JP6840086B2 - 薬物として、特に皮膚炎症性疾患において使用するためのフィブリノゲン由来の単離されたペプチドおよびそれらのフラグメント - Google Patents

薬物として、特に皮膚炎症性疾患において使用するためのフィブリノゲン由来の単離されたペプチドおよびそれらのフラグメント Download PDF

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Description

本発明は、医学分野、特に炎症性皮膚疾患の分野にあり、より詳しくは、本発明は、特に、炎症性皮膚疾患、より詳しくは、座瘡の予防および/または治療のための薬物として使用するための、ヒトフィブリノゲンから得られた単離されたペプチドに関する。本発明はまた、これらのポリペプチドのフラグメント、それらをコードする核酸分子、それらを含有する発現ベクター、宿主細胞、医薬組成物および組合せ物、ならびに炎症性皮膚疾患、特に座瘡を治療および/または予防するためのそれらの使用に関する。
炎症性皮膚障害は、軽度の掻痒から重度の医学的合併症までの重篤度範囲の多くの病態を含む広いカテゴリーを包含する。これらの障害は、あらゆる年齢層および人種に共通している。これらの障害は皮膚の刺激および炎症を特徴とする。これらの疾患は時にひどくなり、罹患者に多大な不快を引き起こし得る。炎症性皮膚障害の周知の例は座瘡である。
座瘡は、80%を超える若年成人を侵す皮膚の多因子性疾患である。この疾患は毛包脂腺嚢に局在し、炎症性病巣と非炎症性病巣の両方を特徴とする。患者は、非炎症性の面皰と炎症性の丘疹、膿疱および小結節の混合状態を呈することがある。炎症性座瘡の発生を促す要因の1つが嫌気性アクネ菌(Proprionibacterium acnes)(P. acnes)株による毛包脂腺管の細菌定着である。
実際に、アクネ菌は、イン・ビトロ(in vitro)においてはケラチノサイト、皮脂細胞および単球による炎症性分子(インターロイキンIL−1α/β、IL−8、IL−12、TNF−α、β−デフェンシン)の生産を誘導でき、イン・ビボ(in vivo)においては座瘡病巣においても同様である。この生産は、TLR2受容体およびNF−κBおよびMAPKシグナル伝達経路ならびにNLRP3インフラマソーム経路の活性化を含む。アクネ菌はまたケラチノサイトによる反応性酸素種(ROS)の定量生産を誘導し、炎症反応の開始に寄与する (Graham 2004;Grange 2009a;Grange 2009b;Kang 2005;Nagy 2005;Trivedi 2006;Qin 2014;Kistowska 2014;Jugeau 2005)。
現在、レチノイド(ビタミンA誘導体)、アゼライン酸、サリチル酸、過酸化ベンゾイル、局所および経口抗生剤などのいくつかの抗座瘡処置が存在する。
これらの処置の作用は様々であり、異なる効果を有する。一般に、抗生剤は細菌を死滅させ、レチノイドおよびアゼライン酸は微小面皰の発生を予防し、抗微生物特性および抗炎症特性を有する。
他の化学化合物は、細菌侵入に関連する特定の機構を標的とする。
アクネ菌は、ヒト皮膚に接着することができ(Grice 2009)、非特異的相互作用を用いてその播種領域から感染部位へ移動し、その後、特異的結合を介して不可逆的接着プロセスが生じることにより、より深層への感染も引き起こし得る(Gristina 1988)。さらに、これまでの研究で、アクネ菌のフィブロネクチンとしての細胞外基質タンパク質(ECM)への、ならびにヒト上皮細胞への(Romero−Steiner 1990)結合能(Yu 1997)が示されている。
接着防止剤を有する化学薬物として、Papulex(登録商標)が周知である。
しかしながら、上記に引用された処置には多くの副作用がある。例えば、抗生剤コースは時間的に限定するべきであり、多くの場合、脱感作または応答の喪失が見られる。さらに、化学化合物の使用は、暗色の皮膚の患者での色素脱失または治療不耐性による他の副作用などのいくつかのリスクを患者に引き起こす。座瘡治療に化学化合物を使用することのもう1つの欠点はそれらのコストが高いことである(Dawson et、2013)。
これらの理由で、座瘡を治療および予防するための、副作用無しで処置の良好な有効性および低生産コストを可能とする他の手段、好ましくは、生物学的手段が開発されるべきである。
本発明に関して、本発明者らは、今般、ヒトフィブリノゲンにより特異的に認識される58kDaのアクネ菌表面タンパク質を同定し、それをPfgと命名した。より詳しくは、本発明者らは、ヒトフィブリノゲンのサブユニットが接着タンパク質Pfgと特異的に結合し、従って、そのアクネ菌との接着を阻害することができることを見出した。
本知見は、本発明者らが知る限り、ヒトフィブリノゲン認識能を有するアクネ菌表面糖タンパク質が特性決定されたのは初めてであるので、予期されないことであった。
本知見は、皮膚細胞への細菌接着を阻害し、それにより、細菌接着により誘発される皮膚感染および炎症を予防および/または治療することにより座瘡を処置するための別の手段の開発を可能とするので極めて重要である。加えて、本発明者らは、前記フィブリノゲンサブユニットがより全般的な抗炎症特性を有していること、従って、より一般には、他の炎症性皮膚障害、好ましくは、乾癬を予防および/または治療するために使用可能であることを見出した。
よって、第1の側面において、本発明は、薬剤として使用するための、最適なグローバルアラインメントの後に配列番号1と少なくとも80%の同一性を有するアミノ酸配列を含んでなる、単離されたポリペプチド、または、最適なグローバルアラインメントの後に配列番号2、5および7〜13および47のいずれか1つと少なくとも80%の同一性を有するアミノ酸配列を含んでなる、そのフラグメントに関する。
配列番号1は、フィブリノゲンのヒトBβサブユニットに相当し、配列番号2、5および7〜13および47は、この配列のフラグメントに相当する。
本発明によるポリペプチドは、アクネ菌を認識してそれと結合することができ、また、そのリガンドであるフィブリノゲンおよび皮膚細胞へのアクネ菌の接着を阻害することができる。
よって、本発明による治療的使用のためのポリペプチドは、好ましくは、座瘡を予防および/または治療するために使用され得る。
本発明者らはまた、本発明による治療的使用のための単離されたポリペプチドは、他の炎症性皮膚疾患、好ましくは、乾癬の治療および/または予防のために使用可能であることも見出した。
本発明者らはまた、アクネ菌の接着タンパク質を認識してそれと結合し、そのリガンドであるフィブリノゲンへのおよび皮膚細胞へのアクネ菌の接着を阻害する、ヒトフィブリノゲンBβサブユニットのフラグメントも単離した。
よって、第2の側面において、本発明は、最適なグローバルアラインメントの後に配列番号1と少なくとも80%の同一性を有するアミノ酸配列を含んでなるポリペプチドのフラグメントに関し、前記フラグメントは、最適なグローバルアラインメントの後に配列番号2、5および7〜13および47のいずれか1つと少なくとも80%の同一性を有するアミノ酸配列を含んでなる。
第3の側面において、本発明はまた、本発明のフラグメントをコードする単離された核酸分子、本発明の核酸を含んでなるベクター、および本発明による核酸分子または本発明によるベクターを含んでなる宿主細胞に関する。
本発明のフラグメントは、アクネ菌を認識してそれと結合することができ、また、アクネ菌のそのリガンドであるフィブリノゲンおよび皮膚細胞への接着を阻害することもできる。結果として、これらのフラグメントは、炎症性疾患、特に座瘡を予防および/または治療するための薬物における抗接着剤として大きな可能性を持ち得る。
よって、第4の側面において、本発明は、本発明によるフラグメント、単離された核酸分子、ベクターまたは宿主細胞から選択される少なくとも1つの化合物と薬学上許容可能なビヒクルとを含んでなる医薬組成物に関する。
本発明はまた、薬剤として使用するための本発明による単離された核酸分子、ベクター、宿主細胞または医薬組成物に関する。
好ましくは、本発明による単離された核酸分子、ベクター、宿主細胞または医薬組成物は、座瘡の治療および/または予防のために使用される。
本発明者らはまた、本発明による単離された核酸分子、ベクター、宿主細胞または医薬組成物は、他の炎症性皮膚疾患、好ましくは、乾癬の治療および/または予防のために使用可能であることも見出した。
本発明のフラグメント、単離された核酸分子、ベクター、宿主細胞または医薬組成物は、単独で、または座瘡予防および/もしくは治療ならびに/または他の炎症性疾患、好ましくは、乾癬の予防および/もしくは治療に関与する別の治療剤と組み合わせて使用可能である。
よって、第5の側面において、本発明は、薬剤としての同時、個別または逐次使用のための、
本発明によるフラグメント、単離された核酸分子、ベクターおよび宿主細胞から選択される少なくとも1つの化合物;および
好ましくは、乾癬および/または座瘡から選択される皮膚炎症性疾患、好ましくは、座瘡の治療および/または予防に使用される別の薬剤
を含んでなる組合せ物に関する。
本発明による組合せ物の目的は、本発明によるフラグメントの治療効果を増強することである。
フィブリノゲンにより認識される58kDaアクネ菌表面タンパク質の同定。アクネ菌6919株を37℃、嫌気条件下、RCM、0.1%Tween−80を添加したRCMおよび5%ヒツジ血液を添加したコロンビアで増殖させた。(A)アクネ菌表面タンパク質(75μg)を、PBS中60℃(レーン2)および1M LiCl中45℃(レーン3)で加熱抽出し、12.5%SDS−PAGE上で分離し、ニトロセルロース膜に転写し、室温で2時間、ビオチン化フィブリノゲン、コラーゲンI、IV、VIおよびVIII(0.1μg/ml)とともにインキュベートした。HRP−ストレプトアビジン単独を使用することにより、対照実験を行った。レーン1:分子量標準。 アクネ菌表面タンパク質と精製ヒトフィブリノゲンの結合。(A)アクネ菌表面タンパク質(0.8〜50μg/ml)を96ウェルポリスチレンプレートに固定化し、室温で2時間、ビオチン化フィブリノゲン(0.1μg/ml)でプローブした。(B)アクネ菌表面タンパク質(25μg/ml)を96ウェルポリスチレンプレートに固定化し、室温で2時間、0.1〜16μg/mlの範囲の種々の濃度のビオチン化フィブリノゲンでプローブした。結合したビオチン化フィブリノゲンを、材料および方法に記載されるようにHRP−ストレプトアビジンで検出した。 Pfgの同定。cPAHE(200μg)を二次元電気泳動により分離した。(A)タンパク質は銀染色により検出した。(B)フィブリノゲン結合活性は、材料および方法に記載されるようにウエスタンリガンドブロットアッセイを使用することにより、ビオチン化フィブリノゲンで決定した。レーン1、分子量標準;レーン2、10%SDS−PAGE(1DE)だけによって分離されたサンプル(50μgのタンパク質);レーン3、材料および方法に記載されるような2DE後のサンプル。矢印はMALDI−ToFによる同定のために切り出されたスポットを示す。(C)対象スポットに関して得られたMALDI−ToFスペクトル。モノアイソトピックペプチド質量を用いてタンパク質データベースを検索し、一致させ、続いてタンパク質スポットを同定した。 Pfgの精製。アクネ菌表面タンパク質を42℃で2時間、1%LiClにより抽出した後、80%飽和での硫酸アンモニウム沈澱により濃縮した。(A)cPAHE(85mg)をUNOsphere Qカラムに24ml/時でロードした。25mMトリス、pH8.0中で平衡化したタンパク質を、60分間0〜160mMおよび90分間160〜200mM NaCl、25mMトリス、pH8.0の直線勾配で溶出させた(●)。プールしたPfg含有画分を脱塩し、0.1M NHHCO、pH8.0中で平衡化した。(B)タンパク質をSephacryl HR S300カラムにて6ml/時でゲル濾過クロマトグラフィーにより分画した。排除容量(Void volume)(Vo)をチログロブリン(669kDa)で決定し、ウシグロブリン(158kDa)、ニワトリオボアルブミン(44kDa)、ウマミオグロビン(17kDa)およびビタミンB12(1.3kDa)の溶出位置を矢印で示す。タンパク質濃度は280nmでモニタリングした(●)。フィブリノゲン結合活性(■)を材料および方法に記載されるようにビオチン化フィブリノゲンで決定した。水平の線F2、F2.2は、フィブリノゲン結合活性を含むプール画分を示す。(C)タンパク質は10%SDS−PAGEにより分離し、クーマシーブルー染色により検出した。(D)電気泳動分離の後、タンパク質をニトロセルロース膜に転写し、フィブリノゲン結合活性をビオチン化フィブリノゲンで検出した。レーン1a/bは、それぞれ非染色およびビオチン化分子量マーカーを含む。レーン2:アクネ菌表面リチウム全タンパク質抽出物(10μg)。レーン3:濃縮表面タンパク質抽出物(10μg)。レーン4および5:それぞれ10μgのプールF2およびF2.2画分。 図5:アクネ菌表面タンパク質とフィブリノゲンの結合。(A)4℃で18時間、種々の量のヒトフィブリノゲン(hFg)およびウシフィブリノゲン(bFg)を96ウェルポリスチレンプレートに固定化し、23℃で2時間、0.1μg/mlのビオチン化Pfgとともにインキュベートした。ウシ血清アルブミン(BSA)を陰性対照として使用した。結合した材料を、HRP−ストレプトアビジン結合体を使用することにより検出した。ペルオキシダーゼ活性は、ABTS基質を使用することにより405nmで測定した。タンパク質(レーン当たり10μg)を10%SDS−PAGEにより分離し、(B)クーマシーブルー染色により検出し、ニトロセルロース膜に転写し、(C)HRP−ストレプトアビジン単独、および(D)ビオチン化Pfg(0.1μg/ml)とともにインキュベートした。レーン1:分子量標準。レーン2:BSA。レーン3:hFg。