JP6837848B2 - 診断装置 - Google Patents
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Description
こうした設備の異常診断を目的として、多くの技術が提案されている。例えば特許文献1では、被検体の振動検出信号をフーリエ変換して予め設定するしきい値と比較するとともに、ニューラルネットワークを用いて異常の確信度(正常または異常と考えられる程度)を求め、両者をファジィ演算することで異常判定を行う技術を提案している。
さらに、モデル更新のために必要なデータをいかに選別するかも重要で、記憶装置の容量制限の中で診断精度向上に必要な情報を効率よく選別・保持することが必要である。
被検体の物理的特徴を元に被検体に異常が発生した際に生じると予測される特徴量を用いて診断を行う物理モデルベース診断部と、被検体の正常時及び/または異常時の信号を元に学習した機械学習モデルを用いて診断を行う数理モデルベース診断部と、物理モデルベース診断部と、数理モデルベース診断部とによる診断結果が異なった場合に、物理モデルまたは数理モデルの少なくとも一方を更新する必要があると判断するモデル更新要否判定部と、モデル更新要否判定部において更新が必要と判断した際にその旨を通知する更新通知部と、を備えることを特徴とする。
請求項2に記載の発明は、請求項1の構成において、物理モデルベース診断部は、被検体から状態診断用の情報を取得する診断情報取得手段と、被検体の物理的特徴を元に、異常発生時に診断情報取得手段で取得した診断情報に生じる特徴量を算出する物理モデルを格納する物理モデル格納手段と、を含んでなることを特徴とする。
請求項3に記載の発明は、請求項1の構成において、数理モデルベース診断部は、被検体から状態診断用の情報を取得する診断情報取得手段と、被検体の正常時及び/または異常時に診断情報取得手段で取得した診断情報を元に機械学習を行って得た数理モデルを格納する数理モデル格納手段と、を含んでなることを特徴とする。
請求項4に記載の発明は、請求項1乃至3の何れかの構成において、被検体の診断結果が正常、異常どちらの場合にモデルの更新が必要かを設定可能なモデル更新条件設定部を備え、モデル更新要否判定部は、被検体の状態の診断結果がモデル更新条件設定部に設定された条件と一致したモデルを、更新する必要があると判断することを特徴とする。
請求項5に記載の発明は、請求項1乃至4の何れかの構成において、モデル更新要否判定部において更新が必要と判断された際に、物理モデル及び/または数理モデルでの診断に必要な情報を格納する診断情報格納部を備えることを特徴とする。
請求項6に記載の発明は、請求項5の構成において、機械学習モデルとしてニューラルネットワークを用い、診断情報格納部は、物理モデルでの診断に必要な情報を、ニューラルネットワークを構成する各ニューロンの出力分布を元に分類して格納することを特徴とする。
請求項7に記載の発明は、請求項1乃至6の何れかの構成において、更新通知部は、モデルを更新する必要がある旨を画面に表示するとともに、更新の必要度のレベルも併せて表示することを特徴とする。
特に、請求項5及び6に記載の発明によれば、上記効果に加えて、診断モデルの更新の際に必要となる情報を効率よく収集・保持することができ、記憶量や通信量の削減が可能になるとともに、診断性能の向上につながる。
また、請求項7に記載の発明によれば、上記効果に加えて、モデル更新を推奨する表示を行う際にモデル更新の必要性がどの程度大きいかが併せて通知されるため、実際に更新を行うか否かの検討や更新作業のスケジュール調整に必要な情報を容易に得ることができる。
図1は、本発明の診断装置の一例を示すブロック構成図である。ここでは被検体としての工作機械1に対し、診断装置10が併設されているが、診断装置10は工作機械1の制御装置(図示略)に内包されていても構わない。
診断装置10には、工作機械1の制御情報や各種センサ(図示しない)の測定信号を診断情報として取得する診断情報取得手段11が設けられている。
また、診断装置10には、機械構成要素の諸元値や機械構造などの物理的特徴を元に、異常発生時に診断情報にどのような特徴が表れるかを算出する物理モデルを格納する物理モデル格納手段12と、工作機械1が正常な状態及び/または異常な状態における診断情報を元に機械学習を行って得た数理モデルを格納する数理モデル格納手段13とが備えられている。
