JP6850493B2 - 指細小動脈拡張能連続検査プログラム、指細小動脈拡張能連続検査装置および指細小動脈拡張能連続検査方法 - Google Patents

指細小動脈拡張能連続検査プログラム、指細小動脈拡張能連続検査装置および指細小動脈拡張能連続検査方法 Download PDF

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Description

本発明は、指動脈の細小血管における早期の動脈硬化の徴候を検査するのに好適な指細小動脈拡張能連続検査プログラム、指細小動脈拡張能連続検査装置および指細小動脈拡張能連続検査方法に関するものである。
近年、血管の内皮機能は動脈硬化の最早期に障害を生じるため、心血管疾患や糖尿病などの生活習慣病のプレクリニカル段階での診断に有望視されている。世界の臨床現場で用いられている最も標準的な検査法(内皮依存血流介在上腕動脈拡張検査:FMD法)は、前腕部を5分間駆血した後にその駆血を解除して反応性充血を惹起させる。そして、再灌流後のおよそ1分後に最大となる血流依存性拡張反応を超音波診断装置で計測し、上腕動脈の直径の最大増加率(%FMD)を測定している。
また、上記FMD法で査定される再灌流後の初期反応より遅い90秒後からの遅延反応を評価するものであって、指尖脈波を利用して反応性充血時の脈波振幅の増加(PAT比)を評価する、いわゆる末梢動脈トノメトリ検査(Endo−PAT法)がイスラエルで製品化され臨床応用が広まりつつある。
さらに、指尖脈波を利用するものとして、脈波ピーク値と脈波ベース値との差から血管内皮機能レベルを評価する評価手段、上腕の駆血前、及び血流再開された後の脈波の収縮期圧に占める反射波成分の割合(AI)から血管内皮機能レベルを評価する評価手段、及び加速度脈波の脈波特徴量として血管老化年齢指数(AG)を用いて血管内皮機能レベルを評価する評価手段等を有する血管内皮機能評価システムも提案されている(特許文献1)。
特開2011−189080号公報
しかしながら、全身の動脈硬化が細小血管から始まるという生理学上の学説に従えば、上腕動脈という大きな血管を評価対象としている上述のFMD法は、動脈硬化の徴候を最早期に捉えるには必ずしも適さない。また、血流依存性拡張反応の計測に必要な超音波診断装置が高価な上、その画像解析に主観が入り易く検者の熟練を要するという問題もある。
また、上述したEndo−PAT法は、指動脈の脈波が検査指血管の器質的スティフネス(もともとの硬さ)および検査時の血圧の両方に影響されることが明白であるにも関わらず、それらの影響は全く考慮されていないという問題がある。また、Endo−PAT法が評価する遅延反応(再灌流後90秒〜150秒における反応)と、上記FMD法が評価する初期反応(再灌流後30秒〜60秒における反応)とは相関性が低く、互いに独自の病態生理学的意義や臨床的意義を有することが定説となっている。
さらに、特許文献1に記載された発明においては、反射波も複合した脈波の波形を分析するものであり、反射にかかわる複雑な影響因子により規定されるため、その生理学的解釈が極めて難しいという問題がある。また、特許文献1では、指にかける外圧を駆血前の事前測定により決定した一定値を最適圧力として、検査中に変化させず固定している。このため、再灌流後の血圧が安静時に比べて大きく変化すると、安静時に事前決定した圧は最適圧力とは言えなくなるため、正しい評価を行うことができないという問題もある。
なお、上述した血管内皮機能により、反応性充血時には血管内皮細胞から発生する一酸化窒素の生理作用として血管の平滑筋が弛緩する。その結果、血管コンプライアンス(血管の柔らかさ)が増加するため、脈波振幅と血管全容積がともに増加する一方、血管抵抗が低下するため平均血圧は減少する。すなわち、反応性充血時には総合的な血行力学的反応が惹起されるが、上記FMD法では動脈容積だけを標的にしており、上記Endo−PAT法や上記特許文献1では脈波振幅だけを標的としているため、いずれも充血反応の一断面しか評価できていない。
そこで、本願発明者は、特願2014−539849号において、指動脈の血管拡張反応を示す指標(FCR比)として、反応性充血時の指細小動脈におけるコンプライアンスの増加を評価する発明を提案している(以下、「FCR法」という場合がある)。当該FCR法によれば、脈波振幅、血管全容積および血圧(脈圧と平均血圧)をすべて測定する点で総合的な血行力学的評価が可能である。
ただし、血圧は血管拡張に対する影響因子であり、反応性充血時における平均血圧の減少は、2次的に(圧依存性に)血管コンプライアンスを増加させうるものである。このため、FCR法では、当該平均血圧の影響度を評価して診断に利用するために、指カフによって指を締め付ける指クランプを実施して平均血圧と脈圧を測定している。
しかしながら、FCR法のうち、血管コンプライアンスの計算に必須な脈圧についてその実測値を用いる「原法」では、大型で高価な連続血圧計等が必要である。このため、試験・研究目的での導入は可能であるものの、一般の病院等に連続血圧計を導入するのは現実的には困難である。また、仮に連続血圧計を導入して測定したとしても台数に限りがあるし、1人あたりにかかる計測時間が長時間になるため、健康診断のように多人数の同時測定に対応することはできず、実用的ではない。
一方、FCR法のうち、脈圧の推定値を用いる「簡易法」では、上記指クランプによる1シーケンス中、血圧変動がないもの(脈圧の推定値は一定)と仮定している。このため、実際の血圧変動が小さい場合には、「原法」と同程度の精度でFCR比の算出が可能である。しかしながら、実際の血圧変動が大きい場合には、FCR比の算出値に誤差が発生するおそれがある。
本発明は、以上のような背景技術のもとでなされたものであって、血圧を測定することなく指動脈の細小血管における早期の動脈硬化の徴候を簡単かつ高精度に検査することができる指細小動脈拡張能連続検査プログラム、指細小動脈拡張能連続検査装置および指細小動脈拡張能連続検査方法を提供することを目的としている。
本発明に係る指細小動脈拡張能連続検査プログラムは、血圧を測定することなく指動脈の細小血管における早期の動脈硬化の徴候を簡単かつ高精度に検査するという課題を解決するために、指動脈の血管拡張反応を一心拍ごとに連続検査する指細小動脈拡張能連続検査プログラムであって、前記血管拡張反応を検査する検査指および前記血管拡張反応を基準化する統制指の各指について、駆血前の安静時に所定のシーケンスで圧迫したときの脈波データである安静時脈波を記憶する安静時脈波記憶部と、前記検査指または前記検査指側の腕を駆血した後の再灌流時において、前記各指を一定圧で圧迫し続けたときの脈波データである再灌流時脈波を記憶する再灌流時脈波記憶部と、前記安静時脈波および前記再灌流時脈波に基づいて、前記各指について、脈波の交流成分の振幅を当該脈波の直流成分の平均値で除算してなる規準化脈波容積(NPV)の自然対数であるNPV自然対数変換値(lnNPV)を一心拍ごとに算出するNPV算出部、および/または前記安静時脈波および前記再灌流時脈波に基づいて、前記各指について、指組織のみの吸光量を脈波の直流成分の平均値で除算した値の自然対数である血液容積(BV)を一心拍ごとに算出するBV算出部と、前記各指の安静時および再灌流時における前記NPV自然対数変換値(lnNPV)および/または前記各指の安静時および再灌流時における前記血液容積(BV)に基づいて、再灌流後の任意の心拍における前記血管拡張反応を表す血管拡張反応指標を算出する血管拡張反応指標算出部としてコンピュータを機能させるものである。また、本発明に係る指細小動脈拡張能連続検査装置は、上記各構成部を有するものである。
また、本発明に係る指細小動脈拡張能連続検査プログラムの一態様として、血管拡張反応指標の一つである規準化脈波容積指数(NPVI)を算出するという課題を解決するために、駆血前の安静時に所定のシーケンスで前記各指を圧迫する各カフのカフ圧を記憶するカフ圧データ記憶部としてコンピュータを機能させるとともに、前記血管拡張反応指標算出部は、下記(i)〜(iv)の処理部として機能してもよい。また、本発明に係る指細小動脈拡張能連続検査装置の一態様として、上記カフ圧データ記憶部を有しており、前記血管拡張反応指標算出部は、下記(i)〜(iv)の処理部として機能してもよい。
(i)前記安静時脈波に基づいて、安静時の各圧迫試行における前記規準化脈波容積(NPV)が最大時のカフ圧をそれぞれ特定し、前記各指について、特定した前記各カフ圧の平均値または中央値を駆血前の安静時平均血圧として推定する安静時平均血圧推定部;
(ii)駆血前安静時のカフ圧と駆血前安静時の前記NPV自然対数変換値(lnNPV)とのデータ対を回帰分析し、前記各指について、前記カフ圧と前記NPV自然対数変換値(lnNPV)との回帰直線であるNPV線を算出するNPV線算出部;
(iii)前記各指のNPV線に基づいて、前記各指について、前記カフ圧が前記安静時平均血圧の所定割合であるときの前記NPV自然対数変換値(lnNPV)を駆血前安静時のNPV推定値として算出するNPV推定値算出部;
(iv)下記式(1)により、前記血管拡張反応指標の一つである規準化脈波容積指数(NPVI)を算出するNPVI算出部;
NPVI=NT−NC …式(1)
ただし、各記号は以下を表す。
NPVI:再灌流後第i拍目の規準化脈波容積指数(NPVI)
NT=NPVt−NPVt
NC=NPVc−NPVc
NPVt:検査指側の再灌流後第i拍目におけるNPV自然対数変換値(lnNPV)
NPVt:検査指側の駆血前安静時のNPV推定値
NPVc:統制指側の再灌流後第i拍目におけるNPV自然対数変換値(lnNPV)
NPVc:統制指側の駆血前安静時のNPV推定値
また、本発明に係る指細小動脈拡張能連続検査プログラムの一態様として、血管拡張反応指標の一つである血液容積指数(BVI)を算出するという課題を解決するために、駆血前の安静時に所定のシーケンスで前記各指を圧迫する各カフのカフ圧を記憶するカフ圧データ記憶部としてコンピュータを機能させるとともに、前記血管拡張反応指標算出部は、下記(i),(v)〜(vii)の処理部として機能してもよい。また、本発明に係る指細小動脈拡張能連続検査装置の一態様として、前記カフ圧データ記憶部を有しており、前記血管拡張反応指標算出部は、下記(i),(v)〜(vii)の処理部として機能してもよい。
(i)前記安静時脈波に基づいて、安静時の各圧迫試行における前記規準化脈波容積(NPV)が最大時のカフ圧をそれぞれ特定し、前記各指について、特定した前記各カフ圧の平均値または中央値を駆血前の安静時平均血圧として推定する安静時平均血圧推定部;
(v)駆血前安静時のカフ圧と駆血前安静時の前記血液容積(BV)とのデータ対を回帰分析し、前記各指について、前記カフ圧と前記血液容積(BV)との回帰直線であるBV線を算出するBV線算出部;
(vi)前記各指のBV線に基づいて、前記各指について、前記カフ圧が安静時平均血圧の所定割合であるときの前記血液容積(BV)を駆血前安静時のBV推定値として算出するBV推定値算出部;
(vii)下記式(2)により、前記血管拡張反応指標の一つである血液容積指数(BVI)を算出するBVI算出部;
BVI=BT−BC…式(2)
ただし、各記号は以下を表す。
BVI:再灌流後第i拍目の血液容積指数(BVI)
BT=BVt−BVt
BC=BVc−BVc
BVt:検査指側の再灌流後第i拍目における血液容積(BV)
BVt:検査指側の駆血前安静時のBV推定値
BVc:統制指側の再灌流後第i拍目における血液容積(BV)
BVc:統制指側の駆血前安静時のBV推定値
さらに、本発明に係る指細小動脈拡張能連続検査プログラムおよび指細小動脈拡張能連続検査装置の一態様として、血管拡張反応指標の一つである拡張距離指数(DI)を算出するという課題を解決するために、前記血管拡張反応指標算出部は、下記(viii),(ix)の処理部として機能してもよい。
(viii)駆血前安静時の前記血液容積(BV)と駆血前安静時の前記NPV自然対数変換値(lnNPV)とのデータ対を回帰分析し、前記各指について、前記血液容積(BV)と前記NPV自然対数変換値(lnNPV)との回帰直線であるBN線を算出するBN線算出部;
(ix)下記式(3)により、前記血管拡張反応指標の一つである拡張距離指数(DI)を算出するDI算出部;
DI=DT*SGNT−DC*SGNC …式(3)
ただし、各記号は以下を表す。
DI:再灌流後第i拍目の拡張距離指数(DI)
DT:検査指側の再灌流後第i拍目におけるデータ点(BV,lnNPV)から駆血前安静時の検査指のBN線に下ろした垂線距離
DC:統制指側の再灌流後第i拍目におけるデータ点(BV,lnNPV)から駆血前安静時の統制指のBN線に下ろした垂線距離
SGNT:検査指側の再灌流後第i拍目におけるデータ点(BV,lnNPV)が検査指のBN線に対して右上に位置するとき1(拡張)となり、左下に位置するとき−1(収縮)となる検査指側拡張・収縮判別値
SGNC:統制指側の再灌流後第i拍目におけるデータ点(BV,lnNPV)が統制指のBN線に対して右上に位置するとき1(拡張)となり、左下に位置するとき−1(収縮)となる統制指側拡張・収縮判別値
また、本発明に係る指細小動脈拡張能連続検査プログラムおよび指細小動脈拡張能連続検査装置の一態様として、血管拡張反応指標の一つである単純距離指数(SI)を算出するという課題を解決するために、前記血管拡張反応指標算出部は、下記(x)の処理部として機能してもよい。
(x)下記式(4)により、前記血管拡張反応指標の一つである単純距離指数(SI)を算出するSI算出部;
SI=ST*SGNS …式(4)
ただし、各記号は以下を表す。
SI:再灌流後第i拍目の単純距離指数(SI)
ST:検査指側の再灌流後第i拍目におけるデータ点(BV,lnNPV)と統制指側の再灌流後第i拍目におけるデータ点(BV,lnNPV)とを結ぶ直線距離
SGNS:再灌流後第i拍目の前記拡張距離指数(DI)が正の値のとき1となり、負の値のとき−1となる正負判別値
また、本発明に係る指細小動脈拡張能連続検査プログラムおよび指細小動脈拡張能連続検査装置の一態様として、血管拡張反応指標の一つであるNB反応性指数(NBI)を算出するという課題を解決するために、前記血管拡張反応指標算出部は、下記(xi)の処理部として機能してもよい。
(xi)下記式(5a)または下記式(5b)により、前記血管拡張反応指標の一つであるNB反応性指数(NBI)を算出するNBI算出部;
NBIDi=NPVI−BVI …式(5a)
NBIRi=NPVI/BVI+k …式(5b)
ただし、各記号は以下を表す。
NBIDi:再灌流後第i拍目のNPVI対BVI差指数(NBI
NBIRi:再灌流後第i拍目のNPVI対BVI比指数(NBI
NPVI:再灌流後第i拍目の規準化脈波容積指数(NPVI)
BVI:再灌流後第i拍目の血液容積指数(BVI)
k:実験により求めた定数
また、本発明に係る指細小動脈拡張能連続検査方法は、血圧を測定することなく指動脈の細小血管における早期の動脈硬化の徴候を簡単かつ高精度に検査するという課題を解決するために、指動脈の血管拡張反応を一心拍ごとに連続検査する指細小動脈拡張能連続検査方法であって、前記血管拡張反応を検査する検査指および前記血管拡張反応を基準化する統制指の各指について、駆血前の安静時に所定のシーケンスで圧迫したときの脈波データである安静時脈波を記憶する安静時脈波記憶ステップと、前記検査指または前記検査指側の腕を駆血した後の再灌流時において、前記各指を一定圧で圧迫し続けたときの脈波データである再灌流時脈波を記憶する再灌流時脈波記憶ステップと、前記安静時脈波および前記再灌流時脈波に基づいて、前記各指について、脈波の交流成分の振幅を当該脈波の直流成分の平均値で除算してなる規準化脈波容積(NPV)の自然対数であるNPV自然対数変換値(lnNPV)を一心拍ごとに算出するNPV算出ステップ、および/または前記安静時脈波および前記再灌流時脈波に基づいて、前記各指について、指組織のみの吸光量を脈波の直流成分の平均値で除算した値の自然対数である血液容積(BV)を一心拍ごとに算出するBV算出ステップと、前記各指の安静時および再灌流時における前記NPV自然対数変換値(lnNPV)および/または前記各指の安静時および再灌流時における前記血液容積(BV)に基づいて、再灌流後の任意の心拍における前記血管拡張反応を表す血管拡張反応指標を算出する血管拡張反応指標算出ステップとを有する。
また、本発明に係る指細小動脈拡張能連続検査方法の一態様として、血管拡張反応指標の一つである規準化脈波容積指数(NPVI)を算出するという課題を解決するために、駆血前の安静時に所定のシーケンスで前記各指を圧迫する各カフのカフ圧を記憶するカフ圧データ記憶ステップを有しており、前記血管拡張反応指標算出ステップは、下記(i)〜(iv)のサブステップを有していてもよい。
(i)前記安静時脈波に基づいて、安静時の各圧迫試行における前記規準化脈波容積(NPV)が最大時のカフ圧をそれぞれ特定し、前記各指について、特定した前記各カフ圧の平均値または中央値を駆血前の安静時平均血圧として推定する安静時平均血圧推定ステップ;
