以下、本開示の電力システムの実施の形態について説明する。当該電力システムとして、電力系統に連系された系統連系型の太陽光発電システムを例に説明する。なお、以下の説明において、連系点における電力が正の場合、太陽光発電システムから電力系統に電力が出力されている(逆潮流している)ものとする。一方、連系点における電力が負の値の場合、電力系統から太陽光発電システムに電力が出力されているものとする。
図1は、第1実施形態に係る太陽光発電システムPVS1の全体構成を示している。同図に示すように、太陽光発電システムPVS1は、複数台の太陽電池SPi(i=1,2,・・・,n;nは正の整数)、複数台のパワーコンディショナPCSi、および、集中管理装置MC1を有して構成される。太陽光発電システムPVS1は、系統連系型の逆潮流システムである。
複数台の太陽電池SPiはそれぞれ、太陽光エネルギーを電気エネルギーに変換する。各太陽電池SPiは、直列・並列に接続された複数個の太陽電池パネルを含んで構成されている。太陽電池パネルは、例えば、シリコンなどの半導体で生成された太陽電池セルを複数個接続したものを、屋外で利用できるように樹脂や強化ガラスなどで保護したものである。太陽電池SPiは発電した電力(直流電力)を、パワーコンディショナPCSiに出力する。なお、太陽電池SPiによって発電可能な電力の最大量を太陽電池SPiの発電量Pi SPとする。
複数台のパワーコンディショナPCSiはそれぞれ、太陽電池SPiが発電した電力(直流電力)を交流電力に変換する。そして、変換した交流電力を電力系統Aに出力する。各パワーコンディショナPCSiは、例えば、インバータ回路、変圧器、および、制御回路などを含んでいる。インバータ回路は、太陽電池SPiから入力される直流電力を電力系統Aと同期がとれた交流電力に変換する。変圧器は、インバータ回路から出力される交流電圧を昇圧(または降圧)する。制御回路は、インバータ回路などを制御する。各パワーコンディショナPCSiは、インバータ回路などの制御により、自装置(パワーコンディショナPCSi)の出力電力である個別出力電力Pi outを制御する。なお、パワーコンディショナPCSiは、上記のように構成されたものに限定されない。
各パワーコンディショナPCSiから出力される有効電力をPi out、無効電力をQi outとすると、各パワーコンディショナPCSiからPi out+jQi outの複素電力が出力されている。したがって、複数台のパワーコンディショナPCSiと電力系統Aとの連系点には、ΣiPi out+jΣiQi outの複素電力が出力されている。すなわち、連系点における電力は、各パワーコンディショナPCSiの出力電力の総和である。なお、連系点における電力を連系点電力P(t)とする。本実施形態においては、連系点における電圧変動抑制などに主に活用される無効電力Qi outの出力制御については、特に考慮しない。すなわち、連系点電力P(t)は、連系点における有効電力Pi outの総和(ΣiPi out)としている。よって、各パワーコンディショナPCSiが制御する個別出力電力は有効電力Pi outであるので、個別出力電力をPi outとする。
集中管理装置MC1は、複数台のパワーコンディショナPCSiを集中管理する。集中管理装置MC1は、例えば無線通信により、各パワーコンディショナPCSiとの間で、各種情報の送受信を行う。なお、無線通信ではなく、有線通信であってもよい。
このように構成された太陽光発電システムPVS1において、集中管理装置MC1は、所定の調整対象電力を監視し、当該調整対象電力と調整対象電力の目標値である目標電力とに基づいて、調整対象電力を目標電力にするための指標を算出する。そして、これを各パワーコンディショナPCSiに送信する。各パワーコンディショナPCSiは、集中管理装置MC1から指標を受信し、受信した指標に基づいて、個別出力電力Pi outの目標値である個別目標電力Pi refを算出する。そして、算出した個別目標電力Pi refに基づいて、個別出力電力Pi outを制御する。当該指標は、調整対象電力を目標電力にするための情報であり、個別目標電力Pi refを算出するための情報である。
近年、電力系統Aに連系する太陽光発電システムが増えてきており、電力系統Aへの電力の供給が需要に比べて過多となる可能性がある。この供給過多の状態を解消するために、電力会社などから各太陽光発電システムに個々の出力電力を抑制するように指示されることが考えられる。このとき、各太陽光発電システムは、この出力抑制指示に従い、出力電力を抑制する必要がある。本実施形態においては、電力会社からの出力抑制指示として、太陽光発電システムPVS1全体の出力電力の上限値である出力指令値PCが指示されるものとする。したがって、太陽光発電システムPVS1は、太陽光発電システムPVS1全体の出力電力を出力指令値PCに一致させる必要がある。
そこで、本実施形態に係る太陽光発電システムPVS1は、上記指標を用いて各パワーコンディショナPCSiが分散的に制御して、太陽光発電システムPVS1全体の出力電力を出力指令値PCに一致させている。これを「出力抑制制御」という。なお、太陽光発電システムPVS1において、各パワーコンディショナPCSiの個別出力電力Pi outはすべて連系点(電力系統A)に出力されるので、太陽光発電システムPVS1は連系点電力P(t)を太陽光発電システムPVS1全体の出力電力とみなして、出力抑制制御を行う。すなわち、太陽光発電システムPVS1は、連系点電力P(t)を出力指令値PCに一致させている。なお、本実施形態に係る出力抑制制御で用いる指標を抑制指標prとする。具体的には、太陽光発電システムPVS1において、集中管理装置MC1は、連系点電力P(t)を監視し、連系点電力P(t)と出力指令値PCとに基づいて、連系点電力P(t)を出力指令値PCにするための抑制指標prを算出する。そして、これを各パワーコンディショナPCSiに送信する。各パワーコンディショナPCSiは、集中管理装置MC1から抑制指標prを受信し、受信した抑制指標prに基づいて、個別目標電力Pi refを算出する。そして、算出した個別目標電力Pi refに基づいて、個別出力電力Pi outを制御する。これにより、連系点電力P(t)を出力指令値PCに一致させている。よって、上記調整対象電力として連系点電力P(t)を用い、上記目標電力として出力指令値PCを用いている。
図2は、図1に示す太陽光発電システムPVS1の出力抑制制御に関する制御系の機能構成を示している。なお、図2においては、太陽電池SPiの図示を省略している。当該出力抑制制御に関する制御系として、図2に示すように、各パワーコンディショナPCSiは、受信部11、目標電力算出部12、および、出力制御部13を含んでいる。また、集中管理装置MC1は、目標電力設定部21、連系点電力検出部22、指標算出部23、および、送信部24を含んでいる。
受信部11は、集中管理装置MC1から送信される抑制指標prを受信する。受信部11は、例えば無線通信により、集中管理装置MC1から抑制指標prを受信する。なお、無線通信ではなく、有線通信であってもよい。
目標電力算出部12は、受信部11が受信した抑制指標prに基づき、自装置(パワーコンディショナPCS
i)の個別目標電力P
i refを算出する。具体的には、目標電力算出部12は、下記(8)式に示す制約付き最適化問題を解くことで、個別目標電力P
i refを算出する。当該(8)式において、P
i lmtは、各パワーコンディショナPCS
iの定格出力(出力限界)を表わし、w
iは、パワーコンディショナPCS
iの有効電力抑制に関する重みを表わしている。この有効電力抑制に関する重みw
iは、目標電力算出部12に記憶されている。また、有効電力抑制に関する重みw
iは、ユーザが手動で設定することができる。あるいは、各パワーコンディショナPCS
iが、パワーコンディショナPCS
iの状況(温度、気候、無効電力量など)に応じて、自動的に設定するようにしてもよい。なお、この下記(8)式についての詳細は、後述する。
出力制御部13は、上記インバータ回路を制御して、個別出力電力Pi outを制御する。出力制御部13は、個別出力電力Pi outを、目標電力算出部12が算出した個別目標電力Pi refにする。
目標電力設定部21は、連系点電力P(t)の目標値を設定する。本実施形態においては、目標電力設定部21は、出力抑制制御における目標電力を設定する。具体的には、目標電力設定部21は、電力会社から指令される上記出力指令値PCを取得し、当該出力指令値PCを目標電力として設定する。目標電力設定部21は、例えば、無線通信により電力会社から出力指令値PCを取得する。なお、出力指令値PCを電力会社から直接取得するものに限定されない。例えば、管理者が所定のコンピュータに電力会社から指令される出力指令値PCを手入力で入力し、目標電力設定部21が前記コンピュータから出力指令値PCを取得する構成であってもよい。あるいは、他の通信装置を中継して、電力会社から指令される出力指令値PCを取得する構成であってもよい。目標電力設定部21は、設定した目標電力(出力指令値PC)を指標算出部23に出力する。
目標電力設定部21は、電力会社からの出力抑制の指令がないとき、指標算出部23に指令がないことを伝達する。「電力会社からの出力抑制の指令がないとき」とは、太陽光発電システムPVS1の出力を抑制せず、太陽電池SPiが発電した電力を最大限に出力できるときである。例えば、各パワーコンディショナPCSiが最大電力点追従制御により最大電力点で動作するときに、最大限に出力できる。本実施形態においては、目標電力設定部21は、電力会社からの出力抑制の指令がないとき、目標電力として、数値−1を指標算出部23に出力する。なお、指標算出部23に指令がないことを伝達することができれば、その手法は限定されない。例えば、目標電力設定部21は、出力抑制の指令の有無を示すフラグ情報を電力会社等から取得し、これを指標算出部23に伝達するようにしてもよい。当該フラグ情報は、例えば、出力抑制の指令がない場合「0」であり、出力抑制の指令がある場合「1」である。なお、出力抑制の指令がある場合(フラグ情報が「1」の場合)には、当該フラグ情報とともに出力指令値PCを取得する。
本実施形態においては、目標電力設定部21が出力指令値PCを取得する場合を例に説明するが、これに限定されない。具体的には、出力指令値PCの代わりに出力抑制率[%]の情報を取得するようにしてもよい。このとき、目標電力設定部21は、取得した出力抑制率[%]と太陽光発電システムPVS1全体の定格出力(すなわち、各パワーコンディショナPCSiの定格出力の合計)ΣiPi lmtとに基づき、出力指令値PCを算出する。例えば、目標電力設定部21は、出力抑制率として20%である指令を取得したとき、太陽光発電システムPVS1の定格出力ΣiPi lmtの80%(=100−20)を出力指令値PCとして算出する。そして、算出した出力指令値PCを目標電力として指標算出部23に出力する。
連系点電力検出部22は、連系点電力P(t)を検出する。そして、検出した連系点電力P(t)を指標算出部23に出力する。なお、連系点電力検出部22を、集中管理装置MC1とは別の検出装置として構成してもよい。この場合、当該検出装置(連系点電力検出部22)が、無線通信または有線通信により、連系点電力P(t)の検出値を集中管理装置MC1に送信する。
指標算出部23は、連系点電力P(t)を目標電力にするための指標を算出する。本実施形態においては、目標電力として出力指令値P
Cが入力されるので、指標算出部23は、連系点電力P(t)を出力指令値P
Cにするための抑制指標prを算出する。指標算出部23は、ラグランジュ乗数をλ、勾配係数をε、時間をtとして、下記(9)式および下記(10)式に基づき、抑制指標prを算出する。ただし、指標算出部23は、出力指令値P
Cとして、電力会社からの出力抑制の指令がないことを表わす数値−1を入力された場合、ラグランジュ乗数λを「0」とする。すなわち、抑制指標prを「0」と算出する。なお、下記(9)式において、個別出力電力P
i outおよび出力指令値P
Cが、時間tに対して変化する値であるため、それぞれ個別出力電力をP
i out(t)、出力指令値をP
C(t)と記載している。これらの下記(9)式および下記(10)式の詳細は、後述する。
送信部24は、指標算出部23が算出した抑制指標prを各パワーコンディショナPCSiに送信する。
次に、太陽光発電システムPVS1が行う出力抑制制御において、パワーコンディショナPCSiによる個別目標電力Pi refの算出に上記(8)式が用いられる理由と、集中管理装置MC1による抑制指標prの算出に上記(9)式および上記(10)式が用いられる理由とを説明する。
太陽光発電システムPVS1は、出力抑制制御において、以下の3つの目標を達成するように構成されている。1つ目の目標(目標1−1)は、「各パワーコンディショナPCSiが分散的に個別目標電力を算出する」ことである。2つ目の目標(目標1−2)は、「太陽光発電システムPVS1の連系点における出力電力(連系点電力)を電力会社からの出力指令値(目標電力)に一致させる」ことである。そして、3つ目の目標(目標1−3)は、「パワーコンディショナPCSi毎に、出力抑制量を調整できるようにする」ことである。なお、出力抑制量とは、パワーコンディショナPCSiが出力可能な最大電力値と個別出力電力Pi outとの差である。前記出力可能な最大電力値は、太陽電池SPiの発電量Pi SP>定格出力Pi lmtの場合には、パワーコンディショナPCSiの定格出力Pi lmtである。一方、太陽電池SPiの発電量Pi SP≦定格出力Pi lmtの場合には、太陽電池SPiの発電量Pi SPである。
まず、集中管理装置MC1が、集中的に個別目標電力P
i refを求める場合の制約付き最適化問題を考える。そうすると、下記(11)式が得られる。ここで、上記するように、P
i refは、各パワーコンディショナPCS
iの個別目標電力を表わし、P
i lmtは、各パワーコンディショナPCS
iの定格出力(出力限界)を表わし、P
Cは、電力会社から指令される出力指令値を表わしている。なお、下記(11)式の最適解である個別目標電力P
i refを(P
i ref)
*とする。下記(11)式において、(11a)式は、個別出力電力P
i outの出力抑制量の最小化、(11b)式は、定格出力P
i lmtによる制約、(11c)式は、連系点電力P(t)を出力指令値P
Cに一致させることをそれぞれ表わしている。
これは、集中管理装置MC1が、上記(11)式から個別目標電力(Pi ref)*を求める場合を示している。したがって、上記(11)式の場合、各パワーコンディショナPCSiが分散的に個別目標電力(Pi ref)*を算出していないため、目標1−1を達成していない。
続いて、各パワーコンディショナPCS
iが分散的に個別目標電力P
i refを求める場合の制約付き最適化問題を考える。そうすると、下記(12)式が得られる。
しかし、上記(12)式の最適解である個別目標電力は、各パワーコンディショナPCSiが分散的に求めた個別目標電力Pi refであるが、上記(11c)式が考慮されていない。したがって、連系点電力P(t)を電力会社からの出力指令値PCに一致させる目標1−2を達成できない。
そこで、次の手法により、目標1−2を達成させることを考える。すなわち、各パワーコンディショナPCSiが、集中管理装置MC1から受信する抑制指標prに基づき、分散的に個別目標電力Pi refを算出する。これにより、目標1−2を達成させる。各パワーコンディショナPCSiが、抑制指標prを用いて、分散的に個別目標電力Pi refを求める場合の制約付き最適化問題は、上記(8)式で表わすことができる。なお、上記(8)式の最適解である個別目標電力Pi refを(Pi ref)♭とする。
ここで、上記(11)式により得られる最適解(P
i ref)
*と、上記(8)式により得られる最適解(P
i ref)
♭とが一致することで、連系点電力P(t)を電力会社からの出力指令値P
Cに一致させることができる。すなわち、各パワーコンディショナPCS
iが分散的に最適化問題を解いた場合であっても、目標1−2を達成することができる。したがって、定常状態の最適性に着目し、(P
i ref)
*=(P
i ref)
♭となる抑制指標prを考える。そのために、上記(11)式および上記(8)式のKKT(Karush-Kuhn-Tucker)条件を考える。これにより、上記(11)式のKKT条件から下記(13)式が得られ、上記(8)式のKKT条件から下記(14)式が得られる。なお、μは所定のラグランジュ乗数である。
これら上記(13)式および上記(14)式から、pr=λ(上記(10)式)とすることで、2つの最適解(Pi ref)*、(Pi ref)♭が一致することが分かる。したがって、集中管理装置MC1がラグランジュ乗数λを算出し、算出したラグランジュ乗数λを抑制指標prとして、各パワーコンディショナPCSiに提示(送信)することで、各パワーコンディショナPCSiがそれぞれ、上記(8)式から個別目標電力(Pi ref)♭を算出することができる。これにより、各パワーコンディショナPCSiが分散的に個別目標電力Pi refを求めた場合であっても、連系点電力P(t)と電力会社からの出力指令値PCとを一致させることができる。すなわち、目標1−2を達成できる。
続いて、集中管理装置MC1によるラグランジュ乗数λの算出方法について、説明する。集中管理装置MC1がラグランジュ乗数λを求めるために、まず、h
1,i=−P
i ref、h
2,i=P
i ref−P
i lmtとし、各パワーコンディショナPCS
iの不等式制約をまとめてh
j,i(j=1,2、i=1,・・・,n)とする。そして、上記(11)式の双対問題である下記(15)式を考える。
ここで、各パワーコンディショナPCS
iによって求められる最適解(P
i ref)
♭が決定されると仮定すると、下記(16)式となり、ラグランジュ乗数λに対する最大化問題の形となる。この下記(16)式に対し勾配法を適用すると、下記(17)式となる。なお、εは勾配係数を表わし、τは時間変数を表わす。
上記(17)式において、(Pi ref)♭を対応する各パワーコンディショナPCSiの個別出力電力Pi outで置き換える。さらに、集中管理装置MC1は、各パワーコンディショナPCSiの個別出力電力Pi outを個別に観測せず、連系点電力P(t)=ΣiPi outを観測する。また、電力会社から逐次出力指令値PCを取得しているとする。そうすると、上記(9)式が得られる。よって、集中管理装置MC1は、連系点電力P(t)と電力会社からの出力指令値PCとに基づき、ラグランジュ乗数λを算出できる。そして、上記(10)式に基づき、算出したラグランジュ乗数λを抑制指標prとする。
以上のことから、本実施形態においては、各パワーコンディショナPCSiは、個別目標電力Pi refを算出するときに、上記(8)式に示す最適化問題を用いている。また、集中管理装置MC1は、抑制指標prを算出するために、上記(9)式および上記(10)式を用いている。
次に、上記のように構成された太陽光発電システムPVS1において、上記3つの目標を達成し、適切に動作していることをシミュレーションによって検証した。
シミュレーションでは、10台のパワーコンディショナPCSi(i=1〜10;PCS1〜PCS10)を有する太陽光発電システムPVS1を想定した。
電力系統A(連系点電圧)のモデルは、下記(18)式とした。下記(18)式において、R=R
L×L,X=X
L×Lであり、R
Lは配電線の単位長さ当たりの抵抗成分、X
Lは配電線の単位長さ当たりのリアクタンス成分、Lは配電線の長さ、V
1は上位系統電圧を表わしている。本シミュレーションにおいては、上位系統電圧V
1を6600[V]、配線線の単位長さ当たりの抵抗成分R
Lを0.220[Ω/km]、配電線の単位長さ当たりのリアクタンス成分X
Lを0.276[Ω/km]、配電線の長さLを5[km]とした。
パワーコンディショナPCSiは、図3に示すモデルのものを想定し、個別出力電力Pi outを個別目標電力Pi refに制御するために、PI制御を行っているものとした。パワーコンディショナPCSiの電流制御系は、有効・無効電力制御系に比べ、非常に高速に応答するように設計されている。ここでは、事前に適切な制御系設計がなされているとし、K=1,T=10-4の1次遅れ系で実現している。電流制御系の上位制御系となる電力制御系は、ステップ応答が1[s]以内に収束する程度の時定数を想定し、KPP=KPQ=1.0×10-7、KIP=KIQ=1.2×10-3としている。なお、KPPは有効電力の比例ゲイン、KPQは無効電力の比例ゲイン、KIPは有効電力の積分ゲイン、KIQは無効電力の積分ゲインを表わしている。有効・無効電力制御系のステップ応答を図4に示す。
図5〜図11は、上記に示したモデルの太陽光発電システムPVS1を用いて、複数の条件下でシミュレーションを行ったときの結果を示している。なお、各パワーコンディショナPCSiは、接続される太陽電池SPiの発電量Pi SPが定格出力Pi lmtより大きい場合には、パワーコンディショナPCSiの定格出力Pi lmtに抑制するものとする。
ケース1として、10台のパワーコンディショナPCS1〜PCS10がすべて同じ条件である場合を、シミュレーションした。当該シミュレーションをシミュレーション1−1とする。シミュレーション1−1において、10台のパワーコンディショナPCS1〜PCS10はすべて、定格出力Pi lmtが500[kW]、有効電力抑制に関する重みwiが1.0、太陽電池SPiの発電量Pi SPが600[kW]であるとした。また、電力会社からの出力指令値PCは、0≦t<60[s]では指令がなく、60≦t[s]では3000[kW]であるとした。なお、「出力指令値PCの指令がない」ときには、上記するように出力指令値PCとして、指令がないことを表わす数値−1を用いた。その他、勾配係数εを0.025、集中管理装置MC1が行う抑制指標prの更新と各パワーコンディショナPCSiが行う個別目標電力Pi refの更新との各サンプリング時間を1[s]とした。また、各パワーコンディショナPCSiはすべて、力率1(無効電力目標値=0[kvar])で運転しているものとした。図5は、シミュレーション1−1におけるシミュレーション結果を示している。
