JP6830609B1 - 改質した膨張性黒鉛を含む樹脂組成物、該樹脂組成物を用いてなる建具用部材及び改質させた膨張性黒鉛の製造方法 - Google Patents

改質した膨張性黒鉛を含む樹脂組成物、該樹脂組成物を用いてなる建具用部材及び改質させた膨張性黒鉛の製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】火災などで加熱された場合の膨張体の膨張倍率を効果的に高め、さらに膨張体の粘結力を高めることができる、膨張性黒鉛の簡便な改質方法を見出し、従来よりも効果的な「耐火性能」を発揮する製品の提供を可能にできる樹脂組成物の提供。【解決手段】改質させた膨張性黒鉛と、樹脂成分とを含む膨張性樹脂組成物であり、前記改質させた膨張性黒鉛が、長径が50〜1000μmで、厚みが6.5〜100μmである膨張性黒鉛粒子からなり、且つ、該膨張性黒鉛粒子同士が接着剤で接合されて塊状化した状態の塊状物を含み、前記接着剤の量が、質量基準で、前記膨張性黒鉛粒子100部に対して、固形分で0.5〜5部の範囲内である樹脂組成物。【選択図】図1

Description

本発明は、改質した膨張性黒鉛と樹脂成分とを含む樹脂組成物、該樹脂組成物を用いて形成してなる建具用部材及び改質させた膨張性黒鉛の製造方法に関し、特に、簡便な方法で改質することで、膨張性黒鉛の高温加熱時における膨張体積の増加(膨張倍率の向上)及び残渣厚の増加を実現する技術に関する。
膨張性黒鉛は、高温で膨張させた後にプレスして柔軟なシートとすることができ、例えば、ガスケットや断熱材などとして用いられている。さらには、膨張性黒鉛を樹脂組成物に含有させて膨張性樹脂組成物とし、この膨張性樹脂組成物からシートやパテ等を成形し、これらを建材や建具の防火材として使用することも広く行われている。例えば、膨張性黒鉛を含む膨張性樹脂組成物からシートを製造し、得られたシート等を、窓サッシや戸口ドアなどの建具の枠の内側に挿入する構成とし、火災時に、大きく体積を増加した膨張体を生起させて火の通過を防ぐ用途に用いられる。また、膨張性樹脂組成物をパテ状にして、建物の内側と外側の間の隙間に挿入し、火災時に熱膨張させて、火の通過を遮断する用途に用いられる。
即ち、膨張性樹脂組成物が火災などで高温に晒されると、組成物中の可燃物が燃焼消失しながら、組成物中に含まれている膨張性黒鉛が急速に体積を膨張させて膨張体を形成する。上記した用途においては、火の通過を防ぐ特性として、この膨張体の体積が、より大きいことが要請される。ここで、膨張性樹脂組成物中の膨張性黒鉛の含有量を増加させれば、膨張体の体積を大きくできるようになるのは自明である。しかしながら、樹脂組成物中の膨張性黒鉛の含有量を増加させると、均一な膨張性樹脂組成物を得るのが困難になるという問題があり、さらに、膨張性黒鉛は、非常に高価なのでコスト的にも不利になるという課題がある。
これに対し、平均アスペクト比が20以上である熱膨張性黒鉛を使用することで、高膨張性と高い残渣硬さを兼ね備えた熱膨張性耐火樹脂組成物が提供されるとした提案がある(特許文献1)。具体的には、膨張性黒鉛を構成する黒鉛粒子の長径と粒子の厚みとの比をアスペクト比値と定めて、このアスペクト比値の平均値の20を閾値として、20以上の熱膨張性黒鉛を使用すれば効果が得られるとしている。
特許第6286004号公報
しかしながら、上記従来技術では、黒鉛粒子の長径/厚みで算出した平均のアスペクト比で、膨張性黒鉛の特性を規定しているが、後述するように、ミクロン単位の、しかも不定形の膨張性黒鉛粒子の長径及び厚み、中でも厚みを客観性をもって測定することは難しい。また、本発明者らの検討によれば、膨張性黒鉛を構成する膨張性黒鉛粒子の膨張特性は、単に黒鉛粒子の形状のみに依存するものではない。後述するように、膨張性黒鉛は、天然鱗片状グラファイトを黒鉛原料とし、該黒鉛を、物理的手段で所定の大きさの粒子に粉砕し、水洗と精製をしてから、黒鉛の層間に膨張の因子となる物質を化学的な手段で挿入して製造されている。本発明者らは、市販されている膨張性黒鉛の膨張特性は、その製造工程での、物理的な処理をしたことによる効果と、化学的な処理をしたことによる効果が複雑に絡み合って発現するものであるため、上記従来技術で行われているような、市販されている膨張性黒鉛を構成する黒鉛粒子の形状特性だけで膨張性黒鉛の膨張特性の良否を決定することは、技術的に意味のある手段ではないとの認識をもった。さらに、従来技術のように、良好な膨張特性を得る目的で、市販されている膨張性黒鉛を選別して使用するとした消極的な手段ではなく、膨張性黒鉛粒子によって構成される膨張性黒鉛、さらに、膨張性黒鉛を含む膨張性樹脂組成物において、より高い膨張特性、膨張倍率の増加を実現するためには、膨張性黒鉛を改質して使用する必要があるとの認識をもった。
したがって、本発明の目的は、特に、火災などで加熱された場合の膨張体の膨張倍率を効果的に高めたものにできる、さらには膨張体の粘結力を高めた、膨張体が効果的な断熱層を形成し、これによって火炎及び煙の遮断機能を発揮できる、膨張性黒鉛の簡便な改質方法を見出すことにある。本発明の最終的な目的は、火の通過を遮断する、例えば、建築物等の用途において、より効果的で有用な建具用部材等の製品の提供を可能にできる、改質した膨張性黒鉛を含む樹脂組成物を提供することにある。
上記の目的は、下記の本発明によって達成される。即ち、本発明は、下記の発明を提供する。
[1]改質させた膨張性黒鉛と、樹脂成分とを含む膨張性樹脂組成物であって、
前記改質させた膨張性黒鉛が、長径が50〜1000μmで、厚みが6.5〜100μmである膨張性黒鉛粒子からなり、且つ、該膨張性黒鉛粒子同士が接着剤で接合されて塊状化した状態の塊状物を含み、前記接着剤の量が、質量基準で、前記膨張性黒鉛粒子100部に対して、固形分で0.5〜5部の範囲内であることを特徴とする樹脂組成物。
上記樹脂組成物の好ましい形態としては、[2]前記接着剤が、カルボキシメチルセルロース又はその塩の水溶液、ポリエステル樹脂、ポリアクリル樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリスチレン樹脂及び尿素樹脂からなる群から選ばれる樹脂の水系エマルジョン又は水系ディスパージョンの少なくともいずれかであること、[3]前記膨張性黒鉛粒子同士が接着剤で接合されて塊状化した状態の塊状物の形状が、膨張性黒鉛粒子の平坦面同士が接着して重なった層状構造を有すること、[4]質量基準で、前記樹脂成分100部を基準にして、前記改質させた膨張性黒鉛を5〜300質量部で含むこと、[5]前記樹脂成分が、熱可塑性樹脂及び熱硬化樹脂から選ばれるいずれかの樹脂であること、[6]前記樹脂成分が、塩化ビニル樹脂であること、が挙げられる。
本発明は、別の実施形態として、[7]上記[1]〜[6]のいずれかに記載の樹脂組成物を用いて形成してなる建具用部材を提供する。
