JP6858946B2 - カキの採苗方法及び養殖方法 - Google Patents

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Description

本発明は、カキ幼生を採苗器に着底させて採苗を行うカキの採苗方法と、採苗された種ガキを用いてカキを養殖するカキの養殖方法とに関する。
養殖のカキ(牡蠣)は、一般的に、「採苗」と呼ばれる工程と、「抑制」と呼ばれる工程と、「本養殖(筏養殖)」と呼ばれる工程とを経て収穫される。ここで、「採苗」とは、カキの幼生が漂う夏期の海中に採苗器(ホタテの貝殻が用いられることが多い。)を沈め、その採苗器にカキの幼生を付着(着底)させる工程である。また、「抑制」とは、採苗後の採苗器を潮の満ち引きがある浅瀬に設置し、その採苗器に付着したカキが海水に浸かる時間を制限することで、カキの成長を抑制して大きくなり過ぎないようにするとともに、環境の変化に対する抵抗力をカキに付与する工程である。さらに、「本養殖(筏養殖)」とは、抑制後の採苗器を、養分の多い海域に浮かべた筏等から海中に吊るし、採苗器に付着したカキを成長させる工程である。「抑制」には、長い場合で1年程度の期間を要することに加えて、「本養殖(筏養殖)」にも、1年強の期間を要するため、カキの養殖には、通常、2年超もの期間を要する。
ところで、カキの生産量全国1位を誇る広島県においては、近年、採苗の不調により、カキの生産量が減少しつつある。広島県の統計資料によると、広島県のカキの生産量は、平成25年度には21,200トンであったものの、平成26年度には18,700トン、平成27年度には17,100トンとなっている。平成28年度の統計は不明であるが、その2年前の平成26年度の採苗において例年の1割程度に落ち込む業者もあったこと等を考慮すると、さらに厳しい値になることが予想されている。採苗の不調傾向は、広島県だけでなく、他のカキ生産地においても見受けられる。採苗が不調になりつつある原因としては、諸説となえられているが、地球温暖化やそれに伴う異常気象の発生によって、養殖海域の植物プランクトンが減少したことや、養殖海域の海流が変化したことが有力であると言われている。このため、天候等の環境に影響されることなく、カキの採苗を効率よく安定して行うことのできるようにする必要がある。
この点、特許文献1には、カキの養殖方法であって、カキの精子と卵子を受精させる人工受精工程と、受精卵を幼生となるまで水槽内で成長させる受精卵保育工程と、幼生をカキ粉(カキの貝殻を砕いて粉にしたもの)に付着させて種ガキを作る種付け工程と、種ガキを水槽内で成体ガキ(4〜6mm程度の大きさ)に成長させる一次養殖工程と、一次養殖工程を終えた成体ガキを海中の養殖カゴ内でさらに成長させる二次養殖工程とを経るものが提案されている(同文献の請求項1及び段落0010〜0015を参照)。同文献には、この養殖方法を採用することによって、カキが4〜6mm程度の大きさになるまでの工程を、天候異変の影響を受けない陸上設備で行うことができるようになる旨も記載されている(同文献の段落0008,0016を参照)。
特開2008−206437号公報
しかし、特許文献1に記載されたカキの養殖方法は、カキが4〜6mm程度の大きさになるまでの数週間にも亘って、水槽の温度を適温に保ったり、植物プランクトンを給餌したりする必要がある等、人為的な管理を要するものとなっている(同文献の段落0013を参照)。この間には、大量の餌が必要となる。また、カキの幼生は、受精から17日程度が経過してその大きさが300μm前後となるまでは、着底に必要なセメント物質を出すことができないところ、受精から数時間が経過しただけの幼生をカキ粉に付着させ、そのまま水槽内に浸漬するという特許文献1の養殖方法では、カキの幼生が成体となるまで適切に成長していくのかについても疑問がある。
本発明は、上記課題を解決するために為されたものであり、天候等の環境に影響されることなく安定してカキの採苗を行うことができることに加えて、温度管理等の人為的な管理に要する手間を軽減でき、さらに、カキ幼生に人為的に与える餌の量を少なく抑えてコストを抑えることもできるカキの採苗方法を提供するものである。また、採苗後に行われ得る抑制工程や本養殖(筏養殖)工程において、カキを適切に成長させることが可能なカキの採苗方法を提供することも本発明の目的である。さらに、この採苗方法で採苗された種ガキを用いてカキを養殖するカキの養殖方法を提供することも本発明の目的である。
上記課題は、
カキ幼生を採苗器に着底させて採苗を行うカキの採苗方法であって、
不透水性材で隔壁が形成された初期育成用遮蔽型プール内に溜められた海水にカキ幼生(卵の状態のものを含む。)を入れ、そのカキ幼生が所定の大きさになるまで当該初期育成用遮蔽型プールでカキ幼生の育成を行う初期育成工程と、
植物プランクトンを通過させながらも初期育成工程を経たカキ幼生が通過できない大きさの目を有するフィルター材で隔壁が形成された着底用フィルター型プールを海中に浸漬し、当該着底用フィルター型プールに溜められた海水に採苗器と初期育成工程を経たカキ幼生(後述するように、後期育成工程と選別工程とを設ける場合には、後期構成工程と選別工程も経たカキ幼生)とを入れ、カキ幼生を採苗器に着底させる着底工程と
を経ることを特徴とするカキの採苗方法
を提供することによって解決される。