図5(a)〜(e)は、各パワーコンディショナPCSiの、太陽電池SPiの発電量Pi SP(一点鎖線)、定格出力Pi lmt(実線)、個別目標電力Pi ref(破線)、および、個別出力電力Pi out(実線)を示している。図5(a)は、パワーコンディショナPCS1,PCS2について、図5(b)は、パワーコンディショナPCS3,PCS4について、図5(c)は、パワーコンディショナPCS5,PCS6について、図5(d)は、パワーコンディショナPCS7,PCS8について、図5(e)は、パワーコンディショナPCS9,PCS10について、図示している。なお、図5(a)〜(e)において、理解の便宜上、個別目標電力Pi ref(破線)を少し上方にずらして記載している。図5(f)は、各パワーコンディショナPCS1〜PCS10の個別出力電力P1 out〜P10 outを1つのグラフに示したものである。図5(g)は、連系点電力P(t)(実線)および電力会社からの出力指令値PC(破線)を示している。なお、図5(g)において、理解の便宜上、出力指令値PCの指令がない場合、各パワーコンディショナのPCS1〜PCS10の定格出力P1 lmt〜P10 lmtの合計値を出力指令値PCとして記載している。図5(h)は、指標算出部23が算出するラグランジュ乗数λを示している。そして、図5(i)は、指標算出部23が算出する抑制指標prを示している。
図5から次のことが確認できる。すなわち、シミュレーション開始から出力抑制指令があるまでの期間(0≦t<60[s])では、図5(a)〜(e)が示すように、各パワーコンディショナPCS1〜PCS10の個別出力電力P1 out〜P10 outが、個別目標電力P1 ref〜P10 refの500[kW]に達するまで、太陽電池SPiの発電量P1 SP〜P10 SPに応じて上昇している。そして、個別目標電力P1 ref〜P10 refの500[kW]に達すると、それ以後、個別出力電力P1 out〜P10 outは、個別目標電力P1 ref〜P10 refの500[kW]に制御されていることが確認できる。また、出力指令値PCの指令後(60≦t[s])では、図5(h)および図5(i)が示すように、ラグランジュ乗数λおよび抑制指標prが更新されていることが確認できる。そして、各パワーコンディショナPCS1〜PCS10は、この抑制指標prの更新に基づき、図5(a)〜(e)が示すように、個別目標電力P1 ref〜P10 refを変更している。よって、個別出力電力P1 out〜P10 outが抑制され、個別目標電力P1 ref〜P10 refに追従していることが確認できる。これにより、図5(g)が示すように、連系点電力P(t)が抑制され、定常状態で出力指令値PCに一致していることが確認できる。
ケース2として、10台のパワーコンディショナPCS1〜PCS10のうち2台のパワーコンディショナPCS5,PCS6に設定される有効電力抑制に関する重みw5,w6が他のパワーコンディショナPCS1〜PCS4,PCS7〜PCS10のそれと異なる場合を、シミュレーションした。当該シミュレーションをシミュレーション1−2とする。シミュレーション1−2において、2台のパワーコンディショナPCS5,PCS6の有効電力抑制に関する重みwiを2.0とした。その他の条件は、上記シミュレーション1−1と同じである。図6は、シミュレーション1−2におけるシミュレーション結果を示している。なお、図6(a)〜(i)はそれぞれ、上記シミュレーション1−1における図5(a)〜(i)に対応した図である。
図6から次のことが確認できる。すなわち、図6(a)〜(e)が示すように、図5に示すシミュレーション1−1と比較し、有効電力抑制に関する重みwiを変えたパワーコンディショナPCS5,PCS6の出力抑制量が、その他のパワーコンディショナPCS1〜PCS4,PCS7〜PCS10の出力抑制量の半分になっていることが確認できる。このとき、図6(h)および図6(i)が示すように、集中管理装置MC1が算出するラグランジュ乗数λおよび抑制指標prも上記シミュレーション1−1における値(図5(h)および図5(i)参照)と異なっていることも確認できる。したがって、有効電力抑制に関する重みwiを調整することによって、出力抑制量に差を持たせることが可能である。さらに、図6が示すように、パワーコンディショナPCS5,PCS6の出力抑制量を小さくした分、その他のパワーコンディショナPCS1〜PCS4,PCS7〜PCS10の出力抑制量を上記シミュレーション1−1の場合よりも大きくすることで、図6(g)に示すように、連系点電力P(t)が、定常状態で出力指令値PCに一致していることが確認できる。したがって、太陽光発電システムPVS1は、パワーコンディショナPCSiに設定された有効電力抑制に関する重みwiを考慮して、適切に動作を行っているといえる。
ケース3として、10台のパワーコンディショナPCS1〜PCS10のうち2台のパワーコンディショナPCS5,PCS6の有効電力抑制に関する重みw5,w6を途中で変化させた場合を、シミュレーションした。当該シミュレーションをシミュレーション1−3とする。シミュレーション1−3において、2台のパワーコンディショナPCS5,PCS6の有効電力抑制に関する重みw5,w6を、開始時点(0[s])では、w5=w6=1.0とし、120[s]経過後に、w5=w6=2.0に変化させた。すなわち、60≦t<120[s]では、上記シミュレーション1−1のように各パワーコンディショナPCS1〜PCS10の有効電力抑制に関する重みw1〜w10はすべて1.0であるが、120≦t[s]では、上記シミュレーション1−2のようにパワーコンディショナPCS5,PCS6の有効電力抑制に関する重みw5,w6を2.0に変化させた。その他の条件は、上記シミュレーション1−1と同じである。図7は、シミュレーション1−3におけるシミュレーション結果を示している。なお、図7(a)〜(i)はそれぞれ、上記シミュレーション1−1における図5(a)〜(i)に対応した図である。
図7から次のことが確認できる。すなわち、パワーコンディショナPCS5,PCS6の有効電力抑制に関する重みw5,w6を2.0に変化させる前(60≦t<120[s])では、上記シミュレーション1−1と同じ結果であり、パワーコンディショナPCS5,PCS6の有効電力抑制に関する重みw5,w6を2.0に変化させた後(120≦t[s])では、上記シミュレーション1−2と同じ結果となっていることが確認できる。したがって、このように有効電力抑制に関する重みwiを途中で調整(変更)しても、継続して、連系点電力P(t)を出力指令値PCに一致させることが可能である。
ケース4として、2台のパワーコンディショナ毎(PCS1とPCS2,PCS3とPCS4,PCS5とPCS6,PCS7とPCS8,PCS9とPCS10)に、太陽電池SPiの発電量Pi SPが異なる場合を、シミュレーションした。当該シミュレーションをシミュレーション1−4とする。シミュレーション1−4において、2台のパワーコンディショナ毎(PCS1とPCS2,PCS3とPCS4,PCS5とPCS6,PCS7とPCS8,PCS9とPCS10)の太陽電池SPiの発電量Pi SPをそれぞれ、P1 SP,P2 SP=600[kW]、P3 SP,P4 SP=500[kW]、P5 SP,P6 SP=400[kW]、P7 SP,P8 SP=300[kW]、P9 SP,P10 SP=200[kW]とした。その他の条件は、上記シミュレーション1−1と同じである。図8は、シミュレーション1−4におけるシミュレーション結果を示している。なお、図8(a)〜(i)はそれぞれ、上記シミュレーション1−1における図5(a)〜(i)に対応した図である。
図8から次のことが確認できる。すなわち、図8(a)〜(e)が示すように、個別目標電力Pi refが太陽電池SPiの発電量Pi SP以上である場合、出力抑制を行っていないことが確認できる。また、図8(f)が示すように、定格出力Pi lmtが同一のパワーコンディショナPCS1〜PCS10で太陽電池SPiの発電量Pi SPが異なる場合、太陽電池SPiの発電量Pi SPの少ないパワーコンディショナPCS7〜PCS10は出力抑制を行っていないことが確認できる。さらに、図8(g)が示すように、連系点電力P(t)が抑制され、定常状態で出力指令値PCに一致していることが確認できる。したがって、太陽光発電システムPVS1は、太陽電池SPiの発電量Pi SPを考慮して、適切に動作を行っているといえる。
ケース5として、2台のパワーコンディショナ毎(PCS1とPCS2,PCS3とPCS4,PCS5とPCS6,PCS7とPCS8,PCS9とPCS10)に、定格出力Pi lmtが異なる場合を、シミュレーションした。当該シミュレーションをシミュレーション1−5とする。シミュレーション1−5において、2台のパワーコンディショナ毎(PCS1とPCS2,PCS3とPCS4,PCS5とPCS6,PCS7とPCS8,PCS9とPCS10)の定格出力Pi lmtをそれぞれ、P1 lmt,P2 lmt=500[kW]、P3 lmt,P4 lmt=400[kW]、P5 lmt,P6 lmt=300[kW]、P7 lmt,P8 lmt=200[kW]、P9 lmt,P10 lmt=100[kW]とした。また、電力会社からの出力指令値PCとして、0≦t<60[s]では指令がなく、60≦t[s]では2000[kW]とし、太陽電池SPiの発電量Pi SPをそれぞれ、定格出力Pi lmt+100[kW]とした。その他の条件は、上記シミュレーション1−1と同じである。図9は、シミュレーション1−5におけるシミュレーション結果を示している。なお、図9(a)〜(i)はそれぞれ、上記シミュレーション1−1における図5(a)〜(i)に対応した図である。
図9から次のことが確認できる。すなわち、図9(f)が示すように、定格出力Pi lmtが異なる場合、出力抑制量は、各パワーコンディショナPCS1〜PCS10で等しいことが確認できる。また、図9(g)が示すように連系点電力P(t)が抑制され、定常状態で出力指令値PCに一致していることが確認できる。したがって、太陽光発電システムPVS1は、パワーコンディショナPCSiの定格出力Pi lmtを考慮して、適切に動作を行っているといえる。
ケース6として、上記サンプリング時間を長くした場合を、シミュレーションした。当該シミュレーションをシミュレーション1−6とする。シミュレーション1−6において、上記サンプリング時間を60[s]=1[min]とした。また、勾配係数εを0.0005とし、電力会社からの出力指令値PCとして、0≦t<5[min]では指令がなく、5≦t[min]では3000[kW]とした。その他の条件は、上記シミュレーション1−1と同じである。図10は、シミュレーション1−6におけるシミュレーション結果を示している。なお、図10(a)〜(i)はそれぞれ、上記シミュレーション1−1における図5(a)〜(i)に対応した図である。
図10から次のことが確認できる。すなわち、図10(g)が示すように、上記サンプリング時間を長くした場合、連系点電力P(t)が出力指令値PCに追従するための時間が上記シミュレーション1−1より長くなるものの、連系点電力P(t)が抑制され、定常状態で出力指令値PCに一致していることが確認できる。
ケース7として、上記サンプリング時間を上記ケース6におけるサンプリング時間よりもさらに長くした場合を、シミュレーションした。当該シミュレーションをシミュレーション1−7とする。シミュレーション1−7において、上記サンプリング時間を180[s]=3[min]とした。また、勾配係数εを0.0003とし、電力会社からの出力指令値PCとして、0≦t<5[min]では指令がなく、5≦t[min]では3000[kW]とした。その他の条件は、上記シミュレーション1−1と同じである。図11は、シミュレーション1−7におけるシミュレーション結果を示している。なお、図11(a)〜(i)はそれぞれ、上記シミュレーション1−1における図5(a)〜(i)に対応した図である。
図11から次のことが確認できる。すなわち、図11(g)が示すように、サンプリング時間を上記シミュレーション1−6よりも長くした場合においても、連系点電力P(t)が抑制され、定常状態で出力指令値PCに一致していることが確認できる。
上記図5〜図11毎の結果に加え、図5〜図11を対比することで、次のことが確認できる。すなわち、各図の(h)および(i)が示すように、ラグランジュ乗数λおよび抑制指標prは、パワーコンディショナPCS1〜PCS10の、太陽電池SPiの発電量Pi SP、定格出力Pi lmt、有効電力抑制に関する重みwi、および、出力指令値PCなどに基づき、異なる値が算出されていることが確認できる。また、各図の(a)〜(e)が示すように、抑制指標prの更新に応じて、個別目標電力Pi refが更新されていることを確認できる。そして、パワーコンディショナPCS1〜PCS10は、この個別目標電力Pi refに応じて、個別出力電力Pi outを制御している。よって、各図の(g)が示すように、連系点電力P(t)を出力指令値PCに一致させていることが確認できる。以上のことから、上記(9)式および上記(10)式を用いて集中管理装置MC1が算出した抑制指標prが適切な値であるといえる。
上記シミュレーション1−1ないしシミュレーション1−7の結果から、太陽光発電システムPVS1において、各パワーコンディショナPCSiがそれぞれ、集中管理装置MC1から受信する抑制指標prに基づき、分散的に個別目標電力Pi refを算出している。よって、上記目標1−1を達成している。また、連系点電力P(t)が抑制され、出力指令値PCに一致している。よって、上記目標1−2を達成している。そして、各種条件に応じて、パワーコンディショナPCSi毎に個別出力電力Pi outが変化している。すなわち、各種条件に応じて、パワーコンディショナPCSi毎に出力抑制量が変化している。よって、上記目標1−3を達成している。以上のことから、太陽光発電システムPVS1は、上記3つの目標を達成していることが分かる。
以上で説明したように、第1実施形態に係る太陽光発電システムPVS1において、集中管理装置MC1は、電力会社からの出力指令値PCおよび検出した連系点電力P(t)から、上記(9)式および上記(10)式を用いて、抑制指標prを算出し、これを各パワーコンディショナPCSiに送信している。また、各パワーコンディショナPCSiは、受信した抑制指標prに基づき、分散的に上記(8)式の最適化問題を解くことで、個別目標電力Pi refを算出し、そして、個別出力電力Pi outを個別目標電力Pi refに制御している。これにより、集中管理装置MC1は、上記(9)式および上記(10)式に示す簡単な計算だけとなる。したがって、太陽光発電システムPVS1において、集中管理装置MC1の処理負荷を低減させることができる。また、各パワーコンディショナPCSiが、抑制指標prに基づき分散的に個別目標電力Pi refを算出し、個別出力電力Pi outを制御する場合であっても、連系点電力P(t)を電力会社からの出力指令値PCに一致させることができる。すなわち、太陽光発電システムPVS1は、連系点電力P(t)を目標電力に一致させることができる。
次に、第2実施形態に係る太陽光発電システムPVS2について説明する。なお、上記第1実施形態に係る太陽光発電システムPVS1と同一あるいは類似のものについては、同じ符号を付してその説明を省略する。図12は、太陽光発電システムPVS2の全体構成を示している。図12に示すように、太陽光発電システムPVS2は、複数台の太陽電池SPi(i=1,2,・・・,n;nは正の整数)、複数台のパワーコンディショナPCSPVi、複数台の蓄電池Bk(k=1,2,・・・,m;mは正の整数)、複数台のパワーコンディショナPCSBk、および、集中管理装置MC2を有して構成される。太陽光発電システムPVS2は、系統連系型の逆潮流システムである。
上記第1実施形態に係る太陽光発電システムPVS1においては、太陽電池SPiを接続した複数台のパワーコンディショナPCSiで構成された場合を例に説明した。しかし、このような太陽光発電システムPVS1の場合、天候変動による出力への影響が大きい。そこで、太陽光発電システムPVS2は、天候変動などによる出力変動を抑制させるために、上記太陽光発電システムPVS1と比較して、蓄電池Bkを接続したパワーコンディショナPCSBkをさらに備えている。
複数台のパワーコンディショナPCSPViはそれぞれ、上記第1実施形態のパワーコンディショナPCSiと同様に構成される。すなわち、各パワーコンディショナPCSPViは、太陽電池SPiが発電した電力(直流電力)を交流電力に変換し、変換した交流電力を電力系統Aに出力する。
複数台の蓄電池Bkはそれぞれ、繰り返し、充電により電力を蓄えることができる電池である。蓄電池Bkは、例えば、リチウムイオン電池、ニッケル水素電池、ニッケルカドミウム電池、鉛蓄電池などの二次電池である。また、電気二重層コンデンサなどのコンデンサを用いてもよい。蓄電池Bkは、蓄積された電力を放電して、直流電力をパワーコンディショナPCSBkに供給する。
複数台のパワーコンディショナPCSBkはそれぞれ、蓄電池Bkから入力される直流電力を交流電力に変換して出力するものである。さらに、各パワーコンディショナPCSBkは、電力系統Aや各パワーコンディショナPCSPViから入力される交流電力を直流電力へ変換し、蓄電池Bkに供給する。すなわち、蓄電池Bkを充電する。各パワーコンディショナPCSBkは、蓄電池Bkの充電および放電を制御している。したがって、蓄電池Bkの充電を行う充電回路および蓄電池Bkの放電を行う放電回路として機能する。
各パワーコンディショナPCSPViから出力される有効電力をPPVi out、無効電力をQPVi outとすると、各パワーコンディショナPCSPViからPPVi out+jQPVi outの複素電力が出力されている。また、各パワーコンディショナPCSBkから出力される有効電力をPBk out、無効電力をQBk outとすると、各パワーコンディショナPCSBkからPBk out+jQBk outの複素電力が出力されている。したがって、複数台のパワーコンディショナPCSPVi,PCSBkと電力系統Aとの連系点には、(ΣiPPVi out+ΣkPBk out)+j(ΣiQPVi out+ΣkQBk out)の複素電力が出力されている。すなわち、連系点電力P(t)は、各パワーコンディショナPCSPVi,PCSBkの出力電力の総和である。なお、本実施形態においても、連系点における電圧変動抑制などに主に活用される無効電力QPVi out,QBk outの出力制御については、特に考慮しない。すなわち、連系点電力P(t)は、連系点における有効電力PPVi out,PBk outの総和(ΣiPPVi out+ΣkPBk out)としている。よって、各パワーコンディショナPCSPVi,PCSBkが制御する個別出力電力は、それぞれ有効電力PPVi out,PBk outとなる。そこで、各パワーコンディショナPCSPViの個別出力電力をPPVi outとし、各パワーコンディショナPCSBkの個別出力電力をPBk outとする。
集中管理装置MC2は、複数台のパワーコンディショナPCSPVi,PCSBkを集中管理する。集中管理装置MC2は、例えば無線通信により、各パワーコンディショナPCSPVi,PCSBkとの間で、各種情報の送受信を行う。なお、無線通信ではなく、有線通信であってもよい。
このように構成された太陽光発電システムPVS2において、集中管理装置MC2は、所定の調整対象電力を監視し、当該調整対象電力と調整対象電力の目標値である目標電力とに基づいて、調整対象電力を目標電力に一致させるための指標を算出する。そして、これを各パワーコンディショナPCSPVi,PCSBkに送信する。各パワーコンディショナPCSPVi(PCSBk)はそれぞれ、集中管理装置MC2から指標を受信し、受信した指標に基づいて、個別出力電力PPVi out(PBk out)の目標値である個別目標電力PPVi ref(PBk ref)を算出する。そして、算出した個別目標電力PPVi ref(PBk ref)に基づいて、個別出力電力PPVi out(PBk out)を制御する。当該指標は、調整対象電力を目標電力にするための情報であり、個別目標電力PPVi ref(PBk ref)を算出するための情報である。
太陽光発電システムPVS2においても、電力会社から出力電力の抑制が指示されるものとする。そこで、本実施形態に係る太陽光発電システムPVS2は、上記指標を用いて各パワーコンディショナPCSPVi,PCSBkが分散的に制御して、太陽光発電システムPVS2全体の出力電力を出力指令値PCに一致させている。すなわち、太陽光発電システムPVS2も出力抑制制御を行っている。具体的には、太陽光発電システムPVS2において、集中管理装置MC2は、連系点電力P(t)を監視し、連系点電力P(t)と出力指令値PCとに基づいて、連系点電力P(t)を出力指令値PCに一致させるための指標を算出する。そして、これを各パワーコンディショナPCSPVi,PCSBkに送信する。本実施形態に係る出力抑制制御において、各パワーコンディショナPCSPViに送信する指標を抑制指標prPVとし、各パワーコンディショナPCSBkに送信する指標を充放電指標prBとする。よって、抑制指標prPVは、連系点電力P(t)を出力指令値PCにするための情報であり、個別目標電力PPVi refを算出するための情報である。また、充放電指標prBは、連系点電力P(t)を出力指令値PCにするための情報であり、個別目標電力PBk refを算出するための情報である。さらに、蓄電池Bkをどれくらい充電するか放電するかを決定するための情報でもある。各パワーコンディショナPCSPViは、集中管理装置MC2から受信する抑制指標prPVに基づき、個別目標電力PPVi refを算出する。そして、算出した個別目標電力PPVi refに基づいて、個別出力電力PPVi outを制御する。各パワーコンディショナPCSBkは、集中管理装置MC2から受信する充放電指標prBに基づき、個別目標電力PBk refを算出する。そして、算出した個別目標電力PBk refに基づいて、個別出力電力PBk outを制御する。これにより、連系点電力P(t)を出力指令値PCに一致させている。
図13は、図12に示す太陽光発電システムPVS2の出力抑制制御に関する制御系の機能構成を示している。なお、図13において、太陽電池SPiおよび蓄電池Bkの図示を省略している。当該出力抑制制御に関する制御系として、図13に示すように、各パワーコンディショナPCSPViは、受信部11、目標電力算出部12’、および、出力制御部13を含んでいる。また、各パワーコンディショナPCSBkは、受信部31、目標電力算出部32、および、出力制御部33を含んでいる。そして、集中管理装置MC2は、目標電力設定部21、連系点電力検出部22、指標算出部23’、および、送信部24’を含んでいる。
