JP6826070B2 - 流体殺菌モジュール - Google Patents
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Description
このような装置においては、従来、紫外線光源として、水銀ランプやキセノンランプ等の管球が用いられている。また、殺菌を行うことの可能な波長の光を照射することのできるLED(light emitting diode)を紫外線光源とし、長手方向に延びる流路を構成する流路管内を流れる流体に向けて長手方向に紫外光を照射するようにした流体殺菌装置等も提案されている。
そこで、この発明は従来の未解決の問題に着目してなされたものであり、組み付け誤差により、流路を流れる流体に、流速の早い部分が形成されることを抑制することの可能な流体殺菌モジュールを提供することを目的としている。
流体殺菌モジュール1は、図1に示すように、殺菌処理部2と、発光部3と、流入部4と、流出部5と、を備える。
殺菌処理部2は、図2(a)に示すように、内筒(筒状部)21と、内筒21を収容するケース部22と、内筒21の一端側の開口部に固定される円板状の整流板23と、内筒21とケース部22との間に配置される区画部材24とを備える。
さらに、拡散透過率と紫外線領域における全反射率との和が90%/1mm以下、すなわち、内部で吸収されるエネルギーが10%以上である素材は、有効な紫外光線の多重反射効果を得ることが出来ないため、処理流路21dの構成部材としてふさわしくない。
すなわち、PTFEは、拡散性を有する材料であるため、通常の直線光を用いた透過率測定では適切に測定することが困難である。そのため、積分球を用いた拡散透過率の測定を行う。この積分球を用いた拡散透過率の測定は、例えば図3に示すように、懸濁性物質の拡散透過率を測定する際に一般的に用いられる分光光度計等を用いて行えばよい。
また、内筒21は、内周面、つまり処理流路21dの壁面の静止摩擦係数が後述の流入側整流室(第一整流室)26の内周面の静止摩擦係数よりも小さい材料で形成される。このように、処理流路21dの内周面の静止摩擦係数が、流入側整流室26の内周面の静止摩擦係数よりも小さくなるようにすることによって、バイオフィルムの発生を抑制する効果を得ることができる。なおバイオフィルムの発生をより抑制するため、処理流路21dの内周面の静止摩擦係数は、1/10以下であることが好ましい。また、処理流路21dの内周面の静止摩擦係数は、流入側整流室26の内周面の静止摩擦係数の1/2以下であることがより好ましい。
連通口21aの形状は、機械加工の観点から、断面が円形であることが望ましい。連通口21aの形状は断面が円形である場合に限るものではなく、任意の形状とすることができる。また、連通口21aの直径は処理流路21dの直径の1/100以上1/4以下であることが望ましく、1/20以上1/5以下であることがさらに望ましい。
内筒21の、内筒21が延びる方向の中央部分の外周面には、区画部材24と勘合する溝21bが形成されている。溝21bの断面は例えば矩形状である。
なお、処理流路21dは、処理流路21d内で対象物の流速にむらを抑制するという観点から、処理流路21dの最上流部、つまり、内筒21の内周面の整流板23側の端部から内筒21の内周面の発光部3側の端部までの間の、主たる断面積の変化量が5%以下であればよく、また、処理流路21dは円筒でなくともよい。
ケース部22は、例えば、ポリオレフィン、具体的にはポリプロピレン又はポリエチレンで形成され、一端は閉じ、一端が開放された、断面が円形の筒状を有する。ケース部22の開放端の外周面にはフランジ部22aが形成される。また、ケース部22の開放端の内周面には段差部22bが形成されている。
ケース部22の閉端寄りの外周面には、円筒状の中空部を内部に有する流入部4がケース部22と一体に形成され、ケース部22の開放端寄りの外周面には、円筒状の中空部を内部に有する流出部5がケース部22と一体に形成されている。流入部4の中空部の開口部が流入口4aとなり、流出部5の中空部の開口部が流出口5aとなる。
流入部4は、内筒21の、段差部21c側の外周面の端部との間の距離が、流入口4aの流入口相当半径以上、処理流路21dの処理流路長の2/3以下の距離だけ、内筒21の連通口21a側の端部寄りとなる位置に形成される。
流出部5は、連通口21aからの距離が、流出口5aの流出口相当半径以上、処理流路長の2/3以下の距離だけ、内筒21の、段差部21c側の端部寄りとなる位置に形成される。
なお、流入部4の配置位置は、内筒21の、段差部21c側の外周面の端部との間の距離が、処理流路21dの相当内径(以下、処理流路相当内径ともいう。)の1/2以上、処理流路長の2/3以下の距離だけ、内筒21の、連通口21a側の端部寄りとなる位置がより好ましく、処理流路相当内径の3/4以上、処理流路長の2/3以下の距離だけ、内筒21の、連通口21a側の端部寄りとなる位置がさらにより好ましい。
