以下、図面を参照しながら、本発明の一実施形態に係る飲料製造装置10について説明する。本実施形態では、飲料はお茶であり、茶葉からお茶を浸出することのできる飲料製造装置10について説明する。なお、下記説明では、前方とは図1や図2において給水タンク21が配置されている方向、左右とは前方から飲料製造装置10を見た方向を意味する。
まず、図1を参照して、本発明の飲料製造装置10の概略構成を説明する。図1は、本発明の一実施形態に係る飲料製造装置10の機構を右側から見た図である。飲料製造装置10は、水を貯留し供給する給水機構20、水を加熱、沸騰させる加熱機構30、加熱機構30にて加熱された湯を冷却機構50又は浸出機構60に振り分ける給湯機構40、湯を適温まで冷却する冷却機構50、茶葉Tが投入され、適温に調整された湯が注ぎ込まれることでお茶を浸出する浸出機構60、浸出されたお茶を湯呑みや急須などの茶器Cに注ぎ込む吐液機構70、及び、茶器Cが載置される注液機構80を具える。
給水機構20は、使用者が水を入れる給水タンク21と、給水タンク21の水を吸い出す給水ポンプ23を具える。給水タンク21と給水ポンプ23は給水上パイプ232により接続されており、給水ポンプ23により吸い出された水は、給水下パイプ233を経由して加熱機構30に供給される。
加熱機構30は、給水下パイプ233に接続された加熱タンク31と、加熱タンク31内の水を加熱、沸騰させるヒーター32を具える。加熱された湯は、給湯機構40に供給される。ヒーター32は、水の加熱、沸騰の際に作動するが、下記する冷却機構50による湯の冷却時には作動を停止する構成とすることができる。なお、加熱タンク31には、外気に連通した蒸気・圧力排出パイプ35が接続されており、加熱タンク31の内圧上昇を防ぐ。
給湯機構40は、給湯ポンプ41と切替弁42を具える。給湯ポンプ41は、加熱タンク31と給湯上パイプ411を介して接続されている。給湯ポンプ41は、給湯下パイプ412を介して切替弁42に接続され、切替弁42の操作によって加熱タンク31からの湯は冷却上パイプ511を介して冷却機構50、又は、注湯パイプ43を介して浸出機構60に振り分けて供給される。
冷却機構50は、茶の浸出に適温となるまで湯まで冷ます機構である。茶葉Tは、その種類により浸出に最適な温度が異なる。そこで、一旦加熱機構30にて沸騰させた湯を、冷却機構50で茶葉Tに応じた最適な温度まで冷ますようにしている。具体的には、冷却機構50は、切替弁42と冷却上パイプ511を介して接続された冷却パイプ51を具える。冷却パイプ51には、加熱タンク31から給湯ポンプ41により供給された湯が通過する。冷却パイプ51は、冷却フィン523が形成された冷却部材52と熱的に接続されており、内部を流通する湯が熱交換により冷却される。冷却機構50には、冷却ファン54を具え、冷却部材52や冷却パイプ51に風を当てて冷却効率を高めることが望ましい。冷却パイプ51で冷却された湯は、冷却下パイプ512を介して加熱タンク31に戻される。なお、適温まで湯が冷却されるまで、湯を冷却機構50、加熱機構30、給湯機構40で循環させる。
浸出機構60は、茶葉Tが投入される浸出容器61に湯を供給し、お茶を浸出する。浸出容器61は、上記した切替弁42と注湯パイプ43を介して接続されており、適温に調整された湯が、加熱タンク31から給湯機構40を経由して供給される。浸出容器61には、止水弁62を具え、止水弁62を閉状態でお茶を浸出し、浸出されたお茶は、止水弁62を開くことで吐液機構70に流出する。
吐液機構70は、浸出容器61にて浸出されたお茶を、吐液パイプ71を通じて注液機構80に配置された茶器Cに注ぎ込む。これにより、茶器Cに適温で浸出されたお茶が供給される。
すなわち、本発明の飲料製造装置10は、給水タンク21に水、浸出容器61に茶葉を投入するだけで、上記概略説明のとおり、加熱タンク31で水を加熱、沸騰させ、冷却パイプ51で湯を適温まで冷ました後、適温に調整された湯を浸出容器61に注ぎ込んで茶を浸出し、茶器Cに注ぐことができる。
本発明の飲料製造装置10は、その一実施形態として、図1及び後述する各図に示すように、前面側上部に給水機構20の給水タンク21、前面側下部に注液機構80の茶器置き空間81を有し、後面側上部に浸出機構60の浸出容器61、後面側下部に加熱機構30の加熱タンク31及び冷却機構50を配備している。この構成により、後述するとおり、飲料製造装置10の使い勝手を飛躍的に向上させると共に、安全性を高め、飲料製造装置10をコンパクトに構成することができる。