目標電力算出部12’は、受信部11が受信した抑制指標pr
PVに基づき、自装置(パワーコンディショナPCS
PVi)の個別目標電力P
PVi refを算出する。具体的には、目標電力算出部12’は、下記(19)式に示す制約付き最適化問題を解くことで、個別目標電力P
PVi refを算出する。したがって、目標電力算出部12’は、第1実施形態に係る目標電力算出部12と比較し、個別目標電力P
PVi refを算出するための最適化問題の演算式が異なっている。当該(19)式において、w
PViは、パワーコンディショナPCS
PViの有効電力抑制に関する重みを表わしており、設計値である。また、P
φiは、パワーコンディショナPCS
PViの個別出力電力P
PVi outの抑制を優先するか否かを示す設計パラメータ(以下、「優先度パラメータ」という。)を示しており、設計値である。当該優先度パラメータP
φiを小さくすると、蓄電池B
kの充電量を少なくし、個別出力電力P
PVi outが抑制され易くなる。一方、当該優先度パラメータP
φiを大きくすると、蓄電池B
kの充電量を多くし、個別出力電力P
PVi outが抑制され難くなる。よって、優先度パラメータP
φiは、蓄電池B
kの充電を優先するか否かを示す設計パラメータであるとも言える。さらに、この優先度パラメータP
φiによって、パワーコンディショナPCS
PViの定格出力による出力限界とは別に、パワーコンディショナPCS
PViの個別出力電力P
PVi outの疑似的な出力限界が設定されていると考えられる。そのため、優先度パラメータP
φiは、疑似有効出力限界とも言える。上記重みw
PViおよび上記優先度パラメータP
φiはユーザが設定可能である。この下記(19)式についての詳細は、後述する。
受信部31は、上記第1実施形態に係る受信部11と同様に構成され、集中管理装置MC2から送信される充放電指標prBを受信する。
目標電力算出部32は、受信部31が受信した充放電指標pr
Bに基づき、自装置(パワーコンディショナPCS
Bk)の個別目標電力P
Bk refを算出する。具体的には、目標電力算出部32は、下記(20)式に示す最適化問題を解くことで、個別目標電力P
Bk refを算出する。当該(20)式において、P
Bk lmtは、各パワーコンディショナPCS
Bkの定格出力(出力限界)を表わしている。w
Bkは、パワーコンディショナPCS
Bkの有効電力に関する重みを表わしている。上記重みw
Bkは、ユーザが設定可能である。また、α
k,β
kは、蓄電池B
kの残量によって調整できる調整パラメータを表わしている。なお、この下記(20)式についての詳細は、後述する。
出力制御部33は、上記第1実施形態に係る出力制御部13と同様に構成される。出力制御部33は、蓄電池Bkの放電および充電を制御することで、個別出力電力PBk outを、目標電力算出部32が算出した個別目標電力PBk refにする。具体的には、目標電力算出部32によって算出された個別目標電力PBk refが正の値の場合、蓄電池Bkに蓄積された電力(直流電力)を交流電力に変換し、電力系統Aに供給する。すなわち、パワーコンディショナPCSBkを放電回路として機能させる。一方、個別目標電力PBk refが負の値の場合、パワーコンディショナPCSPViから出力された交流電力の少なくとも一部を直流電力に変換し、蓄電池Bkに供給する。すなわち、パワーコンディショナPCSBkを充電回路として機能させる。
指標算出部23’は、連系点電力P(t)を目標電力にするための指標を算出する。本実施形態においては、目標電力として出力指令値P
Cが入力されるので、指標算出部23’は、連系点電力P(t)を出力指令値P
Cにするための抑制指標pr
PVおよび充放電指標pr
Bを算出する。指標算出部23’は、ラグランジュ乗数をλ、勾配係数をε、時間をtとして、下記(21)式および下記(22)式に基づき、抑制指標pr
PVおよび充放電指標pr
Bを算出する。ただし、指標算出部23’は、目標電力設定部21からの出力指令値P
Cとして、電力会社からの出力抑制の指令がないことを表わす数値−1を入力された場合、ラグランジュ乗数λを「0」とする。すなわち、抑制指標pr
PVおよび充放電指標pr
Bをともに「0」と算出する。なお、下記(21)式において、個別出力電力P
PVi out,P
Bk outおよび出力指令値P
Cが、時間tに対して変化する値であるため、それぞれ個別出力電力をP
PVi out(t),P
Bk out(t)および出力指令値をP
C(t)と記載している。これらの下記(21)式および下記(22)式の詳細は、後述する。
送信部24’は、指標算出部23’が算出した抑制指標prPVをパワーコンディショナPCSPViに送信し、指標算出部23’が算出した充放電指標prBをパワーコンディショナPCSBkに送信する。
次に、太陽光発電システムPVS2が行う出力抑制制御において、パワーコンディショナPCSPViによる個別目標電力PPVi refの算出に上記(19)式が用いられる理由、パワーコンディショナPCSBkによる個別目標電力PBk refの算出に上記(20)式が用いられる理由、および、集中管理装置MC2による抑制指標prPV,充放電指標prBの算出に上記(21)式および上記(22)式が用いられる理由を説明する。
太陽光発電システムPVS2は、出力抑制制御において、以下の5つの目標を達成するように構成されている。1つ目の目標(目標2−1)は、「各パワーコンディショナPCSPVi,PCSBkが分散的に個別目標電力を算出する」ことである。2つ目の目標(目標2−2)は、「太陽電池に接続されたパワーコンディショナPCSPViの出力電力をできる限り抑制しない」ことである。3つ目の目標(目標2−3)は、「蓄電池は、連系点電力が出力指令値(目標電力)よりも大きい場合には充電し、不足している場合には放電する」ことである。4つ目の目標(目標2−4)は、「太陽光発電システムPVS2の連系点における出力電力(連系点電力)を電力会社からの出力指令値(目標電力)に一致させる」ことである。そして、5つ目の目標(2−5)は、「パワーコンディショナPCSPVi,PCSBk毎に、出力抑制量を調整できるようにする」ことである。
まず、集中管理装置MC2が集中的に個別目標電力P
PVi ref,P
Bk refを求める場合の制約付き最適化問題を考える。そうすると、下記(23)式が得られる。ここで、上記するように、P
PVi ref,P
Bk refはそれぞれ、各パワーコンディショナPCS
PVi,PCS
Bkの個別目標電力を表わし、P
PVi lmt,P
Bk lmtはそれぞれ、各パワーコンディショナPCS
PVi,PCS
Bkの定格出力(出力限界)を表わし、P
φiは優先度パラメータを表わす。なお、下記(23)式の最適解である個別目標電力P
PVi ref,P
Bk refをそれぞれ、(P
PVi ref)
*,(P
Bk ref)
*とする。下記(23)式において、(23a)式は、各パワーコンディショナPCS
PViの個別出力電力P
PVi outの出力抑制量の最小化および各パワーコンディショナPCS
Bkの個別出力電力P
Bk outの出力量の最小化、(23b)式は、各パワーコンディショナPCS
PViの定格出力P
PVi lmtによる制約、(23c)式は、各パワーコンディショナPCS
Bkの定格出力P
Bk lmtによる制約、(23d)式は、各蓄電池B
kの残量制約、(23e)式は、連系点電力P(t)を出力指令値P
Cに一致させることを、それぞれ表わしている。
これは集中管理装置MC2が、上記(23)式から個別目標電力(PPVi ref)*,(PBk ref)*を求める場合を示している。したがって、上記(23)式の場合、各パワーコンディショナPCSPVi,PCSBkが分散的に個別目標電力(PPVi ref)*,(PBk ref)*を算出していないため、目標2−1を達成していない。
続いて、各パワーコンディショナPCS
PViが分散的に個別目標電力P
PVi refを求める場合の制約付き最適化問題を考える。そうすると、下記(24)式が得られる。
同様に、各パワーコンディショナPCS
Bkが分散的に個別目標電力P
Bk refを求める場合の制約付き最適化問題を考える。そうすると、下記(25)式が得られる。
しかし、上記(24)式の最適解である個別目標電力は、各パワーコンディショナPCSPViが分散的に求めた個別目標電力PPVi refであるが、上記(23e)式が考慮されていない。同様に、上記(25)式の最適解である個別目標電力は、各パワーコンディショナPCSBkが分散的に求めた個別目標電力PBk refであるが、上記(23e)式が考慮されていない。したがって、連系点電力P(t)を電力会社からの出力指令値PCに一致させる目標2−4を達成できない。
そこで、次に手法により、目標2−4を達成させることを考える。すなわち、各パワーコンディショナPCSPViが、集中管理装置MC2から受信する抑制指標prPVに基づき、分散的に個別目標電力PPVi refを算出し、また、各パワーコンディショナPCSBkが集中管理装置MC2から受信する充放電指標prBに基づき、分散的に個別目標電力PBk refを算出する。これにより、目標2−4を達成させる。各パワーコンディショナPCSPViが、抑制指標prPVを用いて、分散的に個別目標電力PPVi refを求める場合の制約付き最適化問題は、上記(19)式で表わすことができる。なお、上記(19)式の最適解である個別目標電力PPVi refを(PPVi ref)♭とする。同様に、各パワーコンディショナPCSBkが、充放電指標prBを用いて、分散的に個別目標電力PBk refを求める場合の制約付き最適化問題は、上記(20)式で表わすことができる。なお、上記(20)式の最適解である個別目標電力PBk refを(PBk ref)♭とする。
ここで、上記(23)式により得られる最適解(P
PVi ref)
*と、上記(19)式により得られる最適解(P
PVi ref)
♭とが一致し、かつ、上記(23)式により得られる最適解(P
Bk ref)
*と、上記(20)式により得られる最適解(P
Bk ref)
♭とが一致することで、連系点電力P(t)を電力会社からの出力指令値P
Cに一致させることができる。すなわち、各パワーコンディショナPCS
PVi,PCS
Bkが分散的に最適化問題を解いた場合であっても、目標2−4を達成することができる。したがって、定常状態の最適性に着目し、(P
PVi ref)
*=(P
PVi ref)
♭となる抑制指標pr
PV、および、(P
Bk ref)
*=(P
Bk ref)
♭となる充放電指標pr
Bを考える。そのために、上記(23)式、上記(19)式、および、上記(20)式のKKT条件を考える。これにより、上記(23)式のKKT条件から下記(26)式が得られ、上記(19)式のKKT条件から下記(27)式が得られ、上記(20)式のKKT条件から下記(28)式が得られる。なお、μ,νは所定のラグランジュ乗数である。
これら上記(26)式、上記(27)式、および、上記(28)式から、prPV=prB=λ(上記(22)式)とすることで、(PPVi ref)*と(PPVi ref)♭、また、(PBk ref)*と(PBk ref)♭が一致することが分かる。したがって、集中管理装置MC2がラグランジュ乗数λを算出し、算出したラグランジュ乗数λを抑制指標prPVとして、各パワーコンディショナPCSPViに提示(送信)することで、各パワーコンディショナPCSPViがそれぞれ、上記(19)式から個別目標電力(PPVi ref)♭を算出することができる。同様に、集中管理装置MC2は、算出したラグランジュ乗数λを充放電指標prBとして、各パワーコンディショナPCSBkに提示(送信)することで、各パワーコンディショナPCSBkがそれぞれ、上記(20)式から個別目標電力(PBk ref)♭を算出することができる。これにより、各パワーコンディショナPCSPVi,PCSBkが分散的に個別目標電力PPVi ref,PBk refを求めた場合であっても、連系点電力P(t)と電力会社からの出力指令値PCとを一致させることができる。すなわち、目標2−4を達成できる。
続いて、集中管理装置MC2によるラグランジュ乗数λの算出方法について、説明する。ラグランジュ乗数λを求めるために、まず、h
1 1,i=−P
PVi ref、h
1 2,i=P
PVi ref−P
PVi lmtとし、各パワーコンディショナPCS
PViの不等式制約をまとめてh
1 x,i≦0(x=1,2、i=1,・・・,n)とする。また、同様に、h
2 1,k=−P
Bk lmt−P
Bk ref、h
2 2,k=P
Bk ref−P
Bk lmt、h
2 3,k=α
k−P
Bk ref、h
2 4,k=P
Bk ref−β
kとし、各パワーコンディショナPCS
Bkの不等式制約をまとめてh
2 y,k≦0(y=1,2,3,4、k=1,・・・,m)とする。そして、上記(23)式の双対問題である下記(29)式を考える。
ここで、各パワーコンディショナPCS
PVi,PCS
Bkによって求められる最適解(P
PVi ref)
♭,(P
Bk ref)
♭が決定されると仮定すると、下記(30)式となり、ラグランジュ乗数λに対する最大化問題の形となる。この下記(30)式に対し勾配法を適用すると、下記(31)式となる。なお、εは勾配係数を表わし、τは時間変数を表わす。
上記(31)式において、(PPVi ref)♭を対応するパワーコンディショナPCSPViの個別出力電力PPVi outで置き換え、(PBk ref)♭を対応するパワーコンディショナPCSBkの個別出力電力PBk outで置き換える。さらに、集中管理装置MC2は、各パワーコンディショナPCSPVi,PCSBkの個別出力電力PPVi out,PBk outを個別に観測せず、連系点電力P(t)=ΣiPPVi out+ΣkPBk outを観測する。また、電力会社から逐次出力指令値PCを取得しているとする。そうすると、上記(21)式が得られる。よって、集中管理装置MC2は、連系点電力P(t)と電力会社からの出力指令値PCとに基づき、ラグランジュ乗数λを算出できる。そして、上記(22)式に基づき、算出したラグランジュ乗数λを抑制指標prPVおよび充放電指標prBとする。
以上のことから、本実施形態においては、各パワーコンディショナPCSPViは、個別目標電力PPVi refを算出するときに、上記(19)式に示す最適化問題を用いている。また、各パワーコンディショナPCSBkは、個別目標電力PBk refを算出するときに、上記(20)式に示す最適化問題を用いている。そして、集中管理装置MC2は、抑制指標prPVおよび充放電指標prBを算出するときに、上記(21)式および上記(22)式を用いている。
次に、上記のように構成された太陽光発電システムPVS2において、上記5つの目標を達成し、適切に動作していることをシミュレーションによって検証した。
シミュレーションでは、太陽電池SPiが接続されたパワーコンディショナPCSPViを5台(i=1〜5;PCSPV1〜PCSPV5)と、蓄電池Bkが接続されたパワーコンディショナPCSBkを5台(k=1〜5;PCSB1〜PCSB5)と、を有する太陽光発電システムPVS2を想定した。
また、本シミュレーションにおいては、蓄電池B
kのモデルは、d/dt(x
k)=−K
kP
Bk out,s
k=x
kとした。ここで、s
kは、蓄電池B
kの充電電力量を表わし、K
Kは、蓄電池B
kの特性を表わしている。さらに、蓄電池B
kの残量によって調整できる調整パラメータα
k,β
kは、表1のように設定した。当該表1において、SOC
kは、各蓄電池B
Bkの充電率(State Of Charge)[%]を示しており、充電電力量[kWh]をS
k,蓄電池B
kの最大容量[kWh]をS
k maxとして、SOC
k=(S
k/S
k max)×100により算出される。
最適化問題に関するパラメータである各パワーコンディショナPCSPViの優先度パラメータ(疑似有効出力限界)Pφiは1000[kW]とした。その他、電力系統A(連系点電圧)のモデル(上記(18)式参照)および各パワーコンディショナPCSPVi,PCSBkのモデル(図3および図4参照)は、上記第1実施形態に係るシミュレーション時のものと同様とした。
図14〜図16は、上記に示したモデルの太陽光発電システムPVS2を用いて、複数の条件下でシミュレーションを行ったときの結果を示している。
ケース1として、5台のパワーコンディショナPCSPV1〜PCSPV5がすべて同じ条件であり、5台のパワーコンディショナPCSB1〜PCSB5がすべて同じ条件である場合を、シミュレーションした。当該シミュレーションをシミュレーション2−1とする。シミュレーション2−1において、5台のパワーコンディショナPCSPV1〜PCSPV5はすべて、定格出力PPVi lmtが500[kW]、有効電力抑制に関する重みwPViが1.0、太陽電池SPiの発電量Pi SPが600[kW]であるとした。また、5台のパワーコンディショナPCSB1〜PCSB5はすべて、定格出力PPVi lmtが500[kW]、有効電力抑制に関する重みwPViが1.0であるとした。蓄電池B1〜B5の最大容量S1 max〜S5 maxはすべて500[kWh]であるとした。そして、電力会社からの出力指令値PCは、0≦t<60[s]では指令がなく、60≦t[s]では1500[kW]であるとした。なお、「出力指令値PCの指令がない」ときには、上記するように出力指令値PCとして、指令がないことを表わす数値−1を用いた。その他、勾配係数εを0.05、集中管理装置MC2が行う抑制指標prPVおよび充放電指標prBの更新と各パワーコンディショナPCSPVi,PCSBkが行う個別目標電力PPVi ref,PBk refの更新との各サンプリング時間を1[s]とした。また、各パワーコンディショナPCSPVi,PCSBkはすべて、力率1(無効電力目標値=0[kvar])で運転しているものとした。図14は、シミュレーション2−1におけるシミュレーション結果を示している。
図14(a)は、太陽電池SPiの発電量Pi SPを示している。図14(b)は、各パワーコンディショナPCSPViの個別目標電力PPVi refを示している。図14(c)は、各パワーコンディショナPCSPViの個別出力電力PPVi outを示している。図14(d)は、連系点電力P(t)(実線)および電力会社からの出力指令値PC(破線)を示している。図14(e)は、各パワーコンディショナPCSBkの個別目標電力PBk refを示している。図14(f)は、各パワーコンディショナPCSBkの個別出力電力PBk outを示している。図14(g)は、指標算出部23’が算出する抑制指標prPVおよび充放電指標prBを示している。
図14から次のことが確認できる。すなわち、図14(b)および図14(c)が示すように、出力指令値PCの指令後(60≦t[s])であっても、個別目標電力PPV1 ref〜PPV5 refが500[kW]のままであり、個別出力電力PPV1 out〜PPV5 outが抑制されていないことが確認できる。また、図14(e)および図14(f)が示すように、各パワーコンディショナPCSBkの個別出力電力PB1 out〜PB5 outが、0[kW]から負(マイナス)に遷移していることが確認できる。これは、パワーコンディショナPCSBkに電力が入力されていることを表わしており、各パワーコンディショナPCSBkに入力される電力を用いて、蓄電池Bkを充電している。また、図14(d)が示すように、連系点電力P(t)は、出力指令値PCと一致していることも確認できる。したがって、太陽光発電システムPVS2は、電力会社から出力指令値PCが指令されたとき、各パワーコンディショナPCSPViの個別出力電力PPVi outを抑制せず、蓄電池Bkの充電に用いていることが確認できる。
ケース2として、5台のパワーコンディショナPCSB1〜PCSB5のうち1台のパワーコンディショナPCSB5に接続された蓄電池B5の最大容量S5 maxが他のパワーコンディショナPCSB1〜PCSB4に接続された蓄電池B1〜B4のそれと異なる場合を、シミュレーションした。当該シミュレーションをシミュレーション2−2とする。シミュレーション2−2において、1台のパワーコンディショナPCSB5に接続された蓄電池B5の最大容量S5 maxを3[kWh]とした。その他の条件は、上記シミュレーション2−1と同じとした。図15は、シミュレーション2−2におけるシミュレーション結果を示している。なお、図15において、図15(a)〜(g)は、上記シミュレーション2−1における図14(a)〜(g)に対応した図である。
図15から次のことが確認できる。すなわち、図15(a)〜(c)が示すように、上記シミュレーション2−1と同様に、出力指令値PCの指令後(60≦t[s])であっても、個別目標電力PPV1 ref〜PPV5 refは抑制されていないことが確認できる。また、図15(e)および図15(f)が示すように、各パワーコンディショナPCSB1〜PCSB5の個別出力電力PB1 out〜PB5 outが、0[kW]から負(マイナス)に遷移していることが確認できる。したがって、上記シミュレーション2−1と同様に、各パワーコンディショナPCSB1〜PCSB5は、入力される電力を用いて、蓄電池Bkを充電している。また、図15(e)および図15(f)が示すように、110≦t[s]で、パワーコンディショナPCSB5の個別出力電力PB5 outが0(ゼロ)となり、その他のパワーコンディショナPCSB1〜PCSB4の個別出力電力PB1 out〜PB4 outがさらに低下している(入力電力が増加している)。これは、蓄電池B5の最大容量S5 maxが3[kWh]であり、他の蓄電池B1〜B4より低いため、t=110[s]で、蓄電池B5が他の蓄電池B1〜B4より先に充電が完了したことを表わしている。よって、蓄電池B5の充電が完了したため、パワーコンディショナPCSB5への電力の入力を停止し、充電を停止していることを表わしている。そして、当該パワーコンディショナPCSB5に入力していた分の電力を他のパワーコンディショナPCSB1〜PCSB4に分配したため、その他のパワーコンディショナPCSB1〜PCSB4の個別出力電力PB1 out〜PB4 outがさらに低下している(入力される電力が増加している)。さらに、図15(d)が示すように、蓄電池B5の充電停止に伴い、一時的に連系点電力P(t)が出力指令値PCより大きくなっている。しかし、定常状態では、連系点電力P(t)は、出力指令値PCと一致していることも確認できる。したがって、太陽光発電システムPVS2は、各蓄電池Bkの性能を考慮して、適切に動作を行っているといえる。
