JP6858375B2 - 斜面監視システムおよび斜面監視方法 - Google Patents

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Description

本開示は、特に斜面崩壊を予測する斜面監視システムおよび斜面監視方法に関する。
従来、降雨による斜面崩壊を監視するシステムが研究されている。雨が降ると、土壌中の体積含水率が上昇し、土壌中の空隙における水の飽和度が高まる。飽和度が、特に高くなると、斜面崩壊が発生するおそれがある。そこで、斜面の土壌中の体積含水率から飽和度を算出して斜面の状態を判定することが、特許文献1に記載されている。
特許文献1の災害監視システムでは、算出された飽和度の値を基準として、斜面の状態が、「安全」状態、「警戒」状態、「避難」状態のどの状態であるか判定を行っている。この災害監視システムは、この判定結果に、さらに総雨量や降雨強度に関する情報を組み合わせて表示することで、ユーザが土砂災害の予測をする際の支援をしている。
また近年、体積含水率の変化についてさらに研究されている。最近では、例えば、非特許文献1に記載されているように、土壌中の間隙が全て水分となる飽和状態になる前に、体積含水率が一時的に平衡状態となることが知られている。この平衡状態は、水の浸透と排水が平衡になり、散水が続いても体積含水率があまり変動しないと考えられている。
非特許文献1では、この平衡状態の体積含水率に到達した時点の値を初期擬似飽和体積含水率(IQS:Initial Quasi-Saturated volumetric water content)と呼んでいる。小型模型斜面への散水実験における体積含水率の計測結果から、体積含水率の平衡状態を観測できることが記載されている。
特開2016−216989号公報
小泉圭吾、他6名、「降雨時の表層崩壊に対する高速道路通行規制基準の高度化に向けた基礎研究」、土木学会論文集C(地圏工学)、公益社団法人土木学会、2017年、Vol.73、No.1、p.93−105
しかしながら、初期擬似飽和体積含水率は、小型模型斜面の散水実験で観測されたばかりであり、その性質はまだ一部しか解明されていない。初期擬似飽和体積含水率を用いて斜面監視システムを構築するには、初期擬似飽和体積含水率を推定しなければならない。
従って、本開示の目的は、前記課題を解決することにあって、初期擬似飽和体積含水率を推定することができる斜面監視システムを提供することにある。
前記目的を達成するために、本開示の一態様に係る斜面監視システムは、斜面における土壌の体積含水率を検出する土壌水分計と、前記斜面における降水量を検出する降水量検出器と、前記斜面の最適化された土壌モデルにおいて予め算出された、降水量と初期擬似飽和体積含水率との関係と、検出された前記降水量とを基に、初期擬似飽和体積含水率を推定する推定部と、検出された前記体積含水率と推定された前記初期擬似飽和体積含水率とを比較する比較部と、を備える斜面監視システムである。
本開示の一態様によれば、初期擬似飽和体積含水率を、最適化された土壌モデルにおいて予め算出された、降水量と初期擬似飽和体積含水率との関係と、実際に検出された降水量とを基に、推定するので、降水量の変動に応じて変動する初期擬似飽和体積含水率をより精度を向上して推定することができる。推定精度が向上した初期擬似飽和体積含水率と検出された体積含水率とを比較することで、斜面の状態を精度よく知ることができる。
また、前記土壌水分計は、前記斜面の深さ方向に位置を変えて複数個配置され、前記推定部は、前記土壌水分計が配置されたそれぞれの深さで最適化された土壌モデルにおいて予め算出された、降水量と初期擬似飽和体積含水率との関係と、検出された前記降水量とを基に、初期擬似飽和体積含水率を推定してもよい。
深い地点ほど、初期擬似飽和体積含水率に達してから斜面の変位が発生するまでの時間が短くなるので、深さを変えてそれぞれの初期擬似飽和体積含水率を推定することで、斜面変位の発生が近いことを段階的に予測することができる。
また、前記比較部は、推定された前記初期擬似飽和体積含水率を検出された前記体積含水率で除した値が1以下の場合、警告を出し、推定された前記初期擬似飽和体積含水率を検出された前記体積含水率で除した値が1より大きい場合、警告を解除してもよい。
推定された初期擬似飽和体積含水率を検出された体積含水率で除した値を用いることで、警告の発令および解除する閾値を常に1にすることができるので、警告の発令を容易に判別することができる。
また、本開示の一態様に係る斜面監視システムは、斜面における土壌の体積含水率を検出する体積含水率検出ステップと、前記斜面における降水量を検出する降水量検出ステップと、前記斜面の最適化された土壌モデルにおいて予め算出された、降水量と初期擬似飽和体積含水率との関係と、検出された前記降水量とを基に、初期擬似飽和体積含水率を推定する推定ステップと、検出された前記体積含水率と推定された前記初期擬似飽和体積含水率とを比較する比較ステップと、を備える、斜面監視方法である。
また、前記降水量と初期擬似飽和体積含水率との関係は、複数の異なる降水量においてそれぞれ推定された初期擬似飽和体積含水率を基に算出された、降水量に応じて変化する初期擬似飽和体積含水率の近似式であってもよい。
複数の異なる降水量においてそれぞれ推定された初期擬似飽和体積含水率を基に算出された初期擬似飽和体積含水率の近似式を用いることで、初期擬似飽和体積含水率を迅速に精度良く推定することができる。
