しかしながら、この種の電気錠システムは、近年の移動体通信の発達に伴い、複数犯の連携攻撃に晒される危険性が生じている。すなわち、犯罪グループが、第1の携帯無線中継器及び第2の携帯無線中継器を含み、これら携帯無線中継器間を結ぶリレー中継網を用意し、正当権限者の外出を監視する。正当権限者が戸を電気錠で施錠して外出すると、第1の携帯無線中継器を所持した犯人(尾行要員)が、その正当権限者を尾行する。正当権限者が当該戸から遠く離れ、外出から戻るまでに時間がかかる状況になると、第2の携帯無線中継器を所持した他の犯人(侵入要員)が、据付スイッチを操作して当該戸の解錠要求を入力し、戸前で待機する。その解錠要求を受信した据付制御部が認証要求を発信する。その認証要求は、第2の携帯無線中継器から始まるリレー中継で、尾行要員に所持されている第1の携帯無線中継器へ届く。その第1の携帯器無線中継器が、届いた認証要求を発信する。すると、正当権限者に所持されている携帯器が、その認証要求を受信し、これに応答して固有識別情報を発信する。その固有識別情報は、第1の携帯無線中継器から始まるリレー中継で、戸前の第2の携帯無線中継器へ届く。その第2の携帯無線中継器が、届いた固有識別情報を発信する。すると、据付制御部が、その固有識別情報を受信し、電気錠に解錠を命令してしまう(以下、この連携攻撃を「リレーアタック」と呼ぶ。)。
上述の背景に鑑み、この発明が解決しようとする課題は、電気錠システムに対するリレーアタックを防ぐことにある。
上記課題を解決する第1の発明は、電気錠に施解錠の切り替えを命令する据付制御部と、前記据付制御部に接続された据付スイッチと、前記据付制御部と無線交信する携帯器とを備え、前記据付制御部が、前記据付スイッチから入力された解錠要求に応じて認証要求を発信し、前記携帯器から応答された固有識別情報の認証成功を条件として施錠状態から解錠状態への切り替えを命令する電気錠システムにおいて、前記携帯器が、直接操作を受ける接触感部を有し、前記接触感部に対する直接操作の有無に応じて前記認証要求に対する応答の可否を切り替える構成を採用したものである。
第1の発明によれば、正当権限者が携帯器に応答を許しても良いか否か状況判断し、接触感部に直接操作を与えて携帯器に当該判断を反映させることができる。このため、リレーアタックを受け得る外出状況に際し、正当権限者が携帯器の応答を拒否し、リレーアタックを防ぐことができる。
第1の発明においては、応答不可を通常状態とし、直接操作が有ると、応答可に切り替わる第1の態様、応答可を通常状態とし、直接操作が有ると、応答不可に切り替わる第2の態様のいずれを採用してもよい。
例えば、前記接触感部が、生体固有情報を取得する生体センサからなり、前記携帯器が、前記生体センサに前記生体固有情報を取得させる前記直接操作の発生及び当該取得した生体固有情報の認証成功を条件として前記応答を許す判定部を有するとよい。ここで、生体固有情報とは、個人が固有に有する身体的特徴を示す情報のことをいう。この例では、接触感部に人体を触れさせて生体固有情報を生体センサに取得させる、という直接操作を行うことになる。したがって、鞄やポケットの中に携帯器を入れて所持する状況で、鞄等内の他物体が偶然に接触感部に触れても応答の可否が切り替わる心配はない。また、判定部における生体固有情報の認証成功は、正当権限者による直接操作であったことを意味する。これを条件に応答を許すようにしているので、携帯器の紛失時に第三者によって応答の可否が切り替えられる心配もない。
また、前記接触感部が、前記応答の可否を手動操作で切り替え可能な操作スイッチからなってもよい。この例では、手で操作スイッチを動かすという直接操作を行うことになる。この例では、生体センサや生体固有情報の照合認証を行う演算処理がなく、比較的簡素な実装で接触感部を携帯器に備えることができる。なお、この例では、上記第1の態様と第2の態様のどちらでも採用することができる。