ケース3として、5台のパワーコンディショナPCSB1〜PCSB5のうち1台のパワーコンディショナPCSB5に設定される有効電力に関する重みwB5が他のパワーコンディショナPCSB1〜PCSB4に設定されるそれと異なる場合を、シミュレーションした。当該シミュレーションをシミュレーション2−3とする。シミュレーション2−3において、上記1台のパワーコンディショナPCSB5の有効電力に関する重みwB5を2.0とした。すなわち、他のパワーコンディショナPCSB1〜PCSB4のそれと比較し、充電量を半分にすることを表わしている。その他の条件は、上記シミュレーション2−1と同じとした。図16は、シミュレーション2−3におけるシミュレーション結果を示している。なお、図16において、図16(a)〜(g)は、上記シミュレーション2−1における図14(a)〜(g)に対応した図である。
図16から次のことが確認できる。すなわち、図16(a)〜(c)が示すように、上記シミュレーション2−1と同様に、出力指令値PCの指令後(60≦t[s])であっても、個別目標電力PPV1 ref〜PPV5 refは抑制していないことが確認できる。また、図15(e)および図15(f)より、パワーコンディショナPCSB1〜PCSB5の個別出力電力PB1 out〜PB5 outが、0[kW]から負(マイナス)に遷移していることが確認できる。したがって、上記シミュレーション2−1と同様に、各パワーコンディショナPCSB1〜PCSB5は、入力される電力を用いて、蓄電池Bkを充電している。また、図16(e)および図16(f)が示すように、有効電力に関する重みwB5が異なるパワーコンディショナPCSB5の充電量(パワーコンディショナPCSB5への入力電力)が、その他のパワーコンディショナPCSB1〜PCSB4の半分になっていることが確認できる。そして、図16(d)が示すように、連系点電力P(t)が、定常状態で出力指令値PCと一致していることも確認できる。したがって、太陽光発電システムPVS2は、パワーコンディショナPCSBkに設定された有効電力に関する重みwBkを考慮して、適切に動作を行っているといえる。
上記図14〜図16毎の結果に加え、図14〜図16を対比することで、次のことが確認できる。すなわち、各図の(g)が示すように、抑制指標prPVおよび充放電指標prBが、各パワーコンディショナPCSPV1〜PCSPV5,PCSB1〜PCSB5の、太陽電池SPiの発電量Pi SP、蓄電池Bkの性能、定格出力PPVi lmt,PBk lmt、有効電力抑制に関する重みwPVi、有効電力に関する重みwBk、および、出力指令値PCなどに基づき、異なる値が算出されていることが確認できる。そして、各図の(b)および(e)が示すように、抑制指標prPVおよび充放電指標prBの更新に応じて、個別目標電力PPVi ref,PBk refが更新されていることが確認できる。各パワーコンディショナPCSPV1〜PCSPV5,PCSB1〜PCSB5は、この個別目標電力PPVi ref,PBk refに応じて、個別出力電力PPVi out,PBk outを制御している。よって、各図の(d)が示すように、連系点電力P(t)が出力指令値PCに一致していることが確認できる。以上のことから、上記(21)式および上記(22)式を用いて集中管理装置MC2が算出した抑制指標prPVおよび充放電指標prBが適切な値であるといえる。
上記シミュレーション2−1ないしシミュレーション2−3の結果から、太陽光発電システムPVS2において、各パワーコンディショナPCSPViがそれぞれ、集中管理装置MC2から受信する抑制指標prPVに基づき、分散的に個別目標電力PPVi refを算出している。また、各パワーコンディショナPCSBkがそれぞれ、集中管理装置MC2から受信する充放電指標prBに基づき、分散的に個別目標電力PBk refを算出している。よって、上記目標2−1を達成している。また、各パワーコンディショナPCSPViは、個別出力電力PPVi outをできる限り抑制せず、連系点電力P(t)が出力指令値PCより超過している分を、各パワーコンディショナPCSBkに入力し、蓄電池Bkの充電に利用している。よって、上記目標2−2および上記目標2−3を達成している。また、連系点電力P(t)が出力指令値PCに一致している。よって、上記目標2−4を達成している。そして、各種条件に応じて、各パワーコンディショナPCSPVi,PCSBk毎に個別出力電力PPVi out,PBk outが変化している。すなわち、各種条件に応じて、各パワーコンディショナPCSPVi,PCSBk毎に出力抑制量が変化している。よって、上記目標2−5を達成している。以上のことから、太陽光発電システムPVS2は、上記5つの目標を達成していることが分かる。
以上で説明したように、第2実施形態に係る太陽光発電システムPVS2において、集中管理装置MC2は、電力会社からの出力指令値PCおよび検出した連系点電力P(t)から抑制指標prPVおよび充放電指標prBを算出する。そして、抑制指標prPVを各パワーコンディショナPCSPViに送信し、充放電指標prBを各パワーコンディショナPCSBkに送信している。また、各パワーコンディショナPCSPViは、受信した抑制指標prPVに基づき、分散的に上記(19)式の最適化問題を解くことで、個別目標電力PPVi refを算出する。そして、個別出力電力PPVi outを当該個別目標電力PPVi refに制御している。さらに、各パワーコンディショナPCSBkは、受信した充放電指標prBに基づき、分散的に上記(20)式の最適化問題を解くことで、個別目標電力PBk refを算出する。そして、個別出力電力PBk outを当該個別目標電力PBk refに制御している。これにより、集中管理装置MC2は、上記(21)式および上記(22)式に示す簡単な計算だけとなる。したがって、太陽光発電システムPVS2において、集中管理装置MC2の処理負荷を低減させることができる。また、各パワーコンディショナPCSPVi,PCSBkがそれぞれ、抑制指標prPVおよび充放電指標prBに基づき分散的に個別目標電力PPVi ref,PBk refを算出し、個別出力電力PPVi out,PBk outを制御する場合であっても、連系点電力P(t)を電力会社からの出力指令値PCに一致させることができる。
上記第1実施形態においては、有効電力抑制に関する重みwiを考慮し、上記第2実施形態においては、有効電力抑制に関する重みwPViおよび有効電力に関する重みwBkを考慮した場合を例に説明したが、これに限定されない。例えば、上記第1実施形態において、目標1−3の「パワーコンディショナPCSi毎に、出力抑制量を調整できるようにする」を考慮する必要がなければ、パワーコンディショナPCSi毎に設定される上記有効電力抑制に関する重みwiをすべて同じ値(例えば「1」)にしてもよい。また同様に、上記第2実施形態において、目標2−5の「パワーコンディショナPCSPVi,PCSBk毎に、出力抑制量を調整できるようにする」を考慮する必要がなければ、パワーコンディショナPCSPVi,PCSBk毎に設定される上記有効電力抑制に関する重みwPViおよび有効電力に関する重みwBkをすべて同じ値(例えば「1」)にしてもよい。
上記第2実施形態においては、目標電力算出部12’が上記(19)式のように優先度パラメータPφiを用いて、個別目標電力PPVi refを算出した場合を例に説明したが、上記第1実施形態における上記(8)式のように、定格出力PPVi lmtを用いても良い。この場合、個別出力電力PPVi outの抑制を優先するか蓄電池Bkの充放電(個別出力電力PBk out)での対応を優先するかは、有効電力抑制に関する重みwPViおよび有効電力に関する重みwBkで調整すればよい。
上記第2実施形態においては、目標電力算出部12’が解く最適化問題は、上記(19)式に限定されない。例えば、上記(19)式の代わりに、下記(19’)式を用いてもよい。下記(19’)式は、上記(19)式と比較して、下記(19c’)式に示す各パワーコンディショナPCS
PViの出力電流制約が追加されている。なお、下記(19’)式において、Q
PViは各パワーコンディショナPCS
PViの無効電力、S
PVi dは各パワーコンディショナPCS
PViの出力可能な最大の皮相電力、V
0は設計時における連系点の基準電圧、V
PViは各パワーコンディショナPCS
PViにおける連系点の電圧をそれぞれ示している。また、下記(19’)式において、下記(19c’)式に示す各パワーコンディショナPCS
PViの出力電流制約の代わりに、下記(19d’)式に示すパワーコンディショナPCS
PViの定格容量制約を用いてもよい。
上記第2実施形態においては、目標電力算出部32が解く最適化問題は、上記(20)式に限定されない。例えば、上記(20)式の代わりに、下記(20’)式を用いてもよい。下記(20’)式は、上記(20)式と比較して、下記(20a’)に示す評価関数において、蓄電池B
kのSOCに応じた重みw
SOCkが追加されている。この重みw
SOCkは、下記(32)式で算出される。当該(32)式において、A
SOCはw
SOCkのオフセット、K
SOCは重みw
SOCkのゲイン、sは重みw
SOCkのオン/オフスイッチ(例えば、オンのとき1,オフのとき0)、SOC
kは現在の蓄電池B
kのSOC、SOC
dは基準となるSOCをそれぞれ示している。さらに、制約条件に、下記(20c’)式に示す蓄電池B
kのCレート制約および下記(20e’)式に示す各パワーコンディショナPCS
Bkの出力電流制約が追加されている。Cレートとは、蓄電池B
kの有する全容量に対する充電時あるいは放電時の電流の相対的な比率であり、蓄電池B
kの有する全容量を1時間で充電あるいは放電するときを1Cとしたものである。本実施形態においては、充電側のCレートを充電レートC
rate Mとし放電側のCレートを放電レートC
rate Pとし、これらは予め所定の値(例えば、ともに0.3C)が設定されている。なお、下記(20’)式において、P
SMk lmtは−C
rate M×WH
S lmt(WH
S lmtは蓄電池B
kの定格出力容量)で求められる蓄電池B
kの充電定格出力、P
SPk lmtはC
rate P×WH
S lmtで求められる蓄電池B
kの放電定格出力、Q
Bkは各パワーコンディショナPCS
Bkの無効電力、S
Bk dは各パワーコンディショナPCS
Bkの出力可能な最大の皮相電力、V
Bkは各パワーコンディショナPCS
Bkにおける連系点の電圧をそれぞれ示している。さらに、蓄電池B
kの充電定格出力P
SMk lmtは、補正開始SOCをSOC
C、SOCの充電制限閾値をcMAXとして、下記(33)式に示すSOCに応じた蓄電池充電量補正が考慮されている。当該蓄電池充電量補正は、補正開始SOCまでは、通常通りの運転を行い、補正開始SOCからSOC上限までは、SOC上限で出力が0となるように一次関数的に出力を補正するようにしている。また、下記(20’)式において、下記(20e’)に示す各パワーコンディショナPCS
Bkの出力電流制約の代わりに、下記(20f’)式に示す各パワーコンディショナPCS
Bkの定格容量制約を用いてもよい。
なお、以下に説明する他の実施形態に係る太陽光発電システムにおいて、目標電力算出部12’は、個別目標電力PPVi refを算出する際に、上記(19)式あるいは上記(19’)式のいずれの最適化問題を用いてもよい。同様に、目標電力算出部32は、個別目標電力PBk refを算出する際に、上記(20)式あるいは上記(20’)式のいずれの最適化問題を用いてもよい。
次に、第3実施形態に係る太陽光発電システムPVS3について説明する。なお、以下の説明においては、上記第1実施形態および第2実施形態と同一あるいは類似のものについては、同じ符号を付してその説明を省略する。図17は、太陽光発電システムPVS3の全体構成を示している。同図に示すように、太陽光発電システムPVS3は、複数台の太陽電池SPi、複数台のパワーコンディショナPCSPVi、複数台の蓄電池Bk、複数台のパワーコンディショナPCSBk、集中管理装置MC3、および、電力負荷Lを有して構成される。したがって、上記第2実施形態に係る太陽光発電システムPVS2と比較して、電力負荷Lをさらに備えている点で異なる。
電力負荷Lは、供給される電力を消費するものであり、例えば、工場や一般家庭などである。電力負荷Lは連系点に接続されており、電力系統A、各パワーコンディショナPCSPVi、および、各パワーコンディショナPCSBkから電力が供給される。
このような太陽光発電システムPVS3において、太陽電池SPiが発電し、各パワーコンディショナPCSPViから出力される電力(各個別出力電力PPVi outの総和ΣPPVi out)は、蓄電池Bkの充電や電力負荷Lによって消費されるが、これらにより消費されなかった余剰電力は電力系統Aに逆潮流する。このように余剰電力が逆潮流しているときにおいても、電力会社から出力抑制を指示されると、電力会社からの出力指令値PCを超えないようにする必要がある。この余剰電力は連系点電力検出部22によって検出される連系点電力P(t)とみなせるので、太陽光発電システムPVS3は、上記第2実施形態と同様に、抑制指標prPVおよび充放電指標prBを用いた出力抑制制御を行う。すなわち、連系点電力P(t)を目標電力(出力指令値PC)にしている。これにより、余剰電力が出力指令値PCを超えないようにしている。
図18は、図17に示す太陽光発電システムPVS3の出力抑制制御に関する制御系の機能構成を示している。なお、図18においては、太陽電池SPiおよび蓄電池Bkの図示を省略している。また、それぞれ1台目のパワーコンディショナPCSPVi,PCSBkのみ記載している。同図に示すように、第3実施形態に係る各パワーコンディショナPCSPVi,PCSBk、および、集中管理装置MC3の構成は、上記第2実施形態に係る各パワーコンディショナPCSPVi,PCSBk、および、集中管理装置MC2の構成(図13参照)とそれぞれ同じである。
本実施形態に係る太陽光発電システムPVS3によれば、集中管理装置MC3は、電力会社からの出力指令値PCおよび連系点電力P(t)に基づいて、抑制指標prPVおよび充放電指標prBを算出している。このとき、集中管理装置MC3は、上記(21)式および上記(22)式を用いて、抑制指標prPVおよび充放電指標prBを算出する。そして、各パワーコンディショナPCSPViは、抑制指標prPVに基づいて、分散的に個別目標電力PPVi refを算出している。また、各パワーコンディショナPCSBkは、充放電指標prBに基づいて、分散的に個別目標電力PBk refを算出している。これにより、集中管理装置MC3の処理負荷を低減させることができる。また、連系点電力P(t)、すなわち、電力系統Aに逆潮流させる余剰電力を出力指令値PCに制御することができる。よって、電力系統Aに逆潮流させる余剰電力が電力会社からの出力指令値PCを超えないようにできる。
上記第3実施形態においては、第2実施形態に係る太陽光発電システムPVS2に対して、電力負荷Lを追加した場合を例に説明したが、第1実施形態に係る太陽光発電システムPVS1に電力負荷Lを追加した場合も、抑制指標prを用いて、出力抑制制御を行うことができる。この場合も、連系点電力P(t)を目標電力(出力指令値PC)にしつつ、集中管理装置MC1の処理負荷を低減させることができる。
次に、第4実施形態に係る太陽光発電システムPVS4について説明する。太陽光発電システムPVS4の全体構成は、上記第3実施形態に係る太陽光発電システムPVS3(図17参照)と略同じである。
上記第3実施形態においては、各パワーコンディショナPCSPViの個別出力電力PPVi out(太陽電池SPiの発電量Pi SP)が電力負荷Lの消費電力より上回っている場合を説明した。第4実施形態においては、反対に、各パワーコンディショナPCSPViの個別出力電力PPVi out(太陽電池SPiの発電量Pi SP)の総和ΣPPVi outが電力負荷Lの消費電力より下回っているものとする。すなわち、太陽電池SPiの発電量Pi SPでは足りない不足電力の一部あるいは全部が電力系統Aから供給されている。当該不足電力は、個別出力電力PPVi outの総和ΣPPVi outと消費電力との差である。
このような太陽光発電システムPVS4において、不足電力を電力系統Aから供給するためには、電力会社から電力を買う(買電する)必要がある。そして、買電した分、電力会社に電気料金を支払う。電気料金には基本料金と従量制料金とが含まれている。基本料金は、連系点に設けられた電力メーターによって、例えば30分ごとの電力使用量が記録され、その最大値(ピーク値)で決まる。具体的には、電力使用量のピーク値が高い場合に基本料金は高くなり、電力使用量のピーク値が低い場合に基本料金は安くなる。
そこで、第4実施形態に係る太陽光発電システムPVS4は、上記抑制指標prPVおよび充放電指標prBを用いて各パワーコンディショナPCSPVi,PCSBkが分散的に制御して、電力系統Aから供給される電力(買電電力)のピーク値を抑える。これを「ピークカット制御」という。なお、買電電力は、電力系統Aから太陽光発電システムPVS4に供給される電力すなわち太陽光発電システムPVS4が電力系統Aから得た(買電した)電力の大きさである。上記するように連系点電力P(t)は、太陽光発電システムPVS4から電力系統Aに出力される場合(逆潮流の場合)を正の値としている。よって、電力系統Aから太陽光発電システムPVS4に入力される場合、連系点電力P(t)は負の値になる。買電電力を制御するピークカット制御の場合は、目標値を負の値として、連系点電力P(t)が当該目標値を下回らないように制御している。太陽光発電システムPVS4は、ピークカット制御において、各パワーコンディショナPCSPViの個別出力電力PPVi outを制御して、太陽電池SPiによって発電された電力をすべて出力する。また、各パワーコンディショナPCSBkの個別出力電力PBk outを制御し、必要に応じて蓄電池Bkに蓄積された電力を放電する。このようにして、電力負荷Lの消費電力の一部を、太陽電池SPiによって発電された電力および蓄電池Bkに蓄積された電力で補填することで、上記買電電力の上昇を抑えている。
図19は、太陽光発電システムPVS4のピークカット制御に関する制御系の機能構成を示している。なお、図19においては、太陽電池SPiおよび蓄電池Bkの図示を省略している。また、それぞれ1台目のパワーコンディショナPCSPVi,PCSBkのみ記載している。太陽光発電システムPVS4は、当該ピークカット制御の制御系として、上記第3実施形態に係る太陽光発電システムPVS3と比較して、集中管理装置MC3の代わりに、集中管理装置MC4を備えている点で異なる。
集中管理装置MC4において、目標電力設定部21は、買電電力の上限値に基づいて、当該上限値を負の値としたピークカット目標値Pcutを目標電力として設定する。このピークカット目標値Pcutは、連系点電力P(t)の目標値であり、負の値である。ピークカット目標値Pcutは、ユーザが自由に指定できる。目標電力設定部21は、設定した目標電力(ピークカット目標値Pcut)を指標算出部23’に出力する。したがって、本実施形態においては、目標電力として、上記出力指令値PCの代わりに、ピークカット目標値Pcutを用いている。
また、集中管理装置MC4において、指標算出部23’は、連系点電力P(t)と、目標電力設定部21から入力されるピークカット目標値Pcutとを用いて、抑制指標prPVおよび充放電指標prBを算出する。すなわち、本実施形態においては、指標算出部23’は、連系点電力P(t)をピークカット目標値Pcutにするための抑制指標prPVおよび充放電指標prBを算出する。このとき、指標算出部23’は、上記(21)式における出力指令値PC(t)の代わりにピークカット目標値Pcutを用いて、ラグランジュ乗数λを算出する。そして、上記(22)式により、算出したラグランジュ乗数λを充放電指標prBとして算出する。なお、抑制指標prPVについては、各パワーコンディショナPCSPViから太陽電池SPiによって発電された電力がすべて出力されるように、固定値「0」が用いられる。よって、指標算出部23’は、充放電指標prBのみを算出しているともいえる。指標算出部23’は、算出した抑制指標prPVを、送信部24’を介して、各パワーコンディショナPCSPViに送信する。また、算出した充放電指標prBを、送信部24’を介して、各パワーコンディショナPCSBkに送信する。
このように構成された太陽光発電システムPVS4において、集中管理装置MC4は、連系点電力検出部22によって検出される連系点電力P(t)を監視する。そして、連系点電力P(t)がピークカット目標値Pcut以下となった場合に、指標算出部23’により連系点電力P(t)をピークカット目標値Pcutにするための抑制指標prPV(=0)および充放電指標prBを算出する。各パワーコンディショナPCSPViはそれぞれ、集中管理装置MC4が算出した抑制指標prPVを用いた最適化問題に基づいて、個別目標電力PPVi refを算出し、個別出力電力PPVi outが個別目標電力PPVi refとなるように制御している。また、各パワーコンディショナPCSBkはそれぞれ、集中管理装置MC4が算出した充放電指標prBを用いた最適化問題に基づいて、個別目標電力PBk refを算出し、個別出力電力PBk outを個別目標電力PBk refに制御する。これらにより、連系点電力P(t)がピークカット目標値Pcut以下である場合に、太陽電池SPiによって発電された電力はすべて出力され、かつ、蓄電池Bkに蓄積された電力は放電される。その結果、連系点電力P(t)が上昇し、連系点電力P(t)がピークカット目標値Pcutとなる。したがって、連系点電力P(t)がピークカット目標値Pcut以下となることを抑制して、太陽光発電システムPVS4は上記ピーク値を抑制している。
なお、集中管理装置MC4は、連系点電力P(t)が設定されたピークカット目標値Pcut以下である場合に、これをピークカット目標値Pcutに制御している。そのため、連系点電力P(t)の検出間隔や抑制指標prPVおよび充放電指標prBの算出間隔によっては、瞬時的にピークカット目標値Pcut以下になる。したがって、買電電力の上限値を設定するときに、ユーザが所望する上限値より所定量小さい値を設定するとよい。これにより、ピークカット目標値Pcutが実際の目標値より大きい値に設定されるため、瞬時的に連系点電力P(t)が低下してもピークカット目標値Pcut以下になることを抑制することができる。