本発明のカキの採苗方法では、上記のように、カキ幼生を、初期育成用遮蔽型プールで所定の大きさになるまで成長させた後、着底用フィルター型プールに入れ替えてさらに成長させ着底させるものとなっている。上記の初期育成用遮蔽型プールと着底用フィルター型プールはいずれも、カキ幼生が外部に逃げることができない構造のものとなっている。このため、採苗器に着底するカキ幼生の個体数を増やし、天候等の環境に影響されにくい状態で採苗を行うことが可能となる。また、成長初期(初期育成工程中)のカキ幼生は、人為的に給餌しなくても成長することができるため、初期育成工程においては給餌する必要が特にない。加えて、初期育成工程後の着底工程は、餌となる植物プランクトンが侵入可能な構造を有する着底用フィルター型プールで行うため、大量の餌を人為的に与える必要がない。したがって、人為的に与える餌の量を大幅に減らすことも可能である。さらに、着底用フィルター型プールには、植物プランクトンだけでなく海水も侵入できる(植物プランクトンが侵入できるのであれば、それよりも小さな水分子も当然に侵入できる。)ようになっているため、着底用フィルター型プール内の海水の温度は、外部の海水の温度に応じて自然に調整される。このため、海水の温度を管理する手間を軽減することも可能となっている。さらにまた、初期育成工程で所定の大きさまで成長したカキ幼生を着底用フィルター型プールで育成するようにしたため、着底用フィルター型プールの隔壁を形成するフィルター材の目の大きさをある程度大きくすることが可能である。このため、着底用フィルター型プールとして、目詰まりがしにくくメンテナンスの容易なものを使用することも可能となっている。
本発明のカキの採苗方法において、初期育成工程を終える具体的な時期は、特に限定されない。しかし、既に述べたように、カキ幼生が着底できるようになるのは、その大きさが300μm前後となる受精後17日程度であるため、それ以前には、初期育成工程を終えておく必要がある。この点、受精後5〜15日経過したときに、初期育成工程を終えるようにすると好ましい。というのも、受精後5〜15日程度であれば、カキ幼生は、人為的に餌を与えなくても成長できる(カキ幼生が自ら保有する養分又は初期育成用遮蔽型プールに予め入れられた海水の養分のみで成長できる)からである。カキ幼生は、通常、受精後5日で100μm程度となり、受精後15日で200μm程度となる。このため、「受精してから5〜10日経過したとき」という条件は、概ね「カキ幼生が100〜200μmの大きさになったとき」と言い換えることができる。
本発明のカキの採苗方法においては、既に述べたように、着底用フィルター型プールの隔壁を形成するフィルター材は、植物プランクトンを通過させながらも、初期育成工程を経たカキ幼生が通過できない大きさの目を有するものとされる。この点、カキ幼生の餌となる植物プランクトンの大きさは、概ね10μm前後である。このため、フィルター材の目開きは、通常、10μm以上とされる。しかし、フィルター材の目開きを小さくしすぎる(植物プランクトンの大きさに近づけすぎる)と、植物プランクトンが着底用フィルター型プールの内部に侵入しにくく虞や、フィルター材が目詰まりを起こしやすくなる虞がある。このため、フィルター材の目開きは、50μm以上とすると好ましく、80μm以上とするとより好ましい。これに対し、初期育成工程から着底工程への切り替えは、カキ幼生が着底可能となる300μm程度の大きさに成長よりも前に行う必要がある。このため、フィルター材の目開きは、通常、300μmを超えない範囲で設定される。しかし、フィルター材の目開きを大きくしすぎる(着底時のカキ幼生の大きさに近づけすぎる)と、その分、初期育成工程を長期間行う必要が生じ、給餌を行わない状態では初期育成工程のカキ幼生が栄養不足になる虞がある。また、カキ幼生が着底用フィルター型プールの外部に逃げてしまいやすくなる虞もある。このため、フィルター材の目開きは、200μm以下とすると好ましく、150μm以下とするとより好ましい。このような目開きを有するフィルター材は、透水係数で、概ね、0.5×10−2〜1×10−2cm/sの範囲となる。
本発明のカキの採苗方法において、着底用フィルター型プールの隔壁を形成するフィルター材は、上述したような目開きを実現できるのであれば、その素材を特に限定されない。フィルター材としては、各種の編地、織地又は不織布等を好適に使用することができる。その中でも、熱可塑性樹脂の繊維からなる不織布の表面を加熱したシュリンクシートは、フィルター材として好適に用いることができる。というのも、この種のシュリンクシートは、加熱処理された表面では繊維がシュリンクされて目が小さいながらも、その厚さ方向中途部分には、大き目の空隙が残ったままの状態となっており、当該中途部分に侵入した海水や植物プランクトンがあらゆる方向へと移動できるものとなっている。このため、斯様なシュリンクシートでは、完全目詰まりが生じにくいからである。また、シュリンクシートは、表面を加熱処理されていない不織布と比較して、表面が平滑であるため、その表面に海藻や浮遊ゴミ等が付着しにくいという利点も有している。シュリンクシートは、不織布の片面のみを加熱処理したものであってもよいが、両面を加熱処理したものであるとより好適である。
本発明のカキの採苗方法においては、初期育成工程から着底工程へと直接移行するようにしてもよいが、
初期育成工程と着底工程との間に、
植物プランクトンを通過させながらも初期育成工程を経たカキ幼生が通過できない大きさの目を有するフィルター材で隔壁が形成された後期育成用フィルター型プールを海中に浸漬し、当該後期育成用フィルター型プールに溜められた海水にカキ幼生を入れ、そのカキ幼生が初期育成工程後よりもさらに大きな所定の大きさになるまで当該後期育成用フィルター型プールでカキ幼生の育成を行う後期育成工程と、
