以下、本発明の実施の形態について詳細に説明する。なお、本発明の範囲はここで説明する実施の形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を損なわない範囲で種々の変更をすることができる。
(A層)
本発明の合わせガラス用中間膜は、熱可塑性エラストマーを含有する組成物から構成されるA層を、少なくとも一層含む。本発明において、A層を構成する熱可塑性エラストマー含有組成物に含まれる熱可塑性エラストマーは、芳香族ビニル化合物に由来する芳香族ビニル単量体単位を60モル%以上含む重合体ブロック(a)(以下、「重合体ブロック(a)」ともいう)と、共役ジエン化合物に由来する共役ジエン単量体単位を60モル%以上含む重合体ブロック(b)(以下、「重合体ブロック(b)」ともいう)とを有するブロック共重合体(以下、「ブロック共重合体(A)」ともいう)の水素添加物からなる。
前記芳香族ビニル化合物としては、例えばスチレン、o−メチルスチレン、m−メチルスチレン、p−メチルスチレン、α−メチルスチレン、β−メチルスチレン、2,6−ジメチルスチレン、2,4−ジメチルスチレン、α−メチル−o−メチルスチレン、α−メチル−m−メチルスチレン、α−メチル−p−メチルスチレン、β−メチル−o−メチルスチレン、β−メチル−m−メチルスチレン、β−メチル−p−メチルスチレン、2,4,6−トリメチルスチレン、α−メチル−2,6−ジメチルスチレン、α−メチル−2,4−ジメチルスチレン、β−メチル−2,6−ジメチルスチレン、β−メチル−2,4−ジメチルスチレン、o−クロロスチレン、m−クロロスチレン、p−クロロスチレン、2,6−ジクロロスチレン、2,4−ジクロロスチレン、α−クロロ−o−クロロスチレン、α−クロロ−m−クロロスチレン、α−クロロ−p−クロロスチレン、β−クロロ−o−クロロスチレン、β−クロロ−m−クロロスチレン、β−クロロ−p−クロロスチレン、2,4,6−トリクロロスチレン、α−クロロ−2,6−ジクロロスチレン、α−クロロ−2,4−ジクロロスチレン、β−クロロ−2,6−ジクロロスチレン、β−クロロ−2,4−ジクロロスチレン、o−t−ブチルスチレン、m−t−ブチルスチレン、p−t−ブチルスチレン、o−メトキシスチレン、m−メトキシスチレン、p−メトキシスチレン、o−クロロメチルスチレン、m−クロロメチルスチレン、p−クロロメチルスチレン、o−ブロモメチルスチレン、m−ブロモメチルスチレン、p−ブロモメチルスチレン、シリル基で置換されたスチレン誘導体、インデン、ビニルナフタレンなどが挙げられる。これらの芳香族ビニル化合物は1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。中でも、製造コストと物性バランスの観点から、スチレン、α−メチルスチレン、p−メチルスチレン、およびこれらの混合物が好ましく、スチレンがより好ましい。
重合体ブロック(a)における芳香族ビニル単量体単位の含有量は、重合体ブロック(a)を構成する全単量体単位に対して60モル%以上である。重合体ブロック(a)における芳香族ビニル単量体単位が60モル%未満であると、成形性や強度が低下しやすくなる。重合体ブロック(a)における芳香族ビニル単量体単位の含有量は、機械的特性の観点から、好ましくは80モル%以上、より好ましくは85モル%以上、さらに好ましくは90モル%以上、特に好ましくは95モル%以上であり、実質的に100モル%であってもよい。すなわち、重合体ブロック(a)における芳香族ビニル単量体単位の含有量の上限値は100モル%である。
重合体ブロック(a)は、本発明の目的および効果の妨げにならない範囲において、芳香族ビニル単量体単位以外の他の不飽和単量体に由来する単量体単位を含有していてもよい。他の不飽和単量体としては、例えばブタジエン、イソプレン、2,3−ジメチルブタジエン、1,3−ペンタジエン、1,3−ヘキサジエン、イソブチレン、メタクリル酸メチル、メチルビニルエーテル、N−ビニルカルバゾール、β−ピネン、8,9−p−メンテン、ジペンテン、メチレンノルボルネン、2−メチレンテトラヒドロフランなどが挙げられる。
重合体ブロック(a)中の他の不飽和単量体に由来する単量体単位の含有量は、重合体ブロック(a)を構成する全単量体単位に対して40モル%未満であり、好ましくは20モル%未満、より好ましくは15モル%未満、さらに好ましくは10モル%未満、特に好ましくは5モル%未満であり、本発明の好適な一実施態様において、重合体ブロック(a)は、上記他の不飽和単量体に由来する単量体単位を実質的に含まない。重合体ブロック(a)が他の不飽和単量体に由来する単量体単位を含有する場合、その結合形態は特に制限されるものではなく、ランダム、テーパー状のいずれでもよい。
ブロック共重合体(A)は、前記重合体ブロック(a)を少なくとも1種有していればよい。ブロック共重合体(A)が重合体ブロック(a)を2種以上有する場合には、それらの重合体ブロック(a)は、互いに同一であっても異なっていてもよい。なお、本明細書において「重合体ブロックが異なる」とは、重合体ブロックを構成するモノマー単位、重量平均分子量、立体規則性、および複数のモノマー単位を有する場合には各モノマー単位の比率および共重合の形態(ランダム、グラジェント、ブロック)のうちの少なくとも1つが異なることを意味する。後述する重合体ブロック(b)においても同じである。
ブロック共重合体(A)に含まれる前記重合体ブロック(a)の重量平均分子量(Mw)は、特に制限されるものではなく、ブロック共重合体(A)が有する重合体ブロック(a)のうち、少なくとも1つの重合体ブロック(a)の重量平均分子量が3,000〜60,000であることが好ましく、4,000〜50,000であることが好ましい。ブロック共重合体(A)が、前記範囲内の重量平均分子量である重合体ブロック(a)を少なくとも1つ有することにより、機械強度がより向上し、フィルム成形性にも優れる。ここで重量平均分子量とは、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)測定によって求めたポリスチレン換算の重量平均分子量である。
重合体ブロック(a)のガラス転移温度は、−14℃以下であることが好ましく、−15℃以下であることがより好ましく、−30℃以上であることが好ましく、−20℃以上であることがより好ましい。重合体ブロック(a)のガラス転移温度が上記範囲内にあると、ブロック共重合体(A)を含んで構成される熱可塑性エラストマー含有組成物のtanδの値を特定の範囲に制御しやすくなり、得られる中間膜の遮音性の向上につながる。
前記ブロック共重合体(A)の水素添加物における重合体ブロック(a)の含有量(複数の重合体ブロック(a)を有する場合は、それらの合計含有量である。)は、ブロック共重合体(A)の水素添加物の総質量に対して、15質量%以下である。ブロック共重合体(A)のモルフォロジーによってtanδの値も変化し、特にスフィア構造からなるミクロ相分離構造をとる場合にtanδが高くなる傾向にある。スフィア構造の形成のしやすさには、ブロック共重合体(A)の水素添加物における重合体ブロック(a)の含有量が大きく影響するため、ブロック重合体(a)の含有量を調整することは、得られる中間膜の遮音性をより向上させる上で非常に重要である。したがって、遮音性を高める観点から、本発明においては、重合体ブロック(a)の含有量が、ブロック共重合体(A)の水素添加物の総質量に対して、15質量%以下であることが重要である。上記観点から、ブロック共重合体(A)の水素添加物における重合体ブロック(a)の含有量は、ブロック共重合体(A)の水素添加物の総質量に対して、14質量%以下であることが好ましく、13質量%以下であることがより好ましく、12.5質量%以下であることがさらに好ましく、11質量%以下であることがさらにより好ましく、7質量%以下であることが特に好ましく、4.5質量%以下であることが極めて好ましい。遮音性の観点において、重合体ブロック(a)の含有量の下限値は、ブロック共重合体(A)の水素添加物の総質量に対して、例えば3質量%以上であることが好ましく、3.5質量%以上であることがより好ましい。一方で、フィルムの取扱性および機械物性を高める観点からは、6〜15質量%が好ましく、8〜15質量%がより好ましく、10〜15質量%が特に好ましい。本発明の一実施態様において、重合体ブロック(a)の含有量は、ブロック共重合体(A)の水素添加物の総質量に対して、3〜15質量%であることが好ましく、3.5〜15質量%であることがより好ましく、4〜15質量%であることがさらに好ましい。重合体ブロック(a)の含有量が前記範囲内にあると、高い遮音性を確保しつつ、得られるフィルムの取扱性および機械物性を高めることができる。
なお、ブロック共重合体(A)における重合体ブロック(a)の含有量は、1H−NMRスペクトルによって求められる。
重合体ブロック(b)を構成する前記共役ジエン化合物としては、例えば、イソプレン、ブタジエン、ヘキサジエン、2,3−ジメチル−1,3−ブタジエン、1,3−ペンタジエン、ミルセンなどを挙げることができる。これらの共役ジエン化合物は1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。中でも、入手の容易さや汎用性、後述する結合形態の制御性などの観点から、イソプレン、ブタジエン、イソプレンとブタジエンの混合物が好ましく、イソプレンがより好ましい。
ブタジエンとイソプレンの混合物の場合、それらの混合比率[イソプレン/ブタジエン](質量比)に特に制限はないが、好ましくは5/95〜95/5、より好ましくは10/90〜90/10、さらに好ましくは40/60〜70/30、特に好ましくは45/55〜65/35である。なお、該混合比率[イソプレン/ブタジエン]をモル比で示すと、好ましくは5/95〜95/5、より好ましくは10/90〜90/10、さらに好ましくは40/60〜70/30、特に好ましくは45/55〜55/45である。
重合体ブロック(b)における共役ジエン単量体単位の含有量は、重合体ブロック(b)を構成する全構造単位に対して60モル%以上である。重合体ブロック(b)における共役ジエン単量体単位が60モル%未満であると、遮音性を発揮するセグメントの量が少なくなり、中間膜として望ましくない。重合体ブロック(b)における共役ジエン単量体単位の含有量は、好ましくは65モル%以上、より好ましくは80モル%以上である。その上限値は特に限定されず、100モル%であってもよい。
重合体ブロック(b)は、1種の共役ジエン化合物に由来する単量体単位のみを有していてもよく、2種以上の共役ジエン化合物に由来する単量体単位を有していてもよい。本発明においては、重合体ブロック(b)は、共役ジエン単量体単位を60モル%以上含有するものであるが、前記共役ジエン単量体単位として、イソプレンに由来する単量体単位(以下、「イソプレン単位」と略称することがある。)、ブタジエンに由来する単量体単位(以下、「ブタジエン単位」と略称することがある。)、または、イソプレンおよびブタジエンの混合物に由来する単量体単位を、それぞれの場合において60モル%以上含有していることが好ましい。重合体ブロック(b)が、共役ジエン単量体単位として、上記単量体単位からなる群から選択される少なくとも1種の単量体単位を60モル%以上含むことにより、良好な遮音性を示すセグメントを有する中間膜とすることができる。
重合体ブロック(b)が2種以上の共役ジエン単量体単位を有している場合は、それらの結合形態はランダム、テーパー、完全交互、一部ブロック状、ブロック、またはそれらの2種以上の組み合わせのいずれであってもよい。
重合体ブロック(b)は、本発明の目的および効果の妨げにならない範囲において、共役ジエン単量体単位以外の他の不飽和単量体に由来する単量体単位を含有していてもよい。この場合、重合体ブロック(b)中の他の不飽和単量体に由来する単量体単位の含有量は、重合体ブロック(b)を構成する全単量体単位に対して、40モル%未満であり、好ましくは35モル%未満であり、より好ましくは20モル%未満である。
