[第1実施形態]
本発明の第1実施形態を図1〜図8を参照して説明する。まず、図1及び図2を参照して、第1実施形態における倒立振子型車両の構成を説明する。
図1及び図2に示すように本実施形態の倒立振子型車両1(以降、単に車両1ということがある)は、基体2と、路面上を移動可能な第1の移動動作部3及び第2の移動動作部4と、車両1の利用者が搭乗する乗員搭乗部5とを備える。
第1の移動動作部3は、車両1の主たる移動動作部であり、路面上を全方向(任意の方向)に移動し得るように構成されている。一例として、第1の移動動作部3は、円環状の芯体6(以下、環状芯体6という)と、この環状芯体6の円周方向(軸心周り方向)に等角度間隔で並ぶようにして該環状芯体6に外挿された複数の円環状のローラ7とを備える。なお、図2では、一部のローラ7だけが代表的に図示されている。
各ローラ7は、環状芯体6の軸心周りに該環状芯体6と一体に回転可能とされていると共に、各ローラ7の配置位置での環状芯体6の横断面の中心軸(環状芯体6の軸心を中心とする円周の接線方向の軸)周りに回転可能とされている。
かかる構造の第1の移動動作部3は、その下部のローラ7を、車両1の移動環境の床面、地面等の路面に接地させた状態で、環状芯体6をその軸心周りに回転駆動することと、各ローラ7をその軸心周りに回転駆動することとの一方又は両方を行うことで、路面上を全方向に移動することが可能である。
以降の説明では、図2に示す如く、環状芯体6の軸心が水平になるように第1の移動動作部3を路面に接地させた状態での環状芯体6の軸心方向(図2では紙面に垂直な方向)をY軸方向、Y軸方向に直交する水平軸方向をX軸方向、鉛直方向をZ軸方向とする。また、X軸方向、Y軸方向、及びZ軸方向をそれぞれ、車両1の前後方向、左右方向、上下方向(高さ方向)とする。そして、X軸、Y軸、Z軸の正方向を、それぞれ車両1の前方向、左方向、上方向とする。
第1の移動動作部3は、その環状芯体6が基体2に対して相対回転し得るように基体2に組み付けられている。本実施形態では、基体2は、路面に接地させた第1の移動動作部3の下部を除く部分を覆うように設けられている。そして、第1の移動動作部3の環状芯体6が、その軸心周りに、基体2に対して相対回転し得るように基体2に軸支されている。
このため、第1の移動動作部3の接地状態では、基体2は、第1の移動動作部3の環状芯体6の軸心を支点として、Y軸周り方向(ピッチ方向)に傾動可能である。さらに、基体2は、第1の移動動作部3の接地部(下部)を支点として、第1の移動動作部3と共に、X軸周り方向(ロール方向)に傾動可能である。
基体2の内部には、第1の移動動作部3を移動させる駆動力を発生する第1のアクチュエータ装置8が搭載されている。この第1のアクチュエータ装置8は、環状芯体6を回転駆動するアクチュエータ8aと、各ローラ7を回転駆動するアクチュエータ8bとから構成される。これらのアクチュエータ8a,8bは、例えば電動モータ、油圧アクチュエータ等により構成される。
そして、アクチュエータ8a,8bは、それぞれ、図示を省略する動力伝達機構を介して環状芯体6、各ローラ7に回転駆動力を付与する。該動力伝達機構は、公知の構造のものでよい。
基体2には、乗員搭乗部5が組み付けられている。本実施形態では、乗員搭乗部5は、車両1の利用者が着座するシートにより構成されている。そして、車両1の利用者は、その前後方向をX軸方向、左右方向をY軸方向に向けた姿勢で、乗員搭乗部5に着座することが可能となっている。
基体2には、さらに乗員搭乗部5に着座した利用者がその足を載せる左足載せ部9a及び右足載せ部9bが組み付けられている。左足載せ部9a及び右足載せ部9bは、左基体2の左右の両側部の下部に突設されている。
