本開示の一態様に係る電子機器は、心電位計測用の第一電極及び第二電極と、前記第二電極より前記第一電極に近い位置に設けられ、脈波を検知する脈波センサと、前記第一電極で取得された信号を増幅する第一増幅部と、前記第一電極と前記第一増幅部の端子とを電気的に接続し、前記信号を伝達する第一配線と、前記第一電極及び前記第一配線をシールドする第一シールド部材と、第一バッファ回路、及び、前記第一バッファ回路の駆動電流より駆動電流が大きい第二バッファ回路を有し、前記脈波センサが前記脈波を計測する所定のタイミング前に、前記第一バッファ回路が生成する前記信号に対する第一生成信号を前記第一シールド部材への印加を開始し、前記所定のタイミングにおいて、前記第二バッファ回路が生成する前記信号に対する第二生成信号を前記第一シールド部材に印加を開始するシールド電位制御器とを備える。
上記態様によれば、電子機器は、脈波センサを測定するタイミングにおいて、第一電極及び第一配線が、駆動電流が比較的大きい第二バッファ回路により駆動されるシールド部材によりシールドされる。これにより、電極により取得した心電位に、脈波信号によるノイズが混入することが抑制される。これは、心電位と比べて脈波信号の振幅が大きく、また、心電位と脈波信号との位相が異なるので、駆動電流が比較的大きいバッファ(例えば1mA)の出力線を用いてシールドすることが可能であることを利用したものである。このように、電子機器は、脈波と心電位との同時計測における心電位の信号品質の劣化を抑制することができる。
例えば、前記第一電極は、人の一の指に接触して前記信号を取得し、前記脈波センサは、前記一の指から前記脈波を検知する。
上記態様によれば、電子機器は、人の一の指から心電計測用の信号と、脈波計測用の信号とを取得することができる。よって、脈波と心電位との同時計測における心電位の信号品質の劣化を抑制するとともに、電子機器による計測点を少なくすることで利便性が高められる。
例えば、前記脈波センサは、発光部と、前記発光部による発光を制御する発光制御信号を生成する発光制御回路とを備え、前記シールド電位制御器は、前記発光制御信号を取得し、取得した前記発光制御信号が前記発光部を発光させるタイミングを前記所定のタイミングとする。
上記態様によれば、電子機器は、発光部が発光するタイミングにおいて、第一電極及び第一配線が、駆動電流が比較的大きい第二バッファ回路により駆動されるシールド部材によりシールドされる。脈波センサが脈波を測定する時には、発光部が発光する。よって、電子機器は、発光部による発光のタイミングを利用して脈波の測定タイミングを容易に取得し、脈波と心電位との同時計測における心電位の信号品質の劣化を抑制することができる。
例えば、前記シールド電位制御器は、前記脈波センサが検知した前記脈波に基づいて予測される、新たな脈波ピークが検知されるべきタイミングを、前記所定のタイミングとする。
上記態様によれば、電子機器は、新たな脈波ピークが検知されるべきタイミングにおいて、第一電極及び第一配線が、駆動電流が比較的大きい第二バッファ回路により駆動されるシールド部材によりシールドされる。脈波センサにより計測される脈波は、周期的なパターンを有するので、脈波を連続的に測定している場合には、新たな脈波ピークが測定されるタイミングがある程度予測できる。よって、電子機器は、新たな脈波ピークが測定されるタイミングを利用して脈波の測定タイミングを容易に取得し、脈波と心電位との同時計測における心電位の信号品質の劣化を抑制することができる。
例えば、前記電子機器は、さらに、人の指によって把持される筐体を備え、前記第一電極及び前記脈波センサは、前記筐体の外部に露出して、第一方向に並んで配置され、前記第一電極は、平面視において円形状を有し、前記平面視において、前記第一電極の直径Xと、前記脈波センサの前記第一方向における長さYと、前記第一電極と前記脈波センサとの間に設けるべき最小間隔Dと、前記指と前記筐体との標準的な接触領域を示す略円形状の直径Fとが、以下の式を満たす。
F≧X+D+Y
上記態様によれば、人が自然に、言い換えれば、普段通りに、電子機器を把持するときに、人の指が電極と脈波センサとの両方に接触し、脈波と心電位との同時計測が適切になされる。
例えば、前記第一シールド部材は、平面視において、前記第一電極と同一の中心を有する円環形状を有し、前記第一電極と前記第一シールド部材との距離は、基板における配線間隔の最小値の2倍以上であり、前記第一シールド部材の平面視における直径方向の幅は、基板における配線間隔の最小値の3倍以上である。
上記態様によれば、電子機器は、シールド部材による電極のシールド効果を維持しながらコンパクトに構成され得る。これにより、人が電子機器を自然に把持するときに、人の指が電極と脈波センサとの両方に、より容易に接触するようになり、脈波と心電位との同時計測が適切になされる。また、電子機器の小型化に寄与する。
例えば、前記電子機器は、さらに、前記シールド電位制御器が、(i)前記第一生成信号の前記第一シールド部材への印加を行い、かつ、前記第二生成信号の前記第一シールド部材への印加を行わない第一指示、(ii)前記第一生成信号の前記第一シールド部材への印加を行い、かつ、前記第二生成信号の前記第一シールド部材への印加を行う第二指示の一方の指示を受け付ける受付部を備える。
上記態様によれば、電子機器は、ユーザからの指示に基づいてシールド部材によるシールド効果を制御することができる。これによりユーザの意図を反映したタイミングで脈波と心電位との同時計測を行うことができる。
例えば、前記第一電極及び前記第二電極のそれぞれは、アクティブ電極である。
上記態様によれば、電子機器は、アクティブ電極を用いることで、より高精度に心電位を計測することができる。
例えば、前記電子機器は、さらに、前記第一増幅部に第二配線により接続され、前記第一増幅部が増幅した信号を受信する信号受信部を備え、前記シールド電位制御器は、さらに、前記第一生成信号及び/又は前記第二生成信号を、前記第二配線をシールドする第二シールド部材に印加する。
上記態様によれば、電子機器は、第一増幅部が増幅した後の信号が伝達される配線のシールド部材をもバッファ回路により駆動する。これにより、電極により取得した心電位が配線により精度よく伝達される効果が得られる。
例えば、前記シールド電位制御器は、前記第一生成信号を前記第二シールド部材に印加するか否かを切り替える第一切替器、及び、前記第二生成信号を前記第二シールド部材に印加するか否かを切り替える第二切替器を含む切替部を有する。
上記態様によれば、電子機器は、第一増幅部が増幅した後の信号が伝達される配線のシールド部材にバッファ回路が駆動するか否かを制御可能とすることで、必要なときに駆動を行うという制御を行うことができる。必要な時にも駆動を行うことで、消費電力の低減効果が得られる。
例えば、前記シールド電位制御器は、さらに、前記第二電極で取得された第二信号を増幅する第二増幅部と、前記第二電極と前記第二増幅部の端子とを電気的に接続し前記第二信号を伝達する第三配線と、前記第二電極及び前記第三配線をシールドする第三シールド部材とを備え、前記シールド電位制御器は、さらに、第三バッファ回路、及び、前記第三バッファ回路の駆動電流より駆動電流が高い第四バッファ回路を有し、前記第三バッファ回路が生成する前記第二信号に対する第三生成信号を前記第三シールド部材に印加し、及び/又は、前記所定のタイミングにおいて、前記第四バッファ回路が生成する前記第二信号に対する第四生成信号を前記第三シールド部材に印加する。
上記態様によれば、電子機器は、第一電極及び第一配線だけでなく、第二電極及び第三配線が、駆動電流が比較的大きい第二バッファ回路により駆動されるシールド部材によりシールドされる。これにより、電極により取得した心電位に、脈波信号によるノイズが混入することがより一層抑制される。
また、本開示の一態様に係る電子機器の制御方法について、前記電子機器は、心電位計測用の第一電極及び第二電極と、前記第二電極より前記第一電極に近い位置に設けられ、脈波を検知する脈波センサと、前記第一電極で取得された信号を増幅する第一増幅部と、前記第一電極と前記第一増幅部の端子とを電気的に接続し、前記信号を伝達する第一配線と、前記第一電極及び前記第一配線をシールドする第一シールド部材と、第一バッファ回路、及び、前記第一バッファ回路の駆動電流より駆動電流が大きい第二バッファ回路を有するシールド電位制御器とを備え、前記制御方法は、前記脈波センサが前記脈波を計測する所定のタイミングを取得するステップと、前記所定のタイミング前に、前記第一バッファ回路が生成する前記信号に対する第一生成信号を前記第一シールド部材への印加を開始するステップと、前記所定のタイミングにおいて、前記第二バッファ回路が生成する前記信号に対する第二生成信号を前記第一シールド部材に印加を開始するステップとを含む。
これにより、上記電子機器と同様の効果を奏する。
また、本開示の一態様に係るプログラムは、電子機器の制御方法をコンピュータに実行させるためのプログラムであって、前記電子機器は、心電位計測用の第一電極及び第二電極と、前記第二電極より前記第一電極に近い位置に設けられ、脈波を検知する脈波センサと、前記第一電極で取得された信号を増幅する第一増幅部と、前記第一電極と前記第一増幅部の端子とを電気的に接続し、前記信号を伝達する第一配線と、前記第一電極及び前記第一配線をシールドする第一シールド部材と、第一バッファ回路、及び、前記第一バッファ回路の駆動電流より駆動電流が大きい第二バッファ回路を有するシールド電位制御器とを備え、前記制御方法は、前記脈波センサが前記脈波を計測する所定のタイミングを取得するステップと、前記所定のタイミング前に、前記第一バッファ回路が生成する前記信号に対する第一生成信号を前記第一シールド部材への印加を開始するステップと、前記所定のタイミングにおいて、前記第二バッファ回路が生成する前記信号に対する第二生成信号を前記第一シールド部材に印加を開始するステップとを含む。
これにより、上記電子機器と同様の効果を奏する。
なお、これらの包括的または具体的な態様は、システム、方法、集積回路、コンピュータプログラムまたはコンピュータ読み取り可能なCD−ROMなどの記録媒体で実現されてもよく、システム、方法、集積回路、コンピュータプログラムまたは記録媒体の任意な組み合わせで実現されてもよい。
以下、実施の形態について、図面を参照しながら具体的に説明する。
なお、以下で説明する実施の形態は、いずれも包括的または具体的な例を示すものである。以下の実施の形態で示される数値、形状、材料、構成要素、構成要素の配置位置及び接続形態、ステップ、ステップの順序などは、一例であり、本開示を限定する主旨ではない。また、以下の実施の形態における構成要素のうち、最上位概念を示す独立請求項に記載されていない構成要素については、任意の構成要素として説明される。
(実施の形態1)
実施の形態1において、脈波と心電位との同時計測における心電位の信号品質の劣化を抑制する電子機器などについて説明する。
(コントローラおよび情報処理装置を含む情報処理システムの説明)
図1は、情報処理システム100の利用シーンを示す外観図である。図1に示す情報処理システム100は、コントローラ1と、情報処理装置2と、表示装置3とを備える。コントローラ1、情報処理装置2、及び表示装置3は、それぞれ有線又は無線で通信可能に接続されており、情報を送受信する。情報処理システム100は、電子機器に相当する。