本発明は、別の実施形態として、[8]上記[1]〜[6]のいずれかに記載の樹脂組成物に用いる改質させた膨張性黒鉛の製造方法であって、長径が50〜1000μmで厚みが6.5〜100μmである膨張性黒鉛粒子からなる膨張性黒鉛に、質量基準で、前記膨張性黒鉛100部に対して、固形分で0.5〜5部の範囲内で接着剤を添加して混合し、前記膨張性黒鉛粒子同士を接合させて塊状化することを特徴とする改質させた膨張性黒鉛の製造方法を提供する。
上記膨張性黒鉛の製造方法の好ましい形態としては、[9]前記接着剤が、カルボキシメチルセルロース又はその塩の水溶液、ポリエステル樹脂、ポリアクリル樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリスチレン樹脂及び尿素樹脂からなる群から選ばれる樹脂の水系エマルジョン又は水系ディスパージョンの少なくともいずれかであることが挙げられる。
本発明によれば、膨張性黒鉛粒子によって構成される膨張性黒鉛、さらには膨張性黒鉛を含む膨張性樹脂組成物において、より高い膨張特性を実現することができ、火災などで加熱された場合の膨張体の膨張倍率を高めたものにできる、さらには膨張体の粘結力を高め、膨張体によって効果的な断熱層を形成することができる膨張性黒鉛の簡便な改質方法が見出され、その結果、火の通過を遮断する用途、例えば、建具用部材等の製品の提供により有用で効果的な、改質した膨張性黒鉛を含む樹脂組成物の提供が実現される。
実施例1の塊状物と膨張体の顕微鏡写真の図である。 実施例1の別の塊状物の顕微鏡写真の図である。 膨張性黒鉛粒子の側面側の顕微鏡写真の図である。 膨張性黒鉛粒子の平面側の顕微鏡写真の図である。 膨張性黒鉛粒子の膨張後の顕微鏡写真の図である。 GREP−EGの黒鉛粒子100個の長径とアスペクト比の関係を示す図である。 ADT351の黒鉛粒子100個の長径とアスペクト比の関係を示す図である。 GREP−EGの黒鉛粒子36個についての、長径と各因子との関係を示す図である。 ADT351の黒鉛粒子36個についての、長径と各因子との関係を示す図である。
以下、好ましい実施形態を挙げて本発明を詳細に説明する。まず、本発明において改質する対象とする膨張性黒鉛が高温になると膨張する機構について説明する。膨張性黒鉛は、黒鉛の層間に、熱でガス化する物質を挿入することで得られる。通常のガス化する物質の挿入方法は、黒鉛を強酸と酸化剤で処理する。この結果、該黒鉛の炭素の六員環の一部をカチオン化し、そのカチオンと処理に用いた酸のアニオンとのイオン力で引き合わせられた状態になる。高温になると、挿入した物質がガス化し、その力で黒鉛の層間が広げられ、その結果として体積の著しい増加が起こり、膨張体を形成する。原料の黒鉛には、天然鱗状及び鱗片状グラファイト、熱分解グラファイト、キャッシュグラファイト等が使用される。膨張性黒鉛の製造方法の具体例としては、下記の方法がある。例えば、天然鱗片状グラファイトを原料に使用し、これを、粉砕、洗浄、乾燥後に、硫酸と強力な酸化剤とを反応させ、層間に硫酸のアニオンを挿入して膨張性黒鉛を得る。
本発明者らは、本発明の目的を達成するために、膨張性黒鉛を構成する黒鉛粒子について詳細な検討を行った。図3に、膨張性黒鉛粒子を電子顕微鏡で観測した場合の、横(側面側)から見た写真の図を示した。また、図4は、粒子を上(平面側)から見た写真の図である。膨張性黒鉛粒子は、一般的に六角網目状の炭素の鱗片の層が積み重なっており、図3及び図4に示した通り、この鱗片の層の上下面は比較的平面状になっている。そして、図4に示したように、本技術分野では、この平面状の一番長い距離を長径と呼んでいる。そして、後述するように、この分野では、従来より、膨張性黒鉛粒子(以下、単に黒鉛粒子とも呼ぶ)の長径のみが問題とされており、長径の大きい膨張性黒鉛ほど膨張する度合が大きくなるとされている。
これに対し、先に挙げた従来技術では、上記した形状をもつ黒鉛粒子の長径/厚みで、算出したアスペクト比の平均値、即ち、膨張性黒鉛粒子の形態的な特徴で、膨張性黒鉛の特性を規定している。そして、先に挙げた従来技術では、黒鉛粒子の厚みをほぼ平面状である上下の面の距離であり、特定できる値として扱っている。しかし、図3及び図4に示されているように、黒鉛粒子は比較的に平面状であるものの、上下面の距離は一定ではなく、また、その距離は、長径に比べて極端に小さいため、厚みの測定位置によりアスペクト比は大きく変動することになる。黒鉛粒子の端面(側面)で厚みを測定するとしても、端面の形状は黒鉛粒子毎に異なり、また、図3にあるように、端面は極めて不定な形状であり、上下面の距離の測定で、客観性がある厚みを得ることは難しい。しかし、先に挙げた従来技術では、厚みの測定について、上下の面がほぼ平坦であることを理由に、その距離はほぼ均一であるとしており、厚みの測定方法の詳細については記載がされていない。即ち、従来技術に記載の発明では、膨張性黒鉛粒子の長径/厚みで算出した平均のアスペクト比値の違いで、効果が得られるとされる膨張性黒鉛を規定しており、図3に示されている通りの、個々に複雑に異なる膨張性黒鉛粒子の実際の形状については考慮されていない。
これに対し、本発明者らの検討によれば、図3に示した通り、膨張性黒鉛粒子の上下面の距離は一定でないため、従来技術のような規定をする場合は、厚みの測定は慎重に行う必要がある。本発明者らは、膨張性黒鉛粒子の実際の形状から、下記のようにして測定すれば、客観性の高い厚みの測定が可能になると考えている。まず、黒鉛粒子の電子顕微鏡写真の画像を用い、該黒鉛粒子の端面の断面積を求める。そして、得られた断面積を、電子顕微鏡写真の画像から求めた平行距離(図3参照)で割って算出し、この算出値を膨張性黒鉛粒子の厚みとする。本発明で規定する膨張性黒鉛粒子の厚みは、上記のようにして求めた値である。
さらに、膨張性黒鉛を構成する黒鉛粒子は、粒度分布を有しており、膨張性黒鉛を形態的に規定する場合は、この点を考慮する必要もある。膨張性黒鉛はミクロン単位の膨張性黒鉛粒子の集合体であり、粒度分布を有している。本発明が対象としている膨張性黒鉛を含有する樹脂組成物は、前記したように、均一な組成物にするために、含有させる膨張性黒鉛を混合する必要がある。また、膨張性黒鉛は、長径が大きいと膨張体積も大きくなることが知られているので、この用途では、長径が大きい膨張性黒鉛が主に使用されている。一方、長径が非常に大きくなると製品の製造中に極めて砕け易くなり、せっかくの膨張時の体積が減少してしまうことが起こる。この両要素のバランスから、膨張性樹脂組成物に使用される膨張性黒鉛は、粒子の長径の範囲によって選定される。このため、市販品の膨張性黒鉛は、長径で表示する代わりに、粒度で表現している。具体的には、市販品の膨張性黒鉛では、フルイにより分級し、そのフルイの目から、その膨張性黒鉛製品は、どのメッシュでパス何%以上の粒度のものであるとした内容で特性を表示することが行われている。
