704は、インジウム−スズ複合酸化物(ITO)から構成された透明電極から成り、スパッタリング法といったPVD法とリフトオフ法との組合せに基づき形成されている。第2透明電極704と第2基板703の間には、SiN層、SiO2層、Al2O3層、TiO2層あるいはこれらの積層膜から成る保護層706が形成されている。保護層706を形成することで、イオンの行き来を阻止するイオン遮断性、防水性、防湿性及び耐傷性を調光装置700に付与することができる。また、第1基板701と第2基板703とは、外縁部において、紫外線硬化型エポキシ樹脂や、紫外線と熱とによって硬化するエポキシ樹脂といった紫外線硬化型樹脂、熱硬化型樹脂から成る封止部材707によって封止されている。第1透明電極702及び第2透明電極704は、図示しないコネクタ、配線を介して制御装置18に接続されている。
調光装置700の遮光率(光透過率)は、第1透明電極702及び第2透明電極704に印加する電圧によって制御することができる。具体的には、例えば、第1透明電極702を接地した状態で、第2透明電極704に電圧を印加すると、調光層705の遮光率が変化する。第1透明電極702と第2透明電極704との間の電位差を制御してもよいし、第1透明電極702に印加する電圧と第2透明電極704に印加する電圧とを独立に制御してもよい。
尚、調光装置700における虚像形成領域(第2偏向手段140,340)の横方向の画素数をM0、縦方向の画素数をN0としたとき、調光装置700の遮光率が変化する最小単位領域709の数M1×N1は、例えば、M0=M1,N0=N1である。但し、これに限定するものではなく、M1/M0=k,N1/N0=k’としたとき(但し、k,k’は正の整数)、1.1≦k、好ましくは1.1≦k≦1.5、より好ましくは1.15≦k≦1.3、1.1≦k’、好ましくは1.1≦k’≦1.5、より好ましくは1.15≦k’≦1.3を満足する形態とすることができる。kの値とk’の値とは、同じであってもよいし、異なっていてもよく、実施例においては、k=k’=1とした。
実施例1あるいは後述する実施例2〜実施例9において、調光装置700は、エレクトロクロミック材料の酸化還元反応によって発生する物質の色変化を応用した光シャッタから成る。具体的には、調光層はエレクトロクロミック材料を含む。より具体的には、調光層は、第2透明電極側から、WO3層705A/Ta2O5層705B/IrXSn1-XO層705Cの積層構造を有する。WO3層705Aは還元発色する。また、Ta2O5層705Bは固体電解質を構成し、IrXSn1-XO層705Cは酸化発色する。
IrXSn1-XO層中では、IrとH2Oとが反応して、水酸化イリジウムIr(OH)nとして存在する。第2透明電極704に負の電位を、第1透明電極702に正の電位を加えると、IrXSn1-XO層からTa2O5層へのプロトンH+の移動、第1透明電極702への電子放出が生じ、次の酸化反応が進んで、IrXSn1-XO層は着色する。
Ir(OH)n → IrOX(OH)n-X(着色) + X・H+ + X・e-
一方、Ta2O5層中のプロトンH+がWO3層中へ移動し、第2透明電極704から電子がWO3層に注入され、WO3層では、次の還元反応が進んでWO3層は着色する。
WO3 + X・H+ + X・e- → HXWO3(着色)
これとは逆に、第2透明電極704に正の電位を、第1透明電極702に負の電位を加えると、IrXSn1-XO層では、上記と逆向きに還元反応が進み、消色し、WO3層では、上記と逆向きに酸化反応が進み、消色する。尚、Ta2O5層にはH2Oが含まれており、第1透明電極、第2透明電極に電圧を印加することで電離し、プロトンH+、OH-イオンの状態が含まれ、着色反応及び消色反応に寄与している。
実施例1あるいは後述する実施例2〜実施例12において、例えば、図7に示すような外界を、遮光率の低い状態の調光装置700及び光学装置120,320,520を通して観察者が眺めていたとする。そして、観察者は、例えば、「駅にどうやって行けばよいか」の情報の入手を欲したとする。
この場合、画像表示装置100,200,300,400,500において表示する画像に関する情報やデータ、あるいは又、受信装置が受け取るべき信号は、例えば、所謂クラウドコンピュータやサーバーに記録、保管、保存されており、表示装置が通信手段(送受信装置)、例えば、携帯電話機やスマートフォンを備えることによって、あるいは又、制御装置(制御回路、制御手段)18に通信手段(受信装置)を組み込むことで、通信手段を介してクラウドコンピュータやサーバーと表示装置との間での各種情報やデータ、信号の授受、交換を行うことができるし、各種情報やデータに基づく信号、即ち、画像表示装置100,200,300,400,500において画像を表示するための信号を受け取ることができるし、受信装置は信号を受け取ることができる。
具体的には、観察者が、携帯電話機やスマートフォンに、入手すべき情報としての「駅に関する情報」を要求する旨の入力を行うと、携帯電話機やスマートフォンは、クラウドコンピュータやサーバーにアクセスし、「駅に関する情報」をクラウドコンピュータやサーバーから入手する。こうして、制御装置18は、画像表示装置100,200,300,400,500において画像を表示するための信号を受け取る。制御装置18にあっては、この信号に基づいて周知の画像処理を行い、画像形成装置111,211に「駅に関する情報」を画像として表示する。この「駅に関する情報」を画像は、光学装置120,320,520において、画像形成装置111,211から出射される光に基づき、制御装置18によって制御された所定の位置に虚像として表示される。即ち、虚像形成領域(第2偏向手段140,340)の一部分において虚像が形成される。そして、調光装置700への虚像の投影像が含まれる調光装置700の虚像投影領域711の遮光率が、調光装置700の他の領域712の遮光率よりも高くなるように、調光装置700が制御される(図8B参照)。具体的には、制御装置18によって、第1透明電極702及び第2透明電極704に印加される電圧を制御する。ここで、画像形成装置111,211において画像を表示するための信号に基づき、調光装置700の虚像投影領域711の大きさ及び位置が決定される。
場合によっては、画像表示装置100,200,300,400,500において画像を表示するための信号が、表示装置(具体的には、制御装置18、より具体的には、画像情報記憶装置18A)に記憶されていてもよい。
あるいは又、表示装置に備えられた撮像装置17によって撮像された画像を通信手段を介してクラウドコンピュータやサーバーに送出し、クラウドコンピュータやサーバーにおいて撮像装置17によって撮像された画像に該当する各種情報やデータを検索し、検索された各種情報やデータを通信手段を介して表示装置に送出し、検索された各種情報やデータを画像表示装置100,200,300,400,500において画像を表示してもよい。また、このような形態と「駅に関する情報」の入力を併用すれば、例えば、観察者のいる場所等や観察者がどの方向を向いているか等の情報を加重することができるので、一層高い精度で、「駅に関する情報」を画像形成装置111,211において表示することができる。
画像形成装置111,211から出射された光に基づき光学装置120,320,520に虚像が形成される(図8B参照)前に、調光装置700の虚像投影領域711の遮光率が増加される(図8A参照)形態を採用してもよい。調光装置700の虚像投影領域711の遮光率が増加されてから虚像が形成されるまでの時間として、0.5秒乃至30秒を例示することができるが、この値に限定するものではない。調光装置700の虚像投影領域711の遮光率は、時間の経過に従い、順次、増加する形態とすることができる。
