JP6859887B2 - 遷移金属複合酸化物粒子の製造方法 - Google Patents

遷移金属複合酸化物粒子の製造方法 Download PDF

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Description

本発明は、遷移金属複合酸化物粒子の製造方法に関する。
遷移金属複合酸化物粒子が、例えば触媒や、電極材料等の各種分野で広く用いられており、その製造方法について各種提案がなされてきた。
例えば特許文献1には、下記の(1)〜(4)を含む工程によって、炭素微粒子が液体中に分散した分散体を調製し、この分散体を熟成後、固形分を分離し、分離された固形分を焼成することからなる電極触媒の製造方法が開示されている。
(1)2種類以上の金属の塩を含む水溶液と有機溶媒とポリオキシエチレンアルキルエーテルとを混合して逆ミセル(a)を含む溶液を調製する工程、(2)前記金属塩の沈殿剤と有機溶媒とポリオキシエチレンアルキルエーテルとを混合して逆ミセル(b)を含む溶液を調製する工程、(3)逆ミセル(a)を含む溶液と逆ミセル(b)を含む溶液とを混合して、逆ミセル(c)を含む溶液を調製する工程、および(4)前記の(1)、(2)および(3)から選ばれた少なくとも一つの工程において、炭素微粒子を加える工程。
そして、特許文献1に開示された電極触媒の製造方法においては、電極触媒物質として、ペロブスカイト型のLaMnO3.00等の遷移金属複合酸化物を製造した例も開示されている。
ここで、図1に遷移金属複合酸化物の相図の例を模式的に示す。図1では横軸が組成を、縦軸が温度を示している。図1に示すように遷移金属複合酸化物は同じ組成であっても、温度により結晶構造が異なる低温相11と、高温相12とを有する場合がある。
そして、例えば図1に示すように、温度を上げることで、点線Aに沿って結晶構造が変化し、低温相11であったものが、相転移点13を超えると高温相12に相転移する。また、高温相12から温度下げることで、低温相11へと相転移する。
なお、図1では、温度により2つの相を有する場合を例に示しているが、中間相など温度により複数の異なる結晶構造を取る場合もある。
特開2003−288905号公報
上述のように、遷移金属複合酸化物は、同じ組成でも温度により異なる結晶構造を有する場合がある。しかしながら、例えば特許文献1に開示された電極触媒の製造方法により遷移金属複合酸化物を製造した場合、該遷移金属複合酸化物が相図上、低温相と高温相とを有していても、低温相の結晶構造を有する遷移金属複合酸化物が得られるのみであった。
低温相と、高温相とでは上述のように結晶構造も異なることから、高温相とした場合には低温相とは異なる物性を示す可能性がある。そこで新たな物性を発現させるため、高温相の結晶構造を有する遷移金属複合酸化物を含む遷移金属複合酸化物粒子の製造方法が求められていた。
上記従来技術の問題に鑑み、本発明の一側面では、高温相の結晶構造を有する遷移金属複合酸化物を含む遷移金属複合酸化物粒子の製造方法を提供することを目的とする。
上記課題を解決するため本発明の一側面では、
酸素を含有するキャリアガスにより、遷移金属のイオンを含む溶液から生成したミストを移動させながら、前記遷移金属を含む遷移金属複合酸化物の相転移温度以上に加熱し、前記遷移金属複合酸化物を含む遷移金属複合酸化物粒子を生成する加熱工程と、
前記遷移金属複合酸化物粒子を急冷する急冷工程とを有し、
前記急冷工程において、前記加熱工程で得られた前記遷移金属複合酸化物粒子を、少なくとも内表面が100℃以下に冷却された配管内に導入して冷却速度の絶対値を50℃/分以上とし、
前記急冷工程の後、前記遷移金属複合酸化物粒子を捕集する遷移金属複合酸化物粒子の製造方法を提供する。

本発明の一側面によれば、高温相の結晶構造を有する遷移金属複合酸化物を含む遷移金属複合酸化物粒子の製造方法を提供することができる。
遷移金属複合酸化物の相図の説明図。 本実施形態の遷移金属複合酸化物粒子の製造方法を実施する遷移金属複合酸化物粒子製造装置の一構成例の説明図。 本実施形態の遷移金属複合酸化物粒子の製造方法を実施する遷移金属複合酸化物粒子製造装置の他の構成例の説明図。 本実施形態の遷移金属複合酸化物粒子の製造方法を実施する遷移金属複合酸化物粒子製造装置の他の構成例の説明図。
本開示の一実施形態(以下「本実施形態」と記す)に係る遷移金属複合酸化物粒子の製造方法の具体例を、以下に図面を参照しつつ説明する。なお、本発明はこれらの例示に限定されるものではなく、特許の請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内での全ての変更が含まれることが意図される。
以下、本発明の遷移金属複合酸化物粒子の製造方法の一構成例について説明する。
本実施形態の遷移金属複合酸化物粒子の製造方法は、以下の工程を有することができる。
酸素を含有するキャリアガスにより、遷移金属のイオンを含む溶液から生成したミストを移動させながら、該遷移金属を含む遷移金属複合酸化物の相転移温度以上に加熱し、遷移金属複合酸化物を含む遷移金属複合酸化物粒子を生成する加熱工程。
遷移金属複合酸化物粒子を急冷する急冷工程。
本発明の発明者は、高温相の結晶構造を有する遷移金属複合酸化物を含む遷移金属複合酸化物粒子の製造方法について鋭意検討を行った。
そして、遷移金属のイオンを含む水溶液をミスト状にし、酸素を含有するキャリアガスを含む環境下で、該遷移金属を含む遷移金属複合酸化物の高温相への相転移温度よりも高温まで加熱し、遷移金属複合酸化物粒子を製造する。次いで、得られた遷移金属複合酸化物粒子を急冷することで、高温相における結晶状態を維持した遷移金属複合酸化物を含む遷移金属複合酸化物粒子が得られることを見出した。
