上述した衛生洗浄装置では、給水源から供給される水を局部洗浄と水圧式洗浄ノズルの前後往復運動とに振り分けており、しっかりと局部を洗浄するためには、水圧式洗浄ノズルに供給する水を極力多くする必要があり、給水源から供給される水を効率よく使わなければならない。
しかしながら、上述した衛生洗浄装置では、水圧式洗浄ノズルの前後往復運動に使った水を便器に排水しており、水圧式洗浄ノズルに供給する水を極力多くするためには更なる改良の余地がある。
また、上述した衛生洗浄装置の洗浄ユニット駆動装置は、駆動用ピストンが駆動用シリンダ内を前進または後退することで、水圧式洗浄ノズルを前後に往復移動をさせている。 しかし、駆動用シリンダと駆動用ピストンとの間の隙間が狭小であるため、洗浄ユニット駆動装置に異物が混入し、当該隙間に侵入してしまう(所謂「ごみ噛み」)と、駆動用ピストンが動かなくなってしまう可能性があり、水圧式洗浄ノズルによる前後方向に広範囲な洗浄には更なる改良の余地がある。
そこで、本発明は、前述したような従来技術の問題を解決するものであって、すなわち、本発明の目的は、水圧式洗浄ノズルを往復運動させることで前後方向に広範な洗浄を行う衛生洗浄装置において、汚れの付着しやすい前後方向に対して広範囲な局部洗浄と、水圧式洗浄ノズルのごみ噛みの抑制による長期間の前後方向に広範囲な局部洗浄の実現と、を両立させることである。
第1の発明は、給水源から供給される水を局部洗浄水として吐水する吐水口を有するノズル本体と、該ノズル本体を収納するシリンダと、を有し前記ノズル本体へ供給される水圧により前記ノズル本体を前記シリンダから進出させる水圧式洗浄ノズルと、前記給水源から供給される水の流体エネルギーを用いて前記水圧式洗浄ノズルを往復運動させる洗浄ノズル往復運動手段と、を有した局部洗浄ユニットを備えた衛生洗浄装置であって、前記洗浄ノズル往復運動手段が、前記給水源から供給される水の流体エネルギーを一方向の回転運動に変換する水車と、該水車から出力された一方向の回転運動を往復並進運動に変換する運動方向変換機構と、を備え、前記水圧式洗浄ノズルが、前記ノズル本体が延びる方向に対して垂直かつ水平な回動軸を中心にして上下方向に回動自在に支持されると共に、前記運動方向変換機構から出力された往復並進運動により前記回動軸を中心に回動しつつ前記水車を通過した水を吐水口から吐水することを特徴とする衛生洗浄装置である。
第1の発明に係る衛生洗浄装置によれば、洗浄ノズル往復運動手段が、給水源から供給される水の流体エネルギーを一方向の回転運動に変換する水車を備えていることにより、簡単な構造で流体エネルギーを回転運動に変換でき、狭小流路を設ける必要がなくなるため、狭小流路に異物が混入して洗浄ノズル往復運動手段が機能しなくなるような事態が避けられ、水圧式洗浄ノズルによる前後方向に対する広範囲な洗浄を長期に亘って実現することができる。
一般に、衛生洗浄装置では、内部空間の体積が大きくないことに加え、他の部品との取り合いの都合上、大きな部品を内部に収容することは難しい。そのため、水圧式洗浄ノズルを往復並進運動させる場合に必要なトルクを直接生み出す程度の水車を収容することは難しい。さらに、衛生洗浄装置に供給される水圧は決められており、当該範囲内の水圧で水圧式洗浄ノズルを往復並進運動させる場合に必要なトルクを直接水車で生み出すことは難しい。
そこで、洗浄ノズル往復運動手段が、水車から出力された一方向の回転運動を往復並進運動に変換する運動方向変換機構を備え、水圧式洗浄ノズルが、回動自在に支持されると共に運動方向変換機構から出力された往復並進運動により回動軸を中心に回動することにより、水車から出力されるトルクによって直接水圧式洗浄ノズルを往復並進運動させる場合のトルクに比べて、運動方向変換機構を介して水圧式洗浄ノズルを往復回転運動させる場合のトルクの方が小さく設定可能になるため、出力トルクが低トルクな小型水車であっても確実に水圧式洗浄ノズルを往復回転運動させて、汚れの付着しやすい前後方向に対する広範囲な局部洗浄を実現させることができる。
なお、小型水車は慣性トルクが小さいため、小型水車を用いることで給水源が低水圧の場合であっても確実に水圧式洗浄ノズルを往復回転運動させることができる。
第2の発明は、第1の発明において、前記洗浄ノズル往復運動手段が、前記水車を収容するケーシングを更に備え、前記ケーシングが、水密されていることを特徴とする衛生洗浄装置である。
第2の発明に係る衛生洗浄装置によれば、第1の発明が奏する効果に加え、ケーシングが、水密されていることにより、水車を回すための水がケーシングから漏れ出ることがないため、給水源から供給される水を無駄なく水圧式洗浄ノズルの回転運動に使用することができる。
第3の発明は、第2の発明において、前記洗浄ノズル往復運動手段が、前記ケーシングに形成された流出口と前記水圧式洗浄ノズルの流入口とを流体連通させるホースを更に備え、前記ホースの曲げに対する復元力による回転トルクが、前記水圧式洗浄ノズルの自重による自重トルクまたは前記水圧式洗浄ノズルに作用する吐水反力による反力トルクの大きい方のトルクと逆方向に作用することを特徴とする衛生洗浄装置である。
第3の発明に係る衛生洗浄装置によれば、第2の発明が奏する効果に加え、洗浄ノズル往復運動手段が、ケーシングに形成された流出口と水圧式洗浄ノズルの流入口とを流体連通させるホースを更に備えていることにより、ケーシングと水圧式洗浄ノズルとの間で水が外部に漏れることがないため、給水源から供給される水を無駄なく水圧式洗浄ノズルの回転運動に使用することができる。
