JP6845658B2 - 発電計画策定装置、発電計画策定方法、および発電計画策定プログラム - Google Patents

発電計画策定装置、発電計画策定方法、および発電計画策定プログラム Download PDF

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Description

本発明の実施形態は、発電計画策定装置、発電計画策定方法、および発電計画策定プログラムに関する。
平成25年4月2日に閣議決定された「電力システム改革に関する改革方針」により、広域系統運用の拡大、小売および発電の全面自由化、法的分離の方式による送配電部門の中立性の一層の確保、という3段階からなる改革の全体像が示された。これにより、一般電気事業者は2018〜2020年をめどに送配電部門を法的分離することとなった。現在、一般電気事業者の各発電所の発電量は、各一般電気事業者の送配電部門が管轄している中央給電指令所が需要予想をもとに算出する発電計画に従っている。しかし、送配電部門の法的分離に伴い、発電会社は小売部門からの需要をもとに発電計画を立てる必要がでてくる。
発電機の燃料には、石油などの油や、石炭や、LPG(液化石油ガス)や、LNG(液化天然ガス)がある。油については、国内に石油メジャーなどによる備蓄基地があり、各発電所のタンクへの油の輸送は比較的近距離であるため大規模なパイプラインの必要はない。石炭については、国内炭と海外炭のいずれにおいても、発電所の近傍の石炭ヤードと呼ばれる野積みエリアに備蓄される。一方、LNGについては、石油メジャーではなく発電会社自身が産出地で買い付けを行い、輸送や国内備蓄を行う必要がある。
しかし、LNGを備蓄するには、LNGを冷温にしておく必要があり、巨大な魔法ビンのようなタンクを必要とする。このように、LNGの備蓄には、LNGを冷温に保つタンクなどの高額な設備が必要となるため、発電所ごとにタンクを設置することは経済性の点から好ましくない。そこで、複数の発電所にLNGを供給するLNG基地を設置し、発電所間をパイプラインで接続する方式がとられている。
多数の発電所にLNGを供給する場合はLNG基地を複数設置し、供給量を分担する方法をとることができる。LNG基地が複数存在する場合には、LNG基地間に転送管と呼ばれるパイプラインを接続することでLNG供給の信頼性を上げることができる。この場合、あるLNG基地のLNG在庫が不足しそうになると、転送管を介して、他のLNG基地からの融通供給を行う。従って、LNG基地と発電所との関係は固定ではなく、各発電所は、パイプラインを伝わって複数のLNG基地から燃料を受けることができる。
よって、LNGを燃料とする発電機は、燃料基地(LNG基地)から枝状に広がるパイプラインに接続されており、1つの燃料基地から複数の発電機に燃料が供給される。各燃料基地には、燃料在庫量の上限値と下限値が設定されており、燃料在庫量が下限値を下回らないように発電機の出力を調整する必要がある。
各燃料基地には、燃料(LNG)を補充するために定期的にLNG船が入船する。この際、燃料基地の燃料在庫量とLNG船からの燃料受入量との和が、燃料在庫量の上限値を超えないように、燃料を事前に消費しておく必要がある。そのため、LNGの消費計画に合わせて、LNGをタンカー(LNG船)により補充する補充計画が重要となる。
また、パイプラインに流せる燃料の流量には、パイプの太さによって上限値と下限値がある。LNGをパイプラインに流す際には、LNGを気化させる必要がある。そこで、LNGを気化させるための気化器が、LNG基地に設置されている。気化器にはいくつかの種類があるが、気化器の代表例には、海水を使ってLNGを気化させるオープンラック式LNG気化器(ORV)がある。気化器は定期的にメンテナンスされるため、複数台の気化器のうちのいくつかがメンテナンスのために停止される場合がある。よって、LNG基地から供給できるガス量が期間によって変わることを考慮に入れて、発電機を運転する必要がある。
また、LNGは自然に気化し、このガスをBOG(Boil of Gas)と呼ぶ。BOGは発電機で燃料として使用する。しかし、BOGとして得られるガスはメタンが主成分となり発熱量が小さくなるため、BOGを焚ける発電機は限られている。また、タンカーが入船してLNGを揚陸する際にもBOGが発生するため、タンカー入船時はBOG発生量が多くなるので発電計画に織り込まなくてはならない。
発電計画を策定する際にはさらに、発電機等の設備の稼働状況も考慮することが望ましい。
設備の稼働状況を示す指標として、設備の稼働率が用いられることが多い。稼働率は、期間T1と設備の故障時間T2との差と期間T1との比と定義される(稼働率=(T1−T2)/T1)。設備が発電機の場合には、稼働率のほかに、設備利用率が用いられる。設備利用率は、ある期間中の総発電量W1と、この期間中に発電機が定格出力で運転した場合に発生可能な発電量W2との比と定義される(設備利用率=W1/W2)。
設備利用率には、暦日利用率と除停止利用率の2種類がある。暦日利用率では、上記の期間として、発電機が発電しているか否かにかかわらず暦上の期間が使用される。例えば、1日の暦日利用率とは、24時間あたりの設備利用率を意味する。一方、除停止利用率では、上記の期間として、発電機が発電している期間が使用される。例えば発電機が1日のうちの18時間発電する場合には、1日の除停止利用率とは、この18時間あたりの設備利用率を意味する。
暦日利用率では、発電機が点検等で停止している期間も利用率の分母にカウントするため、1年を通じた暦日利用率は100%にはならない。一方、除停止利用率では、発電機が稼働している期間のみを利用率の分母にカウントするため、1年を通じた除停止利用率は100%になり得る。暦日利用率と除停止利用率は、単一の発電機について計算することも、複数の発電機について計算することもある。
例えば、燃料の使用を促進したい場合や抑えたい場合には、発電機の除停止利用率を上げたり下げたりして、燃料使用量を増減させることができる。また、複数台の発電機の負荷配分を調整する場合に、燃料単価に掛ける係数の値を変化させて、各発電機の配分値を変化させることができる。
燃料在庫量を考慮した発電制御に関しては、いくつかの方法が知られている。例えば、燃料在庫量を上限値と下限値との間の範囲内に納めるために、発電機の割当出力量を操作する際に、燃料価格を仮想価格に変更し、仮想価格にて出力量を計算し、燃料在庫量が上記範囲内に納まるまで価格変更と出力計算とを繰り返す方法が知られている。この際、受入量が予め定められている第1燃料(LNG等)を使用する発電と、受入量が定められていない第2燃料(油等)を使用する発電とを行う場合において、第1燃料に制約があるときには、第1燃料での発電が第2燃料での発電の一部を分担してもよい。
特許第4726724号公報
しかしながら、従来の発電方法や発電計画策定方法には、以下のような問題がある。
