JP6854286B2 - コドン最適化された小型ATP7A cDNAおよび銅輸送障害を処置するための使用 - Google Patents

コドン最適化された小型ATP7A cDNAおよび銅輸送障害を処置するための使用 Download PDF

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Description

関連出願への相互参照
これは、2015年10月21日に出願された米国仮出願第62/244,594号(これは、その全体が参考として本明細書に援用される)の利益を主張する。
本開示の分野
本開示は、コドン最適化されたATP7A核酸およびATP7A関連銅輸送障害の処置でのその使用に関する。
背景
銅は、重要な代謝酵素(ドーパミンβヒドロキシラーゼ、リシルオキシダーゼ、Cu/Znスーパーオキシドジムスターゼ、およびシトクロムcオキシダーゼなど)の補因子として代謝において重要な役割を果たす。ヒトP型ATPアーゼ銅輸送ATPアーゼ1(ATP7A)は、銅を腸細胞(食物由来の銅を取り込む場所)から血中に輸送する。ATP7Aはまた、血液脳脊髄液(CSF)関門および血液脳関門を横切る銅の通過を媒介する。メンケス病およびオクシピタル・ホーン症候群(occipital horn syndrome)(OHS)では、ATP7A活性は低下しているか存在せず、腸細胞からの銅排出が損なわれている(Kaler,Nat.Rev.Neurol.7:15−29,2011)。結果として、銅が腸細胞内に蓄積されて銅の血液への送達が減少し、その結果、他の組織、特に脳への銅の供給が制限される。ATP7A変異に関連する遺伝性遠位型運動ニューロパシー(ATP7A関連遠位型運動ニューロパシー;脊髄性筋萎縮症、遠位、X連鎖性3(SMAX3)としても公知)もまた最近同定されている(Kennersonら,J.Hum.Genet.86:343−352,2009)。この成人発症障害は、メンケス病およびOHSと異なり、血清銅レベルの減少に関連しない。
Kaler、Nat.Rev.Neurol.(2011)7:15〜29 Kennersonら,J.Hum.Genet.(2009)86:343〜352
概要
コドン最適化されたATP7A核酸分子、具体的には、小型ATP7Aタンパク質をコードするコドン最適化された核酸、ならびにコドン最適化されたATP7A核酸を含むベクターおよび組換えウイルスを本明細書中に提供する。これらの核酸を、銅輸送障害(メンケス病、オクシピタル・ホーン症候群、またはATP7A関連遠位型運動ニューロパシーなど)の処置方法で使用することができる。
いくつかの実施形態では、小型ATP7Aタンパク質をコードする単離され、コドン最適化された核酸分子を、本明細書中に開示する。いくつかの例では、核酸分子は、配列番号1のヌクレオチド配列に対して少なくとも90%の配列が同一の核酸を含む。特定の例では、核酸分子は、配列番号1の配列を有するか、配列番号2のアミノ酸配列をコードする。
小型ヒトAPT7Aをコードする開示のコドン最適化された核酸分子を含むベクター(アデノ随伴ウイルス(AAV)ベクターなど)も本明細書中に開示する。いくつかの例では、ベクターは、プロモーター(β−アクチンプロモーターなど)をさらに含む。さらなる例では、ベクターは、エンハンサー(サイトメガロウイルスエンハンサーなど)をさらに含む。小型ヒトATP7Aをコードするコドン最適化された核酸分子を含む組換えウイルス(組換えAAV(rAAV)など)も本明細書中に開示する。本明細書中に開示の核酸分子またはベクターを含む単離された宿主細胞をさらに提供する。例えば、単離された宿主細胞は、rAAVの増殖に適切な細胞であり得る。開示の核酸分子、ベクター、およびウイルスを含む組成物も、本明細書中に開示する。
ATP7A関連銅輸送障害(メンケス病、OHS、またはATP7A関連遠位型運動ニューロパシーなど)と診断された被験体を処置する方法を本明細書中に開示する。いくつかの実施形態では、本方法は、有効量の、小型ヒトATP7Aをコードするコドン最適化された核酸分子を含む開示のベクターもしくは組換えウイルスまたは前述のベクターもしくはウイルスを含む組成物を被験体に投与する工程を含む。いくつかの例では、本方法は、さらに、銅治療(ヒスチジン酸銅(copper histidinate)、塩化銅、硫酸銅、またはグルコン酸銅など)を被験体に投与する工程を含む。他の実施形態では、本方法は、有効量の、プロモーターに作動可能に連結された小型ATP7Aタンパク質をコードする単離され、コドン最適化された核酸分子を含むベクターを被験体に投与することおよび銅を被験体に投与することによってメンケス病を有する被験体を処置する工程を含む。いくつかの例では、ベクターまたはウイルスを、被験体の腸内に、または非経口に、髄腔内に、もしくは頭蓋内の脳脊髄液内にもしくは脳内に投与する。
本発明は、例えば、以下の項目を提供する。
(項目1)
配列番号1に対して少なくとも90%の配列が同一の核酸配列を含む小型P型ATPアーゼ銅輸送ATPアーゼ1(ATP7A)タンパク質をコードする、単離され、コドン最適化された核酸分子。
(項目2)
配列番号1に対して少なくとも95%の配列が同一の核酸配列を含む、項目1に記載の単離された核酸分子。
(項目3)
配列番号1の核酸配列を含むか、配列番号1の核酸配列からなる、項目2に記載の単離された核酸分子。
(項目4)
前記コドン最適化された核酸分子が、配列番号2のアミノ酸配列を含むか、配列番号2のアミノ酸配列からなるATP7Aタンパク質をコードする、項目1〜3のいずれか1項に記載の単離された核酸分子。
(項目5)
配列番号1に対して少なくとも90%の配列が同一の核酸配列を含む小型P型ATPアーゼ銅輸送ATPアーゼ1(ATP7A)タンパク質をコードする単離され、コドン最適化された核酸分子を含むベクター。
(項目6)
前記コドン最適化された核酸分子が、配列番号1に対して少なくとも95%の配列が同一の核酸配列を含む、項目5に記載のベクター。
(項目7)
前記コドン最適化された核酸分子が、配列番号1の核酸配列を含むか、配列番号1の核酸配列からなる、項目6に記載のベクター。
(項目8)
前記コドン最適化された核酸が、配列番号2のアミノ酸配列を含むか、配列番号2のアミノ酸配列からなるATP7Aタンパク質をコードする、項目5〜7のいずれか1項に記載のベクター。
(項目9)
前記コドン最適化された核酸分子が、プロモーターに作動可能に連結されている、項目5〜8のいずれか1項に記載のベクター。
(項目10)
前記ベクターがアデノ随伴ウイルス(AAV)ベクターである、項目5〜9のいずれか1項に記載のベクター。
(項目11)
前記AAVベクターが、AAV血清型9(AAV9)ベクターまたはAAV血清型5(AAV5)ベクターである、項目10に記載のベクター。
(項目12)
項目1〜4のいずれか1項に記載の核酸分子または項目5〜11のいずれか1項に記載のベクターを含む単離された宿主細胞。
(項目13)
項目1〜4のいずれか1項に記載の核酸分子または項目5〜11のいずれか1項に記載のベクターを含むウイルス。
(項目14)
項目5〜11のいずれか1項に記載のベクターまたは項目13に記載のウイルスおよび薬学的に許容され得るキャリアを含む組成物。
(項目15)
脳内注射、髄腔内注射、または静脈内注射のために処方された、項目14に記載の組成物。
(項目16)
P型ATPアーゼ銅輸送ATPアーゼ1(ATP7A)関連銅輸送障害を有する被験体を処置する方法であって、有効量の、プロモーターに作動可能に連結された、配列番号1に対して少なくとも90%の配列が同一の核酸配列を含む小型P型ATPアーゼ銅輸送ATPアーゼ1(ATP7A)タンパク質をコードする単離され、コドン最適化された核酸分子を含むベクターまたはウイルス;および薬学的に許容され得るキャリアを含む組成物を投与する工程を含む、方法。
(項目17)
前記ベクターまたはウイルスが、アデノ随伴ウイルス(AAV)ベクターである、項目16に記載の方法。
(項目18)
前記AAVベクターまたはウイルスが、AAV血清型9(AAV9)ベクターもしくはウイルスまたはAAV血清型5(AAV5)ベクターもしくはウイルスである、項目17に記載の方法。
(項目19)
前記組成物を、髄腔内、脳内、または静脈内に投与する、項目16〜18のいずれか1項に記載の方法。
(項目20)
前記組成物の投与が、単回用量の前記組成物の投与を含む、項目16〜19のいずれか1項に記載の方法。
(項目21)
前記組成物の投与が、複数回用量の前記組成物の投与を含む、項目16〜19のいずれか1項に記載の方法。
(項目22)
前記APT7A関連銅輸送障害が、メンケス病、オクシピタル・ホーン症候群、またはATP7A関連遠位型運動ニューロパシーを含む、項目16〜21のいずれか1項に記載の方法。
(項目23)
前記被験体に銅を投与する工程をさらに含む、項目16〜22のいずれか1項に記載の方法。
(項目24)
前記銅が、塩化銅、グルコン酸銅、銅ヒスチジン、ヒスチジン酸銅、または硫酸銅である、項目23に記載の方法。
(項目25)
前記銅を、皮下、筋肉内、または静脈内に投与する、項目23または24に記載の方法。
(項目26)
メンケス病を有する被験体を処置する方法であって、
有効量の、以下:
(a)プロモーターに作動可能に連結された、配列番号1に対して少なくとも90%の配列が同一の核酸配列を含む小型P型ATPアーゼ銅輸送ATPアーゼ1(ATP7A)タンパク質をコードする単離され、コドン最適化された核酸分子を含むベクターまたはウイルス;および
(b)薬学的に許容され得るキャリア
を含む組成物を前記被験体に投与する工程;および
有効量の銅を前記被験体に投与する工程を含み、
ここで、前記組成物および前記銅を、逐次的に、実質的に同時に、または同時に前記被験体に投与する、方法。
(項目27)
前記ベクターまたはウイルスが、アデノ随伴ウイルス(AAV)ベクターまたはウイルスである、項目26に記載の方法。
(項目28)
前記AAVベクターまたはウイルスが、AAV血清型9(AAV9)ベクターもしくはウイルスまたはAAV血清型5(AAV5)ベクターもしくはウイルスである、項目27に記載の方法。
(項目29)
前記組成物を、髄腔内、脳内、または静脈内に投与する、項目26〜28のいずれか1項に記載の方法。
(項目30)
前記組成物の投与が、単回用量の前記組成物の投与を含む、項目26〜29のいずれか1項に記載の方法。
(項目31)
組成物の投与が、複数回用量の前記組成物の投与を含む、項目26〜29のいずれか1項に記載の方法。
(項目32)
前記銅の投与が、複数回用量の前記銅の投与を含む、項目26〜31のいずれか1項に記載の方法。
(項目33)
前記銅を毎日投与する、項目32に記載の方法。
(項目34)
前記銅を約3年間毎日投与する、項目33に記載の方法。
(項目35)
前記被験体の年齢が12ヶ月未満である場合は前記銅を1日2回投与し、前記被験体の年齢が12ヶ月を超える場合は前記銅を1日1回投与する、項目34に記載の方法。
(項目36)
前記銅が、塩化銅、グルコン酸銅、銅ヒスチジン、ヒスチジン酸銅、または硫酸銅である、項目26〜35のいずれか1項に記載の方法。
(項目37)
前記銅を非経口投与する、項目26〜36のいずれか1項に記載の方法。
(項目38)
前記銅を、皮下、筋肉内、または静脈内に投与する、項目26〜37のいずれか1項に記載の方法。
前述の特徴および本開示の他の特徴は、添付の図面を参照して進行される以下の詳細な説明からより明らかとなるであろう。
図1は、小型ヒトATP7Aタンパク質を産生するための除去部分(ボックスの部分)を示すヒトATP7Aタンパク質の概要図である。出典:Donsanteら,Mol.Ther.19:2114−2123,2011(その全体が本明細書中で参考として援用される)。