コントローラ1は、ユーザが情報処理システム100を操作するための操作情報の入力を受け付ける入力装置を備え、所望の処理を実現するための操作情報が入力される。
情報処理装置2は、コントローラ1に入力された操作情報を受け取り、所定の処理を実行する。本明細書において、「所定の処理」とは、ゲーム、健康管理又は学習など、家庭用のコンピュータで実行されるようなアプリケーションの総称である。
表示装置3は、情報処理装置2で行われた処理結果を表示する。ここでいう「表示する」とは、具体的には、映像をディスプレイに出力することを意味する。なお、表示装置3は、映像をディスプレイに出力するとともに、又は、代えて、音声をスピーカから出力してもよい。以降において、「表示する」との表現は、処理結果を映像により提示すること、及び、処理結果を音声により提示することを含む概念であるとする。
(コントローラの形状)
図2は、コントローラ1の形状の一例を示す外観図である。例えば、ユーザは、両手でコントローラ1を把持して、コントローラ1に操作情報を入力する。コントローラ1の形状の具体例は、スティック型のコントローラ1−1(図2の(a)参照)、及び、パッド型のコントローラ1−2(図2の(b)参照)である。
図2の(a)に示すスティック型のコントローラ1−1は、横長棒状のスティック型の形状を有する。ユーザは、コントローラ1−1の両端を両手で把持し、左手の親指で操作ボタン41を操作し、また、右手の親指で操作ボタン42を操作する。操作ボタン41は、例えば上下左右の方向の入力が可能な矢印キーを有し、操作ボタン42は、例えば2つの制御を行うための2つのボタンを有する。
図2の(b)に示すパッド型のコントローラ1−2は、板状のパッド型の形状を有する。ユーザは、コントローラ1−2の両側を両手で把持し、左手の親指で操作ボタン41を操作し、また、右手の親指で操作ボタン42を操作する。コントローラ1−2は、中央部に表示部47を備える。表示部47は、操作の状態、及び/又は、アプリケーションの処理結果を表示する表示装置である。
図3は、コントローラ1の形状の他の具体例を示す外観図である。コントローラ1の形状の他の具体例は、リストバンド型のコントローラ1−3である(図3参照)。図3に示すリストバンド型のコントローラ1−3は、リストバンド又は腕時計型の形状を有する。例えば、ユーザは、左手の手首にコントローラ1−3を装着し、右手でコントローラ1−3を操作する。より具体的には、ユーザは、右手の親指で操作ボタン41と操作ボタン42とを操作する。コントローラ1−3は、中央部に表示部47を備える。表示部47は、操作の状態や、アプリケーションの処理結果を表示する表示装置である。
(面の定義)
図2を用いて、本願明細書で用いる面の呼称を定義する。
コントローラ1は、操作面43と、左側面(図示せず)と、右側面44、上側面45、下側面(図示せず)と、裏面46とを有する。
例えば、スティック型のコントローラ1−1(図2の(a)参照)において、操作面43は、操作ボタン41及び操作ボタン42が設置されている面である。操作面43に向かって、左側、右側、上側及び下側の側面のそれぞれを、左側面(図示せず)、右側面44、上側面45、及び、下側面(図示せず)という。操作面43の反対側の面を裏面46という。
パッド型のコントローラ1−2、及び、リストバンド型のコントローラ1−3においても、操作面43等が上記と同様に定義され得る。
なお、表示部47がタッチパネルディスプレイにより構成される場合、表示部47に操作ボタン41及び42が表示されてもよい。この場合には、コントローラ1の表示部47を有する面を操作面43とする。また、表示部47の情報を表示する画面を操作面43としてもよい。操作面43がタッチパネルディスプレイで構成されるコントローラは、典型的にはスマートフォン又はタブレット型コンピュータである。このようなスマートフォン又はタブレット型コンピュータは、情報処理装置2を操作するためのアプリケーションソフトウェアを実行することにより、ハードウェアとしての操作ボタン41及び42を有するコントローラ1と同等の機能を有することになる。ハードウェアとしての操作ボタン41及び42を有するコントローラ、および、ソフトウェアによる操作ボタン41及び42(操作入力表示)を有するコントローラを包括して、本願明細書では「電子機器」と呼ぶ。
なお、操作面43と、左側面(図示せず)と、右側面44と、上側面45と、下側面(図示せず)と、裏面46とが1つの面で形成されている場合には、左側面(図示せず)と、右側面44と、上側面45と、下側面(図示せず)と、裏面46とは、操作面43との位置関係で規定される、上記1つの面の一部分を意味するものとする。
図3に示すリストバンド型のコントローラ1−3においても、操作面43等が同様に定義され得る。操作面43がタッチパネルディスプレイで構成されるコントローラは、典型的にはスマートウォッチである。
(電極と脈波センサの位置について)
次に、コントローラ1に設置される生体電位計測用電極および脈波センサの位置について説明する。
図4は、電極がコントローラの裏面に設置された場合の電極位置の例を示す説明図である。図4の(a)および(b)は、それぞれ、コントローラ1−1及び1−2の裏面46に、生体信号計測用の電極48及び49および脈波センサ61を設置した例を示す。
コントローラ1には、生体電位信号を計測するために、少なくとも複数の電極が設置されている。生体電位信号とは、ユーザ(より詳細にはユーザの皮膚)とコントローラとが接触する複数の位置の間の電位差を示す信号である。生体電位信号の一例は、ユーザの右手のいずれかの指と、当該ユーザの左手のいずれかの指との間の電位差であり、心電由来の生体信号などを含む。コントローラ1には、さらに、少なくとも1個のLED(発光ダイオード)と、少なくとも1個のPD(フォトディテクタ)を備える脈波センサ61が設置されている。脈波信号の一例は、LEDからの光が右手のいずれかの指に当たって反射した反射光をPDにより光電変換した、脈波に由来する生体信号である。脈波センサは、上記電極のいずれか1個に近接して配置される。図4の(a)および(b)の例では、脈波センサ61は電極49に近接して配置される。
ユーザは、スティック型のコントローラ1−1を両手で把持して、左右の親指それぞれにより操作ボタン41及び42を操作する。このとき、ユーザは、人差し指又は中指で裏面46を支えることにより、親指が操作ボタン41、42を押す力に対抗する必要がある。裏面46を支えるために、ユーザの人差し指又は中指は、裏面46に接触する。
ユーザがコントローラ1−1を把持するとき、ユーザの指がコントローラ1−1に接触する位置に、コントローラ1−1は電極と脈波センサを有する。
例えば、裏面46は、操作面43の操作ボタン41及び42の位置と対向する位置を含む所定の範囲Aに、複数の電極と脈波センサとを有する。所定の範囲Aの一例は、操作ボタン41及び42の位置と対向する位置、つまり、操作ボタン41及び42に背向する裏面46における位置を含む範囲であり、コントローラ1−1を支えるためにユーザの指が置かれ得る範囲である。
図4の(a)に示すスティック型のコントローラ1−1は、左手の指が接触する部分に左手用の電極48と、右手の指が接触する部分に右手用の電極49と脈波センサ61とを有する。
図4の(b)に示すパッド型のコントローラ1−2の場合も、ユーザは、操作面43に設置された操作ボタン41及び42を押す力に対抗するために裏面46を指で支える。裏面46を支えるためにユーザが裏面46に接触する位置に、コントローラ1−2は、左手用の電極48と、右手用の電極49と、脈波センサ61とを備える。この位置に電極および脈波センサが設置されることで、情報処理システム100は、ユーザがコントローラ1−2を操作しているときでも継続して生体電位と脈波信号とを同時計測することができる。
図5は、電極がコントローラの上面に設置された場合の電極位置の例を示す説明図である。図5の(a)は、コントローラ1−1についての上記電極位置を示したものであり、図5の(b)は、コントローラ1−2についての上記電極位置を示したものである。
図5は、コントローラ1の上側面45に、生体信号計測用の電極と脈波センサとを設置した例を示す。ユーザがスティック型のコントローラ1−1を両手で持つ際に、人差し指を上側面45に置き、中指、薬指及び小指を裏面46に置く持ち方も考えられる。この場合には、ユーザは、操作ボタン41及び42を押す力に対抗して裏面46を支えるだけではなく、上側面45に人差し指を置くこともある。コントローラ1−1は、人差し指の設置位置である上側面45に所定の範囲Aを設定し、左手用の電極48と、右手用の電極49と、脈波センサ61とを有してもよい。
パッド型のコントローラ1−2においても、上側面45に人差し指を置く持ち方も想定される。よって、コントローラ1−2は、上側面45に左手用の電極48と、右手用の電極49と、脈波センサ61とを有していてもよい。
図6は、リストバンド型のコントローラ1−3の裏面46と右側面44に、生体信号計測用の電極と脈波センサとを設置した例を示す。
ユーザは、リストバンド型のコントローラ1−3を左手の手首に装着して、このとき、バンド(図示せず)でコントローラ1−3を左手の手首に固定することにより、裏面46の左手用の電極48が左手の手首に接触する。左手用の電極48が配置される所定の範囲Aの一例は、裏面46が左手の手首と接する範囲である。
ユーザは、右手の親指で操作ボタン41及び42を操作する。このとき、ユーザは、右手の人差し指、中指及び薬指のいずれかで右側面44を支えることにより、右手の親指で操作ボタン41及び42を押す力に対抗する必要がある。右側面44を支えるために、ユーザの右手の人差し指、中指及び薬指のいずれかが右側面44に接触する。
ユーザの右手の人差し指、中指及び薬指のいずれかでコントローラ1−3の右側面44を支えるときにユーザの指がコントローラに接触する位置に、コントローラ1−3は、右手用の電極49と、脈波センサ61とを有する。
右手用の電極49と脈波センサ61とが設置される所定の範囲Aの一例は、右側面44のうち上側面45に接する位置を含む範囲であり、コントローラ1−3を支えるためにユーザの指が置かれ得る範囲である。この位置に電極49が設置することで、ユーザがコントローラ1−3を操作しているときでも継続した生体電位計測および脈波信号計測が可能になる。
なお、脈波センサ61は、右手用の電極49に近接した位置に設置する代わりに、図7に示す別の例のように、左手用の電極48に近接した位置に設置されてもよい。この位置に脈波センサ61が設置されることで、脈波センサ61が左手の手首に接触した状態を維持することができるので、ユーザが右手の指でコントローラ1−3を操作しているときでも継続した脈波信号計測が可能になる。
図8は、リストバンド型のコントローラ1−3の上側面45に、生体信号計測用の電極を設置した例を示す。
ユーザは、リストバンド型のコントローラ1−3を左手の手首に装着して、このとき、バンド(図示せず)でリストバンド型のコントローラ1−3を左手の手首に固定することにより、裏面46の左手用の電極48が左手の手首に接触する。
