JP6813356B2 - 細胞培養のための3次元繊維状スキャフォールド - Google Patents

細胞培養のための3次元繊維状スキャフォールド Download PDF

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Description

関連出願の相互参照
本願は、2012年2月23日に提出された米国仮特許出願第61/602,337号および2012年11月8日に提出された米国仮特許出願第61/723,922号に基づく優先権を主張する2013年2月25日に提出された米国特許出願第13/775,536号の一部係属出願であり、2013年8月2日に提出された米国仮特許出願第61/861,632号に基づく優先権を主張するものである。
米国政府支援研究開発の説明
本発明は、米国国立衛生研究所による契約番号RO1CA152005、および米国海軍研究事務所による契約番号N00014−10−1−0854の国庫助成により行われた。米国政府は本発明に関して一定の権利を有する。
技術分野
本明細書に記載の発明は、3次元細胞培養スキャフォールドの分野に関する。
発明の背景
3次元(3D)培養は、生来のインビボ環境にある癌細胞を再現するので、腫瘍形成に寄与するプロセスを研究するための革新的アプローチをもたらす。腫瘍形成の重要性を仮定する裏付けデータの大部分は、2次元(2D)細胞培養系を用いて得られてきた。2Dにおける細胞は、腫瘍の3次元(3D)環境には相当しない、非自然的な機械的拘束および幾何的拘束を受ける。生化学的特性および機械的特性の間の複雑な相互作用は、2D培養において弱体化または損なわれることがあり、遺伝子発現およびタンパク質発現などの多くの重要な機能に影響を与えることがある。3D系の機械的特性、生化学的特性、および物理的特性に関する検討事項は、天然ECMを模倣することを目標としている。大きな利点の1つが、洗練された癌モデルの開発を可能にし得る、これらのパラメーターの制御により実現される迅速な実験的操作の可能性である。適切なプラットフォームと複合的な生物学的機能性を兼ね備えたテーラーメイドの3D細胞培養スキャフォールドにより、シグナル伝達経路の特異的誘導、異なる細胞型の選別、または癌細胞分化の制御が可能になるであろう。生体内と類似した構造的複雑性および機能的複雑性を保持する別個のしかし重要な特徴を全体に付与する既存の3D系の組合せにより、これらの3Dモデルはより洗練されるであろう。現在、腫瘍形成を研究するためのより現実的な腫瘍モデルおよび抗癌剤の効果的スクリーニングに対する大きなニーズが存在する。
最も一般的に使用される3Dモデルは、化学療法および放射線療法における種々の実験的研究に用いられ、医薬品開発、候補物質の有効性および安全性についてのハイスループットスクリーニング(HTS)プログラムにおいて詳細に調べられているスフェロイドである。スフェロイドにより、微小転移巣でまたは固形腫瘍の血管新生が不十分な領域で観察されるのと類似した機能的特性および物質輸送特性が付与される(Hirschhaeuser et al., (2010) J. Biotechnol. 148: 3-15)。これらの特徴は細胞間相互作用および細胞−マトリックス相互作用の複雑さと組み合わさって、治療薬の取込み、浸透、分布、および生理活性に影響を与える。スフェロイドは広範な細胞型から生成され得る簡単な3D構造であり、接着細胞の性質に起因して凝集が形成され、通常、単一技術または共培養技術、例えば、いくつか例を挙げると、ハンギングドロップ法(hanging drop)、旋回培養法、またはコンクレイブ・プレート法(conclave plate method)などによって作成される(Pampaloni et al., (2007) Nat. Revs. Mol. Cell Biol. 8: 839-845; Timmins et al., Cell Tissue Res. 320: 207-210; Castaneda & Kinne (2000) J. Cancer Res. Clinical Oncol. 126: 305-310)。
このモデルの本質的な限界は、これが完全に細胞ベースであり、全体としてECMの機械的特徴を表していないことである。この問題に取り組むために、生物学的な、天然または合成の原料に由来する種々の基材(substrate)またはスキャフォールドが、スフェロイドの構築におけるハイドロゲル、フィルム、繊維、マイクロ流体デバイスにおけるマイクロ成形構造体(micromolded structure)、およびマイクロチップの形成に用いられてきた。例えば、肝細胞は、アルギン酸から作製されたスキャフォールド、ヒアルロン酸、ペプチドスキャフォールド、およびガラクトシル化メッシュ上で自己組織化してスフェロイドを形成する(Gurski et al., (2009) Biomaterials. 30: 6076; Gurski et al., (2010) Biomaterials. 31: 4248; Elkayam et al., (2006) Tissue Engineering 12: 1357-1368; Shin et al., (2012) Biotech. Letts. 34: 795-803; Wang et al., (2011) Biomacromolecules 12: 578-584; Chung et al., (2002) Biomaterials 23: 2827-2834; Ivascu & Kubbies (2007) Int. J. Oncol. 31: 1403-1413; Horning et al., (2008) Mol. Pharmaceutics 5: 849-862; Semino et al., (2003) Different.: Res. Biol. Diversity 71: 262-270; Chua et al., (2005) Biomaterials 26: 2537-2547)。
合成3D高分子スキャフォールド中へのスフェロイドの組込みは、抗癌剤をスクリーニングするためのモデルとして用いられている(Ho et al., (2010) Cancer Sci. 101: 2637-2643)。これらのスキャフォールドは、スフェロイドを支持することにより、例えば腫瘍と基底膜の間などの、天然ECMの形状(topography)の特徴と腫瘍との物理的相互作用を模倣する。
哺乳動物細胞と細胞内形状の相互作用は、機械的シグナル伝達刺激による細胞機能の制御における重要なシグナル伝達様式であることが証明されている。腫瘍細胞および対応する間質からなる腫瘍微小環境は、腫瘍形成の全ステージでECMの物理的構造と密接に関連している。合成基材の形状が細胞の遊走、分化、および遺伝子発現に影響を与えることが示されている。例えば、マイクロパターン化PDMS上で培養されたSAL/N癌線維芽細胞およびポリスチレンの周期的構造上で培養されたC6神経膠腫細胞は、種々の形状的刺激(topographical cue)に応答した形態、増殖、および遊走において差を示す(Tzvetkova-Chevolleau et al., (2008) Biomaterials 29: 1541-1551; Wang et al., (2006) J. Biomed. Mats. Res. Part A. 78A: 746-54)。
電界紡糸(electrospining)は、細胞培養用途のための高分子繊維状スキャフォールドの作製に用いられる多用途な技術である。電界紡糸により、多様な材料および製造技術を用いてナノメートルからマイクロメートルのサイズの繊維を含む整列されたまたは不織のメッシュのユニークな基質(matrix)の作製が可能になる(Zanatta et al., (2012) Brazilian J. Med. Biol. Res. 45: 125-130; Zanatta et al., (2012) J. Biomed. Nanotechnol. 8: 211 -218; Yu et al., (2012) Carbohydrate Polymers 90: 1016-1023; Tsai et al., (2012) PloS one. 7: e31200; Sundaramurthi et al., (2012) Biomedical Materials 7: 045005; Samavedi et al., (2012) Biomaterials; Meinel et al., (2012) Eur. J. Pharmaceut. Biopharmaceutics. 81: 1-13)。修飾された電界紡糸スキャフォールドが癌細胞において好ましい機能的応答をシミュレートすることが研究により示されている(Agudelo-Garcia et al., (2011) Neoplasia 13: 831-896; Johnson et al., (2009) Tissue Engineering Part C-Methods 15: 531-540; Xie & Wang (2006) Pharmaceut. Res.23: 1817-1826)。
本開示は、ポリ(乳酸−コ−グリコール酸)(poly(lactic-co-glycolic acid)(PLGA)と、ポリ乳酸(PLA)およびモノメトキシポリエチレングリコール(mPEG)のブロック共重合体との混合物を電界紡糸することにより製造される、3Pと名付けられた3Dナノ繊維状スキャフォールドの実施形態を包含する。3Pスキャフォールド上で培養された癌細胞は、スキャフォールドの形状および正味電荷に依存する、インビボの腫瘍と類似した類腫瘍(tumoroid)と名付けられる密な凝集体を形成した。3Pスキャフォールドにより、ビメンチンの上方制御およびE−カドヘリン発現の減少によって示されるような、腫瘍細胞の上皮間葉転換(EMT)が誘導された。3Pをベースとした類腫瘍は、単層で成長させた同様の腫瘍細胞と比較して、より高い抗癌剤耐性を示した。ERKシグナル経路およびPI3Kシグナル経路の阻害により、EMT転換が妨げられ、類腫瘍の形成、直径、および数が減少した。
