以下、本発明の好適な実施形態について説明する。なお、キャリアは、キャリア粒子の集合体(例えば粉体)である。トナーは、トナー粒子の集合体(例えば粉体)である。外添剤は、外添剤粒子の集合体(例えば粉体)である。粉体(より具体的には、キャリア粒子の粉体等)に関する評価結果(形状、物性等を示す値)は、何ら規定していなければ、粉体から粒子を相当数選び取って、それら粒子の各々について測定した値の個数平均である。
粉体の体積中位径(D50)の測定値は、何ら規定していなければ、レーザー回折/散乱式粒度分布測定装置(株式会社堀場製作所製「LA−950」)を用いて測定されたメディアン径である。
粉体の個数平均一次粒子径は、何ら規定していなければ、走査型電子顕微鏡を用いて測定した一次粒子の円相当径(ヘイウッド径:一次粒子の投影面積と同じ面積を有する円の直径)の個数平均値である。粉体の個数平均一次粒子径は、例えば100個の一次粒子の円相当径の個数平均値である。
帯電性は、何ら規定していなければ、摩擦帯電における帯電性を意味する。摩擦帯電における正帯電性の強さ(又は負帯電性の強さ)は、周知の帯電列などで確認できる。例えばトナーは、日本画像学会から提供される標準キャリア(負帯電性トナー用標準キャリア:N−01、正帯電性トナー用標準キャリア:P−01)と混ぜて攪拌することで、測定対象を摩擦帯電させる。摩擦帯電させる前と後とでそれぞれ、例えば帯電量測定装置(Q/mメーター)で測定対象の帯電量を測定し、摩擦帯電の前後での帯電量の変化が大きい測定対象ほど帯電性が強いことを示す。
軟化点(Tm)は、何ら規定していなければ、高化式フローテスター(株式会社島津製作所製「CFT−500D」)を用いて測定した値である。高化式フローテスターで測定されたS字カーブ(横軸:温度、縦軸:ストローク)において、「(ベースラインストローク値+最大ストローク値)/2」となる温度が、Tm(軟化点)に相当する。
円形度(=粒子の投影面積と等しい円の周囲長/粒子の周囲長)の測定値は、何ら規定していなければ、フロー式粒子像分析装置(シスメックス株式会社製「FPIA(登録商標)−3000」)を用いて、相当数(例えば、3000個)の粒子について測定した値の個数平均である。
疎水性の強さ(又は親水性の強さ)は、例えば水滴の接触角(水の濡れ易さ)で表すことができる。水滴の接触角が大きいほど疎水性が強い。
炭素原子数1以上4以下のアルキル基は、直鎖状又は分枝鎖状で非置換である。炭素原子数1以上4以下のアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、s−ブチル基、及びt−ブチル基が挙げられる。
炭素原子数1以上4以下のアシル基は、直鎖状又は分枝鎖状で非置換である。炭素原子数1以上4以下のアシル基としては、例えば、ホルミル基、アセチル基、プロピオニル基、ブチリル基、及びイソブチリル基が挙げられる。
以下、化合物名の後に「系」を付けて、化合物及びその誘導体を包括的に総称する場合がある。化合物名の後に「系」を付けて重合体名を表す場合には、重合体の繰返し単位が化合物又はその誘導体に由来することを意味する。また、「ハロゲン原子で置換されていてもよい」とは、有機基の水素原子の一部又は全部がハロゲン原子で置換されていてもよいことを意味する。
<第1実施形態:キャリア>
第1実施形態に係るキャリアは、静電潜像の現像に好適に用いることができる。第1実施形態に係るキャリアは、現像装置内においてトナーと摩擦することで、トナーを例えば正に帯電させる。
第1実施形態に係るキャリアは、キャリア粒子を含む。キャリア粒子は、キャリアコアと、キャリアコアの表面を覆う第1コート層と、第1コート層の表面を覆う第2コート層とを備える。
第1コート層は、メラミン樹脂、尿素樹脂又はベンゾグアナミン樹脂(以下、特定アミノ樹脂と記載することがある。)を含有する。第2コート層は、水酸基を有するシリコーン樹脂を含有する。第2コート層に含まれるシリコーン樹脂が有する水酸基は、シリコーン樹脂の原料の硬化反応過程において消費されずに残存した水酸基(例えばシラノール基中の水酸基)である。シリコーン樹脂中の水酸基の有無は、例えば、フーリエ変換赤外分光光度計(FT−IR)を用いて第2コート層を分析することにより確認できる。以下、水酸基を有するシリコーン樹脂を、単に「シリコーン樹脂」と記載することがある。
第1実施形態に係るキャリアは、上述の構成を備えることにより、多数枚(例えば20万枚)の印刷後においてかぶりの発生を抑制できる。その理由は、以下のように推測される。
第1実施形態に係るキャリアに含まれるキャリア粒子では、キャリアコアを覆うコート層(第1コート層)が比較的硬度の高い特定アミノ樹脂を含有する。そのため、第1実施形態に係るキャリアは、多数枚(例えば20万枚)の印刷中において第1コート層の剥がれを抑制できると考えられる。
一方、特定アミノ樹脂は、トナー成分(例えば外添剤)が付着し易い傾向がある。しかし、第1実施形態に係るキャリアに含まれるキャリア粒子では、第1コート層が、シリコーン樹脂を含む第2コート層で覆われている。シリコーン樹脂は表面自由エネルギーが比較的小さい。このように、第1実施形態に係るキャリアは、第1コート層が表面自由エネルギーの比較的小さい第2コート層(シリコーン樹脂を含む層)で覆われているため、キャリア粒子の表面へのトナー成分の付着を抑制できると考えられる。
また、第1実施形態に係るキャリアに含まれるキャリア粒子では、第2コート層が、水酸基を有するシリコーン樹脂を含有する。よって、第1実施形態に係るキャリアに含まれるキャリア粒子では、第1コート層と第2コート層との密着性が高くなる傾向がある。そのため、第1実施形態に係るキャリアは、多数枚(例えば20万枚)の印刷中においても第2コート層(シリコーン樹脂を含む層)の剥がれを抑制できると考えられる。
よって、第1実施形態に係るキャリアによれば、多数枚(例えば20万枚)の印刷中においても、第1コート層の剥がれを抑制しつつキャリア粒子の表面へのトナー成分の付着を抑制できるため、帯電付与能の低下を抑制できると考えられる。従って、第1実施形態に係るキャリアによれば、トナーの帯電量が所望の範囲外となることを抑制できるため、多数枚(例えば20万枚)の印刷後においてかぶりの発生を抑制できると考えられる。
また、第1実施形態に係るキャリアは、以下に示す第2コート層の残存率が蛍光X線スペクトルのピーク強度比率で80%以上であることが好ましい。第2コート層の残存率の測定では、まず、ブローオフ粉体帯電量測定装置の測定用セル(ファラデーゲージ)に目開き16μmの金網をセットし、この金網上に第1実施形態に係るキャリア0.5gを載せる。この金網上のキャリアに対して、ブロー圧1kgf/cm2かつブロー時間1分の条件で窒素ガスをブローする。そして、金網上に残った上記キャリア中の第2コート層の残存率(以下、単に「第2コート層の残存率」と記載することがある。)を測定する。第2コート層の残存率が蛍光X線スペクトルのピーク強度比率で80%以上である場合、多数枚(例えば20万枚)の印刷中における第2コート層の剥がれをより抑制できるため、多数枚の印刷後においてかぶりの発生をより抑制できる。多数枚印刷後においてかぶりの発生を更に抑制するためには、第2コート層の残存率は、蛍光X線スペクトルのピーク強度比率で90%以上であることが好ましく、95%以上100%以下であることがより好ましい。第2コート層の残存率の測定方法は、後述する実施例と同じ方法又はその代替方法である。
