JP6830762B2 - 糖組成物及びその製造方法 - Google Patents

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Description

本発明は、糖組成物及びその製造方法、その還元物、当該糖組成物を含む食品の改良剤に関する。特に本発明に係る糖組成物は、α−1,6結合によって連続して結合したグルコースを含んで構成される糖質を含むものであって、α−1,6結合を比較的多く含み、かつ、連続したα−1,6結合を有する四糖類以上の成分を含んでおり、食品用途に好適である。
澱粉は、α−1,4結合によってグルコースが直鎖状に結合したアミロースと、α−1,4結合が連なった直鎖の途中でα−1,6結合により分岐した構造を有するアミロペクチンとの混合物である。また、澱粉や澱粉分解物は広く飲食品に使用されており、澱粉や澱粉分解物に転移酵素を作用させて結合様式を変換した各種糖質も開発されている。
α−1,6結合を有する糖質としては、主に基質よりも重合度が1つ大きい糖質を生成するアスペルギルス ニジュール(Aspergillus niger)由来のα−グルコシダーゼを澱粉加水分解物に作用させて得られるもの(特許文献1、2、3)や、発酵生産及び加水分解を組合せて製造されるデキストランが知られている。デキストランは、アミロースや澱粉の分解物にデキストリンデキストラナーゼを作用させること(特許文献4、5、6、7)や、少なくとも2つのα−1→4結合D−グルコース単位をその非還元末端に含む多糖基質及び/又はオリゴ糖基質にα−グルカノトランスフェラーゼを作用させること(特許文献8)、α−グルコシド結合を有するオリゴ糖、α−グルカン及びその分解物にデキストラングルカナーゼを作用させること(特許文献9)によっても得られることが知られている。
α−1,6結合を有する糖質は、加工食品の品質改良効果があることが知られている。低分子を主成分とする糖組成物では、畜肉及び/又は魚肉を主体とするタンパク質系食品に添加することで肉が持つジューシーでソフトな食感を強める効果(特許文献10)、野菜加工飲食物、卵加工飲食物に添加すると冷凍耐性が向上し保形性や離水性を保持する効果(特許文献11)が知られている。また、高分子を主成分とする糖組成物では、パンやクッキーなどに配合することでふんわりとした食感やしっとりした食感になる効果(特許文献2)、揚げ物用バッターに配合することで油ちょう後の揚げ物が軽い食感になる効果(特許文献12)が知られている。
特公平6−14872号公報 国際公開WO2010/032510 国際公開WO2009/113652 特開平4−293493号公報 特開平5−236982号公報 特開2001−258589号公報 国際公開WO2006/054474 特表2012−525840号公報 特開2012−095606号公報 特開2000−217518号公報 特開2006−280309号公報 特開2012−085579号公報
上述した通り、α−1,6結合を有する糖質の製造方法や機能は知られているが、アスペルギルス ニジュール由来のα−グルコシダーゼを利用して製造されるα−1,6結合を有する低分子成分を主成分とする糖組成物は、単糖類〜三糖類が主成分であり四糖類以上の成分は少ない(「食品と容器」第52巻 第2号 72ページ〜 2011年)。α−1,6結合を有する四糖類以上の成分を主成分とする糖組成物は、アスペルギルス ニジュール由来のα−グルコシダーゼを高分子の澱粉分解物に作用することで調製可能であるが、α−1,6結合の含有量は高くなく、連続したα−1,6結合を有する四糖類以上の成分はほとんど含まれない。また、デキストランは、連続したα−1,6結合を有する四糖類以上の成分を主成分とするが、発酵生産は製造工程が複雑でコストが高く、食品分野への利用は進んでいない。デキストランを澱粉から酵素を利用して製造する技術的な知見もあるが、その場合、酵素の耐熱性が40℃以下のため、低温で反応を行う必要があり、雑菌汚染の観点から衛生面や効率面で課題があるため、実用化されてはいない。
このように、α−1,6結合を比較的多く含み、かつ、連続したα−1,6結合を有する四糖類以上の成分を含む糖組成物について、その利用は進んでいない。
本発明の課題は、澱粉や澱粉分解物を含む原料から製造されるα−1,6結合によって連続して結合したグルコースを含んで構成される糖質を含む糖組成物に関して、α−1,6結合を比較的多く含み、かつ、連続したα−1,6結合を有する四糖類以上の成分を含む糖組成物を提供することである。また、本発明は、このような糖組成物の製造方法を提供することもその課題とする。
さらに本発明は、前記糖組成物の還元物、前記糖組成物を含む飲食品の製造方法、並びに前記糖組成物を含む飲食品の改良剤を提供することもその課題である。
従来、連続したα−1,6結合を有する四糖類以上の成分を含む糖組成物として、発酵生産及び加水分解を組み合わせて製造されるデキストランが知られている。しかし、デキストランは、上述した通り、製造工程が複雑でコストが高く、食品分野において広く利用されるには至っていない。
本発明者らは、上記課題を解決すべく種々の検討を進めたところ、α−1,6結合によって連続して結合したグルコースを含んで構成される糖質を含む糖組成物であって、α−1,6結合を比較的多く含み、かつ、連続したα−1,6結合を有する四糖類以上の成分を含む糖組成物を安定して製造する技術を確立することに成功した。
本発明は、これに限定されるものではないが、以下の態様を包含する。
(1) α−1,6結合によって連続して結合したグルコースを含んで構成される糖質を含む糖組成物であって、(a)糖組成物に含まれる四糖類以上の成分の重量割合と糖組成物をデキストラナーゼ処理した後の処理物に含まれる四糖類以上の成分の重量割合との差分が10〜30%であり、(b)糖組成物に含まれるグルコース間の結合様式のうち、α−1,6結合の割合が35〜80%である、上記糖組成物。
(2) 糖組成物のDEが15〜75である、(1)に記載の糖組成物。
(3) (1)又は(2)に記載の糖組成物を含む、飲食品用改良剤。
(4) (1)又は(2)に記載の糖組成物を飲食品に添加することを含む、飲食品の改良方法。
(5) (1)又は(2)に記載の糖組成物を製造する方法であって、
澱粉分解物を基質として、GHファミリー31に属する酵素を50℃以上で作用させることを含む、上記方法。
(6) 前記酵素のデキストラン分解活性とマルトース分解活性の比率が0.06以上である、(5)に記載の方法。
(7) 前記酵素が、アスペルギルス属由来のα−グルコシダーゼである、(5)又は(6)に記載の方法。
(8) 前記酵素が、アスペルギルス属フラビ節由来のα−グルコシダーゼである、(5)〜(7)のいずれかに記載の方法。
(9) 前記酵素が、アスペルギルス オリゼー(Aspergillus oryzae)由来又はアスペルギルス ソヤ(Aspergillus sojae)由来のα−グルコシダーゼである、(5)〜(8)のいずれかに記載の方法。
(10) 基質である澱粉分解物のDEが5〜60である、(5)〜(9)のいずれかに記載の方法。
(11) (1)又は(2)に記載の糖組成物の還元物。
(12) (11)の還元物を含む飲食品用改良剤。
(13) (11)に記載の還元物を飲食品に添加することを含む、飲食品の改良方法。
本発明によれば、α−1,6結合によって連続して結合したグルコースを含んで構成される糖質を含む糖組成物であって、α−1,6結合を比較的多く含み、かつ、連続したα−1,6結合を有する四糖類以上の成分を含む、食品用途に好適な糖組成物を、澱粉や澱粉分解物を含む原料から製造することができる。
また、本発明に係る糖組成物は、澱粉老化抑制、タンパク質変性抑制、油脂酸化抑制といった効果を奏するものであり、当該糖組成物の還元物も同様の効果を有する。
図1は、実験3(1)で用いたベクターの設計図である。 図2は、実験3(1)の電気泳動の分析結果である(左:Native−ポリアクリルアミドゲル電気泳動、右:SDS−ポリアクリルアミドゲル電気泳動)。 図3は、実験3(2)に係る酵素のマルトース分解活性に対する温度の影響を示すものである。 図4は、実験3(2)に係る酵素のマルトース分解活性に対するpHの影響を示すものである。 図5は、実験3(2)に係る酵素のマルトース分解活性に対する温度の影響を示す結果である。 図6は、実験3(2)に係る酵素のマルトース分解活性に対するpHの影響を示す結果である。 図7は、実験9(3)においてサンプルAの分析に用いた1H−NMRチャートである。 図8は、実験10(1)の処理条件を示すものである。 図9Aは、実験10(1)の結果を示すものである(DE50以上)。 図9Bは、実験10(1)の結果を示すものである(DE30〜50)。 図9Cは、実験10(1)の結果を示すものである(DE20〜30)。 図10は、実験10(2)の結果を示すものである。 図11Aは、実験10(3)の結果を示すものである(DE50以上)。 図11Bは、実験10(3)の結果を示すものである(DE30〜50)。 図11Cは、実験10(3)の結果を示すものである(DE20〜30)。 図12は、実験10(4)の結果を示すものである。
糖組成物
本発明に係る糖組成物は、α−1,6結合によって連続して結合したグルコースを含んで構成される糖質を含むものである。本発明に係る糖組成物は、連続したα−1,6結合を有する四糖類以上の成分を含み、かつ、α−1,6結合を比較的多く含む。具体的には、(a)糖組成物に含まれる四糖類以上の成分の重量割合(A)と糖組成物をデキストラナーゼ処理した後の処理物に含まれる四糖類以上の成分の重量割合(B)との差分(Y=A−B)が10〜30%であり、(b)糖組成物に含まれるグルコース間の結合様式のうち、α−1,6結合の割合が35〜80%である。