以下、図面を用いながら各工程について説明する。なお、図中の同じ部材については同じ番号を付し、説明を省略する。
(加熱工程)
加熱工程では、酸素を含有するキャリアガスにより、遷移金属のイオンを含む溶液から生成したミストを移動させながら、加熱を行うことができる。
例えば、図2に示した遷移金属複合酸化物粒子製造装置20を用いて実施することができ、配管21内に、遷移金属のイオンを含む溶液から生成したミスト22、及び酸素を含有するキャリアガス23を供給することができる。
遷移金属のイオンを含む溶液としては、製造する遷移金属複合酸化物粒子に含まれる遷移金属複合酸化物に応じて選択することができ、特に限定されるものではない。例えば、La、Ni、Fe、Mn、Co、Ta、Zn、Zr、Hf、Rh、Ru、Ir、Mo、Pt、Lu、Re、Bi、Mo等から選択された1種類以上の遷移金属のイオンを含むことができる。また、製造する遷移金属複合酸化物の組成にあわせて、遷移金属以外の元素のイオンも併せて含むこともできる。例えば、Mg、Ca、Sr、Ba等のアルカリ土類金属や、Ga、Sn等から選択される1種類以上の金属元素等のイオンも含むこともできる。
遷移金属のイオンを含む溶液は、例えば溶媒に、遷移金属の塩や、遷移金属単体等を添加することで調製することができる。遷移金属の塩を用いる場合、その形態は特に限定されないが、例えば硝酸塩、塩酸塩、酢酸塩、アルコキシド等から選択された1種類以上を用いることができる。
遷移金属のイオンを含む溶液の溶媒は特に限定されず、例えば水や、アルコール等の有機溶媒等から選択された1種類以上を好ましく用いることができる。
なお、遷移金属のアルコキシドは、溶媒を用いることなくそのまま原料として用いることもできる。また、遷移金属単体、すなわち遷移金属そのものは例えばアルコールに溶解させて遷移金属のイオンを含む溶液とすることもできる。
遷移金属複合酸化物粒子を製造する際、加熱工程に供給する遷移金属のイオンを含む溶液は1種類に限定されない。例えば、2種類以上の遷移金属のイオンを含む溶液を供給することもできる。
製造する遷移金属複合酸化物粒子が含む遷移金属複合酸化物が、酸素以外にLaとNiのように2種類以上の元素を含有する場合、遷移金属のイオンを含む溶液として、酸素以外の全ての元素、例えばLa及びNiのイオンを含む1種類の溶液を用いることもできる。また、遷移金属のイオンを含む溶液を例えばLaイオンを含有する溶液と、Niイオンを含有する溶液とのように、2種類以上の溶液に分けて加熱工程に供給し、例えば配管内等で混合するように構成することもできる。
遷移金属のイオンを含む溶液をミストにする方法は特に限定されないが、例えばスプレーノズルや、超音波等から選択される1種類以上の方法を用いてミスト化することができる。遷移金属のイオンを含む溶液をミストにする際、そのサイズは特に限定されるものではなく、例えば製造する遷移金属複合酸化物粒子に要求される粒子サイズ等に応じて任意に選択することができる。
酸素を含有するキャリアガスについては酸素を含有していればよく、酸素の含有割合や、酸素以外の成分については特に限定されるものではない。例えば空気等を用いることもできる。ただし、加熱工程において遷移金属複合酸化物粒子を生成する際に、副生成物の発生を抑制できるように、酸素以外の成分は、不活性ガスであることが好ましい。不活性ガスとしては、窒素、ヘリウム、アルゴン等から選択された1種類以上を用いることが好ましく、特にヘリウム、アルゴンから選択された1種類以上を用いることがより好ましい。
酸素を含有するキャリアガス中の酸素の含有割合は上述のように特に限定されないが、例えば5体積%以上であることが好ましく、20体積%以上とすることがより好ましい。なお、酸素を含有するキャリアガスは酸素のみから構成することもできるため、酸素を含有するキャリアガス中の酸素の含有割合は100体積%以下とすることができる。
加熱工程では、例えば加熱手段24により配管21内部を加熱し、配管21内に供給した遷移金属のイオンを含む溶液を加熱することができる。なお、図2では配管21を水平に配置した例を示したが、係る形態に限定されるものではなく、後述する様に垂直方向に配置したり、傾斜させて配置することもできる。
加熱手段としては特に限定されるものではなく、抵抗加熱や、高周波加熱、火炎等から選択された1種類以上の手段を用いることができる。なお、図2では1つの加熱手段を用いて加熱した例を示しているが係る形態に限定されず、複数の加熱手段を用いることもできる。また、加熱手段24として、図2では配管21の外周に設けた例を示したが係る形態に限定されない。例えば遷移金属のイオンを含む溶液から生成したミストと、キャリアガスとの搬送経路に加熱手段として火炎等を設けて加熱することもできる。
加熱工程では、例えば、遷移金属のイオンを含む溶液の溶媒を乾燥し、遷移金属の塩の熱分解、及び酸化反応の促進を連続的に行うことができる。なお、加熱工程では酸素を含有するキャリアガスにより、遷移金属のイオンを含む溶液から生成したミストを移動させながら、該遷移金属を含む遷移金属複合酸化物の相転移温度以上に加熱することができる。このため、より具体的には加熱工程では、ミストの溶媒を乾燥し、得られた遷移金属の金属塩の熱分解や、酸化反応を行って、該遷移金属を含む遷移金属複合酸化物を得ることができる。
