JP6816580B2 - 産業資材ネット用ポリエステル繊維の混繊糸 - Google Patents

産業資材ネット用ポリエステル繊維の混繊糸 Download PDF

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Description

本発明は産業資材ネット用途に好適なポリエステル繊維に関する。詳しくは高いネット強力を得るためのポリエステル繊維に関するものである。
産業資材ネットには、建築現場を覆うように設置され人体落下時の衝撃を吸収する安全ネット、工具等の飛散を防止する養生ネット、法面保護や地盤強化のため土中に埋設されるジオネット、河川岸や海岸に設置される護岸ネット、さらには農業用の防雪ネット、遮光ネット、漁網に代表される各種水産ネットやスポーツ・レジャー用の防球ネット等々、その使用目的・使用形態に応じて多種多様なネットが存在する。これら産業資材ネットに共通して求められる特性の1つとして機械的特性に優れること、すなわち容易に切断しない高い強力を有することが挙げられる。また近年では製品のコストダウン要求が強く、ネット製品を構成する繊維材の使用量をいかに減らすかが重要な課題になってきている。
この通りネットとして高い強力を維持しつつ、該ネットを構成する繊維材の使用量を減らすには、繊維1本あたりの強力、つまり繊維強度を高めることが最も単純かつ有効な手段と考えられ、これまでに数多くの提案がなされている。
例えば特許文献1では、強度8.5cN/dtex以上のポリエステル繊維に関する技術が記載されており、確かに該繊維では高強力化を達成している。しかしながら繊維強度を大幅にアップした割にはネットとしての強力向上効果が小さく、むしろ繊維の高強度化に伴う単糸切れ等の品位悪化がネット製品の生産効率を低下させ、逆にコストアップしてしまう等の問題を抱えるものであった。
特許文献2は、繊維強度を上げるのではなくネットとしての強力利用率を高めるという観点からなされたポリエステル繊維の製造方法に関する発明であり、各工程における延伸負荷率、弛緩率、熱セット温度等を特定の範囲に規定している。該発明は繊維強度ではなく強力利用率に着目した点で興味深いが、実際のネット強力向上効果は必ずしも十分ではなく、さらなる改善が求められるものであった。
特許文献3では、結節強度を高めることがネット強力アップに繋がることを見出し、結節強度3.3〜4.2cN/dtexのポリエステル繊維に関する発明が記載されており、該繊維から構成されるネットで高強力化を達成している。しかしながら、難燃性などの高付加機能をネットに付与する場合、例えば、難燃成分を共重合したポリマから得られる原糸を用いることでネット製品の大幅なコストアップへ繋がることから、更なる改善が求められるものであった。
特許文献4では、難燃性ポリエステル繊維と難燃成分を含まないポリエステル繊維とから構成される繊維構造物に関する発明が記載されており、難燃性ポリエステル繊維と難燃成分を含まないポリエステル繊維を混用することで機械的特性と難燃性とを兼ね備えた安全ネットなどの産業資材用繊維構造物の提供を可能としている。しかしながら、難燃成分を含まないポリエステル繊維に比べ難燃性ポリエステル繊維の強力が大きく劣ることで、ネットなどの産業資材構造物とした際に難燃性ポリエステル繊維の強力利用率が結果的に低くなるため、ネット強力の向上という観点においては満足できるものではなかった。このように、近年では異なる物性、および、特性を有するポリエステル繊維を混繊糸として用いることで機械特性と難燃性などの付加機能とを兼ね備えた産業資材用繊維構造物の提供が可能となっているものの、物性が異なるポリエステル繊維の強力利用率を向上させ、産業資材用繊維構造物の強力を向上させることが課題となっている。
特開2006−207054号公報 特開2010−59581号公報 特開2012−207314号公報 特開2009−242953号公報
本発明は上記従来技術では解決できなかった課題に対し鋭意検討した結果、達成されたものである。
すなわち産業資材ネット製品として十分に高い強力を有するポリエステル繊維の混繊糸およびそれを用いて構成される産業資材ネットを提供することを課題とする。