以上のことから、本実施形態に係る太陽光発電システムPVS4によれば、連系点電力P(t)の目標電力として、出力指令値PCの代わりにピークカット目標値Pcutを用いた場合であっても、連系点電力P(t)を目標電力(ピークカット目標値Pcut)に一致させることができる。さらに、各パワーコンディショナPCSPVi,PCSBkが分散的に個別目標電力PPVi ref,PBk refを求めることで、集中管理装置MC4の処理負荷を低減させることができる。
上記第4実施形態において、ピークカット制御中は、蓄電池Bkの放電が優先されるため、蓄電池Bkに蓄積された電力は減少する。そのために、所定の充電条件を満たしたときに、電力系統Aから供給される電力の一部を用いて、蓄電池Bkの充電を行うようにしてもよい。このような充電条件としては、例えば、連系点電力P(t)がピークカット目標値Pcutより閾値以上大きい場合などが挙げられる。このようにすることで、次のピークカット制御に備えて、蓄電池Bkを充電しておくことができる。
このような蓄電池Bkの充電制御において、所定の時間帯毎に、充電の有無や充電速度を変更するようにしてもよい。例えば、所定の時間帯毎に、充電モードを設定可能にしておく。そして、当該充電モードに応じて、蓄電池Bkの充電を制御する。このような充電モードとしては、例えば、充電無モード、通常充電モード、および、低速充電モードがある。充電無モードは、充電を行わないモードである。通常充電モードは、所定の充電速度(通常速度)で充電するモードである。低速充電モードは、通常速度より遅い所定の速度(低速度)で充電するモードである。なお、充電モードはこれらに限定されない。ユーザは集中管理装置MC4のユーザインタフェースなどにより充電モードの設定を行うことができ、図示しないモード設定部がユーザの操作指示に応じて充電モードを設定する。上記所定の時間帯とは、1日を複数個に分けた所定の期間であり、例えば、1時間毎に分けた場合、24個の時間帯毎に設定可能であり、30分毎に分けた場合、48個の時間帯毎に設定可能である。なお、朝、昼、夕、晩、深夜などの時間帯に分けてもよい。さらに、1日単位ではなく、1週間単位で所定の時間帯を設けてもよい。
具体的には、集中管理装置MC4は、上記モード設定部によって設定された充電モードの設定情報を、送信部24’を介して各パワーコンディショナPCSBkそれぞれに送信する。そして、受信部31を介してこれを受信した各パワーコンディショナPCSBkは、設定されている充電モードに対応付けられた上記充電レートCrate Mを用いて上記(20c’)式に示す蓄電池BkのCレート制約(充電定格出力PSMk lmt)を変更する。例えば、通常充電モードに対する充電レートCrate Mには0.3を、低速充電モードに対する充電レートCrate Mには0.1を、充電なしモードに対する充電レートCrate Mには0をそれぞれ設定する。そして、各パワーコンディショナPCSBkは、上記(20’)式に示す最適化問題に基づいて、個別目標電力PBk refを求めることで、充電モードの設定に応じて蓄電池Bkの充電の有無および充電速度を変更することができる。なお、低速充電モードが連続して設定されている時間帯において、蓄電池Bkが満充電するように、充電速度を可変にしてもよい。例えば、深夜0時から朝6時まで連続して「低速充電モード」が設定されている場合、6時間かけて蓄電池Bkが満充電となるように、充電速度を設定する。詳細には、充電レートCrate Mを1/6(≒0.167)にする。ただし、通常速度を超えないようにすることが望ましい。このようにすることで、充電モードに応じて、適宜蓄電池Bkの充電の有無や充電速度を変更することができる。したがって、時間帯によって(買電の)上記従量制料金の電力量単価が変わる場合において、例えば、電力量単価が安い時間帯に買電電力を多くし、電力量単価が高い時間帯に買電電力を少なくすることができる。
上記第4実施形態においては、太陽電池SPiが接続された複数台のパワーコンディショナPCSPViを備えている場合を例に説明したが、これらを備えていなくてもよい。すなわち、蓄電池Bkが接続された複数台のパワーコンディショナPCSBkと電力負荷Lと集中管理装置MC4とで構成されるものでもよい。
次に、第5実施形態に係る太陽光発電システムPVS5について説明する。太陽光発電システムPVS5の全体構成は、上記第3実施形態に係る太陽光発電システムPVS3(図17参照)と略同じであり、その図示を省略する。上記第3実施形態においては、余剰電力を逆潮流させることが可能であったが、第5実施形態においては、逆潮流が禁止されているものとする。
逆潮流が禁止されている太陽光発電システムPVS5では、電力系統Aへの連系点に逆電力継電器51を設ける必要がある。この逆電力継電器51は、リレーの一種である。逆電力継電器51は、太陽光発電システムPVS5から電力系統Aに逆潮流が発生したことを検出すると、太陽光発電システムPVS5を電力系統Aから解列する。例えば、逆電力継電器51は、連系点電力P(t)を検出し、当該連系点電力P(t)に基づいて逆潮流の発生を検出する。そして、逆潮流の発生を検出した場合、連系点に設けられた図示しない遮断器を遮断することで、太陽光発電システムPVS5を電力系統Aから解列する。一度、解列すると、復帰するのに、専門の業者を呼ぶ必要があるため時間がかかる。例えば工場の休止日などにより、電力負荷Lの低負荷時には、電力負荷Lの消費電力は低下する。したがって、工場の休止日に天気が晴れた場合には、太陽電池SPiの発電量Pi SPが電力負荷Lの消費電力を超える場合があり、このとき、逆潮流が発生する。
そこで、第5実施形態に係る太陽光発電システムPVS5において、上記抑制指標prPVおよび充放電指標prBを用いて各パワーコンディショナPCSPVi,PCSBkが分散的に制御して、逆潮流の発生を抑制する。これを「逆潮流回避制御」という。なお、連系点電力P(t)が正の値である場合、逆潮流が発生しているので、逆潮流の発生を抑制するためには、連系点電力P(t)が正の値にならないように、負の値を維持すればよい。太陽光発電システムPVS5は、逆潮流回避制御において、各パワーコンディショナPCSPViの個別出力電力PPVi outを抑制する。また、パワーコンディショナPCSBkの個別出力電力PBk outを制御して蓄電池Bkを充電する。このようにして、常に電力系統Aから太陽光発電システムPVS5に電力を供給させている。したがって、連系点電力P(t)が、正の値にならないように、負の値を維持している。これにより、逆潮流の発生が抑制される。
図20は、太陽光発電システムPVS5の逆潮流回避制御に関する制御系の機能構成を示している。なお、図20においては、太陽電池SPiおよび蓄電池Bkの図示を省略している。また、それぞれ1台目のパワーコンディショナPCSPVi,PCSBkのみ記載している。太陽光発電システムPVS5は、当該逆潮流回避制御の制御系として、上記第3実施形態に係る太陽光発電システムPVS3と比較して、集中管理装置MC3の代わりに、集中管理装置MC5を備えている点で異なる。
集中管理装置MC5において、目標電力設定部21は、逆潮流の発生を抑制するための逆潮流回避目標値PRPRを目標電力として設定する。この逆潮流回避目標値PRPRは、連系点電力P(t)の目標値であり、負の値である。逆潮流回避目標値PRPRは、ユーザが自由に指定できる。目標電力設定部21は、設定した目標電力(逆潮流回避目標値PRPR)を指標算出部23’に出力する。
また、集中管理装置MC5において、指標算出部23’は、連系点電力P(t)と、目標電力設定部21から入力される逆潮流回避目標値PRPRとを用いて、抑制指標prPVおよび充放電指標prBを算出する。すなわち、本実施形態においては、指標算出部23’は、連系点電力P(t)を逆潮流回避目標値PRPRにするための抑制指標prPVおよび充放電指標prBを算出する。具体的には、指標算出部23’は、上記(21)式における出力指令値PC(t)の代わりに逆潮流回避目標値PRPRを用いて、ラグランジュ乗数λを算出する。そして、上記(22)式により、算出したラグランジュ乗数λを抑制指標prPVおよび充放電指標prBとして算出する。指標算出部23’は、算出した抑制指標prPVを、送信部24’を介して、各パワーコンディショナPCSPViに送信する。また、算出した充放電指標prBを、送信部24’を介して、各パワーコンディショナPCSBkに送信する。
このように構成された太陽光発電システムPVS5において、集中管理装置MC5は、連系点電力検出部22によって検出される連系点電力P(t)を監視する。そして、連系点電力P(t)が逆潮流回避目標値PRPR以上となった場合に、指標算出部23’により連系点電力P(t)を逆潮流回避目標値PRPRにするための抑制指標prPVおよび充放電指標prBを算出する。各パワーコンディショナPCSPViはそれぞれ、集中管理装置MC5が算出した抑制指標prPVを用いた最適化問題に基づいて、個別目標電力PPVi refを算出し、個別出力電力PPVi outを個別目標電力PPVi refに制御する。また、各パワーコンディショナPCSBkはそれぞれ、集中管理装置MC5が算出した充放電指標prBを用いた最適化問題に基づいて、個別目標電力PBk refを算出し、個別出力電力PBk outを個別目標電力PBk refに制御する。これらにより、連系点電力P(t)を逆潮流回避目標値PRPRに制御して、逆潮流の発生を抑制している。すなわち、逆潮流によって逆電力継電器51が動作することを抑制している。
なお、逆潮流回避目標値PRPRの設定値が0である(あるいは0に近い)と、連系点電力P(t)の検出間隔や抑制指標prPVおよび充放電指標prBの算出間隔によっては、瞬時的に連系点電力P(t)が上昇した場合に、連系点電力P(t)が正の値となり、逆潮流が発生する可能性がある。そのため、設定される逆潮流回避目標値PRPRが0より所定量小さい値以下にするとよい。これにより、逆潮流回避目標値PRPRが0より小さくなるため、瞬時的に連系点電力P(t)が上昇しても0を超えることを抑制することができる。したがって、逆潮流が発生することを抑制することができる。
以上のことから、本実施形態に係る太陽光発電システムPVS5によれば、連系点電力P(t)の目標電力として、出力指令値PCの代わりに逆潮流回避目標値PRPRを用いた場合であっても、連系点電力P(t)を目標電力(逆潮流回避目標値PRPR)に一致させることができる。さらに、各パワーコンディショナPCSPVi,PCSBkが分散的に個別目標電力PPVi ref,PBk refを求めることで、集中管理装置MC5の処理負荷を低減させることができる。
上記第5実施形態において、逆潮流回避制御中は、蓄電池Bkの充電が優先されるため、蓄電池Bkに電力が蓄積されていく。そのため、所定の放電条件を満たしたときに、蓄電池Bkの放電を行うようにしてもよい。このような放電条件としては、例えば、連系点電力P(t)が逆潮流回避目標値PRPRより閾値以上小さい場合などが挙げられる。このようにすることで、次の逆潮流回避制御に備えて、蓄電池Bkを放電しておくことができる。
このような蓄電池Bkの放電制御において、上記所定の時間帯毎に、放電をするか否かを変更するようにしてもよい。例えば、上記所定の時間帯毎に、放電モードを設定可能にしておく。そして、当該放電モードに応じて、蓄電池Bkを放電するか否かを制御する。このような放電モードとしては、例えば、放電有モードと放電無モードとがある。放電有モードは、放電を行うモードである。放電無モードは、放電を行わないモードである。なお、放電モードはこれらに限定されない。ユーザは集中管理装置MC5のユーザインタフェースなどにより放電モードの設定を行うことができ、図示しないモード設定部がユーザの操作指示に応じて放電モードを設定する。このときの所定の時間帯は、上記ピークカット制御における所定の時間帯と同じであっても異なっていてもよい。
具体的には、集中管理装置MC5は、上記モード設定部によって設定された放電モードの設定情報を、送信部24’を介して各パワーコンディショナPCSBkそれぞれに送信する。そして、受信部31を介してこれを受信した各パワーコンディショナPCSBkは、設定されている放電モードに対応付けられた上記放電レートCrate Pを用いて上記(20c’)式に示す蓄電池BkのCレート制約(放電定格出力PSPk lmt)を変更する。例えば、放電有モードに対する放電レートCrate Pには0.3を、放電無モードに対する放電レートCrate Pには0をそれぞれ設定する。そして、パワーコンディショナPCSBkは、上記(20’)式に示す最適化問題に基づいて、個別目標電力PBk refを求めることで、放電モードの設定に応じて蓄電池Bkを放電するか否かを変更することができる。このようにすることで、放電モードに応じて、適宜蓄電池Bkを放電するか否かを変更することができる。したがって、必要に応じて蓄電池Bkを放電させず、電力を蓄積させておくことができる。
上記第5実施形態においては、逆電力継電器51は、太陽光発電システムPVS5を電力系統Aから解列する場合を説明したが、これに限定されない。例えば、各パワーコンディショナPCSPVi,PCSBkを電力系統Aから解列するものであってもよい。すなわち、もし逆電力継電器51によって解列されても、電力負荷Lは電力系統Aに接続されたままにしてもよい。例えば、上記遮断器が、図20に示す接続線の位置BP1に設置されるか、図20に示す接続線の位置BP2(各パワーコンディショナPCSPVi,PCSBkの出力端付近それぞれ)に設置されることで、逆電力継電器51は、電力負荷Lを残したまま、各パワーコンディショナPCSPVi,PCSBkを電力系統Aから解列することができる。
上記第5実施形態においては、蓄電池Bkが接続された複数台のパワーコンディショナPCSBkを備えている場合を例に説明したが、これらを備えていなくてもよい。すなわち、太陽電池SPiが接続された複数台のパワーコンディショナPCSPViと電力負荷Lと集中管理装置MC5とで構成されるものでもよい。この場合、太陽光発電システムPVS5は、逆潮流回避制御を行うとき、パワーコンディショナPCSPViからの個別出力電力PPVi outの抑制のみで、連系点電力P(t)を設定された逆潮流回避目標値PRPRにしている。
上記第3実施形態ないし第5実施形態においてはそれぞれ、出力抑制制御、ピークカット制御、逆潮流回避制御を個々に実装した太陽光発電システムPVS3,PVS4,PVS5について説明したが、これらの各種制御を組み合わせることも可能である。この場合、集中管理装置が適宜いずれの制御を行うかを切り替えるようにすればよい。例えば、ユーザの操作に応じて切り替えるようにしてもよいし、状況(連系点電力P(t)の正負(逆潮流中か否か)、逆潮流が禁止されているか、電力負荷Lの電力消費履歴や稼働日など)に応じて自動的に切り替えるようにしてもよい。
次に、第6実施形態に係る太陽光発電システムPVS6について説明する。上記第1実施形態ないし第5実施形態においては、連系点電力検出部22が検出する連系点電力P(t)を太陽光発電システムPVS1〜PVS5全体の出力電力とみなした。しかし、連系点電力P(t)に限らず、各パワーコンディショナPCSiあるいは各パワーコンディショナPCSPVi,PCSBkからそれぞれ個別出力電力Pi outあるいは個別出力電力PPVi out,PBk outの総和(以下、「システム総出力」という。)を算出し、これを太陽光発電システム全体の出力電力とみなすことも可能である。したがって、太陽光発電システムPVS6は、当該システム総出力が目標電力となるように制御する。よって、上記調整対象電力としてシステム総出力を用いている。
図21は、太陽光発電システムPVS6の全体構成を示している図21に示すように、太陽光発電システムPVS6は、複数台の太陽電池SPi、複数台のパワーコンディショナPCSPVi、複数台の蓄電池Bk、複数台のパワーコンディショナPCSBk、および、集中管理装置MC6を有して構成される。
第6実施形態に係る太陽光発電システムPVS6は、連系点電力P(t)を検出せず、各パワーコンディショナPCSPVi,PCSBkの個別出力電力PPVi out,PBk outのすべての総和(システム総出力Ptotal(t))を算出する。そして、当該システム総出力Ptotal(t)を太陽光発電システムPVS6全体の出力電力として電力会社から指示される出力指令値PCに一致させるように制御している。すなわち、太陽光発電システムPVS6は、連系点電力P(t)の代わりにシステム総出力Ptotal(t)を用いて出力抑制制御を行う。
図22は、図21に示す太陽光発電システムPVS6の出力抑制制御に関する制御系の機能構成を示している。なお、図22においては、太陽電池SPiおよび蓄電池Bkの図示を省略している。また、それぞれ1台目のパワーコンディショナPCSPVi,PCSBkのみ記載している。太陽光発電システムPVS6は、当該出力抑制制御の制御系として、上記第2実施形態に係る集中管理装置MC2の代わりに、集中管理装置MC6を備えている点で異なる。また、各パワーコンディショナPCSPVi,PCSBkの構成も異なる。
本実施形態においては、各パワーコンディショナPCSPViはそれぞれ、出力電力検出部14および送信部15をさらに備えており、各パワーコンディショナPCSBkはそれぞれ、出力電力検出部34および送信部35をさらに備えている。また、集中管理装置MC6は、連系点電力検出部22および指標算出部23’の代わりに、受信部61と総出力算出部62と指標算出部63とを備えている。
出力電力検出部14は、各パワーコンディショナPCSPViに備えられており、自装置の個別出力電力PPVi outを検出する。出力電力検出部34は、各パワーコンディショナPCSBkに備えられており、自装置の個別出力電力PBk outを検出する。
送信部15は、出力電力検出部14が検出した個別出力電力PPVi outを集中管理装置MC6に送信する。送信部35は、出力電力検出部34が検出した個別出力電力PBk outを集中管理装置MC6に送信する。
受信部61は、各パワーコンディショナPCSPVi,PCSBkから送信される個別出力電力PPVi out,PBk outを受信する。
総出力算出部62は、受信部61が受信した個別出力電力PPVi out,PBk outの総和であるシステム総出力Ptotal(t)を算出する。本実施形態においては、総出力算出部62は、入力されるすべての個別出力電力PPVi out,PBk outを加算したシステム総出力Ptotal(t)を算出する。
指標算出部63は、総出力算出部62が算出したシステム総出力Ptotal(t)を、目標電力にするための指標を算出する。本実施形態においては、目標電力として出力指令値PCが入力されるので、指標算出部63は、システム総出力Ptotal(t)を出力指令値PCにするための抑制指標prPVおよび充放電指標prBを算出する。このとき、指標算出部63は、上記(21)式における連系点電力P(t)の代わりにシステム総出力Ptotal(t)を用いて、ラグランジュ乗数λを算出する。そして、上記(22)式により、算出したラグランジュ乗数λを抑制指標prPVおよび充放電指標prBとして算出する。算出された抑制指標prPVは、送信部24’を介して、各パワーコンディショナPCSPViに送信される。また、算出された充放電指標prBはそれぞれ、送信部24’を介して、各パワーコンディショナPCSBkに送信される。
本実施形態に係る太陽光発電システムPVS6によれば、調整対象電力として、上記第2実施形態における連系点電力P(t)の代わりにシステム総出力Ptotal(t)を用いた場合であっても、システム総出力Ptotal(t)を目標電力(出力指令値PC)にすることができる。さらに、各パワーコンディショナPCSPVi,PCSBkが分散的に個別目標電力PPVi ref,PBk refを求めるため、集中管理装置MC6の処理負荷を低減させることができる。
上記第6実施形態においては、第2実施形態に係る太陽光発電システムPVS2に対して、システム総出力Ptotal(t)を出力指令値PCに制御する場合を例に説明したが、第1実施形態に係る太陽光発電システムPVS1において同様にしてもよい。すなわち、第1実施形態に係る太陽光発電システムPVS1において、連系点電力P(t)の代わりにシステム総出力Ptotal(t)を出力指令値PCに制御した場合も、抑制指標prを用いて、出力抑制制御を行うことができる。この場合も、システム総出力Ptotal(t)を目標電力(出力指令値PC)にしつつ、集中管理装置の処理負荷を低減させることができる。
次に、第7実施形態に係る太陽光発電システムPVS7について説明する。なお、上記第6実施形態と同一あるいは類似のものついては、同じ符号を付してその説明を省略する。図23は、太陽光発電システムPVS7の全体構成を示している。同図に示すように、太陽光発電システムPVS7は、複数台の太陽電池SPi、複数台のパワーコンディショナPCSPVi、複数台の蓄電池Bk、複数台のパワーコンディショナPCSBk、集中管理装置MC7、および、電力負荷Lを有して構成される。したがって、上記第6実施形態に係る太陽光発電システムPVS6と比較して、電力負荷Lをさらに備えている点で異なる。
図24は、図23に示す太陽光発電システムPVS7の出力抑制制御に関する制御系の機能構成を示している。なお、図24においては、太陽電池SPiおよび蓄電池Bkの図示を省略している。また、それぞれ1台目のパワーコンディショナPCSPVi,PCSBkのみ記載している。同図に示すように、第7実施形態に係る各パワーコンディショナPCSPVi,PCSBk、および、集中管理装置MC7の構成は、上記第6実施形態に係る各パワーコンディショナPCSPVi,PCSBk、および、集中管理装置MC6の構成(図22参照)とそれぞれ同じである。
本実施形態に係る太陽光発電システムPVS7においても、上記第6実施形態と同様に、算出したシステム総出力Ptotal(t)に基づいて、抑制指標prPVおよび充放電指標prBを用いた出力抑制制御を行うことができる。したがって、上記第6実施形態と同様に、システム総出力Ptotal(t)を目標電力(出力指令値PC)にしつつ、集中管理装置MC7の処理負荷を低減させることができる。
上記第7実施形態においては、上記第6実施形態に係る太陽光発電システムPVS6に対して、電力負荷Lを追加した場合を例に説明したが、太陽光発電システムPVS1に対して、電力負荷Lを追加し、かつ、連系点電力P(t)の代わりにシステム総出力Ptotal(t)を出力指令値PCに制御する太陽光発電システムにおいても、上記抑制指標prを用いて、出力抑制制御を行うことができる。この場合も、システム総出力Ptotal(t)を目標電力(出力指令値PC)にするとともに、集中管理装置の処理負荷を低減させることができる。