加熱工程における加熱温度は特に限定されるものではないが、加熱工程により高温相の遷移金属複合酸化物を生成できるように、遷移金属複合酸化物の相転移温度以上の温度に加熱することが好ましい。加熱工程を温度設定の異なる複数の加熱設備で構成することも可能であるが、その場合は、キャリアガスの流れ方向下流側の加熱設備により遷移金属複合酸化物の相転移温度以上の温度に加熱することが好ましい。なお、既述の様に、遷移金属複合酸化物は、温度を変化させることで、低温相と高温相以外に中間相等の複数の相を有する場合もある。このため、ここでいう相転移温度以上の温度とは、所望する相であって、室温における結晶相以外の相に相転移する温度以上の温度を意味する。
本実施形態の遷移金属複合酸化物粒子の製造方法では、後述する急冷工程で十分な温度勾配を与えるため、例えば200℃以上に結晶構造の相転移点を有する遷移金属複合酸化物を含む遷移金属複合酸化物粒子を製造することが好ましい。このため、加熱工程では、例えば200℃以上に加熱することが好ましい。
本実施形態の遷移金属複合酸化物粒子の製造方法では、特に、400℃以上に結晶構造の相転移点を有する遷移金属複合酸化物を含む遷移金属複合酸化物粒子を製造することがより好ましい。このため、加熱工程では、例えば400℃以上に加熱することがより好ましい。
なお、遷移金属複合酸化物の相転移温度は、図1に示したように相図からも知ることができるが、例えばDSC(Differential scanning calorimetry:示差走査熱量計)等を用いて実験的に測定することもできる。
以上の加熱工程を実施することで、高温相の遷移金属複合酸化物を含む遷移金属複合酸化物粒子25を生成することができる。
(急冷工程)
次に急冷工程の構成例について説明する。
急冷工程では、加熱工程で得られた高温相の遷移金属複合酸化物を含む遷移金属複合酸化物粒子を急冷することで、高温相の状態を維持した遷移金属複合酸化物を含む遷移金属複合酸化物粒子を生成することができる。これは、加熱工程で製造した高温相の遷移金属複合酸化物を急冷した場合、低温相の原子配置に戻ることができず、高温相の結晶構造を維持するためと考えられる。このため、加熱工程と、急冷工程とは連続して実施することが好ましい。
急冷工程における冷却速度は特に限定されないが、例えば冷却速度が−50℃/分以上であることが好ましく、−100℃/分以上であることが好ましい。なお、冷却速度が−50℃/分以上、−100℃/分以上とは、それぞれ冷却速度の絶対値が50℃/分以上、100℃/分以上であることを意味している。
なお、急冷工程における冷却速度は速い方がよく、特に制限されるものではないが、装置上の限界等もあることから、例えば−5000℃/分以下とすることができる。
急冷の手段は特に限定されないが、例えば図2に示したように、配管21の周囲に冷却手段26を設けておき冷却することで、配管21内を搬送されている遷移金属複合酸化物粒子25を急冷することができる。この場合、配管21の冷却手段26を設けた部分の内表面26aは100℃以下まで冷却されていることが好ましい。すなわち、急冷工程では、加熱工程で得られた遷移金属複合酸化物粒子25を、少なくとも内表面が100℃以下に冷却された配管内に導入することが好ましい。
これは、遷移金属複合酸化物粒子25を、少なくとも内表面が100℃以下に冷却された配管21内に導入することで、例えば遷移金属複合酸化物粒子の少なくとも一部は配管の内表面に衝突や接触することで急冷できるからである。また、残部の遷移金属複合酸化物粒子についても、配管の内表面との間でキャリアガス等を介して熱交換を行い急冷できるからである。
なお、配管21の冷却手段26を設けた部分の内表面26aの温度の下限値は特に限定されないが、例えば0℃以上とすることができ、冷却手段26の運転に過度のエネルギーを要しないように、10℃以上とすることが好ましい。
冷却手段26の具体的な構成は特に限定されないが、例えば配管21の冷却する箇所に外部から冷風を供給する手段や、配管21の冷却する箇所に冷却水等の冷却媒体の配管を設けておき冷却媒体を供給する手段等が挙げられる。
冷却手段26を用いて急冷した後は、捕集手段27により遷移金属複合酸化物粒子25を捕集、回収することができる。なお、捕集手段27としては、例えばバグフィルターやガラスフィルター等の各種フィルターを用いることができる。
急冷工程において、加熱工程で得られた遷移金属複合酸化物粒子を急冷する手段は上述の冷却手段を用いる構成に限定されるものではない。
例えば急冷工程において、加熱工程で得られた遷移金属複合酸化物粒子と、室温以下、例えば27℃以下に冷却された冷却用キャリアガスとを混合し、急冷することもできる。
具体的には、図3に示した遷移金属複合酸化物粒子製造装置30のように、加熱工程で得られた遷移金属複合酸化物粒子25の搬送経路に、冷却用キャリアガス供給配管31から冷却された冷却用キャリアガス32を供給し、遷移金属複合酸化物粒子25を急冷することができる。
冷却用キャリアガスの種類は特に限定されるものではなく、例えば空気、酸素、不活性ガス等から選択された1種類以上を用いることができる。なお、不活性ガスとしては、窒素、ヘリウム、アルゴン等から選択された1種類以上のガスを用いることができる。冷却用キャリアガスとしては、特に空気、酸素、窒素、ヘリウム、アルゴン等から選択された1種類以上のガスを用いることがより好ましい。
冷却用キャリアガスは、上述のように室温以下に冷却されていれば足り、その温度の下限は特に限定されないが、例えば−196℃以上とすることができる。特に、冷却用キャリアガスの冷却に過度のエネルギーを要しないように、冷却用キャリアガスの温度は−150℃以上とすることが好ましい。