上記目的を達成するため、本発明は主として次の構成を有する。すなわち、異なる物性を有する少なくとも2種類のポリエステル繊維Aおよびポリエステル繊維Bより構成され、下記(a)〜(d)を同時に満足する特性を有するポリエステル繊維の混繊糸である。
(a)ポリエステル繊維Aの引掛け強度>ポリエステル繊維Bの引掛け強度
(b)ポリエステル繊維Bの引掛け破断伸度>ポリエステル繊維Aの引掛け破断伸度、且つ、ポリエステル繊維Bの引掛け破断伸度とポリエステル繊維Aの引掛け破断伸度の差が7.0%以内。
(c)ポリエステル繊維Aの引掛け強度とポリエステル繊維Aの引掛け破断点におけるポリエステル繊維Bの引掛け強度との差が1.0cN/dtex以内。
(d)ポリエステル繊維Aとポリエステル繊維Bの結節破断強度差が0.3cN/dtex以内。
さらに、本発明のポリエステル繊維においては、次の(e)〜(i)のいずれか1つまたはその組み合わせを満たすことが好ましい態様であり、これらの要件を満足することでさらに優れた効果が期待できる。
(e)ポリエステル繊維Aとポリエステル繊維Bの3%伸張時および7%伸張時の強度差がいずれも0.5cN/dtex以下。
(f)ポリエステル繊維Aとポリエステル繊維Bの組み合わせが共重合ポリエステル繊維とホモポリエステル繊維の組み合わせからなる。
(g)ポリエステル繊維A及びポリエステル繊維Bの結節破断強度がいずれも3.5〜4.5cN/dtex。
(h)ポリエステル繊維A及びポリエステル繊維Bの引掛破断強度がいずれも4.5〜5.5cN/dtex。
(i)ポリエステル繊維A及びポリエステル繊維Bの単糸繊度がいずれも7〜16dtex。
本発明のポリエステル繊維は、多種多様な産業資材ネットに適用可能であり、該繊維を使用することで産業資材ネット製品の強力アップ、もしくは、産業資材ネット製品の強力を維持したまま繊維の使用量が低減でき、製品のコストダウンを達成できるものである。
以下、本発明を具体的に説明する。
本発明のポリエステル繊維の混繊糸は、異なる物性を有する少なくとも2種類のポリエステル繊維A、Bより構成される。異なる物性を有するポリエステル繊維として、例えば、難燃性を付与する目的でポリマ分子中にリン化合物が共重合されているポリエチレンテレフタレートポリマからなるポリエステル繊維と、エチレンテレフタレートを主たる繰り返し単位とするポリエチレンテレフタレートからなるポリエステル繊維より構成されることで、優れた機械的特性と難燃性能とを兼ね備えた安全ネット、養生ネット、養生メッシュなどに代表される産業資材ネットを提供することができる。また、難燃性を有するリン共重合ポリエステル繊維の使用量を容易に調整することができるため、最終の繊維構造物に必要な難燃性を付与しながらも、コストアップを必要最低限に抑えることが可能となる。この様に、ポリエステル繊維の混繊糸を構成する異なる物性を有する少なくとも2種類のポリエステル繊維A、Bの組み合わせとして、特に限定されるものではないが、共重合ポリエステル繊維とホモポリエステル繊維の組み合わせであることが好ましい。
本発明に用いられるポリエステル繊維AおよびBは、産業資材ネット用途として優れた機械特性を発現することが要求される。かかる特性を満足するために使用するポリマは特に限定されるものではないが、エチレンテレフタレートを主たる繰り返し単位とするポリエチレンテレフタレートがより好適である。また、該特性を阻害しない範囲において、イソフタル酸、アジピン酸、セバシン酸、ダイマー酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸などの酸成分、ブタンジオール、ヘキサンジオール、ジエチレングリコール、ネオペンチルグリコール、1,4−シクロヘキサンジオールなどのジオール成分を含むものであっても良い。
また、難燃性を付与する目的でポリマ分子中に2官能性リン化合物が共重合されているポリエチレンテレフタレートポリマを用いても良く、2官能性リン化合物としては、ホスホネート類、ホスフィネート類、ホスフィンオキシド類が好ましく使用される。より好ましくはこれらホスホネート類、ホスフィネート類、ホスフィンオキシド類がフェニル基を含むと良い。
