JP6857854B2 - サリューシン−β阻害剤のスクリーニング方法及びサリューシン−β阻害剤 - Google Patents

サリューシン−β阻害剤のスクリーニング方法及びサリューシン−β阻害剤 Download PDF

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Description

本発明は、血管新生関連疾患の治療又は予防剤のスクリーニング方法に関する。より具体的には、血管新生関連疾患の治療又は予防剤のスクリーニング方法、スクリーニングキット及び血管新生関連疾患の治療又は予防剤に関する。
アンギオスタチンは、38kDaの分子量を有するプラスミノ−ゲンの断片であり、血管新生、転移癌の増殖の強力な阻害薬であることが知られている(例えば、非特許文献1を参照。)。なお、プラスミノ−ゲンはプラスミンの前駆体タンパク質であり、プラスミンは、フィブリンやフィブリノーゲンを分解して血栓を分解するプロテアーゼの一種である。
ところで、サリューシン−βは、バイオインフォマティクス解析により発明者らが同定した、20アミノ酸からなる生理活性ペプチドである(例えば、非特許文献2を参照。)。サリューシン−βは、血圧降下作用、除脈作用、副交感神経刺激活性、動脈硬化促進作用、抗利尿ホルモン分泌刺激作用等の多くの生理活性を示すことが明らかにされているが、その受容体は不明であった。
O'Reilly M.S., et al., Angiostatin: a novel angiogenesis inhibitor that mediates the suppression of metastases by a Lewis lung carcinoma, Cell, 79(2), 315-328, 1994. Shichiri M., et al., Salusins: newly identified bioactive peptides with hemodynamic and mitogenic activities, Nature Med., 9(9), 1166-1172, 2003.
アンギオスタチンは、血管新生関連疾患の治療又は予防剤への応用が検討されてきたが、分子量が大きく臨床応用が困難である。そこで本発明は、臨床応用が容易な血管新生関連疾患の治療又は予防剤を提供することを目的とする。本発明はまた、血管新生関連疾患の治療又は予防剤のスクリーニング方法、及び血管新生関連疾患の治療又は予防剤のスクリーニングキットを提供することを目的とする。
本発明は以下の通りである。
(1)サリューシン−β若しくはその誘導体、ATP合成酵素β鎖若しくはその誘導体、サリューシン−βに対する特異的結合物質、又はATP合成酵素β鎖に対する特異的結合物質、を有効成分として含有する血管新生関連疾患の治療又は予防剤。
(2)前記血管新生関連疾患が、癌、心筋梗塞、慢性炎症、網膜血管新生症、糖尿病性網膜症又は閉塞性動脈硬化症である、(1)に記載の治療又は予防剤。
(3)被検物質の存在下及び非存在下で、サリューシン−βとATP合成酵素β鎖とを接触させる工程と、前記被検物質の存在下及び非存在下におけるサリューシン−βとATP合成酵素β鎖との結合量を定量する工程と、前記被検物質の存在下におけるサリューシン−βとATP合成酵素β鎖との結合量が、前記被検物質の非存在下におけるサリューシン−βとATP合成酵素β鎖との結合量と比較して変化した場合に、前記被検物質を血管新生関連疾患の治療又は予防剤であると判定する工程と、を含む、血管新生関連疾患の治療又は予防剤のスクリーニング方法。
(4)前記血管新生関連疾患が、癌、心筋梗塞、慢性炎症、網膜血管新生症、糖尿病性網膜症又は閉塞性動脈硬化症である、(3)に記載のスクリーニング方法。
(5)サリューシン−β及びATP合成酵素β鎖を含む、血管新生関連疾患の治療又は予防剤のスクリーニングキット。
本発明によれば、臨床応用が容易な血管新生関連疾患の治療又は予防剤を提供することができる。また、血管新生関連疾患の治療又は予防剤のスクリーニング方法、及び血管新生関連疾患の治療又は予防剤のスクリーニングキットを提供することができる。