以下、本発明の飲料製造装置10の具体的実施形態について説明する。
図2は、本発明の一実施形態に係る飲料製造装置10の外観を示す斜視図、図3は正面図、図4は平面図、図5は右側面図、図6は背面図、図7は底面図である。図に示すように、飲料製造装置10は、前面側に中央が凹んだ前ケーシング112を有し、左右及び後方は上面視略U字状の本体ケーシング111で覆われている。本体ケーシング111の上面には蓋体12を具える。また、底面は底ケーシング113で構成されている。これら外装を形成するケーシングは、ケーシングどうし、又は、内装された内フレーム13(図12等参照)に装着されている。
そして、前ケーシング112の凹みには、高さ方向略中央に給水タンク台14が突設されており、給水タンク台14上に給水機構20を構成する給水タンク21が装着される。給水タンク台14の下側は吐液機構70を構成する茶器置き空間81であり、前ケーシング112の前面側下部に装着された茶器置きトレイ82に湯呑みや急須などの茶器C(図3参照)が載置される。また、前ケーシング112には、給水機構20の右側に各種操作を行なう操作パネル92、左側に動作状況を視認できる表示パネル96を具える。さらに、操作パネル92の下側には、飲料の供給を制御する注液レバー63が設けられている。
飲料製造装置10の外観について、さらに説明すると、蓋体12は、図2、図4に示すように、後端がヒンジ部114に支持されており、開閉可能となっている。本体ケーシング111の背面には、図5及び図6に示すように、排気口551が形成されている。底ケーシング113には、図7に示すように、吸気口552が形成されている。また、本体ケーシング111の背面下部からは電源コード97が延びている。
次に、飲料製造装置10の各機構について、その内部構造を含めて説明を行なう。図8乃至図11は、夫々飲料製造装置10から本体ケーシング111を取り外した状態を示す正面図、右側面図、背面図及び左側面図、図12及び図13は、夫々図4の線A−A’、線B−B’に沿う断面図、図14は、本体ケーシング111等の外装をすべて取り外した飲料製造装置10の内部構造を示す背面側斜視図である。以下では、外装を取り外した状態であっても、適宜飲料製造装置10と称する。
給水機構20は、図1で説明したユーザーが水を入れる給水タンク21と、加熱タンク31に水を供給する給水ポンプ23を主要構成として具備している。給水タンク21は、図8、図9、図11及び図12に示すように、飲料製造装置10の前面側上部に配置される。給水タンク21は、図15に示すように、上面の開口した有底筒状の容器であり、たとえば透明な樹脂により構成される。給水タンク21の上面開口は、着脱可能な給水タンク蓋213によって封止可能となっている。さらに、給水タンク21の上端には、前方に向けて突出する掴み部212が形成されており、給水タンク21の着脱の際に適宜掴み部212を掴めるようにしている。
給水タンク21の底面は、すり鉢状に凹んでおり、図12に示すように、中央に給水弁211が取り付けられている。給水弁211は、給水タンク21を飲料製造装置10に装着していない状態では閉じており、給水タンク21を飲料製造装置10の前方略中央に突設された給水タンク台14に装着したときに、給水タンク台14に設けられた給水継手231と係合して開放する。
給水継手231は、図12に示すように、給水上パイプ232と連通している。給水上パイプ232の他端は、下方に向けて延びており、図11、図13及び図14等に示すように左側下方に配置された給水ポンプ23の吸込口に接続されている。給水ポンプ23の送出口には、図11に示すように給水下パイプ233が接続されており、当該給水下パイプ233は、図12、図13に示すように、上方に延び、加熱タンク31の加熱タンク蓋311を介して加熱タンク31に連通している。給水ポンプ23は、後述する図26に示す制御手段90に電気的に接続されている。
上記のように、給水タンク21を飲料製造装置10の前方側上部に配置したことで、ユーザーが給水を行なう際に、給水タンク21を容易に着脱することができる。また、給水タンク21を透明な樹脂等で形成することで、給水タンク21の残水量を前方から視認することができる。さらに、図示のように給湯タンク21を前ケーシング112から一部が前面に突き出た構成とすることで、給水タンク21の残水量を側方からも視認することができる。