本発明に係る糖組成物は、連続したα−1,6結合を有する四糖類以上の成分を含むが、この点は、上記(a)によって定義される。すなわち、糖組成物に含まれる四糖類以上の成分の重量割合から、糖組成物をデキストラナーゼ処理によって消化した後の処理物に含まれる四糖類以上の成分の重量割合を差し引いた差分が10〜30%である。デキストラナーゼは、ケトミウム(Chaetomium)属の細菌などの培養液から精製することができる酵素であり、グルコースがα−1,6結合した多糖デキストランに作用してグルコースや少糖類のイソマルトオリゴ糖を生成する。そのため、糖組成物に含まれる四糖類以上の成分の重量割合から、糖組成物をデキストラナーゼ処理によって消化した後の処理物に含まれる四糖類以上の成分の重量割合を差し引くことによって、糖組成物に含まれる連続したα−1,6結合を有する四糖類以上の成分の量を評価することができる。本発明の糖組成物は、糖組成物に含まれる四糖類以上の成分の重量割合から、糖組成物をデキストラナーゼ処理によって消化した後の処理物に含まれる四糖類以上の成分の重量割合を差し引いた差分が10〜30%であるが、10〜28%でもよく、10〜26%であってもよい。
また、本発明の糖組成物は、糖組成物に含まれるグルコース間の結合様式のうち、α−1,6結合の割合が35〜80%である。すなわち、本発明に係る糖組成物は、α−1,6結合を比較的多く含むところ、グルコース間の結合様式のうち、α−1,6結合の割合は、好ましくは35〜78%であり、より好ましくは39〜78%でありさらに好ましくは39〜70%である。
糖の結合様式については、メチル化分析法(Journal of Biochemistry, 第55巻、205ページ〜、1964年)やNMR分析法などにより測定することができる。
なお、本発明の糖組成物に含まれる連続したα−1,6結合を有する四糖類以上の成分は、グルコースを含んで構成されるが、グルコースのみから構成されるものであってもよく、α−1,6結合が三糖以上または四糖以上連続して結合した成分を含んでもよい。
さらに、本発明に係る糖組成物は、そのDE(Dextrose Equivalent)が15〜75であり、好ましくは18〜71、より好ましくは20〜70である。一般に、DEは澱粉分解物の分解度を示す指標であり、DEの値が大きい程、澱粉分解物が低分子であることを示す。具体的には、DEが0であれば澱粉、DEが100であればグルコースを示す。本発明の好ましい態様において、糖組成物のDEは50以下であるが、42以下であるとさらに好ましく、40以下としてもよい。糖組成物のDEは、「澱粉糖関連工業分析法」(澱粉糖技術部会編、5〜6ページ)に記載のレインエイノン法に基づいて測定することができる。
一つの態様において、本発明に係る糖組成物は、その重量平均分子量(Mw)が60000以下であり、態様によっては55000以下や40000以下、30000以下とすることもできる。重量平均分子量(Mw)の下限は特に制限されないが、400以上であることが好ましく、1000以上であることがより好ましい。
本発明に係る糖組成物は、その数平均分子量(Mn)が250〜1500であることが好ましく、300〜1300がより好ましく、400〜1200がさらに好ましい。また、重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)の比(Mw/Mn)は、1.0〜50.0であることが好ましく、1.3〜50.0がより好ましく、1.3〜30.0がさらに好ましい。
また本発明に係る糖組成物は、糖組成物に含まれる四糖類以上の成分の重量割合と、糖組成物をデキストラナーゼ処理によって消化した後の処理物に含まれる四糖類以上の成分の重量割合との差分をY、DEをXとしたとき、Y≦−0.55X+51であることが好ましい。また、Y≦0.73X+4であると、さらに好ましい。
本発明の糖組成物は、後述の本発明の製造方法にて製造が可能であるが、酵素分解条件の調整や分離/精製によって、上記のパラメーターを調整することが可能である。
また、糖組成物については、クロマト分離などを用いて生成し、連続したα−1,6結合を有する四糖類以上の成分の含有量を適宜調製できる。
本発明の糖組成物及びその還元物は、飲食品(本明細書において単に食品ともいう)に適宜使用することができる。すなわち、一つの観点において、本発明に係る糖組成物やその還元物を食品に添加することができる。また、上記した糖組成物及び/又はその還元物を含む飲食品用改良剤も本発明の一形態である。さらに、一つの観点において本発明は、上記した糖組成物及び/又はその還元物を飲食品に添加することを含む、飲食品の改良方法である。特に本発明に係る糖組成物は、澱粉老化抑制、タンパク質変性抑制、油脂酸化抑制といった効果を奏するものであり、当該糖組成物の還元物も同様の効果を有するため、飲食品において使用すると大変好ましい。
本発明において、飲食品は特に制限されず、液体の食品であっても固体の食品であってもよく、ゲル状などの食品であってもよい。また、飲食品の例としては、例えば、米加工品、小麦加工品、大麦加工品、じゃがいも加工品、コーン加工品などを好適に挙げることができる。米加工品の例としては、米飯、もち、清酒、甘酒、米粉を原料とする和菓子等を挙げることができるが、これらに限定されない。小麦加工品の例としては、パン、麺、中華饅頭や餃子の皮、ビザ生地、パイ生地、焼菓子、生菓子等を挙げることができるが、これらに限定されない。大麦加工品の例としては、ビール、ビール様飲料等が挙げられるが、これらに限定されない。じゃがいも加工品の例としては、マッシュポテト、フライドポテト、ハッシュドポテト、ニョッキ、ポテトチップス等が挙げられるが、これらに限定されない。コーン加工品の例としては、コーンミール、コーンフレーク、コーンウィスキー等が挙げられるが、これらに限定されない。その他、本発明に係る糖組成物やその還元物が、例えば、畜肉加工食品、水産加工食品、乳加工食品、調味料などにも適用できることは当然である。
本発明に係る糖組成物およびその還元物については、澱粉の老化抑制機能によって飲食品の食感などを改善することが可能になる。本発明に係る糖組成物およびその還元物は、使用する目的や効果を考慮して、飲食品の製造のいずれの段階において使用してもよい。例えば、飲食品の原料に本発明に係る糖組成物やその還元物を添加してもよいし、飲食品の製造又は加工の工程に供してよい。また、飲食品の中間製造物または中間加工品に本発明に係る糖組成物やその還元物を添加してもよい。さらに、飲食品の製造又は加工の最終段階で本発明に係る糖組成物やその還元物を添加してもよい。
なお、本発明の糖組成物やその還元物を飲食品用の改良剤として用いる場合、賦形剤、保存剤、香味料、抗酸化剤、ビタミン類などの追加の成分を含むものであってよい。また、このような飲食品用の改良剤は、調製後、必要に応じて殺菌処理を行った後、飲食品の食感や物性の改良剤として、種々の飲食品に使用することができる。
糖組成物の製造方法
本発明の糖組成物の製造方法は特に限定されないが、好ましい態様において、澱粉分解物等の糖原料に酵素を作用させて製造することができる。
本発明の糖組成物の製造に使用可能な酵素は、α−グルカン、α−グルコオリゴ糖、グルコースから選ばれる少なくとも一種を含む澱粉分解物(澱粉を部分的に分解物したものを含む)等の糖原料に作用して、連続したα−1,6結合を生じるような酵素である。例えば、転移酵素などが挙げられる。糖組成物を工業的に製造することを考慮すると、反応温度を50℃以上とすることが好ましいため(GLUCOSE SYRUPS: SCIENCE AND TECHNOLOGY、ELSEVIER APPLIED SCIENCE PUBLISHERS、82ページ〜、1984年)、本発明で使用する酵素は、50℃以上の温度で酵素反応可能なものが好ましい。反応温度は50℃以上であればよいが、温度が高くなると製造時に菌の繁殖が生じにくいため、55℃以上が好ましく、60℃以上がより好ましい。特に基質の粘度が高い場合、反応温度が低いとハンドリングが悪くなることがあり、基質濃度を下げる必要が生じるところ、基質濃度が下がると製造効率が低下し、また、菌の繁殖リスクも高まってしまう。反応に用いられる温度の上限は特に制限されないが、酵素が反応液中で安定である温度域ならばよく、90℃以下が望ましく、80℃以下がより望ましく、70℃以下としてもよい。したがって、本発明で使用する酵素の温度安定性は、50℃以上で反応が可能であることが好ましく、より好ましくは55℃以上、さらに好ましくは60℃以上で反応が可能であることが好ましい。
一般に、澱粉糖におけるグルコース間の結合様式としては、α−1,2結合、α−1,3結合、α−1,4結合、α−1,6結合などが知られているが、本発明の糖組成物は、連続したα−1,6結合を有する四糖類以上の成分が含まれるものである。後述するように、本発明で定義される酵素を使用すると、連続したα−1,6結合を有する四糖類以上の成分を含む糖組成物を効率的に得ることが可能になる。