ユーザは、右手の親指で操作ボタン41及び42を操作する。このとき、ユーザは、右手の人差し指、中指及び薬指のいずれかで上側面45を支えることにより、右手の親指で操作ボタン41及び42を押す力に対抗する必要がある。上側面45を支えるために、ユーザの右手の人差し指、中指及び薬指のいずれかは、上側面45に接触する。
ユーザの右手の人差し指、中指及び薬指のいずれかでコントローラ1−3の上側面45を支えるときにユーザの指がコントローラに接触する位置に、コントローラ1−3は右手用の電極49を有する。
右手用の電極49と脈波センサ61とが設置される所定の範囲Aの一例は、操作ボタン41を上側面45に投影した位置を含む範囲である。この位置に電極を設置することで、操作中でも継続した生体信号計測および脈波信号計測が可能になる。
なお、脈波センサ61は、右手用の電極49に近接した位置に設置する代わりに、左手用の電極48に近接した位置(図示せず)に設置されてもよい。この位置に脈波センサを設置することで、ユーザがコントローラ1−3を操作しているときでも継続した脈波信号計測が可能になる。
(電極形状と個数)
図9は、コントローラ1における電極の形状と個数との例を示す説明図である。図9の(a)〜(d)は、電極の形状の例を示す。電極は、導電性の物質によって構成される。電極の材料の一例は、金、銀であり、電極の材料は、銀塩化銀であってもよい。銀塩化銀は、生体と接触した場合の分極が少ないからである。
図9の(a)の電極51は、医療用に使われる電極と同様の円形状の電極である。電極の形状及び個数は、図9の(a)の円形状の電極51以外にも、用途によって、さまざまな形状が想定される。また、一方の手が接触するための電極の個数もひとつでなくてよい。具体的には、(1)図9の(b)のように半円形状の2つの電極52a及び52bを含む構成、(2)図9の(c)のように同心円状に配置された、1つの円形状の電極53aと、環状の電極53bとを含む構成、又は、(3)図9の(d)のように1つの円形状の電極54aと、2つの半円環状の電極54b及び54cを含む構成としてもよい。
また、図10に示すように電極の形状は円形状には限定されない。具体的には、図10の(a)に示すように、手が接触すると想定される比較的広い範囲を覆う比較的大きな電極55L及び55Rを設置して、常に接触が維持されるようにしてもよい。また、裏面46のみならず、上側面45及び下側面にもつながる帯状の電極56L及び56Rを含む構成(図10の(b)参照)、複数の帯状の電極57La並びに57Lb及び57Ra並びに57Rbを含む構成(図10の(c)参照)を用いることができる。これにより、さまざまな持ち方が想定されている場合でも、生体電位信号の計測が可能になる。
(脈波センサの形状とLEDの個数)
図11の(a)〜(e)は、脈波センサ61の形状の例を示す。
図11の(a)の脈波センサ61は、長方形形状のLED61aと、長方形形状のPD61bとが隣り合っている構成を有する。脈波センサ61は、上記構成以外にも、用途によって、さまざまな形状が想定される。例えば、(1)図11の(b)のように円形状のLED61aとPD61bとが隣り合っている構成、(2)図11の(c)のようにPD61bが環状のLED61aに囲まれた構成、(3)図11の(d)のようにLED61aが環状のPD61bに囲まれた構成、又は、(4)図11の(e)のように、発光波長の異なる2個のLED61a及び61cの間にPD61bを挟んで配置した構成であってもよい。上記(4)において、例えば、LED61aが赤色LED、LED61cが赤外LEDで構成され得る。
(電極と脈波センサの位置関係)
図4に示した電極49と脈波センサ61の相対的な位置関係を図12に示す。電極49は円形状をなしており、脈波センサ61が有するLED61aとPD61bとはそれぞれ長方形をなしていると想定する。
成人の男性が中指の先端部分が上側面45に接触している場合、ユーザがコントローラ1に接触している範囲は、おおよそ直径14mmの略円形状となる。成人男性の人差し指及び薬指は、おおよそ中指と同様の範囲で、コントローラ1と接触する。成人女性又は子供に対応する電極は、その手の寸法に応じて、成人男性に対応する電極の寸法より所定程度小さく構成されてもよい。
電極の想定される寸法は、人差し指、中指及び薬指の接触範囲が直径F=14mmの円形状をなしていることから決定される。具体的には、円形状の電極49の直径Xは6mmであり、LED61aとPD61bとの並び方向に垂直な方向(つまり紙面の縦方向)の長さYは3mmである。ここでLED61aとPD61bとの並び方向に垂直な方向は、指の第1関節から指先の方向に一致する。
指の腹を電極49の中心に当てると、脈波センサ61が有するLED61aとPD61bとの両方が指に当たる位置関係になっている。すなわち、電極49及び脈波センサ61が所定の範囲内に位置する。ここで、電極49の寸法により、電極49と脈波センサ61との距離が決定される。
電極49の直径をXとし、脈波センサ61のLED61aとPD61bに平行な方向の長さをYとし、電極49と脈波センサ61との間隔をDとすると、以下の(式1)の関係を満たしてもよい。
(式1) F≧X+D+Y
例えば、F=14mm、X=6mm、D=1mm、Y=3mmとすると、上記(式1)この関係を満たす。
なお、電極の寸法は、指の実際の接触範囲に基づいて上記寸法を縮小又は拡大したものであってもよい。
(生体電位と脈波の計測時間)
図13に生体電位と脈波の計測時間との一例を示す。ユーザが電極を用いて心電位を常時測定しながら、さらに、図13に示すように数時間おきに脈波センサを用いて脈波の測定が行われる。より具体的には、例えば、3時間おきに1分間脈波の測定が行われる。
図14に生体信号と脈波の計測時間の他の例を示す。図6のリストバンド型のコントローラ1−3をユーザが把持した時間を基準とし、数時間おきにユーザの右手人指し指に対して、電極49と脈波センサ61とを用いて心電位と脈波との同時測定が行われる。より具体的には、例えば、3時間おきに1分間の心電位と脈波との同時測定が行われる。
(システム構成図)
図15に、情報処理システム100のシステム構成を示す。コントローラ1は、操作入力装置1a、生体電位計測装置1b、および脈波信号計測装置1cを備える。
コントローラ1は、ユーザの操作入力、及び操作時のユーザの生体電位および脈波信号を計測する。計測した生体電位および脈波信号を含む情報は、情報処理装置2に送信される。
情報処理装置2は、操作入力装置1a、生体電位計測装置1bおよび脈波信号計測装置1cの入力を受けて、所定の処理を実行して、表示装置3に対して処理結果を出力する。コントローラ1と情報処理装置2との間は、無線又は有線によって通信可能に接続される。
図16に、コントローラ1と情報処理装置2との構成を示す。
コントローラ1に含まれる操作入力装置1aは、操作入力部11と、操作信号出力部12とを備える。操作入力部11は、操作ボタン41及び42から入力された操作信号を取得し、判定処理をする部分である。取得された操作信号は、操作信号出力部12から情報処理装置2に向けて送信される。
コントローラ1に含まれる生体電位計測装置1bは、電極部13と、生体電位増幅部14と、生体電位出力部15とを備える。
コントローラ1に含まれる脈波信号計測装置1cは、脈波センサ部16と、脈波信号増幅部17と、脈波信号出力部18とを備える。
電極部13は、複数の電極により構成される。複数の電極は、例えば、ユーザの右手がコントローラ1に接触する位置と、ユーザの左手がコントローラ1に接触する位置とに配置されている。
生体電位増幅部14は、複数の電極の間の電位差に相当する生体電位を増幅する。例えば、右手と左手との間の電位差が生体電位増幅部14により増幅される。増幅された信号はA/Dコンバータによりデジタル信号に変換される。そして、デジタル信号に変換された生体電位の情報は、生体電位出力部15より情報処理装置2に送信される。
なお、生体電位増幅部14は、所定以上の電位の大きさの生体電位を計測できる場合には、生体電位を増幅せず、複数の電極の電位を測定してもよい。よって、以下において、生体電位増幅部14を生体信号計測部と表記することもある。
脈波センサ部16は、LEDとPDとを有する脈波センサを備える。脈波センサは、例えば、ユーザの右手がコントローラ1に接触する位置に配置されている。
脈波信号増幅部17は、脈波センサ部16のPDに流れる電流値を、電圧信号(脈波信号ともいう)に変換した後に、所定の倍率だけ増幅する。増幅された脈波信号は、A/Dコンバータによりデジタル信号に変換される。そして、デジタル信号に変換された脈波信号の情報が脈波信号出力部18より情報処理装置2に送信される。
なお、脈波信号増幅部17は、所定以上の信号の大きさの脈波信号を計測できる場合には、脈波信号を増幅せず、脈波センサのPDに流れる電流値を電圧信号に変換してもよい。脈波信号増幅部17を脈波信号計測部と表記することもある。
情報処理装置2は、操作入力情報を操作信号取得部21により受信し、生体電位の源信号を生体電位取得部22により受信し、脈波信号の源信号を脈波信号取得部24により受信することで、コントローラ1からの情報を受信する。
生体電位処理部23は、生体電位取得部22が取得した、生体電位の源信号から生体電位を抽出する処理を行う。上記源信号は、生体電位としての有用な情報として使用できないことが多いからである。例えば、生体電位処理部23は、両手の間の電位変化の信号の時系列変化から、ピーク検出をして心拍情報を取得するなどの処理を行う。
脈波信号処理部25は、脈波信号取得部24が取得した、脈波信号の源信号から脈波信号を抽出する処理を行う。上記源信号は、脈波信号としての有用な情報として使用できないことが多いからである。例えば、脈波信号処理部25は、脈波信号の時系列変化から、ピーク検出をして脈波情報を取得するなどの処理を行う。
アプリケーション処理部26は、情報処理装置2の中心的な処理を行う。アプリケーション処理部26による処理の例は、ゲームアプリにおけるゲームの進行、健康管理アプリにおけるデータの記録、管理及び表示、並びに、学習アプリにおける出題、採点及び結果表示などである。なお、アプリケーション処理部26による処理には、生体電位処理部23および脈波信号処理部25から得られた脈波伝播時間の算出処理、及び、血圧の推定を行う処理が含まれていてもよい。アプリケーション処理部26による処理は、コントローラ1からの入力を受けて所定の処理を行うことで実現される。
表示情報出力部27および音響情報出力部28は、アプリケーション処理部26で処理した結果をユーザにフィードバックするために、視覚的又は聴覚的な信号を出力する。この出力信号は表示装置3に送られる。
表示装置3は、表示情報出力部27および音響情報出力部28から出力された信号を表示する。これにより、信号がユーザに提示される。表示装置3の例は、テレビ、ディスプレイ、又はスピーカである。
なお、コントローラ1が生体電位処理部23および脈波信号処理部25を含んでいてもよい。その場合には、情報処理装置2は、生体電位処理部23および脈波信号処理部25を備えず、アプリケーション処理部26が生体電位処理部23および脈波信号処理部25で取得した生体電位および脈波信号を受信する。
(ハードウェア構成)
図17は、コントローラ1のハードウェア構成を示すブロック図である。コントローラ1は、操作ボタン群71と、制御信号変換回路72と、計測電極73aと、参照電極73bと、アース73cと、生体アンプ74と、A/Dコンバータ75と、脈波センサ76と、脈波アンプ77と、送信回路79と、信号処理ユニット78と、アンテナ80と、バッテリ81とを備えている。
