以下、本発明に係る電力供給システムについて好適な実施形態を例示し、添付の図面を参照しながら説明する。
[本実施形態の構成]
本実施形態に係る電力供給システム10は、図1に示すように、給電側である1次側12から受電側である2次側14に非接触給電(非接触電力伝送)を行うシステムである。
1次側12は、非共振回路であり、交流電源16に対して、1次側スイッチ18を介して1次側コイル20が接続されている。1次側スイッチ18と1次側コイル20との間には、1次側コイル20に流れる電流I1(以下、送電電流I1ともいう。)を検出する1次側電流センサ22が接続されている。また、1次側コイル20に生ずる電圧V1(以下、送電電圧V1ともいう。)を検出する1次側電圧センサ24が、1次側コイル20に対して並列に接続されている。1次側スイッチ18は、1次側制御手段としての1次側コントローラ26からの制御信号に基づいてオンオフされるリレーである。
この場合、1次側電流センサ22は、送電電流I1を逐次検出し、検出した送電電流I1に応じた検出信号を1次側コントローラ26に逐次出力する。また、1次側電圧センサ24は、送電電圧V1を逐次検出し、検出した送電電圧V1に応じた検出信号を1次側コントローラ26に逐次出力する。1次側コントローラ26は、後述する1次側データテーブル28を有し、入力された各検出信号(送電電流I1、送電電圧V1)に基づいて1次側12の電力P1(以下、送電電力P1ともいう。)を算出し、1次側データテーブル28と送電電流I1及び送電電力P1とに基づいて、1次側スイッチ18のオンオフを制御することにより、1次側12から2次側14への非接触給電を制御する。
2次側14は、例えば、電気自動車30であって、2次側コイル32に対して、負荷である二次電池のバッテリ34が接続されている。2次側コイル32は、送電側パッドである1次側コイル20に対して、所定のギャップを隔てて配置された受電側パッドであり、1次側コイル20から非接触で供給された電力を受電する。
また、2次側14において、2次側コイル32とバッテリ34との間には、共振コンデンサ36を介してOBC38(オンボードチャージャ)が並列に接続されている。そのため、2次側14は、2次側コイル32及び共振コンデンサ36等から構成される共振回路を含み構成されている。従って、電力供給システム10は、N−S方式の非接触給電によって、1次側コイル20から2次側コイル32を介してバッテリ34に充電可能である。
OBC38は、車載型の充電器であって、接触充電口40を備えており、1次側コイル20から2次側コイル32を介して非接触で供給された電力をバッテリ34に充電するか、又は、不図示の外部電源から接触充電口40を介して供給される電力をバッテリ34に充電する。なお、2つの充電方法の切り替えは、OBC38内部での制御切り替えによって行われる。
また、2次側コイル32に生ずる電圧V2(以下、受電電圧V2ともいう。)を検出する2次側電圧センサ42が、2次側コイル32と共振コンデンサ36とに対して並列に接続されている。共振コンデンサ36の後端とOBC38との間には、2次側コイル32に流れる電流I2(以下、受電電流I2ともいう。)を検出する2次側電流センサ44が接続されている。さらに、OBC38からバッテリ34に流れる電流I3(以下、充電電流I3ともいう。)を検出する充電電流センサ46が、OBC38とバッテリ34との間に接続されている。さらにまた、バッテリ34の電圧V3(以下、充電電圧V3ともいう。)を検出する充電電圧センサ48が、バッテリ34に対して並列に接続されている。
この場合、2次側電流センサ44は、受電電流I2を逐次検出し、検出した受電電流I2に応じた検出信号をOBC38に逐次出力する。また、2次側電圧センサ42は、受電電圧V2を逐次検出し、検出した受電電圧V2に応じた検出信号をOBC38に逐次出力する。充電電流センサ46は、充電電流I3を逐次検出し、検出した充電電流I3に応じた検出信号をOBC38に逐次出力する。また、充電電圧センサ48は、充電電圧V3を逐次検出し、検出した充電電圧V3に応じた検出信号をOBC38に逐次出力する。