本発明においては、基質である澱粉分解物に作用して、連続したα−1,6結合を生成する酵素として、GH(Glycoside Hydrolase:糖質加水分解酵素)ファミリー31に属する酵素を使用するとよいが、糖組成物を食品用途に用いることを踏まえると、食品製造において使用例のある微生物由来のものが望ましい。そのような微生物としては、例えば、糸状菌(Absidia、Acremonium、Actinomadura、Alternaria、Aspergillus、Chaetomium、Coprinus、Coriolus、Geotrichum、Humicola、Monascus、Mortierella、Mucor、Nocardiopsis、Oidiodendron、Penicillium、Rhizomucor、Rhizopus、Trichoderma、Verticillium)、担子菌(Coliolus、Corticium、Cyathus、Irpexs、Polyporus、Pycnoporus、Trametes)、細菌(Aeromonas、Agrobacterium、Alcaligenes、Alteromonas、Arthrobacter、Bacillus、Brevibacterium、Chromobacterium、Corynebacterium、Crypnohectria、Erwinia、Escherichia、Flavobacterium、Klebsiella、Lactobacillus、Lactococcus、Leuconostoc、Microbacterium、Micrococcus、Pimelobacter、Plesiomonas、Protaminobacter、Pseudomonas、Serratia、Streptococcus、Streptoverticillium、Sulfolobus、Thermus、Xanthomonas)、放線菌(Actinomadura、Actinomyces、Actinoplanes、Amycolatopsis、Eupenicillium、Nocardiopsis、Streptomyces、Thermomonospora)、酵母(Aureobasidium、Candida、Irpex、Kluyveromyces、Pycnoporus、Saccharomyces、Trichosporon)などが望ましい。
本発明で使用する連続したα−1,6結合を生成する酵素としては、中でも、アスペルギルス属由来のα−グルコシダーゼが好ましく、特にアスペルギルス属フラビ節由来であることがより好ましく、アスペルギルス オリゼー(Aspergillus oryzae)由来又はアスペルギルス ソヤ(Aspergillus sojae)由来であることがさらに好ましい。使用する酵素は、公知の方法によって精製して利用することができる。例えば、培養液の処理物を濃縮した粗酵素標品を透析後、陰イオン交換カラムクロマトグラフィー、ゲル瀘過クロマトグラフィー、等電点クロマトグラフィーなどによって、電気泳動的に単一な酵素を得ることができる。
アスペルギルス属の菌を用いて、目的とする酵素を得るに際しては、その培養には、公知の手法が適宜に採用され、例えば液体培養及び固体培養の何れもが任意に用いられ得るものである。使用する微生物は野生株に限らず、上記野生株を紫外線、エックス線、放射線、各種薬品[NTG(N−メチル−N’−ニトロ−N−ニトロソグアニジン)、EMS(エチルメタンスルホネート)等]などを用いる人工的変異手段で変異した変異株や、遺伝子組換え技術を利用して得られた遺伝子組換え株も使用できる。
アスペルギルス属の菌を用いた培養に際して用いられる培地の炭素源としては、例えば、グルコース、フルクトース、ショ糖、乳糖、澱粉、グリセリン、デキストリン、レシチン等が、単独で又は組み合わせて用いられ、また、窒素源としては、有機及び無機の窒素源の何れもが利用可能であり、そのうち、有機窒素源としては、例えば、ペプトン、酵母エキス、大豆、きなこ、米ぬか、コーンスティープリカー、肉エキス、カゼイン、アミノ酸等が用いられ、一方、無機窒素源としては、硫酸アンモニウム、硝酸アンモニウム、リン酸‐アンモニウム、リン酸二アンモニウム、塩化アンモニウム等が用いられることとなる。更に、そのような培地に添加される無機塩や微量栄養素としては、例えば、ナトリウム、マグネシウム、カリウム、鉄、亜鉛、カルシウム、マンガンの塩類の他、ビタミン等を挙げることが出来る。また、上記の各種成分を含有する培地成分として小麦ふすま等の天然物を用いることも可能である。
培養に必要な期間は、菌体濃度、培地pH、培地温度、培地の構成等によって異なるが、通常、3日〜9日程度であり、目的物とする酵素が最大に達した頃に、その培養を停止すればよい。
酵素を反応させる際の基質濃度は、反応液中に溶解する濃度であればよく、1〜80重量%の範囲、より効率よく糖質を得るためには10〜60重量%、より好ましくは20〜45重量%の条件で行うのが望ましい。反応に使用する酵素濃度は濃いほうが反応時間の短縮が図れて都合がよい。
酵素を反応させる期間は特に制限されないが、例えば10分〜7日間、望ましくは3〜120時間、より望ましくは24〜120時間が適当である。
反応に用いられるpHは、通常pH3.5〜7.0、望ましくはpH4.0〜6.5、より望ましくはpH4.0〜6.0で行うのが適当である。複数の酵素を反応に使用する場合には、使用する酵素及び酵素反応工程に応じて、適宜、上記の反応温度及び反応pHを調整してもよい。
本発明で使用する連続したα−1,6結合を生成する酵素は、デキストラン分解活性とマルトース分解活性の比率(デキストラン分解活性/マルトース分解活性)が0.06以上であることが好ましく、0.1以上であることがより好ましい。このような特性を有する酵素を使用すると、本発明に係る連続したα−1,6結合を有する四糖類以上の成分を含む糖組成物を得ることが容易である。ここで、デキストラン分解活性とマルトース分解活性の比率は、それぞれの活性を測定した上で両者の比を求めることにより算出することが可能であり、後述する実施例において具体的に説明するように測定すればよい。
本発明においては、GHファミリー31(GH31)に属する酵素を使用するが、GH31に属する酵素が共通に持つ保存領域(POSITE:PS00129)に含まれる触媒残基の10残基下流のアミノ酸残基は、ヒスチジン以外であることが好ましく、アルギニンであることがより好ましい。
本発明で使用する連続したα−1,6結合を生成する酵素は、後述する実施例などを踏まえて当業者が適宜得ることができるが、例えば、液体培養および固体培養等の公知の培養方法を用いて培養し、その培養物から公知の方法によって酵素を選抜することによって、本発明に係る糖組成物の製造に適した酵素を適宜得ることができる。例えば、培養液の処理物を濃縮した粗酵素液を、カラムクロマトグラフィー等に供して所望の特性を有する画分を回収することによって精製し、続いて、電気泳動などによってさらに精製することにより、単一の精製された酵素を得ることができる。
当業者であれば、当業界で公知の技術を用いて、本発明で使用する連続したα−1,6結合を生成する酵素に関して適当な変異体を設計し、作製することができる。例えば、本発明で使用する酵素の生物学的活性にさほど重要でないと考えられる領域をターゲティングすることにより、本発明で使用するタンパク質の生物学的活性を損なうことなくその構造を変化させることができる。タンパク質分子中の適切な領域を同定することができる。また、類似のタンパク質間で保存されている残基および領域を同定することもできる。さらに、本発明で使用するタンパク質の生物学的活性又は構造に重要と考えられる領域中に、生物学的活性を損なわず、かつ、タンパク質のポリペプチド構造に悪影響を与えずに、保存的アミノ酸置換を導入することもできる。
公開されているアスペルギルス属などの菌のゲノム配列から、例えば、GH31ファミリーに属する酵素のagdCの配列と同一性が一定以上(例えば、90%以上や85%以上、80%以上など)となる配列を探索した上で、適宜ベクターを用いて遺伝子組換え株を作製することができる。
なお、当業者であれば、本発明で使用するタンパク質の生物学的活性又は構造に重要であり、同タンパク質のペプチドと類似するペプチドの残基を同定し、この2つのペプチドのアミノ酸残基を比較して、本発明で使用するタンパク質と類似するタンパク質のどの残基が、生物学的活性又は構造に重要なアミノ酸残基に対応するアミノ酸残基であるかを予測する、いわゆる、構造−機能研究を行うことができる。さらに、このように予測したアミノ酸残基の化学的に類似のアミノ酸置換を選択することにより、本発明で使用するタンパク質の生物学的活性が保持されている変異体を選択することもできる。また、当業者であれば、本タンパク質の変異体の三次元構造およびアミノ酸配列を解析することもできる。さらに、得られた解析結果から、タンパク質の三次元構造に関する、アミノ酸残基のアラインメントを予測することもできる。タンパク質表面上にあると予測されるアミノ酸残基は、他の分子との重要な相互作用に関与する可能性があるが、当業者であれば、上記したような解析結果に基づいて、このようなタンパク質表面上にあると予測されるアミノ酸残基を変化させないような変異体を作製することができる。さらに、当業者であれば、本発明で使用するタンパク質を構成する各々のアミノ酸残基のうち、一つのアミノ酸残基のみを置換するような変異体を作製することもできる。このような変異体を公知のアッセイ方法によりスクリーニングし、個々の変異体の情報を収集することができる。それにより、ある特定のアミノ酸残基が置換された変異体の生物学的活性が、本発明で使用するタンパク質の生物学的活性に比して低下する場合、そのような生物学的活性を呈さない場合、又は、本タンパク質の生物学的活性を阻害するような不適切な活性を生じるような場合を比較することにより、本発明で使用するタンパク質を構成する個々のアミノ酸残基の有用性を評価することができる。また、当業者であれば、このような日常的な実験から収集した情報に基づいて、単独で、又は他の突然変異と組み合わせて、本発明で使用するタンパク質の変異体としては望ましくないアミノ酸置換を容易に解析することができる。
本発明の製造方法においては、基質として、澱粉又はその分解物を使用するが、基質である澱粉分解物のDEは5〜60が好ましく、5〜40がより好ましく、5〜35がさらに好ましい。また、澱粉の由来は特に限定されないが、馬鈴薯澱粉、タピオカ澱粉、小麦澱粉、コーンスターチ、ワキシーコーンスターチ、ハイアミロースコーンスターチ、えんどう豆澱粉、米澱粉などが挙げられ、これらを1種又は2種以上組み合わせて使用してもよい。
澱粉を、酸又はα−アミラーゼを用いて液化することにより、澱粉分解物を調製することができる。澱粉を部分的に加水分解するアミラーゼとしては、例えば、「Handbook of Amylases and Related Enzymes」(パーガモン・プレス社、東京、1988年)に記載されている、α−アミラーゼ、マルトペンタオース生成アミラーゼ、マルトヘキサオース生成アミラーゼなどが用いられる。これらアミラーゼとプルラナーゼ及びイソアミラーゼなどの枝切酵素を併用することも有利に実施できる。