後期育成工程を経たカキ幼生を選別用フィルター材にかけ、当該選別用フィルター材を通過しない大きさに成長したカキ幼生を選別する選別工程と、
を設け、
選別工程で選別されたカキ幼生を着底工程へと移すようにすると好ましい。
これにより、着底工程が行われるカキ幼生の大きさをより均一化して、採苗器に対するカキ幼生の着底を効率的に行わせることが可能になる。したがって、適切な大きさのカキ幼生が密な状態で着底した品質の良い種ガキを採取することが可能になる。
本発明のカキの採苗方法においては、初期育成用遮蔽型プール、後期育成用フィルター型プール及び/又は着底用フィルター型プール内の海水の曝気を行うことも好ましい。これにより、初期育成用遮蔽型プールや後期育成用フィルター型プールや着底用フィルター型プールにカビが発生しないようにするだけでなく、それらのプールにおける同じ場所にカキ幼生が滞留しないようにすることも可能になる。特に、着底用フィルター型プールで曝気を行うと、カキ幼生が採苗器に偏りなく定着しやすくすることも可能になる。後述するように、本発明のカキの採苗方法では、通常、初期育成工程から着底工程までを、海に浮かべた筏で行うため、曝気を行う曝気装置(曝気手段)の電源を確保しにくい状況にある。このため、曝気手段は、太陽光発電パネルや風力発電装置によって駆動すると好ましい。
以上のように、本発明によって、天候等の環境に影響されることなく安定してカキの採苗を行うことができることに加えて、温度管理等の人為的な管理に要する手間を軽減でき、さらに、カキ幼生に人為的に与える餌の量を少なく抑えてコストを抑えることもできるカキの採苗方法を提供することが可能になる。また、採苗後に行われ得る抑制工程や本養殖(筏養殖)工程において、カキを適切に成長させることが可能なカキの採苗方法を提供することも可能になる。さらに、この採苗方法で採苗された種ガキを用いてカキを養殖するカキの養殖方法を提供することも可能になる。
本発明に係るカキの養殖方法を説明するフロー図である。 本発明に係るカキの養殖方法での各プールの配置例を示した図である。 本発明に係るカキの養殖方法において、着底工程を行っているときの着底用フィルター型プールを示した断面図である。 他の実施態様の採苗工程を説明するフロー図である。 他の実施態様の採苗工程での各プールの配置例を示した図である。 他の実施態様の採苗工程における選別工程で用いる装置を示した図である。 着底用フィルター型プール等の隔壁として用いるフィルター材を形成する不織布であって、加熱処理を施す前の状態を撮影した写真である。 着底用フィルター型プール等の隔壁として用いるフィルター材を形成する不織布であって、加熱処理を施した後の状態を撮影した写真である。
本発明のカキの養殖方法の好適な実施態様について、図面を用いてより具体的に説明する。図1は、本発明に係るカキの養殖方法を説明するフロー図である。本実施態様のカキの養殖方法は、図1に示すように、採苗工程と、抑制工程と、本養殖工程(筏養殖工程)と、収穫工程とを経るものとなっている。以下、これらの工程について順に説明する。
1.採苗工程(第一実施態様の採苗工程)
採苗工程は、採苗器にカキ幼生を付着(着底)させる工程となっている。本発明は、図1に示すように、この採苗工程を、初期育成工程と着底工程とに分けて行うことに最大の特徴を有するものとなっている。この採苗工程は、通常、6月頃から8月頃までの夏期に行われる。
1.1 初期育成工程
初期育成工程は、その隔壁が不透水性材で形成された初期育成用遮蔽型プール10(図2)に海水を溜めて、その中にカキ幼生(受精直後のカキの受精卵)を入れ、そのカキ幼生が所定の大きさになる(後述する着底工程で使用する着底用フィルター型プール10の隔壁(フィルター材)を通過できない大きさになる)まで初期育成用遮蔽型プール10内でカキ幼生の育成を行う工程となっている。本実施態様のカキの養殖方法においては、図示省略の曝気装置により、初期育成用遮蔽型プール10内の海水を曝気しながら初期育成工程を行うようにしている。これにより、初期育成用遮蔽型プール10にカビが発生しないようにするだけでなく、初期育成用遮蔽型プール10内のカキ幼生が同じ場所に滞留しないようにすることも可能となっている。曝気装置は、通常、電力により駆動されるところ、本実施態様のカキの養殖方法においては、曝気装置を、図示省略の太陽光発電パネルに接続している。
初期育成工程において初期育成用遮蔽型プール10内に入れるカキ幼生の取得方法は、特に限定されない。カキ幼生は、自然海域から採取したものを使用することもできるが、自然海域から大量のカキ幼生を採取することは非常に困難である。このため、本実施態様のカキ養殖方法では、人工授精により得たカキ幼生(受精卵)を使用した。これにより、採苗に必要なカキ幼生を大量に確保することができる。カキの人工授精には、切開法と産卵誘発法とがあるが、本実施態様のカキ養殖方法では、濾過後の海水をバケツに入れ、成体ガキから切開法により採取した卵子及び精子をそのバケツ内の海水に入れることで受精させた。人工授精を行うバケツには、アンモニアを添加して刺激を行った。受精直後のカキ幼生(卵)の大きさは、通常、55μm前後である。
初期育成工程で使用する初期育成用遮蔽型プール10は、その隔壁が不透水性材で形成されているため、その内部の海水が外部に漏れ出ないのは勿論のこと、初期育成用遮蔽型プール10に入れられたカキ幼生(55μm前後のカキの受精卵)が外部へ逃げることもできない構造となっている。この初期育成工程を行うことで、後述する着底工程で使用する着底用フィルター型プールの隔壁(フィルター材)の目の大きさをある程度大きくして、着底用フィルター型プールの隔壁(フィルター材)を目詰まりしにくいものとしても、着底工程中のカキ幼生が着底用フィルター型プールの内部から外部へと逃げないようにすることが可能となっている。