マウスの腫瘍から採取した穿刺吸引物(fine needle aspirate)は、本開示の3Pスキャフォールド上で培養された場合に類腫瘍を形成したが、直接播種によって形成された類腫瘍と比較して、抗癌剤への感受性がさらに大きく低減していた。したがって、3Pスキャフォールドにより、腫瘍細胞株からおよび生検から類腫瘍を作製するための優れたプラットフォームが実現される。このプラットフォームは、患者生検の培養、抗癌化合物の試験に用いることができ、これにより、個別化された癌治療のテーラーメイドが可能になる。
ネイキッド非修飾スキャフォールドおよび3Pスキャフォールドの走査型電子顕微鏡写真(SEM)を示す図である。スキャフォールドは、ランダムに整列されたマットとして配置された繊維からなる。 3PスキャフォールドのFTIRを示す図である。1760cm−1のピークはPLA1087のカルボニル基に帰属することができ、1184cm−1のピークはmPEG、PLA、およびPLGAの−C−O−C結合に帰属することができる。 PLAがmPEGと共重合していることを確認する3PスキャフォールドのH NMRを示す図である。3.3ppmのシグナルの積分は、mPEG−OH上のメチル基の3つの等価な水素原子に帰属され、内部標準として用いられる。PLAブロックの分子量は23.1kDaである。 スキャフォールドを水に24時間浸漬し、水の取込みが平衡に達したと見なされ後に測定した、FMN(3P)、CFMN(3PC)、およびネイキッドスキャフォールドの体積膨張率(swelling volume ratio)(SWR)を示す図である。SWRはスキャフォールドの親水能(hydrophilic potential)を示す。 3Pスキャフォールド上で成長させたLLCスフェロイド(n=10)の2日目〜20の平均サイズを示すグラフである。96ウェルプレート中に置かれたスフェロイドは3Pスキャフォールド上で平均サイズ5mmに成長した。20日目のスフェロイドの共焦点画像により、増殖細胞の密な層で囲まれた内部壊死性コアが示された。 スキャフォールド当たりのスフェロイドの平均数を示すグラフである。96ウェルプレート上に置かれたスフェロイドは3Pスキャフォールド上で平均サイズ5mmに成長した。20日目のスフェロイドの共焦点画像により、増殖細胞の密な層で囲まれた内部壊死性コアが示された。 3Pスキャフォールドによりスフェロイド形成およびEMTが誘導されることを示す図である。図は、E−カドヘリン抗体およびビメンチン抗体ならびにDAPIで免疫染色された、単層、PLGA、および3Pスキャフォールド上で培養したLLC細胞の蛍光画像を示す。細胞を3日間培養した後、マーカーの染色を行った。スフェロイドの染色は、間葉マーカーであるビメンチンについて陽性であり、上皮マーカーであるE−カドヘリンについて陰性であったが、単層およびPLGAスキャフォールド上の細胞では上皮マーカーの発現が維持されていた。 3Pスキャフォールドによりスフェロイド形成およびEMTが誘導されることを示す図である。図は、E−カドヘリン抗体およびビメンチン抗体ならびにDAPIで免疫染色された、単層、PLGA、および3Pスキャフォールド上で培養したLLC細胞の蛍光画像を示す。細胞を3日間培養した後、マーカーの染色を行った。スフェロイドの染色は、間葉マーカーであるビメンチンについて陽性であり、上皮マーカーであるE−カドヘリンについて陰性であったが、単層およびPLGAスキャフォールド上の細胞では上皮マーカーの発現が維持されていた。 阻害剤であるドキソルビシン、LY294002、およびU0126に対するMCF−7細胞の用量依存的細胞毒性反応を示す図である。3Pスキャフォールド上で培養したMCF−7細胞への投与後の各阻害剤のIC50を示す。MCF細胞(7×10個)を単層および3Pスキャフォールド上で7日間培養した後、種々の濃度のLY294002およびU0126で48時間処理した。細胞をカルセイン/amおよび臭化エチジウムで染色した後、計数した。生存細胞の平均割合(±SEM)が薬物濃度の関数としてプロットされ、3回の別個の実験での4連実験を表す。四角形のデータ点は単層を示し、ひし形のデータ点は3Pスキャフォールドを示す。図6Aは、阻害剤ドキソルビシンに対するMCF−7細胞の用量依存的細胞毒性反応を示す。 阻害剤であるドキソルビシン、LY294002、およびU0126に対するMCF−7細胞の用量依存的細胞毒性反応を示す図である。3Pスキャフォールド上で培養したMCF−7細胞への投与後の各阻害剤のIC50を示す。MCF細胞(7×10個)を単層および3Pスキャフォールド上で7日間培養した後、種々の濃度のLY294002およびU0126で48時間処理した。細胞をカルセイン/amおよび臭化エチジウムで染色した後、計数した。生存細胞の平均割合(±SEM)が薬物濃度の関数としてプロットされ、3回の別個の実験での4連実験を表す。四角形のデータ点は単層を示し、ひし形のデータ点は3Pスキャフォールドを示す。図6Bは、阻害剤LY294002に対するMCF−7細胞の用量依存的細胞毒性反応を示す。 阻害剤であるドキソルビシン、LY294002、およびU0126に対するMCF−7細胞の用量依存的細胞毒性反応を示す図である。3Pスキャフォールド上で培養したMCF−7細胞への投与後の各阻害剤のIC50を示す。MCF細胞(7×10個)を単層および3Pスキャフォールド上で7日間培養した後、種々の濃度のLY294002およびU0126で48時間処理した。細胞をカルセイン/amおよび臭化エチジウムで染色した後、計数した。生存細胞の平均割合(±SEM)が薬物濃度の関数としてプロットされ、3回の別個の実験での4連実験を表す。四角形のデータ点は単層を示し、ひし形のデータ点は3Pスキャフォールドを示す。図6Cは、阻害剤U0126に対するMCF−7細胞の用量依存的細胞毒性反応を示す。 3D培養に関連するEMT遺伝子発現と2D培養に関連するEMT遺伝子発現の比較を示すグラフである。48時間培養の、単層上に対して3Pスキャフォールド上で培養した細胞における遺伝子発現の差、およびPLGA上に対して3Pスキャフォールド上で培養した細胞における遺伝子発現の差。分化および発生(A)ならびに細胞成長および増殖(B)において1倍を超える差を示した選択された遺伝子群を示す。図7Aは、分化および発生において1倍を超える差を示した選択された遺伝子群の、3D培養に関連するEMT遺伝子発現と2D培養に関連するEMT遺伝子発現の比較を示す。 3D培養に関連するEMT遺伝子発現と2D培養に関連するEMT遺伝子発現の比較を示すグラフである。48時間培養の、単層上に対して3Pスキャフォールド上で培養した細胞における遺伝子発現の差、およびPLGA上に対して3Pスキャフォールド上で培養した細胞における遺伝子発現の差。分化および発生(A)ならびに細胞成長および増殖(B)において1倍を超える差を示した選択された遺伝子群を示す。図7Bは、細胞成長および増殖において1倍を超える差を示した選択された遺伝子群の、3D培養に関連するEMT遺伝子発現と2D培養に関連するEMT遺伝子発現の比較を示す。 3D培養に関連するEMT遺伝子発現と2D培養に関連するEMT遺伝子発現の比較を示すグラフである。48時間培養の、単層上に対して3Pスキャフォールド上で培養した細胞における遺伝子発現の差、およびPLGA上に対して3Pスキャフォールド上で培養した細胞における遺伝子発現の差。図8Aは、細胞外マトリックスおよび細胞接着において1倍を超える差を示した選択された遺伝子群の、3D培養に関連するEMT遺伝子発現と2D培養に関連するEMT遺伝子発現の比較を示す。 3D培養に関連するEMT遺伝子発現と2D培養に関連するEMT遺伝子発現の比較を示すグラフである。48時間培養の、単層上に対して3Pスキャフォールド上で培養した細胞における遺伝子発現の差、およびPLGA上に対して3Pスキャフォールド上で培養した細胞における遺伝子発現の差。図8Bは、シグナル伝達経路において1倍を超える差を示した選択された遺伝子群の、3D培養に関連するEMT遺伝子発現と2D培養に関連するEMT遺伝子発現の比較を示す。 2日後の単層と比較した3Pスキャフォールド上の腫瘍スフェロイドの成長に関連するEMT遺伝子発現を示すグラフである。 2日後のPLGAと比較した3Pスキャフォールド上の腫瘍スフェロイドの成長に関連するEMT遺伝子発現を示すグラフである。 3日後の単層と比較した3Pスキャフォールド上の腫瘍スフェロイドの成長に関連するEMT遺伝子発現を示すグラフである。 3日後のPLGAと比較した3Pスキャフォールド上の腫瘍スフェロイドの成長に関連するEMT遺伝子発現を示すグラフである。 図13〜図17は、3Pスキャフォールド上での腫瘍生検材料の培養を示す図である。移植LLC1マウス腫瘍のFNAを3Pスキャフォールド上で表記の時間培養した。図13は、3Pスキャフォールド上での腫瘍生検材料の培養を示す図である。移植LLC1マウス腫瘍のFNAを3Pスキャフォールド上で表記の時間培養した。細胞をカルセインAM/EthD−1で染色した。 2日目〜5日目の3Pスキャフォールド上の生検類腫瘍(biopsy tumoroid)の平均サイズを示す図である。 固定し、E−カドヘリン、ビメンチン、およびDAPIで免疫染色した生検類腫瘍を示す図である。 CD31、F4/80、またはSMAのいずれかとCEA、およびDAPIで二重免疫染色したLLC−1類腫瘍および生検類腫瘍を示す図である。 各1μMのLY294002またはU0126で3日間処理した生検類腫瘍(2日目)を示す図である。3Pスキャフォールド上の生検類腫瘍(対照についてn=10、LY294002についてn=55、およびU0126についてn=50)の平均サイズを示す。