本発明で使用する連続したα−1,6結合を生成する酵素を基質(糖原料)に作用させる際に、α−アミラーゼ、β−アミラーゼ、グルコアミラーゼ、α−グルコシダーゼなどで加水分解したり、ブランチングエンザイム、グルコシルトランスフェラーゼ、シクロデキストリングルコシルトランスフェラーゼなどを作用させて、分子量や、甘味性、還元力などを調整したり、粘性を低下させたりすることも可能である。
これらの酵素の中でも、50℃以上の温度でも反応が可能な耐熱性酵素を選択すれば、連続したα−1,6結合を生成する酵素と一緒に作用させる際に、50℃を超える高温で処理できる。併用する酵素は、連続したα−1,6結合を生成する酵素と同時に作用させても良いし、別々に反応させても良い。他の酵素が澱粉分解酵素の場合、連続したα−1,6結合を生成する酵素と同時に作用させると、澱粉分解物の生成と、当該分解物からの糖組成物の生成とが同時に進行する。
本発明の糖組成物の調製に関して、酵素反応の反応液は、常法により、瀘過、遠心分離などして不溶物を除去した後、活性炭で脱色、H型、OH型イオン交換樹脂で脱塩し、濃縮し、シラップ状製品とすることもできる。更に、乾燥して粉末状製品にすることも随意である。
必要ならば、更に、高度な精製(分離精製)をすることも随意である。これにより、糖組成物中の連続したα−1,6結合を有する四糖類以上の成分の含有量の調整や、グルコースを構成糖とする糖組成物の全重量に対する、グルコースを構成糖とする連続したα−1,6結合を有する四糖類以上の成分の含量の調整も行うこともできる。
例えば、イオン交換(陽イオン交換及び陰イオン交換)カラムクロマトグラフィーによる分画、活性炭カラムクロマトグラフィーによる分画、ゲル濾過カラムクロマトグラフィーによる分画をすることにより、高純度化することもできる。
イオン交換カラムクロマトグラフィーとしては、特開昭58−23799号公報、特開昭58−72598号公報などに開示されている塩型強酸性カチオン交換樹脂を用いるカチオン交換樹脂を用いるカラムクロマトグラフィーにより、夾雑糖類を除去して高含有画分を採取する方法が有利に実施できる。塩型強酸性カチオン交換樹脂を用いるカチオン交換樹脂を用いるカラムクロマトグラフィー法にて、糖組成物中の連続したα−1,6結合を有する四糖類以上の成分の含有量等の調整を行うのが望ましい。
この際、固定床方式、移動床方式、疑似移動床方式のいずれの方式を採用することも随意である。
以下、実験例を示しつつ本発明をより具体的に説明するが、本発明は、下記の実験例に限定されるものではない。また、特に記載しない限り、本明細書において濃度などは重量基準であり、数値範囲はその端点を含むものとして記載される。
実験1:分析方法
(1)酵素活性の測定
<マルトース分解活性>
マルトースを基質とした加水分解活性は、以下のように分析した。20mM MES緩衝液(pH6.0)に溶解した20mM マルトース 50μLと、同緩衝液で希釈した酵素溶液50μLとを混合し、40℃で30分間反応させた後、10%シュウ酸溶液を1μL添加し100℃で10分加熱処理をすることで反応を停止した。反応液に生成したグルコース量をグルコースCIIテストワコー(和光純薬工業製)にて分析した。1分間に1μmolのマルトースを分解する酵素量を1Uと定義した。
<デキストラン分解活性>
上記したマルトース分解活性の分析方法において、20mM マルトースに替えて2%デキストランを用い、酵素の反応温度を40℃から50℃に替えた以外は同様の方法によって、デキストランを基質とした加水分解活性を測定した。1分間に1μmolのグルコースを生成する酵素量を1Uと定義した。
<デキストラン分解活性とマルトース分解活性の比率>
デキストラン分解活性とマルトース分解活性の比率は、各酵素のデキストラン分解活性をマルトース分解活性で割ることによって算出した。その際、マルトース分解活性は、上記したマルトース分解活性の分析方法において、酵素の反応温度を40℃から50℃に替えて測定した。
(2)糖組成物の分析
<DE(Dextrose Equivalent)>
糖組成物のDEは、「澱粉糖関連工業分析法」(澱粉糖技術部会編、5〜6ページ)に記載のレインエイノン法に従って算出した。
<糖組成物の重合度分布>
糖組成物の重合度(DP)は、糖組成物を以下の条件でゲル濾過カラムにより分析した。DP1、2、3、4、5以上の成分は、グルコース、マルトース、マルトトリオース、マルトテトラオース、マルトペンタオース試薬をスタンダードとして分析した。
(HPLC分析条件)
カラム: MCI GEL CK04S(三菱化学製)
カラム温度: 65℃
移動相: 超純水
検出器: RI(示差屈折検出器)
流量: 0.35mL/分
<糖組成物の分子量分布>
糖組成物の分子量分布は、糖組成物を以下の条件でゲル濾過カラムにより分析した。なお、糖組成物重量平均分子量(Mw)、数平均分子量(Mn)は、LabSolutions GPC ソフトウェア(島津製作所製)を用いて、既知のプルラン(プルランスタンダードP−82;昭和電工製)、グルコース、マルトトリオース、マルトペンタオースにより検量線を作成して算出した。
(HPLC分析条件)
カラム: Shodex OHpak SB−804とShodex OHpak SB−802.5(共に昭和電工製)とを連結
カラム温度: 35℃
移動相: 20mM NaCl
検出器: RI(示差屈折検出器)
流量: 0.8mL/分
<糖組成物における連続α−1,6結合糖質量>
糖組成物の連続α−1,6結合糖質量は、デキストラナーゼ分解による評価法により分析した。
糖組成物を固形分濃度30%に調製した液30μLに対して、1000倍希釈のデキストラナーゼL「アマノ」(天野エンザイム製)30μL、20mM MES緩衝液(pH6.0)390μLを混合し、50℃で16時間反応させた後、100℃で10分加熱処理をすることで反応を停止した。
デキストラナーゼL「アマノ」処理前後の糖組成物の重合度分布を、前述の<糖組成物の重合度分布>にてそれぞれ分析し、四糖類以上の成分の重量割合の差分を連続α−1,6結合糖質量とした。
なお、上記分析で用いるデキストラナーゼL「アマノ」は、グルコースがα−1,6結合で結合した多糖デキストランを分解する酵素として知られている。デキストラナーゼL「アマノ」の生産菌であるケトミウム・エラティカム(Chaetomium erraticum)由来のデキストラナーゼは、デキストランを分解し、イソマルトース、イソマルトトリオースと少量のグルコースを主に生成することが知られている(International Journal of Biological Macromolecules、第59巻、246ページ〜、2013年)。また、本発明者らは、デキストラナーゼL「アマノ」が、四糖類以上の連続α−1,6結合を含有する糖質(イソマルトテトラオース、イソマルトペンタオース、イソマルトヘキサオース、デキストラン)に作用し、三糖類以下の成分が同様に生成することを確認済である。
<糖組成物に含まれるα−1,6結合の割合>
糖組成物に含まれるα−1,6結合の割合は、1H−NMR測定によって得られるチャートに基づき、ピークの積分値より算出した。ピークの同定は、Carbohydrate Research(第343巻、101ページ〜、2008)を参照して行った。
実験2:α−1,6結合を生成する市販酵素を使用して得られる糖組成物の分析(参考例)
α−1,6結合を生成する酵素として市販されているトランスグルコシダーゼL「アマノ」(天野エンザイム製)を用いて糖組成物を製造して分析した。本実験においては、重合度の異なる市販の澱粉分解物として、(1)MR750(DE57)、(2)SPD(DE30)、(3)M−SPD(DE20)、(4)J−SPD(DE13)を使用した(いずれも昭和産業製)。
各澱粉分解物を濃度30%になるように水に溶解し、温度50℃、pH6.0に調整した後、トランスグルコシダーゼL「アマノ」をマルトース分解活性で各澱粉分解物の固形分1g当たりそれぞれ0.8U、1U、1U、2U添加し作用させた。さらに、SPD、M−SPD、J−SPDについては、トランスグルコシダーゼL「アマノ」をマルトース分解活性で各澱粉分解物の固形分1g当たりそれぞれ1.5U、2U、3U添加し、同時に枝切酵素としてプルラナーゼ(クライスターゼPLF、天野エンザイム製)を各澱粉分解物の固形分1g当たり0.25%、及び、イソアミラーゼ(GODO−FIA、合同酒精製)を各澱粉分解物の固形分1g当たり0.07%添加し作用させた。
なお、トランスグルコシダーゼL「アマノ」のマルトース分解活性は、実験1に記載の方法に基づいて分析した。24、48、96、168、264時間反応時にサンプリングし、実験1に記載の方法に従って連続α−1,6結合糖質量を分析した。
各反応において連続α−1,6結合糖質量が最大となった反応時間の分析値を、表1に示す。トランスグルコシダーゼL「アマノ」を用いて得られる糖組成物の連続α−1,6結合糖質量はすべて9%以下であった。
実験3:アスペルギルス・ソヤNBRC4239株由来α−グルコシダーゼの取得並びにその性質の評価
(1)NBRC4239株由来α−グルコシダーゼの取得
<α−グルコシダーゼの遺伝子配列の定義>
公開されているアスペルギルス属菌のゲノム配列から、アスペルギルス・オリゼーRIB40由来のGH31ファミリーに属するα−グルコシダーゼと推定されているagdCの配列(Accession no. XP_001825390)と同一性が90%以上となる配列を探索し、アスペルギルス・ソヤNBRC4239株のゲノム配列(Accession no. BACA00000000)より定義した(配列番号1)。
<染色体DNAの抽出>