遷移金属複合酸化物粒子25を急冷した後は、図2に示した遷移金属複合酸化物粒子製造装置20の場合と同様に捕集手段27により遷移金属複合酸化物粒子25を捕集、回収することができる。なお、図3に示した遷移金属複合酸化物粒子製造装置30においても、既述の遷移金属複合酸化物粒子製造装置20の場合と同様に加熱工程を実施できるため、ここでは説明を省略する。後述する遷移金属複合酸化物粒子製造装置40についても同様である。
また、例えば急冷工程において、加熱工程で得られた遷移金属複合酸化物粒子を、80℃以下の冷却用液体に投入することで急冷することも効果的である。
具体的には例えば図4に示した遷移金属複合酸化物粒子製造装置40のように、冷却用液体41を用意しておき、冷却用液体41に対して加熱工程で得られた遷移金属複合酸化物粒子25を投入することで冷却することができる。なお、図4に示すように、キャリアガスを外部へ排出できるように、配管21には、排気管42をあわせて設けておくことができる。排気管42には、必要に応じて冷却用液体41に投入されなかった遷移金属複合酸化物粒子25を捕集できるように図示しないフィルター等の捕集手段を設けておくこともできる。
冷却用液体41の種類は特に限定されず、例えば水や、アルコール等の有機溶媒等を用いることができる。また液体窒素や液体ヘリウム等の極低温液体を冷却用液体41として用いることも可能である。極低温液体を冷却用液体として用いた場合、特に急速に冷却できるため、急冷が非常に効果的になるだけでなく、極低温液体は常温よりも低い温度にて気化するため、生成された遷移金属複合酸化物粒子を容易に回収しやすい。なお、極低温液体とは、常圧(1atm)において、常温(27℃)よりも低い温度に沸点を有する気体を液化させた液化気体を意味する。
冷却用液体41としては、得られた遷移金属複合酸化物粒子が溶解しにくい材料を用いることが好ましい。また、得られた遷移金属複合酸化物粒子が溶解しにくいように、pH等を調整しておくことが好ましい。
例えば、遷移金属の硝酸塩、塩酸塩、酢酸塩等の塩を用いた遷移金属のイオンを含む溶液からミストを調製し、加熱工程に供した場合、溶媒の揮発分や、遷移金属の塩の分解物(NOやClなど)が冷却用液体41に溶解し、冷却用液体41のpHが低下しやすくなる。このため、生成される遷移金属複合酸化物粒子が酸性の液体に溶解し易い場合は、冷却用液体41を予めアルカリ性となるようにpHを調整し、遷移金属複合酸化物粒子の生成と同時に冷却用液体のpHが低下して酸性化することを抑制することが好ましい。冷却用液体をアルカリ性となるようにpHを調整する手段は特に限定されない。例えば、水酸化ナトリウムや水酸化カリウム等の安価で取り扱いやすいアルカリ性物質を冷却用液体41に添加する方法などが挙げられる。
また、生成される遷移金属酸化物粒子がアルカリ性の液体に溶存し易い場合には、冷却用液体41が酸性となるように予めpHを調整することが好ましい。
なお、急冷工程を行っている間に冷却用液体41の温度が上昇しないように、図示しない冷却手段を設けたり、冷却用液体41を交換や補充できるように構成することもできる。また、冷却用液体のpHを所望の範囲に維持するように、必要に応じてアルカリ性物質や、酸性物質等のpH調整剤を冷却用液体に供給するように構成することもできる。pH調整剤の形態は特に限定されないが、容易に供給、混合できるように液体状であることが好ましい。
冷却用液体41の温度は、80℃以下が好ましく、60℃以下であることがより好ましい。
冷却用液体41は、80℃以下に冷却されていればよく、その温度の下限値は特に限定されない。ただし、冷却用液体41が固化したり、冷却するために過度のエネルギーを使用することを抑制するため、冷却用液体41の温度は、例えば10℃以上とすることが好ましく、15℃以上とすることがより好ましい。また、既述のように冷却用液体として極低温液体を用いる場合には、極低温液体の沸点等に応じて冷却用液体の温度の下限値を定めることができる。
なお、ここまで急冷工程の構成例を3つ挙げて説明したが、これらの急冷工程の構成例は組み合わせて用いることもできる。すなわち、例えば加熱工程で得られた遷移金属複合酸化物粒子を、少なくとも内表面が100℃以下に冷却された配管内に導入し、かつ室温以下に冷却された冷却用キャリアガスとを混合して急冷することもできる。
また、例えば加熱工程で得られた遷移金属複合酸化物粒子と、室温以下に冷却された冷却用キャリアガスとを混合した後、該遷移金属複合酸化物粒子を、80℃以下の液体に投入し、急冷することもできる。
ここでは組み合わせを例示して示したが、これらの組み合わせ例に限定されるものではない。
本実施形態の遷移金属複合酸化物粒子の製造方法により得られる遷移金属複合酸化物粒子は、高温相の遷移金属複合酸化物を含有することができる。そして、急冷工程後に得られる遷移金属複合酸化物粒子に含まれる遷移金属複合酸化物の、結晶単位胞の体積は、低温相の遷移金属複合酸化物の結晶単位胞の体積に対して1%以上増加していることが好ましい。
遷移金属複合酸化物の高温相では酸素欠損等の発生により、場合によっては遷移金属の価数変化も伴いながら、遷移金属間の結合が弱くなるため、結晶単位胞の体積が低温相の場合と比較して大きくなっている。このため、得られる遷移金属複合酸化物粒子が含有する遷移金属複合酸化物の結晶単位胞の体積が、低温相の結晶単位胞と比較して1%以上増加している場合には、得られた遷移金属複合酸化物粒子が、低温相とは異なる相の遷移金属複合酸化物を十分に含んでいることを示しているからである。ここでの低温相とは、遷移金属複合酸化物の室温での結晶相を意味しており、高温相は、低温相よりも高い温度での結晶相を意味している。高温相は対称性の高い立方晶である場合が多いが、化合物の種類に依存し、必ずしも立方晶には限定されない。