以下、第1実施形態に係るキャリアの詳細について、適宜図面を参照しながら説明する。
[キャリア粒子の構成]
第1実施形態に係るキャリアは、キャリア粒子を含む。図1に、キャリアに含まれるキャリア粒子の断面構造の一例を示す。なお、図1において、理解を容易にするため、構成の一部の寸法を誇張して描いている。
図1に示すように、キャリア粒子1は、キャリアコア2と、キャリアコア2の表面を覆う第1コート層10と、第1コート層10の表面を覆う第2コート層20とを備える。
第1コート層10は、特定アミノ樹脂を含有する。多数枚(例えば20万枚)の印刷後においてかぶりの発生をより抑制するためには、特定アミノ樹脂としては、メラミン樹脂及び尿素樹脂が好ましく、メラミン樹脂がより好ましい。第1コート層10は、特定アミノ樹脂のみから構成されていてもよく、特定アミノ樹脂と他の成分(例えば他の樹脂)との混合材料から構成されていてもよい。多数枚印刷後においてかぶりの発生をより抑制するためには、第1コート層10の構成材料中の特定アミノ樹脂の含有量は、70質量%以上であることが好ましく、80質量%以上であることがより好ましく、90質量%以上であることが更に好ましく、100質量%であることが特に好ましい。
第2コート層20は、シリコーン樹脂を含有する。第2コート層20は、シリコーン樹脂のみから構成されていてもよく、シリコーン樹脂と他の成分(例えば他の樹脂)との混合材料から構成されていてもよい。多数枚印刷後においてかぶりの発生をより抑制するためには、第2コート層20の構成材料中のシリコーン樹脂の含有量は、70質量%以上であることが好ましく、80質量%以上であることがより好ましく、90質量%以上であることが更に好ましく、100質量%であることが特に好ましい。
多数枚印刷後においてかぶりの発生をより抑制するためには、第1コート層10がキャリアコア2の表面領域のうち90%以上100%以下の面積を覆っていることが好ましい。
多数枚印刷後においてかぶりの発生をより抑制するためには、第2コート層20が第1コート層10の表面領域のうち90%以上100%以下の面積を覆っていることが好ましい。なお、第1コート層10がキャリアコア2の表面領域の全面(表面領域の100%)を覆っていない場合、第2コート層20は、キャリアコア2の表面領域のうち第1コート層10で覆われていない箇所を覆っていてもよい。
第1コート層10及び第2コート層20の各々の存在は、電子顕微鏡によって確認できる。また、第1コート層10及び第2コート層20の各々の被覆率(面積割合)は、キャリア粒子1(例えば、予め染色されたキャリア粒子1)の断面を電子顕微鏡で撮影し、得られた撮影像を、市販の画像解析ソフトウェア(例えば、三谷商事株式会社製「WinROOF」)を用いて解析することで測定できる。
多数枚印刷後においてかぶりの発生をより抑制するためには、第1コート層10の厚さ及び第2コート層20の厚さ(以下、これらをまとめて「コート層の厚さ」と記載することがある。)は、各々、1nm以上10nm以下であることが好ましい。
コート層の厚さは、市販の画像解析ソフトウェア(例えば、三谷商事株式会社製「WinROOF」)を用いてキャリア粒子1の断面のTEM(透過型電子顕微鏡)撮影像を解析することによって計測できる。キャリア粒子1の断面は、例えば、断面試料作製装置(日本電子株式会社製「クロスセクションポリッシャ(登録商標)」)を用いて作製できる。キャリア粒子1の断面は染色されていてもよい。1つのキャリア粒子1においてコート層の厚さが均一でない場合には、均等に離間した4箇所(詳しくは、キャリア粒子1の断面の略中心で直交する2本の直線を引き、それら2本の直線がコート層と交差する4箇所)の各々でコート層の厚さを測定し、得られた4つの測定値の算術平均を、そのキャリア粒子1の評価値(コート層の厚さ)とする。
多数枚印刷後においてかぶりの発生をより抑制するためには、第1コート層10の質量は、100質量部のキャリアコア2に対して、0.5質量部以上5質量部以下であることが好ましく、0.9質量部以上5質量部以下であることがより好ましい。
多数枚印刷後においてかぶりの発生をより抑制するためには、第2コート層20の質量は、100質量部のキャリアコア2に対して、0.4質量部以上5質量部以下であることが好ましく、0.5質量部以上4.5質量部以下であることがより好ましく、3.5質量部以上4.5質量部以下であることが更に好ましい。
良好な現像性を得るためには、キャリアコア2の体積中位径(D50)は、30μm以上100μm以下であることが好ましい。
[キャリア粒子の要素]
以下、第1実施形態に係るキャリアに含まれるキャリア粒子の要素について説明する。
(キャリアコア)
キャリアコアは、磁性材料を含有することが好ましい。キャリアコアは、磁性材料の粒子であってもよいし、キャリアコア用結着樹脂と、キャリアコア用結着樹脂中に分散した磁性材料の粒子とを備えるキャリアコア(以下、樹脂キャリアコアと記載することがある。)であってもよい。
キャリアコアに含有される磁性材料の例としては、強磁性金属(より具体的には、鉄、コバルト、ニッケル、及びこれら金属の一種以上を含む合金等)、強磁性金属酸化物(より具体的には、フェライト等)が挙げられる。フェライトの好適な例としては、Baフェライト、Mnフェライト、Mn−Znフェライト、Ni−Znフェライト、Mn−Mgフェライト、Ca−Mgフェライト、Liフェライト、Cu−Znフェライト、及びMn−Mg−Srフェライトが挙げられる。また、強磁性金属酸化物の好適な例としては、スピネルフェライトの一種であるマグネタイトも挙げられる。キャリアコアの材料として、一種類の磁性材料を単独で使用してもよいし、二種以上の磁性材料を併用してもよい。キャリアコアを作製する方法としては、例えば磁性材料を粉砕及び焼成する工程を含む方法が挙げられる。キャリアコアの作製において、磁性材料の添加量(特に、強磁性材料の割合)を変えることで、キャリアの飽和磁化を調整することができる。また、キャリアコアの作製において、焼成温度を変えることで、キャリアコアの円形度を調整することができる。なお、キャリアコアとしては、市販品を使用してもよい。
キャリアコアが磁性材料の粒子である場合、磁性材料の粒子の好ましい例としては、フェライト粒子が挙げられる。フェライト粒子は、画像形成のために十分な磁性を有する傾向がある。なお、一般的な製法により作製されたフェライト粒子は、真球にはならず、表面に適度な凹凸を有する傾向がある。キャリアコアがフェライト粒子(フェライトコア)である場合、フェライトコアの表面と第1コート層との密着性を向上させるためには、フェライトコアの表面の算術平均粗さ(詳しくは、JIS(日本工業規格)B0601−2013で規定される算術平均粗さRa)は、0.3μm以上2.0μm以下であることが好ましい。
キャリアコアが樹脂キャリアコアである場合、樹脂キャリアコアに含まれるキャリアコア用結着樹脂としては、ポリエステル樹脂、ウレタン樹脂、及びフェノール樹脂からなる群より選択される一種以上の樹脂が好ましく、フェノール樹脂がより好ましい。キャリアコア用結着樹脂中に分散した磁性材料の粒子としては、例えば上記磁性材料の例として挙げられた磁性材料から選択される一種以上を含む粒子が挙げられる。