レーン4:bFg。 N−脱グリコシル化フィブリノゲンに対するPfg認識。精製ヒトフィブリノゲン(hFg)およびウシフィブリノゲン(bFg)に、材料および方法に記載されるようにN−グリコシダーゼF(PNGAse F)処理を施した。無処理(レーン2および4)および処理(レーン3および5)サンプル(レーン当たりタンパク質10μg)を10%SDS−PAGE上で分離した後、ニトロセルロース膜に転写した。(A)タンパク質はクーマシーブルー染色により検出した。(B)ビオチン化Pfg(0.1μg/ml)による結合活性。(C)ビオチン化RCA−Iレクチン結合活性を脱グリコシル化対照として使用した。レーン1:分子量標準。 O−脱グリコシル化フィブリノゲンに対するPfg認識。精製ヒトフィブリノゲンに、材料および方法に記載されるようにO−グリコシダーゼ処理を施した。無処理(レーン2)および処理(レーン3)サンプル(レーン当たりタンパク質10μg)を10%SDS−PAGE上で分離した後、ニトロセルロース膜に転写した。(A)タンパク質は、クーマシーブルー染色により検出した。(B)ビオチン化Pfg(0.1μg/ml)による結合活性。(C)ビオチン化ジャカリンレクチン結合活性を脱グリコシル化対照として使用した。レーン1aおよび1bは、分子量標準に相当する。 BβヒトフィブリノゲンフラグメントのクローニングおよびPfgによる結合。(A)組換えヒトBβフィブリノゲンフラグメントFg1、Fg2、Fg3およびFg4のクローニングおよび発現。フィブリノゲンフラグメントはRT−PCRにより得、発現プラスミドを材料および方法に記載されるように構築した。(B)GST融合タンパク質を大腸菌で発現させ、12.5%SDS−PAGEによって分画し、クーマシーブルー染色(B)により検出し、材料および方法に記載されるように、ビオチン化Pfg(0.1μg/ml)とともにインキュベートした(C)。 フィブリノゲン由来ペプチドによるフィブリノゲンへのビオチン化Pfgの結合の用量依存的阻害。ビオチン化PFg(0.4mg)を漸増量の組換えペプチドFg1(◆)、Fg2(n)または対照としてのBSA(●)で37℃にて1時間前処理し、ポリスチレンプレート上のコーティングフィブリノゲン(25μg/ウェル)に対する結合活性を評価した。結果を平均±SDとして表す。各点4反復で実施した。 Fg1およびFg2組換えペプチドで処理した後の細胞生存率の評価。ヒト不死化および初代ケラチノサイト細胞株HaCaTおよびNHDK;不死化単球細胞株ThP1、および不死化および初代線維芽細胞細胞株MRC5およびHDFを、0.22〜7mMの範囲の濃度のFg1およびFg2組換えペプチドとともに37℃で18時間インキュベートした。細胞生存率は、材料および方法に記載されるようにMTTアッセイを用いて評価した。 種々の細胞株に対するアクネ菌RON株の結合活性の用量依存性。ビオチン化アクネ菌RON株を600nmでの吸光度が0.01、0.1および0.5となるように調整した濃度で、37℃で1時間、ヒト不死化および初代ケラチノサイト細胞株HaCaTおよびNHDKとともに;不死化単球細胞株ThP1とともに、また、不死化および初代線維芽細胞細胞株MRC5およびHDFとともにインキュベートした。結合しなかった細菌を除去した後、接着活性を410nmで検出した。データは3回の独立した実験の平均±S.Dである。統計的有意性はそれぞれ(P<0.05)、**(P<0.01)、***(P<0.001)、および****(P<0.0001)で示す。 ケラチノサイトへのアクネ菌の結合の用量依存的阻害。ビオチン化アクネ菌6919株を600nmでの吸光度が0.1となるように調整した濃度で、0.01〜0.5mMの範囲の濃度の全ヒト(濃い灰色のバー)およびウシ(薄い灰色のバー)フィブリノゲンで前処理し、37℃で1時間、ヒトHaCaTケラチノサイト細胞株とともにインキュベートした。結合していない細菌を除去した後、接着活性を410nmで検出した。データは3回の独立した実験の平均±S.Dである。統計的有意性はそれぞれ(P<0.05)、**(P<0.01)、***(P<0.001)、および****(P<0.0001)で示す。 単球細胞株に対するアクネ菌RONの結合の用量依存的阻害。ビオチン化アクネ菌RON株を600nmでの吸光度が0.1となるように調整した濃度で、組換えペプチドFg1およびFg2で前処理し、37℃で1時間、ヒト不死化単球細胞株ThP1とともにインキュベートした。結合していない細菌を除去した後、接着活性を410nmで検出した。データは3回の独立した実験の平均±S.Dである。統計的有意性はそれぞれ(P<0.05)、**(P<0.01)、***(P<0.001)、および****(P<0.0001)で示す。 組換えペプチドで前処理したアクネ菌により刺激されたケラチノサイトによるO ・−生産の用量依存的阻害。HaCaT細胞を18時間、600nmでの吸光度が0.2となるように調整した濃度のアクネ菌PIE株とともに(青色のバー)、また、組換えペプチドFg1(薄い灰色のバー)およびFg2(濃い灰色のバー)で前処理したアクネ菌とともにインキュベートした。スーパーオキシドアニオン生産の測定は、材料および方法に記載されるように分光蛍光測定法により実施した。対照実験は無刺激HaCaT細胞(赤色のバー)で行った。データは3回の独立した実験の平均±S.Dである。統計的有意性はそれぞれ(P<0.05)、**(P<0.01)、***(P<0.001)、および****(P<0.0001)で示す。 組換えペプチドで前処理したアクネ菌により刺激された線維芽細胞によるIL−8生産の用量依存的阻害。MRC5細胞を18時間、600nmでの吸光度が0.2となるように調整した濃度のアクネ菌RON株(青色のバー)とともに、また、組換えペプチドFg1(薄い灰色のバー)およびFg2(濃い灰色のバー)で前処理したアクネ菌とともにインキュベートした。IL−8生産は、材料および方法に記載されるようにELISAにより測定した。対照実験は無刺激HaCaT細胞(赤色のバー)で行った。データは3回の独立した実験の平均±S.Dである。統計的有意性はそれぞれ(P<0.05)、**(P<0.01)、***(P<0.001)、および****(P<0.0001)で示す。 ケラチノサイトに対する小Fg1生成ペプチド処理後の細胞生存率の評価。HaCaT細胞を24時間、2.5〜20μMの範囲の濃度の小ペプチドFg1.1(薄い灰色のバー)、Fg1.2(水平線のバー)、Fg1.3(斜線のバー)、Fg1.4(濃い灰色のバー)、Fg1.5(ドットのバー)とともにインキュベートした。細胞傷害性の測定値は、材料および方法に記載されるようにMTTアッセイにより行った。対照実験は、PBSとともにインキュベートしたHaCaT細胞(生細胞に相当);および0.2%トリトンX100とともにインキュベートしたHaCaT細胞(死細胞に相当)で行った。データは3回の独立した実験の平均±S.Dである。 小Fg1生成ペプチドで前処理され、かつ、アクネ菌で刺激された線維芽細胞によるH生産の用量依存的阻害。MRC5細胞を2.5〜20μMの範囲の濃度の小ペプチドFg1.1(薄い灰色のバー)、Fg1.2(水平線のバー)、Fg1.3(斜線のバー)、Fg1.4(濃い灰色のバー)、Fg1.5(ドットのバー)とともに24時間インキュベートした。過酸化水素生産の測定は、材料および方法に記載されるように分光蛍光測定法により実施した。対照実験は無刺激MRC5細胞(白いバー)およびアクネ菌で刺激したMRC5(黒いバー)で行った。データは3回の独立した実験の平均±S.Dである。統計的有意性はそれぞれ(P<0.05)、**(P<0.01)、***(P<0.001)、および****(P<0.0001)で示す。 小Fg1生成ペプチドで前処理し、かつ、リポテイコ酸(LTA)で刺激したケラチノサイトによるH生産の用量依存的阻害。NHDK細胞を、24時間、1.75〜7μMの範囲の濃度の組換えペプチドFg1(薄い灰色のバー)およびFg2(濃い灰色のバー)とともにインキュベートした。過酸化水素生産の測定は、材料および方法に記載されるように分光蛍光測定法により実施した。対照実験は無刺激NHDK細胞(白いバー)および10μg/mlのLTAで刺激したHDF(黒いバー)で行った。データは3回の独立した実験の平均±S.Dである。統計的有意性はそれぞれ(P<0.05)、**(P<0.01)、***(P<0.001)、および****(P<0.0001)で示す。 小Fg1生成ペプチドで前処理し、かつ、ペプチドグリカン(PGN)で刺激したケラチノサイトによるIL−8生産の用量依存的阻害。NHDK細胞を、24時間、1.75〜7μMの範囲の温度の組換えペプチドFg1(薄い灰色のバー)およびFg2(濃い灰色のバー)とともにインキュベートした。IL−8生産の測定は、材料および方法に記載されるようにELISAにより実施した。対照実験は無刺激NHDK細胞(白いバー)および10μg/mlのPGNで刺激したHDF(黒いバー)で行った。データは3回の独立した実験の平均±S.Dである。統計的有意性はそれぞれ(P<0.05)、**(P<0.01)、***(P<0.001)、および****(P<0.0001)で示す。 ケラチノサイトに対する小Fg1.1生成ペプチド処理後の細胞生存率の評価。HaCaT細胞を、24時間、2.5〜20μMの範囲の濃度の小ペプチドFg1.1.1(薄い灰色のバー)、Fg1.1.2(水平線のバー)、Fg1.1.3(斜線のバー)、Fg1.1.4(濃い灰色のバー)、Fg1.1.6(ドットのバーとともにインキュベートした。細胞傷害性の測定は、材料および方法に記載されるようにMTTアッセイにより行った。対照実験はPBSとともにインキュベートしたHaCaT細胞(生細胞に相当)で、また、0.2%トリトンX100とともにインキュベートしたHaCaT細胞(死細胞に相当)で行った。データは3回の独立した実験の平均±S.Dである。 ケラチノサイトに対する、Fg1.1生成ペプチド溶液を調製するために使用したビヒクルで処理した後の細胞生存率の評価。HaCaT細胞を24時間、Fg1.1.1(薄い灰色のバー)、Fg1.1.2(水平線のバー)、Fg1.1.3(斜線のバー)、Fg1.1.4(濃い灰色のバー)、Fg1.1.6(ドットのバー)とともに使用される条件に相当するビヒクル希釈溶液とともにインキュベートした。細胞傷害性の測定は、材料および方法に記載されるようにMTTアッセイにより行った。対照実験はPBSとともにインキュベートしたHaCaT細胞(生細胞に相当)で、また、0.2%トリトンX100とともにインキュベートしたHaCaT細胞(死細胞に相当)で行った。データは3回の独立した実験の平均±S.Dである。 小Fg1.1生成ペプチドで前処理したアクネ菌により刺激されたケラチノサイトによるIL−8生産の用量依存的阻害。HaCaT細胞を、24時間、2.5〜20μMの範囲の濃度の小ペプチドFg1.1.1(薄い灰色のバー)、Fg1.1.2(水平線のバー)、Fg1.1.3(斜線のバー)、Fg1.1.4(濃い灰色のバー)、Fg1.1.6(ドットのバー)とともにインキュベートした。IL−8生産の測定は、材料および方法に記載されるようにELISAにより実施した。対照実験は無刺激HaCaT細胞(白いバー)およびアクネ菌で刺激したHaCaT(黒いバー)で行った。データは3回の独立した実験の平均±S.Dである。統計的有意性はそれぞれ(P<0.05)、**(P<0.01)、***(P<0.001)、および****(P<0.0001)で示す。 小Fg1.1生成ペプチドで前処理され、かつ、アクネ菌で刺激された線維芽細胞によるIL−8生産の用量依存的阻害。MCR5細胞は、24時間、2.5〜20μMの範囲の濃度の小ペプチドFg1.1.1(薄い灰色のバー)、Fg1.1.2(水平線のバー)、Fg1.1.3(斜線のバー)、Fg1.1.4(濃い灰色のバー)、Fg1.1.6(ドットのバー)とともにインキュベートした。IL−8生産の測定は材料および方法に記載されるようにELISAにより実施した。対照実験は無刺激MCR5細胞(白いバー)およびアクネ菌で刺激したMCR5(黒いバー)で行った。データは3回の独立した実験の平均±S.Dである。統計的有意性はそれぞれ(P<0.05)、**(P<0.01)、***(P<0.001)、および****(P<0.0001)で示す。 イン・ビボにおけるアクネ菌により誘導される炎症に対する5%Fg1.1.1ペプチドゲルの効果。マウスの耳の皮内にアクネ菌(OD620nm=1.0 PBS中2.10CFU/20μlに相当)を注射し、炎症を誘導した。次に、5%Fg1.1.1ペプチドゲルをマウスの耳の皮膚表面に3日間毎日塗布した(矢印)。耳の厚さ、落屑および発赤に相当するスコアを96時間、毎日測定した。データは8回の個々の実験の平均±S.Dである。PBSは、PBSを注射した無処置群に相当する。PA+ビヒクルTOPICは、耳へのアクネ菌注射とワセリン単独処置に相当する。PA+ペプチドTOPICは、耳へのアクネ菌注射とワセリンに5%Fg1.1.1ペプチドを混合したものによる処置に相当する。統計的有意性はそれぞれ(P<0.05)、**(P<0.01)、***(P<0.001)、および****(P<0.0001)で示す。 アクネ菌をFg1.1.1で前処理した場合のイン・ビボにおけるアクネ菌により誘導される炎症に対するFg1.1.1ペプチドの効果。アクネ菌株(OD620nm=1.5)を37℃で1時間、Fg1.1.1ペプチド(140μM)(PA+ペプチドINJECT)またはビヒクル(PBS中最終1%DMSO)(PA+ビヒクルINJECT)で前処理した後、マウスの耳の皮内に注射し(およそ2.0CFU/20μl)、炎症を誘導した。対照群にはPBS単独を注射した。耳の厚さ、落屑および発赤に相当するスコアを96時間、毎日測定した。データは8回の個々の実験の平均±S.Dである。統計的有意性はそれぞれ(P<0.05)、**(P<0.01)、***(P<0.001)、および****(P<0.0001)で示す。 