OBC38では、2次側コイル32及び共振コンデンサ36からバッテリ34に向かって、リレーである2次側スイッチ50及び抵抗器52の直列回路と、整流回路54と、第1平滑回路56と、電圧変換回路58と、第2平滑回路60と、DC/DCコンバータ62とが、2次側コイル32に対して並列に接続されている。また、OBC38において、共振コンデンサ36と整流回路54との間には、整流回路54を接触充電口40に接続するか、又は、整流回路54を共振コンデンサ36並びに2次側スイッチ50及び抵抗器52の直列回路に接続するか、を切り替えるための入力切替スイッチ64が設けられている。
さらに、OBC38には、リレーである2次側スイッチ50及び入力切替スイッチ64と、電圧変換回路58と、DC/DCコンバータ62とを制御する2次側制御手段としての2次側コントローラ66が設けられている。2次側コントローラ66は、後述する2次側データテーブル68を有する。2次側コントローラ66は、OBC38に入力された各検出信号(受電電流I2、受電電圧V2)に基づいて、2次側14の電力P2(以下、受電電力P2ともいう。)を算出し、2次側データテーブル68と受電電流I2及び受電電力P2とに基づいて、2次側スイッチ50、入力切替スイッチ64、電圧変換回路58及びDC/DCコンバータ62を制御することにより、1次側12から2次側14への非接触給電を制御する。
OBC38において、2次側スイッチ50は、2次側コントローラ66からの制御信号によってオンオフされる。抵抗器52は、2次側コイル32からバッテリ34を見たときの負荷抵抗値Rzの取り得る範囲内の値である任意の固定値に設定された抵抗値(例えば、比較的小さな電流が2次側14の回路に流れるような負荷抵抗値Rzが取り得る範囲内の値のうち、高い側の抵抗値)を有する抵抗器である。
なお、負荷抵抗値Rzは、正確には、図1において、2次側コイル32からバッテリ34を見たときに、2次側14における共振コンデンサ36よりも右側部分の負荷インピーダンスの抵抗分(実数成分)をいう。
整流回路54は、4つのダイオード70から構成されるダイオードブリッジであって、入力切替スイッチ64によって共振コンデンサ36と整流回路54とが接続されているときに、2次側コイル32及び共振コンデンサ36に生じた受電電圧V2を整流する(脈動電圧に変換する)。第1平滑回路56は、コンデンサ72を有し、脈流電圧を平滑化することにより直流電圧を生成する。
電圧変換回路58は、スイッチング素子としてのトランジスタ74、コイル76及びダイオード78を有する昇圧チョッパであり、直流電圧を昇圧する。なお、電圧変換回路58は、必要に応じて、力率改善回路の機能を備えてもよい。
この場合、コイル76及びトランジスタ74の直列回路がコンデンサ72に並列に接続されている。すなわち、トランジスタ74のコレクタ端子がコイル76を介してコンデンサ72の一端に接続され、エミッタ端子がコンデンサ72の他端に接続されている。また、トランジスタ74のコレクタ端子は、ダイオード78のアノード端子に接続されている。トランジスタ74は、2次側コントローラ66からベース端子に供給される制御信号に基づいて、コレクタ端子とエミッタ端子との間がオンオフされる。なお、電圧変換回路58は、降圧チョッパも採用可能であるが、以下の説明では、図1に示すように、昇圧チョッパである場合について説明する。
第2平滑回路60は、コンデンサ80を有する。コンデンサ80は、ダイオード78のカソード端子とトランジスタ74のエミッタ端子との間で並列に接続され、電圧変換回路58で昇圧された直流電圧を平滑化する。DC/DCコンバータ62は、入力側がコンデンサ80と並列に接続され、一方で、出力側がバッテリ34と並列に接続されている。DC/DCコンバータ62は、バッテリ34の充電電圧V3及び充電電流I3が所望の値となるように、第2平滑回路60で平滑化された直流電圧を所望の電圧に変換する。