また、前記土壌モデルは、前記土壌の性質をモデル化したモデル式と、検出された前記体積含水率とを基に逐次データ同化により最適化された土壌モデルであってもよい。
土壌の性質をモデル化したモデル式と実際に検出された体積含水率とで逐次データ同化により最適化することで、より精度の高い土壌モデルを作成することができる。
また、前記体積含水率検出ステップは、土壌水分計を用いて前記体積含水率を検出し、前記土壌水分計は、前記斜面の深さ方向に位置を変えて複数個配置され、前記推定ステップは、前記土壌水分計が配置されたそれぞれの深さで最適化された土壌モデルにおいて予め算出された、降水量と初期擬似飽和体積含水率との関係と、検出された前記降水量とを基に、初期擬似飽和体積含水率を推定してもよい。
また、前記比較ステップは、推定された前記初期擬似飽和体積含水率を検出された前記体積含水率で除した値が1以下の場合、警告を出し、推定された前記初期擬似飽和体積含水率を検出された前記体積含水率で除した値が1より大きい場合、警告を解除してもよい。
また、前記警告は、交通規制または避難勧告であってもよい。本願のシステムまたは方法を交通規制または避難勧告の発令に用いることで、監視する斜面が崩壊する前の適切なタイミングで交通規制または避難勧告を実施することができる。
初期擬似飽和体積含水率を推定することができる斜面監視システムまたは斜面監視方法を提供することができる。
土壌中に設置された土壌水分計の位置関係を示す説明図である。 一定の散水量に対する初期擬似飽和体積含水率を示すグラフ図である。 降雨強度の変化に応じて変化する初期擬似飽和体積含水率を示すグラフ図である。 データ同化手法による土壌モデルの最適化を説明するグラフ図である。 データ同化手法による土壌モデルの最適化を説明するグラフ図である。 データ同化手法による土壌モデルの最適化を説明するグラフ図である。 データ同化手法による土壌モデルの最適化を説明するグラフ図である。 データ同化手法による土壌モデルの最適化を説明するグラフ図である。 データ同化手法による土壌モデルの最適化を説明するグラフ図である。 データ同化手法による土壌モデルの最適化を説明するグラフ図である。 予測結果を説明するグラフ図である。 体積含水率を予測するグラフ図である。 体積含水率を予測するグラフ図である。 降雨強度に対して変化する初期擬似飽和体積含水率のグラフ図である。 実施形態1に係る斜面監視システムを模式的に示すブロック図である。 測定ユニットが設置された斜面を模式的に示す説明図である。 実施形態1に係るコンピュータを模式的に示すブロック図である。 土壌モデル最適化の流れを示すフローチャートである。 初期擬似飽和体積含水率の近似式を算出する流れを示すフローチャートである。 警告を発令する流れを示すフローチャートである。 降雨強度に対する、推定された初期擬似飽和体積含水率と、体積含水率とを示すグラフ図である。 図21のグラフの一部を拡大したグラフ図である。 実施形態2に係るコンピュータを模式的に示すブロック図である。 交通規制を発令する流れを示すフローチャートである。 指標値の変動を示すグラフ図である。
(実施形態1)
1.実施形態1の理論的説明
最初に、本開示の理論的説明をする。なお、以下の説明において、降水量とは、予め定められた単位時間当たりの雨量のことである。したがって、本実施形態における降水量には、降雨強度および時間降雨量も含まれる。
1.1 初期擬似飽和体積含水率
まず、初期擬似飽和体積含水率(以下、IQSと称す)について、図1および図2を参照して説明する。図1は小型模型斜面の土壌中に設置された土壌水分計の位置関係を示す説明図である。図2は、一定の散水量Apに対する体積含水率θの変化を示すグラフ図である。
図1に示すような小型模型斜面を例にIQSを説明する。斜面1には、表面上の2つの地点Ga、Gbの地下に、土壌水分計3、4が設置されている。地点Gaにおいて、3個の土壌水分計3a、3b、3cが、深さ方向に位置を変えて配置されている。地点Gbにおいても、同様に、3個の土壌水分計4a、4b、4cが、深さ方向に位置を変えて配置されている。土壌水分計3a−3c、4a−4cは、表面からそれぞれ、100mm、310mm、370mmの位置に設置されている。また、斜面1は、深さ450mmの地点に水が浸透しない不透水層1aを有する。なお、以下の説明において、土壌水分計3a−3cを総称する場合は土壌水分計3と記載し、土壌水分計4a、4b、4cを総称する場合は土壌水分計4と記載する。
次に、土壌水分計3が検出する体積含水率θについて説明する。斜面1に散水すると、水が土壌中に浸透する。水が土壌に浸透すると、土壌中の体積含水率θが上昇する。地中の深さ方向の位置によって、水が到達するまでに時間差がある。したがって、深さ方向において上部の体積含水率θuがまず上昇し、続いて、深さ方向中部の体積含水率θmが上昇する。地面下部においては、水が到達するまで最も時間を必要とするので、体積含水率θdが上昇し始める時刻は遅い。上部の体積含水率θuは土壌水分計3aにより検出され、深さ方向中部の体積含水率θmは土壌水分計3bにより検出され、深さ方向下部の体積含水率θdは土壌水分計3cにより検出される。
一定散水量の下での体積含水率の上昇過程において、一旦その上昇が止まり、平衡状態が発現する。これは、土壌中において、上方から浸透してくる水分量と下方へ排水する水分量とが平衡する状態と考えられる。この平衡状態に到達する最初の体積含水率の値をIQSと呼んでいる。