また、耐候性、耐熱性を向上させる目的でベンゾフェノン系、ベンゾトリアゾール系などの紫外線吸収剤、抗酸化剤、ラジカル補足剤、酸化チタン、炭酸カルシウム、カオリン、クレーなどの無機物などを含有していても何ら差し支えない。さらに、本発明のポリエステル繊維は原料ポリマ中に着色剤を含有していても良く、後に続く染色工程を省略できることから製造コスト面では有利となる。着色剤としては、特に限定されるものではなく、カーボンブラック、酸化鉄などの無機系着色剤、シアニン系、アントラキノン系、アゾ系、ペリノン系などの有機着色剤を適宜選択すればよい。
産業資材用ネットとして好適に用いられる高強度、高タフネスのポリエステル繊維を得るために使用するポリマの重合度は高い方が良く、ポリエチレンテレフタレートの場合は、固有粘度0.8〜1.2が好ましく、より好ましくは1.0〜1.2である。
本発明の異なる物性を有する少なくとも2種類のポリエステル繊維Aおよびポリエステル繊維Bより構成される混繊糸においては、混繊糸を構成する各ポリエステル繊維の強力の和が混繊糸の強力となり、引張り試験など荷重を掛けた際、先に破断するポリエステル繊維の破断点が混繊糸の破断点となることから、例えば低強度側のポリエステル繊維Bの破断伸度を高強度側のポリエステル繊維Aの破断伸度よりも高くすること、且つ、ポリエステル繊維Aの破断点におけるポリエステル繊維Aとポリエステル繊維Bの破断強度差を小さくすることが、産業資材ネットに用いた混繊糸の強力利用率を向上させる要件となる。
また、ネット構造体の破断現象を詳細に観察・解析した結果、ネットのどの部分で初期衝撃を受けた場合でもネットの結節部分、無結節タイプのネットでは繊維同士が交差接触した部分が損傷・破断することがわかり、つまり繊維の引掛け強力および結節強力を高めることこそが、産業資材ネットの強力アップにダイレクトに繋がり得ることを見出した。
本発明においては、ポリエステル繊維Aの引掛け強度がポリエステル繊維Bの引掛け強度よりも大きい(以下、高強度側ポリエステル繊維A、低強度側ポリエステル繊維Bと記すこともある)。本発明の異なる物性を有する少なくとも2種類のポリエステル繊維AおよびBより構成される混繊糸では、引掛け強度低強度側のポリエステル繊維Bの引掛け破断伸度が高強度側のポリエステル繊維Aの引掛け破断伸度より高く、且つ、ポリエステル繊維Aとポリエステル繊維Bの引掛け破断伸度の差が7.0%以内であることが必須であり、5.0%以内であることがより好ましい。異なる物性を有する少なくとも2種類のポリエステル繊維Aおよびポリエステル繊維Bより構成される混繊糸においては、ポリエステル繊維Bよりも先に破断するポリエステル繊維Aの引掛け破断点が混繊糸の引掛け破断点となり、ポリエステル繊維Aの引掛け破断点におけるポリエステル繊維Aおよびポリエステル繊維Bの引掛け強力の和が混繊糸の引掛け強力になることから、低強度側ポリエステル繊維Bの物性を更に低強度高伸度となるように変更した場合、高強度側ポリエステル繊維Aの引掛け破断点におけるポリエステル繊維Bの引掛け強度が低下するため、得られるネット強力が低下することとなる。
また、高強度側ポリエステル繊維Aの物性を更に高強度低伸度となるように変更した場合、ポリエステル繊維Aの破断強度が向上する一方で破断伸度は低くなり、ポリエステル繊維Aの破断点におけるポリエステル繊維Bの強度が大きく低下するため、ポリエステル繊維Aの破断点におけるポリエステル繊維Aおよびポリエステル繊維Bの強力の和、すなわち、混繊糸の強力が低下することになる。つまり、異なる物性を有する少なくとも2種類のポリエステル繊維Aおよびポリエステル繊維Bより構成される混繊糸において、ポリエステル繊維Aとポリエステル繊維Bの引掛け伸度差がかかる範囲内でなければネットとした際に十分な強力を得ることができない。
また、ポリエステル繊維Aの引掛け破断点におけるポリエステル繊維Bとの引掛け強度差は1.0cN/dtex以内であることが必須であり、0.5cN/dtex以内であることがより好ましい。上述のとおり、低強度側ポリエステル繊維Bよりも先に破断する高強度側ポリエステル繊維Aの引掛け破断点が混繊糸の引掛け破断点となり、前記引掛け破断点におけるポリエステル繊維Aおよびポリエステル繊維Bの引掛け強力の和が混繊糸の引掛け強力になることから、ポリエステル繊維Aの引掛け破断点におけるポリエステル繊維Aとポリエステル繊維Bの引掛け強度差を小さくすることが混繊糸の引掛け強力を向上させる要件となる。よって、ポリエステル繊維Aの引掛け破断点におけるポリエステル繊維Bとの引掛け強度差がかかる範囲でなければネットとした際に十分な強力を得ることができない。