従来の発電方法では、複数の発電機グループの運転を順々に制約範囲内に収める場合、最終的に無制約の発電機に出力等の誤差を吸収させている。一方、油とLNGは同程度の規模で発電に使用されていたが、近年は、油火力発電の発電機が老朽化や資源保護の観点から廃止になる傾向が強く、LNG火力発電の発電機が発電に占める割合が大きくなってきている。そのため、無制約の発電機が少なくなってきており、LNG火力発電での燃料使用や燃料計画が適切に進まない場合に、他の燃料種別の発電(油火力発電等)でこれをバックアップすることが難しくなってきている。よって、LNGの在庫量、LNGの気化能力、LNGパイプラインの流量制限、発電機の選択などを適切に考慮しないと、発電が不可能になるおそれがある。その結果、電力需要を満たすことができず、電力供給障害や停電が発生する可能性がある。
また、各発電機の燃料費を仮想的に変化させる(燃料単価に仮想的係数を掛けて燃料費を求める)ことにより、複数の発電機の負荷配分を計算する方法が知られている。この方法では、各発電機を燃費の良い発電機または燃費の悪い発電機に見せかけて計算を行うことで、負荷配分を変更する計算を行い、計算結果が制約範囲内に収まるまでこの計算を繰り返す。しかし、このような経験と試行錯誤による繰り返し計算では、計算結果が得られるまでに大きな手間が掛かることや、得られた計算結果の検証に長い時間が掛かることが問題となる。
また、発電計画は、未来を起点とした計画になる。具体的には、来月の発電計画を策定する場合には、数日から十数日先を起点とした計算を行う。例えば、来月の燃料消費量を計算する際には、来月の発電電力量を燃料消費量に換算することにより、来月の燃料消費量を計算できる。一方、来月の在庫推移を計算する際には、来月初日における燃料在庫量の推定値がないと、来月の在庫推移を計算できない。従来の方法では、タンク中間点を仮起点とするなどの処理により、おおよその在庫推移しか予測できなかった。
また、燃料タンク内の燃料在庫量の上限レベルと下限レベルは固定されており、燃料在庫量は、上限レベルと下限レベルとの間の範囲内に納まる必要がある。従来の方法では、入船したタンカーからの揚陸燃料と、発電機に払い出す使用燃料との推移を、この範囲内に管理している。ただし、実際の燃料タンクの上下限レベルと、管理上の上下限レベルとの間には差があり、後者の上下限レベル間の範囲は、前者の上下限レベル間の範囲内にある。よって、管理上の上下限レベルは、多少の変更は可能であるが、おおむね固定されているので、実運用での柔軟性にやや欠けた発電計画が策定される可能性がある。
また、従来の方法では、発電計画の設備利用率が適切に設定されていない。燃料在庫量やパイプラインの状況によっては、複数の発電機での燃料使用を促進したい場合や抑えたい場合が発生する。しかし、燃料単価の係数や設備利用率の目標値を変更するだけでは、これらの発電機での燃料使用を適切に変化させることはできない。例えば、電力需要のピーク時にLNG火力による発電量を減らすと、他の燃料種別による発電量が増えることになるため好ましくない。逆に、他の燃料種別の発電機の台数が少ない場合には、LNG火力の発電機の発電量を減らすことができないため、発電計画の策定処理において計画が立てられなくなるおそれがある。
そこで、本発明の実施形態は、発電用の燃料に関する事項を考慮に入れて発電計画を策定可能な発電計画策定装置、発電計画策定方法、および発電計画策定プログラムを提供することを課題とする。
一の実施形態によれば、発電計画策定装置は、複数の発電設備についてのデータと、前記発電設備に燃料を供給する複数の燃料基地についてのデータと、前記燃料基地から前記発電設備に前記燃料を供給する導管についてのデータと、前記燃料基地に入船するタンカーについてのデータとに基づいて、前記燃料基地における前記燃料の在庫量の推移を計算する発電情報処理部を備える。前記装置はさらに、前記燃料の在庫量の推移に基づいて、前記発電設備についての発電計画を出力する発電計画出力部を備える。
第1実施形態の発電計画策定装置の構成を示すブロック図である。 第1実施形態のLNG供給パイプラインの例を示した模式図である。 第1実施形態のパイプライントポロジーの例を示した模式図である。 第1実施形態の気化器データ、導管データ、および基地データの例を示した図である。 第1実施形態の点検予定データ、入船予定データ、および基地データの例を示した図である。 第1実施形態の発電計画における燃料在庫量の推移の具体例を示したグラフである。 第2実施形態の発電計画策定装置の構成を示すブロック図である。 第2実施形態の基地データの例を示した図である。 第2実施形態のLNG供給パイプラインの例を示した模式図である。 第3実施形態の発電計画策定装置の構成を示すブロック図である。 第4実施形態の発電計画策定装置の構成を示すブロック図である。 第4実施形態の出力補正について説明するためのグラフである。 第5実施形態の発電計画策定装置の構成を示すブロック図である。 第6実施形態の発電計画における燃料在庫量の推移の具体例を示したグラフである。 第6実施形態の発電計画策定装置の構成を示すブロック図である。 第7実施形態の発電計画策定装置の構成を示すブロック図である。
以下、本発明の実施形態を、図面を参照して説明する。図1〜図16では、同一または類似の構成に同一の符号を付し、重複する説明は省略する。
(第1実施形態)
図1は、第1実施形態の発電計画策定装置10の構成を示すブロック図である。この発電計画策定装置10は、発電機をいつ起動してどれくらいの発電出力で動作させるかという発電計画を策定する。本実施形態の発電機は、例えば油火力発電やLNG火力発電などの種々の発電形式の発電機である。発電機は、発電設備の例である。
発電計画策定装置10は、設備データ入力部11、需要データ入力部12、点検予定データ入力部13、入船予定データ入力部14、および在庫量データ入力部15を備えている。発電計画策定装置10はさらに、発電情報処理部の例である負荷配分計算部21、払出し能力計算部22、導管流量計算部23、燃料在庫計算部24、制約確認部25、および前回策定計画保存部26を備えている。発電計画策定装置10はさらに、発電計画出力部31を備えている。
また、発電計画策定装置10は、気化器データ格納部101と、発電機データ格納部102と、パイプライントポロジー格納部103と、導管データ格納部104と、基地データ格納部105と、需要データ格納部106と、点検予定データ格納部107と、入船予定データ格納部108と、在庫量データ格納部109と、負荷配分推移格納部201と、導管流量推移格納部202と、燃料在庫推移格納部203と、前回策定計画格納部301とを備えている。