(ii)駆血前安静時のカフ圧と駆血前安静時の前記NPV自然対数変換値(lnNPV)とのデータ対を回帰分析し、前記各指について、前記カフ圧と前記NPV自然対数変換値(lnNPV)との回帰直線であるNPV線を算出するNPV線算出ステップ;
(iii)前記各指のNPV線に基づいて、前記各指について、前記カフ圧が前記安静時平均血圧の所定割合であるときの前記NPV自然対数変換値(lnNPV)を駆血前安静時のNPV推定値として算出するNPV推定値算出ステップ;
(iv)下記式(1)により、前記血管拡張反応指標の一つである規準化脈波容積指数(NPVI)を算出するNPVI算出ステップ;
NPVI=NT−NC …式(1)
ただし、各記号は以下を表す。
NPVI:再灌流後第i拍目の規準化脈波容積指数(NPVI)
NT=NPVt−NPVt
NC=NPVc−NPVc
NPVt:検査指側の再灌流後第i拍目におけるNPV自然対数変換値(lnNPV)
NPVt:検査指側の駆血前安静時のNPV推定値
NPVc:統制指側の再灌流後第i拍目におけるNPV自然対数変換値(lnNPV)
NPVc:統制指側の駆血前安静時のNPV推定値
また、本発明に係る指細小動脈拡張能連続検査方法の一態様として、血管拡張反応指標の一つである血液容積指数(BVI)を算出するという課題を解決するために、駆血前の安静時に所定のシーケンスで前記各指を圧迫する各カフのカフ圧を記憶するカフ圧データ記憶ステップを有しており、前記血管拡張反応指標算出ステップは、下記(i),(v)〜(vii)のサブステップを有していてもよい。
(i)前記安静時脈波に基づいて、安静時の各圧迫試行における前記規準化脈波容積(NPV)が最大時のカフ圧をそれぞれ特定し、前記各指について、特定した前記各カフ圧の平均値または中央値を駆血前の安静時平均血圧として推定する安静時平均血圧推定ステップ;
(v)駆血前安静時のカフ圧と駆血前安静時の前記血液容積(BV)とのデータ対を回帰分析し、前記各指について、前記カフ圧と前記血液容積(BV)との回帰直線であるBV線を算出するBV線算出ステップ;
(vi)前記各指のBV線に基づいて、前記各指について、前記カフ圧が安静時平均血圧の所定割合であるときの前記血液容積(BV)を駆血前安静時のBV推定値として算出するBV推定値算出ステップ;
(vii)下記式(2)により、前記血管拡張反応指標の一つである血液容積指数(BVI)を算出するBVI算出ステップ;
BVI=BT−BC…式(2)
ただし、各記号は以下を表す。
BVI:再灌流後第i拍目の血液容積指数(BVI)
BT=BVt−BVt
BC=BVc−BVc
BVt:検査指側の再灌流後第i拍目における血液容積(BV)
BVt:検査指側の駆血前安静時のBV推定値
BVc:統制指側の再灌流後第i拍目における血液容積(BV)
BVc:統制指側の駆血前安静時のBV推定値
さらに、本発明に係る指細小動脈拡張能連続検査方法の一態様として、血管拡張反応指標の一つである拡張距離指数(DI)を算出するという課題を解決するために、前記血管拡張反応指標算出ステップは、下記(viii),(ix)のサブステップを有していてもよい。
(viii)駆血前安静時の前記血液容積(BV)と駆血前安静時の前記NPV自然対数変換値(lnNPV)とのデータ対を回帰分析し、前記各指について、前記血液容積(BV)と前記NPV自然対数変換値(lnNPV)との回帰直線であるBN線を算出するBN線算出ステップ;
(ix)下記式(3)により、前記血管拡張反応指標の一つである拡張距離指数(DI)を算出するDI算出ステップ;
DI=DT*SGNT−DC*SGNC …式(3)
ただし、各記号は以下を表す。
DI:再灌流後第i拍目の拡張距離指数(DI)
DT:検査指側の再灌流後第i拍目におけるデータ点(BV,lnNPV)から駆血前安静時の検査指のBN線に下ろした垂線距離
DC:統制指側の再灌流後第i拍目におけるデータ点(BV,lnNPV)から駆血前安静時の統制指のBN線に下ろした垂線距離
SGNT:検査指側の再灌流後第i拍目におけるデータ点(BV,lnNPV)が検査指のBN線に対して右上に位置するとき1(拡張)となり、左下に位置するとき−1(収縮)となる検査指側拡張・収縮判別値
SGNC:統制指側の再灌流後第i拍目におけるデータ点(BV,lnNPV)が統制指のBN線に対して右上に位置するとき1(拡張)となり、左下に位置するとき−1(収縮)となる統制指側拡張・収縮判別値
また、本発明に係る指細小動脈拡張能連続検査方法の一態様として、血管拡張反応指標の一つである単純距離指数(SI)を算出するという課題を解決するために、前記血管拡張反応指標算出ステップは、下記(x)のサブステップを有していてもよい。
(x)下記式(4)により、前記血管拡張反応指標の一つである単純距離指数(SI)を算出するSI算出ステップ;
SI=ST*SGNS …式(4)
ただし、各記号は以下を表す。
SI:再灌流後第i拍目の単純距離指数(SI)
ST:検査指側の再灌流後第i拍目におけるデータ点(BV,lnNPV)と統制指側の再灌流後第i拍目におけるデータ点(BV,lnNPV)とを結ぶ直線距離
SGNS:再灌流後第i拍目の前記拡張距離指数(DI)が正の値のとき1となり、負の値のとき−1となる正負判別値
また、本発明に係る指細小動脈拡張能連続検査方法の一態様として、血管拡張反応指標の一つであるNB反応性指数(NBI)を算出するという課題を解決するために、前記血管拡張反応指標算出ステップは、下記(xi)のサブステップを有してもよい。
(xi)下記式(5a)または下記式(5b)により、前記血管拡張反応指標の一つであるNB反応性指数(NBI)を算出するNBI算出ステップ;
NBIDi=NPVI−BVI …式(5a)
NBIRi=NPVI/BVI+k …式(5b)
ただし、各記号は以下を表す。
NBIDi:再灌流後第i拍目のNPVI対BVI差指数(NBI
NBIRi:再灌流後第i拍目のNPVI対BVI比指数(NBI
NPVI:再灌流後第i拍目の規準化脈波容積指数(NPVI)
BVI:再灌流後第i拍目の血液容積指数(BVI)
k:実験により求めた定数
また、本発明の一態様として、検査プロトコルにバリエーションを持たせるという課題を解決するために、前記検査指および前記統制指として使用する指は、両手における同じ指であるか、片手における異なる指であってもよい。
さらに、本発明の一態様として、血管拡張反応指標の算出誤差や脈波波形の変形を抑制するとともに、高いSN比を保持するという課題を解決するために、再灌流時のカフ圧である前記一定圧は、駆血前の安静時平均血圧の所定割合の値と同一であるか、または予め測定した上腕部の拡張期血圧に近い値であることが好ましい。
本発明によれば、血圧を測定することなく指動脈の細小血管における早期の動脈硬化の徴候を簡単かつ高精度に検査することができる。
本発明に係る指細小動脈拡張能連続検査装置および指細小動脈拡張能連続検査プログラムの一実施形態を示すブロック図である。 本実施形態において、駆血前の安静時におけるシーケンスにより圧迫試行した際の時間経過に対するカフ圧、NPVおよびBVの関係を示すグラフである。 本実施形態のランプ圧迫シーケンス法による指クランププロトコルを示す図である。 一定圧クランプA法および一定圧クランプB法による指クランププロトコルを示す図である。 本実施形態において、規準化脈波容積(NPV)および血液容積(BV)の算出に必要な計測理論を示す図である。 本発明に係る三種類の血管拡張反応指標の定義を説明するグラフである。 本発明に係る三種類の血管拡張反応指標と、従来の評価指標との比較を示す図である。 本発明に係る指細小動脈拡張能連続検査方法の一実施形態を示すフローチャートである。 血管拡張反応指標算出部が、規準化脈波容積指数(NPVI)を算出する場合のフローチャートである。 血管拡張反応指標算出部が、血液容積指数(BVI)を算出する場合のフローチャートである。 血管拡張反応指標算出部が、拡張距離指数(DI)を算出する場合のフローチャートである。 血管拡張反応指標算出部が、単純距離指数(SI)を算出する場合のフローチャートである。 血管拡張反応指標算出部が、NB反応性指数(NBI)を算出する場合のフローチャートである。 実施例1において、Endo−PAT法のFRHIと、本発明に係るNPVI、DIおよびSIの比較結果を示すグラフである。 実施例1において、FRHIとNPVIとの相関係数を算出した結果を示す表およびグラフである。 実施例1において、再還流後90〜150秒の区間における、健常青年群に対する糖尿病患者群の血管拡張能の低下を示すグラフである。 実施例1において、FRHIに対するDI、NPVIおよびSIの過小評価および過大評価を示すグラフである。 実施例2において、糖尿病患者群および前立腺がん患者群の血管拡張反応指標(NPVI、DIおよびSI)を示すグラフである。 実施例3におけるシミュレーションの前提条件を説明するグラフである。 実施例3において、血管拡張時におけるNPVI、DIおよびSIの感度を対比するシミュレーション結果を示すグラフである。 実施例4において、両手法(一定圧クランプA法)とEndo−PAT法の検査値の相関性を示すグラフである。 実施例5において、糖尿病患者群および前立腺がん患者群の一定圧クランプA法における血管拡張反応指標(NPVI,BVI,DI,SI)を示すグラフである。 実施例6において、血管拡張反応指標(NPVI,BVI,DI,SI,NBI,NBI)とストレス関連指標との相関関係を示す表である。 実施例9において、片手法(一定圧クランプB法)とEndo−PAT法の検査値の相関性を示すグラフである。
本発明に係る指細小動脈拡張能連続検査プログラム、指細小動脈拡張能連続検査装置および指細小動脈拡張能連続検査方法は、本願発明者が提案する、指動脈の細小血管における早期の動脈硬化の徴候を評価するための新たな指標である各種の血管拡張反応指標を算出するのに好適なものである。
まず、上述したFCR法において、血圧の測定とその統制を必要とするのは、平均血圧の変動が経壁圧(=平均血圧−カフ圧)を変動させ、経壁圧とコンプライアンスとの直線関係に影響するためである。そこで、本願発明者は、鋭意研究した結果、血液容積または血液量(BV)も経壁圧と直線関係をなす点を利用すれば、経壁圧とコンプライアンスとの関係を血液容積と後述する脈波振幅(規準化脈波容積:NPV)の自然対数であるNPV自然対数変換値(lnNPV)との関係で代用できることを見い出し、以下のように、血圧を用いることなく脈波だけで目的とする統制が可能となる本発明を完成させるに至った。
以下、本発明に係る指細小動脈拡張能連続検査プログラム、指細小動脈拡張能連続検査装置および指細小動脈拡張能連続検査方法の一実施形態について図面を用いて説明する。なお、本発明に係る指細小動脈拡張能連続検査とは、後述するとおり、腕または手指の基節部を一定時間駆血し、再還流した後に駆血部位から末梢側に生じる反応性充血の現象において、指動脈の血管拡張反応を一心拍ごとに連続検査するものである。
図1に示すように、本実施形態の指細小動脈拡張能連続検査装置1は、主として、指を圧迫するための指圧迫手段2と、脈波を検出するための脈波検出手段3と、本実施形態の指細小動脈拡張能連続検査プログラム1aや各種のデータを記憶する記憶手段4と、これら各構成手段を制御するとともに各種のデータを取得して演算処理を実行する演算処理手段5とから構成されている。そして、記憶手段4および演算処理手段5は、パーソナルコンピュータ等のコンピュータで構成されている。以下、各構成手段についてより詳細に説明する
指圧迫手段2は、被験者の指動脈を所望の圧力値で圧迫するものである。本実施形態において、指圧迫手段2は、指に装着されて空気圧によって指を圧迫する一対のカフ21,21と、これら各カフ21,21に空気を送り込む空気ポンプ22とを有している。
本実施形態において、各カフ21,21は、面ファスナー等により着脱可能に構成されており、血管拡張反応を検査する検査指、および血管拡張反応を基準化する統制指のそれぞれに装着されて指動脈を圧迫するようになっている。また、空気ポンプ22は、後述するカフ圧制御部51によって自動制御され、検査指および統制指のそれぞれを所定のシーケンスで圧迫するように、各カフ21,21に空気を送り込むようになっている。
なお、本発明に係る血管拡張反応は、交感神経の緊張や不整脈等の影響を受けやすい性質を有している。このため、当該影響を除去する目的で検査指と同時に統制指の脈波を測定し基準化するようになっている。また、本実施形態では、両手における同じ指の一方および他方をそれぞれ検査指および統制指としているが、この構成に限定されるものではなく、片手における異なる指をそれぞれ検査指および統制指としてもよい。
脈波検出手段3は、指動脈における容積変化を示す容積脈波を検出するものである。本実施形態において、脈波検出手段3は、光量を検出する光電式センサ31と、この光電式センサ31からの出力信号を増幅して脈波データとして出力する脈波アンプ32とを有している。なお、本実施形態では、脈波データとして、光電容積脈波データ(FPG)を検出しているが、これに限定されるものではない。
光電式センサ31は、指の爪に固定されるLED(Light Emitting Diode)等の発光部31aと、この発光部31aと対向する位置において指の腹側に配置されるフォトダイオード等の受光部31bとを備えており、発光部31aから発光されて指を透過した透過光量を受光部31bで検出する。また、脈波アンプ32は、増幅した脈波データを後述する脈波データ記憶部42へ出力するようになっている。
なお、本実施形態において、カフ21は受光部31bと一体化されており、当該受光部31bを指の腹に配置するとともに、発光部31aを指の爪の直下付近に固定した状態で指に巻き付け、面ファスナー等で留めることにより固定されるようになっている。このため、径の異なる複数サイズのカフ21を用意する必要がなく、一種類のカフ21で複数の被験者の指径に最適な装着が可能となる。また、発光部31aと受光部31bとが指に密着し、指圧迫の経過に伴う光路のずれが最小限に抑えられる。
記憶手段4は、各種のデータを記憶するとともに、演算処理手段5が演算処理を行う際のワーキングエリアとして機能するものである。本実施形態において、記憶手段4は、ハードディスク、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)、フラッシュメモリ等で構成されており、図1に示すように、本実施形態の指細小動脈拡張能連続検査プログラム1aを格納するプログラム記憶部41と、安静時脈波記憶部42と、再灌流時脈波記憶部43と、カフ圧データ記憶部44とを有している。
プログラム記憶部41には、本実施形態の指細小動脈拡張能連続検査プログラム1aがインストールされている。そして、指細小動脈拡張能連続検査プログラム1aが演算処理手段5によって実行されることにより、後述する各構成部としてコンピュータを機能させるようになっている。
なお、指細小動脈拡張能連続検査プログラム1aの利用形態は、上記構成に限られるものではない。例えば、CD−ROMやDVD−ROM等のように、コンピュータで読み取り可能な非一時的な記録媒体に指細小動脈拡張能連続検査プログラム1aを記憶させておき、当該記録媒体から直接読み出して実行してもよい。また、外部サーバ等からクラウドコンピューティング方式やASP(Application Service Provider)方式等で利用してもよい。
安静時脈波記憶部42は、駆血前の安静時において、脈波検出手段3により検出された脈波データを記憶するものである。本実施形態において、安静時脈波記憶部42は、検査指および統制指の各指について、駆血前の安静時に指圧迫手段2により所定のシーケンスで圧迫したときの脈波データである安静時脈波を記憶する。
再灌流時脈波記憶部43は、駆血後の再灌流時において、脈波検出手段3により検出された脈波データを記憶するものである。本実施形態において、再灌流時脈波記憶部43は、検査指側の腕を所定時間、所定の圧力で駆血した後の再灌流時において、検査指および統制指の各指を一定圧で圧迫し続けたときの脈波データである再灌流時脈波を記憶する。
なお、駆血前の安静時における前記シーケンスや、駆血後の再灌流時における前記一定圧については後述する。また、本実施形態では、両手における同じ指を検査指および統制指として使用しているため(両手法)、反応性充血を惹起するための駆血は、検査指側の上腕や前腕に対して行っている(腕駆血両手法)。しかしながら、両手法において、駆血する箇所は検査指側の腕に限定されるものではなく、検査指の基節部を駆血してもよい(指駆血両手法)。当該指駆血両手法では、駆血する検査指の末節部を検査部位とし、当該検査指とは反対側の手における同じ指の末節部を統制部位とする。これにより、統制部位に反応性充血が波及することがないため、高い信頼性と低侵襲性の両立が図られる。
