以下、添付した図面を参照しながら、本発明の実施形態を説明する。本発明は、以下の実施形態に限定されない。なお、図面の説明において同一の要素には同一の符号を付し、重複する説明を省略する。また、図面の寸法比率は、説明の都合上誇張されており、実際の比率とは異なる。
(実施形態1)
<画像形成システムの構成>
図1は、実施形態の画像形成装置の構成を示す概略図である。
本実施形態に係る画像形成システム700は、連続紙Pを画像の記録媒体として使用して、この連続紙Pに画像を形成するシステムである。
画像形成システム700は、印刷時の連続紙Pの搬送方向(図1中の矢印F)を順方向として上流側から、給紙装置100、給紙調整装置200、画像形成装置300、排紙調整装置400、加工装置500および排紙装置600が接続されている。このシステムで使用する連続紙Pとしてはロール紙を例示する。しかし連続紙Pは必ずしもロール状に保持されている必要はなく、折り畳まれて保持されてもよい。また、図1には、一のロール紙しか示されていないが、複数のロール紙が保持されてもよい。また、以下の説明において、上流、下流とは印刷時における連続紙Pの搬送方向である順方向を基準にその上流、下流のことである。
<給紙装置の構成>
給紙装置100はロールから連続紙Pを引き出して画像形成装置300へ供給する。給紙装置100の筐体内では、たとえば、図1に示すとおり、ロール紙が支持軸に巻回されて回転可能に保持される。給紙装置100は、支持軸に巻回されたロール紙から連続紙Pを引き出して、複数のローラー(たとえば、繰り出しローラー、給紙ローラー)を経由して、一定の速度で外部へ搬送する。
<給紙調整装置の構成>
給紙調整装置200は、給紙装置100の下流側、かつ、画像形成装置300の上流側に設置される。給紙調整装置200は、給紙装置100から搬送された連続紙Pを、画像形成装置300へと搬送する。給紙調整装置200は、給紙装置100での連続紙Pの搬送速度と、画像形成装置300での連続紙Pの搬送速度との速度差を吸収するために、図1に示すように連続紙Pをたるませて保持し、画像形成装置300への連続紙Pの給紙を調整する。
<画像形成装置の構成>
画像形成装置300は、連続紙Pに画像を印刷する。画像形成装置300は、給紙調整装置200の下流側、かつ、排紙調整装置400の上流側に設置される。図1に示すとおり、画像形成装置300は、給紙搬送部310と、画像読取部320、画像形成部330と、定着部340と、排紙搬送部350と、操作パネル360と、制御部370とを備える。
給紙搬送部310は、画像形成部330の給紙側の搬送機構であり、たとえば、給紙モーターの駆動によって一対の給紙搬送ローラーを回転させ、給紙調整装置200から搬送された連続紙Pを画像形成部330へ搬送する。給紙搬送部310は、排紙搬送部350とともに、連続紙Pを搬送するための搬送部となる。搬送部は、連続紙Pを印刷時に搬送する方向である順方向に搬送可能であるとともに、印刷時と反対の逆方向へも搬送可能である。このため、給紙搬送ローラーは、制御部370からの制御によって正回転および逆回転できる。
画像読取部320は、原稿の画像を読み取り、印刷画像データを生成する。本実施形態では、画像読取部320は、光源、読取面、光学系および撮像素子を有する。発光素子を備える光源から照射された光は、読取面に載置された原稿に照射され、その反射光は光学系を通じて、読み取り位置に移動した撮像素子に結像される。撮像素子は、原稿からの反射光強度に応じて電気信号を生成する。生成された電気信号は、アナログ信号からディジタル信号に変換され、各種の画像処理が施され、印刷画像データとして画像形成部330に送信される。
画像形成部330は、電子写真プロセスによってトナー像を形成し、連続紙Pに転写する。たとえば、画像形成部330においては、像担持体として、感光体ドラム(Y、M、C、K)および中間転写ベルト331が用いられる。中間転写ベルト331は、無端ベルトであり、複数のローラーにより巻回され、走行可能に支持される。感光体ドラム(Y、M、C、K)に形成された各色のトナー像は、中間転写ベルト331上に逐次転写され、各色(Y、M、C、K)の層が重畳したトナー像(カラー画像)が中間転写ベルト331上に形成される。そして、トナーと逆極性のバイアスを転写ローラーTに印加することにより、中間転写ベルト331上に形成されたトナー像は連続紙P上に転写される。