図2A〜2Dは、コドン最適化された小型ヒトATP7A核酸配列(co_rsATP7A;配列番号1)の、未変性小型ヒトATP7A核酸配列(nat_rsATP7A;配列番号3)との配列アラインメントを示す。 図2A〜2Dは、コドン最適化された小型ヒトATP7A核酸配列(co_rsATP7A;配列番号1)の、未変性小型ヒトATP7A核酸配列(nat_rsATP7A;配列番号3)との配列アラインメントを示す。 図2A〜2Dは、コドン最適化された小型ヒトATP7A核酸配列(co_rsATP7A;配列番号1)の、未変性小型ヒトATP7A核酸配列(nat_rsATP7A;配列番号3)との配列アラインメントを示す。 図2A〜2Dは、コドン最適化された小型ヒトATP7A核酸配列(co_rsATP7A;配列番号1)の、未変性小型ヒトATP7A核酸配列(nat_rsATP7A;配列番号3)との配列アラインメントを示す。
図3は、コドン最適化された小型ATP7A(co−rsATP7A)cDNAを含む組換えアデノ随伴ウイルス(rAAV)構築物の例の略図である。ITR:逆位末端反復;CMV:サイトメガロウイルスエンハンサー;CBA:ニワトリβ−アクチンプロモーター;ポリA:ポリアデニル化シグナル。
図4は、トランスフェクトされたHEK293T細胞中での小型ATP7A(rs−ATP7A)およびco−rsATP7Aの発現のデジタル画像である。レーン1:偽トランスフェクション;レーン2:pTR−CAG−rsATP7A(25μg);レーン3:pTR−CAG−co−rsATP7A(1.25μg);レーン4:pTR−CAG−co−rsATP7A(25μg);β−アクチン:タンパク質ローディングコントロール。
図5は、rAAV9−co−rsATP7A(AAV9)およびヒスチジン酸銅で処置されたか、未処置(UT)か、AAV9coのみで処置されたか、ヒスチジン酸銅のみで処置されたmo−brマウスの生存を示すグラフである。
図6は、未処置(UT)マウス、AAV5−rsATP7Aおよびヒスチジン酸銅(AAV5+Cu)、AAVrh10−rsATP7Aおよびヒスチジン酸銅(AAVrh10+銅)、AAV9−rsATP7Aおよび銅(AAV9+Cu)、ならびにAAV9co−rsATP7Aおよび銅(AAV9co+Cu)で処置したマウスにおける離乳までの生存(濃灰色バー)および長期生存(淡灰色バー)を示すグラフである。rsATP7Aは小型ATP7AcDNA(未変性配列(コドン最適化されていない))である。
配列表
本明細書中または添付の配列表中に提供した任意の核酸配列およびアミノ酸配列を、37C.F.R.§1.822に定義のヌクレオチド塩基およびアミノ酸の標準的な文字略号を使用して示す。少なくともいくつかの場合では、各核酸配列について鎖を1つのみ示すが、表示の任意の鎖を参照することによって相補鎖が含まれると理解される。
配列番号1は、コドン最適化された小型ATP7A核酸配列の例である。
配列番号2は、小型ATP7Aタンパク質の例のアミノ酸配列である。
配列番号3は、未変性の小型ATP7A核酸配列の例である。
詳細な説明
I.用語
別段記述がない限り、技術用語を、従来の用法にしたがって使用する。分子生物学における共通用語の定義を、Lewin’s Genes X,ed.Krebsら,Jones and Bartlett Publishers,2009(ISBN 0763766321);Kendrewら(eds.),The Encyclopedia of Molecular Biology,published by Blackwell Publishers,1994(ISBN 0632021829);Robert A.Meyers(ed.),Molecular Biology and Biotechnology:a Comprehensive Desk Reference,Wiley,John & Sons,Inc.,1995発行(ISBN 0471186341);およびGeorge P.Redei,Encyclopedic Dictionary of Genetics,Genomics,Proteomics and Informatics,3rd Edition,Springer,2008(ISBN:1402067534)に見出すことができる。
本開示をよりわかりやすく説明し、且つ当業者が本開示を実施するためのガイドとして、用語および方法を以下に説明する。単数形「a」、「an」、および「the」は、文脈上そうでないと明確に示されない限り、1つまたは1つを超えることをいう。例えば、用語「核酸分子を含む」は、単数または複数の核酸分子を含み、句「少なくとも1つの核酸分子を含む」と等価であると見なす。本明細書中で使用する場合、「〜を含む(comprise)」は、「〜を含む(include)」を意味する。したがって、「AまたはBを含む(comprising A or B)」は、「A、B、またはAおよびBを含む(including A,B,or A and B)」を意味し、さらなる要素を排除しない。
本明細書中で言及した全ての刊行物、特許出願、特許、および他の文献は、全ての目的のためにその全体が参考として援用される。本明細書中で言及したGenBank受入番号に関連する全配列は、2015年10月21日付けで存在しており、その全体が本明細書中で参考として援用される。矛盾がある場合、用語説明を含む本明細書を優先するであろう。
本明細書中に記載の方法および材料に類似するかこれらと等価な方法および材料を使用して開示のテクノロジーを実施または試験することができるが、適切な方法および材料を以下に記載する。材料、方法、および実施例は、例示のみを目的とし、本発明を制限することを意図しない。
本開示の種々の実施形態の再検討を容易にするために、特定の用語を以下に説明する:
アデノ随伴ウイルス(AAV):ヒトおよびいくつかの他の霊長類種に感染する小型の複製欠損性無エンベロープウイルス。AAVは、疾患を引き起こさないことが公知であり、免疫応答の誘発は非常に軽度である。AAVを利用する遺伝子療法用ベクターは、分裂細胞および静止細胞の両方に感染することができ、宿主細胞のゲノムに組み込まれることなく染色体外状態を持続することができる。これらの特徴により、AAVは遺伝子療法用のウイルスベクターとして魅力的である。現在、AAVには11種の血清型が認識されている(AAV1〜11)。
ATP7A:ATPアーゼ、Cu++輸送、αポリペプチド。P型ATPアーゼ銅輸送ATPアーゼ1としても公知。膜を横切った銅輸送に関与する膜貫通タンパク質。ヒトには2つの銅輸送ATPアーゼ(ATP7AおよびATP7B)が存在し、これらは、金属輸送P型ATPアーゼファミリーのメンバーである(例えば、Lutsenkoら,Physiol.Rev.87:1011−1046,2007を参照のこと)。ATP7Aタンパク質は、8つの膜貫通セグメントを有する。アミノ末端セグメントは、6つの銅結合部位を含む。ATP7Aはまた、触媒サイクルのホスファターゼ工程に必要なA−ドメインならびにPドメインおよびNドメインからなるATP結合ドメインを含む(図1を参照のこと)。
ATP7A配列は公的に入手可能である。例えば、GenBank受入番号NC_000023.11(領域77910656..78050395)およびNC_000086.7(領域106027276..106128160)は、ヒトおよびマウスのATP7Aゲノム核酸配列の例をそれぞれ開示している。GenBank受入番号NM_000052、NM_001282224、およびNR_104109は、ヒトATP7AのcDNA配列の例を開示しており、NP_000043およびNP_001269153は、ヒトATP7Aタンパク質配列の例を開示している。GenBank受入番号NM_009726およびNM_001109757は、マウスAtp7aのcDNA配列の例を開示しており、NP_033856およびNP_001103227は、マウスAtp7aタンパク質配列の例を開示している。本明細書中に記載の全てのGenBank受入番号は、2015年10月21日付けでGenBankに存在しており、参考として援用される。
当業者は、本明細書中に記載のATP7A核酸およびタンパク質分子と異なるATP7A核酸およびタンパク質分子(1つまたは複数の置換、欠失、挿入、またはその組み合わせを有する一方で、ATP7A生物学的活性(銅輸送活性など)を依然として保持するATP7A配列など)を同定することができる。さらに、ATP7A分子には、ATP7A生物学的活性を保持する選択的スプライシングされたイソ型およびフラグメントが含まれる。
ATP7A関連遠位型運動ニューロパシー:ATP7A変異に関連する成人発症遠位型運動ニューロパシー。本障害は、進行性遠位型運動ニューロパシーおよび深部腱反射の喪失によって特徴付けられる。凹足などの足および手の変形を特徴とする。ATP7A関連遠位型運動ニューロパシーを有する被験体は、低血清銅レベルを示さず、メンケス病またはOHSに関連する髪、皮膚、関節の異常を示さない。
コドン最適化された:「コドン最適化された」核酸は、特定の系(特定の種または種の群など)における発現のためにコドンが最適であるように変更された核酸配列をいう。例えば、核酸配列を、哺乳動物細胞または特定の哺乳動物種(ヒト細胞など)における発現のために最適化することができる。コドン最適化は、コードされたタンパク質のアミノ酸配列を変更しない。
銅輸送障害:銅代謝、具体的には銅輸送(例えば、細胞による銅の取り込みおよび/または移動)の欠損によって生じる障害。ヒトでは、銅は、2つの銅輸送ATPアーゼ(ATP7AおよびATP7B)によって輸送される。ATP7A変異に関連する銅輸送障害(ATP7A関連銅輸送障害)には、メンケス病、オクシピタル・ホーン症候群、ATP7A関連遠位型運動ニューロパシーが含まれる。ウィルソン病は、ATP7B変異に関連する。
有効量:薬剤または組成物が、単独で、または薬学的に許容され得るキャリアまたは1つまたは複数のさらなる薬剤と共に所望の応答を誘導する薬剤または組成物の量。治療剤または調製物(化合物、単離された核酸、ベクター、または核酸もしくはベクターを含む組成物など)を、治療有効量で投与する。治療剤の有効量を、多数の異なる方法(障害(銅輸送障害など)を有する被験体の症状の軽減または生理学的状態の改善についてのアッセイなど)で決定することができる。有効量を、種々のin vitro、in vivo、またはin situでのアッセイで決定することもできる。
単離された:「単離された」生物学的構成要素(核酸分子、タンパク質、またはウイルスなど)が、他の生物学的構成要素(例えば、他の染色体および染色体外のDNAおよびRNA、タンパク質、および/またはオルガネラ)から実質的に分離されているか精製されて除去されていること。「単離されている」核酸、タンパク質、および/またはウイルスには、標準的な精製方法によって精製された核酸、タンパク質、およびウイルスが含まれる。本用語はまた、宿主細胞中での組換え発現によって調製された核酸、タンパク質、およびウイルス、ならびに化学合成された核酸またはタンパク質を包含する。
用語「単離された」(または精製された)は、絶対的な純度を必要とせず;むしろ、相対的な用語であることを意図する。したがって、例えば、単離されたまたは精製された核酸、タンパク質、ウイルス、または他の活性化合物は、関連する核酸、タンパク質、および他の夾雑物からその全部または一部が単離されたものである。一定の実施形態では、用語「実質的に精製された」は、細胞、細胞培養培地、または他の粗調製物から単離されており、且つ、最初の調製物の種々の構成要素(タンパク質、細胞デブリ、および他の構成要素など)を除去するための分画に供されている核酸、タンパク質、ウイルス、または他の活性化合物をいう。