本明細書により、各繊維がポリエチレングリコール−ポリ乳酸ブロック共重合体(PEG−PLA)およびポリ(乳酸−コ−グリコール酸)(PLGA)を含む、ランダムに配向した繊維を含む3次元スキャフォールド組成物が提供される。さらに、本明細書に記載の3次元スキャフォールドを使用する方法が提供される。明細書および特許請求の範囲で使用される用語の定義は以下の通りである。
定義
明細書および特許請求の範囲において、単数形は、本文中で明確に単数でないことが記載されていない限り、複数への言及も含む。例えば、用語「細胞」には、その混合物を含む、複数の細胞が含まれる。
「活性誘導体」などの用語は、癌細胞スフェロイドを成長させるために用いることができる3次元スキャフォールド組成物を形成する能力を保持している、修飾されたPEG−PLA組成物またはPLGA組成物を意味する。活性誘導体がこのように機能する能力を試験するためのアッセイは、本明細書に記載される。
対象または患者に言及する場合、用語「投与」には、経口、局所、静脈内、皮下、経皮(transcutaneous)、経皮(transdermal)、筋肉内、関節内(intra-joint)、非経口、細動脈内、皮内、脳室内、頭蓋内、腹腔内、病巣内、鼻腔内、直腸内、腟内、吸入、または埋込み式リザーバー(implanted reservoir)による投与を意味する。用語「非経口」は、皮下、静脈内、筋肉内、関節内(intra-articular)、腹腔内、滑膜内、胸骨内、髄腔内、肝臓内、病巣内、および頭蓋内への注射または点滴の技術が含まれる。
本明細書において、(交換可能に使用される)用語「癌」、「癌細胞」、「新生物細胞」、「新生物」、「腫瘍」、および「腫瘍細胞」は、細胞増殖制御の著しい低下(すなわち、細胞分裂の調節解除)を特徴とする異常成長表現型を示すように、比較的自律的な成長を示す細胞を指す。新生物細胞は悪性であっても良性であってもよい。転移性の細胞または組織とは、細胞が隣接する身体構造に浸潤してこれを破壊できることを意味する。癌は、星状細胞腫、副腎皮質癌、虫垂癌、基底細胞癌、胆管癌、膀胱癌、骨癌、脳癌、脳幹神経膠腫、乳癌、子宮頸部癌、結腸癌、結腸直腸癌、皮膚T細胞リンパ腫、腺管癌、子宮内膜癌、脳室上衣腫、ユーイング肉腫、食道癌、眼癌、胆嚢癌、胃癌、消化器癌、胚細胞性腫瘍、神経膠腫、肝細胞癌、組織球増殖症、ホジキンリンパ腫、下咽頭癌、眼球内黒色腫、カポジ肉腫、腎癌、喉頭癌、白血病、肝臓癌、肺癌、リンパ腫、マクログロブリン血症、黒色腫、中皮腫、口腔癌、多発性骨髄腫、上咽頭癌、神経芽細胞腫、非ホジキンリンパ腫、骨肉腫、卵巣癌、膵臓癌、副甲状腺癌、陰茎癌、咽頭癌(pharyngeal cancer)、下垂体癌、前立腺癌、直腸癌、腎細胞癌、網膜芽細胞腫、横紋筋肉腫、肉腫、皮膚癌、小細胞肺癌、小腸癌、扁平細胞癌、胃癌、T細胞リンパ腫、精巣癌、咽喉癌(throat cancer)、胸腺腫、甲状腺癌、絨毛性腫瘍、尿道癌、子宮癌、子宮肉腫、膣癌、外陰癌、およびウィルムス腫瘍から選択されてもよい。ある実施形態では、癌は前立腺癌である。
本明細書において、「癌細胞スフェロイド」とは癌細胞の凝集体を指す。
用語「細胞」、「細胞株」、および「細胞培養」には、子孫が含まれる。さらに、計画的または偶発的な変異のため、全ての子孫のDNAの内容が正確に同一でなくてもよいと理解される。元の形質転換された細胞においてスクリーニングされたものと同じ機能または生物学的特性を有する変異型の子孫が含まれる。本発明において、「宿主細胞」は通常、原核宿主または真核宿主である。
用語「キトサン」は、ランダムに分布した、β−(1−4)結合したD−グルコサミン(脱アセチル化単位)およびN−アセチル−D−グルコサミン(アセチル化単位)で構成される直鎖多糖を指す。平均して、市販のキトサンの分子量は3,800〜20,000ダルトンである。ある実施形態では、キトサンの分子量は約3kDa〜約12kDaである。ある実施形態では、キトサンは水溶性であり、分子量は約10kDaである。
用語「コーティング」は、コーティングされる物体の完全な被覆を要求しないこと、および部分的被覆がこの用語に包含されることが理解されるべきである。
本明細書において、用語「含む」は、組成物および方法が、記載の要素を含むが、他の要素を除外するものではないことを意味することが意図される。「から実質的になる」とは、組成物および方法を定義するために用いられる場合、組合せにとって本質的な意義のある他の要素を除外することを意味するものとする。したがって、本明細書に記載の要素から本質的になる組成物は、単離方法および精製方法に由来する微量混入物ならびに薬学的に許容されるキャリア、例えばリン酸緩衝食塩水および保存剤などを除外しない。「からなる」とは、微量を超える他の成分の要素、および本発明の組成物を投与するための実質的な方法ステップを除外することを意味するものとする。これらの移行句のそれぞれによって定義される実施形態が本発明の範囲に含まれる。
「有効量」とは、有益な結果または所望の結果をもたらすのに十分な量である。有効量は、単回もしくは複数回の投与、適用、または単一もしくは複数の用量で投与され得る。
用語「繊維状スキャフォールド」は、本明細書中で、ランダムに配向した繊維によって形成された3次元構造を指す。ある実施形態では、電界紡糸法を用いてランダムに配向した繊維構造体が得られる。
用語「単離された」は、ポリヌクレオチド、ペプチド、ポリペプチド、タンパク質、抗体、またはそれらの断片が通常自然界で関連している、細胞またはその他の構成要素から分離されていることを意味する。本発明のある態様では、単離されたポリヌクレオチドは、その自然または天然の環境、例えば染色体上で通常関連している、3′側および5′側の近接ヌクレオチドから分離されている。当業者に明らかであるように、非天然のポリヌクレオチド、ペプチド、ポリペプチド、タンパク質、または抗体、またはそれらの断片は、それらをその天然の対応物から区別するために「単離」する必要はない。さらに、「濃縮された」、「分離された」、または「希釈された」ポリヌクレオチド、ペプチド、ポリペプチド、タンパク質、または抗体、またはそれらの断片は、体積当たりの分子の濃度または数が、それらの天然の対応物より、「濃縮された」ものでは大きく、「分離された」ものでは小さい点で、その天然の対応物から区別可能である。天然の対応物と一次配列において、または例えばグリコシル化パターンによって、異なっているポリヌクレオチド、ペプチド、ポリペプチド、タンパク質、または抗体、またはそれらの断片は、その一次配列によって、またはグリコシル化パターンなどの別の特徴によって、天然の対応物から区別可能であるので、単離された形態で存在していなくてもよい。本明細書に開示される発明の各々について明白に記載されていないが、以下に開示される適切な条件下の組成物の各々について、上記実施形態の全てが本発明によって提供されると理解されるべきである。したがって、非天然ポリヌクレオチドは、単離された天然ポリヌクレオチドとは別個の実施形態として提供される。細菌細胞中で生成したタンパク質は、自然界で生成された真核細胞から単離された天然タンパク質とは別個の実施形態として提供される。
治療のための「哺乳動物」とは、ヒト、飼育動物および家畜、非ヒト霊長類、および動物園の動物、競技用の動物、または愛玩動物、例えばイヌ、ウマ、ネコ、乳牛などを含む、哺乳動物に分類される任意の動物を指す。
用語「微粒子」は、粉末、および顆粒物質などを指す。
「医薬組成物」とは、組成物をインビトロ、インビボ、またはエクスビボでの診断用途または治療用途に適したものにする、不活性または活性のキャリアと活性薬剤との組合せを含むことが意図される。
用語「薬学的に許容されるキャリアまたは賦形剤」は、一般的に安全、非毒性、且つ生物学的にまたはその他の点において有害ではない、医薬組成物の調製において有用なキャリアまたは賦形剤を意味し、動物用用途およびヒトの医薬的用途に許容可能なキャリアまたは賦形剤を含む。本明細書および特許請求の範囲において、「薬学的に許容されるキャリアまたは賦形剤」には、1つのおよび複数のそのようなキャリアまたは賦形剤の両方が含まれる。本明細書において、用語「薬学的に許容されるキャリア」は、リン酸緩衝食塩水溶液、水、エマルション、例えば水中油滴型または油中水滴型エマルション、および様々な種類の湿潤剤など、あらゆる標準的な医薬的キャリアを包含する。組成物はさらに、安定剤および保存剤を含んでいてもよい。
用語「薬学的に許容される塩」は、塩の薬学的用量が投与される対象に対してその対イオンが非毒性である任意の酸付加塩または塩基付加塩を指す。
用語「薬学的有効量」、「治療有効量」、または「治療有効用量」は、研究者、獣医、医師、または他の臨床医に探究されている組織、系、動物、またはヒトの生物学的応答または医学的応答を誘発できる化合物の量を指す。
用語「PLGA」は、2種の異なるモノマーである、グリコール酸および乳酸の環状二量体(1,4−ジオキサン−2,5−ジオン)のランダム開環共重合により合成されるポリ(乳酸−コ−グリコール酸)を指す。重合に用いられるラクチドとグリコリドとの比率に応じて、異なる形態のPLGAを得ることができ、通常これらは使用されるモノマーの比率に関して特定される(例えば、PLGA 75:25は、75%乳酸および25%グリコール酸の組成である共重合体であると特定される)。
用語「放出制御」、「持続放出」、「徐放性」、および「持効性」は、薬物の放出が即時的でない、任意の薬物含有製剤を互換的に指すことが意図され、すなわち、「放出制御」製剤では、経口投与により薬物が吸収プールに即時に放出されない。
本明細書で互換的に使用される「対象」、「個体」、または「患者」とは、脊椎動物、好ましくは哺乳動物、より好ましくはヒトを指す。哺乳動物には、マウス、サル、ヒト、家畜、競技用動物、および愛玩動物が含まれるが、これらに限定されない。