マウスにおけるアクネ菌により誘導される炎症に対するFg1.1.1ペプチドの皮内注射および局所塗布の効果。(1)耳にPBS単独を注射した。(2)アクネ菌刺激(PBS中2.10CFU/20μl)の96時間後。(3)最終1%DMSOと混合したアクネ菌の96時間後。(4)ワセリン局所塗布を伴うアクネ菌刺激の96時間後。(5)Fg1.1.1ペプチドと混合したアクネ菌の96時間後。(6)Fg1.1.1ペプチド局所塗布を伴うアクネ菌刺激の96時間後。 マウス耳の組織病理学的分析。(1)耳にPBS単独を注射した。(2)アクネ菌刺激(PBS中2.10CFU/20μl)96時間後の耳の腫脹および浸潤炎症性細胞。(3および4)耳の腫脹およびほとんどの浸潤炎症性細胞はそれぞれビヒクル注射および塗布によって変化しなかった。(5および6)耳の腫脹および浸潤炎症性細胞はそれぞれFg1.1.1ペプチド注射および局所塗布により軽減された。データは、同様の結果の8回の個々の実験の代表的なものである。 マウスにおけるアクネ菌により誘導されるリンパ球活性化に対するFg1.1.1ペプチドの皮内注射および局所塗布効果。(A)マウスの耳の皮内にアクネ菌(OD620nm=1.0 PBS中2.10CFU/20μlに相当)を注射し、炎症を誘導した。次に、5%Fg1.1.1ペプチドゲルをマウスの耳の皮膚表面に3日間毎日塗布した(矢印)。PA+ビヒクルTOPICは、耳へのアクネ菌注射とワセリン単独処置に相当する。PA+ペプチドTOPICは、耳へのアクネ菌注射とワセリンに5%Fg1.1.1ペプチドを混合したものによる処置に相当する。PBSは、PBSを注射した無処置群に相当する。(B)アクネ菌株(OD620nm=1.5)を37℃で1時間、Fg1.1.1ペプチド(140μM)(PA+ペプチドINJECT)またはビヒクル(PBS中最終1%DMSO)(PA+ビヒクルINJECT)で前処理した後、マウスの耳の皮内に注射し(およそ2.0CFU/20μl)、炎症を誘導した。対照群にはPBS単独を注射した。感染後96時間に、マウスを安楽死させ、耳の神経節を摘出し、抗CD3抗体および抗CD28抗体の存在下で72時間増殖させた後、それらの増殖能を試験した。増殖測定はUptiblue試薬を用いて行った。データは8回の個々の実験の平均±S.Dである。統計的有意性はそれぞれ(P<0.05)、**(P<0.01)、***(P<0.001)、および****(P<0.0001)で示す。 Fg1またはFg1.1.1ペプチドで前処理したアクネ菌で刺激されたケラチノサイトによるIL−8生産の用量依存的阻害。HaCaT細胞を、2.5〜10μMの範囲の濃度のFg1ペプチド(薄い灰色のバー)およびFg1.1.1ペプチド(濃い灰色のバー)で37℃にて1時間前処理したアクネ菌とともに37℃で24時間インキュベートした。対照実験は、無刺激HaCaT細胞(細胞単独)および非前処理アクネ菌で刺激したHaCaT細胞(細胞+PA)で行った。IL−8生産の測定は、材料および方法に記載されるようにELISAにより実施した。データは3回の独立した実験の平均±S.Dである。 Il−17、OSMおよびTNF−αで刺激されたケラチノサイトによるIl−8生産の阻害。NHEK細胞をIl−17、OSMおよびTNF−α(各3ng/ml)の組合せで刺激し、10μMのJAK阻害剤(陽性対照)または1.52〜12.2μMの範囲の濃度のFg1.1.1で48時間処理した。材料および方法に記載されるように、IL−8生産の測定はELISAにより実施し、細胞傷害性はMTTアッセイにより決定した。対照実験は無処理かつ無刺激のNHEK細胞(細胞単独)およびIl−17、OSMおよびTNF−αの組合せで刺激した無処理NHEKで行った。データは3回の個々の実験の平均±S.Dである。統計的有意性はそれぞれ(P<0.05)、**(P<0.01)、および***(P<0.001)で示す。 Il−17、OSMおよびTNF−αで刺激されたケラチノサイトによるhBD−2生産の阻害。NHEK細胞をIl−17、OSMおよびTNF−α(各5ng/ml)の組合せで刺激し、10μMのJAK阻害剤(陽性対照)または1.52〜12.2μMの範囲の濃度のFg1.1.1で72時間処理した。材料および方法に記載されるように、hBD−2生産の測定はELISAにより実施し、細胞傷害性はMTTアッセイにより決定した。対照実験は無処理かつ無刺激のNHEK細胞(細胞単独)およびIl−17、OSMおよびTNF−αの組合せで刺激した無処理NHEKで行った。データは3回の個々の実験の平均±S.Dである。統計的有意性はそれぞれ(P<0.05)、**(P<0.01)、および***(P<0.001)で示す。
定義
別の定義がされない限り、本明細書に使用される総ての技術用語および科学用語は、本発明が属する技術分野の熟練者により共通に理解されているものと同じ意味を有する。
本明細書において、用語「ポリペプチド」は、ペプチド結合により連結されたアミノ酸の直鎖ポリマーを意味する。タンパク質は大きなポリペプチドであり、この2つの用語は一般に互換的に使用される。
本明細書において、互換的に使用される用語「核酸」、「核配列」、「核酸配列」、「ポリヌクレオチド」、「オリゴヌクレオチド」、「ポリヌクレオチド配列」および「ヌクレオチド配列」は、非天然ヌクレオチドを含有するまたは含有しない、二本鎖DNA、一本鎖DNAまたは前記DNAの転写産物のいずれかである、フラグメントまたは核酸の一領域を定義する、修飾型または非修飾型のヌクレオチドの正確な配列を意味する。
これにはまた、本発明はそれらの天然染色体環境にある、すなわち天然状態にあるヌクレオチド配列またはアミノ酸配列に関するものではないことが含まれるべきである。本発明の配列は単離および/または精製されており、すなわち、それらは例えばコピーにより直接または間接的にサンプル採取されたものであり、それらの環境は少なくとも部分的に改変されている。組換え遺伝学により、例えば宿主細胞の手段により得られる、または化学合成により得られる単離された核酸またはアミノ酸配列もここに述べられるべきである。
本明細書において、用語「細菌株」または「株」は、何らかの微細ではあるが識別可能な違いにより同じ種の他の細菌とは異なる、細菌種のサブセットを意味する。例えば、本発明によれば、アクネ菌株は、アクネ菌6919株、RON株および/またはPIE株であり得る。
本出願において、用語「フラグメント」は、配列、好ましくは、アミノ酸配列の一部を意味する。
本明細書において、用語「フィブリノゲン」または「Fg」は、ジスルフィド結合により互いに連結された3つの異なる鎖(Aα、Bβ、およびγ)の2組を含有するヘキサマーである、血餅の形成に関与する糖タンパク質を意味する。これらの3つの鎖のN末端セクションは、鎖の架橋に関与するシステインを含む。Aα、Bβおよびγ鎖のC末端部分は、分子認識単位として機能し得る、約225アミノ酸残基のドメインを含む。このドメインはタンパク質間相互作用に関連付けられている。
本明細書において、用語「座瘡」(acne)または「尋常性座瘡」(acne vulgaris)は、ホルモン機構、免疫機構および微生物学的機構を含む多因子性の病因を有する一般的な障害を意味する。この疾患は、毛包脂腺嚢に局在し、炎症性と非炎症性の両方の臨床病巣をもたらす。ほとんどの患者は非炎症性の面皰と炎症性の丘疹、膿疱および小結節の混合物を有する。座瘡形成に関与する主要な因子のうちの1つは、脂腺の微生物定着である。数系統のエビデンスがプロピオニバクテリウム・アクネス(アクネ菌)の座瘡および整形外科的感染における病原体としての重要な役割を含意している(Antti−poika 1990)。
本発明による治療的使用のための単離されたポリペプチド
多くの病原性細菌に関して、宿主細胞の侵襲は、特異的リガンドを認識する細菌表面タンパク質またはアドヘシンにより媒介される。ブドウ球菌および連鎖球菌属などの皮膚関連細菌は、宿主細胞外マトリックス成分(ECM)と特異的に結合してそれらの標的細胞への接着を促進し、続いて定着および感染を誘発する、MSCRAMM(microbial surface components recognizing adhesive matrix molecules)と呼ばれる多数の細胞表面アドヘシンを発現する(Patti 1994)。宿主ECM成分は、多くの病原体が組織への定着および感染の開始のために用いている理想的な微生物接着標的である。
よって、本発明において、本発明者らは、まず、アクネ菌表面タンパク質とECM成分の相互作用を検討した。直接的結合アッセイを用い、本発明者らは、58kDaの糖タンパク質がヒトフィブリノゲンにより特異的に認識されることを初めて実証した。このタンパク質はPfgと命名された。エンドグリコシダーゼ消化試験では、Pfgとフィブリノゲンの間の相互作用はヒトフィブリノゲンの非グリコシル化部分を含んでいることが示された。さらなる実験で、フィブリノゲンのN末端部分はPfgにより認識され、フィブリノゲンへのPfgの結合を阻害し得ることが実証された。
フィブリノゲン、特に、そのサブユニットBβのこの特性は、細菌タンパク質のそれらの宿主への接着を阻害するために、療法に使用可能である。
よって、1つの側面において、本発明は、薬剤として使用するための、最適なグローバルアラインメントの後に配列番号1と少なくとも80%の同一性を有するアミノ酸配列を含んでなる、単離されたポリペプチド、または、最適なグローバルアラインメントの後に配列番号2、5および7〜13および47のいずれか1つと少なくとも80%の同一性を有するアミノ酸配列を含んでなる、そのフラグメントに関する。
配列番号1は、ヒトフィブリノゲンのサブユニットBβに相当し、配列番号2、5および7〜13および47はこの配列のフラグメントに相当する。
フィブリノゲンのBβ鎖はFGB遺伝子によりコードされ、この遺伝子は、ヒトおよび同様の血液凝固システムを持つほとんどの他の脊椎動物に見られる遺伝子である。アミノ酸配列は、約450アミノ酸の長さである。
1つの態様によれば、本発明の治療的使用のためのポリペプチドは、最適なグローバルアラインメントの後に配列番号1と少なくとも80%、少なくとも85%、好ましくは、少なくとも90%、少なくとも95%、より好ましくは、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%または少なくとも99%の同一性を有するアミノ酸配列、または最適なグローバルアラインメントの後に配列番号2、5および7〜13および47と少なくとも80%、少なくとも85%、好ましくは、少なくとも90%、少なくとも95%、より好ましくは、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%または少なくとも99%の同一性を有するアミノ酸配列を含んでなる。
別の態様では、本発明による治療的使用のための単離されたポリペプチドは、配列番号2、5および7〜13および47、または最適なグローバルアラインメントの後に配列番号2、5および7〜13および47の1つと少なくとも少なくとも80%、少なくとも85%、好ましくは、少なくとも90%、少なくとも95%、より好ましくは、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%または少なくとも99%の同一性を有するポリペプチドから選択される。
配列番号13および配列番号47は、106個のアミノ酸を有し、Fg1と呼称される、ヒトフィブリノゲンのBβ鎖の特定のフラグメントのアミノ酸配列に相当する。
本明細書で使用する場合、核酸またはアミノ酸の2つの配列間の「同一性パーセンテージ」は、最適なグローバルアラインメントの後に得られる比較する2配列間で同一のヌクレオチドまたはアミノ酸残基のパーセンテージを意味し、このパーセンテージは純粋に統計学的なものであり、2配列間の違いはその長さに沿ってランダムに分布している。2つの核酸またはアミノ酸配列の比較は、慣例的に、それらをその全長にわたって完全に最適にアラインした後に配列を比較することにより行われ、前記比較は、「Blosum 62」マトリックスで10.0に等しい「Gap open」パラメーター、0.5に等しい「Gap extend」パラメーターを用いるニードルソフトウエア(needle software)などの当業者に周知の任意のソフトウエアによって実行される。ニードルソフトウエアは、例えば、ウェブサイトebi.ac.uk worldwideから「Align」の名称で入手可能である。
次に、2つの核酸またはアミノ酸配列間の同一性パーセンテージをグローバルにかつ最適にアラインされた2つの配列を比較することによって決定するが、この場合、比較する核酸またはアミノ酸配列は、それら2配列間の最適なグローバルアラインメントのために参照配列に対して置換、付加または欠失を有することができる。同一性パーセンテージは、2配列間でアミノ酸またはヌクレオチドが同一の位置の数を求め、その同一の位置の数を最適なグローバルアラインメント内の位置の総数で割り、その商に100を掛けてその2配列間の同一性パーセンテージを得ることより計算される。ニードルソフトウエアなどの最適なグローバルアラインメントに好適なソフトウエアを使用する場合、比較する2配列間の同一性パーセンテージは、このソフトウエアにより直接計算される。
参照アミノ酸配列と少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、好ましくは、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、より好ましくは、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%または少なくとも99%の同一性を示すアミノ酸配列に関して、好ましい例として、参照配列における特定の改変、特に、少なくとも1個のアミノ酸の欠失、付加もしくは置換、末端切断または延長を含有するものが含まれる。1以上の保存的または非保存的アミノ酸の置換の場合、好ましい置換は、置換アミノ酸が「等価な」アミノ酸により置換されるものである。ここで、「等価なアミノ酸」という表現は、いずれのアミノ酸も対象ポリペプチドの生物活性を変更することなく構造アミノ酸のうちの1つで置換され得ることを示すものとし、特に、以下に定義される具体例が含まれる。