加熱機構30は、図1で説明した給水機構20から給水を受ける加熱タンク31と、加熱タンク31を加熱するヒーター32を主要構成として具備する。加熱機構30は、図12、図13及び図14に最もよく示されているように、飲料製造装置10の後方側下方に加熱タンク31を配置して構成される。加熱タンク31は、有底筒状の容器であり、上面が加熱タンク蓋311によって封止されている。加熱タンク31の底面は、すり鉢状に凹んでおり、中央に給湯機構40の給湯上パイプ411が接続されている。加熱タンク蓋311には、上記した給水下パイプ233が接続される他、蒸気・圧力排出パイプ35、冷却機構50の冷却下パイプ512が接続されている。
加熱タンク31の底面には、ヒーター32が配置されている。ヒーター32は、伝熱ヒーターを例示でき、図26に示す制御手段90に電気的に接続されている。また、加熱タンク31には、図12に示すように、温度検知センサー33が取り付けられており、加熱タンク31の温度を検知可能し、制御手段90に送信する。
上記のように、本実施形態では、熱源となる加熱機構30を、飲料製造装置10の後方側下方、すなわち、ユーザーがアクセスし難い位置に配置している。これにより、ユーザーが給水タンク21や茶器C、蓋体12、浸出容器61の着脱等の操作の際に熱源に近づくことは抑えられる。
給湯機構40は、図1で説明した加熱タンク31内の湯を吸い出す給湯ポンプ41と、吸い出された湯の経路を冷却機構50か浸出機構60に振り分ける切替弁42を主要構成として具備する。
給湯ポンプ41は、図9、図13及び図14に示すように、右側下方に配置されており、吸込口に加熱タンク31の底面に接続された給湯上パイプ411、送出口に給湯下パイプ412が接続されている。給湯ポンプ41は、図26に示す制御手段90に電気的に接続される。給湯下パイプ412は、給湯ポンプ41の前方に並設された切替弁42の入口ポートに接続されている。
切替弁42は、1つの入口ポートと、2つの出口ポートを有する流路切替弁であり、電磁切替弁を例示でき、図26に示す制御手段90により出口ポートの切替が制御される。切替弁42の入口ポートは、図8、図9及び図14に示すように、給湯ポンプ41と給湯下パイプ412を介して接続されている。また、一方の出口ポートは、冷却機構50の冷却上パイプ511に接続され、他方の出口ポートは、注湯パイプ43に接続されている。
そして、給湯ポンプ41を作動させつつ、切替弁42を操作することで、加熱タンク31内の湯は、冷却上パイプ511又は注湯パイプ43へ送出される。
冷却機構50は、図1で説明した冷却パイプ51と冷却部材52、さらに、図14に示す冷却部材52に送風を行なう冷却ファン54を主要構成として具備している。
冷却パイプ51は、切替弁42の一方の出口ポートに連通する冷却上パイプ511に接続されており、加熱タンク31内の湯が流通可能となっている。冷却パイプ51は、図12及び図13に示すように、加熱タンク31の外周に少し間隔を空けて螺旋状の流路を形成するよう構成している。図示の実施形態では、冷却パイプ51は、下方側が上流となる冷却上パイプ511に接続されており、上方側が下流となる冷却下パイプ512に接続されている。冷却下パイプ512は、加熱タンク蓋311に接続されており、冷却パイプ51を通過した湯は冷却下パイプ512を通じて加熱タンク31に戻される。
図16は、冷却機構50の冷却パイプ51と冷却部材52を取り出して示す斜視図である。図16を含め、図12及び図14に示すように、冷却部材52は、螺旋状の冷却パイプ51の外周に熱的に接続されるよう配置されている。図示の冷却部材52は、上下が開口すると共に冷却パイプ51に当接する円筒状の内面を有し、外周に冷却フィン523が複数突設された筒状体を例示できる。冷却部材52は、図16に示すように、上面視略半円形の冷却部材半体521,522をボルト止めして構成することで、組立及び製造を簡便化することができる。