他の不飽和単量体としては、例えばスチレン、α−メチルスチレン、o−メチルスチレン、m−メチルスチレン、p−メチルスチレン、p−t−ブチルスチレン、2,4−ジメチルスチレン、ビニルナフタレンおよびビニルアントラセンなどの芳香族ビニル化合物、並びにメタクリル酸メチル、メチルビニルエーテル、N−ビニルカルバゾール、β−ピネン、8,9−p−メンテン、ジペンテン、メチレンノルボルネン、2−メチレンテトラヒドロフラン、1,3−シクロペンタジエン、1,3−シクロヘキサジエン、1,3−シクロヘプタジエン、1,3−シクロオクタジエンなどに由来する単量体が挙げられる。中でも、スチレン、α−メチルスチレン、p−メチルスチレンが好ましく、スチレンがより好ましい。重合体ブロック(b)が共役ジエン単量体単位以外の他の不飽和単量体に由来する単量体単位を含有する場合、その具体的な組み合わせとしては、好ましくは、イソプレンとスチレン、ブタジエンとスチレンであり、より好ましくはイソプレンとスチレンである。重合体ブロック(b)がこのような組み合わせを含む場合、tanδが高くなることがある。
重合体ブロック(b)が他の不飽和単量体に由来する単量体単位を含有する場合、その結合形態は特に制限はなく、ランダム、テーパー状のいずれでもよい。
重合体ブロック(b)を構成する単量体単位が、イソプレン単位、ブタジエン単位、イソプレンおよびブタジエンの混合物単位のいずれかである場合、イソプレンおよびブタジエンそれぞれの結合形態としては、ブタジエンの場合には1,2−結合、1,4−結合を、イソプレンの場合には1,2−結合、3,4−結合、1,4−結合をとることができる。
ブロック共重合体においては、重合体ブロック(b)中の3,4−結合単位および1,2−結合単位の含有量の合計(以下、「ビニル結合量」と称することがある。)が好ましくは20モル%以上、より好ましくは40モル%以上、さらに好ましくは50モル%以上である。また、特に制限されるものではないが、重合体ブロック(b)中のビニル結合量は、好ましくは90モル%以下、より好ましくは85モル%以下である。ここで、ビニル結合量は、水添前のブロック共重合体をCDCl3に溶解して1H−NMRスペクトルを測定して算出される。イソプレンおよび/またはブタジエン由来の単量体単位の全ピーク面積と、イソプレン単位における3,4−結合単位および1,2−結合単位、ブタジエン単位における1,2−結合単位、または、イソプレンとブタジエンの混合物に由来する単量体単位の場合はそれぞれの前記結合単位に対応するピーク面積の比から、ビニル結合量(3,4−結合単位と1,2−結合単位の含有量の合計)を算出することができる。
なお、重合体ブロック(b)がブタジエンのみからなる場合には、前記の「3,4−結合単位および1,2−結合単位の含有量」とは「1,2−結合単位の含有量」と読み替えて適用する。
ブロック共重合体(A)に含まれる前記重合体ブロック(b)の重量平均分子量は、遮音性などの観点から、水素添加前の状態で、好ましくは15,000〜800,000であり、より好ましくは50,000〜700,000であり、さらに好ましくは70,000〜600,000、特に好ましくは90,000〜500,000、最も好ましくは130,000〜450,000である。ここで、重量平均分子量とは、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)測定によって求めたポリスチレン換算の重量平均分子量であり、重合体ブロック(b)の重量平均分子量とは、重合体ブロック(b)を共重合する前後の重量平均分子量の差により算出した値を意味する。
重合体ブロック(b)のガラス転移温度は、−14℃以下であることが好ましく、−15℃以下であることがより好ましく、−30℃以上であることが好ましく、−20℃以上であることがより好ましい。重合体ブロック(b)のガラス転移温度が上記範囲内にあると、ブロック共重合体(A)を含んで構成される熱可塑性エラストマー含有組成物のtanδの値を特定の範囲に制御しやすくなり、得られる中間膜の遮音性の向上につながる。
ブロック共重合体(A)は、上記重合体ブロック(b)を少なくとも1つ有していればよい。ブロック共重合体(A)が重合体ブロック(b)を2つ以上有する場合には、それらの重合体ブロック(b)は、互いに同一であっても異なっていてもよい。
ブロック共重合体(A)における重合体ブロック(b)の含有量(複数の重合体ブロック(b)を有する場合には、それらの合計含有量)は、ブロック共重合体(A)の総質量に対して、好ましくは85〜97質量%である。重合体ブロック(b)の含有量が、上記範囲内にあると、ブロック共重合体(b)が適度な柔軟性や良好な成形性を有する。また、ブロック共重合体(A)のモルフォロジーによってtanδの値も変化し、特にスフィア構造からなるミクロ相分離構造をとる場合にtanδが高くなる傾向にある。スフィア構造の形成のしやすさには、ブロック共重合体(A)における重合体ブロック(b)の含有量が大きく影響するため、ブロック重合体(b)の含有量を調整することは、得られる中間膜の遮音性をより向上させる上で非常に重要である。したがって、遮音性を高める観点から、本発明においては、重合体ブロック(b)の含有量が、ブロック共重合体(A)の総質量に対して、85〜97質量%であることがより好ましく、85〜96.5質量%であることがさらに好ましく、95.5〜96.5質量%であることが特に好ましい。一方で、フィルムの取扱性および機械物性を高める観点からは、85〜94質量%が好ましく、85〜92質量%がより好ましく、85〜90質量%がさらに好ましい。本発明の好適な一実施態様において、重合体ブロック(b)の含有量は、ブロック共重合体(A)の水素添加物の総質量に対して85〜97質量%であり、重合体ブロック(b)の含有量が前記範囲内にあると、高い遮音性を確保しつつ、得られるフィルムの取扱性および機械物性を高めることができる。
ブロック共重合体(A)は、重合体ブロック(a)と重合体ブロック(b)とが結合している限りは、その結合形式は限定されず、直鎖状、分岐状、放射状、またはこれらの2つ以上が組合わさった結合様式のいずれでもよい。中でも、重合体ブロック(a)と重合体ブロック(b)の結合形式は直鎖状であることが好ましく、その例としては重合体ブロック(a)をAで、また重合体ブロック(b)をBで表したときに、A−Bで示されるジブロック共重合体、A−B−Aで示されるトリブロック共重合体、A−B−A−Bで示されるテトラブロック共重合体、A−B−A−B−Aで示されるペンタブロック共重合体などを挙げることができる。中でも、直鎖状のトリブロック共重合体、またはジブロック共重合体が好ましく、A−B−A型のトリブロック共重合体が、柔軟性、製造の容易性などの観点から好ましく用いられる。
本発明において、A層を構成する組成物に含まれる熱可塑性エラストマーは、上記ブロック共重合体(A)の水素添加物(以下、「水添ブロック共重合体(A)」ともいう)である。
耐熱性、耐候性、遮音性の観点から、重合体ブロック(b)が有する炭素−炭素二重結合の80モル%以上が水素添加(以下、「水添」と略称することがある。)されていることが好ましく、85モル%以上が水添されていることがより好ましく、90モル%以上が水添されていることがさらに好ましく、93モル%以上が水添されていることが特に好ましい(以下、この値を水素添加率(水添率)ともいう)。水素添加率の上限値に特に制限はないが、上限値は99モル%であってもよく、98モル%であってもよい。なお、水素添加率は、重合体ブロック(b)中の共役ジエン単量体単位中の炭素−炭素二重結合の含有量を、水素添加後の1H−NMR測定によって求めた値である。
水添ブロック共重合体(A)のゲルパーミエーションクロマトグラフィーによる標準ポリスチレン換算で求めた重量平均分子量は、好ましくは15,000〜800,000、より好ましくは50,000〜700,000、さらに好ましくは70,000〜600,000、特に好ましくは90,000〜500,000、最も好ましくは130,000〜450,000である。水添ブロック共重合体(A)の重量平均分子量が上記下限値以上であれば耐熱性が高くなり、上記上限値以下であれば成形性が良好となる。
ブロック共重合体(A)の製造方法は特に限定されないが、例えばアニオン重合法、カチオン重合法、ラジカル重合法などにより製造できる。例えばアニオン重合の場合、具体的には、
(i)アルキルリチウム化合物を開始剤として用い、芳香族ビニル化合物、共役ジエン化合物、次いで芳香族ビニル化合物を逐次重合させる方法;
(ii)アルキルリチウム化合物を開始剤として用い、芳香族ビニル化合物、共役ジエン化合物を逐次重合させ、次いでカップリング剤を加えてカップリングする方法;
(iii)ジリチウム化合物を開始剤として用い、共役ジエン化合物、次いで芳香族ビニル化合物を逐次重合させる方法などが挙げられる。
共役ジエン化合物を用いる場合、アニオン重合の際に有機ルイス塩基を添加することによって、熱可塑性エラストマーのビニル結合量を増やすことができ、有機ルイス塩基の添加量を調整することによって、熱可塑性エラストマーのビニル結合量を容易に制御することができる。これらを制御することにより、熱可塑性エラストマーのtanδのピーク温度や高さを調整することができる。例えば、有機ルイス塩基を添加し、熱可塑性エラストマーのビニル結合量が増えるほど、tanδの値が高くなる傾向にあり、この値を特定の範囲に制御することにより、得られる中間膜の遮音性を向上させることができる。
前記有機ルイス塩基としては、例えば、酢酸エチルなどのエステル;トリエチルアミン、N,N,N’,N’−テトラメチルエチレンジアミン(TMEDA)、N−メチルモルホリンなどのアミン;ピリジンなどの含窒素複素環式芳香族化合物;ジメチルアセトアミドなどのアミド;ジメチルエーテル、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン(THF)、ジオキサンなどのエーテル;エチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテルなどのグリコールエーテル;ジメチルスルホキシドなどのスルホキシド;アセトン、メチルエチルケトンなどのケトン;などが挙げられる。
ブロック共重合体(A)を水素添加反応に付すことにより、水添ブロック共重合体(A)を得ることができる。未水添のブロック共重合体(A)を水素添加反応に付す方法としては、水素添加触媒に対して不活性な溶媒に、得られた未水添のブロック共重合体(A)を溶解させるか、または、未水添のブロック共重合体(A)を反応液から単離せずにそのまま用い、水素添加触媒の存在下、水素と反応させる方法が挙げられる。水添率は80モル%以上が好ましく、85モル%以上がより好ましく、90モル%以上がさらに好ましく、93モル%以上が特に好ましい。
水素添加触媒としては、例えばラネーニッケル;Pt、Pd、Ru、Rh、Niなどの金属をカーボン、アルミナ、珪藻土などの単体に担持させた不均一系触媒;遷移金属化合物とアルキルアルミニウム化合物、アルキルリチウム化合物などとの組み合わせからなるチーグラー系触媒;メタロセン系触媒などが挙げられる。水素添加反応は、通常、水素圧力0.1MPa以上、20MPa以下で、反応温度20℃以上、250℃以下で、反応時間0.1時間以上、100時間以下の条件で行うことができる。
本発明の合わせガラス用中間膜を構成するA層は、上記水添ブロック共重合体(A)からなる熱可塑性エラストマーを含有する組成物から構成される。本発明において、前記熱可塑性エラストマー含有組成物は、JIS K 7244−10に準じて周波数1Hzの条件で複素せん断粘度試験を行うことで測定されるtanδが最大となるピーク(以下、「tanδのピーク温度」ともいう)を−20℃以上−6℃以下の範囲に有する。ここで、tanδとは、複素せん断粘度測定で得られるもので、損失正接とも呼ばれ、せん断損失弾性率をせん断貯蔵弾性率で除したものであり、この値が高いほど、高い遮音性が期待される。上記tanδの最大となるピークが、−20℃より低い範囲にあると、6000Hzから10000Hzの周波数域の遮音性の低下が顕著となる。また、−6℃より高い範囲にあると、4000Hzから6000Hzの中周波数域の遮音性の低下が顕著となる。本発明において、A層を構成する熱可塑性エラストマー含有組成物は、上記tanδの最大となるピークを、好ましくは−15℃以上、より好ましくは−12℃以上の範囲に有する。また、好ましくは−7℃以下、より好ましくは−8℃以下の範囲にtanδの最大ピークを有する。