等価なアミノ酸は、それらが置換されるアミノ酸との構造的相同性において、または生成される可能性のある種々の抗体間での生物活性の比較試験の結果に基づいて決定することができる。
限定されない例として、以下の表1は、対象ポリペプチドの生物活性に有意な変更をもたらさずに実施され得る置換をまとめたものであり、同じ条件下で逆の置換も可能である。
Figure 0006840086
上記のようなポリペプチドおよびそれらのフラグメントは、本発明者らにより同定されたアクネ菌表面タンパク質(Pfg)を認識し、それと結合し、皮膚細胞へのアクネ菌の接着を阻害する。
本発明において、本発明者らは、ビオチン化リガンド結合アッセイを使用することにより、驚くべきことに、ヒトフィブリノゲンにより特異的に認識される58kDaのアクネ菌表面タンパク質(Pfg)を同定した。Pfgはさらに2D電気泳動およびMALDI−ToF分析により、そのC末端にLPXTGモチーフを含有する推定接着表面タンパク質として同定された。Pfgはほとんどが静置培養相で発現され、GalNAc残基を含み、高グリコシル化されているものと思われる。精製Pfgは、FgのAαおよびBβサブユニットを強く認識する。Fgの特定の酵素的脱グリコシル化は、そのタンパク質骨格が認識プロセスに関与していたことを示した。
本発明者らはまた、FgのBβサブユニットおよびそのフラグメントが接着タンパク質Pfgとその標的リガンド(Fg)または標的細胞(皮膚細胞)との相互作用を阻害できることも実証した。特に、上記のようなポリペプチドおよびそれらのフラグメントは、この相互作用と競合することができ、従って、宿主細胞への細菌の接着の防止に関与することができる。
この能力に加え、上記のようなポリペプチドおよびそれらのフラグメントは、薬物として、特に座瘡を治療および/または予防するために使用可能である。
本発明者らはまた、上記のようなポリペプチドおよびそれらのフラグメントは、アクネ菌の存在とは無関係に全般的な抗炎症特性を有することも見出し、よって、薬物として、特に、他の炎症性皮膚疾患、好ましくは、乾癬を治療および/または予防するために使用可能である。
本明細書で使用する場合、「炎症性皮膚疾患」は、皮膚掻痒および発赤を伴う偶発的発疹から、皮膚炎(湿疹)、酒さ、脂漏性皮膚炎、および乾癬などの慢性症状まで、多くの形態で現れる疾患である。皮膚炎症は急性または慢性として特徴付けることができる。急性炎症は、紫外線(UVR)、電磁放射線、アレルゲンへの暴露、または化学刺激物(ソープ、ヘアダイなど)との接触から生じ得る。このタイプの炎症は一般に、組織破壊をほとんど伴わずに1〜2週間内に消散する。これに対して、慢性炎症は、皮膚自体の内部の持続的な免疫細胞介在炎症性応答から生じる。この炎症は長期間持続し、重大かつ重篤な組織破壊を引き起こし得る。
本明細書で使用する場合、「乾癬」は、鱗状紅斑、丘疹、および斑を含む、通常は掻痒性の皮膚病巣を特徴とする一般的な慢性、再発/寛解性、免疫介在性の全身性疾患を意味する。乾癬に見られる皮膚病巣は、軽度の局在斑から全身を覆うまで重篤度が多様である。乾癬の5つの主要なタイプは、斑状、滴状、倒置、膿疱性、および紅皮性である。
本発明の特定のフラグメント
フィブリノゲンのサブユニットBβの配列から始め、本発明者らは、アクネ菌の接着タンパク質Pfgと結合することができ、従って、その標的タンパク質(フィブリノゲン)および宿主皮膚細胞へのアクネ菌の接着を阻害することができる特定のフラグメントを同定した。
よって、別の側面では、本発明は、最適なグローバルアラインメントの後に配列番号1と少なくとも80%の同一性を有するアミノ酸配列を含んでなるポリペプチドのフラグメントに関し、前記フラグメントは、最適なグローバルアラインメントの後に配列番号2、5および7〜13および47のいずれかと少なくとも80%の同一性を有するアミノ酸配列を含んでなる。
これらの特定のフラグメントを得るために、ヒトフィブリノゲンのサブユニットBβを同じ長さの4つのセグメント(Fg1、Fg2、Fg3およびFg4と呼称)に分割し、クローニングし、細菌ベクター内で生産した。フィブリノゲンのサブユニットBβおよびこれらのフラグメントのアミノ酸配列は以下の表2aに示す。
Figure 0006840086
試験後、フラグメントFg1、Fg2、Fg3およびFg4のうち活性なフラグメントはFg1であるものと思われる。
さらに、フラグメントFg1を、まず、およそ同じ長さ(それぞれ35、35および36アミノ酸)の3つの非オーバーラップフラグメント(表2bに示されるFg1.1、Fg1.2およびFg1.3)に分割し、その後、同じ30アミノ酸長で、フラグメントFg1.1、Fg1.2およびFg1.3とオーバーラップするもう2つのフラグメント(表2bに示されるFg1.4およびFg1.5)が得られるように、アミノ酸15個を各切断領域に付加した。
試験後、フラグメントFg1.1、Fg1.2、Fg1.3、Fg1.4およびFg1.5のうち活性なフラグメントはFg1.1およびFg1.4であるものと思われる。
フラグメントFg1.1を、さらに6つの別のフラグメント(表2bに示されるFg1.1.1、Fg1.1.2、Fg1.1.3、Fg1.1.4、Fg1.1.5およびFg1.1.6)に分割した。
Figure 0006840086
本発明のフラグメントを療法でのより効率的な使用に適合させて最小のコストでその合成を増進するため、本発明者らは長さを短縮したフラグメントを提供する。
よって、本発明の1つの態様によれば、これらのフラグメントは150個以下、130個以下、好ましくは110個以下のアミノ酸または90個以下のアミノ酸の長さを有する。
より好ましくは、本発明のフラグメントは、配列番号13および配列番号47(フラグメントFg1)に相当する106個のアミノ酸の長さを有する。
いっそうより好ましくは、本発明のフラグメントは、5〜50個の間、好ましくは5〜40個の間、より好ましくは5〜35個の間のアミノ酸を含む長さを有する。1つの態様によれば、本発明によるフラグメントは、25〜40個の間のアミノ酸、好ましくは30〜35個の間のアミノ酸を含む長さを有し得る。
別の態様によれば、本発明によるフラグメントは、5〜20個の間のアミノ酸、好ましくは5〜15個の間、より好ましくは5〜10個の間のアミノ酸を含む長さを有し得る。
好ましくは、本発明によるフラグメントは、配列番号2、5および7〜12、より好ましくは配列番号2および5に相当する配列を有する。
本発明による単離された核酸、ベクターおよび宿主細胞
別の側面において、本発明は、本発明によるフラグメントをコードする単離された核酸分子に関する。
核酸配列はまた、最適なグローバルアラインメントの後に好ましい配列と少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、好ましくは、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、より好ましくは、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%または少なくとも99%の同一性パーセンテージを示し得る。それは核配列が参照核配列に比べて特定の修飾、例えば、特に、欠失、末端切断、延長、キメラ融合および/または置換、特に、点状の(punctual)修飾を示すことを意味する。好ましくは、これらは参照配列と同じアミノ酸配列をコードする配列(これは遺伝コードの縮重に関連する)、または好ましくは高ストリンジェント条件下で参照配列と特異的にハイブリダイズし得る相補的配列である。
本発明はまた、本発明の核酸分子を含んでなるベクターを提供する。
用語「ベクター」は、本明細書で使用する場合、それが連結されている別の核酸を輸送できる核酸分子を意味するものとする。ベクターの1つのタイプは「プラスミド」ベクターであり、付加的DNAセグメントがライゲートされ得る環状二本鎖DNAループを意味する。ベクターのもう1つのタイプはウイルスベクターであり、付加的DNAセグメントがウイルスゲノムにライゲートされ得る。特定のベクターは、それらが導入される宿主細胞で自律的複製が可能である(例えば、細菌複製起点を有する細菌ベクターおよびエピソーム哺乳動物ベクター)。他のベクター(例えば、非エピソーム哺乳動物ベクター)は、宿主細胞へ導入時に宿主細胞のゲノムに組み込まれ得、それにより宿主ゲノムとともに複製される。
本発明によるベクターは、好ましくは、宿主細胞または対象内で本明細書に記載の任意の核酸分子の送達、増殖および/または発現を可能とするのに必要なエレメントもまた含む。特に、本発明によるベクターでは、本発明による核酸分子は、好ましくは、適当な調節配列に作動可能なように連結されている。本明細書で使用する場合、用語「調節エレメント」または「調節配列」は、核酸またはその誘導体(すなわち、mRNA)の複製、倍加、転写、スプライシング、翻訳、安定性および/または輸送を含め、所与の宿主細胞または対象内で核酸分子の発現を可能とする、寄与するまたは調節するいずれのエレメントも意味する。当業者には、調節配列の選択がベクター自体、宿主細胞または対象、所望の発現レベルなどの因子によって異なり得ることを認識するであろう。
本発明で使用されるこのような好適なプラスミドベクターの代表例としては、限定されるものではないが、原核生物ではpBSKベクター、pET、pDEST、pRSETベクター;酵母ではpYES;真核生物ではpDEST、pcDNAが挙げられる。
さらに、本発明の核酸分子およびこれらの分子を含んでなる本発明のベクターは、好適な宿主細胞の形質転換のために使用可能である。用語「宿主細胞」は、本明細書で使用する場合、本発明のポリペプチドまたはフラグメントを発現させるために組換え発現ベクターが導入された細胞を意味するものとする。このような用語は特定の対象細胞だけではなく、そのような細胞の後代も意味するものと理解されるべきである。続いての世代では突然変異または環境的影響のいずれかのためにある種の改変が起こり得るので、このような後代は実際には親細胞と同一でない場合があるが、本明細書で使用する「宿主細胞」という用語の範囲内になお含まれる。本発明に関して好適な宿主細胞の非限定例としては、大腸菌(特に、DH5α株)などの細菌細胞、酵母細胞(特に、サッカロミケス属cerevisiae)、哺乳動物細胞(特に、HeLa、CHO、3T3細胞株)が挙げられる。
形質転換は、細胞宿主にポリヌクレオチドを導入するためのいずれの既知の方法によって行ってもよい。このような方法は当業者に周知であり、デキストラン媒介形質転換、リン酸カルシウム沈殿法、ポリブレン媒介トランスフェクション、プロトプラスト融合、エレクトロポレーション、リポソームへのポリヌクレオチド封入、微粒子銃インジェクションおよび核へのDNAの直接的マイクロインジェクションが挙げられる。
宿主細胞は、2以上の核酸分子、または本発明のポリペプチドまたはフラグメントを発現するベクターを含む発現ベクターで同時トランスフェクトしてもよい。
医薬組成物、薬物および組合せ物
本発明者らは、本発明のフラグメント、好ましくは、配列番号2、5および7〜13および47に相当するアミノ酸配列を有するフラグメントがアクネ菌のPfg接着タンパク質を認識してそれと結合し、従って、その標的リガンド(フィブリノゲン)および宿主皮膚細胞へのアクネ菌接着を阻害することを実証した。
よって、別の側面において、本発明は、本発明によるフラグメント、単離された核酸分子、ベクターまたは宿主細胞から選択される少なくとも1つの化合物と薬学上許容可能なビヒクルとを含んでなる医薬組成物に関する。
本明細書で使用する場合、「薬学上許容可能なビヒクル」は、生理学上適合する溶媒、バッファー、塩溶液、分散媒、コーティング剤、抗菌剤および抗真菌剤、等張剤および吸収遅延剤などのいずれか、また総てを含む。担体のタイプは意図される投与経路に基づいて選択することができる。種々の態様では、担体は、静脈内、腹腔内、皮下、筋肉内、局所的、経皮的なまたは経口投与に好適である。薬学上許容可能な担体には、無菌水溶液または分散液および無菌注射溶液または分散液の即時調合製剤用の無菌散剤が含まれる。薬学上活性な物質のための媒体および剤の使用は当技術分野で周知である。静脈内注入のための典型的な医薬組成物は、250mlの無菌リンゲル溶液と100mgの本組合せを含有するように作製することができる。非経口的に投与可能な化合物を製造するための実際の方法は当業者に既知または自明であり、例えば、Remington's Pharmaceutical Science, 第17版, Mack Publishing Company, Easton, Pa. (1985)ならびにその第18版および第19版により詳細に記載されている。本組成物中の化合物は好ましくは、有効量で処方される。「有効量」は、炎症性皮膚障害、特に座瘡の予防または治療などの所望の結果を達成するために必要な用量で、必要な期間での有効な量を意味する。「治療上有効な量」は、特定の病態の治療経過に影響を与えるのに十分な量を意味する。治療上有効な量はまた、その剤の有毒または有害な作用に治療上有益な効果が上回るものである。
投与経路、投与計画および最適な剤形は、例えば、患者の齢、患者の健康状態の重篤性、その処置に対する患者の忍容性および受ける副作用など、患者に適切な処置を確立する際に一般に考慮される基準に従って決定され得ると理解される。
例えば、本発明によるフラグメント、単離された核酸分子、ベクターまたは宿主細胞は、本発明による医薬組成物中に0.1〜10%重量/重量(w/w)、好ましくは0.5〜2%w/w、より好ましくは0.5〜4%w/w、いっそうより好ましくは2〜6%w/wの範囲で存在してよい。