IQSに到達する時刻および平衡状態の期間は地面の深さによって異なる。地表近くの地面上部においては、上方から落下する水は、下方へ排出されるので、平衡状態の期間が長い。また、地面下部においては、さらに下方の不透水層1aより下には水が浸透せず帯水面が形成される。時間の経過とともに不透水層1aの上部に水が溜まる結果、帯水面が上昇してくるので、平衡状態の期間が短い。地面中部における体積含水率θmは、地面上部と下部との中間の性質を有する。
また、体積含水率の平衡状態は、地面の変位Gsが起こる前に発生する。したがって、体積含水率θがIQSに到達し、その状態が続くのであれば、将来的に地滑りが起こることが予測される。地面上部のIQSが検出されてから地面の変位Gsが検出されるまでの期間よりも、地面下部のIQSが検出されてから地面の変位Gsが検出されるまでの期間が短い。このように、地面の深さ方向の深い位置でのIQSが検出されると、地面の変位が起こる可能性が高いことを知ることができる。
このように、発明者らは体積含水率θの擬似飽和状態の研究を進めていく中で、IQSは、散水量によって変動することを新たに知見した。IQSは、その時点の散水量が続くと仮定した場合の擬似飽和体積含水率の初期値である。したがって、散水量に対する体積含水率θとIQSの変動は、図3のような関係になる。図3に示すように、時々刻々変化する散水量Apに対して、IQSも変化する。散水量Apが多くなるとIQSも大きくなり、散水量Apが小さくなるとIQSも小さくなる。このことは、IQSを用いて斜面監視システムを構築するためには、降水量に応じてIQSを推定しなければならないことを意味する。降水量に応じたIQSの推定方法はまだ確立されていないので、IQSを用いた斜面監視システムの実現をより困難にする。そこで、発明者らは、IQSを推定するために、まず、降水量に対する斜面の土壌の体積含水率θの変動を推定することにした。
1.2 体積含水率の推定
降水量に対する体積含水率θの変動は土壌の性質によって異なる。したがって、土壌の性質をモデル化して体積含水率θを推定する。
体積含水率θは、鉛直一次元不飽和浸透流解析を用いて推定する。具体的には、土中水の連続式であるRichards式を用いる。また、土壌の性質をモデル化するために、van Genuchtenモデルと、Mualemモデルとを採用する。
Richards式は、以下の(1)式である。

Figure 0006858375
kは不飽和透水係数であり、hは土壌水分吸引水頭であり、zは深さ方向の距離であり、Cは比水分容量であり、tは時間である。
van Genuchtenモデルは、以下の(2)式である。

Figure 0006858375
は有効飽和度であり、θは体積含水率であり、θは飽和体積含水率であり、θは残留体積含水率であり、αは空気進入値に関するパラメータであり、nは無次元パラメータであり、mは、1−(1/n)で算出される値である。
Mualemモデルは、以下の(3)式である。

Figure 0006858375
は飽和透水係数であり、Lは無次元パラメータである。
これらの3つの式より、体積含水率θを算出することで、降水量に対する体積含水率θを推定することができる。また、上述したパラメータのうち、5種類のパラメ−タの値が決定されれば、体積含水率θと、時間tを除く他のパラメータの値を(2)式および(3)式を用いて、既知の一次元飽和・不飽和浸透流解析を用いた計算により決定することができる。5種類のパラメータとは、飽和体積含水率θ、残留体積含水率θ、空気進入値に関わるパラメータα、無次元パラメータn、飽和透水係数kである。なお、各パラメータが決定されれば、(1)式をFEM解析(有限要素法;Finite Element Method)することで土壌中の体積含水率θの時間変化を推定することができる。
そこで、これら5個のパラメータθ、θ、α、n、kの値を決定することが必要になるが、これらの5個のパラメータは、土壌の性質により異なる値をそれぞれ有する。発明者は、土壌モデルの最適化として、データ同化手法を用いれば、これらの5種類のパラメータをそれぞれ決定できると考えた。
1.3 データ同化手法
IQSは、土壌の性質によって変化する値である。そこで、監視する斜面の地点ごとに異なるIQSを精度良く推定するために、土壌モデルの最適化を行う。土壌モデルの最適化は、上述した3つの式の各パラメータを実際の測定値を用いて最適化するデータ同化手法を用いて行う。
図4から図10を参照して、データ同化手法について以下に説明する。図4から図10は、データ同化手法による土壌モデルの最適化を説明するグラフ図である。データ同化手法として、例えば、SIR法(Sampling Importance resampling)による粒子フィルタを用いる。図4に示すように、雨が降り始めた時点を期間のゼロとする。この時点で、これまでの経験則により5個のパラメータのとりえる値のパターンとして、例えば、5000パターンのモデル候補(粒子)を用意する。図5に示すように、0期目では、各パターンのモデル候補の個数はそれぞれ1個である。
雨が降り始めて予め定められた1期間経過した時点で、この期間中の降水量が検出される。この降水量に対して、5000パターンのモデル候補の体積含水率θを推定する。図6の丸印は、各パターンのモデル候補における体積含水率の推定結果を示す。モデル候補ごとに異なる体積含水率θが推定される。