冷却パイプ51及び冷却部材52から効果的に吸熱を行なって、冷却パイプ51中の湯の冷却効率を高めるため、冷却部材52の下側の開口の下方には、制御手段90(図26)により制御される冷却ファン54を配置している。冷却ファン54は、図11乃至図14に示すように、底ケーシング113に開設された吸気口552の上に配置されており、吸気口552から外気を吸い込む。吸気口552から吸い込まれた空気流は、冷却部材52、とくに冷却フィン523に当たると共に、冷却部材52の内側にも流れ込んで冷却パイプ51を直接冷却する。また、この空気流によって加熱タンク31の外周も冷却される。これにより、冷却パイプ51を流通する湯や加熱タンク31が冷却される。そして、空気流は、図5、図6及び図12等に示す本体ケーシング111の背面に開設された排気口551から排出される。排気口551は、飲料製造装置10の背面に設けているから、熱を帯びた排気がユーザーに直接当たることを防止できる。
上記したように、加熱タンク31から給湯ポンプ41、切替弁42、冷却パイプ51を経由して湯を循環させることで、冷却機構50によって湯の温度は低下する。湯の温度は、加熱タンク31に設置された温度検知センサー33によって検知され、湯の温度が設定された温度に低下するまで、冷却ファン54及び給湯ポンプ41を作動させて上記湯の循環を続ける。なお、沸騰した状態の湯を冷ますことなく直接浸出機構60に送出する場合には、冷却機構50を経由する必要はない。
切替弁42を切り替えて、他方の出口ポートに接続された注湯パイプ43に接続すると、加熱タンク31内の湯が注湯パイプ43へ送出される。注湯パイプ43は、図9に示すように上方に向かい、その先端は、図9や蓋体12から蓋表体121を取り外した蓋裏体124の平面図17、後述する図18に示すように、本体ケーシング111と蓋体12とを接続するヒンジ部114を通過して、浸出容器61の上部まで延びている。注湯パイプ43の先端には、図12や図18に示すように複数の注湯孔432が開設された半球状の注湯ノズル431が接続されており、注湯パイプ43を通過した湯が注湯ノズル431から放射状に浸出容器61に放出される。
ここで、蓋体12について説明する。蓋体12は、図2、図5及び図12に示すように、本体ケーシング111にヒンジ部114によって支持されている。図18、図19及び図20に示すように、蓋体12を開くことで、浸出容器61等を飲料製造装置10から着脱できる。
蓋体12には、意図しない開放を規制するために、図12及び図17に示すように、蓋裏体124の自由端側に磁石127を内装している。また、内フレーム13の上面には、図19及び図20に示すように蓋体12を閉止した状態で磁石127が対向する位置にたとえばネジである磁性部材133を配置している。そして、蓋体12の閉止状態において、磁石127が磁性部材133に吸着することで、蓋体12の意図しない開放が規制される。なお、蓋体12の開放を規制する構造は、これに限定されない。
蓋体12は、図12に示すように、蓋表体121と蓋裏体124を係合して構成している。蓋表体121と蓋裏体124との間には空間が形成されており、この空間にヒンジ部114を経由して上記した蒸気・圧力排出パイプ35と注湯パイプ43が挿通されている。蓋体12は、蓋表体121に外蒸気孔122(図2及び図4も参照)、蓋裏体124には外蒸気孔122と対向する位置に内蒸気孔125(図17及び図18も参照)が開設されており、前記空間を介して外蒸気孔122と内蒸気孔125は連通している。
図示の実施形態では、外蒸気孔122は長孔であり、内蒸気孔125は、注湯ノズル431を挟んで前後方向に複数の円孔である。そして、図12に示すように、蓋表体121には、内面側に外蒸気孔122を囲むリブ状の立壁123が形成されており、蓋裏体124については図17にも示すように、内蒸気孔125を囲むリブ状の立壁126が前後に形成されている。これら立壁123,126は蓋表体121と蓋裏体124を係合したときに接続されて蒸気通路128を形成する。後方側の蒸気通路128には、図12及び図17に示すように、蒸気・圧力排出パイプ35の先端が連通している。
蒸気通路128には、加熱タンク31内で生じた蒸気や加熱により膨張した空気が蒸気・圧力排出パイプ35を経由して排出されると共に、浸出容器61の蒸気が内蒸気孔125を通って侵入する。これら蒸気や空気は外蒸気孔122を通って外部に放出される。また、蒸気通路128内で結露等により生じた水滴は、内蒸気孔125を通って浸出容器61に落下する。
蓋裏体124には、図12や図18に示すように、蓋体12を閉じたときに、次に説明する浸出容器61の上縁と密着するパッキン部材129が装着されている。