また、駆血方法は、上述した両手法に限定されるものではなく、片手における異なる指を検査指および統制指として使用してもよい(片手法)。この片手法においては、検査指の基節部に対して駆血することとなる。また、統制指としては、検査指に惹起された反応性充血が波及しにくく、検査指と共通する交感神経の緊張によって影響を受ける指を選択することが好ましい。後述するとおり、第2指(人差し指)が検査指の場合、反応性充血が波及しにくいのは第1指(親指)、第4指(薬指)および第5指(小指)であるが、交感神経による反応の共通性が高いのは第1指(親指)である。
なお、腕を駆血する際の圧迫に伴う痛みによって交感神経の興奮が高まると、圧迫を解除した後の血管拡張が抑制されることが知られている。このため、腕の圧迫に伴う痛みの影響は、血管内皮機能検査において無視できない誤差要因になりうる。この点、上述した指駆血両手法や片手法によれば、指の圧迫だけでよいため痛みがほとんどなく、患者に対する侵襲が小さい。よって、指駆血両手法や片手法では、駆血時の痛みに伴う交感神経の興奮が誤差要因として影響しにくく、内皮機能検査としての精度が高いものと考えられる。
カフ圧データ記憶部44は、カフ21が各指の指動脈を圧迫する際のカフ圧に関するデータを記憶するものである。本実施形態において、カフ圧データ記憶部44は、駆血前安静時および再灌流時のそれぞれにつき、各指に装着される各カフ21,21のカフ圧がそれぞれ記憶されるようになっている。なお、後述するとおり、血管拡張反応指標算出部54が、血管拡張反応指標として拡張距離指数(DI)や単純距離指数(SI)を算出する場合、カフ圧の値は不要であるため、カフ圧データ記憶部44を機能させなくてもよい。
演算処理手段5は、CPU(Central Processing Unit)等から構成されており、指細小動脈拡張能連続検査プログラム1aを実行することにより、図1に示すように、カフ圧制御部51と、NPV算出部52と、BV算出部53と、血管拡張反応指標算出部54として機能するようになっている。以下、各構成部についてより詳細に説明する。
カフ圧制御部51は、空気ポンプ22を自動制御し、各カフ21,21によるカフ圧を自在に調節するものである。本実施形態において、カフ圧制御部51は、駆血前の安静時においては、図2に示すように、脈波の振幅が最大となる時刻を含む25秒間は、カフ圧を0から一定速度で増加させ、その後、5秒間は圧迫を解除するという試行動作を一つのシーケンスとし、このシーケンスを検査指および統制指の各指について6試行(計3分間)繰り返すように指圧迫手段2を自動制御する。また、カフ圧制御部51は、圧迫試行中は常にカフ圧データを取得し、カフ圧データ記憶部44に記憶させるようになっている。
一方、本実施形態では、図3に示すように、上述した圧迫試行を各指に対して実施した後、検査指に反応性充血を惹起するために、検査指側の腕を所定時間(5分間)、所定の圧力(収縮期圧+50mmHg)で駆血する。そして、カフ圧制御部51は、当該駆血を解除した後の再灌流時においては、図3に示すように、検査指および統制指の各指を一定圧で圧迫し続けるように指圧迫手段2を自動制御するようになっている。
なお、再灌流時において、駆血前安静時と同様のシーケンスで圧迫試行すると、カフ圧が完全に解除される休止期間中に、細動脈と静脈側に血液が流入し、末梢循環の自己調節により筋原性の血管収縮が生じるおそれがある。しかしながら、本実施形態の指クランププロトコルによれば、所定の一定圧を中断なく加え続けるため、筋原性の血管収縮を阻止することができ、検査の精度を向上させる効果がある。なお、本実施形態において、前記一定圧は、後述する駆血前の安静時平均血圧の所定割合の値と同一とされており、具体的には、安静時平均血圧の70%程度のカフ圧に設定されている。
また、本実施形態では、図3に示すように、駆血前の安静時における圧迫試行として、脈波の振幅が最大となる時刻を含む25秒間は、カフ圧を0から一定速度で増加させ、その後、5秒間は圧迫を解除するという試行動作を一つのシーケンスとし、このシーケンスを検査指および統制指の各指について6試行(計3分間)繰り返すランプ圧迫シーケンス法を採用している。しかしながら、シーケンス法は、当該ランプ圧迫シーケンス法に限定されるものではなく、各種のシーケンス法を適用可能である。
例えば、図4に示すように、ランプ圧迫シーケンス法と併用して、駆血前における検査指および統制指の各指に一定圧CPfixを連続して加える一定圧クランプA法を適用してもよい。具体的には、図2に示すように、まず、ランプ圧迫シーケンス法によって、規準化脈波容積(NPV)が最大となる時のカフ圧を平均血圧(MBP)として測定する。そして、一定圧クランプA法では、検査指および統制指のそれぞれについて測定された平均血圧の所定割合(70%)の値を一定圧CPfixとして、駆血前における検査指および統制指の各指を圧迫し続ける。また、駆血解除後には、駆血前に付与した一定圧CPfixと同一の一定圧CPfixで圧迫し続けるようになっている。
また、図4に示すように、ランプ圧迫シーケンス法に替えて、駆血前における検査指および統制指の各指に一定圧CPfixを連続して加える一定圧クランプB法を適用してもよい。具体的には、まず、予め検査前に上腕部の拡張期血圧を測定する。そして、一定圧クランプB法では、予め測定した上腕部の拡張期血圧に近い圧(例えば、上腕拡張期血圧−10mmHg)であって、検査指と統制指とで同一な圧を一定圧CPfixとして、駆血前における検査指および統制指の各指を圧迫し続ける。また、駆血解除後には、駆血前に付与した一定圧CPfixと同一の一定圧CPfixで圧迫し続けるようになっている。
NPV算出部52は、脈動変化分(ΔV)の定量指標である規準化脈波容積(Normalized Pulse Volume:NPV=ΔI/I)の自然対数であるNPV自然対数変換値(lnNPV)を算出するものである。ここで、図5に示すように、脈動変化分の透過光量(ΔI)は、脈波の交流成分の振幅によって決定される。また、指(組織+血液)の透過光量(I)は、同時刻における脈波の直流成分の平均値によって決定される。したがって、NPV算出部52は、安静時脈波記憶部42に記憶された安静時脈波、および再灌流時脈波記憶部43に記憶された再灌流時脈波に基づいて、各指について、脈波の交流成分の振幅を当該脈波の直流成分の平均値で除算してなる規準化脈波容積(NPV)を自然対数に変換したNPV自然対数変換値(lnNPV)を一心拍ごとに算出するようになっている。
BV算出部53は、全血管容積(V)の定量指標である血液容積(Blood Volume:BV=ln(I/I))を算出するものである。本実施形態において、指組織のみの吸光量(I)は、図5に示すように、血管内に血液が存在していないと仮定した場合の吸光量である。また、指(組織+血液)の透過光量(I)は、上記のとおり、脈波の直流成分の平均値によって決定される。したがって、BV算出部53は、安静時脈波および再灌流時脈波に基づいて、各指について、指組織のみの吸光量(I)を脈波の直流成分の平均値で除算した値の自然対数である血液容積(BV)を一心拍ごとに算出するようになっている。
なお、後述するとおり、血管拡張反応指標算出部54が、血管拡張反応指標として規準化脈波容積指数(NPVI)のみを算出する場合、血液容積(BV)の値は不要であるため、BV算出部53を機能させなくてもよい。また、血管拡張反応指標算出部54が、血管拡張反応指標として血液容積指数(BVI)のみを算出する場合、NPV自然対数変換値(lnNPV)の値は不要であるため、NPV算出部52を機能させなくてもよい。
また、本実施形態において、上述した規準化脈波容積(NPV)および血液容積(BV)は、ランバート・ベールの法則(Lambert-beer's law)による理論式(指圧迫時)に基づいて定義づけしたものである。具体的には、指動脈における光電式容積脈波に当該法則を適用すると、全血管容積の脈動変化量(ΔV)および全血管容積(V)について、以下の式(a),(b)が成立する。
ΔV=(εC)−1・(ΔI/I) …式(a)
V=(εC)−1・ln(I/I) …式(b)
ただし、各記号は以下を表す。
ε:動脈および静脈を含む全血液の平均吸光係数
C:全血液の平均濃度
ΔI:脈波の交流成分によって示される脈動変化分の透過光量(脈波容積)
I:脈波の直流成分によって示される指(組織+血液)の透過光量
:指組織のみの吸光量(虚血時)
ここで、酸素ヘモグロビンおよびデオキシヘモグロビンの吸光係数は810nmの波長で等しくなるため、εは動静脈のバランスに関係なく個人間や個人内において一定である。また、Cに関しては、休養状態と精神的ストレス状態における数値を比較しても、数%しか変化しないことが知られている。したがって、上記式(a)より、(ΔI/I)は近似的にΔVと正比例関係になるため、規準化脈波容積(NPV)と定義した。同様に、上記式(b)より、ln(I/I)は近似的にVと正比例関係になるため、血液容積(BV)と定義した。
血管拡張反応指標算出部54は、各指の安静時および再灌流時における規準化脈波容積(NPV)のNPV自然対数変換値(lnNPV)および/または各指の安静時および再灌流時における血液容積(BV)に基づいて、再灌流後の任意の心拍における血管拡張反応を表す血管拡張反応指標を算出するものである。本願発明者は、反応性充血時の指細小動脈における血管平滑筋の弛緩による脈波振幅の増加や動脈容積の増加を評価対象とすることを目的とし、規準化脈波容積指数(NPVI)、血液容積指数(BVI)、拡張距離指数(DI)、単純距離指数(SI)およびNB反応性指数(NBI)という五つの血管拡張反応指標を新たに定義した。以下、各血管拡張反応指標について詳細に説明する。
(1)規準化脈波容積指数(NPVI)
規準化脈波容積指数(NPVI)は、再灌流後の任意の心拍におけるNPV自然対数変換値(lnNPV)と、駆血前の安静時におけるNPV自然対数変換値(lnNPV)との差として定義されるものである。本実施形態において、血管拡張反応指標算出部54は、血管拡張反応指標として規準化脈波容積指数(NPVI)を算出する場合、図1に示すように、下記(i)〜(iv)の処理部55〜58として機能するようになっている。
(i)安静時脈波に基づいて、安静時の各圧迫試行における規準化脈波容積(NPV)が最大時のカフ圧をそれぞれ特定し、各指について、特定した各カフ圧の平均値または中央値を駆血前の安静時平均血圧として推定する安静時平均血圧推定部55;
(ii)駆血前安静時のカフ圧と駆血前安静時のNPV自然対数変換値(lnNPV)とのデータ対を回帰分析し、各指について、カフ圧とNPV自然対数変換値(lnNPV)との回帰直線であるNPV線を算出するNPV線算出部56;
(iii)各指のNPV線に基づいて、各指について、カフ圧が安静時平均血圧の所定割合であるときのNPV自然対数変換値(lnNPV)を駆血前安静時のNPV推定値として算出するNPV推定値算出部57;
(iv)下記式(1)により、血管拡張反応指標の一つである規準化脈波容積指数(NPVI)を算出するNPVI算出部58;
NPVI=NT−NC …式(1)
ただし、各記号は以下を表す。
NPVI:再灌流後第i拍目の規準化脈波容積指数(NPVI)
NT=NPVt−NPVt
NC=NPVc−NPVc
NPVt:検査指側の再灌流後第i拍目におけるNPV自然対数変換値(lnNPV)
NPVt:検査指側の駆血前安静時のNPV推定値
NPVc:統制指側の再灌流後第i拍目におけるNPV自然対数変換値(lnNPV)
NPVc:統制指側の駆血前安静時のNPV推定値
なお、本実施形態では、ランプ圧迫シーケンス法を採用しているため、駆血前安静時におけるNPV推定値(NPVtおよびNPVc)は、カフ圧とNPV自然対数変換値(lnNPV)との回帰直線であるNPV線に、駆血解除後に圧迫する際の一定圧をカフ圧として代入することで算出される検査指および統制指ごとのNPV自然対数変換値(lnNPV)の推定値である。
これに対し、上述した一定圧クランプA法および一定圧クランプB法では、図4に示すように、駆血前に一定圧で圧迫し続けた区間に存在する全脈動におけるNPV自然対数変換値(lnNPV)を検査指および統制指ごとに平均化し、当該平均値を駆血前安静時におけるNPV推定値(NPVtおよびNPVc)として算出することができる。したがって、ランプ圧迫シーケンス法の代替として、一定圧クランプA法または一定圧クランプB法を採用することにより、検査が簡素化され検査時間が短縮化される。
以下、各処理部について説明する。安静時平均血圧推定部55は、安静時脈波記憶部42から安静時脈波を取得し、安静時の各圧迫試行における規準化脈波容積(NPV)が最大時のカフ圧をそれぞれ特定する。当該カフ圧が平均血圧に等しいためである。そして、安静時平均血圧推定部55は、全試行について特定した各カフ圧(平均血圧)の平均値または中央値を駆血前の安静時平均血圧として、検査指および統制指の各指について推定するようになっている。
NPV線算出部56は、カフ圧データ記憶部44から駆血前安静時のカフ圧を取得するとともに、NPV算出部52によって算出された駆血前安静時のNPV自然対数変換値(lnNPV)を取得する。そして、当該カフ圧とNPV自然対数変換値(lnNPV)との直線関係は直線回帰で近似できるため、NPV線算出部56は、取得したデータ対(カフ圧,lnNPV)を回帰分析し、各指について、回帰直線であるNPV線を算出するようになっている。
NPV推定値算出部57は、NPV線算出部56によって算出された各指のNPV線に、安静時平均血圧の所定割合をカフ圧として代入する。これにより、NPV推定値算出部57は、各指について、駆血前安静時に当該カフ圧で圧迫された場合のNPV自然対数変換値(lnNPV)であるNPV推定値(図6におけるNPVtおよびNPVc)を算出する。そして、これら各指のNPV推定値は、再還流時におけるNPV自然対数変換値(lnNPV)の変化の基準として用いることができる。
NPVI算出部58は、NPV推定値算出部57によって算出された駆血前安静時のNPV推定値を取得するとともに、NPV算出部52によって算出された再灌流時のNPV自然対数変換値(lnNPV)を取得する。そして、NPVI算出部58は、上記式(1)および図6に示されるとおり、駆血前安静時のNPV推定値を基準にして、再灌流後第i拍目におけるNPV自然対数変換値(lnNPV)の変化を各指について算出した後、検査指における当該変化(NT)から統制指における当該変化(NC)を減算することにより基準化し、交感神経の緊張や不整脈等の影響が除去された規準化脈波容積指数(NPVI)を算出するようになっている。
(2)血液容積指数(BVI)
血液容積指数(BVI)は、再灌流後の任意の心拍における血液容積(BV)と、駆血前の安静時における血液容積(BV)との差として定義されるものである。本実施形態において、血管拡張反応指標算出部54は、血管拡張反応指標として血液容積指数(BVI)を算出する場合、図1および以下に示すように、上記(i)の安静時平均血圧推定部55および下記(v)〜(vii)の処理部59〜61として機能するようになっている。
(i)安静時脈波に基づいて、安静時の各圧迫試行における規準化脈波容積(NPV)が最大時のカフ圧をそれぞれ特定し、各指について、特定した各カフ圧の平均値または中央値を駆血前の安静時平均血圧として推定する安静時平均血圧推定部55;
(v)駆血前安静時のカフ圧と駆血前安静時の血液容積(BV)とのデータ対を回帰分析し、各指について、カフ圧と血液容積(BV)との回帰直線であるBV線を算出するBV線算出部59;
(vi)各指のBV線に基づいて、各指について、カフ圧が安静時平均血圧の所定割合であるときの血液容積(BV)を駆血前安静時のBV推定値として算出するBV推定値算出部60;
(vii)下記式(2)により、血管拡張反応指標の一つである血液容積指数(BVI)を算出するBVI算出部61;
BVI=BT−BC …式(2)
ただし、各記号は以下を表す。
BVI:再灌流後第i拍目の血液容積指数(BVI)
BT=BVt−BVt
BC=BVc−BVc
BVt:検査指側の再灌流後第i拍目における血液容積(BV)
BVt:検査指側の駆血前安静時のBV推定値
BVc:統制指側の再灌流後第i拍目における血液容積(BV)
BVc:統制指側の駆血前安静時のBV推定値
以下、各処理部について説明する。BV線算出部59は、カフ圧データ記憶部44から駆血前安静時のカフ圧を取得するとともに、BV算出部53によって算出された駆血前安静時の血液容積(BV)を取得する。そして、当該カフ圧と血液容積(BV)との直線関係は直線回帰で近似できるため、BV線算出部59は、取得したデータ対(カフ圧,BV)を回帰分析し、各指について、回帰直線であるBV線を算出するようになっている。
BV推定値算出部60は、BV線算出部59によって算出された各指のBV線に、安静時平均血圧の所定割合をカフ圧として代入する。これにより、BV推定値算出部60は、各指について、駆血前安静時に当該カフ圧で圧迫された場合の血液容積(BV)であるBV推定値を算出する。そして、これら各指のBV推定値は、再還流時における血液容積(BV)の変化の基準として用いることができる。