[1次側データテーブル28及び2次側データテーブル68]
次に、図2〜図5を参照しながら、1次側データテーブル28及び2次側データテーブル68について説明する。
1次側データテーブル28は、1次側12及び2次側14の相互の状態が正常であるかどうか、具体的には、1次側コイル20から2次側コイル32への非接触給電が正常に行えているか否かを、1次側コントローラ26が、2次側14の状況を知ることなく、1次側12の送電電流I1及び送電電力P1から判定する際に利用される。一方、2次側データテーブル68は、1次側12及び2次側14の相互の状態が正常であるかどうか、具体的には、1次側コイル20から2次側コイル32への非接触給電が正常に行えているか否かを、2次側コントローラ66が、1次側12の状況を知ることなく、2次側14の受電電流I2及び受電電力P2から判定する際に利用される。
この場合、1次側データテーブル28及び2次側データテーブル68は、下記のように、予め実験により求められ、1次側コントローラ26及び2次側コントローラ66に記憶(設定)される。
この実験は、1次側コイル20と2次側コイル32とが所定のギャップ(間隔)で正対する正規の位置にあり、且つ、1次側スイッチ18及び2次側スイッチ50がそれぞれオンである場合に、交流電源16から1次側コイル20に電圧を供給して、1次側コイル20から2次側コイル32に非接触で電力を供給することにより行われる。その際、OBC38に替えて、不図示の電子負荷装置等の負荷抵抗装置を取り付け、抵抗値(負荷抵抗値Rz)を略無限大(∞)から低い値(0付近の抵抗値)にまで変化させたときに、変化させた各抵抗値に応じた送電電流I1、送電電圧V1、受電電流I2及び受電電圧V2をそれぞれ取得する。
なお、以下の説明では、負荷抵抗装置の抵抗値が負荷抵抗値Rzである場合について説明する。また、前述のように、送電電流I1、送電電圧V1、受電電流I2及び受電電圧V2は、それぞれ、1次側電流センサ22、1次側電圧センサ24、2次側電流センサ44及び2次側電圧センサ42によって検出される。
また、送電電力P1は、負荷抵抗値Rz毎に、送電電流I1と送電電圧V1と1次側12の力率cosθ1とを乗算することにより求められる。一方、受電電力P2は、負荷抵抗値Rz毎に、受電電流I2と受電電圧V2と2次側14の力率cosθ2とを乗算することにより求められる。実際には、1次側コイル20と2次側コイル32との間の送受電周波数より十分速いサンプリング速度で、送電電流I1、送電電圧V1、受電電流I2及び受電電圧V2を取得し、取得した電流及び電圧を乗算した瞬時電力の積分値を、送電電力P1及び受電電力P2として算出する。
図2には、送電電流I1と負荷抵抗値Rzとの関係を示す特性(送電電流特性)と、送電電力P1と負荷抵抗値Rzとの関係を示す特性(送電電力特性)とが図示されている。図2に示すように、送電電流特性は、負荷抵抗値Rzの低下に伴って、送電電流I1が最大送電電流I1maxにまで増加し、最大送電電流I1maxでの負荷抵抗値Rzよりも低い抵抗値では、送電電流I1が減少する特性を有する。また、送電電力特性は、負荷抵抗値Rzの低下に伴って、送電電力P1が最大送電電力P1maxにまで増加し、最大送電電力P1maxでの負荷抵抗値Rzよりも低い抵抗値では、送電電力P1が減少する特性を有する。
一方、図3には、受電電流I2と負荷抵抗値Rzとの関係を示す特性(受電電流特性)と、受電電力P2と負荷抵抗値Rzとの関係を示す特性(受電電力特性)とが示されている。図3に示すように、受電電流特性は、負荷抵抗値Rzの低下に伴って、受電電流I2が最大受電電流I2maxにまで増加する特性を有する。また、受電電力特性は、負荷抵抗値Rzの低下に伴って、受電電力P2が最大受電電力P2maxにまで増加し、最大受電電力P2maxでの負荷抵抗値Rzよりも低い抵抗値では、受電電力P2が減少する特性を有する。