このうち、操作ボタン群71と制御信号変換回路72とは、図16に示す操作入力部11に対応する。また、計測電極73aと参照電極73bとアース73cとは、図16に示す電極部13に相当し、生体アンプ74は図16に示す生体電位増幅部14に相当する。
なお、脈波信号増幅部17は生体電位増幅部14に含まれてもよい。なお、A/Dコンバータ75は、生体電位増幅部14および/または脈波信号増幅部17に含まれてもよい。
信号処理ユニット78は、CPU101とメモリ102とプログラム103とROM104とを有する。
送信回路79とアンテナ80とは、図16に示す生体電位出力部15および/または操作信号出力部12として機能する。これらを「出力部」または「送信部」と呼ぶこともある。
これらの各構成要素は互いにバス105で接続され、相互にデータの授受が可能である。また、それぞれの回路にはバッテリ81から電力が供給されている。
操作ボタン群71に関する各ボタンの押下情報は、制御信号変換回路72にて変換され、バス105を経由してCPU101に送られる。
生体アンプ74には、計測電極73aと参照電極73bとアース73cとが接続され、これらの電極はコントローラの所定の位置に設置されている。計測電極73aと参照電極73bの間の電位差は生体アンプ74で増幅され、A/Dコンバータ75でアナログの生体電位信号からデジタル信号に変換され、処理や送信が可能な生体信号としてバス105を経由してCPU101に送られる。
脈波アンプ77は、脈波センサ76が接続され、コントローラ1の所定の位置に設置されている。脈波センサ76のPDに流れる電流値は、脈波アンプ77で電圧信号に変換された後に増幅され、A/Dコンバータ75でアナログの脈波信号からデジタル信号に変換され、処理や送信が可能な脈波信号としてバス105を経由してCPU101に送られる。
CPU101は、メモリ102に格納されているプログラム103を実行する。プログラム103には、後述するフローチャートに示される処理手順が記述されている。コントローラ1は、プログラム103にしたがって、操作信号と生体電位信号と脈波信号とを変換し、変換した信号を、送信回路79を経由してアンテナ80により情報処理装置2に送信する。プログラム103はROM104に格納される場合もある。
なお、信号処理ユニット78と制御信号変換回路72と送信回路79と生体アンプ74と脈波アンプ77とA/Dコンバータ75とは、1つの半導体回路にコンピュータプログラムを組み込んだDSP(デジタルシグナルプロセッサ)等のハードウェアとして実現されてもよい。1つの半導体回路に集積すると、実装面積が削減され、消費電力が低減される効果も得られる。
また、生体アンプ74と脈波アンプ77とA/Dコンバータ75とを1つの半導体回路に集積し、信号処理ユニット78と制御信号変換回路72と送信回路79とを別の半導体回路に集積し、上記2つの半導体回路どうしを1つのパッケージ内で接続してSiP(システム・イン・パッケージ)として統合し、コンピュータプログラムを組み込んだDSP等のハードウェアとして実現されてもよい。上記2つの半導体回路を別々のプロセスで実現することで、1つの半導体回路に集積したものに比べコストが低減される効果も得られる。
図18は、情報処理装置2のハードウェア構成を示す。情報処理装置2は、アンテナ80と、受信回路82と、信号処理ユニット108と、画像制御回路84と、表示情報出力回路85と、音響制御回路86と、音響情報出力回路87と、電源88とを備えている。
このうち、アンテナ80と受信回路82とは、図16に示す生体電位取得部22および/または脈波信号取得部24および/または操作信号取得部21として機能する。これらを「受信部」と呼ぶこともある。
信号処理ユニット108は、CPU111とメモリ112とプログラム113とROM114とを有する。信号処理ユニット108は、図16の生体電位処理部23および/または脈波信号処理部25および/またはアプリケーション処理部26として機能する。画像制御回路84および表示情報出力回路85は、図16の表示情報出力部27として機能する。また音響制御回路86および音響情報出力回路87は、図16の音響情報出力部28として機能する。これらは互いにバス115で接続され、相互にデータの授受が可能である。また、それぞれの回路には電源88から電力が供給されている。
コントローラ1からの操作情報および生体情報は、アンテナ80を経由して受信回路82で受信され、バス115を経由してCPU111に送られる。
CPU111は、メモリ112に格納されているプログラム113を実行する。プログラム113には、後述するフローチャートに示される処理手順が記述されている。情報処理システム100は、このプログラム113にしたがって、操作信号と生体電位信号および脈波信号を変換し、所定のアプリケーションを実行するための処理を行って、ユーザに画像、及び/又は、音響によってフィードバックを行うための信号を作成する。プログラム113は、ROM114に格納される場合もある。
信号処理ユニット108により生成された画像のフィードバック信号は、画像制御回路84を経由して表示情報出力回路85から出力され、音響のフィードバックは音響制御回路86を経由して音響情報出力回路87から出力される。
なお、信号処理ユニット108と受信回路82と画像制御回路84と音響制御回路86とは、1つの半導体回路にプログラムを組み込んだDSP等のハードウェアとして実現されてもよい。1つの半導体回路にすると、消費電力が低減される効果も得られる。
(処理フローの概要)
図19に、コントローラ1と情報処理装置2の処理のフローを示す。ステップS11からステップS18までが、コントローラ1の内部処理、ステップS21からステップS28までが情報処理装置2の処理を示している。
<ステップS11>
操作入力部11は、操作入力を受け付ける。操作入力部11は、具体的には、受付のタイミングでどの操作ボタンが押されているかを検出する。受付のタイミングの例は、操作ボタンが押下されたときである。
<ステップS12>
操作信号出力部12は、操作入力部11がステップS11で受け付けた操作入力の操作信号を情報処理装置2(操作信号取得部21)に送信する。
<ステップS13>
生体電位増幅部14は、複数の電極部13の間の電位差に相当する生体電位を測定する。例えば、電極部13に接触しているユーザの右手と左手との電位差を生体電位として測定する。また、生体電位増幅部14は、測定した生体電位を増幅する。
<ステップS14>
生体電位出力部15は、ステップS13で増幅した生体電位を送信する。
<ステップS15>
脈波信号計測装置1cは、脈波の測定を行うか否かを判定する。脈波の測定を行うと判定した場合(ステップS15でYes)にはステップS16に進み、そうでない場合(ステップS15でNo)にはステップS21に進む。
<ステップS16>
脈波信号計測装置1cは、脈波センサ部16にLEDの制御信号を送ることで、LEDを制御する。
<ステップS17>
脈波信号増幅部17は、脈波センサ部16のPDに流れる電流に相当する脈波信号を測定する。また、脈波信号増幅部17は、測定した脈波信号を増幅する。
<ステップS18>
脈波信号出力部18は、ステップS17で増幅した脈波信号を送信する。
なお、ステップS13及びステップS14の処理と、ステップS15からステップS18の処理とは、それぞれ独立な処理として、並行して行われ得る。
なお、ステップS11及びステップS12と、ステップS13及びステップS14とは、それぞれ独立な処理として並行して行ってもよく、つまり、ステップS11からステップS14の処理を、全て順序どおりに行う必要はない。
なお、ステップS11及びステップS12と、ステップS15からステップS18とは、それぞれ独立な処理として並行して行ってもよく、つまり、ステップS11からステップS18の処理を、全て順序どおりに行う必要はない。
<ステップS21>
操作信号取得部21は、ステップS12で操作信号出力部12が送信した操作信号を受信する。
<ステップS22>
生体電位取得部22は、ステップS14で生体電位出力部15が送信した生体信号の源信号を受信する。
<ステップS23>
生体電位処理部23は、ステップS22で生体電位取得部22が受信した生体信号の源信号から、生体電位を抽出する。
<ステップS24>
脈波信号取得部24は、ステップS18で脈波信号出力部18が送信した脈波信号を受信したか否かを判定する。脈波信号を受信した場合(ステップS24でYes)にはステップS25に進み、そうでない場合(ステップS24でNo)にはステップS27に進む。
<ステップS25>
脈波信号取得部24は、ステップS24で脈波信号出力部18が送信した脈波信号の源信号を受信する。
<ステップS26>
脈波信号処理部25は、ステップS25で脈波信号取得部24が受信した脈波信号の源信号から、脈波信号を抽出する。
<ステップS27>
アプリケーション処理部26は、操作信号取得部21からの操作情報と、生体電位処理部23からの生体電位情報と、脈波信号処理部25からの脈波情報とを受けて、所定のアプリケーション処理を実行する。
<ステップS28>
表示情報出力部27は、アプリケーション処理部26の処理結果をユーザにフィードバックするために映像情報を出力する。なお、本ステップにおいて、表示情報出力部27が映像情報を出力するとともに、又は、代えて、音響情報出力部28がアプリケーション処理部26の処理結果をユーザにフィードバックするために音響情報を出力してもよい。本ステップで表示情報出力部27が出力した映像情報、又は、音響情報出力部28が出力した音響情報に基づいて表示装置3により映像表示又は音響出力がなされる。
なお、ステップS22及びステップS23の処理と、ステップS24からステップS26の処理とは、それぞれ独立な処理として並列して行われ得る。
なお、アプリケーション処理部26は、操作信号取得部21からの操作情報と、生体電位処理部23からの生体電位情報と、脈波信号処理部25からの脈波情報とのすべての情報を用いて処理を行う必要はなく、生体電位信号と脈波信号を用いて処理を行ってもよいし、又は、生体電位信号を用いて処理を行ってもよい。その場合には、操作信号を受信するステップS21を省略することもできる。
以降において、本実施の形態の特徴の1つである、電極部13、生体電位増幅部14、脈波センサ部16、生体電位処理部23、脈波信号処理部25、アプリケーション処理部26の構成をより詳しく説明する。
(電極部および脈波センサ部)
図20Aは、電極部13及び脈波センサ部16の配置の一例を示す。また、図20Bは、電極部13及び脈波センサ部と、ユーザの指との位置関係の一例を示す。
図20Aは、コントローラ1における、ユーザの指が接触する部分の中心に円盤形状(上面視において円形状)の電極49が配置されている。なお、電極49の上面視における形状は、図9に示したとおり様々な形状があり得る。また、電極49の厚さは、例えば数10μm〜数100μm程度である。
成人の男性の中指の先端部分が裏面46に接触している場合、ユーザがコントローラ1に接触している範囲は、おおよそ直径14mmである。成人男性の人差し指及び薬指は、おおよそ中指と同様の範囲で、コントローラ1と接触する。成人女性又は子供に対応する電極は、その手の寸法に応じて、成人男性に対応する電極の寸法より所定程度小さく構成されてもよい。