さらに、ホースの曲げに対する復元力による回転トルクが、水圧式洗浄ノズルの自重による自重トルクまたは水圧式洗浄ノズルに作用する吐水反力による反力トルクの大きい方のトルクと逆方向に作用することにより、自重トルクと反力トルクとによる水圧式洗浄ノズルに作用するトルクの偏りを回転トルクが補正するため、水圧式洗浄ノズルに作用する自重トルクや反力トルクの影響が抑制され、出力トルクが低トルクな水車であっても水圧式洗浄ノズルを往復回転運動させることができる。
第4の発明は、第1または第2の発明において、前記水圧式洗浄ノズルの自重による自重トルクと前記水圧式洗浄ノズルに作用する吐水反力による反力トルクとが、前記水圧式洗浄ノズルの回動軸に対して相対し、前記自重トルクと前記反力トルクとの大小関係が、前記水圧式洗浄ノズルに流入する水圧に応じて切り替わることを特徴とする衛生洗浄装置である。
第4の発明に係る衛生洗浄装置によれば、第2の発明が奏する効果に加え、自重トルクと反力トルクとが、水圧式洗浄ノズルの回動軸に対して相対し、水圧式洗浄ノズルに流入する水圧に応じて自重トルクと反力トルクとの大小関係が切り替わることにより、自重トルクと反力トルクとが水圧式洗浄ノズルの回動軸に対して同じ側に作用する場合に比べて、水圧式洗浄ノズルに作用する回動軸まわりのトルクの総和が小さくなるため、水圧式洗浄ノズルを往復回転運動させるために必要な洗浄ノズル往復運動手段が生み出すトルクを小さくすることができる。
第5の発明は、第2または第3の発明において、前記運動方向変換機構が、カムと該カムと接触するフォロワーとから構成され、前記水圧式洗浄ノズルが、前記フォロワーを有していることを特徴とする衛生洗浄装置である。
第5の発明に係る衛生洗浄装置によれば、第1乃至第4のいずれか1つの発明が奏する効果に加え、運動方向変換機構が、カムとこのカムと接触するフォロワーとから構成され、水圧式洗浄ノズルが、フォロワーを有していることにより、給水源から供給される水の流体エネルギーが生み出す回転運動を水圧式洗浄ノズルの往復回転運動に変換する際に生じうる摺動抵抗が、例えばカムとフォロワーとの間で発生する摺動抵抗のみとなり、エネルギーロス要因が極小化されるため、給水源から供給される水の流体エネルギーから水圧式洗浄ノズルの往復回転運動に必要なエネルギーを高効率で取り出すことができるようになり、局部洗浄に使えるエネルギーを多くすることができる。
第6の発明は、第5の発明において、前記水車と前記カムとの間に前記水車の回転を減速させて前記カムの回転数を前記水車の回転数よりも小さくする減速機が配置されており、前記カムが、前記減速機と一体となって回転することを特徴とする衛生洗浄装置である。
第6の発明に係る衛生洗浄装置によれば、第5の発明が奏する効果に加え、水車とカムとの間に水車の回転を減速させてカムの回転数を水車の回転数よりも小さくする減速機が配置されており、カムが、減速機と一体となって回転することにより、カムの生み出すトルクが水車の生み出すトルクより大きくなるため、水車が高トルクを出力する必要がなくなり、水車を小型化しつつ、水圧式洗浄ノズルを鉛直方向に確実に往復回動させることが可能となる。
第7の発明は、第6の発明において、前記ケーシングが、前記減速機を収容し、前記カムと前記減速機との接続部にシール構造が形成されていることを特徴とする衛生洗浄装置である。
第7の発明に係る衛生洗浄装置によれば、第6の発明が奏する効果に加え、ケーシングが、減速機を収容し、カムと減速機との接続部にシール構造が形成されていることにより、水車によって生成された回転トルクを減速機によって増大させた後にシール構造が形成されているため、シール構造による水密性と接続部の摺動性能とを両立させることができ、確実に水密を行いつつ水圧式洗浄ノズルを往復回動させて前後方向に対する広範囲な局部洗浄を実現させることができる。
第8の発明は、第6または第7の発明において、前記減速機が、ギアであることを特徴とする衛生洗浄装置である。
第8の発明に係る衛生洗浄装置によれば、第6または第7の発明が奏する効果に加え、減速機が、ギアであることにより、減速機として例えばプーリーやチェーンを使う場合に比べて部材数が削減できるため、減速機を小型化することができ、衛生洗浄装置自体も小型化することができる。
第9の発明は、第6乃至第8のいずれか1つの発明において、前記水車が、前記減速機から伸びる中心軸を中心に回転しており、前記水車と前記中心軸の間には隙間が形成されていることを特徴とする衛生洗浄装置である。
第9の発明に係る衛生洗浄装置によれば、第6乃至第8のいずれか1つの発明が奏する効果に加え、水車が、減速機から伸びる中心軸を中心に回転しており、水車と中心軸の間には隙間が形成されていることにより、隙間内に水が満たされることで水車と中心軸とが流体潤滑状態となるため、例えば毎分1000回転以上の高回転状態となっている水車が中心軸と接触して水車あるいは中心軸が磨耗することが抑制され、より洗浄ノズル往復運動手段の耐久性が増すことで水圧式洗浄ノズルによる前後方向に対する広範囲な洗浄を長期に亘って実現させることができる。
第10の発明は、第5乃至第9のいずれか1つの発明において、前記カムの回転方向が、前記水車の回転方向と同じ方向であることを特徴とする衛生洗浄装置である。