画像形成装置111,211から出射された光に基づき光学装置120,320,520に一の虚像が形成され、次いで、一の虚像と異なる次の虚像が形成される場合を想定する。この場合、一の虚像に対応する調光装置700の虚像投影領域711の面積をS1、次の虚像に対応する調光装置700の虚像投影領域711の面積をS2としたとき、
S2/S1<0.8、又は、1<S2/S1の場合、次の虚像が形成される調光装置700の虚像投影領域711は、調光装置700への次の虚像の投影像が含まれる調光装置700の領域であり(図9A、図9B及び図9C参照)、
0.8≦S2/S1≦1の場合、次の虚像が形成される調光装置700の虚像投影領域711は、調光装置700への一の虚像の投影像が含まれた調光装置700の領域である形態とすることができる。即ち、一の虚像の形成から次の虚像の形成において、虚像投影領域の面積が0%減乃至20%減の場合には、一の虚像に対応した虚像投影領域を保持する形態とすることができる(即ち、図9Aに示した状態のままとする)。
また、図10に示すように、光学装置120,320,520に形成される虚像に外接する仮想矩形140A,340Aを想定したとき、調光装置700の虚像投影領域711は、仮想矩形140A,340Aよりも大きい構成とすることができる。そして、この場合、光学装置120,320,520に形成される虚像に外接する仮想矩形140A,340Aの横方向及び縦方向の長さをL1-T及びL1-Lとし、調光装置700の虚像投影領域711の形状を、横方向及び縦方向の長さがL2-T及びL2-Lの矩形形状としたとき、
1.0≦L2-T/L1-T≦1.5
1.0≦L2-L/L1-L≦1.5
を満足することが好ましい。尚、図10においては、虚像として、「ABCD」が形成されている状態を示す。
調光装置700は、常時、動作状態にあってもよいし、観察者の指示(操作)によって動作/不動作(オン/オフ)状態が規定されてもよいし、通常は不動作状態にあり、画像表示装置100,200,300,400,500において画像を表示するための信号に基づき、動作を開始してもよい。観察者の指示(操作)によって動作/不動作状態を規定するためには、例えば、表示装置はマイクロフォンを更に備えており、マイクロフォンを介した音声入力によって、調光装置700の動作の制御を行えばよい。具体的には、観察者の肉声に基づく指示によって、調光装置700の動作/不動作の切替えを制御すればよい。あるいは又、入手すべき情報を音声入力によって入力してもよい。あるいは又、表示装置は、赤外線入出射装置を更に備えており、赤外線入出射装置によって、調光装置700の動作の制御を行えばよい。具体的には、赤外線入出射装置によって、観察者の瞬きを検出することで、調光装置700の動作/不動作の切替えを制御すればよい。
以上のとおり、実施例1の表示装置にあっては、画像形成装置から出射される光に基づき虚像形成領域の一部分において虚像が形成されるとき、調光装置への虚像の投影像が含まれる調光装置の虚像投影領域の遮光率が調光装置の他の領域の遮光率よりも高くなるように調光装置が制御されるので、観察者が観察する虚像に高いコントラストを与えることができ、しかも、高遮光率の領域が調光装置全体ではなく、調光装置への虚像の投影像が含まれる調光装置の虚像投影領域といった狭い領域のみが高遮光率の領域となるので、表示装置を使用する観察者は外部環境を、確実に、且つ、安全に認識することができる。
実施例2は、実施例1の変形である。実施例2の表示装置(頭部装着型ディスプレイ)における画像表示装置200の概念図を図11に示すように、実施例2において、光学装置は第1−A構造の光学装置であるが、画像形成装置211は第2構成の画像形成装置から構成されている。即ち、光源251、及び、光源251から出射された平行光を走査する走査手段253を備えている。より具体的には、画像形成装置211は、
光源251、
光源251から出射された光を平行光とするコリメート光学系252、
コリメート光学系252から出射された平行光を走査する走査手段253、及び、
走査手段253によって走査された平行光をリレーし、出射するリレー光学系254、
から構成されている。尚、画像形成装置211全体が筐体213(図11では、一点鎖線で示す)内に納められており、係る筐体213には開口部(図示せず)が設けられており、開口部を介してリレー光学系254から光が出射される。そして、各筐体213が、取付け部材19によって、着脱自在に、テンプル部13に取り付けられている。
光源251は、白色を発光する発光素子から構成されている。そして、光源251から出射された光は、全体として正の光学的パワーを持つコリメート光学系252に入射し、平行光として出射される。そして、この平行光は、全反射ミラー256で反射され、マイクロミラーを二次元方向に回転自在とし、入射した平行光を2次元的に走査することができるMEMSから成る走査手段253によって水平走査及び垂直走査が行われ、一種の2次元画像化され、仮想の画素(画素数は、例えば、実施例1と同じとすることができる)が生成される。そして、仮想の画素からの光は、周知のリレー光学系から構成されたリレー光学系(平行光出射光学系)254を通過し、平行光とされた光束が光学装置120に入射する。
リレー光学系254にて平行光とされた光束が入射され、導光され、出射される光学装置120は、実施例1にて説明した光学装置と同じ構成、構造を有するので、詳細な説明は省略する。また、実施例2の表示装置も、上述したとおり、画像形成装置211が異なる点を除き、実質的に、実施例1の表示装置と同じ構成、構造を有するので、詳細な説明は省略する。
実施例3も実施例1の変形である。実施例3の表示装置(頭部装着型ディスプレイ)における画像表示装置300の概念図を図12に示す。また、反射型体積ホログラム回折格子の一部を拡大して示す模式的な断面図を図13に示す。実施例3において、画像形成装置111は、実施例1と同様に、第1構成の画像形成装置から構成されている。また、光学装置320は、第1偏向手段及び第2偏向手段の構成、構造が異なる点を除き、基本的な構成、構造は、実施例1の光学装置120と同じであり、第1−B構造の光学装置から成る。
実施例3において、第1偏向手段及び第2偏向手段は、導光板321の表面(具体的には、導光板321の第2面323)に配設されている。そして、第1偏向手段は、導光板321に入射された光を回折反射し、第2偏向手段は、導光板321の内部を全反射により伝播した光を、複数回に亙り、回折反射する。ここで、第1偏向手段及び第2偏向手段は、回折格子素子、具体的には反射型回折格子素子、より具体的には反射型体積ホログラム回折格子から成る。以下の説明において、反射型体積ホログラム回折格子から成る第1偏向手段を、便宜上、『第1回折格子部材330』と呼び、反射型体積ホログラム回折格子から成る第2偏向手段を、便宜上、『第2回折格子部材340』と呼ぶ。
そして、実施例3あるいは後述する実施例4において、第1回折格子部材330及び第2回折格子部材340は、1層の回折格子層が積層されて成る構成を有する。尚、フォトポリマー材料から成る各回折格子層には、1種類の波長帯域(あるいは、波長)に対応する干渉縞が形成されており、従来の方法で作製されている。回折格子層(回折光学素子)に形成された干渉縞のピッチは一定であり、干渉縞は直線状であり、Y軸に平行である。尚、第1回折格子部材330及び第2回折格子部材340の軸線はX軸と平行であり、法線はZ軸と平行である。