次に、第8実施形態に係る太陽光発電システムPVS8について説明する。太陽光発電システムPVS8の全体構成は、上記第7実施形態に係る太陽光発電システムPVS7(図23参照)と略同じである。上記第6実施形態および第7実施形態においては、システム総出力Ptotal(t)に対して各種目標電力を設定したが、本実施形態においては、複数台のパワーコンディショナを複数のグループに分け、当該グループ毎に目標電力を設定している。すなわち、太陽光発電システムPVS8は、複数のグループ毎に、各グループの総出力電力(以下「グループ総出力」という。)を各グループに対して設定された目標電力(以下、「グループ目標値PTgrp」という。)に一致させる。以下の説明においては、複数台のパワーコンディショナPCSPVi,PCSBkを、複数台のパワーコンディショナPCSPViの集合である太陽電池パワーコンディショナ群(以下、「太陽電池PCS群」という。)GPVと複数台のパワーコンディショナPCSBkの集合である蓄電池パワーコンディショナ群(以下、「蓄電池PCS群」という。)GBとの2つグループに分けた場合を例に説明する。
第8実施形態に係る太陽光発電システムPVS8は、上記太陽電池PCS群GPVと上記蓄電池PCS群GBとにおいて、それぞれグループ目標値PTgrpを設定し、太陽電池PCS群GPVのグループ総出力および蓄電池PCS群GBのグループ総出力がそれぞれグループ目標値PTgrpになるように制御する。この制御を「スケジュール制御」という。なお、太陽電池PCS群GPVのグループ総出力は、各パワーコンディショナPCSPViの個別出力電力PPVi outの総和ΣPPVi outであり、以下、太陽電池PCS群総出力PGPVとする。また、蓄電池PCS群GBのグループ総出力は、各パワーコンディショナPCSBkの個別出力電力PBk outの総和ΣPBk outであり、以下、蓄電池PCS群総出力PGBとする。
図25は、太陽光発電システムPVS8のスケジュール制御に関する制御系の機能構成を示している。なお、図25においては、太陽電池SPiおよび蓄電池Bkの図示を省略している。また、それぞれ1台目のパワーコンディショナPCSPVi,PCSBkのみ記載している。当該スケジュール制御に関する制御系として、上記第7実施形態に係る太陽光発電システムPVS7と比較して、次の点で異なる。すなわち、集中管理装置MC8は、総出力算出部62の代わりに総出力算出部62’を、また、指標算出部63の代わりに指標算出部63’を備えている。
集中管理装置MC8においては、目標電力設定部21は、太陽電池PCS群総出力PGPVの目標値である太陽電池PCS群目標値PTPVおよび蓄電池PCS群総出力PGBの目標値である蓄電池PCS群目標値PTBをグループ目標値PTgrpとして設定する。すなわち、目標電力設定部21は、太陽電池PCS群GPVに対するグループ目標値PTgrpとして太陽電池PCS群目標値PTPVを設定し、蓄電池PCS群GBに対するグループ目標値PTgrpとして蓄電池PCS群目標値PTBを設定する。太陽電池PCS群目標値PTPVおよび蓄電池PCS群目標値PTBは、上記所定の時間帯毎に設定可能である。これらの目標値は、ユーザが自由に指定できる。目標電力設定部21は、設定したグループ目標値PTgrp(太陽電池PCS群目標値PTPVおよび蓄電池PCS群目標値PTB)を指標算出部63’に出力する。
総出力算出部62’は、太陽電池PCS群総出力PGPVおよび蓄電池PCS群総出力PGBをそれぞれ算出する。具体的には、総出力算出部62’は、受信部61が受信したパワーコンディショナPCSPViの個別出力電力PPVi outを加算し、太陽電池PCS群総出力PGPVを算出する。また、総出力算出部62’は、受信部61が受信したパワーコンディショナPCSBkの個別出力電力PBk outを加算し、蓄電池PCS群総出力PGBを算出する。
指標算出部63’は、総出力算出部62’が算出した太陽電池PCS群総出力P
GPVを、目標電力設定部21から入力される太陽電池PCS群目標値P
TPVにするための抑制指標pr
PVを算出する。このとき、指標算出部63’は、下記(34)式を用いて、抑制指標pr
PVを算出する。なお、下記(34)式において、λ
PVは複数台のパワーコンディショナPCS
PViに対するラグランジュ乗数、ε
PVは複数台のパワーコンディショナPCS
PViに対する勾配係数を示している。また、太陽電池PCS群総出力P
GPVおよび太陽電池PCS群目標値P
TPVが時間tに対して変化する値であるため、それぞれ太陽電池PCS群総出力をP
GPV(t)、太陽電池PCS群目標値をP
TPV(t)と記載している。よって、指標算出部63’は、上記(9)式において、連系点電力P(t)の代わりに太陽電池PCS群総出力P
GPV(t)を、出力指令値P
C(t)の代わりに太陽電池PCS群目標値P
TPV(t)を用いて、ラグランジュ乗数λ
PVを算出する。そして、算出したラグランジュ乗数λ
PVを抑制指標pr
PVとする。指標算出部63’は、算出した抑制指標pr
PVを、送信部24’を介して、各パワーコンディショナPCS
PViに送信する。
また、指標算出部63’は、総出力算出部62’が算出した蓄電池PCS群総出力P
GBを、目標電力設定部21から入力される蓄電池PCS群目標値P
TBにするための充放電指標pr
Bを算出する。このとき、指標算出部63’は、下記(35)式を用いて、充放電指標pr
Bを算出する。なお、下記(35)式において、λ
Bは複数台のパワーコンディショナPCS
Bkに対するラグランジュ乗数、ε
Bは複数台のパワーコンディショナPCS
Bkに対する勾配係数を示している。また、蓄電池PCS群総出力P
GBおよび蓄電池PCS群目標値P
TBが時間tに対して変化する値であるため、それぞれ蓄電池PCS群総出力をP
GB(t)、蓄電池PCS群目標値をP
TB(t)と記載している。よって、指標算出部63’は、上記(9)式において、連系点電力P(t)の代わりに蓄電池PCS群総出力P
GB(t)を、出力指令値P
C(t)の代わりに蓄電池PCS群目標値P
TB(t)を用いて、ラグランジュ乗数λ
Bを算出する。そして、算出したラグランジュ乗数λ
Bを充放電指標pr
Bとする。指標算出部63’は、算出した充放電指標pr
Bを、送信部24’を介して、各パワーコンディショナPCS
Bkに送信する。
このように構成された太陽光発電システムPVS8において、集中管理装置MC8は、各パワーコンディショナPCSPViから個別出力電力PPVi outを入手し、太陽電池PCS群総出力PGPVを算出する。そして、算出した太陽電池PCS群総出力PGPVが太陽電池PCS群目標値PTPVとなるように、上記(34)式を用いて、抑制指標prPVを算出する。算出された抑制指標prPVは、各パワーコンディショナPCSPViに送信される。各パワーコンディショナPCSPViはそれぞれ、受信した抑制指標prPVを用いて、個別目標電力PPVi refを算出し、個別出力電力PPVi outが個別目標電力PPVi refとなるように制御する。また、集中管理装置MC8は、パワーコンディショナPCSBkから個別出力電力PBk outを入手し、蓄電池PCS群総出力PGBを算出する。そして、算出した蓄電池PCS群総出力PGBが蓄電池PCS群目標値PTBとなるように、上記(35)式を用いて、充放電指標prBを算出する。算出された充放電指標prBは、各パワーコンディショナPCSBkに送信される。各パワーコンディショナPCSBkはそれぞれ、受信した充放電指標prBを用いて、個別目標電力PBk refを算出し、個別出力電力PBk outが個別目標電力PBk refとなるように制御する。これらにより、太陽電池PCS群総出力PGPVが太陽電池PCS群目標値PTPVとなり、また、蓄電池PCS群総出力PGBが蓄電池PCS群目標値PTBとなる。
以上のことから、本実施形態に係る太陽光発電システムPVS8によれば、複数のグループ毎(太陽電池PCS群GPVおよび蓄電池PCS群GB毎)にグループ目標値PTgrp(太陽電池PCS群目標値PTPVおよび蓄電池PCS群目標値PTB)を設定して、太陽電池PCS群総出力PGPVを太陽電池PCS群目標値PTPVに、そして、蓄電池PCS群総出力PGBを蓄電池PCS群目標値PTBにすることができる。また、パワーコンディショナPCSPVi,PCSBkがそれぞれ、抑制指標prPV,充放電指標prBに基づいて、分散的に個別目標電力PPVi ref,PBk refを算出するので、集中管理装置MC8の処理負荷を低減させることができる。
上記第8実施形態においては、太陽電池PCS群GPVおよび蓄電池PCS群GB毎に目標電力(太陽電池PCS群目標値PTPVおよび蓄電池PCS群目標値PTB)を設定した場合を例に説明したが、いずれか一方のみであってもよい。
上記第8実施形態においては、複数台のパワーコンディショナPCSPVi,PCSBkを、複数台のパワーコンディショナPCSPViの集合である太陽電池PCS群GPVと複数台のパワーコンディショナPCSBkの集合である蓄電池PCS群GBとの2つのグループに分けた場合を例に説明したが、これに限定されない。例えば、太陽電池PCS群GPVをさらに複数のグループに分割して、当該グループ毎にグループ目標値PTgrpを設定するようにしてもよい。なお、蓄電池PCS群GBについても同様である。また、1つのグループに1台以上のパワーコンディショナPCSPViおよび1台以上のパワーコンディショナPCSBkの両方が含むようにグループ分けして、当該グループ毎にグループ目標値PTgrpを設定するようにしてもよい。この場合、上記(21)式および上記(22)式を用いて、グループ毎に、抑制指標prPVおよび充放電指標prBを算出すればよい。
上記第8実施形態においては、複数のグループに分ける場合を説明したが、複数のグループに分けず、複数台のパワーコンディショナPCSPVi,PCSBkを1つのグループとして、スケジュール制御をしてもよい。すなわち、ユーザが所定の時間帯毎にシステム総出力Ptotal(t)の目標値であるシステム目標値PTcalを自由に設定し、システム総出力Ptotal(t)を当該システム目標値PTcalに一致させるように制御してもよい。なお、このように1つのグループとしてスケジュール制御を行う場合は、システム総出力Ptotal(t)ではなく、連系点電力P(t)を用いてもよい。つまり、上記第1実施形態ないし上記第5実施形態に係る太陽光発電システムPVS1〜PVS5において、目標電力として、所定の時間帯毎に連系点電力P(t)の目標値である連系点目標値PTdetを自由に設定し、連系点電力P(t)を当該連系点目標値PTdetに一致させるようにしてもよい。
上記第7実施形態および第8実施形態においてはそれぞれ、出力抑制制御、スケジュール制御を個々に実装した太陽光発電システムPVS7,PVS8について説明したが、これらを組み合わせることも可能である。この場合、集中管理装置が適宜いずれの制御を行うかを切り替えるようにすればよい。例えば、ユーザの操作に応じて切り替えるようにしてもよいし、状況(電力会社から抑制指示を受けているか、太陽電池PCS群目標値PTPVや蓄電池PCS群目標値PTBが設定されているかなど)に応じて自動的に切り替えるようにしてもよい。
上記第7実施形態および第8実施形態においては、集中管理装置MC7,MC8が、各パワーコンディショナPCSPVi,PCSBkから個別出力電力PPVi out,PBk outを入手する構成を備えた場合を例に説明したが、さらに、電力負荷Lの消費電力を、電力負荷Lから入手する構成を追加してもよい。このように電力負荷Lの消費電力が入手可能な場合、各パワーコンディショナPCSPVi,PCSBkから入手した個別出力電力PPVi out,PBk outと電力負荷Lから入手した消費電力との総和を算出することで、連系点電力P(t)を推算することができる。したがって、連系点電力検出部22を備えていなくても、上記第3実施形態に係る出力抑制制御、上記第4実施形態に係るピークカット制御、および、上記第5実施形態に係る逆潮流回避制御を行うことができる。
上記第3実施形態ないし第5実施形態においてはそれぞれ、連系点電力P(t)に基づいて、出力抑制制御、ピークカット制御、逆潮流回避制御を行う場合を例に説明し、上記第7実施形態および第8実施形態においてはそれぞれ、システム総出力Ptotal(t),太陽電池PCS群総出力PGPVおよび蓄電池PCS群総出力PGBに基づいて、出力抑制制御、スケジュール制御を行う場合を例にそれぞれ説明したが、これに限定されない。連系点電力P(t)を検出する手段(連系点電力検出部22)およびパワーコンディショナPCSPVi,PCSBkからそれぞれ個別出力電力PPVi out,PBk outを入手する手段の両方を備えておき、出力抑制制御、ピークカット制御、逆潮流回避制御、および、スケジュール制御を複合的に制御するようにしてもよい。
次に、第9実施形態に係る太陽光発電システムPVS9について説明する。本実施形態に係る太陽光発電システムPVS9は、複数台の太陽電池SPi、複数台のパワーコンディショナPCSPVi、複数台の蓄電池Bk、複数台のパワーコンディショナPCSBk、および、集中管理装置MC9を有している。太陽光発電システムPVS9の全体構成は、上記第2実施形態に係る太陽光発電システムPVS2と同じである(図12参照)。太陽光発電システムPVS9は電力系統Aに連系している。太陽電池SPiが接続されたパワーコンディショナPCSPViはそれぞれ、電力系統Aとの連系点に接続され、また、蓄電池Bkが接続されたパワーコンディショナPCSBkもそれぞれ、電力系統Aとの連系点に接続されている。また、集中管理装置MC9は、複数台のパワーコンディショナPCSPVi,PCSBkの各々と通信可能である。集中管理装置MC9は、連系点電力P(t)を検出して、当該連系点電力P(t)と目標電力に基づいて、上記指標を算出する。そして、これを複数台のパワーコンディショナPCSPVi,PCSBkに送信する。本実施形態に係る太陽光発電システムPVS9は上記電力負荷Lを有しておらず、太陽光発電システムPVS9の出力電力はすべて電力系統Aに出力される。すなわち、太陽光発電システムPVS9は、全量買取型の太陽光発電システムである。
上記第1実施形態ないし第8実施形態においては、出力抑制制御、ピークカット制御、逆潮流回避制御、および、スケジュール制御のうち、いずれか1つの制御を行う場合を説明した。しかし、これらの各種制御のうち少なくとも2つ以上の制御を切り替えて行うようにしてもよい。例えば、複数の制御モードを設定可能にしておき、当該制御モードの設定を切り替えることで、上記各種制御を切り替えるようにする。当該制御モードとしては、上記出力抑制制御を行う出力抑制モード、上記ピークカット制御を行うピークカットモード、上記逆潮流回避制御を行う逆潮流回避モード、そして、上記スケジュール制御を行うスケジュールモードなどがある。本実施形態においては、上記スケジュール制御において、システムスケジュール制御とグループスケジュール制御とを区別して説明する。システムスケジュール制御は、システム総出力Ptotal(t)を上記システム目標値PTcalに一致させるスケジュール制御、あるいは、連系点電力P(t)を上記連系点目標値PTdetに一致させるスケジュール制御である。当該システムスケジュール制御を行う制御モードをシステムスケジュールモードという。グループスケジュール制御は、上記グループ総出力を上記グループ目標値PTgrpに一致させるスケジュール制御である。当該グループスケジュール制御を行う制御モードをグループスケジュールモードという。そこで、本実施形態に係る太陽光発電システムPVS9においては、制御モードとして出力抑制モードとシステムスケジュールモードとを有し、これらの制御モードを切り替える場合を説明する。
図26は、太陽光発電システムPVS9が行う制御モード切替の制御系機能構成を示している。なお、図26においては、太陽電池SPiおよび蓄電池Bkの図示を省略している。また、それぞれ1台目のパワーコンディショナPCSPVi,PCSBkのみ記載している。太陽光発電システムPVS9は、当該制御モード切替の制御系において、上記太陽光発電システムPVS2と比較して、集中管理装置MC2の代わりに集中管理装置MC9を有している点で異なる。当該集中管理装置MC9は、図26に示すように、モード設定部91、目標電力設定部21、連系点電力検出部22、指標算出部93、および、送信部24’を備えている。
モード設定部91は、上記制御モードを設定し、その設定情報を、目標電力設定部21および指標算出部93に出力する。ユーザが図示しない操作部を用いて制御モードの設定操作を行うと、その設定操作に対する操作信号がモード設定部91に入力される。そして、モード設定部91はその操作信号に基づいて、制御モードを設定する。モード設定部91によって新たに制御モードが設定されることで制御モードが切り替わる。モード設定部91は、本実施形態において、上記するように、制御モードとして出力抑制モードおよびシステムスケジュールモードを設定可能である。すなわち、モード設定部91は、出力抑制モードとシステムスケジュールモードとの間の切り替えを行う。なお、太陽光発電システムPVS9におけるシステムスケジュールモードでは、連系点電力P(t)を上記連系点目標値PTdetに一致させるシステムスケジュール制御を行う。
目標電力設定部21は、本実施形態において、設定された制御モードに基づいて、当該制御モードに応じた目標電力を設定する。設定された制御モードが、出力抑制モードの場合に上記出力指令値PCを、システムスケジュールモードの場合に上記連系点目標値PTdetを、それぞれ目標電力として設定する。目標電力設定部21は、設定した目標電力を指標算出部93に出力する。なお、出力抑制モードが設定されている場合に、電力会社からの出力抑制の指令がなければ、上記第1実施形態に示したように、当該指令がないことを指標算出部93に伝達する。
指標算出部93は、調整対象電力を目標電力に一致させるための指標を算出する。本実施形態においては、調整対象電力は、連系点電力検出部22が検出した連系点電力P(t)である。指標算出部93は、設定されている制御モードが出力抑制モードの場合、上記(21)式に基づいて、ラグランジュ乗数λを算出する。また、設定されている制御モードがシステムスケジュールモードの場合、上記(21)式における出力指令値PC(t)の代わりに連系点目標値PTdetを用いて、ラグランジュ乗数λを算出する。そして、ラグランジュ乗数λを算出すると、上記(22)式により、当該ラグランジュ乗数λを抑制指標prPVおよび充放電指標prBとして算出する。指標算出部93は、送信部24’を介して、算出した抑制指標prPVを各パワーコンディショナPCSPViに送信し、算出した充放電指標prBを各パワーコンディショナPCSBkに送信する。
指標算出部93は、上記設定情報に基づいて、制御モードが切り替わったと判断した場合に、抑制指標prPVおよび充放電指標prBを初期化する。本実施形態においては、指標算出部93は、設定されている制御モードとは異なる制御モードが新たに設定された場合に、制御モードが切り替わったと判断する。そして、ラグランジュ乗数λを新たに設定された制御モードに応じた初期値にする。当該初期値は各種制御モード毎に予め設定されている。指標算出部93は、ラグランジュ乗数λを上記初期値にした後、上記(22)式により、当該ラグランジュ乗数λを抑制指標prPVおよび充放電指標prBとする。このようにして、抑制指標prPVおよび充放電指標prBを初期化している。そして、指標算出部93は、送信部24’を介して、初期化した抑制指標prPVおよび充放電指標prBを送信する。本実施形態においては、ラグランジュ乗数λは、上記(21)式により算出されている。この上記(21)式は、算出するラグランジュ乗数をλa、前回算出したラグランジュ乗数をλa-1とすると、下記(21’)式に置き換えることができる。この下記(21’)式から分かるように、新たに算出されるラグランジュ乗数λ(λa)は、前回算出されたラグランジュ乗数λ(λa-1)に左右される。したがって、ラグランジュ乗数λを初期値にすることで、抑制指標prPVおよび充放電指標prBが初期化された状態から、新たに設定された制御モードに基づいて、ラグランジュ乗数λ(抑制指標prPVおよび充放電指標prB)の算出を開始する。
λa=λa-1+ε×(P(t)−PC(t))・・・(21’)
ここで、本実施形態における、抑制指標prPVと各パワーコンディショナPCSPViの個別出力電力PPVi outとの関係、および、充放電指標prBと各パワーコンディショナPCSBkの個別出力電力PBk outとの関係について説明する。
本実施形態においては、各パワーコンディショナPCSPViの有効電力抑制に関する重みwPVi(上記(19a)式参照)および各パワーコンディショナPCSBkの有効電力に関する重みwBk(上記(20a)式参照)が以下に示すように設定されている。
具体的には、各パワーコンディショナPCSPViの有効電力抑制に関する重みwPViとして、下記(37)式で算出される値を用いる。下記(37)式において、prPV lmtは、抑制指標限界を示している。当該抑制指標限界prPV lmtは、個別出力電力PPVi outを0にするときの抑制指標、すなわち、個別出力電力PPVi outを100%抑制するときの抑制指標である。また、PPVi lmtは、上記各パワーコンディショナPCSPViの定格出力である。なお、各パワーコンディショナPCSPViの定格出力PPVi lmtの代わりに、疑似有効出力限界Pφiを用いてもよい。すなわち、下記(37’)式で算出される値を用いてもよい。
wPVi=prPV lmt/(2×PPVi lmt)・・・(37)
wPVi=prPV lmt/(2×Pφi)・・・(37’)
図27(a)は、上記(37)式を用いて有効電力抑制に関する重みwPViを設定したときの、抑制指標prPVと個別出力電力PPVi outとの関係を示している。図27(a)において、実線は定格出力PPVi lmtが500kWのパワーコンディショナPCSPViのときを、破線は定格出力PPVi lmtが250kWのパワーコンディショナPCSPViのときを、一点鎖線は定格出力PPVi lmtが100kWのパワーコンディショナPCSPViのときをそれぞれ示している。また、上記(37)式における上記抑制指標限界prPV lmtを100とした。