なお、上記tanδは、具体的には、後述する実施例に記載の方法により測定される。
tanδのピーク温度を調整する方法としては、ブロック共重合体の全量に対して、ハードセグメントである重合体ブロック(a)の含有量を調整したり、ハードセグメントである重合体ブロック(a)やソフトセグメントである重合体ブロック(b)を構成する単量体の種類、結合形態、各セグメント自体のガラス転移温度などを調整したりする方法などが挙げられる。具体的には、例えば、ブロック共重合体の全量に対する重合体ブロック(a)の含有量を少なくすること、重合体ブロック(b)を構成する単量体の種類や組み合わせを変えてビニル結合量を多くすることにより、tanδのピーク温度を制御する(高くする)ことができる。
本発明では、A層を構成する熱可塑性エラストマー含有組成物において、周波数1Hzの条件で複素せん断粘度試験を行うことで測定される、−5℃におけるせん断貯蔵弾性率は0.7MPa以上10MPa未満である。−5℃における上記せん断貯蔵弾性率が0.7MPa未満であると、6000Hzから10000Hzの周波数域の20℃における遮音性が低下する。また、10MPa以上であると、中周波数域の20℃における遮音性が低下する。
従来、比較的大きな外部荷重の影響を受ける合わせガラス用途において、周波数1Hzの条件で複素せん断粘度試験を行うことで測定される25℃におけるせん断貯蔵弾性率が、中間膜を合わせガラスに用いた際の剛性や成形性等に関わる因子として知られている。したがって、合わせガラス用中間膜の調製においては、合わせガラスの剛性や成形性等を向上させる目的で、25℃におけるせん断貯蔵弾性率の制御が行われている。しかしながら、25℃におけるせん断貯蔵弾性率を特定の範囲に調整しても、時間−温度換算則に従い、実使用温度20℃の中周波数域2000〜6000Hzにおける合わせガラスの遮音性を必ずしも高く制御することはできなかった。これに対して、本発明は、中周波数域2000〜6000Hzにおける遮音性を高めるためには、コインシデンス効果の生じる周波数域を適切な周波数域に調整することが重要であり、そのために−5℃におけるレオロジーを制御することが重要であることを見出し、−5℃におけるせん断貯蔵弾性率を0.7MPa以上10MPa未満の範囲とすることにより、コインシデンス効果の発生する周波数域を適切な位置に制御し、2000〜6000Hzの周波数域における遮音性を顕著に改善するものである。コインシデンス効果の発生する周波数域をより適切な周波数域に制御する観点から、本発明において、−5℃における上記せん断貯蔵弾性率は、1.0MPa以上であることが好ましく、1.3MPa以上であることがより好ましい。また、5MPa未満であることが好ましく、3MPa未満であることがより好ましい。
なお、上記−5℃におけるせん断貯蔵弾性率は、具体的には、後述する実施例に記載の方法により測定される。
熱可塑性エラストマー含有組成物の−5℃におけるせん断貯蔵弾性率を調整する方法としては、例えば、ハードセグメントである重合体ブロック(a)の含有量を調整したり、ハードセグメントである重合体ブロック(a)やソフトセグメントである重合体ブロック(b)を構成する単量体の種類、結合形態、各セグメント自体のガラス転移温度などを調整したりする方法等が挙げられる。具体的には、例えば、ビニル結合量を調整し、ガラス転移温度を調整することにより、−5℃におけるせん断貯蔵弾性率を制御することができる。
本発明では、A層を構成する熱可塑性エラストマー含有組成物において、周波数1Hzの条件で複素せん断粘度試験を行うことで測定される、−5℃におけるtanδの値は1.0以上である。−5℃におけるtanδの値が1.0未満であると、他の因子を適切に制御しても、中周波数域の遮音性を十分に高くすることができない。上述の通り、tanδの値が高いほど高い遮音性を期待できるが、20℃の使用温度下における中間膜の遮音性を考慮した場合、周波数1Hzの条件での測定において、−5℃のtanδの値に着目して熱可塑性エラストマーを選ぶことによって、特に中周波数域における遮音性の高い中間膜とすることができる。これは、「20℃、5000Hz付近の周波数域」の条件は、温度−時間換算則によれば、測定周波数1Hzの際には−5℃付近に相当するためである。中周波数域の遮音性をより向上させることができるため、本発明において、上記−5℃におけるtanδの値は、1.3以上であることが好ましく、1.5以上であることがより好ましい。−5℃におけるtanδの値の上限値は特に限定されないが、通常5.0以下である。
−5℃におけるtanδの値を高くする方法としては、tanδのピーク値を高めること、また、tanδのピーク温度を上述の方法によって調整することが挙げられる。tanδのピーク値を高める方法としては、ミクロ相分離構造をスフィア構造とすること、重合体ブロック(b)中の3,4−結合単位および1,2−結合単位の含有量を高めることなどが挙げられる。tanδのピーク値は、好ましくは2.0以上であり、より好ましくは2.2以上、より好ましくは2.4以上である。tanδのピーク値の高さが上記下限値以上であると、より高い遮音性を実現することができる。tanδのピーク値の高さの上限値は特に限定されず、通常5.0以下である。
本発明の合わせガラス用中間膜を構成する熱可塑性エラストマー含有組成物は、上述した水添ブロック共重合体(A)からなる熱可塑性エラストマーを、組成物の総質量に対して、好ましくは60質量%以上、より好ましくは70質量%以上、さらに好ましくは80質量%以上の量で含む。また、上記熱可塑性エラストマーの他に、必要に応じて、本発明の効果が損なわれない範囲において、他の熱可塑性樹脂(例えば、結晶核剤等の添加剤;水添クマロン・インデン樹脂、水添ロジン系樹脂、水添テルペン樹脂、脂環族系水添石油樹脂等の水添系樹脂;オレフィンおよびジオレフィン重合体からなる脂肪族系樹脂等の粘着付与樹脂;水添ポリイソプレン、水添ポリブタジエン、ブチルゴム、ポリイソブチレン、ポリブテン、ポリオレフィン系エラストマー、具体的にはエチレン−プロピレン共重合体、エチレン−ブチレン共重合体、プロピレン−ブチレン共重合体、ポリオレフィン系樹脂、オレフィン系重合体、ポリエチレン系樹脂等)を含んでいてもよい。
本発明の合わせガラス用中間膜において、上記熱可塑性エラストマー含有組成物から構成されるA層の厚みは、100μm以上400μm以下である。A層の最適な厚みは、中間膜を構成する他の層(例えば、後述するB層)の厚みや各層の弾性率により異なるが、上記熱可塑性エラストマー含有組成物から構成されるA層が厚いほど遮音性が高くなる一方、中間膜全体の弾性率が下がる傾向にある。これにより、A層の厚みが400μmより厚くなると、合わせガラスのコインシデンス効果が生じる周波数域が6000Hzよりも高い高周波数側で生じやすくなり、6000Hz以上における遮音性の低下が顕著になることがある。高周波数域の遮音性をより高める点から、A層の厚みは380μm以下であることが好ましく、360μm以下であることがより好ましい。また、A層の厚みが100μmより薄い場合には、弾性率が高くなり、コインシデンス効果の生じる周波数域が中周波数域の間に生じることがあり、4000〜6000Hzの中周波数域における遮音性の低下が顕著になることがある。特にこの周波数域の遮音性は実用上重要であり、また、遮音性の改善効果もA層の厚みの低下に伴って小さくなることから、A層の厚みは120μm以上であることが好ましく、150μm以上であることがより好ましい。
A層は、その他の成分として、後述する酸化防止剤、紫外線吸収剤、光安定剤、ブロッキング防止剤、顔料、染料、遮熱材料等を必要に応じて含有してもよい。
酸化防止剤としては、例えば、フェノール系酸化防止剤、リン系酸化防止剤、硫黄系酸化防止剤などが挙げられる。
フェノール系酸化防止剤としては、例えば、1,3,5−トリス(4−tert−ブチル−3−ヒドロキシ−2,6−ジメチルベンジル)−1,3,5−トリアジン−2,4,6−(1H,3H,5H)−トリオン、2−t−ブチル−6−(3−t−ブチル−2−ヒドロキシ−5−メチルベンジル)−4−メチルフェニルアクリレート、2,4−ジ−t−アミル−6−(1−(3,5−ジ−t−アミル−2−ヒドロキシフェニル)エチル)フェニルアクリレートなどのアクリレート系化合物;2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェノール、2,6−ジ−t−ブチル−4−エチルフェノール、オクタデシル−3−(3,5−)ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート、2,2’−メチレン−ビス(4−メチル−6−t−ブチルフェノール)、4,4’−ブチリデン−ビス(4−メチル−6−t−ブチルフェノール)、4,4’−ブチリデン−ビス(6−t−ブチル−m−クレゾール)、4,4’−チオビス(3−メチル−6−t−ブチルフェノール)、ビス(3−シクロヘキシル−2−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)メタン、3,9−ビス(2−(3−(3−t−ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)プロピオニルオキシ)−1,1−ジメチルエチル)−2,4,8,10−テトラオキサスピロ[5.5]ウンデカン、1,1,3−トリス(2−メチル−4−ヒドロキシ−5−t−ブチルフェニル)ブタン、1,3,5−トリメチル−2,4,6−トリス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)ベンゼン、テトラキス(メチレン−3−(3’,5’−ジ−t−ブチル−4’−ヒドロキシフェニル)プロピオネート)メタン、またはトリエチレングリコールビス(3−(3−t−ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)プロピオネート)などのアルキル置換フェノール系化合物;6−(4−ヒドロキシ−3,5−ジ−t−ブチルアニリノ)−2,4−ビス−オクチルチオ−1,3,5−トリアジン、6−(4−ヒドロキシ−3,5−ジメチルアニリノ)−2,4−ビス−オクチルチオ−1,3,5−トリアジン、6−(4−ヒドロキシ−3−メチル−5−t−ブチルアニリノ)−2,4−ビス−オクチルチオ−1,3,5−トリアジン、または2−オクチルチオ−4,6−ビス−(3,5−ジ−t−ブチル−4−オキシアニリノ)−1,3,5−トリアジンなどのトリアジン基含有フェノール系化合物;などが挙げられる。
リン系酸化防止剤としては、例えば、トリス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)ホスフェイト、トリフェニルホスファイト、ジフェニルイソデシルホスファイト、フェニルジイソデシルホスファイト、トリス(ノニルフェニル)ホスファイト、トリス(ジノニルフェニル)ホスファイト、トリス(2−t−ブチル−4−メチルフェニル)ホスファイト、トリス(シクロヘキシルフェニル)ホスファイト、2,2−メチレンビス(4,6−ジ−t−ブチルフェニル)オクチルホスファイト、9,10−ジヒドロ−9−オキサ−10−ホスファフェナントレン−10−オキサイド、10−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)−9,10−ジヒドロ−9−オキサ−10−ホスファフェナントレン−10−オキサイド、または10−デシロキシ−9,10−ジヒドロ−9−オキサ−10−ホスファフェナントレンなどのモノホスファイト系化合物;4,4’−ブチリデン−ビス(3−メチル−6−t−ブチルフェニル−ジ−トリデシルホスファイト)、4,4’−イソプロピリデン−ビス(フェニル−ジ−アルキル(C12〜C15)ホスファイト)4,4’−イソプロピリデン−ビス(ジフェニルモノアルキル(C12〜C15)ホスファイト)、1,1,3−トリス(2−メチル−4−ジ−トリデシルホスファイト−5−t−ブチルフェニル)ブタン、またはテトラキス(2,4−ジ−tブチルフェニル)−4,4’−ビフェニレンホスファイトなどのジホスファイト系化合物;などが挙げられる。これらの中でもモノホスファイト系化合物が好ましい。