第10の発明に係る衛生洗浄装置によれば、第5乃至第9のいずれか1つの発明が奏する効果に加え、カムの回転方向が、水車の回転方向と同じ方向であることにより、カムに対する摺動抵抗が減るため、給水源から供給される水の流体エネルギーを効率よく水圧式洗浄ノズルの回動運動に使用することができることに加え、カムの回転方向と水車の回転方向とが異なる場合に比べて、カムの水車に対する相対的な回転数が低下するため、水車およびカムの耐久性を増すことができる。
第11の発明は、第5乃至第10のいずれか1つの発明において、前記水圧式洗浄ノズルのフォロワーが、前記カムの鉛直上方側で前記カムと接触していることを特徴とする衛生洗浄装置である。
第11の発明に係る衛生洗浄装置によれば、第5乃至第10のいずれか1つの発明が奏する効果に加え、水圧式洗浄ノズルのフォロワーが、カムの鉛直上方側でカムと接触していることにより、水車に供給される水の圧力が基準水圧より高い場合は水圧式洗浄ノズルに供給される水の圧力も高くなるため、水圧式洗浄ノズルにかかる反力トルクも大きくなり、フォロワーがカムから離れる。これにより、水圧式洗浄ノズルの往復回転運動が止まる。すなわち、水圧式洗浄ノズルに供給する水圧に応じて局部洗浄を水圧式洗浄ノズルの往復回転運動による広範囲な洗浄と一点洗浄とに切り換えることができる。
第12の発明は、第5乃至第10のいずれか1つの発明において、前記水圧式洗浄ノズルのフォロワーが、前記カムの鉛直下方側で前記カムと接触していることを特徴とする衛生洗浄装置である。
第12の発明に係る衛生洗浄装置によれば、第5乃至第10のいずれか1つの発明が奏する効果に加え、水圧式洗浄ノズルのフォロワーが、カムの鉛直下方側でカムと接触していることにより、水車に供給される水の圧力が基準水圧より高い場合は水車の回転数が高くなりカムの回転数が高くなる一方、水圧式洗浄ノズルに供給される水の圧力も高くなるため、水圧式洗浄ノズルにかかる反力トルクも大きくなり、カムとフォロワーとの間の接触力が大きくなり、カムとフォロワーとの間の摺動抵抗が大きくなり、水圧式洗浄ノズルが回動しにくくなる。
反対に、水車に供給される水の圧力が基準水圧より低い場合は水車の回転数が低くなりカムの回転数が低くなる一方、水圧式洗浄ノズルに供給される水の圧力も低くなるため、水圧式洗浄ノズルにかかる反力トルクも小さくなり、カムとフォロワーとの間の接触力が小さくなり、カムとフォロワーとの間の摺動抵抗が小さくなり、水圧式洗浄ノズルが回動しやすくなる。
すなわち、水車に供給される水の圧力の大小に連動して、水圧式洗浄ノズルの回動しやすさが変化するため、衛生洗浄装置に供給される水の圧力によらず水圧式洗浄ノズルの回転速度の変動を抑制させることができる。
第13の発明は、第5乃至第12のいずれか1つの発明において、前記カムを介して前記フォロワーと対向する位置にストッパが形成されていることを特徴とする衛生洗浄装置である。
第13の発明に係る衛生洗浄装置によれば、第5乃至第12のいずれか1つの発明が奏する効果に加え、カムを介してフォロワーと対向する位置にストッパが形成されていることにより、水圧式洗浄ノズルにかかる反力トルクが大きく変動した場合にカムがストッパに接触するため、衛生洗浄装置に供給される水の圧力変動によって水圧式洗浄ノズルが跳ね上がる可能性を抑制され、洗浄位置のずれを抑制することができる。
本発明の態様によれば、水圧式洗浄ノズルを往復運動させることで前後方向に広範な洗浄を行う衛生洗浄装置において、汚れの付着しやすい前後方向に対して広範囲な局部洗浄と、水圧式洗浄ノズルのごみ噛みの抑制による長期間の前後方向に広範囲な局部洗浄の実現と、を両立できる衛生洗浄装置が提供される。
以下、本発明の実施の形態について図面を参照しつつ説明する。なお、各図面中、同様の構成要素には同一の符号を付して詳細な説明は適宜省略する。
図1は、実施形態に係る衛生洗浄便座が設けられたトイレ装置を例示する斜視図である。
図1に示すように、トイレ装置200は、衛生洗浄便座(衛生洗浄装置)100と、便器150とを有する。衛生洗浄便座100は、便器150の上に設けられている。便器150は、例えば洋式腰掛大便器であり、使用者の排泄物を受けるボウル151を有する。
衛生洗浄便座100は、局部洗浄ユニット101と、外郭部材201と、便座202と、便蓋203と、を有する。
局部洗浄ユニット101は、水圧式洗浄ノズル10を有し、外郭部材201の内部に収容される。水圧式洗浄ノズル10は、例えばその先端部に吐水口10aを有し、使用時には図1に示すようにボウル151へ進出して吐水口10aから人体局部(例えば「おしり」や女性局部)に向けて洗浄水を吐水する。便座202は、外郭部材201に対して回動自在に軸支されている。便蓋203は、外郭部材201に対して回動自在に軸支され、便座202を覆うことができる。
実施形態の説明において、便座202に腰かけた使用者から見て前方を「前方」とし、前方と反対の方向を「後方」という。
図2は、実施形態に係る衛生洗浄便座を例示するブロック図である。