一般的には、膨張性樹脂組成物で使用される膨張性黒鉛としては、20〜200メッシュの粒度品がよいとされている。また、メッシュ分級品と長径には相関性があるので、前述の長径を基に表現する場合は、長径が50〜1000μmの範囲のものが好ましいとされている。200メッシュを超えて、より粒子が小さくなると、膨張性樹脂組成物中の含有量が一定であっても、個々の粒子の膨張体積が小さくなるので、目的を達成できない。20メッシュ以下であると長径が大きいので、均一な膨張性樹脂組成物を得るには混合が不充分となる。従って、膨張性樹脂組成物に使用される市販品の膨張性黒鉛は、粉砕度合とフルイ分級により様々な粒度品となっているが、殆どは上記した範囲に入るものである。
本発明で使用する膨張性黒鉛としては、従来より使用されている上記した20〜200メッシュの膨張性黒鉛であればよく、いずれも使用できる。本発明では、下記の理由から、従来より販売され、使用されている膨張性黒鉛を構成する膨張性黒鉛粒子が個々に有する長径の範囲と厚みの範囲で、膨張性黒鉛を規定した。なお、膨張性黒鉛を構成する個々の膨張性黒鉛粒子が本発明で規定する範囲内にあることは、後述する表3及び表4の測定結果で確認した。本発明者らの詳細な検討によれば、膨張性黒鉛粒子は、不定形であり、円形状から細長い形状までの多様な形態のものが混在している。細長い形状の粒子は、フルイの目に垂直な方向に向いた場合は、小さい目でも通過してしまうことがある。従って、膨張性黒鉛粒子の形状と、加熱されて膨張した際の体積等の関係を論じるには、上記のメッシュだけでは不十分であり、むしろ電子顕微鏡等で測定できる長径と厚みを基本に検討する方が判断しやすい。この点から、本発明では、膨張性黒鉛粒子の形状の論議の粒度は、メッシュではなく長径と厚みで規定した。具体的には、長径が50〜1000μm、厚みが6.5〜100μmの範囲の膨張性黒鉛粒子を対象とした。なお、分級の度合いと長径とは相関関係があるので、論議の項目によってはメッシュ分級について言及する場合もある。例えば、実際に、黒鉛粒子の形状と、膨張性黒鉛や、膨張性樹脂組成物の膨張特性の関係を確認する場合に、長径や厚みが一定範囲毎になるようにグループ採取して試験の試料にすることは困難であり、メッシュで分級された分級品の膨張特性値と、その分級品の測定された平均的な長径値と厚み値等から論議せざる得ないことがある。
本発明者らは、前記した膨張性黒鉛粒子について個々に測定した、長径/厚みで算出したアスペクト比値の平均値の20を閾値として、20以上の熱膨張性黒鉛を使用すれば、高膨張性と高い残渣硬さを兼ね備えた樹脂組成物が得られるとした従来技術について検討を行った。そして、先述したように、この技術では、測定位置により測定値が異なる厚みの測定方法が明確でなく、加えて、個々に形状の異なる黒鉛粒子は粒度分布をもつため、長径/厚みを求めるために測定する黒鉛粒子のサンプリングの問題もあり、客観性をもつ測定値を得ることが難しいという測定上の問題がある。さらに、この問題に加えて、黒鉛粒子の長径/厚みで規定した閾値の有効性そのものについて、下記の疑問をもった。
例えば、黒鉛粒子の長径の値が極めて小さくても、それ以上に粒子の厚みの値が小さければアスペクト比値は、大きくなり、20以上という閾値を満足した、高膨張性と高い残渣硬さが得られるとしたものに該当する。一方、黒鉛粒子の長径の値が大きくても、それ以上に厚みの値が大きければ、アスペクト比値は小さくなり、20以上という閾値を満足したものにならず、上記効果が得られるものには該当しない。これらのことは、膨張性黒鉛粒子の長径が大きい程、膨張特性が大きいという一般的に認知されている技術常識に相反することになる。このような疑問を生じない、唯一、両効果が並立する条件は、市販されている全ての膨張性黒鉛を構成する膨張性黒鉛粒子の厚みが、同一の場合か、長径の増加と共に厚みが減少する場合のみである。本発明者らの検討によれば、その場合であっても、膨張性黒鉛を製造する際における化学的な処理によって生じる膨張特性値に与える影響を無視できないという問題は残る。また、仮に、全ての膨張性黒鉛粒子の厚みが同じであるとした場合は、単に長径を定数で割ることになるので、技術的に、熱膨張性黒鉛粒子の長径が大きい程、膨張特性が大きい、という一般的に認知されている技術常識と同じことになる。
本発明者らは、熱膨張性黒鉛粒子の長径が大きい程、膨張特性が大きい、という一般的に認知されている技術認識について確認を行った。具体的には、5種類の市販品の膨張性黒鉛をフルイで分級し、各分級品をそれぞれ用い、それ以外は同様の条件で膨張性樹脂組成物を作製し、これを用いて試験用シートを作製して、体積膨張率(膨張倍率)をそれぞれ調べて結果を表1に示した。表1に示したように、各分級品について、30メッシュのフルイ上に残った長径が一番大きい粒子群を「30メッシュ以下」と呼び、30メッシュのフルイを通過し、40メッシュのフルイ上に残った次に長径の大きな粒子群を「40メッシュ」と呼び、同様にして、順次、「60メッシュ」の粒子群、「80メッシュ」の粒子群と呼び、最後の一番小さい粒子群を100メッシュのフルイを通過した粒子群を「100メッシュ以上」と呼び、5種類の市販品について、最大5つの分級品を用いて確認試験を行った。この試験を行う中で、表2に示したように、市販品によって粒度分布が異なることがわかった。
具体的な試験方法は、下記の通りである。
<膨張性黒鉛含有の樹脂組成物の配合>
塩化ビニル樹脂を樹脂成分として、下記の表の配合に基づいて試験用の膨張性樹脂組成物をそれぞれ作製した。使用した各材料は、後述する実施例で使用したものと同様である。
<試料シートの作製方法>
上記で調製した各樹脂組成物をそれぞれ離型紙上にコート後、160℃〜180℃で20分間加熱して、厚みが1.1〜1.2mmの試料シートを得た。得られたシートから20mm×45mmで厚みが1.1〜1.2mmの範囲の試料片を切り出し、厚み(H)を測定した。上記厚みの範囲内で、且つ、重さが1.48gになるようにすることで、試験片の寸法の微調整を行った。得られた試験片を、底部が25×45mmで、高さが50mm、上方が開放された金属製の容器の底部に置き、電気炉で、600℃、15分間加熱して膨張体を得た。そして、膨張体の高さ(H)を測定した。これ等の測定値から、以下の計算式で膨張倍率を求め、得られた結果を表1にまとめて示した。
膨張倍率=H/H
上記の試験の結果、下記に示した通り、表1に示したいずれの膨張性黒鉛についても、黒鉛粒子の長径が大きい(すなわち、メッシュの値が小さい)程、高い膨張倍率を示すことを確認した。表1に示した通り、市販がされている膨張性黒鉛の銘柄によらず、熱膨張性黒鉛粒子の長径が大きい程、膨張特性が大きいことが確認できた。参考のため、表1中の40メッシュ、60メッシュ、80メッシュの欄の括弧内に、それぞれの分級品について測定した平均粒径(μm)の値を示した。なお、表1中の銘柄の「GREP−EG」は、先述した従来技術の比較例で使用している膨張性黒鉛であり、「ADT351」は、先述した従来技術の実施例で使用している膨張性黒鉛である。