第2の移動動作部4は、車両1の旋回もしくは方向転換を円滑に行い得るようにするための補助的な移動動作部であり、路面上を全方向(任意の方向)に移動し得るように構成されている。この第2の移動動作部4は、本実施形態では、例えばオムニホイールにより構成されている。第2の移動動作部4としてのオムニホイールは、同軸心の一対の環状芯体(図示省略)と、各環状芯体に、回転軸心を該環状芯体の円周方向に向けて回転自在に外挿された複数の樽状のローラ13とを備える公知の構造のものである。
この場合、第2の移動動作部4は、その一対の環状芯体の軸心をX軸方向(前後方向)に向けて第1の移動動作部3の後方に配置され、ローラ13を介して路面に接地される。
なお、上記一対の環状芯体の一方側のローラ13と、他方側のローラ13とは、該環状芯体の周方向に位相をずらして配置されており、該一対の環状芯体の回転時に、該一対の環状芯体の一方側のローラ13と、他方側のローラ13とのうちのいずれか一方が路面に接地するようになっている。
かかる構成の第2の移動動作部4は、基体2又は第1の移動動作部3に連結されている。より詳しくは、第2の移動動作部4は、オムニホイール(一対の環状芯体及び複数のローラ13の全体)の上部側の部分を覆う筐体14を備える。そして、筐体14に、オムニホイールの一対の環状芯体がその軸心周りに回転し得るように軸支されている。
さらに、筐体14から基体2側に延設されたアーム15が、前記第1の移動動作部3の環状芯体6の軸心周りに所定の角度範囲で揺動し得るように、基体2に軸支され、又は環状芯体6の軸心部に軸支されている。
これにより、第2の移動動作部4が、環状芯体6の軸心周りに、基体2に対して揺動し得るように、アーム15を介して基体2又は第1の移動動作部3に連結されている。このため、第1の移動動作部3と第2の移動動作部4との両方を接地させたまま、乗員搭乗部5及び基体2をY軸周り方向(ピッチ方向)に傾動させることが可能となっている。
また、第2の移動動作部4は、第1の移動動作部3及び基体2と共に、X軸周り方向(ロール方向)に傾動することが可能である。
なお、第2の移動動作部4は、路面に押し付けられるようにバネにより付勢されていてもよい。
上記の如く構成された第2の移動動作部4は、その一対の環状芯体の回転と、ローラ13の回転とのうちの一方又は両方を行なうことで、第1の移動動作部3と同様に、路面上を全方向に(任意の方向に)移動することが可能となっている。
第2の移動動作部4の筐体14には、第2の移動動作部4を駆動するアクチュエータ17が取り付けられている。本実施形態では、アクチュエータ17は、第2の移動動作部4の一対の環状芯体を回転駆動するように該一対の環状芯体に連結されている。該アクチュエータ17は、例えば電動モータ、油圧アクチュエータ等により構成され得る。
従って、本実施形態では、アクチュエータ17により第2の移動動作部4の一対の環状芯体を回転駆動することで、第2の移動動作部4をY軸方向に移動させることが可能となっている。一方、第2の移動動作部4のX軸方向での移動(ローラ13の回転)は、第1の移動動作部3のX軸方向での移動に追従して従動的に行なわれるようになっている。
図3に示すように、基体2の内部には、円弧形状の左回転板21が配置されている。左回転板21は、回転可能に設けられ、先端部には左足載せ部9aが取り付けられている。
左回転板21は、図3に示す基準位置から図4に示すように乗員搭乗部5の前方に位置する前方位置まで回転する。なお、図4では、第1の移動動作部3の環状芯体6及び第2の移動動作部4のローラ13の図示を省略している。
同様に、基体2の内部には、円弧形状の右回転板31が配置されている。右回転板31は、回転可能に設けられ、先端部には右足載せ部9bが取り付けられている。左回転板21及び右回転板31は、通常時には、バネ(図示せず)の付勢により基準位置に位置する。
以上が本実施形態における車両1の機構的な構成である。