図7は、図6のグラフ図に、1期目までの実際に検出された体積含水率の変化を加えたグラフ図である。ここで、1期目において検出された体積含水率と大きく値が異なる推定値を有するモデル候補の重み付けを小さくする。また、検出された体積含水率と近い推定値のモデル候補の重み付けを大きくする。これらのモデル候補の重み付けはベイズの定理を用いて実施される。ベイズの定理は(4)式で示される。
Figure 0006858375
(4)式で、xは時刻tの計算値(状態量)を示し、yは時刻tの観測値を示し、Yは時刻tまでの全観測値を示し、Yt−1は時刻t−1までの全観測値を示し、P(x|Y)は時刻tまでの全観測値が所与のもとでの時刻tの状態量が得られる条件付き確率を示し、P(Y|x)は時刻tにおける状態量が所与のもとでの時刻tの観測値が得られる条件付き確率を示し、P(x|Yt−1)は時刻t−1までの全観測値が所与のもとでの時刻tの状態量が得られる条件付き確率を示し、P(y|Yt−1)は時刻t−1までの全観測値が所与のもとでの時刻tの観測値が得られる条件付き確率を示す。
次に、重み付けに応じて各モデル候補を消滅および複製するリサンプリングを行う。すなわち、重み付けの小さいモデル候補を消滅し、重み付けの大きいモデル候補を複製する。このリサンプリングにより、1期目において検出された体積含水率と大きく値が異なる推定値のモデル候補が削除される。また、検出された体積含水率と近い推定値のモデル候補が複製される。
したがって、図8に示すように、1期目の検出された体積含水率と近い推定値のモデル候補の数が増加する。このような処理を、例えば、9期まで続けた結果が図9に示される。それぞれの期間ごとに、体積含水率の推定と、実際に検出された体積含水率との検証が実施される。また、それぞれの期間ごとに、検出された体積含水率と大きく値が異なるモデル候補は削除され、検出された体積含水率に近い体積含水率を推定したモデル候補の数が徐々に増加する。この結果、図10に示すように、モデル候補の数が減少し、ぞれぞれのモデル数にばらつきのあるモデル候補が残る。
残ったモデル候補の中から最もモデル数の多いモデル候補を土壌のモデルとして選択する。このようにして、例えば、5000候補の中からその土壌モデルとして最適化された候補が決定され、その候補の5個のパラメータが採用される。この5個のパラメータを基に他のパラメータも確定され、対象となる土壌モデルの最適化が完了する。
図11は、上述した逐次データ同化手法を用いて最適化された土壌モデルにおいて推定された体積含水率と実際に検出された体積含水率とを示したグラフ図である。θr1は深さ30cmの地点での体積含水率の計測値であり、破線で示すθp1はその地点での体積含水率の推定値である。また、θr2は深さ60cmの地点での体積含水率の計測値であり、破線で示すθp2はその地点での体積含水率の推定値である。図11に示されるように、推定値と測定値とが精度良く一致している。
1.4 IQSの推定
上述した最適化した土壌モデルにおいて、降雨強度別に体積含水率θを推定すると、IQSが異なる値となることが新たに知見された。図12は、降雨強度10mm/hの際の体積含水率θの変動推定グラフである。図13は、降雨強度120mm/hの際の体積含水率θの変動推定グラフである。
降雨強度10mm/hの際にはIQSは0.34であり、降雨強度120mm/hの際にはIQSは0.42である。このように、IQSは、降雨強度によって変動する。そこで、降水量に対するIQSの変化を示す近似式を算出し、この近似式を用いて降雨強度に対応したIQSを算出する。IQSの変動近似式は、降雨強度の異なる状態でのIQSを複数個推定し、これらの点を結ぶ線を、例えば、2次曲線の近似式で示す。なお、IQS近似式は、2次曲線の他にも、例えば、直線、累乗曲線等で近似される近似式でもよいし、これらの直線または曲線以外で近似される近似式でもよい。図14は、IQSの近似曲線を示す。この近似式は、斜面の異なる地点および異なる深さごとに算出される。
以上のようにして、斜面の異なる地点のIQSを、降雨強度に対応して推定することができる。また、IQSは斜面の深さ方向によっても異なる値となるので、深さ方向に複数の土壌水分計を配置した場合、それぞれの深さでの変動近似式からIQSを推定する。次に、IQSの推定手法を用いた斜面監視システムを以下に説明する。
2.実施形態1の斜面監視システム
上述した理論により実施される斜面監視システムの一例である実施形態1を図15、図16を参照して説明する。図15は、実施形態1に係る斜面監視システムの機能ブロック図である。図16は、測定ユニットが設置された斜面を模式的に示す説明図である。
斜面監視システム11は、監視対象の斜面12に設置された測定ユニット13、14と、測定ユニット13、14から送信される測定データを中継する中継機15と、中継機15から送信されるデータを保管するサーバ17と、サーバ17と接続される通信ネットワーク19と、通信ネットワーク19に接続されるコンピュータ21、および携帯端末23とを備える。
測定ユニット13は、監視対象の斜面の土壌中の体積含水率を測定する土壌水分計31と、監視対象の斜面の降水量を測定する雨量計33と、斜面の傾斜度を測定する傾斜計35と、土壌水分計31、雨量計33および傾斜計35の測定データを無線送信する無線機37とを備える。