BVI算出部61は、BV推定値算出部60によって算出された駆血前安静時のBV推定値を取得するとともに、BV算出部53によって算出された再灌流時の血液容積(BV)を取得する。そして、BVI算出部61は、上記式(2)に示されるとおり、駆血前安静時のBV推定値を基準にして、再灌流後第i拍目における血液容積(BV)の変化を各指について算出した後、検査指における当該変化(BT)から統制指における当該変化(BC)を減算することにより基準化し、交感神経の緊張や不整脈等の影響が除去された血液容積指数(BVI)を算出するようになっている。
(3)拡張距離指数(DI)
拡張距離指数(DI)は、再灌流後の任意の心拍におけるデータ点(BV,lnNPV)から駆血前安静時のBN線に下ろした垂線の長さ(垂線距離)として定義されるものである。本実施形態において、血管拡張反応指標算出部54は、血管拡張反応指標として拡張距離指数(DI)を算出する場合、図1に示すように、下記(viii),(ix)の処理部62,63として機能するようになっている。
(viii)駆血前安静時の血液容積(BV)と駆血前安静時のNPV自然対数変換値(lnNPV)とのデータ対を回帰分析し、各指について、血液容積(BV)とNPV自然対数変換値(lnNPV)との回帰直線であるBN線を算出するBN線算出部62;
(ix)下記式(3)により、血管拡張反応指標の一つである拡張距離指数(DI)を算出するDI算出部63;
DI=DT*SGNT−DC*SGNC …式(3)
ただし、各記号は以下を表す。
DI:再灌流後第i拍目の拡張距離指数(DI)
DT:検査指側の再灌流後第i拍目におけるデータ点(BV,lnNPV)から駆血前安静時の検査指のBN線に下ろした垂線距離
DC:統制指側の再灌流後第i拍目におけるデータ点(BV,lnNPV)から駆血前安静時の統制指のBN線に下ろした垂線距離
SGNT:検査指側の再灌流後第i拍目におけるデータ点(BV,lnNPV)が検査指のBN線に対して右上に位置するとき1(拡張)となり、左下に位置するとき−1(収縮)となる検査指側拡張・収縮判別値
SGNC:統制指側の再灌流後第i拍目におけるデータ点(BV,lnNPV)が統制指のBN線に対して右上に位置するとき1(拡張)となり、左下に位置するとき−1(収縮)となる統制指側拡張・収縮判別値
以下、各処理部について説明する。BN線算出部62は、BV算出部53によって算出された駆血前安静時の血液容積(BV)を取得するとともに、NPV算出部52によって算出された駆血前安静時のNPV自然対数変換値(lnNPV)を取得する。そして、BN線算出部62は、取得したデータ対(BV,lnNPV)を回帰分析することにより、図6に示すように、各指についてBN線を算出するようになっている。
DI算出部63は、BV算出部53およびNPV算出部52によって算出された再灌流後第i拍目におけるデータ点(BV,lnNPV)を各指について取得する。そして、DI算出部63は、図6に示すように、当該各データ点からBN線算出部62によって算出されたBN線への垂線距離を各指について算出する。また、DI算出部63は、各データ点のBN線に対する位置に基づいて検査指側拡張・収縮判別値(SGNT)および統制指側拡張・収縮判別値(SGNC)を特定する。
そして、DI算出部63は、上記式(3)に示すとおり、検査指側拡張・収縮判別値(SGNT)を掛け合わせた検査指側の垂線距離(DT)から統制指側拡張・収縮判別値(SGNC)を掛け合わせた統制指側の垂線距離(DC)を減算することにより基準化し、交感神経の緊張や不整脈等の影響が除去された拡張距離指数(DI)を算出するようになっている。
ここで、拡張距離指数(DI)を上記のように定義した理由について、図6を参照しつつ説明する。まず、統制指における血管トーヌス(緊張)の亢進は、BN線から左下方向への変異をもたらす。このため、任意時刻(第i拍)における血管収縮の大きさは、当該拍のデータ点(BV,lnNPV)とBN線との垂線距離(DC)を求めることで評価することができる。すなわち、BN線からの逸脱は血管トーヌス変動によるものである。
一方、安静時から見た再還流時の血管拡張は、BN線から右上方向への変異として表れるため、任意時刻(拍i)における血管拡張の大きさは、当該拍のデータ点(BV,lnNPV)からBN線への垂線距離(DT)を求めることで評価することができる。また、検査指における血管トーヌスの亢進は統制指と同様、BN線から左下方向への変異として表れる。
よって、検査指における真の血管拡張を表す規準化された血管拡張反応指標は、検査指側の垂線距離(DT)と統制指側の垂線距離(DC)との差を求めることで推定されるといえる。すなわち、拡張距離指数(DI)は、同時に生起する血管緊張度の低下について、統制指側の当該低下によって規準化した指標である。なお、反応性充血時には指部の血行力学的変動に伴って平均血圧は変動するが、その影響はBN線上の移動である。よって、拡張距離指数(DI)は、平均血圧の変動とは独立で直交する点が特異性をなすと期待される。
(4)単純距離指数(SI)
単純距離指数(SI)は、再灌流後の任意の心拍における、検査指側のデータ点(BV,lnNPV)と統制指側のデータ点(BV,lnNPV)とを結ぶ直線の長さ(直線距離)として定義されるものである。本実施形態において、血管拡張反応指標算出部54は、血管拡張反応指標として単純距離指数(SI)を算出する場合、図1に示すように、下記(x)の処理部64として機能するようになっている。
(x)下記式(4)により、前記血管拡張反応指標の一つである単純距離指数(SI)を算出するSI算出部64;
SI=ST*SGNS …式(4)
ただし、各記号は以下を表す。
SI:再灌流後第i拍目の単純距離指数(SI)
ST:検査指側の再灌流後第i拍目におけるデータ点(BV,lnNPV)と統制指側の再灌流後第i拍目におけるデータ点(BV,lnNPV)とを結ぶ直線距離
SGNS:再灌流後第i拍目の前記拡張距離指数(DI)が正の値のとき1となり、負の値のとき−1となる正負判別値
SI算出部64は、BV算出部53によって算出された駆血前安静時の血液容積(BV)を取得するとともに、NPV算出部52によって算出された駆血前安静時のNPV自然対数変換値(lnNPV)を取得する。そして、SI算出部64は、図6に示すように、再灌流後第i拍目における各指のデータ点(BV,lnNPV)を直線で結び、当該データ点間の直線距離(ST)を算出する。また、SI算出部64は、DI算出部63によって算出された再灌流後第i拍目の拡張距離指数(DI)に基づいて正負判別値(SGNS)を特定する。そして、SI算出部64は、上記式(4)に示すとおり、各指についてのデータ点間の直線距離(ST)に当該正負判別値(SGNS)を掛け合わせることにより、単純距離指数(SI)を算出するようになっている。
(5)NB反応性指数(NBI)
NB反応性指数(NBI)には、規準化脈波容積指数(NPVI)と血液容積指数(BVI)との差によって定義されるNPVI対BVI差指数(NBI)と、規準化脈波容積指数(NPVI)と血液容積指数(BVI)との比によって定義されるNPVI対BVI比指数(NBI)との2種類が存在する。本実施形態において、血管拡張反応指標算出部54は、血管拡張反応指標としてNB反応性指数(NBI)を算出する場合、図1および以下に示すように、下記(xi)の処理部65として機能するようになっている。
(xi)下記式(5a)または下記式(5b)により、前記血管拡張反応指標の一つであるNB反応性指数(NBI)を算出するNBI算出部65;
NBIDi=NPVI−BVI …式(5a)
NBIRi=NPVI/BVI+k …式(5b)
ただし、各記号は以下を表す。
NBIDi:再灌流後第i拍目のNPVI対BVI差指数(NBI
NBIRi:再灌流後第i拍目のNPVI対BVI比指数(NBI
NPVI:再灌流後第i拍目の規準化脈波容積指数(NPVI)
BVI:再灌流後第i拍目の血液容積指数(BVI)
k:実験により求めた定数
NBI算出部65は、NPVI算出部58によって算出された再灌流後第i拍目における規準化脈波容積指数(NPVI)を取得するとともに、BVI算出部61によって算出された再灌流後第i拍目における血液容積指数(BVI)を取得する。そして、NBI算出部65は、上記式(5a)に示すとおり、規準化脈波容積指数(NPVI)から血液容積指数(BVI)を減算することにより、NB反応性指数(NBI)としてのNPVI対BVI差指数(NBI)を算出する。あるいは、NBI算出部65は、上記式(5b)に示すとおり、規準化脈波容積指数(NPVI)を血液容積指数(BVI)で除算することにより、NB反応性指数(NBI)としてのNPVI対BVI比指数(NBI)を算出するようになっている。
以上のとおり、規準化脈波容積指数(NPVI)は、NPV自然対数変換値(lnNPV)に基づいて算出され、血液容積指数(BVI)は、血液容積(BV)に基づいて算出され、拡張距離指数(DI)、単純距離指数(SI)およびNB反応性指数(NBI)はそれぞれ、NPV自然対数変換値(lnNPV)および血液容積(BV)に基づいて算出される。
ここで、上述した本発明に係る血管拡張反応指標のうち、規準化脈波容積指数(NPVI)、拡張距離指数(DI)および単純距離指数(SI)のそれぞれと、従来のEndo−PAT法に係るFRHI(Framingham Reactive Hyperemia Index:フラミンガム反応性充血指数)と、先願のFCR法に係るFCR比との比較結果を図7に示す。
図7に示すように、拡張距離指数(DI)および単純距離指数(SI)は、血管平滑筋の弛緩による脈波振幅の増加のみならず、動脈容積の増加をも評価対象とする点において、Endo−PAT法に係るFRHIよりも総合性に優れているといえる。また、拡張距離指数(DI)は、平均血圧による影響を受けることがなく、それにより内皮機能に特異性(内皮機能のみを純粋に評価する性質)を有する点で他の評価指標よりも優れているといえる。
また、後述する実施例3における対比シミュレーションの結果より、単純距離指数(SI)は、平均血圧の変動による内皮機能の間接的効果を加重しうる点で、内皮機能検査としての感度が、他の評価指標よりも優れているといえる。さらに、本発明に係る規準化脈波容積指数(NPVI)、拡張距離指数(DI)および単純距離指数(SI)は、互いにその変動パターンを比較することにより、血行力学的な影響因子を分析および評価できる点で、従来の評価指標よりも優れているといえる。
また、本発明に係る規準化脈波容積指数(NPVI)、血液容積指数(BVI)、拡張距離指数(DI)、単純距離指数(SI)およびNB反応性指数(NBI)は、経壁圧とコンプライアンスとの関係を血液容積(BV)とNPV自然対数変換値(lnNPV)との関係で代用することにより、血圧の測定が不要であるため、血圧測定に起因する誤差が存在しない。また、本発明に係る規準化脈波容積指数(NPVI)、血液容積指数(BVI)、拡張距離指数(DI)、単純距離指数(SI)およびNB反応性指数(NBI)は、その推定に必要な脈波データが一心拍ごとに連続的かつ正確に測定できるため、一心拍ごとに連続的かつ正確に推定される点でFCR比よりも優れているといえる。
さらに、本発明においては、指を圧迫するカフを繰り返し使用できる点で、使い捨てのカフを用いるEndo−PAT法よりも経済性が高いといえる。また、本発明は、上述したとおり、両手における同じ指を検査指および統制指として使用する両手法のみならず、片手における異なる指を検査指および統制指として使用する片手法にも拡張できる点で、両手法を標準とするEndo−PAT法よりも優れているといえる。
また、血管内皮機能の評価に影響を与える他の要因としては、血管の拡張に対する抵抗因子である動脈のスティフネス(硬さ)が存在する。この点、血管が硬い場合でも、図3に示すように、本発明に係る検査プロトコルの実施直前に、本願発明者が独自に開発した特許第5039123号に係る指動脈弾力性指数(FEI:Finger arterial Elasticity
Index)を計測することで、スティフネスによる影響を当該指動脈弾力性指数(FEI)により補正することができる。なお、当該指動脈弾力性指数(FEI)は、本発明に係る検査プロトコルの駆血前安静時に測定した脈波データやカフ圧データを用いて、検査指と統制指の両方において算出しておくことも可能である。
よって、本発明に係る指細小動脈拡張能連続検査方法は、影響因子である動脈スティフネスに対しても独立性を持つことができ、Endo−PAT法よりも優れているといえる。なお、指動脈弾力性指標(FEI)とは、下記式(c)の直線回帰勾配(n)として表されるものである。
ln(NPV)=ln(bn)−n・Pr …式(c)
ただし、各記号は以下を表す。
b:定数
Pr:相対カフ圧(脈波の振幅が最大のときのカフ圧と各カフ圧の差)
なお、本発明において、血管拡張反応指標が、上腕動脈などの大血管ではなく、指の細小血管を標的にする理由は以下のとおりである。すなわち、全身の動脈硬化は、細小血管から進行するとの生理学上の仮説が存在するためである。また、糖尿病や高血圧などの細小血管障害の臨床診断に適しており、これらの最早期診断に応用するためである。
つぎに、本実施形態の指細小動脈拡張能連続検査プログラム1aによって実行される指細小動脈拡張能連続検査装置1の作用および指細小動脈拡張能連続検査方法について図8を参照しつつ説明する。
本実施形態の指細小動脈拡張能連続検査装置1を用いて、血管拡張反応指標を測定する場合、予め被験者の検査指および統制指のそれぞれに光電式センサ31およびカフ21を装着する。本実施形態では、カフ21が受光部31bと一体化されており、指に巻き付けるタイプのため、径の異なる複数サイズのカフ21を用意する必要がなく、一種類のカフ21で複数の被験者の指径に最適な装着が可能となる。また、発光部31aと受光部31bとが指に密着し、指圧迫の経過に伴う光路のずれが最小限に抑えられる。
なお、本実施形態では、図3に示すように、本発明にかかる指細小動脈拡張能連続検査プロトコルの実施直前に、本願発明者が独自に開発した指動脈弾力性指数(FEI)を計測する。これにより、当該指動脈弾力性指数(FEI)によって動脈のスティフネスによる影響を補正することが可能となる。このため、本発明に係る血管拡張反応指標は、血管内皮機能に対する影響因子である動脈のスティフネスに対しても独立性を持つこととなる。
つぎに、駆血前の安静時においては、図3に示すように、カフ圧制御部51が指圧迫手段2により検査指および統制指の各指を上述したシーケンスまたは上述した一定圧で圧迫試行しながら、脈波検出手段3により脈波データを測定し、安静時脈波として安静時脈波記憶部42に記憶する(ステップS1:安静時脈波記憶ステップ)。これにより、検査指および統制指の各指について、正確な安静時脈波が一心拍毎に連続的に測定される。
なお、指圧迫手段2により指が圧迫されている間、光電式センサ31の発光部31aが光を発する一方、受光部31bが指の組織や血管を透過した光量を検出する。ここで、血液中のヘモグロビンは、ある波長帯の光に強い吸収スペクトルを持っている。このため、当該波長帯の光を照射した時の生体の透過光が、血管の容量変動に伴い変化するヘモグロビン量に応じて変化する。したがって、受光部31bが検出した透過光量を脈波アンプ32で増幅することにより脈波が検出されることとなる。
上記安静時脈波記憶ステップと並行して、本実施形態では、駆血前の安静時において、カフ圧制御部51が指圧迫手段2により検査指および統制指の各指を上述したシーケンスまたは上述した一定圧で圧迫試行している間、各指を圧迫する各カフのカフ圧をカフ圧データ記憶部44に記憶する(ステップS2:カフ圧データ記憶ステップ)。これにより、規準化脈波容積指数(NPVI)の算出に必要な駆血前安静時におけるカフ圧データが測定される。
つづいて、図3に示すように、検査指側の腕を収縮期血圧+50mmHgの圧力で5分間駆血する(ステップS3:駆血ステップ)。これにより、当該駆血を解除することにより、検査指における指動脈には反応性充血が惹起されることとなる。
つぎに、駆血解除後の再灌流時においては、カフ圧制御部51が指圧迫手段2により検査指および統制指の各指を一定圧で圧迫し続けながら、脈波検出手段3により脈波データを測定し、再灌流時脈波として再灌流時脈波記憶部43に記憶する(ステップS4:再灌流時脈波記憶ステップ)。これにより、検査指および統制指の各指について、正確な再灌流時脈波が一心拍毎に連続的に測定される。また、所定の一定圧を中断なく加え続けることにより、筋原性の血管収縮が阻止されるため、検査の精度が向上する。
なお、本実施形態において、駆血後の再灌流時における一定圧(図3のCP70)を上述した安静時平均血圧の所定割合とする理由について説明する。まず、図6に示すように、指を圧迫していった場合、血液容積(BV)は0〜1.0くらいまで変化し、NPV自然対数変換値(lnNPV)は1.0〜1.6くらいまで変化する。すなわち、BN線上におけるデータ点(BV,lnNPV)は、カフ圧が低い場合は右下方向へ移動し、逆にカフ圧が高い場合は左上方向に移動する。そして、本願発明者の予備実験によれば、カフ圧が安静時平均血圧の70%前後(およそ拡張期血圧より少し低め)の場合に、血液容積(BV)は0.5くらい、NPV自然対数変換値(lnNPV)は1.2くらいとなり、上述したBN線の変動幅のほぼ中間部分となることがわかった。