補足すると、路面上を全方向に移動し得る第1の移動動作部3及び第2の移動動作部4、並びにそれらの駆動系は、上記のものに限らず、種々様々な構造のものを採用し得る。例えば、第1の移動動作部3及びその駆動系の構造として、PCT国際公開公報WO/2008/132778、あるいは、PCT国際公開公報WO/2008/132779にて本願出願人が提案した構造のものを採用してもよい。また、第1の移動動作部3及び第2の移動動作部4は、互いに同じ構造のものであってもよい。
図1〜図4での図示は省略したが、本実施形態の車両1には、該車両1の動作制御のための構成要素として、図5に示すように、CPU、RAM、ROM、インターフェース回路等を含む電子回路ユニットにより構成された制御装置41と、車両1の動作状態もしくは外界状態等を観測するための各種センサと、車両1の動作を制御する統括管理装置(図示せず)、あるいは車両1の利用者が所持する図示しない携帯端末機(スマートフォン、フィーチャーフォン、タブレット端末等。以降、ユーザ端末機という)と制御装置41との間の無線通信を行うための通信装置48とが搭載されている。
上記センサには、例えば、鉛直方向に対する基体2の傾斜角度を計測するための傾斜センサ42、車両1のヨー方向(Z軸周り方向)の角速度を計測するためのヨーレートセンサ43、車両1への利用者の搭乗の有無を検知するための搭乗検知センサ45、車両1の自己位置を検出するための位置センサ46、車両1の移動速度を検出するための速度センサ47、左回転板21の変化量(回転方向及び回転量)を検出する左回転センサ50、右回転板31の変化量(回転方向及び回転量)を検出する右回転センサ51等が含まれる。これらのセンサの出力(検出データ)が制御装置41に入力される。なお、本実施形態では、各センサ50,51として、例えば6軸力センサが用いられる。
また、傾斜センサ42は、例えば加速度センサ及びジャイロセンサ(角速度センサ)の組により構成され得る。この場合、傾斜センサ42は、その構成要素のセンサとして、ヨーレートセンサ43を含み得る。
また、搭乗検知センサ45としては、例えば乗員搭乗部5又は左右足載せ部9a,9bに作用する荷重を検出する荷重センサ等を使用し得る。また、位置センサ46としては、例えばGPSセンサ等を使用し得る。
制御装置41は、実装されるハードウェア構成又はプログラム(ソフトウェア構成)により実現される機能として、前記アクチュエータ8a,8b,17の動作制御(ひいては、第1の移動動作部3及び第2の移動動作部4の移動制御)を行う機能を有するように構成されている。
この場合、制御装置41が実行する制御処理は、車両1に利用者が搭乗している状態での動作モード(以降、搭乗動作モードという)の制御処理である。
搭乗動作モードでの制御処理の概要を以下に説明しておく。
搭乗動作モードでは、制御装置41は、例えば、乗員(乗員搭乗部5に着座した利用者)の体重移動(重心の移動)、あるいは、乗員のユーザ端末機の操作等による車両1の動作指令に応じて、第1の移動動作部3及び第2の移動動作部4の移動を制御する。
この場合、車両1の全体重心のバランス状態を確保しつつ、車両1が所要の移動速度で移動もしくは旋回するように第1の移動動作部3及び第2の移動動作部4の移動が制御される。なお、搭乗動作モードでの車両1の全体重心は、より詳しくは、車両1と、乗員とを合わせた全体の重心を意味する。また、全体重心のバランス状態は、仮に車両の移動速度と旋回速度を一定に維持した場合に、接地点に対して全体重心が発散しない(かい離していかない)動力学的な釣合がとれた状態を意味する。
搭乗モードにおける制御装置41の具体的な制御処理は、例えば次にように行われる。すなわち、制御装置41は、所定の制御処理周期で、例えば、次式(1a),(1b)により、第1の移動動作部3のX軸方向の並進加速度の目標値DVw1_cmd_x及びY軸方向の並進加速度の目標値DVw1_cmd_yを決定し、これらの目標値を積分してなる並進移動速度(目標値)を実現するように、アクチュエータ8a,8bを制御することで、第1の移動動作部3の移動を制御する。