図2に示すように、局部洗浄ユニット101には、止水栓205及び開閉弁206を介して給水源(水道管など)204から水が供給される。ブロックを繋ぐ矢印は、給水源から供給された水の流路を表す。また、局部洗浄ユニット101は、前述の水圧式洗浄ノズル10に加え、洗浄ノズル往復運動手段(洗浄ノズル往復運動部)20を有する。洗浄ノズル往復運動手段20は、水車23及び運動方向変換機構25などを有し、給水源204から供給される水の流体エネルギーを用いて水圧式洗浄ノズル10を往復運動させる。水車23や運動方向変換機構25による往復運動については、後述する。
図3は、実施形態に係る衛生洗浄便座の局部洗浄ユニットを例示する斜視図である。
水圧式洗浄ノズル10は、吐水口10aが設けられたノズル本体11と、ノズル本体11を収納するシリンダ12と、を有する。シリンダ12は、その後方に設けられた流入口12aを有する。
水圧式洗浄ノズル10は、外郭部材201に対して直接的又は間接的に固定された支持部によって挟持されており、シリンダ12に設けられた回動軸Ax1を中心にして上下方向に回動自在に支持されている。これにより、水圧式洗浄ノズル10は、図3に示す矢印A1のように回動することができる。なお、回動軸Ax1は、ノズル本体11が直線状に延びる方向D1に対して垂直かつ水平な方向D2に沿って延びる。例えば、回動軸Ax1は、水平方向D2と平行である。
また、局部洗浄ユニット101は、シリンダ12に付設されたノズル駆動ユニット30を有する。前述の洗浄ノズル往復運動手段20の一部(水車23など)は、このノズル駆動ユニット30の一部として設けられている。
洗浄ノズル往復運動手段20は、流入口31a及び流出口31bが設けられたケーシング31を有する。図3に示す矢印A2のように、給水源204から供給された水は、流入口31aからケーシング31内に流入する。ケーシング31内に流入した水は、矢印A3のように流出口31bから流出する。
また、洗浄ノズル往復運動手段20は、ケーシング31に形成された流出口31bと、水圧式洗浄ノズル10に形成された流入口12aと、を流体連通させるホース40を有する。これにより、ケーシング31から流出した水はホース40に導かれ、図3に示す矢印A4のように水圧式洗浄ノズル10の流入口12aから水圧式洗浄ノズル10に供給される。ホース40により、ケーシング31と水圧式洗浄ノズル10との間で水が外部に漏れることがないため、給水源204から供給される水を無駄なく水圧式洗浄ノズル10の回転運動に使用することができる。なお、図3では、見易さのため局部洗浄ユニット101の一部を分解して表示している。
図4(a)〜図4(c)は、水圧式洗浄ノズルの動作を例示する断面図である。
図4(a)は、水圧式洗浄ノズル10の不使用時の状態(待機状態)を表す。このとき、水圧式洗浄ノズル10には、水が供給されていない。図4(a)に示すように、待機状態においては、ノズル本体11は、シリンダ12に収納されている。
ノズル本体11は、シリンダ12の内部に設けられたばね13によって、後方に付勢されている。また、ノズル本体11は、筒状部11aと、その後端に設けられた閉止部11eを有する。待機状態において、筒状部11a内の流路11bは、閉止部11eによって閉止されている。
図4(b)は、流入口12aに水が流入し始めたときの状態を表す。水は、シリンダ12内に流入し、ノズル本体11に向けて供給される。その水圧により、図4(b)に示すようにノズル本体11は、シリンダ12から前方(便器150のボウル151内)に進出する。このとき、筒状部11aの流路11bは、閉止部11eによって閉止されたままである。
図4(c)は、流入口12aに水がさらに流入し、ノズル本体11がさらに前方に進出した状態(吐水状態)を表す。このとき、筒状部11aと閉止部11eとの間に隙間が生じ、水は流路11b内に流れ込む。これにより、筒状部11aの先端付近に設けられた吐水口10aは、供給された水を局部洗浄水として吐水する。流入口12aからの水の流入が停止すると、水圧式洗浄ノズル内の水圧が下がり、ばね13の付勢力が支配的となり、図4(a)の待機状態に戻る。
図5は、実施形態に係る衛生洗浄便座のノズル駆動ユニットを例示する斜視図である。 図6は、実施形態に係る衛生洗浄便座のノズル駆動ユニットを上方から見た平面図である。
図7は、実施形態に係る衛生洗浄便座のノズル駆動ユニットを側方から見た平面図である。
図5〜図7に示すように、ノズル駆動ユニット30のケーシング31は、水車23を収容する。なお、図5〜図7では、ケーシング31を二点鎖線で示し、その内部を表示している。
流入口31aからケーシング31内に流入した水は、水車23の羽に当たり、流出口31bからケーシング31の外部へ流出する。これにより、水車23が中心軸Ax2を中心に回転する。すなわち、水車23は、給水源204から供給される流体エネルギーを一方向の回転運動に変換する。図5に示す例では、水車23は、流体エネルギーを反時計回りの方向D3の回転運動に変換する。
この例では、水車23が回転する中心軸Ax2は、水車23の羽が水を受ける方向に対して垂直である。ただし、実施形態においては、流体エネルギーを一方向の回転運動に変換可能であれば、任意の反動水車でよい。例えば、回転の中心軸が水を受ける方向に対して平行なプロペラ水車のような軸流水車であってもよい。
水車23の回転は、運動方向変換機構25に伝達される。この例では、運動方向変換機構25はカム(円板カム)25aを有し、水車23の回転は、カム25aに伝達される。なお、この例では、カム25aの回転軸は、カム25aの中心から偏心している。