図27(a)が示すように、抑制指標prPVが0から100(抑制指標限界prPV lmt)の間で20上昇する毎に、定格出力PPVi lmtが500kWの場合100kW、定格出力PPVi lmtが250kWの場合50kW、定格出力PPVi lmtが100kWの場合20kWずつ低下している。これは、各パワーコンディショナPCSPViの定格出力PPVi lmtの20%ずつ低下していることになる。すなわち、各パワーコンディショナPCSPViの定格出力PPVi lmtに対する割合で個別出力電力PPVi outを抑制している。したがって、同じ抑制指標prPVの変化量であっても、各パワーコンディショナPCSPViの定格出力PPVi lmtに応じて個別出力電力PPVi outの抑制量が変化している。また、各パワーコンディショナPCSPViはともに、抑制指標prPVが上記抑制指標限界prPV lmtのときに、個別出力電力PPVi outが0となっている。すなわち、100%抑制している。さらに、抑制指標prPVが0のときに、個別出力電力PPVi outが定格出力PPVi lmtとなっている。すなわち、最大限出力可能な電力が出力されている。そして、図27(a)に示すように、抑制指標prPVが0から抑制指標限界prPV lmt(100)の間では、各パワーコンディショナPCSPViの個別出力電力PPVi outが線形的に変化している。なお、各パワーコンディショナPCSPViは、その定格出力PPVi lmt以上の電力を出力できないため、抑制指標prPVが負の値であるときは一定値(定格出力PPVi lmt)となっている。
同様に、各パワーコンディショナPCSBkの有効電力に関する重みwBkとして、下記(38)式で算出される値を用いる。下記(38)式において、prB lmtは、充放電指標限界を示している。当該充放電指標限界prB lmtは、最大限出力可能な電力で蓄電池Bkを充放電するときの充放電指標、すなわち、個別出力電力PBk outが定格出力PBk lmtの100%で充放電するときの充放電指標である。また、wSOCkは、上記蓄電池BkのSOCに応じた重みを示しており、PBk maxは、蓄電池Bkにおける各種制約を考慮したときに最大限出力可能な電力(以下、「制約最大出力」という。)を示している。当該制約最大出力PBk maxは、上記蓄電池Bkの充電定格出力PSMk lmt、上記蓄電池Bkの放電定格出力PSPk lmtおよびパワーコンディショナPCSBkの定格出力PBk lmtに基づいて設定される。具体的には、充電定格出力PSMk lmtの正負の符号を反転させた値と放電定格出力PSPk lmtの値とを比較し、いずれか大きい方の値を求める。そして、この大きい方の値と、定格出力PBk lmtの値とを比較し、いずれか小さい方の値を制約最大出力PBk maxとして設定する。
wBk=prB lmt/(2×wSOCk×PBk max)・・・(38)
図27(b)は、上記(38)式を用いて有効電力に関する重みwBkを設定したときの、充放電指標prBと個別出力電力PBk outとの関係を示している。図27(b)において、実線は定格出力PBk lmtが500kWのパワーコンディショナPCSBkのときを、破線は定格出力PBk lmtが250kWのパワーコンディショナPCSBkのときを、一点鎖線は定格出力PBk lmtが100kWのパワーコンディショナPCSBkのときをそれぞれ示している。また、上記(38)式における上記充放電指標限界prB lmtを100とした。
図27(b)が示すように、充放電指標prBが−100(充放電指標限界prB lmtを負の値にしたもの)から100(充放電指標限界prB lmt)の間で20上昇する毎に、定格出力PBk lmtが500kWの場合100kW、定格出力PBk lmtが250kWの場合50kW、定格出力PBk lmtが100kWの場合20kWずつ低下している。これは、各パワーコンディショナPCSBkの定格出力PBk lmtの20%ずつ低下していることになる。すなわち、各パワーコンディショナPCSBkの定格出力PBk lmtに対する割合で個別出力電力PBk outを制御している。したがって、同じ充放電指標prBの変化量であっても、パワーコンディショナPCSBkの定格出力PBk lmtに応じて、蓄電池Bkの充放電量が変化している。また、各パワーコンディショナPCSBkはともに、充放電指標prBが充放電指標限界prB lmtを負の値にしたもの(−prB lmt)であるときに、定格出力PBk lmtと同じ値の個別出力電力PBk outで蓄電池Bkを放電する。一方、充放電指標prBが充放電指標限界prB lmtであるときに、定格出力PBk lmtと同じ値の個別出力電力PBk outで蓄電池Bkを充電している。すなわち、最大限出力可能な電力で蓄電池Bkを充放電している。さらに、充放電指標prBが0のときに、個別出力電力PBk outが0になっている。そして、図27(b)に示すように、個別出力電力PBk outが線形的に変化している。
本実施形態においては、上記抑制指標限界prPV lmtおよび上記充放電指標限界prB lmtを同じ値Xにしている。以下の説明において、この値Xを指標限界値という。図27は、当該指標限界値を100とした場合を示している。なお、指標限界値は、これに限定されない。このように、上記抑制指標限界prPV lmtおよび上記充放電指標限界prB lmtを同じ値X(指標限界値)にすることで、太陽光発電システムPVS9の出力特性を次のようにすることができる。すなわち、抑制指標prPVおよび充放電指標prBが上記指標限界値であるときに、各パワーコンディショナPCSPViの個別出力電力PPVi outは「0」となり、かつ、各パワーコンディショナPCSBkの個別出力電力PBk outは当該パワーコンディショナPCSBkの定格出力PBk lmtの正負を反対にした値となる(図27参照)。よって、抑制指標prPVおよび充放電指標prBが上記指標限界値(X)であるときに、各パワーコンディショナPCSPViはその出力を100%抑制する状態となり、かつ、各パワーコンディショナPCSBkは最大限出力可能な電力で蓄電池Bkを充電する状態となる。また、抑制指標prPVおよび充放電指標prBが上記指標限界値の正負を反対にした値(−Xであり、以下、「負の指標限界値」という。)であるときに、各パワーコンディショナPCSPViの個別出力電力PPVi outは当該パワーコンディショナPCSPViの定格出力PPVi lmt(最大限出力可能な電力)となり、かつ、各パワーコンディショナPCSBkの個別出力電力PBk outは当該パワーコンディショナPCSBkの定格出力PBk lmtの値となる(図27参照)。よって、抑制指標prPVおよび充放電指標prBが上記負の指標限界値であるときに、各パワーコンディショナPCSPViはその出力を抑制しない状態となり、かつ、各パワーコンディショナPCSBkは最大限出力可能な電力で蓄電池Bkを放電する状態となる。さらに、抑制指標prPVおよび充放電指標prBが「0」であるときに、各パワーコンディショナPCSPViの個別出力電力PPVi outは当該パワーコンディショナPCSPViの定格出力PPVi lmt(最大限出力可能な電力)となり、かつ、各パワーコンディショナPCSBkの個別出力電力PBk outは「0」となる(図27参照)。よって、抑制指標prPVおよび充放電指標prBが「0」であるときに、各パワーコンディショナPCSPViはその出力を抑制しない状態となり、かつ、各パワーコンディショナPCSBkは蓄電池Bkを充電も放電もしない状態となる。上記各種制御モードに応じた初期値は、上記のような関係に基づいて設定されている。
本実施形態において、指標算出部93は、出力抑制モードに切り替わったときに、次の状態になるように、抑制指標prPVおよび充放電指標prBを初期化する。すなわち、各パワーコンディショナPCSPViがその出力を抑制しない状態となり、かつ、各パワーコンディショナPCSBkが蓄電池Bkを充電も放電もしない状態となるように初期化する。具体的には、抑制指標prPVおよび充放電指標prB(すなわちラグランジュ乗数λ)を「0」に初期化する(図27参照)。したがって、当該出力抑制モードに応じた初期値として「0」を用いる。そして、指標算出部93が抑制指標prPVおよび充放電指標prBを初期化した後、太陽光発電システムPVS9において出力抑制制御が行われる。これにより、連系点電力P(t)が出力指令値PCに一致するように、各パワーコンディショナPCSPViが個別出力電力PPVi outを制御し、各パワーコンディショナPCSBkが個別出力電力PBk outを制御する。
また、指標算出部93は、システムスケジュールモードに切り替わったときに、次の状態になるように、抑制指標prPVおよび充放電指標prBを初期化する。すなわち、各パワーコンディショナPCSPViがその出力を抑制しない状態となり、かつ、各パワーコンディショナPCSBkが蓄電池Bkを充電も放電もしない状態となるように初期化する。具体的には、抑制指標prPVおよび充放電指標prB(すなわちラグランジュ乗数λ)を「0」に初期化する(図27参照)。したがって、当該システムスケジュールモードに応じた初期値として「0」を用いる。そして、指標算出部93が抑制指標prPVおよび充放電指標prBを初期化した後、太陽光発電システムPVS9においてシステムスケジュール制御が行われる。これにより、連系点電力P(t)が連系点目標値PTdetに一致するように各パワーコンディショナPCSPViが個別出力電力PPVi outを制御し、各パワーコンディショナPCSBkが個別出力電力PBk outを制御する。
太陽光発電システムPVS9は、以上のように構成され、複数の制御モードの切り替えにより、設定された制御モードに応じた制御を行っている。すなわち、出力抑制モードが設定されている場合、上記連系点電力P(t)による出力抑制制御を行い、システムスケジュールモードが設定されている場合、上記連系点電力P(t)によるシステムスケジュール制御を行う。
次に、上記太陽光発電システムPVS9において、さらに電力負荷Lが連系点に接続された場合を、太陽光発電システムPVS9’として説明する。すなわち、太陽光発電システムPVS9’の全体構成は、上記第3実施形態に係る太陽光発電システムPVS3の全体構成(図17参照)と同じである。このように電力負荷Lを有している場合、太陽電池SPiによる発電量や電力負荷Lの電力消費量などにより、電力系統Aから太陽光発電システムPVS9’に電力を供給されることもある。そこで、太陽光発電システムPVS9’(モード設定部91)は、出力抑制モードおよびシステムスケジュールモードに加え、上記ピークカット制御を行うピークカットモードも設定可能である。すなわち、太陽光発電システムPVS9’は、出力抑制モードと、システムスケジュールモードと、ピークカットモードとの間の切り替えを行う。
太陽光発電システムPVS9’において、目標電力設定部21は、ピークカットモードが設定されると、上記ピークカット目標値Pcutを目標電力として設定する。また、太陽光発電システムPVS9’において、指標算出部93は、ピークカットモードに切り替わったときに、次の状態になるように、抑制指標prPVおよび充放電指標prBを初期化する。すなわち、各パワーコンディショナPCSPViがその出力を抑制しない状態となり、かつ、各パワーコンディショナPCSBkが蓄電池Bkを充電も放電もしない状態となるように初期化する。具体的には、抑制指標prPVおよび充放電指標prB(すなわちラグランジュ乗数λ)を「0」に初期化する(図27参照)。したがって、当該ピークカットモードに応じた初期値として「0」を用いる。そして、指標算出部93が抑制指標prPVおよび充放電指標prBを初期化した後、太陽光発電システムPVS9’においてピークカット制御が行われる。これにより、連系点電力P(t)がピークカット目標値Pcutに一致するように、各パワーコンディショナPCSPViが個別出力電力PPVi outを制御し、各パワーコンディショナPCSBkが個別出力電力PBk outを制御する。なお、太陽光発電システムPVS9’において、出力抑制モードおよびシステムスケジュールモードに切り替わった場合は、上記太陽光発電システムPVS9と同様に初期化する。すなわち、太陽光発電システムPVS9’においても、出力抑制モードおよびシステムスケジュールモードに応じた初期値は「0」である。
続いて、上記太陽光発電システムPVS9’において、さらに逆電力継電器51が連系点に設置された場合を、太陽光発電システムPVS9”として説明する。すなわち、太陽光発電システムPVS9”の全体構成は、上記第5実施形態に係る太陽光発電システムPVS5の全体構成と同様である。太陽光発電システムPVS9”は、逆潮流が禁止されているために、逆電力継電器51が設置されている。そこで、太陽光発電システムPVS9”(モード設定部91)は、さらに上記逆潮流回避制御を行う逆潮流回避モードを設定可能にしている。すなわち、太陽光発電システムPVS9”(モード設定部91)は、出力抑制モードと、システムスケジュールモードと、ピークカットモードと、逆潮流回避モードとの間の切り替えを行う。ただし、逆潮流が禁止されている太陽光発電システムPVS9”は、電力系統Aへの逆潮流を行わないため、出力抑制モードを備えていなくてもよい。
太陽光発電システムPVS9”において、目標電力設定部21は、逆潮流回避モードが設定されると、上記逆潮流回避目標値PRPRを目標電力として設定する。また、太陽光発電システムPVS9”において、指標算出部93は、逆潮流回避モードに切り替わったときに、次の状態になるように、抑制指標prPVおよび充放電指標prBを初期化する。すなわち、各パワーコンディショナPCSPViがその出力を100%抑制する状態(個別出力電力PPVi outを「0」にする状態)となり、かつ、各パワーコンディショナPCSBkがその定格出力PBk lmtの100%で蓄電池Bkを充電する状態となるように初期化する。具体的には、抑制指標prPVおよび充放電指標prB(すなわちラグランジュ乗数λ)を上記指標限界値に初期化する(図27参照)。したがって、当該逆潮流回避モードに応じた初期値として指標限界値を用いる。そして、指標算出部93が抑制指標prPVおよび充放電指標prBを初期化した後、太陽光発電システムPVS9”において逆潮流回避制御が行われる。これにより、連系点電力P(t)が逆潮流回避目標値PRPRに一致するように、各パワーコンディショナPCSPViが個別出力電力PPVi outを制御し、各パワーコンディショナPCSBkが個別出力電力PBk outを制御する。なお、太陽光発電システムPVS9”において、出力抑制モード、システムスケジュールモード、および、ピークカットモードに切り替わった場合は、上記太陽光発電システムPVS9’と同様に初期化する。すなわち、太陽光発電システムPVS9”においても、出力抑制モード、システムスケジュールモード、および、ピークカットモードに応じた初期値は「0」である。ただし、太陽光発電システムPVS9”においては、システムスケジュールモードに応じた初期値として、好ましくは上記「0」の代わりに指標限界値を用いる。このようにすることで、システムスケジュールモードに切り替わると、各パワーコンディショナPCSPViはその出力を100%抑制する状態となり、かつ、各パワーコンディショナPCSBkはその定格出力PBk lmtの100%で蓄電池Bkを充電する状態となる。したがって、太陽光発電システムPVS9”は電力系統Aから電力を供給されるので、逆電力継電器51により解列される危険性をなくすことができる。
以上のことから、太陽光発電システムPVS9(PVS9’,PVS9”)によれば、集中管理装置MC9は、調整対象電力(連系点電力P(t))および目標電力から抑制指標prPVおよび充放電指標prBを算出する。そして、各パワーコンディショナPCSPViが当該抑制指標prPVを用いて個別目標電力PPVi refを算出し、各パワーコンディショナPCSBkが当該充放電指標prBを用いて個別目標電力PBk refを算出する。これにより、調整対象電力(連系点電力P(t))を目標電力の一致させることができる。また、集中管理装置MC9は、複数台のパワーコンディショナPCSPVi毎の個別目標電力PPVi refおよび複数台のパワーコンディショナPCSBk毎の個別目標電力PBk refを算出しておらず、抑制指標prPVおよび充放電指標prBを算出するだけである。したがって、集中管理装置MC9の処理負荷を低減することができる。
また、太陽光発電システムPVS9(PVS9’,PVS9”)によれば、複数の制御モードの設定が可能であり、設定される制御モードを切り替えることが可能である。したがって、ユーザは、利用形態に応じて、適宜利用したい制御モードに切り替えることができる。
また、太陽光発電システムPVS9(PVS9’,PVS9”)によれば、各種制御モードに応じて初期値を変えている。例えば、各種制御モードに対する初期値がすべて「0」である場合、いずれの制御モードに切り替えた場合であっても、各パワーコンディショナPCSPViがその出力を抑制しない状態となり、かつ、各パワーコンディショナPCSBkが蓄電池Bkを充電も放電もしない状態となるように初期化される。すなわち、各パワーコンディショナPCSPViは太陽電池SPiの発電量を最大限出力する状態になる。しかしながら、このような状態に初期化されると、例えば逆潮流回避モードにおいては、連系点電力P(t)が上昇して、逆潮流が発生する可能性がある。そのため、本実施形態では、出力抑制モードやピークカットモードと異なり、逆潮流回避モードに応じた初期値を上記指標限界値にしている。これにより、逆潮流回避モードに切り替わったときに、各パワーコンディショナPCSPViがその出力を100%抑制する状態となり、かつ、各パワーコンディショナPCSBkがその定格出力PBk lmtの100%で蓄電池Bkを充電する状態となるように初期化している。したがって、電力系統Aから電力を供給される状態になるので、上記逆潮流の発生を抑制することができる。すなわち、逆電力継電器51により解列される危険性を抑制することができる。また、例えば、各種制御モードに対する初期値がすべて指標限界値である場合、いずれの制御モードに切り変えた場合であっても、各パワーコンディショナPCSPViがその出力を100%抑制する状態となり、かつ、各パワーコンディショナPCSBkがその定格出力PBk lmtの100%で蓄電池Bkを充電する状態となるように初期化される。すなわち、電力系統Aから電力を供給される状態になる。しかしながら、このような状態に初期化されると、例えばピークカットモードにおいては、連系点電力P(t)が低下して、上記買電電力のピーク値を上昇させてしまう可能性がある。そのため、本実施形態では、逆潮流回避モードと異なり、ピークカットモードに応じた初期値を「0」にしている。これにより、ピークカットモードに切り替わったときに、各パワーコンディショナPCSPViがその出力を抑制しない状態となり、かつ、各パワーコンディショナPCSBkが蓄電池Bkを充電も放電もしない状態となるように初期化している。したがって、各パワーコンディショナPCSPViは太陽電池SPiの発電量を最大限出力する状態になり、各パワーコンディショナPCSPViの出力電力が電力負荷Lに供給されるので、上記買電電力のピーク値の上昇を抑制することができる。以上のことから、各種制御モードに応じて適宜初期値を変えることで、制御モードの切り替えに伴う初期化により、各種制御モードにとって適当な状態にすることができる。特に、逆電力継電器51を備えた太陽光発電システムPVS9”において、初期化による逆潮流の発生を抑制するのに有効である。
さらに、太陽光発電システムPVS9(PVS9’,PVS9”)によれば、制御モードを切り替えたときに、指標(抑制指標prPVおよび充放電指標prB)を、新たに設定された制御モードに応じた初期値に初期化している。これにより、各種制御モードにとって適当な状態から指標の算出を開始することができる。例えば、ピークカットモードを設定しているときに、電力会社から出力抑制が指令され、出力抑制モードに切り替えた場合を考える。ピークカットモードが設定され、ピークカット制御が行われている場合、連系点電力P(t)をできる限り上昇させようと、各パワーコンディショナPCSPViは太陽電池SPiの発電量を最大限出力し、かつ、各パワーコンディショナPCSBkは蓄電池Bkを放電する。このときの抑制指標prPVおよび充放電指標prBは負の値である(図27参照)。一方、出力抑制モードが設定され、出力抑制制御が行われている場合、各パワーコンディショナPCSPViはその出力を抑制したり、各パワーコンディショナPCSBkは蓄電池Bkを充電したりする。このときの抑制指標prPVおよび充放電指標prBは正の値である。したがって、抑制指標prPVおよび充放電指標prBを初期化せず、負の値から出力抑制制御を開始するより、抑制指標prPVおよび充放電指標prBを初期化して「0」から出力抑制制御を開始した方が、連系点電力P(t)が出力指令値PCに一致するまでの時間が早い。なお、上記したピークカットモードから出力抑制モードへの切り替えに限らず、いずれの制御モードに切り替えた場合も同様のことが起こりうる。よって、適当な状態から指標の算出を開始することで、連系点電力P(t)が目標電力に一致するまでの時間を短縮することができる。
次に、第10実施形態に係る太陽光発電システムPVS10について説明する。上記第9実施形態においては、連系点電力検出部22が検出した連系点電力P(t)を調整対象電力とした場合を説明した。本実施形態においては、連系点電力P(t)の代わりに上記システム総出力Ptotal(t)あるいは上記グループ総出力を調整対象電力とする場合について説明する。すなわち、太陽光発電システムPVS10は、システム総出力Ptotal(t)あるいは上記グループ総出力を、設定されている制御モードに応じた目標電力に一致させる場合について説明する。