上記課題を解決する第2の発明は、電気錠に施解錠の切り替えを命令する据付制御部と、前記据付制御部に接続された据付スイッチと、前記据付制御部と無線交信する携帯器とを備え、前記据付制御部が、前記据付スイッチから入力された解錠要求に応じて認証要求を発信し、前記携帯器から応答された固有識別情報の認証成功を条件として施錠状態から解錠状態への切り替えを命令する電気錠システムにおいて、前記据付制御部に接続され、生体固有情報を取得する据付生体センサを備え、前記据付制御部は、前記据付生体センサによる生体固有情報の取得発生及び当該取得した生体固有情報の認証成功を条件として前記認証要求を発信する構成を採用したものである。
第2の発明によれば、据付スイッチが操作されたとき、据付生体センサが正当権限者の生体固有情報を取得し、その認証に成功しなければ、携帯器に対して固有識別情報の認証要求を発信しない。すなわち、リレーアタックを試みる侵入要員が据付スイッチを操作したとしても、認証要求の発信が生じず、リレーアタックが成立しない。
前記据付生体センサは、据付スイッチと別体に備えてもよいし、一体に備えてもよい。一体に備えると、据付スイッチの操作と生体固有情報を取得させる操作とを同操作にすることができる。
第2の発明において、生体固有情報を認証する照合処理は、前記据付制御部、前記据付生体センサのどちらで行ってもよい。例えば、据付生体センサの演算処理部が照合処理を行い、認証成功の場合に限って、据付スイッチに入力受け付けを許可する、又は、据付スイッチに据付制御部への解錠要求送信を許可するようにしておけば、据付制御部が、生体固有情報の取得発生及び当該取得した生体固有情報の認証成功を条件として認証要求を発信することになる。また、据付生体センサが照合処理を行い、その認証結果を据付制御部に通知し、据付制御部が、認証成功の場合に限って認証要求を発信するようにしておけば、生体固有情報の取得発生及び当該取得した生体固有情報の認証成功を条件として認証要求を発信することになる。また、据付生体センサが取得した生体固有情報を据付制御部に送り、据付制御部が、照合処理を行い、認証成功の場合に限って認証要求を発信するようにしておけば、生体固有情報の取得発生及び当該取得した生体固有情報の認証成功を条件として認証要求を発信することになる。
上記課題を解決する第3の発明は、電気錠に施解錠の切り替えを命令する据付制御部と、前記据付制御部に接続された据付スイッチと、前記据付制御部と無線交信する携帯器とを備え、前記据付制御部が、前記据付スイッチから入力された解錠要求に応じて認証要求を発信し、前記携帯器から応答された固有識別情報の認証成功を条件として施錠状態から解錠状態への切り替えを命令する電気錠システムにおいて、特定の通行区域に対する人の出入りを検知する人検知センサと、前記人検知センサが前記通行区域から出て行く人を検知した場合に、前記認証要求に対する応答機能の停止を前記携帯器へ命令する命令発信部と、を備える構成を採用したものである。
第3の発明によれば、正当権限者が外出する際に通る特定の通行区域に人検知センサを配置し、命令発信部から、その正当権限者に所持されている携帯器へ、認証要求に対する応答機能の停止を命令することができる。この命令を受信した携帯器は、外出先までリレー中継された認証要求を受信しても、これに応答することはない。このため、リレーアタックが成立しない。
第3の発明においては、前記据付制御部に接続され、生体固有情報を取得する据付生体センサを備え、前記据付制御部が、前記据付生体センサによる生体固有情報の取得発生及び当該取得した生体固有情報の認証成功を条件として前記応答機能の復活を前記携帯器へ命令することが好ましい。このようにすれば、生体固有情報の認証に成功した正当権限者に限って、応答機能を確実に復活させることができる。
集合住宅に第3の発明を適用する場合、前記人検知センサ及び前記命令発信部を集合住宅の共用部、専有部のどちらに設定してもよい。