続いて、浸出機構60について説明する。浸出機構60は、図1で説明した浸出容器61と浸出容器61からの茶の吐出を制御する止水弁62を主要構成として具備している。浸出機構60は、図9乃至図13、図14、B10及び図19に示すように、飲料製造装置10の後方上部、すなわち、前方上部の給水機構20の後方であって、後方下部の加熱機構30の上方となる位置に配置されている。
浸出容器61は、図21に最もよく示されるように、比較的浅底の容器であり、図12、図18及び図19に示すように、内フレーム13に形成された環状凹部132に装着される。浸出容器61を径大、浅底に形成することで浸出容器61に注ぎ込むことのできる湯量を確保しつつ、開口を大きくできるから、茶葉Tを投入しやすく、また、洗浄も容易に行なうことができる。さらに、浸出容器61の底面積を大きく採れるから、湯量が少なくても茶葉Tを湯に十分浸漬することができる。そして、この状態で蓋体12を閉じることで、蓋体12のパッキン部材129と浸出容器61の上縁が気密に当接する。浸出容器61には、少なくとも一部がメッシュの如き透水性の茶漉しS(図1参照)を入れて、茶漉しSに茶葉が投入される。そして、上記した抽出ヘッドノズル431から適温に調整された湯が注ぎ込まれ、お茶が浸出される。
浸出容器61は、茶葉Tが投入され、また、茶葉Tの交換、洗浄等のために取り出すためにユーザーが頻繁にアクセスする。この浸出容器61を飲料製造装置10の後方側上方に配置したことで、浸出容器61へのアクセスを容易にできる。また、浸出容器61の中にお茶が残っていることがあるが、浸出容器61を上方に引き出せる構造としたことで、残っているお茶がこぼれることも防止できる。
浸出容器61の底面は、図12に示すように前方に向けて低くなるよう傾斜しており、最も低い位置に略半球状に下方に突出した周縁部を有する抽出孔611が開設されている。なお、浸出容器61の底面が傾斜していること、また、抽出孔611が突出した周縁部を有することから、浸出容器61をテーブルなどに直置きしたときに浸出容器61が傾かないよう、浸出容器61の底面から下向きに、図12や図21に示すように、高さ調整用の突起612が形成されている。
浸出容器61の上縁には左右に摘み部613が形成されており、浸出容器61を着脱する際に摘むことができる。浸出容器61の上縁には、さらに位置決め凸部614が前方に向けて突設されており、浸出容器61を内フレーム13に装着したときに、内フレーム13の環状凹部132の前側に形成された位置決め凹み131と係合して、浸出容器61の装着方向を規制する。
また、浸出容器61には、抽出孔611を開閉する止水弁62を上下に案内する弁ガイド615が形成されている。弁ガイド615は、本実施形態では、位置決め凸部614を中空コ字状に形成すると共に、位置決め凸部614の中空部分に繋がる上切欠き616を浸出容器61の前側上縁に形成している。また、止水弁62の弁ガイド615として、浸出容器61の底面には、上切欠き616の直下に上面視U字状のリブ617が突設されている。リブ617の後端中央には下切欠き618が形成されている。
浸出容器61の抽出孔611は、止水弁62によって開閉される。止水弁62は、浸出容器61へ上下にスライド可能に装着され、自重によって抽出孔611を塞ぐと共に、図2に示す注液レバー63の操作によって上方に移動して抽出孔611を開放する構成を例示できる。この場合、抽出孔611を液漏れなく自重で塞ぐために、止水弁62はステンレス等の重量のある材質で構成することが好適である。
具体的実施形態として、止水弁62は、図12、図21及び止水弁62を取り出して示す図22に最もよく示されるように、抽出孔611に嵌まるパッキン材622が装着された弁ヘッド621を具える。弁ヘッド621の前端は、板状の下ガイド623を介して棒状の継杆624の下端に接続されている。継杆624の上端には、下ガイド623と逆向きに板状の上ガイドが突設されている。上ガイドは、図22に示すように、継杆524から前方に向けて突出した上ガイド片626と上ガイド片626の先端から下方に向けて延びる上ガイド板627を有する。