(第1コート層)
第1コート層は、特定アミノ樹脂として、メラミン樹脂、尿素樹脂又はベンゾグアナミン樹脂を含有する。
メラミン樹脂は、例えば、メラミンとホルムアルデヒドとの縮重合により得られる。メラミン樹脂の合成方法の一例としては、まず、メラミンとホルムアルデヒドとを付加反応させる。この付加反応により、メチロールメラミン系化合物(メラミン樹脂の前駆体)が得られる。次に、メチロールメラミン系化合物を縮重合反応させることにより、メラミン樹脂が合成される。メチロールメラミン系化合物としては、例えば、トリメチロールメラミン、テトラメチロールメラミン、ペンタメチロールメラミン、及びヘキサメチロールメラミンが挙げられる。
メラミン樹脂の前駆体としては、メチロールメラミン系化合物の初期重合体(プレポリマー)を使用することもできる。メチロールメラミン系化合物、及びメチロールメラミン系化合物の初期重合体は、何れもメチロール基を有する。また、メラミン樹脂の前駆体としては、市販品を使用することもできる。メラミン樹脂の前駆体の市販品としては、例えば、昭和電工株式会社製「ミルベン(登録商標)レジンSM−607」、及び昭和電工株式会社製「ミルベンレジンSM−850」が挙げられる。昭和電工株式会社製「ミルベンレジンSM−607」は、ヘキサメチロールメラミン初期重合体の水溶液(固形分濃度:75質量%)である。昭和電工株式会社製「ミルベンレジンSM−850」は、トリメチロールメラミン初期重合体の水溶液(固形分濃度:70質量%)である。
尿素樹脂は、例えば、尿素とホルムアルデヒドとの縮重合により得られる。尿素樹脂の合成方法の一例としては、まず、尿素とホルムアルデヒドとを付加反応させる。この付加反応により、メチロール化尿素(尿素樹脂の前駆体)が得られる。次に、メチロール化尿素を縮重合反応させることにより、尿素樹脂が合成される。
尿素樹脂の前駆体としては、メチロール化尿素の初期重合体(プレポリマー)を使用することもできる。メチロール化尿素、及びメチロール化尿素の初期重合体は、何れもメチロール基を有する。また、尿素樹脂の前駆体としては、市販品を使用することもできる。尿素樹脂の前駆体の市販品としては、例えば、昭和電工株式会社製「サーモタイト3HSP」が挙げられる。昭和電工株式会社製「サーモタイト3HSP」は、メチロール化尿素の水溶液(固形分濃度:80質量%)である。
ベンゾグアナミン樹脂は、例えば、ベンゾグアナミンとホルムアルデヒドとの縮重合により得られる。ベンゾグアナミン樹脂の合成方法の一例としては、まず、ベンゾグアナミンとホルムアルデヒドとを付加反応させる。この付加反応により、メチロールベンゾグアナミン系化合物(ベンゾグアナミン樹脂の前駆体)が得られる。次に、メチロールベンゾグアナミン系化合物を縮重合反応させることにより、ベンゾグアナミン樹脂が合成される。メチロールベンゾグアナミン系化合物としては、例えば、トリメチロールベンゾグアナミン及びテトラメチロールベンゾグアナミンが挙げられる。
ベンゾグアナミン樹脂の前駆体としては、メチロールベンゾグアナミン系化合物の初期重合体(プレポリマー)を使用することもできる。メチロールベンゾグアナミン系化合物、及びメチロールベンゾグアナミン系化合物の初期重合体は、何れもメチロール基を有する。また、ベンゾグアナミン樹脂の前駆体としては、市販品を使用することもできる。
(第2コート層)
第2コート層は、シリコーン樹脂を含有する。多数枚印刷後においてかぶりの発生をより抑制するためには、シリコーン樹脂が下記一般式(1)で表されるオルガノシランの加水分解物(以下、特定オルガノシラン加水分解物と記載することがある。)の縮重合体を含むことが好ましい。
一般式(1)中、R1は、ハロゲン原子で置換されていてもよい炭素原子数1以上4以下のアルキル基、フェニル基、ビニル基、γ−メタクリロキシプロピル基、γ−グリシドキシプロピル基、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチル基、N−(β−アミノエチル)−γ−アミノプロピル基、γ−アミノプロピル基、又はγ−メルカプトプロピル基を表す。R2は、炭素原子数1以上4以下のアルキル基、又は炭素原子数1以上4以下のアシル基を表す。nは、0又は1を表す。複数のR2は互いに同一であっても異なってもよい。
特定オルガノシラン加水分解物は、一般式(1)で表されるオルガノシランの少なくとも1つの−OR2基が加水分解されることによって、シラノール基が形成された化合物である。従って、必ずしも全ての−OR2基が加水分解されている必要はなく、一部の−OR2基のみが加水分解された化合物、全ての−OR2基が加水分解された化合物、及びこれらの混合物の何れもが特定オルガノシラン加水分解物に含まれる。
特定オルガノシラン加水分解物の縮重合体は、特定オルガノシラン加水分解物の単独縮重合体であってもよく、特定オルガノシラン加水分解物と他の加水分解物との共縮重合体であってもよい。また、特定オルガノシラン加水分解物の縮重合体は、複数種の特定オルガノシラン加水分解物の共縮重合体であってもよい。
また、特定オルガノシラン加水分解物の縮重合体は、特定オルガノシラン加水分解物の部分縮重合物(以下、特定部分縮重合物と記載することがある。)が縮重合した縮重合体であってもよい。特定部分縮重合物は、例えば、特定オルガノシラン加水分解物のシラノール基が最終硬化物であるシリコーン樹脂に到らない程度に部分縮合することによって、シロキサン結合が形成された化合物である。特定部分縮重合物は、特定オルガノシラン加水分解物が単独で部分縮合した部分縮重合物であってもよく、特定オルガノシラン加水分解物と他の加水分解物とが部分縮合した部分縮重合物であってもよい。
第2コート層が特定オルガノシラン加水分解物の縮重合体を含む場合、第2コート層は、特定オルガノシラン加水分解物の縮重合体のみから構成されていてもよく、特定オルガノシラン加水分解物の縮重合体と、他の成分(例えば他の樹脂成分)とから構成されていてもよい。多数枚印刷後においてかぶりの発生を更に抑制するためには、特定オルガノシラン加水分解物の縮重合体の含有量は、第2コート層の全量に対して80質量%以上であることが好ましく、90質量%以上であることがより好ましく、100質量%であることが特に好ましい。
一般式(1)中、R1で表されるハロゲン原子で置換されていてもよい炭素原子数1以上4以下のアルキル基としては、例えば、3,3,3−トリフルオロプロキル基等のフルオロアルキル基、及びγ−クロロプロピル基等のクロロアルキル基が挙げられる。
多数枚印刷後においてかぶりの発生を更に抑制するためには、第2コート層を形成するシリコーン樹脂が、一般式(1)中のnが1であるオルガノシランの加水分解物に由来する単位を含むことが好ましい。一般式(1)中のnが1であるオルガノシランの加水分解物に由来する単位は、一般式(1)中のR1で表される基を有する。多数枚印刷後においてかぶりの発生を特に抑制するためには、第2コート層を形成するシリコーン樹脂が以下の条件(A)及び条件(B)を満たすオルガノシランの加水分解物に由来する単位を含むことが好ましい。