なお、発電機データ格納部102や負荷配分推移格納部201内のデータは、複数の発電設備についてのデータの例である。気化器データ格納部101や、基地データ格納部105、点検予定データ格納部107、在庫量データ格納部109内のデータは、複数の燃料基地についてのデータの例である。パイプライントポロジー格納部103や、導管データ格納部104、導管流量推移格納部202内のデータは、導管についてのデータの例である。入船予定データ格納部108内のデータは、タンカーについてのデータの例である。
以下、図1の発電計画策定装置10の動作について詳細に説明する。この説明の中で、図2〜図6を適宜参照する。
設備データ入力部11は、種々の設備についてのデータを発電計画策定装置10に入力する。このような設備の例は、LNG供給パイプライン、発電機、燃料基地などである。
図2は、第1実施形態のLNG供給パイプラインの例を示した模式図である。
図2に示すLNG供給パイプラインは、発電機1〜Lと燃料基地(LNG基地)1〜Nとを互いに接続する導管であり、燃料基地1〜Nから発電機1〜Lに発電用の燃料であるLNGを供給する。以下、LNG供給パイプラインを単に「パイプライン」と表記する。図2はさらに、LNGを気化させるためにパイプライン上に設けられた気化器1〜Mを示している。なお、L、M、Nは2以上の整数である。
燃料基地1は、気化器1、2を備えている。燃料基地1は、気化器1により気化されたLNGをパイプラインを介して発電機1、2に供給し、気化器2により気化されたLNGをパイプラインを介して発電機3〜5に供給する。同様に、燃料基地2は、気化器3を備えており、気化器3により気化されたLNGをパイプラインを介して発電機6〜10に供給する。発電機9〜10は、通常は燃料基地2からLNGを供給されるが、燃料基地1のパイプラインから発電機9〜10にLNGを直接供給することも可能である。また、燃料基地Nは、気化器Mを備えており、気化器Mにより気化されたLNGをパイプラインを介して発電機Lに供給する。
発電機1〜5は、通常は燃料基地1からLNGを供給されるが、他の燃料基地から燃料を供給されることもある。例えば、発電機3〜5は、燃料基地2から気化器3やパイプラインを介してLNGを供給され得る。逆に、発電機8〜10は、燃料基地1から気化器2やパイプラインを介してLNGを供給され得る。これらの場合、燃料基地1と燃料基地2との間を接続する転送管と呼ばれるパイプラインを介してLNGが転送される。
燃料基地1〜Nの各々は、LNGを備蓄するための燃料タンクを備えている。LNGを輸送するタンカー(LNG船)が例えば燃料基地1に入船すると、タンカーにより輸送されたLNGが燃料基地1の燃料タンク内に備蓄される。その結果、燃料基地1の燃料在庫量が増加する。
図3は、第1実施形態のパイプライントポロジーの例を示した模式図である。
パイプラインによる発電機1〜Lと燃料基地1〜Nとの接続状態は、図3のようなパイプライントポロジーにより表現される。符号B01は、燃料基地1の基地コードを示す。符号N01〜N04は、パイプライン上の各ノードを特定するためのノードコードを示す。符号P01〜P10は、パイプライン上のノード間やノードと設備との間の各部分を特定するための導管コードを示す。
図3は、燃料保存則と呼ばれる数式を示している。例えば、ノードN02の数式「P04=P05+P06」は、導管P04における燃料流量が、導管P05における燃料流量と、導管P06における燃料流量との和に等しいことを示している。また、基地B01の数式「B01=P01+P04」は、基地B01からの燃料の払出し量が、導管P01における燃料流量と、導管P04における燃料流量との和に等しいことを示している。
以下の説明では、図2および図3に示す発電システムについて発電計画を策定することを想定する。ただし、発電機の符号「1〜L」や燃料基地の符号「1〜N」など、図2および図3に示す符号の表記については、必要な場合以外は省略する。なお、以下の説明は、その他の発電システムについて発電計画を策定する場合にも適用可能である。
図1の気化器データ格納部101は、設備データ入力部11から入力された気化器データを格納する。気化器データは、図2に示す気化器についてのデータであり、例えば、各気化器のスペックを表すスペックデータである。このスペックデータの例は、各気化器のLNGの気化能力を表すデータである。気化器データは例えば、払出し能力計算部22が各燃料基地からのLNGの払出し量の上限値を定める際に使用される。
発電機データ格納部102は、設備データ入力部11から入力された発電機データを格納する。発電機データは、図2に示す発電機についてのデータであり、例えば、各発電機のスペックを表すスペックデータである。このスペックデータの例は、各発電機の定格出力、効率、燃料コスト、起動・停止カーブなどを表すデータである。発電機データは例えば、負荷配分計算部21が発電機の負荷配分を行うために発電機の出力量を決める際に使用される。
パイプライントポロジー格納部103は、設備データ入力部11から入力されたパイプライントポロジーデータを格納する。パイプライントポロジーデータは、図3に示すパイプライントポロジーについてのデータであり、発電機と燃料基地との接続状態を表すデータである。パイプライントポロジーデータはさらに、ノードと呼ばれるパイプラインの分岐に関するデータや、導管コードが付された各導管におけるLNGの流れ方向に関するデータを含む。パイプライントポロジーデータは例えば、導管流量計算部23が導管制約を考慮に入れる際に使用される。
導管データ格納部104は、設備データ入力部11から入力された導管データを格納する。導管データは、図2に示すパイプライン(導管)についてのデータであり、例えば、パイプラインのスペックを表すスペックデータである。このスペックデータの例は、導管コードが付された各導管の直径を表すデータである。導管データは例えば、導管流量計算部23が導管制約を考慮に入れる際に使用され、具体的には、各導管におけるLNGの流量の上限値を定める際に使用される。
基地データ格納部105は、設備データ入力部11から入力された基地データを格納する。基地データは、図2に示す燃料基地についてのデータであり、例えば、各燃料基地のスペックを表すスペックデータである。このスペックデータの例は、各燃料基地の燃料タンクの大きさを表すデータである。燃料データは例えば、燃料在庫計算部24が燃料在庫制約を考慮に入れる際に使用され、具体的には、各核燃料基地の燃料在庫量を定める際に使用される。
図4は、第1実施形態の気化器データ、導管データ、および基地データの例を示した図である。
図4(a)は、気化器データ格納部101に格納される気化器データの一例を示す。本実施形態では気化器ごとにパラメータを設定することができ、気化器IDは、パラメータが設定される気化器を示すIDである。気化器名称は、パラメータが設定される気化器の名称を示す。導管コードは、気化器が設けられた導管を示すコードである。導管名称は、気化器が設けられた導管の名称を示す。最大払出し量は、気化器の最大気化量であり、その気化器が設けられた導管の最大燃料払出し量である。