電極の想定される寸法は、人差し指、中指及び薬指の接触範囲が直径F=14mmの円形状をなしていることから決定される。具体的には、円形状の電極49の直径Xは6mmである。脈波センサ61のLEDとPDとの並び方向に垂直な方向(つまり、紙面の縦方向)が第一方向に相当する。言い換えれば、第一方向とは、円形状の電極49の中心を紙面の縦方向に通る直線が延びる方向である。
上記位置関係によれば、ユーザの指の腹が電極49の中心に当てられるときに、脈波センサ61のLEDとPDとの両方がユーザの一の指に当たり、この一の指から心電計測用の信号と、脈波計測用の信号とを取得することができる(図20B参照)。すなわち、電極49及び脈波センサ61が所定の範囲内に位置する。ここで所定の範囲内とは、例えば、ユーザの指の接触範囲である。少なくとも電極49及び脈波センサ61のLEDとPDが、上述した所定の範囲内に位置する。電極49の寸法に応じて、電極49と脈波センサ61との所定の距離が決定される。なお、脈波センサ61のLEDとPDとが、指との間に若干の空隙を有している場合が脈波センサ61による脈波の計測には好ましい。脈波の計測に好ましい空隙の間隔D3は、概ねD3=0.6mm程度である。
電極49の直径X、脈波センサ61のLEDとPDとの並び方向に垂直な方向の幅Y、電極49と脈波センサ61との間隔をDとすると、(式1)の関係を満たしてもよい。例えば、X=6mm、Y=3mm、D=1mmの場合、ユーザの指の接触範囲である直径F=14mmが(式1)を満たすので、電極49及び脈波センサ61が所定の範囲に位置しているといえる。
なお、電極の寸法は、指の実際の接触範囲に基づいて上記寸法を縮小又は拡大したものでもよい。
また、電極49の裏面(コントローラ1の内部に位置する側の面)の一部(例えば上面視における円形状の中心)に配線59の一端が電気的に接続される。配線59は、電極49とバッファ90の入力端子とを電気的に接続する配線である。
さらに、電極49の周囲に、電極49を包囲するシールド65を設置する。図20Aは、電極49とシールド65との配置位置を示す説明図であり、図20Aの(a)が電極49の正面図であり、図20Aの(b)が斜視図である。ここで、電極49を包囲するシールド65が第一シールド部材に相当する。そして、電極49と同じように電極48を包囲するシールド65が第三シールド部材に相当する。
図20Aの(a)及び(b)に示すように、電極49及びシールド65は基板に配置されている。電極49は、ユーザの指が配置されるときに指に接する位置に形成されている。シールド65は、電極49の外周を包囲する位置に形成されている。シールド65は、電極49よりひとまわり大きい円環形状を有する。シールド65の材質は、導電性の物質(例えば銅)である。シールド65は、完全に閉じた円環形状でなくてもよく、円環形状の一部がカットされていてもよい。そして、上記一部に電極49と生体電位増幅部14とを接続する配線59のパターンが形成されていてもよい。
ここで、シールド65の基板表面からの高さは、電極49の基板表面からの高さより、少なくとも電極49の厚さ(例えば数10μm〜数100μm程度)の分だけ低くてもよい。ユーザの指がシールド65に電気的に接触しないからである。なお、脈波センサ61は、指に近接する必要があるが、必ずしも指に接触する必要はなく、例えば数100μm程度(より具体的には600μm)の間隔が空いていてもよい。ユーザの指の腹が電極49に接触している状態では、指の腹の位置から少し外れた位置が脈波センサ61に近接することで、上記適切な間隔が確保される。
図20Aに示すように、電極49とシールド65との間の距離をD1、シールド65のパターンの幅をW、シールド65と脈波センサ61の間の距離をD2とすると、以下の(式2)の関係を満たしてもよい。
(式2) D=D1+D2+W
電極49と脈波センサ61とが基板上に配置されている場合には、電極49とシールド65との間の距離D1の範囲には、電極49と脈波センサ61とが配置されている面上には、いずれの配線パターンも設けなくてもよい。例えば、D1=0.2mm、W=0.3mm、D2=0.5mmとすると(式2)を満たす。
ここで、D1は上記の例のように、基板の配線間隔の最小値0.1mmの2倍で設計してもよい。Wは、後述のようにシールド65の駆動能力を最大にする場合を考慮し、基板の配線幅の最小値0.1mmの3倍で設計してもよい。D2は、脈波センサ61と配線との最小間隔であり、通常、D2=0.5mmの間隔が取られる。
なお、図21の(a)及び(b)に示すように、電極49及びシールド65が配置されている基板が複数の層を有するものであってもよい。そして、電極49が配置されている層より下の層に、円形状をなすシールド65aのパターンを、電極49と同心円状に設置してもよい。図21の(a)が、シールド65aが配置された層の正面図であり、図21の(b)が分解斜視図である。図21の(b)に示されるように、電極49及びシールド65が配置された層は、図20Aの(a)と同じ構成である。
シールド65aは、図20Aに示すシールド65と接続される。シールド65aのパターンの直径をZとすると、(式3)を満たしてもよい。
(式3) X+2×D1≦Z≦X+2×(D1+W)
例えば、X=6mm、D1=0.2mm、W=0.3mm、とした場合、シールド65aは、直径Z=7mmの円をなす。図21のシールド65aは、図20Aのシールド65のパターン上に設けられたビア(図示せず)を通して電気的に接続される。
なお、シールド65aは、電極49と生体電位増幅部14とを接続する配線59が通る経路が除かれた配線パターン(不図示)として形成されていてもよい。
(コントローラ上に配置されたシールド)
図22は、コントローラ1の裏面46に電極を配置したときの一例を示す。
電極部13は、コントローラ1の筐体に配置されており、少なくとも2つの電極48及び49と、2本の配線58及び59と、2つのシールド65とが配置されている。なお、電極48及び49のうちの一方(例えば電極48)が参照電極として機能し、電極48及び49のうちの他方(例えば電極49)が測定電極として機能する。なお、電極48及び49のうち脈波センサ61に近い位置に配置されている電極49が第一電極に相当し、電極48が第二電極に相当する。
図22に示すように、ユーザが両手でコントローラを把持した状態において、電極48がユーザの左手の指と接触し、電極49と脈波センサ61とがユーザの右手の指と接触する。図22の例のように、ユーザの右手の中指の腹と、左手の中指の腹とが、それぞれ、電極48及び49に当たっている場合、全ての電極部と脈波センサとに指が当たっている状態になる。
図22に示すように、電極48および49により検出した電位は、それぞれバッファ90でバッファリングされ、生体電位増幅部14に送られる。ここで、電極49に配線59により接続されているバッファ90が第一増幅部に相当し、配線59が第一配線に相当する。また、電極48に配線58により接続されているバッファ90が第二増幅部に相当し、配線58が第三配線に相当する。
電極48および49それぞれの周囲と、電極48および49からバッファ90の入力端子までの配線58および59は、シールド65で覆われる。シールド65は、基板上において、電極48および配線58の外周を包囲する位置及び形状の配線パターンとして形成されている。なお、シールド65は、シールド65の全体が同電位になる配線パターンであることを要し、電極48および配線58の外周を完全に包囲する構成だけでなく、一部(例えば外周のうちの10%程度)が途切れていても一定の効果を奏する。
また、上記と同様に、シールド65は、基板上において、電極49および配線59の外周を包囲する位置及び形状の配線パターンとして形成されている。外周を完全に包囲する構成だけでなく、一部が途切れていても一定の効果を奏することは上記と同様である。
電極48および49からバッファ90の入力端子までの配線58および59それぞれと、シールド65との間隔D1は、D1=0.2mmであってもよい。それぞれのシールド65の電位は、LED制御部62からの制御信号を受けたシールド電位生成部64により供給される。
電極48及び49のいずれか1個と、1個のバッファ90とを組み合わせたものは、いわゆるアクティブ電極95である。アクティブ電極95は、シールド65、およびシールド電位生成部64も含むものとする。
なお、図23に示すように、電極48および49から生体電位増幅部14の間の経路にバッファ90を設置しない場合、電極48および49のそれぞれから生体電位増幅部14までの経路をシールド65で覆ってもよい。
(電極部から生体電位増幅部への接続)
図24は、コントローラ1の電極部13から生体電位増幅部14への接続を示す。電極49が測定電極(Ch1)であり、電極48が参照電極(Ref)であるとして以降を説明する。
電極部13のアクティブ電極95のそれぞれについて、電極48及び49は、バッファ90を介して生体電位増幅部14のCh1およびRefにそれぞれ接続される。生体電位増幅部14において、Ch1の信号は、Refの信号との差を取った後に増幅(差動増幅)され、増幅された信号は、低域通過フィルタによるフィルタリング、A/Dコンバータによるデジタル信号への変換を経て生体電位出力部15へ出力される。
図25は、コントローラ1の脈波センサ部16から脈波信号増幅部17への接続を示す。脈波センサ部16は、LED制御部62と、脈波センサ61とを備える。LED制御部62は、LED電流制御部62aと、LED電流生成部62bとを備える。LED電流制御部62aは、LED61aに流す電流の量を調整するための制御信号をLED電流生成部62bに送る。LED電流生成部62bは、LED電流制御部62aから送られた制御信号に基づく量の電流をLED61aに流す。
なお、所定の電流とは、時間的に変動しない一定の電流量であってもよいし、矩形波のように、周期的に電流がON/OFFとなる一定の振幅の電流パルスであってもよい。LED61aは、LED61aのアノード・カソード端子間で流れる電流に基づいて、所定の波長分布特性を持った光を発する。この光をユーザの右手の中指が受け、中指で反射した光がPD61bのカソード・アノード端子間に流れる電流に変換される。PD61bのカソード端子は、脈波信号増幅部17に接続される。
図26は、脈波信号増幅部17の回路図の一例を示す。脈波信号増幅部17は、電流電圧変換回路17aと、AC増幅回路17bと、低域通過フィルタ17cとを備えている。電流電圧変換回路17aは、脈波センサ部16において、PD61bのカソード端子に流れる電流を電圧信号に変換する。AC増幅回路17bは、増幅器91を用いた電流電圧変換回路17aで出力される電圧波形に対し、直流成分を取り除きながら増幅器92を用いて増幅する。増幅された脈波信号は、低域通過フィルタ17cによりフィルタリングされる。図16において、脈波信号増幅部17では、さらにA/Dコンバータによりデジタル信号に変換され、脈波信号のデジタルデータは、脈波信号出力部18へ出力される。
(シールド電位生成部)