別の側面によれば、本発明は、薬剤として使用するための本発明による単離された核酸分子、ベクター、宿主細胞または医薬組成物に関する。
好ましい態様では、本発明による単離された核酸分子、ベクター、宿主細胞または医薬組成物は、座瘡の治療および/または予防において使用される。
本発明者らはまた、本発明による単離された核酸分子、ベクター、宿主細胞または医薬組成物は、他の炎症性疾患、好ましくは、乾癬の治療および/または予防においても使用可能であることを示した。
本発明によるフラグメント、単離された核酸分子、ベクター、宿主細胞または医薬組成物は、単独で使用してもよいし、またはそれらの治療効果を増進するために他の抗炎症剤と併用してもよい。
よって、別の側面において、本発明はまた、薬剤としての同時、個別または逐次使用のための、
本発明によるフラグメント、単離された核酸分子、ベクター、および宿主細胞から選択される少なくとも1つの化合物;および
好ましくは、乾癬および/または座瘡から選択される皮膚炎症性疾患、好ましくは座瘡の治療および/または予防のために使用される別の薬剤
を含んでなる、組合せ物に関する。
このような他の薬剤は、ドキシサイクリン、イソトレチノイン、トレチノイン、アダパレン、過酸化ベンゾイル、クリンダマイシンおよびエリスロマイシンからなる群から選択され得る。
材料および方法
細菌株および増殖条件
アクネ菌6919株は、アメリカン・タイプ・カルチャー・コレクション(マナサス、VA)から入手し、アクネ菌RONおよびPIEは、関節感染患者から単離した。総ての株を嫌気条件下、補強クロストリジウム液体および固体培地(RCM)(Difco Laboratories、デトロイト、MI)中で増殖させた。アクネ菌を細菌保存株からRCM寒天プレートに移し、GasPak(商標)EZ嫌気容器システム(Becton Dickinson & Co、Sparks MD、USA)を使用することにより、嫌気条件下で5日間インキュベートした。単一コロニーを100mlのRCMに移し、上記のように増殖させた。次に、細菌懸濁液を最終10%のグリセロールの存在下、−80℃で凍結保存した。この保存株は「スタートストック」と呼ばれ、総ての実験に使用した。通常培養では、100mlのRCMまたは0.1%Tween80を添加したRCM(RCM+T80)を使用し、細菌を37℃で5日後に、4℃で10分間、7,000×gで遠心分離することにより採取した。ペレットをプールし、約30mlの冷PBSで洗浄し、再び上記のように遠心分離した。最後に、細菌ペレットをPBS[1.5mM KHPO、2.7mM NaHPO.7HO、0.15M NaCl(pH7.4)]に懸濁させた(培養物容積から1:10)。細菌はまた、5%ヒツジ血液を補足したコロンビア寒天上でも、上記のように嫌気条件下、37℃で5〜8日間増殖させた。細菌をPBS中でばらばらにし(3mlのPBS/ペトリ皿)、表面タンパク質抽出に使用した。大量の培養物の場合、5日経過したアクネ菌のRCM培養物200mlを、予め37℃で平衡化した2リットルのRCMに対する接種物として使用した。嫌気条件を確保するために、培養物にNを10分間大量に流し、封止した。2時間ごとに、10mlの培養物を採取して600nmでの吸光度およびpHを測定し、上記のように培養物にNを流した。細菌を10分間、7,000×gで遠心分離し、ペレットをPBSに再懸濁させた。全表面タンパク質抽出物を以下のように得た。
全表面タンパク質の抽出
表面タンパク質をPBS単独で、または2%SDSの存在下、60℃で20分間もしくは1%LiClの存在下、45℃で2時間、加熱抽出した(Shen 1993)。4℃、20分間、16,000×gでの遠心分離により細菌を除去した。過剰なSDSおよびLiClはPBSに対する透析下で除去した。得られた溶液をアクネ菌加熱抽出物(PAHE)と呼び、濃縮のため、4℃、撹拌下で1時間、80%飽和での硫酸アンモニウム沈降を施した。沈澱したタンパク質を4℃、30分間、22,000×gでの遠心分離後に取り出した後、PBSに再懸濁させ、PBSに対して徹底的に透析した。このタンパク質溶液を濃縮アクネ菌加熱抽出物(cPAHE)と呼んだ。タンパク質濃度を、Peterson(Peterson 1983)により記載された、標品としてBSAを用いるローリー法により決定した。
ビオチン化
cPAHE、精製Pfgおよび市販のECMリガンドを、PBS中に1〜10mg/mlの濃度に調整し、4℃で一晩、[74mM四ホウ酸ナトリウム、60mMホウ酸(pH8.8)]に対して透析した。全アクネ菌を上記のようにPBS中に回収し、ペレットをホウ酸バッファーに再懸濁させた。この操作を2回繰り返した。タンパク質および全細菌を外的標識試薬スルホ−N−ヒドロキシスクシンイミド(NHS)−ビオチン(Sigma)を1mgのタンパク質に対して250μgのNHS−ビオチンの比率で用い、4℃で4時間、転倒撹拌しながらインキュベートした。反応を、1M NHClを加えることにより停止させた。余分なビオチン−NHSは、タンパク質溶液については4℃でPBSに対する透析によって、全細菌については遠心分離によって除去した。ビオチン化タンパク質調製物を−80℃で保存し、ビオチン化細菌を使用前に+4℃で保存した。ビオチン化細菌の調製物は調製後5日以内に使用した。
結合活性
アクネ菌とリガンドの間の相互作用を特性評価するために、本発明者らは、定量的および定性的アッセイでビオチン化分子を使用した。アッセイの第1セットでは、標識タンパク質としてECMリガンド(フィブリノゲン、コラーゲンI、IV、VIおよびVIII)をビオチンとともに使用した。アッセイの第2セットでは、アクネ菌表面タンパク質(総抽出物および精製Pfg)をビオチン化した。定量分析については、非標識タンパク質を50mM炭酸水素塩、pH9.6バッファーに希釈して0.01〜50μg/mlの範囲のタンパク質濃度とし、次に、4℃で一晩、96ウェルポリスチレンプレートに固定化した。これらのウェルを0.2mlの0.05%Tween20含有PBS(PBS−Tween)で3回すすいだ。ビオチン化タンパク質(PBS−Tween中0.01〜16μg/ml)をウェルに加え、室温で1時間インキュベートした。ウェルを0.2mlのPBS−Tweenで3回すすいだ。ストレプトアビジンにコンジュゲートしたペルオキシダーゼ(PBS−Tween中0.5μg/ml)を加え、室温で30分間インキュベートした。洗浄後、結合したペルオキシダーゼを、発色性ペルオキシダーゼ基質ABTSを用いて検出した。定性分析については、非標識タンパク質(1レーン当たり10〜75μg)をSDS−PAGEにより分離し、次に、従前に記載されているように(Towbin、1979)ニトロセルロース膜(孔径0.45μm)に転写した。その後、膜を5%BSA、0.05%Tween20を含有するPBS(PBTバッファー)中、4℃で一晩、飽和させた。結合活性は、20mlのビオチン化タンパク質(0.1μg/ml)含有PBTとともに室温にて2時間、膜をインキュベートした後、PBTで3回洗浄することにより検出した。結合したビオチン化タンパク質は、ストレプトアビジンにコンジュゲートしたペルオキシダーゼ(PBT中0.5μg/ml)とともに室温で1時間、膜をインキュベートすることにより検出した。洗浄後、結合したペルオキシダーゼ活性を、CoClおよびHの存在下で3,3’−ジアミノベンジジンを用いて検出した(HarlowおよびLane、1988)。
二次元電気泳動
13cm pH 10−3固定化pH勾配(IPGストリップ)(Amersham−Bioscience、スウェーデン)を、20℃で13時間、200μgのcPAHE由来タンパク質を含有したIEF溶液(8M尿素−2%CHAPS(wt/vol)−0.5%IPGバッファーpH4−7(vol/vol)−0.002%ブロモフェノールブルー)250μlで再水和物させた。等電点電気泳動は、Ettan IPGphorシステム(Amersham−Pharmacia、スウェーデン)を用い、20℃にて、1時間200V、1時間500V、30分8000V(勾配モード)、および3時間8000Vの4段階で行った。二次元に関しては、このIPGストリップを15分間、6M尿素−30%グリセロール(wt/vol)−0.05Mトリス−HCl−2%SDS(wt/vol)−0.002%ブロモフェノールブルー−100mM DTTの溶液中で、および15分間、6M尿素−30%グリセロール(wt/vol)−0.05Mトリス−HCl−2%SDS(wt/vol)−0.002%ブロモフェノールブルー−400mMヨードアセトアミド溶液中で揺動することにより平衡化した。次に、このIPGストリップを12%SDS−PAGEゲルに載せた。一般に、2つのゲルを70mAの一定電流で6時間、並行して泳動した。タンパク質を、グルタルアルデヒド工程を用いない銀染色によりゲル上で検出した。目的のスポットは、従前に記載されているようにBOAを用いて可視化した。銀染色されたゲルおよび膜を照合し、目的のスポットをゲルから切り出した。
マトリックス支援レーザー脱離イオン化(MALDI)−タイム・オブ・フライト(ToF)質量分析によるペプチドマスフィンガープリンティング
二次元タンパク質スポットのゲル内トリプシン消化を、50%(vol/vol)アセトニトリルを含有する25mM炭酸水素アンモニウムバッファー(pH8.0)中で行った後、真空乾燥させた(Jonsson 2001)。再水和を0.02g/lのシーケンシンググレードの改変ブタトリプシン(Promega、マディソン、ウィスコンシン州)を含有する50mM炭酸水素アンモニウムバッファー(pH8.0)で行い、37℃で18時間消化を行い、0.4%(vol/vol)トリフルオロ酢酸を加えることにより停止させた。回収したペプチド溶液をマトリックスフィルム上にスポットし、室温で乾燥させた。サンプル付着物を純水ですすいだ後、337nm Nレーザーを備えたMALDI質量分光光度計(Applied Biosystems、Voyager DE super STR)内に挿入した。高速蒸発マトリックスフィルムは、アセトン中、4−ヒドロキシ−α−シアノケイ皮酸(Sigma)の飽和溶液を使用することにより、従前に記載されているように(Vorm、1994)作製した。総てのスペクトルの内部質量較正は、ブタトリプシン自己消化ペプチドを用いることにより達成した。ペプチド質量はSWISS−PROTおよびGenpeptデータベースで検索した。
Pfgの精製
cPAHE(16ml中90mg)を室温にて10分間5,000×gで遠心分離し、不溶性の材料を除去し、バッファーA[25mMトリス(pH8.0)]で平衡化したUNOsphereQ陰イオン交換カラム(2.5×10cm)(BioRad)にて流速24ml/時で実施するイオン交換クロマトグラフィーにより分画した。非結合タンパク質をバッファーA(24ml)で洗浄し、結合したタンパク質を、バッファーA+2M NaClを用い、0〜160(28ml)、160〜200mM(40ml)で段階的に溶出させた。Fg結合活性を含有する画分(1.5ml)をプールし、4℃で、バッファー0.1 M NHHCO、pH8.0に対して徹底的に透析することにより脱塩し、凍結乾燥させた。Pfgの最終精製は、0.1M NHHCO、pH8.0で平衡化したSephacryl S−300 HRカラム(1×120cm)(GE Healthcare)に、3mgのタンパク質を5mlの容量でロードすることにより、流速6ml/時(1.5ml/画分)にて24時間行った。Fg結合活性を含有する画分(1.5ml)をプールし、−20℃で保存した。
フィブリノゲンの脱グリコシル化
フィブリノゲンのどの部分がアクネ菌表面タンパク質により認識されるのか評価するために、タンパク質骨格の完全性を保持するためのグリカン部分を酵素的に除去した。フィブリノゲンはN結合およびO結合両方のグリカンを含有する糖タンパク質であることが示されているので(Debeire 1985;Reid Townsend 1982;L’Hote 1996)、グリカンを除去するためのエンドグリコシダーゼ、N−グリカナーゼおよびO−グリカナーゼを使用した。使用した酵素および試薬は総てProZyme(Prozyme、サンリアンドロ、カリフォルニア州)から購入した。精製市販ヒトおよびウシFg(100μg;Sigma)を、[0.4%SDS、200mM β−メルカプトエタノール、50mMリン酸ナトリウム(pH7.0)]を含有するバッファー中、5分間100℃で変性させ、室温で冷却した後、3%NP−40を加えた。N結合グリカンを除去するため、大腸菌(Escherichia coli)中のフラボバクテリウム・メニンゴセプチカム(Flavobacterium meningosepticum)リコンビナントPNGase F(N−グリカナーゼ)0.5Uを加え、37℃で24時間インキュベートした(最終容量50μl)。O結合グリカンを除去するため、Galβ(1−3)GalNAcコアだけがタンパク質と結合した状態で残るまで単糖類が除去されなければならないので、まず、変性ヒトフィブリノゲンを0.25Uのコレラ菌シアリダーゼA、ウシ精巣β−ガラクトシダーゼ、およびジャックビーンミールβ−N−アセチル−グルコサミニダーゼの存在下、37℃で3時間インキュベートした。次に、大腸菌中の肺炎連鎖球菌リコンビナント エンド−α−N−アセチル−ガラクトサミニダーゼ(O−グリカナーゼ)0.5Uを加え、37℃で24時間インキュベートした。酵素反応は、サンプルに電気泳動サンプルバッファーを加え、100℃で3分間変性させることにより停止させた。次に、N−およびO−脱グリコシル化Fgを、ビオチン化Pfgとの結合能に関して上記の結合アッセイを用いて試験した。脱グリコシル化反応は、クーマシーブルー染色の後のSDS−PAGE上で、脱グリコシル化前と後のフィブリノゲンの移動度のシフトによりモニタリングした。モニタリングはまた、下記のようにRCA−Iおよびジャカリン植物レクチンを用いることでも行った。
プラスミドの構築