50mLチューブに、滅菌したYPD培地5mLを入れ、NBRC4239株を植菌し、30℃で24時間培養した。そして培養菌体を回収し、DNeasy Plant Mini Kit(QIAGEN製)で染色体DNAを抽出した。なお菌体は前述のKitのAP1緩衝液を添加し、マルチビーズショッカー(安井器械製)で破砕した。
<遺伝子組換え株の作成>
定義した遺伝子配列の終止コドンの前に、10残基のヒスチジンタグを付加するように塩基配列を挿入したPCR産物を得るためのプライマーセットを設計した。抽出した染色体DNAをテンプレートとして、プライマーセットを用いてPCRを行った。PCR産物はIn Fusion HD Cloning Kit(クロンテック製)を用いて、高発現プロモーターとしてRIB40由来の翻訳伸長因子TEF1のプロモーター領域、ターミネーターとして本酵素の遺伝子配列の終止コドンより下流300bpの領域とともに、制限酵素KpnI、HindIIIで消化したpPTRII(タカラバイオ製)に導入したベクターを構築した。ベクターの設計を図1に示す。そして、アスペルギルス・ニデュランス(Aspergillus nidulans)ATCC38163株を宿主にプロトプラスト−PEG法(Agricultural and Biological Chemistry、第51巻、2549ページ〜、1987年)を行い、遺伝子組換え株を作製した。
上記α−グルコシダーゼの遺伝子、RIB40由来の翻訳伸長因子TEF1のプロモーター領域、及びターミネーター領域を増幅するために用いたプライマーは以下のとおりである。
(NBRC4239株由来α−グルコシダーゼF:配列番号2)
5´−CGCACCACCTTCAAAATGTATCTTAAGAAGCTGCTCACTTC−3´
(NBRC4239株由来α−グルコシダーゼR:配列番号3)
5´−CAGAATCGTAATCTCATTCTCGC−3´
(プロモーターF:配列番号4)
5´−TGATTACGCCAAGCTTGATTTTCACTGTGGACCAGACA−3´
(プロモーターR:配列番号5)
5´−TTTGAAGGTGGTGCGAACT−3´
(ターミネーターF(ヒスチジンタグの塩基配列を含む):配列番号6)
5´−GAGATTACGATTCTGCACCACCACCACCACCACCACCACCACCACTGAATGATTTGGTTGGTGAGATAG−3´
(ターミネーターR:配列番号7)
5´−GTGAATTCGAGCTCGGTACCAGGTGATGAACGGAGCTTTAA−3´
<cDNAの配列解析>
得られた酵素の遺伝子のcDNA配列を確認するために上記遺伝子組換え株から、前述した<染色体DNA抽出>と同様の操作で菌体を回収し、RNeasy Plant Mini Kit(QIAGEN製)でRNAの抽出を行った。得られたRNAからRever Tra Ace(東洋紡製)を用いて逆転写反応でcDNAを合成し、PCR反応で酵素遺伝子のcDNAを得た。得られたcDNAをTOPO TA Cloning KitでPCR2.1 TOPO(いずれもインビトロジェン製)に導入した後、シーケンス解析を行いcDNAの全長配列を決定した(配列番号8;ヒスチジンタグの塩基配列は除いた)。得られたcDNAからアミノ酸配列を決定した(配列番号9;ヒスチジンタグ部分は除いた)。
得られた酵素のアミノ酸配列は、RIB40由来のGH31ファミリーに属するα−グルコシダーゼと推定されているagdCの配列と同一性が99%であり、かつGH31ファミリーが共通に持つ2つの保存領域(POSITE:PS00129、PS00707)における配列がagdCと完全に一致するため、本酵素はGH31ファミリーに属する酵素と考えられた。
<NBRC4239株由来α−グルコシダーゼの生産>
2L三角フラスコにツァペック ドックス培地1Lを入れて蒸気滅菌した後、ピリチアミンを添加し、上記遺伝子組換え株を植菌、37℃で4日間振とう培養を行った。そして、ミラクロス(メルク・ミリポア製)で集菌、蒸留水で洗浄後、水分をよく搾った。
得られた菌体のうち100gに、0.5M NaCl、20mM イミダゾールを含んだ20mM Tris緩衝液(pH7.4)を200mL加え、ヒスコトロン(日音医理科器械製作所製)を用いて20000rpmで30秒の破砕を5回繰り返した。そして、10000rpmで20分遠心分離を行って上清を回収し、粗酵素液とした。得られた粗酵素液の酵素活性を実験1(1)に記載の<マルトース分解活性>に従って測定した結果、97Uだった。
<NBRC4239株由来α−グルコシダーゼの精製>
得られた粗酵素液を、以下の2段階のクロマト分離に供した。下記のクロマト分離で得られた画分を、Native−ポリアクリルアミドゲル電気泳動(GEヘルスケア製、「PhastSystem」)で分析した結果、110000ダルトンの単一バンドが見られた(図2左)。
(第1段階) Ni−NTAアフィニティークロマトグラフィー
粗酵素液を0.2μmのフィルターに通した後、His−Trap HP(GEヘルスケア製)に供し、0.5M NaCl、500mM イミダゾールを含む20mM Tris緩衝液(pH7.4)で溶出した。これにより、ヒスチジンタグが付加されたタンパク質を選択的に回収した。
(第2段階) ゲル濾過クロマトグラフィー
第1段階のアフィニティークロマトフィーで得られた溶出液を、限外濾過により20mM MES緩衝液(pH6.0)に置換し、HiLoad 16/60 Superdex Prepgrade(GEヘルスケア製)による分離を行い、マルトース分解活性の高い画分を回収した。得られた画分からマルトース分解活性として17Uのα−グルコシダーゼを得た。
(2)NBRC4239株由来α−グルコシダーゼの評価
得られたNBRC4239株由来α−グルコシダーゼについて、その性質を下記の手順によって評価した。
<分子量及び等電点>
精製酵素をSDS−ポリアクリルアミドゲル電気泳動(GEヘルスケア製、「PhastSystem」)に供した結果を図2(右方)に示す。分子量65000、76000ダルトンの2本のバンドが検出された。Native−ポリアクリルアミドゲル電気泳動による結果と比較すると、本酵素はヘテロダイマーの構造を持つと考えられた。
また、等電点電気泳動(GEヘルスケア製、「PhastSystem」)に供した結果、本酵素の等電点は4.9〜5.5(中心値は5.2)であった。
<至適温度、至適pH>
本酵素のマルトース分解活性に対する温度、pHの影響を調べた。マルトース分解活性は実験1に記載の<マルトース分解活性>に準じて分析した。その結果を図3(温度の影響)、図4(pHの影響)に示す。本酵素の至適温度はpH6.0、30分間の反応で55℃であり、至適pHは40℃、30分間の反応で5.5であった。
なおpHの影響の評価では、pH3.0〜5.0はフタル酸緩衝液、pH5.5〜7.0はMES緩衝液、pH7.5〜8.0はMOPS緩衝液、pH9.0〜11.0はCAPS緩衝液を使用した。
<温度安定性、pH安定性>
本酵素のマルトース分解活性について温度安定性、pH安定性を調べた。マルトース分解活性は実験1に記載の<マルトース分解活性>に準じて分析した。その結果を図5(温度安定性)、図6(pH安定性)に示す。本酵素の温度安定性は、50℃で活性が90%以上残存していた。また、pH安定性は、pH4.5〜10の範囲で活性が80%以上、pH6.0〜10.0の範囲で活性が90%以上残存していた。
温度安定性は酵素溶液(20mM MES緩衝液(pH6.0)、0.1mM CaCl2含有)を各温度で1時間保持し、氷水にて冷却後、残存する酵素活性を評価した。pH安定性は酵素溶液(各pHの40mM緩衝液)を4℃で24時間保持し、pHを6.0に調整した後、残存する酵素活性を評価した。
なおpH安定性の評価では、pH2.0〜5.0はフタル酸緩衝液、pH6.0〜7.0はMES緩衝液、pH8.0はMOPS緩衝液、pH9.0〜12.0はCAPS緩衝液を使用した。
<基質特異性>
本酵素の基質特異性を40℃、pH6.0の条件にて評価した。結果を表2に示す。
マルトースやコージビオース、ニゲロース、イソマルトースなどの二糖類、及びマルトトリオース、マルトペンタオース、マルトヘキサオース、マルトヘプタオース、イソマルトトリオース、イソマルトテトラオース、α−シクロデキストリン、β−シクロデキストリン、アミロース、可溶性澱粉などには良好に作用してグルコースを生成した。特にα−1,6結合を有するイソマルトース、イソマルトトリオース、イソマルトテトラオースが最も良好な基質であった。
マルトテトラオース、γ−シクロデキストリンについては作用性がやや低かった。トレハロース、グリコーゲン、デキストランについてはわずかに反応がみられた。
実験4:NBRC4239株由来α−グルコシダーゼを用いて得られる糖組成物の分析
(1)各重合度の基質にNBRC4239株由来α−グルコシダーゼを作用させて得られる糖組成物の分析
重合度の異なる市販の澱粉分解物(MR750:DE57、SPD:DE30、M−SPD:DE20、J−SPD:DE13(いずれも昭和産業製))を濃度30%になるように水に溶解し、温度50℃、pH6.0に調整した後、実験3(1)で得られたNBRC4239株由来α−グルコシダーゼをマルトース分解活性で各澱粉分解物の固形分1g当たりそれぞれ0.8U、1U、1.5U、2.5U添加し作用させた。24、48、96、168、264時間反応時にサンプリングし、DE、分子量分布、連続α−1,6結合糖質量を分析した。
連続α−1,6結合糖質量が最大となった反応時間と264時間の分析値を表3に示す。NBRC4239株由来α−グルコシダーゼにより、DE30〜61、Mw550〜10067、Mn325〜715、Mw/Mn1.7〜15.1、連続α−1,6結合糖質量13〜23%の糖組成物を得ることができた。
(2)重合度の異なる基質にNBRC4239株由来α−グルコシダーゼと枝切酵素を同時に作用させて得られる糖組成物の分析