硫黄系酸化防止剤としては、例えば、ジラウリル3,3’−チオジプロピオネート、ジステアリル3,3−チオジプロピオネート、ラウリルステアリル3,3’−チオジプロピオネート、ペンタエリスリトール−テトラキス−(β−ラウリル−チオプロピオネート)、3,9−ビス(2−ドデシルチオエチル)−2,4,8,10−テトラオキサスピロ[5.5]ウンデカンなどが挙げられる。
酸化防止剤を含有する場合、その含有量は、A層に含まれる熱可塑性エラストマー100質量部に対して0.001質量部以上であることが好ましく、0.01質量部以上であることがより好ましい。また、酸化防止剤の含有量は、熱可塑性エラストマー100質量部に対して5質量部以下であることが好ましく、1質量部以下であることがより好ましい。酸化防止剤の量が上記範囲内であると、十分な酸化防止効果を付与できる。
紫外線吸収剤としては、例えば、ベンゾトリアゾール系化合物、ヒンダードアミン系化合物、ベンゾエート系化合物、トリアジン系化合物、ベンゾフェノン系化合物、マロン酸エステル系化合物、インドール系化合物、シュウ酸アニリド系化合物などが挙げられる。これらは1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
紫外線吸収剤を含有する場合、その含有量は、A層に含まれる熱可塑性エラストマーに対して質量基準で10ppm以上であることが好ましく、100ppm以上であることがより好ましい。また、紫外線吸収剤の含有量は、A層に含まれる熱可塑性エラストマーに対して質量基準で50,000ppm以下であることが好ましく、10,000ppm以下であることがより好ましい。紫外線吸収剤の添加量が上記範囲内であれば、十分な紫外線吸収効果を期待できる。
光安定剤としては、例えばヒンダードアミン系光安定剤などが挙げられる。
遮熱材料を含むことで、合わせガラス用中間膜に遮熱機能を付与し、合わせガラスとしたときに、波長1500nmの近赤外光の透過率を下げることができる。
遮熱材料としては、例えば、熱線遮蔽機能を有する熱線遮蔽粒子や、熱線遮蔽機能を有する有機色素化合物を樹脂またはガラスに含有させた材料などが挙げられる。熱線遮蔽粒子としては、例えば、錫ドープ酸化インジウム、アンチモンドープ酸化錫、アルミニウムドープ酸化亜鉛、錫ドープ酸化亜鉛、珪素ドープ酸化亜鉛などの酸化物の粒子、LaB6(六ホウ化ランタン)粒子などの熱線遮蔽機能を有する無機材料の粒子などが挙げられる。また、熱線遮蔽機能を有する有機色素化合物としては、例えば、ジイモニウム系色素、アミニウム系色素、フタロシアニン系色素、アントラキノン系色素、ポリメチン系色素、ベンゼンジチオール型アンモニウム系化合物、チオ尿素誘導体、チオール金属錯体などが挙げられる。これらの遮熱材料は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。遮熱材料を含む場合、遮熱材料は、錫ドープ酸化インジウム、アンチモンドープ酸化錫、アンチモン酸亜鉛、金属ドープ酸化タングステン(例えば、セシウムドープ酸化タングステン)、フタロシアニン化合物、ジイモニウム系色素、アミニウム系色素、フタロシアニン系色素、アントラキノン系色素、ポリメチン系色素、ベンゼンジチオール型アンモニウム系化合物、チオ尿素誘導体、チオール金属錯体、アルミニウムドープ酸化亜鉛、錫ドープ酸化亜鉛、珪素ドープ酸化亜鉛、六ホウ化ランタンおよび酸化バナジウムからなる群より選ばれる少なくとも1種であることが好ましい。
遮熱材料として熱線遮蔽粒子を用いる場合、その含有量は、中間膜を構成する全エラストマーおよび樹脂成分に対して0.01質量%以上であることが好ましく、0.05質量%以上であることがより好ましく、0.1質量%以上であることがさらに好ましく、0.2質量%以上であることが特に好ましい。また、5質量%以下であることが好ましく、3質量%以下であることがより好ましい。
なお、遮熱材料は、A層および後述するB層のいずれに含まれていてもよく、上記含有量は、中間膜を構成するA層、およびB層が存在する場合にはB層の両者に含まれるエラストマーおよび樹脂の合計量を100質量%とした場合の量を意味する。後述する有機色素化合物における含有量においても同じである。熱線遮蔽粒子の含有量が上記範囲内にあると、得られる中間膜を用いた合わせガラスの可視光線の透過率に影響を及ぼすことなく、波長1500nmの近赤外光の透過率を効果的に下げることができる。中間膜の透明性の観点から、熱線遮蔽粒子の平均粒子径は、100nm以下であることが好ましく、50nm以下であることがより好ましい。なお、ここでいう熱線遮蔽粒子の平均粒子径は、レーザー回折装置で測定されるものをいう。
遮熱材料として有機色素化合物を用いる場合、その含有量は、中間膜を構成する全エラストマーおよび樹脂成分に対して0.001質量%以上であることが好ましく、0.005質量%以上であることがより好ましく、0.01質量%以上であることがさらに好ましい。また、1質量%以下であることが好ましく、0.5質量%以下であることがより好ましい。遮熱性化合物の含有量が上記範囲内にあると、得られる中間膜を用いた合わせガラスの可視光線の透過率に影響を及ぼすことなく、波長1500nmの近赤外光の透過率を効果的に下げることができる。
ブロッキング防止剤としては、無機粒子、有機粒子が挙げられる。無機粒子としては、IA族、IIA族、IVA族、VIA族、VIIA族、VIIIA族、IB族、IIB族、IIIB族、IVB族元素の酸化物、水酸化物、硫化物、窒素化物、ハロゲン化物、炭酸塩、硫酸塩、酢酸塩、燐酸塩、亜燐酸塩、有機カルボン酸塩、珪酸塩、チタン酸塩、硼酸塩およびそれらの含水化合物、並びにそれらを中心とする複合化合物および天然鉱物粒子が挙げられる。有機粒子としては、フッ素樹脂、メラミン系樹脂、スチレン−ジビニルベンゼン共重合体、アクリル系レジンシリコーンおよびそれらの架橋体が挙げられる。
(B層)
本発明の合わせガラス用中間膜は、A層の両面に積層されたB層を含むことが好ましく、B層は、ガラスに対して接着性を持つ層であることが好ましい。
B層は、A層と、その両面に積層されたB層とを有する中間膜として、縦300mm、横25mm、厚さ1.9mmのフロートガラス2枚で挟んだ際に、20℃で中央加振法により測定される3次共振周波数での損失係数が0.3以上であり、かつISO16940(2008)に準じて算出される該3次共振周波数での曲げ剛性が90N・m以上180N・m以下であるように選択することが好ましい。
ここで、合わせガラスの遮音性は、中央加振法によるダンピング試験によって得られる損失係数で評価できる。ダンピング試験は、損失係数が周波数や温度によってどのような値になるかを評価する試験である。周波数を一定としたときに、ある温度範囲において最大となる損失係数を最大損失係数と呼ぶ。最大損失係数は、ダンピングの良さを示す指標であり、具体的には、板状の物体に発生した屈曲振動がどの程度の速さで減衰するのかを表す指標である。つまり、最大損失係数は遮音性の指標となり、最大損失係数が高いほど、合わせガラスの遮音性が高いといえる。
本発明の合わせガラス用中間膜は、合わせガラスに用いた場合に高い遮音性を実現するため、上記条件において測定される20℃で中央加振法により測定される3次共振周波数での損失係数が高いことが好ましい。上記損失係数が0.25以上であると、合わせガラスに用いた場合に十分に高い遮音性を実現し得る合わせガラス用中間膜となるため、好ましい。上記損失係数は、より好ましくは0.28以上であり、さらに好ましくは0.3以上である。損失係数の上限値は特に限定されないが、通常、A層に用いられる熱可塑性エラストマー含有組成物の持つtanδ値の上限から、例えば0.8以下である。
なお、上記損失係数は、具体的には、後述する実施例に記載される方法で測定される。
合わせガラス用中間膜における上記損失係数は、中間膜に用いる材料の持つtanδ値とせん断弾性率により制御できる。例えば、特定の周波数において、中間層を構成するA層一層のtanδを高くし、かつ、各層のせん断貯蔵弾性率を調整し、中間膜全体の曲げ剛性が後述の範囲となるように制御することにより、損失係数を高くできる。
また、上記ダンピング試験において算出されるISO16940(2008)に準じて算出される該3次共振周波数での曲げ剛性が90N・m以上180N・m以下であると、コインシデンス効果の発生する周波数域を適切な周波数域に制御することができ、合わせガラスに用いた際に2000〜6000Hzの周波数域における遮音性がより一層向上した合わせガラスとなる。特に、上記曲げ剛性が90N・m以上であると、コインシデンス効果の現れる周波数が高周波数側で生じるのを抑えることができるため、6300Hz以上、特に8000Hz以上における遮音性の低下を防ぐことができ、高周波数域における遮音性に優れた合わせガラス用中間膜となる。また、上記曲げ剛性が180N・m以下であると、中周波数側で生じるコインシデンス効果による遮音性の低下を軽微に抑えることができるため、実用上特に重要となる中周波数域における遮音性に優れた合わせガラス用中間膜となる。本発明においては、合わせガラスに用いた際に、中周波数域に加えて、高周波数域においても高い遮音性を付与し得る合わせガラス用中間膜となるよう、上記曲げ剛性は、100N・m以上であることがより好ましく、120N・m以上であることがさらに好ましく、140N・m以上であることが特に好ましい。
なお、上記曲げ剛性は、具体的には、後述する実施例に記載される方法で測定される。
合わせガラス用中間膜における上記曲げ剛性は、中間膜を構成する各層のせん断貯蔵弾性率の調整によって制御できる。例えば、せん断貯蔵弾性率が相対的に高い材料を中間膜に用いると、曲げ剛性を相対的に高くできる。
例えば、B層は樹脂組成物から構成することができる。B層を構成し得る樹脂としては、ポリビニルアセタール樹脂等の熱可塑性樹脂、アイオノマー樹脂などが挙げられる。中でも、合わせガラス用中間膜としたときに、破損時のガラス飛散性が低い安全ガラスを作製できる等の観点から、本発明の合わせガラス用中間膜を構成するB層は、ポリビニルアセタール樹脂またはアイオノマー樹脂を含有する樹脂組成物から構成されることが好ましい。
B層にポリビニルアセタール樹脂を用いる場合、ポリビニルアセタール樹脂の平均アセタール化度は40モル%以上であることが好ましく、90モル%以下であることが好ましい。平均アセタール化度が上記範囲内にあると、可塑剤との相溶性が良好であり、ポリビニルアセタール樹脂を容易に得ることができるため、プロセス上の観点からも好ましい。平均アセタール化度は60モル%以上であることがより好ましく、耐水性の観点から、65モル%以上であることがさらに好ましい。また、平均アセタール化度は85モル%以下であることが好ましく、80モル%以下であることがさらに好ましい。
ポリビニルアセタール樹脂のビニルアセテート単位の含有量は30モル%以下であることが好ましく、20モル%以下であることがより好ましい。ビニルアセテート単位の含有量が上記上限値以下であると、ポリビニルアセタール樹脂の製造時にブロッキングを起こし難く、製造し易くなる。ビニルアセテート単位の平均含有量の下限値は、特に限定されるものではない。
ポリビニルアセタール樹脂のビニルアルコール単位の含有量は、5モル%以上であることが好ましく、10モル%以上であることがより好ましく、15モル%以上であることがさらに好ましい。ポリビニルアセタール樹脂のビニルアルコール単位の含有量は、35モル%以下であることが好ましく、30モル%以下であることがより好ましく、25モル%以下であることがさらに好ましく、20モル%以下であることが特に好ましい。ビニルアルコール単位の含有量が上記下限値以上であると、可塑剤として後述する水酸基を有する化合物を用いた場合に、可塑剤が有する水酸基とポリビニルアセタールに十分な相互作用(水素結合)を持たせることができ、その結果、ポリビニルアセタールと可塑剤の相溶性が良好になり、可塑剤が他の層へ移行し難くなる傾向にある。また、ビニルアルコール単位の含有量が上記上限値以下であると、安全ガラスとして中間膜に要求される耐貫通性、耐衝撃性機能を好適に制御できる。