用語「治療有効量」には、投与された場合に、治療される状態または疾患の症状の1または複数の発生を防止するか、またはある程度軽減するのに十分な化合物の量が含まれる。治療有効量は、化合物、疾患または状態およびその重篤度、投与経路、投与の時間、排出速度、薬物の組合せ、処置する医師の判断、剤形、ならびに治療対象の年齢、体重、全身状態、性別、および/または食事によって異なり得る。
本明細書において、用語「治療する」、「治療」、およびその文法的バリエーションには、疾患もしくは状態の1または複数の付随する症状の強度を部分的または完全に遅らせること、軽減すること、緩和すること、もしくは低減すること、および/または疾患もしくは状態の1または複数の原因を軽減すること、緩和すること、もしくは妨げることを含む。本発明に係る治療は、防止的、予防的、緩和的、または改善的に適用され得る。
これらの用語および定義を用いて、本明細書により、ランダムに配向した繊維を含む3次元スキャフォールド組成物であって、繊維がポリエチレングリコール−ポリ乳酸ブロック共重合体(PEG−PLA)およびポリ(乳酸−コ−グリコール酸)(PLGA)を含む組成物が提供される。
PEGの化学構造はH−(O−CH−CH−OHである。PEGは、分子量に応じてポリエチレンオキシド(PEO)またはポリオキシエチレン(POE)としても知られる。PEGは通常、分子質量が20,000g/mol未満のオリゴマーおよびポリマーを指す。PEGは、エチレンオキシドの重合により作製され、300g/mol〜10,000,000g/molの幅広い分子量にわたり市販されている。重合処理に用いる開始剤に応じて、異なる形態のPEGも利用可能であり、最も一般的な開始剤は、単官能性メチルエーテルPEG、すなわちメトキシポリ(エチレングリコール)であり、mPEGと略される。単分散、均一、または分離と呼ばれるより純粋なオリゴマーとして、低分子量PEGも利用可能である。ある実施形態では、本明細書に記載の3Pスキャフォールドおよび3PCスキャフォールドの作製に使用されるPEGは、分子量が約0.5kDa〜20kDaのモノメトキシグリコール(mPEG)である。本明細書には、PEGまたはmPEGの分子量が約0.5kDa、約1kDa、約2kDa、約3kDa、約4kDa、約5kDa、約6kDa、約7kDa、約8kDa、約9kDa、約10kDa、約11kDa、約12kDa、約13kDa、約14kDa、約15kDa、約16kDa、約17kDa、約18kDa、約19kDa、または約20kDaである実施形態が含まれる。ある実施形態では、PEGの分子量は約2kDaである。
ポリ乳酸またはポリラクチド(PLA)((C)は、コーンスターチ、タピオカの根、小片、もしくはデンプン、またはサトウキビなどの再生可能な資源に由来する熱可塑性脂肪族ポリエステルである。L−ラクチドおよびD−ラクチドのラセミ混合物の重合によって、通常、非結晶であるポリ−DL−ラクチド(PDLLA)が合成される。立体特異的触媒の使用により、結晶性を示すことが分かっているヘテロタクチックポリ乳酸を得ることができる。結晶化度、および多くの重要な特性は、使用されるDエナンチオマーとLエナンチオマーとの比率によって主に制御され、それより低い程度で、使用される触媒の種類によって制御される。乳酸のキラルな性質のため、複数の異なる形態のポリラクチドが存在する。すなわち、ポリ−L−ラクチド(PLLA)は、L,L−ラクチド(L−ラクチドとしても知られる)の重合によって生じる生成物である。PLLAの結晶化度は約37%であり、ガラス転移温度は60℃〜65℃、融解温度は173℃〜178℃、引張係数は2.7〜16Gpaである。したがって、本明細書に記載の3Pスキャフォールドおよび3PCスキャフォールドは、D−エナンチオマーのみ、L−エナンチオマーのみ、またはD−エナンチオマーとL−エナンチオマーの混合物、を有するポリ乳酸組成物を含み得る。ある実施形態では、3P組成物または3PC組成物の作製に用いられるポリ乳酸組成物には、D−エナンチオマーとL−エナンチオマーのラセミ混合物が含まれる。
PLGAは、2つの異なるモノマーである、グリコール酸の環状二量体および乳酸の環状二量体(1,4−ジオキサン−2,5−ジオン)のランダム開環共重合により合成される。この重合体の作製に用いられる一般的な触媒としては、2−エチルヘキサン酸スズ(II)、スズ(II)アルコキシド、またはアルミニウムイソプロポキシドが挙げられる。重合において、(グリコール酸または乳酸の)連続的モノマー単位がエステル結合によりPLGA中で結合されることにより、線状脂肪族ポリエステルが生成物として生じる。重合に用いられたラクチドとグリコリドとの比率に応じて、異なる形態のPLGAを得ることができる。すなわち、これらは通常、使用されるモノマーの比率に関して特定される(例えば、PLGA 75:25は、75%乳酸および25%グリコール酸の組成である共重合体であると特定される)。ある実施形態では、PLGAは約85%の乳酸および約15%のグリコール酸を含む。さらに、本明細書には、PLGAにおける乳酸とグリコール酸との比率がおよそ75:25、80:20、85:15、90:10、および95:5である実施形態が含まれる。
ある実施形態では、3Pスキャフォールドは、ポリ(ラクチド−コ−グリコリド)(PLGA)ランダム共重合体およびポリラクチド−ポリ(エチレングリコール)(PLA−PEG)ブロック共重合体で主に構成される。特定の別の実施形態では、3Pスキャフォールドにはキトサンがさらに含まれる。キトサンは、3Pスキャフォールド上にコーティングされてもよい。キトサンコーティングされたスキャフォールドは、本明細書中で3PCスキャフォールドと呼ばれる。繊維重合体は、PLGAと混合したmPEGおよびPLAの開環重合により構築することができ、電界紡糸することができる。PLGAおよびPLAはいずれも、良好な機械的特性、制御された分解性、および優れた生体適合性を有するので、組織工学用途および薬物送達用途のための電界紡糸において広く用いられている[Zhou H, et al., Fabrication aspects of PLA-CaP/PLGA-CaP composites for orthopedic applications: A review. Acta biomaterialia. 2012;8:1999-2016; Xin XJ, et al., Continuing differentiation of human mesenchymal stem cells and induced chondrogenic and osteogenic lineages in electrospun PLGA nanofiber scaffold. Biomaterials. 2007;28:316-25; Kim K, et al. Incorporation and controlled release of a hydrophilic antibiotic using poly(lactide-co-glycolide)-based electrospun nanofibrous scaffolds. Journal of Controlled Release. 2004;98:47-56]。PEGは繊維の親水性を修飾および増大するために用いられ、さらに非毒性且つ非免疫原性である。PEGのタンパク質耐性特性は、付与された非イオン性電荷、および立体反発を容易にすることによりタンパク質の吸着を最小限に抑える高い排除体積に起因する。スフェロイド形成の典型的な方法では、同様な非接着性表面修飾が用いられる。
ある実施形態では、各スキャフォールド繊維におけるPEG−PLAとPLGAとの比率はおよそ1:4である。別の実施形態では、各スキャフォールド繊維におけるPEG−PLAとPLGAとの比率はおよそ1:10である。さらに別の実施形態では、各スキャフォールド繊維におけるPEG−PLAとPLGAとの比率はおよそ1:2、1:3、1:4、1:5、1:6、1:7、1:8、1:9、1:10、または1:20である。
PEG−PLAおよびPLGAは、当業者に公知の任意の方法により繊維へと形成することができる。ある実施形態では、PEG−PLAおよびPLGAの溶液を電界紡糸してPEG−PLA−PLGA繊維を形成する。スキャフォールド繊維は、約0.3μm〜約10μmの繊維直径、またはより好ましくは、約0.69μm〜約4.18μmの繊維直径を与える、任意の電圧、流速、および距離で電界紡糸され得る。ある実施形態では、PEG−PLAおよびPLGAの溶液は、高電圧電源を用いて、16kVの正電圧、0.2ml/時の流速、および13cmの距離で電界紡糸される。繊維は、アルミニウム被覆された銅プレート上に約70mmの固定距離で回収される。本発明はさらに、約60mm〜約80mmの固定距離で電界紡糸された繊維を回収することにより作製された3Pスキャフォールドまたは3PCスキャフォールドを含む。
得られた3Pスキャフォールドまたは3PCスキャフォールドは、細孔を有する3次元繊維状スキャフォールドである。ある実施形態では、スキャフォールドは、直径が約20μm未満の細孔を含む。別の実施形態では、3Pスキャフォールドまたは3PCスキャフォールドは直径が約15μm未満、約10μm未満、または約5μm未満の細孔を含む。
3Pスキャフォールド上で成長させた癌細胞がスフェロイドを形成するということが本発明の驚くべき発見である。以下の実施例に、細胞増殖、スフェロイド形成、および治療薬の有効性に対する3Pスキャフォールドの影響の分析を示す。種々の癌細胞株を用いて、スキャフォールド上でのスフェロイド形成が、癌転移中に再出現する胚性プログラムである上皮間葉転換(EMT)を誘導することが確認された。経路特異的阻害剤を用いてEMT転換のシグナル伝達を調べ、これらの経路がスキャフォールド上でのスフェロイド形成およびEMT誘導に関わることを示した。遺伝子発現分析により、転換に関与する分子機構およびシグナル伝達経路を解明し、このプロセスに関連する主要遺伝子を特定した。さらに、癌細胞の成長および分化を抑制するためのEMTの制御修飾物質としての既知の抗腫瘍剤を用いて、スキャフォールドが薬理学的有効性をモニタリングする能力を分析した。したがって、実施例は、本明細書に記載の3Pスキャフォールドが、腫瘍形成のプロセスを研究するためのプラットフォームとして利用可能であり、癌治療のための薬物のハイスループットスクリーニングにおける中間意志決定ステップとして抗癌治療の評価に使用可能であることを示す。