メンケス病(縮れ毛病または剛毛病(steely hair disease)としても公知):銅輸送ATPアーゼATP7Aの欠損または機能障害に原因する乳児期発症性X連鎖劣性神経変性障害(OMIM 309400)。X連鎖疾患としてのメンケス病は、典型的には、出生時に正常に見えるが、事前に得られる発達の審査項目(developmental milestone)を欠く男児において生じ、生後2〜3ヶ月で緊張低下、痙攣、および発育不全を発症する。典型的な神経学的所見と併せて、髪および顔面の特徴的な身体的変化がしばしば診断を示唆する。古典的なメンケス病乳児の頭髪は短く、疎であり、粗く、縮れている。患者の毛髪は、光学顕微鏡法において、疾病特徴的な捻転毛(例えば、毛幹から180°ねじれている)を示し、毛髪は、色素が少ない傾向があり、稀な色(白色、銀色、または灰色など)を示し得る。メンケス病を有する個体の顔は、顎のたるみが明確であり、頬が垂れ下がり、しばしば耳が大きい。口蓋は高口蓋である傾向があり、歯牙萌出が遅延する。皮膚は、しばしば、特に首筋および体幹で弛み、伸びている。神経学的には、頭部制御が不十分な深刻な体幹の緊張低下がほとんどの場合に認められる。発達上の技能は、ほとんどの患者で時折認められる微笑および喃語に限られる。成長不全は、神経変性の発症直後に非対称に始まり、体重および頭囲と比較して直線的成長が比較的保存される。
メンケス病の生化学的表現型は、(1)銅の腸吸収障害による血漿、肝臓、および脳内の銅レベルの低下、(2)多数の銅依存性酵素活性の低下、および(3)一定の組織(十二指腸、腎臓、脾臓、膵臓、骨格筋、および/または胎盤など)内の銅の奇異性蓄積を含む。銅保持表現型も、培養した線維芽細胞およびリンパ芽球において明らかであり、放射性標識銅の放出低下は、パルス・チェイス実験で証明可能である。
メンケス病のマウスモデルを利用可能であり、このモデルには、まだら模様のマウス(Mercer,Am.J.Clin.Nutr.76:1022S−1028S,1998;例えば、ブリンドル(brindled)マウス(mo−br)、トータス(tortoise)マウス、ダップル(dappled)マウス、生存可能なブリンドルマウス、および/またはブロッチー(blotchy)(mo−blo)マウス)およびマキュラー(macular)マウス(例えば、Kodamaら,J.Histochem.Cytochem.41:1529−1535,1993)が含まれる。
オクシピタル・ホーン症候群(OHS):メンケス病のより軽度の対立遺伝子バリアント(OMIM 304150)。血清銅レベルは、典型的には、OHS患者において正常レベルよりわずかに低い。OHSは、僧帽筋および胸鎖乳突筋の後頭への付着部位で形成される楔形の石灰化(「後頭角」)によって特徴付けられ、この後頭角は、臨床的に触診でき、そして/またはX線撮影によって目視可能である。OHSの表現型には、軽微な全身性の筋力低下および自律神経障害(失神、起立性低血圧、および慢性下痢)が含まれる。OHSを有する被験体はまた、典型的には、弛緩性の皮膚および関節、膀胱憩室、鼠径ヘルニア、および血管蛇行を有する。知性は、通常、正常であるかわずかに低下している。
薬学的に許容され得るキャリア:本開示で有用な薬学的に許容され得るキャリア(ビヒクル)は、従来のものである。Remington:The Science and Practice of Pharmacy,The University of the Sciences in Philadelphia,Editor,Lippincott,Williams,& Wilkins,Philadelphia,PA,21st Edition(2005)は、1つまたは複数の治療化合物、治療分子、または治療剤の薬学的送達に適切な組成物および処方物を記載している。
一般に、キャリアの性質は、使用される特定の投与様式に依存するであろう。例えば、非経口処方物は、通常、ビヒクルとして薬学的且つ生理学的に許容され得る流体(水、生理食塩水、平衡塩類溶液、デキストロース水溶液、またはグリセロールなど)を含む注射可能な流体を含む。固体組成物(例えば、散剤、丸薬、錠剤、またはカプセルの形態)について、従来の非毒性個体キャリアには、例えば、医薬品グレードのマンニトール、ラクトース、デンプン、またはステアリン酸マグネシウムが含まれ得る。生物学的に中性のキャリアに加えて、投与すべき薬学的組成物は、微量の非毒性補助物質(湿潤剤または乳化剤、防腐剤、およびpH緩衝剤(例えば、酢酸ナトリウムまたはソルビタンモノラウレート)など)を含むことができる。
非経口投与:胃腸管以外の経路による物質(組成物または治療化合物など)の投与。非経口投与経路の例には、静脈内、皮下、筋肉内、脳内、脳室内(intracerebroventricular)(例えば、脳室(cerebral ventricle)内に)、髄腔内(例えば、脊柱管または脳脊髄液内)、局所、経皮、または吸入が含まれる。臨床医は、処置される状態および施される処置に基づいて適切な投与経路を選択することができる。
プロモーター:核酸(例えば、遺伝子)の転写を指示する/開始させるDNAの領域。プロモーターは、転写開始部位付近に必要な核酸配列を含む。典型的には、プロモーターは、転写される遺伝子付近に存在する。プロモーターはまた、任意選択的に、転写開始部位から数千塩基対ほどの位置に存在し得る遠位のエンハンサーエレメントまたはリプレッサーエレメントを含む。
特定の例では、プロモーターは、プロモーターおよび核酸(本明細書中に開示のコドン最適化されたrsATP7A核酸など)が機能的に関連して配置されるように、核酸に「作動可能に連結されている」。例えば、プロモーターがコード配列の転写または発現に影響を及ぼす場合、プロモーターは、コード配列に作動可能に連結されている。一般に、作動可能に連結されたDNA配列は、連続しており、2つのタンパク質コード領域を連結するのに必要である場合、同一の読み枠内に存在する。
組換え:組換え核酸分子は、天然に存在しない配列(コドン最適化された配列など)を含むか、組み合わせなければ分離していた2つの配列セグメントの人為的な組み合わせによって作製された配列を有する分子である。この人為的組み合わせを、化学合成または核酸分子の単離されたセグメントの人為的操作(遺伝子工学技術など)によって行うことができる。
同様に、組換えウイルスは、天然に存在しない核酸配列(ウイルスに由来しない異種配列など)または異なる起源の少なくとも2つの配列の人為的組み合わせによって作製された核酸配列を有するウイルスである。用語「組換え」には、天然の核酸分子、タンパク質、またはウイルスの一部の付加、置換、または欠失のみによって変更されている核酸、タンパク質、およびウイルスも含まれる。本明細書中で使用する場合「組換えAAV」(rAAV)は、異種核酸分子(コドン最適化されたATP7Aタンパク質をコードする核酸分子など)がパッケージングされているAAV粒子をいう。
ベクター:宿主細胞内に複製および/または組み込むベクターの能力を損なうことなく外来核酸を挿入することができる核酸分子。ベクターは、ベクターが宿主細胞内で複製することが可能な核酸配列(複製起点など)を含むことができる。ベクターはまた、1つまたは複数の選択マーカー遺伝子および他の遺伝要素を含み得る。発現ベクターは、挿入された遺伝子を転写および翻訳するのに必要な制御配列を含むベクターである。いくつかの非限定的な例では、ベクターはAAVである。
II.コドン最適化されたATP7A、ベクター、および組換えアデノ随伴ウイルス
ヒト細胞内での発現のためにコドン最適化されている小型ATP7Aタンパク質をコードする核酸を本明細書中に開示する。いくつかの実施形態では、小型ATP7Aタンパク質をコードするコドン最適化された核酸には、ATP7Aタンパク質をコードする約5kb長未満(例えば、約4.5kb未満、約4kb未満、約3.5kb未満、または約3kb未満)の核酸であって、コードされたタンパク質が未変性ATP7Aタンパク質の少なくとも1つの活性(銅結合、銅輸送、および/またはATPアーゼ活性が含まれる)を保持する核酸が含まれる。いくつかの例では、コードされたATP7Aタンパク質は、6つのN末端銅結合部位のうちの1つまたは複数を欠く(例えば、1、2、3、4、または5つの銅結合部位を欠く)。特定の例では、コードされたATP7Aタンパク質は、2つのN末端銅結合部位を有する(例えば、第4のN末端銅結合部位後から開始される)。いくつかの例では、小型APT7Aタンパク質は、未変性(全長)タンパク質中に存在するメチオニン残基から開始され、一方で、他の例では、小型ATP7Aタンパク質をコードする核酸は、外因性翻訳開始部位を含む。特定の例では、コドン最適化された小型ATP7A核酸は、未変性ATP7Aタンパク質のアミノ酸番号461(メチオニン)から開始されるタンパク質をコードする。1つの具体例では、小型ATP7Aタンパク質をコードする核酸は、約3.1kb長である。コドン最適化された小型ATP7A核酸の例を、配列番号1として記載している。いくつかの例では、コドン最適化された核酸は、配列番号2として記載のアミノ酸配列を有する小型ATP7Aタンパク質をコードする。
他の例では、コドン最適化された核酸は、配列番号1と少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、または少なくとも99%同一の核酸配列を有する。開示のコドン最適化された核酸は、配列番号2と少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、または少なくとも99%同一のアミノ酸配列をコードし、ここで、コードされたタンパク質は、未変性ATP7Aタンパク質の少なくとも1つの活性(銅結合、銅輸送、および/またはATPアーゼ活性が含まれる)を保持する。
本明細書中に開示の小型ATP7Aタンパク質をコードする核酸配列は、核酸配列が発現される細胞のためにコドン最適化されている。コドン使用頻度バイアス(均等ではない頻度での同義語コドンの使用)は、遺伝子系で遍在する(Ikemura,J.Mol.Biol.146:1−21,1981;Ikemura,J.Mol.Biol.158:573−97,1982)。コドン使用頻度バイアスの強さおよび方向は、ゲノムG+C含量および異なる縮重(isoaccepting)tRNAの相対存在量に関連する(Akashi,Curr.Opin.Genet.Dev.11:660−666,2001;Duret,Curr.Opin.Genet.Dev.12:640−9,2002;Osawaら,Microbiol.Rev.56:229−264,1992)。コドン使用頻度は、遺伝子発現効率に影響を及ぼし得る。コドン最適化は、核酸配列中の少なくとも1つのコドン(少なくとも5コドン、少なくとも10コドン、少なくとも25コドン、少なくとも50コドン、少なくとも75コドン、少なくとも100コドン、またはそれを超えるコドンなど)の、生物内でより高頻度で使用される(好まれる)同義語コドン(同一アミノ酸をコードするコドン)との置換をいう。各生物は、各アミノ酸について特定のコドン使用頻度バイアスを有し、このバイアスを、公的に利用可能なコドン使用頻度表(例えば、Nakamuraら,Nucleic Acids Res.28:292,2000およびその引用文献を参照のこと)から決定することができる。例えば、コドン使用頻度データベースは、ワールド・ワイド・ウェブのkazusa.or.jp/codonから利用可能である。当業者は、特定のアミノ酸配列をコードする核酸を、この核酸が同一のアミノ酸配列をコードする一方で、特定の細胞型(ヒト細胞など)内での発現のために最適化されるように改変することができる。いくつかの例では、コドン最適化されたATP7A配列を、Integrated DNA Technologies(Coralville,IA,ワールド・ワイド・ウェブ上のidtdna.com/CodonOptで利用可能)、GenScript(Piscataway,NJ)、またはEntelechon(Eurofins Genomics,Ebersberg,Germany、ワールド・ワイド・ウェブ上のentelechon.com/2008/10/backtranslation−tool/で利用可能)から利用可能なコドン最適化ツールなどのソフトウェアを使用して作成する。