実験例1におけるSDSポリアクリルアミドゲル電気泳動の結果を示す写真である。 実験例2の結果を示す共焦点蛍光顕微鏡写真である。 実験例3の結果を示すグラフである。 実験例4の結果を示すグラフである。
[血管新生関連疾患の治療又は予防剤]
1実施形態において、本発明は、サリューシン−β若しくはその誘導体、ATP合成酵素β鎖若しくはその誘導体、サリューシン−βに対する特異的結合物質、又はATP合成酵素β鎖に対する特異的結合物質、を有効成分として含有する血管新生関連疾患の治療又は予防剤を提供する。血管新生関連疾患の治療又は予防剤は、血管新生を抑制するものであってもよく、血管新生を促進するものであってもよい。
(サリューシン−β若しくはその誘導体)
後述する実施例において示すように、発明者らはサリューシン−βがインビボで血管新生抑制活性を示すことを明らかにした。したがって、サリューシン−β若しくはその誘導体は、血管新生関連疾患の治療又は予防剤として使用することができる。
本明細書において、血管新生関連疾患としては、例えば、癌、心筋梗塞、慢性炎症、網膜血管新生症、糖尿病性網膜症、閉塞性動脈硬化症等が挙げられる。また、慢性炎症としては、ぜんそく、アトピー性皮膚炎等のアレルギー性疾患に関連する炎症、関節リウマチなどの自己免疫性疾患に関連する炎症等が挙げられる。
サリューシン−βのアミノ酸配列を配列番号1に示す。サリューシン−βはわずか20アミノ酸からなるペプチドであるため、簡単に合成することができ、臨床応用が容易である。
サリューシン−βは、例えば固相合成等により人工的に合成してもよいし、例えばサリューシン−βをコードする遺伝子を含む発現ベクターを、無細胞タンパク合成系、又は大腸菌、酵母細胞、昆虫細胞、動物細胞等の適切な宿主中で発現させて精製することにより製造してもよい。
サリューシン−βの誘導体としては、例えば、サリューシン−βのアミノ酸配列において、1若しくは数個のアミノ酸が欠失、置換若しくは付加されたアミノ酸配列からなり、かつ血管新生抑制活性を有するペプチド;サリューシン−β又は上記のペプチドに、例えばポリエチレングリコール等の化合物が結合したもの等が挙げられる。ポリエチレングリコールを結合することにより、例えば血中安定性を高めること等が可能になる。ここで、1若しくは数個とは、例えば1〜10個、例えば1〜5個、例えば1〜3個を意味する。
(ATP合成酵素β鎖若しくはその誘導体)
後述する実施例において示すように、発明者らはサリューシン−βの受容体がATP合成酵素β鎖であることを明らかにした。したがって、遊離状態の(可溶化した)ATP合成酵素β鎖若しくはその誘導体は、サリューシン−βに結合してサリューシン−β受容体への結合を阻害することによってサリューシン−βの働きを抑制することにより、サリューシン−βの生理活性を調節することができる。したがって、ATP合成酵素β鎖若しくはその誘導体は、血管新生関連疾患の治療又は予防剤として使用することができる。ATP合成酵素β鎖のアミノ酸配列を配列番号2に示す。
ATP合成酵素β鎖は、例えば、ATP合成酵素β鎖をコードする遺伝子を含む発現ベクターを、無細胞タンパク合成系、又は、大腸菌、酵母細胞、昆虫細胞、動物細胞等の適切な宿主中で発現させて精製すること等により製造することができる。
ATP合成酵素β鎖の誘導体としては、例えば、ATP合成酵素β鎖のアミノ酸配列において、1若しくは数個のアミノ酸が欠失、置換若しくは付加されたアミノ酸配列からなり、かつサリューシン−βに対する結合活性を有するペプチド;ATP合成酵素β鎖又は上記のペプチドに、例えばポリエチレングリコール等の化合物が結合したもの等が挙げられる。ポリエチレングリコールを結合することにより、例えば血中安定性を高めること等が可能になる。ここで、1若しくは数個とは、例えば1〜30個、例えば1〜20個、例えば1〜10個、例えば1〜5個、例えば1〜3個を意味する。
(サリューシン−βに対する特異的結合物質)