急冷後に得られる遷移金属複合酸化物の結晶単位胞の体積は、例えば得られた遷移金属複合酸化物粒子について測定したXRD(X線回折)パターンから格子定数を算出し、該格子定数を用いて求めることができる。低温相の結晶単位胞の体積は、低温相のXRDパターンを測定し、同様に算出することもできるが、例えば文献値等を用いることもできる。
本実施形態の遷移金属複合酸化物粒子の製造方法により得られる遷移金属複合酸化物粒子は、その平均粒径が5nm以上1000nm以下であることが好ましい。
なお、平均粒径は、レーザー回折・散乱法によって求めた粒度分布における積算値50%での粒径を意味する。以下、本明細書においては平均粒径は同様に定義される。
本実施形態の遷移金属複合酸化物粒子の製造方法により製造する遷移金属複合酸化物粒子の種類は特に限定されるものではない。
例えば水溶液中における酸素還元反応を促進する酸素還元触媒、特に燃料電池、空気電池等の電気化学デバイスの空気極に用いられる酸素還元触媒や、排ガス浄化用触媒、天然ガス等の燃焼用触媒、窒素酸化物等の有害物質の吸着剤等に利用できる触媒等の各種触媒用の遷移金属複合酸化物粒子を製造できる。
本実施形態の遷移金属複合酸化物粒子の製造方法によれば、具体的には例えば、LaNiO、LaFeO、LaMnO、LaCoO、La(Mg2/3Ta1/3)O、ZnFe、CoGa、NiGa、SrZrO、SrZrO、SrHfO、SrHfO、CaHfO、SrRhO、SrRuO、CaRuO、BaRuO、SrRuO、SrRu、SrIrO、CaIrO、BaIrO、SrMoO、CaMoO、BaMoO、SrMoO、SrMoO、SrMoO、CaMoO、BaMoO、SrMoO、SrPt、BaPt、SrIrO、SrIrO、SrPtO、LaRuO、LaRhO、LuRu、LaRu19、LuIr、LaRe19、BiRu、BiRu11、BiIr、SnHfO、SrRhO、SrRuO、CaRuO、BaRuO、LaRuO、LaRhO、SrRuO、SrRu,SrIrO、CaIrO、BaIrO、SrMoO、CaMoO、BaMoO、SnHfO、SrMoO、SrMo、SrPt、BaPt、SrIrO、SrZrO、SrZrO、SrHfO、SrHfO、CaHfO、SrRuO、CaRuO、LaRuO、LaRhO、SrIrO,SrMoO、CaMoO、BaMoO、SnHfO、SrZrO、SrHfO、CaHfO、SrRhO、SrRuO、SrRu、SrMoO、SrMo、SrPt、BaPt、SrIrO、SrZrO、SrHfO、BiRh、BiRu、LuRu、BiIr、LuIr等から選択された1種類以上の遷移金属複合酸化物を含む遷移金属複合酸化物粒子を製造することができる。
特に、本実施形態の遷移金属複合酸化物粒子の製造方法により得られる遷移金属複合酸化物粒子が、ペロブスカイト型構造またはスピネル型構造を有する遷移金属複合酸化物を含むことが好ましい。ペロブスカイト型構造またはスピネル型構造を有する遷移金属複合酸化物は、触媒等に従来から用いられている。そして、本実施形態の遷移金属複合酸化物粒子の製造方法によれば、高温相の遷移金属複合酸化物を含むため、従来とは異なる触媒活性を発現したり、特に触媒活性の高い遷移金属複合酸化物粒子とすることができるからである。
以上に説明した本実施形態の遷移金属複合酸化物粒子の製造方法によれば、相転移温度よりも高温まで加熱し、遷移金属複合酸化物粒子を製造した後急冷することで、高温相における結晶状態を維持した遷移金属複合酸化物を含む遷移金属複合酸化物粒子が得られる。
また、加熱、急冷を行う際、遷移金属のイオンを含む溶液をミスト状にすることで、該遷移金属のイオンを含む溶液を加熱して遷移金属複合酸化物の粒子を生成した際に微細な粒子とすることができる。このため、急冷する際に、各粒子の中心まで急冷することができ、特に高温相を多く含む遷移金属複合酸化物粒子とすることができる。
以下に具体的な実施例を挙げて説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
[実施例1]
図2に示した遷移金属複合酸化物粒子製造装置20を用いて遷移金属複合酸化物としてCaMnOを含む遷移金属複合酸化物粒子の製造、評価を行った。なお、CaMnOは、約230℃に相転移点を有しており、高温相は立方晶に、低温相は斜方晶になる。また、高温相はペロブスカイト型構造を有する。
遷移金属のイオンを含む溶液を以下の手順により調製した。
まず、溶媒として純水を用意し、該純水に、調製する遷移金属複合酸化物に対応する遷移金属を含有する塩であるMn(NOと、Ca(NOとをモル比で1:1の割合で添加した。この際、得られる遷移金属のイオンを含む溶液の、Mnと、Caとの合計の金属濃度が0.1mol/Lとなるように調製した。
次いで、図2に示した遷移金属複合酸化物粒子製造装置20の配管21に、調製した遷移金属のイオンを含む溶液をスプレーノズルによりミスト状にして0.1mL/分の速度で供給し、あわせてキャリアガスとして酸素ガスを供給した。なお、酸素ガスは、酸素含有量が100vol%の気体となる。また、キャリアガスの供給量は、1L/分とした。
なお、配管21は外周から加熱手段24である電熱ヒーターにより加熱しており、配管21内部が700℃以上となるように加熱している。
以上のように、加熱した配管21内に、遷移金属のイオンを含む溶液と、キャリアガスである酸素とを供給し、加熱された領域を通過することで、加熱工程を実施した。これにより、高温相の遷移金属複合酸化物を含む遷移金属複合酸化物粒子を製造した。