したがって、本明細書により、3Pスキャフォールドを用いて癌治療の有効性について医薬品をスクリーニングする方法が提供される。これらの方法では、3Pスキャフォールドに癌細胞を播種し、スフェロイドを形成させ、所定の期間、スキャフォールド中の細胞に医薬品を投与する。その後、死滅癌細胞および生存癌細胞を定量化し、癌治療についての医薬品の有効性を決定する。さらに、本明細書により、癌細胞スフェロイドを成長させる方法、組織培養方法、組織再生方法、関節炎の治療方法、および創傷治療の方法が提供される。
さらに、上記は本発明の好ましい実施形態に関連すること、および本発明の範囲から逸脱することなくその中で多くの変更が可能であることが理解されるべきである。以下の実施例で本発明をさらに説明するが、これらの実施例は如何なる点においても本発明の範囲を限定するものと解釈されるべきではない。反対に、本発明の趣旨および/または添付の特許請求の範囲から逸脱することなく、本明細書の記載を理解した当業者に示唆され得る、それらの種々の別の実施形態、変更例、および同等物が可能であると明確に理解されるべきである。本明細書中で参照される全ての特許、特許出願、および刊行物の全体をあらゆる目的のために参照により援用する。
実施例1
3Pスキャフォールドおよび3PCスキャフォールドの作製および特徴解析
適当な有機溶媒に溶解したブロック共重合体であるmPEG/LAおよびPLGAを電界紡糸することにより3Pスキャフォールドを構築した。さらに、3D環境の影響を比較するためにPLGA非修飾スキャフォールドを構築した。より具体的には、開環重合によりメトキシPEG−PLAを調製した。簡潔に述べると、3,6−ジメチル−1,4−ジオキサン−2,5−ジオン(LA)(Fisher社)を真空オーブン中、40℃で一晩乾燥した。1グラムのモノメトキシポリ(エチレングリコール)(mPEG)(MW 2000、Sigma社)を乾燥させた100mL三つ口丸底フラスコに添加し、真空下、80℃で2時間撹拌した。(それぞれ、3P 1:4スキャフォールドおよび3P 1:10スキャフォールドを作製するため)4グラムまたは10グラムの乾燥LAモノマー、および0.2wt%のオクタン酸第一スズ(Sn(Oct)2)(Sigma社)をアルゴンガスの保護下でフラスコに添加した。混合物を20mlの無水トルエンに溶かし、アルゴンガス下、140℃で5時間加熱した。重合体溶液を氷冷ジエチルエーテルに添加することにより、ジブロック共重合体の固体生成物を得た。生成物を、精製のために、ジクロロメタンに溶解して冷ジエチルエーテルで沈殿させ、これを2回繰り返した。最終共重合体を真空オーブン中、50℃で48時間乾燥した。
次いで、ポリ(乳酸−コ−グリコール酸)(MW 50kDa〜70kDa、85:15、Sigma社)および上記のmPEG−PLA重合体を、ジクロロメタンおよびクロロホルムの溶液(80/20、v/v)に溶解した。簡潔に述べると、1.2グラムのPLGAおよび0.3グラムのmPEG−PLAを用いて3Pスキャフォールドを構築した。高電圧電源(Gamma High Voltage research社、米国)を用いて、16kVの正電圧、0.2ml/時の流速、および13cmの距離で溶液を電界紡糸した。アルミニウムで被覆された銅プレート上に70mmの固定距離で繊維を回収した。
ある実施形態では、mPEGおよびPLAを真空下に置いて乾燥した(mPEGは800℃、PLAは500℃で乾燥した)。湿気を完全に除去するために温度を少なくとも1時間維持した。1:10(PEG:PLA)濃縮物を作製するために、20mlのトルエンおよび10μlのTEHに0.5のmPEGおよび5グラムのPLAを添加した。1:4では、1グラムのmPEGおよび4グラムのPLAを用いた。混合物を、アルゴン下、140℃で5時間、室温で撹拌した。溶液を一晩かけて室温まで放冷した。60mlの氷冷ジエチルエーテルを用いてmPEG/PLA共重合体を沈殿させた。このmPEG/PLA溶液を冷ジエチルエーテルに滴下した。溶液は透明から混濁へと変化した。次いで、溶液を氷上で2.5時間撹拌した。続いて、フラスコの底に形成された粘着性の沈殿物を取り出し、10mlのクロロホルムに溶解した後、エーテル中に沈殿させた。これを2回繰り返した。生成物をガラスバイアル中に回収し、真空オーブン中、50℃で少なくとも2日間乾燥させた。1.375グラムのPLGAおよび0.075グラムの1:10 mPEG−PLA重合体を5mlのジクロロメタンおよびクロロホルム(80:20 v/v)の溶液に添加した。0.3グラムのPLGAおよび1.2グラムの1:4 mPEG−PLA重合体を5mlのジクロロメタンおよびクロロホルム(80:20 v/v)の溶液に添加した。この溶液を3日間、再度重合させた後、14KVの正電圧および0.2ml/hrの流速で電界紡糸した。
ある実施形態では、3Pスキャフォールドをキトサン(90%脱アシル化)でディープコーティングした。より具体的には、3Pスキャフォールドを8mmの正方形に切断し、UVで滅菌した。次いで、0.1%キトサンを含む0.5%酢酸溶液に一晩浸漬することにより3Pスキャフォールドをディープコーティングした。スキャフォールドを、細胞培養に用いる前にPBSで3回洗浄した。これらのキトサンコーティングスキャフォールドを、本明細書では3PCスキャフォールド、CMNスキャフォールド、またはCFMNスキャフォールドと呼ぶ。これらの名称はそれぞれ3PCスキャフォールドを指す。
スキャフォールドにより、細胞間の良好な空間的相互接続性、高い表面積対体積比、および流体輸送のための良好な多孔度がもたらされた。スキャフォールドの細孔サイズ、直径、および厚さに影響を与えるパラメーターとしては、電圧、針の回収距離、および溶媒中の重合体の濃度が挙げられる。3Pスキャフォールドの走査型電子顕微鏡観察(SEM)により、結合して高度に多孔性のメッシュを形成するランダムに整列した繊維が示された(図1)。繊維の直径は0.69μm〜4.18μmであり、ネイキッドなスキャフォールドでは0.61μm〜4.95μmであり、ほとんどが細胞より小さい(<10μm)サイズの細孔を有していた。
3PスキャフォールドのFTIRは1760cm−1に強い吸収を示し、これはmPEG、PLA、およびPLGAそれぞれの−C=O伸縮に帰属された。C−O−Cバンドの伸縮は1087cm−1および1184cm−1に示される。2850および2950のピークは−CH伸縮を表す(図2A)。mPEG/PLAおよびPLGAは基本的に同じ官能基を有するため、これらのFTIRは同様な特徴的ピークを示す。Q3.39ppmでのLAの末端メトキシプロトンシグナルの強度を用いて、H核磁気共鳴分光法によりジブロック共重合体の分子量を決定した。繰り返しPEG−LA単位の重量比は、特徴的ピークの積算値から7.08と計算され、分子量は23,100Daと決定された。
Q3.39ppmでのmPEGの末端メトキシプロトンシグナルの強度を用いて、1H核磁気共鳴分光法によりジブロック共重合体の分子量を決定した。繰り返しPEG−LA単位の重量比は、特徴的ピークの積算値から計算された。図2Bに示されるように、1H NMRにより、PLAがmPEGと共重合していることが確認された。
MN(3P)、CMN(3PC)、およびネイキッドスキャフォールドの体積膨張率(SWR)は、スキャフォールドを水に24時間浸漬し、水の取込みが平衡に達したと見なされた後、測定された。SWRはスキャフォールドの親水能を示す。結果を図3に示す。
実施例2
3Pスキャフォールド上でのスフェロイドの形成および成長
乳癌細胞MCF−7、乳癌細胞MDA−MB、乳癌細胞MCF−10A、前立腺癌細胞PC3、黒色腫細胞B16、卵巣癌細胞BG−1、およびルイス肺癌細胞LLCは全て、3Pスキャフォールド上でスフェロイドを成長させた。ある実施形態では、LLC細胞(5×10個)を単層、ネイキッドスキャフォールド、および3Pスキャフォールド上で1日目〜5日目まで培養した。単層およびネイキッドスキャフォールド上の細胞はスフェロイドを形成しなかったが、3Pスキャフォールド上の細胞は3日目からスフェロイドを形成し、5日目まで連続的にサイズが大きくなっていた。カルセインAM/EthD−1を用いて、生存細胞(緑)および死滅細胞(赤)について細胞を染色して、3Pスキャフォールド上の複数の生存細胞スフェロイドが示された(未掲載データ)。
3Pスキャフォールド上で成長した細胞のSEM分析により、固着および安定化を可能にするスフェロイドの中およびスフェロイド周囲への繊維の初期の絡み合いが示された(未掲載データ)。スフェロイドの走査型電子顕微鏡観察を以下のように行った。LLCスフェロイド(細胞数5×10)をスキャフォールド上で3日間培養した。2.5%グルタルアルデヒドを含む0.2Mカコジル酸バッファー(pH7.1)の50:50(v/v)溶液中で、24時間、スキャフォールドを固定した。スキャフォールドをバッファー中で洗浄した後、1%四酸化オスミウムのカコジル酸バッファー中で、40℃にて1時間脱水した。スキャフォールドをカコジル酸バッファー中で洗浄した後、濃度10%、35%、50%、70%、95%、および100%のエタノール上昇系列で10分間さらに脱水した。最後の脱水を、ヘキサメチルジシラザン(HMDS)中で10分間行った。試料を風乾した後、アルゴンガス下で30秒間、19.32/cmの密度で、金でスパッタリングコーティングした。スキャフォールドのSEMを、Jeol JSM 6490走査型電子顕微鏡で観察した。スフェロイドの直径を計算するために、スキャフォールド全体の完全な平面画像をスキャンした。Image Jソフトウェアを用いて全てのスフェロイドの直径を測定した。