図4(b)は、導管データ格納部104に格納される導管データの一例を示す。本実施形態では導管ごとにパラメータを設定することができ、導管IDは、パラメータが設定される導管を示すIDである。導管名称は、パラメータが設定される導管の名称を示す。導管コードは、パイプライントポロジー内の各導管を示すコードである。各導管のスペックに従い、各導管における燃料流量の上限値および下限値が設定される。
図4(c)は、基地データ格納部105に格納される基地データの一例を示す。本実施形態では燃料基地ごとにパラメータを設定することができ、基地IDは、パラメータが設定される燃料基地を示すIDである。基地名称は、パラメータが設定される燃料基地の名称を示す。基地コードは、パイプライントポロジー内の各燃料基地を示すコードである。各燃料基地のスペックに従い、各燃料基地における燃料在庫量の上限値および下限値が設定される。
需要データ格納部106は、需要データ入力部12により発電計画策定装置10に入力された需要データを格納する。需要データは、発電会社が小売会社等の他社や電力市場とコミットした電力需要を表す時系列データである。需要データから計算される需要電力は、発電計画の策定対象である発電機が満たすべき供給電力でもある。
点検予定データ格納部107は、点検予定データ入力部13により発電計画策定装置10に入力された点検予定データを格納する。点検予定データは、図2に示す気化器の点検予定についてのデータであり、例えば、各気化器の点検に伴う各気化器の停止や運転制限等の運転状態のスケジュールを規定している。点検予定データは例えば、気化器データ格納部101に設定されている最大払出し量を一定期間だけ変更する場合に使用される。
入船予定データ格納部108は、入船予定データ入力部14により発電計画策定装置10に入力された入船予定データを格納する。入船予定データは、図2に示す燃料基地に入船するLNG船についてのデータであり、例えば、LNG船が入船する日時や、LNG船の入船時におけるLNGの受入量を規定している。
在庫量データ格納部109は、在庫量データ入力部15により発電計画策定装置10に入力された在庫量データを格納する。在庫量データは、図2に示す燃料基地の燃料在庫量についてのデータであり、例えば、各燃料基地の燃料在庫量の推移や初期在庫量を計算するためのデータである。本実施形態の在庫量データは、燃料基地ごとに任意に設定することができる。
図5は、第1実施形態の点検予定データ、入船予定データ、および基地データの例を示した図である。
図5(a)は、点検予定データ格納部107に格納される点検予定データの一例を示す。本実施形態では気化器ごとにパラメータを設定することができ、気化器IDは、パラメータが設定される気化器を示すIDである。払出し能力計算部22は、気化器の最大払出し量として変更後の払出し量を設定し、この変更の開始日時(From)と終了日時(To)とを設定することで、気化器の最大払出し量を一定期間だけ変更することができる。
図5(b)は、入船予定データ格納部108に格納される入船予定データの一例を示す。本実施形態ではLNG船ごとにパラメータを設定でき、入船IDは、パラメータが設定されるLNG船を示すIDである。基地IDは、LNG船がLNGを供給する燃料基地を示すIDである。入船日は、LNG船がこの燃料基地に入船する日を示し、この燃料基地の燃料在庫量がこの入船日に、受入量に設定された量だけ上昇する。
図5(c)は、LNG船の入船間隔が長くなる場合に一定期間のみ在庫上下限を変更するときに、基地データ格納部105に格納される基地データの一例を示す。この場合には、燃料在庫量の上限値および/または下限値を変更することができ、かつ、この変更の開始日時(From)と終了日時(To)とを設定することができる。
負荷配分計算部21は、複数の発電機の負荷配分を計算し、負荷配分の推移の計算結果を負荷配分推移格納部201に出力する。具体的には、負荷配分計算部21は、発電機データ格納部102から任意に選択した発電機データと、需要データ格納部106から任意に選択した需要データとに基づいて、これらの発電機の負荷配分を計算する。この際、負荷配分計算部21は、導管の燃料流量や燃料基地の燃料在庫量に関する制約を考慮に入れずに、これらの発電機が消費する燃料の総コストが最も安くなる運転計画を策定し、この運転計画における負荷配分の推移を負荷配分推移格納部201に出力する。
払出し能力計算部22は、複数の燃料基地からの燃料(LNG)の払出し能力を、これらの燃料基地内の気化器の気化能力に基づいて計算する。具体的には、払出し能力計算部22は、気化器データ格納部101から任意に選択した気化器データと、点検予定データ格納部107から任意に選択した点検予定データとに基づいて、発電計画を策定する期間における各燃料基地の払出し能力を計算する。この際、払出し能力計算部22は、気化器データから各気化器の最大払出し量を取得し、各気化器の最大払出し量を点検予定データに示す期間だけ点検予定データに示す払出し量に変更し、変更された払出し量に基づいて各燃料基地の払出し能力を計算する。
導管流量計算部23は、負荷配分計算部21により計算された負荷配分と、払出し能力計算部22により計算された払出し能力とに基づいて、パイプライン(導管)における燃料の流量を計算し、流量の推移の計算結果を導管流量推移格納部202に出力する。具体的には、導管流量計算部23は、パイプライントポロジー格納部103から任意に選択したパイプライントポロジーデータと、導管データ格納部104から任意に選択した導管データと、各燃料基地からの燃料の払出し能力とに基づいて、パイプライントポロジー内の各導管を流れる燃料の流量を計算する。この際、導管流量計算部23は、上記の負荷配分の推移を得るために必要となる流量の推移を計算する。
燃料在庫計算部24は、導管流量計算部23により計算された燃料の流量に基づいて、複数の燃料基地における燃料在庫量の推移を計算する。具体的には、燃料在庫計算部24は、基地データ格納部105から任意に選択した基地データと、入船予定データ格納部108から任意に選択した入船予定データと、在庫量データ入力部109から任意に選択した在庫量データとに基づいて、これらの燃料基地の燃料在庫量に対する導管流量や入船受入量の影響を評価し、その評価結果に基づいて各燃料基地における燃料在庫量の推移を計算する。燃料在庫量の推移の計算結果は、燃料在庫推移格納部203に出力される。