止水弁62は、具体的には、図12、図19及び図21に示すように、弁ヘッド621のパッキン材622が抽出孔611を塞いだ状態で、下ガイド623は、弁ガイド615のリブ617の下切欠き618に嵌まると共に、継杆624の下端がリブ617に嵌まる。また、上ガイドは、上ガイド片626が弁ガイド615の上切欠き616に嵌まると共に、上ガイド板627が弁ガイド615を兼ねる位置決め凸部614内の空間に挿入され、下端が下方に臨出している。
止水弁62の操作は、注液レバー63によって行なわれる。注液レバー63は、図2等に示すように前ケーシング112から突出している。注液レバー63の基端は、図9に示すように前後方向に延びる横リンク片631に連繋されており、横リンク片631は、内フレーム13に上下動可能に支持されると共に、下向きにバネ633により付勢された縦リンク片632の下端に連繋されている。横リンク片632の上端は、左に延びており、図12に示すように止水弁62の上ガイド板627と当接可能となっている。
然して、注液レバー63は無負荷の状態では、縦リンク片632がバネ633により下向きに付勢されており、止水弁62は自重により下方に押し付けられて、パッキン材622が抽出孔611を塞ぐ。この状態で、注液レバー63をユーザーが手で押し下げると、横リンク片631が縦リンク片632をバネ633の付勢力に抗して上向きに移動させ、縦リンク片632が止水弁62の上ガイド板627を上方に押し上げる。これにより、止水弁62は上向きにスライドし、パッキン材622が抽出孔611から離れて抽出孔611が開放され、浸出容器61内のお茶が抽出孔611から放出される。注液レバー63から手を離すと、バネ633の付勢力によりリンク片631,632は元の位置に復帰し、止水弁62は自重により再び抽出孔611を塞ぎ、お茶の放出が止むと共に、注水レバー63も元の位置に戻る。
本実施形態では、止水弁62として電磁弁等の電気的な機構を採用せず、上記のように自重によって抽出孔611を塞ぎ、リンクによって機械的に持ち上げて抽出孔611を開放するようにしている。また、止水弁62は加熱タンク31内に配置し、加熱タンク31と一緒に取り出せるようにしている。
これは、浸出容器61や止水弁62に茶渋などが付着したときに容易に洗浄を行なえるようにするためである。たとえば電磁弁を採用すると、一般にその内部を洗浄等することはできないから、茶渋が残存してしまう虞がある。同じ目的で以下に示す吐液機構70も吐液パイプ71が飲料製造装置10から取り外し可能としている。
吐液機構70は、図1にて説明した抽出孔611に連通する吐液パイプ71を主要構成とし、浸出容器61内のお茶を茶器Cに注ぐ。図12及び吐液パイプ71を取り出して示す図23に示すように、吐液パイプ71は、中空の筒体であって、内フレーム13の環状凹部132の底面から前ケーシング112及び給水タンク台14を貫通して前方に傾斜して配置される。なお、吐液パイプ71を前方に傾斜したのは、飲料製造装置10の後側上方の浸出容器61と前側下方の注液機構80を連繋するためである。
吐液パイプ71は、抽出孔611側にすり鉢状に縮径する受け部711を有し、受け部711は抽出孔611の下方に接近して配置され、抽出孔611から吐出されるお茶をこぼすことなく受けるようにしている。内フレーム13の環状凹部132には、受け部711に対応した形状の凹みが形成されている。そして、吐液パイプ71は、浸出容器61を装着し、蓋体12を閉じると蓋体12のパッキン部材129に浸出容器61の上縁が気密に当接し、浸出容器61が下方に押し付けられる。これにより、受け部711が浸出容器61に密着し、受け部711の外にお茶が流出することを防止できる。
また、受け部711には、図23に示すように、吐液パイプ71を取り外す際に摘む摘み部713が形成されている。また、吐液パイプ71は、図示の実施形態では漸次縮径し、その先端には、給水タンク台14を貫通して注液機構80を構成する茶器置き空間81に臨出し、下向きに開口した吐液口712を具える。
吐液パイプ71は、図20に示すように浸出容器61を取り外した状態で、内フレーム13の環状凹部132側から挿入される。吐液パイプ71を取り外す場合には、摘み部713を摘んで斜め上方に引っ張ればよい。
然して、抽出孔611から吐出されたお茶は、受け部711で受けられ、重力作用によって吐液パイプ71を通過し、吐液口712から放出される。本実施形態では、吐液機構70にポンプを採用せず、浸出容器61から自重によってお茶が吐液パイプ71を通って放出されるようにしている。これは、浸出機構60にて説明したとおり、茶渋が付着したときに容易に取り外して洗浄できるようにするためである。