図13に反射型体積ホログラム回折格子の拡大した模式的な一部断面図を示す。反射型体積ホログラム回折格子には、傾斜角(スラント角)φを有する干渉縞が形成されている。ここで、傾斜角φとは、反射型体積ホログラム回折格子の表面と干渉縞の成す角度を指す。干渉縞は、反射型体積ホログラム回折格子の内部から表面に亙り、形成されている。干渉縞は、ブラッグ条件を満たしている。ここで、ブラッグ条件とは、以下の式(A)を満足する条件を指す。式(A)中、mは正の整数、λは波長、dは格子面のピッチ(干渉縞を含む仮想平面の法線方向の間隔)、Θは干渉縞へ入射する角度の余角を意味する。また、入射角ψにて回折格子部材に光が侵入した場合の、Θ、傾斜角φ、入射角ψの関係は、式(B)のとおりである。
m・λ=2・d・sin(Θ) (A)
Θ=90°−(φ+ψ) (B)
第1回折格子部材330は、上述したとおり、導光板321の第2面323に配設(接着)されており、第1面322から導光板321に入射されたこの平行光が導光板321の内部で全反射されるように、導光板321に入射されたこの平行光を回折反射する。更には、第2回折格子部材340は、上述したとおり、導光板321の第2面323に配設(接着)されており、導光板321の内部を全反射により伝播したこの平行光を、複数回、回折反射し、導光板321から平行光のまま第1面322から出射する。
そして、導光板321にあっても、平行光が内部を全反射により伝播した後、出射される。このとき、導光板321が薄く導光板321の内部を進行する光路が長いため、各画角によって第2回折格子部材340に至るまでの全反射回数は異なっている。より詳細に述べれば、導光板321に入射する平行光のうち、第2回折格子部材340に近づく方向の角度をもって入射する平行光の反射回数は、第2回折格子部材340から離れる方向の角度をもって導光板321に入射する平行光の反射回数よりも少ない。これは、第1回折格子部材330において回折反射される平行光であって、第2回折格子部材340に近づく方向の角度をもって導光板321に入射する平行光の方が、これと逆方向の角度をもって導光板321に入射する平行光よりも、導光板321の内部を伝播していく光が導光板321の内面と衝突するときの導光板321の法線と成す角度が小さくなるからである。また、第2回折格子部材340の内部に形成された干渉縞の形状と、第1回折格子部材330の内部に形成された干渉縞の形状とは、導光板321の軸線に垂直な仮想平面に対して対称な関係にある。第1回折格子部材330及び第2回折格子部材340の導光板321とは対向していない面は、保護部材(保護板)326で覆われており、第1回折格子部材330及び第2回折格子部材340に損傷が生じることを防止している。尚、導光板321と保護部材326とは、外周部において、接着部材327によって接着されている。また、第1面322に透明な保護フィルムを貼り合わせ、導光板321を保護してもよい。
後述する実施例4における導光板321も、基本的には、以上に説明した導光板321の構成、構造と同じ構成、構造を有する。
実施例3の表示装置は、上述したとおり、光学装置320が異なる点を除き、実質的に、実施例1の表示装置と同じ構成、構造を有するので、詳細な説明は省略する。
実施例4は、実施例3の変形である。実施例4の表示装置(頭部装着型ディスプレイ)における画像表示装置の概念図を図14に示す。実施例4の画像表示装置400における光源251、コリメート光学系252、走査手段253、平行光出射光学系(リレー光学系254)等は、実施例2と同じ構成、構造(第2構成の画像形成装置)を有する。また、実施例4における光学装置320は、実施例3における光学装置320と同じ構成、構造(第1−B構造の光学装置)を有する。実施例4の表示装置は、以上の相違点を除き、実質的に、実施例2の表示装置と同じ構成、構造を有するので、詳細な説明は省略する。
実施例5も、実施例1〜実施例4における画像表示装置の変形である。実施例5の表示装置を正面から眺めた模式図を図15に示し、上方から眺めた模式図を図16に示す。
実施例5において、画像表示装置500を構成する光学装置520は、画像形成装置111A,111Bから出射された光が入射され、観察者20の瞳21に向かって出射される半透過ミラーから構成されている。尚、実施例5にあっては、画像形成装置111A,111Bから出射された光は、ガラス板やプラスチック板等の透明な部材521の内部を伝播して光学装置520(半透過ミラー)に入射する構造としているが、空気中を伝播して光学装置520に入射する構造としてもよい。また、画像形成装置は、実施例2において説明した画像形成装置211とすることもできる。
各画像形成装置111A,111Bは、フロント部11に、例えば、ビスを用いて取り付けられている。また、部材521が各画像形成装置111A,111Bに取り付けられ、光学装置520(半透過ミラー)が部材521に取り付けられ、調光装置700が光学装置520(半透過ミラー)に取り付けられている。実施例5の表示装置は、以上の相違点を除き、実質的に、実施例1〜実施例4の表示装置と同じ構成、構造を有するので、詳細な説明は省略する。
実施例6も、実施例1〜実施例4における画像表示装置の変形であるが、第2構造の光学装置、第2構成の画像形成装置に関する。実施例6の表示装置を上方から眺めた模式図を図17に示す。尚、図17において撮像装置17の図示は省略した。
実施例6において、画像表示装置500を構成する光学装置520は、光源251A,251Bから出射された光が入射され、観察者20の瞳21に向かって出射される半透過ミラー530A,530Bから構成されている。尚、実施例6において、筐体213内に配置された光源251から出射された光は、図示しない光ファイバの内部を伝播して、例えば、ノーズパッド近傍のフレーム10の部分11’に取り付けられた走査手段253に入射し、走査手段253によって走査された光は半透過ミラー530A,530Bに入射する。あるいは又、筐体213内に配置された光源251A,251Bから出射された光は、図示しない光ファイバの内部を伝播して、例えば、両眼のそれぞれに対応するフレーム10の部分の上方に取り付けられた走査手段253に入射し、走査手段253によって走査された光は半透過ミラー530A,530Bに入射する。あるいは又、筐体213内に配置された光源251A,251Bから出射され、筐体213内に配置された走査手段253に入射し、走査手段253によって走査された光は、半透過ミラー530A,530Bに、直接、入射する。そして、半透過ミラー530A,530Bによって反射された光が観察者の瞳に入射する。画像形成装置は、実質的に、実施例2において説明した画像形成装置211とすることができる。実施例6の表示装置は、以上の相違点を除き、実質的に、実施例1〜実施例4の表示装置と同じ構成、構造を有するので、詳細な説明は省略する。
実施例7は、実施例1の変形である。実施例7の表示装置を上方から眺めた模式図を図18Aに示す。また、照度センサを制御する回路の模式図を図18Bに示す。
実施例7の表示装置は、表示装置の置かれた環境の照度を測定する照度センサ(環境照度測定センサ)721を更に備えており、照度センサ(環境照度測定センサ)721の測定結果に基づき、調光装置700の遮光率を制御する。併せて、あるいは、独立して、照度センサ(環境照度測定センサ)721の測定結果に基づき、画像形成装置111,211によって形成される画像の輝度を制御する。周知の構成、構造を有する環境照度測定センサ721は、例えば、光学装置120,320の外側端部や、調光装置700の外側端部に配置すればよい。環境照度測定センサ721は、図示しないコネクタ及び配線を介して制御装置18に接続されている。制御装置18には、環境照度測定センサ721を制御する回路が含まれる。この環境照度測定センサ721を制御する回路は、環境照度測定センサ721からの測定値を受け取り、照度を求める照度演算回路、照度演算回路によって求められた照度の値を標準値の比較する比較演算回路、比較演算回路によって求められた値に基づき、調光装置700及び/又は画像形成装置111,211を制御する環境照度測定センサ制御回路から構成されているが、これらの回路は周知の回路から構成することができる。調光装置700の制御にあっては、調光装置700の遮光率の制御を行い、一方、画像形成装置111,211の制御にあっては、画像形成装置111,211によって形成される画像の輝度の制御を行う。尚、調光装置700における遮光率の制御と画像形成装置111,211における画像の輝度の制御は、それぞれ、独立して行ってもよいし、相関を付けて行ってもよい。