定着部340は、連続紙P上に転写されたトナー像を加熱することによって連続紙P上に定着させる。定着部340は、加熱源である加熱部材R1と、これに圧接させる加圧部材R2とからなる定着ニップ部が形成されている。加熱部材R1および加圧部材R2はいわゆる定着ローラーとなるものである。加圧部材R2は離接部342によって加熱部材R1に対して圧接、離隔が行われる。これにより、連続紙Pには、加熱部材R1と加圧部材R2の間の定着ニップ部において熱と圧力が加えられ、トナー像が溶融定着する。定着部340内には、温度センサー341が設けられている。温度センサー341は定着ニップ部近傍に設けられている。温度センサー341の検知信号は制御部370へ送られて、定着ニップ部の現在温度が検知される。
排紙搬送部350は、定着部340を通過してきた連続紙Pを排紙調整装置400へ搬送する。排紙搬送部350は、画像形成装置300の排紙側の搬送機構であり、たとえば、排紙モーターの駆動によって一対の排紙搬送ローラーを回転させ、定着部340を通過してきた連続紙Pを、排紙調整装置400へ搬送する。また、前記のように排紙搬送部350は給紙搬送部310とともに搬送部として機能する。このため排紙モーターは、制御部370からの制御によって正回転および逆回転できる。したがって、搬送部の動作としては、給紙搬送部310および排紙搬送部350の両方が同じように動作して、順方向または逆方向へ連続紙Pを搬送する。
操作パネル360は、ユーザーの指示を受け付けたり、ユーザーへのメッセージなどを表示したりする。本実施形態では、操作パネル360は、ボタンスイッチやタッチパネルを有する。ユーザーは、これらのボタンスイッチや、タッチパネルに表示されるタッチ画面を操作することにより、画像形成装置300に対して指示を入力する。また、タッチ画面には、入力された情報、各種設定情報、警告メッセージなどが表示される。
制御部370は、給紙搬送部310、画像読取部320、画像形成部330、定着部340、排紙搬送部350および操作パネル360を制御して、連続紙P上に画像を印刷する動作(以下「印刷動作」とも称する)を実行する。印刷動作には、画像の形成および定着が含まれる。また、印刷を実施している期間を「印刷中」と称し、印刷を停止または中断している期間を「印刷停止中」と称する。制御部370の詳細については、図2を参照して後述する。
<排紙調整装置の構成>
排紙調整装置400は、画像形成装置300の下流側、かつ、加工装置500の上流側に設置される。排紙調整装置400は、画像形成装置300から搬送された連続紙Pを、加工装置500へと搬送する。排紙調整装置400は、画像形成装置300での連続紙Pの搬送速度と、加工装置500での連続紙Pの搬送速度との速度差を吸収するために、図1に示すように連続紙Pをたるませて保持し、画像形成装置300からの連続紙Pの排紙を調整する。
<加工装置の構成>
加工装置500は、連続紙Pに対して各種の加工、たとえば所定形状の切り抜きやラミネート加工などを実施する。
<排紙装置の構成>
排紙装置600は、排紙調整装置400および加工装置500を経て画像形成装置300から搬送されてきた連続紙Pを排紙する装置である。排紙装置600の筐体内では、たとえば、図1に示すとおり、連続紙Pが支持軸に巻回されてロール状に保持される。そのために、排紙装置600は、加工装置500から搬送されてきた連続紙Pを、複数のローラー(たとえば、繰り出しローラー、排紙ローラー)を経由して、一定の速度で支持軸に巻き取る。しかしながら、排紙装置600において、連続紙Pは、必ずしもロール状に保持されている必要はなく、ページごとにカットされてもよい。
<制御部の構成>
図2は、図1に示す制御部370の構成を示す概略ブロック図である。図2に示すように、制御部370は、記憶部371、補助記憶部372、通信インターフェース373、入出力インターフェース374およびCPU(Central Processing Unit)375を有し、これらは信号をやり取りするためのバス376を介して相互に接続されている。
記憶部371は、作業領域として一時的にプログラムおよびデータを記憶する高速アクセス可能な主記憶装置である。記憶部371には、たとえば、DRAM(Dymamic Random Access Memory)、SDRAM(Synchronous Dymamic Random Access Memory)、SRAM(Static Random Access Memory)などが採用される。
補助記憶部372は、オペレーティングシステム、ラスタライズ用プログラム、印刷制御プログラムを含む各種プログラムや各種データを格納する大容量の記憶装置である。ラスタライズ用プログラムは、印刷ジョブに含まれる印刷データをラスタライズして印刷画像データを生成するためのソフトウェアプログラムである。また、印刷制御プログラムは、後述する本実施形態の印刷制御方法を実現するためのソフトウェアプログラムである。補助記憶部372には、たとえば、フラッシュメモリー、ソリッドステートドライブ、ハードディスクドライブなどが採用される。