条件(A):一般式(1)中のnが1であるオルガノシランの加水分解物に由来する単位である。
条件(B):一般式(1)中のR1がフェニル基を表すオルガノシランの加水分解物に由来する単位である。
特定部分縮重合物としては、市販品を使用することもできる。特定部分縮重合物の市販品としては、例えば、旭化成ワッカーシリコーン株式会社製「SY300」、東レ・ダウコーニング株式会社製「Z−6018」、及びモメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ・ジャパン合同会社製「TSR160」が挙げられる。
(第1コート層と第2コート層の組合せ)
多数枚印刷後においてかぶりの発生をより抑制するためには、第1コート層がメラミン樹脂を含み、第2コート層の質量がキャリアコア100質量部に対して0.5質量部以上4.5質量部以下であることが好ましい。同様の理由から、第1コート層がメラミン樹脂を含み、第2コート層の質量がキャリアコア100質量部に対して3.5質量部以上4.5質量部以下であることがより好ましい。
<第2実施形態:キャリアの製造方法>
次に、本発明の第2実施形態に係るキャリアの製造方法について説明する。第2実施形態に係るキャリアの製造方法は、上述した第1実施形態に係るキャリアの好適な製造方法である。以下、上述した第1実施形態と重複する構成要素については、説明を省略する。
第2実施形態に係るキャリアの製造方法は、第1塗布膜を形成する工程(以下、工程S1と記載することがある。)と、第2塗布膜を形成する工程(以下、工程S2と記載することがある。)と、第1コート層及び第2コート層を形成する工程(以下、工程S3と記載することがある。)とを備える。工程S1では、キャリアコアの表面に第1塗布液を塗布することにより第1塗布膜を形成する。工程S2では、第1塗布膜の表面に第2塗布液を塗布することにより第2塗布膜を形成する。工程S3では、第1塗布膜及び第2塗布膜を同時に加熱することにより、キャリアコアの表面を覆う第1コート層、及び第1コート層の表面を覆う第2コート層を形成してキャリア粒子を得る。第1塗布液は、メラミン樹脂の前駆体、尿素樹脂の前駆体又はベンゾグアナミン樹脂の前駆体(以下、特定アミノ樹脂の前駆体と記載することがある。)を含む。第2塗布液は、一般式(1)で表されるオルガノシランの加水分解物の部分縮重合物(特定部分縮重合物)を含む。特定部分縮重合物は、水酸基を有する。第2実施形態に係る製造方法により得られたキャリアは、第2コート層の残存率が蛍光X線スペクトルのピーク強度比率で80%以上であることが好ましい。以下、第2実施形態に係るキャリアの製造方法の各工程について説明する。
[工程S1]
工程S1では、キャリアコアの表面に第1塗布液を塗布することにより、第1塗布液からなる第1塗布膜を形成する。第1塗布液に使用される媒体(溶媒又は分散媒)としては、極性媒体が好ましく、水がより好ましい。なお、極性媒体は、塩酸等でpH3.5以上4.5以下に調整されていてもよい。
キャリアコアの表面に第1塗布液を塗布する方法としては、例えば、流動層中のキャリアコアへ第1塗布液を噴霧する方法が挙げられる。キャリアコア100質量部に対する第1コート層の質量を、上述した好ましい範囲である0.5質量部以上5質量部以下に容易に調整するためには、転動流動層コーティング装置を用いて流動層中のキャリアコアへ第1塗布液を噴霧する方法が好ましい。第1コート層の質量は、転動流動層コーティング装置を用いて第1塗布液を噴霧する際の噴霧量、及び第1塗布液中の固形分(第1塗布液中の全ての媒体が揮発した時の残留分)の濃度のうち少なくとも1つを変更することにより調整できる。第1塗布液を塗布する際は、第1塗布液中の特定アミノ樹脂の前駆体が縮重合反応しない雰囲気温度(例えば、20℃以上25℃以下の温度)に設定することが好ましい。
[工程S2]
工程S2では、第1塗布膜の表面に第2塗布液を塗布することにより、第2塗布液からなる第2塗布膜を形成する。第2塗布液に使用される媒体(溶媒又は分散媒)としては、第1塗布膜への第2塗布液の混入を抑制するためには、非極性媒体が好ましく、芳香族炭化水素(より具体的には、ベンゼン、トルエン、キシレン等)がより好ましく、トルエンが更に好ましい。
第1塗布膜の表面に第2塗布液を塗布する方法としては、例えば、流動層中のキャリアコア(詳しくは、第1塗布膜で覆われたキャリアコア)へ第2塗布液を噴霧する方法が挙げられる。キャリアコア100質量部に対する第2コート層の質量を、上述した好ましい範囲である0.4質量部以上5質量部以下に容易に調整するためには、転動流動層コーティング装置を用いて流動層中のキャリアコア(詳しくは、第1塗布膜で覆われたキャリアコア)へ第2塗布液を噴霧する方法が好ましい。第2コート層の質量は、転動流動層コーティング装置を用いて第2塗布液を噴霧する際の噴霧量、及び第2塗布液中の固形分(第2塗布液中の全ての媒体が揮発した時の残留分)の濃度のうち少なくとも1つを変更することにより調整できる。第2塗布液を塗布する際は、第2塗布液中の特定部分縮重合物が縮重合反応しない雰囲気温度(例えば、20℃以上25℃以下の温度)に設定することが好ましい。
[工程S3]
工程S3では、第1塗布膜及び第2塗布膜を同時に加熱することにより、キャリアコアの表面を覆う第1コート層、及び第1コート層の表面を覆う第2コート層を形成する。工程S3の加熱処理により、第1塗布膜中の特定アミノ樹脂の前駆体が縮重合反応して第1コート層が形成される。また、工程S3の加熱処理により、第2塗布膜中の特定部分縮重合物が縮重合反応して第2コート層が形成される。更に、工程S3では、第1塗布膜及び第2塗布膜を同時に加熱するため、第1コート層と第2コート層との間の密着性を高めることができる。
第1塗布膜及び第2塗布膜を加熱する温度(熱処理温度)は、第1塗布膜中の特定アミノ樹脂の前駆体が縮重合反応し、かつ第2塗布膜中の特定部分縮重合物が縮重合反応する温度である限り特に限定されず、例えば180℃以上220℃以下であり、好ましくは190℃以上210℃以下である。第1塗布膜及び第2塗布膜を加熱する時間(熱処理時間)は、例えば1時間以上3時間以下である。
第2塗布液中の特定部分縮重合物は、水酸基を有する。つまり、第2塗布膜中の特定部分縮重合物は、水酸基を有する。第2塗布膜中の特定部分縮重合物が水酸基を有すると、第1塗布膜及び第2塗布膜の加熱により、第1塗布膜中の特定アミノ樹脂の前駆体が有するメチロール基と、第2塗布膜中の特定部分縮重合物が有する水酸基とが反応し、第1コート層と第2コート層との間に共有結合が形成されると考えられる。よって、第2塗布膜中の特定部分縮重合物が水酸基を有すると、第1コート層と第2コート層との密着性が高まるため、第2コート層の残存率を蛍光X線スペクトルのピーク強度比率で80%以上に容易に調整することができる。
第2コート層の残存率は、第1塗布膜及び第2塗布膜の熱処理温度、第1塗布膜及び第2塗布膜の熱処理時間、並びに第2塗布膜中の特定部分縮重合物の水酸基の量のうち少なくとも1つを変更することにより調整できる。
以上説明した第2実施形態に係るキャリアの製造方法によれば、多数枚印刷後においてかぶりの発生を抑制できる第1実施形態に係るキャリアを、容易に製造できる。