初期育成用遮蔽型プール10の設置箇所は、特に限定されず、陸上に初期育成用遮蔽型プール10を設置してもよい。しかし、初期育成工程の後に行われる着底工程は、海で行われるところ、初期育成工程を陸上で行うと、初期育成工程から着底工程への切り替え作業をスムーズに行うことができなくなる。また、初期育成用遮蔽型プール10に海水を入れるのにも手間を要するようになる。このため、本実施態様のカキの養殖方法では、初期育成工程を行う初期育成用遮蔽型プール10を海に設置している。具体的には、図2に示すように、着底工程が行われる着底用フィルター型プール20を設置するものと同じ筏30に初期育成用遮蔽型プール10を設置している。図2は、本発明に係るカキの養殖方法での各プール10,20の配置例を示した図である。図2では、着底用フィルター型プール20の内部に初期育成用遮蔽型プール10を描いているが、初期育成工程においては、着底用フィルター型プール20は、まだ筏30に設置していない。これについては、後述する。初期育成用遮蔽型プール10は、その上部が海上(筏上)で開口しているものの、その下部は海中に沈められた状態となっている。1つの筏30には、初期育成用遮蔽型プール10を複数個ずつ設けている。これらの初期育成用遮蔽型プール10は、採苗工程を開始した時期等に応じて使い分けるようにしている。
初期育成用遮蔽型プール10の隔壁(不透水性材)は、透水性を有さないのであれば、その素材を特に限定されず、硬質な素材で形成してもよい。しかし、初期育成用遮蔽型プール10の隔壁を硬質な素材で形成した場合には、初期育成用遮蔽型プール10の運搬や設置や廃棄に要するコストが増大する。このため、初期育成用遮蔽型プール10の隔壁(不透水性材)は、シート材(不透水性シート)で形成すると好ましい。初期育成用遮蔽型プール10を形成する不透水性シートとしては、各種の樹脂シート等のうち、目開きがないものを好適に使用することができる。本実施態様のカキの養殖方法においては、フラットヤーンを編織した生地を合成樹脂フィルムで挟んだ樹脂シート(いわゆるブルーシート(tarp))によって、初期育成用遮蔽型プール10の隔壁を形成している。
ただし、不透水性シート等の可撓性を有するシート材を海中に垂らしただけの状態で初期育成用遮蔽型プール10を設置すると、波や海流等によって初期育成用遮蔽型プール10が揺らぎやすくなる。このため、不透水性シートをメッシュ材やフレーム材等の支持材に対して支持させたり、不透水性シートに錘を取り付けたりすることもできる。初期育成用遮蔽型プール10の容量は、特に限定されないが、通常、1〜30m程度とされ、好ましくは、5〜20m程度とされる。本実施態様のカキの養殖方法では、初期育成用遮蔽型プール10として、縦長が1.7mで、横長が3.5mで、深さ(高さ)が1.7mのものを使用している。初期育成用遮蔽型プール10の端部は、図2に示すように、丸く形成しており、後述する曝気処理を行った際に、カキ幼生が初期育成用遮蔽型プール10の隅角部に滞留することなく、初期育成用遮蔽型プール10内をスムーズに循環するようにしている。初期育成用遮蔽型プール10の隔壁(不透水性シート)は、1層構造(1重構造)としてもよいが、多層構造(多重構造)とすることもできる。これにより、初期育成用遮蔽型プール10の保形性を高めることや、いずれかの層に破れ等が生じたとしても初期育成用遮蔽型プール10内のカキ幼生が外部へ逃げないようにすることが可能になる。
以上で述べた初期育成工程は、人為的に餌を与えなくてもカキ幼生が成長できる(カキ幼生が自ら保有する養分又は予め初期育成用遮蔽型プール10に入れられた海水の養分のみで成長できる)期間内で行うと好ましい。具体的には、受精後5〜15日程度が経過したとき(換言すると、カキ幼生の大きさが100〜200μmとなったとき)に初期育成工程を終えると好ましく、受精後5〜10日程度が経過したとき(換言すると、カキ幼生の大きさが100〜150μmとなったとき)に初期育成工程を終えるとより好ましい。これにより、初期育成工程において人為的に給餌しなくても済むようになる。本実施態様のカキの養殖方法では、後述するように、着底工程で使用する着底用フィルター型プールとして、その隔壁が目開き100μm程度のフィルター材を使用するようにしているため、余裕をみて、カキ幼生が150μm程度の大きさとなるタイミング(受精後10日が経過したタイミング)で、初期育成工程を終えるようにしている。
1.2 着底工程
着底工程は、図3に示すように、その隔壁がフィルター材21で形成された着底用フィルター型プール20を海中に浸漬し、着底用フィルター型プール20に溜められた海水に採苗器40と初期育成工程を経たカキ幼生とを入れ、カキ幼生を採苗器40に着底させる工程となっている。図3は、本発明に係るカキの養殖方法において、着底工程を行っているときの着底用フィルター型プール20を示した断面図である。
着底工程を行う着底用フィルター型プールは、養分(植物プランクトン)の多い海に設置(少なくともその下側が海中となるように設置)される。着底用フィルター型プール20は、初期育成用遮蔽型プール10と同様、通常、その上部が海上(筏上)で開口され、その下部が海中に沈められた状態で設置される。1つの筏30には、着底用フィルター型プール20を複数個ずつ設けており、採苗工程を開始した時期等に応じて使い分けるようにしている。着底用フィルター型プール20は、筏30に予め設置しておいてもよいが、この場合には、着底用フィルター型プール20が海水に浸かる期間が長くなって、着底用フィルター型プール20を形成するフィルター材21が目詰まりするリスクが高くなる。このため、本実施態様のカキの養殖方法においては、初期育成工程を終えるタイミングで、着底用フィルター型プール20の施工を行うようにしている。具体的には、着底用フィルター型プール20の施工を、以下のように行っている。