小型APT7Aタンパク質をコードするコドン最適化された核酸を含むベクターも本明細書中に開示する。いくつかの例では、ベクターは、プロモーターに作動可能に連結されたコドン最適化された小型ATP7A核酸を含む。1つの制限されない例では、プロモーターは、β−アクチンプロモーター(ニワトリβ−アクチンプロモーターなど)である。他の制限されない例では、プロモーターは、ATP7Aプロモーター(ヒトATP7Aプロモーターなど)、HSV−1由来の潜伏関連転写物(LAT)プロモーター、ニューロン特異性エノラーゼプロモーター、またはβ−グルクロニダーゼプロモーター(例えば、Husainら,Gene Ther.16:927−932.2009を参照のこと)である。当業者は、開示のベクター内で使用することができるさらなるプロモーターを選択することができる。さらなる例では、ATP7A核酸はまた、エンハンサーエレメント(CMVエンハンサーなど)および/またはポリアデニル化シグナル(β−グロビンポリアデニル化シグナルまたはSV40ポリアデニル化シグナルなど)に作動可能に連結されている。
いくつかの実施形態では、ベクターは、アデノ随伴ウイルス(AAV)ベクター、アデノウイルスベクター、アルファウイルスベクター、ヘルペスウイルスベクター、レンチウイルスベクター、またはワクシニアウイルスベクターである。当業者は、例えば、本明細書中に記載の方法での使用に適切なベクターを選択することができる。
特定の実施形態では、ベクターはAAVベクターである。AAV血清型は、被験体への導入遺伝子の送達に適切な任意の血清型であり得る。いくつかの例では、AAVベクターは、血清型9AAV(AAV9)である。他の例では、AAVベクターは、血清型5AAV(AAV5)である。他の例では、AAVベクターは、血清型1、2、3、4、6、7、8、10、11、または12ベクター(すなわち、AAV1、AAV2、AAV3、AAV4、AAV6、AAV7、AAV8、AAV10、AAV11、またはAAV12)である。さらなる他の例では、AAVベクターは、2つまたはそれを超えるAAV血清型のハイブリッド(AAV2/1、AAV2/7、AAV2/8、またはAAV2/9などであるが、これらに限定されない)である。AAV血清型の選択は、遺伝子療法の標的とされる細胞型に一部依存するであろう。ATP7A関連銅輸送障害の処置のために、ニューロン(中枢神経系ニューロンまたは運動ニューロンなど)は、関連する標的細胞の例である。他の例では、尿細管上皮細胞、腸細胞、皮膚細胞、および/または筋肉細胞も関連する標的細胞である。
AAVは、パルボウイルス科のデペンドパルボウイルス属に分類される小型の無エンベロープヘルパー依存性パルボウイルスである。AAVは、約4.7kbの線状一本鎖DNAゲノムを有する。ゲノムは、2つの読み取り枠(ORF)であるrepおよびcapに隣接した逆位末端反復(ITR)によって挟まれている。repORFは、4つの複製タンパク質(Rep78、Rep68、Rep52、およびRep4)をコードし、capORFは、3つのウイルスキャプシドタンパク質(VP1、VP2、およびVP3)およびアセンブリ活性化タンパク質(AAP)をコードする。AAVは、その生活環を完了するためにヘルパーウイルス(アデノウイルス、単純ヘルペスウイルス、または他のウイルスなど)を必要とする。AAVは、現在、世界中の多数の遺伝子療法臨床試験で使用されている。AAVはヒトおよびいくつかの他の霊長類種に感染するが、疾患を引き起こさないことが公知であり、免疫応答の誘発は非常に軽度である。AAVを利用する遺伝子療法ベクターは、分裂細胞および静止細胞の両方に感染することができ、宿主細胞のゲノムに組み込まれることなく染色体外状態を持続することができる。AAVは、遺伝子療法ベクターのためのいくつかの望ましい特徴(標的細胞に結合して侵入する能力、核に侵入する能力、核内で長期間発現する能力、および低毒性が含まれる)を保有する。AAVの有利な特徴のために、いくつかの実施形態では、本開示は、本明細書中に開示の組換え核酸分子および方法のためのAAVの使用を意図する。
ITRは、AAVキャプシド内への異種タンパク質の首尾の良いパッケージングに必要な唯一の構成要素である。したがって、プロモーターに作動可能に連結された小型ATP7Aタンパク質をコードするコドン最適化された核酸(配列番号1など)を含むAAVベクターを本明細書中に開示する。いくつかの例では、AAVベクターは、プロモーターに作動可能に連結された小型ATP7Aタンパク質をコードするコドン最適化された核酸(配列番号1など)に隣接する5’および3’ITRを含む。1つの具体例では、隣接ITRはAAV2に由来する。
ベクターはまた、さらなるエレメント(エンハンサーエレメント(例えば、プロモーター活性の増加によって転写速度を増加させる核酸配列)および/またはポリアデニル化シグナルなど)を含み得る。特定の例では、エンハンサーは、サイトメガロウイルス(CMV)エンハンサーまたはウッドチャック転写後調節エレメント(WPRE)である。プロモーターの例には、ニワトリβ−アクチン(CBA)プロモーター、遍在性プロモーター(グルクロニダーゼβ(GUSB)プロモーターなど)、またはニューロン特異的プロモーター(血小板由来成長因子B鎖(PDGF−β)プロモーターまたはニューロン特異性エノラーゼ(NSE)プロモーターなど)が含まれる。さらなる例では、ポリアデニル化シグナルは、β−グロビンポリアデニル化シグナル、SV40ポリアデニル化シグナル、またはウシ成長ホルモンポリアデニル化シグナルである。ベクター内に任意選択的に含めることができる他のエレメントには、タグ(6×His、HA、またはタンパク質検出のための他のタグなど)が含まれる。ITR、エンハンサー、プロモーター、ポリアデニル化シグナル、および/または他のエレメントの任意の組み合わせを、本明細書中に開示のベクター内で使用することができる。
いくつかの例では、ベクターは、(5’から3’へ):AAV5’ITR、エンハンサー、プロモーター、コドン最適化された小型ATP7Aコード配列、ポリアデニル化シグナル、およびAAV3’ITRを含む。1つの制限されない例では、ベクターは、(5’から3’へ)AAV2 5’ITR、CMVエンハンサー、ニワトリβ−アクチンプロモーター、配列番号1(または配列番号1と少なくとも80%同一の配列)、ウサギβ−グロビンポリアデニル化シグナル、およびAAV2の3’ITR(例えば、図3)を含む。
組織向性または細胞向性が異なる少なくとも10の異なるAAV血清型(AAV1からAAV10まで)が存在する。例えば、AAV血清型1、5、および6由来のキャプシドタンパク質はN連結シアル酸に結合し、AAV4はO連結シアル酸に結合し、AAV2、3、および6はヘパリン硫酸プロテオグリカンに結合し、AAV9はN末端ガラクトース残基に結合する。例えば、Murlidharanら,Front.Mol.Neurosci.7:76,2014を参照のこと。したがって、特異的AAV血清型は、特異的細胞型(ニューロンなど)への形質導入に特に適切であり得る。非限定的な例では、AAV血清型2、AAV血清型5、またはAAV血清型9を、本明細書中に記載の組換え核酸、ベクター、および方法を用いた中枢神経系(CNS)発現のために利用する。当業者は、他のAAV血清型も本明細書中に開示の構築物および方法で利用することができると認識するであろう。
組換えAAV(rAAV)(例えば、遺伝子療法に適切なrAAV)の産生方法は当該分野で周知であり、本明細書中に開示の組換え核酸分子、ベクター、および方法と共に利用することができる。いくつかの例では、rAAVを、目的のタンパク質をコードする核酸(コドン最適化されたrsATP7Aコード核酸など)に作動可能に連結されたプロモーターに隣接するAAV ITRを含むプラスミド(ベクター)、プロモーターに作動可能に連結されたAAVのrep遺伝子およびcap遺伝子を含むプラスミド、ならびにヘルパーウイルスタンパク質をコードするプラスミドを有する3プラスミド系を使用して産生する。細胞に、3つのプラスミドで同時トランスフェクトし、ウイルスアセンブリが生じる。得られたrAAV粒子を精製し(例えば、勾配遠心分離またはHPLCによる)、被験体(ATP7A関連銅輸送障害を有する被験体など)に投与することができるか、目的のタンパク質(rsATP7Aなど)を産生するために標的細胞に形質導入するために使用する。他の例では、パッケージングプラスミド(例えば、rep遺伝子および/またはcap遺伝子を含む)および目的のタンパク質をコードする核酸(コドン最適化されたrsATP7Aコード核酸など)に作動可能に連結されたプロモーターに隣接するAAV ITRを含むプラスミドを有する2プラスミド系を利用する。この場合、rAAV産生のためのさらなる因子を、ヘルパーウイルスの感染によって得る。例えば、米国特許出願公開第2012/0100606号、同第2012/0135515号、同第2011/0229971号、および同第2013/0225666号を参照のこと。特定の例では、rAAVは、血清型AAV9または血清型AAV5である。
本明細書中に開示の核酸分子またはベクターを含む単離された宿主細胞も本明細書中に提供する。例えば、単離された宿主細胞は、rAAV産生に適切な細胞(または細胞株)であり得る。いくつかの例では、宿主細胞は、哺乳動物細胞(HEK−293細胞(またはHEK293T細胞)、BHK細胞、Vero細胞、RD細胞、HT−1080細胞、A549細胞、COS−7細胞、ARPE−19細胞、またはMRC−5細胞など)である。当業者は、本明細書中に開示の核酸および/またはベクターで形質転換することができるさらなる細胞を選択することができる。
III.銅輸送障害を処置するための方法および組成物
有効量の、コドン最適化された小型ATP7A核酸を含むベクターまたはコドン最適化された小型ATP7A核酸を含む組換えウイルス(rAAVなど)を被験体に投与する工程を含む、ATP7A関連銅輸送障害を有する被験体を処置する方法を本明細書中に開示する。特定の例では、組換えウイルスを含む組成物(例えば、組換えウイルスおよび薬学的に許容され得るキャリア)を、被験体に投与する。組成物を、単回用量または複数回用量(2回、3回、4回、またはそれを超える用量など)として投与することができる。
本明細書中に開示のベクターまたはウイルス(rAAVなど)および薬学的に許容され得るキャリアを含む組成物も、本開示によって提供する。薬学的に許容され得るキャリアは、投与される特定の組成物ならびに組成物を投与するために使用される特定の方法によって一部決定される。例えば、Remington:The Science and Practice of Pharmacy,The University of the Sciences in Philadelphia,Editor,Lippincott,Williams,& Wilkins,Philadelphia,PA,21st Edition(2005)を参照のこと。したがって、広範な種々の本開示の薬学的組成物の適切な処方物が存在する。
非経口投与用調製物は、滅菌された水溶液または非水溶液、懸濁物、および乳濁液を含む。非水性溶媒の例は、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、植物油(オリーブ油など)、および注射用有機エステル(オレイン酸エチルなど)である。水性キャリアには、水、アルコール溶液/水溶液、乳濁液または懸濁物(ソルビトールが含まれる)、食塩水、および緩衝化された媒体が含まれる。非経口ビヒクルには、塩化ナトリウム溶液、リンゲルデキストロース、デキストロースおよび塩化ナトリウム、乳酸加リンゲル溶液、または固定油が含まれる。特定の例では、本明細書中に開示の組成物は、ソルビトール、ポリエチレングリコール、またはプロピレングリコール(例えば、約0.1%〜約50%(約1〜10%、約1〜5%、約5〜40%、または約10〜30%w/vなど))のうちの1つまたは複数を含む。別の特定の例では、本明細書中に開示の組成物は、乳酸加リンゲル液を含む。