<第3実施形態:2成分現像剤>
次に、本発明の第3実施形態に係る2成分現像剤について説明する。第3実施形態に係る2成分現像剤は、トナーと、上述した第1実施形態に係るキャリアとを含む。以下、上述した第1実施形態と重複する構成要素については、説明を省略する。
2成分現像剤に含まれるトナーは、トナー粒子を含む。2成分現像剤に含まれるトナーは、例えば正帯電性トナーとして用いることができる。正帯電性トナーは、キャリアとの摩擦により正に帯電する。
トナーに含まれるトナー粒子は、シェル層を備えないトナー粒子(非カプセルトナー粒子)であってもよいし、シェル層を備えるトナー粒子(カプセルトナー粒子)であってもよい。カプセルトナー粒子は、トナーコアと、トナーコアの表面を覆うシェル層とを備えるトナー母粒子を含む。シェル層は、実質的に熱硬化性樹脂のみからなってもよいし、実質的に熱可塑性樹脂のみからなってもよいし、熱可塑性樹脂と熱硬化性樹脂との両方を含有してもよい。
トナー粒子は、外添剤を備えてもよい。トナー粒子が外添剤を備える場合、トナー粒子は、トナー母粒子と、外添剤とを含む。外添剤はトナー母粒子の表面に付着する。なお、必要がなければ外添剤を割愛してもよい。外添剤を割愛する場合には、トナー母粒子がトナー粒子に相当する。
画像形成に適したトナーを得るためには、トナー母粒子の体積中位径(D50)は、4μm以上9μm以下であることが好ましい。なお、トナー母粒子の構成は、特に限定されない。
トナー粒子が外添剤を備える場合、トナーの流動性を向上させるためには、外添剤粒子として、個数平均一次粒子径5nm以上30nm以下の無機粒子を使用することが好ましい。外添剤をトナー粒子間でスペーサーとして機能させてトナーの耐熱保存性を向上させるためには、外添剤粒子として、個数平均一次粒子径50nm以上200nm以下の樹脂粒子を使用することが好ましい。トナー母粒子からの外添剤の脱離を抑制しながら外添剤の機能を十分に発揮させるためには、外添剤の量が、トナー母粒子100質量部に対して、1質量部以上10質量部以下であることが好ましい。なお、多数枚印刷中において、外添剤がトナー母粒子から脱離してキャリア粒子に付着すると、キャリア粒子の帯電付与能が低下し、その結果、かぶりが発生し易くなる傾向がある。しかし、第3実施形態に係る2成分現像剤は、第1実施形態に係るキャリアを含むため、トナー粒子が外添剤を備えていても、多数枚印刷後においてかぶりの発生を抑制できる。
2成分現像剤は、例えば混合機(より具体的には、ボールミル、ロッキングミキサー(登録商標)等)を用いて、第1実施形態に係るキャリアと、トナーとを攪拌しながら混合することで得られる。キャリア粒子100質量部に対するトナー粒子の配合量は、好ましくは1質量部以上20質量部以下であり、より好ましくは3質量部以上15質量部以下である。
以上説明した第3実施形態に係る2成分現像剤は、第1実施形態に係るキャリアを含むため、多数枚印刷後においてかぶりの発生を抑制できる。
本発明の実施例について説明する。
<トナーTAの作製>
[結着樹脂の合成]
ビスフェノールAのエチレンオキサイド付加物(エチレンオキサイドの平均付加モル数:2モル)1.0モルと、テレフタル酸4.5モルと、無水トリメリット酸0.5モルと、酸化ジブチル錫4gとを反応容器に入れた。反応容器の内容物を、窒素雰囲気下、温度230℃で8時間反応させた。続いて、反応容器の内容物を、圧力8.3kPaの条件で減圧留去することにより、未反応の原料を除去した。得られた反応生成物を、洗浄した後乾燥した。これにより、結着樹脂としてのポリエステル樹脂(軟化点:120℃)を得た。
[トナー母粒子の作製]
FMミキサー(日本コークス工業株式会社製「FM−20B」)を用いて、上述の手順で得られたポリエステル樹脂100質量部と、カーボンブラック(キャボット・スペシャルティ・ケミカルズ社製「REGAL(登録商標)330R」)5質量部と、離型剤(カルナバワックス:株式会社加藤洋行製「カルナウバワックス1号」)10質量部と、正帯電性電荷制御剤(4級アンモニウム塩:藤倉化成株式会社製「FCA201PS」)3質量部とを混合した。続けて、得られた混合物を、2軸押出機(東芝機械株式会社製「TEM45」)を用いて、温度150℃の条件で溶融混練した。その後、得られた混練物を冷却した。続けて、冷却された混練物を、粉砕機(ホソカワミクロン株式会社製「フェザミル(登録商標)350×600型」)を用いて粗粉砕した。続けて、得られた粗粉砕物を、ジェット粉砕機(日本ニューマチック工業株式会社製「ジェットミルIDS−2」)を用いて微粉砕した。続けて、得られた微粉砕物を、分級機(日鉄鉱業株式会社製「エルボージェットEJ−LABO型」)を用いて分級した。その結果、体積中位径(D50)7μmのトナー母粒子MPが得られた。
[疎水性シリカ粒子の作製]
ジェット粉砕機(日本ニューマチック工業株式会社製「ジェットミルIDS−2」)を用いて、シリカ粒子(日本アエロジル株式会社製「RA−200H」)を解砕した。解砕されたシリカ粒子100質量部を密閉型FMミキサー(日本コークス工業株式会社製)に入れて、シリカ粒子に向けてスプレーで疎水化処理剤(3−アミノプロピルトリエトキシシランとジメチルシリコーンオイルとを質量比1:1で含有する液)20質量部を均一に散布した。続けて、密閉型FMミキサーを用いて、シリカ粒子と疎水化処理剤とを混合しながら110℃で2時間反応させて、シリカ粒子の表面を疎水化処理した。続けて、減圧処理して副反応生成物を除去した後、更に200℃の熱処理を1時間行って、疎水性シリカ粒子SPを得た。
[導電性酸化チタン粒子の作製]
塩素法によって得られた四塩化チタンと酸素ガスとの混合物を気相酸化反応器に導入した。続けて、反応器内において、温度1000℃で混合物を気相酸化反応させることによって、酸化チタン(バルク)を得た。得られた酸化チタン(バルク)をハンマーミルにより粉砕した。続けて、得られた酸化チタンの粉砕物を洗浄した後、温度110℃で乾燥した。更に、乾燥した酸化チタンの粉砕物をジェットミルにより解砕した。その結果、酸化チタン微粒子が得られた。
続けて、FMミキサー(日本コークス工業株式会社製)を用いて、得られた酸化チタン微粒子100質量部とイソプロピルトリイソステアロイルチタネート2.6質量部とを、攪拌速度40m/秒で混合しながら温度130℃でカップリング反応させることにより、酸化チタン微粒子を表面処理した。続けて、表面処理された酸化チタン微粒子を乾燥させた後、解砕した。その結果、電気抵抗率1.0×109Ω・cm、メタノール疎水化度35%の酸化チタン微粒子が得られた。なお、酸化チタン微粒子の電気抵抗率は製造条件によって変動し易いため、所望の電気抵抗率を有する酸化チタン微粒子が得られるまで表面処理を繰り返した。