上述したように、発明者らはサリューシン−βがインビボで血管新生抑制活性を示すことを明らかにした。したがって、サリューシン−βに対する特異的結合物質は、サリューシン−βに結合してサリューシン−βの働きを抑制することにより、サリューシン−βの生理活性を調節することができる。したがって、サリューシン−βに対する特異的結合物質は、血管新生関連疾患の治療又は予防剤として使用することができる。特異的結合物質としては、例えば、抗体、抗体断片、アプタマー、受容体等が挙げられる。
抗体は、例えば、マウス等の動物にサリューシン−βを抗原として免疫することにより作製することができる。あるいは、ファージライブラリー等の抗体ライブラリーのスクリーニング等により作製することができる。また、抗体断片としては、Fv、Fab、scFv等が挙げられる。ヒトに投与した場合の拒絶反応等を抑制する観点から、抗体及び抗体断片は、ヒト化されているかヒト由来であることが好ましい。
アプタマーとは、標識物質に対する特異的結合能を有する物質である。アプタマーとしては、核酸アプタマー、ペプチドアプタマー等が挙げられる。サリューシン−βに特異的結合能を有する核酸アプタマーは、例えば、systematic evolution of ligand by exponential enrichment(SELEX)法等により選別することができる。また、サリューシン−βに対する特異的結合能を有するペプチドアプタマーは、例えば酵母を用いたTwo−hybrid法等により選別することができる。
(ATP合成酵素β鎖に対する特異的結合物質)
上述したように、発明者らはサリューシン−βの受容体がATP合成酵素β鎖であることを明らかにした。したがって、ATP合成酵素β鎖に対する特異的結合物質は、ATP合成酵素β鎖に結合してサリューシン−βのATP合成酵素β鎖への結合を抑制することにより、サリューシン−βの生理活性を調節することができる。したがって、ATP合成酵素β鎖に対する特異的結合物質は、血管新生関連疾患の治療又は予防剤として使用することができる。特異的結合物質については、上述したものと同様である。
[血管新生関連疾患の治療又は予防剤のスクリーニング方法]
1実施形態において、本発明は、被検物質の存在下及び非存在下で、サリューシン−βとATP合成酵素β鎖とを接触させる工程と、前記被検物質の存在下及び非存在下におけるサリューシン−βとATP合成酵素β鎖との結合量を定量する工程と、前記被検物質の存在下におけるサリューシン−βとATP合成酵素β鎖との結合量が、前記被検物質の非存在下におけるサリューシン−βとATP合成酵素β鎖との結合量と比較して変化した場合に、前記被検物質を血管新生関連疾患の治療又は予防剤であると判定する工程と、を含む、血管新生関連疾患の治療又は予防剤のスクリーニング方法を提供する。
本実施形態のスクリーニング方法により、サリューシン−βとATP合成酵素β鎖との結合を制御することに基づく血管新生関連疾患の治療又は予防剤をスクリーニングすることができる。血管新生関連疾患については上述したものと同様である。
(サリューシン−βとATP合成酵素β鎖とを接触させる工程)
本工程において、被検物質の存在下及び非存在下でサリューシン−βとATP合成酵素β鎖とを接触させる。被検物質としては、例えば化合物ライブラリー等を用いることができる。本工程は、例えば、後述する実験例で示すように、ATP合成酵素β鎖を発現する細胞の培地に、被検物質の存在下又は非存在下で、蛍光標識したサリューシン−βを反応させること等により実施することができる。あるいは、被検物質の存在下又は非存在下で、サリューシン−β又はATP合成酵素β鎖を固定した固相に、蛍光標識したATP合成酵素β鎖又は蛍光標識したサリューシン−βをそれぞれ接触させてもよい。固相としては、例えば、ビーズ等の粒子;スライドガラス、イムノプレート等の板状構造体等が挙げられる。
(サリューシン−βとATP合成酵素β鎖との結合量を定量する工程)
本工程において、サリューシン−βとATP合成酵素β鎖との結合量を定量する。本工程は、例えば、上述した細胞表面に結合した、サリューシン−βの蛍光量を測定すること等により実施することができる。あるいは、上述した固相に結合したATP合成酵素β鎖又はサリューシン−βの蛍光量を測定すること等により実施することができる。