通信インターフェース373は、通信ネットワークを介して、たとえば、プリンタードライバーが組み込まれたクライアント端末など他の外部装置と通信するためのインターフェースである。通信には、イーサネット(登録商標)、Wi−Fi、FDDI(Fiber−Distributed Data Interface)、トークンリングなどの規格が用いられる。
入出力インターフェース374は、たとえば、操作パネル360などの入出力装置と通信するためのインターフェースである。
CPU375は、上記各種プログラムにしたがって上記各部の制御や各種の演算処理を実行する。CPU375は、ラスタライズなどの処理を実行するため、マルチコアのプロセッサーなどから構成されることが好ましい。画像形成装置300の各機能は、それに対応するプログラムをCPU375が実行することにより発揮される。特に、本実施形態では、CPU375が印刷制御プログラム実行することにより、印刷制御方法が実現される。
<印刷制御>
図3は、実施形態1の印刷制御の手順を説明するためのフローチャートである。本実施形態1における印刷制御は、概略すると、印刷の終了後に定着部340の加熱を停止して連続紙Pを順方向に搬送し、印刷の再開前には定着部340の加熱を開始するとともに連続紙Pを逆方向に搬送した後さらに順方向に搬送する。
図3を参照して詳しく説明する。
この印刷制御は主に印刷終了後の制御である。このため手順としては、まず、制御部370が印刷終了か否かを判断する(S101)。印刷終了(S101:YES)であれば、以降の制御を実施する。一方、印刷中はS101において印刷終了ではない(S101:NO)と判断されるので、そのまま通常の印刷動作が継続される。
印刷中の動作は通常の画像形成装置と同じであるので詳細な説明は省略するが、概略以下のとおりである。制御部370は、印刷ジョブを受信した場合、受信した印刷ジョブに含まれる印刷データに基づいて印刷画像データを生成し、印刷画像データおよび印刷ジョブに含まれる印刷設定情報(ジョブチケットともいう)に基づいて連続紙Pに画像を印刷するように画像形成部330を制御する。また、制御部370は、ユーザーから原稿のコピー指示を受け付けた場合、画像読取部320によって生成された印刷画像データに基づいて印刷を実施するように画像形成部330を制御する。そして、制御部370は、印刷処理を終了後、処理をS102に進める。これらの印刷ジョブまたはコピーが終了すると印刷終了となる。
制御部370は、印刷終了後(S101:YES)、定着部340の加熱を停止する(S102)。このとき、定着部340を強制冷却する冷却装置が設けられていれば、冷却装置を動作させて定着部340の冷却を開始する。
続いて、制御部370は搬送部(給紙搬送部310と排紙搬送部350。以下同様)を制御して、連続紙Pを順方向に微小搬送する(S103)。このとき搬送開始時刻を一時記憶する。
ここで微小搬送について説明する。印刷終了後、定着部340が十分に冷えるまでは、連続紙Pの搬送を停止したままにしていると、連続紙Pの一部が定着部340の定着ニップ部に保持されたままとなる。そうすると連続紙Pの定着ニップ部に保持されている部分やその周辺部は熱による影響を受け、変形または劣化するおそれがある。連続紙Pが変形すると、連続紙Pが搬送経路でペーパージャムを起こしたり、排紙装置600で巻き取り取れなくなるなどの不良原因になる。また、連続紙Pがラベル紙である場合には加熱部材R1などに貼りついてしまうおそれもある。
そこで、このような連続紙Pの変形や劣化を防止するために、定着部340の温度が連続紙Pの品質を維持可能な温度に下がるまで、連続紙Pを微小搬送して連続紙Pの同一部分が定着ニップ部に留まらないようにする。連続紙Pの品質を維持可能な温度とは、具体的には、連続紙Pを変形や劣化させない温度であって、この温度以下であれば定着ニップ部に連続紙Pが停止していても、その部分が変形したり劣化したりしない温度である。このような連続紙Pを変形させない温度を変形温度(X℃)という。この変形温度(X℃)は、連続紙Pの仕様によって異なる。たとえば、コート紙は普通紙に比べて変形温度(X℃)が高い。またや坪量の多い紙ほど変形温度(X℃)が高い。このため変形温度(X℃)は使用している連続紙Pの仕様によって変更することが好ましい。連続紙Pの仕様はたとえば操作パネル360からユーザーによって入力されるので(またはセットしたロール紙に応じて自動設定される)、それに応じた変形温度(X℃)をあらかじめ設定しておいてくとよい。また連続紙Pの仕様にかかわらず一定の変形温度(X℃)と設定しておいてもよい。この場合仕様の異なる連続紙Pであっても変形しない温度を設定しておけばよい。