静脈内ビヒクルはまた、流体および栄養補充物、ならびに電解質補充物(リンゲルデキストロースに基づく補充物など)などを含み得る。防腐剤および他の添加物(例えば、抗菌剤、抗酸化剤、キレート剤、および不活性ガスなど)も存在し得る。組成物はまた、界面活性剤(TWEEN−20、TWEEN−40、TWEEN−60、またはTWEEN−80など)(例えば、約0.05〜5%(約0.1%〜1%、約0.5〜5%、約0.2〜2%、または約1〜5%など)で)含み得る。いくつかの実施形態では、組成物を、脳内投与または静脈内投与のために処方する。rAAV投与に適切な薬学的処方物を、例えば、米国特許出願公開第2012/0219528号(本明細書中で参考として援用される)に見出すことができる。
開示の組成物を、ATP7A関連銅輸送障害(メンケス病、オクシピタル・ホーン症候群、またはX連鎖性遠位遺伝性運動性ニューロパシーが含まれるが、これらに限定されない)を有するか、有すると疑われる被験体に投与する。当業者は、臨床像、血清銅レベル(例えば、メンケス病またはOHS)、および/または遺伝子診断(例えば、ATP7Aをコードする遺伝子の1つまたは複数の変異の存在)に基づいてATP7A関連銅輸送障害を有する被験体を同定することができる。例えば、Kaler,Nature Rev.Neurol 7:15−29,2011;Kaler,Handbook Clin.Neurol.113:1745−1754,2013を参照のこと。
いくつかの実施形態では、開示の組成物(ベクターおよび/またはウイルスを含む組成物など)を、任意の有効な経路(例えば、非経口または腸内)によって被験体に投与する。投与経路の例には、注射(頭蓋内、脳内、髄腔内、脳室内、静脈内、腹腔内、皮下、または皮内への注射など)、経口、経腸、舌下、経皮、鼻腔内、または吸入投与経路が含まれる。いくつかの例では、組成物を、CNS内への注射(脳内、脳室内、髄腔内、脳脊髄液内、硬膜外、または実質内への注射など)によって投与する。いくつかの具体例では、組成物を、CSF内への注射によって投与する。他の例では、組成物を、静脈内投与する。特定の例では、投与経路を、使用するAAVベクターまたはrAAVの血清型に基づいて選択することができる。例えば、AAV1、AAV6、AAV8、AAV9、AAVRh.8、およびAAVRh.10の静脈内投与後にニューロン形質導入が認められている(例えば、Murlidharanら,Front.Mol.Neurosci.7:76,2014を参照のこと)。AAV2、AAV4、またはAAV5を利用する場合、CNSへの組成物の直接投与を必要とし得る。
いくつかの実施形態では、開示のrAAVを、約10〜約1014ビリオン(ウイルス粒子)の用量で投与する。いくつかの例では、rAAVを、約10〜約1013ビリオンまたは約10〜約1012ビリオンの用量で投与する。非限定的な具体例では、rAAVを、少なくとも約10、少なくとも約10、少なくとも約10、少なくとも約10、少なくとも約10、少なくとも約10、少なくとも約1010、少なくとも約1011、少なくとも約1012、少なくとも約1013、または少なくとも約1×1014ビリオンの用量で投与する。他の制限されない例では、rAAVを、約1010ビリオン以下、約1011ビリオン以下、約1012ビリオン以下、約1013ビリオン以下、または約1014ビリオン以下の用量で投与する。さらなる例では、rAAVを、約10〜約1014ウイルスゲノム(vg)(約1.6×10vg、約5×10vg、約1.6×1010vg、約5×1010vg、約1.6×1011vg、約5×1011vg、約1.6×1012vg、約5×1012vg、約1.6×1013vg、または約5×1013vg、または約1.6×1014vgなど)の用量で投与する。
他の実施形態では、rAAVを、約1×1010〜約1×1014ウイルスゲノム(vg)/kgの用量で投与する。いくつかの例では、rAAVを、約1×1010〜約1×1015vg/kgの用量で投与する。非限定的な具体例では、rAAVを、少なくとも約1×1010、少なくとも約5×1010、少なくとも約1×1011、少なくとも約5×1011、少なくとも約1×1012、少なくとも約5×1012、少なくとも約1×1013、少なくとも約5×1013、または少なくとも約1×1014vg/kgの用量で投与する。他の制限されない例では、rAAVを、約1×1010vg/kg以下、約5×1010vg/kg以下、約1×1011vg/kg以下、約5×1011vg/kg以下、約1×1012vg/kg以下、約5×1012vg/kg以下、約1×1013vg/kg以下、約5×1013vg/kg以下、または約1×1014vg/kg以下の用量で投与する。1つの制限されない例では、rAAVを、約1×1012vg/kg、約4×1012vg/kg、または約1×1013vg/kgの用量で投与する。
当業者は、適切な用量を、例えば、用量−応答曲線を確立する日常的試験によって決定することができる。rAAVを、所望の治療結果を得るために必要に応じて単回用量または複数回用量(2、3、4、5、6、7、8、9、または10用量など)で投与することができる。
ATP7A関連銅輸送障害(特に、メンケス病およびOHS)を有する一部の被験体において、処置は、非経口(例えば、皮下)経路による銅治療の実施も含み得る(例えば、Kalerら,N.Eng.J.Med.358:605−614,2008;Kaler J.Trace Elem.Med.Biol.28:427−430,2014を参照のこと)。このさらなる治療は、ATP7A欠陥に起因して腸内の銅輸送が欠陥し、それによって血清銅レベルが低下するので必要であり得る。したがって、いくつかの実施形態では、本明細書中に開示の組成物で処置される被験体(例えば、血清銅レベルが低下した被験体(メンケス病またはOHSを有する被験体など))も、銅治療を用いて処置する。銅治療は、血清銅レベルが正常または正常に近い被験体(ATP7A関連遠位型運動ニューロパシーを有する被験体など)において必要でないかもしれない;しかし、臨床医は、ATP7A関連銅輸送障害を有する患者に銅治療を施すべきかどうかを同定することができる。
処置のために使用される銅は、都合よく投与することができ、且つ副作用(近位尿細管損傷など)のレベルが許容可能である任意の形態であり得る。いくつかの例では、銅は、銅ヒスチジン、ヒスチジン酸銅、グルコン酸銅、塩化銅、および/または硫酸銅の形態である。いくつかの例では、銅は、cGMPグレードの銅(cGMPグレードのヒスチジン酸銅など)である。一般に、適切な用量は、1日当たりまたは1日おきに約250μg〜約500μgの銅(ヒスチジン酸銅、塩化銅、または硫酸銅など)である。しかし、例えば、被験体の年齢(例えば、乳児、小児、または成人)および体重、投与経路、または臨床医によって考慮される他の要因に応じて、約50μg〜約1000μg(約50μg〜200μg、約100μg〜500μg、約250μg〜750μg、または約500μg〜1000μgなど)などの他のより高いまたはより低い投薬量(または分割用量)も、1日当たりまたは1日おきに使用することができる。いくつかの例では、年齢12ヶ月未満の被験体に、2つの毎日用量の銅を投与する一方で、12ヶ月またはそれを超える年齢の被験体に、単回の毎日用量の銅を投与する。銅治療を、1つまたは複数の非経口経路(皮下、筋肉内、または静脈内投与が含まれるが、これらに限定されない)によって施す。1つの具体例では、銅治療(ヒスチジン酸銅など)を、皮下注射によって投与する。
銅を、本明細書中に記載のコドン最適化されたrsATP7A核酸、ベクター、組換えウイルス、または組成物の前に、それと同時に、それと実質的に同時に、それと逐次的に、またはこれらの任意の組み合わせで被験体に投与することができる。いくつかの例では、少なくとも1用量の銅を、本明細書中に記載のコドン最適化されたrsATP7A核酸、ベクター、組換えウイルス、または組成物の投与から24時間以内に投与する。さらなる用量の銅を、臨床医によって選択されたより後の時間に投与することができる。いくつかの例では、銅治療を、少なくとも3ヶ月間、少なくとも6ヶ月間、少なくとも1年間、少なくとも2年間、少なくとも3年間、またはそれを超える期間(約3ヶ月間〜5年間、6ヶ月間〜3年間、1〜2年間、2〜6年間、または1〜5年間など)毎日施す。銅治療(銅の毎日の投与など)を、被験体のATP7A関連銅輸送障害の診断直後から開始することができ、いくつかの例では、本明細書中に記載のコドン最適化されたrsATP7A核酸、ベクター、組換えウイルス、または組成物の投与前に行うことができ、rsATP7A投与後に毎日継続することもできる。当業者はまた、ATP7A関連銅輸送障害を有する被験体のさらなる処置(L−トレオ−ジヒドロキシフェニルセリン(L−DOPS、ドロキシドパとしても公知)など)を選択することができる。
いくつかの実施形態では、本方法はまた、開示のコドン最適化された小型ATP7A核酸、コドン最適化された小型ATP7A核酸を含むベクターもしくはウイルス、またはかかる核酸、ウイルス、もしくはベクターを含む組成物を使用した処置について被験体を選択する工程を含む。例えば、開示の方法は、ATP7A関連銅輸送障害(メンケス病、オクシピタル・ホーン疾患、またはATP7A関連遠位型運動ニューロパシーなど)を有する被験体を選択する工程を含むことができる。被験体の選択は、臨床症状、生化学的所見、分子診断学(ATP7Aにおける1つまたは複数の変異の存在など)、またはこれらのうちの2つまたはそれを超えるものの組み合わせに基づき得る。したがって、いくつかの例では、ATP7A関連銅輸送障害を有する被験体を、臨床症状(硬い髪、緊張低下、痙攣、大脳および小脳の神経変性、および/または約2〜3ヶ月齢の乳児における発育不全(例えば、メンケス病)、弛緩性皮膚、動揺関節、後頭骨の楔形のカルシウム沈着、および/または硬い髪(例えば、OHS)、または進行性遠位型運動ニューロパシー、凹足、槌状足指、および/または曲がった指(curled finger)(例えば、ATP7A関連遠位型運動ニューロパシー)など)に基づいて選択する。他の例では、被験体を、生化学的所見(低血清銅レベル、低血清セルロプラスミンレベル、および/または血清またはCSFの神経化学レベルの異常(ドーパミン、ノルエピネフリン、またはその代謝産物など)など)のみまたは臨床症状との組み合わせに基づいて選択する。他の例では、被験体を、任意の他の生化学的症状または臨床症状の非存在下での血漿またはCSFの神経化学の異常のみに基づいて選択する。血清銅、血清セルロプラスミン、または血清もしくはCSFの神経化学レベルの決定方法の例を以下に記載する。
なおさらなる例では、ATP7A関連銅輸送障害を有する被験体を、分子診断学(例えば、ATP7Aにおける1つまたは複数の変異(ATP7A活性の低下または検出可能なATP7A発現の不在を生じる変異など)の存在)に基づいて選択する。被験体を、いかなる他の生化学的異常または臨床的異常がない場合にATP7AのDNA配列のみに基づいて選択することができるか、ATP7A変異ならびに1つまたは複数の他の生化学的症状および/または臨床症状の存在に基づいて選択することができる。ATP7A変異の例には、PCT国際公開番号WO2010/042102号(その全体が本明細書中で参考として援用される)に記載の変異(例えば、Q197X、R201X、A629P、S637L、G666R、G727R、S833G、G1019D、N1304S、A1362D、IVS8,AS,dup5、EVS9,DS+6T>G、IVS21,DS,+3A>T、Del4246−4260、およびDel4284−4315)が含まれる。さらなるATP7A変異の例は、Kaler,J.Trace Elem.Med.Biol.28:427−430,2014(その全体が本明細書中で参考として援用される)およびOnline Mendelian Inheritance in Man(OMIM)受入番号300011(2015年10月21日付でOMIMに存在しており、本明細書中で参考として援用される)に記載されている。当業者は、ATP7A関連銅輸送障害を有する被験体に存在し得るさらなるATP7A変異(依然として同定されていない変異が含まれる)を同定することができる。被験体における1つまたは複数のATP7A変異の存在を同定する方法の例には、配列決定(例えば、ゲノムまたはcDNAの配列決定)、対立遺伝子特異的PCRまたは対立遺伝子特異的オリゴヌクレオチドハイブリッド形成、マイクロアレイ分析、変性勾配ゲル電気泳動、変性HPLC、酵素ミスマッチ切断、または当業者に公知の他の方法が含まれる。