また、引掛け強度を上げるために延伸倍率を上げ過ぎると繊維のモジュラスが高くなり、剛直性が上がり過ぎてネットとした時に硬くなるため、必要な柔軟性が得られないばかりか、製糸時に発生する単糸切れが増加し、操業性の悪化や高次加工時の停台回数増加によるコストアップに繋がる。逆に、引掛け強度が低過ぎる場合はネットとした際に必要な強力が得られないため、混繊糸を構成する異なる物性を有する少なくとも2種類のポリエステル繊維Aおよびポリエステル繊維Bの引掛け破断強度はいずれも4.5〜5.5cN/dtexであることが好ましく、4.8〜5.2cN/dtexであることがより好ましい。
異なる物性を有する少なくとも2種類のポリエステル繊維Aおよびポリエステル繊維Bより構成される混繊糸の結節強度については、結節破断強度の差が0.3cN/dtex以内であることが必須であり、0.2cN/dtex以内であることがより好ましい。結節破断強度においても、引掛け強度と同様に異なる物性を有する少なくとも2種類のポリエステル繊維Aおよびポリエステル繊維Bより構成される混繊糸では、ポリエステル繊維Bよりも先に破断するポリエステル繊維Aの結節破断点が混繊糸の結節破断点となり、ポリエステル繊維Aの結節破断点におけるポリエステル繊維Aおよびポリエステル繊維Bの結節強力の和が混繊糸の結節破断強力になることから、ポリエステル繊維Aとポリエステル繊維Bの結節破断強度の差を小さくすることが混繊糸の結節強力を向上させる要件となる。よって、ポリエステル繊維Aの結節破断点におけるポリエステル繊維Aとポリエステル繊維Bとの結節破断強度差がかかる範囲でなければネットとした際に十分な強力を得ることができない。
また、産業資材用途に使用される一般的なポリエステル繊維の結節強度は3.0cN/dtex程度と推測され、良好な品位を保持しつつ高い結節強度とするには4.5cN/dtex程度が上限であるため、混繊糸を構成する異なる物性を有する少なくとも2種類のポリエステル繊維Aおよびポリエステル繊維Bの結節破断強度はいずれも3.5〜4.5cN/dtexであることが好ましく、3.7〜4.2cN/dtexであることがより好ましい。
結節伸度は特に限定されるものではないが、異なる物性を有する少なくとも2種類のポリエステル繊維Aおよびポリエステル繊維Bより構成される混繊糸を用いてネットとした際に必要な機械特性を得るためには8.5〜9.5%とするのが好ましい。
混繊糸に用いる異なる物性を有する少なくとも2種類のポリエステル繊維Aおよびポリエステル繊維BのSS曲線を近付けることで、荷重を掛けた際に高モジュラス側のポリエステル繊維に応力が集中することを回避でき、結果として混繊糸の強度および伸度向上に繋がるため、3%伸張時および7%伸張時におけるポリエステル繊維Aとポリエステル繊維Bとの引掛け強度差がいずれも0.5cN/dtex以内であることが好ましく、0.3cN/dtex以内であることがより好ましい。
混繊糸に用いる異なる物性を有する少なくとも2種類のポリエステル繊維Aとポリエステル繊維Bの繊度は特に限定されるものではないが、いずれも1000〜2000dtex程度とするのが、ネットの編網性と生産コストの両側面から好ましい。一般に単繊維繊度は大きいほど耐摩耗性に優位と考えられるが、大き過ぎると所望の引掛け強度および結節破断強度が発現し難くなり、また製糸自体の難度が増すことから混繊糸を構成する異なる物性を有する少なくとも2種類のポリエステル繊維Aおよびポリエステル繊維Bの単繊維繊度はいずれも7〜16dtexとするのが好ましく、9〜12dtexとするのがより好ましい。
引き続き本発明に用いられるポリエステル繊維の製造方法について説明する。以下に、ポリエステル繊維の一例としてポリエチレンテレフタレート繊維の溶融紡糸・延伸・弛緩熱処理法を示すが、何らこれに限定されるものではない。