続けて、表面処理された酸化チタン微粒子にスズアンチモン処理を施した。詳しくは、表面処理された酸化チタン微粒子を水に分散させて、酸化チタン微粒子の100g/L懸濁液を調製した。続けて、得られた酸化チタン懸濁液を70℃に加熱した。更に、塩化スズ五水和物(SnCl4・5H2O)2gと塩化アンチモン(SbCl2)0.1gとを2Nの塩酸50mLに溶解させた溶液と、濃度10質量%の水酸化ナトリウム水溶液とを、酸化チタン懸濁液のpHが2〜3に維持されるように、酸化チタン懸濁液に1時間かけて添加した。その結果、酸化チタン懸濁液中で、酸化スズ及び酸化アンチモンの各々の水和物から構成される導電層が、酸化チタン微粒子の表面に形成された。その後、酸化チタン懸濁液をろ過(固液分離)し、得られた酸化チタン微粒子を洗浄した。続けて、洗浄された酸化チタン微粒子を温度600℃で焼成した。続けて、ジェットミル(日本ニューマチック工業株式会社製)を用いて、焼成された酸化チタン微粒子を解砕した。その結果、電気抵抗率50Ω・cm、かつ、親水性の導電性酸化チタン粒子TPが得られた。
[外添工程]
FMミキサー(日本コークス工業株式会社製「FM−10B」)を用いて、100質量部のトナー母粒子MPと、1.5質量部の疎水性シリカ粒子SPと、1.0質量部の導電性酸化チタン粒子TPとを、回転速度3500rpmで5分間混合することにより、トナー母粒子MPの表面に外添剤(疎水性シリカ粒子SPの粉体及び導電性酸化チタン粒子TPの粉体)を付着させた。その後、得られたトナーを、200メッシュ(目開き75μm)の篩を用いて篩別した。その結果、正帯電性のトナーTAが得られた。
<キャリアの作製>
キャリアCA−1〜CA−6及びCB−1〜CB−4の作製方法について説明する。なお、以下において、コート層の材料にかかわらず、キャリアコアの表面を覆うコート層を第1コート層とし、第1コート層の表面を覆うコート層を第2コート層として説明する。また、第1コート層を形成するための塗布液を第1塗布液とし、第2コート層を形成するための塗布液を第2塗布液として説明する。
[キャリアCA−1の作製]
キャリアコアとして、フェライトコア(パウダーテック株式会社製「EF−35B」、体積中位径(D50):35μm、3000(103/4π・A/m)の印加磁場での飽和磁化:68Am2/kg)を準備した。また、第1コート層の原料(第1塗布液)として、ヘキサメチロールメラミン初期重合体の水溶液(昭和電工株式会社製「ミルベン(登録商標)レジンSM−607」、固形分濃度75質量%)4質量部と、塩酸によってpH4に調整したイオン交換水10質量部とを混合した塗布液を準備した。また、第2コート層の原料(第2塗布液)として、水酸基、プロピル基及びフェニル基を有する特定部分縮重合物(旭化成ワッカーシリコーン株式会社製「SY300」、固形分濃度100質量%)3質量部と、トルエン10質量部とを混合した塗布液を準備した。
転動流動層コーティング装置(岡田精工株式会社製「スピラコータ(登録商標)SP−25」)に上記フェライトコア100質量部を投入し、フェライトコアを流動させながら、フェライトコアに向けて、上記第1塗布液14質量部を噴霧することにより、フェライトコアの表面に第1塗布液を塗布した。第1塗布液を塗布する際の雰囲気温度は、25℃であった。これにより、フェライトコアの表面に第1塗布液からなる第1塗布膜が形成された。引き続き、第1塗布膜が形成されたフェライトコアを流動させながら、第1塗布膜に向けて、上記第2塗布液13質量部を噴霧することにより、第1塗布膜の表面に第2塗布液を塗布した。第2塗布液を塗布する際の雰囲気温度は、25℃であった。これにより、第1塗布膜の表面に第2塗布液からなる第2塗布膜が形成された。続いて、上記転動流動層コーティング装置内の流動層を、温度200℃の条件で2時間熱処理した。これにより、第1塗布膜及び第2塗布膜が同時に加熱され、フェライトコアと、フェライトコアの表面領域の全面を覆う第1コート層(メラミン樹脂から構成された層)と、第1コート層の表面領域の全面を覆う第2コート層(水酸基を有するシリコーン樹脂から構成された層)とを備えたキャリア粒子を含むキャリアCA−1が得られた。キャリアCA−1では、第1コート層の質量がフェライトコア100質量部に対して3.00質量部であった。また、キャリアCA−1では、第2コート層の質量がフェライトコア100質量部に対して3.00質量部であった。
[キャリアCA−2の作製]
以下の点を変更したこと以外は、キャリアCA−1の作製と同様の方法で、キャリアCA−2を作製した。第1塗布液として、ヘキサメチロールメラミン初期重合体の水溶液(昭和電工株式会社製「ミルベン(登録商標)レジンSM−607」、固形分濃度75質量%)6.6質量部と、塩酸によってpH4に調整したイオン交換水10質量部とを混合した塗布液を用い、この第1塗布液16.6質量部をフェライトコアに向けて噴霧した。第2塗布液として、水酸基、プロピル基及びフェニル基を有する特定部分縮重合物(東レ・ダウコーニング株式会社製「Z−6018」、固形分濃度100質量%)4質量部と、トルエン10質量部とを混合した塗布液を用い、この第2塗布液14質量部を第1塗布膜に向けて噴霧した。
キャリアCA−2は、フェライトコアと、フェライトコアの表面領域の全面を覆う第1コート層(メラミン樹脂から構成された層)と、第1コート層の表面領域の全面を覆う第2コート層(水酸基を有するシリコーン樹脂から構成された層)とを備えたキャリア粒子を含んでいた。キャリアCA−2では、第1コート層の質量がフェライトコア100質量部に対して4.95質量部であった。また、キャリアCA−2では、第2コート層の質量がフェライトコア100質量部に対して4.00質量部であった。
[キャリアCA−3の作製]
以下の点を変更したこと以外は、キャリアCA−1の作製と同様の方法で、キャリアCA−3を作製した。第1塗布液として、トリメチロールメラミン初期重合体の水溶液(昭和電工株式会社製「ミルベン(登録商標)レジンSM−850」、固形分濃度70質量%)1.4質量部と、塩酸によってpH4に調整したイオン交換水10質量部とを混合した塗布液を用い、この第1塗布液11.4質量部をフェライトコアに向けて噴霧した。第2塗布液として、水酸基、メチル基及びフェニル基を有する特定部分縮重合物のキシレン溶液(モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ・ジャパン合同会社製「TSR160」、固形分濃度60質量%)0.83質量部と、トルエン10質量部とを混合した塗布液を用い、この第2塗布液10.83質量部を第1塗布膜に向けて噴霧した。
キャリアCA−3は、フェライトコアと、フェライトコアの表面領域の全面を覆う第1コート層(メラミン樹脂から構成された層)と、第1コート層の表面領域の全面を覆う第2コート層(水酸基を有するシリコーン樹脂から構成された層)とを備えたキャリア粒子を含んでいた。キャリアCA−3では、第1コート層の質量がフェライトコア100質量部に対して0.98質量部であった。また、キャリアCA−3では、第2コート層の質量がフェライトコア100質量部に対して0.50質量部であった。
[キャリアCA−4の作製]
以下の点を変更したこと以外は、キャリアCA−1の作製と同様の方法で、キャリアCA−4を作製した。第1塗布液として、ヘキサメチロールメラミン初期重合体の水溶液(昭和電工株式会社製「ミルベン(登録商標)レジンSM−607」、固形分濃度75質量%)1.3質量部と、塩酸によってpH4に調整したイオン交換水10質量部とを混合した塗布液を用い、この第1塗布液11.3質量部をフェライトコアに向けて噴霧した。第2塗布液として、特定部分縮重合物(旭化成ワッカーシリコーン株式会社製「SY300」、固形分濃度100質量%)4質量部と、トルエン10質量部とを混合した塗布液を用い、この第2塗布液14質量部を第1塗布膜に向けて噴霧した。