微小搬送は、制御部370が排紙搬送部350を制御して連続紙Pを印刷中よりも低速度で搬送する。この低速度での搬送によって印刷中よりも搬送量が少なくなるため微小搬送と称している。たとえば印刷中の搬送速度が300mm/secであれば、印刷停止中における微小搬送のときの搬送速度は10〜20mm/sec程度である(このような搬送速度を微小搬送速度という)。この微小搬送速度により連続紙Pを搬送することで連続紙Pが熱により変形または劣化することを防止できる。
この微小搬送における連続紙Pの搬送量をAとする。搬送量Aは印刷終了後に、定着部340の温度が変形温度(X℃)未満になるまでの時間と、微小搬送速度に基づいて算出される。定着部340が定着可能温度から変形温度(X℃)になるまでの時間は、装置構成の機械的な配置と連続紙Pの仕様によって決まる。装置構成や配置については変化しないが、連続紙Pの仕様(種類、坪量など)は使用する連続紙Pに異なる。たとえば、コート紙や坪量の多い紙は普通紙よりも熱容量が大きいため熱を奪いやすい。このため、これらの紙を定着ニップ部に通すと熱が奪われて、普通紙よりは幾分早く定着部340が冷える。搬送量Aは、装置構成や連続紙Pによって異なるものの、自然冷却の場合たとえば5〜10m程度であり、強制冷却の場合たとえば1〜5m程度である。
定着部340の加熱を停止し、この微小搬送している間、加熱部材R1と加圧部材R2は圧接状態であっても、離間状態であってもよい。
続いて、制御部370は、温度センサー341からの信号から温度を検知して、定着部340の温度(正確には定着ニップ部温度であるが、ここでは単に定着部温度として説明する。以下同様)が変形温度(X℃)未満になったか否かを判断する(S104)。ここで定着部340の温度が変形温度(X℃)未満でなければ(S104:NO)、そのまま順方向への微小搬送が継続される。
一方、定着部340の温度が変形温度(X℃)未満になった場合は(S104:YES)、制御部370は搬送部を制御して順方向の微小搬送を停止する(S105)。このとき搬送停止とともにS103で記憶した開始時刻と、停止時刻および搬送速度を用いて搬送量Aを算出する。
なお、本実施形態1では、変形温度(X℃)を温度センサー341からの信号で検知して、微小搬送停止することとしたが、これに代えてたとえば、既にしたように連続紙Pの仕様と装置構成から変形温度(X℃)未満になるまでの時間を推定して、その時間で微小搬送速度により搬送した場合に搬送される搬送量Aを推定し、その推定した搬送量Aだけ搬送して停止するようにしてもよい。これにより印刷終了後、定着ニップ部の温度を正確に検出できないような装置構成であっても、連続紙Pの変形を防ぐ分だけ連続紙Pを微小搬送させることができる。
続いて、制御部370は、印刷指示を受信したか否かを判断する(S106)。ここで印刷指示を受信していなければ(S106:NO)、そのまま受信を待つことになる。つまり、印刷停止状態が続くことになる。
一方、印刷指示を受信した場合は(S106:YES)、印刷再開するため制御部370は定着部340を制御して定着部340の加熱を開始する(S107)。
続いて、制御部370は、温度センサー341の信号から定着部340が変形温度以上となったか否かを判断する(S108)。ここで定着部340の温度が変形温度(X℃)以上でなければ(S108:NO)、そのまま加熱が継続される。
一方、定着部340の温度が変形温度以上となった場合は(S108:YES)、制御部370は搬送量Aと推定搬送量B(後述)とを比較して、「A≧B」または「A<B<2A」となっているか否かを判断する(S109)。推定搬送量Bは、変形温度(X℃)から定着可能温度になるまでに必要な時間の間に微小搬送速度(後述するように順方向、逆方向の両方を含む)で搬送したときに推定される搬送量である。既にしたように連続紙Pの熱容量は、連続紙Pの仕様によって異なる。このため定着部340を通す連続紙Pによって変形温度(X℃)から定着可能温度になるまでの時間がわずかに異なる。連続紙Pの仕様は、連続紙Pをセットしたときに操作パネル360から入力される。制御部370は、この連続紙Pの仕様と装置構成から昇温にかかる時間を推定して、その時間で微小搬送速度により搬送した場合の推定搬送量Bを推定する。
制御部370は搬送量Aと推定搬送量Bとを比較して、「A≧B」または「A<B<2A」となっていない場合は(S109:NO)。逆方向へ微小搬送する際の搬送量Cとして搬送量Aを設定する(S110)。この場合、推定搬送量Bが順方向に既に搬送した搬送量Aの2倍(2A)より長いことになる。このため逆方向の搬送量Cとして搬送量Aだけ搬送した後、定着可能温度になるまでにさらに順方向への搬送量Aと同じだけ搬送するための時間がある。