土壌水分計31は、土壌中の誘電率を測定することで、土壌中の体積含水率を測定する。実施形態1では、例えば、3個の土壌水分計31a、31b、31cが、それぞれ斜面の深さを変えて設置されている。土壌水分計31aが最も表面に近く、土壌水分計31cが最も深く、土壌水分計31bが土壌水分計31a、31cの間に設置されている。なお、1つの測定ユニット13につき、土壌水分計の数は、3個に限られず、1個または2個でもよいし、4個以上でもよい。
雨量計33は、設置された地点の単位時間当たりの降水量を測定する。実施形態1において、例えば、10分間ごとの降水量を検出する。実施形態1において、1つの測定ユニット13につき1個の雨量計33が備えられているが、これに限られない。例えば、土壌水分計31及び32の数に対して雨量計33を1個設置してもよい。
傾斜計35は、斜面の傾斜度を測定する。傾斜度の変化を検出することで斜面の変位を検出することができる。なお、実施形態1において、傾斜計35が備えられているが、省略してもよい。
測定ユニット14は、測定ユニット13と同じ構成を備えている。測定ユニット14はは、中継機15に無線通信可能な範囲の、測定ユニット13と異なる位置に配置されている。測定ユニット14の土壌水分計32も、例えば、3個の土壌水分計32a、32b、32cが、それぞれ斜面の深さを変えて設置されている。土壌水分計32aが最も表面に近く、土壌水分計32cが最も深く、土壌水分計32bが土壌水分計32a、32cの間に設置されている。
無線機37は、土壌水分計31、雨量計33および傾斜計35と有線または無線で接続されている。無線機37は、土壌水分計31、雨量計33および傾斜計35の各測定データを中継機15へ無線にて送信する。
中継機15は、無線機37から送られた各測定ユニット13の測定データをサーバ17へ送信する。中継機15とサーバ17とは光ケーブルにて有線接続されているが、無線ネットワークまたはインターネット網によって接続されてもよい。
サーバ17は、受信した各測定ユニット13の測定データを記録する記録装置を備える。記録装置は、例えば、ハードディスク、SSD(Solid State Drive)である。また、サーバ17は通信ネットワーク19にも接続されている。
通信ネットワーク19は、例えば、インターネット網である。通信ネットワーク19により、サーバ17、コンピュータ21および携帯端末23とそれぞれ相互にアクセス可能である。
次に、図17を参照してコンピュータ21を説明する。図17は、実施形態1に係るコンピュータを模式的に示すブロック図である。コンピュータ21は、サーバ17に保管された測定データを基に斜面状態を判断する。コンピュータ21は、測定ユニット13が設置されている斜面の土壌の性質をパラメータ化によりモデル化する土壌モデル化演算部41と、モデル化された土壌の各パラメータを基に体積含水率の変動を算出する体積含水率推定部43と、算出された体積含水率の変動を基に、IQSを算出するIQS算出部45と、降水量により変動するIQSの近似式を算出するIQS近似式算出部47と、測定された降水量と算出された近似式とを基にIQSを推定するIQS推定部49と、検出された体積含水率と推定されたIQSとを比較して、斜面の状態を判別する比較部51と、を備える。
また、斜面監視システム11は、コンピュータ21の土壌状態の判断結果を表示する表示部53を備える。表示部53は、例えば、液晶モニタである。なお、表示部53はコンピュータ21が備えていてもよい。
土壌モデル化演算部41は、上述した3つのモデル式によるモデル候補のデータ同化手法により最適化された5個のパラメータを決定する。土壌モデル化演算部41は、土壌水分計31a−31c、32a−32cそれぞれの設置されている土壌モデル最適化を行う。これにより、土壌水分計31a−31c、32a−32cのそれぞれの5個のパラメータが決定される。この結果、土壌水分計31a−31c、32a−32cの設置箇所のそれぞれに対して、体積含水率θ、時間t、降水量をパラメータとする関係式が決定される。
体積含水率推定部43は、降水量が一定な場合の体積含水率θの時間変動を算出する。体積含水率θの算出は、複数種類の降水量で実施される。これによって、土壌水分計31a−31c、32a−32cの設置箇所のそれぞれの降水量に対する体積含水率θの変動曲線がシミュレーションされる。
IQS算出部45は、体積含水率推定部43が算出した体積含水率θの変動を基に、各降水量に対応するそれぞれのIQSを算出する。IQSは、例えば、シミュレーションされた体積含水率の変動曲線の傾きの変化を閾値で判別することで、算出することができる。また、この他にも、(2)式および(3)式を用いて算出してもよいし、その他の方法により算出してもよい。IQS算出部45は、各土壌水分計31a−31c、32a−32cのそれぞれの設置箇所におけるそれぞれの、降水量別のIQSを算出する。
IQS近似式算出部47は、異なる降水量におけるそれぞれのIQSを基にIQS近似式を算出する。IQS近似式算出部47は、各土壌水分計31a−31c、32a−32cのそれぞれの設置箇所におけるそれぞれのIQS近似式を算出する。
IQS推定部49は、斜面の最適化された土壌モデルにおいて予め算出された、降水量とIQSとの関係と、検出された前記降水量とを基に、IQSを推定する。IQS推定部49は、各土壌水分計31、32の設置箇所それぞれの降水量データをサーバ17から受信する。これらの測定データを基に、各土壌水分計31a−31c、32a−32cの設置箇所におけるそれぞれのIQSが推定される。