特にMCF−7スフェロイドの分析により、滑らかな表面、密な細胞間結合、および識別不能な細胞境界が明らかになった。スフェロイドは、スフェロイド/繊維複合体を形成する絡まった繊維を有し、表面上で平らになっているようであった。特に、細胞は、非修飾PLGAスキャフォールド上および単層上で増殖したが、スフェロイドを形成しなかった。
図4は、2日目から20日目の3Pスキャフォールド(n=10)上でのLLCスフェロイドの平均サイズ(図4A)およびスキャフォールド当たりのスフェロイドの平均数(図4B)を示す。96ウェルプレート中に置かれた3Pスキャフォールド上で成長したスフェロイドの平均サイズは5mmであった。20日目のスフェロイドの共焦点画像により、増殖細胞の密な層に囲まれた内部壊死性コアが示された(未掲載データ)。スフェロイド形成に必須なパラメーターは、細胞型、濃度、および最初の細胞播種からの時間に依存した。細胞濃度が高いほど、スフェロイドが速く形成され、その結果、経時的に直径および数が増大することが観察され、これは全ての細胞型で観察された(図4)。スフェロイドのSEMにより、周辺に識別不能な細胞境界を有する密な細胞の凝集体が示された。
LLC細胞に注目すると、3Pスキャフォールド上で培養した細胞が種々のサイズのスフェロイドを形成することが観察された。5×10個の2日目から20日目の平均サイズはそれぞれ48.3±7.8μmから945.44μm±28.8であり、平均スフェロイド数は20.49±2.01から52.76±3.86に増えた(未掲載データ)。スフェロイドは、容易に剥離して長期培養のための新しいウェルまたはスキャフォールドに移植可能であった。
通常は、腫瘍スフェロイドは、内向きおよび外向きの拡散勾配により定義される球状の増殖形状を示す。酸素および新鮮な成長培地の拡散能力を超えると、最も内側の細胞は静止状態になり、アポトーシスまたはネクローシスにより死滅する。このような結果が、直径が500μmを超えた20日目のスフェロイドで観察された。死滅細胞を赤、生存細胞を緑に染めるカルセインAM/EthD−1生存/死滅アッセイを用いて、スフェロイド内の細胞の生存率を評価した。このアッセイにより、周辺の細胞が死滅細胞の内部コアを取り囲んでいるようであることが示された(未掲載データ)。
実施例3
形状と化学の特有の組合せによりスフェロイド形成が可能になる
スフェロイド形成に対する形状および化学の影響を調べるために、PLGA、PLAおよびPLGA/PEG、PLA/PEG、ならびにPLGA/PLA/PEGでコーティングしたガラス製カバースリップ上でLLC細胞を培養した。細胞は全ての基材上で増殖するが、PLGA/PLA/PEGカバースリップ上でのみスフェロイドへと自己組織化することが観察された。しかし、これらのスフェロイドは、より数が少なく、3日目にカバースリップから基材を分離した際に容易に解離した。PLA/PEG構造体上の細胞は、3Pスフェロイドで観察された明確な形および構造を欠く、巨大な組織化されていない(disorganized)細胞凝集体を成長させた。
スフェロイド形成に対する表面化学の影響をさらに解明するために、複合3P/キトサンスキャフォールドを前述したように構築した(本明細書中で3PCスキャフォールドまたはCMNスキャフォールドと呼ばれる)。細胞は増殖するが、スフェロイドは形成しないことが観察された(未掲載データ)。生理学的pHで正電荷を付与してスキャフォールドの親水性特性を増大させる天然の多糖であるため、キトサンを用いた。
3Pスキャフォールド上でのスフェロイドの形成および維持は、3P ECM様スキャフォールドと細胞との間で動的に伝達された形状的刺激および化学的刺激によってスフェロイド形成が導かれたという観察を裏付けている。単層培養用にコーティングされた通常の組織培養プレート(TCP)に移植したスフェロイドは、プレートに接着し、スフェロイドから成長することが観察された。LLC細胞はスフェロイドから徐々に、1日目から4日目まででそれぞれ0、0.67±0.1、1.4±0.14、2.1±0.29mm離れ、最終的にコンフルエントな単層を形成した(未掲載データ)。新しいスキャフォールドに移植されたスフェロイドでは、それらの形態および形が同じ期間にわたって維持された。形状および化学に加え、2D環境中には存在するが3Pスキャフォールド中には存在しないその他の刺激、例えば、基材の密度および弾性、細胞極性、ならびに2D環境が及ぼす非天然の制約に応答したスフェロイド内の圧力勾配の差などの因子が、TCP上での外向きの遊走の誘導に関与している可能性がある。
実施例4
スフェロイド形成はEMTシグナル伝達を誘導する
3Pスキャフォールドが腫瘍細胞を誘導して、無血管腫瘍の微小転移巣に類似した多細胞スフェロイドを形成したという発見に基づき、スキャフォールド上でのスフェロイド形成がLLC肺癌細胞株においてEMTを誘導するかどうかを調べた。続いて、結果を、PLGAスキャフォールド上で成長させた細胞および単層培養中で成長させた細胞と比較した。分子レベルでは、上皮間葉転換(EMT)は、細胞間接着分子であるE−カドヘリンの減少および間葉マーカーであるビメンチンの転写誘導によって定義される。
これらの実験を行うために、LLCスフェロイドを4日間培養した(播種密度5×10個)。スフェロイドを4%パラホルムアルデヒドで20分間固定し、0.1%Triton X−100を用いて25℃で20分間透過処理し、3%BSAを用いてブロッキングした。細胞をビメンチン抗体またはE−カドヘリン抗体と一晩インキュベートした後、Alexa Fluor 555またはAlexa Fluor 488結合型抗マウス二次抗体およびDAPIとインキュベートした。Olympus社製BX51顕微鏡を用いて細胞を観察した。
図5Aに示されるように、スキャフォールド上で成長させたスフェロイドは3日目にビメンチンの発現を示したが、単層培養中またはPLGAスキャフォールド上で培養した細胞ではビメンチン発現は観察されなかった。さらに、スフェロイドは、3Pスキャフォールド上ではE−カドヘリンの発現が消失したが、単層およびPLGAスキャフォールド上で培養した細胞ではこの発現が保持されている(図5B)。このことは、スフェロイド形成が、EMTを定義する特徴である浸潤能および腫瘍形成能の増大に関連していることを示唆しており、これは3P環境の状況で現れるようである。EMT誘導のタイムラインを決定するために、LLC細胞を3Pスキャフォールド上で培養し、培養1日目から4日目まで、ビメンチンおよびE−カドヘリンの染色を行った。EMTは3日目に開始し、4日目まで続き、スフェロイドへの細胞の自己組織化に関連していることが観察された(未掲載データ)。
実施例5
薬理学的介入はスフェロイド形成を抑制してEMTシグナル伝達を妨害する
EMTの制御修飾物質としての既知の抗腫瘍剤の効果を調べるために、MCF−7細胞およびLLC細胞をホスホチジルイノシトール−3キナーゼ(PI3K)経路阻害剤であるLy294002およびマイトジェン活性化プロテインキナーゼ(MAPK)経路阻害剤であるU0126で処理した。スフェロイド形成をこれらの薬物で阻害できるかどうかを決定するために、MCF−7細胞を、3Pスキャフォールド上で24時間培養した後にLy294002およびU0126で処理し、4日目のスフェロイド形成を観察した。全ての抗腫瘍剤が、3Pスキャフォールド上でのスフェロイドの形成および増殖を防止した(未掲載データ)。さらに、これらの化合物は、PLGAスキャフォールド単独上で培養した細胞および単層上で培養した細胞で観察されたのと同様に、細胞中のE−カドヘリン発現は維持しながら、ビメンチンの下方制御に効果的であった。これらの薬剤による処理が、完全に形成されたスフェロイドにおいてEMTを調節解除するかどうかを決定するために、培養したLLCスフェロイドに4日目に同濃度の薬物を投与した。ビメンチン発現の欠如と同時にE−カドヘリン発現が再度観察され、EMT阻害が示唆された。予想された通り、非処理スフェロイドはEMTマーカー発現に対して陽性であった。これらの発見は、PI3Kシグナル伝達およびMAPKシグナル伝達の両方が、3Pスキャフォールド上でのスフェロイド形成およびEMT発現に必要な性質である細胞骨格の再編成および細胞間接着に寄与する重要な経路であることを意味している。
実施例6
3Pスキャフォールドを用いた薬物有効性分析
腫瘍を治療するための治療有効性をモニタリングする3Pスキャフォールドの能力を評価するために、LLCスフェロイドを種々の濃度のPI3K経路阻害剤Ly294002(1.0μΜ、0.1μΜ、および0.01μΜ)で処理し、24時間から96時間にわたるスフェロイドの生存率を評価した。スフェロイドのサイズおよび数の測定により、非処理スフェロイドと比較して、処理されたスフェロイドにおける用量依存的な細胞毒性反応が明らかになった。処理の24時間後、濃度1.0μM、0.1μM、または0.01μMのLy294002で処理されたスフェロイドは、非処理スフェロイドと比較して、平均してそれぞれ37.3±8.4%、22.0±10.9%、および17±12.5%のサイズ減少を示した。
処理の48時間後では、スフェロイドサイズはそれぞれ平均51.2±6.73%、32.6±5.97%、および28.9±9.3%減少し、処理の96時間後では、0.01μMで処理された細胞は63±5.9%減少したが、1.0μM、0.1μMの阻害剤で処理された細胞は死滅したようであった。スフェロイドの数は、処理の24時間後のそれぞれ37.4±3.8%、26.8±4.38%、および14.5±8.52%から、48時間後のそれぞれ61.7±2.92%、52.6±2.93%、および40.3±2.44%に有意に減少していた。処理の96時間後には、0.01μMの阻害剤で処理されたスフェロイドは93.3±0.48%減少したが、1.0μM、0.1μMの阻害剤で処理されたスフェロイドは消失していた。