すなわち、初期育成工程を終えた初期育成用遮蔽型プール10の外側をフィルター材21で覆うことで、着底用フィルター型プール20を施工している。初期育成用遮蔽型プール10は、その外側に着底用フィルター型プール20が施工された後、取り除かれる。初期育成用遮蔽型プール10の除去作業は、初期育成用遮蔽型プール10を形成する不透水性シートを、その内部に溜まった海水(その海水にいるカキ幼生)が着底用フィルター型プール20の外側に漏れ出ないように、ゆっくりと引き上げることにより行われる。これにより、初期育成工程を行う初期育成用遮蔽型プール10から着底工程を行う着底用フィルター型プール20へのカキ幼生の移し替えを効率的に行うことが可能となっている。
それぞれの着底用フィルター型プール20の容量は、通常、1〜50m程度とされ、好ましくは、5〜30m程度とされる。本実施態様のカキの養殖方法では、上述したように、着底用フィルター型プール20を初期育成用遮蔽型プール10の外側を囲った状態に施工する関係から、着底用フィルター型プール20の容量は、通常、初期育成用遮蔽型プール10の容量よりも大きくされる。本実施態様のカキの養殖方法では、着底用フィルター型プール20として、縦長が1.8mで、横長が3.8mで、深さ(高さ)が1.8mであって、約12.3mの容量を有するものを使用している。
着底用フィルター型プール20の隔壁(フィルター材21)は、カキ幼生の餌となる植物プランクトン(通常、10μm程度の大きさを有する。)を通過させながらも、初期育成工程を経たカキ幼生(本実施態様のカキの養殖方法では、初期育成工程で150μm程度の大きさとなるまで育成される。)が通過できない大きさの目を有するものとなっている。加えて、この着底用フィルター型プール20は、少なくともその下側を海中に浸漬された状態とされる。このため、着底用フィルター型プール20の周囲の海を浮遊する天然の植物プランクトンが着底用フィルター型プール20の内部へと侵入できるようになっており、着底工程において、カキ幼生に大量の餌を人為的に与えなくても済むようになっている。また、着底用フィルター型プール20の内外で海水が自然に出入りできるとともに、カキ幼生の老廃物が着底用フィルター型プールの外部へと自然に排出されるようになっている。したがって、着底用フィルター型プール20内の海水の交換等のメンテナンスも行わなくても済むようになっている。
着底用フィルター型プール20の隔壁(フィルター材21)は、上記のフィルター性を有するのであれば、その素材を特に限定されず、硬質な素材で形成してもよい。しかし、着底用フィルター型プール20の隔壁を硬質な素材で形成した場合には、着底用フィルター型プール20の運搬や設置や廃棄に要するコストが増大する。このため、着底用フィルター型プール20の隔壁(フィルター材21)は、シート材(フィルターシート)で形成すると好ましい。フィルター材21に用いるフィルターシートとしては、既に述べたように、熱可塑性樹脂の繊維からなる不織布の表面を加熱したシュリンクシートが好適である。この不織布を形成する熱可塑性樹脂としては、ポリプロピレン(PP)やポリエチレン(PE)等のポリオレフィンが例示される。なかでも、ポリプロピレンは、安価であるだけでなく、強度にも優れているため好ましい。
本実施態様のカキの養殖方法においては、図7に示すように、ポリプロピレン繊維からなる不織布(透水係数が1.17×10−2cm/sで目付けが約190g/mの不織布)の表裏両面を加熱処理して、図8に示すように、シュリンクさせたフィルターシート(シュリンクシート)を、フィルター材21として用いている。図7は、着底用フィルター型プール20等の隔壁として用いるフィルター材21を形成する不織布であって、加熱処理を施す前の状態を撮影した写真である。図8は、着底用フィルター型プール20等の隔壁として用いるフィルター材21を形成する不織布であって、加熱処理を施した後の状態を撮影した写真である。このフィルター材21は、表面及び裏面の目開きが約100μm程度(加熱処理後の透水係数で7.23×10−3cm/s程度)となっており、着底用フィルター型プール20内に入れられたカキ幼生が通過できない大きさの目を有しながらも、その厚さ方向中途部分には、シュリンクされていない繊維によって、大きな空隙が形成されたままの状態となっており、中途部分に侵入した海水や植物プランクトンがあらゆる方向へと移動でき、完全目詰まりが生じにくいものとなっている。フィルター材21の厚さは、特に限定されないが、通常、100μm〜2mm程度とされる。本実施態様のカキの養殖方法で用いるフィルター材21の厚さは約400μmとなっている。
ただし、フィルターシート等の可撓性を有するフィルター材21を海中に垂らしただけの状態で着底用フィルター型プール20を設置すると、初期育成用遮蔽型プール10の場合と同様、波や海流等によって着底用フィルター型プール20が揺らぎやすくなる。このため、フィルターシート等をメッシュ材やフレーム材等の支持材に対して支持させたり、フィルターシート等に錘を取り付けたりすることもできる。特に、図3に示すように、フィルターシート等のフィルター材21の外側を、目開き数mm程度のメッシュ材60で覆うと、フジツボ等がフィルター材21に付着しないようにすることもできる。着底用フィルター型プール20の隔壁(フィルターシート)は、1層構造(1重構造)としてもよいし、多層構造(多重構造)とすることもできる。