ポリビニルアセタール樹脂は、通常、ビニルアセタール単位、ビニルアルコール単位およびビニルアセテート単位から構成されており、これらの各単位量は、例えば、JIS K6728「ポリビニルブチラール試験方法」や核磁気共鳴法(NMR)によって測定できる。
ポリビニルアセタール樹脂が、ビニルアセタール単位以外の単位を含む場合は、ビニルアルコールの単位量とビニルアセテートの単位量を測定し、これらの両単位量をビニルアセタール単位以外の単位を含まない場合のビニルアセタール単位量から差し引くことで、残りのビニルアセタール単位量を算出できる。
ポリビニルアセタール樹脂は、従来公知の方法により製造でき、代表的には、ポリビニルアルコールにアルデヒド類を用いてアセタール化することにより製造できる。具体的には、例えば、ポリビニルアルコールを温水に溶解し、得られた水溶液を所定の温度(例えば、0℃以上、好ましくは10℃以上、90℃以下、好ましくは20℃以下)に保持しておいて、所要の酸触媒およびアルデヒド類を加え、撹拌しながらアセタール化反応を進行させる。次いで、反応温度を70℃程度に上げて熟成して反応を完結させ、その後、中和、水洗および乾燥を行うことで、ポリビニルアセタール樹脂の粉末を得ることができる。
ポリビニルアセタール樹脂の原料となるポリビニルアルコールの粘度平均重合度は、100以上であることが好ましく、300以上であることがより好ましく、400以上であることがより好ましく、600以上であることがさらに好ましく、700以上であることが特に好ましく、750以上であることが最も好ましい。ポリビニルアルコールの粘度平均重合度が低すぎると、耐貫通性、耐クリープ物性、特に85℃、85%RHのような高温高湿条件下での耐クリープ物性が低下することがある。また、ポリビニルアルコールの粘度平均重合度は、5000以下であることが好ましく、3000以下であることがより好ましく、2500以下であることがさらに好ましく、2300以下であることが特に好ましく、2000以下であることが最も好ましい。ポリビニルアルコールの粘度平均重合度が高すぎると、B層の成形が難しくなることがある。
さらに、得られる合わせガラス用中間膜のラミネート適性を向上させ、外観に一層優れた合わせガラスを得るためには、ポリビニルアルコールの粘度平均重合度が1500以下であることが好ましく、1100以下であることがより好ましく、1000以下であることがさらに好ましい。
なお、ポリビニルアセタール樹脂の粘度平均重合度は、原料となるポリビニルアルコールの粘度平均重合度と一致するため、上記したポリビニルアルコールの好ましい粘度平均重合度はポリビニルアセタール樹脂の好ましい粘度平均重合度と一致する。
得られるポリビニルアセタール樹脂のビニルアセテート単位を30モル%以下に設定するために、ケン化度が70モル%以上のポリビニルアルコールを使用することが好ましい。ポリビニルアルコールのケン化度が上記下限値以上であると、樹脂の透明性や耐熱性に優れる傾向にあり、またアルデヒド類との反応性も良好となる。ケン化度は、より好ましくは95モル%以上である。
ポリビニルアルコールの粘度平均重合度およびケン化度は、例えばJIS K 6726「ポリビニルアルコール試験方法」に基づいて測定できる。
ポリビニルアルコールのアセタール化に用いるアルデヒド類は特に限定されないが、炭素数1以上で、12以下のアルデヒドが好ましい。アルデヒドの炭素数が上記範囲内であるとアセタール化の反応性が良好であり、反応中に樹脂のブロックが発生し難くなり、ポリビニルアセタール樹脂の合成を容易に行うことができる。
前記アルデヒド類としては、例えば、ホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、プロピオンアルデヒド、n−ブチルアルデヒド、イソブチルアルデヒド、バレルアルデヒド、n−ヘキシルアルデヒド、2−エチルブチルアルデヒド、n−ヘプチルアルデヒド、n−オクチルアルデヒド、n−ノニルアルデヒド、n−デシルアルデヒド、ベンズアルデヒド、シンナムアルデヒド等の脂肪族、芳香族、脂環式アルデヒドが挙げられる。これらのうちでも炭素数2以上で、6以下の脂肪族アルデヒドが好ましく、中でもn−ブチルアルデヒドが特に好ましい。また、上記アルデヒド類は単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。さらに、多官能アルデヒド類やその他の官能基を有するアルデヒド類などを全アルデヒド類の20質量%以下の範囲で少量併用してもよい。
ポリビニルアセタール樹脂としては、ポリビニルブチラール樹脂が最も好ましい。なお、ポリビニルブチラール樹脂として、ビニルエステルと他の単量体との共重合体をけん化して得られるポリビニルアルコール系重合体を、ブチルアルデヒドを用いてブチラール化した変性ポリビニルブチラール樹脂を用いることもできる。ここで、前記他の単量体とは、例えば、エチレン、プロピレン、スチレンが挙げられる。その他、該他の単量体として、ヒドロキシル基、カルボキシル基、カルボキシレート基を有する単量体を用いることができる。
B層がポリビニルブチラール樹脂から構成されている場合、さらに可塑剤を添加することができる。B層に添加できる可塑剤としては特に制限はなく、一価カルボン酸エステル系可塑剤;多価カルボン酸エステル系可塑剤;リン酸エステル系可塑剤;有機亜リン酸エステル系可塑剤;カルボン酸ポリエステル系、炭酸ポリエステル系、ポリアルキレングリコール系などの高分子可塑剤;ひまし油などのヒドロキシカルボン酸と多価アルコールのエステル化合物;ヒドロキシカルボン酸と一価アルコールのエステル化合物などのヒドロキシカルボン酸エステル系可塑剤;が挙げられる。これらの可塑剤は、1種のみを単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
一価カルボン酸エステル系可塑剤としては、ブタン酸、イソブタン酸、へキサン酸、2−エチルブタン酸、へプタン酸、オクチル酸、2−エチルヘキサン酸、ラウリル酸などの一価カルボン酸と、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、グリセリンなどの多価アルコールとの縮合反応により得られる化合物が挙げられる。具体的には、トリエチレングリコールジ2−ジエチルブタノエート、トリエチレングリコールジヘプタノエート、トリエチレングリコールジ2−エチルヘキサノエート、トリエチレングリコールジオクタノエート、テトラエチレングリコールジ2−エチルブタノエート、テトラエチレングリコールジヘプタノエート、テトラエチレングリコールジ2−エチルヘキサノエート、テトラエチレングリコールジオクタノエート、ジエチレングリコールジ2−エチルヘキサノエート、PEG#400ジ2−エチルヘキサノエート、トリエチレングリコールモノ2−エチルヘキサノエート、グリセリンまたはジグリセリンの2−エチルヘキサン酸との完全または部分エステル化物などが挙げられる。ここでPEG#400とは、平均分子量が350〜450であるポリエチレングリコールを表す。
多価カルボン酸エステル系可塑剤としては、アジピン酸、コハク酸、アゼライン酸、セバシン酸、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、トリメット酸などの多価カルボン酸と、メタノール、エタノール、ブタノール、ヘキサノール、2−エチルブタノール、ヘプタノール、オクタノール、2−エチルヘキサノール、デカノール、ドデカノール、ブトキシエタノール、ブトキシエトキシエタノール、ベンジルアルコールなどの炭素数1〜12のアルコールとの縮合反応により得られる化合物が挙げられる。具体的には、アジピン酸ジヘキシル、アジピン酸ジ2−エチルブチル、アジピン酸ジヘプチル、アジピン酸ジオクチル、アジピン酸ジ2−エチルヘキシル、アジピン酸ジ(ブトキシエチル)、アジピン酸ジ(ブトキシエトキシエチル)、アジピン酸モノ(2−エチルヘキシル)、セバシン酸ジブチル、セバシン酸ジヘキシル、セバシン酸ジ2−エチルブチル、フタル酸ジブチル、フタル酸ジヘキシル、フタル酸ジ(2−エチルブチル)、フタル酸ジオクチル、フタル酸ジ(2−エチルヘキシル)、フタル酸ベンジルブチル、フタル酸ジドデシルなどが挙げられる。
リン酸エステル系可塑剤、亜リン酸エステル系可塑剤としては、リン酸または亜リン酸とメタノール、エタノール、ブタノール、ヘキサノール、2−エチルブタノール、ヘプタノール、オクタノール、2−エチルヘキサノール、デカノール、ドデカノール、ブトキシエタノール、ブトキシエトキシエタノール、ベンジルアルコールなどの炭素数1〜12のアルコールとの縮合反応により得られる化合物が挙げられる。具体的には、リン酸トリメチル、リン酸トリエチル、リン酸トリプロピル、リン酸トリブチル、リン酸トリ(2−エチルヘキシル)、リン酸トリ(ブトキシエチル)、亜リン酸トリ(2−エチルヘキシル)などが挙げられる。
カルボン酸ポリエステル系可塑剤としては、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、アジピン酸、スベリン酸、セバシン酸、ドデカン二酸、1,2−シクロヘキサンジカルボン酸、1,3−シクロヘキサンジカルボン酸、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸などの多価カルボン酸と、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、1,2−プロピレングリコール、1,3−プロピレングリコール、1,2−ブチレングリコール、1,3−ブチレングリコール、1,4−ブチレングリコール、1,2−ペンタンジオール、1,5−ペンタンジオール、2,4−ペンタンジオール、1,2−ヘキサンジオール、1,6−ヘキサンジオール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、3−メチル−2,4−ペンタンジオール、1,2−ヘプタンジオール、1,7−ヘプタンジオール、1,2−オクタンジオール、1,8−オクタンジオール、1,2−ノナンジオール、1,9−ノナンジオール、2−メチル−1,8−オクタンジオール、1,2−デカンジオール、1,10−デカンジオール、1,2−ドデカンジオール、1,12−ドデカンジオール、1,2−シクロヘキサンジオール、1,3−シクロヘキサンジオール、1,4−シクロヘキサンジオール、1,2−ビス(ヒドロキシメチル)シクロヘキサン、1,3−ビス(ヒドロキシメチル)シクロヘキサン、1,4−ビス(ヒドロキシメチル)シクロヘキサンなどの多価アルコールを交互共重合して得られるカルボン酸ポリエステル;グリコール酸、乳酸、2−ヒドロキシ酪酸、3−ヒドロキシ酪酸、4−ヒドロキシ酪酸、6−ヒドロキシへキサン酸、8−ヒドロキシへキサン酸、10−ヒドロキシデカン酸、12−ヒドロキシドデカン酸などの脂肪族ヒドロキシカルボン酸や、4−ヒドロキシ安息香酸、4−(2−ヒドロキシエチル)安息香酸などの芳香環を有するヒドロキシカルボン酸の重合体(ヒドロキシカルボン酸ポリエステル);γ−ブチロラクトン、γ−バレロラクトン、δ−バレロラクトン、β−メチル−δ−バレロラクトン、δ−ヘキサノラクトン、ε−カプロラクトン、ラクチドなどの脂肪族ラクトン化合物や、フタリドなどの芳香環を有するラクトン化合物を開環重合して得られるカルボン酸ポリエステル;などが挙げられる。これらのカルボン酸ポリエステルの末端構造は特に限定されず、水酸基やカルボキシル基でもよいし、また、末端水酸基や末端カルボキシル基を1価カルボン酸あるいは1価アルコールと反応させてエステル結合としたものでもよい。