DVw1_cmd_x=Kvb_x・(Vb_cmd_x−Vb_act_x)
+Kth_y・(θb_cmd_y−θb_act_y)
−Kw_y・ωb_act_y ……(1a)
DVw1_cmd_y=Kvb_y・(Vb_cmd_y−Vb_act_y)
+Kth_x・(θb_cmd_x−θb_act_x)
−Kw_x・ωb_act_x ……(1b)
ここで、式(1a)の右辺におけるVb_cmd_xは、車両1の全体重心のX軸方向の並進移動速度の目標値、Vb_act_xは、車両1の全体重心のX軸方向の実際の並進移動速度、θb_cmd__yは、乗員搭乗部5(又は基体2)のY軸周り方向(ピッチ方向)の傾斜角度の目標値、θb_act__yは、乗員搭乗部5(又は基体2)のY軸周り方向(ピッチ方向)の実際の傾斜角度、ωb_act_yは、乗員搭乗部5(又は基体2)のY軸周り方向(ピッチ方向)の実際の傾斜角度の時間的変化率(傾斜角速度)、Kvb_x,Kth_y,Kw_yは、それぞれ所定値のゲイン(フィードバックゲイン)である。
また、式(1b)の右辺におけるVb_cmd_yは、車両1の全体重心のY軸方向の並進移動速度の目標値、Vb_act_yは、車両1の全体重心のY軸方向の実際の並進移動速度、θb_cmd__xは、乗員搭乗部5(又は基体2)のX軸周り方向(ロール方向)の傾斜角度の目標値、θb_act__xは、乗員搭乗部5(又は基体2)のX軸周り方向(ロール方向)の実際の傾斜角度、ωb_act_xは、乗員搭乗部5(又は基体2)のX軸周り方向(ロール方向)の実際の傾斜角度の時間的変化率(傾斜角速度)、Kvb_y,Kth_x,Kw_xは、それぞれ所定値のゲイン(フィードバックゲイン)である。
この場合、実際の傾斜角度θb_act_x,θb_act_y及びその時間的変化率(傾斜角速度)ωb_act_x,ωb_act_yの値としては、傾斜センサ42の出力により示される計測値を使用し得る。
また、全体重心の実際の並進移動速度Vb_act_x,Vb_act_yの値としては、例えば、次式(2a),(2b)により算出される推定値を使用し得る。
Vb_act_x=Vw1_act_x+h・ωb_act_x ……(2a)
Vb_act_y=Vw1_act_y+h・ωb_act_y ……(2b)
なお、Vw1_act_xは第1の移動動作部3のX軸方向の実際の並進移動速度、Vw1_act_yは第1の移動動作部3のY軸方向の実際の並進移動速度、hは全体重心の高さ(設定値)である。Vw1_act_x,Vw1_act_yの値としては、適宜のセンサよる計測値を使用し得る。あるいは、Vw1_act_x,Vw1_act_yの擬似的な推定値として、制御装置41の前回の制御処理周期で決定した並進速度の目標値(DVw1_cmd_x,DVw1_cmd_yのそれぞれの積分値)を使用することも可能である。
また、式(1a),(1b)における全体重心の並進移動速度の目標値Vb_cmd_x,Vb_cmd_yとしては、例えば、乗員の重心の移動量(乗員搭乗部5に対する相対的な移動量)の推定値に応じて決定した値、あるいは、乗員がユーザ端末機の操作等に応じて設定した指令値、あるいは、これらの合成値を使用し得る。
また、傾斜角度の目標値θb_cmd_x,θb_cmd_yとしては、全体重心の並進移動速度Vb_act_x,Vb_act_yが目標値に整定した状態で、全体重心のバランス状態を確保し得る傾斜角度の値を使用し得る。