図8(a)〜図8(c)は、実施形態に係る衛生洗浄便座の局部洗浄ユニットの動作を例示する側面図である。
図8(a)は、待機状態の局部洗浄ユニット101の一部を表す。運動方向変換機構25は、前述のカム25aに加え、フォロワー25bを有する。フォロワー25bは、カム25aの外周に当接し、例えば板状である。フォロワー25bの位置は、シリンダ12に対して相対的に固定されている。この例では、フォロワー25bは、樹脂によりシリンダ12と一体に形成されており、水圧式洗浄ノズル10の後部に設けられている。水圧式洗浄ノズル10が延びる方向において、回動軸Ax1は、吐水口10aとフォロワー25bとの間に位置する。
図8(b)及び図8(c)は、吐水状態の局部洗浄ユニット101の一部を表す。このとき、ノズル本体11は、シリンダ12から前方に進出し洗浄水を吐水している。同時に、ノズル駆動ユニット30にも水が供給されているため、カム25aは回転している。
カム25aの回転運動は、カム25aに当接するフォロワー25bに伝達される。図8(b)は、カム25aの回転によりフォロワー25bが下方へ押し下げられた状態である。図8(c)は、図8(b)の状態からカム25aが180°回転した状態であり、フォロワー25bは、図8(b)の状態に比べて上方に位置する。カム25aが回転し続ける間は、図8(b)の状態と図8(c)の状態とが交互に繰り返される。このように、フォロワー25bは、上下方向(鉛直方向)の並進成分を含む往復運動を行う。すなわち、運動方向変換機構25(この例ではカム25a及びフォロワー25b)は、水車23から出力された一方向の回転運動を往復並進運動に変換する。
フォロワー25bの運動は、シリンダ12を介してノズル本体11に伝達される。これにより、水圧式洗浄ノズル10は、回動軸Ax1を中心に回動しつつ水車23を通過した水を吐水口10aから吐水する。図8(b)の状態は、水圧式洗浄ノズル10が矢印A5の方向に回動した状態であり、図8(c)の状態は、水圧式洗浄ノズル10が逆方向(矢印A6の方向)に回動した状態である。このように、水圧式洗浄ノズル10は、運動方向変換機構25から出力された往復並進運動により、回動軸Ax1を中心に往復回転運動する。水圧式洗浄ノズル10が往復回転運動することにより、洗浄水の吐水方向が変化し、前後方向に広範囲な洗浄を行うことができる。例えば、図8(c)のようにノズルの先端が下方に回動した状態では、図8(b)のようにノズルの先端が上方に回動した状態よりも、洗浄水は前方に向けて吐水される。
ここで、前後方向に広範囲な洗浄を行うために、ノズル本体がシリンダに対して往復運動する構成を用いることも考えられる。しかし、この場合、ノズル本体とシリンダとの間に狭小流路が設けられ、この狭小流路内に異物が混入する可能性がある。これに対して、実施形態に係る衛生洗浄便座100によれば、洗浄ノズル往復運動手段20が、給水源204から供給される水の流体エネルギーを一方向の回転運動に変換する水車23を備えていることにより、簡単な構造で流体エネルギーを回転運動に変換でき、狭小流路を設ける必要がなくなるため、狭小流路に異物が混入して洗浄ノズル往復運動手段が機能しなくなるような事態が避けられ、水圧式洗浄ノズル10による前後方向に対する広範囲な洗浄を長期に亘って実現することができる。
一般に、衛生洗浄便座では、内部空間の体積が大きくないことに加え、他の部品との取り合いの都合上、大きな部品を内部に収容することは難しい。そのため、水圧式洗浄ノズルを往復並進運動させる場合に必要なトルクを直接生み出す程度の水車を収容することは難しい。さらに、衛生洗浄便座に供給される水圧は決められており、当該範囲内の水圧で水圧式洗浄ノズルを往復並進運動させる場合に必要なトルクを直接水車で生み出すことは難しい。
そこで、洗浄ノズル往復運動手段20が、水車23から出力された一方向の回転運動を往復並進運動に変換する運動方向変換機構25を備え、水圧式洗浄ノズル10が、回動自在に支持されると共に運動方向変換機構25から出力された往復並進運動により回動軸Ax1を中心に回動することにより、水車から出力されるトルクによって直接水圧式洗浄ノズルを往復並進運動させる場合のトルクに比べて、運動方向変換機構25を介して水圧式洗浄ノズルを往復回転運動させる場合のトルクの方が小さく設定可能になるため、出力トルクが低トルクな小型水車であっても確実に水圧式洗浄ノズル10を往復回転運動させて、汚れの付着しやすい前後方向に対する広範囲な局部洗浄を実現させることができる。なお、小型水車は慣性トルクが小さいため、小型水車を用いることで給水源204が低水圧の場合であっても確実に水圧式洗浄ノズル10を往復回転運動させることができる。
なお、運動方向変換機構25は、カム25a及びフォロワー25bに限られない。例えば、スライダクランクや四節リンクなど、回転運動を往復並進運動に変換できる任意の機構を用いることができる(例えば、図11(a)及び図11(b)を参照)。
ただし、運動方向変換機構25がカム25a及びフォロワー25bから構成され、フォロワー25bが水圧式洗浄ノズル10に設けられている場合には、給水源204から供給される水の流体エネルギーが生み出す回転運動を水圧式洗浄ノズル10の往復回転運動に変換する際に生じうる摺動抵抗が、例えばカム25aとフォロワー25bとの間で発生する摺動抵抗のみとなり、エネルギーロス要因が極小化されるため、給水源204から供給される水の流体エネルギーから水圧式洗浄ノズル10の往復回転運動に必要なエネルギーを高効率で取り出すことができるようになり、局部洗浄に使えるエネルギーを多くすることができる。