比較部51は、推定されたIQSと検出された体積含水率とを比較する。すなわち、比較部51は、各土壌水分計31a−31c、32a−32cの設置箇所に対してそれぞれ推定されたIQSと、各土壌水分計31a−31c、32a−32cが検出したそれぞれの体積含水率を比較する。比較結果は、斜面状態の判断結果を示す。土壌水分計31、32の設置箇所ごとの比較結果は、表示部53および通信ネットワーク19へ送信される。
携帯端末23は、通信ネットワーク19を介してコンピュータ21と接続されている。携帯端末23を用いることで、ユーザがどこにいてもコンピュータ21の斜面状態の判断結果を確認することができる。携帯端末は、例えば、携帯電話やスマートフォン、タブレット等である。
土壌モデル化演算部41、体積含水率推定部43、IQS算出部45、IQS近似式算出部47,IQS推定部49、比較部51は、複数のCPU、マイクロプロセッサ、FPGA(Field Programmable Gate Array)から構成されてもよいし、1つのCPU、マイクロプロセッサ、またはFPGAに統合されていてもよい。また、コンピュータ21は、測定データや各演算結果を記憶するハードディスク、メモリ、またはSSDを備える。
3.実施形態1の斜面監視方法
次に、斜面監視方法について説明する。斜面監視方法は、土壌最適化方法と、IQS近似式作成方法と、IQS推定方法との3つの段階に分けられる。図18を参照して、土壌モデル最適化の流れを説明する。図18は、土壌モデル最適化の流れを示すフローチャートである。
土壌モデル最適化の方法は、上述したように、3つのモデル式に実際に測定した体積含水率の検出値を用いた、逐次データ同化手法を用いる。土壌モデル化演算部41は、以下のステップS1からS6までの処理を行う。ステップS1では、5個のパラメータに対して数字を振り分けた1組のパターンを、例えば、5000パターン作成する。この結果、5000種類の土壌のモデル候補が作成される。次に、ステップS2では、1期分の降水量を基に、5000パターンのそれぞれのパラメータを用いて1期後の体積含水率θを予測する。次に、ステップS3では、予測された5000パターンのそれぞれのモデル候補の体積含水率θと検出された体積含水率との差に応じて、ベイズの定理を用いて、各モデル候補に重み付けをするフィルタリングを実施する。次に、ステップS4では、各パターンの重みに基づいてモデル候補を複製および消滅するリサンプリングを実施する。
次に、ステップS5において、ステップS2からステップS4の処理を予め定められた回数実施したか判別する。予め定められた回数実施していなければ(ステップS5のNo)、ステップS2から再び処理が始まる。また、予め定められた回数実施していれば、(ステップS5のYes)、ステップS6にて、最もモデル数の多いモデル候補のパラメータの組が5個のパラメータの数値として決定される。これにより、土壌モデルの最適化方法が終了する。
次に、図19を参照して、IQS近似式作成方法を説明する。図19は、IQS近似式算出の流れを示すフローチャートである。
IQS近似式は、上述したように、降水量別に体積含水率をシミュレーションすることで求められる。そこで、まず、ステップS11において、体積含水率推定部43が、各土壌水分計31a−31c、32a−32cの設置されている箇所の体積含水率の変動曲線を、代表的な降水量別に推定する。
ステップS12では、IQS算出部45が、推定された体積含水率の変動曲線からIQSを算出する。例えば、体積含水率の曲線の傾きを閾値と比較することで、平衡状態に達したことを検出して、IQSを算出する。次にステップS13では、IQS近似式算出部47が、算出された複数の降水量のIQSの値からIQS近似式を算出する。このIQS近似式により、検出された降水量を入力するだけで、降水量に対応するIQSを算出することができる。ここまでは、斜面監視を実施する前に実施される処理である。
次に、図20を参照して、IQSを利用した斜面監視方法を説明する。図20は、IQSを利用した斜面状態を判別する流れを示すフローチャートである。ステップS21において、土壌水分計31、32が斜面12の土壌中の体積含水率を検出する。検出された体積含水率はサーバ17で保管される。また、ステップS22において、雨量計33が斜面12の降水量を検出する。検出された降水量はサーバ17で保管される。
ステップS23において、コンピュータ21は、サーバ17から検出された体積含水率および降水量を取得する。IQS推定部49は、取得した降水量からIQSを推定する。ステップS24において、比較部51は、推定されたIQSと取得された体積含水率とを比較する。体積含水率がIQS以上の場合(ステップS24のYes)、擬似飽和状態の後に斜面崩壊が発生するおそれがあるので、ステップS25において、表示部53および通信ネットワーク19に斜面崩壊の警告が出される。
また、体積含水率がIQS未満の場合(ステップS24のNo)、ステップS26において、警告が発令中であるか否かを判断する。警告が発令中の場合(ステップS26のYes)、体積含水率がIQSの値を下回っているので、擬似飽和状態に達する前の段階へ戻ったことになる。したがって、斜面崩壊が発生するには、もう一度擬似飽和状態になる必要があるので、斜面崩壊のおそれが低下している。したがって、ステップS27において、警告を解除し、表示部53および通信ネットワーク19に出されていた斜面崩壊の警告が消える。