この場合、傾斜角度の目標値θb_cmd_x,θb_cmd_yは、車両1の直進走行時には、全体重心が第1の移動動作部3の接地部の直上(もしくはほぼ直上)となる状態での乗員搭乗部5(又は基体2)の傾斜角度であり、車両1の旋回走行時には、全体重心に作用する遠心力によって車両1に発生するモーメントと、全体重心に作用する重力によって車両1に発生するモーメントとが釣り合う状態での乗員搭乗部5(又は基体2)の傾斜角度である。
なお、傾斜角度の目標値θb_cmd_x,θb_cmd_yは、一時的に、全体重心のバランス状態を確保し得る傾斜角度の値からずらした値に設定することも可能である。
また、制御装置41は、搭乗動作モードにおいて、例えば、次式(3)により、車両1の第2の移動動作部4のY軸方向の並進移動速度の目標値Vw2_cmd_yを決定し、この目標値を実現するように、アクチュエータ17を制御することで、第2の移動動作部4の移動を制御する。
Vw2_cmd_y=Vw1_cmd_y−L・ωcmd_z ……(3)
ここで、式(3)の右辺におけるVw1_cmd_yは、前記式(1b)により算出される第1の移動動作部3のY軸方向の並進加速度の目標値DVw1_cmd_yを積分してなる並進移動速度(目標値)、ωcmd_zは、車両1のZ軸周り方向(ヨー方向)の角速度の目標値、Lは、第1の移動動作部3の接地部と第2の移動動作部4の接地部との間の既定の距離である。
上記式(3)により、第2の移動動作部4のY軸方向の並進移動速度の目標値Vw2_cmd_yは、第1の移動動作部3のY軸方向の並進移動速度との速度差によって、車両1のヨー方向の角速度の目標値ωcmd_zを実現するように決定される。
この場合、角速度の目標値ωcmd_zとしては、例えば、Y軸方向での乗員の重心の移動量の推定値に応じて決定した値、あるいは、Y軸方向での全体重心の並進移動速度の目標値もしくは検出値に応じて決定した値、あるいは、Y軸方向での第1の移動動作部3の並進移動速度の目標値もしくは検出値に応じて決定した値、あるいは、乗員が携帯端末機の操作等に応じて設定した指令値等を使用し得る。
なお、角速度の目標値ωcmd_zは、車両1の旋回中心が、第1の移動動作部3の接地部に存在し、もしくは、該第1の移動動作部3の接地部と第2の移動動作部4の接地部との間に存在するように設定することが好ましい。そして、第1の移動動作部3のX軸方向の並進移動速度の目標値又は検出値が小さいほど、車両1の旋回中心が、第1の移動動作部3の接地部に近づくように、角速度の目標値ωcmd_zを設定することが好ましい。
補足すると、ωcmd_z=0の場合には、式(3)により算出される第2の移動動作部4のY軸方向の並進移動速度の目標値Vw2_cmd_yは、第1の移動動作部3のY軸方向の並進移動速度の目標値Vw1_cmd_yに一致する。従って、ωcmd_z=0の場合、すなわち、車両1の直進走行時には、第2の移動動作部4は、第1の移動動作部3と同じ並進移動速度で移動するように制御される。
搭乗動作モードでは、以上の如く、第1の移動動作部3及び第2の移動動作部4の移動制御が行われる。
補足すると、搭乗動作モード等における車両1のより詳細な動作制御の手法としては、例えば前記特許文献1等に本願出願人が提案した手法等を採用し得る。ただし、搭乗動作モードにおける車両1の動作制御の手法は、上記の手法に限らず、他の手法であってもよい。車両1の動作制御の手法は、車両1の全体重心のバランス状態を確保し得るように、車両1を移動させることができる手法であれば、どのような手法であってもよい。
図6に示すように、搭乗動作モードでは、車両1の利用者は、車両1に搭乗する。そして、図7に示すように、乗員は、車両1の移動速度を上昇させたい場合、車両1の重心を前方向に移動させる。この重心を前方向に移動させる動作として、乗員は、上半身を前方向に傾けて基体2を前方向に傾動させる動作を行う。
車両1では、左足載せ部9a及び右足載せ部9bの変化量(回転方向及び回転量)が左回転センサ50及び右回転センサ51により検出される。以下では、車両1の移動中に、左足載せ部9a及び右足載せ部9bが、図7に示す状態から図8に示す状態に回転された場合の制御について説明する。