しかしながら、駆血後の再灌流時における一定圧が、上述した中間部分におけるカフ圧から外れた場合、一拍毎のデータ点(BV,lnNPV)がBN線の変動幅を超える可能性がある。この場合、規準化脈波容積指数(NPVI)、血液容積指数(BVI)、拡張距離指数(DI)、単純距離指数(SI)およびNB反応性指数(NBI)の算出に際しては、回帰直線を外挿して用いることになり誤差が大きくなる。よって、駆血後の再灌流時における一定圧としては、BN線の変動幅の中間部分におけるカフ圧、すなわち、安静時平均血圧の70%前後に設定することが、血管拡張反応指標の算出誤差を最も抑制すると考えられる。
また、安静時平均血圧の70%前後の値は、上記のとおり、拡張期血圧より少し低めのカフ圧になる。しかしながら、当該拡張期血圧よりも大きな圧をかけると脈波波形が変形してしまう。逆に、カフ圧が拡張期血圧よりも小さ過ぎると脈波振幅が低下し、SN(signal-noise)比が低下してしまう。よって、駆血後の再灌流時における一定圧として、安静時平均血圧の70%前後に設定することにより、SN比が高く保たれ、かつ、脈波波形が変形しにくくなると考えられる。
つぎに、NPV算出部52が、ステップS1で測定された安静時脈波とステップS4で測定された再灌流時脈波とに基づいて、各指における規準化脈波容積(NPV)のNPV自然対数変換値(lnNPV)を一心拍ごとに算出する(ステップS5:NPV算出ステップ)。これにより、駆血前の安静時および駆血後の再灌流時における検査指のNPV自然対数変換値(lnNPV)と、駆血前の安静時および駆血後の再灌流時における統制指のNPV自然対数変換値(lnNPV)とのそれぞれが一心拍ごとに算出される。
上記NPV算出ステップと並行して、BV算出部53が、ステップS1で測定された安静時脈波とステップS4で測定された再灌流時脈波とに基づいて、各指における血液容積(BV)を一心拍ごとに算出する(ステップS6:BV算出ステップ)。これにより、駆血前の安静時および駆血後の再灌流時における検査指のBVと、駆血前の安静時および駆血後の再灌流時における統制指のBVとのそれぞれが一心拍ごとに算出される。
最後に、血管拡張反応指標算出部54が、ステップS5で算出された各指の安静時および再灌流時におけるNPV自然対数変換値(lnNPV)に基づいて、再灌流後の任意の心拍における血管拡張反応を表す血管拡張反応指標を算出する(ステップS7:血管拡張反応指標算出ステップ)。これにより、指動脈の血管拡張反応を示す血管拡張反応指標が一心拍ごとに連続的かつ正確に算出される。
上述した血管拡張反応指標算出ステップにおいて、血管拡張反応指標算出部54が、血管拡張反応指標として規準化脈波容積指数(NPVI)を算出する場合の具体的なサブステップについて、図9を参照しつつ説明する。まず、安静時平均血圧推定部55が、安静時脈波に基づいて、検査指および統制指の各指について安静時平均血圧を推定する(ステップS11:安静時平均血圧推定ステップ)。
また、NPV線算出部56が、駆血前安静時におけるカフ圧およびNPV自然対数変換値(lnNPV)のデータ対を回帰分析し、各指についてNPV線を算出する(ステップS12:NPV線算出ステップ)。
つぎに、NPV推定値算出部57が、ステップS11で算出された安静時平均血圧と、ステップS12で算出されたNPV線とに基づいて、各指について、安静時平均血圧の所定割合のカフ圧で圧迫された場合のNPV推定値を算出する(ステップS13:NPV推定値算出ステップ)。これにより、再還流時におけるNPV自然対数変換値(lnNPV)の変化の基準となる駆血前安静時のNPV推定値が取得される。
そして、NPVI算出部58が、ステップS5で算出された再灌流時のNPV自然対数変換値(lnNPV)と、ステップS13で算出された駆血前安静時のNPV推定値とに基づいて、規準化脈波容積指数(NPVI)を算出する(ステップS14:NPVI算出ステップ)。これにより、血圧および血液容積(BV)を用いることなく、カフ圧とNPV自然対数変換値(lnNPV)との関係により駆血前安静時のNPV自然対数変換値(lnNPV)を推定し、当該NPV推定値を基準とする再灌流後のNPV自然対数変換値(lnNPV)の変動を表す規準化脈波容積指数(NPVI)が算出される。
つぎに、上述した血管拡張反応指標算出ステップにおいて、血管拡張反応指標算出部54が、血管拡張反応指標として血液容積指数(BVI)を算出する場合の具体的なサブステップについて、図10を参照しつつ説明する。まず、安静時平均血圧推定部55が、安静時脈波に基づいて、検査指および統制指の各指について安静時平均血圧を推定する(ステップS21:安静時平均血圧推定ステップ)。
また、BV線算出部59が、駆血前安静時におけるカフ圧および血液容積(BV)のデータ対を回帰分析し、各指についてBV線を算出する(ステップS22:BV線算出ステップ)。
つぎに、BV推定値算出部60が、ステップS21で算出された安静時平均血圧と、ステップS22で算出されたBV線とに基づいて、各指について、安静時平均血圧の所定割合のカフ圧で圧迫された場合のBV推定値を算出する(ステップS23:BV推定値算出ステップ)。これにより、再還流時における血液容積(BV)の変化の基準となる駆血前安静時のBV推定値が取得される。
そして、BVI算出部61が、ステップS6で算出された再灌流時の血液容積(BV)と、ステップS23で算出された駆血前安静時のBV推定値とに基づいて、血液容積指数(BVI)を算出する(ステップS24:BVI算出ステップ)。これにより、血圧およびNPV自然対数変換値(lnNPV)を用いることなく、カフ圧と血液容積(BV)との関係により駆血前安静時の血液容積(BV)を推定し、当該BV推定値を基準とする再灌流後の血液容積(BV)の変動を表す血液容積指数(BVI)が算出される。
つぎに、上述した血管拡張反応指標算出ステップにおいて、血管拡張反応指標算出部54が、血管拡張反応指標として拡張距離指数(DI)を算出する場合の具体的なサブステップについて、図11を参照しつつ説明する。まず、BN線算出部62が、駆血前安静時におけるデータ対(BV,lnNPV)を回帰分析することにより、各指についてBN線を算出する(ステップS31:BN線算出ステップ)。
つづいて、DI算出部63が、ステップS5およびステップS6で算出された再灌流後第i拍目におけるデータ点(BV,lnNPV)から、ステップS31で算出されたBN線への垂線距離を各指について算出する(ステップS32:垂線距離算出ステップ)。また、DI算出部63が、各データ点のBN線に対する位置に基づいて検査指側拡張・収縮判別値(SGNT)および統制指側拡張・収縮判別値(SGNC)を特定する(ステップS33:拡張・収縮判別値特定ステップ)。
そして、DI算出部63は、上記式(3)に示すとおり、検査指側拡張・収縮判別値(SGNT)を掛け合わせた検査指側の垂線距離(DT)から統制指側拡張・収縮判別値(SGNC)を掛け合わせた統制指側の垂線距離(DC)を減算することにより拡張距離指数(DI)を算出する(ステップS34:DI算出ステップ)。これにより、血管平滑筋の弛緩による脈波振幅の増加のみならず、動脈容積の増加も加味する点で総合性が高く、かつ、平均血圧による影響を受けないため内皮機能に特異性を有する拡張距離指数(DI)が算出される。
つづいて、上述した血管拡張反応指標算出ステップにおいて、血管拡張反応指標算出部54が、血管拡張反応指標として単純距離指数(SI)を算出する場合の具体的なサブステップについて、図12を参照しつつ説明する。まず、SI算出部64が、図6に示すように、再灌流後第i拍目における各指のデータ点(BV,lnNPV)を直線で結び、当該データ点間の直線距離(ST)を算出する(ステップS41:直線距離算出ステップ)。また、SI算出部64が、ステップS34で算出された再灌流後第i拍目の拡張距離指数(DI)に基づいて正負判別値(SGNS)を特定する(ステップS42:正負判別値特定ステップ)。
そして、SI算出部64が、上記式(4)に示すとおり、各指についてのデータ点間の直線距離(ST)に正負判別値(SGNS)を掛け合わせることにより、単純距離指数(SI)を算出する(ステップS43:SI算出ステップ)。これにより、血管平滑筋の弛緩による脈波振幅の増加のみならず、動脈容積の増加も加味する点で総合性が高く、かつ、平均血圧の変動による内皮機能の間接的効果を加重しうる点で内皮機能検査としての感度が高い単純距離指数(SI)が算出される。
つづいて、上述した血管拡張反応指標算出ステップにおいて、血管拡張反応指標算出部54が、血管拡張反応指標算出部54が、血管拡張反応指標としてNB反応性指数(NBI)を算出する場合の具体的なサブステップについて、図13を参照しつつ説明する。NBI算出部65が、再還流後の任意の心拍における規準化脈波容積指数(NPVI)と血液容積指数(BVI)とに基づいて、NB反応性指数(NBI)を算出する(ステップS51:安静時平均血圧推定ステップ)。
このとき、NBI算出部65は、上記式(5a)に示すとおり、規準化脈波容積指数(NPVI)と血液容積指数(BVI)との差によって定義されるNPVI対BVI差指数(NBI)を算出してもよく、上記式(5b)に示すとおり、規準化脈波容積指数(NPVI)と血液容積指数(BVI)との比によって定義されるNPVI対BVI比指数(NBI)を算出してもよい。
以上のような本発明によれば、以下のような効果を奏する。
1.血圧を測定することなく指動脈の細小血管における早期の動脈硬化の徴候を簡単かつ高精度に検査することができる。
2.一心拍毎に経壁圧とコンプライアンスとの関係を血液容積とNPV自然対数変換値(lnNPV)との関係で代用することにより、血圧の測定を不要とし、脈波だけで血圧変動の影響を連続的に推定することができる。
3.再灌流時の各指に所定の一定圧を中断なく加え続けるため、筋原性の血管収縮を阻止し、検査の精度を向上することができる。
4.規準化脈波容積指数(NPVI)は、平均血圧の減少により経壁圧が減少することで増加するため、血管緊張度と血圧低下とが加重された血管拡張を総合的に反映し、血圧低下を伴う血管拡張においては高い感度を得ることができる。
5.血液容積指数(BVI)は、指尖部の血液容積(BV)をもとに算出されるため、FMD法と同様、反応性充血時の内皮機能による血管拡張を血管容積の増加によって評価することができる。
6.拡張距離指数(DI)は、血管平滑筋の弛緩による脈波振幅の増加のみならず、動脈容積の増加も加味する点で総合性が高く、かつ、平均血圧による影響を受けないため内皮機能に高い特異性を有する検査を行うことができる。
7.単純距離指数(SI)は、血管平滑筋の弛緩による脈波振幅の増加のみならず、動脈容積の増加も加味する点で総合性が高く、かつ、平均血圧の変動による内皮機能の間接的効果を加重しうる点で内皮機能検査として最も高い感度を得ることができる。
8.平均血圧の減少により経壁圧が減少する影響は、規準化脈波容積指数(NPVI)を増加させる一方で、血液容積指数(BVI)を減少させる。NB反応性指数(NBI)は、NPVIと同様、血管緊張度と血圧低下の両方が加重された血管拡張を総合的に反映するが、規準化脈波容積指数(NPVI)と血液容積指数(BVI)の減算または除算から算出されるため、規準化脈波容積指数(NPVI)よりも一層血圧低下の影響度が強調される指標である。すなわち、血圧が不変の場合に比べて、血圧が減少すればNB反応性指数(NBI)が増加する。このため、NB反応性指数(NBI)は、単純距離指数(SI)と同様、内皮機能検査として最も高い感度を得ることが期待できる。
9.規準化脈波容積指数(NPVI)、血液容積指数(BVI)、拡張距離指数(DI)、単純距離指数(SI)およびNB反応性指数(NBI)の各変動パターンを比較することにより、血行力学的な影響因子を分析および評価することができる。
10.従来のFMD法は、再灌流後の初期反応のみを評価し、従来のEndo−PAT法は、再灌流後の遅延反応のみを評価するものであるが、本発明によれば、初期反応および遅延反応の両方を単一の検査で査定することができる。
11.FMD法では高価な超音波診断装置が必要で、画像の解析には熟練を要し、検査者の主観性を排除できないが、本発明によれば、測定する生体反応は脈波だけであり、客観性に優れ、小型・軽量かつ安全・安価であり、操作法も容易である。
12.Endo−PAT法に必要なカフ部は、1回の検査にしか使えないものであるのに対し、本発明によれば、カフ21を繰り返し使用できるばかりでなく、複数の被験者に対しても同一のカフ21で最適な装着を実現でき、ランニングコストを低減することができる。
13.ランプ圧迫シーケンス法の代替として、一定圧クランプA法または一定圧クランプB法を採用することにより、検査を簡素化し検査時間を短縮化することができる。ただし、一定圧クランプA法および一定圧クランプB法を用いた場合、規準化脈波容積指数(NPVI)、血液容積指数(BVI)、単純距離指数(SI)およびNB反応性指数(NBI)は算出できるものの、拡張距離指数(DI)を算出できない点に留意する。一定圧クランプA法および一定圧クランプB法では、BN線を得ることができないためである。
つぎに、本発明に係る指細小動脈拡張能連続検査プログラム1a、指細小動脈拡張能連続検査装置1および指細小動脈拡張能連続検査方法の具体的な実施例について説明する。
本実施例1では、従来のEndo−PAT法を実施するのと同時に、本発明に係る指細小動脈拡張能連続検査方法を実施し、両者の一致度を確認する実験を行った。
具体的には、健常青年44名および糖尿病・高血圧患者27名を被験者とし、Endo−PAT法に係るFRHI(フラミンガム反応性充血指数)と、本発明に係る五種類の血管拡張反応指標のうち、NPVI、DIおよびSIの三つを同時測定した。Endo−PAT法に係るFRHIについては、各被験者の左右の第2指で測定した。また、本発明に係る血管拡張反応指標については、繰返し使用可能なカフを備えた試作機を用いて、各被験者の左右の第3指で測定した。その結果を図14に示す。
また、上記結果のうち、FRHIとNPVIとの相関係数を算出したところ、図15に示すように、FRHIとNPVIとの間には一貫して高い一致が認められた。例えば、再還流後90〜120秒の区間(図14の第3〜第4ブロック)では、健常青年群の相関係数がr=0.80であり、糖尿病患者群の相関係数はr=0.75であった。
さらに、健常青年群に対する糖尿病患者群の血管拡張能の低下について、再還流後90〜150秒の区間における各指標の平均値±標準誤差の値をグラフ化したものを図16に示す。図16に示すように、FRHIでは健常青年群と糖尿病患者群との間に有意な群間差は認められなかった。一方、DI、NPVIおよびSIでは、健常青年群と糖尿病患者群との間に、それぞれ有意な減少が認められ(それぞれ−33%,−51%,−54%)、健常青年群と糖尿病患者群とが明確に区別された。
また、FRHIに対するDI、NPVIおよびSIの過小評価および過大評価について、平均値±標準誤差の値をグラフ化したものを図17に示す。図17に示すように、少なくともNPVIおよびSIについては、Endo−PAT法に係るFRHIに対して優位性を示唆する結果が得られた。
以上の本実施例1によれば、脈波振幅だけを標的とするFRHIに対して、本発明に係る血管拡張反応指標は脈波振幅に加えて動脈容積の増加も反映し、血圧変動の影響をも総合した評価をできることが示唆された。また、動脈硬化疾患の判別において、本発明に係る血管拡張反応指標は、FRHIに対して有用性および優位性があることが示された。
本実施例2では、上述した実施例1における糖尿病患者27名と、当該糖尿病患者群と同年代で循環器系疾患のない泌尿器科の前立腺がん患者15名とを被験者とし、本発明に係る血管拡張反応指標のうち、NPVI、DIおよびSIの三つを算出した。その結果を図18に示す。図18に示すように、糖尿病患者群の血管拡張反応指標は、いずれも前立腺がん患者群に比べて有意に低値であり、DIは−53%であり、NPVIは−58%であり、SIは−47%であった。
以上の本実施例2によれば、本発明に係る血管拡張反応指標は、血圧を測定することなく指動脈の細小血管における早期の動脈硬化の徴候を簡単かつ高精度に検出できることが示された。
本実施例3では、本発明に係る血管拡張反応指標のうち、NPVI、DIおよびSIの三つについて、血管拡張時における感度を対比するシミュレーションを行った。まず、図19に示すように、BVをX軸とし、lnNPVをY軸とするグラフにおいて、駆血前安静時の原点(BVt、lnNPVt)と再還流後第i拍目のS点(BVt、lnNPVt)とを結ぶ直線がX軸(BV軸)に対してなす角度をαとした。
また、図19に示すように、駆血前安静時のBN線(BV−lnNPV回帰直線)を平行に移動させた直線であって前記S点を通る直線(R’線)に対して、前記原点から下ろした垂線がなす角度をβとし、当該垂線がX軸(BV軸)に対してなす角度をθとした。このとき、以下の二つの関係式が成り立つ。
SI=DI/cos(β)
NPVI=DI×sin(α)/cos(β)