再び図5〜図7を参照して、実施形態に係る衛生洗浄便座100の具体例についてさらに説明する。
図5〜図7に示すように、洗浄ノズル往復運動手段20は、水車23とカム25aとの間に配置された減速機33をさらに有する。減速機33は、カム25aの回転数(単位時間当たり)を水車23の回転数よりも小さくする。この例では、減速機33は、ギア33a及びギア33bである。
ギア33aは、水車23と係合している。これにより、水車23が回転すると、ギア33aは駆動軸Ax3を中心に水車23とは逆方向(図5に示す方向D4)に回転する。例えば駆動軸Ax3は、中心軸Ax2と平行である。また、ギア33bは、ギア33aと係合している。これにより、ギア33aが回転すると、ギア33bは、中心軸Ax2を中心にギア33aとは逆方向(図5に示す方向D3)に回転する。
ギア33b及びカム25aは、中心軸Ax2に対して固定されている。このため、ギア33bが回転することにより、カム25aも中心軸Ax2を中心として方向D3に回転する。すなわち、カム25aは、減速機33の少なくとも一部(ギア33b)と一体となって回転する。
このように、洗浄ノズル往復運動手段20は、減速機33を有し、カム25aが減速機(ギア33b)と一体となって回転する。これにより、カム25aの生み出すトルクが水車23の生み出すトルクよりも大きくなるため、水車23が高トルクを出力する必要がなくなり、水車23を小型化しつつ、水圧式洗浄ノズル10を鉛直方向に確実に往復運動させることが可能となる。
また、中心軸Ax2は、カム25aと一体となって回転する減速機(ギア33b)から水車23の方向へ延びている。そして、前述したように、水車23は、この中心軸Ax2を中心に回転する。但し、水車23と中心軸Ax2との間には隙間G(図5を参照)が形成されている。これにより、水車23は中心軸Ax2に対して空転可能となるため、カム25a(中心軸Ax2)の回転数を水車23の回転数と異ならせることができる。そして、隙間G内に水が満たされることで水車23と中心軸Ax2とが流体潤滑状態となるため、例えば毎分1000回転以上の高回転状態となっている水車23が中心軸Ax2と接触して水車23あるいは中心軸Ax2が磨耗することが抑制され、より洗浄ノズル往復運動手段20の耐久性が増すことで水圧式洗浄ノズル10による前後方向に対する広範囲な洗浄を長期に亘って実現させることができる。
なお、この例では減速機33は2段のギアを有するが、減速機33には、3段以上のギア、1段のギア、プーリー又はチェーンなどを用いてもよい。減速機33にギアを用いた場合には、プーリーやチェーンを用いた場合に比べて部材数が削減できるため、減速機33を小型化することができ、衛生洗浄便座100自体も小型化することができる。例えば、中心軸Ax2と駆動軸Ax3との間の距離(軸間距離)を短くすることができる。
また、カム25aの回転方向が、水車23の回転方向と同じ方向であることにより、カム25aに対する摺動抵抗が減るため、給水源204から供給される水の流体エネルギーを効率よく水圧式洗浄ノズル10の回動運動に使用することができることに加え、カム25aの回転方向と水車23の回転方向とが異なる場合に比べて、カム25aの水車23に対する相対的な回転数が低下するため、水車23およびカム25aの耐久性を増すことができる。
また、減速機33及び水車はケーシング31に収容され、ケーシング31は水密構造を有する。このケーシング31は、ケーシング本体31Aと蓋31Bとを有している。例えば、ケーシング本体31Aと、蓋31Bと、の間にシール部材(Oリングやゴムパッキン等)34が配置されている。ケーシング31が水密されていることにより、水車23を回すための水がケーシング31から漏れ出ることがないため、給水源204から供給される水を無駄なく水圧式洗浄ノズル10の回転運動に使用することができる。
また、例えば図6に示すように、中心軸Ax2に固定されたカム25aはケーシング31の外側に配置され、中心軸Ax2はケーシング31(蓋31B)を貫通するように設けられている。カム25aと減速機33との接続部36には、シール構造36sが形成されている。この例では、接続部36は、カム25aと減速機33の最終段(ギア33b)とを接続する中心軸Ax2の一部である。接続部36は、多段の減速機33の途中の領域を含んでもよい。シール構造36sは、例えば、中心軸Ax2とケーシング31(蓋31B)との間の隙間を塞ぐ、パッキン36pにより構成される。
このように、ケーシング31が、減速機33を収容し、カム25aと減速機33との接続部36にシール構造36sが形成されていることにより、水車23によって生成された回転トルクを減速機33によって増大させた後にシール構造36sが形成されているため、シール構造36sによる水密性と接続部36の摺動性能とを両立させることができ、確実に水密を行いつつ水圧式洗浄ノズル10を往復回動させて、前後方向に対する広範囲な局部洗浄を実現させることができる。
図9(a)及び図9(b)は、実施形態に係る衛生洗浄便座の局部洗浄ユニットの動作を例示する側面図である。図9(a)及び図9(b)は、吐水状態の局部洗浄ユニット101の一部を表す。