(被検物質が血管新生関連疾患の治療又は予防剤であるか否かを判定する工程)
本工程において、被検物質が血管新生関連疾患の治療又は予防剤であるか否かを判定する。より具体的には、被検物質の存在下におけるサリューシン−βとATP合成酵素β鎖との結合量が、被検物質の非存在下におけるサリューシン−βとATP合成酵素β鎖との結合量と比較して変化した場合に、被検物質を血管新生関連疾患の治療又は予防剤であると判定する。
変化する場合としては、上記の結合量が増加する場合及び減少する場合があり得る。サリューシン−βとATP合成酵素β鎖との結合を変化させる被検物質は、血管新生関連疾患の治療又は予防剤となり得る。例えば、サリューシン−βとATP合成酵素β鎖との結合量を増加させる被検物質は、血管新生を抑制することにより血管新生関連疾患の治療又は予防剤となり得る。また、サリューシン−βとATP合成酵素β鎖との結合量を減少させる被検物質は、例えばサリューシン−βの過剰な活性を抑制することにより血管新生を適正な範囲にすることにより、血管新生関連疾患の治療又は予防剤となり得る。
本実施形態のスクリーニング方法は、例えば、表面プラズモン共鳴現象を利用する測定装置等を用いて実施することもできる。表面プラズモン共鳴現象を利用する測定装置としては、例えば、ビアコア(登録商標、GEヘルスケアバイオサイエンス社)等が挙げられる。
[血管新生関連疾患の治療又は予防剤のスクリーニングキット]
1実施形態において、本発明は、サリューシン−β及びATP合成酵素β鎖を含む、血管新生関連疾患の治療又は予防剤のスクリーニングキットを提供する。サリューシン−β又はATP合成酵素β鎖は、蛍光色素等で標識されていてもよい。本実施形態のスクリーニングキットは、上述した血管新生関連疾患の治療又は予防剤のスクリーニング方法を実施するのに好適に用いることができる。
[その他の実施形態]
1実施形態において、本発明は、サリューシン−β若しくはその誘導体、ATP合成酵素β鎖若しくはその誘導体、サリューシン−βに対する特異的結合物質、又はATP合成酵素β鎖に対する特異的結合物質を、哺乳動物に投与する工程を備える、血管新生関連疾患の治療又は予防方法を提供する。
1実施形態において、本発明は、血管新生関連疾患の治療又は予防のための、サリューシン−β若しくはその誘導体、ATP合成酵素β鎖若しくはその誘導体、サリューシン−βに対する特異的結合物質、又はATP合成酵素β鎖に対する特異的結合物質を提供する。
1実施形態において、本発明は、血管新生関連疾患の治療又は予防剤の製造のための、サリューシン−β若しくはその誘導体、ATP合成酵素β鎖若しくはその誘導体、サリューシン−βに対する特異的結合物質、又はATP合成酵素β鎖に対する特異的結合物質の使用を提供する。
次に実施例を示して本発明を更に詳細に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
<実験例1>
[サリューシン−βの受容体の同定]
膜タンパク質ライブラリー(membrane protein library、MPL)をスクリーニングすることにより、サリューシン−βの受容体を同定した。
(膜タンパク質ライブラリーの調製)
まず、ラット、マウス及びブタの様々な臓器由来の組織から膜タンパク質を抽出した。臓器としては、心臓、大脳、小脳、肺、肝動脈、腎臓、骨格筋、視床下部/下垂体、大動脈を使用した。
膜タンパク質の抽出は次のようにして行った。臓器2gを10mMリン酸ナトリウム(pH7.4)−DNaseI(70U/μL)−1mM DTTの溶液10mLに入れてホモジナイズし、2,500rpm、4℃で5分間遠心した。上清を回収し、40%飽和スクロース液12mLに重層し、95,000rpm、4℃で1時間遠心した。続いて、2層に分かれた液体の界面に存在する膜タンパク質を回収し、使用するまで−80℃で保存した。