そして、配管21の加熱手段24に5cmだけ離して隣接した領域であって、キャリアガス等の流れ方向の下流側を、冷却手段26により冷却した。なお、冷却手段26は、配管21に対して冷風を供給し、配管21の冷却手段26を設けた領域を冷却するように構成している。冷却手段26を設けている領域以外については冷却しないように、冷風を供給する領域を調整しておいた。
そして、冷却手段26を設けた領域の配管21の内表面26aは予め100℃まで冷却しておいた。また、以下の急冷工程を実施している間同じ温度に保持されていることが確認できている。なお、配管21内の加熱手段24から冷却手段26の位置まで粉末が移動することによる冷却速度は、キャリアガスの供給量から見積もったところ、約−200℃/分であった。
上述の加熱工程を実施し、得られた遷移金属複合酸化物粒子25は、配管21内をキャリアガスにより搬送され、冷却手段26を設けた領域を通過する際に急冷される(急冷工程)。
その後、捕集手段27として設けたガラスフィルターにより、製造した遷移金属複合酸化物粒子を回収した。加熱手段24のキャリアガスの流れ方向下流側の端部から捕集手段27までの距離は200mmとした。
得られた遷移金属複合酸化物粒子について、粉末X線回折装置(PANalytical社製、X'Pert PRO)を用いて、XRD(X−ray diffraction)測定を行い、相同定を行ったところ、遷移金属複合酸化物であるCaMnOの高温相である立方晶のCaMnOを含むことが確認できた。
さらに、得られた遷移金属複合酸化物粒子についてXRDを精密測定し、得られたXRDパターンから格子定数、単位体積胞を算出したところ、後述する比較例1において、従来技術により合成したCaMnOの低温相の単位胞体積よりも1.1%増加していることを確認できた。
また、得られた遷移金属複合酸化物粒子について、レーザー回折散乱式粒度分布測定装置(日機装株式会社製、マイクロトラックHRA)を用いて平均粒径を測定したところ、34μmであった。
合成したCaMnO粒子の酸素還元活性について、回転ディスク電極を用いた対流ボルタンメトリー法により評価した。
測定条件等の詳細は、下記の非特許文献に従って行った。
D. Zhang, Y. Song, Z. Du, L. Wang, Y. Li and J. B. Goodenough, "Active LaNi1-xFexO3 bifunctional catalysts for air cathodes in alkaline media," Journal of Materials Chemistry. A, 3 (2015) 9421-9426.
上記非特許文献に従って、ディスク電極にはグラッシーカーボンを用いた。そして、得られたCaMnOの遷移金属複合酸化物粒子を用いて触媒インクを作製し、これをグラッシーカーボン表面上に塗布・乾燥して触媒電極を形成した。
次いで、溶存酸素量を飽和状態にした30℃の1.0Mの水酸化カリウム水溶液を電解液として、電解液中に触媒電極を配置し、1600rpmの回転数で電極を回転させながら電気化学反応で発生した電流値を測定して、リニアスイープボルタモグラムを測定した。リニアスイープボルタモグラムの−25μAcm−2おける電位、すなわちオンセット電位から試料の酸素還元活性を評価した。オンセット電位が高いほど酸素還元活性は高いことを示す。実施例1で作製したCaMnOの遷移金属複合酸化物粒子のオンセット電位は0.81Vであった。
[実施例2]
図3に示した遷移金属複合酸化物粒子製造装置30を用いた点以外は、実施例1と同様にして遷移金属複合酸化物として、CaMnOの遷移金属複合酸化物粒子の製造、評価を行った。
なお、加熱工程は実施例1と同じ条件で実施したため、ここでは説明を省略する。
図3に示した遷移金属複合酸化物粒子製造装置30では、加熱工程で得られた遷移金属複合酸化物粒子25が搬送されている配管21に対して、冷却用キャリアガス供給配管31から冷却された冷却用キャリアガス32を供給できるように構成されている。このため、本実施例では、加熱工程を実施し、得られた遷移金属複合酸化物粒子は、配管21内をキャリアガスにより搬送され、冷却用キャリアガス32と混合することで急冷した(急冷工程)。冷却用キャリアガス32としては−100℃に冷却された窒素ガス(窒素100vol%)を用いた。冷却速度は、冷却用キャリアガスとの混合部のキャリアガスの温度、加熱手段24の出口の温度、キャリアガスの供給量、冷却用キャリアガスの供給量から見積もったところ、約−600℃/分であった。
その後、捕集手段27として設けたガラスフィルターにより、製造した遷移金属複合酸化物粒子を回収した。
得られた遷移金属複合酸化物粒子のXRD測定を行ったところ、遷移金属複合酸化物であるCaMnOの高温相である立方晶のCaMnOを含むことが確認できた。
さらに、得られた遷移金属複合酸化物粒子についてXRDを精密測定し、得られたXRDパターンから格子定数、単位体積胞を算出したところ、後述する比較例1において、従来技術により合成したCaMnOの低温相の単位胞体積よりも1.5%増加していることを確認できた。
また、得られた遷移金属複合酸化物粒子について、レーザー回折散乱式粒度分布測定装置を用いて平均粒径を測定したところ、37μmであった。
そして実施例1と同様の方法で酸素還元活性を評価したが、オンセット電位は0.81Vであり、比較例1と比較例2に対して高い値を示した。
[実施例3]
図4に示した遷移金属複合酸化物粒子製造装置40を用いた点以外は、実施例1と同様にして遷移金属複合酸化物としてCaMnOを含む遷移金属複合酸化物粒子の製造、評価を行った。
なお、加熱工程は、配管21を垂直方向に配置した点以外は実施例1と同じ条件で実施したため、ここでは説明を省略する。