例えば、照度センサ(環境照度測定センサ)721の測定結果が所定値(第1の照度測定値)以上になったとき、調光装置700の遮光率を所定の値(第1の遮光率)以上とする。一方、照度センサ(環境照度測定センサ)721の測定結果が所定値(第2の照度測定値)以下になったとき、調光装置700の遮光率を所定の値(第2の遮光率)以下とする。ここで、第1の照度測定値として10ルクスを挙げることができるし、第1の遮光率として99%乃至70%のいずれかの値を挙げることができるし、第2の照度測定値として0.01ルクスを挙げることができるし、第2の遮光率として49%乃至1%のいずれかの値を挙げることができる。
尚、実施例7における照度センサ(環境照度測定センサ)721を、実施例2〜実施例6において説明した表示装置に適用することができる。また、表示装置が撮像装置17を備えている場合、撮像装置17に備えられた露出測定用の受光素子から照度センサ(環境照度測定センサ)721を構成することもできる。
実施例7あるいは次に述べる実施例8の表示装置にあっては、照度センサ(環境照度測定センサ)の測定結果に基づき、調光装置の遮光率を制御し、また、照度センサ(環境照度測定センサ)の測定結果に基づき、画像形成装置によって形成される画像の輝度を制御し、また、第2の照度センサ(透過光照度測定センサ)の測定結果に基づき、調光装置の遮光率を制御し、また、第2の照度センサ(透過光照度測定センサ)の測定結果に基づき、画像形成装置によって形成される画像の輝度を制御するので、観察者が観察する虚像に高いコントラストを与えることができるだけでなく、表示装置の置かれた周囲の環境の照度に依存して虚像の観察状態の最適化を図ることができる。
実施例8も、実施例1の変形である。実施例8の表示装置を上方から眺めた模式図を図19Aに示す。また、第2の照度センサを制御する回路の模式図を図19Bに示す。
実施例8の表示装置は、外部環境から調光装置を透過した光に基づく照度を測定する、即ち、環境光が調光装置を透過して所望の照度まで調整されて入射しているかを測定する第2の照度センサ(透過光照度測定センサ)722を更に備えており、第2の照度センサ(透過光照度測定センサ)722の測定結果に基づき、調光装置700の遮光率を制御する。併せて、あるいは、独立して、また、第2の照度センサ(透過光照度測定センサ)722の測定結果に基づき、画像形成装置111,211によって形成される画像の輝度を制御する。周知の構成、構造を有する透過光照度測定センサ722は、光学装置120,320,520よりも観察者側に配置されている。具体的には、透過光照度測定センサ722は、例えば、筐体113,213の内側面や、導光板121,321の観察者側の面に配置すればよい。透過光照度測定センサ722は、図示しないコネクタ及び配線を介して制御装置18に接続されている。制御装置18には、透過光照度測定センサ722を制御する回路が含まれる。この透過光照度測定センサ722を制御する回路は、透過光照度測定センサ722からの測定値を受け取り、照度を求める照度演算回路、照度演算回路によって求められた照度の値を標準値の比較する比較演算回路、比較演算回路によって求められた値に基づき、調光装置700及び/又は画像形成装置111,211を制御する透過光照度測定センサ制御回路から構成されているが、これらの回路は周知の回路から構成することができる。調光装置700の制御において、調光装置700の遮光率の制御を行い、一方、画像形成装置111,211の制御において、画像形成装置111,211によって形成される画像の輝度の制御を行う。尚、調光装置700における遮光率の制御と画像形成装置111,211における画像の輝度の制御は、それぞれ、独立して行ってもよいし、相関を付けて行ってもよい。更に、透過光照度測定センサ722の測定結果が環境照度測定センサ721の照度から鑑みて所望の照度まで制御できていない場合、即ち、透過光照度測定センサ722の測定結果が所望の照度になっていない場合、若しくは、更に一層の微妙な照度調整が望まれる場合には、透過光照度測定センサ722の値をモニターしながら調光装置の遮光率を調整すればよい。第2の照度センサ(透過光照度測定センサ)を、少なくとも2つ、配置し、高遮光率の部分を通過した光に基づく照度の測定、低遮光率の部分を通過した光に基づく照度の測定を行ってもよい。
尚、実施例8における第2の照度センサ(透過光照度測定センサ)722を、実施例2〜実施例6において説明した表示装置に適用することができる。あるいは又、実施例8における第2の照度センサ(透過光照度測定センサ)722と実施例7における照度センサ(環境照度測定センサ)721とを組み合わせてもよく、この場合、種々の試験を行い、調光装置700における遮光率の制御と画像形成装置111,211における画像の輝度の制御を、それぞれ、独立して行ってもよいし、相関を付けて行ってもよい。右眼用の調光装置と左眼用の調光装置のそれぞれにおいて、第1透明電極及び第2透明電極に印加する電圧を調整することで、右眼用の調光装置における遮光率及び左眼用の調光装置における遮光率の均等化を図ることができる。第1透明電極と第2透明電極との間の電位差を制御してもよいし、第1透明電極に印加する電圧と第2透明電極に印加する電圧とを独立に制御してもよい。右眼用の調光装置における遮光率及び左眼用の調光装置における遮光率は、例えば、第2の照度センサ(透過光照度測定センサ)722の測定結果に基づき、制御することができるし、あるいは又、観察者が、右眼用の調光装置及び光学装置を通過した光の明るさ及び左眼用の調光装置及び光学装置を通過した光の明るさを観察し、観察者が、スイッチやボタン、ダイアル、スライダ、ノブ等を操作することで手動にて制御、調整することもできる。
実施例9は、実施例1〜実施例8の変形である。画像表示装置の概念図を図20に示し、表示装置を上方から眺めた模式図を図21に示し、側方から眺めた模式図を図22に示すように、実施例9の表示装置に遮光部材731を設けてもよい。具体的には、例えば、画像形成装置111A,111Bから出射された光が入射される光学装置120の領域、具体的には、第1偏向手段130が設けられた領域に、光学装置120への外光の入射を遮光する遮光部材731が配されている。ここで、遮光部材731の光学装置120への射影像内に、画像形成装置111A,111Bから出射された光が入射される光学装置120の領域が含まれる。また、遮光部材731の光学装置120への射影像内に、調光装置700の端部の光学装置120への射影像が含まれる。遮光部材731は、光学装置120の画像形成装置111A,111Bが配された側とは反対側に、光学装置120と離間して配されている。遮光部材731は、例えば、不透明なプラスチック材料から作製されており、遮光部材731は、画像形成装置111A,111Bの筐体113から一体に延び、あるいは又、画像形成装置111A,111Bの筐体113に取り付けられ、あるいは又、フレーム10から一体に延び、あるいは又、フレーム10に取り付けられている。尚、図示した例では、遮光部材731は、画像形成装置111A,111Bの筐体113から一体に延びている。このように、画像形成装置から出射された光が入射される光学装置の領域には、光学装置への外光の入射を遮光する遮光部材が配されているので、調光装置の作動によって外光の入射光量に変化が生じても、そもそも、画像形成装置から出射された光が入射される光学装置の領域、具体的には、第1偏向手段130には外光が入射しないので、不所望の迷光等が発生し、表示装置における画像表示品質の低下を招くことが無い。尚、図示した例では、調光装置700の第1基板701の大きさを導光板121よりも小さくしたが、これに限定するものではない。