特に、前記人検知センサ及び前記命令発信部が、集合住宅の共用部に属する前記通行区域に据え付けられていると、各宅に人検知センサ、命令発信部を設置することを不要にしつつ、各宅の住人についてリレーアタックを防ぐことができる。
上述のように、第1の発明〜第3の発明は、いずれも電気錠システムに対するリレーアタックを防ぐことができる。
上記第1の発明の一例として、第1実施形態に係る電気錠システムを添付図面の図1〜図2に基づいて説明する。図1に示すように、この電気錠システムは、電気錠1に施解錠の切り替えを命令する据付制御部2と、据付制御部2に接続された据付スイッチ3,4と、据付制御部2と無線交信する携帯器5とを備える。さらに、この電気錠システムは、据付制御部2に接続されたLF送信部6と、据付制御部2に接続されたRF受信部7とを備える。電気錠1、据付制御部2、LF送信部6、RF受信部7は、建物に据え付けられている。据付制御部2と各機器1,3,4,6,7とは、それぞれ有線の信号伝送路によって接続されている。
図の電気錠1は、玄関ドアの施解錠を電気的に切り替え可能な装置であって、据付制御部2からの命令に応じて電気的に施錠状態又は解錠状態に作動状態を切り替えるものとなっている。
図の据付制御部2は、玄関ドアの施解錠権限を認める携帯器5ごとに一意に割り当てられた固有識別情報を予め内部メモリに記憶している。
据付スイッチ3,4として、施錠用のスイッチ3と、解錠用のスイッチ4とが設けられている。各据付スイッチ3,4は、押しボタン方式で操作するようになっている。各据付スイッチ3,4を押す操作は、それぞれ施錠要求、解錠要求を示す信号に変換され、据付制御部2へ入力される。
据付制御部2は、据付スイッチ3,4から入力された施錠要求又は解錠要求に応じて認証要求を発信し、携帯器5から応答された固有識別情報の認証結果に応じて電気錠1の施解錠切り替えの可否を判断し、その固有識別情報の認証成功を条件として施錠状態から解錠状態への切り替え、又は解錠状態から施錠状態への切り替えを電気錠1に命令する。
なお、据付制御部2には、電気錠1と据付制御部2の接続認証をペアリングコードの照合で行うPIN認証部、ブザー、発光装置等、電気錠の施解錠切り替えを行うことを事前に住人に知らせるための警報器の制御機能等を適宜に接続したり、追加したりすることも可能である。
LF送信部6は、据付制御部2から発信された認証要求を所定フォーマットに格納したLF帯のデジタル信号(以下、これを「LF信号」と呼ぶ。)を生成し、送信アンテナから発する無線通信処理部になっている。
RF受信部7は、携帯器5から所定フォーマットで発信されたRF帯のデジタル信号(以下、これを「RF信号」と呼ぶ。)を受信アンテナで受信し、受信したRF信号に格納された固有識別情報等の各種情報を据付制御部に送る無線通信処理部になっている。
図の携帯器5は、施錠用スイッチ8と、解錠用スイッチ9と、制御部10と、LF受信部11と、RF送信部12と、接触感部13と、判定部14とを有する。
施錠用スイッチ8、解錠用スイッチ9は、それぞれ携帯器5の所持者によって操作される押しボタンを有する。施錠用スイッチ8、解錠用スイッチ9を押す操作は、それぞれ施錠要求、解錠要求を示す信号に変換され、制御部10へ入力される。
LF受信部11は、LF信号を受信アンテナで受信し、受信したLF信号に格納された認証要求等の各種情報を制御部10へ送る無線受信処理を行う。
制御部10は、自己に割り当てられた固有識別情報を予め内部メモリに記憶している。制御部10は、施錠用スイッチ8又は解錠用スイッチ9から入力された施錠要求又は解錠要求に応じて、予め登録されている固有識別情報を発信する。この発信では、当該固有識別情報と、前述の入力に対応の施錠要求又は解錠要求とがセットで発信される。また、制御部10は、LF受信部11から送られた認証要求に応じて固有識別情報を応答する。
RF送信部12は、前述のセット、応答を受信すると、これを所定フォーマットに格納したRF信号を生成し、送信アンテナから発する無線送信処理を行う。