表2に、上記確認試験に用いた膨張性黒鉛の分級による重量構成比を示した。各メッシュは、前記したと同様にフルイを用いて分級した分級品である。例えば、70メッシュとあるのは、60メッシュのフルイを通過し、70メッシュのフルイ上に残った粒子群からなる分級品を意味する。
次に、本発明者らは、前記した膨張性黒鉛粒子について個々に測定した、長径/厚みで算出したアスペクト比値の平均値の20を閾値として、20以上の熱膨張性黒鉛を使用すれば、膨張体高膨張性と高い残渣硬さが得られるとした従来技術において、前記した実施例と比較例でそれぞれ使用されている膨張性黒鉛について、詳細に検討した。具体的には、上記従来技術で規定するアスペクト比について、100個の黒鉛粒子をランダムにサンプリングして測定した。長径と厚みの測定は、先に述べた本発明で使用した測定方法で測定した。詳細については後述する。得られた結果の各測定値を、比較例で用いている「GREP−EG」については表3に示し、実施例で用いている「ADT351」については表4に示した。表3及び表4中に、20個毎に累積した平均値を示した。
表3及び表4に示したように、測定したアスペクト比は黒鉛粒子毎に変動する。また、本発明者らが測定した黒鉛粒子の表面積と厚みから推算した粒子の体積と、黒鉛の比重2.2から概算した粒子の数は、膨張性黒鉛1g中に、約5×10個である。膨張性黒鉛の市場で取り扱われる製品は、一般的に5〜20kg単位の荷姿であるので、これを測定対象の母集団とすれば、母集団中の粒子の数は想像を絶する膨大な数値になる。これに対し、従来技術では、10個以上の数の黒鉛粒子について長径と厚みを測定してアスペクト比をそれぞれ算出して、上記の膨大な数の母集団の平均のアスペクト比値を決定し、その数値が20以上の膨張性黒鉛を使用して樹脂組成物を調製すれば、膨張体において、高膨張性と高い残渣硬さが得られるとしている。
表3及び表4に示されているように、黒鉛粒子毎にアスペクト比は大きく変動するのに対し、例えば、10個の標本数で、上記した膨大な数の黒鉛粒子からなる母集団の平均のアスペクト比値を決定して、この値を、その技術的な特徴と関連づけることは、技術として余りにも許容しがたい議論である。膨大な数の母集団の平均のアスペクト比値を求める場合、推計統計学を使用する必要がある。表3及び表4に示した測定値は、従来技術で許容されている最小数の10の10倍まで拡大した、標本数を100とした場合の値である。なお、先に述べたように、個々の黒鉛粒子におけるアスペクト比を求めるために必要な厚みの測定値は、測定箇所によって大きく異なる値になるため、後述する方法で測定し、測定値の正確性を高めた。
試みに、この標本数100の場合のアスペクト比値の信頼区間の値を求めた。その結果、従来技術の比較例で用いているGREP−EGの99.9%信頼区間は、17.8<19.7<21.6であり、従来技術の比較例で用いているADT351の場合は、19.3<21.2<23.1となる。このことは、これら2種類の膨張性黒鉛は、いずれも、99.9%信頼性をもって、従来技術で規定している平均アスペクト比値が20以上の膨張性黒鉛であるとできる場合も、平均アスペクト比値が20を満たさないとできる場合もあることを意味している。換言すれば、従来技術における結論は、膨張性黒鉛の形態的特徴を正しく把握した上で導かれたものであるとはいえない。
表3及び表4に記載した平均アスペクト比は、下記のようにして、黒鉛粒子の長径と厚みを測定し、その測定値から算出した。まず、測定対象の膨張性黒鉛を平滑な面に散布し、その中から100個の黒鉛粒子(検体)を選択して、長径と厚みの測定を行った。測定に際して、検体を選択する場合、粒子同士が重なっていたり、極端に斜めになっている粒子は測定値に誤差が出るので対象外とした。厚みの測定は、電子顕微鏡用の端面に対する傾斜角度、85〜90度の範囲にて行った。上記測定で、黒鉛粒子の長径は、観察者によらず、ほぼ特定の値を計測できることを確認した。検体の厚みの測定は、端面が非常に不規則で不定形なので(図3参照)、測定する位置で異なる値となる。このため、本発明では、厚さを求める方法として、電子顕微鏡を用いて粒子の端面の面積を測定し、この面積値を平行な距離で割ることにより、検体の黒鉛粒子の平均厚さを求めた(図3参照)。この測定方法は、端面を平面に投射し、その対応する距離も平面投射とするので、より正確な厚みを算出する方法となる。
本発明者らは、先の表1に示した結果から、膨張性黒鉛を構成する膨張性黒鉛粒子の長径の違いによる膨張性黒鉛の膨張倍率の向上効果に着目し、さらなる検討を行った。まず、加熱によって生じる膨張性黒鉛粒子の形状の変化について調べた。図5の電子顕微鏡写真の図は、図4の粒子を加熱して膨張させた膨張体のものである。図5の電子顕微鏡写真に示したように、膨張性黒鉛粒子は、加熱された膨張後は、長径は縮み、黒鉛中の各層が、挿入されている物質のガスで広げられ、あたかも粒子の表面を押し上げるかのようにして厚みの部分が非常に伸びて膨大な体積を生み出す。図5の右側は、黒鉛粒子の膨張体を切断した状態の顕微鏡写真の図であり、この点がよく分かる。
本発明者らは、上記した膨張前後の粒子の形態の変化から、黒鉛粒子の長径だけでなく、表面の面積(μm)、厚み(μm)、体積(cm)、外周(μm)という黒鉛粒子の膨張前の形態値が、膨張特性に影響するのではないかと考えた。図5に示した電子顕微鏡写真は一例であり、異なる黒鉛粒子について同様の測定及び観察を行ったところ、銘柄の異なる(即ち、黒鉛原料及び製造方法が異なる)粒子によって、加熱前後の黒鉛粒子の体積比は、例えば、約40〜45倍のものや、より大きい、約55〜80倍になるものがあった。
こうした事実から、本発明者らは、黒鉛粒子の長径と、その他の形態値の関係を検討することで、長径が因子となっている事由が解明されると考えて、さらなる検討を行った。そして、先の表3及び表4の検討を行った「GREP−EG」と「ADT351」の2種類の黒鉛粒子について、検体数を36個として、長径と、上記に挙げた各種形態値との相関の検討をした。その結果、上記に挙げた各形態値は、それぞれ長径と強い相関性があることが分かった。具体的には、厚みと長径(図8及び9中の(a))、粒子の表面積と長径の二乗(図8及び9中の(b))、粒子の外周と長径の二乗(図8及び9中の(d))、粒子の体積と長径の三乗(図8及び9中の(c))の、それぞれに相関があった。結果を図8、図9に示した。図8及び図9に示した通り、その相関分布図及び相関値は、強い相関性を示している。即ち、技術常識であるとされている熱膨張性黒鉛の膨張特性の長径依存性とは、上記に挙げた各形態値と、長径とが強い相関を有するが故に生まれた見掛けの指標値であることが分かった。また、この結果は、熱膨張性黒鉛の銘柄には依存しないことも確認した。なお、比較のために、図8及び図9中の(e)に、アスペクト比と長径との相関図を示した。図8及び図9にある通り、他の形態値と長径との相関図と比較することで、より明らかになったが、アスペクト比と長径との間に相関は認められなかった。