そして、図4に示した遷移金属複合酸化物粒子製造装置40では、加熱工程で得られた遷移金属複合酸化物粒子25を、30℃の冷却用液体41に投入することで急冷した(急冷工程)。なお、冷却用液体41としては0.1Mの水酸化カリウム水溶液を用い、急冷工程の間、冷却用液体41を図示しない冷却手段により30℃に保持した。冷却速度は、加熱手段24の出口の温度、冷却用液体41の温度、キャリアガスの供給量から見積もったところ、約−1000℃/分であった。遷移金属複合酸化物粒子の製造中、冷却用液体41はアルカリ性、すなわちpHが7を超える範囲に維持されていることを確認した。
なお、キャリアガス等、冷却用液体41に捕集されない成分は排気管42から排出されるように構成されている。
得られた遷移金属複合酸化物粒子は遠心分離機による固液分離とイオン交換水による通水とを繰り返すことで洗浄した後に回収した。回収した遷移金属複合酸化物粒子についてXRD測定を行ったところ、遷移金属複合酸化物であるCaMnOの高温相である立方晶のCaMnOを含むことが確認できた。
さらに、得られた遷移金属複合酸化物粒子についてXRDを精密測定し、得られたXRDパターンから格子定数、単位体積胞を算出したところ、後述する比較例1において、従来技術により合成したCaMnOの低温相の単位胞体積よりも2.8%増加していることを確認できた。
また、得られた遷移金属複合酸化物粒子について、レーザー回折散乱式粒度分布測定装置を用いて平均粒径を測定したところ、26μmであった。
そして実施例1と同様の方法で酸素還元活性を評価したが、オンセット電位は0.83Vであり、比較例1と比較例2に対して高く、実施例1と実施例2と比較しても更に向上していた。
[比較例1]
Ca(NOと、Mn(NOを原料として用いて、以下に説明する従来の製造方法によりCaMnOを含む遷移金属複合酸化物粒子の製造、評価を行った。
溶媒として純水を用意し、該純水に、調製する遷移金属複合酸化物に対応する遷移金属を含有する塩であるMn(NOと、Ca(NOとをモル比で1:1の割合で添加した。この際、得られる遷移金属のイオンを含む溶液のMnと、Caとの合計の金属濃度が0.1mol/Lとなるように調製した。
調製した溶液をビーカーに入れ、100℃にて加熱して溶媒を乾燥させてCaとMnの硝酸塩の混合物を得た。
次いで、得られた硝酸塩の混合物をアルミナ製のルツボに入れ、電気炉内にて700℃で1時間加熱して焼成し、熱分解と反応を行って、遷移金属複合酸化物としてCaMnOを含む遷移金属複合酸化物粒子を合成した。この際の焼成は大気中で行い、700℃で1時間の焼成後は電気炉内で冷却したが、その冷却速度は700〜100℃において約−2℃/分であった。
得られた遷移金属複合酸化物粒子について、粉末X線回折装置を用いて、XRD測定を行い、相同定を行ったところ、遷移金属複合酸化物であるCaMnOの低温相である斜方晶のCaMnOを含むことが確認できた。また、得られたXRDパターンからCaMnOの高温相は確認できなかった。
また、得られた遷移金属複合酸化物粒子について、レーザー回折散乱式粒度分布測定装置を用いて平均粒径を測定したところ、70μmであった。
そして実施例1と同様の方法で酸素還元活性を評価したが、オンセット電位は0.76Vであり、実施例1と比べて低かった。
[比較例2]
実施例1において冷却手段26を設けず、加熱手段24のキャリアガスの流れ方向下流側の端部から捕集手段27までの距離を600mmとした点以外は、実施例1と同様の方法、同様の条件で、遷移金属複合酸化物としてCaMnOの遷移金属複合酸化物粒子の製造、評価を行った。すなわち、本比較例では急冷工程を実施しなかった。
捕集手段27の温度は90℃であったことから、生成された遷移金属複合酸化物粒子が加熱手段24から捕集手段27まで移動する間の冷却速度は、キャリアガスの供給量から見積もったところ、約−20℃/分であった。
得られた遷移金属複合酸化物粒子について、粉末X線回折装置を用いて、XRD測定を行い、相同定を行ったところ、遷移金属複合酸化物であるCaMnOの低温相である斜方晶のCaMnOが確認できた。また、得られたXRDパターンからCaMnOの高温相は確認できなかった。
さらに、得られた遷移金属複合酸化物であるCaMnOの粒子についてXRD測定を精密測定し、得られたXRDパターンから格子定数、単位体積胞を算出したところ、比較例1において合成したCaMnOの低温相の単位胞体積とほぼ同じであることを確認できた。
また、得られた遷移金属複合酸化物粒子について、レーザー回折散乱式粒度分布測定装置を用いて平均粒径を測定したところ、38μmであった。
そして実施例1と同様の方法で酸素還元活性を評価したが、オンセット電位は0.78Vであり、実施例1と比べて低かった。
[実施例4]
図4に示した遷移金属複合酸化物粒子製造装置40を用いて遷移金属複合酸化物としてLaNiOを含む遷移金属複合酸化物粒子の製造、評価を行った。なお、LaNiOは、300℃付近に相転移点を有しており、高温相は立方晶に、低温相は三方晶になる。また、高温相はペロブスカイト型構造を有する。
遷移金属を含有する塩であるLa(NO・6HOとNi(NO・6HOとをモル比で1:1の割合で添加した。この際、得られる遷移金属のイオンを含む溶液の遷移金属Laと、Niとの合計の金属濃度が0.1mol/Lとなるように調製した。
次いで、遷移金属複合酸化物粒子製造装置40の配管21に、調製した遷移金属のイオンを含む溶液をスプレーノズルによりミスト状にして0.1mL/分の速度で供給し、あわせてキャリアガスとして酸素ガスを供給した。なお、酸素ガスは、酸素含有量が100vol%の気体となる。また、キャリアガスの供給量は、1L/分とした。