図9(a)及び図9(b)に示すように、水圧式洗浄ノズル10には、反力トルクM1と自重トルクM2とが作用する。
反力トルクM1は、吐水口10aから洗浄水Wが吐水されることによって水圧式洗浄ノズルに作用する反力(吐水反力F1)によるトルクである。反力トルクM1は、水圧式洗浄ノズル10を回動軸Ax1を中心に回転させるように作用する。反力トルクM1は、回動軸Ax1から吐水口10aまでの距離と、水圧式洗浄ノズル10に供給される水の水圧(流量)と、吐水口10aからの局部洗浄水の流出速度と、に依存する。
自重トルクM2は、水圧式洗浄ノズル10の自重(重力F2)によるトルクである。自重トルクM2は、水圧式洗浄ノズル10を回動軸Ax1を中心に回転させるように作用する。自重トルクM2は、回動軸Ax1から重心10gまでの距離と、水圧式洗浄ノズル10(水圧式洗浄ノズル10内の水を含む)の質量と、に依存する。
図9(a)は、反力トルクM1の大きさ(絶対値)が自重トルクM2の大きさ(絶対値)よりも小さい場合の例を表す。図9(b)は、自重トルクM2の大きさが反力トルクM1の大きさよりも小さい場合の例を表す。
この例では、反力トルクM1及び自重トルクM2は、回動軸Ax1に対して相対する。すなわち、反力トルクM1が水圧式洗浄ノズル10を回転させる方向は、自重トルクM2が水圧式洗浄ノズル10を回転させる方向と逆方向である。ただし、実施形態において、反力トルクM1が水圧式洗浄ノズル10を回転させる方向と、自重トルクM2が水圧式洗浄ノズル10を回転させる方向とは、同じであってもよい。
図9(a)及び図9(b)に示す例では、水圧式洗浄ノズル10とホース40との接続箇所(流入口12a)に、ホース40の曲げに対する復元力F3が作用する。ホース40には、例えばゴムなどの弾性部材が用いられている。このため、所定の形状(外部から力が加えられていないときの形状)からの変形が生じると、ホース40は元の形状に戻ろうとする。例えば、ホース40は、ストレートホースであり、外部から力が作用していないときは直線状に延びている。ここで、ストレートホースが外部からの力によって曲がると、ストレートホースが直線状に戻ろうとする復元力が生じる。このため、水圧式洗浄ノズル10には、ホース40の曲げに対する復元力F3による回転トルクM3が作用する。回転トルクM3は、水圧式洗浄ノズル10を回動軸Ax1を中心に回転させるように作用する。「ホース40の曲げに対する復元力F3による回転トルクM3」とは、ホース40が所定の形状から変形した場合に元の形状に戻ろうとする復元力によるトルクである。なお、ホース40には、外部から力が加えられていないときに曲線状の形状を有する成形ホースを用いてもよい。「ホース40の曲げに対する復元力F3による回転トルクM3」という範囲には、例えば成形ホースが外部からの力によって直線状となったときに、元の曲線状に戻ろうとする復元力によるトルクも含まれる。
水圧式洗浄ノズル10に流入する水の圧力や、水圧式洗浄ノズル10の重量などを考慮して、回動軸Ax1の位置、ホース40の位置、形状、材質などを調整する。これにより、図9(a)及び図9(b)に示す吐水状態において、回転トルクM3は、反力トルクM1または自重トルクM2のうち、大きい方のトルクと逆方向に作用する。
例えば、図9(a)では、ノズル駆動ユニット30の流出口31bは、水圧式洗浄ノズル10の流入口12aの下方に位置する。回転トルクM3が水圧式洗浄ノズル10を回転させる方向は、自重トルクM2が水圧式洗浄ノズル10を回転させる方向とは逆である。
逆に、図9(b)では、ノズル駆動ユニット30の流出口31bは、水圧式洗浄ノズル10の流入口12aの上方に位置する。回転トルクM3が水圧式洗浄ノズル10を回転させる方向は、反力トルクM1が水圧式洗浄ノズル10を回転させる方向とは逆である。
このように、回転トルクM3が、自重トルクM2または反力トルクM1の大きい方のトルクと逆方向に作用することにより、自重トルクM2と反力トルクM1とによる水圧式洗浄ノズル10に作用するトルクの偏りを、回転トルクM3が補正するため、水圧式洗浄ノズル10に作用する自重トルクM2や反力トルクM1の影響が抑制され、出力トルクが低トルクな水車であっても水圧式洗浄ノズルを往復回転運動させることができる。
あるいは、反力トルクM1と自重トルクM2とが回動軸Ax1に対して相対し、吐水状態において釣り合うように、回動軸Ax1の位置を最適化してもよい。例えば、吐水状態における水圧式洗浄ノズル10に流入する水の圧力が、基準水圧を中心とした幅(例えば、ばらつき等)を有し、水圧式洗浄ノズル10が基準位置を中心に往復回動すると、回動軸Ax1の位置の最適化は、基準水圧・基準位置において行われる。このように回動軸Ax1の位置を最適化することで、反力トルクM1と自重トルクM2との大小関係は、水圧式洗浄ノズル10に流入する水の圧力に応じて切り替わる。例えば、回動軸Ax1の位置を最適化した基準水圧よりも水圧が高くなると、反力トルクM1は自重トルクM2よりも大きくなる。このような構成により、反力トルクM1と自重トルクM2とが水圧式洗浄ノズル10の回動軸Ax1に対して同じ側に作用する場合に比べて、水圧式洗浄ノズル10に作用する回動軸Ax1まわりのトルクの総和が小さくなるため、水圧式洗浄ノズル10を往復回転運動させるために必要な洗浄ノズル往復運動手段20が生み出すトルクを小さくすることができる。なお、基準水圧は任意であり、流路にバルブ等を設けることにより適宜設定される。