図27にアクティブ電極95に設けられたシールド電位生成部64を示す。電極49の周囲、および電極49からバッファ90の入力端子に接続される配線59の周囲にシールド65が配置されている。また、電極部13は、シールド電位生成部64を備える。なお、シールド電位生成部64は、シールド電位制御器に相当する。
なお、電極49からバッファ90の入力端子への配線59と、シールド65との間隔を0.2mm設けてもよい。
バッファ90の消費電流I0は40μAとする。シールド電位生成部64は、シールド制御部64aと、シールド用バッファ群64bと、シールド用スイッチ群64cとを有している。シールド制御部64aは、前述のLED制御部62(図示せず)からの制御信号を受け、図27に示すようにシールド用バッファ群64bおよびシールド用スイッチ群64cにシールド制御信号S1〜S4を送る。
図27は、シールド用バッファ群64bの配置の一例を示す。シールド用バッファ群64bは、複数の駆動能力の異なるバッファ90a、90b、90c及び90dを有する。電極49により検出する電位が、複数のバッファ90a、90b、90c及び90dに共通に入力される。複数のバッファ90a、90b、90c及び90dに接続される配線は、シールド65で覆われる。バッファ90a、90b、90c及び90dそれぞれの動作は、シールド制御部64aにより制御される。具体的には、シールド制御部64aが出力するシールド制御信号S1、S2、S3及びS4により、それぞれ、バッファ90a、90b、90c及び90dの動作が制御される。バッファの出力端子Vs1、Vs2、Vs3及びVs4の配線は、それぞれ、シールド用スイッチ群64cが有するスイッチに接続される。Vs1、Vs2、Vs3及びVs4の電位は、いずれも、上記配線の電位を1倍に増幅した電位であるので、電極49で検出される電位に等しいが、出力端子Vs1、Vs2、Vs3及びVs4に対応するそれぞれの配線は、バッファ90a、90b、90c及び90dのそれぞれの消費電力に対応した駆動能力(それぞれ、20μA、40μA、80μA及び160μA)に対応する点が異なっている。
なお、配線59からバッファ90a及びスイッチSW1を介してシールド65に接続する回路部分が第一バッファ回路に相当し、配線59からバッファ90b及びスイッチSW2を介してシールド65に接続する回路部分が第二バッファ回路に相当する。また、第二バッファ回路には、配線59からバッファ90c及びスイッチSW3を介してシールド65に接続する回路部分と、配線59からバッファ90d及びスイッチSW4を介してシールド65に接続する回路部分との一方又は両方を含めてもよい。シールド電位生成部64は、シールド制御部64aによる制御に基づいて、第一バッファ回路及び/又は第二バッファ回路を介して、配線59により伝達される信号をシールド65に印加する。
また、電極48とバッファ90とを接続する配線58に配置される、上記第一バッファ回路及び第二バッファ回路に相当する回路部分を、それぞれ、第三バッファ回路及び第四バッファ回路という。シールド電位生成部64は、第三バッファ回路及び/又は第四バッファ回路を介して、配線58により伝達される信号をシールド65に印加する。
なお、複数のバッファ90a、90b、90c及び、90dのそれぞれの駆動能力の比は、図27に示すような1:2:4:8であってもよいし、均等な重み付け(1:1:1:1)であってもよいし、その他の任意の割合で重み付けされていてもよい。
図27は、シールド用スイッチ群64cの配置の一例を示す。シールド用スイッチ群64cは、複数のスイッチSW1、SW2、SW3及びSW4を備え、SW1、SW2、SW3及びSW4のそれぞれの一端は、シールド用バッファ群64bのバッファ90a、90b、90c及び90dのそれぞれの出力Vs1、Vs2、Vs3及びVs4に接続され、別の一端は、いずれもシールド65の配線に接続される。スイッチSW1、SW2、SW3及びSW4は、シールド制御部64aからのシールド制御信号S1、S2、S3及びS4によりそれぞれ制御される。スイッチSW1、SW2、SW3及びSW4のサイズは、均等な重み付け(1:1:1:1)であってもよいし、シールド用バッファ群64bの複数のバッファ90a、90b、90c及び90dのそれぞれが有する駆動能力に対応した重み付け(1:2:4:8)であってもよい。
なお、シールド電位生成部64は、電極の周囲に用いられるシールドだけでなく、同軸ケーブルのシールド線(第三シールド部材に相当)にシールド用の電位を供給してもよい。具体的には、図28に示すように、電極部13は、さらにシールド用スイッチ群64eを1つ備え、シールド用バッファ群64bのバッファ90a、90b、90c及び90dのそれぞれがシールド用スイッチ群64eに接続される。シールド用スイッチ群64eのスイッチSW1、SW2、SW3及びSW4のそれぞれの一端に接続される。スイッチSW1、SW2、SW3、SW4の他端は、同軸ケーブル97のシールド線98に共通に入力される。同軸ケーブル97の芯線は、バッファ90の出力端子に接続され、さらに生体電位増幅部14(図示せず)に接続される。これにより、脈波の測定を行う際に、バッファ90の出力を外来ノイズから厳重に守りたい場合に、同軸ケーブルに適切な電流駆動能力を有するシールド電位を供給できるという利点がある。なお、この場合、生体電位増幅部14が信号受信部に相当する。また、シールド用スイッチ群64eが切替部に相当する。
なお、シールド電位生成部64は、電極の周囲に用いられるシールドだけでなく、シールド用バッファ群64bのバッファ90a、90b、90c及び90dがそれぞれ有する駆動能力を利用して、バッファ90が行うバッファリング動作の駆動能力を向上させることができる。例えば、図29に示すようにバッファ90の出力端子と生体電位増幅部14(図示せず)とを接続する配線が比較的長い場合、この配線の電流駆動能力を向上させる必要がある。その際、シールド電位生成部64のシールド用バッファ群64bのうち、シールド制御信号S1〜S4により選択されたバッファの分だけ駆動能力を向上させることができる利点がある。
なお、シールド電位生成部64は、シールド用バッファ群64bとシールド用スイッチ群64cに代えて、駆動能力が変更可能な1個のバッファ90eと、スイッチSW5と、カレントミラー回路64dとORゲートOR1を用いた構成でも実現できる(図30参照)。シールド制御信号S1〜S4を基に、カレントミラー回路64dで生成する電流源のミラー比を変更し、バッファ90eの内部に備えているテール電流源用のバイアス電圧Vbを供給する。図30に示す例では、バッファ90eの電流駆動能力は、シールド制御信号S1〜S4の組み合わせにより、20μAから300μAまで変更することができる。ORゲートは、シールド制御信号S1〜S4の4つが入力され、S1〜S4の論理和(OR)であるS_ENがSW5の制御信号として供給される。また、S_EN信号は、バッファ90eの動作を制御するために入力される。バッファ90eの出力信号Vs5は、SW5を介してシールド電位として供給される。
(シールド制御部の制御フロー)
図31に、測定状態のバリエーションを示す。第1状態は、心電位を測定する測定状態であり、第2状態は心電位と脈波との両方を測定(同時測定)する測定状態である。図31の第1状態と第2状態とについて、図32に示すフローチャートを参照しながら処理を説明する。図32のステップS101からステップS103、及びステップS111とステップS112までが、コントローラ1に設置されているシールド制御部64aによる処理を示している。なお、以降の説明において、「H」及び「Hレベル」との記載はハイレベル(高電位)を意味し、「L」及び「Lレベル」との記載はロウレベル(低電位)を意味する。
<ステップS101>
シールド制御部64aは、LED制御信号がHレベルであるか否かを判定する。LED制御信号がHレベルである場合(ステップS101でYES)には、ステップS102に進み、そうでない場合(ステップS101でNO)には、ステップS111に進む。
<ステップS102>
シールド制御部64aは、シールド制御信号S1〜S4を出力する。S1〜S4のそれぞれの論理レベルは、S1がH、S2がH、S3がH、S4がHである。これは、測定状態を、心電位と脈波とを測定する第2状態に遷移させることに相当する。
<ステップS103>
コントローラ1及び情報処理装置2は、電極49により心電位を測定しながら、脈波センサ61により脈波信号を測定する。
<ステップS111>
シールド制御部64aは、シールド制御信号S1〜S4を出力する。S1〜S4のそれぞれの論理レベルは、S1がH、S2がL、S3がL、S4がLである。これは、測定状態を、心電位を測定する第1状態に遷移させることに相当する。
<ステップS112>
コントローラ1及び情報処理装置2は、電極49により心電位を測定する。
以上の一連の処理により、シールド制御部64aは、脈波センサ61により脈波を計測する所定のタイミングにおいて、第二バッファ回路を介して、第一配線により伝達される信号を第一シールド部材に印加する。上記所定のタイミングは、LED制御部62がLEDを発光させるタイミングである。
このように、情報処理システム100は、第1状態と第2状態とを切り替えながら脈波と心電位とを計測することで、脈波と心電位との同時計測における心電位の信号品質の劣化を抑制することができる。
(シールド駆動能力の制御例)
シールド制御部64aでシールド駆動能力を制御する例を図31および図33を用いて説明する。時刻tは、心電位と脈波との同時測定の開始時刻t0を基準にし、時刻t0の前後で第1状態と第2状態とを分けて説明する。
第1状態は、図33のt0以前の時刻において、心電位の測定を行う状態を示す。このとき、図31に示すように、LED制御部62から受ける制御信号はL(オフ)で、シールド制御部64aで出力されるシールド制御信号は、S1がH、S2がL、S3がL、S4がLレベルになる。これにより、シールド用バッファ群64bのバッファ90aの動作がオン、バッファ90bの動作がオフ、バッファ90cの動作がオフ、バッファ90dの動作がオフに制御され、シールド用スイッチ群64cのSW1がオン、SW2がオフ、SW3がオフ、SW4がオフに制御される。
したがって、I1=20μAの駆動能力を有する電位Vs1が、シールド65の電位として供給される。アクティブ電極95の1個当たりの消費電流は、I0とI1の和に等しいので60μAである。心電位を測定する場合は、シールド65の駆動能力、すなわちアクティブ電極95の消費電流を必要以上に大きくする必要はない。なお、参照用電極として用いられる電極48(図示せず)は、脈波センサ61が近接した位置に配置されていないので、後述する第2状態(心電と脈波の同時測定)においても、アクティブ電極95の消費電流を60μAから変更する必要はない。
第2状態は、図33の時刻t0を起点として、心電位と脈波との同時測定を行う状態である。このとき、Ch1用測定電極として用いられる電極49のシールド65の駆動電流を変更する。図31に示すように、LED制御部62より受ける制御信号はH(オン)で、シールド制御部64aで出力されるシールド制御信号は、S1〜S4がいずれもHレベルになり、シールド用バッファ群64bのバッファ90a〜90dの動作がいずれもオンに制御され、シールド用スイッチ群64cのSW1〜SW4がいずれもオンに制御される。したがって、バッファ90a〜90dの全ての駆動能力の総和である15×I1=300μAの駆動能力を有する電位Vs1が、シールド65の電位として供給される。シールド65の配線の駆動能力を300μAに上昇させることにより、図33に示すような心電位波形と脈波波形との同時取得ができる。このときのアクティブ電極95の1個当たりの消費電流は、340μAである。この消費電流は、従来の約1/3であり、低消費電力で、かつ信号品質の高い心電位と脈波の同時計測が行える。