ところで、上記のように、1次側コイル20と2次側コイル32とが正対している状態の正規の位置に対して、1次側コイル20と2次側コイル32との位置ずれが発生する場合や、温度等の周辺環境によっては、送電電流特性、送電電力特性、受電電流特性及び受電電力特性が変動する可能性がある。
そこで、このような位置ずれや周辺環境を考慮し、図2及び図3に示す各特性について、図4及び図5に示すように、該各特性を中心とした一定の許容範囲を設定し、各特性及び各許容範囲を1次側データテーブル28及び2次側データテーブル68として1次側コントローラ26及び2次側コントローラ66にそれぞれ設定(記憶)させる。
図4は、送電電流特性に対して一定の許容範囲(送電電流許容範囲ΔI1)を設定すると共に、送電電力特性に対して一定の許容範囲(送電電力許容範囲ΔP1)を設定した1次側データテーブル28を図示したものである。図5は、受電電流特性に対して一定の許容範囲(受電電流許容範囲ΔI2)を設定すると共に、受信電力特性に対して一定の許容範囲(受電電力許容範囲ΔP2)を設定した2次側データテーブル68を図示したものである。
なお、実際には、制御処理上、下記のような演算処理によって送電電力P1及び受電電力P2が求められる。先ず、1次側コントローラ26は、送受電周波数よりも十分高い周波数に応じた所定のサンプリング間隔で、送電電流I1及び送電電圧V1の瞬時値(検出値)をそれぞれ取得する。次に、1次側コントローラ26は、取得した送電電流I1及び送電電圧V1の各瞬時値からサンプリング毎の送電電力P1の瞬時値(瞬時電力)を算出する。次に、1次側コントローラ26は、交流電源16の周波数に応じた1周期について、送電電力P1の瞬時電力を加算し、加算した瞬時電力を該周期で除算することにより、瞬時電力の平均値(平均電力)を算出する。これにより、1次側コントローラ26は、求めた平均電力を送電電力P1とする。
一方、2次側コントローラ66は、送受電周波数よりも十分高い周波数に応じた所定のサンプリング間隔で、受電電流I2及び受電電圧V2の瞬時値(検出値)をそれぞれ取得する。次に、2次側コントローラ66は、取得した受電電流I2及び受電電圧V2の各瞬時値からサンプリング毎の送電電力P2の瞬時値(瞬時電力)を算出する。次に、2次側コントローラ66は、交流電源16の周波数に応じた1周期について、受電電力P2の瞬時電力を加算し、加算した瞬時電力を該周期で除算することにより、瞬時電力の平均値(平均電力)を算出する。これにより、2次側コントローラ66は、求めた平均電力を受電電力P2とする。
そして、電力供給システム10では、2次側スイッチ50をオフとし、且つ、入力切替スイッチ64によって共振コンデンサ36と整流回路54とを接続した状態で、1次側コントローラ26からの制御で1次側スイッチ18がオンすると共に、2次側コントローラ66によるPWM(Pulse Width Modulation)制御でトランジスタ74がオンオフすることにより、1次側コイル20から2次側コイル32を介したバッテリ34への非接触給電(充電)が行われる。
この場合、1次側コントローラ26及び2次側コントローラ66では、それぞれ、1次側データテーブル28及び2次側データテーブル68を用いて、下記の処理を行うことができる。
すなわち、1次側コントローラ26は、1次側データテーブル28内の送電電流許容範囲ΔI1を用いて、1次側電流センサ22が検出した送電電流I1に基づいて、送電電流許容範囲ΔI1内となる負荷抵抗値Rzの範囲ΔRzi11、ΔRzi12を算出する。また、1次側コントローラ26は、1次側電流センサ22が検出した送電電流I1と、1次側電圧センサ24が検出した送電電圧V1とに基づいて送電電力P1を算出し、1次側データテーブル28内の送電電力許容範囲ΔP1を用いて、算出した送電電力P1に基づいて、送電電力許容範囲ΔP1内となる負荷抵抗値Rzの範囲ΔRzp1を算出する。