ヒトフィブリノゲンのBβ−サブユニットのフラグメントは、10%ウシ胎仔血清を添加したダルベッコの改変培地で培養したヒト肝細胞腫細胞株Hep−G2から抽出した全RNAからRT−PCRにより得た。簡単に述べれば、全RNAをTRIzol試薬(Invitrogen Ltd、ペイズリー、UK)を製造者の説明書に従って用いて単離し、DNアーゼI(Roche Molecular Biochemical)で処理した。RNA濃度をサンプルのA260値により決定した。相補的DNAを2μg全RNAからオリゴ(dT)プライマーおよび200Uのスーパースクリプト(商標)II逆転写酵素(Invitrogen Ltd.、ペイズリー、UK)を用いて作製し、その後、標準的PCR反応の鋳型として使用した。0.5UのハイフィデリティPlatinum(登録商標)Pfx DNAポリメラーゼ(Invitrogen Ltd.、ペイズリー、UK)を用い、最終容量25μlで、94℃15秒、50℃30秒および68℃45秒に設定した合計35サイクルのサイクル条件により標準的増幅を行った。プライマーは、フィブリノゲンcDNAの318、441、462および462bpフラグメントを増幅した。
次のような特定のプライマー対を使用した。
Figure 0006840086
EcoRIおよびXhoIの制限部位をセンスプライマーおよびアンチセンスプライマーそれぞれに付加した。フィブリノゲンPCRフラグメントを精製し、まず、pBSKベクターに挿入した。EcoRI/XhoIでフラグメントを消化した後、これらのフラグメントをEcoRIおよびXhoIで消化したpGEX−4T−2に挿入した。
GST融合タンパク質の発現および精製
大腸菌BL21DE3pLys株を種々のGST−フィブリノゲン−フラグメント融合タンパク質を生産するために使用した。細菌を100μg/mlのアンピシリンおよび40μg/mlのクロラムフェニコールを添加したLB培地(10ml)で一晩増殖させ、1lのLB培地への播種に使用した。30℃でインキュベートした培養物がOD650=0.7に達した際に、0.5mMイソプロピルα−D−チオガラクトシド(IPTG)を加えることによりタンパク質発現を誘導し、培養物をさらに4時間拡大増殖させた。培養物を5000×gで10分間の遠心分離により採取した。ペレットをPBSで1回洗浄し、溶解バッファーTEN−T(20mMトリスHCl pH:7.5、EDTA 0.5mM、NaCl 150mM、トリトンX−100 1%)に再懸濁させ、氷上バーストにより30秒音波処理を施し、DTT 2mM、N−ラウリルサルコシン1.5%を添加した。この溶解液を20分、20000×gで遠心分離し、上清を廃棄した。GST融合タンパク質を含有する不溶性のペレット画分をTEN−Tバッファー+8M尿素に溶かし、この溶液を20分、20,000×gでの遠心分離により明澄化した。可溶化したタンパク質をProtino GST/4Bカラム(Macherey&Nagel)にロードし、バッファー50mMトリス、10mMグルタチオン、pH8.0を用いて溶出させた。組換えペプチドを含有する画分(ドデシル硫酸ナトリウム−ポリアクリルアミドゲル電気泳動により決定)をプールした。最初の工程で、利用の直前に上清をPBSに対して透析し、尿素を除去した。
細胞培養および刺激
不死化ヒトケラチノサイト細胞株HaCaT、線維芽細胞MRC5は、1mMピルビン酸ナトリウムを含むダルベッコの改変イーグル培地−グルタマックス−I(DMEM)で増殖させた。不死化ヒト単球細胞株ThP1は、ロズウェルパーク記念研究所1640培地−グルタマックス−I(RPMI)で増殖させた。記載のように(Life Technologie)、37℃、5%COを含有する加湿雰囲気下、DMEMおよびRPMIには、0.1%および10%熱失活ウシ胎仔血清(Invitrogen)、および抗生剤/抗真菌剤溶液(10U/mlペニシリン、10μg/mlストレプトマイシン、0.25μg/mlアムホテリン)を添加した。初代ヒトケラチノサイト(NHDK)および線維芽細胞(HDF)をKGM−GoldおよびFGM−2 Bulletキットで、製造者(Lonza)によりそれぞれ記載されているように増殖させた。不死化細胞株に、マイコプラズマ感染症の不在を評価するために慣例の検査をした。
アクネ菌による刺激実験については、細胞を、0.87、1.75、3.5または7μMの濃度のフィブリノゲン組換えペプチドFg1およびFg2で37℃にて1時間前処理した、または前処理しなかったアクネ菌懸濁液を適当な濃度に調整したものとともに、5%CO中、37℃にて所望の時間インキュベートした。
LTA(リポテイコ酸)、PGN(ペプチドグリカン)またはLPS(リポ多糖)による刺激実験については、細胞を7、3.5または1.75μMの濃度のフィブリノゲン組換えペプチドFg1およびFg2で5%CO中、37℃にて24時間前処理し、または前処理せず、次に、終濃度10μg/mlのLTAまたはPGNまたはLPSで37℃にて18時間刺激した。
イン・ビトロ乾癬モデルを用いる実験については、皮膚初代ヒトケラチノサイト(NHDK)を培養培地で24時間増殖させた。次に、細胞を1.52、3.05、6.1および12.2μMの濃度のペプチドFg1.1.1または参照(10μMのJAK阻害剤I;陽性対照)により処理し、または処理せず(陰性対照)、2または24時間プレインキュベートした。このプレインキュベーションの後、培地を除去し、1.52、3.05、6.1および12.2μMの濃度のFg1.1.1または10μMの濃度のJAK阻害剤および炎症誘発性混合物(IL−17+OSM+TNF−αの組合せ、各3または5ng/ml)を含有するまたは含有しない培養培地に置き換え、細胞を48または72時間インキュベートした。
接着アッセイ
細菌懸濁液を600nmで所望の濃度に調整し、0.87〜7μMの範囲の終濃度のペプチドFg1およびFg2で37℃にて1時間前処理し、2時間、PBS SVF2%の溶液で予め飽和させたセルに付着させた。37℃で1時間のインキュベーションの後、結合していない細菌をPBSで3回洗浄することにより除去し、固定された細菌を0.5μg/mlのストレプトアビジン−ペルオキシダーゼ溶液により30分間検出する。3回の 洗浄の後、検出された細菌を基質ABTS(2,2’−アジノビス[3−エチルベンズチアゾリン−6−スルホン酸]−ジアンモニウム塩)により30分間現像し、410nmで読み取る。
分光光度蛍光分析によるROS生産の測定
総ての細胞株(5.10〜10細胞/ウェル)を96ウェルプレート(Corning Costar、ブリュトマ、フランス)に播種し、従前に記載されているように処理した。刺激後、細胞をPBSで3回洗浄し、100μl/ウェルの5μM DHE(O ・−の決定のため)または5μM H−DCFDA(Hの決定のため)とともに30分間、従前に記載されているようにインキュベートし、蛍光強度を5時間にわたり、1時間毎に記録した。蛍光励起/発光極大はDHE:480/610nmおよびH−DCFDA:507/525nmであった。実験の終了時に、接着細胞の数を下記のようにクリスタルバイオレットアッセイにより評価した。O ・−、およびHは、Fusion分光蛍光計(PackardBell、パリ、フランス)での分光光度蛍光測定法によりアッセイした。ROSのレベルを以下のように各サンプルで計算し、任意単位(A.U.)として表した:反応性酸素種率(任意単位/分/10細胞)=(T5hでの蛍光強度[任意単位]−Toでの蛍光強度[任意単位]/300分/クリスタルバイオレットアッセイにより測定された接着細胞の数。
細胞生存率アッセイ
96ウェルプレートにて接着細胞の数を決定するためにクリスタルバイオレット染色を使用した。簡単に述べれば、試験化合物とともにインキュベートした後、培養培地を廃棄し、細胞を0.05%クリスタルバイオレット溶液(Sigma)とともに室温で30分間インキュベートした。PBSで洗浄後、100%メタノールを加え、吸光度をELISAマルチウェルリーダーにて540nmで分光光度測定法により測定した。96ウェルプレートにて細胞生存率を試験するためにMTT(1−(4,5−ジメチルチアゾール−2−イル)−3,5−ジフェニルホルマザン)アッセイを行った。細胞を細胞培養培地中0.2%MTT溶液とともに37℃で4時間インキュベートした。次に、MTT溶液を廃棄し、DMSOを加えて、生細胞で産生されるMTT−ホルマザン結晶を可溶化した。十分に混合した後、540nmで吸光度を測定した。
ELISA
ヒトIL−1β、IL−8、IL−12、hBD−2、およびTNF−αタンパク質濃度は、刺激した細胞の上清において、種々のELISAセットキット(座瘡試験用にはeBioscienceからのReady−Set−Goキット、乾癬試験用にはR&D SystemsからのDuoセットIL−8キットおよびPeprotechからのBD−2 Human Development(hBD−2))を製造者の説明書に従って使用して測定した。本発明者らは、標準曲線のために組換えヒトIL−1β、IL−8、IL−12およびTNF−αの連続希釈液を使用した。540nmの波長補正で450nmにて光学密度を決定した。
統計分析
試験群からのデータ間の差の統計的有意性は、対応のあるスチューデント検定により分析した。P≦0.05のレベルは有意であると認められる。統計的有意性はそれぞれ(P≦0.05)、**(P≦0.01)、および***(P≦0.001)で示す。
結果
真核生物リガンドによるアクネ菌細胞表面タンパク質の同定
ECMリガンドにより認識されるアクネ菌表面タンパク質を同定するために、本発明者らは皮膚関連細菌により認識されるコラーゲンおよびフィブリノゲンなどの最も一般的なECMタンパク質を使用した。アクネ菌株をその推定表面タンパク質の発現を可能とするために3種類の異なる培地上で増殖させ、それらのタンパク質を、細菌懸濁液を塩化リチウムの存在下または不在下で加熱することにより抽出した。表面タンパク質を同定するために、アクネ菌の全タンパク質加熱抽出物を電気泳動により分離し、銀染色により検出した(図1B)。14〜100kDaの範囲のいくつかのバンドが検出され、見掛けの分子量が58kDaの1つのタンパク質は全タンパク質抽出物のおよそ>90%を占めた(図1B、レーン2)。RCMおよびRCM0.1%Tween20培地の間で大きな差は見られなかったが、加熱抽出単独よりもリチウムの存在下でより多くのタンパク質が抽出されるものと思われる。アクネ菌を、血液を濃縮した固形培地上で増殖させた場合には、両抽出物に58kDaが存在したが、リチウム加熱抽出物にのみ約90kDのタンパク質バンドと約20kDaの別のバンドが存在した(図1B、レーン3)。次に、推定アクネ菌表面アドヘシンを、ビオチン化リガンドを用いたウエスタンブロット法により同定した(図1A)。本発明者らは、58kDaタンパク質が、加熱抽出物およびリチウム加熱抽出物の両方で、用いられた増殖培地に依存せずにビオチン化フィブリノゲンにより認識されたことを見出した(図1A、レーン2)。コラーゲンによる認識は見られなかった(図1、レーン2)。コラーゲンVIでごくわずかで再現性のない認識が見られたが、特有なものとは考えられなかった。リチウム抽出物では認識の強度が高いことに着目することが興味深く、この方法を用いた回収がより良いことが示唆される。また、アクネ菌が異なる培地上で増殖していることが、認識される表面タンパク質の発現に劇的な影響を及ぼすことはなかった。これらの結果に従い、アクネ菌をRCM培地で増殖させ、リチウムの存在下で表面タンパク質を加熱抽出した。これらの結果を確認するために、アクネ菌全表面タンパク質をポリスチレンプレート上に固定化し、ビオチン化FgおよびコラーゲンIでプローブした(図2)。まず、数濃度のタンパク質抽出物を試験し、フィブリノゲンに対する結合活性がウェル当たり約6.25μg/mlタンパク質でプラトーに達すること、一方、コラーゲンIに関しては結合活性が検出されなかったことが示された。この結果を確認するために、ウェル当たり25μg/mlのタンパク質を固定化し、種々の量のビオチン化FgおよびコラーゲンIで試験した(図2B)。プラトーに達するフィブリノゲンとの強い結合活性が示され、認識される部位の飽和の可能性が示唆された。コラーゲンIとの結合活性は検出されず、フィブリノゲンとアクネ菌タンパク質抽出物の間の特異的相互作用が示された。これらの結果は、従前に示されている定性結果と一致する。58kDaタンパク質はまだ記載されたことがなく、従って、その特性評価をさらに進めた。58kDaはアクネ菌の表面から抽出されたフィブリノゲン結合タンパク質であることから、PFgと命名した。
Pfgの特性評価
アクネ菌表面抽出物を二次元ゲル電気泳動により分離した。一次元目は、10〜3の広い範囲にわたるIEFであった。二次元目は、12.5%SDS−PAGEで行い、その後、タンパク質を銀染色により検出した(図3A)。分離の後におよそ50のタンパク質スポットが見られた(図3A)。Pfgに相当するスポットの位置を決定するために、第2のゲルで並行泳動し、ビオチン化フィブリノゲンを用いてウエスタンリガンドブロットアッセイを行った(図3B)。Pfgは、2〜3個の主要スポットの下に見られ(図3B、レーン3)、銀染色ゲルにおけるスポットと一致していた(図3A、レーン3)。総てフィブリノゲンにより認識されるいくつかのスポットの存在は、Pfgがグリコシル化されているであろうことを示唆し、従って、一次元目でいくつかの等電点下で分離した。対象とするタンパク質スポットを切り出し、ゲル内消化後のペプチド混合物のMALDI−ToFによって同定した。図3Cは、図3Aに矢印で示したタンパク質スポットから生成されたトリプシンペプチド混合物のMALDI質量スペクトルを示す。実験的に得られた22のトリプシンペプチド質量は、予想ペプチド質量と、アミノ酸配列の57%にわたる0.1Da内で一致することが判明した。タンパク質配列データベース検索は、このタンパク質をアクネ菌仮想タンパク質、推定接着またはS−層タンパク質YP_056792(表3)(遺伝子ID 2933198、遺伝子座タグ PPA2127)の遺伝子の産物として同定した(Bruggemann 2004)。PPA2127遺伝子産物は、C末端に反復するプロリンおよびトレオニンリッチ領域を有する405アミノ酸の仮想タンパク質(プロリン−トレオニン反復タンパク質[PTRP])である。PTRPのアミノ酸配列分析は、C末端領域の324〜355番におけるモチーフPro−ThrまたはPro−Lysの16タンデムリピートの存在を示した。このタンパク質の理論的分子量は41.7kDaである。タンパク質配列分析によれば、ソルターゼの潜在的細胞アンカーモチーフに相当し、かつ、アクネ菌の膜上に存在する表面タンパク質との一致を支持する、C末端の400番におけるLPXTGモチーフの存在が明らかとなった。