続いて、抽出した膜タンパク質を、卵黄レシチン及びコレステロールから作製したリポソームと混合し、膜融合させることにより、膜タンパク質が埋め込まれたリポソームを作製した。
リポソームの作製は次のようにして行った。精製卵黄レシチン(旭化成社)1g及びコレステロール(和光純薬工業社)0.2gを10mLのクロロホルムに溶解し、室温で真空乾燥した。続いて、10mM Tris−Cl(pH7.4)10mLを添加して再構成した。続いて、混合液を激しく撹拌してリポソーム懸濁液を得、使用するまで4℃で保存した。
続いて、抽出した膜タンパク質50mgに10mM Tris−Cl(pH7.4)5mLを添加し、超音波処理装置(型式「INSONATOR 201M」、クボタ社)を用いて超音波処理を行い、リポソーム懸濁液と混合し、凍結融解を3回繰り返した。続いて、再び超音波処理を行い、膜タンパク質が埋め込まれたリポソームを得た。
続いて、膜タンパク質が埋め込まれたリポソームに、ポアサイズ200nmのポリカーボネート膜(型式「Nucleopore」、ワットマン社)を通過させ、直径200nm以下のものを回収し、膜タンパク質ライブラリーとしてスクリーニングに用いた。
(膜タンパク質ライブラリーのスクリーニング)
予備検討の結果を踏まえ、NHS−セファロース上にサリューシン−βのN末端を固定したものを使用して、サリューシン−βに結合する膜タンパク質の単離を試みた。
具体的には、NHS−セファロース上に固定したサリューシン−βに上述した膜タンパク質ライブラリーを反応させ、サリューシン−βに結合する膜タンパク質をアフィニティー精製した。図1は、精製物をSDSポリアクリルアミドゲル電気泳動(SDS−PAGE)後、銀染色した結果を示す写真である。図1の右側のレーンは分子量マーカーである。
図1の矢印で示すバンドを切り出して、トリプシン消化−液体クロマトグラフィー(LC)−質量分析(MS)/MSによりタンパク質解析を行った。その結果、当該タンパク質はラットのATP合成酵素β鎖であることが明らかとなった。
従来、ATP合成酵素β鎖は、ATP合成酵素のFドメインに属し、ミトコンドリアの内膜に閉じ込められていると考えられてきた。しかしながら、近年、ATP合成酵素β鎖は、それぞれ一見関連性のないリガンドである、アンギオスタチン、エンテロスタチン、β−カソモルフィン、アポリポタンパク質A−Iの細胞表面受容体であることが見出されている。なお、アンギオスタチン、エンテロスタチン、β−カソモルフィン、アポリポタンパク質A−Iは、それぞれATP又はADPの生成を通じて、血管新生、食餌の摂取、高血圧、リポタンパク質の代謝を制御することが報告されている。
<実験例2>
[サリューシン−βの細胞表面に対する結合能の検討]
FITC標識したサリューシン−βを、いくつかの上皮細胞及び癌由来細胞とインキュベートし、共焦点蛍光顕微鏡で観察した。図2(a)〜(n)は、実験結果を示す共焦点蛍光顕微鏡写真である。
その結果、図2(a)に示すように、子宮頸癌細胞株であるHeLa細胞の表面に特に強い蛍光が観察された。
また、図2(b)に示すように、FITC標識したサリューシン−βのHeLa細胞に対する結合は、HeLa細胞を予めATP合成酵素β鎖に対する抗体とプレインキュベーションすることによって顕著に抑制された。
また、図2(c)〜(e)に示すように、FITC標識したサリューシン−βのHeLa細胞に対する結合は、HeLa細胞を予め過剰量のβ−カソモルフィン5(図2(c))、β−カソモルフィン7(図2(d))、エンテロスタチン(図2(e))とプレインキュベーションすることによって顕著に抑制された。β−カソモルフィン5、β−カソモルフィン7及びエンテロスタチンは、ATP合成酵素β鎖のリガンドとして同定されたものであり、サリューシン−βの結合を競合的に阻害したと考えられる。
図2(f)は、陰性対照として、FITC標識した無関係のペプチドをHeLa細胞とインキュベーションした結果である。
図2(g)及び(h)は、ATP合成酵素α鎖(図2(g))及びATP合成酵素β鎖(図2(h))に対する抗体でHeLa細胞を染色した結果である。その結果、ATP合成酵素α鎖及びATP合成酵素β鎖がHeLa細胞の表面に発現していることが確認された。同様の結果がヒト上皮細胞においても確認された(図示せず。)。