車両1の移動中に乗員が図7に示す状態から図8に示す状態となるように、左足載せ部9a及び右足載せ部9bをバネの付勢に抗して回転させると、その回転方向(前方向)及び回転量(例えば、25°)が左回転センサ50及び右回転センサ51により検出される。
左回転センサ50及び右回転センサ51による検出結果が、前方向及び25°である場合、制御装置41は、車両1を停止させる制御を行う。なお、図7に示す状態から図8に示す状態に向かうにつれて、徐々に車両1の速度を低下させるようにしてもよい。
左足載せ部9a及び右足載せ部9bを、図7に示す状態から図8に示す状態に回転させる場合、左回転板21及び右回転板31が図3に示す位置から図4に示す位置まで回転される。この回転動作により、左足載せ部9a及び右足載せ部9bが、図6及び図7に示す基準位置から、図8に示すように乗員搭乗部5の前方に位置する前方位置まで回転する。
なお、図8に示す状態では、乗員が後ろに倒れることがあるため、それを防止するために、乗員の後ろ側に背もたれのような部材を設けるようにしてもよく、この部材は、図6及び図7に示す通常時には基体2に収納され、図8に示す状態となった場合に、基体2から突出するようにしてもよい。
また、車両1では、図8に示す状態において、乗員による左足載せ部9a及び右足載せ部9bの回転力がなくなると、左足載せ部9a及び右足載せ部9bは、図6に示す状態に戻る。この工程は、バネの付勢により、左回転板21及び右回転板31が図4に示す位置から図3に示す位置まで回転する。これにより、左足載せ部9a及び右足載せ部9bは、図6に示す基準位置に戻る。
車両1において、左足載せ部9a及び右足載せ部9bは、基準位置より後側にも回転可能に設けられている。車両1では、乗員が、左足載せ部9a及び右足載せ部9bを基準位置よりも後側に例えば5°回転させると、左回転センサ50及び右回転センサ51による検出結果は、後方向及び5°となる。この検出結果である場合、制御装置41は、車両1の移動速度を上昇させる制御を行う。この速度上昇制御は、車両1の速度が所定速度(例えば、6km/h)となると終了し、以降は、制御装置41により6km/hを保つように制御される。なお、左足載せ部9a及び右足載せ部9bが基準位置よりも後側に回転された場合、その回転角度に応じて、制御装置41は、車両1の移動速度を上昇させる制御を行うようにしてもよい。
このように、左足載せ部9a及び右足載せ部9bを回転させるだけで、容易に車両1を停止させたり、車両1の速度を上昇させることができる。
上記第1実施形態では、乗員が、左足載せ部9a及び右足載せ部9bを、基準位置から前方位置まで回転させたことに応じて、制御装置41は、車両1を停止させているが、これに限らず、例えば、乗員が、左足載せ部9a及び右足載せ部9bを、基準位置からそれぞれ内側方向に変位させると、制御装置41が車両1を停止させるようにしてもよい。また、乗員が乗員搭乗部5を後方向に傾動させたことが乗員搭乗部センサ49により検出されたことに応じて、制御装置41は、車両1を停止させるようにしてもよい。
なお、左足載せ部9a及び右足載せ部9bを、左右方向を回転中心にして回転(自転)可能に設け、左足載せ部9a及び右足載せ部9bの自転を検知するセンサ(図示せず)を設けるようにしてもよい。この場合、例えば、乗員が、つま先を上げるように左足載せ部9a及び右足載せ部9bを自転させたことをセンサで検知した場合、制御装置41は、車両1を停止させる制御を行う。また、例えば、乗員が、つま先を下げるように左足載せ部9a及び右足載せ部9bを自転させたことをセンサで検知した場合、制御装置41は、車両1の移動速度を上昇させる制御を行う。