いくつかの実施形態では、コドン最適化された小型ATP7AcDNA(本明細書中に開示のコドン最適化された小型ATP7A核酸を含むrAAVなど)での被験体の処置の有効性を、被験体由来のサンプル中の銅代謝の1つまたは複数の生化学的マーカー(血清中またはCSF中の銅レベル、血清セルロプラスミンレベル、血漿またはCSF中のカテコールアミンレベル、または細胞銅放出など)の決定によって評価する。これらの銅代謝の生化学的マーカーの検出方法は、当該分野で周知である。
いくつかの例では、被験体由来のサンプル中の銅代謝の生化学的マーカーの値(銅レベル、セルロプラスミンレベル、カテコールアミンレベル、または細胞銅放出など)を、対照(基準値、対照集団、または対照個体など)由来の同一マーカーの値と比較する。いくつかの例では、対照は、無処置APT7A関連銅輸送障害を有する被験体(すなわち、基準値または無処置APT7A関連銅輸送障害を有する対照集団)である。他の例では、対照は、健康な被験体(銅輸送障害を罹患していない被験体など)または基準値もしくは健康な対照集団である。いくつかの例では、対照は、例えば、処置開始前のAPT7A関連銅輸送障害を有する被験体由来のサンプルまたは値であり得る。
いくつかの例では、被験体由来のサンプル中の銅代謝の生化学的マーカーを、単一個体由来の対照サンプルから得た値と比較する。他の例では、被験体由来のサンプル中の銅代謝の生化学的マーカーを、対照集団から得た値(1人を超える個体(2人またはそれを超える個体、5人またはそれを超える個体、10人またはそれを超える個体、または、さらに、100人またはそれを超える個体など)由来の対照サンプルなど)と比較する。対照集団の場合、被験体由来のサンプルの値を、対照集団の値の平均または対照集団由来の値の範囲と比較することができる。さらなる例では、被験体由来のサンプル中の銅代謝の生化学的マーカーを、基準値(当業者によって使用される正常個体集団から得た標準値など)と比較する。対照集団と同様に、被験体由来のサンプルの値を、平均基準値または基準値の範囲(基準群内の高値および低値または95%信頼区間など)と比較することができる。
銅レベル
銅代謝の1つの生化学的マーカーは、被験体由来のサンプル中の銅レベル(血清、血漿、またはCSFなど)である。いくつかの例では、正常対照個体または正常対照集団と比較した銅レベルの低下は、メンケス病またはOHSのマーカーである。サンプル(被験体由来の血清、血漿、またはCSFなど)中の銅レベルの決定方法は、当業者に周知である。いくつかの例では、サンプル中の銅レベルの決定方法には、フレーム原子吸光分析、陽極ストリッピングボルタンメトリー(anodic stripping voltammetry)、黒鉛炉原子吸光(graphite furnace atomic absorption)、電熱原子吸光分光光度法(electrothermal atomic absorption spectrophotometry)、誘導結合プラズマ−原子発光分光法(inductively coupled plasma−atomic emission spectroscopy)、および誘導結合プラズマ−質量分析(inductively coupled plasma−mass spectrometry)が含まれる。例えば、Evenson and Warren,Clin.Chem.21:619−625,1975;Weinstock and Uhlemann,Clin.Chem.27:1438−1440,1981;WO93/017321号を参照のこと。
セルロプラスミンレベル
セルロプラスミンは、血中の主な銅運搬タンパク質である。このタンパク質は、フェロキシダーゼ活性およびアミンオキシダーゼ活性を有し、p−フェニレンジアミン(PPD)およびFe(II)の酵素的酸化を触媒する。被験体由来のサンプル(血清、血漿、またはCSFなど)中のセルロプラスミンレベルは、銅代謝の生化学的マーカーである。いくつかの例では、正常な対照サンプルもしくは集団または基準値と比較したセルロプラスミンレベルの低下は、メンケス病またはOHSのマーカーである。
サンプル(血清、血漿、またはCSFなど)中のセルロプラスミンレベルの決定方法は、当業者に周知である。1つの例では、サンプル中のセルロプラスミンレベルを、セルロプラスミンオキシダーゼ活性(PPD−オキシダーゼ活性またはフェロキシダーゼ活性など)の測定によって決定する。例えば、Sunderman and Nomoto,Clin.Chem.16:903−910,1970)を参照のこと。酸化生成物の形成速度は、血清セルロプラスミン濃度(基質の非酵素的酸化を補正)に比例する。別の例では、サンプル中のセルロプラスミンレベルを、イムノアッセイ(ELISA、解離増強型時間分解フルオロイムノアッセイ(dissociation−enhanced time−resolved fluoroimmunoassay)、または比濁イムノアッセイなど)によって決定する(例えば、米国特許第6,806,044号;同第6,010,903号;同第5,491,066号を参照のこと)。さらなる例では、セルロプラスミンレベルを、セルロプラスミンを精製し、そして誘導結合プラズマ質量分析を使用して銅含有量を分析して銅イオン特異的シグナルを得ることによって決定し;サンプルを、銅イオン特異的シグナルに基づいてセルロプラスミンについて評価する(例えば、米国特許出願公開第2007/0161120号を参照のこと)。
カテコールアミンレベル
銅は、代謝酵素(ドーパミンβヒドロキシラーゼ、リシルオキシダーゼ、およびシトクロムcオキシダーゼなど)の活性のために必要である。例えば、銅は、ドーパミンをノルエピネフリンに変換する酵素ドーパミンβヒドロキシラーゼ(DBH)の活性に必要である。いくつかの例では、カテコールアミンレベル(血漿またはCSF中のカテコールアミンレベルなど)は、DBH活性と相関する。ドーパミンおよびノルエピネフリンの代謝経路の一部を、以下に示す。
Figure 0006854286
(メンケス病またはOHSなどにおいて)利用可能な銅が減少する場合、DBH活性は減少し、それにより、ノルエピネフリンレベルが減少し、ドーパミンレベルが増加する。ドーパミン(DA)およびノルエピネフリン(NE)の基質および代謝産物も影響を受ける。
カテコールアミンレベルから、銅代謝の変化についての情報を得ることができる。1つまたは複数の酵素(DBHなど)の活性が変化する場合、基質の代謝産物の、生成物の代謝産物に対する比は、変化の方向を示し得る。いくつかの例では、酵素活性の増加は、1つまたは複数の基質のその生成物に対する比の減少に反映されるであろう。同様に、酵素活性の減少は、1つまたは複数の基質のその生成物に対する比(ドーパミンのノルエピネフリンに対する比など)の増加に反映されるであろう。これらの比は、2つの代謝産物の比または代謝産物間の複雑な関係性の比であり得る。さらに、代謝産物は、複数の特異的酵素(または単一の特異的酵素)の直接的な生成物−基質代謝産物である必要はないが、任意の2つまたはそれを超える代謝産物の比(DOPAC:DHPG比またはDA:NE比など)であり得る。
いくつかの例では、1つまたは複数のカテコールアミンの量(絶対濃度もしくは相対濃度、またはその比のいずれかで報告)は、DBH活性と相関する。したがって、いくつかの提供した方法は、被験体由来の生物サンプル中の1つまたは複数のカテコールアミンを定量する工程を含む。カテコールアミンには、カテコール基を含む化合物(古典的カテコールアミン(例えば、ドーパミン、ノルエピネフリン、およびエピネフリン)など)が含まれる。さらなる例では、カテコールアミンには、古典的なカテコールアミンの代謝産物または基質が含まれる。いくつかの例では、カテコールアミンには、ドーパミンの代謝産物(例えば、DOPAC、3−メトキシチラミン、およびホモバニリン酸)およびノルエピネフリンの代謝産物(例えば、DHPG、ノルメタネフリン、3,4−ジヒドロキシマンデル酸、3−メトキシ−4−ヒドロキシマンデル酸、および3−メトキシ−4−ヒドロキシフェニルエチレングリコール)が含まれる。
カテコールアミンレベルの決定方法は、当業者に公知である。これらの方法には、蛍光定量法、放射酵素法、免疫学的方法(放射免疫アッセイなど)、電気泳動法、電気化学的方法(高速スキャンサイクリックボルタンメトリーなど)、およびクロマトグラフ法(高圧液体クロマトグラフィ(HPLC)法など)、またはその組み合わせが含まれる。例えば、Raum,Am.J.Physiol.Endocrinol.Metab.247:E4−E12,1984;Robinsonら,Clin.Chem.,49:1763−1773,2003;Holmesら,J.Chromatogr.B Biomed.Appl.653:131−138,1994;Eisenhoferら,Clin.Chem.32:2030−2033,1986を参照のこと。1つの特定の例では、カテコールアミンレベルを、電気化学的検出を使用した高圧液体クロマトグラフィによって決定する。
いくつかの例では、カテコールアミンレベルは、DBH活性と相関する。特定の例では、カテコールアミンには、ドーパミン、ノルエピネフリン、ジヒドロキシフェニル酢酸(DOPAC)、ジヒドロキシフェニルグリコール(DHPG)、前述の2つまたはそれを超えるものの組み合わせが含まれる。例えば、ATP7A関連銅輸送障害患者は、DBH活性が減少しており、この減少は、健康な被験体または集団と比較して、酵素の基質(ドーパミンなど)の増加または基質の代謝産物(DOPAC、3−メトキシチラミン、およびホモバニリン酸など)の増加に反映され得る。他の例では、DBH活性の減少は、酵素の生成物(ノルエピネフリンなど)の減少または酵素の生成物の代謝産物(DHPG、ノルメタネフリン、3,4−ジヒドロキシマンデル酸、3−メトキシ−4−ヒドロキシマンデル酸、および3−メトキシ−4−ヒドロキシフェニルエチレングリコールなど)の減少に反映され得る。
さらなる例では、カテコールアミンレベルの比は、DBH活性と相関する。DBH活性の減少は、正常な対照サンプルもしくは対照集団または基準値と比較した酵素の基質(ドーパミンなど)の、酵素の生成物(ノルエピネフリンなど)に対する比の増加に反映され得る。他の例では、DBH活性の減少は、DOPACのDHPGに対する比の増加と相関する。
細胞銅放出
ATP7Aは、原形質膜を横切って細胞質から外部環境への銅輸送を担う。結果として、銅輸送活性が低下しているか存在しないATP7Aを発現する細胞は、細胞内部に銅が蓄積し、細胞銅放出の低下を呈する。いくつかの例では、細胞銅放出の低下を、異常な銅代謝の生化学的マーカーとして使用することができる。
細胞銅放出の決定方法は、当該分野で周知である。古典的には、放射性標識銅の放出を、単離された細胞(単離された線維芽細胞またはリンパ芽球細胞など)(メンケス病またはOHSを有する個体由来の細胞など)を利用したパルス・チェイス実験で測定する。例えば、La Fontaineら,J.Biol.Chem.273:31375−31380,1998;Gokaら,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 73:604−606,1976を参照のこと。いくつかの例では、細胞(線維芽細胞またはリンパ芽球細胞など)を、放射性同位体銅(64Cuまたは67Cu銅など)とインキュベートし、細胞に銅を取り込ませる。細胞による銅の取り込みを、細胞内の放射性同位体の測定(シンチレーションカウンティングなど)によって決定することができる。細胞内銅が細胞外銅と平衡状態になったら、銅放出(一定期間の細胞からの銅の喪失など)を測定することができる。他の例では、細胞を標準培地中で培養し、単離された細胞内の総細胞内銅を、例えば、原子吸光分析によって測定する。細胞銅放出はまた、細胞の銅保持に反映され得る。銅保持は、放射性同位体銅を欠く培地中で一定期間培養後の細胞(例えば、放射性同位体銅で標識された細胞)内に残存する銅の量である。