また、警告が発令中でない場合(ステップS26のNo)、擬似飽和状態に達する前の状態が続いているので、斜面崩壊の危険性は低いので、処理を終了する。そして、予め定められた時間経過後に、再びステップS21からの処理を開始する。これにより、斜面の状態を継続して監視することができる。
図21は、降雨強度に対する、推定されたIQSと、体積含水率とを示すグラフ図である。図22は、図21のグラフの一部を拡大したグラフ図である。時刻Taにおいて、検出された体積含水率が推定されたIQSよりも大きくなっている。このタイミングで警告が発令される。また、時刻Tbにおいて、検出された体積含水率が推定されたIQSよりも小さくなっている。このタイミングで、警告が解除される。
なお、深さ方向に異なる地点のそれぞれのIQSの比較結果に応じて警告の度合いを変更してもよい。例えば、土壌上部の体積含水率がIQSに達したときに、弱めの警告(例えば、注意喚起)を発令し、土壌中部の体積含水率がIQSに達したときに、通常の警告を発令し、土壌下部の体積含水率がIQSに達したときに、強めの警告(例えば避難勧告)を発令してもよい。
また、本開示の斜面監視方法は、プログラムにより、コンピュータ21に実行させることができる。本開示の斜面監視プログラムは、コンピュータ21に斜面を監視させるためのプログラムであって、土壌水分計により検出された、斜面における土壌の体積含水率と、雨量計により検出された、斜面における降水量とが入力され、斜面の最適化された土壌モデルにおいて予め算出された、降水量とIQSとの関係と、入力された降水量とを基に、IQSを推定する推定ステップと、入力された体積含水率と推定されたIQSとを比較する比較ステップとを、コンピュータ21に実行させる斜面監視プログラムである。また、ステップS1からステップS6まで、ステップS11からステップS13まで、および、ステップS23からステップS27までをコンピュータ21に実行させるプログラムとしてコンピュータ21のメモリに記憶させておいてもよい。なお、これらのプログラムはサーバ17からコンピュータ21へダウンロードしてもよい。
(実施形態2)
4.交通規制への適応
次に、上述した斜面監視システムを道路の交通規制に適応した実施形態を、図23を参照して説明する。実施形態2の斜面監視システムは、IQSの判別結果を交通規制に適応する。実施形態2の斜面監視システムは、実施形態1の斜面監視システムとコンピュータの構成だけが異なり、以下に記載した事項以外の構成は、実施形態1の斜面監視システム1と共通である。
図23は、実施形態2に係る斜面監視システムの機能ブロック図である。実施形態2のコンピュータ61は、指標値算出部63をさらに備える。指標値算出部63は、推定されたIQSを検出された体積含水率で除した値である指標値を算出する。この指標値は、比較部65へ送られる。
比較部65は、指標値を基準値と比較する。基準値は、例えば、1である。指標値が基準値以下である場合、交通規制を指示する規制信号を出力する。また、指標値が基準値より大きい場合、交通規制の解除を指示する信号を出力する。既に交通規制が発令中の場合、交通規制を解除する。また、交通規制が発令中でない場合、処理を終了する。
次に、実施形態2のIQSを利用した斜面監視方法を説明する。図24は、実施形態2に係る、IQSを利用した斜面状態を判別する流れを示すフローチャートである。ステップS21からステップS23までは、実施形態1と共通であるので、説明を省略する。
ステップS31において、指標値算出部63は、交通規制の判断基準となる指標値を算出する。次に、ステップS32において、比較部65が算出された指標値が基準値以下であるか否か判別する。指標値が基準値以下である場合(ステップS32のYes)、比較部65は、規制信号を出力する。これにより、ステップS33において、斜面監視システム11は、交通規制を実施する。
また、指標値が基準値より大きい場合(ステップS32のNo)であって、さらに、交通規制中であれば(ステップS34のYes)、ステップS35において、交通規制を解除する。また、指標値が基準値より大きい場合であって、交通規制中でもない場合(ステップS34のNo)、は、処理を終了する。そして、予め定められた時間経過後に、再びステップS21からの処理を開始する。これにより、斜面の状態を継続して監視することができる。なお、これらのステップS31からステップS35までをコンピュータ21に実行させるプログラムとして、コンピュータ21のメモリに記憶させておいてもよい。
図25は、指標値の変動を示すグラフ図である。指標値RVは時々刻々変化するが、交通規制をするかしないかの基準となる基準値(閾値)は常に1であるので、通信ネットワーク19を介して指標値RVの変動を注視するユーザにとって斜面の状態を把握しやすい。
なお、深さ方向に異なる地点のそれぞれのIQSに応じて警告の度合いを変更してもよい。例えば、土壌上部の指標値RVが基準値以下になったときに、交通規制の準備を発令し、土壌中部の指標値RVが基準値以下になったときに通行止め規制を発令し、土壌下部の指標値RVが基準値以下になった時に例えば避難の準備を発令するとしてもよい。このように、警告部67は、それぞれの比較結果に応じて警告してもよい。また、交通規制に限らず、住民の避難勧告に用いてもよい。
本開示は、上記実施形態のものに限らず、次のように変形実施することができる。
(1)上記実施形態において、降水量とIQSとの関係は、複数の異なる降水量においてそれぞれ推定されたIQSを基に算出された、降水量に応じて変化するIQSの近似式であったが、これに限られない。降水量に応じてIQSがリスト化されたテーブルを用いてもよい。