一般に、据付制御部2から携帯器5への送信には、LF帯が用いられ、携帯器5から据付制御部2への送信には、RF帯が用いられている。これら周波数帯は、比較的近距離にある通信で、セキュリティ性の高い通信に限定すると共に、携帯器5のバッテリ消費を低減する目的で採用されている。すなわち、100kHz帯(主に125kHz)の低周波帯ともいわれるLF帯の通信は、通信範囲が比較的近距離で、送信電力も比較的大きく、誘導電磁界を使用するため、磁界が強く、周囲の環境の影響を受けにくい、他の伝播による妨害は受けにくい特徴を持っている。一方、300MHz帯(主に315MHz)の高周波帯ともいわれるRF帯の通信は、送信電力の割に比較的遠距離まで送信できる特徴を持っている。据付制御部2と携帯器5間の無線交信は、交信エリアを限定することが好ましいが、図の例に限定されず、例えば、据付制御部2から携帯器5への送信にRF帯を採用してもよい。
なお、据付制御部2と携帯器5間の無線交信において、一般に、RF信号で送る固有識別情報のようなセキュリティ情報は、暗号化した状態で格納され、相手先で復号化されるようになっている。
図の接触感部13は、直接操作を受ける部位を含み、当該直接操作の際に生体固有情報を取得する生体センサからなる。携帯器5を所持する人物は、自己の手の所定箇所を接触感部13に触れさせて生体固有情報を読み取らせる、という直接操作を行うことになる。接触感部13は、当該読み取りで取得した生体固有情報を判定部14に送る。
判定部14は、接触感部13から送られた生体固有情報と、予め登録されている生体固有情報とを照合する生体認証処理を行う。判定部14に登録されている生体固有情報は、玄関ドアの開閉権限を正当に有する人物の生体固有情報を予め生体センサで取得し、判定部14のメモリに記憶させたものとなっている。
携帯器5に接触感部13を備えるため、生体固有情報として、手から取得可能なものを採用する。このような生体固有情報を用いた生体認証技術として、一般的に利用されている指紋認証は勿論、生体インピーダンスを採用することも可能である。生体インピーダンスを利用する場合、例えば、特開2014−68989号公報に開示された技術を利用して前述の接触感部や生体認証処理を実現することができる。
また、判定部14は、制御部10及びRF送信部12間における信号伝送の可否を制御するようになっている。具体的には、図1,図2に示すように、判定部14は、通常、制御部10からRF送信部12へ発信された信号の中継を拒否した状態で、接触感部13からの生体固有情報を待っている(待機状態)。判定部14は、接触感部13から生体固有情報を送られると(S1)、規定時間の間だけ当該信号の中継を許す状態になり、この間に制御部10から発信された認証要求を受信した場合、RF送信部12へ中継し、規定時間が経過すると、待機状態に戻る(S2,S3)。前述のように、判定部14に送られる生体固有情報は、接触感部に対する直接操作によって接触感部が取得したものなので、判定部14は、当該直接操作の発生及び当該取得した生体固有情報の認証成功を条件として、前述の応答を許すことになる。すなわち、携帯器5としては、前述の直接操作の有無に応じて前述の認証要求に対する応答の可否を切り替えることになる。
このような第1実施形態によれば、判定部14に登録された正当権限者が携帯器5を手に持って接触感部13に対する直接操作を行い、前述の規定時間内に、据付制御部2からの認証要求に携帯器5が応答した場合に限り、据付制御部2が電気錠1の施解錠切り替えを命令することになる。したがって、リレーアタックが試みられた場合に、尾行要員の無線中継器から認証要求が携帯器5へ届いたとしても、正当権限者が携帯器5の接触感部13に対する直接操作を行ってから規定時間内である、という極めて偶発的な場合を除き、リレーアタックが成立しない。このように、第1実施形態は、専ら携帯器5の改良だけで、電気錠システムに対するリレーアタックを防止することができる。また、鞄やポケットの中に携帯器5を入れて所持する状況で、鞄内等の他物体が偶然に接触感部13に触れても、生体固有情報の取得発生がなく、携帯器5で応答の可否が切り替わる心配はない。また、正当権限者による直接操作を条件に応答を許すようにしているので、携帯器5の紛失時に第三者によって応答の可否が切り替えられる心配もない。