<膨張性黒鉛の各銘柄の分級品のガス化物質の含有量の比較試験>
次に、膨張性黒鉛粒子の製造は、黒鉛の層間に、熱でガス化する物質を挿入することで行われており、この操作が、加熱した膨張体に及ぼす影響があると考えて、膨張性黒鉛の分級品毎に、5種の熱膨張性黒鉛製品を用いて調べた。表5に、試験前の膨張性黒鉛の重量をベース(100)として、600℃で、15分間加熱して得られた残量値をガス化物質の含有の逆数値として示した。例えば、GREP−EGの分級前の試料では、試験前の重量を100として、試験後が83なので17%ガス化物質を含有していたとすることができる。表5に示した通り、各同一銘柄中の各分級品の差は殆どなく、表5中の括弧内に示した通り、分級前と同程度の減量となっていた。この結果、黒鉛の層間に挿入されている物質の量比は、各銘柄のいずれについても、分級品の間の差は無い、と判断できる。
しかし、表5に示されている通り、新たな知見として膨張性黒鉛の銘柄によって、ガス化物質の含有量は異なることが分かった。例えば、GREP−EGは、比較的残量値が大きく、ADT351は、少ないことが分かった。他の2銘柄では、その中間の値を示した。上記の結果から、GREP−EGは、ADT351に比べてガス化物質の含有量が少ないことが確認された。このことは、先に挙げた従来技術で、使用する膨張性黒鉛のアスペクト比の違いによって膨張倍率に差が生じたとしているとの結論がされている、比較例のGREP−EGと、実施例のADT351における膨張倍率の違いは、ガス化物質の含有量の違いによるものであった可能性がある。上記した結果は、少なくとも、膨張性黒鉛による膨張倍率を議論する場合には、使用する膨張性黒鉛の層間に化学的な手段で挿入された膨張の因子となる物質の量について考慮する必要があることを示している。逆にいえば、この化学的な要因を考慮せずに、例えば、先に挙げた従来技術における平均アスペクト比のようなパラメータで、膨張性黒鉛の特性を規定し、得られる膨張特性と関連付けても技術的な意味はないと言える。
<膨張性黒鉛の各銘柄の分級品を含む樹脂組成物の膨張特性及び膨張体の特性>
本発明者らは、先に表1で説明した試験で用いた、5種の銘柄の膨張性黒鉛を用いて得た試料シートを使用して、後述する方法で求めた、膨張体に荷重をかけた後の残渣厚(粘結力)と、膨張体の重さから残渣重量率(%)を求めた。得られた結果を表6に示した。先に表1に示した膨張倍率についても表6中に併せて示した。
表6に示した通り、各銘柄内のメッシュが小さい程(粒径が大きい程)、膨張倍率及び残渣厚(粘結力)は大きな値を示した。表1の括弧内に示したように、黒鉛粒子のメッシュと長径(平均粒径)の値は相関しているので、表6の結果から、長径が大きい程、膨張体は良い物性を示すものになることが分かる。また、いずれの銘柄の膨張性黒鉛であっても、膨張特性及び膨張体の特性は、同様の傾向を示すことが確認できた。具体的には、いずれの銘柄の膨張性黒鉛を用いた場合も、膨張倍率及び残渣厚は、メッシュが小さい程(粒径が大きい程)大きな値を示したが、膨張体にした際の残渣重量率は、同様の銘柄の各分級品間でほぼ同じであり、分級品の違いによる大きな差はなかった。
上記した膨張性黒鉛及びこれを構成する膨張性黒鉛粒子に起因する膨張特性についての詳細な検討を通じ、本発明者らは、特に、銘柄間に生じている、加熱後の膨張体の膨張特性の相違を低減させ、加えて、より高い膨張倍率を得るためには、膨張性黒鉛の改質をすることが必要であるとの結論に至った。そして、膨張性黒鉛を簡便な方法で改質することで、膨張性黒鉛を含有させた膨張性樹脂組成物の膨張体の膨張倍率を増加させると同時に、残渣重量率を殆ど変えずに膨張体の結着力に直結する残渣厚を大きくすることが重要であるとの認識の下、開発を進めた。
まず、上記した検討の結果、図5の電子顕微鏡写真の画像に示されているように、全ての膨張性黒鉛粒子で、長径は膨張によって収縮し、厚みは非常に拡大した。膨大な母集団に対して黒鉛粒子の試験体の標本数が少ないので、確定的な体積の変化の比率は決められないが、例えば、おおよそ、GREP−EGの黒鉛粒子で40〜45倍、ADT351の黒鉛粒子で55〜80倍とできる。しかし、その比率は長径に特に依存していないことが分かった。このことは、長径の小さい黒鉛粒子の膨張体積は、小さくても同一重量であれば粒子数は多くなるので、その積、即ち、全体積は、それ程変わらないことを意味する。
以上のことから、本発明者らは、長径の違いが膨張倍率や粘結力に差を生み出す原因は、長径の大きい粒子は、小さい粒子に比べて数は少ないものの、太く長い膨張体を生成させ、その集合体が疎になりやすく、集合体の体積の大きい(カサ比重の小さい)膨張体になるが、一方、長径の小さい粒子の膨張体は細く短いので、あたかもタッピングしたかのように密度が大きい(カサ比重の大きい)集合体になると考えた。表6に示したように、異なる銘柄のそれぞれの分級品について、黒鉛単独或いは分級品を含有させてなる樹脂組成物の膨張体積(膨張倍率)を調べると、メッシュの小さい順(長径の大きい順)に膨張倍率及び残渣厚(粘結力)が増大する傾向があった。但し、前述したように、長径の膨張倍率が相関し粘結力もその傾向になるが、この結果は、あくまでも化学的処理が同じ、即ち、同一銘柄間のことであり、その製造工程である化学的処理が異なる銘柄間での比較はできないことが分かった。以上のような検討結果より、本発明者らは、黒鉛粒子の長径や銘柄にこだわらずに、その膨張体が疎になるように膨張性黒鉛を工夫し、調整すれば、長径の大きい黒鉛粒子の膨張体と同じような、高い膨張倍率や粘結力を得ることがでると考え、更なる検討を行い、その結果、本発明に至った。
前述の如く、膨張性黒鉛粒子は、図5に示したように、加熱されると「イモ虫」状に膨張をする。本発明者らは、小さい黒鉛粒子であっても、膨張した細く、短い「イモ虫」が互いに干渉しあって密に充填されにくくすれば、全体として長径の大きい粒子と同じように疎の膨張体になり、結果として、膨張体の、膨張倍率及び粘結力を増加させることができると考えた。
そして、このような認識に基き詳細な検討をした結果、本発明に至った。即ち、本発明は、黒鉛粒子の長径の効果以外に、加熱して得られる膨張体が、系中の黒鉛粒子の含有量は同じでも、局部的に濃く偏在させることで、その偏在部中の膨張体が互いに干渉して密な充填にならないように、即ち、疎になるような効果を生起させる目的で、黒鉛粒子同士を接合させ塊状化し、膨張特性を向上させることが効果的であることを見出した。