実施例1
コドン最適化された小型ATP7A
本実施例は、コドン最適化された小型ATP7AcDNAの構築について記載する。
コドン最適化された小型ATP7A配列を、Codon Optimizationソフトウェア(Integrated DNA Technologies,idtdna.com/CodonOptで利用可能)を使用して未変性小型ATP7A配列(配列番号3)から生成した。特異的配列を選択するために使用した基準は、低複雑性、コドン適合、コドン使用頻度パターン、およびコドンコンテクストを含んでいた。配列番号1の配列を、ベクターの構築およびさらなる実験のために選択した。
実施例2
コドン最適化された小型ATP7A AAVの産生
本実施例は、コドン最適化された小型ATP7AcDNAを含むAAVの構築およびHEK293T細胞における発現について記載する。
rs−ATP7Aのコドン最適化されたバージョン(co.rsATP7A;配列番号1)を合成し、CMV/CBAプロモーター/エンハンサーエレメントを含むAAV9ベクターにクローン化した(図3)。トリプル−トランスフェクション法を使用して、高力価AAV9を産生した。本方法は、以下の3つのプラスミドを使用してHEK293T細胞を一過性にトランスフェクトする必要があった:内部末端反復(internal terminal repeat)(ITR)に隣接した導入遺伝子+プロモーターをコードするプラスミド、AAVのrep遺伝子およびcap遺伝子をコードするプラスミド、ならびにアデノウイルスタンパク質機能を提供するヘルパープラスミド。動物研究前に、CHO細胞およびHEK293T細胞内でのco.rsATP7Aの発現を評価した。図4に示すように、pTR−CAG−rsATP7AでのHEK293T細胞のトランスフェクションにより、低量であるが検出可能な量のrsATP7Aタンパク質が得られた(レーン2、ローディングした総タンパク質25μg)。対照的に、コドン最適化されたバージョンでのトランスフェクション(pTR−CAG−co−rsATP7A)により、未変性rsATPA構築物でのトランスフェクション(レーン2および4との比較)より遺伝子発現が約40倍高かった(レーン3、ローディングした総タンパク質1.25μg、レーン4、ローディングした総タンパク質25μg)。
実施例3
co−rsATP7Aはメンケス病マウスモデルの生存率を向上させる
本実施例は、ヒスチジン酸銅と組み合わせたAAV9co−rsATP7Aで処置した場合のメンケス病マウスモデルの生存率について記載する。
実施例2に記載のAAV9co−rsATP7Aを、脳室内注射によってC57BL/6−Atp7amo−brマウス(mo−brマウス)に投与した。2日齢のマウスの両側に、1.6×10vgを含む5μlの乳酸加リンゲル液を注射した。数匹のマウスには、出生後の最初の1週間(5μg、d4〜6)に皮下注射によってヒスチジン酸銅(15μg)でも処置した。AAV9co−rsATP7Aとヒスチジン酸銅との組み合わせで処置したマウスのうちの約70%が、少なくとも100日間生存した(図5)。対照的に、AAV9のみで処置したマウスおよび無処置のマウスは20日間まで生存せず、ヒスチジン酸銅で処置したマウスは約28日を超えて生存しなかった(図5)。
mo−brマウスにおける有効性について異なるAAV血清型も試験した。離乳まで生存しなかった無処置マウスと比較して、全てのマウスで生存率が増加した(図6)。AAV9co−rsATP7Aは最高の有効性を示し、処置マウスのうち100%が離乳まで生存し、70%が長期間生存した(図6)。
実施例4
メンケス病マウスモデルにおけるコドン最適化された小型ATP7Aの評価
本実施例は、メンケス病モデルマウスにおけるコドン最適化された小型ATP7A AAVの有効性の試験について記載する。
実施例2に記載のAAVを、脳室内注射によってC57BL/6−Atp7amo−brマウス(mo−brマウス)に投与する。2日齢のマウスの両側に、特定用量のウイルス粒子(表1の用量など)を含む2μlの乳酸加リンゲル液を注射する。数匹のマウスには、出生後の最初の1週間に皮下注射(総用量15μg)によってヒスチジン酸銅でも処置する。無処置mo−brマウスが離乳前に死亡したので、ほとんどの場合に野生型マウスを対照として使用する。
Figure 0006854286
神経行動学的試験(ワイヤハング試験、ロータロッド試験、および/または歩行分析)を、AAV処置mo−brマウス、AAV+銅処置mo−brマウス、および野生型マウスにおいて約25日齢から行う。ワイヤハング試験では、柔らかい表面から約50cm上方のワイヤケージラック上にマウスを配置する。ラックを逆さにし、マウスがラックからぶら下がることができる時間の長さを測定する(最大60秒間)。マウスが全60秒間を完了できない場合、試験をセッションあたり3回まで繰り返すことができる(試験間に1分間の休憩)。
ロータロッド試験では、マウスを直径3.5cmのロッド上に配置する。ロッドを4r.p.m.で回転させ、マウスがロッド上に留まった時間の長さを測定する(最大60秒間)。マウスが全60秒間を完了できない場合、試験をセッションあたり3回まで繰り返すことができる(試験間に1分間の休憩)。試験実施前にマウスを4日間連続して(21〜24日齢)ロッドに馴化させる。
適切な統計解析を使用して、臨床生化学的、および/または病理学的転帰の方法について野生型群、AAV処置群、偽処置群間で統計的有意差が存在するかどうかを決定する。試験は、クラスカル・ワリスノンパラメトリック一元配置分散分析を含み得る。さらなる試験(スチューデントt検定またはウィルコクソンの符号付き順位解析など)も、必要に応じて、対比較のために使用することができる。
無処置mo−brマウスは離乳まで生存しないので、処置マウスの生存はAAV処置またはAAV+銅処置の有効性の1つの指標である。生存している処置mo−brマウスが野生型マウスと比較して運動機能または神経学的機能(例えば、バランスおよび/または協調)が少なくとも部分的に低下する可能性があることが予想される。しかし、いくつかの例では、生存している処置mo−brマウスは、非罹患同腹子と比較して神経学的欠損はほとんど認められないか、全く認められない。
実施例5
AAV処置マウスの神経病理学および生化学
本実施例は、メンケス病マウスモデルにおけるコドン最適化された小型ATP7A AAVで処置したマウスの神経病理学および生化学について記載する。
マウスを、実施例3および4に記載のように処置する。いくつかの例では、無処置mo−brマウスを、早期の時点での比較のために使用する。神経病理学を、ヘマトキシリンおよびエオシン(H&E)染色、免疫組織化学、および/または電子顕微鏡法によって、脳切片について評価する。いくつかの例では、H&E染色した切片において海馬ニューロン死および/またはプルキンエ細胞数をスコア化する。処置有効性(AAVまたはAAV+銅)を、無処置mo−brマウス(例えば、12日齢)と比較したプルキンエ細胞の細胞死の減少および/または細胞数の増加によって示すことができ、いくつかの例では、野生型マウスと比較可能であり得る。他の例では、髄鞘形成を、例えば、ルクソールファーストブルー染色によって評価する。野生型マウスで認められる髄鞘形成レベルに類似の処置mo−brマウスの髄鞘形成レベル(例えば、脳梁内)は、処置有効性の指標である。
処置mo−brマウス、無処置mo−brマウス、および/または野生型マウスにおいて、脳神経化学も評価する。例えば、Lennら(Mol.Genet.Metab.91:30−36,2007)に記載のように、脳銅レベルを、黒鉛炉原子吸光によって測定し、誘導結合プラズマ質量分析によって確認する。ジヒドロキシフェニル酢酸(DOPAC)およびジヒドロキシフェニルグリコール(DHPG)の脳内濃度を、5〜10倍体積の0.4Nの0.1%EDTA含有過塩素酸中でホモジナイズした脳サンプル上清中の電気化学的検出を使用した高速液体クロマトグラフィによって決定する。いくつかの例では、野生型の少なくとも約50〜75%の脳内銅量および/または無処置mo−brマウスと比較したDOPAC:DHPG比の低下は、処置の効果の指標である。
例えば、Prohaska(J.Nutr.121:355−363,1991)に記載のように、処置マウスおよび野生型マウスにおける銅依存性酵素(Cu/Znスーパーオキシドジムスターゼ(SOD1)またはシトクロムcオキシダーゼ(CCO)など)の活性を決定することもできる。いくつかの例では、CCO活性は、無処置mo−brマウスと比較して、処置mo−brマウスにおいて増加する。
実施例6
げっ歯類における用量設定毒性研究
本実施例は、メンケス病マウスモデルおよび成体ラットにおけるAAV9co−rsATP7Aの毒性研究の例について記載する。
前臨床安全性評価の初期構成要素は、用量設定概念実証(POC)研究において離乳まで生存するmo−brマウスに注目する。これらの研究は、さらなる配列(タグまたはマーカー遺伝子など)が組み込まれていないco−rsATP7Aを含む研究グレードのrAAV9ベクターを使用する。毒性学構成要素は、1、3、および6月齢で群あたり3種のマウス(rAAV処置変異体生存マウス、rAAV処置野生型、および無処置野生型)における用量あたりの組織病理学的評価に注目する。免疫組織化学による脳内炎症応答の評価は、グリア線維酸性タンパク質(GFAP)、CD−4、CD−8、およびイソレクチンB4に対する抗体での染色を含む。脳内および末梢器官(肝臓、腎臓、肺、心臓、および脾臓が含まれる)中のウイルスゲノムコピーを決定してCNSからのウイルス回避を評価する。
rAAV遺伝子療法の安全性および有効性を評価するための大型のメンケス病動物モデルは知られていない。したがって、野生型成体雄ラット(標的疾患がX連鎖劣性形質であるため)において12ヶ月間の用量設定毒性研究を行う。安全性評価のこの構成要素およびその後の構成要素のために、臨床グレードのrAAV材料を使用する。事前の研究グレードのrAAVで使用したco−rsATP7A構築物の全ての必須構成要素が保持され、いかなるレポーター遺伝子タグ(例えば、血球凝集素)も切除されている。新規の構築物全体を配列決定する。rAAV9−co−rsATP7AのためのGMPプロセスと同程度の材料を、少なくとも最初は、UPenn Clinical Vector Core LaboratoryまたはVoyager Therapeutics AAV Vector Production Facilityから入手する。
指定用量のrAAV9co−rsATP7Aを、ICVカテーテル留置後に成体雄スプレーグ・ドーリーラットの左側脳室に投与する。安全評価は、臨床所見、体重、日常的な血液検査、免疫応答、肉眼での器官病理学、および組織病理学を含む。ベースラインならびにベクター投与の30、90、180、および360日後、全血球算定(CBC)および血清化学を得る。AAVキャプシドおよびATP7A導入遺伝子に対する血清およびCSF中和抗体ならびに処置前および処置後のT細胞応答を、十分に確立された方法を使用して定量する(例えば、Martinoら,Methods Mol.Biol.807:259−272,2011)。CSFを、血液による汚染のリスクを最小にする方法を使用した鎮静下での大槽サンプリングによって得る(Peggら,J.Neurosci.Methods 187:8−12,2010)。ラットをピークのベクター検出の予測時(1週間)およびその後の時点(1、3、6、および12ヶ月)で屠殺して、ベクターの組織クリアランスを評価する。脳、肝臓、腎臓、肺、心臓、脾臓、および生殖腺を、組織病理学について分析し、定量的PCRを使用してベクター配列について組織を分析する(組織あたり最小で3サンプル)。各組織の1サンプルは、qPCRの品質管理として既知量のベクターゲノムで対照DNAをスパイクしているであろう。各時点で群(AAV処置群、偽処置群、無処置群)あたり6匹のラットを分析する。