よって、NPVI、DIおよびSIの相対感度について、以下の三つの関係式が成り立つ。
SI/DI=1/cos(β)
NPVI/DI=sin(α)/cos(β)
SI/NPVI=1/sin(α)
以上において、θが30度の場合における、上記三つの比(SI/DI,NPVI/DI,SI/NPVI)を計算した結果を図20に示す。上述したとおり、血管拡張時にはlnNPVとBVはともに増加すると期待されるが、その時、NPVI/SI=sin(α)は、0<α<π/2であるためNPVI<SIである。また、DI/SI=cos(β)は、0<β<π/2であるためDI≦SIである。よって、図20に示すとおり、血管拡張に対する感度において、理論的に最も優れているのはSIであるといえる。
また、血管拡張時の血行力学的変化は、一方で血管抵抗が低下して平均血圧を低下させるが、他方では血液量の増加により血流量が増し平均血圧を増加させる。このため、これら平均血圧の変動は相殺されるが、そのどちらがより優勢かによって血圧の低下または増加が決定されると考えられる。
その結果として、平均血圧の減少が大きいほどNPVI/DIは増加する。血圧が増加するほど、lnNPVよりBVの増加が優勢となるため、前記角度αは減少し、NPVI/SIは大きく減少する(NPVI≪SI)。一方、前記R’線と直交する直線を境にして血圧が減少しても増加してもDI/SIは減少する(DI<SI)。つまり、血圧の変動に対して、DI,SIおよびNPVIが所定の変動パターンを有することが確認された。
また、血管拡張の効果により血圧が低下する場合、図20に示すように、規準化脈波容積(NPV)は増加するが、血液容積(BV)は低下する。このため、それら規準化脈波容積(NPV)の増加および血液容積(BV)の低下は加重効果をもたらし、NPVI対BVI差指数(NBI)およびNPVI対BVI比指数(NBI)の増加は強められる。したがって、内皮機能により血管が拡張して血圧が低下する場合、NPVI対BVI差指数(NBI)およびNPVI対BVI比指数(NBI)の感度は向上することが確認された。
以上の本実施例3によれば、本発明に係る血管拡張反応指標である、NPVI、DIおよびSIのうち、血管拡張時における感度が最も高いと考えられるのはSIであることが示された。また、検査時におけるDI,SIおよびNPVIの変動パターンを比較することにより、これらの血行力学的背景を分析できることが示された。さらに、NPVI対BVI差指数(NBI)およびNPVI対BVI比指数(NBI)の感度は、血管拡張時に向上することが示された。
本実施例4では、一定圧クランプA法を用いた両手法について、Endo−PAT法に対する併存的妥当性を確認する実験を行った。
具体的には、動脈硬化を有する糖尿病患者12名を被験者とし、各被験者の左右の第3指において両手法を実施すると同時に、左右の第2指でEndo−PAT法(Endo−PAT2000)を実施した。両手法では、前腕部を5分間駆血した後の反応性充血において、駆血前と駆血解除後の光電容積脈波から算出した規準化脈波容積(NPV)を、駆血側とは反対側の非駆血統制指の規準化脈波容積(NPV)で基準化し、本発明に係る規準化脈波容積指数(NPVI)を算出した。また、駆血前安静時のNPV推定値は、上述した一定圧クランプA法によるシーケンスを用いて算出した。その結果を図21に示す。
図21に示すように、動脈硬化を有する糖尿病患者において、本発明に係る規準化脈波容積指数(NPVI)と、Endo−PAT法に係るFRHI(フラミンガム反応性充血指数)との間には、極めて高い一致性が確認された(r=0.97)。これは、糖尿病患者に特有の末梢神経におけるダメージと、Endo−PAT法のプローブによる指の圧迫状況とが似たような条件を生じさせ、駆血解除時に血を押し出そうとする反射機能が働かなかったものと考えられる。
以上の本実施例4によれば、本発明に係る両手法には、Endo−PAT法に対する併存的妥当性が確認され、Endo−PAT検査と同様の臨床的有用性を有することが示された。
本実施例5では、一定圧クランプA法を用いた両手法の臨床的有用性を確認する実験を行った。
具体的には、内皮機能障害と動脈硬化の進展が報告されている糖尿病患者14名、および対照となる前立腺がん患者19名に対して、実施例4と同一の方法で一定圧クランプA法によるシーケンスを用いた両手法を実施した。そして、各被験者について、本発明に係る規準化脈波容積指数(NPVI)、血液容積指数(BVI)、拡張距離指数(DI)および単純距離指数(SI)を算出して比較した。その結果を図22に示す。
図22に示すように、糖尿病患者の血液容積指数(BVI)および拡張距離指数(DI)は、前立腺がん患者の血液容積指数(BVI)および拡張距離指数(DI)と比較して有意に低い値であった。一方、規準化脈波容積指数(NPVI)および単純距離指数(SI)については、糖尿病患者と前立腺がん患者との間に有意差は認められなかった。
以上の本実施例5によれば、糖尿病患者と前立腺がん患者とを判別する指標としては、脈動を表す規準化脈波容積指数(NPVI)や単純距離指数(SI)よりも、血液容積指数(BVI)や、規準化脈波容積指数(NPVI)と血液容積指数(BVI)の両方に影響される拡張距離指数(DI)の方がより有効であることが示された。
本実施例6では、一定圧クランプA法を用いた両手法について、ストレス評価への応用可能性を確認する実験を行った。
従来、FMD法やEndo−PAT法を用いた研究では、精神的ストレス、抑うつおよび怒りなどの人格特性が血管内皮機能を抑制することが報告されてきた。そこで、本実施例6では、両手法を用いて本発明に係る血管拡張反応指標を算出し、ストレス、生活習慣、心理社会的要因との関係を健常女子青年で調査した。
具体的には、健常青年女子40名を被験者とし、各被験者の左右の第2指で両手法を実施すると同時に、左右の第3指でEndo−PAT法(Endo−PAT2000)を同時に実施した。この際、実施例4と同一の方法で一定圧クランプA法によるシーケンスを用いた両手法を実施した。また、各被験者に対して、質問紙法で体格、生活習慣、および怒り関連人格特性等を含む心理社会的な諸要因を調査した。その結果を図23に示す。
図23に示すように、駆血前の検査指における規準化脈波容積(NPV)の基礎水準を調整した偏相関分析において、規準化脈波容積指数(NPVI)との有意な偏相関(r)は、体脂肪率(−0.40)、状態−特性怒り表出尺度(STAXI−2)の内心での怒り表出(−0.45)、抑制しない怒り表出指数(−0.36)、Buss−Perry攻撃性尺度(BAQ:Buss-Perry Aggression Questionnaire)の言語的攻撃(−0.41)であった。
また、図23に示すように、NB反応性指数(NBI)としてのNPVI対BVI差指数(NBI)およびNPVI対BVI比指数(NBI)との有意な偏相関(r)はそれぞれ、体脂肪率(−0.43,−0.47)、状態−特性怒り表出尺度(STAXI−2)の内心での怒り表出(−0.45,−0.46)、怒り表出指数(−0.40,−0.43)、Buss−Perry攻撃性尺度(BAQ)の言語的攻撃(NBI;−0.43)、BAQ敵意性(NBI;−0.40)、BAQ総合(−0.35,−0.43)であった。
以上の本実施例6によれば、両手法により算出された各指標と、生活習慣および怒り関連特性との有意な関係が認められた。このため、日常生活での生活習慣(ライフスタイル)、ならびに精神ストレスに関連する交感神経活動性の慢性的な亢進が血管内皮機能を抑制し、動脈硬化の早期の徴候につながる可能性が示唆され、両手法を用いた健常者のストレス評価への応用可能性が示唆された。また、NPVI対BVI差指数(NBI)およびNPVI対BVI比指数(NBI)は、規準化脈波容積指数(NPVI)よりも多くの高い相関が認められ、怒り感情に関連したストレス評価指標としての有用性が示唆された。
本発明において、片手のみで検査可能な片手法は、両手で検査する両手法よりも一層簡素であるため、本発明に係る指細小動脈拡張能連続検査装置の製品化には好適である。そこで、以下の実施例7〜9では、一定圧クランプB法を用いた片手法の妥当性を確認するため、両手で行うEndo−PAT法との一致性を検証するための一連の実験を行った。
なお、片手法としては、検査指の基節部を5分間駆血した後、当該検査指の末節部に反応性充血を惹起させ、駆血前と駆血解除後の光電容積脈波から算出した規準化脈波容積(NPV)を、同じ手における統制指の規準化脈波容積(NPV)で基準化した規準化脈波容積指数(NPVI)を算出した。
まず、本実施例7では、健常青年14名を被験者とし、片手法では左手の第2指における基節部を駆血し、Endo−PAT法では右手の前腕部を5分間同時に駆血した。Endo−PAT法では、検査前に上腕部で測定した拡張期血圧より10mmHg低い圧を決定し、その圧と同じ圧を検査指と統制指に、駆血前、駆血中、駆血解除後の全検査時間を通して加え続けた。そして、当該圧迫条件を本発明に係る片手法でも同一とするため、駆血前安静時のNPV推定値は、上腕拡張期血圧−10mmHgの一定圧による一定圧クランプB法を用いて算出した。
そして、駆血解除後における30秒毎の8区間(P1−P8)について、左手の第2指における末節部(片手法プローブ)と、右手の第2指における末節部(Endo−PAT2000プローブ)とで駆血前からの拡張反応を比較した。その結果、両者の相関は極めて高かった(P2−P7の順にr=0.92,0.96,0.96,0.96,0.97,0.97)。
以上の本実施例7によれば、腕を駆血するEndo−PAT検査と、反対側の同じ指を駆血する片手法とでは、それぞれの検査指における駆血前安静時から駆血解除後の拡張反応が極めて高い相関を示すことが確認された。
つぎに、本実施例8では、健常青年を被験者とし、左手の第2指における基節部のみを駆血した。そして、12名の被験者に対しては、左右の第2指における末節部をEndo−PAT法で測定するとともに、左右の第4指への影響を片手連続法で測定した(隣接4指条件)。また、10名の被験者に対しては、左右の第2指における末節部をEndo−PAT法で測定するとともに、左右の第1指および第5指への影響を片手連続法で測定した(隣接1&5指条件)。そして、いずれの条件においても、駆血前安静時の片手法による規準化脈波容積指数(NPVI)は一定圧クランプB法を用いて測定した。
その結果、第2指の駆血解除後90〜150秒区間における規準化脈波容積指数(NPVI)の平均値は、上記隣接4指条件では0.41であり、上記隣接1&5指条件では0.28であった。これに対し、充血の波及効果を示す規準化脈波容積指数(NPVI)の平均値は、第4指では0.004であり、第1指では−0.02であり、第5指では−0.05であった。また、左右の第2指から算出される規準化脈波容積指数(NPVI)を基準(第2指基準NPVI)とし、検査側の左第2指に対して、統制側の右第2指に替えて左第4指を用いて規準化脈波容積指数(NPVI)を計算した(第4指統制NPVI)。同様に、左第2指に対して、左第1指および左第5指を用いて規準化脈波容積指数(NPVI)を計算した(それぞれ第1指統制NPVI,第5指統制NPVI)。
そして、計算した第4指統制NPVI、第1指統制NPVIおよび第5指統制NPVIのそれぞれについて、第2指基準NPVIとの相関を求めた結果、第4指統制NPVIではr=0.41であり、第1指統制NPVIではr=0.87であり、第5指統制NPVIではr=0.86であった。
以上の本実施例8によれば、第2指の基節部に対する駆血が、他の指の規準化脈波容積指数(NPVI)に及ぼす波及効果の大きさの点では、第4指が最小ではあったが、波及効果によって第2指基準NPVIとの相関性を損なう悪影響が少ない点では第1指および第5指が優れていることが確認された。よって、片手法において、第2指の基節部を駆血する場合、第1指または第5指を統制指として使用することが最適であることが示された。
本実施例9では、健常青年18名を被験者とし、全く独立した4箇所の検査部位を用いて片手法とEndo−PAT法との一致度を確認する実験を行った。具体的には、片手法では、左第2指の基節部を駆血するとともに、左第2指の末節部を検査部位とし、左第1指の末節部を統制部位とした。また、片手法による測定と同時に、右前腕部を駆血してEndo−PAT法の同時測定を行った。具体的には、9名の被験者に対しては、右第4指を検査指とし、左第4指を統制指とした(PAT4指条件)。また、別の9名の被験者に対しては、右第5指を検査指とし、左第5指を統制指とした(PAT5指条件)。
そして、片手法に係る規準化脈波容積指数(NPVI)およびEndo−PAT法に係るFRHI(フラミンガム反応性充血指数)を算出した。また、駆血前安静時のNPV推定値は、上述した一定圧クランプB法によるシーケンスを用いて測定した。その結果、図24に示すように、駆血解除後の90〜150秒区間における片手法とEndo−PAT法との相関は極めて高く、上記PAT4指条件ではr=0.84であり、上記PAT5指条件ではr=0.90であった。
以上の本実施例9によれば、片手法では、どちらか片方の手において、第2指の基節部を駆血し、第2指の末節部を検査部位とし第1指または第5指の末節部を統制部位とする方法を採用することで、統制部位への充血の波及効果の悪影響は最小となることが示された。また、本発明に係る片手法は、両手を使用し腕を駆血するEndo−PAT法と同時に行った場合でも、極めて高い相関性を示すことが実証された。
片手法は、片手だけで実施可能なため検査装置の一層の簡素化が可能である。また、片手法は、光計測であるため繰り返し使用可能な簡易的カフで実施でき、Endo−PAT法に勝る有用性が期待される。この点、以上の実施例7〜9によれば、片手法とEndo−PAT法との相関性は極めて高いことが実証された。よって、本発明に係る片手法は、既に臨床的な有用性が確立されているEndo−PAT検査の代替検査として使用可能であると考えられる。
また、Endo−PAT法と両手法に共通する腕駆血は痛みを伴うため、特に血圧が高い患者に対する侵襲が大きい。Endo−PAT法の腕圧迫に伴う痛みにより交感神経の興奮が高まると、圧迫解除後の血管拡張は抑制されることが最近報告されている。このため、腕の圧迫に伴う痛みの影響は、血管内皮機能検査において無視できない誤差要因になりうる。一方、片手法の指駆血には痛みがほとんどないため、痛みに伴う交感神経の興奮が誤差要因として影響するのを抑制する。よって、片手法の内皮機能検査としての精度はEndo−PAT法に勝ることが示唆される。
なお、本発明に係る指細小動脈拡張能連続検査プログラム、指細小動脈拡張能連続検査装置および指細小動脈拡張能連続検査方法は、前述した実施形態および実施例に限定されるものではなく、適宜変更することができる。
例えば、上述した本実施形態では、反応性充血を惹起するための駆血時間を5分間としているが(標準法)、この構成に限定されるものではなく、簡易的に3分間程度に短縮してもよい(簡易法)。また、上述したとおり、本実施形態では、両手における同じ指の一方および他方をそれぞれ検査指および統制指としているが(両手法)、この構成に限定されるものではなく、片手における異なる指をそれぞれ検査指および統制指としてもよい(片手法)。
つまり、本発明に係る指細小動脈拡張能連続検査プロトコルとしては、以下の4種類を適宜採用することが可能である。
1.両手法かつ標準法
2.両手法かつ簡易法
3.片手法かつ標準法
4.片手法かつ簡易法
また、本発明に係る各血管拡張反応指標の数値範囲に対応させて、指動脈の血管拡張反応を示す表示テーブル(例:柔らかい,普通,硬い)を記憶手段4に格納しておき、血管拡張反応指標算出部54によって算出された血管拡張反応指標の値に基づき、図示しない表示手段や印刷手段から指動脈の血管拡張反応を示すデータを出力するようにしてもよい。
近年、生活習慣病の予防は国の健康医療政策の最重要課題となっており、生活習慣病の急増を受けて、メタボリックシンドロームを対象にした特定健康診査・保健指導が平成20年度から開始された。中でも動脈硬化を含む血管内皮機能障害に関する診断と介入は、心血管疾患と脳血管障害を予防するのに特に重要である。例えば、生活習慣病の一つである糖尿病は、動脈硬化に伴う様々な合併症を引き起こし、糖尿病網膜症による失明者は年間約3000人に昇る。
本発明に係る指細小動脈拡張能連続検査方法のように、細小動脈をターゲットとする動脈硬化の早期診断法は、高齢者、障害者、患者の生活の質の向上に資する。第一に、細小動脈内皮機能検査が直接役立つ臨床ケースには、微小循環障害を伴い失明の主要原因ともなる糖尿病網膜症、網膜静脈閉塞症、加齢黄斑変性症、循環器領域の心不全、腎臓透析適用へと進展する糖尿病腎症、細動脈硬化を加速させる高血圧症、動脈硬化が背景にある勃起障害などがある。
第二に、細小動脈の病理は動脈硬化の自然史の中で最も初期に、大血管の動脈硬化と肥厚に先行して現れることから、予防医学の重要な指標になると思われる。すなわち、本願発明者による細小動脈弾力性とスティフネス検査(FEI・FSI法)や細小動脈内皮機能検査(FCR法)を含め、本発明に係る指細小動脈拡張能連続検査は、虚血性心疾患(狭心症・心筋梗塞)や脳梗塞といった重要な疾患を含む生活習慣病全体のプレクリニカルな段階での疾病予測、スクリーニング、診断、および長期の経過観察に役立ち、医療現場への波及効果は一層広範である。