ユーザーが茶器Cを置いて、お茶が注がれる注液機構80は、飲料製造装置10の前面下方、すなわち、給水タンク台14の下方に形成される。注液機構80は、図2、図3及び図12等に示すように、茶器C(図12参照)を載置する着脱可能な茶器置きトレイ82と、茶器置きトレイ82の上方に形成された茶器Cを入れる茶器置き空間81を主要構成とする。
茶器置きトレイ82は、図24に示すように有底の液貯め容器821と、液貯め容器821の上面に着脱可能に配置され、通水孔が複数形成された茶器置きプレート822を有する。
茶器置きトレイ82は、前ケーシング112の下部に装着され、図12に示すように茶器Cが載置される。そして、注液レバー63を操作することで、浸出容器61内のお茶が吐液パイプ71を通じて茶器Cに注がれる。
注液機構80は、飲料製造装置10の前側下方に設けているから、ユーザーは、茶器Cを容易に前方から茶器置きトレイ82に載置することができ、また、お茶が注がれた茶器Cを前方から取り出すことができ、操作性にすぐれる。
上記のように、本発明の飲料製造装置10によれば、ユーザーが給水タンク21を着脱する給水機構20を飲料製造装置10の前側上方、浸出容器61等を着脱する浸出機構60を後側上方、茶器Cを載置する注液機構80を前側下方に配置している。また、操作パネル92や表示パネル96は、飲料製造装置10の前ケーシング112に配置している。すなわち、ユーザーは、飲料製造装置10の前方と上方からのみのアクセスにより、給水、茶葉投入、茶器Cの出し入れ、さらには、操作パネル92の操作を行なうことができ、使い勝手にすぐれる。また、熱源となる加熱機構30はユーザーからアクセスしにくい飲料製造装置10の後側下方であるから、安全性にもすぐれ、排気口551を背面側に設けたことで熱を帯びた排気がユーザーに当たることも防止できる。
さらに、各機構を前後に配置したことで、飲料製造装置10の設置幅を狭めることができると共に、上下に配置したことで設置面積も小さくできる。従って、飲料製造装置10をコンパクトに形成できる利点もある。
然して、上記飲料製造装置10は、下記要領で使用することができる。
蓋体12を開き、吐液パイプ71を内フレーム13の環状凹部132から注液機構80側に向けて差し込む。続いて、浸出容器61に止水弁62を嵌め、浸出容器61を環状凹部132に挿入する。
また、給水タンク21に水を入れ、給水タンク蓋213を嵌めて、給水タンク台14にセットする。そして、茶器Cを茶器置きトレイ82に載置し、以下で説明する操作パネル92を操作して、茶葉の浸出を行なう。
上記飲料製造装置10は、図2、図3、詳細には図25に示す操作パネル92によって操作され、飲料製造装置10の動作状況は表示パネル96によって目視することができる。操作パネル92及び表示パネル96は、前ケーシング112に給水タンク21を挟んで配置されており、図26に示す制御手段90に電気的に接続されている。
操作パネル92は、図25に示すように、茶葉Tの種類を選択する茶種選択ボタン93と、注湯量を設定する杯数ボタン94を具える。茶種選択ボタン93は、本実施形態では玉露ボタン931、上煎茶ボタン932及び煎茶ボタン933である。また、杯数ボタン94は、1杯〜4杯を選択可能としている。たとえば、玉露を2杯分入れる場合には、玉露ボタン931を押し、続いて杯数ボタン94の「2」を押せばよい。また、操作パネル92には、一旦お茶を入れた後、同じ茶葉でもう一度お茶を浸出する二煎目ボタン95を具える。各ボタン93,94,95には、ボタンが押下されたことを表示するLED等のランプが配備されている。なお、各ボタンによる制御の詳細は後述する。
表示パネル96は、飲料製造装置10の動作状況を示す。図25に示すように、本実施形態では、表示パネル96は、縦長の表示ランプ961を具え、動作状況が沸騰中、冷却中、又は、浸出中の何れの段階にあるかを目視できるようにしている。表示ランプ961は内部に複数のLED等のランプを具え、動作状況を異なる配色でレベル表示する構成を例示できる。
上記した飲料製造装置10の制御は、図26に示す制御手段90によって行なわれる。制御手段90は、たとえば図12に示すように電源コード97に近い飲料製造装置10の後面側下方に配置された基板91に実装される。制御手段90は、CPUやメモリ等から構成され、以下に一部を示す、茶葉に応じた最適なお湯の温度(温度プログラム)や浸出時間(浸出プログラム)、杯数に応じた給湯量(杯数プログラム)、二煎目の注湯温度、浸出時間及び給湯量(二煎目プログラム)などの各種制御プログラムが予め記憶されている。