一方、「A≧B」または「A<B<2A」となっている場合は(S109:YES)。逆方向へ微小搬送する際の搬送量Cとして推定搬送量B/2を設定する(S111)。この場合、推定搬送量Bが順方向に既に搬送した搬送量Aより短いか、2Aより短いことになる。このため逆方向の搬送量Cとして推定搬送量B/2とすることで、逆方向へ搬送した後、さらに順方向への搬送する時間ができる。
続いて、制御部370は搬送部を制御して逆方向への搬送を開始する(S112)。この逆方向への微小搬送速度は順方向への微小搬送速度と同じである。
その後、制御部370は搬送量がS110またはS111で設定された搬送量Cに達したか否かを判断する(S113)。搬送量がCに達していなければ(S113:NO)、そのまま搬送量がCに達するまで逆方向の微小搬送を継続する。
一方、搬送量がCに達したなら(S113:YES)、逆方向の微小搬送を停止してから、さらに順方向の微小搬送を開始する(S114)。
続いて、制御部370は温度センサー341からの信号から定着部340が定着可能温度に達したか否かを判断する(S115)。定着可能温度に達していなければ(S115:NO)、そのまま順方向の微小搬送を継続する。
一方、定着部340が定着可能温度に達したなら(S115:YES)、印刷を開始する(S116)。印刷開始と同時に搬送速度は印刷時の速度になる。
以上により、印刷終了後の印刷制御の処理が終了する。
次に、本実施形態1の作用を説明する。図4は、実施形態1の定着部温度と連続紙の搬送量を説明するためのグラフである。このグラフは上段に定着部温度、下段に連続紙の搬送方向と搬送量を示し、横軸が時間を示している。
図4を参照して本実施形態1の作用を説明する。印刷終了(時刻t1。以下単に「t数字」と記す。数字は大きいほど時刻が経過していることを示す)により定着部340の加熱が停止するため温度が低下し始める。ここでは定着可能温度は180℃としているので、その温度から次第に低下して変形温度(X℃)に至り(t2)、さらに室温(RM℃)にまで低下する。この時刻t1〜t2の間、順方向への微小搬送が行われ、連続紙Pは搬送量Aだけ順方向に移動する。これにより定着部340での連続紙Pの停止することがないため連続紙Pの変形などを防止できる。
その後、印刷指示が入る(t3)。印刷指示が入ることで印刷再開に向けて定着部340の加熱が開始される。しかし、この段階では定着部温度は変形温度(X℃)未満であるので、連続紙Pの搬送は行われない。この変形温度(X℃)未満の区間で連続紙Pの搬送を行わないことで、搬送による紙の無駄だけでなく、その動作にかかるエネルギーの消費を抑えることができる。
その後定着部温度が変形温度(X℃)以上となる時刻t4となった時点で、連続紙Pの逆方向の微小搬送が開始される。逆方向の微小搬送は、その搬送量がCとなるまで継続される。搬送量Cだけ搬送された時点は時刻t5となる。この時刻t5の時点では、搬送量Cは定着可能温度になるまでの推定搬送量Bよりも短い距離となっているので、定着部温度は定着可能温度には至ってない。しかし、連続紙Pは順方向の搬送量Aに対して搬送量C分が戻ったことになる。したがって、この搬送量C分の連続紙Pの無駄がなくなったのである。定着部340の温度は時刻t5からさらに上昇し、時刻t6で定着可能温度に至る。この時刻t5〜t6の間、連続紙Pは順方向に搬送されている。このため定着可能温度に近い温度に曝された連続紙Pの部分は、順方向に移動しているのでその部分への画像形成は行われないことになる。そして時刻t6から印刷が開始される。
このような動作によって、本実施形態1では、印刷終了から印刷再開後の印刷開始までに要した連続紙Pの順方向の搬送量、すなわち無駄になる連続紙Pの量は搬送量Aの分だけということになる。一方、印刷指示から印刷開始までの時間は時刻t3〜t6までかかったことになる。
(比較例1)
比較例1は、印刷終了後から印刷を再開するまで、連続紙Pの変形を防止するために順方向の搬送のみを行い、逆方向への搬送を行わない場合である。図5は比較例1の定着部温度と連続紙の搬送量を説明するためのグラフである。グラフの構成は図4と同様である。
比較例1では、印刷終了(t1)から定着部温度が室温に下がる時刻t2.5まで順方向の微小搬送が行われる。この間搬送量は実施形態1よりも長い搬送量A’分移動する。その後、印刷指示(t3)と同時に加熱が開始され、さらに順方向への微小搬送も開始される。その後、定着可能温度に到達した時点(t6)で印刷が開始される。この比較例1では印刷指示から定着可能温度に到達するまでの間、順方向の微小搬送が続けられるため、印刷終了から印刷再開後の印刷開始までに要した順方向の搬送量(無駄になる連続紙P量)はA’+Bとなる。