あるいは又、図23に示すように、遮光部材732は、画像形成装置111A,111Bが配された側とは反対側の光学装置120の部分に配されている。具体的には、不透明なインクを、光学装置120(具体的には、保護部材126の内面)に印刷することで、遮光部材732を形成することができる。尚、遮光部材731との遮光部材732とを組み合わせることもできる。遮光部材732を、保護部材126の外面に形成してもよい。
あるいは又、概念図を図24あるいは図25に示すように、遮光部材733は、調光装置700に配されている。具体的には、不透明なインクを、調光装置700に印刷することで、遮光部材733を形成することができる。尚、図24に示す例では、遮光部材733は、調光装置700の第1基板701の外面に形成されており、図25に示す例では、遮光部材733は、調光装置700の第1基板701の内面に形成されている。尚、遮光部材731と遮光部材733とを組み合わせることもできるし、遮光部材732と遮光部材733とを組み合わせることもできるし、遮光部材731と遮光部材732と遮光部材733とを組み合わせることもできる。
実施例10は、実施例1〜実施例9の変形であり、実施例10にあっては、調光層を電気泳動分散液から構成した。以下、電気泳動分散液の調製方法を説明する。
先ず、最初に、電気泳動粒子としてのカーボンブラック(三菱化学株式会社製#40)の10グラムを純水1リットルに加えて攪拌した後、37質量%の塩酸1cm3及び4−ビニルアニリン0.2グラムを加えて溶液−Aを調製した。一方、亜硝酸ナトリウム0.3グラムを純水10cm3に溶解させた後、40゜Cまで加熱して、溶液−Bを調製した。そして、溶液−Aに溶液−Bをゆっくり加えて、10時間攪拌した。その後、反応により得られた生成物を遠心分離して固形物を得た。次いで、固形物を純水で洗浄し、更に、アセトン中に分散させた後、遠心分離するといった方法で洗浄した。その後、固形物を、温度50゜Cの真空乾燥機で一晩乾燥させた。
次いで、窒素パージ装置、電磁攪拌棒及び還流カラムが取り付けられた反応フラスコ中に、固形物5グラムと、トルエン100cm3と、メタクリル酸2−エチルヘキシル15cm3と、アゾビスイソブチルニトリル(AIBN)0.2グラムとを入れて混合した。そして、攪拌しながら反応フラスコを窒素ガスで30分間パージした。その後、反応フラスコを油浴に投入し、連続攪拌しながら80゜Cまで徐々に加熱し、この状態を10時間維持した。その後、室温まで冷却し、固形物を遠心分離し、固形物をテトラヒドロフラン(THF)及び酢酸エチルと一緒に遠心分離するといった操作を3回行って固形物を洗浄した後、固形物を取り出して50゜Cの真空乾燥機で一晩乾燥した。これにより、茶色の電気泳動粒子4.7グラムを得た。
一方、絶縁性液体である分散液(分散媒)として、N,N−ジメチルプロパン−1,3−ジアミン、1,2−ヒドロキシオクタデカン酸及びメトキシスルホニルオキシメタン(日本ルーブリゾール株式会社製ソルスパース17000)を0.5%含むと共にソルビタントリオレエート(スパン85)を1.5%含むアイソパーG(エクソンモービル有限会社社製)溶液を準備した。そして、分散媒9.9グラムに電気泳動粒子0.1グラムを加えて、ビーズミルで5分間攪拌した。その後、混合液を遠心分離機(回転速度=2000rpm)で5分間、遠心分離した後、ビーズを取り除いた。こうして、電気泳動分散液を得ることができた。尚、電気泳動粒子は正に帯電している。
実施例10における調光装置700にあっては、厚さ0.5mmのガラスから成る第1基板701及び第2基板703の間の間隔を50μmとした。第1透明電極702及び第2透明電極704は、インジウム−スズ複合酸化物(ITO)から構成されており、スパッタリング法といったPVD法とリフトオフ法との組合せに基づき形成されている。第1透明電極702は、櫛形電極状にパターニングされている。一方、第2透明電極704はパターニングされておらず、所謂ベタ電極である。第1透明電極702及び第2透明電極704は、図示しないコネクタ、配線を介して制御装置18に接続されている。
調光装置700の遮光率(光透過率)は、第1透明電極702及び第2透明電極704に印加する電圧によって制御することができる。具体的には、第1透明電極702に相対的に正の電圧を印加し、第2透明電極704に相対的に負の電圧を印加すると、正に帯電している電気泳動粒子は第2透明電極704を覆うように泳動する。従って、調光装置700における遮光率は高い値となる。一方、これとは逆に、第1透明電極702に相対的に負の電圧を印加し、第2透明電極704に相対的に正の電圧を印加すると、電気泳動粒子は第1透明電極702を覆うように泳動する。従って、調光装置700における遮光率は低い値となる。第1透明電極702及び第2透明電極704に印加する電圧は制御装置18に設けられた制御ノブを観察者が操作することにより行うことができる。即ち、光学装置120,320からの虚像を観察者が観察し、調光装置700の遮光率を調整することで、虚像のコントラスト向上を図ればよい。
実施例11は、実施例10の変形である。実施例10にあっては、調光装置700によって着色される色を、黒色の固定色とした。一方、実施例11にあっては、調光装置を通過する光は、調光装置によって所望の色に着色され、しかも、調光装置によって着色される色は可変である。具体的には、調光装置は、赤色に着色される調光装置と、黄色に着色される調光装置と、青色に着色される調光装置とが積層されて成る。ここで、赤色に着色される調光装置における電気泳動分散液は、電気泳動粒子として、スチレン系樹脂とC.I.Pigment Red 122とをヘンシェルミキサーにより予備混合した後、二軸押出機で溶融混練し、冷却後、ハンマーミルを用いて粗粉砕し、次いで、ジェットミルを用いて微粉砕した粒子を、N,N−ジメチルプロパン−1,3−ジアミン、1,2−ヒドロキシオクタデカン酸及びメトキシスルホニルオキシメタン(日本ルーブリゾール株式会社製ソルスパース17000)を0.5%含むと共にソルビタントリオレエート(スパン85)を1.5%含むアイソパーG(エクソンモービル有限会社社製)溶液に分散させて得られた分散液から構成されている。また、黄色に着色される調光装置における電気泳動分散液は、電気泳動粒子として、スチレン系樹脂とC.I.Pigment Yellow 12とをヘンシェルミキサーにより予備混合した後、二軸押出機で溶融混練し、冷却後、ハンマーミルを用いて粗粉砕し、次いで、ジェットミルを用いて微粉砕した粒子を、N,N−ジメチルプロパン−1,3−ジアミン、1,2−ヒドロキシオクタデカン酸及びメトキシスルホニルオキシメタン(日本ルーブリゾール株式会社製ソルスパース17000)を0.5%含むと共にソルビタントリオレエート(スパン85)を1.5%含むアイソパーG(エクソンモービル有限会社社製)溶液に分散させて得られた分散液から構成されている。更には、青色に着色される調光装置における電気泳動分散液は、電気泳動粒子として、スチレン系樹脂とC.I.Pigment Blue 1とをヘンシェルミキサーにより予備混合した後、二軸押出機で溶融混練し、冷却後、ハンマーミルを用いて粗粉砕し、次いで、ジェットミルを用いて微粉砕した粒子を、N,N−ジメチルプロパン−1,3−ジアミン、1,2−ヒドロキシオクタデカン酸及びメトキシスルホニルオキシメタン(日本ルーブリゾール株式会社製ソルスパース17000)を0.5%含むと共にソルビタントリオレエート(スパン85)を1.5%含むアイソパーG(エクソンモービル有限会社社製)溶液に分散させて得られた分散液から構成されている。そして、各調光装置における電極への電圧の印加を制御することで、3層の調光装置から出射される外光に所望の色を着色することができる。