ラット毒性研究では、CBCの統計的評価および血清化学の結果は、因子としての処置群(AAV処置群、偽処置群、無処置群)および共変量としての時間を使用したANOVAを使用するであろう。従属変数が20超であるので、P<0.01を使用して、帰無仮説が不正確に棄却される見込みを最小にするための処置群と対照群との間の統計的有意差を確立するであろう。
実施例7
非ヒト霊長類における毒性研究
本実施例は、非ヒト霊長類におけるAAV9co−rsATP7Aの毒性の評価のための研究について記載する。
雄非ヒト霊長類(NHP)におけるrAAV9−co−rsATP7Aの安全性、生体内分布、免疫原性、および潜在的遺伝毒性を評価する。この相では、げっ歯類で安全であると以前に判断された最高用量を、推定されたNHP脳サイズおよびCSF体積に基づいてスケールアップする。この調整された用量を、脳室内カテーテル留置のMRIガイド下アプローチを使用して、幼若(4歳未満)雄アカゲザルの左側脳室に投与する(Salegioら,Adv.Drug Deliv.Rev.64:598−604,2012)。ベースライン(手術の2週間未満前)ならびにウイルス投与から3、7、15、30、60、90、180、および360日後に評価する。安全性エンドポイントは、体温、生命徴候、および体重を含む。日常的な血液学および哺乳動物の化学パネルを分析し、AAVキャプシドおよびATP7A導入遺伝子に対する血清およびCSF中和抗体、ならびにT細胞応答を定量する。CSF回収のための腰椎穿刺を、鎮静下にてベースラインならびに30、90、180、および360の時点で行う。ベースラインおよび処置後に、ビデオテープに録画して正常な行動および同定可能な異常行動を評価および定量することによって神経行動学的評価も実行する。
剖検時に、ベクター注入動物および偽処置対照動物由来の全NHP脳、ならびに日常的な組織学のための肝臓、肺、腎臓、心臓、精巣、脾臓、および二頭筋のサンプルを得る。要件を満たした神経病理学者が、盲検条件下でニューロン死、軸索変性、および異常な膠細胞反応性の証拠について、rAAV9co−rsATP7A処置したNHP脳を具体的に評価する。屠殺時に切開した大脳皮質、小脳、および脈絡叢ならびに末梢組織中のベクターDNAの分布を、GLP様条件下での定量的PCRによって決定する。線形増幅媒介(linear amplification−mediated)(LAM)−PCRを実施して、脳および肝臓内のウイルス宿主ゲノム組み込みについて評価する(Nowrouziら,Mol.Ther.20:1177−1186,2012)。
NHPデータの統計解析(一般的評価、CBC、血液化学)のために、反復した尺度として時間とともに混合モデル分析を使用する。全ての従属変数について、群(AAV処置群、偽処置群、無処置群)および時間の主効果、ならびに群と時間との相互作用を評価した。P<0.01の群の主効果は、群間の相違が存在しない帰無仮説の棄却として採用される。ラット分析(実施例6)と同様に、複数の従属変数が存在するので、有意性について必要なP値より低い値を使用する。脳組織病理学に及ぼす処置の効果を評価するために、カイ二乗検定を使用して、目的の組織病理学的特徴を有する群および持たない群あたりの動物数を比較する。非ヒト霊長類の行動に及ぼす処置の影響を評価するために、短期効果および長期効果について個別に分析してAAV処置群における効果が認められる可能性を増大させる。両分析は、タイプIII平方和を使用した一般線形モデル手順を使用する。
実施例8
被験体におけるATP7A関連銅輸送障害の処置
本実施例は、ATP7A関連銅輸送障害の処置のためのコドン最適化された小型ATP7AcDNAを含むAAVベクターの臨床的使用方法の例について記載する。しかし、当業者は、これらの特定の方法から逸脱した方法を使用してATP7A関連銅輸送障害を有する被験体を首尾よく処置することもできると認識するであろう。
ATP7A関連銅輸送障害(メンケス病またはOHSなど)と診断された患者を、処置のために選択する。患者に、治療有効量の、コドン最適化された配列由来の小型ATP7Aを発現する組換えAAV(本明細書中に開示の配列番号1を含む組換えAAV9など)を投与する。組換えAAVを、脳内(例えば、脳の側脳室)、髄腔内(例えば、脳脊髄液)、または静脈内に投与することができる。医師は、適切な治療用量を選択することができる。いくつかの場合、治療有効用量は、1×1010〜1×1014ウイルスゲノム(vg)/kg(約1×1012〜1×1013vg/kgなど)の範囲である。例えば、髄腔内開始用量(低用量)は、1.2×1012vg/kg体重であり得、さらなる可能な用量には、4.0×1012vg/kg(中用量)(低用量より0.5log単位高い用量を示す)および1.3×1013vg/kg(高用量、中用量より0.5log単位高い)が含まれ、全て脳脊髄液に髄腔内投与する。ほとんどの場合、患者に単回用量を投与するが、複数回用量も投与することができる。被験体を経時的に(例えば、2ヶ月間〜5年間、またはより長期)モニタリングして(例えば、被験体における血清銅レベル、CSF神経化学レベル、脳髄鞘形成(例えば、磁気共鳴画像法によって決定する)、および/または神経発達の進行(粗大運動、言語、微細運動適応、および個人的−社会的神経発達など)のモニタリングによる)、処置の効果を決定することができる。
開示の原理を適用することができる多数の可能な実施形態を考慮して、説明した実施形態は例示のみを目的とし、発明の範囲を制限すると捉えるべきではないと認識すべきである。むしろ、本発明の範囲は、以下の特許請求の範囲によって定義される。したがって、本発明者らは、本発明はその全てがこれらの特許請求の範囲の範囲および意図に含まれることを主張する。

Claims (34)

  1. 配列番号1の核酸配列を含む小型P型ATPアーゼ銅輸送ATPアーゼ1(ATP7A)タンパク質をコードする、単離され、コドン最適化された核酸分子。
  2. 前記コドン最適化された核酸分子が、配列番号2のアミノ酸配列を含むか、配列番号2のアミノ酸配列からなるATP7Aタンパク質をコードする、請求項に記載の単離された核酸分子。
  3. 配列番号1の核酸配列を含む小型P型ATPアーゼ銅輸送ATPアーゼ1(ATP7A)タンパク質をコードする単離され、コドン最適化された核酸分子を含むベクター。
  4. 前記コドン最適化された核酸が、配列番号2のアミノ酸配列を含むか、配列番号2のアミノ酸配列からなるATP7Aタンパク質をコードする、請求項に記載のベクター。
  5. 前記コドン最適化された核酸分子が、プロモーターに作動可能に連結されている、請求項3または4に記載のベクター。
  6. 前記ベクターがアデノ随伴ウイルス(AAV)ベクターである、請求項のいずれか1項に記載のベクター。
  7. 前記AAVベクターが、AAV血清型9(AAV9)ベクターまたはAAV血清型5(AAV5)ベクターである、請求項に記載のベクター。
  8. 請求項1または請求項2に記載の核酸分子または請求項のいずれか1項に記載のベクターを含む単離された宿主細胞。
  9. 請求項1または2に記載の核酸分子または請求項のいずれか1項に記載のベクターを含むウイルス。
  10. 請求項のいずれか1項に記載のベクターまたは請求項に記載のウイルスおよび薬学的に許容され得るキャリアを含む組成物。
  11. 脳内注射、髄腔内注射、または静脈内注射のために処方された、請求項1に記載の組成物。
  12. P型ATPアーゼ銅輸送ATPアーゼ1(ATP7A)関連銅輸送障害を有する被験体を処置するための組成物であって、前記組成物は、プロモーターに作動可能に連結された、配列番号1の核酸配列を含む小型P型ATPアーゼ銅輸送ATPアーゼ1(ATP7A)タンパク質をコードする単離され、コドン最適化された核酸分子を含むベクターまたはウイルス;および薬学的に許容され得るキャリアを含み、有効量の前記組成物が投与されることを特徴とする、組成物。
  13. 前記ベクターまたはウイルスが、アデノ随伴ウイルス(AAV)ベクターである、請求項1に記載の組成物。
  14. 前記AAVベクターまたはウイルスが、AAV血清型9(AAV9)ベクターもしくはウイルスまたはAAV血清型5(AAV5)ベクターもしくはウイルスである、請求項1に記載の組成物。
  15. 前記組成物が、髄腔内、脳内、または静脈内に投与されることを特徴とする、請求項1〜1のいずれか1項に記載の組成物。
  16. 単回用量の前記組成物が投与されることを特徴とする、請求項1〜1のいずれか1項に記載の組成物。
  17. 複数回用量の前記組成物が投与されることを特徴とする、請求項1〜1のいずれか1項に記載の組成物。
  18. 前記APT7A関連銅輸送障害が、メンケス病、オクシピタル・ホーン症候群、またはATP7A関連遠位型運動ニューロパシーを含む、請求項117のいずれか1項に記載の組成物。
  19. 前記組成物が、前記被験体に銅と組み合わせて投与されることを特徴とする、請求項118のいずれか1項に記載の組成物。
  20. 前記銅が、塩化銅、グルコン酸銅、銅ヒスチジン、ヒスチジン酸銅、または硫酸銅である、請求項19に記載の組成物。
  21. 前記銅が、皮下、筋肉内、または静脈内に投与されることを特徴とする、請求項19または2に記載の組成物。
  22. メンケス病を有する被験体を処置するための組み合わせ物であって、
    前記組み合わせ物が、以下:
    (a)プロモーターに作動可能に連結された、配列番号1の核酸配列を含む小型P型ATPアーゼ銅輸送ATPアーゼ1(ATP7A)タンパク質をコードする単離され、コドン最適化された核酸分子を含むベクターまたはウイルス;および
    (b)薬学的に許容され得るキャリア
    を含む組成物と銅とを含み、
    ここで、前記組成物および前記銅が、逐次的に、実質的に同時に、または同時に前記被験体に投与されることを特徴とする、組み合わせ物。
  23. 前記ベクターまたはウイルスが、アデノ随伴ウイルス(AAV)ベクターまたはウイルスである、請求項2に記載の組み合わせ物。
  24. 前記AAVベクターまたはウイルスが、AAV血清型9(AAV9)ベクターもしくはウイルスまたはAAV血清型5(AAV5)ベクターもしくはウイルスである、請求項2に記載の組み合わせ物。
  25. 前記組成物を、髄腔内、脳内、または静脈内に投与する、請求項2〜2のいずれか1項に記載の組み合わせ物。
  26. 単回用量の前記組成物が投与されることを特徴とする、請求項2〜2のいずれか1項に記載の組み合わせ物。
  27. 複数回用量の前記組成物が投与されることを特徴とする、請求項2〜2のいずれか1項に記載の組み合わせ物。
  28. 複数回用量の前記銅が投与されることを特徴とする、請求項227のいずれか1項に記載の組み合わせ物。
  29. 前記銅が毎日投与されることを特徴とする、請求項28に記載の組み合わせ物。
  30. 前記銅が約3年間毎日投与されることを特徴とする、請求項29に記載の組み合わせ物。
  31. 前記被験体の年齢が12ヶ月未満である場合は前記銅が1日2回投与され、前記被験体の年齢が12ヶ月を超える場合は前記銅が1日1回投与されることを特徴とする、請求項3に記載の組み合わせ物。
  32. 前記銅が、塩化銅、グルコン酸銅、銅ヒスチジン、ヒスチジン酸銅、または硫酸銅である、請求項2〜3のいずれか1項に記載の組み合わせ物。
  33. 前記銅が非経口投与されることを特徴とする、請求項2〜3のいずれか1項に記載の組み合わせ物。
  34. 前記銅が、皮下、筋肉内、または静脈内に投与されることを特徴とする、請求項2〜3のいずれか1項に記載の組み合わせ物。
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