なお、第1実施形態においては、携帯器がLF信号を受信した場合に正当権限者による直接操作を必須条件として当該LF信号に対する応答を送信する限り、適宜のハードウェア構成、制御プログラムを採用することができる。例えば、判定部は、制御部で実行されるプログラムとして実装し、制御部のLF信号受信をトリガとして、規定時間に限り、生体認証処理の受け付けを行うようにしてもよい。
第2実施形態を図3に基づいて説明する。以下では、第1実施形態との相違点を述べるに留める。第2実施形態は、第1実施形態と比して携帯器5の接触感部を変更したものとなっている。図3に示すよう、第2実施形態の接触感部20は、前述のLF信号に対する応答の可否を手動操作で切り替え可能な操作スイッチからなる。図の接触感部20は、施錠用スイッチ8及び解錠用スイッチ9とは別の箇所に設けられた押しボタンを有する。また、接触感部20は、制御部10及びRF送信部12間の信号伝送路を機械的に開閉可能なa接点の操作スイッチになっている。通常、接触感部20は当該信号伝送路を開いた状態で待機しているため、制御部10が、LF信号に対応する応答を発信しても、RF送信部12に届かない。携帯器5を所持している人物が、接触感部20を押して当該信号伝送路を閉じる、という直接操作を行っているときに限り、前述の応答がRF送信部12に届くようになる。すなわち、携帯器5としては、前述の直接操作の有無に応じて前述の認証要求に対する応答の可否を切り替えることになる。
このような第2実施形態によれば、通常は正当権限者である携帯器5の所持者が手に持って接触感部20に対する直接操作を行っている状態に限り、携帯器5が、図1に示す据付制御部2からの認証要求に応答し、これを受けて据付制御部2が、電気錠1の施解錠切り替えを命令することになる。したがって、リレーアタックが試みられた場合に、尾行要員の無線中継器から認証要求が携帯器へ届いたとしても、図3に示す携帯器5の接触感部20に対する直接操作が生じている、という極めて偶発的な場合を除き、リレーアタックが成立しない。このように、第2実施形態は、生体認証のような高機能を付加せず、携帯器5に手動操作スイッチを追加する比較的簡素な実装によって、電気錠システムに対するリレーアタックを防止することができる。
なお、第2実施形態において、接触感部は、LF信号に対する応答の可否を手動操作で切り替え可能な操作スイッチであればよく、b接点スイッチに変更することもできる。また、接触感部は、機械式スイッチに限定されず、手動操作に応じて電磁的に開閉を切り替えるリレースイッチにしてもよい。また、接触感部は、携帯器の主電源ON/OFFスイッチとして設けることもできる。
上記第2の発明の一例としての第3実施形態を図4〜図5に基づいて説明する。第3実施形態は、第1実施形態の携帯器5を接触感部及び判定部のない従来と同様のものとする一方、据付制御部2に接続された据付生体センサ30を備える点で第1実施形態と相違する。図の据付生体センサ30は、解錠用の据付スイッチ4と一体になっており、据付スイッチ4の操作の際、生体固有情報を取得する。据付制御部2は、据付生体センサ30から送られた生体固有情報と、予め登録されている生体固有情報とを照合する生体認証処理を行い、この生体認証に成功した場合に当該施錠要求又は解錠要求に応じて認証要求の発信を許し、失敗した場合に当該施錠要求又は解錠要求に対する認証要求の発信を許可しない判定手段31を有する。このような据付生体センサ30、判定手段31には、指紋認証技術や、生体インピーダンス認証技術を利用することができる。