以上の点を除き、実施例11の表示装置の構成、構造は、実施例10において説明した表示装置の構成、構造と同様とすることができるので、詳細な説明は省略する。
実施例12は、本開示の表示装置の初期設定方法に関する。実施例12における表示装置として、実施例1〜実施例11において説明した表示装置を用いる。即ち、実施例12の表示装置の初期設定方法は、例えば、実施例1〜実施例5において説明した表示装置に基づいて説明すると、
(A)観察者20の頭部に装着されるフレーム10(例えば、眼鏡型のフレーム10)、
(B)フレーム10に取り付けられた画像表示装置100,200,300,400,500、及び、
(C)外部から入射する外光の光量を調整する調光装置700、
を備えた表示装置であって、
画像表示装置100,200,300,400,500は、
(a)画像形成装置111,211、及び、
(b)画像形成装置111,211から出射される光に基づき虚像が形成される虚像形成領域を有する光学装置120,320,520、
を備えており、
光学装置120,320,520の虚像形成領域は調光装置700と重なっており、
画像形成装置111,211から出射される光に基づき虚像形成領域の一部分において虚像が形成されるとき、調光装置700への虚像の投影像が含まれる調光装置700の虚像投影領域711の遮光率が、調光装置700の他の領域712の遮光率よりも高くなるように、調光装置700が制御される表示装置の初期設定方法である。
例えば、表示装置を使用する観察者が代わった場合、調光装置700への虚像の投影像が含まれる調光装置700の虚像投影領域711の位置に変化が生じる(図26A参照)。それ故、実施例12の表示装置の初期設定方法に基づき、調光装置700への虚像の投影像が含まれる調光装置700の虚像投影領域711の位置の初期化を確実に行うことができる。
具体的には、画像形成装置111,211から出射されたテストパターンに基づきテストパターンの虚像(図26Aにおいて、左上から右下に向かうハッチング線で示す)を光学装置120,320,520の虚像形成領域(第2偏向手段140,340)に表示し、併せて、テストパターンの虚像に対応する調光装置700の領域711Aの遮光率を、調光装置700の他の領域712の遮光率よりも高い状態とする。ここで、図26Aにおいて、仮想の虚像形成面において形成される虚像の位置を「A」で示し、調光装置700の領域711Aが仮想の虚像形成面に投影されたとしたときの調光装置700の領域711Aの位置を「B」で示す。そして、観察者が観察したテストパターンの虚像と、観察者が観察した調光装置700の遮光率が高い領域711Aとが重なるように、テストパターンの虚像と調光装置700の遮光率が高い領域とを相対的に移動させる。即ち、虚像の位置「A」と調光装置700の領域711Aの位置「B」とが重なるように、テストパターンの虚像と調光装置700の遮光率が高い領域とを相対的に移動させる。
テストパターンは本質的に任意の形状を有するが、例えば、図26Bに示すように、光学装置120,320,520の虚像形成領域(第2偏向手段140,340)の中央部及び四隅に文字(図示した例では、文字「A」、「B」)を表示する。テストパターンの虚像と調光装置700の遮光率が高い領域711Aとを相対的に移動させる。具体的には、光学装置120,320,520におけるテストパターンの虚像の位置を画素単位で移動させるように、テストパターンの画像信号を処理する。あるいは又、調光装置700の遮光率が変化する最小単位領域709が移動するように、最小単位領域709の位置を変更する処理を行う。あるいは又、これらを組み合わせる。テストパターンの虚像と調光装置700の遮光率が高い領域711Aとを相対的に移動させるためには、観察者が手動にて行えばよい。具体的には、観察者がスイッチやボタン、ダイアル、スライダ、ノブ等を操作することで手動にて行うことができる。相対的な移動は、X軸方向への移動、後述するY軸方向への移動、回転移動、拡大、縮小、変形とすればよい。尚、図26Bに示した例においては、X軸方向への拡大を図ればよい。
尚、テストパターンの虚像と調光装置700の遮光率が高い領域711Aとを相対的に移動させたときの移動量を基準として、光学装置120,320,520における虚像の形成位置と調光装置700の虚像投影領域の位置との位置関係を補正すればよい。具体的には、光学装置120,320,520におけるテストパターンの虚像の位置を画素単位で移動させるようにテストパターンの画像信号を処理したときの画像信号処理量に基づき、あるいは、最小単位領域709を移動単位として調光装置700の遮光率が高い領域711Aを移動させる処理に基づき、あるいは、これらの処理の組合せに基づき、光学装置120,320,520における虚像の形成位置と調光装置700の虚像投影領域711の位置との位置関係を補正すればよい。
尚、このとき、併せて、観察者は、調光装置700の動作時の調光装置の他の領域712の遮光率を決定してもよい。また、併せて、調光装置700の動作時の調光装置の虚像投影領域711の遮光率を決定してもよい。また、光学装置120,320,520に形成される虚像に外接する仮想矩形140A,340Aを想定したとき、仮想矩形140A,340Aの横方向及び縦方向の長さをL1-T及びL1-Lとし、調光装置700の虚像投影領域711の形状を、横方向及び縦方向の長さがL2-T及びL2-Lの矩形形状としたとき、観察者は、併せて、L2-T/L1-Tの値及びL2-L/L1-Lを決定してもよい。
以上、本開示を好ましい実施例に基づき説明したが、本開示はこれらの実施例に限定するものではない。実施例において説明した表示装置(頭部装着型ディスプレイ)、画像表示装置の構成、構造は例示であり、適宜変更することができる。例えば、導光板に表面レリーフ型ホログラム(米国特許第20040062505A1参照)を配置してもよい。光学装置320にあっては、回折格子素子を透過型回折格子素子から構成することもできるし、あるいは又、第1偏向手段及び第2偏向手段の内のいずれか一方を反射型回折格子素子から構成し、他方を透過型回折格子素子から構成する形態とすることもできる。あるいは又、回折格子素子を、反射型ブレーズド回折格子素子とすることもできる。本開示の表示装置は、立体視ディスプレイ装置として用いることもできる。この場合、必要に応じて、光学装置に偏光板や偏光フィルムを着脱自在に取り付け、あるいは、光学装置に偏光板や偏光フィルムを貼り合わせればよい。
実施例においては、画像形成装置111,211は、単色(例えば、緑色)の画像を表示するとして説明したが、画像形成装置111,211はカラー画像を表示することもでき、この場合、光源を、例えば、赤色、緑色、青色のそれぞれを出射する光源から構成すればよい。具体的には、例えば、赤色発光素子、緑色発光素子、青色発光素子のそれぞれから出射された赤色光、緑色光及び青色光をライトパイプを用いて混色、輝度均一化を行うことで白色光を得ればよい。