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Pfgの精製
典型的なPfg精製の結果を表4にまとめる。大容量のアクネ菌リチウム抽出物の塩沈澱は、タンパク質の濃縮および得られる濃縮抽出物の比活性の若干の増加(1ユニットのタンパク質当たり1.45倍のフィブリノゲン結合活性)をもたらした(表4および図4C、D レーン3)。濃縮アクネ菌表面タンパク質を陰イオン交換カラムで分画した(図4A)。このステップで180mM濃度のNaClから始め、多量のタンパク質夾雑物が除かれた。フィブリノゲン結合活性を含有する画分は、160mMで始まるNaCl濃度で溶出された(図4A)。この画分はいくつかのわずかなタンパク質夾雑物とともに大きな割合のPfgを含有する(図4CおよびD、レーン4)。Pfgの最終精製はSephacryl高分解ゲル濾過により達成され、その際に総てのタンパク質夾雑物が完全に除去された(図4BおよびC、D、レーン5)。この工程の後に得られた純粋なPfgの量は0.23mgであり、比活性は1840U/mgであった(表4)。
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Pfgの結合特異性
Pfgがフィブリノゲンにより認識されることが示されたので、このECMリガンドをこの相互作用の性質を分析するために使用した。まず、フィブリノゲンの精製Pfgにより認識される能力を分析した(図5)。ヒトおよびウシFg(hFg、bFg)をポリスチレンプレートに固定化しビオチン化Pfgの結合活性を測定した。PfgのhFgおよびbFgに対する結合は用量依存的であり、hFgに対してより高い親和性を有することが示された。ウシ血清アルブミンを、結合活性を示さない陰性対照として使用した(図5A)。FgのどのサブユニットがPfgにより認識されるかを決定するために、Fgを電気泳動により分離し、結合アッセイを行った(図5B、C、D)。hFg(図5D、レーン3)およびbFg(図5D、レーン4)がPfgにより認識されることが示された。さらに、BβサブユニットはhFgおよびbFgの両方において強く認識され、hFgにおいてはAαサブユニットのみが認識されると思われる。γサブユニットならびに対照として用いた血清アルブミンに対する認識は見られなかった(図5D、レーン2)。これらの結果は、固定化フィブリノゲンで得られた結果と一致し、PfgのFgに対する特異的認識を示した。フィブリノゲンはN結合グリカンおよびO結合グリカンの両方を含有する糖タンパク質であることが示されている(Debeire 1985;Reid Townsend 1982;L’Hote 1996)。糖タンパク質のどの部分がアクネ菌表面タンパク質による認識に関与するか決定するために、精製フィブリノゲンをPNGase F−グリコシダーゼおよびO−グリコシダーゼで処理して、タンパク質骨格からそれぞれN結合グリカンおよびO結合グリカンを特異的に除去し、アクネ菌表面タンパク質抽出物により認識されるその能力に関して試験した(図6および7)。N結合グリカンを除去した後には、フィブリノゲンはなおPfgにより強く認識された(図6B、レーン3および5)。並行して、脱グリコシル化を、電気泳動分離およびクーマシーブルー染色の後の移動度のシフトの可視化により(図6A、レーン3および5)、また末端位のβ結合ガラクトシル残基を認識できるRCA−I植物レクチンを使用することにより評価した(図6C)(Green、1987)。本発明者らは、脱グリコシル化されたFgはRCA−Iレクチンによってはもはや認識されなかったことを示した(図6C、レーン3および5)。同じ結果がO結合グリカンを除去した後にも得られ(図7B、レーン3)、脱グリコシル化対照は、移動度シフトにより(図7A、レーン3)、またO結合グリカン上のGalβ(1−3)残基を特異的に認識しているジャカリン植物レクチン(Tachibana 2006)により(図7C、レーン3)検出されるように、酵素処理は総ての炭水化物を除去したことを示した。これらの結果は、フィブリノゲンのタンパク質骨格がアクネ菌表面タンパク質による認識プロセスに関与していたことを示す。
Pfgにより認識されるBβヒトフィブリノゲン配列の詳細説明
ヒトフィブリノゲンのBβサブユニットを4つの同等配列(Fg1、Fg2、Fg3、Fg4)に任意に分割し、これらをヒト肝細胞からRT−PCRにより得た。EcoRIおよびXhoIの制限部位を含有するアンプリコンを精製した後、これらのFgインサートの生産のためのプラスミドpBSKにクローニングし、それらをpGEX−4F−2発現プラスミドにクローニングした(図8A)。組換え大腸菌クローンに対してIPTG誘導を行い、全タンパク質を電気泳動により分析した。Fg1およびFg2、Fg3、Fg4のそれぞれに関して37kDaおよび43kDaの見掛けの分子量の組換えタンパク質が誘導後に過剰発現された(図8B)。ビオチン化Pfgとの接触はFg1のみが認識されたことを示した(図8C)。
フィブリノゲン由来ペプチドはPfgとフィブリノゲンの間の相互作用を阻害する
Fg1のみがPfgを認識できることが示されたことから、ビオチン化Pfgを種々の濃度の精製Fg1で前処理し、固定化されたフィブリノゲンを認識するその能力を試験した。Fg2およびBSAを陰性対照として使用した(図9)。Fg1はPfgとヒトフィブリノゲンの間の認識を劇的に低下させたが、Fg2およびBSAは低下させなかったことが示された。
これらの結果は、Pfgとフィブリノゲンの間の相互作用がフィブリノゲンのタンパク質骨格を必要とすることを示す。従って、ヒトフィブリノゲンのBβサブユニット由来の組換えペプチドを使用すれば、Pfgとフィブリノゲンの間の相互作用を阻害することができる。
アクネ菌の種々の株に対するFg1抗接着効果の評価
全アクネ菌をビオチン化により標識し、ペプチドで前処理し、または前処理せずに、種々の細胞株と接触させた。固定されていない細菌を除去した後、接着活性をストレプトアビジン−ペルオキシダーゼコンジュゲートおよび発色性基質を使用することにより、分光光度的に測定した。全ロットのFg1 Fg2産物およびペプチドを、本発明で使用する5つの細胞株で細胞傷害性を試験した。Fg1およびFg2は総ての細胞株で細胞傷害活性を示さないことが示された(図10)。
アクネ菌6919、RONおよびPIE株のこの能力は、種々の細胞株に接着させるために3つの濃度で試験した。アクネ菌の供試株は供試した3種類の細胞株(ケラチノサイト、単球および線維芽細胞)に結合し、ケラチノサイトに対して最大接着強度が見られたことが示された(図11)。アクネ菌はフィブリノゲンを認識できることが分かっているので、細菌と標的細胞の間の相互作用に競合させるためにヒトおよびウシ全フィブリノゲンを使用した。漸増量のヒトおよびウシの両フィブリノゲンとも、ケラチノサイトへのアクネ菌の接着を阻害できることが示された(図12)。次に、細菌およびRON PIEの接着を阻害するFg1の能力を3つの主要なタイプの細胞に対して評価した。Fg1ペプチドはケラチノサイト(NHDK)、単球(THP−1)、および線維芽細胞(HDF)に対するRON株の接着を用量依存的に阻害することが示された。並行して、陰性対照として使用したFg2ペプチドは抗接着活性を示さない(図13)。同じ結果が6919およびPIEアクネ菌株でも見られた。
よって、アクネ菌株は種々の標的細胞に接着でき、ケラチノサイトに対してより親和性が高いことが示された。全フィブリノゲンは、細菌とケラチノサイトの間の接着に競合することができる。フィブリノゲンのBβサブユニットに由来するFg1組換えペプチドを用いる場合、標的細胞に対する全細菌の接着は有意に低下した。
アクネ菌で刺激した細胞においてFg1の抗炎症活性の評価
Fg1組換えペプチドの有効性を評価するために、前処理したアクネ菌6919、RONおよびPIE株により刺激されたHaCaT細胞NHDK、THP−1、MRC5およびHDFによるO ・−およびHの生産を評価した。生産されたROSの量を無処理細菌で刺激した細胞により生産されたものと比較した。生産ベースラインは、無刺激細胞でROSを測定することにより得た。IL−1β、IL−8、IL−12およびTNF−αの生産もまた、上記に挙げた総ての条件で測定した。ROSの生産の測定は、単層細胞上で直接、特異的蛍光色素の存在下で分光光度蛍光測定により行った。並行して、サイトカイン生産の測定を細胞培養上清で行った。
2セットの実験を実施した:1)細胞を、0.87〜7μMの範囲の終濃度のFg1およびFg2ペプチドで37℃にて1時間予め前処理したアクネ菌株により刺激した(37℃で18時間);および2)細胞を、まず、0.87〜7μMの範囲の終濃度のFg1およびFg2ペプチドで37℃にて24時間前処理し、アクネ菌株により刺激した(37℃で18時間)。
・−の生産は、アクネ菌の3つ総ての株により刺激した場合、供試した総ての細胞株で重要であることが示されたが、これらの結果は対照実験に相当する。これに対し、Fg1ペプチドによるアクネ菌株の前処理は、5つの細胞株および3つの供試株に対してO ・−の生産を用量依存的に阻害する。両セットの実験で、Hの生産についても同種の結果が得られた(表5)。図14は、ケラチノサイトHaCaT細胞株に対するアクネ菌PIE株で得られた結果に相当し、総てのアクネ菌および供試細胞株で得られた結果の代表的なものである。
IL−1βの生産は単球にのみ有効であることが示された。使用するアクネ菌の株が何であれ、Fg1はIL−1βの生産に効果が無い(表5)。TNF−α生産は単球および線維芽細胞には有効であるが、ケラチノサイトにおいてはよりランダムである。供試した3つの細菌株では、単球および線維芽細胞によるTNF−α生産の低下にFg1用量応答効果が示された。IL−12の生産は、供試した総ての細菌株および細胞株で極めて低いか、または存在せず、このモデルにおいて炎症の不十分なマーカーであることを証明する(表5)。IL−8の生産は、アクネ菌(6919、RONおよびPEI)の3つの株により刺激した場合、ケラチノサイト(HaCaTおよび初代)および線維芽細胞(MRC5および初代)に関して重要である。IL−8の生産が無いのは単球である。3つの供試細菌株に対する、ケラチノサイトおよび線維芽細胞におけるIL−8の生産の低下に及ぼすFg1の用量応答効果を示した。代表的な結果を図15に示し、これはアクネ菌RON株を用いてMRC5細胞株で得られたIL−8の生産に関する。
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Fg1から生成された小ペプチドの抗炎症活性の評価
106残基を含有するFg1アミノ酸配列を、30〜36の間のアミノ酸残基を含有する3つの非オーバーラップ小配列に分割した(小Fg1関連ペプチド;Fg1.1、Fg1.2、およびFg1.3)。切断領域における推定活性の損失を避けるため、この切断部位から2つの切断領域でオーバーラップする2つの配列を作製した(Fg1.4およびFg1.5)(図16)。
まず、総ての小Fg1関連ペプチドの細胞傷害性を評価したところ、供試した総ての小ペプチドが2.5〜20μMの範囲で細胞に毒性が無かったことが示された。図1に、不死化ケラチノサイトHaCaT細胞株で得られた結果を示した。同じ結果が不死化単球ThP1および線維芽細胞MRC5細胞株でも得られた。
小Fg1関連ペプチドの有効性を評価するため、3つのアクネ菌株6919、RONおよびPIEで刺激したいくつかの細胞株(HaCaT、NHDK、THP−1、MRC5およびHDF)によるHの生産をこれらの小ペプチドの存在下または不在下で測定した。Hの生産量を無処理細菌で刺激した細胞により生産された量と比較する。生産ベースラインは、無刺激細胞でHを測定することにより得る。H生産の測定は、単層細胞上で直接、特異的蛍光色素の存在下で分光光度蛍光測定により行った。
2セットの実験を行った:
I)細胞を、2.5〜20μMの範囲の終濃度のFg1.1、Fg1.2、Fg1.3、Fg1.4、およびFg1.5 小ペプチドで37℃にて1時間予め前処理したアクネ菌株により刺激する(37℃で18時間);
II)細胞を、まず、2.5〜20μMの範囲の終濃度の5つの小ペプチドで37℃にて24時間で前処理し、アクネ菌株により刺激した(37℃で18時間)。
アクネ菌の3つ総ての株で刺激した場合、総ての供試細胞株においてHの生産は十分であることが示されたが、これらの結果は対照実験に相当する。これに対し、Fg1.1およびFg1.4 小ペプチドによるアクネ菌株の前処理は、5つの細胞株および3つの供試株で用量依存的にHの生産を阻害するが、小ペプチドFg1.2、Fg1.3およびFg1.5は阻害しない。図17は、線維芽細胞MRC5細胞株に対してアクネ菌RON株で得られた結果に相当し、供試した総てのアクネ菌および細胞株で得られた結果の代表的なものである(表6)。
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アクネ菌の不在下でのFg1フラグメントの抗炎症特性