制約確認部25は、燃料在庫計算部24により計算された燃料在庫量の推移が、導管流量や燃料基地の制約を満足しているか否かを確認する。制約確認部25は、燃料在庫量の推移がこれらの制約を満足していない(すなわち、制約に違反している)と判断した場合には、燃料基地の燃料消費量の目標値を調整し、負荷配分計算部21に負荷配分の再計算を要求する。この場合、再計算は、システム内で自動的に実行しても良いし、ユーザ判断によるマンマシンでの操作も可能である。負荷配分計算部21は、最小限の変化量で制約違反が解消されるように負荷配分を再計算し、負荷配分の再計算結果に基づいて導管流量計算部23、燃料在庫計算部24、および制約確認部25による計算や確認が再び行われる。一方、制約確認部25は、燃料在庫量の推移がこれらの制約を満足している(すなわち、制約に違反していない)と判断した場合には、この燃料在庫量の推移を反映した発電計画を前回策定計画保存部26および発電計画出力部31に出力する。
こうして、複数の発電機についての発電計画が、前回策定計画保存部26および発電計画出力部31に出力される。この発電計画は、これらの発電機の動作や、これらの発電機に燃料を供給する複数の燃料基地の動作を規定する。この発電計画が実施された際には、これらの燃料基地の燃料在庫量が、燃料在庫計算部24により計算されたように推移するように、発電システムの動作が制御されることになる。
発電計画出力部31は、この発電計画を外部に出力する。例えば、発電計画出力部31は、発電計画を画面に出力してもよいし、記録媒体や記録装置に保存してもよいし、他の装置にネットワークやケーブルを介して送信してもよい。一方、前回策定計画保存部26は、この発電計画を前回策定計画として発電計画策定装置10内の前回策定計画格納部301に格納して保存する。
図6は、第1実施形態の発電計画における燃料在庫量の推移の具体例を示したグラフである。
図6(a)は、発電計画出力部31から出力された発電計画における燃料在庫量の推移の一例を示す。横軸は、発電計画の計画期間始めから計画期間終りまでの時間を表す。縦軸は、燃料基地1における燃料在庫量を表す。入船1、2、3は、燃料基地1にLNG船が入船するタイミングを示している。
図6(a)の一点鎖線は、燃料基地1の燃料在庫量の上限値と下限値を示す。燃料在庫量の上限値と下限値は、例えば燃料タンクのサイズ等に基づいて決められている。以下、これらを在庫量上限と在庫量下限と表記する。図6(a)の実線は、燃料基地1の燃料在庫量の推移を示し、これを在庫量計画線と呼ぶ。図6(a)の破線は、燃料基地1の在庫量計画線の上限値と下限値を示す。以下、これらを在庫量計画線上限と在庫量計画線下限と呼ぶ。
計画期間始めの燃料在庫量(在庫量計画線)は、燃料基地1の初期在庫量である。計画期間始めから入船1までの在庫量計画線上限線と在庫量計画線下限線は、初期在庫量を起点として入船1のタイミングに合わせて引かれている。在庫量計画線下限線は、入船1の際の燃料在庫量が在庫量下限になるように引かれている。在庫量計画線上限線は、入船1の際の燃料在庫量と燃料受入量との和が在庫量上限になるように引かれている。計画期間始めから入船1までの期間において、在庫量計画線が在庫量計画線上限線と在庫量計画線下限線との間に納まるように引かれていれば、この期間の燃料在庫量の推移は上述の制約を満足している。一方、この期間の在庫量計画線が在庫量計画線上限線と在庫量計画線下限線との間に納まらないように引かれていれば、この期間の燃料在庫量の推移は上述の制約に違反している。
これは、計画期間始めから計算期間終りまでの間の他の期間についても同様である。入船1から入船2までの在庫量計画線上限線は、入船1の際の在庫量上限を起点として入船2のタイミングに合わせて引かれている。一方、入船1から入船2までの在庫量計画線下限線は、入船1の際の在庫量下限と燃料受入量との和を起点として入船2のタイミングに合わせて引かれている。入船1の際の燃料在庫量は、燃料受入量だけ上昇している。そして、入船1から入船2までの期間において、在庫量計画線が在庫量計画線上限線と在庫量計画線下限線との間に納まるように引かれていれば、この期間は入船3で確実に受入れられることを見込んで通常の在庫量下限を緩和して下限を下回る燃料を消費できる。
なお、入船1、2、3において、燃料受入量が互いに異なることに留意されたい。これらの入船の際の燃料受入量は、各LNG船による燃料の輸送量に依存する。
図6(b)は、発電計画出力部31から出力された発電計画における燃料在庫量の推移の別の一例を示す。LNG船の入船間隔が長くなる場合には、一定期間のみ在庫量上下限を変更することが可能である(図5(c)を参照)。この場合には、在庫量上限および/または在庫量下限を変更することができ、かつ、この変更の開始日時(From)と終了日時(To)とを設定することができる。図6(b)は、入船2から入船3までの期間の在庫量下限を減少させた例を示している。これにより、この期間の燃料消費量を低減することができる。
以上のように、本実施形態の発電計画策定装置10は、複数の発電機についてのデータと、複数の燃料基地についてのデータと、これらの燃料基地からこれらの発電機に燃料を供給する導管についてのデータと、これらの燃料基地に入船するタンカーについてのデータとに基づいて、各燃料基地における燃料在庫量の推移を計算する。よって、本実施形態によれば、燃料基地の在庫、燃料基地内の気化器、燃料の転送、タンカーの入船など、発電用の燃料に関する事項を適切に考慮に入れて発電計画を策定することが可能となる。
また、本実施形態では、LNGを燃料とする発電機間の発電電力量の配分を最適化することで制約を満足するラインアップを構成できる。よって、本実施形態によれば、他の燃料種別の発電や他の無制約の発電機への依存度が小さい発電システムを実現することができる。
また、本実施形態では、制約を考慮しない最も経済性の高い運転計画をベースとして、発電計画を策定できる。ここで、発電計画が制約を満足しない場合には、負荷配分計算部21により運転計画を変更してもよいし、制約を変更してもよい。例えば、LNG船が入船する燃料基地を変更することや、気化器の点検時期を変更することが考えられる。これは、中長期の発電計画に適用する場合に有用である。また、発電計画の策定は、LNG船の配船計画や設備の点検計画などと連携して行うことにより、より経済的な発電を実現することが可能となる。
(第2実施形態)
図7は、第2実施形態の発電計画策定装置10の構成を示すブロック図である。
図7の発電計画策定装置10は、図1に示す構成要素に加えて、BOG(Boil of Gas)計算部27を備えている。
BOG計算部27は、LNGから自然気化により発生するBOG量を計算する。本実施形態では、基地データ格納部105が、基地データとして、各燃料基地のLNGから発生するBOG量を格納しており、入船予定データ格納部108が、入船予定データとして、LNG船の入船時に発生するBOG量を格納している。BOG計算部27は、前者のBOG量を基地データ格納部105から取得し、後者のBOG量を入船予定データ格納部108から取得し、これらのBOG量を合算する。これにより、BOG計算部27は、発電計画を策定する期間におけるBOG量を計算し、このBOG量を導管流量計算部23に出力する。