キャリアCA−4は、フェライトコアと、フェライトコアの表面領域の全面を覆う第1コート層(メラミン樹脂から構成された層)と、第1コート層の表面領域の全面を覆う第2コート層(水酸基を有するシリコーン樹脂から構成された層)とを備えたキャリア粒子を含んでいた。キャリアCA−4では、第1コート層の質量がフェライトコア100質量部に対して0.98質量部であった。また、キャリアCA−4では、第2コート層の質量がフェライトコア100質量部に対して4.00質量部であった。
[キャリアCA−5の作製]
以下の点を変更したこと以外は、キャリアCA−1の作製と同様の方法で、キャリアCA−5を作製した。第1塗布液として、トリメチロールメラミン初期重合体の水溶液(昭和電工株式会社製「ミルベン(登録商標)レジンSM−850」、固形分濃度70質量%)7.1質量部と、塩酸によってpH4に調整したイオン交換水10質量部とを混合した塗布液を用い、この第1塗布液17.1質量部をフェライトコアに向けて噴霧した。第2塗布液として、特定部分縮重合物(東レ・ダウコーニング株式会社製「Z−6018」、固形分濃度100質量%)0.5質量部と、トルエン10質量部とを混合した塗布液を用い、この第2塗布液10.5質量部を第1塗布膜に向けて噴霧した。
キャリアCA−5は、フェライトコアと、フェライトコアの表面領域の全面を覆う第1コート層(メラミン樹脂から構成された層)と、第1コート層の表面領域の全面を覆う第2コート層(水酸基を有するシリコーン樹脂から構成された層)とを備えたキャリア粒子を含んでいた。キャリアCA−5では、第1コート層の質量がフェライトコア100質量部に対して4.97質量部であった。また、キャリアCA−5では、第2コート層の質量がフェライトコア100質量部に対して0.50質量部であった。
[キャリアCA−6の作製]
第1塗布液として、メチロール化尿素の水溶液(昭和電工株式会社製「サーモタイト3HSP」、固形分濃度80質量%)3.7質量部と、塩酸によってpH4に調整したイオン交換水10質量部とを混合した塗布液を用い、この第1塗布液13.7質量部をフェライトコアに向けて噴霧したこと以外は、キャリアCA−1の作製と同様の方法で、キャリアCA−6を作製した。
キャリアCA−6は、フェライトコアと、フェライトコアの表面領域の全面を覆う第1コート層(尿素樹脂から構成された層)と、第1コート層の表面領域の全面を覆う第2コート層(水酸基を有するシリコーン樹脂から構成された層)とを備えたキャリア粒子を含んでいた。キャリアCA−6では、第1コート層の質量がフェライトコア100質量部に対して2.96質量部であった。また、キャリアCA−6では、第2コート層の質量がフェライトコア100質量部に対して3.00質量部であった。
[キャリアCB−1の作製]
以下の点を変更したこと以外は、キャリアCA−1の作製と同様の方法で、キャリアCB−1を作製した。第1塗布液として、以下に示すA液13質量部と、以下に示すB液14質量部とを混合した塗布液を準備し、この第1塗布液27質量部をフェライトコアに向けて噴霧した。A液は、特定部分縮重合物(旭化成ワッカーシリコーン株式会社製「SY300」、固形分濃度100質量%)3質量部と、トルエン10質量部とを混合した分散液であった。B液は、ヘキサメチロールメラミン初期重合体の水溶液(昭和電工株式会社製「ミルベン(登録商標)レジンSM−607」、固形分濃度75質量%)4質量部と、塩酸によってpH4に調整したイオン交換水10質量部とを混合した分散液であった。また、キャリアCB−1の作製では、第2コート層を形成しなかった。
キャリアCB−1は、フェライトコアと、フェライトコアの表面領域の全面を覆う第1コート層(メラミン樹脂、及び水酸基を有するシリコーン樹脂から構成された層)とを備えたキャリア粒子を含んでいた。キャリアCB−1では、第1コート層の質量がフェライトコア100質量部に対して6.00質量部(メラミン樹脂3.00質量部及びシリコーン樹脂3.00質量部)であった。
[キャリアCB−2の作製]
以下の点を変更したこと以外は、キャリアCA−1の作製と同様の方法で、キャリアCB−2を作製した。第1塗布液として、特定部分縮重合物(旭化成ワッカーシリコーン株式会社製「SY300」、固形分濃度100質量%)3質量部と、トルエン10質量部とを混合した塗布液を用い、この第1塗布液13質量部をフェライトコアに向けて噴霧した。第2塗布液として、ヘキサメチロールメラミン初期重合体の水溶液(昭和電工株式会社製「ミルベン(登録商標)レジンSM−607」、固形分濃度75質量%)4質量部と、塩酸によってpH4に調整したイオン交換水10質量部とを混合した塗布液を用い、この第2塗布液14質量部を第1塗布膜に向けて噴霧した。
キャリアCB−2は、フェライトコアと、フェライトコアの表面領域の全面を覆う第1コート層(水酸基を有するシリコーン樹脂から構成された層)と、第1コート層の表面領域の全面を覆う第2コート層(メラミン樹脂から構成された層)とを備えたキャリア粒子を含んでいた。キャリアCB−2では、第1コート層の質量がフェライトコア100質量部に対して3.00質量部であった。また、キャリアCB−2では、第2コート層の質量がフェライトコア100質量部に対して3.00質量部であった。
[キャリアCB−3の作製]
以下の点を変更したこと以外は、キャリアCA−1の作製と同様の方法で、キャリアCB−3を作製した。第1塗布液として、特定部分縮重合物(旭化成ワッカーシリコーン株式会社製「SY300」、固形分濃度100質量%)4質量部と、トルエン10質量部とを混合した塗布液を用い、この第1塗布液14質量部をフェライトコアに向けて噴霧した。また、キャリアCB−3の作製では、第2コート層を形成しなかった。
キャリアCB−3は、フェライトコアと、フェライトコアの表面領域の全面を覆う第1コート層(水酸基を有するシリコーン樹脂から構成された層)とを備えたキャリア粒子を含んでいた。キャリアCB−3では、第1コート層の質量がフェライトコア100質量部に対して4.00質量部であった。
[キャリアCB−4の作製]
第2塗布液として、ラジカル反応型シリコーンワニス(モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ・ジャパン合同会社製「YR3232」、固形分濃度60質量%)6.6質量部と、トルエン10質量部とを混合した塗布液を用い、この第2塗布液16.6質量部を第1塗布膜に向けて噴霧したこと以外は、キャリアCA−1の作製と同様の方法で、キャリアCB−4を作製した。
キャリアCB−4は、フェライトコアと、フェライトコアの表面領域の全面を覆う第1コート層(メラミン樹脂から構成された層)と、第1コート層の表面領域の全面を覆う第2コート層(水酸基を有しないシリコーン樹脂から構成された層)とを備えたキャリア粒子を含んでいた。キャリアCB−4では、第1コート層の質量がフェライトコア100質量部に対して3.00質量部であった。また、キャリアCB−4では、第2コート層の質量がフェライトコア100質量部に対して3.96質量部であった。