本実施形態1と比較例1とを比べると、本実施形態1における搬送量Aは、比較例1の搬送量A’+Bより明らかに短い。
(比較例2)
比較例2は、印刷終了後、連続紙Pの変形を防止するために順方向の搬送を行い、さらに印刷再開前に逆方向への搬送を行うが、定着部340の加熱を逆方向の搬送終了後に行う場合である。図6は比較例2の定着部温度と連続紙の搬送量を説明するためのグラフである。グラフの構成は図4と同様である。
比較例2では、印刷終了(t1)から定着部温度が変形温度(X℃)に下がる時刻t2まで順方向の微小搬送が行われる。この間搬送量は実施形態1と同じ搬送量A分移動する。その後、印刷指示(t3)と同時に逆方向への微小搬送が開始される。このときの搬送量はAと同じである。逆方向の微小搬送が終了した時点(t5)から定着部340の加熱が開始され、さらに順方向への微小搬送も開始される。その後、定着可能温度に到達した時点(t7)で印刷が開始される。この比較例2では印刷指示から定着可能温度に到達するまでの間、逆方向へ搬送されるものの、その後、順方向への微小搬送が定着可能温度になるまで行われる。このため、比較例2では、印刷終了から印刷再開後の印刷開始までに要した搬送量は、搬送量A分は戻されるのであるが室温から定着可能温度になるまでの搬送量B’分が順方向へ移動することになる。このため印刷終了から印刷再開後の印刷開始までの全搬送量はB’となる。そして、印刷指示から印刷開始までの時間は時刻t3〜t7までかかっている。
本実施形態1と比較例2とを比べると、連続紙Pの無駄の点では順方向の搬送量B’−A分、本実施形態1の方が少ない。また、印刷再開時の待機時間は本実施形態1の方は時刻t6までであるのに対して、比較例2は時刻t7までかかるため、本実施形態1の方が印刷再開時の待機時間を低減できる。
以上説明した本実施形態1によれば以下の効果を奏する。
(1)印刷終了後は、定着部340の温度が変形温度未満となるまで連続紙Pを順方向へ搬送することで熱による劣化を防止(または抑制)する。そして印刷の再開前には、逆方向へ搬送することで連続紙Pの無駄をなくすとともに、この逆方向の搬送が終了する前から定着部340の加熱を開始することで、印刷再開時の待機時間を減らすことができる。
(2)また、印刷終了後の順方向の搬送量Aより、逆方向の搬送量Cが短くなるようにしているため、逆方向へ搬送したとしても先に終了した印刷部分が巻き戻されてしまうことがない。
(3)また、印刷指示を受信した時点から定着部340の加熱を開始するようにしたことで、いち早く定着部340を定着可能温度まで昇温することができる。特に、定着部340の温度が加熱開始から定着可能温度に到達するまでに必要な時間および逆方向への搬送速度から推定した搬送量が、印刷終了後の順方向の搬送量よりも大きくなる場合には、定着部340の加熱を開始した後に逆方向への搬送を開始するようにしたことで、既に印刷した部分が巻き戻されてしまうことがないようにしている。
(4)また、定着部340の加熱を開始した後に、定着部340の温度が連続紙を変形させない温度(X℃)以上となった時点で逆方向の搬送を開始するようにしたことで、必要最小限の動作を行わせることができる。
(実施形態2)
実施形態2は、実施形態1と印刷制御の手順が異なる。システム構成は、実施形態1と同じであるので説明は省略する。
図7は、実施形態2の印刷制御の手順を説明するためのフローチャートである。本実施形態2における印刷制御は、概略すると、印刷の終了後に定着部340の加熱を停止して連続紙Pを順方向に搬送し、印刷の再開前には定着部340の加熱を開始するとともに連続紙Pを逆方向に搬送した後、定着部340の温度が定着可能温度(すなわち印刷終了前の定着部の温度)より低い所定温度(印刷開始温度)に到達していれば印刷を開始する。
図7を参照して詳しく説明する。
本実施形態2においても、印刷制御は主に印刷終了後の制御である。そして、本実施形態2では、制御部370が印刷終了を検知してから(S101:YES)、定着部加熱停止(S102)、連続紙Pの順方向微小搬送と搬送開始時刻の一時記憶(S103)、変形温度(X℃)未満で(S104:YES)、順方向微小搬送の停止と搬送量Aの算出(S105)、印刷指示を受信で(S106:YES)、定着部340の加熱を開始(S107)までは実施形態1と同じである。