導管流量計算部23は、負荷配分計算部21により計算された負荷配分と、払出し能力計算部22により計算された払出し能力と、BOG計算部27により計算されたBOG量とに基づいて、パイプライン(導管)におけるLNGの流量を計算する。具体的には、BOG量を導管の最低流量として確実に消費できるように設定する。
図8は、第2実施形態の基地データの例を示した図である。
この基地データは、図4(c)に示す基地データの項目に加えて、各燃料基地のBOG量を含んでいる。このBOG量は、BOG計算部27により読み出され、入船予定データのBOG量と合算される。
図9は、第2実施形態のLNG供給パイプラインの例を示した模式図である。
図9のLNG供給パイプラインには、図2に示す導管に加えて、各燃料基地から発生するBOG処理用にBOGコンプレッサにて昇圧した後、図2に示す導管へ接続されるラインが追加されている。LNGを気化器により気化して得られるガスと、LNGからBOGとして得られるガスとでは発熱量が異なることから、BOGを焚ける発電機は限られているため、接続先の導管は限られる。BOGは、接続された導管を介して、燃料基地からBOGを焚ける発電機に供給される。
本実施形態によれば、LNGから発生するBOG量を考慮してより正確な発電計画を策定することが可能となる。
(第3実施形態)
図10は、第3実施形態の発電計画策定装置10の構成を示すブロック図である。
図10の発電計画策定装置10は、図1に示す構成要素に加えて、比較選択部28を備えている。
上述のように、制約確認部25は、燃料在庫計算部24により計算された燃料在庫量の推移が、導管流量や燃料基地の制約を満足しているか否かを確認する。ここで、これらの制約を考慮する場合(制約時)と無視する場合(無制約時)とでは、発電にかかる費用など、発電状況が変化する。同様に、これらの制約が変化する場合にも、発電にかかる費用や制約違反の程度など、発電状況が変化する。
そこで、比較選択部28は、これらの制約の違いによる発電状況の違いを比較し、その比較結果を発電計画策定装置10の画面に表示する。例えば、制約時と無制約時との費用差や、ある制約時と別の制約時との制約違反の程度差が表示される。さらには、制約時の発電計画と無制約時の発電計画とを表示してもよいし、ある制約時の発電計画と別の制約時の発電計画とを表示してもよい。
発電計画策定装置10のユーザは、制約を考慮するか無視するかや、どの制約を採用すべきかを、画面上で選択することができる。ユーザが画面上でこの選択に関する入力操作を行うと、比較選択部28は、画面からの入力情報に応じて、所定の発電計画を選択する旨の選択指示を出力する。例えば、ユーザが制約を考慮するとの入力操作を行った場合には、制約を考慮して策定された発電計画を選択する旨の選択指示が出力される。
なお、制約時の発電計画と無制約時の発電計画とを表示する場合や、ある制約時の発電計画と別の制約時の発電計画とを表示する場合には、発電計画策定装置10のユーザが、どの発電計画を採用すべきかを画面上で選択できるようにしてもよい。この場合、画面上で選択された発電計画を選択する旨の選択指示が出力される。
選択指示は、前回策定計画保存部26および発電計画出力部31に出力される。発電計画出力部31は、選択指示が示す発電計画を外部に出力する。一方、前回策定計画保存部26は、選択指示が示す発電計画を前回策定計画格納部301に格納する。
本実施形態によれば、制約の有無や内容の評価をユーザにゆだね、ユーザの希望する発電計画を採用することが可能となる。
(第4実施形態)
図11は、第4実施形態の発電計画策定装置10の構成を示すブロック図である。
図11の発電計画策定装置10は、図1に示す構成要素に加えて、除停止利用率データ入力部16と、除停止利用率データ格納部110とを備えている。
除停止利用率データ格納部110は、除停止利用率データ入力部16により発電計画策定装置10に入力された除停止利用率データを格納する。除停止利用率データは、図2に示す発電機の除停止利用率の設定値を表すデータである。本実施形態の除停止利用率データ格納部110には、発電機ごとの除停止利用率の設定値を格納することもできるし、複数の発電機が属するグループごとの除停止利用率の設定値を格納することもできる。また、本実施形態の除停止利用率データ格納部110には、所定の発電機に除停止利用率の設定値を適用する期間の設定情報(設定期間)を格納することもできる。
負荷配分計算部21は、図2に示す発電機の負荷配分を計算する際に、除停止利用率データ格納部110に格納された除停止利用率の設定値を使用する。具体的には、発電機の出力を除停止利用率の設定値により補正して、負荷配分を計算する。その結果、燃料在庫計算部24は、除停止利用率を考慮に入れた燃料在庫量の推移を計算することができる。
なお、負荷配分計算部21は、発電機の出力を除停止利用率の設定値により補正する際に、図12(a)のような方式ではなく、図12(b)のような方式を採用する。図12は、第4実施形態の出力補正について説明するためのグラフであり、発電機の出力の時間変化の例を示している。図12(a)では、出力全体を一律に上げ下げしている。一方、図12(b)では、需要のピーク時には出力を維持しつつ、需要の降下時にはグラフの斜面とふもとの出力を増減する。これにより、図12(b)では、需要のピーク時に発電単価の高い発電機が起動する事態や、ピーク時の需要がまかなえなくなる事態を防止することができる。
また、除停止利用率により増減された発電機の代わりに、同程度の発電単価(増分費用)の発電機に焚き替わる。
負荷配分計算部21は、発電計画の策定対象の発電機のうち、すべての発電機に除停止利用率の設定値を適用してもよいし、一部の発電機のみに除停止利用率の設定値を適用してもよい。除停止利用率の設定値を適用する発電機の台数は、何台でもよい。
なお、汽力発電の発電機の除停止利用率は、実出力の運転中積算と、定格出力の運転中積算との比のパーセント表示で与えられる。一方、コンバインドサイクル発電の発電機の除停止利用率は、実出力の運転中積算と、気温補正した最大出力の運転中積算との比のパーセント表示で与えられる。
本実施形態によれば、発電機の除停止利用率を考慮してより正確な発電計画を策定することが可能となる。
(第5実施形態)
図13は、第5実施形態の発電計画策定装置10の構成を示すブロック図である。
図13の発電計画策定装置10は、図1に示す構成要素に加えて、初期在庫計算部29を備えている。
初期在庫計算部29は、在庫量データ格納部109から任意に選択した在庫量データに基づいて、計画期間始めにおける各燃料基地の初期在庫量を計算する。具体的には、初期在庫計算部29は、策定予定の発電計画と同一計画タイプの発電計画(これを「正計画」と呼ぶ)を前回策定計画格納部301から取得し、この正計画を初期在庫量の計算に利用する。例えば、策定予定の発電計画が月間計画である場合には、正計画として月間計画が取得される。