そして、送電電流I1に基づいて算出した負荷抵抗値Rzの範囲ΔRzi11、ΔRzi12と、送電電力P1に基づいて算出した負荷抵抗値Rzの範囲ΔRzp1との間に一致する領域がある場合には、1次側コイル20と2次側コイル32との相互の結合関係を含め、1次側12及び2次側14が正常な状態であり、1次側12から2次側14への非接触給電が正常に行えている状態であると判定する。なお、図4では、送電電流I1に基づく負荷抵抗値Rzの範囲として、最大送電電流I1maxを挟み、右側の範囲ΔRzi11と、左側の範囲ΔRzi12との2つがある。この場合、右側の範囲ΔRzi11の一部と、送電電力P1に基づく範囲ΔRzp1とが重なり合う領域(範囲ΔRzp1)が、一致する領域となる。
一方、送電電流I1に基づいて算出した負荷抵抗値Rzの範囲ΔRzi11、ΔRzi12と、送電電力P1に基づいて算出した負荷抵抗値Rzの範囲ΔRzp1との間に一致する領域がない場合には、1次側コイル20と2次側コイル32との相互の結合関係を含め、1次側12及び2次側14が異常な状態にあり、1次側12から2次側14への非接触給電が正常に行えていない状態であると判定する。
また、2次側コントローラ66は、2次側データテーブル68内の受電電流許容範囲ΔI2を用いて、2次側電流センサ44が検出した受電電流I2に基づいて、受電電流許容範囲ΔI2内となる負荷抵抗値Rzの範囲ΔRzi2を算出する。また、2次側コントローラ66は、2次側電流センサ44が検出した受電電流I2と、2次側電圧センサ42が検出した受電電圧V2とに基づいて受電電力P2を算出し、2次側データテーブル68内の受電電力許容範囲ΔP2を用いて、算出した受電電力P2に基づいて、受電電力許容範囲ΔP2内となる負荷抵抗値Rzの範囲ΔRzp2を算出する。
そして、受電電流I2に基づいて算出した負荷抵抗値Rzの範囲ΔRzi2と、受電電力P2に基づいて算出した負荷抵抗値Rzの範囲ΔRzp2との間に、一致する領域がある場合には、1次側コイル20と2次側コイル32との相互の結合関係を含め、1次側12及び2次側14が正常な状態であり、1次側12から2次側14への非接触給電が正常に行えている状態であると判定する。なお、図5では、受電電流I2に基づく範囲ΔRzi2の一部と、受電電力P2に基づく範囲ΔRzp2の一部とが重なり合っている領域が、一致する領域となる。
一方、受電電流I2に基づいて算出した負荷抵抗値Rzの範囲ΔRzi2と、受電電力P2に基づいて算出した負荷抵抗値Rzの範囲ΔRzp2との間に、一致する領域がない場合には、1次側コイル20と2次側コイル32との相互の結合関係を含め、1次側12及び2次側14が異常な状態にあり、1次側12から2次側14への非接触給電が正常に行えていない状態であると判定する。
[本実施形態の動作]
以上のように構成される電力供給システム10の動作について、図6〜図9を参照しながら説明する。この動作説明では、必要に応じて、図1〜図5も参照しながら説明する。
ここでは、二次電池であるバッテリ34の充電電圧V3を、安全に充電を行うことができる最高電圧値、すなわち、充電終止電圧V3objにすることを制御目標として、1次側12から2次側14に非接触給電を行う場合について説明する。なお、安全に充電できる最大電流値は、SOC(State of Charge;充電率) により変化する値であり、I3objとする。
また、2次側コントローラ66は、トランジスタ74をPWM制御によってオンオフさせるものとする。ここでは、PWM制御による制御信号の周期をτとし、トランジスタ74のオン時間をTonとする。なお、オン時間Tonを制御することにより、負荷抵抗値Rzを略無限大(∞)から0付近まで変化させることができ、図3及び図5に示す受電電流I2及び受電電力P2を制御することができる。
図6及び図7は、1次側12及び2次側14(図1参照)の制御のフローチャートである。なお、図6及び図7において、左側のフローは1次側12の制御を示し、右側のフローは2次側14の制御を示す。