具体的には、図5に示すように、据付制御部2は、施錠状態のとき、通常、据付スイッチ4からの解錠要求を待っている(待機状態)。据付スイッチ4が操作されたとき、当該操作に対応の解錠要求と、当該操作の際に取得された生体固有情報とがセットで据付制御部2に送られる(S11)。これを受けた据付制御部2の判定手段31は、当該送られた生体固有情報と登録済みの生体固有情報を照合し、登録済みの中に一致するものがあれば、認証成功と判断し、無ければ認証失敗と判断する(S12)。据付制御部2は、認証成功の場合、認証要求を発信し(S13)、これを受けたLF送信部6は、LF信号を送信する。一方、認証失敗の場合、据付制御部2は、当該セットの施錠要求又は解錠要求を無視し、認証要求を発信しない。なお、認証成功の場合、据付制御部2は、RF信号の受信を待ち、規定時間内にRF信号を受信したとき、電気錠1に施錠要求又は解錠要求に対応の命令を送る(S14〜S16)。据付制御部2は、RF信号を規定時間内に受信できなかったとき、再度、認証要求を発信し、LF送信部6がLF信号を再送する(再送処理)。据付制御部2は、その再送処理を所定の回数繰り返してもRF信号を受信できなかったとき、待機状態に戻る(S14,S17)。
このように第3実施形態によれば、据付生体センサ30による生体固有情報の取得発生、及び当該取得した生体固有情報の判定手段による認証成功を条件として、据付制御部2が認証要求を発信することになる。したがって、第3実施形態によれば、リレーアタックを試みる侵入要員が据付スイッチを操作したとしても、据付制御部2による認証要求の発信が生じず、リレーアタックが成立しない。
なお、第3実施形態においては、据付スイッチに与えられた施錠又は解錠操作に対応のLF信号の送信条件として、据付生体センサによる生体固有情報の取得発生及び判定手段による生体認証の成功を必須とする限り、適宜のハードウェア構成、制御プログラムを採用することができる。例えば、据付生体センサ、据付スイッチと一体に判定手段を設け、生体認証に失敗した場合に施錠要求又は解錠要求を据付制御部へ送らないようにすることによっても当該必須条件を満足することができる。
上記第3の発明の一例としての第4実施形態を図6〜図9に基づいて説明する。第4実施形態は、第3実施形態に係る電気錠システムにおいて、人検知センサ40と、命令発信部41とをさらに備えるものとなっている。図6、図7に示すように、第4実施形態は、マンション等の集合住宅の各宅に第3実施形態に係る電気錠システムを適用すると共に、集合住宅の共用部に属する共用出入口を開閉する自動ドア42の付近に人検知センサ40と、命令発信部41とを据え付け、これらを利用した自動ドア42の開放制御を実現したものとなっている。なお、図6において、携帯器5、各宅に備わる電気錠システムの建物側機器については要部のみを図示している。
具体的には、図6,図7に示すように、人検知センサ40が、特定の通行区域に対する人の出入りを検知する。図において、特定の通行区域は、自動ドア42の外側に位置する敷地内通路に設定されている。人検知センサ40及び命令発信部41は、当該敷地内通路上に据え付けられている。人検知センサ40は、人の存在を検知するセンサ部の出力信号に基づいて当該センサ部に接近する人であるか、当該センサ部から離反する人であるかの判断結果を出力する。人検知センサ40は、人の接近、離反の判断を可能な情報を取得可能な限り、赤外線、超音波、可視光などを利用した適宜の方式のものを採用することができる。人検知センサ40は、検知の都度、接近する人か、離反する人かの判断結果を命令発信部41に送る。
命令発信部41は、第1実施形態と同様のLF送信部、RF受信部、据付制御部を有し、据付制御部2には、携帯器5へ応答機能の停止・復活を命令する指令手段43をプログラム搭載で追加したものとなっている。図6,図8に示すように、人検知センサ40が前記通行区域に入って来る人、すなわち前述の接近する人を検知した場合に、これを知らされた命令発信部41は、認証要求及び応答機能の復活命令を含んだLF信号を自己のLF送信部6から携帯器5へ送信する(S21〜S23)。一方、人検知センサ40が前記通行区域から出て行く人、すなわち前述の離反する人を検知した場合に、これを知らされた命令発信部41は、前記認証要求に対する応答機能の停止命令を含んだLF信号を自己のLF送信部6から携帯器5へ送信する(S21,S24)。なお、命令発信部41は、携帯器5からRF信号で応答された固有識別情報の認証に成功した場合に、自動ドアへ開放命令を送る機能も有している(S25〜S28)。