ところで、着底工程において着底用フィルター型プール20に入れる採苗器40は、カキ幼生が定着できるものであれば特に限定されない。従来のカキの養殖方法では、ホタテ等の貝殻が採苗器40として用いられることが多い。本実施態様のカキの養殖方法においても、ホタテの貝殻を採苗器40として用いている。具体的には、図3に示すように、他数枚のホタテの貝殻(採苗器40)を、ワイヤー等の線材50で2cm程度の間隔で連結したものを、着底用フィルター型プール20内の海水に吊るしている。ホタテの貝殻(採苗器40)を線材50で連結したものは、「採苗連」と呼ばれる。
また、本実施態様のカキの養殖方法においては、図示省略の曝気装置により、着底用フィルター型プール20内の海水を曝気しながら着底工程を行うようにしている。これにより、着底用フィルター型プール20にカビが発生しないようにするだけでなく、着底工程にあるカキ幼生が同じ場所に滞留しないようにカキ幼生を刺激し、カキ幼生が採苗器に偏りなく定着しやすくすることも可能となっている。曝気装置は、通常、初期育成工程で用いたものと同様のものが用いられる。この曝気装置を太陽光発電パネルに接続していることも、初期育成工程と同様である。
以上で述べた着底工程は、採苗器40にカキ幼生が定着するまで行われる。既に述べたように、カキ幼生は、通常、受精後17日程度が経過してその大きさが300μm前後となったときに、着底に必要なセメント物質を出すことができる状態(着底することが可能な状態)となる。このため、着底工程は、通常、受精後17日前後が経過するまでは行う必要がある。カキ幼生が採苗器40に着底する確実性を高めるためには、着底工程は、受精後18日が経過するまで行うと好ましく、受精後19日が経過するまで行うとより好ましく、受精後20日が経過するまで行うとさらに好ましい。本実施態様のカキの養殖方法においては、上述したように、受精後10日が経過したときに着底工程を開始するところ、この着底工程を受精後20日が経過するまで行うようにしている。
2.抑制工程
抑制工程は、採苗後の採苗器を潮の満ち引きがある浅瀬(干潟)に設置する工程である。本実施態様のカキの養殖方法においては、採苗工程を終えた採苗器をワイヤーで連結された状態のまま(採苗連の状態)のまま、干潟に設置した「抑制棚」と呼ばれる棚に吊るすことで、抑制工程を行っている。この抑制工程を行うことによって、採苗器に付着したカキが海水に浸かる時間を制限することが可能になる。このため、カキの成長を抑制して大きくなり過ぎないようにするとともに、環境の変化に対する抵抗力をカキに付与することが可能になる。
抑制工程は、通常、採苗工程を終えてから間を開けることなく開始される。抑制工程を行う期間は、特に限定されない。昔のカキ養殖では、抑制工程を行う期間が1ヶ月間前後と短かったが、近年のカキ養殖では、短い場合でも3ヶ月間程度、長ければ1年間超もの間、抑制工程を行うことが多い。本実施態様のカキの養殖方法においては、採苗工程を行った年の6月頃から8月頃に抑制工程を開始し、翌年の3月頃から4月頃までの約8〜9ヶ月間に亘って抑制工程を行うようにしている。
3.本養殖工程(筏養殖工程)
本養殖工程(筏養殖工程)は、抑制工程を終えた後の採苗器を、養分の多い海域に浮かべた筏等から海中に吊るし、採苗器に付着したカキを収穫できる大きさ(通常、殻長で70〜90mm程度。)まで成長させる工程である。本実施態様のカキの養殖方法においては、抑制工程を終えた採苗連から、カキが良好に付着している貝殻を選別し、その貝殻を新たな線材(ワイヤー等)で20cm程度の間隔で連結して形成された状態のもの(この状態のものを「垂下連」と呼ぶ。)を、筏から海中に吊るすことで、本養殖工程を行っている。
本養殖工程は、通常、抑制工程を終えてから間を開けることなく開始される。本養殖工程は、通常、1年間以上に亘って行われる。本実施態様のカキの養殖方法においては、採苗工程を行った年の翌年(2年目)の3月頃から4月頃に本養殖工程を開始し、その年(2年目)の12月頃からその翌年(3年目)の1〜3月頃までに亘って本養殖工程を行うようにしている。
4.収穫工程
収穫工程は、本養殖工程(筏養殖工程)を終えたカキを収穫する工程である。本実施態様のカキの養殖工程においては、本養殖工程で海中に吊り下げた垂下連をクレーン等で海上に引き上げることで、収穫工程を行うようにしている。収穫工程は、通常、10月から1月までの終期から冬期にかけて行われる。収穫工程を終えたカキは、用途等に応じて後の工程に回される。
5.実験
本発明のカキの養殖方法によって、実際に採苗を行うことができるのかを確認するため、実験を行った。実験は、広島県倉橋島付近の海上に設置された養殖筏を借りて行った。平成27年から平成28年冬にかけて、色々条件を変えながら実験を行ったところ、概ね上述した実施態様の条件で、平成28年9月3日に採苗器にカキ幼生が良好な状態で着底していることが確認できた。
6.その他の実施態様(第二実施態様)の採苗工程
ところで、上述した実施態様(図1を用いて説明した実施態様。以下、「第一実施態様」と呼ぶことがある。)のカキの養殖方法では、その採苗工程において、初期育成工程から着底工程へと直接移行するようになっていた。しかし、採苗工程における初期育成工程と着底工程との間には、図4に示すように、さらに別の工程を設けることもできる。図4は、他の実施態様(以下、「第二実施態様」と呼ぶことがある。)の採苗工程を説明するフロー図である。図5は、他の実施態様(第二実施態様)の採苗工程での各プール10,20,90の配置例を示した図である。図6は、他の実施態様(第二実施態様)の採苗工程における選別工程で用いる装置を示した図である。