重合度の異なる市販の澱粉分解物(SPD:DE30、M−SPD:DE20、J−SPD:DE13(いずれも昭和産業製))を濃度30%になるように水に溶解し、温度50℃、pH6.0に調整した後、実験3(1)で得られたNBRC4239株由来α−グルコシダーゼをマルトース分解活性で各澱粉分解物の固形分1g当たりそれぞれ1.5U、2U、3U添加し、同時に枝切酵素としてプルラナーゼ(クライスターゼPLF、天野エンザイム製)を各澱粉分解物の固形分1g当たり0.25%、及び、イソアミラーゼ(GODO−FIA、合同酒精製)を固形分1g当たり0.07%を添加し作用させた。24、48、96、168、264時間反応時にサンプリングし、実験1(2)に記載の分析方法に従ってDE、分子量分布、連続α−1,6結合糖質量を分析した。
連続α−1,6結合糖質量が最大となった反応時間と264時間の分析値を表4に示す。NBRC4239株由来α−グルコシダーゼと枝切り酵素を組み合わせることで、DE34〜51、Mw752〜2717、Mn397〜631、Mw/Mn1.8〜5.0、連続α−1,6結合糖質量16〜26%の糖組成物を得ることができた。
実験5:NBRC4239株由来α−グルコシダーゼを含有する酵素製剤及び部分精製酵素の調製
(1)NBRC4239株由来α−グルコシダーゼを含有する酵素製剤の調製
500mLの三角フラスコに小麦ふすま10gを入れて蒸気滅菌した後、NBRC4239株をYPD培地で培養した前培養液を10mL添加し、水分が均一になるようによく撹拌した後、30℃で4日間、固体培養を行った。培養終了後、100mLの滅菌水で小麦ふすまを洗浄し、ミラクロス(メルク・ミリポア製)による濾過、3500rpm、20分間で2回遠心分離後、上清を回収し粗酵素液とした。この粗酵素液を凍結乾燥しNBRC4239株由来酵素製剤とした。この酵素製剤についてマルトース分解活性を測定したところ、24Uであった。
(2)NBRC4239株由来α−グルコシダーゼを含有する部分精製酵素の調製
前述した手法で得られた粗酵素液を0.2μmのフィルターで濾過したものを陰イオン交換クロマトグラフィーに供した。分離樹脂はTOYOPEARL DEAE−650M(東ソー製)を用い、樹脂量(以降はCVと記載)は100mLとした。0.12M 塩化ナトリウムを含む20mM Tris緩衝液(pH7.4)500mLで洗浄、0.22M 塩化ナトリウムを含む20mM Tris緩衝液(pH7.4)を用いて、0.12→0.22M 塩化ナトリウムの直線的濃度勾配(10CV)で溶出し、実験1(1)に記載の<デキストラン分解活性>に従って活性測定し、デキストラン分解活性の高い画分を回収した。この回収液を凍結乾燥しNBRC4239株由来部分精製酵素とした。この酵素についてマルトース分解活性を測定したところ、11Uであった。
実験6:アスペルギルス・オリゼー株由来α−グルコシダーゼの取得並びに当該α−グルコシダーゼを作用させて得られる糖組成物の分析
(1)RIB40由来agdCにコードされている推定α−グルコシダーゼの取得並びに当該α−グルコシダーゼを作用させて得られる糖組成物の分析
<RIB40由来agdCにコードされている推定α−グルコシダーゼの取得>
実験3(1)に記載の手法に準じて、RIB40由来agdCにコードされている推定α−グルコシダーゼの遺伝子組換え株を作製、培養・菌体破砕後に精製し、Native−ポリアクリルアミドゲル電気泳動で単一のバンドを示すRIB40由来agdCにコードされている推定α−グルコシダーゼを得た。当該α−グルコシダーゼのマルトース分解活性は11Uであった。
<RIB40由来agdCにコードされているα−グルコシダーゼを用いて得られる糖組成物の分析>
得られたRIB40由来agdCにコードされているα−グルコシダーゼをマルトペンタオースへ作用させた。精製酵素液0.2mL(マルトース分解活性7.2U/mL)を45%マルトペンタオース溶液(pH6.0)0.4mLに加え、40℃で72時間反応を行った。反応後に沸騰浴槽で10分間加熱し、酵素を失活させた。得られた糖組成物の連続α−1,6結合糖質量を実験1(2)に記載の<糖組成物における連続α−1,6結合糖質量>に従って分析した結果、連続α−1,6結合糖質はほとんど検出されなかった。
(2)RIB40由来agdCにコードされているα−グルコシダーゼのアミノ酸配列と、NBRC4239株由来のα−グルコシダーゼ遺伝子がコードするアミノ酸配列の比較
実験3(1)に記載した通り、NBRC4239株由来α−グルコシダーゼ遺伝子とRIB40由来agdCにコードされているα−グルコシダーゼのアミノ酸配列の同一性は99%であり、かつGH31ファミリーが共通に持つ2つの保存領域(POSITE:PS00129、PS00707)における配列が完全に一致する。触媒残基を含む保存領域(POSITE:PS00129)付近のアミノ酸配列を比較したところ、触媒残基の10残基下流がアルギニンとヒスチジンで異なることがわかった(表5)。この違いが、NBRC4239株由来α−グルコシダーゼとRIB40由来agdCにコードされているα−グルコシダーゼとの連続α−1,6結合糖質を生成する活性の違いに寄与すると考えられた。
(3)NBRC4261由来α−グルコシダーゼの取得並びに当該α−グルコシダーゼを作用させて得られる糖組成物の分析
<NBRC4261株由来α−グルコシダーゼの、GH31ファミリーが共通に持つ保存領域(POSITE:PS00129)付近のアミノ酸配列の推定>
アスペルギルス・オリゼーNBRC4261株由来α−グルコシダーゼの染色体DNAの抽出は、実験3(1)に記載の<染色体DNAの抽出>のNBRC4239株に替えてNBRC4261株を用いた以外は同様の試験を行った。
また、GH31ファミリーが共通に持つ保存領域(POSITE:PS00129)付近のアミノ酸配列を推定するため、RIB40由来agdCの遺伝子配列を基に下記のプライマーセットを設計した。抽出した染色体DNAを鋳型に設計した下記のプライマーを用いてPCRを行い、さらにPCR産物を鋳型にプライマーを用いてシーケンス解析した。
その結果、NBRC4261株の推測アミノ酸配列において、GH31ファミリーが共通に持つ保存領域(POSITE:PS00129)はRIB40由来agdCにコードされているα−グルコシダーゼのものと完全に一致し、また、触媒残基の10残基下流はアルギニンであった。
上記プライマーセットは以下のとおりである。
(シーケンス解析用プライマーF:配列番号10)
5´−ATGACTCCTTATTGGGGACT−3´
(シーケンス解析用プライマーR:配列番号11)
5´−GCTGGTATCTGATGGAGATT−3´
<NBRC4261株由来α−グルコシダーゼ遺伝子配列の解析>
NBRC4261株由来α−グルコシダーゼ遺伝子のシーケンス解析を行うため、RIB40由来agdCの300bp上流付近と300bp下流付近の塩基配列から下記のプライマーセットを設計した。NBRC4261株から抽出した染色体DNAを鋳型に設計したプライマーセットを用いてPCRを行い、さらにPCR産物を鋳型にプライマーセットを用いてシーケンス解析した。解析した塩基配列を用いてさらにプライマーを設計し、NBRC4261株由来α−グルコシダーゼ遺伝子の全配列を解析した(配列番号12)。NBRC4239株由来α−グルコシダーゼの遺伝子配列とcDNA配列からNBRC4261株由来α−グルコシダーゼ遺伝子のイントロンを推測し、アミノ酸配列を予想した(配列番号13)。NBRC4261株由来α−グルコシダーゼは、RIB40由来agdCにコードされているGH31ファミリーに属するα−グルコシダーゼの配列と同一性が99%であり、かつGH31ファミリーが共通に持つ2つの保存領域(POSITE:PS00129、PS00707)における配列がRIB40由来agdCにコードされているα−グルコシダーゼと完全に一致するため、NBRC4261株由来α−グルコシダーゼはGH31ファミリーに属する酵素と考えられた。
上記プライマーセットは以下のとおりである。
(RIB40由来agdC上流300bpF:配列番号14)
5´−TGTTTTTGCCGACTGAGCT−3´
(RIB40由来agdC下流300bpR:配列番号15)
5´−GTGAGAACGGAGCTTTAATAATAC−3´
<NBRC4261株由来α−グルコシダーゼの取得>
実験3(1)に記載の手法に準じて、NBRC4261株由来α−グルコシダーゼの遺伝子組換え株を作製、培養・菌体破砕、精製し、Native−ポリアクリルアミドゲル電気泳動で単一のバンドを示すNBRC4261株由来α−グルコシダーゼを得た。
当該α−グルコシダーゼのマルトース分解活性は10Uであった。
<NBRC4261株由来α−グルコシダーゼを用いて得られる糖組成物の分析>
市販の澱粉分解物(M−SPD:DE20(昭和産業製))を濃度30%になるように水に溶解し、温度50℃、pH6.0に調整した後、上記で得られたNBRC4261株由来α−グルコシダーゼをマルトース分解活性で澱粉分解物の固形分1g当たり1.5U添加し48時間作用させた。
表6に、DE、分子量分布、連続α−1,6結合糖質量を分析した結果を示す。NBRC4261株由来α−グルコシダーゼを用いても、DE26、Mw8465、Mn835、Mw/Mn10.1、連続α−1,6結合糖質量が18%である糖組成物が得られた。
実験7:NBRC4261株由来α−グルコシダーゼを含有する酵素製剤及び部分精製酵素の調製
実験5に記載の手法に準じて、NBRC4261株を培養し、粗酵素液を取得、凍結乾燥してマルトース分解活性で26UのNBRC4261株由来酵素製剤得た。また、粗酵素液からマルトース分解活性で11UのNBRC4261株由来部分精製酵素を調製した。
実験8:各重合度の基質にNBRC4239株及び、NBRC4261株由来のα−グルコシダーゼ、酵素製剤、部分精製酵素を作用させて得られる糖組成物の分析