ポリエチレンテレフタレートを溶融濾過したのち口金細孔から紡出する。紡出糸条はポリマの融点以上、例えば270〜350℃に加熱せしめた雰囲気を通過したのち80℃以下の冷却風にて冷却固化される。かかる温度履歴を経ることで産業資材ネット用に好適な引掛け強度、直線強度等の機械特性を有す繊維を品位良く製造することができる。冷却後の糸条は油剤を付与され、所定の回転速度で回転する引取ローラに捲回して引き取られる。引き続き、順次高速回転するローラに捲回することで延伸を行う。より高い結節強度、直線強度を得るには2〜3段に分けて、トータル3.5〜6.0倍の倍率になるように延伸すればよい。各ローラの表面温度は得られる繊維の品位品質に影響を与えるものであり、適当な温度に設定する必要がある。例えば、引取ローラ、第1延伸供給ローラは60〜100℃、第1延伸ローラは100〜130℃とするのが好ましい。延伸後には弛緩熱処理を施すが、先にも述べた通り本発明の高い結節強度を有す繊維を得るためには弛緩率を比較的低く、具体的には0.5〜5%程度に設定するのが好ましく、より好ましくは1〜3%である。かつ熱処理温度は、比較的高い温度に設定することが好ましく、本発明の産業資材ネット用ポリエステル繊維の場合、熱処理ローラの表面温度を190〜240℃とするのが有効である。これら条件の弛緩熱処理を施すことで、繊維内部の非晶部分が均一かつ適度に突っ張った構造となり、その結果、高圧縮耐性を有す繊維が得られやすくなる。巻き取る直前においては、高圧空気を走行糸条に噴射して交絡処理を施すことが好ましい。交絡はできるだけ多くかつ均一にすることが好ましく、交絡数(CF値)としては5〜20あれば十分である。かかる範囲の交絡を付与することで巻き取りチーズからの糸条解舒性、および糸条のガイド通過性が良好になり製網工程におけるトラブルを回避することできる。かくして本発明に用いられるポリエステル繊維が得られる。
本願発明のポリエステル繊維は、例えば本目網、蛙又網などの結節網、ラッセル網などの無結節網、綟子網などあらゆる形態のネットに適用可能である。上記の製造方法により得られたポリエステル繊維を数本合わせて編網することで産業資材用ネットは得られ、合わせ本数は使用用途、ネットの要求特性に応じて適宜設定すればよい。例えば、安全ネットや養生ネットでは1670T程度の高強度ポリエステル繊維を5〜20本程度合わせて網糸とすることが多く、河川護岸ネット、海洋護岸ネットなどより厳しい環境下で使用するネットでは、50本以上または100本以上を合わせて使用することもある。目合いについては10〜100mmが好ましく、例えば、河川護岸ネット、海洋護岸ネットといった袋体をなし、その内部に石片等を充填するネットの場合は、その充填材が漏出するのを防ぐようにすればよく、比較的大きな目合い50〜100mmが選択される。
また、編網後の熱セット工程に制約はないが、ネットの寸法安定性を確保するうえで乾熱150〜200℃程度で1〜3分の処理を施すことが好ましい。
以下実施例により本発明を具体的に説明する。なお、各種物性値は次の方法により測定、算出した。
[ポリマ中のリン元素含有量]:
試料であるリン化合物含有ポリエステルチップ7gを加熱してペレット状に成形し、蛍光X線元素分析装置(Rigaku社製、ZSX100E型)を用いて、含有量既知のサンプルで予め作成した検量線から金属含有量に換算して求めた。
[ポリマの固有粘度および糸IV]:
試料8.0gにオルソクロロフェノール100mlを加えて、160℃で10分間加熱溶解した後冷却し、25℃で溶液の相対粘度ηrをオストワルド粘度計を用いて測定し、次の近似式
固有粘度=0.0242ηr+0.2634
に従い算出した。
[総繊度]:
JIS L−1013(2010)8.3.1正量繊度a)A法に従って、所定荷重5mN/tex×表示テックス数、所定糸長90mで測定した。
[単繊維繊度]:
総繊度をフィラメント数で除して、単繊維繊度を求めた。
[直線強度・伸度]:
試料を気温20℃、湿度65%の温調室において。オリエンテック(株)社製“テンシロン”(TENSILON)UCT−100でJIS L−1013(2010)8.5.1標準試験時に示される定速伸長条件で測定した。このときの掴み間隔は250mm、引張速度は300mm/min、試験回数は10回であった。なお、破断伸度は荷重−伸長曲線における最大強力を示した点の伸びから求めた。