第二実施態様の採苗工程では、図4に示すように、初期育成工程と着底工程との間に、後期育成工程と選別工程とを設けている。これにより、着底工程が行われるカキ幼生の大きさをより均一化して、採苗器に対するカキ幼生の着底を効率的に行わせることが可能になる。以下、第二実施態様の採苗工程について説明する。
6.1 初期育成工程
第二実施態様の採苗工程において、初期育成工程は、図5に示す初期育成用遮蔽型プール10を用いて行われる。第二実施態様の採苗工程における初期育成工程で用いる初期育成用遮蔽型プール10は、上述した第一実施態様の採苗工程における初期育成工程で用いた初期育成用遮蔽型プール10と同様であるため、詳しい説明を割愛する。ただし、第一実施態様の採苗工程では、図2に示すように、1つの初期育成用遮蔽型プール10に対して、1つの着底用フィルター型プール20が対応するようになっていたが、第二実施態様の採苗工程では、図5に示すように、2つの初期育成用遮蔽型プール10に対して、1つの着底用フィルター型プール20が対応するようになっている。図5中、グループG〜Gは、同じ時期に採苗工程が開始されるグループとなっている。本実施態様においては、最初に、グループGに属する初期育成用遮蔽型プール10で初期育成工程を開始し、続いて、グループGに属する初期育成用遮蔽型プール10で初期育成工程を開始する・・・というように、グループGからグループGまで、初期育成工程を順に開始するようにしている。
6.2 後期育成工程
後期育成工程は、後期育成用フィルター型プール70(図5)に溜められた海水に、初期育成工程を終えたカキ幼生を入れ、そのカキ幼生が初期育成工程後よりもさらに大きな所定の大きさになるまで(本実施態様においては、カキ幼生が230μm前後の大きさになるまで)後期育成用フィルター型プール70でカキ幼生の育成を行う工程である。後期育成用フィルター型プール70は、構造や寸法等の構成において、第一実施態様の採苗工程で使用した着底用フィルター型プール20と同様の構成を採用することができる。本実施態様において、後期育成用フィルター型プール70は、初期育成工程を終えた初期育成用遮蔽型プール10の外側をフィルター材で覆うことで施工しており、その施工方法も、第一実施態様の着底用フィルター型プール20と同様としている。このため、本実施態様においては、1つの初期育成用遮蔽型プール10に対して、1つの後期育成用フィルター型プール70が対応するようになっている。
6.3 選別工程
選別工程は、後期育成工程を経たカキ幼生を選別用フィルター材にかけ、当該選別用フィルター材を通過しない大きさ(本実施態様においては230μm前後の大きさ)に成長したカキ幼生を選別する工程である。この選別工程で選別されたカキ幼生が着底工程へと移される。本実施態様の採苗工程において、選別工程は、図4に示すように、第一選別工程と第二選別工程とで構成している。第一選別工程は、所定の大きさ(230μm前後の大きさ)まで成長したカキ幼生を選別する工程となっている。また、第二選別工程は、所定の大きさ(230μ前後の大きさ)には満たないものの、ある程度大きくなったカキ幼生(本実施態様においては150μm前後よりも大きなカキ幼生)を選別する工程となっている。
第一選別工程や第二選別工程を行う手段は、特に限定されないが、本実施態様において、第一選別工程と第二選別工程は、図6に示す装置を用いて行うようになっている。図6中、ポンプ100は、後期育成用フィルター型プール70から海水(カキ幼生)を吸い上げるためのものである。ポンプ100は、上述した曝気手段と同様、太陽光発電パネルで発電された電力で駆動するようにしている。このポンプ100で吸い上げられた海水(カキ幼生)は、第一選別用パイプ110の上部に入れられる。第一選別用パイプ110の内部には、第一選別用フィルター材111(本実施態様においては目開き230μmのフィルター材)が設けられており、所定の大きさに成長したカキ幼生(230μmよりも大きく成長したカキ幼生)は、第一選別用フィルター材111の上側(図6のA部)に捕捉されるようになっている。
一方、第一選別用フィルター材111に捕捉されることなく、第一選別用パイプ110の下部まで落ちてきた海水(カキ幼生)は、第一選別用パイプ110の下側に配された第二選別用パイプ120の上部に入られる(図4のフロー図における矢印a)。第二選別用パイプ120の内部には、第二選別用フィルター材121(本実施態様においては目開き150μmのフィルター材)が設けられており、第二選別用フィルター材121の目よりも大きく成長したカキ幼生(150μmよりも大きく成長したカキ幼生)は、第二選別用フィルター材121の上側(図6のB部)に捕捉されるようになっている。第二選別用フィルター材121にも捕捉されなかったカキ幼生は、海水とともに、第二選別用パイプ120の下部から落ちるようになっている。第二選別用パイプ120の下部から落ちるカキ幼生は、本実施態様においては、海に廃棄(放流)するようにしている(図4の矢印a)。