その後、本実施形態2では、制御部370は、搬送量Aと推定搬送量D(後述)とを比較して、「A≧D」となっているか否かを判断する(S208)。推定搬送量Dは、印刷指示受信時の温度(以下、「印刷再開温度」という)から印刷開始温度になるまでの時間から推定した搬送量である。ここで印刷開始温度は定着可能温度より低い温度である。逆方向への微小搬送時には、連続紙Pに定着部340の熱が蓄熱されるため、通常印刷時の定着可能温度よりも少ない温度で定着可能になる。印刷開始温度はあらかじめ決まっている。一方、印刷再開温度は印刷指示を受信したときの温度センサー341からの信号から検知する。そこで、印刷開始温度から印刷開始温度になるまでにかかる時間を割り出して、その時間で、微小搬送速度によって搬送される連続紙Pの推定搬送量Dを求める。このとき連続紙Pの熱容量は、既に説明したように、連続紙Pの仕様によって異なる。このため定着部340を通す連続紙Pによって印刷開始温度になるまでにかかる時間がわずかながら異なるので、連続紙Pの仕様と装置構成から昇温にかかる時間を推定して、その時間で微小搬送速度により搬送した場合の推定搬送量Dを推定する。ただし簡易的には、この推定搬送量Dは印刷再開温度に応じて、その温度から印刷開始温度までどの程度微小搬送するかをあらかじめ用意しておいて、印刷指示受信時の現在温度からそれらの内の一つを選択するようにしてもよい。推定搬送量Dは、定着可能温度まで昇温させるのにかかる間の推定搬送量Bよりも短いものとなる。
このS208の段階で、「A≧D」の場合は(S208:YES)、印刷停止中の順方向の搬送量Aが推定搬送量Dより長いということである。この場合、制御部370は、逆方向へ微小搬送する際の搬送量Cとして推定搬送量Dを設定する(S209)。続いて制御部370は逆方向へ搬送を開始する(S210)、このとき定着部340は圧接状態となるようにする。これは、連続紙Pへ蓄熱され易くするためである。続いて制御部370は搬送量CがS209で設定された搬送量Cに達したか否かを判断する(S211)。搬送量がCに達していなければ(S211:NO)、そのまま搬送量がCに達するまで逆方向の微小搬送を継続する。搬送量がCに達したなら(S211:YES)、逆方向の微小搬送を停止する(S212)。その後、印刷を開始する(S213)。このとき印刷開始温度は定着可能温度より低いが、連続紙Pの蓄熱によって正常に定着が行われる。なお、印刷開始後は通常の定着部340の温度制御によって定着可能温度となるまで加熱が継続されて定着可能温度が維持されることになる。
S208において、「A≧D」ではない場合は(S208:NO)、印刷停止中の順方向の搬送量Aが推定搬送量Dより短いということである。この場合、制御部370は、逆方向へ微小搬送する際の搬送量Cとして搬送量Aを設定する(S214)。このため逆方向の搬送量は推定搬送量Dよりも短いことになる。続いて制御部370は逆方向へ搬送を開始し(S215)、搬送量CがS214で設定された搬送量Cに達したか否かを判断する(S216)。搬送量がCに達していなければ(S216:NO)、そのまま搬送量がCに達するまで逆方向の微小搬送を継続する。搬送量がCに達したなら(S216:YES)、逆方向の微小搬送を停止し(S217)、順方向への搬送量として搬送量D−A分だけ微小搬送を行う(S218)。このS218の微小搬送している間に、定着部340は印刷開始温度に到達する。その後、印刷を開始する(S213)。印刷開始後は、連続紙Pの蓄熱により正常に定着が行われる。また印刷開始後は通常の印刷と同様に定着部340の温度が定着可能温度になるまで昇温して、その温度が維持されるように制御される。
なお、本実施形態2においては、逆方向への搬送中(S210〜S212またはS215〜S217)に定着部340を圧接するだけでなく、さらに加熱部材および加圧部材を回転させてもよい。この定着部340の回転方向は通常の印刷中と同じである。回転速度も通常の印刷中の回転速度でよいが、回転数を可変できるようであれば定着部340が効率よく昇温できる回転数にしておけばよい。これにより逆方向に搬送される連続紙Pの移動方向に対して、加熱部材および加圧部材の回転が逆になる。これによりいっそう連続紙Pへ蓄熱され易くなる。
以上により、実施形態2の印刷終了後の印刷制御の処理が終了する。
次に、本実施形態2の作用を説明する。図8は、実施形態2の定着部温度と連続紙の搬送量を説明するためのグラフである。このグラフの構成は図4と同様である。
図8を参照して本実施形態2の作用を説明する。
印刷終了(t1)により定着部340の加熱が停止するため温度が低下する。ここでは定着可能温度は180℃としているので、その温度から次第に低下して変形温度(X℃)に至り(t2)、さらに室温(RM℃)にまで低下する。この時刻t1〜t2の間、順方向への微小搬送が行われ、連続紙Pは搬送量Aだけ順方向に移動する。これにより定着部340での連続紙Pが停止することがないため連続紙Pの変形などを防止できる。
その後、印刷指示が入る(t3)。印刷指示が入ることで定着部340の加熱が開始される。本実施形態2では、印刷指示を受信すると同時に、連続紙Pの逆方向の搬送も開始される。その搬送量はCである。搬送量Cは、既に説明したとおり、搬送量A≧Dであれば、D分だけ、搬送量A<DであればA分だけ搬送される。なお、図8においては搬送量A=Dとなっている場合を示している。