(生体電位処理部)
図34は、生体電位処理部23の構成を示す。図34に示す生体電位処理部23は、生体電位波形調整部23aを備える。コントローラ1の一例は、少なくとも生体電位取得部22と、生体電位波形調整部23aとを備える。
生体電位取得部22は、電極48と電極49との間の生体電位の情報を取得する。
生体電位取得部22で取得したCh1の心電位のデータは、生体電位波形調整部23aに送られる。生体電位波形調整部23aは、設定可能なカットオフ周波数を有する高域通過フィルタ、および低域通過フィルタ等を備えている。なお、生体電位波形調整部23aは、商用電源の周波数(50Hzまたは60Hz)を遮断するノッチフィルタを備えていてもよい。生体電位波形調整部23aは、これらのフィルタ等を用いて信号処理を行い、生体電位波形を生成する。生成した生体電位波形は、表示情報出力部27を経由して表示装置3で表示されるものである。
(脈波信号処理部)
図35は、脈波信号処理部25の構成を示す。図35に示す脈波信号処理部25は、脈波波形調整部25aを備える。コントローラ1の一例は、少なくとも脈波信号取得部24と、脈波波形調整部25aとを備える。
脈波信号取得部24は、脈波センサ部16で検出された脈波信号の情報を取得する。
脈波信号取得部24で取得した脈波信号のデータは、脈波波形調整部25aに送られる。脈波波形調整部25aは、設定可能なカットオフ周波数を有する高域通過フィルタ、および低域通過フィルタ等を備えている。なお、脈波波形調整部25aは、商用電源の周波数(50Hzまたは60Hz)を遮断するノッチフィルタを備えていてもよい。脈波波形調整部25aは、これらのフィルタ等を用いて信号処理を行い、脈波波形を生成する。生成した脈波波形は、表示情報出力部27を経由して表示装置3に送信され、表示装置3により表示されるものである。
(アプリケーション処理部)
図36は、アプリケーション処理部26が生体情報を処理するフローを示す。図36に示されるフロー図について、図37に示される表示画像を参照しながら説明する。なお、図37は、コントローラ1の裏面に設けられた電極を、コントローラ1を表面側から透過的に見たときの電極の配置を示している。また、図37に示される表示画像は、表示装置3(例えば図1参照)であってもよいし、コントローラ1の表示部47(例えば図2の(b)参照)であってもよい。図37は、表示部47に表示される表示画像を示している。
図37には、現在計測されている心電波形と脈波波形とが、それぞれ、表示部47における心電波形表示部47aと脈波波形表示部47bに表示されている。また、心電位を測定している場合には、画面上の対応する電極図示部47cに色をつけて表示し、心電位を測定していない場合には、電極図示部47cを白色のまま表示する。さらに脈波信号を測定している場合には、画面上の対応する脈波センサ図示部47eにLEDとPDとに対応する色をつけて表示し、脈波信号を測定していない場合には、脈波センサ図示部47eを、LEDとPDとを表示しない白色の四角のまま維持する。
<ステップS161>
アプリケーション処理部26は、生体電位処理部23の出力結果に基づいて、心電位を測定している状態であるか否かを判定する。心電位を測定している状態である場合(ステップS161でYES)にはステップS162に進み、心電位を測定していない状態である場合(ステップS161でNO)にはステップS166に進む。
<ステップS162>
表示情報出力部27は、心電位を測定している状態のため、「心電位測定中」というメッセージを表示部47に表示させる。
<ステップS163>
表示情報出力部27は、Ref(参照電極)、及び、Ch1(計測電極)に対応する電極の図形を表示部47にハイライトさせる。当該のハイライトは、図37の電極図示部47cに描かれた電極の図形に表示される。
<ステップS164>
表示情報出力部27は、Ref(参照電極)、及び、Ch1(計測電極)のそれぞれのシールドに対応する図形を表示部47にハイライトさせる。当該のハイライトは、図37のシールド図示部47dに描かれたシールド図示部47dに表示される。
<ステップS165>
表示情報出力部27は、Ch1(計測電極)で測定された心電波形を、図37の心電波形表示部47aに表示させる。
<ステップS166>
表示情報出力部27は、心電位と脈波とを測定していないので、「心電位未測定、脈波未測定」というメッセージを表示部47に表示させ、処理を終了する。当該メッセージは、表示部47における測定状態表示部47fに表示される。
<ステップS167>
アプリケーション処理部26は、脈波信号処理部25の出力結果に基づいて、脈波を測定している状態であるか否かを判定する。脈波を測定している状態である場合(ステップS167でYES)には、ステップS168に進み、脈波を測定していない状態である場合(ステップS167でNO)には、ステップS172に進む。
<ステップS168>
表示情報出力部27は、脈波信号を測定している状態であるので、「脈波測定中」というメッセージを表示部47の測定状態表示部47fに表示させる。
<ステップS169>
表示情報出力部27は、Ref(参照電極)、及び、Ch1(計測電極)のそれぞれのシールドの強度に対応する図形を更新して、表示部47にハイライトさせる。当該ハイライトは、図37のシールド図示部47dに表示される。シールドの強度は、通常、心電位の測定時と比較し、シールドの駆動能力の最大限まで強化されるので、右側のシールド図示部47dの線幅が最大になるように表示される。
<ステップS170>
表示情報出力部27は、脈波センサに対応する図形を表示部47にハイライトさせる。当該ハイライトは、図37の脈波センサ図示部47eの脈波センサの図形に表示される。
<ステップS171>
表示情報出力部27は、脈波センサで測定した脈波信号波形を、図37の脈波波形表示部47bに表示し、処理を終了する。
<ステップS172>
表示情報出力部27は、脈波を測定していない状態であるので、「脈波未測定」というメッセージを表示部47に表示させ、処理を終了する。当該メッセージは、測定状態表示部47fに表示される。
(図示部の変形例)
図38の表示部47に示すように、シールド駆動能力設定部47gをユーザが操作することにより、シールド制御部64aで制御するシールドの強度(駆動能力)を調整してもよい。図38の表示部47のシールド駆動能力設定部47gで設定されたシールド駆動能力に対応したシールド制御信号S1〜S4は、図31で示された値から更新される。そして、更新された設定値のシールド駆動能力を有するシールド65の電位が、シールド制御部64aにより供給される。
なお、シールド駆動能力設定部47gは、シールド電位生成部64が、第一バッファ回路及び第二バッファ回路のどちらを介して信号を第一シールド部材に印加するかを示す指示を受け付ける受付部に相当する。
(効果)
以上のように、LED制御部62からの制御信号に基づいて、コントローラ1に搭載された電極の周りに配置したシールドの駆動能力が変更できるので、生体電位と脈波を同時測定する際、低消費電力でかつ、高い信号品質の生体電位と脈波の同時測定を行うことが可能になる。
(実施の形態2)
本実施の形態による情報処理システムの全体の基本的な構成は、図15及び図16に示す構成と同じである。そこで以下では、実施の形態1の構成と異なる構成である生体電位処理部23の処理、脈波信号処理部25の処理、およびシールド制御部64aの制御を説明する。
(生体電位処理部)
図39は、生体電位処理部23の構成を示す。図39に示す生体電位処理部23は、生体電位波形調整部23aに加え、さらに生体電位特徴量抽出部23bを備える。コントローラ1は、少なくとも生体電位取得部22と、生体電位波形調整部23aと、生体電位特徴量抽出部23bとを備える。
生体電位特徴量抽出部23bは、生体電位波形調整部23aで整形された生体電位波形を基に、生体電位の特徴量を抽出する。例えば、生体電位波形調整部23aで整形された心電波形から、P波、Q波、R波、S波、T波及びU波等の成分を抽出し、時間的に隣接するR波の間隔(RR間隔)を算出することで、心電波形の周期に関する情報を抽出する。
なお、生体電位特徴量抽出部23bで抽出された情報は、表示情報出力部27を経由して表示装置3で表示してもよい。
(脈波信号処理部)
図40は、脈波信号処理部25の構成を示す。図40に示す脈波信号処理部25は、脈波波形調整部25aに加え、さらに脈波特徴量抽出部25bおよび脈波波形間引き部25cを備える。コントローラ1の一例は、少なくとも脈波信号取得部24と、脈波波形調整部25aと、脈波特徴量抽出部25bと、脈波波形間引き部25cとを備える。
脈波特徴量抽出部25bは、脈波波形調整部25aで整形された脈波波形を基に、脈波の特徴量を抽出する。例えば、脈波波形を基に、時間に関する1階微分を取った速度脈波波形と、時間に関する2階微分を取った加速度脈波波形を算出する。速度脈波波形を基に、脈波波形のピークに関する情報が抽出される。加速度脈波波形を基に、それぞれのピーク、及び/又は、脈波波形の変曲点に関する情報が抽出される。
なお、脈波特徴量抽出部25bで抽出された情報は、表示情報出力部27を経由して表示装置3に送信され、表示装置3により表示してもよい。
脈波波形間引き部25cは、脈波波形に関して、所定の間引き間隔に基づいて間引きされた脈波波形が出力される。例えば、脈波波形のサンプリング周波数を1024Hzとした場合、間引き点数を64点とすると、間引き間隔は1/16(0.0625)秒である。
(シールド制御部の制御フロー)
図41に、測定状態およびシールド制御信号のバリエーションを示す。シールド制御信号S1〜S4の値は、脈波の波形情報を基に判定される。第1状態は、生体電位の測定であり、脈波の測定をしないので、シールド制御信号S1〜S4の値は、S1がH、S2〜S4がLと設定される。第2状態は、心電位と脈波との同時測定であり、シールド制御信号S1〜S4の値は、脈波の振幅及び周期を基に図41で示すバリエーションのうちの1つが選択される。
図41の第1状態と第2状態とについて、図42に示すフローチャートを参照しながら処理を説明する。図42のステップS231からS237までが、コントローラ1に設置されているシールド制御部64aによる処理を示している。
<ステップS201>
シールド制御部64aは、脈波の波形情報を基に、脈波を測定するか否かを判定する。脈波を測定していると判定した場合(ステップS201でYES)には、ステップS202に進み、そうでない場合(ステップS201でNO)には、ステップS211に進む。なお、脈波を測定すると判定されるのは、例えば、脈波センサ61が検知した脈波に基づいて予測される、新たな脈波ピークが検知されるべきときである。
<ステップS202>
シールド制御部64aは、シールド制御信号S1〜S4を出力する。シールド制御信号S1〜S4は、脈波の波形情報を基に、図41の組合せのうちの一つが選択される。これは、測定状態を、心電位と脈波とを測定する第2状態に遷移させることに相当する。