さらに、例えば、乗員が、左足のつま先を上げて、右足のつま先を下げるように左足載せ部9a及び右足載せ部9bを自転させたことをセンサで検知した場合、制御装置41は、車両1を反時計方向に旋回させる制御を行う。また、例えば、乗員が、左足のつま先を下げて、右足のつま先を上げるように左足載せ部9a及び右足載せ部9bを自転させたことをセンサで検知した場合、制御装置41は、車両1を時計方向に旋回させる制御を行う。
[第2実施形態]
図9に示す第2実施形態では、車両101の左足載せ部102a及び右足載せ部102bは、前後方向を傾動中心として左右方向に傾動可能に設けられている。なお、上記実施形態と同様の構成部材には同一の符号を付し、その詳細な説明を省略する。また、左足載せ部102a及び右足載せ部102bは、前後方向を傾動中心として左右方向に傾動可能である以外は、上記実施形態の左足載せ部9a及び右足載せ部9bと同様に構成されている。
車両1では、左足載せ部9a及び右足載せ部9bの傾動転方向及び傾動量が傾動センサ(図示せず)により検出される。以下では、車両1の移動中に、左足載せ部9a及び右足載せ部9bが、図9に示す状態に傾動された場合の制御について説明する。
図9に示すように、乗員が、左足載せ部102aを右方向(図9の矢印方向)に例えば10°傾動させ、右足載せ部102bを右方向(図9の矢印方向)に例えば10°傾動させると、その傾動方向及び傾動量が傾動センサにより検出される。
傾動センサによる検出結果が、右方向に10°(左足載せ部102a)、及び右方向に10°(右足載せ部102b)である場合、制御装置41は、車両101を右方向に移動させる制御を行う。なお、図9では、乗員の図示を省略している。
同様に、乗員が、左足載せ部102aを左方向に例えば10°傾動させ、右足載せ部102bを左方向に例えば10°傾動させたことが傾動センサにより検出されたことに応じて、制御装置41は、車両101を左方向に移動させる制御を行う。なお、左足載せ部9a及び右足載せ部9bの傾動量(傾動センサでの検出量)に応じて、車両1の左右方向への移動速度を変えるようにしてもよい。
なお、左足載せ部102a及び右足載せ部102bの両方を傾動させずに、左足載せ部102a及び右足載せ部102bのうち、移動させたい方向の一方のみを傾動させた場合に、制御装置41による制御を開始するようにしてもよい。
また、左足載せ部102a及び右足載せ部102bを傾動させた後に戻した場合には、傾動させた方向に車両1を移動させ、傾動させ続けた場合には、傾動させた方向に応じて車両1を旋回させるようにしてもよい。例えば、右方向に傾動させた場合には、時計方向に旋回させ、左方向に傾動させた場合には、反時計方向に旋回させる。
[第3実施形態]
図10に示す第3実施形態では、制御装置41は、車両1を旋回させる。なお、上記実施形態と同様の構成部材には同一の符号を付し、その詳細な説明を省略する。
図10に示すように、乗員が、左足載せ部9aは基準位置のまま、右足載せ部9bを基準位置よりも前方まで回転させると、その回転方向(前方向)及び回転量(例えば、25°)が右回転センサ51により検出される。この場合、左回転センサ50では、回転方向及び回転量は検出されない。
左回転センサ50では回転方向及び回転量が検出されず、右回転センサ51による検出結果が、前方向に25°である場合、制御装置41は、車両1を反時計方向に旋回させる制御を行う。
同様に、乗員が、右足載せ部9bは基準位置のまま、左足載せ部9aを基準位置よりも前方まで回転させ、右回転センサ51では回転方向及び回転量が検出されず、左回転センサ50による検出結果が、前方向に25°である場合、制御装置41は、車両1は時計方向に旋回させる制御を行う。なお、左足載せ部9a及び右足載せ部9bの回転量(左回転センサ50及び右回転センサ51での検出量)に応じて、車両1の旋回速度を変えるようにしてもよい。
なお、上記第1〜第3実施形態を組み合わせてもよい。