その後、推定搬送量D分の搬送が終了した時点で定着部340は印刷開始温度に至っているので印刷を開始する(t5)。この温度は定着可能温度(ここでは180℃)より、所定温度、たとえば30℃ほど低い150℃である。なお、印刷開始後(t5以降)の搬送速度は通常印刷時の搬送速度である。
このような動作によって、本実施形態2では印刷終了から印刷再開後の印刷開始までに要した連続紙Pの順方向への搬送量、すなわち無駄になる連続紙Pの量は、搬送量A≧Dであれば最大でも搬送量A分だけとなり、搬送量A<DであればAだけ戻したのち順方向へD−A分送られるため、このD−A分となる。ここで推定搬送量Dは、定着可能温度より低い印刷開始温度まで搬送した場合の搬送量である。このため定着可能温度に至るまで搬送を続けた場合の推定搬送量Bよりも短い。しかも、搬送量Aだけ戻した後にD−A分送るのである。したがって、このD−A分の連続紙Pの量は、既に説明した比較例1のA’+Bや、比較例2のA+B’などより短いものとなる。
また、印刷指示から印刷開始までの時間はt3〜t5までとなる。これは、比較例1の時刻t3〜t6や比較例1の時刻t3〜t7よりも短く、待機時間が大幅に減少したことになる。
また、本実施形態2では、印刷指示があった時(t3)、定着部温度が、変形温度(X℃)以下であっても逆方向の搬送を開始している。これは、本実施形態2では、連続紙Pの蓄熱作用を利用して定着可能温度よりも先に印刷を開始しているため、印刷開始が実施形態1よりも早くなる。そこで、変形温度(X℃)に至るのを待たず、逆方向の搬送を開始することで、印刷開始が速くなった分の逆方向への搬送も早くすることで連続紙Pの無駄を少なくしている。
図9は連続紙への蓄熱作用を説明するグラフである。横軸は連続紙の搬送量、縦軸は温度である。
図示するように、連続紙Pの温度は、逆方向への搬送量が増えて、定着部位置(定着ニップ部)から離れるほど低下する。印刷開始温度である150℃のとき印刷を開始すると、印刷位置(画像形成部330の位置、以下同様)では、連続紙Pは120℃となっている。120℃の連続紙Pに印刷が行われ、その後連続紙Pは、加熱中の定着部340へ入って行くことになる。
ちなみに、通常の印刷時、連続紙Pは印刷位置においては常温(20〜35℃程度)である。このような低い温度の連続紙Pが定着部340に入ると定着部340の温度が低下する。このため、定着可能温度はこのような温度低下を見込み高い温度に設定している。本実施形態2では、120℃という蓄熱された状態の連続紙Pへ印刷することで、加熱途中の定着部340にこの連続紙Pが入っても定着部340がさほど冷えない。このため定着可能温度より低い所定温度である印刷開始温度から印刷しても十分な定着を行うことができる。
なお、本実施形態2では印刷再開の印刷指示後、推定搬送量Dを基準にして搬送量A≧Dであれば最大搬送量A分だけ戻したこと、または搬送量A<DであればAだけ戻したのち順方向へD−A分順方向へ搬送したことをもって印刷開始温度に到達したものとして、印刷を開始している。このため本実施形態2では印刷開始を温度センサー341を使用することなく可能にしている。ただし、これに代えて温度センサー341により定着部温度を検知して、印刷開始温度になったら印刷を開始するようにしてもよい。ただしこの場合、逆方向の搬送量は搬送量Aを超えないようにする。このためにはたとえば、逆方向の搬送量が搬送量Aを超える時点で検知温度が印刷開始温度未満の場合には、その時点から順方向への微小搬送を行うこととする。これは、既に印刷された部分まで巻き戻されてしまうのを防止するためである。
以上説明した本実施形態2によれば、実施形態1の効果に加えて、さらに以下の効果を奏する。
(1)印刷終了後は、定着部340の温度が変形温度未満となるまで連続紙Pを順方向へ搬送することで熱による劣化を防止する。そして印刷の再開前には、逆方向へ搬送することで連続紙Pの無駄をなくすとともに、この逆方向の搬送が終了する前から定着部340の加熱を開始し、さらに、定着可能温度よりも低い印刷開始温度となった時点から印刷を開始することで、印刷再開時の待機時間をいっそう減らすことができる。
(2)また、逆方向の搬送中に加熱部材と加圧部材を圧接することで、逆方向へ搬送中の連続紙に蓄熱し易くして、定着可能温度よりも低い温度から印刷を開始しても安定した定着を行うことができる。特に、このとき加熱部材と加圧部材を回転させることでさらに蓄熱させ易くできる。
本発明は、上述した実施形態のみに限定されるものではなく、特許請求の範囲内において、種々改変することができる。