なお、流入部4及び流出部5の配置位置が、処理流路長の2/3を上回る位置となると、流入部4及び流出部5を配置する設計自由度が低くなるため、処理流路長の2/3以下の範囲が好ましい。
開口率を0.05以上0.8以下とすることによって、流入側整流室26及び後述の流出側整流室(第二整流室)27を設けない場合に比較して、より整流効果を得ることができる。つまり処理流路21dにおける対象物の流速のばらつきを抑制することができる。開口率は、0.05以上0.6以下であることが好ましく、0.05以上0.35以下であることがより好ましい。なお、開口率が0.05を下回ると、処理流路21dの大きさに対して最大処理流量が少なくなるため、開口率は0.05以上であることが好ましい。
区画部材24は、例えば、バイトン(登録商標)等のフッ素ゴムで形成される。区画部材24は、円環状に形成され、内周面側には、内筒21に形成された溝21bと勘合する凸部24aが形成されている。区画部材24の外周面側には断面が半円の環状の凸部24bが幅方向に複数(例えば3つ)形成されている。
そして、内筒21とケース部22との間の隙間において、区画部材24で区分けされた区画のうちの、ケース部22の閉端側の領域が、流入部4と処理流路21dとの間に設けられ、内筒21の、段差部21c側の開口部と連通する流入側整流室26を形成している。また、区画部材24で区分けされた区画のうちの、ケース部22の開放端側の領域が、流出部5と処理流路21dとの間に設けられ、連通口21aを介して処理流路21dと連通する流出側整流室27を形成している。
つまり、流体殺菌モジュール1における殺菌処理の処理流量が2L/minであるときに殺菌に必要な断面積つまり処理流路21dの断面積A21がA21>3.14cm2であり、バイオフィルムの発生防止に必要な流入側整流室26の断面積A26がA26<1.53cm2であるとする。これらの相対値が流量に比例すると考えられるため、処理流量がXL/minであるときには、殺菌に必要な処理流路21dの断面積A21は、A21>1.57×Xcm2であり、バイオフィルムの発生防止に必要な流入側整流室26の断面積A26は、A26<0.76×Xcm2と表すことができる。したがって、「殺菌に必要な断面積A21÷バイオフィルム発生防止に必要な断面積A26」が2.06よりも大きい((A21/A26)>2.06)ことが好ましい。なお、処理流路21dの長さは対象物の透過率によって決まり、目的処理流量には因らない。
また、区画部材24に設けられた凸部24bは3つでなくともよく複数備えていればよい。凸部24bを複数備えることによって、内筒21とケース部22とを安定して固定することができる。凸部24bは、幅方向に例えば等間隔で配置されていればよく、要は、凸部24bの配置位置が偏ること等により、内筒21とケース部22との間隔が不均一となることがなく、均等となる位置に配置すればよい。
また、相当半径とは、「流路断面積の二倍/流路断面周長」のことをいう。
また、整流室とは、処理流路と外部装置との間に配置され、流体殺菌モジュール1と外部装置との間で対象物の授受を行うための流入口及び流出口を有し、処理流路相当内径に対して、1.1倍以上、好ましくは1.5倍以上の相当内径を有する空間のことをいう。
図2(a)に戻って、発光部3は、窓部31と、素子部32とを備える。
素子部32は、例えばステンレス等で形成され、窓部31の外径と同一の外径を有する円環状に形成される。素子部32の窓部31と対向する面には、平面視で円形の凹部32aが形成されている。UVC−LED(深紫外LED)等の発光素子34aとこの発光素子34aが実装された基板34bとを含む光源34は、発光面が窓33と対向するように凹部32aに固定される。光源34は、光源34からの照射光の光軸と、処理流路21dの長手方向の中心軸とが一致するように配置される。
殺菌処理部2と発光部3とは、ケース部22のフランジ部22aの部分で、貫通ボルト25により一体に固定されている。
このとき、段差部22bには、ゴム等の弾性部材からなるOリング22cが設けられると共に、内筒21の連通口21a側の端部と窓部31との間に弾性部材からなる弾性シート22dが設けられ、対象物が窓部31とケース部22との接触部分から外部に漏れだすことを防止している。弾性シート22dとなる弾性部材としては、シリコン樹脂エラストマー、フッ素樹脂エラストマー等のエラストマーを適用することができる。
また、窓部31の第一段差部31aと窓33との間にゴム等の弾性部材からなるOリング31cが設けられ、対象物が窓部31と窓33との接触部分から外部に漏れだすことを防止している。