携帯器5の制御部10には、LF信号に含まれた応答機能の復活又は停止命令に従って、LF信号に対する応答機能の停止又は復活を行う応答ON/OFF手段44がプログラム搭載によって実装されている。
各宅に備わる電気錠システムの据付制御部2は、自己の据付生体センサ30による生体固有情報の取得発生及び当該取得した生体固有情報の自己の判定手段31による認証成功を条件として、携帯器5へ前記応答機能の復活命令と認証要求を発信する。
このような第4実施形態によれば、図7に示すように、携帯器5を所持する住人が外出するとき、住人の自動ドアへの接近を人検知センサ40が検知し、この検知の出力信号を受けた命令発信部41は、携帯器5へ応答機能の復活及び認証要求をLF信号で命令する。このとき、通常、携帯器5の応答機能が生きているので、この復活命令に格別の意味はない。命令発信部41は、携帯器5からRF信号で応答された固有識別情報の認証に成功するので、自動ドア42に開放命令を送信することになる。自動ドア42から外へ出た住人が歩を進めて人検知センサ40から離反するようになると、この離反を人検知センサ40が検知し、この検知の出力信号を受けた命令発信部41は、応答機能の停止をLF信号で命令する。この命令を受けた携帯器5は、LF信号に対する応答機能を停止する。したがって、外出先までリレー中継された認証要求を携帯器5が受信したとしても、携帯器5が当該認証要求に応答することはない。このため、リレーアタックが成立しない。このように第4実施形態によれば、各宅に人検知センサ40、命令発信部41を設置することを不要にしつつ、各宅の住人についてリレーアタックを防ぐことができる。
一方、図9に示すように、携帯器5を所持する住人が自動ドア42を通って帰宅する場合も、人検知センサ40、命令発信部41は、前述の外出時と同様に出力信号、命令を発する。このため、住人が自宅の玄関ドア前に到達したとき、通常、携帯器5の応答機能は停止している。住人が自宅の据付スイッチ4を操作すると、据付生体センサ30による生体固有情報の取得が発生する。これら解錠要求及び生体固有情報を受信した据付制御部2は、生体認証の成功により、携帯器5へ応答機能の復活命令と認証要求を発信し、これらセットを含んだLF信号が携帯器5に届く。これにより、携帯器5は、応答機能を復活し、認証要求に対する応答をRF信号で送信する。その結果、自宅の玄関ドアが解錠されることになる。このように第4実施形態は、生体固有情報の認証に成功した正当権限者に限って、応答機能を確実に復活させることができる。
なお、第4実施形態のような共用部の通路上ではなく、各宅の電気錠システムごとに人検知センサと命令発信部とを据え付けるようにしてもよい。また、各宅のサブシステムで帰宅した住人の携帯器に応答機能を復活させる際、生体認証を条件から省略することも可能である。また、人検知センサが、単に特定の通行区域への出入りを検知するだけでなく、建物内から建物外へ出るか、建物外から建物内へ出るか脱出方向をも検知可能な高機能のものであれば、人検知センサが、脱出方向を示す情報を命令発信部へ送り、命令発信部が、当該脱出方向に応じて携帯器に応答機能の停止又は復活のどちらを命令するかを決定するようにしてもよい。また、携帯器にバイブレータ手段や告知音発生手段を備え、応答ON/OFF手段が、応答機能を復活させるときにバイブレータ手段等に作動命令を送り、携帯器の所持者に応答機能の復活を知らせるようにしてもよい。
この発明の技術的範囲は、上述の各実施形態に限定されず、特許請求の範囲の記載に基づく技術的思想の範囲内での全ての変更を含むものである。