先ず、運転者がバッテリ34を充電すべく、1次側コイル20(送電側パッド)と2次側コイル32(受電側パッド)とが対向する位置に電気自動車30を停車させ、下車する。この場合、運転者は、双方のパッドが対向する位置にあり、両パッド間に異物等が存在しない状態であるか否かを確認する。
ここで、図6のステップS201において、運転者は、電気自動車30のOBC38の図示しないスイッチをオンにし、OBC38を起動させる。
これにより、ステップS202において、OBC38の2次側コントローラ66は、入力切替スイッチ64に制御信号を供給して共振コンデンサ36と整流回路54とを接続させると共に、2次側スイッチ50に制御信号を供給してオンにする。
次のステップS203において、2次側コントローラ66は、バッテリ34が充電可能な状態であるか否かを確認する。具体的に、2次側コントローラ66は、充電電圧センサ48が検出した充電電圧V3、及び、充電電流センサ46が検出した充電電流I3に基づいて、V3<V3obj、且つ、SOC<100%であるか否かを判定する。ステップS203で肯定的な判定結果であれば(ステップS203:YES)、2次側14では、次のステップS204に進んで待機する。
一方、1次側12では、ステップS101において、運転者が図示しない1次側コントローラ26のスイッチをオンにし、1次側コントローラ26を起動させる。
これにより、ステップS102において、1次側コントローラ26は、1次側スイッチ18に制御信号を供給してオンオフさせることにより、交流電源16からの交流電力を、短時間持続するパルス的な電力(パルス電力)として1次側コイル20に供給する。これにより、1次側コイル20は、2次側コイル32にパルス電力を非接触で給電する。前述のように、1次側コイル20に対向して2次側コイル32が所定位置に近接している状態では、1次側コイル20と2次側コイル32との間の相互インダクタンスにより、1次側12及び2次側14には、規定値の送電電力P1及び受電電力P2が生ずる。
そこで、ステップS103において、1次側コントローラ26は、送電電力P1が規定値であるか否かを、1次側データテーブル28に基づき判断する。具体的に、1次側コントローラ26は、1次側電流センサ22が検出した送電電流I1に基づいて負荷抵抗値Rzを参照し、参照した負荷抵抗値Rzと送電電流I1との座標値が、1次側データテーブル28の送電電流許容範囲ΔI1内であるか否かを判定する。また、1次側コントローラ26は、送電電流I1と、1次側電圧センサ24が検出した送電電圧V1とに基づいて送電電力P1を算出し、算出した送電電力P1に基づいて負荷抵抗値Rzをさらに参照し、送電電力P1と負荷抵抗値Rzとの座標値が、1次側データテーブル28の送電電力許容範囲ΔP1内であるか否かを判定する。そして、参照した各負荷抵抗値Rzが、互いに略等しく、且つ、抵抗器52の固定された抵抗値と略等しいか否かを判定する。
ステップS103で肯定的な判定結果であった場合(ステップS103:YES)、1次側コントローラ26は、1次側コイル20と2次側コイル32との間で、非接触による電力供給が可能であると判定し、次のステップS104に進む。ステップS104において、1次側コントローラ26は、ステップS102、S103の処理を繰り返し行うか否かを判定する。繰り返し行う場合(ステップS104:YES)、1次側コントローラ26は、ステップS102に戻り、ステップS102、S103の処理を再度行う。
ステップS102〜S104の処理が繰り返し行われることにより、図8に示すように、例えば、T1の時間におけるT2、T3の周期内でパルス状の送電電力P1が発生し、1次側コイル20から2次側コイル32に非接触で電力供給が行われる。なお、図8では、時点t1で2次側コントローラ66が起動し(ステップS201)、時点t2で1次側コントローラ26が起動し(ステップS101)、時点t3から時点t4までの時間T1内で、パルス幅T4、T5の3つのパルス状の送電電力P1が発生する場合を図示している。また、時間T1内のパルス状の送電電力P1を複数のパルス波形とみなした場合、ステップS102〜S104の処理では、「10001000110000」のパターン配列のパルス信号を1次側コイル20から2次側コイル32に送信していると考えることもできる。