第三に、早期の血管の健康低下は可逆的であるから、一般健常人口の健康管理および慢性に蓄積する日常ストレスの評価、ならびに保健指導の介入効果の判定などの際に、バイオマーカーとして活用できると期待される。例えば、メタボリック症候群や糖尿病などの介入型特定保健指導では介入評価指標として有用なバイオマーカーが要請されている。
数十年をかけて緩やかに進展する動脈硬化は、日本人の主要な死因をなす心血管疾患と脳血管障害の遠因であり、その増悪過程の制御は国民医療の重要な課題である。動脈硬化の予防戦略とヘルスプロモーションは国の予防医療・地域医療政策ならびに介護福祉政策上大きな意義がある。特に、プレクリニカル段階での動脈硬化の早期診断と介入が中核病院だけでなく中小の診療所に至るまで広く普及していくなら、国のレベルで実効性のある広範な生活習慣病の予防医療実現につながる。
動脈硬化を最早期の段階で診断すべく血管の健康を査定する既存の検査として、血管内皮機能検査のFMD法とEndo−PAT法、血管硬度(スティフネス)検査のPWA検査とCAVI検査等が導入されている。しかしながら、いずれも検査の原理的問題と医療機関での様々な実際的問題を払拭できない。このため、中核病院での精密診断および小規模病院での日常診療のいずれにおいても、それらを十分に普及・活用しきれていない。その結果、動脈硬化が進展して発症する生活習慣病の予防医療の障害となっている。また、検査時間が20分もかかるため迅速性に欠け、患者の精神的な緊張の影響を受けやすい上、本体価格やランニングコストが高いなどの現実的な問題もある。さらに、内皮機能検査に次ぐ早期診断の検査は、細小動脈スティフネス検査だが、国内外において適切な臨床検査は存在しておらず、新しい簡易検査法の開発が急務と考えられている。
すなわち、新たな検査法には、既存検査に勝る原理的な優位性を確保する点で臨床的有用性に遜色がなく、病院診療と在宅医療の両方に活用でき、小型・軽量・低価格で患者の身体的・精神的・時間的負担も軽いこと、しかも、医師と検査者にとって使いやすいことが求められる。
従来の内皮機能検査は、一回の検査に20分以上の検査時間を要するため、ヘルスケア機器としての普及には制約となる。しかしながら、本発明に係る指細小動脈拡張能連続検査方法は、小型化・軽量化・簡素化によりウエアラブルな検査機にまで改良することが可能である。特に、片手における異なる指をそれぞれ検査指および統制指とする上記片手法によれば、簡便であるため、体動の少ない就寝時に睡眠を妨害せずに自動的に作動させるプロトコルにより検査時間の制約は解消され、毎日の健康管理に役立つヘルスケア機器としても製品化することができる。
近年、事業所の職員を対象にしたメンタルストレス評価が法令により義務化されたが、簡便な質問紙による評価にとどまっているのが現状であり、客観的なマーカーによって慢性的精神ストレスを評価する技術は未発達である。本発明に係る指細小動脈拡張能連続検査方法は簡便性に優れるため、実施例6で示したとおり、健康に対するメンタルストレスの影響を評価する手段として、質問紙法を補う客観テストとしての応用と製品化の可能性がある。
以上のとおり、本発明に係る指細小動脈拡張能連続検査方法の将来的な用途と利用分野としては、極めて広範なヘルスプロモーションと健康支援の現場、すなわち、児童生徒を預かる学校保健室、職業人の健康管理施設、商業スポーツ施設、高齢者の介護福祉施設等における健康教育と健康管理、また、健康食品や医薬の評価にも活用可能である。
また、装置の小型化や簡素化がより一層可能となれば、血圧計に組み込んだ安価な健康機器として家庭用に広く普及する可能性も考えられる。すなわち、FMD法やEndo−PAT法のように、医療保険制度の需要に応じる医療施設への供給はもとより、わが国における高齢化を背景にして、疾病予防と介護予防の潜在需要の増大に応じ、国民のQOL(Quality Of Life)を高める医療・福祉・教育、ならびに食品健康関連など広範な医療生活産業に貢献できるものと考えられる。
1 指細小動脈拡張能連続検査装置
1a 指細小動脈拡張能連続検査プログラム
2 指圧迫手段
3 脈波検出手段
4 記憶手段
5 演算処理手段
21 カフ
22 空気ポンプ
31 光電式センサ
31a 発光部
31b 受光部
32 脈波アンプ
41 プログラム記憶部
42 安静時脈波記憶部
43 再灌流時脈波記憶部
44 カフ圧データ記憶部
51 カフ圧制御部
52 NPV算出部
53 BV算出部
54 血管拡張反応指標算出部
55 安静時平均血圧推定部
56 NPV線算出部
57 NPV推定値算出部
58 NPVI算出部
59 BV線算出部
60 BV推定値算出部
61 BVI算出部
62 BN線算出部
63 DI算出部
64 SI算出部
65 NBI算出部

Claims (14)

  1. 指動脈の血管拡張反応を一心拍ごとに連続検査する指細小動脈拡張能連続検査プログラムであって、
    前記血管拡張反応を検査する検査指および前記血管拡張反応を基準化する統制指の各指について、駆血前の安静時に所定のシーケンスで圧迫したときの脈波データである安静時脈波を記憶する安静時脈波記憶部と、
    前記検査指または前記検査指側の腕を駆血した後の再灌流時において、前記各指を一定圧で圧迫し続けたときの脈波データである再灌流時脈波を記憶する再灌流時脈波記憶部と、
    前記安静時脈波および前記再灌流時脈波に基づいて、前記各指について、脈波の交流成分の振幅を当該脈波の直流成分の平均値で除算してなる規準化脈波容積(NPV)の自然対数であるNPV自然対数変換値(lnNPV)を一心拍ごとに算出するNPV算出部と
    前記各指の安静時および再灌流時における前記NPV自然対数変換値(lnNPV)に基づいて、再灌流後の任意の心拍における前記血管拡張反応を表す血管拡張反応指標を算出する血管拡張反応指標算出部と
    駆血前の安静時に所定のシーケンスで前記各指を圧迫する各カフのカフ圧を記憶するカフ圧データ記憶部と
    してコンピュータを機能させるとともに、
    前記血管拡張反応指標算出部は、下記(i)〜(iv)の処理部として機能する、指細小動脈拡張能連続検査プログラム;
    (i)前記安静時脈波に基づいて、安静時の各圧迫試行における前記規準化脈波容積(NPV)が最大時のカフ圧をそれぞれ特定し、前記各指について、特定した前記各カフ圧の平均値または中央値を駆血前の安静時平均血圧として推定する安静時平均血圧推定部;
    (ii)駆血前安静時のカフ圧と駆血前安静時の前記NPV自然対数変換値(lnNPV)とのデータ対を回帰分析し、前記各指について、前記カフ圧と前記NPV自然対数変換値(lnNPV)との回帰直線であるNPV線を算出するNPV線算出部;
    (iii)前記各指のNPV線に基づいて、前記各指について、前記カフ圧が前記安静時平均血圧の所定割合であるときの前記NPV自然対数変換値(lnNPV)を駆血前安静時のNPV推定値として算出するNPV推定値算出部;
    (iv)下記式(1)により、前記血管拡張反応指標の一つである規準化脈波容積指数(NPVI)を算出するNPVI算出部;
    NPVI =NT −NC …式(1)
    ただし、各記号は以下を表す。
    NPVI :再灌流後第i拍目の規準化脈波容積指数(NPVI)
    NT =NPVt −NPVt
    NC =NPVc −NPVc
    NPVt :検査指側の再灌流後第i拍目におけるNPV自然対数変換値(lnNPV)
    NPVt :検査指側の駆血前安静時のNPV推定値
    NPVc :統制指側の再灌流後第i拍目におけるNPV自然対数変換値(lnNPV)
    NPVc :統制指側の駆血前安静時のNPV推定値
  2. 指動脈の血管拡張反応を一心拍ごとに連続検査する指細小動脈拡張能連続検査プログラムであって、
    前記血管拡張反応を検査する検査指および前記血管拡張反応を基準化する統制指の各指について、駆血前の安静時に所定のシーケンスで圧迫したときの脈波データである安静時脈波を記憶する安静時脈波記憶部と、
    前記検査指または前記検査指側の腕を駆血した後の再灌流時において、前記各指を一定圧で圧迫し続けたときの脈波データである再灌流時脈波を記憶する再灌流時脈波記憶部と、
    記安静時脈波および前記再灌流時脈波に基づいて、前記各指について、指組織のみの吸光量を脈波の直流成分の平均値で除算した値の自然対数である血液容積(BV)を一心拍ごとに算出するBV算出部と、
    記各指の安静時および再灌流時における前記血液容積(BV)に基づいて、再灌流後の任意の心拍における前記血管拡張反応を表す血管拡張反応指標を算出する血管拡張反応指標算出部と
    駆血前の安静時に所定のシーケンスで前記各指を圧迫する各カフのカフ圧を記憶するカフ圧データ記憶部と
    してコンピュータを機能させるとともに、
    前記血管拡張反応指標算出部は、下記(i),(v)〜(vii)の処理部として機能する、指細小動脈拡張能連続検査プログラム;
    (i)前記安静時脈波に基づいて、安静時の各圧迫試行における、脈波の交流成分の振幅を当該脈波の直流成分の平均値で除算してなる規準化脈波容積(NPV)が最大時のカフ圧をそれぞれ特定し、前記各指について、特定した前記各カフ圧の平均値または中央値を駆血前の安静時平均血圧として推定する安静時平均血圧推定部;
    (v)駆血前安静時のカフ圧と駆血前安静時の前記血液容積(BV)とのデータ対を回帰分析し、前記各指について、前記カフ圧と前記血液容積(BV)との回帰直線であるBV線を算出するBV線算出部;
    (vi)前記各指のBV線に基づいて、前記各指について、前記カフ圧が安静時平均血圧の所定割合であるときの前記血液容積(BV)を駆血前安静時のBV推定値として算出するBV推定値算出部;
    (vii)下記式(2)により、前記血管拡張反応指標の一つである血液容積指数(BVI)を算出するBVI算出部;
    BVI =BT −BC …式(2)
    ただし、各記号は以下を表す。
    BVI :再灌流後第i拍目の血液容積指数(BVI)
    BT =BVt −BVt
    BC =BVc −BVc
    BVt :検査指側の再灌流後第i拍目における血液容積(BV)
    BVt :検査指側の駆血前安静時のBV推定値
    BVc :統制指側の再灌流後第i拍目における血液容積(BV)
    BVc :統制指側の駆血前安静時のBV推定値
  3. 指動脈の血管拡張反応を一心拍ごとに連続検査する指細小動脈拡張能連続検査プログラムであって、
    前記血管拡張反応を検査する検査指および前記血管拡張反応を基準化する統制指の各指について、駆血前の安静時に所定のシーケンスで圧迫したときの脈波データである安静時脈波を記憶する安静時脈波記憶部と、
    前記検査指または前記検査指側の腕を駆血した後の再灌流時において、前記各指を一定圧で圧迫し続けたときの脈波データである再灌流時脈波を記憶する再灌流時脈波記憶部と、
    前記安静時脈波および前記再灌流時脈波に基づいて、前記各指について、脈波の交流成分の振幅を当該脈波の直流成分の平均値で除算してなる規準化脈波容積(NPV)の自然対数であるNPV自然対数変換値(lnNPV)を一心拍ごとに算出するNPV算出部、および前記安静時脈波および前記再灌流時脈波に基づいて、前記各指について、指組織のみの吸光量を脈波の直流成分の平均値で除算した値の自然対数である血液容積(BV)を一心拍ごとに算出するBV算出部と、
    前記各指の安静時および再灌流時における前記NPV自然対数変換値(lnNPV)および前記各指の安静時および再灌流時における前記血液容積(BV)に基づいて、再灌流後の任意の心拍における前記血管拡張反応を表す血管拡張反応指標を算出する血管拡張反応指標算出部と
    してコンピュータを機能させるとともに、
    前記血管拡張反応指標算出部は、下記(viii),(ix)の処理部として機能する、指細小動脈拡張能連続検査プログラム;
    (viii)駆血前安静時の前記血液容積(BV)と駆血前安静時の前記NPV自然対数変換値(lnNPV)とのデータ対を回帰分析し、前記各指について、前記血液容積(BV)と前記NPV自然対数変換値(lnNPV)との回帰直線であるBN線を算出するBN線算出部;
    (ix)下記式(3)により、前記血管拡張反応指標の一つである拡張距離指数(DI)を算出するDI算出部;
    DI =DT *SGNT −DC *SGNC …式(3)
    ただし、各記号は以下を表す。
    DI :再灌流後第i拍目の拡張距離指数(DI)
    DT :検査指側の再灌流後第i拍目におけるデータ点(BV,lnNPV)から駆血前安静時の検査指のBN線に下ろした垂線距離
    DC :統制指側の再灌流後第i拍目におけるデータ点(BV,lnNPV)から駆血前安静時の統制指のBN線に下ろした垂線距離
    SGNT :検査指側の再灌流後第i拍目におけるデータ点(BV,lnNPV)が検査指のBN線に対して右上に位置するとき1(拡張)となり、左下に位置するとき−1(収縮)となる検査指側拡張・収縮判別値
    SGNC :統制指側の再灌流後第i拍目におけるデータ点(BV,lnNPV)が統制指のBN線に対して右上に位置するとき1(拡張)となり、左下に位置するとき−1(収縮)となる統制指側拡張・収縮判別値
  4. 前記血管拡張反応指標算出部は、下記(x)の処理部として機能する、請求項3に記載の指細小動脈拡張能連続検査プログラム;
    (x)下記式(4)により、前記血管拡張反応指標の一つである単純距離指数(SI)を算出するSI算出部;
    SI =ST *SGNS …式(4)
    ただし、各記号は以下を表す。
    SI :再灌流後第i拍目の単純距離指数(SI)
    ST :検査指側の再灌流後第i拍目におけるデータ点(BV,lnNPV)と統制指側の再灌流後第i拍目におけるデータ点(BV,lnNPV)とを結ぶ直線距離
    SGNS :再灌流後第i拍目の前記拡張距離指数(DI )が正の値のとき1となり、負の値のとき−1となる正負判別値
  5. 指動脈の血管拡張反応を一心拍ごとに連続検査する指細小動脈拡張能連続検査プログラムであって、
    前記血管拡張反応を検査する検査指および前記血管拡張反応を基準化する統制指の各指について、駆血前の安静時に所定のシーケンスで圧迫したときの脈波データである安静時脈波を記憶する安静時脈波記憶部と、
    前記検査指または前記検査指側の腕を駆血した後の再灌流時において、前記各指を一定圧で圧迫し続けたときの脈波データである再灌流時脈波を記憶する再灌流時脈波記憶部と、
    前記安静時脈波および前記再灌流時脈波に基づいて、前記各指について、脈波の交流成分の振幅を当該脈波の直流成分の平均値で除算してなる規準化脈波容積(NPV)の自然対数であるNPV自然対数変換値(lnNPV)を一心拍ごとに算出するNPV算出部、および前記安静時脈波および前記再灌流時脈波に基づいて、前記各指について、指組織のみの吸光量を脈波の直流成分の平均値で除算した値の自然対数である血液容積(BV)を一心拍ごとに算出するBV算出部と、
    前記各指の安静時および再灌流時における前記NPV自然対数変換値(lnNPV)および前記各指の安静時および再灌流時における前記血液容積(BV)に基づいて、再灌流後の任意の心拍における前記血管拡張反応を表す血管拡張反応指標を算出する血管拡張反応指標算出部と
    してコンピュータを機能させるとともに、
    前記血管拡張反応指標算出部は、下記(i)〜(vii),(xi)の処理部として機能する、指細小動脈拡張能連続検査プログラム;
    (i)前記安静時脈波に基づいて、安静時の各圧迫試行における前記規準化脈波容積(NPV)が最大時のカフ圧をそれぞれ特定し、前記各指について、特定した前記各カフ圧の平均値または中央値を駆血前の安静時平均血圧として推定する安静時平均血圧推定部;
    (ii)駆血前安静時のカフ圧と駆血前安静時の前記NPV自然対数変換値(lnNPV)とのデータ対を回帰分析し、前記各指について、前記カフ圧と前記NPV自然対数変換値(lnNPV)との回帰直線であるNPV線を算出するNPV線算出部;
    (iii)前記各指のNPV線に基づいて、前記各指について、前記カフ圧が前記安静時平均血圧の所定割合であるときの前記NPV自然対数変換値(lnNPV)を駆血前安静時のNPV推定値として算出するNPV推定値算出部;
    (iv)下記式(1)により、前記血管拡張反応指標の一つである規準化脈波容積指数(NPVI)を算出するNPVI算出部;
    NPVI =NT −NC …式(1)
    (v)駆血前安静時のカフ圧と駆血前安静時の前記血液容積(BV)とのデータ対を回帰分析し、前記各指について、前記カフ圧と前記血液容積(BV)との回帰直線であるBV線を算出するBV線算出部;