(2)上記実施形態において、測定ユニット13は、土壌水分計31、雨量計33、傾斜計35を備えていたがこれに限られない。これらの他にも、変位計、伸縮計、水位計、荷重計等のいずれかを備えていてもよい。
(3)上記実施形態において、逐次データ同化手法としてSIR法による粒子フィルタを用いていたがこれに限られない。SIR法以外にも、例えば、モデル候補(粒子)内のパラメータ自体を良いモデル候補(粒子)の影響を受けたパラメータに変化させていくMPF法(Merging Particle Filter)による粒子フィルタを用いてもよい。また、SIR法やMPF法以外の粒子フィルタによる逐次データ同化手法を用いてもよい。
本開示にかかる斜面監視システムは、例えば、高速道路および国道に面する斜面や民家の裏山斜面の監視システムとして有用である。
1 斜面
1a 不透水層
3、3a、3b、3c 土壌水分計
4、4a、4b、4c 土壌水分計
11 斜面監視システム
12 斜面
13、14 測定ユニット
15 中継機
17 サーバ
19 通信ネットワーク
21 コンピュータ
23 携帯端末
31、31a、31b、31c 土壌水分計
32、32a、32b、32c 土壌水分計
33 雨量計
35 傾斜計
37 無線機
41 土壌モデル化演算部
43 体積含水率推定部
45 IQS算出部
47 IQS近似式算出部
49 IQS推定部
51 比較部
53 表示部
61 コンピュータ
63 指標値算出部
65 比較部

Claims (10)

  1. 斜面における土壌の体積含水率を検出する土壌水分計と、
    前記斜面における降水量を検出する降水量検出器と、
    前記斜面の最適化された土壌モデルにおいて予め算出された、降水量と初期擬似飽和体積含水率との関係と、検出された前記降水量とを基に、初期擬似飽和体積含水率を推定する推定部と、
    検出された前記体積含水率と推定された前記初期擬似飽和体積含水率とを比較する比較部と、
    を備え
    前記降水量と初期擬似飽和体積含水率との関係は、複数の異なる降水量においてそれぞれ推定された初期擬似飽和体積含水率を基に算出された、降水量に応じて変化する初期擬似飽和体積含水率の近似式である、
    斜面監視システム。
  2. 前記土壌モデルは、前記土壌の性質をモデル化したモデル式と、検出された前記体積含水率とを基に逐次データ同化により最適化された土壌モデルである、
    請求項1に記載の斜面監視システム。
  3. 前記土壌水分計は、前記斜面の深さ方向に位置を変えて複数個配置され、
    前記推定部は、前記土壌水分計が配置されたそれぞれの深さで最適化された土壌モデルにおいて予め算出された、降水量と初期擬似飽和体積含水率との関係と、検出された前記降水量とを基に、初期擬似飽和体積含水率を推定する、
    請求項1または2に記載の斜面監視システム。
  4. 前記比較部は、
    推定された前記初期擬似飽和体積含水率を検出された前記体積含水率で除した値が1以下の場合、警告を出し、
    警告を出した後、推定された前記初期擬似飽和体積含水率を検出された前記体積含水率で除した値が1より大きい場合、警告を解除する、
    請求項1からのいずれか1つに記載の斜面監視システム。
  5. 前記警告は、交通規制または避難勧告である、
    請求項に記載の斜面監視システム。
  6. 斜面における土壌の体積含水率を検出する体積含水率検出ステップと、
    前記斜面における降水量を検出する降水量検出ステップと、
    前記斜面の最適化された土壌モデルにおいて予め算出された、降水量と初期擬似飽和体積含水率との関係と、検出された前記降水量とを基に、初期擬似飽和体積含水率を推定する推定ステップと、
    検出された前記体積含水率と推定された前記初期擬似飽和体積含水率とを比較する比較ステップと、
    を備え
    前記降水量と初期擬似飽和体積含水率との関係は、複数の異なる降水量においてそれぞれ推定された初期擬似飽和体積含水率を基に算出された、降水量に応じて変化する初期擬似飽和体積含水率の近似式である、
    斜面監視方法。
  7. 前記土壌モデルは、前記土壌の性質をモデル化したモデル式と、検出された前記体積含水率とを基に逐次データ同化により最適化された土壌モデルである、
    請求項に記載の斜面監視方法。
  8. 前記体積含水率検出ステップは、土壌水分計を用いて前記体積含水率を検出し、
    前記土壌水分計は、前記斜面の深さ方向に位置を変えて複数個配置され、
    前記推定ステップは、前記土壌水分計が配置されたそれぞれの深さで最適化された土壌モデルにおいて予め算出された、降水量と初期擬似飽和体積含水率との関係と、検出された前記降水量とを基に、初期擬似飽和体積含水率を推定する、
    請求項6または7に記載の斜面監視方法。
  9. 前記比較ステップは、
    推定された前記初期擬似飽和体積含水率を検出された前記体積含水率で除した値が1以下の場合、警告を出し、
    警告を出した後、推定された前記初期擬似飽和体積含水率を検出された前記体積含水率で除した値が1より大きい場合、警告を解除する、
    請求項からのいずれか1つに記載の斜面監視方法。
  10. 前記警告は、交通規制または避難勧告である、
    請求項に記載の斜面監視方法。
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