炭酸ポリエステル系可塑剤としては、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、1,2−プロピレングリコール、1,3−プロピレングリコール、1,2−ブチレングリコール、1,3−ブチレングリコール、1,4−ブチレングリコール、1,2−ペンタンジオール、1,5−ペンタンジオール、2,4−ペンタンジオール、1,2−ヘキサンジオール、1,6−ヘキサンジオール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、3−メチル−2,4−ペンタンジオール、1,2−ヘプタンジオール、1,7−ヘプタンジオール、1,2−オクタンジオール、1,8−オクタンジオール、1,2−ノナンジオール、1,9−ノナンジオール、2−メチル−1,8−オクタンジオール、1,2−デカンジオール、1,10−デカンジオール、1,2−ドデカンジオール、1,12−ドデカンジオール、1,2−シクロヘキサンジオール、1,3−シクロヘキサンジオール、1,4−シクロヘキサンジオール、1,2−ビス(ヒドロキシメチル)シクロヘキサン、1,3−ビス(ヒドロキシメチル)シクロヘキサン、1,4−ビス(ヒドロキシメチル)シクロヘキサンなどの多価アルコールと、炭酸ジメチル、炭酸ジエチルなどの炭酸エステルをエステル交換反応により交互共重合して得られる炭酸ポリエステルが挙げられる。これらの炭酸ポリエステル化合物の末端構造は特に限定されないが、炭酸エステル基、または水酸基などが好ましい。
ポリアルキレングリコール系可塑剤としては、エチレンオキシド、プロピレンオキシド、ブチレンオキシド、オキセタンなどのアルキレンオキシドを、一価アルコール、多価アルコール、一価カルボン酸および多価カルボン酸を開始剤として開環重合させて得られる重合体が挙げられる。
ヒドロキシカルボン酸エステル系可塑剤としては、リシノール酸メチル、リシノール酸エチル、リシノール酸ブチル、6−ヒドロキシヘキサン酸メチル、6−ヒドロキシヘキサン酸エチル、6−ヒドロキシヘキサン酸ブチルなどのヒドロキシカルボン酸の1価アルコールエステル;エチレングリコールジ(6−ヒドロキシヘキサン酸)エステル、ジエチレングリコールジ(6−ヒドロキシヘキサン酸)エステル、トリエチレングリコールジ(6−ヒドロキシヘキサン酸)エステル、3−メチル−1,5−ペンタンジオールジ(6−ヒドロキシヘキサン酸)エステル、3−メチル−1,5−ペンタンジオールジ(2−ヒドロキシ酪酸)エステル、3−メチル−1,5−ペンタンジオールジ(3−ヒドロキシ酪酸)エステル、3−メチル−1,5−ペンタンジオールジ(4−ヒドロキシ酪酸)エステル、トリエチレングリコールジ(2−ヒドロキシ酪酸)エステル、グリセリントリ(リシノール酸)エステル、L−酒石酸ジ(1−(2−エチルヘキシル))、ひまし油などのヒドロキシカルボン酸の多価アルコールエステル;の他、ヒドロキシカルボン酸の多価アルコールエステルのヒドロキシカルボン酸由来の基を、水酸基を含まないカルボン酸由来の基または水素原子に置き換えた化合物も使用可能である。なお、これらヒドロキシカルボン酸エステルは従来公知の方法で得られるものを使用できる。
B層に含有される可塑剤は、ポリビニルブチラール樹脂との相溶性、他の層への低移行性、非移行性を高める観点からは、融点が30℃以下であり、水酸基価が15mgKOH/g以上450mgKOH/g以下であるエステル系可塑剤またはエーテル系可塑剤、または、非結晶性であり、水酸基価が15mgKOH/g以上450mgKOH/g以下であるエステル系可塑剤またはエーテル系可塑剤を使用することが好ましい。ここで非結晶性とは、−20℃以上の温度において融点が観測されないことを指す。前記水酸基価は、15mgKOH/g以上であることが好ましく、30mgKOH/g以上であることがより好ましく、45mgKOH/g以上であることが最適である。また、前記水酸基価が450mgKOH/g以下であることが好ましく、360mgKOH/g以下であることがより好ましく、280mgKOH/g以下であることが最適である。前記エステル系可塑剤としては、上記規定を満たすポリエステル(前述したカルボン酸ポリエステル系可塑剤、炭酸ポリエステル系可塑剤など)やヒドロキシカルボン酸エステル化合物(前述したヒドロキシカルボン酸エステル系可塑剤など)が挙げられ、エーテル系可塑剤としては、前記規定を満たすポリエーテル化合物(前述したポリアルキレングリコール系可塑剤など)が挙げられる。
B層における可塑剤の含有量は、ポリビニルアセタール樹脂100質量部に対して、50質量部以下であることが好ましく、45質量部以下であることがより好ましく、40質量部以下であることがさらに好ましい。可塑剤の含有量が上記上限値以下であると、得られる中間膜を用いた合わせガラスが耐衝撃性に優れる。可塑剤の含有量の下限値は特に限定されず、B層を構成する熱可塑性樹脂100質量部に対して、例えば10質量部以上であってよく、0質量部であってもよい。
水酸基を有する化合物は、ポリビニルアセタール樹脂との相溶性が高くA層への移行性が低く、遮音性が安定的に発揮されるため、B層に添加する可塑剤としては、水酸基を有する化合物を好適に用いることができる。水酸基を有する化合物としては、例えば、株式会社クラレ製のポリエステルポリオール「クラレポリオール」P−510やP−1010が挙げられる。
B層中に含まれる可塑剤の全量に対する水酸基を有する化合物の含有量の割合は、10質量%以上であることが好ましく、15質量%以上であることがより好ましく、20質量%以上であることがさらに好ましい。また、B層中に含まれる可塑剤の全量に対する水酸基を有する化合物の含有量の割合は、100質量%以下であることが好ましく、90質量%以下であることがより好ましく、80質量%以下であることがさらに好ましい。
アイオノマー樹脂としては特に限定されず、例えば、エチレン由来の単量体単位およびα,β−不飽和カルボン酸に由来の単量体単位を有し、α,β−不飽和カルボン酸の少なくとも一部が金属イオンによって中和された樹脂等が挙げられる。金属イオンとしては例えばナトリウムイオンが挙げられる。本発明において、ベースポリマーとなるエチレン−α,β−不飽和カルボン酸共重合体において、α,β−不飽和カルボン酸の単量体単位の含有割合は、2質量%以上であることが好ましく、5質量%以上であることがより好ましい。また、α,β−不飽和カルボン酸の単量体単位の含有割合は、30質量%以下であることが好ましく、20質量%以下であることがより好ましい。本発明においては、入手容易性から、エチレン−アクリル酸共重合体のアイオノマー、およびエチレン−メタクリル酸共重合体のアイオノマーが好ましい。エチレン系アイオノマーとしては、エチレン−アクリル酸共重合体のナトリウムアイオノマー、エチレン−メタクリル酸共重合体のナトリウムアイオノマーを特に好ましい例として挙げることができる。アイオノマー樹脂は、1種のみを単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
アイオノマーを構成するα,β−不飽和カルボン酸としては、例えばアクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、マレイン酸モノメチル、マレイン酸モノエチル、無水マレイン酸などが挙げられ、アクリル酸またはメタクリル酸が特に好ましい。
B層には、ポリビニルアセタール樹脂やアイオノマー樹脂以外の樹脂を含有することもできるが、ガラスとの高い接着性を維持する点から、ポリビニルアセタール樹脂またはアイオノマー樹脂を40質量%以上含むことが好ましく、50質量%以上含むことがより好ましく、60質量%以上含むことがさらに好ましく、80質量%以上含むことが特に好ましく、90質量%以上含むことが一層好ましい。
本発明の合わせガラス用中間膜の好適な一実施態様において、B層を構成する樹脂はアイオノマー樹脂である。B層を構成する樹脂として、アイオノマー樹脂を用いた場合においても、本発明による遮音性に優れたA層を用いることによって、合わせガラスの損失係数と曲げ剛性が適切に制御され、中周波数域の遮音性に優れ、かつ、高周波数域の遮音性も高い中間膜を得ることができる。
本発明において、B層を構成する樹脂組成物は、JIS K 7244−10に準じて周波数1Hzで複素せん断粘度試験を行うことで測定される、温度−5℃におけるせん断貯蔵弾性率が、100MPa以上であることが好ましく、200MPa以上であることがより好ましい。上記条件下のせん断貯蔵弾性率が100MPa以上であると、A層とその両面に積層されたB層とからなる合わせガラス用中間膜に適度な弾性率を付与でき、コインシデンス効果の現れる周波数が高周波数側で生じることを抑制し、6000Hz以上における遮音性をより向上させることができる。せん断貯蔵弾性率が100MPa以上のB層は、例えば、ポリビニルアセタール樹脂100質量部に対して、可塑剤の量を50質量部以下とすることで得ることができる。また、前記−5℃におけるせん断貯蔵弾性率の上限は特に限定されないが、積層体の成形性、取り扱い性の観点から、500MPa以下であることが好ましい。
上記−5℃におけるせん断貯蔵弾性率の値は、ポリビニルアセタール樹脂の場合は可塑剤の添加量、アイオノマー樹脂の場合は構成する単量体の種類や金属イオンの量などにより制御できる。
本発明において、B層を構成する樹脂組成物は、JIS K 7244−10に準じて周波数1Hzの条件で複素せん断粘度試験を行うことで測定されるtanδが最大となるピークを20℃以上の範囲に有することが好ましく、25℃以上の範囲に有することがより好ましく、30℃以上の範囲に有することがさらに好ましい。上記tanδが最大となるピークが上記下限値以上の範囲にあると、B層に適度な曲げ強度を付与でき、A層により制御されたコインシデンス効果の現れる周波数域を適正な周波数域に保持でき、合わせガラスに用いた際に、中周波数域から高周波数域の広い領域に渡り高い遮音性を実現できる。上記tanδが最大となるピーク温度の上限値は特に限定されないが、通常、150℃以下である。
B層は、その他の成分として、さらに、酸化防止剤、紫外線吸収剤、光安定剤、ブロッキング防止剤、顔料、染料、機能性無機化合物、遮熱材料等を必要に応じて含有していてもよい。
B層が含有していてもよい酸化防止剤、紫外線吸収剤、光安定剤、ブロッキング防止剤、遮熱材料等は、先のA層の説明内で記述した材料と同様のものが挙げられ、A層が含有していてもよい材料や含有量と同じであっても異なっていてもよい。本発明の合わせガラス用中間膜において、これらの他の成分は、A層またはB層のいずれかのみに含まれていてもよく、A層およびB層の両方に含まれていてもよい。また、A層およびB層の両方に含まれる場合、同じ成分が含まれていてもよく、異なる成分が含まれていてもよい。
B層において、必要に応じ、得られる中間膜のガラス等への接着性を制御できる。接着性を制御する方法としては、通常、合わせガラスの接着性調整剤として使用される添加剤、または接着性を調整するための各種添加剤を添加する方法等が挙げられる。
接着性調整剤としては、例えば、国際公開第03/033583号に開示されているものを使用できる。例えば、オクタン酸、ヘキサン酸、酪酸、酢酸、蟻酸等のカルボン酸等の有機酸;塩酸、硝酸等の無機酸の塩などが挙げられる。中でも、カリウム塩、ナトリウム塩、マグネシウム塩等のアルカリ金属塩およびアルカリ土類金属塩が好ましい。
接着性調整剤の最適な添加量は、使用する添加剤により異なるが、得られる中間膜のガラスへの接着力が、パンメル試験(Pummeltest;国際公開第03/033583号等に記載)において、一般には3以上、10以下になるように調整することが好ましく、特に高い耐貫通性を必要とする場合は3以上、6以下になるように調整することがより好ましい。また、高いガラス飛散防止性を必要とする場合は7以上、10以下になるように調整することがより好ましい。高いガラス飛散防止性が求められる場合は、接着性調整剤を添加しないことも有用な方法である。
(合わせガラス用中間膜)
本発明の合わせガラス用中間膜の製造方法は特に限定されず、例えば、A層の両面に積層されたB層を有する構成の場合、B層を構成する樹脂組成物を均一に混練した後、押出法、カレンダー法、プレス法、キャスティング法、インフレーション法等の公知の製膜方法によりB層を作製し、また、同様の方法で、熱可塑性エラストマーによりA層を作製し、これらをプレス成形等で積層させてもよいし、B層、A層およびその他必要な層を共押出法により成形してもよい。
公知の製膜方法の中でも、特に押出機を用いて積層体を製造する方法が好適に採用される。押出時の樹脂温度(組成物温度)は150℃以上が好ましく、170℃以上がより好ましい。また、押出時の樹脂温度(組成物温度)は250℃以下が好ましく、230℃以下がより好ましい。押出時の温度が上記範囲内にあると、組成物に含まれる樹脂等の分解を抑制できるため、樹脂等の劣化が生じ難く、押出機からの吐出を安定させることができる。揮発性物質を効率的に除去するためには、押出機のベント口から、減圧により揮発性物質を除去することが好ましい。