なお、配管21は外周から加熱手段24である電熱ヒーターにより加熱しており、配管21内部が800℃以上となるように加熱している。
以上のように、加熱した配管21内に、遷移金属のイオンを含む溶液と、キャリアガスである酸素とを供給し、加熱された領域を通過することで加熱工程を実施した。これにより、高温相の遷移金属複合酸化物を含む遷移金属複合酸化物粒子を製造した。
そして、得られた遷移金属複合酸化物粒子を、冷却用液体41に投入することで急冷した(急冷工程)。
なお、冷却用液体41には実施例3と同様に0.1Mの水酸化カリウム水溶液を用い、遷移金属複合酸化物粒子を製造している間は、冷却用液体41がアルカリ性に維持されていることを確認した。また、急冷工程の間、冷却用液体41を図示しない冷却手段により5℃に保持した。
冷却速度は、加熱手段24の出口の温度、冷却用液体41の温度、キャリアガスの供給量から見積もったところ、約−1200℃/分であった。
遷移金属複合酸化物粒子の製造後、実施例3と同様の方法で冷却用液体41から遷移金属複合酸化物粒子を洗浄、回収した。得られた遷移金属複合酸化物粒子の、XRD測定を行ったところ、遷移金属複合酸化物であるLaNiOの高温相である、立方晶のLaNiOを含むことが確認できた。
さらに、得られた遷移金属複合酸化物粒子についてXRDを精密測定し、得られたXRDパターンから格子定数、単位体積胞を算出したところ、後述する比較例3において、従来の製造方法により合成したLaNiOの低温相の単位胞体積よりも2%増加していることを確認できた。
また、得られた遷移金属複合酸化物粒子について、レーザー回折散乱式粒度分布測定装置を用いて平均粒径を測定したところ、25μmであった。
そして実施例1と同様の方法で酸素還元活性を評価したが、オンセット電位は0.88Vであり、比較例3に対して高く、実施例1と実施例2と比較しても更に高いことを確認できた。
[比較例3]
La(NO・6HOとNi(NO・6HOを原料として用いて、従来の製造方法によりLaNiOの合成を行った。
溶媒として純水を用意し、該純水に、遷移金属を含有する塩であるLa(NO・6HOとNi(NO・6HOとをモル比で1:1の割合で添加した。この際、得られる遷移金属のイオンを含む溶液の遷移金属Niと、Laとの合計の金属濃度が0.1mol/Lとなるように調製した。
この溶液をビーカーに入れ、100℃にて加熱して溶媒を乾燥させてLaとNiの硝酸塩の混合物を得た。この硝酸塩の混合物をアルミナ製のルツボに入れ、電気炉内にて700℃で1時間加熱して焼成し、熱分解反応を行って、LaNiOを合成した。この際の焼成は大気中で行い、800℃で1時間の焼成後は電気炉内で冷却したが、その冷却速度は800〜100℃において約−2.5℃/分であった。
得られた遷移金属複合酸化物粒子について、粉末X線回折装置を用いてXRD測定を行い、相同定を行ったところ、遷移金属複合酸化物LaNiOの低温相である、LaNiOの三方晶を含むことが確認できた。得られたXRDパターンからLaNiOの高温相は確認できなかった。
また、得られた遷移金属複合酸化物粒子について、レーザー回折散乱式粒度分布測定装置を用いて平均粒径を測定したところ、80μmであった。
そして実施例1と同様の方法で酸素還元活性を評価したが、オンセット電位は0.78Vであった。
実施例1〜実施例4の結果から明らかなように、本実施形態の遷移金属複合酸化物粒子の製造方法によれば、従来の製造方法、例えば比較例1〜比較例3の製造方法では得られなかった高温相の結晶構造を有する遷移金属酸化物を含む遷移金属酸化物粒子を、組成によらず容易に製造できることを確認できた。
11 低温相
12 高温相

Claims (6)

  1. 酸素を含有するキャリアガスにより、遷移金属のイオンを含む溶液から生成したミストを移動させながら、前記遷移金属を含む遷移金属複合酸化物の相転移温度以上に加熱し、前記遷移金属複合酸化物を含む遷移金属複合酸化物粒子を生成する加熱工程と、
    前記遷移金属複合酸化物粒子を急冷する急冷工程とを有し、
    前記急冷工程において、前記加熱工程で得られた前記遷移金属複合酸化物粒子を、少なくとも内表面が100℃以下に冷却された配管内に導入して冷却速度の絶対値を50℃/分以上とし、
    前記急冷工程の後、前記遷移金属複合酸化物粒子を捕集する遷移金属複合酸化物粒子の製造方法。
  2. 前記急冷工程において、前記加熱工程で得られた前記遷移金属複合酸化物粒子と、室温以下に冷却された冷却用キャリアガスとを混合する請求項1に記載の遷移金属複合酸化物粒子の製造方法。
  3. 前記急冷工程において、前記加熱工程で得られた前記遷移金属複合酸化物粒子を、80℃以下の液体に投入する請求項1または請求項2に記載の遷移金属複合酸化物粒子の製造方法。
  4. 前記遷移金属複合酸化物粒子は、高温相の前記遷移金属複合酸化物を含有しており、
    前記急冷工程後に得られる前記遷移金属複合酸化物粒子が含有する前記遷移金属複合酸化物の結晶単位胞の体積は、低温相の前記遷移金属複合酸化物の結晶単位胞の体積に対して1%以上増加している請求項1〜請求項のいずれか1項に記載の遷移金属複合酸化物粒子の製造方法。
  5. 前記遷移金属複合酸化物粒子の平均粒径が5nm以上1000nm以下である請求項1〜請求項のいずれか1項に記載の遷移金属複合酸化物粒子の製造方法。
  6. 前記遷移金属複合酸化物粒子が、ペロブスカイト型構造またはスピネル型構造を有する前記遷移金属複合酸化物を含む請求項1〜請求項のいずれか1項に記載の遷移金属複合酸化物粒子の製造方法。
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