<ステップS203>
シールド制御部64aは、心電波形に応じて、シールドの駆動電流を微調整するか否かを判定する。シールドの駆動電流を微調整すると判定した場合(ステップS203でYES)には、ステップS204に進み、そうでない場合(ステップS203でNO)には、処理を終了する。
<ステップS204>
シールド制御部64aは、心電波形の情報を基に、ステップS202で選択されたS1〜S4の値の組合せから微調整を行う。
<ステップS205>
コントローラ1及び情報処理装置2は、電極49により心電位を測定しながら、脈波センサ61により脈波信号を測定する。
<ステップS211>
シールド制御部64aは、シールド制御信号S1〜S4を出力する。S1〜S4のそれぞれの論理レベルは、S1がH、S2がL、S3がL、S4がLである。これは、測定状態を、心電位を測定する第1状態に遷移させることに相当する。
<ステップS212>
コントローラ1及び情報処理装置2は、電極49により心電位を測定する。
以上の一連の処理により、シールド制御部64aは、脈波センサ61により脈波を計測する所定のタイミングにおいて、第二バッファ回路を介して、第一配線により伝達される信号を第一シールド部材に印加する。上記所定のタイミングは、脈波センサ61が検知した脈波に基づいて予測される、新たな脈波ピークが検知されるべきタイミングである。
このように、コントローラ1及び情報処理装置2は、第1状態と第2状態とを切り替えながら脈波と心電位とを計測することで、脈波と心電位との同時計測における心電位の信号品質の劣化を抑制することができる。
(シールドの制御部の制御例)
シールド制御部64aでシールド駆動能力を制御する例について図43を用いて説明する。時刻tは、心電位と脈波との同時測定の開始時刻t0を基準にし、時刻t0の前後で第1状態と第2状態とを分けて説明する。
第1状態は、図43のt0以前の時刻において、心電位の測定を行う状態を示す。このとき、図28に示すように、心電位の測定を行い、脈波波形の情報はないので、シールド制御部64aで出力されるシールド制御信号のそれぞれは、S1がH、S2〜S4がLレベルになり、シールド用バッファ群64bのバッファ90aの動作がオン、バッファ90b〜90dの動作がオフに制御され、シールド用スイッチ群64cのSW1がオン、SW2〜SW4がオフに制御される。したがって、I1=20μAの駆動能力を有する電位Vs1が、シールド65の電位として供給される。アクティブ電極95の1個当たりの消費電流は、60μAである。なお、参照用電極として用いられる電極48(図示せず)は、脈波センサ61が近接した位置に配置されていないので、後述する第2状態(心電と脈波の同時測定)においても、アクティブ電極95の消費電流を60μAから変更する必要はない。
第2状態は、図43のt0を起点として、心電位と脈波との同時測定を行う状態である。このとき、Ch1用測定電極として用いられる電極49のシールド65の駆動電流を、脈波情報を基に変更する。
例えば、図43に示す脈波波形の場合、シールド制御部64aで出力されるシールド制御信号は、時刻t0が脈波振幅のピークの時刻に比較的近いので、S1をLに、S2とS3とをHに、S4をLに制御する。これにより、シールド用バッファ群64bのバッファ90aの動作がオフに、バッファ90bおよび90cの動作がオンに、バッファ90dの動作がオフに制御され、シールド用スイッチ群64cのSW1がオフに、SW2およびSW3がオンに、SW4がオフに制御される。したがって、バッファ90a〜90cの全ての駆動能力の総和である6×I1=120μAの駆動能力を有する電位Vs1の配線がシールド65の電位として供給される。シールド65の配線の駆動能力を120μAに上昇させることにより、図43に示すような心電位波形と脈波波形とを同時に取得することができる。このときのアクティブ電極95の1個当たりの消費電流は、160μAである。
時刻1/16秒のときは、シールド制御部64aで出力されるシールド制御信号は、S1がH、S2がL、S3がH、S4がHとなり、シールドの駆動能力は260μAに制御される。このときのアクティブ電極95の1個当たりの消費電流は、300μAである。そして上記と同様に、シールド制御部64aは、脈波波形に基づいてシールドの駆動能力の制御を行う。
脈波信号のピークを過ぎた後、心電位波形は相変わらず脈波信号より十分小さな振幅の波形を表し続ける。なお、心電位波形の特徴的な波形であるT波、U波が現れる辺りで、シールドの駆動能力を少し上昇させることで、心電位波形の小さな変化を忠実に捉えられる利点がある。例えば、時刻5/16秒(0.3125秒)の時のように、心電位波形のT波のように、R波より小さい振幅をもつ波形が現れる場合には、シールド制御部64aは、さらに生体電位波形に基づいてシールド制御部64aの駆動能力を微調整してもよい。脈波の振幅が基準(GND)に近いにも関わらず、心電波形のT波を精度良く捉えるために、このときのシールドの駆動能力は120μAにまで上昇されている。
以上述べたように、アクティブ電極の消費電流の平均値は、電極1個あたり120μAと、従来に比べて8分の1の低消費電力に抑えることができる。
なお、シールド制御部64aでシールド能力を制御するための、脈波波形の間引き点は64に必ずしも固定する必要はなく、ユーザが図37の表示部を用いて、間引き点数を変更できるようにしてもよい。
以上のように、上記実施の形態における情報処理システム100は、コントローラの上側面に設置した電極の周囲に駆動能力が変更することが可能なシールドを設置することで、脈波信号に由来する電位変動の影響を受けることなく、低消費電力でかつ、信号品質が高い、生体電位と脈波の同時測定を行うことが可能になる。
また、電子機器は、脈波センサを測定するタイミングにおいて、第一電極及び第一配線が、駆動電流が比較的大きい第二バッファ回路により駆動されるシールド部材によりシールドされる。これにより、電極により取得した心電位に、脈波信号によるノイズが混入することが抑制される。これは、心電位と比べて脈波信号の振幅が大きく、また、心電位と脈波信号との位相が異なるので、駆動電流が比較的大きいバッファ(例えば1mA)の出力線を用いてシールドすることが可能であることを利用したものである。このように、電子機器は、脈波と心電位との同時計測における心電位の信号品質の劣化を抑制することができる。
また、電子機器は、人の一の指から心電計測用の信号と、脈波計測用の信号とを取得することができる。よって、脈波と心電位との同時計測における心電位の信号品質の劣化を抑制するとともに、電子機器による計測点を少なくすることで利便性が高められる。
また、電子機器は、発光部が発光するタイミングにおいて、第一電極及び第一配線が、駆動電流が比較的大きい第二バッファ回路により駆動されるシールド部材によりシールドされる。脈波センサが脈波を測定する時には、発光部が発光する。よって、電子機器は、発光部による発光のタイミングを利用して脈波の測定タイミングを容易に取得し、脈波と心電位との同時計測における心電位の信号品質の劣化を抑制することができる。
また、新たな脈波ピークが検知されるべきタイミングにおいて、第一電極及び第一配線が、駆動電流が比較的大きい第二バッファ回路により駆動されるシールド部材によりシールドされる。脈波センサにより計測される脈波は、周期的なパターンを有するので、脈波を連続的に測定している場合には、新たな脈波ピークが測定されるタイミングがある程度予測できる。よって、電子機器は、新たな脈波ピークが測定されるタイミングを利用して脈波の測定タイミングを容易に取得し、脈波と心電位との同時計測における心電位の信号品質の劣化を抑制することができる。
また、人が自然に、言い換えれば、普段通りに、電子機器を把持するときに、人の指が電極と脈波センサとの両方に接触し、脈波と心電位との同時計測が適切になされる。
また、電子機器は、シールド部材による電極のシールド効果を維持しながらコンパクトに構成され得る。これにより、人が電子機器を自然に把持するときに、人の指が電極と脈波センサとの両方に、より容易に接触するようになり、脈波と心電位との同時計測が適切になされる。また、電子機器の小型化に寄与する。
また、電子機器は、ユーザからの指示に基づいてシールド部材によるシールド効果を制御することができる。これによりユーザの意図を反映したタイミングで脈波と心電位との同時計測を行うことができる。
また、電子機器は、アクティブ電極を用いることで、より高精度に心電位を計測することができる。
また、電子機器は、第一増幅部が増幅した後の信号が伝達される配線のシールド部材をもバッファ回路により駆動する。これにより、電極により取得した心電位に、脈波信号によるノイズが混入することを、より一層抑制することができる。
また、電子機器は、第一増幅部が増幅した後の信号が伝達される配線のシールド部材をバッファ回路に駆動するか否かを制御可能とすることで、必要なときに駆動を行うという制御を行うことができる。必要な時にも駆動を行うことで、消費電力の低減効果が得られる。
また、電子機器は、第一電極及び第一配線だけでなく、第二電極及び第三配線が、駆動電流が比較的大きい第二バッファ回路により駆動されるシールド部材によりシールドされる。これにより、電極により取得した心電位に、脈波信号によるノイズが混入することがより一層抑制される。
なお、上記各実施の形態において、各構成要素は、専用のハードウェアで構成されるか、各構成要素に適したソフトウェアプログラムを実行することによって実現されてもよい。各構成要素は、CPUまたはプロセッサなどのプログラム実行部が、ハードディスクまたは半導体メモリなどの記録媒体に記録されたソフトウェアプログラムを読み出して実行することによって実現されてもよい。ここで、上記各実施の形態の電子機器などを実現するソフトウェアは、次のようなプログラムである。
すなわち、このプログラムは、コンピュータに、電子機器の制御方法であって、前記電子機器は、心電位計測用の第一電極及び第二電極と、前記第二電極より前記第一電極に近い位置に設けられ、脈波を検知する脈波センサと、前記第一電極で取得された信号を増幅する第一増幅部と、前記第一電極と前記第一増幅部の端子とを電気的に接続し、前記信号を伝達する第一配線と、前記第一電極及び前記第一配線をシールドする第一シールド部材と、第一バッファ回路、及び、前記第一バッファ回路の駆動電流より駆動電流が大きい第二バッファ回路を有するシールド電位制御器とを備え、前記制御方法は、前記脈波センサが前記脈波を計測する所定のタイミングを取得するステップと、前記所定のタイミング前に、前記第一バッファ回路が生成する前記信号に対する第一生成信号を前記第一シールド部材への印加を開始するステップと、前記所定のタイミングにおいて、前記第二バッファ回路が生成する前記信号に対する第二生成信号を前記第一シールド部材に印加を開始するステップとを含む電子機器の制御方法を実行させる。
以上、一つまたは複数の態様に係る情報処理システム(電子機器)などについて、実施の形態に基づいて説明したが、本開示は、この実施の形態に限定されるものではない。本開示の趣旨を逸脱しない限り、当業者が思いつく各種変形を本実施の形態に施したものや、異なる実施の形態における構成要素を組み合わせて構築される形態も、一つまたは複数の態様の範囲内に含まれてもよい。