Fg1およびFg2フラグメントの抗炎症特性をより一般に評価するために、LTA(リポテイコ酸、LPS(リポ多糖)およびPGN(ペプチドグリカン)で刺激したいくつかの細胞株(NHDK、THP−1、およびHDF)によるHの生産をFg1またはFg2の存在下または不在下で測定した。
LTAで刺激したNHDK細胞に関して得られた結果を図18に示すが、Fg1はLTA刺激NHDK細胞によるHの生産を有意に低下させるが、Fg2はそうではないことを示す。類似の結果が、LTA、LPSおよびPGNで刺激した初代線維芽細胞(HDF)および単球(ThP1)でも得られた。
IL−8の生産もまた、Fg1またはFg2の存在下または不在下で、LTA、LPSおよびPGNで刺激したNHDK細胞で測定した。PGNで刺激したNHDK細胞に関して得られた結果を図19に示すが、PGN刺激NHDK細胞によるIL−8の生産をFg1は有意に低下させるが、Fg2はそうではないことを示す。類似の結果が、LTAおよびLPSで刺激したNHDK細胞でも得られた。
これらの結果は、Fg1は、アクネ菌の存在とは無関係に、ケラチノサイトに対して抗炎症性特性も有することを示す。
Fg1.1から生成された小ペプチドの抗炎症活性の評価
小フラグメントFg1.1.1、Fg1.1.2、Fg1.1.3、Fg1.1.4およびFg1.1.6の抗炎症性活性を評価した。
本発明者らはまず、総ての小Fg1.1生成ペプチドの細胞傷害性を評価し、供試した総てのペプチドが2.5〜20μMの範囲で細胞に毒性が無かったことを示した。図20は、不死化ケラチノサイトHaCaT細胞株で得られた結果を示す。類似の結果が不死化線維芽細胞MRC5細胞株でも得られた。
図21は、ペプチドを溶解させるために使用した希釈剤(ビヒクル)を同じ濃度で使用して行った同じ実験を示す。保存溶液は、Fg1.1.4ではPBS、Fg1.1.1およびFg1.1.3では60%DMSO/PBS、Fg1.1.2では100%DMSOで作製した。
これらの結果は、20個までのアミノ酸、好ましくは15個までのアミノ酸の配列を有する本発明の小フラグメントはケラチノサイトに対して毒性作用を持たないことを明らかに示す。
次に、本発明者らは、小フラグメントFg1.1.1、Fg1.1.2、Fg1.1.3、Fg1.1.4およびFg1.1.6の、アクネ菌刺激後に細胞の炎症性応答を軽減する能力を評価した。アクネ菌6919株で刺激した細胞株(HaCaTおよびMRC5)によるIL−8の生産を測定した。IL−8の量を、無処理細菌で刺激した細胞により生産された量と比較した。生産ベースラインは、無刺激細胞でIL−8を測定することにより得た。IL−8生産の測定は、ELISAアッセイにより行った。I)アクネ菌株を、まず、2.5〜20μMの範囲の終濃度のペプチドで前処理する(図22参照);およびII)細胞を、まず、上記のようにペプチドで前処理し、次に、アクネ菌で刺激する(図23参照)ことからなる2セットの実験を行った。この場合、IL−8分泌レベルが低いほど、供試フラグメントの抗炎症能は高くなる。
結果は、アクネ菌で刺激した場合、総ての細胞株でIL−8の生産は十分であることを示す。しかしながら、アクネ菌株をFg1.1.1ペプチドで前処理した場合では、IL−8の生産は用量依存的に低下する。他の小フラグメントでもIL−8生産のいくらかの阻害が見られるが、その効果はFg1.1.1の場合ほど顕著でない。図22は、HaCaT細胞に対して、前処理細菌で得られた結果に相当する。類似の結果が、線維芽細胞MRC5細胞でも、ならびに細胞株をまず前処理した場合にも得られた(図23)。
小ペプチドFg1.1.1の抗炎症活性のイン・ビボ評価
抗炎症応答に対するFg1.1.1ペプチドのイン・ビトロ有効性を示すこれまでの結果に従い、本発明者らは、イン・ビボ炎症モデルにおいてアクネ菌により誘導される炎症反応を阻害するその能力を試験した。
このモデルは、アクネ菌が皮内注射された際のマウス耳の反応力に基づく。炎症反応は、アクネ菌注射後、14日間毎日、耳の厚さの測定、発赤ならびに落屑および/または小膿疱胞の存在により評価した。実験の終了時に、炎症の最終測定を行い、耳の写真を撮影した。その後、マウスを安楽死させ、耳ならびに耳関連神経節を摘出した。耳はすぐに、さらなる組織学的分析のためにホルマリン含有バッファーで固定した。耳関連神経節は氷上の適当な細胞培養培地に入れ、すぐにリンパ球を抽出する処理を施した。全リンパ球懸濁液を計数し、抗CD3抗体(2μg/ml)および抗CD28抗体(2.5μg/ml)で予めコーティングした96ウェルプレートで、ウェル当たり2.10細胞となるように調整した。72時間の増殖の後、細胞代謝に関連する酸化還元指示薬(UptiBlue)に基づき、増殖率を測定した。
実験計画は、各8個体のマウスを含む5群からなった。1)PBSは、PBSを注射した無処置群に相当する。2)PA+ビヒクルTOPICは、耳へのアクネ菌注射とワセリン単独処置に相当する。3)PA+ペプチドTOPICは、耳へのアクネ菌注射とワセリンに混合した5%Fg1.1.1ペプチドによる処置に相当する。4)アクネ菌株(OD620nm=1.5)をFg1.1.1ペプチド(140μM)で37℃にて1時間前処理した(PA+ペプチドINJECT群)または5)ビヒクル単独で処理(PBS中最終1%DMSO)(PA+ビヒクルINJECT群)、次いで、マウスの耳に皮内注射(およそ2.0CFU/20μl)して炎症を誘導。
5%Fg1.1.1ペプチドゲルの調製は、15mgのペプチドと300mgのワセリンを室温(21℃)で1分間即座に穏やかに混合することからなり、次いで、マウスの耳に直接塗布した。
結果は、Fg1.1.1ペプチドが無処理の耳に比べて、局所塗布において(図24、図26#6)ならびに細菌の前処理で(図25、図26#5)耳の炎症を軽減できることを示す。組織学的分析により、Fg1.1.1が塗布された場合に浸潤免疫細胞の数が最低であること(図27#5および6)、ならびにリンパ球活性化レベルの低減(図28)が明らかになった。
大フラグメントFg1(106アミノ酸)および小フラグメントFg1.1.1(15アミノ酸)のIL−8分泌阻害能を比較して図29に表し、これは、10%SVF含有DMEM、10%SVF含有RPMI、KGM−Gold、FGM培地のそれぞれで5%CO下、37℃で増殖させ、種々の濃度のペプチドFg1またはFg1.1.1の存在下、5.10〜10細胞/ウェルで播種した不死化ケラチノサイト(HaCaT)、線維芽細胞(MRC5)、単球(ThP1)細胞株および初代ケラチノサイト(NHDK)、線維芽細胞(HDF)細胞株からのIL−8生産の阻害パーセンテージを正規化したものを示す。
この場合、阻害が大きいほど、供試フラグメントの抗炎症性能が大きくなる。図29は、細胞を15アミノ酸の小フラグメントFg1.1.1で処理した方が、211アミノ酸の大フラグメントFg1で処理した場合より、IL−8生産の阻害パーセンテージが高いことも示す。
乾癬モデルにおけるFg1.1.1の抗炎症特性
乾癬は、表皮ケラチノサイトの病態生理学的応答を誘発するTh17リンパ球浸潤により媒介される慢性炎症性疾患である。これに関して、ケラチノサイトは、炎症性応答に寄与することによってそれらの生物学的特性の調節に寄与する多くのサイトカインの標的である。このケラチノサイトの応答は、それらの分化および移動能の変動、ならびにサイトカイン、ケモカインおよび抗微生物ペプチドにより特徴付けられ、とりわけ、IL−8、hBD−2、S100A7、IL−12RA2の分泌が良好なマーカーとなる。
不死化ケラチノサイトHaCaT細胞を、96ウェルプレートに10細胞/ウェル(Corning Costar、Brumath、France)で播種し、37℃にて1時間、濃度2.5、5および10μMのFg1およびFg1.1.1ペプチドで前処理したアクネ菌6919株(O.D.620nm=0.3)で、5%CO下、37℃にて18時間刺激した。次に、培養上清を除去し、IL−8濃度をELISAアッセイ(eBioscience)により測定した。
乾癬に対するFg1.1.1の抗炎症性活性を評価するために、本発明者らは、「乾癬」の表現型を生じる炎症誘発混合物(IL−17+OSM+TNF−αの組合せ)により刺激した正常ヒト表皮ケラチノサイト(NHEK)のイン・ビトロモデルを使用した。従って、本発明者らは、この条件で刺激されたケラチノサイトによるIl−8およびβ−デフェンシン−2タンパク質(hBD−2)の放出を阻害するFg1.1.1の能力を評価した。
Il−8生産に対するFg1.1.1の活性(図30):
図30は、基底状態で、正常ヒト表皮ケラチノサイト(NHEK)が少量のIl−8を放出したことを示す(細胞単独)。この放出は、3つのサイトカインの組合せで処理することにより大幅に増加した(刺激細胞)。参照としてのJak阻害剤I(陽性対照)は、この会合の刺激効果を強く阻害した(67%阻害)。
本試験の実験条件下では、6.1および12.2μMで試験したFg1.1.1は、濃度依存的効果を伴って、NHEKによるIl−8の放出を有意に阻害した(25%および49%阻害)。濃度が低いほど(1.25および3.05μM)、見られる効果は小さかった。
hBD−2生産に対するFg1.1.1の活性(図31):
図31は、基底状態で、正常ヒト表皮ケラチノサイトは極めて少量のβ−デフェンシン−2 タンパク質(hBD−2)を放出したことを示す(細胞単独)。この放出は、Il−17、TNF−αおよびOSMの組合せで処理することにより大幅に増加した(刺激細胞)。参照としてのJak阻害剤I(陽性対照)は、この会合の刺激効果を強く阻害した(80%阻害)。
本試験の実験条件下では、12.2μMで試験したFg1.1.1は、NHEKによるhBD−2の放出を有意に阻害した。さらに、Fg1.1.1は、供試した総ての濃度で細胞生存率に影響を及ぼさなかった。
イン・ビトロ乾癬モデルを用いた場合、本発明者らは、Fg1.1.1ペプチドが、いずれの細胞傷害性もなく、用量依存的にIL−8およびhBD−2分子の生産を阻害できたことを示した。さらに、供試した濃度範囲でhBD−2抗微生物ペプチド生産よりもIL−8ケモカイン生産の阻害が強く、より高い用量で両方の抗炎症性分子の生産を損なうであろうことが示唆される。よって、Fg1.1.1ペプチドは、乾癬様炎症を軽減するための良好な候補である。
参照文献
Figure 0006840086
Figure 0006840086

Claims (14)

  1. 最適なグローバルアラインメントの後に配列番号1と少なくとも90%の同一性を有するアミノ酸配列を含んでなる、単離されたポリペプチド、または、最適なグローバルアラインメントの後に配列番号2、5および7〜13および47のいずれか1つと少なくとも90%の同一性を有するアミノ酸配列を含んでなる、そのフラグメントを含んでなる、皮膚炎症性疾患の治療および/または予防に使用するための薬剤。
  2. 配列番号1を含んでなる単離されたポリペプチドまたは配列番号2、5および7〜13および47のいずれか1つを含んでなる、そのフラグメントを含んでなる、請求項1に記載の薬剤。
  3. 前記ポリペプチドが、配列番号2、5および7〜13および47、または最適なグローバルアラインメントの後に配列番号2、5および7〜13および47の1つと少なくとも90%の同一性を有するポリペプチドから選択される、請求項1に記載の薬剤。
  4. 前記皮膚炎症性疾患が、紫外線(UVR)、電磁放射線、アレルゲンへの暴露、または化学刺激物との接触から生じる、皮膚掻痒および発赤を伴う偶発的発疹並びに慢性炎症性皮膚疾患から選択される、請求項1〜3のいずれか一項に記載の薬剤。
  5. 前記皮膚炎症性疾患が、座瘡である、請求項1〜4のいずれか一項に記載の薬剤。
  6. 前記ポリペプチドまたはそのフラグメントが、宿主細胞への細菌接着に関与する少なくとも1つの微生物タンパク質のフィブリノゲンとの相互作用を阻害することができ、前記細菌は好ましくはアクネ菌であり、フィブリノゲンは好ましくはヒトフィブリノゲンである、請求項1〜5のいずれか一項に記載の薬剤。
  7. 前記皮膚炎症性疾患が、乾癬である、請求項1〜4のいずれか一項に記載の薬剤。
  8. 配列番号7〜12の1つから選択されるアミノ酸配列を含んでなる、配列番号1の5〜15アミノ酸配列のフラグメント、または、配列番号2、5、13および47から選択されるフラグメント、前記フラグメントをコードする単離された核酸分子、前記核酸分子を含んでなるベクター、前記核酸分子または前記ベクターを含んでなる宿主細胞から選択される少なくとも1つの化合物と薬学上許容可能なビヒクルとを含んでなる、医薬組成物。
  9. 皮膚炎症性疾患の治療および/または予防に使用するための、請求項に記載の医薬組成物。
  10. 前記皮膚炎症性疾患が、紫外線(UVR)、電磁放射線、アレルゲンへの暴露、または化学刺激物との接触から生じる、皮膚掻痒および発赤を伴う偶発的発疹並びに慢性炎症性皮膚疾患から選択される、請求項に記載の医薬組成物。
  11. 乾癬および/または座瘡の治療および/または予防において使用するための、請求項に記載の医薬組成物。
  12. 皮膚炎症性疾患の治療および/または予防における同時、個別または逐次使用のための、
    a) 配列番号7〜12の1つから選択されるアミノ酸配列を含んでなる、配列番号1の5〜15アミノ酸配列のフラグメント、または、配列番号2、5、13および47から選択されるフラグメント、
    前記フラグメントをコードする単離された核酸分子、
    前記核酸分子を含んでなるベクター、
    前記核酸分子または前記ベクターを含んでなる宿主細胞から選択される少なくとも1つの化合物;並びに
    b) 別の薬剤
    を含んでなる、組合せ医薬。
  13. 前記別の薬剤が、皮膚炎症性疾患の治療および/または予防のために使用される、請求項12に記載の組合せ医薬。
  14. 前記別の薬剤が、乾癬および/または座瘡の治療および/または予防のために使用される、請求項13に記載の組合せ医薬。
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