なお、時点t4において、パルス状の送電電力P1の発生を停止させた後(ステップS104:NO)、1次側12は、次のステップS105に進んで待機する。
一方、図6のステップS204において、2次側コントローラ66は、2次側コイル32が1次側コイル20からパルス状の電力を受電したか否かを判定する。そして、2次側コイル32がパルス状の電力を受電したと判定した場合(ステップS204:YES)、次のステップS205において、2次側コントローラ66は、2次側14が1次側12との磁界結合により非接触で電力を受電可能であるか否か、さらには、2次側14が1次側12に対する磁界結合の相手として、所定の仕様を満たした正規なものであるか否かの認証処理を行う。
ステップS205では、下記(1)〜(3)の3つの判定処理を、並行して、又は、順に、行う。
(1)2次側データテーブル68を参照して、受電電流I2に応じた負荷抵抗値Rzを参照する。次に、受電電圧V2と受電電流I2とに基づいて受電電力P2を算出し、2次側データテーブル68を参照して、算出した受電電力P2に応じた負荷抵抗値Rzを参照する。そして、求めた各負荷抵抗値Rzが、互いに略等しく、且つ、抵抗器52の固定された抵抗値と略等しいか否かを判定する。
(2)1次側コイル20に電力(送電電力P1)が供給された際に、2次側コイル32で受電される電力(受電電力P2)が2次側データテーブル68から参照される規定値(受電電力許容範囲ΔP2)内であるか否かを判定する。
(3)1次側コイル20に供給された複数のパルス状の電力について、電力が供給されている時間(状態)を「1」、電力が供給されていない時間(状態)を「0」として表わしたときのパターン配列と、該パターン配列のパルス状の電力が1次側コイル20から2次側コイル32に非接触で給電されたときに、2次側コイル32で受電される複数のパルス状の受電電力P2について、上記の規定値の電力が供給される時間(状態)を「1」、電力が供給されていない時間(状態)を「0」として表わしたときのパターン配列とが、一致するか否かを判定する。
一例として、(3)の判定処理では、1次側コイル20のパルス状の電力のパターン配列が図8に示す「10001000110000」である場合、2次側14の受電電力P2のパターン配列が「10001000110000」と一致するかを判定する。
そして、ステップS205において、2次側コントローラ66は、これらの3つの判定処理の結果が全て肯定的な判定結果である場合(ステップS205:YES)、1次側コイル20から非接触で給電された電力を2次側コイル32で受電可能である(2次側14が受電可能状態にある)と共に、2次側14が1次側12との磁界結合の相手として正規なものであることを認定し、次のステップS206に進む。
ステップS206において、2次側コントローラ66は、2次側スイッチ50をオフした後、次のステップS207に進んで待機する。
一方、ステップS105において、1次側コントローラ26は、1次側スイッチ18のオン状態を継続させ、交流電源16から1次側コイル20に常時通電させる。これにより、1次側コイル20から2次側コイル32を介してバッテリ34に非接触給電を開始させることが可能な状態となり、次のステップS106に進む。なお、図8において、時点t4が、1次側12におけるステップS104、及び、2次側14におけるステップS206の状態となる。
ステップS207において、2次側コントローラ66は、ステップS206で2次側スイッチ50がオフになって以降、十分に長い時間経過している場合に、2次側14が正しい受電状態であるか否かを判定する。