フレームは、観察者の正面に配置されるフロント部、フロント部の両端に蝶番を介して回動自在に取り付けられた2つのテンプル部、及び、ノーズパッドを備えており;調光装置700はフロント部に配設されている形態とすることができる。また、光学装置は調光装置700に取り付けられている形態とすることができる。尚、光学装置は、密着した状態で調光装置700に取り付けられていてもよいし、隙間を開けた状態で調光装置700に取り付けられていてもよい。更には、これらの場合、前述したとおり、フロント部はリムを有し;調光装置700がリムに嵌め込まれている形態とすることができるし、あるいは又、第1基板701及び第2基板703の少なくとも一方がリムに嵌め込まれている形態とすることができるし、調光装置700及び導光板121,321がリムに嵌め込まれている形態とすることができるし、導光板121,321がリムに嵌め込まれている形態とすることができる。
調光層705を、液晶表示装置から成る光シャッタから構成することもできる。この場合、具体的には、調光層705を、例えば、TN(ツイステッド・ネマチック)型液晶材料やSTN(スーパー・ツイステッド・ネマチック)型液晶材料から成る液晶材料層から構成することができる。第1透明電極702及び第2透明電極704はパターニングされており、調光装置700の一部の領域712の遮光率(光透過率)を、他の領域の遮光率とは異なった状態に変化させることができる。あるいは又、第1透明電極702及び第2透明電極704のいずれか一方をパターニングされていない所謂ベタ電極とし、他方をパターニングし、他方をTFTに接続する。そして、調光装置700の遮光率が変化する最小単位領域709の遮光率の制御をTFTによって行う。即ち、遮光率の制御をアクティブマトリクス方式に基づき行ってもよい。アクティブマトリクス方式に基づく遮光率の制御は、実施例1〜実施例12において説明した調光装置700に適用することができることは云うまでもない。
また、エレクトロウェッティング現象によって遮光率(光透過率)を制御する光シャッタを用いることもできる。具体的には、第1透明電極及び第2透明電極を設け、第1透明電極と第2透明電極との間は、絶縁性の第1の液体、及び、導電性の第2の液体で満たされている構造とする。そして、第1透明電極と第2透明電極との間に電圧を印加することで、第1の液体と第2の液体によって形成される界面の形状が、例えば、平面状から湾曲した状態に変化することで、遮光率(光透過率)を制御することができる。あるいは又、金属(例えば、銀粒子)の可逆的な酸化還元反応によって発生する電着・解離現象に基づく電着方式(エレクトロデポジション・電界析出)を応用した光シャッタを用いることもできる。具体的には、有機溶剤中にAg+及びI-を溶解しておき、電極に適切な電圧を印加することで、Ag+を還元してAgを析出させることで、調光装置の遮光率(光透過率)を低くし、一方、Agを酸化してAg+として溶解させることで、調光装置の遮光率(光透過率)を高くする。
場合によっては、調光装置を通過する光を、調光装置によって所望の色に着色する構成とすることができ、この場合、調光装置によって着色される色を可変とすることができる。具体的には、例えば、赤色に着色される調光装置と、緑色に着色される調光装置と、青色に着色される調光装置とを積層すればよい。
光学装置の光が出射される領域に、調光装置が着脱自在に配設されていてもよい。このように、調光装置を着脱自在に配設するためには、例えば、透明なプラスチックから作製されたビスを用いて調光装置を光学装置に取り付け、調光装置の光透過率を制御するための制御回路(例えば、画像形成装置を制御するための制御装置18に含まれている)にコネクタ及び配線を介して接続すればよい。
実施例6において説明した第2構造の光学装置を構成する光学装置の変形例を上から眺めた模式図を、図27A及び図27Bに示す。尚、図27A、図27B、図28Aにおいては、調光装置の図示を省略している。
図27Aに示す例にあっては、光源601からの光が導光部材602に侵入し、導光部材602内に設けられた偏光ビームスプリッター603に衝突する。偏光ビームスプリッター603に衝突した光源601からの光の内、P偏光成分は偏光ビームスプリッター603を通過し、S偏光成分は、偏光ビームスプリッター603によって反射され、ライト・バルブとしてのLCOSから成る液晶表示装置(LCD)604に向かう。液晶表示装置(LCD)604によって画像が形成される。液晶表示装置(LCD)604によって反射された光の偏光成分はP偏光成分が占めるので、液晶表示装置(LCD)604によって反射された光は、偏光ビームスプリッター603,605を通過し、1/4波長板606を通過し、反射板607に衝突して反射され、1/4波長板606を通過し、偏光ビームスプリッター605に向かう。このときの光の偏光成分はS偏光成分が占めるので、偏光ビームスプリッター605によって反射され、観察者の瞳21へと向かう。以上のとおり、画像形成装置は、光源601及び液晶表示装置(LCD)604から構成され、光学装置は、導光部材602、偏光ビームスプリッター603,605、1/4波長板606及び反射板607から構成され、偏光ビームスプリッター605が光学装置の虚像形成領域に相当する。
図27Bに示す例にあっては、画像形成装置611からの光が導光部材612を進行し、半透過ミラー613に衝突し、一部の光が半透過ミラー613を通過し、反射板614に衝突して反射され、半透過ミラー613に再び衝突し、一部の光が半透過ミラー613によって反射され、観察者の瞳21へと向かう。光学装置は、以上のとおり、導光部材612、半透過ミラー613及び反射板614から構成されており、半透過ミラー613が光学装置の虚像形成領域に相当する。
あるいは又、実施例6の表示装置の別の変形例における光学装置を上から眺めた模式図及び横から眺めた模式図を、図28A及び図28Bに示す。この光学装置は、6面体のプリズム622及び凸レンズ625から構成されている。画像形成装置621から出射された光は、プリズム622に入射し、プリズム面623に衝突して反射され、プリズム622を進行し、プリズム面624に衝突して反射され、凸レンズ625を介して観察者の瞳21に到達する。プリズム面623とプリズム面624とは、向かい合う方向に傾斜が付けられており、プリズム622の平面形状は、台形、具体的には、等脚台形である。プリズム面623,624にはミラーコーティングが施されている。瞳21と対向するプリズム622の部分の厚さ(高さ)を、人間の平均的な瞳孔径である4mmより薄くすれば、観察者は、外界の像とプリズム622からの虚像とを重畳して見ることができる。
場合によっては、実施例3〜実施例4の表示装置の変形例における画像表示装置の概念図を図29に示すように、第1偏向手段330は、第1のホログラム回折格子331及び第2のホログラム回折格子332から構成されており、第2偏向手段340は、第3のホログラム回折格子341から構成されており、
第1のホログラム回折格子331は、内部に第1の干渉縞が形成されており、
第2のホログラム回折格子332は、内部に第2の干渉縞が形成されており、
第3のホログラム回折格子341は、内部に第3の干渉縞が形成されており、
φ1<φ3<φ2、及び、P1=P3=P2
の関係を満足する形態とすることができる。尚、これらのホログラム回折格子331,332,341は反射型体積ホログラム回折格子から成る。ここで、
φ1:第1の干渉縞のスラント角
φ2:第2の干渉縞のスラント角
φ3:第3の干渉縞のスラント角
P1:第1の干渉縞のピッチ
P2:第2の干渉縞のピッチ
P3:第3の干渉縞のピッチ
である。
あるいは又、
λ2<λ3<λ1
の関係を満足する形態とすることができる。
ここで、