A層の膜厚は、上述の通り100μm以上400μm以下である。B層の膜厚は、それぞれ100μm以上であることが好ましく、150μm以上であることがより好ましく、200μm以上であることがさらに好ましい。B層の膜厚は、それぞれ600μm以下であることが好ましく、500μm以下であることがより好ましく、350μm以下であることがさらに好ましく、300μm以下であることがさらに好ましい。B層の膜厚が上記下限値以上であると、中間膜に適度な曲げ剛性を付与し、高周波数域での遮音性の低下を抑制でき、B層の膜厚が上記上限値以下であると、中間膜の総厚が厚くなりすぎず、合わせガラスの重量軽減に有利である。
本発明において、合わせガラス用中間膜はA層のみからなる単層構造であってもよく、図1に示すように、A層がB層によって挟まれた積層構成になっていてもよい。中間膜における積層構成は目的によって適宜決められるが、B層/A層/B層という積層構成の他、B層/A層/B層/A層、B層/A層/B層/A層/B層という積層構成であってもよい。
また、本発明の合わせガラス用中間膜は、A層、B層以外の層(C層とする)を1層以上含んでいてもよく、例えば、B層/A層/C層/B層、B層/A層/B層/C層、B層/C層/A層/C層/B層、B層/C層/A層/B層/C層、B層/A層/C層/B層/C層、C層/B層/A層/B層/C層、C層/B層/A層/C層/B層/C層、C層/B層/C層/A層/C層/B層/C層などの積層構成でもよい。前記積層構成において、A層、B層および/またはC層がそれぞれ2層以上含まれる場合、各A層、B層、C層を構成する成分は互いに同じであっても異なっていてもよい。
本発明の合わせガラス用中間膜に含まれ得るC層は、公知の樹脂からなる層であってよい。C層を構成する樹脂としては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニル、ポリスチレン、ポリ酢酸ビニル、ポリウレタン、ポリテトラフルオロエチレン、アクリル樹脂、ポリアミド、ポリアセタール、ポリカーボネート、ポリエチレンテレフタレートやポリブチレンテレフタレートなどのポリエステル、環状ポリオレフィン、ポリフェニレンスルファイド、ポリテトラフロロエチレン、ポリサルフォン、ポリエーテルサルフォン、ポリアリレート、液晶ポリマー、ポリイミドなどが挙げられる。また、必要に応じ、可塑剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、光安定剤、ブロッキング防止剤、顔料、染料、遮熱材料などの添加剤を含有していてもよい。
また、本発明の合わせガラス用中間膜は、表面にメルトフラクチャー、エンボスなど、従来公知の方法で凹凸構造を形成することが好ましい。メルトフラクチャー、エンボスの形状は特に限定されず、従来公知のものを採用できる。
また、本発明の合わせガラス用中間膜の総厚みは、400μm以上であることが好ましく、500μm以上であることがより好ましい。また、中間膜の総厚みは、1.5mm以下であることが好ましく、1mm以下であることがより好ましい。総厚みが上記下限値以上であると合わせガラスを作製する際の取扱性に優れ、中間膜の総厚みが上記上限値以下であると合わせガラス全体の重量軽減につながり、中間膜のコストを削減し得るため好ましい。
本発明の合わせガラス用中間膜は、縦300mm、横25mm、厚さ1.9mmである2枚のフロートガラスで該合わせガラス用中間膜を挟持した合わせガラスにおいて、20℃で中央加振法により測定される3次共振周波数における損失係数および曲げ剛性を用い、ISO16940(2008)に準じて算出される音響透過損失が、中周波数域の4000Hzから6299Hzの範囲で37dB以上、6300Hzから10000Hzの範囲で40dB以上であることが好ましい。なお、「中周波数域の4000Hzから6299Hzの範囲で37dB以上」とは、4000Hzから6299Hzの周波数域の全領域にわたって音響透過損失が37dB以上であることを意味し、本明細書に記載される他の周波数域における同様の記載についても同じ意味である。また、上記測定は、最終的な合わせガラス用中間膜を構成する層構成において行うものである。中周波数域の4000Hzから6299Hzの範囲における音響透過損失は、38dB以上であることがより好ましく、39dB以上であることがさらに好ましい。また、6300Hzから10000Hzの範囲の音響透過損失は、41dB以上であることがより好ましく、42dB以上であることがさらに好ましい。これにより、本発明の中間膜は、実用上重要である、4000Hzから6000Hzの間の中周波数域の遮音性を高めつつも、6000Hzから10000Hzの遮音性も十分に高く保つことが可能となる。
従来、中間膜の弾性率を下げることにより、中周波数域である4000Hzから6000Hzの遮音性を高めることが試みられてきたが、中間膜の弾性率を下げることにより、コインシデンス効果の現れる周波数が高周波数域に生じやすくなり、例えば8000Hzから10000Hzの高周波数域の遮音性、すなわち音響透過損失が著しく低下する。本発明では、先に説明した通り、A層およびB層を構成する各成分やその組み合わせ、膜厚等を選択し、tanδのピーク温度や−5℃におけるせん断貯蔵弾性率の値を制御することにより、コインシデンス効果の現れる周波数域を適切な周波数域に制御し、中周波数域のみならず、高周波数域も含む2000Hzから10000Hzまでの幅広い領域に渡り遮音性を向上させることができる。
本発明においては、中周波数域と高周波数域の遮音性のバランスの良さを示すパラメーターとして、4000Hzの音響透過損失と、6300Hzの音響透過損失の比、すなわち(6300Hzにおける音響透過損失)/(4000Hzにおける音響透過損失)の値が0.9以上1.2以下であることが好ましい。この値が0.9より小さくなるほど高周波数域の遮音性が低いといえ、1.2より大きくなるほど中周波数域の遮音性が低いといえる。
同様に、中周波数域と高周波数域の遮音性のバランスの良さを示すパラメーターとして、4000Hzの音響透過損失と、8000Hzの音響透過損失の比をとった、(8000Hzにおける音響透過損失)/(4000Hzにおける音響透過損失)の値を求めた場合、この値が1.1以上1.4以下であることが好ましい。この値が1.1より小さくなるほど高周波数域の遮音性が低いといえ、1.4より大きくなるほど中周波数域の遮音性が低いといえる。
(合わせガラス)
本発明の合わせガラス用中間膜を用いることにより、遮音性に優れる合わせガラスを得ることができる。そのため、本発明の合わせガラス用中間膜は、自動車用フロントガラス、自動車用サイドガラス、自動車用サンルーフ、自動車用リアガラスまたはヘッドアップディスプレイ用ガラスなどに好適に使用できる。本発明の合わせガラス用中間膜の構成を内部に有する合わせガラスがヘッドアップディスプレイ用ガラスに適用される場合、用いられる中間膜の断面形状は、一方の端面側が厚く、他方の端面側が薄い形状であることが好ましい。その場合、断面形状は、一方の端面側から他方の端面側に漸次的に薄くなるような、全体が楔形である形状であってもよいし、一方の端面から該端面と他方の端面の間の任意の位置までは同一の厚さで、該任意の位置から他方の端面まで漸次的に薄くなるような、断面の一部が楔形のものであってもよいし、製造上問題とならない限り、位置によらず、任意の形状をもっていてよい。
本発明の合わせガラスにおいては、通常、ガラスを2枚使用する。本発明の合わせガラスを構成するガラスの厚さは特に限定されないが、通常、100mm以下であることが好ましい。また、本発明の中間膜は遮音性に優れることから、より薄いガラスを用いた場合でも高い遮音性が発揮されるため、合わせガラスの軽量化を実現できる。ガラスの厚さは、軽量化の観点からは、少なくとも一枚が2.8mm以下であることが好ましく、2.5mm以下であることがより好ましく、2.0mm以下であることがさらに好ましく、1.8mm以下であることが特に好ましい。特に、一方のガラスの厚さを1.8mm以上、他方のガラスの厚さを1.8mm以下として、各ガラスの厚さの差を0.2mm以上とすることにより、曲げ強度を損なうことなく、薄膜化と軽量化を両立した合わせガラスを作製することができる。上記各ガラスの厚さの差は、0.5mm以上が好ましい。
合わせガラスの遮音性は、先の合わせガラス用中間膜において記載した通り、中央加振法によるダンピング試験によって得られる損失係数で評価でき、合わせガラスの最大損失係数が高いほど、合わせガラスの遮音性が高いといえる。
本発明の中間膜により得られる合わせガラスは、縦300mm、横25mm、厚さ1.9mmのガラス2枚で該中間膜を挟み、温度140℃、圧力1MPa、60分の条件で圧着して合わせガラスを作製し、作製後の該合わせガラスの20℃における中央加振法によるダンピング試験により測定される、3次共振周波数での最大損失係数が0.25以上であることが好ましく、0.28以上であることがより好ましく、0.3以上であることがさらに好ましい。
また、該ダンピング試験により、ISO16940(2008)に準じて算出される、3次共振周波数での曲げ剛性が90N・m以上180N・m以下であることが好ましい。曲げ剛性が上記範囲内にあると、中周波数域から高周波数域の広い領域に渡り高い遮音性を実現できる。本発明の合わせガラスにおいて、上記曲げ剛性は、より好ましくは、140N・m以上180N・m以下である。
本発明の合わせガラスは、3次共振周波数における損失係数および曲げ剛性を用い、ISO16940(2008)に準じて算出される音響透過損失が、中周波数域の4000Hzから6299Hzの範囲で37dB以上、6300Hzから10000Hzの範囲で40dB以上であることが好ましい。中周波数域の4000Hzから6299Hzの範囲における音響透過損失は、38dB以上であることがより好ましく、39dB以上であることがさらに好ましい。また、6300Hzから10000Hzの範囲の音響透過損失は、41dB以上であることがより好ましく、42dB以上であることがさらに好ましい。
また、中周波数域と高周波数域の遮音性のバランスの良さを示すパラメーターとして、4000Hzの音響透過損失と、6300Hzの音響透過損失の比、すなわち(6300Hzにおける音響透過損失)/(4000Hzにおける音響透過損失)の値が0.9以上1.2以下であることが好ましい。同様に、中周波数域と高周波数域の遮音性のバランスの良さを示すパラメーターとして、4000Hzの音響透過損失と、8000Hzの音響透過損失の比をとった、(8000Hzにおける音響透過損失)/(4000Hzにおける音響透過損失)の値を求めた場合、この値が1.1以上1.4以下であることが好ましい。
(合わせガラスの製造方法)
本発明の合わせガラスは従来公知の方法で製造することが可能であり、例えば、真空ラミネータ装置を用いる方法、真空バッグを用いる方法、真空リングを用いる方法、ニップロールを用いる方法等が挙げられる。また、仮圧着後に、付加的にオートクレーブ工程を行うこともできる。
真空ラミネータ装置を用いる場合は、例えば、太陽電池の製造に用いられる公知の装置を使用し、1×10−6MPa以上3×10−2MPa以下の減圧下、100℃以上200℃以下で、特に130℃以上170℃以下の温度でラミネートされる。真空バッグまたは真空リングを用いる方法は、例えば、欧州特許第1235683号明細書に記載されており、例えば約2×10−2MPaの圧力下、130℃以上145℃以下でラミネートされる。
ニップロールを用いる場合は、例えば、ポリビニルアセタール樹脂の流動開始温度以下の温度で1回目の仮圧着をした後、さらに流動開始温度に近い条件で仮圧着する方法が挙げられる。具体的には、例えば、赤外線ヒーターなどで30℃以上100℃以下に加熱した後、ロールで脱気し、さらに50℃以上150℃以下に加熱した後ロールで圧着して接着または仮接着させる方法が挙げられる。
仮圧着後に付加的に行われるオートクレーブ工程は、モジュールの厚さや構成にもよるが、例えば、1MPa以上15MPa以下の圧力下、120℃以上160℃以下の温度で0.5時間以上2時間以下で実施される。