サリューシン−βは、ヒト臍静脈内皮細胞(hUVECs)(図2(i))、ヒト皮膚微小血管内皮細胞(hMVECs)等の内皮由来細胞にも結合することが確認された。
しかしながら、例えばラット大動脈内皮細胞(rAECs)、ラット肺動脈内皮細胞(rPECs)等のより大きなサイズの動脈由来の細胞では、サリューシン−βの結合はほとんど認められなかった(図示せず。)。
ヒト単球性白血病細胞株THP−1は、150nMのTPAを添加してマクロファージへと分化誘導すると、FITC標識したサリューシン−βと結合することが確認された(図2(j))。この結合は、抗ATP合成酵素α鎖抗体とプレインキュベーションすることによりわずかに阻害され(図2(k))、抗ATP合成酵素β鎖抗体(図2(l))、過剰量のβ−カソモルフィン7(図2(m))及び過剰量のエンテロスタチン(図2(n))とプレインキュベーションすることにより完全に阻害された。
以上の結果は、これらの細胞においては、ATP合成酵素β鎖がサリューシン−βの主な受容体であることを示す。
<実験例3>
[ATP合成酵素の活性に対するサリューシン−βの影響の検討]
内皮細胞表面のATP合成酵素はATPを合成することが知られている。そして、このATP合成能は、低いpH環境下において、アンギオスタチンによって阻害されることが知られている。
発明者らは、細胞表面のATP合成酵素の活性を、細胞の培地中で合成されるATPを定量することにより測定した。ATPの定量には市販のキット(商品名「CellTiterGlo(商標)ルミネッセンスアッセイ」、プロメガ社)を用いた。
96ウェルプレートにサブコンフルエントに培養されたHeLa細胞又はヒト皮膚微小血管内皮細胞(hMVECs)を血清不含培地で洗浄し、終濃度10−12〜10−7Mのサリューシン−β、ピセアタンノール(シグマ社)、抗ATP合成酵素抗体を含む培地又は培地のみの存在下で30分間静置した。静置は、pH7.2に調整する場合には5%CO環境下で行い、pH6.7に調整する場合には17%CO環境下で行った。続いて、細胞をADPで20秒間処理し、上清を直ちに回収して、合成されたATPを定量した。
図3(a)〜(c)は、実験結果を示すグラフである。グラフ中、縦軸は合成されたATP量(相対値)を示す。図3(a)はpH7.2におけるHeLa細胞の結果であり、図3(b)はpH7.2におけるhMVECsの結果である。その結果、サリューシン−βは生理的なpHにおいて、細胞表面のATP合成酵素の活性を濃度依存的に阻害することが明らかとなった。また、図3(a)に示すように、HeLa細胞を10−6Mのβ−カソモルフィンとプレインキュベーションすることにより、サリューシン−βのATP合成酵素阻害活性が拮抗された。
また、図3(a)に示すように、ATP合成酵素の阻害剤であるピセアタンノールはATP合成を顕著に抑制した。また、図3(a)に示すように、抗ATP合成酵素β鎖IgG抗体はATP合成酵素の活性を増加させたが、抗ATP合成酵素α鎖IgG抗体はATP合成酵素の活性に影響を与えなかった。
図3(c)は、pH6.7においてhMVECsを用いて同様の実験を行った結果である。pH6.7では、サリューシン−βのATP合成酵素阻害活性がpH7.2よりも顕著であった。なお、pH6.7は、アンギオスタチンがATP合成の阻害作用を示すpHである。
サリューシン−βは、ATP合成酵素β鎖を細胞表面に発現していない、ラット大動脈内皮細胞(rAECs)、ラット肺動脈内皮細胞(rPECs)のATP合成には影響を与えなかった。
<実験例4>
[血管新生に対するサリューシン−βの影響の検討]
マウス肉腫細胞株であるSarcoma180細胞をミリポアチャンバーに入れ、Crlj:CD1(ICR)マウスの背部皮下に移植すると、ほとんど血管の無い皮下領域に強力な血管新生を誘導する。この現象を利用したマウス背部皮下法(dorsal air sac assay)により、血管新生に対するサリューシン−βの影響を検討した。