初期在庫計算部29は、前回策定計画格納部301から正計画を取得したら、正計画から各燃料基地の在庫量計画線を取得し、この在庫量計画線より在庫確認日から策定予定の発電計画の計画期間始めまでの各燃料基地の累積燃料消費量および入船予定データ格納部108に格納されている入船実績より求めた受入量を計算する。こうして計算された計画期間始めの燃料在庫量が、初期在庫量となる。
初期在庫計算部29により計算された各燃料基地の初期在庫量は、燃料在庫計算部24に出力される。燃料在庫計算部24は、この初期在庫量に基づいて、各燃料基地の燃料在庫量の推移を計算する。
なお、上記の在庫確認日から計画期間始めまでが離れている場合には、初期在庫計算部29は、複数の正計画を前回策定計画格納部301から取得し、これらの正計画を初期在庫量の計算に利用する。この場合、初期在庫計算部29は、複数の正計画の在庫量計画線を利用することで、策定予定の発電計画の計画期間始めまでの各燃料基地の燃料在庫量の推移を計算する。この際、ある正計画の期間と別の正計画の期間とがオーバーラップする場合には、計画開始日が新しい方の正計画を優先的に使用する。
初期在庫計算部29により計算される各燃料基地の初期在庫量Aは、以下の式(1)で与えられる。
Figure 0006845658
ただし、Bは、在庫確認日の燃料在庫量を表す。Vs(k)の総和は、在庫確認日から策定予定の発電計画の計画期間始めまでの燃料の累積消費量を表す。C(i)の総和は、在庫確認日から当該計画期間始めまでのタンカーによる燃料の累積補充量を表す。
本実施形態によれば、予め策定された発電計画を利用して初期在庫量を計算することが可能となる。
(第6実施形態)
図14は、第6実施形態の発電計画における燃料在庫量の推移の具体例を示したグラフである。本実施形態の発電計画は、図11の発電計画策定装置10により策定される。
曲線C1は、入船1から入船2までの電力需要曲線を示す。発電による燃料消費で、入船1から入船2は、図14に示すような在庫量計画線C2に沿って推移する。ここで、在庫量計画線C2は、在庫量上限線と在庫量下限線との間に納まっておらず、制約を満足していない。
そこで、本実施形態の負荷配分計算部21は、燃料在庫量の推移が制約を満足しない場合に、燃料制約係数データ格納部111(図15)に格納された燃料制約係数の設定値を考慮に入れて負荷配分を計算する。図15は、第6実施形態の発電計画策定装置の構成を示すブロック図である。燃料制約係数データ格納部111は、燃料制約係数データ入力部17から入力された燃料制約係数を格納する。
燃料制約係数に在庫目標量との乖離分を乗じ、燃料費と合わせて総合的に最小となるよう負荷配分を行うことで制約を満たした状態での負荷配分を計算することにより経済配分となる。
燃料制約係数の強度は、入船まで期間がある場合や入船間近や月末、それぞれの係数を任意に設定でき、係数が大きくなるほど燃料制約を満たす動きが強くなるが負荷配分の経済性は悪くなる。
その結果、入船1から入船2までの在庫量計画線C2は、在庫量計画線C3のように変化する。在庫量計画線C3は、在庫量上限線と在庫量下限線との間に納まっており、制約を満足している。
例として、入船までの期間が長くあり、今後の状況により燃料消費量の変動が想定される場合は、係数を小さくして、経済性に重みを置くことができる。その場合でも入船間近で在庫量調整に猶予が無い場合は、係数を大きくし経済性を犠牲にしても制約を満たすことができる。月末における月間消費量制約の場合、制約範囲内を順守するために、月末付近の係数を大きく設定して制約を確実に守らせることが可能となる。
燃料制約を順守しながら経済性を求めると、在庫量計画線C3は在庫量下限を下回らないように入船時に在庫量下限となるように調整し、また在庫量上限を上回らないように入船時に在庫量上限から入船時の受入量を減じた値になるように調整する。
本実施形態によれば、発電機の燃料制約係数を利用してより経済的な発電計画を策定することが可能となる。
(第7実施形態)
図16は、第7実施形態の発電計画策定装置40の構成を示すブロック図である。
図16の発電計画策定装置40は、CPU(Central Processing Unit)等のプロセッサ41と、RAM(Random Access Memory)等の主記憶装置42と、HDD(Hard Disc Drive)等の補助記憶装置43と、LAN(Local Area Network)ボード等のネットワークインタフェース44と、メモリスロットやメモリポート等のデバイスインタフェース45と、これらの機器を互いに接続するバス46とを備えている。発電計画策定装置40は例えば、PC(Personal Computer)等のコンピュータであり、キーボードやマウス等の入力装置や、LCD(Liquid Crystal Display)モニタ等の表示装置を備えている。
本実施形態では、第1〜第6実施形態のいずれかの発電計画策定装置10の情報処理をコンピュータに実行させるための発電計画策定プログラムが、補助記憶装置43にインストールされている。本実施形態の発電計画策定装置40は、このプログラムを主記憶装置42に展開して、プロセッサ41により実行する。これにより、図1、図7、図10、図11、図13、または図15に示す各ブロックの機能を本実施形態の発電計画策定装置40内で実現し、第1〜第6実施形態で説明した発電計画を出力することが可能となる。なお、この情報処理により生成されたデータは、主記憶装置42に一時的に保持されるか、補助記憶装置43内に格納され保存される。
発電計画策定プログラムは例えば、このプログラムを記録した外部装置50をデバイスインタフェース45に装着し、このプログラムを外部装置50から補助記憶装置43に格納することでインストール可能である。外部装置50の例は、コンピュータ読み取り可能な記録媒体や、このような記録媒体を内蔵する記録装置である。記録媒体の例はCD−ROMやDVD−ROMであり、記録装置の例はHDDである。また、発電計画策定プログラムは例えば、このプログラムをネットワークインタフェース44を介してダウンロードすることでインストール可能である。
本実施形態によれば、第1〜第6実施形態のいずれかの発電計画策定装置10の機能をソフトウェアにより実現することが可能となる。
以上、いくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例としてのみ提示したものであり、発明の範囲を限定することを意図したものではない。本明細書で説明した新規な装置、方法、およびプログラムは、その他の様々な形態で実施することができる。また、本明細書で説明した装置、方法、およびプログラムの形態に対し、発明の要旨を逸脱しない範囲内で、種々の省略、置換、変更を行うことができる。添付の特許請求の範囲およびこれに均等な範囲は、発明の範囲や要旨に含まれるこのような形態や変形例を含むように意図されている。