上記の装置を用いて選別工程を行うと、第一選別用フィルター材111の上側のA部には、230μmよりも大きなカキ幼生が捕捉され、第二選別用フィルター材121の上側のB部には、230μmを超えないながらも150μmよりは大きく成長したカキ幼生が捕捉された状態となる。前者のカキ幼生(230μmよりも大きなカキ幼生)は、図5における着底用フィルター型プール20に移される(図4の矢印aを参照。)。第一実施態様の採苗工程においては、着底用フィルター型プール20は、初期育成用遮蔽型プール10の外側を囲った状態に設けたが、本実施態様の採苗工程においては、上述したように、初期育成用遮蔽型プール10の外側には、後期育成用フィルター型プール70を設けたため、着底用フィルター型プール20は、初期育成用遮蔽型プール10の近くの別の場所に設けている。第一選別用パイプ110と第二選別用パイプ120は、分離可能な構造となっており、第一選別用パイプ110は、第二選別用パイプ120から切り離して持ち運ぶ(着底用フィルター型プール20まで持ち運ぶ)ことができるようになっている。
一方、後者のカキ幼生(大きさが150〜230μmのカキ幼生)は、図5における予備育成用フィルター型プール80に入れられる(図4の矢印a)。既に述べたように、第一選別用パイプ110と第二選別用パイプ120は、分離可能な構造となっており、第二選別用パイプ120は、第一選別用パイプ110から分離して持ち運ぶ(予備育成用フィルター型プール80まで持ち運ぶ)ことができるようになっている。本実施態様において、予備育成用フィルター型プール80は、上述した第一実施態様の採苗工程で用いた着底用フィルター型プール20と、構造や寸法等の構成において、同様のものを使用している。この予備育成用フィルター型プール80では、長くて1週間、通常2〜3日間、カキ幼生の育成(予備育成工程)が追加で行われる。これにより、カキ幼生の大きさを着底工程を開始すべき所定の大きさ(230μm)に近づけることが可能になる。本実施態様において、予備育成用フィルター型プール80は、グループG〜Gで共通となっている。このため、予備育成用フィルター型プール80でカキ幼生の育成(予備育成工程)を行う期間は、グループG〜Gのそれぞれで開始時期をずらした期間よりも、短く設定している。予備育成工程を終えたカキ幼生は、次のグループに属する着底用フィルター型プール20に移されて着底工程が行われる(図4の矢印a)。例えば、グループGで予備育成工程が行われたカキ幼生は、グループGに属する着底用フィルター型プール20で着底工程が行われる。
6.4 着底工程
第二実施態様の採苗工程において、着底工程は、図5に示す着底用フィルター型プール20を用いて行われる。第二実施態様の採苗工程における着底工程で用いる着底用フィルター型プール20は、寸法が一回り大きくなっていることや、初期育成用遮蔽型プール10とは別の箇所に設けられていることを除いては、第一実施態様の採苗工程における着底工程で用いた着底用フィルター型プール20と同様であるため、詳しい説明を割愛する。
10 初期育成用遮蔽型プール
20 着底用フィルター型プール
21 フィルターシート(フィルター材)
30 筏
40 ホタテの貝殻(採苗器)
50 線材
60 メッシュ材
70 後期育成用フィルター型プール
80 予備育成用フィルター型プール
100 ポンプ
110 第一選別用パイプ
111 第一選別用フィルター材
120 第二選別用パイプ
121 第二選別用フィルター材

Claims (8)

  1. カキ幼生を採苗器に着底させて採苗を行うカキの採苗方法であって、
    不透水性材で隔壁が形成された初期育成用遮蔽型プール内に溜められた海水にカキ幼生を入れ、そのカキ幼生が所定の大きさになるまで当該初期育成用遮蔽型プールでカキ幼生の育成を行う初期育成工程と、
    植物プランクトンを通過させながらも初期育成工程を経たカキ幼生が通過できない大きさの目を有するフィルター材で隔壁が形成された着底用フィルター型プールを海中に浸漬し、当該着底用フィルター型プールに溜められた海水に採苗器と初期育成工程を経たカキ幼生とを入れ、カキ幼生を採苗器に着底させる着底工程と
    を経ることを特徴とするカキの採苗方法。
  2. 受精してから5〜15日経過すると、初期育成工程を終える請求項1記載のカキの採苗方法。
  3. カキ幼生が100〜150μmの大きさになると、初期育成工程から着底工程へと切り替える請求項1又は2記載のカキの採苗方法。
  4. 着底用フィルター型プールの隔壁を形成するフィルター材として、透水係数が0.5×10−2〜1×10−2cm/sのものを用いる請求項1〜3いずれか記載のカキの採苗方法。
  5. 着底用フィルター型プールの隔壁を形成するフィルター材として、熱可塑性樹脂の繊維からなる不織布の表面を加熱したシュリンクシートを用いる請求項1〜4いずれか記載のカキの採苗方法。
  6. 初期育成工程と着底工程との間に、
    植物プランクトンを通過させながらも初期育成工程を経たカキ幼生が通過できない大きさの目を有するフィルター材で隔壁が形成された後期育成用フィルター型プールを海中に浸漬し、当該後期育成用フィルター型プールに溜められた海水にカキ幼生を入れ、そのカキ幼生が初期育成工程後よりもさらに大きな所定の大きさになるまで当該後期育成用フィルター型プールでカキ幼生の育成を行う後期育成工程と、
    後期育成工程を経たカキ幼生を選別用フィルター材にかけ、当該選別用フィルター材を通過しない大きさに成長したカキ幼生を選別する選別工程と、
    を設け、
    選別工程で選別されたカキ幼生が着底工程へと移される
    請求項1〜5いずれか記載のカキの採苗方法。
  7. 初期育成用遮蔽型プール、後期育成用フィルター型プール及び/又は着底用フィルター型プール内の海水の曝気を行う請求項1〜6いずれか記載のカキの採苗方法。
  8. 請求項1〜7いずれか記載のカキの採苗方法で採苗された種ガキを用いてカキを養殖するカキの養殖方法。
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