ミリポアチャンバーの両側をポアサイズ0.45μmのフィルターで覆い、0.15mLのリン酸緩衝液(PBS)に懸濁した5×10個のSarcoma180細胞で満たし、癌細胞含有チャンバーを作製した。続いて、9〜10週齢のメスのCrlj:CD1(ICR)マウスの背部皮下に約8mLの空気を注入して作製した背部気嚢に癌細胞含有チャンバーを移植した。
癌細胞含有チャンバーの移植後のマウスに、0、2、20又は200ng/kg/日のサリューシン−βを5日間静脈注射した。対照として、癌細胞を含まないチャンバーを移植したマウス(図中、「ベヒクル」と示す。)、及び癌細胞含有チャンバーを移植し、サリューシン−βの代わりに蒸留水を注射したマウスを使用した。
処置終了後、マウスをと殺してチャンバーを取出し、チャンバーと接触していた皮膚の新生血管を顕微鏡で観察した。新生血管の特徴である、3mm以上の長さの蛇行性微小血管を全て新生血管として数えた。
図4は実験結果を示すグラフである。グラフ中、縦軸は新生血管の数を示す。その結果、サリューシン−βは、濃度依存的に血管新生を阻害することが明らかとなった。また、サリューシン−βによる毒性は認められなかった。この結果は、サリューシン−βがインビボで血管新生抑制活性を有することを示す。
以上の結果から、サリューシン−βの細胞表面受容体はATP合成酵素β鎖であり、この分子を標的とすることにより、内皮細胞や種々の腫瘍細胞のATP合成能を抑制して血管新生抑制作用を惹起することが考えられた。わずか20アミノ酸からなるサリューシン−βは、分子量38kDaのアンギオスタチンに比較して遙かに低分子量であるにもかからわらず、アンギオスタチンと同様の生理活性を示すことから、臨床応用が容易であると考えられる。
本発明によれば、臨床応用が容易な血管新生関連疾患の治療又は予防剤を提供することができる。また、血管新生関連疾患の治療又は予防剤のスクリーニング方法、及び血管新生関連疾患の治療又は予防剤のスクリーニングキットを提供することができる。

Claims (3)

  1. 被検物質の存在下及び非存在下で、サリューシン−βとATP合成酵素β鎖とを接触させる工程と、
    前記被検物質の存在下及び非存在下におけるサリューシン−βとATP合成酵素β鎖との結合量を定量する工程と、
    前記被検物質の存在下におけるサリューシン−βとATP合成酵素β鎖との結合量が、前記被検物質の非存在下におけるサリューシン−βとATP合成酵素β鎖との結合量と比較して減少した場合に、前記被検物質をサリューシン−β阻害剤であると判定する工程と、
    を含む、サリューシン−β阻害剤のスクリーニング方法。
  2. サリューシン−β及びATP合成酵素β鎖を含む、サリューシン−β阻害剤のスクリーニングキット。
  3. サリューシン−βとATP合成酵素β鎖との結合を阻害する物質を有効成分として含有し、
    サリューシン−βとATP合成酵素β鎖との結合を阻害する前記物質が、
    ATP合成酵素β鎖に対する抗体
    可溶化したATP合成酵素β鎖であって、前記ATP合成酵素β鎖が配列番号2に示されるアミノ酸配列からなる、可溶化したATP合成酵素β鎖、あるいは、
    可溶化した、ATP合成酵素β鎖の誘導体であって、前記ATP合成酵素β鎖の誘導体が、(i)配列番号2からなるアミノ酸配列において1若しくは数個のアミノ酸が欠失、置換若しくは付加されたアミノ酸配列からなり、かつサリューシン−βに対する結合活性を有するペプチド、(ii)前記ATP合成酵素β鎖にポリエチレングリコールが結合したもの、又は(iii)配列番号2からなるアミノ酸配列において1若しくは数個のアミノ酸が欠失、置換若しくは付加されたアミノ酸配列からなり、かつサリューシン−βに対する結合活性を有するペプチドにポリエチレングリコールが結合したものである、可溶化した、ATP合成酵素β鎖の誘導体、
    である、サリューシン−β阻害剤。
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