図1及び図2の電子顕微鏡による観察写真等を参照して、上記効果が得られる事由について述べる。本発明者らは、上記した認識の下、鋭意検討した結果、この局部的偏在化の効果を達成する方法として、膨張性黒鉛粒子同士を、極少量の密着(接着)効果を有する物質(本発明では接着剤と呼ぶ)で接合させ、図1及び図2に示したように、黒鉛粒子を積み上げて塊状化して、塊状物にする手法をとることが有効であることを見出した。図1の下段は、上段の塊状物を膨張させて得た発泡品である。上記したように、塊状物を加熱して得た膨張体は、黒鉛粒子が互いに干渉して密な充填にはならず、疎になることを確認した。
この場合、塊状化をもたらす密着効果があれば、黒鉛粒子同士の密着用の物質である接着剤に特別な制限はない。しかし、上記のようにして得られた、粒子の一部が塊状化されて改質された膨張性黒鉛を樹脂組成物に使用する場合、樹脂組成物の製造工程で、強い混合操作を経ることになるので、接着剤の選択及び処理の際には、この点に留意する必要がある。本発明らの検討によれば、密着用の物質が低分子量であると、一般的には脆い密着力なので、好ましくない結果となる。また、膨張性黒鉛を含有する樹脂組成物は、原料由来及び混合操作のし易さのために、溶媒等を使用することもあるので、低分子量物質では、密着力が低下する恐れもある。
以上のことから、本発明で使用する黒鉛粒子同士の密着用の物質である接着剤としては、高分子量の物質が好ましい。勿論、低分子量の物質でも、本発明の目的に適合するのなら問題なく使用できる。膨張性黒鉛を構成する黒鉛粒子が長径であることによる効果と、上記のようにして、黒鉛粒子同士を塊状化して改質した膨張性黒鉛の膨張特性に寄与する効果の理由が、同じか否かは、現状は定かではないが、現実に、密着用の物質である接着剤で黒鉛粒子同士を接合させる操作を行ったことで、明らかに膨張体の体積の増加が得られることを確認した。
具体的に説明すると、改質操作をしない膨張性黒鉛を構成する長径の黒鉛粒子の厚みが厚い場合と、黒鉛粒子を積み重ねて塊状化し、見掛けの厚みを増加させた場合を比較すると、改質操作をしない厚みの大きい粒子の場合は、厚みの小さい粒子に比べて、厚み方向に、太く大きく膨張する。そして、その個々の独立した大きな膨張体が平均的に干渉するので、密に充填するのを防ぎ、疎ではあるが全体とし大きな膨張体積を構成する。他方、黒鉛粒子が積み重ねられた場合は、積み重なった状態で、個々の粒子が近接し局部化したために、ほぼ同一位置から多数の粒子が膨張することで、長径の大きい粒子に比べると、個々には細かい膨張体ではあるが、相互の干渉で膨張体が密に充填になるのを防いで、同じように疎ではあるが膨張体積の増加となっていると推定される。図1に、膨張前の積み重ねた黒鉛粒子からなる塊状物の顕微鏡写真の図(上段)と、この塊状物の膨張例の顕微鏡写真の図(下段)を示した。単独の黒鉛粒子の膨張例の顕微鏡写真の図である図5に比べて、図1の膨張体は、上記で説明した黒鉛粒子同士の近接膨張がよく分かる。
勿論、本発明の目的は、粒子の小さい黒鉛の膨張特性を改善して、膨張性黒鉛製品に含有されている粒子の小さい黒鉛を救済することではなく、上記した手法で、各銘柄の膨張性黒鉛のいずれについても、その膨張特性を更に向上させることにある。後述するが、膨張性黒鉛粒子同士を接合して積み重ねた塊状物を含む改質した膨張性黒鉛から得られた実施例の膨張体は、この操作をしない膨張性黒鉛を用いた場合の膨張体に比べて、全体としての体積が大きくなっていることを明確に確認した。他方、後述するように、実施例の黒鉛粒子を積み重ねて得られた塊状物を含む加熱膨張体の残渣重量率と、この操作をしない、改質前の膨張性黒鉛の加熱膨張体の残渣重量率とを比較すると、殆ど同量であり、接着剤の加熱残渣重量への影響は無かった。従って、接着剤の残渣効果は膨張体積には影響が無いことは確かめられた。即ち、接合に要した接着剤の量は、無視できる程の量にも関わらず、膨張に大きな効果をもたらすことが確認できた。
このように残渣重量率が変わらないのに、膨張体のカサ体積が処理の有無で変わることは、前記の如く膨張体の密度が違うことを示している。即ち、改質処理を施した膨張性黒鉛は、密度が小さいが体積の大きい膨張体になることを意味している。膨張体の密度が小さくても、例えば、火災時の火の通過を効果的に阻止するためには、膨張体が、膨張倍率と粘結力に優れている特性を有していればよいと判断されるので、本発明によって得られる効果は大きいと考えられる。
本発明に用いられる膨張性黒鉛に、例えば、銘柄によるとするような、特段の制限は無い。また、本発明の膨張性黒鉛に対する改質手法を適用するのに、黒鉛粒子の大きさに特別な制限はない。但し、先に記述した如く、長径が小さ過ぎると、膨張体の膨張体積が不十分であり、大き過ぎると樹脂組成物の製造混合時に砕け易いため、長径が50〜1000μmで厚みが6.5〜100μmの範囲の膨張性黒鉛を使用する。この範囲は、通常、この分野で使用され、市販されている膨張性黒鉛と異なるものではない。膨張性黒鉛の原料の黒鉛の種類には、特に制限が無いが、鱗状、又は鱗片状が好ましい。黒鉛の層間に挿入されているガス化する物質の種類や量についても特に制限は無いが、一般的な、硫酸、硝酸、リン酸、有機酸が好ましい。膨張性黒鉛の発泡開始温度は、挿入されている酸の種類や、リン酸、アルカリ土類金属等の添加剤により調節されるが、本発明で用いる膨張性黒鉛に、特別な制限は無い。
上記した特性を満足する膨張性黒鉛の市販品としては、例えば、下記の表に挙げた銘柄などが挙げられる。しかし、これ等の銘柄以外でも上記の範囲を満足すれば特別な制限は無い。なお、表中の数値は、カタログに記載されているものである。
本発明を特徴づける改質させた膨張性黒鉛を得る方法は、長径が50〜1000μmで厚みが6.5〜100μmである膨張性黒鉛粒子からなる膨張性黒鉛に、質量基準で、前記膨張性黒鉛100部に対して、固形分で0.5〜5部の範囲内で接着剤を添加して混合し、前記膨張性黒鉛粒子同士を接合させて塊状化することを特徴とする。本発明で行う、黒鉛粒子を作為的に積み重ねる方法、即ち、黒鉛粒子同士の接合は極めて容易である。極く少量の接着機能を有する接着剤を用いれば、容易に得ることができる。具体的には、極めて薄い濃度の接着剤を、改質する対象の膨張性黒鉛に添加して黒鉛粒子の表面に付着させ、乾燥して接着剤の揮発分を除去し、必要があれば接合後に軽く粉砕することで容易に改質できる。
接合、密着させて疑似的に塊状化させた物(本発明では、この状態のものを塊状物と呼ぶ)を、あたかも新しい粒子として取扱いをできるようにするには、接着剤の量(固形分)は無視できる量としなければならない。このため、本発明では、質量基準で、膨張性黒鉛100部に対して固形分として0.5部〜5部の範囲とした。0.5部未満では、接合による効果が少なく、5部を超えると黒鉛粒子同士のブロッキングが強く、解砕が困難になる。