本実施形態に係る太陽光発電システムPVS10は、複数台の太陽電池SPi、複数台のパワーコンディショナPCSPVi、複数台の蓄電池Bk、複数台のパワーコンディショナPCSBk、および、集中管理装置MC10を有している。太陽光発電システムPVS10の全体構成は、上記第6実施形態に係る太陽光発電システムPVS6と同じである(図21参照)。太陽光発電システムPVS10は電力系統Aに連系している。太陽電池SPiが接続されたパワーコンディショナPCSPViはそれぞれ、電力系統Aとの連系点に接続され、また、蓄電池Bkが接続されたパワーコンディショナPCSBkもそれぞれ、電力系統Aとの連系点に接続されている。また、集中管理装置MC10は、複数台のパワーコンディショナPCSPVi,PCSBkの各々と通信可能である。集中管理装置MC10は、各パワーコンディショナPCSPVi,PCSBkから個別出力電力PPVi out,PBk outの情報を取得し、当該個別出力電力PPVi out,PBk outに基づいて、システム総出力Ptotal(t)あるいは上記グループ総出力を算出する。そして、算出したシステム総出力Ptotal(t)あるいは上記グループ総出力と目標電力に基づいて、上記指標を算出し、これを複数台のパワーコンディショナPCSPVi,PCSBkに送信する。本実施形態に係る太陽光発電システムPVS10は、上記電力負荷Lを有しておらず、太陽光発電システムPVS10の出力電力はすべて電力系統Aに出力される。すなわち、太陽光発電システムPVS10は、全量買取型の太陽光発電システムである。
図28は、太陽光発電システムPVS10が行う制御モード切替の制御系機能構成を示している。当該制御モード切替において、太陽光発電システムPVS10は、上記太陽光発電システムPVS6と比較して、集中管理装置MC6の代わりに集中管理装置MC10を有している点で異なる。集中管理装置MC10は、図28に示すように、モード設定部91、目標電力設定部21、受信部61、総出力算出部62”、指標算出部93’、および、送信部24’を備えている。
モード設定部91は、本実施形態においては、上記制御モードとして、出力抑制モード、システムスケジュールモード、および、グループスケジュールモードを設定可能である。すなわち、本実施形態において、モード設定部91は、出力抑制モードと、システムスケジュールモードと、グループスケジュールモードとの間の切り替えを行う。なお、太陽光発電システムPVS10におけるシステムスケジュールモードでは、システム総出力Ptotal(t)を上記システム目標値PTcalに一致させるシステムスケジュール制御を行う。また、本実施形態においては、グループスケジュール制御として、上記第8実施形態と同様に、太陽電池PCS群GPVと蓄電池PCS群GBとの2つのグループに分けた場合を説明する。当該グループスケジュールモードが本発明の「スケジュールモード」に相当する。
目標電力設定部21は、本実施形態において、設定された制御モードが、出力抑制モードの場合に上記出力指令値PCを、システムスケジュールモードの場合に上記システム目標値PTcalを、グループスケジュールモードの場合に上記グループ目標値PTgrp(太陽電池PCS群目標値PTPVおよび蓄電池PCS群目標値PTB)をそれぞれ目標電力として設定する。
総出力算出部62”は、上記総出力算出部62と同様にシステム総出力Ptotal(t)を算出するとともに、上記総出力算出部62’と同様に太陽電池PCS群総出力PGPVおよび蓄電池PCS群総出力PGBを算出する。そして、これらを指標算出部93’に出力する。なお、本実施形態においては、システム総出力Ptotal(t)と、太陽電池PCS群総出力PGPVおよび蓄電池PCS群総出力PGBとの両方を算出する場合を説明するが、設定された制御モードに応じていずれかを算出するようにしてもよい。具体的には、設定された制御モードが出力抑制モードおよびシステムスケジュールモードの場合にシステム総出力Ptotal(t)を算出し、設定された制御モードがグループスケジュールモードの場合に太陽電池PCS群総出力PGPVおよび蓄電池PCS群総出力PGBを算出するようにしてもよい。
指標算出部93’は、上記指標算出部93と同様に、調整対象電力を目標電力に一致させるための指標を算出する。本実施形態においては、調整対象電力は、総出力算出部62”が算出したシステム総出力Ptotal(t)あるいは太陽電池PCS群総出力PGPVおよび蓄電池PCS群総出力PGBである。指標算出部93’は、設定されている制御モードが出力抑制モードの場合、上記(21)式における連系点電力P(t)の代わりにシステム総出力Ptotal(t)を用いて、ラグランジュ乗数λを算出する。また、設定されている制御モードがシステムスケジュールモードの場合、上記(21)式における連系点電力P(t)の代わりにシステム総出力Ptotal(t)を、出力指令値PC(t)の代わりにシステム目標値PTcalを用いて、ラグランジュ乗数λを算出する。そして、ラグランジュ乗数λを算出すると、上記(22)式により、当該ラグランジュ乗数λを抑制指標prPVおよび充放電指標prBとして算出する。さらに、指標算出部93’は、設定されている制御モードがグループスケジュールモードの場合、上記(34)式を用いてラグランジュ乗数λPVおよび抑制指標prPVを算出し、上記(35)式を用いてラグランジュ乗数λBおよび充放電指標prBを算出する。指標算出部93’は、送信部24’を介して、算出した抑制指標prPVを各パワーコンディショナPCSPViに送信し、算出した充放電指標prBを各パワーコンディショナPCSBkに送信する。
指標算出部93’は、上記指標算出部93と同様に、上記設定情報に基づいて、制御モードが切り替わったと判断した場合に、抑制指標prPVおよび充放電指標prBを、新たに設定された制御モードに応じた初期値に初期化する。そして、送信部24’を介して、初期化した抑制指標prPVを各パワーコンディショナPCSPViに送信し、初期化した充放電指標prBを各パワーコンディショナPCSBkに送信する。
本実施形態において、指標算出部93’は、出力抑制モードおよびシステムスケジュールモードに切り替わった場合は、上記第9実施形態と同様に初期化する。すなわち、出力抑制モードおよびシステムスケジュールモードに応じた初期値は、上記第9実施形態と同様に「0」である。また、指標算出部93’は、グループスケジュールモードに切り替わったときに、次の状態になるように、抑制指標prPVおよび充放電指標prBを初期化する。すなわち、各パワーコンディショナPCSPViがその出力を100%抑制する状態となり、かつ、各パワーコンディショナPCSBkが蓄電池Bkを充電も放電もしない状態となるように初期化する。具体的には、抑制指標prPV(すなわち太陽電池PCS群GPVに対するラグランジュ乗数λPV)を指標限界値に初期化し、充放電指標prB(すなわち蓄電池PCS群GBに対するラグランジュ乗数λB)を「0」に初期化する(図27参照)。したがって、当該グループスケジュールモードに応じた初期値として、太陽電池PCS群GPVに対して指標限界値を用い、蓄電池PCS群GBに対して「0」を用いる。そして、指標算出部93’が抑制指標prPVおよび充放電指標prBを初期化した後、太陽光発電システムPVS10においてグループスケジュール制御が行われる。これにより、太陽電池PCS群総出力PGPVが太陽電池PCS群目標値PTPVに一致するように各パワーコンディショナPCSPViが個別出力電力PPVi outを制御し、かつ、蓄電池PCS群総出力PGBが蓄電池PCS群目標値PTBに一致するように各パワーコンディショナPCSBkが個別出力電力PBk outを制御する。なお、太陽光発電システムPVS10においては、逆電力継電器51が設置されていないので、逆電力継電器51により解列されることがない。そのため、グループスケジュールモードにおいて、抑制指標prPVの初期値、すなわち、太陽電池PCS群GPVに対するラグランジュ乗数λPVの初期値を「0」にしてもよい。
太陽光発電システムPVS10は、以上のように構成され、複数の制御モードの切り替えにより、設定された制御モードに応じた制御を行っている。すなわち、出力抑制モードが設定されている場合、上記システム総出力Ptotal(t)による出力抑制制御を行い、システムスケジュールモードが設定されている場合、上記システム総出力Ptotal(t)によるシステムスケジュール制御を行い、グループスケジュールモードが設定されている場合、グループスケジュール制御を行う。
次に、上記太陽光発電システムPVS10において、さらに電力負荷Lが連系点に接続された場合を、太陽光発電システムPVS10’として説明する。すなわち、太陽光発電システムPVS10’の全体構成は、上記第7実施形態に係る太陽光発電システムPVS7の全体構成(図23参照)と同じである。このように電力負荷Lを有している場合、発電量や電力負荷Lの消費電力量などにより、電力系統Aから電力を供給されることもある。そこで、太陽光発電システムPVS10’(モード設定部91)は、上記制御モードとして、出力抑制モード、システムスケジュールモード、および、グループスケジュールモードに加え、上記ピークカット制御を行うピークカットモードも設定可能である。すなわち、太陽光発電システムPVS10’(モード設定部91)は、出力抑制モードと、システムスケジュールモードと、グループスケジュールモードと、ピークカットモードとの間の切り替えを行う。
太陽光発電システムPVS10’において、目標電力設定部21は、ピークカットモードが設定されると、上記ピークカット目標値Pcutを目標電力として設定する。また、太陽光発電システムPVS10’において、指標算出部93’は、ピークカットモードに切り替わったときに、次の状態になるように、抑制指標prPVおよび充放電指標prBを初期化する。すなわち、各パワーコンディショナPCSPViがその出力を抑制しない状態となり、かつ、各パワーコンディショナPCSBkが蓄電池Bkを充電も放電もしない状態となるように初期化する。具体的には、抑制指標prPVおよび充放電指標prB(すなわちラグランジュ乗数λ)を「0」に初期化する(図27参照)。したがって、当該ピークカットモードに応じた初期値として「0」を用いる。そして、指標算出部93’が抑制指標prPVおよび充放電指標prBを初期化した後、太陽光発電システムPVS10’においてピークカット制御が行われる。これにより、システム総出力Ptotal(t)がピークカット目標値Pcutに一致するように、各パワーコンディショナPCSPViが個別出力電力PPVi outを制御し、各パワーコンディショナPCSBkが個別出力電力PBk outを制御する。なお、太陽光発電システムPVS10’において、出力抑制モード、システムスケジュールモード、および、グループスケジュールモードに切り替わった場合は、上記太陽光発電システムPVS10と同様に初期化する。すなわち、太陽光発電システムPVS10’においても、出力抑制モードおよびシステムスケジュールモードに応じた初期値は「0」であり、グループスケジュールモードに応じた初期値は太陽電池PCS群GPVに対しては指標限界値、蓄電池PCS群GBに対しては「0」である。また、太陽光発電システムPVS10’において、集中管理装置MC10は、電力負荷Lから消費電力の情報を取得し、システム総出力Ptotal(t)から当該消費電力を減算した値を調整対象電力とすることが好ましい。これにより、連系点電力P(t)を推算できるので、出力抑制制御およびピークカット制御の精度が向上する。
続いて、上記太陽光発電システムPVS10’において、さらに逆電力継電器51が連系点に設置された場合を、太陽光発電システムPVS10”として説明する。太陽光発電システムPVS10”は、逆潮流が禁止されているために、逆電力継電器51が設置されている。そこで、太陽光発電システムPVS10”(モード設定部91)は、さらに上記逆潮流回避制御を行う逆潮流回避モードを設定可能にしている。すなわち、太陽光発電システムPVS10”(モード設定部91)は、出力抑制モードと、システムスケジュールモードと、グループスケジュールモードと、ピークカットモードと、逆潮流回避モードとの間の切り替えを行う。ただし、逆潮流が禁止されている太陽光発電システムPVS10”は、電力系統Aへの逆潮流を行わないため、出力抑制モードを備えていなくてもよい。
太陽光発電システムPVS10”において、目標電力設定部21は、逆潮流回避モードが設定されると、上記逆潮流回避目標値PRPRを目標電力として設定する。また、太陽光発電システムPVS10”において、指標算出部93’は、逆潮流回避モードに切り替わったときに、次の状態になるように、抑制指標prPVおよび充放電指標prBを初期化する。すなわち、各パワーコンディショナPCSPViがその出力を100%抑制する状態となり、かつ、各パワーコンディショナPCSBkがその定格出力PBk lmtの100%で蓄電池Bkを充電する状態となるように初期化する。具体的には、抑制指標prPVおよび充放電指標prB(すなわちラグランジュ乗数λ)を上記指標限界値に初期化する(図27参照)。したがって、当該逆潮流回避モードに応じた初期値として指標限界値を用いる。そして、指標算出部93’が抑制指標prPVおよび充放電指標prBを初期化した後、太陽光発電システムPVS10”において逆潮流回避制御が行われる。これにより、システム総出力Ptotal(t)が逆潮流回避目標値PRPRに一致するように、各パワーコンディショナPCSPViが個別出力電力PPVi outを制御し、各パワーコンディショナPCSBkが個別出力電力PBk outを制御する。なお、太陽光発電システムPVS10”において、出力抑制モード、システムスケジュールモード、グループスケジュールモード、および、ピークカットモードに切り替わった場合は、上記太陽光発電システムPVS10’と同様に初期化する。すなわち、太陽光発電システムPVS10”においても、出力抑制モード、システムスケジュールモード、および、ピークカットモードに応じた初期値は「0」であり、グループスケジュールモードに応じた初期値は太陽電池PCS群GPVに対しては指標限界値、蓄電池PCS群GBに対しては「0」である。ただし、太陽光発電システムPVS10”において、指標算出部93’は、システムスケジュールモードに応じた初期値として、好ましくは上記「0」の代わりに指標限界値を用いる。このようにすることで、システムスケジュールモードに切り替わると、各パワーコンディショナPCSPViはその出力を100%抑制する状態となり、かつ、各パワーコンディショナPCSBkはその定格出力PBk lmtの100%で蓄電池Bkを充電する状態となる。したがって、太陽光発電システムPVS10”は電力系統Aから電力を供給されるので、逆電力継電器51により解列される危険性をなくすことができる。また、太陽光発電システムPVS10”の場合も、上記太陽光発電システムPVS10’と同様に、集中管理装置MC10は、電力負荷Lから消費電力の情報を取得し、システム総出力Ptotal(t)から当該消費電力を減算した値を調整対象電力とすることが好ましい。これにより、連系点電力P(t)を推算できるので、出力抑制制御、ピークカット制御、および、逆潮流回避制御の精度が向上する。
以上のことから、太陽光発電システムPVS10(PVS10’,PVS10”)においても、上記太陽光発電システムPVS9(PVS9’,PVS9”)と同様に、調整対象電力(システム総出力Ptotal(t)やグループ総出力)を目標電力に一致させるとともに、集中管理装置MC10の処理負荷を低減することができる。また、太陽光発電システムPVS10(PVS10’,PVS10”)においても、上記太陽光発電システムPVS9(PVS9’,PVS9”)のその他の効果を奏することができる。
上記第9実施形態および第10実施形態においては、複数の制御モードをユーザが切り替える場合を説明したが、所定の時間帯毎(例えば1時間毎や朝、昼、夕、晩、深夜の時間帯毎など)に、どの制御モードにするかを予め設定しておき、当該所定の時間帯に応じて、自動的に切り替わるようにしてもよい。このようにすることで、ユーザが事前に設定した制御モードに切り替わるので、ユーザの煩わしさを低減することができる。また、電力会社から出力抑制の指令を受けたときには、自動的に出力抑制モードに切り替えるようにしてもよい。
上記第9実施形態および第10実施形態において、各種制御モードに応じた初期値は一例であり、上記したものに限定されない。上記出力抑制制御においては、電力会社からの出力抑制指令に従い、太陽光発電システムPVS9(PVS10)から電力系統Aへの出力電力を抑制する(小さくする)ことを目的としている。したがって、出力抑制制御中は、各パワーコンディショナPCSPViはその出力を抑制する状態であり、また、各パワーコンディショナPCSBkは蓄電池Bkを充電する状態である。そこで、出力抑制モードに切り替わったときに、そのような状態から出力抑制制御が開始されるように、出力抑制モードに応じた初期値として「0」から上記指標限界値の間のいずれの値を用いてもよい(図27参照)。また、上記ピークカット制御においては、電力系統Aから太陽光発電システムPVS9’(PVS10’)への供給電力を小さくすることを目的としている。したがって、ピークカット制御中は、各パワーコンディショナPCSPViはその出力を抑制しない状態であり、また、各パワーコンディショナPCSBkは蓄電池Bkを放電する状態である。そこで、ピークカットモードに切り替わったときに、そのような状態からピークカット制御が開始されるように、ピークカットモードに応じた初期値として上記負の指標限界値から「0」の間のいずれの値を用いてもよい(図27参照)。さらに、上記逆潮流回避制御においては、電力系統Aから太陽光発電システムPVS9”(PVS10”)への供給電力を大きくすることを目的としている。したがって、逆潮流回避制御中は、各パワーコンディショナPCSPViはその出力を抑制する状態であり、また、各パワーコンディショナPCSBkは蓄電池Bkを充電する状態である。そこで、逆潮流回避モードに切り替わったときに、そのような状態から逆潮流回避制御が開始されるように、逆潮流回避モードに応じた初期値として「0」から上記指標限界値の間のいずれの値を用いてもよい(図27参照)。各種制御モードに応じた初期値がこれらの値であっても、上記するように調整対象電力が目標電力に一致するまでの時間を短縮することができる。
上記第9実施形態および第10実施形態において、モード設定部91が設定可能な制御モードは、上記した態様に限定されず、少なくとも2つ以上の制御モードが設定可能であればよい。
上記第9実施形態においては、集中管理装置MC9に連系点電力P(t)を検出する手段(連系点電力検出部22)を備え、上記第10実施形態においては、集中管理装置MC10にシステム総出力Ptotal(t)などを算出する手段(受信部61および総出力算出部62”)を備えた場合を説明したが、これらの両方を備えていてもよい。このようにすることで、上記した各種制御モードのすべてを設定可能にすることができる。なお、この場合、調整対象電力として連系点電力P(t)あるいはシステム総出力Ptotal(t)のいずれを用いるかを各種制御モード毎に設定するようにしてもよいし、それぞれ異なる制御モードとするようにしてもよい。後者において、例えば、出力抑制モードとして、連系点電力P(t)による出力抑制モードとシステム総出力Ptotal(t)による出力抑制モードを設定可能にする。
上記第9実施形態および第10実施形態においては、複数台の蓄電池Bkおよび複数台のパワーコンディショナPCSBkを有する場合を説明したが、これらを備えていなくてもよい。例えば、全体構成が上記第1実施形態に係る太陽光発電システムPVS1の全体構成と同等の太陽光発電システムにおいても、複数の制御モードを切り替えられるようにしてもよい。また、上記第9実施形態および第10実施形態において、複数台の太陽電池SPiおよび複数台のパワーコンディショナPCSPViを備えていなくてもよい。
上記第10実施形態において、上記グループスケジュールモードを設定可能である場合を説明したが、上記第9実施形態(太陽光発電システムPVS9,PVS9’,PVS9”)おいても、グループスケジュールモードを設定可能にすることもできる。具体的には、図26に示す接続線の位置CP1,CP2にそれぞれ電力計を設置しておく。位置CP1に設置された電力計は、各パワーコンディショナPCSPViの出力電力の合成値(合成電力)を検出可能に設置されている。また、位置CP2に設置された電力計は、各パワーコンディショナPCSBkの出力電力の合成値(合成電力)を検出可能に設置されている。そして、これらの合成電力に対する目標電力をそれぞれ設定し、各合成電力が各目標電力に一致させるように制御する。すなわち、上記グループ総出力として各合成電力を用い、上記グループ目標値PTgrpとして当該合成電力に対する目標電力を用いた上記グループスケジュール制御を行う。これにより、太陽光発電システムPVS9,PVS9’,PVS9”においても、グループスケジュール制御を行うことができるので、グループスケジュールモードを設定可能にすることができる。なお、このように電力計を複数設けた場合、指標算出部93がこれらの電力計の検出値(合成電力)を加算し、当該加算した値を連系点電力P(t)とするようにしてもよい。すなわち、連系点電力検出部22を備えておかなくても、上記出力抑制制御などを行うことができる。
上記第1実施形態ないし第10実施形態においては、本開示の電力システムが太陽光発電システムである場合を例に説明したが、これに限られない。当該電力システムは、他の発電システムであってもよい。他の発電システムとしては、例えば、風力発電システムや燃料電池による発電システム、回転機形の発電機による発電システム、ネガワット取引を行うアグリゲータによる、需要家の負荷を管理する仮想的な発電システムなどが考えられる。なお、アグリゲータは、ネガワット取引により、節約できた電力を発電した電力とみなしているので、実際に発電を行っているのではない。これらの発電システムの場合でも、集中管理装置は、連系点電力を検出するか個別出力電力の総和を算出して調整対象電力とし、指標を算出して各電力装置に送信する。そして、各発電システムの電力装置は、受信した指標を用いた最適化問題に基づいて、自装置の個別目標電力を算出し、当該個別目標電力となるように個別出力電力を制御する。太陽光発電システム、風力発電システムや燃料電池による発電システムの場合、電力装置は、パワーコンディショナである。また、回転機形の発電機による発電システムの場合、電力装置は、発電機およびこれを制御する制御装置である。また、アグリゲータによる発電システムの場合、電力装置は、需要家の負荷およびこれを制御する制御装置である。なお、アグリゲータによる発電システムにおいては、節約できた電力を発電した電力とみなしているので、需要家の負荷の通常の消費電力から削減した電力が個別出力電力になる。また、上記電力システムは、上記した発電システムを併用したものとしてもよい。例えば、太陽光発電システムに回転機形の発電機を追加して、集中管理装置が太陽光発電システムの各パワーコンディショナおよび発電機の制御装置に指標を送信して全体の出力を制御する構成としてもよい。
本開示に係る電力システムは、上記実施形態に限定されるものではなく、請求の範囲に記載の内容を逸脱しなければ、各部の具体的な構成は、種々に設計変更自在である。