EMTの化学療法による防止をモニタリングするためのツールとしての3Pスキャフォールドの有用性をさらに探索するために、MCF−7乳癌細胞を、スフェロイド形成を防止するためにドキソルビシンならびにLy294002阻害剤およびU0126阻害剤で処理し、単層2D培養における反応と比較した、用量依存的反応の差について調べた。前述したように、MCF−7スフェロイドを阻害剤で処理すると3Pスキャフォールド上でのスフェロイド形成が抑制される。薬物のIC50は、薬物が生物学的機能または生化学的機能を阻害する半数致死量として定義される。処理細胞の連続的な生存率測定により、3Pスキャフォールド上の細胞と単層培養上の細胞との間で有意に異なる細胞毒性反応が明らかになった。48時間の薬物誘導後、MCF−7細胞の生存率は有意に低く、3Pスキャフォールド上で培養された細胞より高い感受性を2D単層培養で示した。ドキソルビシンのIC50は、単層上では0.6μMであり、3Pスキャフォールド上では12.0μMであった。U0126のIC50は単層上では10.6nmであったが、3Pスキャフォールド上でのU0126のIC50は105.9nmであった。LY294002のIC50は、単層では0.13μMであったが、3Pスキャフォールドでは1.15μMであった(図6A〜図6C)。
スフェロイド培養物中における抗癌剤に対する感受性の低下は、多細胞レベルで作用する微小環境メカニズムおよび合成インビトロ3D条件の機能に関連する要因に起因する可能性があることが提唱されている。これらの要因により、スフェロイド内部への薬物の浸透が制限され得るので、ドキソルビシンの内因的自家蛍光能を用いて、拡散の制限が薬物耐性の要因であるかどうかを評価した。MCF−7スフェロイドを3Pスキャフォールド上で2時間、10μMドキソルビシンの存在下でインキュベートした後、2時間後には薬物がスフェロイドに完全に浸透していることが観察され(未掲載データ)、このことは、3P系における薬物耐性が薬物輸送への影響だけでは説明できないことを示唆している。
実施例7
遺伝子発現分析
EMTは、腫瘍転移に関連する主要なプロセスであり、遺伝子発現の全体的変化が関与し得る。スフェロイド形成により、3Pスキャフォールド上ではEMTが誘導されたが、PLGAまたは単層培養上ではEMTが誘導されなかったので、関与する基本的分子的機構を決定するために遺伝子発現分析を行った。この分析ではfocused EMT microarrayを用いて、細胞の遊走、運動性、および形態形成を仲介する細胞表面受容体、細胞外マトリックスタンパク質、細胞骨格タンパク質;細胞の分化、発生、成長、および増殖を制御するタンパク質;ならびにEMTおよびそれに関連する全プロセスに寄与するシグナル伝達タンパク質および転写因子タンパク質、をコードする84個の遺伝子の発現を調べた。
3Pスキャフォールド、PLGAスキャフォールド、および単層上で培養したLLC細胞から48時間目のトータルRNAを単離した。1倍発現(one-fold expression)を用いて、PLGA上に対して3P上で、および単層上に対して3P上で、スフェロイドとして成長させたLLC細胞間の差を評価し、前述したオントロジー的分類(ontological grouping)で示した。48時間の時点で上方制御された遺伝子の数は、同じ時点で下方制御された遺伝子より多かった。分析した遺伝子中、単層に対して3Pでは、79%が上方制御され、21%が下方制御されたが、PLGAに対して3Pでは60.6%が上方制御され、39.4%が下方制御された(図7〜図12)。
遺伝子発現レベルは、培養条件および生物学的分類に依存した。例えば、EMT分化および発生の遺伝子の倍率差は、単層に対して3Pスキャフォールド上で培養した細胞と、PLGAに対して3P上で培養した細胞との間で、他の遺伝子グループで観察された差と比較して大きいようである。EMTは分化転換プログラムであるので、これらの結果は、多細胞スフェロイドと結合した3Pスキャフォールドからの複合的な刺激によりEMT誘導が促進されるのに対して、2D単層環境はLLC細胞の分化への圧力がそれほど強くないという観察結果を裏付けている。
EMTには、高度に相互接続されたネットワークを形成する複数の細胞内シグナル伝達経路が関わっている。ここで、ネットワーク経路により、発現に差のある遺伝子間の予想される関係が明らかになる。E−カドヘリン(Cdh1)などの主要な上皮マーカーの転写抑制、ならびにビメンチン(Vim)およびフィブロネクチン(Fn1)などの間葉マーカーの上方制御が観察された。EMTは連続的であるので、上記の時系列実験の48時間目に観察されるような関連タンパク質の発現の24時間前に遺伝子の誘導が起こっていると考えられる。TGF−β遺伝子、Notch遺伝子、およびWNT遺伝子の上方制御が観察され、これらの遺伝子は、EMT発現を制御する3つの主要経路を促進し、Stat3、Gsk3b、ならびに転写因子であるTwistおよびSnai1などの主要メディエーターの活性化に関与する。転写制御因子のネットワークが存在するので、転写因子1および4(TCFl1およびTCF4)ならびにエストロゲン受容体1(ESR1)などの他の転写因子も影響を受けるであろう。これらの経路の遺伝子の活性化により、さらに細胞外マトリックスおよび細胞接着において役割を果たす遺伝子であるインテグリン(ltgav)およびメタロプロテアーゼ(MMP9)、ならびにケラチン(Krt7)およびプレクストリンホモロジー(Plek2)などの細胞骨格リモデリングに関わる遺伝子の発現が制御される。
実施例8
3PCスキャフォールドの特徴解析
電界紡糸された3PCスキャフォールド上で成長させた場合、腫瘍細胞が基本的形態を維持していることがSEMにより示された。さらに、Ki−67アッセイおよび生存率アッセイにより、3PCスキャフォールド上で成長させた場合(最大3日間)、腫瘍細胞が増殖し、生存可能であることが示された。3PCスキャフォールド上で成長させた腫瘍細胞は、単層上で成長させた細胞と比較して、ドキソルビシンに対する感受性が低かった。このことは、2D研究の結果が信頼できないことを示唆している。さらに、PLGAネイキッドスキャフォールドは生体適合性があり、高い腫瘍形成能を示すことが判明した。これらの観察結果から、これらの3Dマトリックスを癌研究のモデルとして用いることができると結論付けることができる。
実施例9
移植マウス腫瘍の穿刺吸引物(FNA)の培養
LLC1細胞(5×10個)を野生型C57BL/6マウス(米国国立癌研究所)の側腹に皮下注射した。腫瘍形成を2週間モニタリングした後、穿刺吸引により腫瘍生検を採取した。簡潔に述べると、回転運動を利用して23ゲージの針を腫瘍に挿入し、組織培養培地を満たしたシリンジを取り付けて内容物を滅菌管中に排出することにより、組織サンプルを針から洗い流した。この処理を2回繰り返した。3つの採取した腫瘍試料をプールし、単一細胞懸濁液をスキャフォールド上で培養した。
3Pスキャフォールド上で成長させた腫瘍生検の化学感受性
3Pスキャフォールドを腫瘍生検の培養に利用できるかどうかを決定するために、移植マウス腫瘍のFNAの単一細胞懸濁液を3Pスキャフォールド上で培養した。図13および図14に示されるように、生検誘導類腫瘍(BIT)の平均直径は、1日目から5日目で、腫瘍細胞株を用いた実験で観察された割合とほぼ同じ割合で大きくなった。BITの免疫染色により、EMTの誘導を示唆する、E−カドヘリンの発現減少およびビメンチンの発現増大が示された(図15)。腫瘍細胞に加え、インビボの腫瘍微小環境(TME)に典型的な(Mallela et al., (2013) Stem Cells 31: 1321-1329)間質細胞の存在について、各細胞表面マーカーに対する抗体を用いた免疫染色によりBITを調べた。
BITは、腫瘍細胞マーカー、癌胎児性抗原(CEA)、マクロファージマーカーであるF4/80、内皮前駆細胞マーカーであるCD31、および癌関連線維芽細胞マーカーである平滑筋アクチン(SMA)について陽性であることが見出され、このことは、TMEの間質成分の存在を示している(図16)。対照として用いたLLC1類腫瘍はCEAのみを発現した。
3Pスキャフォールド上で培養した生検類腫瘍が薬物感受性の評価に利用可能であるかどうかを決定するために、FNA類腫瘍を、阻害剤であるLY294002およびU0126の存在下または非存在下で培養した。その結果、類腫瘍のサイズおよび用量依存的な細胞毒性の低減により明らかにされたように、阻害剤がBITの成長調節において有効であることが示された。しかし、LY294002およびU0126のIC50は1mMを超えており(図17)、BITの薬物に対する耐性はLLC1に基づく類腫瘍より高いことが示された。3Pシステムにおける生検類腫瘍の薬物耐性の増大は、薬物の取込み不足によるものではなかった。
本開示は、「類腫瘍」と呼ばれる腫瘍細胞の微小転移性の小型凝集体の形成を誘導する3P繊維状スキャフォールドの実施形態を包含する。適切な因子を含む成長培地を用いてこれらのスキャフォールド上に播種された癌細胞は、インビボ腫瘍形成に特徴的なEMTを示す類腫瘍として成長する。さらに、このプラットフォームにより、特異的な因子、遺伝子発現、および浸潤能の変化を特定するための腫瘍細胞および間質細胞の共培養も可能になる。