内筒21の端部と、窓部31の、弾性シート22dを介して内筒21の端部と対向する領域との間の隙間は、機械加工の精度等の観点から、25μm以下に設定できる。さらに10μm以下であれば、対象物としての水等の表面張力によって、実質的に漏洩することがなくなる。
(1)本発明の一実施形態に係る流体殺菌モジュール1は、処理流路21dの上流に、一定以上の容積を有する流入側整流室26を設けている。そのため、例えば組み付け精度にばらつきが生じる場合であっても、対象物を、流入側整流室26を介して処理流路21dに流入させることによって、組み付け精度によるばらつきの影響を緩和させることができ、結果的に、処理流路21dにおける対象物の流速のばらつきを抑制することができる。そのため、組み付け精度による個体間のばらつきが抑制された流体殺菌モジュール1を実現することができる。
また、処理流路21d及び流入側整流室26を形成する部材として、静止摩擦係数の観点からバイオフィルムの発生の低減に寄与することのできる材料を用いているため、バイオフィルムの発生をより低減することができる。
ここで、ケース部22側に付着したバイオフィルムは、流体殺菌モジュール1に対する定期的なメンテナンス時に、懐中電灯等の光源をケース部22の外周面に近接させ、ケース部22の内側の反射から汚れ状態を視認することで、発生状況を確認することができる。
このように本発明の一実施形態に係る流体殺菌モジュール1は、流入側整流室26におけるバイオフィルムの発生を抑制することができる。したがって、流入側整流室26を設けることによる殺菌効果の低下を、より小さくすることができる。
そのため、発光部3から処理流路21dに向けて照射された紫外光を処理流路21d内に高密度に紫外光を閉じ込めることができ、強い殺菌力を発揮させることができる。また、内筒21は紫外光の一部は透過させるため、処理流路21d内に照射された紫外光は、図6に符号Zで示すように、内筒21を透過して流入側整流室26及び流出側整流室27内に向けて照射される。つまり、流入側整流室26及び流出側整流室27内の流体に対しても紫外光照射が行われることになるため、これら流入側整流室26や流出側整流室27に溜まっている対象物に雑菌が増殖することを防止することができる。このため、流入側整流室26や流出側整流室27内に対象物が溜まっていたとしても、雑菌の生成を抑えることができ、流動開始時に菌の増殖した対象物が流出されることを抑制することができ、流体殺菌モジュール1の信頼性をより向上させることができる。なお、図6は、図2(a)に示す流体殺菌モジュール1を簡易的に示している。
上記実施形態においては、流体の殺菌を行う場合について説明したが、殺菌対象は、水、水溶液、コロイド分散液等の流体であってもよく、また、空気等の気体や、氷や固定の微粉末等であってもよい。
また、上記実施形態においては、区画部材24の内周面側には凸部24aを設け、外周面側には複数の凸部24bを設けた場合について説明したが、これに限るものではない。要は、内筒21の外周面に設けた溝21bと勘合することで、内筒21の延びる方向への区画部材24の移動を制限することができ、且つ、区画部材24と内筒21との接触面及び区画部材24とケース部22との接触面を通して、区画部材24で区画される一方の側から他方の側へ対象物が移動することを阻止することが可能であって、十分な耐久性を有していれば区画部材24はどのような形状であってもよい。
また、上記実施形態においては、図2(a)に示すように、内筒21とケース部22との間の隙間を区画部材24で区分けし、区分けした二つの区画のうち一方の区画を流入側整流室26、他方の区画を流出側整流室27としているがこれに限るものではない。例えば、流入側整流室26及び流出側整流室27をそれぞれ別体として形成するようにしてもよい。また、流入側整流室26及び流出側整流室27を備えているが、少なくとも流入側整流室26のみを備える場合であっても適用することができる。
ここで、処理流路21d内における流速分布はできるだけ均一な方がよい。つまり、UVC−LED等の発光素子の照度分布は、例えば、図8に示すように、中央部が壁側領域よりも1.4倍程度照度が高い分布となっている。そのため、処理流路21dにおける流速が照度分布と一致していないと、照度に対して流速の速い部分では十分な殺菌効果を得ることができない可能性がある。このため、流速分布は壁面に対して1.4倍程度中央部の流速が速い分布であることが好ましいが、処理流路の壁面流速は必ず0となるため、実質的には処理流路内の流速が均一になる程、殺菌能力の向上が見込まれる
なお、以下の図9〜図13では、流体殺菌モジュール1を簡易的に示している。また、図中の矢印は、流れの向きを示す。
図9は、比較例として、流入側整流室を持たない流体殺菌モジュール1aにおける流速分布を示したものである。比較例における流体殺菌モジュール1aは、流入側整流室26及び流出側整流室27を共に持たない。また、流入部4及び流出部5は、内筒21の両端にそれぞれ設けられている。