例えば工作機械の送り軸を対象とした異常診断では、想定される異常モードの一つとしてボールねじの支持軸受損傷が挙げられる。例えば軸受に傷がある場合には特定の周波数の振動が増加することが知られており、この周波数(図2の「特徴周波数」)は軸受諸元やボールねじの回転速度などから容易に求めることができる。物理モデルベース診断手段14では、このような物理的特徴を元に異常有無の判定を行う。この場合、判定ロジックが明確であり、また既知の特徴量に注目して分析するため高精度な検出が可能な反面、技術者が事前に想定した異常モードしか検出できない。
一方、数理モデルベース診断手段15では、例えばニューラルネットワークなどの機械学習技術を用いてデータから学習してモデルを構築し、異常診断を行う。この方法では、異常時の事例を元に機械自身が特徴を抽出するため、図2(c)のような特徴周波数に変化がない、事前に想定していない異常モードでも検出が可能となる。
まず、診断情報格納手段18では、モデル更新要否判定手段17にて「更新要」と判断された場合、その時点における診断情報を格納する。その際、数理モデルの演算過程を示す数理モデル演算情報を数理モデルベース診断手段15から併せて取得し、この数理モデル演算情報をキーとして診断情報を分類して格納しても良い。
そして、表示手段19では、物理モデルベース診断手段14及び数理モデルベース診断手段15における診断結果、または両者を統合した診断結果を表示するとともに、モデル更新要否判定手段17における更新要否判断結果を表示する。
まず、S1で、診断情報取得手段11により、状態診断用の情報(診断情報)を工作機械1から取得する。
診断用の情報としては、工作機械のモータトルク、振動センサで測定される加速度信号、機械の仕様、部品の諸元値などがある。
次に、S2で、物理モデル格納手段12及び数理モデル格納手段13から、物理モデル及び数理モデル診断で使用するモデルデータを取得する。物理モデルでは測定信号から特徴量を算出する計算式などが、数理モデルではニューラルネットワークの構造や重みなどがモデルデータに含まれる。
続いて、S4で、両診断手段における物理モデル、数理モデルの診断結果、及びモデル更新条件設定手段16が保持する更新条件に基づき、モデル更新要否判定手段17が診断モデルの更新要否を判定する。この判定方法の詳細については後述する。
具体的には、S4において「数理モデル更新が必要」と判断された場合、S3の診断実施において数理モデルに入力された数理モデル診断情報と、物理モデルに入力された物理モデル診断情報とを合わせて診断情報格納手段18に格納する(S5)。
一方、S4において「物理モデル更新が必要」と判断された場合、S3の診断実施において物理モデルに入力された物理モデル診断情報に加え、数理モデルに入力された数理モデル診断情報、及びその入力に対する数理モデル内部の演算情報を合わせて診断情報格納手段18に格納する(S6)。
さらに、S4において「物理モデル更新が必要」または「数理モデル更新が必要」と判断された場合、表示手段19において、モデル更新が必要な旨の表示を行う(S7)。
前述のように例えば回転部品に傷がある場合には機械振動の特定周波数にピークが表れるなど、機械構造情報や部品の諸元を用いて、異常時に生じる特徴量を予測することができる。物理モデルはこのような考え方に基づき、異常が生じ得る部品やその異常モードを予め想定し、対応した特徴量を算出、しきい値と比較するなどして異常発生を検出する。他方、機械学習による診断では信号に表れる特徴を機械自身が学習するため、事前に人が特徴量を求めておく必要は無いが、学習を行うために機械異常時(または正常時)のデータが多数必要となる。
このような関係のため、物理モデルによる診断のみが「異常」と判断した場合、数理モデルにおいて該当する異常モードに対応する学習が不足している可能性がある。反面、数理モデルによる診断のみが「異常」と判断した場合、数理モデルが人にとって未知の特徴量を学習しており、人が気付きにくいレベル、モードの異常を検出している可能性がある。
上記の例では「異常」時の特徴を抽出、検出するシステムとして説明したが、「正常」時の特徴を抽出、検出するような場合、上記例とは逆の動作となる。「異常検出モデル」または「正常検出モデル」いずれであるかをモデル更新条件設定手段16に設定しておき、S4における動作を切り替えることができる。
前述したように、S4において物理モデル、数理モデルの診断結果が不一致の場合にモデル更新が必要な旨を表示するが、更新の手間、機械のスケジュールなどによっては即座に更新作業を行えない場合があり得る。その際、更新の必要性の大小を併せて表示することで、作業計画を立てる参考にすることができる。例えば図4のようにアイコンを利用し、必要度の高さに応じて塗りつぶしの領域を変化させるなどの工夫をしても良い。例えば正常時は青、異常時は赤、モデル要更新時は黄色など、アイコンの色を変化させることでよりわかりやすく通知することができる。