類腫瘍は、天然ECMにおいて腫瘍進行を促進する刺激と同様の生化学的刺激、ナノ形状的刺激、および機械的刺激に反応することが可能である(Fischbach et al., (2007) Nat. Methods 4: 855-860)。本開示の3Pプラットフォームは、腫瘍細胞と幹細胞ニッチの構成成分である間質細胞とを同時に標的とする治療戦略の評価に用いることができる(Ballangrud et al., (1999) Clin. Cancer Res. 5: 3171s-3176s)。3Pプラットフォームはさらに、生検に由来する患者自身の細胞を培養して、種々の抗癌化合物を用いてそれらをエクスビボで試験し、その患者に由来する特定の腫瘍細胞に対して最も効果的な治療剤を選択して有効用量を決定することにより個別化された治療をテーラーメイドするための、ポイント・オブ・ケア・デバイスにおける使用に適応させることができる。単層培養と対比して、3Pスキャフォールド上でのLy294002またはU0126を用いた類腫瘍の処理により、スキャフォールド上の場合にMCF7細胞のより高い薬物耐性が示された。3P培養物のIC50値は、単層培養物より、Ly294002阻害剤で10倍高く、U0126阻害剤で100倍高かった。これらの結果は、単層培養で成長させた腫瘍細胞と比較して、3D類腫瘍として成長させた腫瘍細胞がほとんどの細胞毒性薬物に対して多細胞的耐性を発達させることを示す他の研究による他の報告と類似している(Kobayashi et al., (1993) Proc. Natl. Acad. Sci. U S A 90: 3294-3298; Desoize et al., (1998) Bull. Cancer 85: 785)。例えば、マウス乳腺腫瘍細胞のインビボ薬物耐性バリアントEMT−6は、単層として培養された場合には耐性を失ったが、インビボで固形腫瘍としてまたはインビトロで類腫瘍として再度成長させた場合には耐性を回復した(Teicher et al. (1990) Science 247: 1457-1461)。3D培養と単層培養との間に差がある理由はまだ分かっていない。3P類腫瘍内での栄養素、酸素、および薬物に対する病態生理学的な勾配ならびに不均一な細胞集団の同心円状の配置がRNA発現およびタンパク質発現に影響を与え得る。例えば、類腫瘍の壊死性コア近くの静止細胞は、サイクリン依存性キナーゼ阻害剤p27Kip1を上方制御し、これにより細胞がG0/G1期で停止し、細胞周期抵抗性が誘発されるということが報告されている(St Croix et al. (1996) Nat. Med. 2: 1204-1210)。p27Kip1の発現は、単層培養中より類腫瘍培養中で15倍多い。さらに、Bcl−2経路を介したアポトーシスの阻害(Zhang et al., (1995) Proc. Natl. Acad. Sci. U S A. 92: 6161-6165)ならびにDNAミスマッチ修復タンパク質であるPMS2およびトポイソメラーゼ11の下方制御(Francia et al., (2004) Mol. Cell Biol. 24: 6837-6849; Olive et al., (1991) Int. J. Radiat Biol. 60: 453-466)が、類腫瘍中の腫瘍細胞を抗腫瘍剤に対して非感受性にする機構として提唱されている。現在、この耐性は物質輸送の欠損の結果ではないことが分かっている。これは、薬物浸透が効率的であっても類腫瘍は依然として単層培養より高い薬物耐性を示すことを示す他の薬物浸透データとも一致する(Erianson et al., (1992) Cancer Chemotherapy Pharmacol. 29: 343-353; Ho et al. (2010) Cancer Sci. 101: 2637-2643)。これらのデータは、3Pスキャフォールド上の類腫瘍の成長が、細胞の表現型およびシグナル伝達の変化により細胞挙動および薬物耐性の制御のための重要な刺激が付加される生理学的成長条件を反映していることを示している。
腫瘍と間質との相互作用は、癌の成長、分化、転移、および薬物耐性獲得に影響を与える。本開示の3Pスキャフォールドが抗癌剤スクリーニングの適切なインビトロモデルであるかどうかを決定するために、腫瘍生検試料をスキャフォールド上で培養した。3Pスキャフォールドは、生検由来の腫瘍細胞および間質細胞の両方の成長をサポートした。したがって、このインビトロプラットフォームは、インビボでの腫瘍成長を模倣している。さらに、生検由来類腫瘍(BIT)は、癌細胞株由来の類腫瘍と比べて、MEK阻害剤およびPI3K阻害剤への耐性が高いことが予想外に見出された。
したがって、細胞株由来の類腫瘍は異なる薬物感受性プロファイルを示すが、これらはインビボの条件を正確に反映していない。しかし、本開示の3Pスキャフォールド上で培養した生検由来類腫瘍で得られた結果は、生検した腫瘍から得られるような腫瘍細胞と間質細胞の共培養により、インビボの状態をより良く反映する類腫瘍が得られることを示唆している。化学感受性に対するこれらの腫瘍/間質の影響は、実際の患者腫瘍生検を成長させて抗癌剤の有効性を試験するために3Pスキャフォールドなどの3Dプラットフォームを用いることの利点を強く示している。
したがって、本開示のスキャフォールドに基づくプラットフォームにより、カスタマイズまたは個別化された抗癌治療の開発に有用なアプローチが実現される。したがって、腫瘍生検を3Pスキャフォールド上で培養し、BITへと分化させた後、一連の抗癌剤を用いてスクリーニングすることにより特定の癌患者のための最も効果的な薬物の組合せを決定することができると考えられる。そのような結果は1週間以内に得ることができる。
遺伝学、ゲノム科学、および関連技術の急速な進歩により、予後の向上および毒性の低下を目的とした患者の腫瘍およびその微小環境の分子的特徴解析に基づく個別化された癌治療の新たな時代が期待される[85]。腫瘍の不均一性、ほとんどのゲノム異常に対する効果的薬物の欠如、および分子的試験の技術的制限が、現在のアプローチが抗癌剤への反応を予測することの妨げとなっている。3Pスキャフォールドにより、罹患動物内の腫瘍で見られる生理学的および薬学的な反応を厳密に模倣する類腫瘍が提供されるので、薬物スクリーニングおよびカスタマイズされた癌療法に有用である。

Claims (5)

  1. (i)ランダムに配向した繊維の3次元スキャフォールドであって、前記繊維は、ポリエチレングリコール−ポリ乳酸ブロック共重合体(PEG−PLA)およびポリ(乳酸−コ−グリコール酸)(PLGA)を含む混合物から電界紡糸される、スキャフォールド;および
    (ii)動物またはヒトの腫瘍から採取され、単一細胞化された、癌細胞および間質細胞の集団を含む細胞の集団であって、前記細胞の集団は、細胞培養培地中で事前にインキュベーションされることなく、前記スキャフォールド上に播種されている、細胞の集団
    を含み、
    前記PEG−PLAは、PEGとPLAを1:4〜1:10の重量比で含み、
    前記混合物は、PEG−PLAとPLGAを1:2〜1:10の重量比で含み、
    前記繊維の繊維直径は、0.69μm〜4.18μmであり、
    前記スキャフォールドは、直径10μm未満の細孔を含む
    組成物。
  2. 前記組成物が細胞培養培地中でインキュベートされ、前記細胞の集団が類腫瘍である、請求項1に記載の組成物。
  3. 前記類腫瘍が、前記動物またはヒト対象の腫瘍から単離されたが前記スキャフォールドの非存在下で培養された前記細胞の集団と比較して治療剤に対する耐性が増大している細胞の集団を含む、請求項2に記載の組成物。
  4. (i)ランダムに配向した繊維の3次元スキャフォールドに、動物またはヒトの腫瘍から取り出され、単一細胞化された、癌細胞および間質細胞の集団を含む細胞の集団を播種すること、ここで前記ランダムに配向した繊維のスキャフォールドは、ポリエチレングリコール−ポリ乳酸ブロック共重合体(PEG−PLA)およびポリ(乳酸−コ−グリコール酸)(PLGA)を含む混合物から電界紡糸されたものであり、前記細胞の集団は、細胞培養培地中で事前にインキュベーションされることなく、前記スキャフォールド上に播種され;および
    (ii)前記播種された細胞の増殖が可能な条件下で、細胞培養培地中にて、前記播種されたスキャフォールドをインキュベートすることにより、類腫瘍を作製すること
    を含み、
    前記PEG−PLAは、PEGとPLAを1:4〜1:10の重量比で含み、
    前記混合物は、PEG−PLAとPLGAを1:2〜1:10の重量比で含み、
    前記繊維の繊維直径は、0.69μm〜4.18μmであり、
    前記スキャフォールドは、直径10μm未満の細孔を含む
    類腫瘍の作製方法。
  5. 動物またはヒトの腫瘍の細胞の増殖を調節する化合物を同定する方法であって、
    (i)(a)ランダムに配向した繊維の3次元スキャフォールドに、動物またはヒトの腫瘍から取り出され、単一細胞化された、癌細胞および間質細胞の集団を含む細胞の集団を播種すること、ここで前記ランダムに配向した繊維のスキャフォールドは、ポリエチレングリコール−ポリ乳酸ブロック共重合体(PEG−PLA)およびポリ(乳酸−コ−グリコール酸)(PLGA)を含む混合物から電界紡糸されたものであり、前記細胞の集団は、細胞培養培地中で事前にインキュベーションされることなく、前記スキャフォールド上に播種され;および
    (b)前記播種された細胞の増殖が可能な条件下で、細胞培養培地中にて、前記播種されたスキャフォールドをインキュベートすることにより、類腫瘍を作製すること
    により類腫瘍を作製すること;
    (ii)前記類腫瘍を、前記類腫瘍の細胞の増殖を調節する可能性が疑われる化合物と接触させること;
    (iii)前記化合物と接触した前記類腫瘍の細胞の増殖を、前記化合物と接触していない類腫瘍の細胞の増殖と比較することにより、前記化合物が前記類腫瘍の細胞の増殖を調節するかどうかを決定すること
    を含み、
    前記PEG−PLAは、PEGとPLAを1:4〜1:10の重量比で含み、
    前記混合物は、PEG−PLAとPLGAを1:2〜1:10の重量比で含み、
    前記繊維の繊維直径は、0.69μm〜4.18μmであり、
    前記スキャフォールドは、直径10μm未満の細孔を含む
    方法。
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