[引掛け強力・強度・破断伸度]:
JIS L−1013(2010)8.6.1標準時試験に準じ、試料のつかみ間中央にループを作り、上記直線強度・伸度測定と同様の条件で測定した。
[結節破断強力、強度・伸度]:
JIS L−1013(2010)8.7.1標準時試験に準じ、試料のつかみ間中央に結節部を作り、上記直線強度・伸度測定と同様の条件で測定した。
[3%、7%伸張時強度差]:
JIS L−1013(2010)8.7.1標準時試験に準じて上記直線強度・伸度測定と同様の条件で3%伸張時および7%伸張時の強度を測定し、引掛け強度差を算出した。
[ネット強力]:
JIS A−8960(2004)7.2網糸の引張強さ試験に従って、掴み間隔25cm、引張速度20cm/minとしてオリエンテック(株)社製“テンシロン”(TENSILON)UCT−100を用い測定した。試験回数は10回であった。なお、破断伸度はS−S曲線における最大強力を示した点の伸びから求めた。
[実施例1]
2官能性リン化合物である3−[ヒドロキシ(フェニル)ホスホリル]プロパン酸がリン元素量換算して0.7重量%含有する固有粘度1.2のポリエステルチップをエクストルーダー型紡糸機に供給し、紡糸温度285℃にて溶融紡糸した。口金は0.6mmφの丸孔で孔数144個の吐出孔から押し出した後、油剤を糸条に付与し、引き続き227℃の温度でトータル延伸倍率が5.9倍となるように2段延伸熱処理した後、1.5%の弛緩率で処理し、巻き取り直前で交絡付与装置を用いて0.75MPaの圧空で交絡付与を行った後、巻き取ることにより1670dtex、144フィラメントからなる難燃性を有する共重合ポリエステル繊維を得た。
また、固有粘度1.2のポリエステルチップをエクストルーダー型紡糸機に供給し、紡糸温度300℃にて溶融紡糸した。口金は0.6mmφの丸孔で孔数144個の吐出孔から押し出した後、油剤を糸条に付与し、引き続き210℃の温度でトータル延伸倍率が4.1倍となるように2段延伸熱処理した後、1.5%の弛緩率で処理し、巻き取り直前で交絡付与装置を用いて0.5MPaの圧空で交絡付与を行った後、巻き取ることにより1670dtex、144フィラメントからなるホモポリエステル繊維を得た。
引き続き得られた共重合ポリエステル繊維とホモポリエステル繊維各1本を併せて混繊糸とし、該混繊糸を3本引き揃えてフロント糸、2本引き揃えてバック糸としてラッセル編機にて編み目15mmとなるように編網した後、150℃・3分間の熱セットを施し、ラッセル型ネットを作製した。
実施例で得られた共重合ポリエステル繊維およびホモポリエステル繊維の直線強度・伸度、引掛け強度・破断伸度、結節破断強度・伸度と、ネットの強力測定結果を表1に示す。
[実施例2]
共重合ポリエステル繊維のトータル延伸倍率を6.3倍とした以外は実施例1と同様の方法で共重合ポリエステル繊維、ホモポリエステル繊維、及びラッセル型ネットを得た。
[実施例3]
ホモポリエステル繊維のトータル延伸倍率を3.9倍とした以外は実施例1と同様の方法で共重合ポリエステル繊維、ホモポリエステル繊維、及びラッセル型ネットを得た。
[実施例4]
共重合ポリエステル繊維を紡糸する口金の孔数を192個、ホモポリエステル繊維の繊度を1500dtex、紡糸する口金の孔数144個とした以外は実施例1と同様の方法で共重合ポリエステル繊維、ホモポリエステル繊維、及びラッセル型ネットを得た。
[実施例5]
共重合ポリエステル繊維およびホモポリエステル繊維を紡糸する口金の孔数108個とした以外は実施例1と同様の方法で共重合ポリエステル繊維、ホモポリエステル繊維、及びラッセル型ネットを得た。
[実施例6]
共重合ポリエステルの代わりに繊度1500dtex、トータル延伸倍率5.2倍とした以外は実施例1と同様の方法で得たホモポリエステル繊維を用い、それ以外は実施例1と同様の方法でホモポリエステル繊維、及びラッセル型ネットを得た。
[比較例1]