合わせガラスを作製する際に使用するガラスは特に限定されず、従来公知の、フロート板ガラス、磨き板ガラス、型板ガラス、網入り板ガラス、熱線吸収板ガラスなどの無機ガラス;ポリメタクリル酸メチル、ポリカーボネートなどの有機ガラス;等が使用できる。これらは無色、有色、あるいは透明、非透明のいずれであってもよい。これらは単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
以下、実施例および比較例により本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されない。なお、以下の実施例において、「%」は特に断りのない限り「質量%」を意味する。
以下の実施例および比較例において、ポリビニルブチラール樹脂(PVB)としては、目的とする粘度平均重合度と同じ粘度平均重合度を有するポリビニルアルコールを、塩酸触媒下にn−ブチルアルデヒドでアセタール化したものを用いた。なお、上記ポリビニルアルコールの粘度平均重合度は、JIS K 6726「ポリビニルアルコール試験方法」に基づいて測定した値である。
1.物性評価(A層を構成する熱可塑性エラストマー含有組成物のせん断貯蔵弾性率およびtanδの−5℃における値、ピーク高さおよびピーク温度、並びにB層を構成する樹脂組成物のせん断貯蔵弾性率およびtanδのピーク温度)
A層を構成する熱可塑性エラストマー(水添ブロック共重合体)を、温度230℃、圧力10MPaで3分間加圧して、厚み1.0mmの単層シートを作製し、該単層シートを円板形状に切り出して試験シートとした。同様に、B層を構成する樹脂組成物を、温度170℃、圧力10MPaで5分間加圧して、厚み1.0mmの単層シートを作製し、該単層シートを円板形状に切り出して試験シートとした。
測定には、JIS K7244−10(2005)に基づいて、平行平板振動レオメータとして、円板の直径が8mmのゆがみ制御型動的粘弾性装置(ティー・エイ・インスツルメント・ジャパン社製(ARES−G2))を用いた。
上記で作製した試験シートによって、ゆがみ制御型動的粘弾性装置の2枚の平板間の隙間を完全に充填し、歪み量0.1%で、上記試験シートに1Hzの周波数で振動を与え、−70℃から200℃まで3℃/分の定速で昇温した。せん断損失弾性率およびせん断貯蔵弾性率の測定値に変化がなくなるまで上記試験シートと円板の温度を保持し、A層を構成する水添ブロック共重合体のtanδの−5℃における値、ピーク強度の最大値(tanδピーク高さ)および該最大値が得られた温度(tanδピーク温度)を求めた。同様にして、B層を構成する樹脂組成物のせん断貯蔵弾性率、およびtanδピーク温度を求めた。
2.重合体ブロック(a)の含有量
A層を構成する水添ブロック共重合体をCDCl3に溶解して1H−NMRスペクトルを測定[装置:JNM−Lambda 500(日本電子株式会社製)、測定温度:50℃]し、スチレンに由来するピーク強度から重合体ブロック(a)の含有量を算出した。
3.重合体ブロック(b)のガラス転移温度
A層を構成する熱可塑性エラストマーに含まれる重合体ブロック(b)のガラス転移温度は、示差走査熱量測定(DSC、セイコー電子工業社製)を用いて、10℃/分の昇温速度にて−120℃から100℃まで昇温し、得られた測定曲線の変曲点の温度を読みとり、ガラス転移温度とした。
4.遮音性評価(合わせガラスの3次共振周波数、3次共振周波数における損失係数および曲げ剛性、4000Hz、5000Hz、6300Hz、8000Hz、10000Hzにおける音響透過損失)
市販のフロートガラス(縦300mm×横25mm×厚さ1.9mm)2枚に各実施例・比較例で得られた各中間膜を挟み、温度140℃、圧力1MPa、60分の条件で圧着して合わせガラスを作製した。その後、機械インピーダンス装置(株式会社小野測器製;マスキャンセルアンプ:masscancelamplifierMA−5500;チャンネルデータステーション:DS−2100)における加振器(poweramplifier/model371−A)のインピーダンスヘッドに内蔵された加振力検出器の先端部に、上記合わせガラスの中央部を固定した。20℃において、周波数0〜10000Hzの範囲で上記合わせガラスの中央部に振動を与え、この点の加振力と加速度波形を検出することで、中央加振法による合わせガラスのダンピング試験を行った。得られた加振力と、加速度信号を積分して得られた速度信号を基に、加振点(振動を加えた合わせガラスの中央部)の機械インピーダンスを求め、横軸を周波数、縦軸を機械インピーダンスとして得られるインピーダンス曲線において、ピークを示す周波数と半値幅から、合わせガラスの損失係数を求めた。さらに3次共振周波数および該3次共振周波数における損失係数を用い、ISO16940(2008)に準じて該3次共振周波数における曲げ剛性を算出した。また3次共振周波数における損失係数および曲げ剛性を用い、ISO16940(2008)に準じて、1000Hzから10000Hzにおける音響透過損失を算出した(図2〜図15)。3次共振周波数および3次共振周波数における損失係数の測定結果、3次共振周波数における曲げ剛性、並びに4000Hz、5000Hz、6300Hz、8000Hz、10000Hzにおける音響透過損失の計算結果を表1および表2に示す。
<実施例1>
表1に示す組成に従い、A層には、スチレン単位12質量%、イソプレン単位88質量%を含有する、tanδのピーク高さが最大となるピークの温度が−8.5℃(上記の1Hzの周波数における動的粘弾性測定に基づく)の直鎖状水添スチレン−イソプレン−スチレントリブロック共重合体(水添率91%、重量平均分子量182,000)を、B層には、アイオノマーフィルム(デュポン社製、SENTRYGLAS(登録商標) Interlayer)を用いた。これらをそれぞれ、押出成形法によって、厚さ250μmのA層、および、厚さ250μmのB層に成形した。得られたA層を2つのB層の間に挟み、150℃でプレス成形して3層構成の複合膜である厚さ0.75mmの中間膜を作製した。得られた中間膜を用いて、上記の評価方法にしたがって、合わせガラスの3次共振周波数、3次共振周波数における損失係数および曲げ剛性、並びに4000Hz、5000Hz、6300Hz、8000Hz、10000Hzにおける音響透過損失を算出した。結果を表1および図2に示す。
<実施例2>
B層において、アイオノマーフィルムの代わりにポリビニルブチラール樹脂組成物を用いた以外は実施例1と同様の方法を用いて中間膜を作製し、物性評価を行った。ポリビニルブチラール樹脂組成物として、粘度平均重合度約1700、アセタール化度70モル%、ビニルアセテート単位の含有量0.9モル%のポリビニルブチラール樹脂100質量部に対して、可塑剤として株式会社クラレ製のポリエステルポリオール「クラレポリオールP−510」(融点:−77℃、水酸基価:213.0−235.0mgKOH/g)38.8質量部からなる組成物を用いた。結果を表1および図3に示す。
<実施例3>
A層において、実施例1で用いた直鎖状水添スチレン−イソプレン−スチレントリブロック共重合体の代わりに、スチレン単位4質量%、イソプレン単位96質量%を含有する、tanδのピーク高さが最大となるピークの温度が−11.1℃(上記の1Hzの周波数における動的粘弾性測定に基づく)の直鎖状水添スチレン−イソプレン−スチレントリブロック共重合体を用いた以外は実施例1と同様の方法を用いて中間膜を作製し、物性評価を行った。結果を表1および図4に示す。
<実施例4>
A層の膜厚を250μmから350μm、B層の膜厚を250μmから200μmに変更した以外は実施例3と同様の方法を用いて中間膜を作製し、物性評価を行った。結果を表1および図5に示す。
<実施例5>
B層において、アイオノマーフィルムの代わりにポリビニルブチラール樹脂組成物を用いた以外は実施例3と同様の方法を用いて中間膜を作製し、物性評価を行った。ポリビニルブチラール樹脂組成物として、粘度平均重合度約1700、アセタール化度70モル%、ビニルアセテート単位の含有量0.9モル%のポリビニルブチラール樹脂100質量部に対して、可塑剤として株式会社クラレ製のポリエステルポリオール「クラレポリオールP−510」38.8質量部からなる組成物を用いた。評価の結果を表1および図6に示す。
<実施例6>
A層の膜厚を250μmから350μm、B層の膜厚を250μmから200μmに変更した以外は実施例5と同様の方法を用いて中間膜を作製し、物性評価を行った。結果を表1および図7に示す。
<実施例7>
A層の膜厚を250μmから225μm、B層の膜厚を250μmから275μmに変更した以外は実施例5と同様の方法を用いて中間膜を作製し、物性評価を行った。結果を表1および図8に示す。
<比較例1>
表2に示す組成に従い、A層において、実施例1で用いた直鎖状水添スチレン−イソプレン−スチレントリブロック共重合体の代わりに、スチレン単位34質量%、イソプレン単位およびスチレン単位(イソプレン:スチレン(モル比)=88:12)66質量%を含有する、tanδのピーク高さが最大となるピークの温度が2.6℃(上記の1Hzの周波数における動的粘弾性測定に基づく)の直鎖状水添スチレン−(イソプレン/スチレン)−スチレントリブロック共重合体を用いた以外は実施例1と同様の方法を用いて、中間膜を作製し、物性評価を行った。結果を表1および図9に示す。
<比較例2>
A層において、実施例2で用いた直鎖状水添スチレン−イソプレン−スチレントリブロック共重合体の代わりに、スチレン単位4質量%、イソプレン単位96質量%を含有する、tanδのピーク高さが最大となるピークの温度が−3.2℃(上記の1Hzの周波数における動的粘弾性測定に基づく)の直鎖状水添スチレン−イソプレン−スチレントリブロック共重合体を用いた以外は実施例2と同様の方法を用いて中間膜を作製し、物性評価を行った。結果を表1および図10に示す。
<比較例3>
A層において、実施例1で用いた直鎖状水添スチレン−イソプレン−スチレントリブロック共重合体の代わりに、スチレン単位12質量%、イソプレン単位およびブタジエン単位(イソプレン:ブタジエン(モル比)=50:50)88質量%を含有する、tanδのピーク高さが最大となるピークの温度が−21.0℃(上記の1Hzの周波数における動的粘弾性測定に基づく)の直鎖状水添スチレン−ブタジエン−スチレントリブロック共重合体を用いた以外は実施例1と同様の方法を用いて中間膜を作製し、物性評価を行った。結果を表1および図11に示す。
<比較例4>
A層において、実施例1で用いた直鎖状水添スチレン−イソプレン−スチレントリブロック共重合体の代わりに、スチレン単位12質量%、ブタジエン単位88質量%を含有する、tanδのピーク高さが最大となるピークの温度が−34.3℃(上記の1Hzの周波数における動的粘弾性測定に基づく)の直鎖状水添スチレン−ブタジエン−スチレントリブロック共重合体を用いた以外は実施例1と同様の方法を用いて中間膜を作製し、物性評価を行った。結果を表1および図12に示す。
<比較例5>
A層の膜厚を250μmから100μm、B層の膜厚を250μmから330μmに変更した以外は比較例4と同様の方法を用いて中間膜を作製し、物性評価を行った。結果を、表1および図13に示す。
<比較例6>
A層において、実施例1で用いた直鎖状水添スチレン−イソプレン−スチレントリブロック共重合体の代わりに、スチレン単位18質量%、イソプレン単位82質量%を含有する、tanδのピーク高さが最大となるピークの温度が−52.7℃(上記の1Hzの周波数における動的粘弾性測定に基づく)の直鎖状水添スチレン−イソプレン−スチレントリブロック共重合体を用いた以外は実施例1と同様の方法を用いて中間膜を作製し、物性評価を行った。結果を表1および図14に示す。
<比較例7>
A層の膜厚を250μmから100μm、B層の膜厚を250μmから330μmに変更した以外は比較例6と同様の方法を用いて中間膜を作製し、物性評価を行った。結果を表1および図15に示す。
表1、表2および図2〜15のとおり、実施例1〜7では、4000Hzから6299Hzの範囲で37dB以上、かつ、6300Hzから10000Hzの範囲で40dB以上を示しており、高周波数域での高い遮音性を維持しつつ、実用上重要な4000Hzから6000Hzの周波数域で高い遮音性を示すことが分かる。