    (vi)前記各指のBV線に基づいて、前記各指について、前記カフ圧が安静時平均血圧の所定割合であるときの前記血液容積(BV)を駆血前安静時のBV推定値として算出するBV推定値算出部;
    (vii)下記式(2)により、前記血管拡張反応指標の一つである血液容積指数(BVI)を算出するBVI算出部;
    BVI =BT −BC …式(2)
    (xi)下記式(5a)または下記式(5b)により、前記血管拡張反応指標の一つであるNB反応性指数(NBI)を算出するNBI算出部;
    NBI Di =NPVI −BVI …式(5a)
    NBI Ri =NPVI /BVI +k …式(5b)
    ただし、各記号は以下を表す。
    NPVI :再灌流後第i拍目の規準化脈波容積指数(NPVI)
    NT =NPVt −NPVt
    NC =NPVc −NPVc
    NPVt :検査指側の再灌流後第i拍目におけるNPV自然対数変換値(lnNPV)
    NPVt :検査指側の駆血前安静時のNPV推定値
    NPVc :統制指側の再灌流後第i拍目におけるNPV自然対数変換値(lnNPV)
    NPVc :統制指側の駆血前安静時のNPV推定値
    BVI :再灌流後第i拍目の血液容積指数(BVI)
    BT =BVt −BVt
    BC =BVc −BVc
    BVt :検査指側の再灌流後第i拍目における血液容積(BV)
    BVt :検査指側の駆血前安静時のBV推定値
    BVc :統制指側の再灌流後第i拍目における血液容積(BV)
    BVc :統制指側の駆血前安静時のBV推定値
    NBI Di :再灌流後第i拍目のNPVI対BVI差指数(NBI
    NBI Ri :再灌流後第i拍目のNPVI対BVI比指数(NBI
    NPVI :再灌流後第i拍目の規準化脈波容積指数(NPVI)
    BVI :再灌流後第i拍目の血液容積指数(BVI)
    k:実験により求めた定数
  6. 前記検査指および前記統制指として使用する指は、両手における同じ指であるか、片手における異なる指である、請求項1から請求項のいずれかに記載の指細小動脈拡張能連続検査プログラム。
  7. 再灌流時のカフ圧である前記一定圧は、安静時平均血圧の所定割合の値と同一であるか、または予め測定した上腕部の拡張期血圧に対して、−10mmHgの範囲内にある値である、請求項1から請求項のいずれかに記載の指細小動脈拡張能連続検査プログラム。
  8. 指動脈の血管拡張反応を一心拍ごとに連続検査する指細小動脈拡張能連続検査装置であって、
    前記血管拡張反応を検査する検査指および前記血管拡張反応を基準化する統制指の各指について、駆血前の安静時に所定のシーケンスで圧迫したときの脈波データである安静時脈波を記憶する安静時脈波記憶部と、
    前記検査指または前記検査指側の腕を駆血した後の再灌流時において、前記各指を一定圧で圧迫し続けたときの脈波データである再灌流時脈波を記憶する再灌流時脈波記憶部と、
    前記安静時脈波および前記再灌流時脈波に基づいて、前記各指について、脈波の交流成分の振幅を当該脈波の直流成分の平均値で除算してなる規準化脈波容積(NPV)の自然対数であるNPV自然対数変換値(lnNPV)を一心拍ごとに算出するNPV算出部と
    前記各指の安静時および再灌流時における前記NPV自然対数変換値(lnNPV)に基づいて、再灌流後の任意の心拍における前記血管拡張反応を表す血管拡張反応指標を算出する血管拡張反応指標算出部と
    駆血前の安静時に所定のシーケンスで前記各指を圧迫する各カフのカフ圧を記憶するカフ圧データ記憶部と、
    を有しており、
    前記血管拡張反応指標算出部は、下記(i)〜(iv)の処理部として機能する、指細小動脈拡張能連続検査装置;
    (i)前記安静時脈波に基づいて、安静時の各圧迫試行における前記規準化脈波容積(NPV)が最大時のカフ圧をそれぞれ特定し、前記各指について、特定した前記各カフ圧の平均値または中央値を駆血前の安静時平均血圧として推定する安静時平均血圧推定部;
    (ii)駆血前安静時のカフ圧と駆血前安静時の前記NPV自然対数変換値(lnNPV)とのデータ対を回帰分析し、前記各指について、前記カフ圧と前記NPV自然対数変換値(lnNPV)との回帰直線であるNPV線を算出するNPV線算出部;
    (iii)前記各指のNPV線に基づいて、前記各指について、前記カフ圧が前記安静時平均血圧の所定割合であるときの前記NPV自然対数変換値(lnNPV)を駆血前安静時のNPV推定値として算出するNPV推定値算出部;
    (iv)下記式(1)により、前記血管拡張反応指標の一つである規準化脈波容積指数(NPVI)を算出するNPVI算出部;
    NPVI =NT −NC …式(1)
    ただし、各記号は以下を表す。
    NPVI :再灌流後第i拍目の規準化脈波容積指数(NPVI)
    NT =NPVt −NPVt
    NC =NPVc −NPVc
    NPVt :検査指側の再灌流後第i拍目におけるNPV自然対数変換値(lnNPV)
    NPVt :検査指側の駆血前安静時のNPV推定値
    NPVc :統制指側の再灌流後第i拍目におけるNPV自然対数変換値(lnNPV)
    NPVc :統制指側の駆血前安静時のNPV推定値
  9. 指動脈の血管拡張反応を一心拍ごとに連続検査する指細小動脈拡張能連続検査装置であって、
    前記血管拡張反応を検査する検査指および前記血管拡張反応を基準化する統制指の各指について、駆血前の安静時に所定のシーケンスで圧迫したときの脈波データである安静時脈波を記憶する安静時脈波記憶部と、
    前記検査指または前記検査指側の腕を駆血した後の再灌流時において、前記各指を一定圧で圧迫し続けたときの脈波データである再灌流時脈波を記憶する再灌流時脈波記憶部と、
    記安静時脈波および前記再灌流時脈波に基づいて、前記各指について、指組織のみの吸光量を脈波の直流成分の平均値で除算した値の自然対数である血液容積(BV)を一心拍ごとに算出するBV算出部と、
    記各指の安静時および再灌流時における前記血液容積(BV)に基づいて、再灌流後の任意の心拍における前記血管拡張反応を表す血管拡張反応指標を算出する血管拡張反応指標算出部と
    駆血前の安静時に所定のシーケンスで前記各指を圧迫する各カフのカフ圧を記憶するカフ圧データ記憶部と、
    を有しており、
    前記血管拡張反応指標算出部は、下記(i),(v)〜(vii)の処理部として機能する、指細小動脈拡張能連続検査装置;
    (i)前記安静時脈波に基づいて、安静時の各圧迫試行における、脈波の交流成分の振幅を当該脈波の直流成分の平均値で除算してなる規準化脈波容積(NPV)が最大時のカフ圧をそれぞれ特定し、前記各指について、特定した前記各カフ圧の平均値または中央値を駆血前の安静時平均血圧として推定する安静時平均血圧推定部;
    (v)駆血前安静時のカフ圧と駆血前安静時の前記血液容積(BV)とのデータ対を回帰分析し、前記各指について、前記カフ圧と前記血液容積(BV)との回帰直線であるBV線を算出するBV線算出部;
    (vi)前記各指のBV線に基づいて、前記各指について、前記カフ圧が安静時平均血圧の所定割合であるときの前記血液容積(BV)を駆血前安静時のBV推定値として算出するBV推定値算出部;
    (vii)下記式(2)により、前記血管拡張反応指標の一つである血液容積指数(BVI)を算出するBVI算出部;
    BVI =BT −BC …式(2)
    ただし、各記号は以下を表す。
    BVI :再灌流後第i拍目の血液容積指数(BVI)
    BT =BVt −BVt
    BC =BVc −BVc
    BVt :検査指側の再灌流後第i拍目における血液容積(BV)
    BVt :検査指側の駆血前安静時のBV推定値
    BVc :統制指側の再灌流後第i拍目における血液容積(BV)
    BVc :統制指側の駆血前安静時のBV推定値
  10. 指動脈の血管拡張反応を一心拍ごとに連続検査する指細小動脈拡張能連続検査装置であって、
    前記血管拡張反応を検査する検査指および前記血管拡張反応を基準化する統制指の各指について、駆血前の安静時に所定のシーケンスで圧迫したときの脈波データである安静時脈波を記憶する安静時脈波記憶部と、
    前記検査指または前記検査指側の腕を駆血した後の再灌流時において、前記各指を一定圧で圧迫し続けたときの脈波データである再灌流時脈波を記憶する再灌流時脈波記憶部と、
    前記安静時脈波および前記再灌流時脈波に基づいて、前記各指について、脈波の交流成分の振幅を当該脈波の直流成分の平均値で除算してなる規準化脈波容積(NPV)の自然対数であるNPV自然対数変換値(lnNPV)を一心拍ごとに算出するNPV算出部、および前記安静時脈波および前記再灌流時脈波に基づいて、前記各指について、指組織のみの吸光量を脈波の直流成分の平均値で除算した値の自然対数である血液容積(BV)を一心拍ごとに算出するBV算出部と、
    前記各指の安静時および再灌流時における前記NPV自然対数変換値(lnNPV)および前記各指の安静時および再灌流時における前記血液容積(BV)に基づいて、再灌流後の任意の心拍における前記血管拡張反応を表す血管拡張反応指標を算出する血管拡張反応指標算出部と
    を有しており、
    前記血管拡張反応指標算出部は、下記(viii),(ix)の処理部として機能する、指細小動脈拡張能連続検査装置;
    (viii)駆血前安静時の前記血液容積(BV)と駆血前安静時の前記NPV自然対数変換値(lnNPV)とのデータ対を回帰分析し、前記各指について、前記血液容積(BV)と前記NPV自然対数変換値(lnNPV)との回帰直線であるBN線を算出するBN線算出部;
    (ix)下記式(3)により、前記血管拡張反応指標の一つである拡張距離指数(DI)を算出するDI算出部;
    DI =DT *SGNT −DC *SGNC …式(3)
    ただし、各記号は以下を表す。
    DI :再灌流後第i拍目の拡張距離指数(DI)
    DT :検査指側の再灌流後第i拍目におけるデータ点(BV,lnNPV)から駆血前安静時の検査指のBN線に下ろした垂線距離
    DC :統制指側の再灌流後第i拍目におけるデータ点(BV,lnNPV)から駆血前安静時の統制指のBN線に下ろした垂線距離
    SGNT :検査指側の再灌流後第i拍目におけるデータ点(BV,lnNPV)が検査指のBN線に対して右上に位置するとき1(拡張)となり、左下に位置するとき−1(収縮)となる検査指側拡張・収縮判別値
    SGNC :統制指側の再灌流後第i拍目におけるデータ点(BV,lnNPV)が統制指のBN線に対して右上に位置するとき1(拡張)となり、左下に位置するとき−1(収縮)となる統制指側拡張・収縮判別値
  11. 前記血管拡張反応指標算出部は、下記(x)の処理部として機能する、請求項10に記載の指細小動脈拡張能連続検査装置;
    (x)下記式(4)により、前記血管拡張反応指標の一つである単純距離指数(SI)を算出するSI算出部;
    SI =ST *SGNS …式(4)
    ただし、各記号は以下を表す。
    SI :再灌流後第i拍目の単純距離指数(SI)
    ST :検査指側の再灌流後第i拍目におけるデータ点(BV,lnNPV)と統制指側の再灌流後第i拍目におけるデータ点(BV,lnNPV)とを結ぶ直線距離
    SGNS :再灌流後第i拍目の前記拡張距離指数(DI )が正の値のとき1となり、負の値のとき−1となる正負判別値
  12. 指動脈の血管拡張反応を一心拍ごとに連続検査する指細小動脈拡張能連続検査装置であって、
    前記血管拡張反応を検査する検査指および前記血管拡張反応を基準化する統制指の各指について、駆血前の安静時に所定のシーケンスで圧迫したときの脈波データである安静時脈波を記憶する安静時脈波記憶部と、
    前記検査指または前記検査指側の腕を駆血した後の再灌流時において、前記各指を一定圧で圧迫し続けたときの脈波データである再灌流時脈波を記憶する再灌流時脈波記憶部と、
    前記安静時脈波および前記再灌流時脈波に基づいて、前記各指について、脈波の交流成分の振幅を当該脈波の直流成分の平均値で除算してなる規準化脈波容積(NPV)の自然対数であるNPV自然対数変換値(lnNPV)を一心拍ごとに算出するNPV算出部、および前記安静時脈波および前記再灌流時脈波に基づいて、前記各指について、指組織のみの吸光量を脈波の直流成分の平均値で除算した値の自然対数である血液容積(BV)を一心拍ごとに算出するBV算出部と、
    前記各指の安静時および再灌流時における前記NPV自然対数変換値(lnNPV)および前記各指の安静時および再灌流時における前記血液容積(BV)に基づいて、再灌流後の任意の心拍における前記血管拡張反応を表す血管拡張反応指標を算出する血管拡張反応指標算出部と
    を有しており、
    前記血管拡張反応指標算出部は、下記(i)〜(vii),(xi)の処理部として機能する、指細小動脈拡張能連続検査装置;
    (i)前記安静時脈波に基づいて、安静時の各圧迫試行における前記規準化脈波容積(NPV)が最大時のカフ圧をそれぞれ特定し、前記各指について、特定した前記各カフ圧の平均値または中央値を駆血前の安静時平均血圧として推定する安静時平均血圧推定部;
    (ii)駆血前安静時のカフ圧と駆血前安静時の前記NPV自然対数変換値(lnNPV)とのデータ対を回帰分析し、前記各指について、前記カフ圧と前記NPV自然対数変換値(lnNPV)との回帰直線であるNPV線を算出するNPV線算出部;
    (iii)前記各指のNPV線に基づいて、前記各指について、前記カフ圧が前記安静時平均血圧の所定割合であるときの前記NPV自然対数変換値(lnNPV)を駆血前安静時のNPV推定値として算出するNPV推定値算出部;
    (iv)下記式(1)により、前記血管拡張反応指標の一つである規準化脈波容積指数(NPVI)を算出するNPVI算出部;
    NPVI =NT −NC …式(1)
    (v)駆血前安静時のカフ圧と駆血前安静時の前記血液容積(BV)とのデータ対を回帰分析し、前記各指について、前記カフ圧と前記血液容積(BV)との回帰直線であるBV線を算出するBV線算出部;
    (vi)前記各指のBV線に基づいて、前記各指について、前記カフ圧が安静時平均血圧の所定割合であるときの前記血液容積(BV)を駆血前安静時のBV推定値として算出するBV推定値算出部;
    (vii)下記式(2)により、前記血管拡張反応指標の一つである血液容積指数(BVI)を算出するBVI算出部;
    BVI =BT −BC …式(2)
    (xi)下記式(5a)または下記式(5b)により、前記血管拡張反応指標の一つであるNB反応性指数(NBI)を算出するNBI算出部;
    NBI Di =NPVI −BVI …式(5a)
    NBI Ri =NPVI /BVI +k …式(5b)
    ただし、各記号は以下を表す。
    NPVI :再灌流後第i拍目の規準化脈波容積指数(NPVI)
    NT =NPVt −NPVt
    NC =NPVc −NPVc
    NPVt :検査指側の再灌流後第i拍目におけるNPV自然対数変換値(lnNPV)
    NPVt :検査指側の駆血前安静時のNPV推定値
    NPVc :統制指側の再灌流後第i拍目におけるNPV自然対数変換値(lnNPV)
    NPVc :統制指側の駆血前安静時のNPV推定値
    BVI :再灌流後第i拍目の血液容積指数(BVI)
    BT =BVt −BVt
    BC =BVc −BVc
    BVt :検査指側の再灌流後第i拍目における血液容積(BV)
    BVt :検査指側の駆血前安静時のBV推定値
    BVc :統制指側の再灌流後第i拍目における血液容積(BV)
    BVc :統制指側の駆血前安静時のBV推定値
    NBI Di :再灌流後第i拍目のNPVI対BVI差指数(NBI
    NBI Ri :再灌流後第i拍目のNPVI対BVI比指数(NBI
    NPVI :再灌流後第i拍目の規準化脈波容積指数(NPVI)
    BVI :再灌流後第i拍目の血液容積指数(BVI)
    k:実験により求めた定数
  13. 前記検査指および前記統制指として使用する指は、両手における同じ指であるか、片手における異なる指である、請求項から請求項12のいずれかに記載の指細小動脈拡張能連続検査装置。
  14. 再灌流時のカフ圧である前記一定圧は、安静時平均血圧の所定割合の値と同一であるか、または予め測定した上腕部の拡張期血圧に対して、−10mmHgの範囲内にある値である、請求項から請求項13のいずれかに記載の指細小動脈拡張能連続検査装置。
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