キャリアCA−1〜CA−6及びCB−1〜CB−4のそれぞれについて、表1に、第1コート層及び第2コート層の詳細を示す。表1において、第1コート層の欄及び第2コート層の欄の「質量」の各数値は、フェライトコア100質量部に対する質量(単位:質量部)を示す。なお、表1において、第2コート層の欄の「−」は、第2コート層を形成しなかったことを示す。
<第2コート層の残存率の測定>
以下に示すブロー処理を行った後のキャリア(測定対象:キャリアCA−1〜CA−6及びCB−4の何れか)について、第2コート層の残存率を測定した。詳しくは、ブロー処理後のキャリア(以下、「ブロー処理後キャリア」と記載することがある。)について蛍光X線分析を行い、蛍光X線スペクトルを得た。また、ブロー処理後キャリアとは別に、ブロー処理を行う前のキャリア(以下、「初期キャリア」と記載することがある。)についても蛍光X線分析を行い、蛍光X線スペクトルを得た。そして、ブロー処理後キャリアの蛍光X線スペクトルと初期キャリアの蛍光X線スペクトルとを対比して、第2コート層の残存率を求めた。上記ブロー処理、蛍光X線分析、及び第2コート層の残存率の求め方の詳細は、以下の通りであった。
[ブロー処理]
ブローオフ粉体帯電量測定装置(旧京セラケミカル株式会社製「TB−200」)の測定用セル(ファラデーゲージ)に目開き16μm(795メッシュ)の金網をセットし、この金網上に、測定対象のキャリア0.5gを載せた。次いで、金網上のキャリアに対し、ブロー圧1kgf/cm2かつブロー時間1分の条件で窒素ガスをブローした。ブロー後に金網上に残ったキャリアをブロー処理後キャリアとした。
[蛍光X線分析]
ブロー処理後キャリア及び初期キャリアをそれぞれ測定対象とした。測定対象としてのキャリア0.4gを、圧力20MPaかつ加圧時間3秒間の条件で加圧成形して、直径11mmの円柱状ペレットを作製した。続けて、得られたペレットについて、蛍光X線分析装置(株式会社リガク製「ZSX Primus IV」)を用いて蛍光X線分析を行い、Si(珪素)に由来するピークを含む蛍光X線スペクトル(横軸:エネルギー、縦軸:強度(光子の数))を得た。
[第2コート層の残存率の求め方]
上記蛍光X線分析によりブロー処理後キャリア及び初期キャリアの各々について得た蛍光X線スペクトルに基づいて、第2コート層の残存率(単位:%)を算出した。詳しくは、ブロー処理後キャリアの蛍光X線スペクトルにおけるSi(珪素)に由来するピークの強度XAと、初期キャリアの蛍光X線スペクトルにおけるSi(珪素)に由来するピークの強度XBとから、式「第2コート層の残存率=100×XA/XB」に従って、測定対象のキャリアにおける第2コート層の残存率を算出した。結果を表2に示す。なお、表2において、第2コート層の残存率の欄の「−」は、第2コート層の残存率を測定しなかったことを示す。
<評価方法>
各試料(キャリアCA−1〜CA−6及びCB−1〜CB−4)の評価方法は、以下の通りである。
[2成分現像剤の調製]
100質量部のキャリア(評価対象:キャリアCA−1〜CA−6及びCB−1〜CB−4の何れか)と、10質量部のトナーTA(上述の方法で得られた正帯電性トナー)とを、ボールミルを用いて30分間混合して、2成分現像剤を調製した。
[帯電付与能の評価(帯電量の測定)]
評価機として、複合機(京セラドキュメントソリューションズ株式会社製「TASKalfa3252ci」)を用いた。前述の方法で調製した2成分現像剤を評価機のブラック用現像装置に投入し、補給用トナー(トナーTA)を評価機のブラック用トナーコンテナに投入した。次いで、温度23℃かつ湿度50%RHの環境下、上記評価機を用いて、印字率5%の画像を印刷用紙(A4サイズ)に20万枚連続で印刷した。
次いで、評価機のブラック用現像装置から2成分現像剤を取り出した後、795メッシュの篩を用いて、取り出した2成分現像剤からトナーのみを吸引し、キャリアを抽出した。次いで、粉体混合機(愛知電機株式会社製「ロッキングミキサー(登録商標)」)を用い、温度23℃かつ湿度50%RHの環境下、回転速度60rpmの条件で、30分間にわたって、抽出されたキャリア100質量部と、未使用のトナー(前述の方法で調製した未使用のトナーTA)10質量部とを混合した。その後、温度23℃かつ湿度50%RHの環境下、2成分現像剤に含まれるトナーの帯電量(単位:μC/g)を、Q/mメーター(トレック社製「MODEL 210HS−2A」)を用いて測定した。結果を表2に示す。
[耐かぶり性の評価(最大かぶり濃度の測定)]
評価機として、複合機(京セラドキュメントソリューションズ株式会社製「TASKalfa3252ci」)を用いた。前述の方法で調製した2成分現像剤を評価機のブラック用現像装置に投入し、補給用トナー(トナーTA)を評価機のブラック用トナーコンテナに投入した。次いで、温度23℃かつ湿度50%RHの環境下、上記評価機を用いて、印字率5%の画像を印刷用紙(A4サイズ)に20万枚連続で印刷した。次いで、印字率80%の画像を印刷用紙(A4サイズ)に100枚連続で印刷した。この際、印字率80%の画像を10枚印刷するごとに、反射濃度計(X−Rite社製「RD−19I」)を用いて、印刷された紙における空白部の反射濃度を測定した。そして、次の式に基づいて、かぶり濃度(FD)を求めた。
かぶり濃度=空白部の反射濃度−未印刷紙の反射濃度
次いで、測定された全てのかぶり濃度(FD)の中で最も高いかぶり濃度(最大かぶり濃度)を求めた。結果を表2に示す。最大かぶり濃度が、0.010未満であれば「多数枚印刷後においてかぶりの発生を抑制できている(良い)」と評価し、0.010以上であれば「多数枚印刷後においてかぶりの発生を抑制できていない(良くない)」と評価した。
表1に示すように、キャリアCA−1〜CA−6では、第1コート層がメラミン樹脂又は尿素樹脂を含有していた。キャリアCA−1〜CA−6では、第2コート層が水酸基を有するシリコーン樹脂を含有していた。表2に示すように、キャリアCA−1〜CA−6では、第2コート層の残存率が80%以上であった。
表2に示すように、キャリアCA−1〜CA−6では、最大かぶり濃度が0.010未満であった。よって、キャリアCA−1〜CA−6は、多数枚印刷後においてかぶりの発生を抑制できていた。
表1に示すように、キャリアCB−1及びCB−3に含まれるキャリア粒子は、第2コート層を備えていなかった。キャリアCB−2に含まれるキャリア粒子は、第1コート層及び第2コート層を備えていた。しかし、キャリアCB−2に含まれるキャリア粒子の第1コート層は、メラミン樹脂、尿素樹脂及びベンゾグアナミン樹脂の何れも含有していなかった。また、キャリアCB−2に含まれるキャリア粒子の第2コート層は、シリコーン樹脂を含有していなかった。キャリアCB−4に含まれるキャリア粒子の第2コート層は、水酸基を有しないシリコーン樹脂を含有していた。しかし、キャリアCB−4に含まれるキャリア粒子の第2コート層は、水酸基を有するシリコーン樹脂を含有していなかった。
表2に示すように、キャリアCB−1〜CB−4では、最大かぶり濃度が0.010以上であった。よって、キャリアCB−1〜CB−4は、多数枚印刷後においてかぶりの発生を抑制できていなかった。
以上の結果から、本発明によれば、多数枚印刷後においてかぶりの発生を抑制できることが示された。