(1)NBRC4239株及び、NBRC4261株由来のα−グルコシダーゼ、酵素製剤、部分精製酵素のデキストラン分解活性とマルトース分解活性の比率
下記の酵素について、実験1(1)<デキストラン分解活性とマルトース分解活性の比率>に記載の活性測定方法で、デキストラン分解活性とマルトース分解活性を測定し、両者の比率(デキストラン分解活性/マルトース分解活性)を算出した。結果を表7に示す。
・実験3(1)で得られたNBRC4239株由来α−グルコシダーゼ
・実験5で得られたNBRC4239株由来酵素製剤
・実験5で得られたNBRC4239株由来部分精製酵素
・実験6(3)で得られたNBRC4261株由来α−グルコシダーゼ
・実験7で得られたNBRC4261株由来酵素製剤
・実験7で得られたNBRC4261株由来部分精製酵素
・市販酵素であるトランスグルコシダーゼL「アマノ」
・実験6(1)で得られたRIB40由来agdCにコードされているα−グルコシダーゼ
(2)各重合度の基質にNBRC4239株及び、NBRC4261株由来のα−グルコシダーゼ、酵素製剤、部分精製酵素を作用させて得られる糖組成物の分析
重合度の異なる市販の澱粉分解物(MR750:DE57、SPD:DE30、M−SPD:DE20、J−SPD:DE13(いずれも昭和産業製))を濃度30%になるように水に溶解し、温度50℃、pH6.0に調整した後、それぞれの基質に実験3(1)で得られたNBRC4239株由来α−グルコシダーゼ、実験5で得られた酵素製剤、部分精製酵素、及び、実験6(3)で得られたNBRC4261株由来α−グルコシダーゼ、実験7で得られた酵素製剤、部分精製酵素について、マルトース分解活性で各澱粉分解物の固形分1g当たり0.25U、0.5U、1U、2Uと添加量をふり64時間作用させた。実験1(2)に記載の分析方法に従ってDE、分子量分布、連続α−1,6結合糖質量を分析した。
各反応について、連続α−1,6結合糖質量が10%以上になる最も少ない添加量の酵素を作用させた時の分析値と2U添加した時の分析値を表8に示す。各澱粉分解物にNBRC4239株由来α−グルコシダーゼ、酵素製剤、部分精製酵素、及び、NBRC4261株由来α−グルコシダーゼ、酵素製剤、部分精製酵素を50℃で作用させることで、DE23〜70、Mw407〜16365、Mn275〜989、Mw/Mn1.5〜18.8、連続α−1,6結合糖質量10〜23%の糖組成物を得ることができた。特にα−グルコシダーゼのデキストラン分解活性とマルトース分解活性の比率が概ね0.06以上であると、本発明の糖組成物を効率良く得ることができた。
実験9:連続したα−1,6結合を多く含む糖組成物の調製
(1)NBRC4239株由来α−グルコシダーゼを用いた糖組成物の調製
<サンプルA〜D>
重合度の異なる市販の澱粉分解物(MR750:DE57、マルデックPH400:DE35、M−SPD:DE20(いずれも昭和産業製))を濃度30%になるように水に溶解し、温度50℃、pH6.0に調整した後、実験3(1)で得られたNBRC4239株由来α−グルコシダーゼをマルトース分解活性で各澱粉分解物の固形分1g当たりそれぞれ1U添加し48時間作用させ、pH4.0に調整後約100℃で10分加熱処理をすることで反応を停止させた。不溶物を濾過して除去した後、活性炭・イオン精製処理し凍結乾燥した。得られた糖組成物をそれぞれサンプルA、サンプルB、サンプルCとした。さらに、MR750に作用させて得られた糖組成物の一部については、固形分50%の水溶液を調製し、60℃に加熱した強酸性カチオン交換樹脂(FX1040、オルガノ製)を充填した連続式クロマト分離装置(トレソーネ、オルガノ製)に供し、グルコースを除去した。回収した溶液は活性炭・イオン精製処理した後凍結乾燥し、サンプルDとした。
<サンプルE>
市販の澱粉分解物(M−SPD:DE20(昭和産業製))を濃度30%になるように水に溶解し、温度50℃、pH6.0に調整した後、実験3(1)で得られたNBRC4239株由来α−グルコシダーゼをマルトース分解活性で澱粉分解物の固形分1g当たり1U添加し、同時に枝切酵素としてプルラナーゼ(クライスターゼPLF、天野エンザイム製)を澱粉分解物の固形分1g当たり0.25%、及び、イソアミラーゼ(GODO−FIA、合同酒精製)を澱粉分解物の固形分1g当たり0.07%を添加し48時間作用させ、pH4.0に調整後約100℃で10分加熱処理をすることで反応を停止させた。不溶物を濾過して除去した後、活性炭・イオン精製処理し凍結乾燥した。得られた糖組成物はサンプルEとした。
<サンプルF>
固形分30%のとうもろこし澱粉液化液(DE13)を温度55℃、pH6.0に調整した後、実験3(1)で得られたNBRC4239株由来α−グルコシダーゼをマルトース分解活性で固形分1g当たり4U添加し48時間作用させ、pH4.0に調整後約100℃で10分加熱処理をすることで反応を停止させた。不溶物を濾過して除去した後、活性炭・イオン精製処理し凍結乾燥した。得られた糖組成物はサンプルFとした。
<サンプルG>
固形分30%の甘蔗澱粉液化液(DE8)を温度55℃、pH6.0に調整した後、実験3(1)で得られたNBRC4239株由来α−グルコシダーゼをマルトース分解活性で固形分1g当たり4U添加し48時間作用させ、pH4.0に調整後約100℃で10分加熱処理をすることで反応を停止させた。不溶物を濾過して除去した後、活性炭・イオン精製処理し凍結乾燥した。得られた糖組成物はサンプルGとした。
<サンプルH>
固形分30%のワキシーコーン澱粉液化液(DE5)を温度55℃、pH6.0に調整した後、実験3(1)で得られたNBRC4239株由来α−グルコシダーゼをマルトース分解活性で固形分1g当たり4U添加し48時間作用させ、pH4.0に調整後約100℃で10分加熱処理をすることで反応を停止させた。不溶物を濾過して除去した後、活性炭・イオン精製処理し凍結乾燥した。得られた糖組成物はサンプルHとした。
(2)NBRC4239株由来酵素製剤を用いた糖組成物の調製
固形分30%のとうもろこし澱粉液化液(DE20)を温度55℃、pH6.0に調整した後、実験5(1)で得られたNBRC4239株由来酵素製剤をマルトース分解活性で固形分1g当たり4U添加し48時間作用させ、pH4.0に調整後約100℃で10分加熱処理をすることで反応を停止させた。不溶物を濾過して除去した後、活性炭・イオン精製処理し凍結乾燥した。得られた糖組成物はサンプルIとした。
(3)調製した糖組成物の分析
調製した糖組成物サンプルA〜Iについて、実験1(2)に記載の分析方法に従ってDE、分子量分布、連続α−1,6結合糖質量、α−1,6結合の割合を分析した。その結果を表9に示す。なお、サンプルAのα−1,6結合の割合の算出に用いた1H−NMR測定によって得られるチャートを図7に示す。
得られたサンプルは、DE22〜60、Mw541〜51570、Mn334〜1059、Mw/Mn1.4〜48.7、連続α−1,6結合糖質量10〜22%、α−1,6結合の割合は39〜78%の範囲であった。
実験10:連続したα−1,6結合を含む糖組成物の食品への応用
実験9で取得した糖組成物について、以下の試験を実施し、主に食品用途における有用性を評価した。
(1)澱粉の老化抑制機能
本発明の糖組成物の添加が澱粉の老化性に与える影響を検討した。固形分12%の小麦澱粉溶液と固形分10%の糖液を等量で混合し、RVA4500(Perten Instruments製)を用いて澱粉の老化性を評価した。糖液は、サンプルA〜I、グルコース、トレハロース、及び市販の澱粉分解物(MR750:DE57、マルデックPH400:DE35、M−SPD:DE20(いずれも昭和産業製))、イソマルトオリゴ糖(IMO900:DE44(昭和産業製))に水を加えて調製した。また試験は、図8に示す条件で処理し、セットバック値(最終粘度と糊化後の最小粘度の差)を算出、その値で老化性を評価した。結果はDE別に図9に示す。
DE50以上では、グルコースや市販の澱粉分解物(MR750)の添加区に比べ、トレハロース、サンプルA、Iの添加区はセットバック値が小さい値であった。また、トレハロースとサンプルA、Iを比較すると、サンプルA、Iを添加した方が小さい値を示した。
DE30〜50では、市販の澱粉分解物(マルデックPH400)の添加区に比べ、イソマルトオリゴ糖(IMO900)、サンプルB、D、Eの添加区はセットバック値が小さい値であった。また、イソマルトオリゴ糖(IMO900)とサンプルB、D、Eを比較すると、サンプルB、D、Eを添加した方が小さい値を示した。
DE20〜30では、市販の澱粉分解物(M−SPD)の添加区に比べ、サンプルC、F、G、Hの添加区はセットバック値が小さい値であった。
以上の結果より、重合度が同程度のもので比較した場合、本発明の糖組成物はグルコース、トレハロース、澱粉分解物、既存のイソマルトオリゴ糖より澱粉老化抑制機能が高いことが明らかになった。
(2)パンへの添加効果
実際にパンを作製して、糖組成物の澱粉老化抑制機能を検証した。表10に示す配合の製パン原料を用いて、ホームベーカリーSD−BH105(Panasonic製)の食パン・早焼きコースにて食パンを作製した。試験区は、コントロール、サンプルI添加区、市販の澱粉分解物(MR750:DE57(昭和産業製))添加区とした。
作製した食パンは、25℃まで放冷し25℃で1日及び2日保存したものを厚さ10mmにスライスし、クラム部分を33mm四方にカットして物性測定を行った。測定にはSUN RHEO METER COMPAC−100II(SUN SCIENTIFIC製)を用い、直径40mmのフラットプランジャー、架台スピード60mm/minの条件で、厚さ5mmまで圧縮したときの応力を測定し、食パンの硬さとした。各試験区について10点測定しその平均を求めた。結果を図10に示す。