図10(a)及び図10(b)は、実施形態に係る衛生洗浄便座の局部洗浄ユニットの一部を例示する側面図である。
図10(a)では、図8に示した例と同様に、フォロワー25bは、カム25aの鉛直下方に設けられている。フォロワー25bは、カム25aの鉛直下方側でカム25aと接触している。
このとき、水車23に供給される水の圧力が基準水圧よりも高い場合は、水車23の回転数が高くなりカム25aの回転数が高くなる一方、水圧式洗浄ノズル10に供給される水の圧力も高くなるため、水圧式洗浄ノズル10にかかる反力トルクM1も大きくなる。すると、フォロワー25bが下方からカム25aに押し付けられるようになるため、カム25aとフォロワー25bとの間の接触力が大きくなり、カム25aとフォロワー25bとの間の摺動抵抗が大きくなり、水圧式洗浄ノズル10が回動しにくくなる。
反対に、水車23に供給される水の圧力が基準水圧よりも低い場合は、水車23の回転数が低くなり、カム25aの回転数が低くなる一方、水圧式洗浄ノズル10に供給される水の圧力も低くなるため、水圧式洗浄ノズル10にかかる反力トルクM1も小さくなる。カム25aとフォロワー25bとの間の接触力が小さくなり、カム25aとフォロワー25bとの間の摺動抵抗が小さくなり、水圧式洗浄ノズル10が回動しやすくなる。
すなわち、水車23に供給される水の圧力の大小に連動して、水圧式洗浄ノズル10の回動しやすさが変化するため、衛生洗浄便座100に供給される水の圧力によらず水圧式洗浄ノズル10の回転速度の変動を抑制させることができる。
また、図10(a)に示すように、洗浄ノズル往復運動手段20は、ストッパ26を有する。ストッパ26は、カム25aを介してフォロワー25bと対向する。すなわち、図10(a)の例では、ストッパ26はカム25aの鉛直上方に形成されている。また、ストッパ26は、フォロワー25bと同様に、板状であり、シリンダ12に固定されている。
水圧式洗浄ノズル10に供給される水の圧力が急に下がると、反力トルクM1が小さくなり、フォロワー25bがカム25aから離れてしまうことも考えられる。これに対して、ストッパ26が形成されていることにより、水圧式洗浄ノズル10にかかる反力トルクM1が大きく変動した場合に、カム25aがストッパ26に接触するため、衛生洗浄便座100に供給される水の圧力変動によって水圧式洗浄ノズル10が跳ね上がる可能性が抑制され、洗浄位置のずれを抑制することができる。
一方、図10(b)に示す例では、フォロワー25bは、カム25aの鉛直上方に設けられている。フォロワー25bは、カム25aの鉛直上方側でカム25aと接触している。また、ストッパ26は、カム25aの鉛直下方に設けられている。
フォロワー25bが、カム25aの鉛直上方側でカム25aと接触していることにより、水車23に供給される水の圧力が基準水圧より高い場合は水圧式洗浄ノズル10に供給される水の圧力も高くなるため、水圧式洗浄ノズル10にかかる反力トルクM1も大きくなり、フォロワー25bがカムから離れる。これにより、水圧式洗浄ノズル10の往復回転運動が止まる。すなわち、水圧式洗浄ノズル10に供給する水圧に応じて、局部洗浄を、水圧式洗浄ノズル10の往復回転運動による広範囲な洗浄と、一点洗浄と、に切り換えることができる。
図11(a)及び図11(b)は、実施形態の変形例に係る衛生洗浄便座の局部洗浄ユニットの一部を例示する側面図である。
図11(a)に示す例においては、運動方向変換機構25は、カム25a及びフォロワー25bの代わりに、クランク51及びロッド52を有する。クランク51は、固定された中心軸Ax2に固定されており、中心軸Ax2を中心に回転する。また、ロッド52は、クランク51及び水圧式洗浄ノズル10に対して接続されている。クランク51が回転することにより、ロッド52の端部52aが上下方向の往復並進運動を行う。これにより、水圧式洗浄ノズル10が往復回転運動する。
図11(b)に示す例においては、運動方向変換機構は、カム25a及びフォロワー25bの代わりに、第1リンク53、第2リンク54及び第3リンク55を有する。第1リンク53は、固定された中心軸Ax2に固定されており、中心軸Ax2を中心に回転する。第2リンク54は、回動軸Ax1及び中心軸Ax2に接続されている。第3リンク55は、第1リンク53及び水圧式洗浄ノズル10に対して接続されている。第1リンク53が回転することにより、第3リンク55の端部55aが往復回転運動を行う。これにより、水圧式洗浄ノズル10が往復回転運動する。
なお、第2リンク54を除去し、第1リンク53および第3リンク55のみであっても、水圧式洗浄ノズル10は往復回転運動を行う。
以上、本発明の実施の形態について説明した。しかし、本発明はこれらの記述に限定されるものではない。前述の実施の形態に関して、当業者が適宜設計変更を加えたものも、本発明の特徴を備えている限り、本発明の範囲に包含される。例えば、水圧式洗浄ノズル、洗浄ノズル往復運動手段などが備える各要素の形状、寸法、材質、配置、設置形態などは、例示したものに限定されるわけではなく適宜変更することができる。
また、前述した各実施の形態が備える各要素は、技術的に可能な限りにおいて組み合わせることができ、これらを組み合わせたものも本発明の特徴を含む限り本発明の範囲に包含される。