10:発電計画策定装置 11:設備データ入力部
12:需要データ入力部 13:点検予定データ入力部
14:入船予定データ入力部 15:在庫量データ入力部
16:除停止利用率データ入力部 17:燃料制約係数データ入力部
21:負荷配分計算部 22:払出し能力計算部
23:導管流量計算部 24:燃料在庫計算部
25:制約確認部 26:前回策定計画保存部
27:BOG計算部 28:比較選択部
29:初期在庫計算部 31:発電計画出力部
40:発電計画策定装置 41:プロセッサ
42:主記憶装置 43:補助記憶装置
44:ネットワークインタフェース 45:デバイスインタフェース
46:バス 50:外部装置
101:気化器データ格納部 102:発電機データ格納部
103:パイプライントポロジー格納部 104:導管データ格納部
105:基地データ格納部 106:需要データ格納部
107:点検予定データ格納部 108:入船予定データ格納部
109:在庫量データ格納部 110:除停止利用率データ格納部
111:燃料制約係数データ格納部 201:負荷配分推移格納部
202:導管流量推移格納部 203:燃料在庫推移格納部
301:前回策定計画格納部

Claims (9)

  1. 複数の発電設備についてのデータと、前記発電設備に燃料を供給する複数の燃料基地についてのデータと、前記燃料基地から前記発電設備に前記燃料を供給する導管についてのデータと、前記燃料基地に入船するタンカーについてのデータとに基づいて、前記燃料基地における前記燃料の在庫量の推移を計算する発電情報処理部と、
    前記燃料の在庫量の推移に基づいて、前記発電設備についての発電計画を出力する発電計画出力部と、
    を備え
    前記発電情報処理部は、
    前記発電設備の総コストが最も安くなる負荷配分を計算する負荷配分計算部と、
    前記燃料基地内の気化器の能力に基づいて、前記燃料基地からの前記燃料の払出し能力を計算する払出し能力計算部と、
    前記負荷配分と前記払出し能力とに基づいて、前記導管における前記燃料の流量を計算する導管流量計算部と、
    前記導管における前記燃料の流量と、前記タンカーについてのデータとに基づいて、前記燃料基地における前記燃料の在庫量の推移を計算する燃料在庫計算部と、
    を備える、発電計画策定装置。
  2. 前記発電情報処理部はさらに、前記燃料の在庫量の推移が制約を満足するか否かを確認する制約確認部を備え、
    前記負荷配分計算部は、前記燃料の在庫量の推移が前記制約を満足しない場合に、前記負荷配分を最小限の変化量で制約を満足するように再計算する、請求項に記載の発電計画策定装置。
  3. 前記発電情報処理部はさらに、前記燃料から発生するBOG(Boil of Gas)量を計算するBOG計算部を備え、
    前記導管流量計算部は、前記BOG量に基づいて、前記導管における前記燃料の流量を計算する、請求項またはに記載の発電計画策定装置。
  4. 前記負荷配分計算部は、前記複数の発電設備のうちの1台以上の発電設備の除停止利用率の設定値に基づいて、前記負荷配分を計算する、請求項からのいずれか1項に記載の発電計画策定装置。
  5. 前記負荷配分計算部は、前記燃料の在庫量の推移が制約を満足しない場合に、前記制約を満足するように燃料制約係数の設定値に基づいて燃料制約を満たすよう、前記負荷配分を計算する、請求項からのいずれか1項に記載の発電計画策定装置。
  6. 前記発電情報処理部は、前記燃料の在庫量の推移の制約の違いによる発電状況の違いの比較結果を画面に表示し、前記画面からの入力情報に応じて前記発電計画の選択指示を出力する比較選択部を備え、
    前記発電計画出力部は、前記選択指示に基づいて選択された前記発電計画を出力する、請求項1からのいずれか1項に記載の発電計画策定装置。
  7. 前記発電情報処理部は、
    予め策定された1つ以上の発電計画に基づいて、前記燃料基地における前記燃料の初期在庫量を計算する初期在庫計算部と、
    前記燃料の初期在庫量に基づいて、前記燃料基地における前記燃料の在庫量の推移を計算する燃料在庫計算部と、
    を備える請求項1からのいずれか1項に記載の発電計画策定装置。
  8. 複数の発電設備についてのデータと、前記発電設備に燃料を供給する複数の燃料基地についてのデータと、前記燃料基地から前記発電設備に前記燃料を供給する導管についてのデータと、前記燃料基地に入船するタンカーについてのデータとに基づいて、前記燃料基地における前記燃料の在庫量の推移を発電情報処理部により計算し、
    前記燃料の在庫量の推移に基づいて、前記発電設備についての発電計画を発電計画出力部により出力する、
    ことを備え
    前記燃料の在庫量の推移を前記発電情報処理部により出力することは、
    前記発電設備の総コストが最も安くなる負荷配分を負荷配分計算部により計算し、
    前記燃料基地内の気化器の能力に基づいて、前記燃料基地からの前記燃料の払出し能力を払出し能力計算部により計算し、
    前記負荷配分と前記払出し能力とに基づいて、前記導管における前記燃料の流量を導管流量計算部により計算し、
    前記導管における前記燃料の流量と、前記タンカーについてのデータとに基づいて、前記燃料基地における前記燃料の在庫量の推移を燃料在庫計算部により計算する、
    ことを備える、発電計画策定方法。
  9. 発電計画策定方法をコンピュータに実行させる発電計画策定プログラムであって、
    前記発電計画策定方法は、
    複数の発電設備についてのデータと、前記発電設備に燃料を供給する複数の燃料基地についてのデータと、前記燃料基地から前記発電設備に前記燃料を供給する導管についてのデータと、前記燃料基地に入船するタンカーについてのデータとに基づいて、前記燃料基地における前記燃料の在庫量の推移を発電情報処理部により計算し、
    前記燃料の在庫量の推移に基づいて、前記発電設備についての発電計画を発電計画出力部により出力する、
    ことを備え
    前記燃料の在庫量の推移を前記発電情報処理部により出力することは、
    前記発電設備の総コストが最も安くなる負荷配分を負荷配分計算部により計算し、
    前記燃料基地内の気化器の能力に基づいて、前記燃料基地からの前記燃料の払出し能力を払出し能力計算部により計算し、
    前記負荷配分と前記払出し能力とに基づいて、前記導管における前記燃料の流量を導管流量計算部により計算し、
    前記導管における前記燃料の流量と、前記タンカーについてのデータとに基づいて、前記燃料基地における前記燃料の在庫量の推移を燃料在庫計算部により計算する、
    ことを備える、発電計画策定プログラム。
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