温度プログラムは、茶種選択ボタン93により選択された茶葉に応じて、浸出容器61に供給される湯の温度を最適な温度に調整するプログラムである。たとえば、表1に茶葉の種類と最適な注湯温度の一例を示している。
表1に示すように、茶葉の種類に応じて注湯温度は異なるから、制御手段90は、選択された茶葉に応じて、温度検知センサー33の検知温度を参照しながら、一旦加熱機構30により沸騰した湯を冷ます。具体的には、制御手段90は、ヒーター32を作動させて一旦加熱タンク31内の湯を沸騰させた後、ヒーター32を停止し、切替弁42を冷却パイプ51側に切り替えると共に、給湯ポンプ41及び冷却ファン54を作動させて、温度検知センサー33の検知温度が注湯温度に達するまで湯を冷却する。表示パネル96は、その温度状態により、沸騰から冷却にその段階をレベル表示する。
浸出プログラムは、茶種選択ボタン93により選択された茶葉に応じて、表1にその一例を示すように、浸出容器61における浸出時間を調整するプログラムである。表示パネル96は、残時間をレベル表示する。
杯数プログラムは、茶種選択ボタン93により選択された茶葉に応じて最適な給湯量を杯数分に供給するプログラムである。制御手段90は、必要な給湯量に応じた時間だけ給水ポンプ23を作動させて、給水タンク21から加熱タンク31に給水を行なう。その一例を表1に示すように、たとえば、玉露2杯分であれば、40〜60ccの水を給水タンク21から加熱タンク31に供給する。
二煎目プログラムは、一旦浸出した茶葉でもう一度お茶を浸出するプログラムである。二煎目は、たとえば前回選択された茶葉及び杯数に対し、同じ給湯量或いは給湯量を増やし、注湯温度が約10℃高く、浸出時間を10〜30秒短く設定することができる。
操作パネル92の操作により、浸出容器61で茶葉Tの浸出が行なわれる。浸出が完了したことは、表示パネル96を参照することで確認できる。なお、ブザー等により通知するようにしてもう構わない。そして、ユーザーが注液レバー63を操作することで、茶葉Tに応じた最適な温度、最適な量のお茶が茶器Cに注ぐことができる。
浸出後、飲料製造装置10の手入れは、以下の要領で行なうことができる。
本実施形態では、冷却パイプ51は螺旋構造としてるため、冷却パイプ51内に水が残留することがある。この残留水を排出するには、給湯ポンプ41を作動させつつ、切替弁42を冷却パイプ51と注湯パイプ43に交互に切り替えて作動させる(お手入れ運転モード)。これにより、冷却パイプ51内の残留水が徐々に加熱タンク31に流れ込み、注湯パイプ43を通って浸出容器61に排出され、冷却パイプ51内の残留水を除去できる。切替弁42の切り替えを複数回行なうことで、より効果的に残留水を除去できる。この動作は、たとえば、操作パネル92のボタン93,94,95の何れか2つを同時に押すことで実行されるようプログラムでき、この操作によって制御手段90は、上記お手入れ運転モードを実施する。
また、浸出容器61と止水弁62は、蓋体12を開いて、浸出容器61を上方に引き出し、夫々洗浄すればよい。止水弁62は、浸出容器61と一体に取り外せるため、メンテナンスも容易である。
浸出容器61を取り出した後、吐液パイプ71を引き出すことで、吐液パイプ71も洗浄できる。
上記のように、本発明の飲料製造装置10は、茶渋の付きやすい浸出容器61、止水弁62及び吐液パイプ71を容易に取り出すことができるため、これらの洗浄も簡便である。
その他、給水タンク21や茶器置きトレイ82も夫々取り外して分解し、洗浄等を行なうことができる。
上記説明は、本発明を説明するためのものであって、特許請求の範囲に記載の発明を限定し、或いは範囲を限縮するように解すべきではない。また、本発明の各部構成は、上記実施例に限らず、特許請求の範囲に記載の技術的範囲内で種々の変形が可能であることは勿論である。
たとえば、上記表1に示した茶葉の種類、注湯温度等は一例であり、種々の茶葉に応じた浸出の条件を設定することができる。また、飲料はお茶に限定されず、茶葉に代えてコーヒー粉、紅茶葉を浸出容器61に投入することで、コーヒーや紅茶などを製造することもできる。