図9に示すように、比較例における流体殺菌モジュール1aの、処理流路21dにおける流速分布は壁面近傍の流速が中央部に比べて速く、十分な殺菌性能を得る事が出来ない。
実施例1における流体殺菌モジュール1は、図10に示すように、比較例における流体殺菌モジュール1aにおいて、流入側整流室26を設けたものである。
図10に示すように、処理流路21dの中央部近傍における流速のばらつきが抑制されていることがわかる。
実施例2における流体殺菌モジュール1は、図11に示すように、実施例1における流体殺菌モジュール1において、さらに、処理流路21dの流入側に、整流板23を設けたものである。
図11に示すように、実施例1に比較して、処理流路21dにおける流れの向きが揃っていることがわかる。
実施例3における流体殺菌モジュール1は、図12に示すように、実施例2における流体殺菌モジュール1において、流入部4を、処理流路21dの長手方向中央寄りに移動したものである。
図12に示すように、流入部4を処理流路21dの長手方向中央寄りに移動することによって、処理流路21dにおける流速のばらつきがより抑制される事が分かる。
実施例4における流体殺菌モジュール1は、図13に示すように、実施例3における流体殺菌モジュール1において、さらに流出側整流室27を設け、流出部5を、処理流路21dの長手方向中央寄りに移動したものである。
図13に示すように、流入側整流室26だけでなく流出側整流室27を設け、さらに、流入部4及び流出部5を、処理流路21dの長手方向中央寄りに移動することによって、処理流路21dにおける流速のばらつきがより抑制され、また、流れの向きがより一方向に向いていることがわかる。
2 殺菌処理部
3 発光部
4 流入部
5 流出部
21 内筒
21d 処理流路
22 ケース部
23 整流板
24 区画部材
26 流入側整流室
27 流出側整流室
34 光源
34a 発光素子
Claims (10)
- 長手方向に延びる筒状の処理流路を形成する筒状部と、
前記筒状部の一端側の開口部を介して前記処理流路と連通する第一整流室と、
前記筒状部の前記一端側に設けられ、前記第一整流室に対象物を流入する流入部と、
前記筒状部の他端側に設けられ、前記処理流路を通過した前記対象物を前記筒状部から流出させる流出部と、
前記処理流路の前記他端側の開口部に面して設けられ、前記処理流路を通過する前記対象物に向けて前記長手方向に沿って紫外光を照射する発光素子と、を備え、
前記第一整流室の内容積が、前記処理流路の相当内径の三乗の2/3以上前記処理流路の内容積以下である流体殺菌モジュール。 - 前記筒状部を収容するケース部と、
前記筒状部と前記ケース部との間に密着して配置され、前記筒状部と前記ケース部との間の領域を前記筒状部の前記一端側の領域と前記他端側の領域とに区分けする区画部材と、
前記区画部材によって区分けされた前記他端側の領域からなり、前記処理流路と前記流出部とを連通する第二整流室と、をさらに備え、
前記第一整流室は、前記一端側の領域である請求項1に記載の流体殺菌モジュール。 - 前記筒状部の前記他端側には、前記処理流路と前記第二整流室とを連通する連通口が設けられている請求項2に記載の流体殺菌モジュール。
- 前記流出部は、前記連通口から前記流出部の流出口相当半径以上処理流路長の2/3以下の距離だけ、前記筒状部の前記一端側寄りとなる位置に配置されている請求項3に記載の流体殺菌モジュール。
- 前記処理流路の最上流部から最下流部までの断面積の変化量が5%以下である請求項1から請求項4のいずれか一項に記載の流体殺菌モジュール。
- 前記筒状部の前記一端側に、前記筒状部の開口部を覆う整流板を備え、
当該整流板は、表裏間を通じる開口孔を有し、前記整流板が設置される部分の処理流路の流路断面積を1としたときの、前記整流板に形成された前記開口孔の開口面積が占める割合を表す開口率が0.05以上0.8以下である請求項1から請求項5のいずれか一項に記載の流体殺菌モジュール。 - 前記開口孔の相当直径が、0.5mm以上前記処理流路の相当内径の1/3以下である請求項6に記載の流体殺菌モジュール。
- 前記第一整流室の壁面の、前記筒状部の前記一端側の開口部と対向する位置に凸部を有し、
前記整流板は、前記凸部と前記筒状部の端面とで挟むことにより固定されている請求項6又は請求項7に記載の流体殺菌モジュール。 - 前記整流板は、紫外線反射性材料で形成される請求項6から請求項8のいずれか一項に記載の流体殺菌モジュール。
- 前記流入部は、前記筒状部の前記一端側の端部から、前記流入部の流入口相当半径以上処理流路長の2/3以下の距離だけ、前記筒状部の前記他端側寄りとなる位置に配置されている請求項1から請求項9のいずれか一項に記載の流体殺菌モジュール。
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