共重合ポリエステル繊維のトータル延伸倍率を6.8倍、弛緩率を2.5%とした以外は実施例1と同様の方法で共重合ポリエステル繊維、ホモポリエステル繊維、及びラッセル型ネットを得た。引掛け破断強度が高い共重合ポリエステル繊維の破断時におけるホモポリエステル繊維との引掛け強度差が1.1cN/dtexと大きく、且つ、共重合ポリエステル繊維の結節強度が3.4cN/dtexまで低下したため、ネットの強力が大きく低下する結果となった。
なお、比較例で得られた共重合ポリエステル繊維およびホモポリエステル繊維の直線強度・伸度、引掛け強度・破断伸度、結節破断強度・伸度と、ネットの強力測定結果を表2に示す。
[比較例2]
ホモポリエステル繊維を紡糸する口金の孔数を72個、トータル延伸倍率を3.6倍、弛緩率を2.5%とした以外は実施例1と同様の方法で共重合ポリエステル繊維、ホモポリエステル繊維、及びラッセル型ネットを得た。引掛け破断強度が高い共重合ポリエステル繊維の破断時におけるホモポリエステル繊維との引掛け強度差が1.5cN/dtex、引掛け伸度差が7.3%と大きく、ホモポリエステル繊維の直線強度、引掛け強度、結節強度が大きく低下し、ネットの強力も大きく低下する結果となった。
[比較例3]
共重合ポリエステル繊維を紡糸する口金の孔数を72個、ホモポリエステル繊維を紡糸する口金の孔数を288個とした以外は実施例1と同様の方法で共重合ポリエステル繊維、ホモポリエステル繊維、及びラッセル型ネットを得た。各ポリエステル繊維で大きな強度低下は認められなかったものの、ネットでは強力が大きく低下する結果となった。
[比較例4]
ホモポリエステル繊維を190℃の温度でトータル延伸倍率が4.5倍となるように2段延伸熱処理した後、10.0%の弛緩率で処理した以外は実施例1と同様の方法で共重合ポリエステル繊維、ホモポリエステル繊維、及びラッセル型ネットを得た。ポリエステル繊維Aとポリエステル繊維Bの結節破断強度差が0.4cN/dtexとなり、ネットの強力が低下する結果となった。
Figure 0006816580
Figure 0006816580

Claims (6)

  1. 異なる物性を有する少なくとも2種類のポリエステル繊維Aおよびポリエステル繊維Bより構成され、下記(a)〜(d)を同時に満足する特性を有するポリエステル繊維の混繊糸。
    (a)ポリエステル繊維Aの引掛け強度>ポリエステル繊維Bの引掛け強度
    (b)ポリエステル繊維Bの引掛け破断伸度>ポリエステル繊維Aの引掛け破断伸度、且つ、ポリエステル繊維Bの引掛け破断伸度とポリエステル繊維Aの引掛け破断伸度の差が7.0%以内。
    (c)ポリエステル繊維Aの引掛け強度とポリエステル繊維Aの引掛け破断点におけるポリエステル繊維Bの引掛け強度との差が1.0cN/dtex以内。
    (d)ポリエステル繊維Aとポリエステル繊維Bの結節破断強度差が0.3cN/dtex以内。
  2. ポリエステル繊維Aとポリエステル繊維Bとの3%伸張時および7%伸張時の引掛け強度差がいずれも0.5cN/dtex以下であることを特徴とする請求項1記載のポリエステル繊維の混繊糸。
  3. ポリエステル繊維Aとポリエステル繊維Bの組み合わせが共重合ポリエステル繊維とホモポリエステル繊維の組み合わせである請求項1又は2に記載のポリエステル繊維の混繊糸。
  4. ポリエステル繊維A及びポリエステル繊維Bの引掛破断強度がいずれも4.5〜5.5cN/dtexであることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載のポリエステル繊維の混繊糸。
  5. ポリエステル繊維A及びポリエステル繊維Bの結節破断強度がいずれも3.5〜4.5cN/dtexであることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載のポリエステル繊維の混繊糸。
  6. ポリエステル繊維A及びポリエステル繊維Bの単繊維繊度がいずれも7〜16dtexであることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載のポリエステル繊維の混繊糸。
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