1日保存後において、コントロール、澱粉分解物(MR750)添加区に比べ、サンプルIを添加した食パンは柔らかかった。また、2日保存後においても、サンプルI添加区は柔らかさを保っていた。これらの結果から、前述した本発明の糖組成物の澱粉老化抑制機能は、食品中でも効果を発揮していることが考えられる。本発明の糖組成物を添加することで、柔らかさが持続する食パンを得ることができた。
(3)タンパク質の変性抑制機能
本発明の糖組成物の添加がタンパク質の変性に与える影響を検討した。卵から卵黄を分け、卵黄の重量に対して2/3量の7.5%糖液と混合し、冷解凍による粘度上昇を指標にタンパク質の変性を評価した。糖液は、サンプルA〜I、市販の澱粉分解物(MR750:DE57、マルデックPH400:DE35、M−SPD:DE20(いずれも昭和産業製))、イソマルトオリゴ糖(IMO900:DE44(昭和産業製))に水を加えて調製した。結果は冷凍前の粘度に糖液による差は認められなかったので、解凍後の粘度のみをDE別に図11に示す。
DE50以上では、澱粉分解物(MR750)の添加区に比べ、サンプルA、Iの添加区は解凍後の粘度が小さい値であった。
DE30〜50では、澱粉分解物(マルデックPH400)の添加区に比べ、イソマルトオリゴ糖(IMO900)、サンプルB、D、Eの添加区は粘度が小さい値であった。また、イソマルトオリゴ糖(IMO900)とサンプルB、D、Eを比較すると、サンプルB、D、Eを添加した方が小さい値を示した。
DE20〜30では、澱粉分解物(M−SPD)の添加区に比べ、サンプルC、F、G、Hの添加区は粘度が小さい値であった。
以上の結果より、重合度が同程度のもので比較した場合、本発明の糖組成物は、澱粉分解物、既存のイソマルトオリゴ糖よりタンパク質変性抑制機能が高いことが明らかになった。
(4)卵加工品への添加効果
上記のタンパク質変性抑制機能を、全卵を加熱調理した試験で検証した。全卵に全卵の重量に対し2/3量の15%糖液を混ぜ、10gをアルミカップに量りとり、30分間加熱した。放冷後、−25℃で1日保存し、解凍後の離水量を測定、離水の割合を評価した。試験区は、サンプルI添加区、砂糖、トレハロース、市販の澱粉分解物(MR750:DE57(昭和産業製))添加区とした。結果を図12に示す。
サンプルIを添加することにより、砂糖、トレハロース、澱粉分解物(MR750)を添加した試験区に比べ、離水の割合は低くなっていた。この結果から、前述した本発明の糖組成物のタンパク質変性抑制機能は卵加工品中でも効果を発揮していることが考えられる。本発明の糖組成物を添加することで、離水の少ない卵料理を得ることができる。
(5)油脂の酸化抑制機能
本発明の糖組成物の添加が油脂の酸化に与える影響を検討した。大豆油に1.5倍量の33%糖液、全量の1%量のカルボキシメチルセルロースを添加し、ヒスコトロン(日音医理科器械製作所製)を用いて20000rpmで30秒の混合を5回繰り返した。この混合物を加圧条件下で120℃、90分間加熱し、酸化臭を評価した。糖液は、サンプルA〜I、砂糖、トレハロース、イソマルトオリゴ糖(IMO900:DE44(昭和産業製))を用いた。また、比較として糖を添加しない無添加区も実施した。評価は10人の被験者により無添加に対して酸化臭が抑えられていると答えた人数とした。結果を表11に示す。
無添加に比べ、サンプルA〜Iを添加することで酸化臭を抑える結果となった。また、砂糖、トレハロースの添加よりも好ましい結果であった。IMO900と比べると、いくつかのサンプルで変わらない結果になったものがみられたが、大半は好ましい結果であった。本発明の糖組成物を添加することで、油脂の酸化が抑制される可能性がある。
実験11:クロマト分離による連続α−1,6結合糖質量を高めた糖組成物の調製並びに食品への利用
(1)クロマト分離による連続α−1,6結合糖質量を高めた糖組成物の調製
<クロマト分離による糖組成物の調製:サンプルJ>
固形分30%とうもろこし澱粉液化液(DE13)を温度55℃、pH6.0に調整し、実験3(1)で得られたNBRC4239株由来α−グルコシダーゼをマルトース分解活性で澱粉液化液の固形分1g当たり4U添加し、同時に枝切酵素としてプルラナーゼ(クライスターゼPLF、天野エンザイム製)を各澱粉分解物の固形分1g当たり0.25%、及び、イソアミラーゼ(GODO−FIA、合同酒精製)を固形分1g当たり0.07%を添加し48時間作用させ、pH4.0に調整後約100℃で10分加熱処理をすることで反応を停止させた。不溶物を濾過して除去した後、活性炭・イオン精製処理し固形分50%まで濃縮した。60℃に加熱した強酸性カチオン交換樹脂(FX1040、オルガノ製)を充填した連続式クロマト分離装置(トレソーネ、オルガノ製)に供し、グルコースを除去した。回収した溶液は活性炭・イオン精製処理後凍結乾燥した。得られた糖組成物はサンプルJとした。
<クロマト分離による糖組成物の調製:サンプルK〜M>
固形分30%とうもろこし澱粉液化液(DE12)を温度60℃、pH5.0に調整した後、β−アミラーゼ(β−アミラーゼ#1500S、ナガセケムテックス製)を澱粉分解物の固形分1g当たり0.3%、及び、プルラナーゼ(クライスターゼPLF、天野エンザイム社製)を各澱粉分解物の固形分1g当たり0.25%を添加し24時間反応させた。約100℃で10分加熱処理した後、温度55℃、pH6.0に調整し、実験3(1)で得られたNBRC4239株由来α−グルコシダーゼをマルトース分解活性で固形分1g当たり3U添加し48時間作用させ、pH4.0に調整後約100℃で10分加熱処理をすることで反応を停止させた。不溶物を濾過して除去した後、活性炭・イオン精製処理し固形分50%まで濃縮した。65℃に加熱したゲル濾過樹脂Bio−Gel P2(バイオラッド製)を充填したカラム(φ6cm×100cm)に供し、DP1、DP2、DP3成分を除去した。回収した溶液は活性炭・イオン精製処理して凍結乾燥し、サンプルKとした。
また、サンプルKを濃度10%になるように水に溶解し、10%グルコース溶液と50:50及び60:40で混ぜたものを凍結乾燥し、サンプルL、Mとした。
(2)調製した糖組成物の分析
調製した糖組成物サンプルJ〜Mについて、実験1(2)に記載の分析方法に従ってDE、分子量分布、連続α−1,6結合糖質量を分析した。その結果を表12に示す。
得られたサンプルは、DE26〜71、Mw597〜2225、Mn273〜844、Mw/Mn1.3〜2.6、連続α−1,6結合糖質量22〜44%の範囲であった。
(3)調製した糖組成物の食品への利用
実験10(2)に記載した方法と同様の方法で、サンプルIに替えてサンプルJ、K、L、Mを用いて食パンを作製した。サンプルJ、K、L、Mの澱粉老化抑制機能により柔らかさが持続する食パンを得ることができた。
実験12:糖組成物の還元物の調製並びに食品への利用
(1)糖組成物の還元物の調製
サンプルIの固形分50%水溶液を調製し、固形分当たり4%のラネーニッケル触媒の存在下で、水素圧50kg/cm、温度110℃、反応時間90分にて還元した。得られた溶液は活性炭・イオン精製処理して凍結乾燥し、サンプルNとした。
(2)調製した還元物の食品への利用
実験10(2)に記載した方法と同様の方法で、サンプルIに替えてサンプルNを用いて食パンを作製した。サンプルNの添加により柔らかさが持続する食パンを得ることができた。還元物でも澱粉老化抑制機能を持つことが明らかになった。

Claims (13)

  1. α−1,6結合によって連続して結合したグルコースを含んで構成される糖質を含み、数平均分子量(Mn)が250〜1500、重量平均分子量(Mw)が1000以上、DEが40以下である糖組成物であって、
    (a) 糖組成物に含まれる四糖類以上の成分の重量割合と糖組成物をデキストラナーゼ処理した後の処理物に含まれる四糖類以上の成分の重量割合との差分が10〜30%であり、
    (b) 糖組成物に含まれるグルコース間の結合様式のうち、α−1,6結合の割合が35〜80%である、上記糖組成物。
  2. 数平均分子量(Mn)が1200以下である、請求項1に記載の糖組成物。
  3. 糖組成物のDEをX、前記差分をYとしたとき、Y≦0.73X+4であり、Xが20〜40である、請求項1または2に記載の糖組成物。
  4. 請求項1〜3のいずれかに記載の糖組成物を製造する方法であって、
    DEが5〜60である澱粉分解物を基質として、デキストラン分解活性/マルトース分解活性の比率が0.06以上であり、GHファミリー31に属するアスペルギルスオリゼー(Aspergillus oryzae)由来またはアスペルギルスソヤ(Aspergillus sojae)由来のα−グルコシダーゼを50℃以上で作用させることを含む、上記方法。
  5. 前記酵素のデキストラン分解活性/マルトース分解活性の比率が0.1以上である、請求項4に記載の方法。
  6. 前記酵素が、DALWIDMNEPANFYNRというアミノ酸配列を有するα−グルコシダーゼである、請求項4または5に記載の方法。
  7. 請求項1〜3のいずれかに記載の糖組成物の還元物。
  8. 請求項1〜3のいずれかに記載の糖組成物または請求項の還元物を含む、澱粉老化を抑制するための飲食品用改良剤。
  9. 請求項1〜3のいずれかに記載の糖組成物または請求項の還元物を含む、タンパク質変性を抑制するための飲食品用改良剤。
  10. 請求項1〜3のいずれかに記載の糖組成物または請求項の還元物を含む、油脂酸化を抑制するための飲食品用改良剤。
  11. 請求項1〜3のいずれかに記載の糖組成物または請求項に記載の還元物を飲食品に添加することを含む、飲食品の澱粉老化を抑制する方法。
  12. 請求項1〜3のいずれかに記載の糖組成物または請求項に記載の還元物を飲食品に添加することを含む、飲食品のタンパク質変性を抑制する方法。
  13. 請求項1〜3のいずれかに記載の糖組成物または請求項に記載の還元物を飲食品に添加することを含む、飲食品の油脂酸化を抑制する方法。
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