図3等に示したように、膨張性黒鉛粒子の上下面の面積は、粒子端面の面積よりはるかに大きい。更に、上下面は比較的平滑であるのに、端面の厚さは小さく、側面積は上下面に比較して少ない。更に、図3で見られる如く、端面は、極めて不規則な凹凸面となっている。このため、上記した改質操作を行った場合、黒鉛粒子同士の接合は、端面間で生じることは少なく、上下面に重なるようになると考えられ、事実、電子顕微鏡で観察した場合、図1のようになる。図1は、膨張性黒鉛のSYZR802に、接着剤として、後述のカルボキシメチルセルロース塩を1.0部添加して塊状化させて得た塊状物の電子顕微鏡の写真の図である。また、図2は、膨張性黒鉛のSYZR502に、接着剤として、ウレタンディスバージョンを1.0部添加して塊状化させて得た塊状物の電子顕微鏡の写真の図である。これらの図にある通り、改質操作を行うことで、極めて鮮明な、黒鉛粒子同士の重なりが認められた。
この重なりの上下を粒子の厚みと捉えることで、粒子の疑似的な塊状化とし見掛けの体積を増加させたと考えられる。無論、全ての粒子が上下に重なるだけでなく、ダンゴ状になるものもあるが、その場合でも、体積という見方でとらえればよい。本発明では、この黒鉛粒子の重なりの疑似的な塊状化で、厚みの増加した1個の粒子とみなすが、本発明者らの検討によれば、その好ましい接合の効果を得るには、膨張性黒鉛100部に対して接着剤を固形分で0.5〜5部(質量基準)使用することで達成される。
先に述べたように、本発明で黒鉛粒子同士の接合に使用される接着剤は、特に限定されないが、処理方法が容易であり、かつ、極めて少量で効果の大きい接着剤が求められるので、高分子量の物質が好ましい。また、接着剤の量は、膨張性黒鉛粒子同士の接合で好ましい膨張特性が得られるのであればよいが、接着剤の量が多いと、接合後に非常に大きい塊になり易いので、極く軽い粉砕で解砕できなくなることと、膨張性黒鉛の重量に対して接着剤の量を多くし過ぎると、接着剤が高温膨張時に副次的な影響を与えてしまう可能性があるので、本発明では、膨張性黒鉛粒子100部に対して、固形分で0.5〜5部(質量基準)の範囲内とする。更に、後述する実施例で示されるように、接着剤の添加量と膨張特性には飽和的な関係も見られるので、添加量が一定量を超えても更なる効果は期待できず、この点からも、接着剤の添加量には限度があり、上記範囲とすることが好ましい。
本発明で使用する接着剤は、カルボキシメチルセルロース(以下、CMCと略す)又はその塩(以下、CMC塩と略す)の水溶液が極めて好ましい。その理由は、水性であること、少量でも粘性が有ること、使用時にはタック性があり、乾燥後にはタック性が無くなる点で好ましい。
しかし、本発明で使用する接着剤は、CMC等に限定はされるものではない。例えば、ポリエステル樹脂、ポリアクリル樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリスチレン樹脂、尿素樹脂、その他の樹脂のエマルジョンやディスパージョンも利用できる。また、シリケートのように加熱によって高分子になる無機物も利用できる。必要に応じて、増粘剤、消泡剤、レベリング剤の添加も差し支えない。油性であっても特に制限は無いが、この場合は、溶剤による環境悪化や取扱い、時引火性などに注意を要する。
次に、実施例及び比較例を挙げて本発明をさらに詳細に説明する。以下、部とあるのは、特に断りのない限り、質量基準である。
〔実施例1、比較例1、2〕
本例では、接着剤としてCMC塩の水溶液を用いた。膨張性黒鉛としてSYZR802を使用し、CMC塩の水溶液として、ダイセルファインケム社製の銘柄1140の1%水溶液を用いた。1gのSYZR802に、CMC塩の1%水溶液を用い、表7に示した通り、添加無の試料と、段階的にCMC塩の膨張性黒鉛への添加量を変えて、所定量をそれぞれに添加した各試料を得、よく混合して70〜80℃で乾燥した。使用した前記水溶液のCMC塩の濃度が極めて小さいので、水分を十分に乾燥させる必要がある。乾燥後の重さが変わらなくなったことを確かめて、水分を十分に乾燥させた乾燥品を得た。得られた上記処理後の各膨張性黒鉛を改質黒鉛として以降の試験に使用した。
上記で得た改質黒鉛(試料)を1g採取し、底辺寸法が10×10cm、高さが6cmの、上部が開放された金属製の箱に入れた。これを電気炉中で、600℃、15分間加熱して試料を熱膨張させて膨張体を得た。そして、得られた膨張体を、メスシリンダーに静かに投入し、目視で膨張体の体積を測定した。そして、得られた体積の測定値のml数を、「体積−1(ml/g)」とした。また、上記で得た膨張体の重さを測定し、得られた測定値を、熱膨張させる前の改質黒鉛(試料)の重さ1gを100として標準化して、残渣重量率(%)として示した。
次に、体積−1を測定した後のメスシリンダーを軽く5回タッピングし、目視で膨張体の体積を測定し、得られた体積の測定値のml数を、「体積−2(ml/g)」とした。
さらに、膨張性黒鉛として、上記したSYZR802に替えて、SYZR502、EG−E300をそれぞれに用いた以外は同様にして膨張体を得、上記したと同様にして、「体積−1」、「体積−2」及び残渣重量率を求めた。表7に、上記で得られた結果をまとめて示した。
表7に示した通り、いずれの改質黒鉛(試料)の場合も、明らかに、CMC塩を添加することによって、さらに、CMC塩の添加量の増加につれて膨張体の体積−1及び体積−2がいずれも増加した。また、CMC塩を添加して膨張性黒鉛粒子を塊状化させたことによる効果は、いずれの試料についてもCMC塩の添加量が少量の段階で大幅に増加し、その後、添加量の増加につれて飽和的になることを確認した。また、表7に示した通り、いずれの試料の場合も、CMC塩の添加が増加して6部の添加では、ブロックになり、解砕不可となった。残渣重量率は、表7に示した通り、CMC塩の添加量に関係がなく、CMC塩を添加して改質する前(添加無)の膨張性黒鉛とほぼ同じであった。
〔実施例2、比較例3〕
本例では、接着剤に、CMC塩水溶液の代わりに、下記のポリウレタンの水分散体を使用した。具体的には、大日精化工業社製のレザミンD−4080(商品名、35%水溶液)を水で1%濃度に希釈して使用した。そして、上記ポリウレタンの水分散体を接着剤として使用したこと以外は実施例1で行ったと同様の操作を実施して、体積−1、体積−2及び残渣重量率を求め、結果を表8に示した。表8中のレザミンD−4080の部数は、各膨張性黒鉛100部に対する添加の固形分の部数である。表8に示した通り、実施例1と同じく、ポリウレタンの添加量に応じて膨張体の体積が増加しており、同様の傾向を示すことを確認した。
〔実施例3、比較例4〕
本例では、接着剤に、CMC塩水溶液の代わりに、下記のアクリル−ポリエステル水分散体を使用した。具体的には、高松油脂社製のペスレジンA−645−GH(商品名、35%水溶液)を水で1%濃度に希釈して使用した。そして、上記アクリル−ポリエステル水分散体を接着剤として使用したこと以外は実施例1で行ったと同様の操作を実施して、体積−1、体積−2及び残渣重量率を求め、表9に示した。表9中のペスレジンA−645−GHの部数は、各膨張性黒鉛100部に対する添加の固形分の部数である。表9に示した通り、実施例1と同じく、アクリル−ポリエステルの添加量に応じて膨張体の体積が増加しており、同様の傾向を示すことを確認した。