λ1:導光板に入射され、第1のホログラム回折格子によって偏向される光のピーク波長
λ2:導光板に入射され、第2のホログラム回折格子によって偏向される光のピーク波長
λ3:第1のホログラム回折格子及び第2のホログラム回折格子によって偏向され、導光
板の内部を全反射により伝播し、第3のホログラム回折格子によって偏向される光
のピーク波長
である。
尚、本開示は、以下のような構成を取ることもできる。
[A01]《表示装置》
(A)観察者の頭部に装着されるフレーム、
(B)フレームに取り付けられた画像表示装置、及び、
(C)外部から入射する外光の光量を調整する調光装置、
を備えた表示装置であって、
画像表示装置は、
(a)画像形成装置、及び、
(b)画像形成装置から出射される光に基づき虚像が形成される虚像形成領域を有する光学装置、
を備えており、
光学装置の虚像形成領域は、調光装置と重なっており、
画像形成装置から出射される光に基づき、虚像形成領域の一部分において虚像が形成されるとき、調光装置への虚像の投影像が含まれる調光装置の虚像投影領域の遮光率が、調光装置の他の領域の遮光率よりも高くなるように、調光装置が制御される表示装置。
[A02]調光装置の動作時、調光装置の他の領域の遮光率は、調光装置への虚像の投影像が含まれる調光装置の虚像投影領域の遮光率を「1」としたとき、0.95以下である[A01]に記載の表示装置。
[A03]調光装置の動作時、調光装置の虚像投影領域の遮光率は、35%乃至99%である[A01]又は[A02]に記載の表示装置。
[A04]画像形成装置から出射された光に基づき光学装置に虚像が形成される前に、調光装置の虚像投影領域の遮光率が増加される[A01]乃至[A03]のいずれか1項に記載の表示装置。
[A05]画像形成装置から出射された光に基づき光学装置に一の虚像が形成され、次いで、一の虚像と異なる次の虚像が形成されるときであって、一の虚像に対応する調光装置の虚像投影領域の面積をS1、次の虚像に対応する調光装置の虚像投影領域の面積をS2としたとき、
S2/S1<0.8、又は、1<S2/S1の場合、次の虚像が形成される調光装置の虚像投影領域は、調光装置への次の虚像の投影像が含まれる調光装置の領域であり、
0.8≦S2/S1≦1の場合、次の虚像が形成される調光装置の虚像投影領域は、調光装置への一の虚像の投影像が含まれた調光装置の領域である[A01]乃至[A04]のいずれか1項に記載の表示装置。
[A06]光学装置に形成される虚像に外接する仮想矩形を想定したとき、調光装置の虚像投影領域は、仮想矩形よりも大きい[A01]乃至[A05]のいずれか1項に記載の表示装置。
[A07]光学装置に形成される虚像に外接する仮想矩形の横方向及び縦方向の長さをL1-T及びL1-Lとし、調光装置の虚像投影領域の形状を、横方向及び縦方向の長さがL2-T及びL2-Lの矩形形状としたとき、
1.0≦L2-T/L1-T≦1.5
1.0≦L2-L/L1-L≦1.5
を満足する[A06]に記載の表示装置。
[A08]調光装置は、
第1基板、
第1基板と対向する第2基板、
第2基板と対向する第1基板の対向面に設けられた第1透明電極、
第1基板と対向する第2基板の対向面に設けられた第2透明電極、及び、
第1透明電極と第2透明電極とによって挟まれた調光層、
から成る[A01]乃至[A07]のいずれか1項に記載の表示装置。
[A09]第1透明電極は、第1の方向に延びる複数の帯状の第1透明電極セグメントから構成されており、
第2透明電極は、第1の方向とは異なる第2の方向に延びる複数の帯状の第2透明電極セグメントから構成されており、
第1透明電極セグメントと第2透明電極セグメントの重複領域に対応する調光装置の部分の遮光率の制御は、第1透明電極セグメント及び第2透明電極セグメントに印加する電圧の制御に基づき行われる[A08]に記載の表示装置。
[B01]表示装置の置かれた環境の照度を測定する照度センサ(環境照度測定センサ)を更に備えており、
照度センサ(環境照度測定センサ)の測定結果に基づき、調光装置の遮光率を制御する[A01]乃至[A09]のいずれか1項に記載の表示装置。
[B02]表示装置の置かれた環境の照度を測定する照度センサ(環境照度測定センサ)を更に備えており、
照度センサ(環境照度測定センサ)の測定結果に基づき、画像形成装置によって形成される画像の輝度を制御する[A01]乃至[B01]のいずれか1項に記載の表示装置。
[B03]外部環境から調光装置を透過した光に基づく照度を測定する第2の照度センサ(透過光照度測定センサ)を更に備えており、
第2の照度センサ(透過光照度測定センサ)の測定結果に基づき、調光装置の遮光率を制御する[A01]乃至[B02]のいずれか1項に記載の表示装置。
[B04]外部環境から調光装置を透過した光に基づく照度を測定する第2の照度センサ(透過光照度測定センサ)を更に備えており、
第2の照度センサ(透過光照度測定センサ)の測定結果に基づき、画像形成装置によって形成される画像の輝度を制御する[A01]乃至[B03]のいずれか1項に記載の表示装置。
[B05]第2の照度センサ(透過光照度測定センサ)は、光学装置よりも観察者側に配置されている[B03]又は[B04]に記載の表示装置。
[B06]調光装置を通過する光は、調光装置によって所望の色に着色される[A01]乃至[B05]のいずれか1項に記載の表示装置。
[B07]調光装置によって着色される色は可変である[B06]に記載の表示装置。
[B08]調光装置によって着色される色は固定である[B06]に記載の表示装置。
[C01]《表示装置の初期設定方法》
(A)観察者の頭部に装着されるフレーム、
(B)フレームに取り付けられた画像表示装置、及び、
(C)外部から入射する外光の光量を調整する調光装置、
を備えた表示装置であって、
画像表示装置は、
(a)画像形成装置、及び、
(b)画像形成装置から出射される光に基づき虚像が形成される虚像形成領域を有する光学装置、
を備えており、
光学装置の虚像形成領域は、調光装置と重なっており、
画像形成装置から出射される光に基づき、虚像形成領域の一部分において虚像が形成されるとき、調光装置への虚像の投影像が含まれる調光装置の虚像投影領域の遮光率が、調光装置の他の領域の遮光率よりも高くなるように、調光装置が制御される表示装置の初期設定方法であって、
画像形成装置から出射されたテストパターンに基づきテストパターンの虚像を光学装置の虚像形成領域に表示し、併せて、テストパターンの虚像に対応する調光装置の領域の遮光率を、調光装置の他の領域の遮光率よりも高い状態とし、
観察者が観察したテストパターンの虚像と、観察者が観察した調光装置の遮光率が高い領域とが重なるように、テストパターンの虚像と調光装置の遮光率が高い領域とを相対的に移動させる、表示装置の初期設定方法。
[C02]テストパターンの虚像と調光装置の遮光率が高い領域とを相対的に移動させたときの移動量を基準として、光学装置における虚像の形成位置と調光装置の虚像投影領域の位置との位置関係を補正する[C01]に記載の表示装置の初期設定方法。
[C03]併せて、調光装置の動作時の調光装置の他の領域の遮光率を決定する[C01]又は[C02]に記載の表示装置の初期設定方法。
[C04]併せて、調光装置の動作時の調光装置の虚像投影領域の遮光率を決定する[C01]乃至[C03]のいずれか1項に記載の表示装置の初期設定方法。
[C05]光学装置に形成される虚像に外接する仮想矩形を想定したとき、仮想矩形の横方向及び縦方向の長さをL1-T及びL1-Lとし、調光装置の虚像投影領域の形状を、横方向及び縦方向の長さがL2-T及びL2-Lの矩形形状としたとき、併せて、L2-T/L1-Tの値及びL2-L/L1-Lを決定する[C01]乃至[C04]のいずれか1項に記載の表示装置の初期設定方法。