更新の必要度は、物理モデル及び数理モデルの確信度を用いて、例えば次の式(1)のような形で表すことができる。
更新必要度=min(数理モデル確信度、物理モデル確信度) ・・式(1)
前述したように、数理モデルのみが「異常」と診断した場合、人には気付きにくい異常の特徴を抽出できている可能性がある。そこで、このような事例を集めて分析することで、新たな特徴量や異常形態に対応した物理モデルの構築につなげることができる。しかしながら無闇に大量のデータを集めても分析が間に合わず活用できない恐れがあるが、パターンごとに分類して収集することで、より効率よくモデルの育成を行える。
以下では、ニューラルネットワークを利用した機械学習を例にとって説明する。ニューラルネットワークが「異常」(あるいは「正常」)と判断する過程において、ネットワークを構成する各ニューロンの発火が伝播して最終的な出力値を生成する。従って、図5に示すような各ニューロンの発火パターンと関連付けて診断情報を蓄積することで、同一の異常モードに対応するデータ分類が得られる。この分類ごとにデータを分析することで、より効率よく新たな物理モデルの構築を進めることができる。
また、表示手段19は、モデルを更新する必要がある旨を画面に表示するとともに、更新の必要度のレベルも併せて表示するので、実際に更新を行うか否かの検討や更新作業のスケジュール調整に必要な情報を容易に得ることができる。
また診断対象は機械状態診断に限らず、加工状態の診断などにも適用が可能である。
さらに、本診断装置の運用において「モデル更新」をエンドユーザに意識させない場合は、更新通知ではなく「モデル不適合」などモデルの不備を示す情報としても良い。
Claims (7)
- 被検体の状態を診断する診断装置であって、
前記被検体の物理的特徴を元に前記被検体に異常が発生した際に生じると予測される特徴量を用いて診断を行う物理モデルベース診断部と、
前記被検体の正常時及び/または異常時の信号を元に学習した機械学習モデルを用いて診断を行う数理モデルベース診断部と、
前記物理モデルベース診断部と、前記数理モデルベース診断部とによる診断結果が異なった場合に、前記物理モデルまたは数理モデルの少なくとも一方を更新する必要があると判断するモデル更新要否判定部と、
前記モデル更新要否判定部において更新が必要と判断した際にその旨を通知する更新通知部と、
を備えることを特徴とする診断装置。 - 前記物理モデルベース診断部は、
前記被検体から状態診断用の情報を取得する診断情報取得手段と、
前記被検体の物理的特徴を元に、異常発生時に前記診断情報取得手段で取得した診断情報に生じる特徴量を算出する物理モデルを格納する物理モデル格納手段と、を含んでなることを特徴とする請求項1に記載の診断装置。 - 前記数理モデルベース診断部は、
前記被検体から状態診断用の情報を取得する診断情報取得手段と、
前記被検体の正常時及び/または異常時に前記診断情報取得手段で取得した診断情報を元に機械学習を行って得た数理モデルを格納する数理モデル格納手段と、を含んでなることを特徴とする請求項1に記載の診断装置。 - 前記被検体の診断結果が正常、異常どちらの場合にモデルの更新が必要かを設定可能なモデル更新条件設定部を備え、
前記モデル更新要否判定部は、前記被検体の状態の診断結果が前記モデル更新条件設定部に設定された条件と一致したモデルを、更新する必要があると判断することを特徴とする請求項1乃至3の何れかに記載の診断装置。 - 前記モデル更新要否判定部において更新が必要と判断された際に、前記物理モデル及び/または数理モデルでの診断に必要な情報を格納する診断情報格納部を備えることを特徴とする請求項1乃至4の何れかに記載の診断装置。
- 前記機械学習モデルとしてニューラルネットワークを用い、
前記診断情報格納部は、前記物理モデルでの診断に必要な情報を、前記ニューラルネットワークを構成する各ニューロンの出力分布を元に分類して格納することを特徴とする請求項5に記載の診断装置。 - 前記更新通知部は、前記モデルを更新する必要がある旨を画面に表示するとともに、
更新の必要度のレベルも併せて表示することを特徴とする請求項1乃至6の何れかに記載の診断装置。
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