〔実施例4、比較例5〕
実施例1で得た、CMC塩の添加部数が、0.5部、1.0部、2.0部及び5.0部である、改質した各膨張性黒鉛をそれぞれに用い、膨張性黒鉛含有樹脂組成物を作製し、評価用の試料シートを得た。組成物の配合及び試料シートの作製方法、評価試験の方法は、下記の通りである。比較のため、接着剤を使用しての改質処理をしていない膨張性黒鉛を用いた以外は実施例4と同様にして、比較例5の膨張性黒鉛含有樹脂組成物を作製し、実施例4と同様にして評価用の試料シートを得た。
<膨張性黒鉛含有の樹脂組成物の配合>
塩化ビニル樹脂を樹脂成分として、下記の表の配合に基づいて、実施例1で得た、3種の膨張性黒鉛を、上記した量でCMC塩を用いてそれぞれ改質した各膨張性黒鉛を含有してなる、試験用の実施例4の膨張性樹脂組成物をそれぞれ作製した。使用した各材料は、PVC(商品名:リューロン832)は、東ソー社製のペースト塩ビであり、DOP(可塑剤)は市販試薬、ポリリン酸アンモニウムは、シランコート品で、ブーデンハイム社製のFR CROS 486(商品名)であり、炭酸カルシウムは市販試薬であり、酸化チタンは、TRONOX/AUSTRALIA CR−826(商品名)であり、水酸化アルミニウムは、日本軽金属社製のB−103(商品名)である。
<試料シートの作製方法>
上記で調製した実施例4及び比較例5の各樹脂組成物をそれぞれ離型紙上にコート後、160℃〜180℃で20分間加熱して、試験に用いる厚みが1.1〜1.2mmの試料シートを得た。得られたシートから20mm×45mmで、厚みが1.1〜1.2mmの範囲の試料片を切り出して、厚み(H)と重さ(W)を測定した。厚みを正確に同一にするのは困難であるので、上記した厚みの範囲内で、且つ、重さ(W)が1.48gになるように寸法の微調整を行った。得られた試験片を、底部が25×45mmで、高さが50mm、上方が開放された金属製の容器の底部に置き、電気炉で、600℃、15分間加熱して膨張体を得た。そして、膨張体の高さ(H)を測定した後に、膨張体の上面に重さ10gの平滑な板を置き、膨張体の沈みが静止した時の床面からの高さ(H)を測定した。また、膨張体の重さ(W)を測定した。そして、これ等の測定値から、以下の計算式で各項目の評価を行った。表10に得られた結果をまとめて示した。
膨張倍率=H/H(倍)
残渣厚(粘結力)=H(mm)
残渣重量率=W/W×100=W/1.48×100(%)
〔実施例5〕
実施例2で得た、レザミンD−4080の添加部数が、0.5部、1.0部、2.0部及び5.0部である、改質した各膨張性黒鉛をそれぞれに用い、膨張性黒鉛含有樹脂組成物をそれぞれ作製した。組成物の配合及び試料シートの作製方法、評価試験の方法は、実施例4と同様である。表11に得られた結果をまとめて示した。
〔実施例6〕
実施例3で得た、ペスレジンA−645−GHの添加部数が、0.5部、1.0部、2.0部及び5.0部である、改質した各膨張性黒鉛を用い、膨張性黒鉛含有樹脂組成物をそれぞれ作製した。組成物の配合及び試料シートの作製方法、評価試験の方法は実施例4と同様である。表12に得られた結果をまとめて示した。
表10〜12に示した通り、本発明で規定する改質した膨張性黒鉛を含有してなる実施例4〜6の膨張性黒鉛含有樹脂組成物で得た樹脂シートは、接着剤を用いての改質処理をせずに、原料のままの膨張性黒鉛を用いてなる比較例5の膨張性黒鉛含有樹脂組成物で得た樹脂シートと比較して、膨張性黒鉛に接着剤を添加して改質させているにもかかわらず、加熱して得られた膨張体の残渣重量率は殆ど変わらなかった。さらに、表10〜12に示した通り、本発明の技術によって提供される実施例4〜6の膨張性黒鉛含有樹脂組成物は、膨張性黒鉛を改質せずに用いた比較例5の従来技術の場合と比べて、樹脂組成物で形成した樹脂シートを加熱して得た膨張体が、膨張倍率が向上し、しかも、残渣厚みが厚いものになることが確認された。すなわち、本発明で規定した構成の膨張性黒鉛含有樹脂組成物で形成した樹脂シートを用いることで、該シートは、火災などで高温に晒された場合の加熱膨張体が、膨張倍率と粘結力(残渣厚み)を共に増加させたものになることから、火災時に、大きく体積が増加し、しかも粘結力の強い膨張体を生起させ、これによって火炎及び煙の遮断機能を効果的に発揮できる断熱層の形成が実現するので、火の通過を防ぐ用途に極めて有用な材料及び製品の提供が実現する。

Claims (5)

  1. 改質させた膨張性黒鉛と、樹脂成分とを含む膨張性樹脂組成物であって、
    前記樹脂成分が、塩化ビニル樹脂であり、
    前記改質させた膨張性黒鉛が、長径が50〜1000μmで、厚みが6.5〜100μmである膨張性黒鉛粒子からなり、且つ、該膨張性黒鉛粒子同士が接着剤で接合されて塊状化した状態の塊状物を含み、前記接着剤の量が、質量基準で、前記膨張性黒鉛粒子100部に対して、固形分で0.5〜5部の範囲内であり、且つ、前記接着剤が、カルボキシメチルセルロース又はその塩の水溶液、ポリエステル樹脂、ポリアクリル樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリスチレン樹脂及び尿素樹脂からなる群から選ばれる樹脂の水系エマルジョン又は水系ディスパージョンの少なくともいずれかであることを特徴とする樹脂組成物。
  2. 前記膨張性黒鉛粒子同士が接着剤で接合されて塊状化した状態の塊状物の形状が、膨張性黒鉛粒子の平坦面同士が接着して重なった層状構造を有する請求項1に記載の樹脂組成物。
  3. 質量基準で、前記樹脂成分100部を基準にして、前記改質させた膨張性黒鉛を5〜300質量部で含む1又は2に記載の樹脂組成物。
  4. 請求項1〜のいずれか1項に記載の樹脂組成物を用いて形成してなることを特徴とする建具用部材。
  5. 請求項1〜のいずれか1項に記載の樹脂組成物に用いる改質させた膨張性黒鉛の製造方法であって、
    長径が50〜1000μmで厚みが6.5〜100μmである膨張性黒鉛粒子からなる膨張性黒鉛に、質量基準で、前記膨張性黒鉛100部に対して、固形分で0.5〜5部の範囲内で、カルボキシメチルセルロース又はその塩の水溶液、ポリエステル樹脂、ポリアクリル樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリスチレン樹脂及び尿素樹脂からなる群から選ばれる樹脂の水系エマルジョン又は水系ディスパージョンの少なくともいずれかである接着剤を添加して混合し、前記膨張性黒鉛粒子同士を接合させて塊状化することを特徴とする改質させた膨張性黒鉛の製造方法。
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