具体的に、2次側コントローラ66は、2次側データテーブル68を参照して、受電電流I2に応じた負荷抵抗値Rzを参照し、一方で、受電電圧V2と受電電流I2とに基づいて受電電力P2を算出し、2次側データテーブル68を参照して、算出した受電電力P2に応じた負荷抵抗値Rzを参照し、参照した各負荷抵抗値Rzが略等しいか否かを判定する。
ステップS207で肯定的な判定結果である場合(ステップS207:YES)、次のステップS208に進む。ステップS208において、2次側コントローラ66は、トランジスタ74のオン時間Tonを最小単位時間Δτに設定し、設定した最小単位時間Δτに応じた制御信号をトランジスタ74のベース端子に供給することにより、トランジスタ74のコレクタ端子とエミッタ端子との間を導通させる、最低限度の通電制御を行う。ここで、オン時間Tonが0を含めてn段階に変更可能である場合、トランジスタ74に対するPWM周期をTとすると、Δτ=T/(n−1)となる。
すなわち、2次側コントローラ66は、トランジスタ74のオン時間Tonを最初に最小単位時間Δτに設定し、該オン時間Tonを最小単位時間Δτから、2Δτ、3Δτ、…、nΔτのように、ステップ的に長くする通電制御を行うことができる。このように、2次側コントローラ66は、オン時間Tonを変化させることにより、2次側14の負荷抵抗値Rzを、実質的に、略無限大の状態から出発して、0に向かって変化させることができる。
なお、図8において、t4〜t5の時間帯が、2次側14におけるステップS207の状態であり、時点t5がステップS208となる。
次のステップS209において、2次側コントローラ66は、最低限度の通電制御(最小単位時間Δτでのトランジスタ74のオン)において、2次側14が正しい受電状態であるか否かについて、ステップS207と同様の判定処理を再度行う。ステップS209において、肯定的な判定結果である場合(ステップS209:YES)、図7のステップS210に進む。なお、図8において、時点t6以降の状態が、2次側14のステップS210以降の処理となる。
なお、前述のステップS203、S205、S207、S209の各判定処理において、否定的な判定結果であった場合(ステップS203、S205、S207、S209:NO)、2次側コントローラ66は、2次側14が電力を非接触で受電可能な状態にはない異常状態にあると判断し、次のステップS211で、2次側14での充電処理を終了させる。すなわち、トランジスタ74及びDC/DCコンバータ62をオフさせる。
一方、ステップS106において、1次側コントローラ26は、ステップS105以降、送電電力P1が変化した場合、1次側データテーブル28を用いて送電電流I1に基づいた負荷抵抗値Rzを参照し、一方で、送電電力P1に基づいた負荷抵抗値Rzを参照し、両方の負荷抵抗値Rzが略等しい場合、2次側14において最低限の通電制御が行われていると判断し(ステップS106:YES)、次のステップS107に進む。
これに対して、2次側コントローラ66は、図7のステップS210において、ステップS207、S209と同様の判定処理を再度行う。これは、上述したイニシャルループ処理を終了し、その後、ステップS210、S212〜S216において繰り返し行われる電力追尾ループ処理での異常検知判断をステップS210で行うためである。ステップS210で肯定的な判定結果であった場合(ステップS210:YES)、次のステップS212に進む。
ステップS212において、2次側コントローラ66は、今回の処理で算出された受電電力P2と、前回の処理で算出された受電電力P2oldとを比較し、P2>P2oldであるか否かを判定する。ステップS212において肯定的な判定結果である場合(ステップS212:YES)、次のステップS213に進む。なお、P2>P2oldであるとき、受電電力P2の状態は、図3及び図9に示すように、最大受電電力P2maxに向かってP2oldから単調に増加している状態か、又は、最大受電電力P2maxに一旦到達した後に低下し、その後、最大受電電力P2maxに向かって増加している状態であるか、のどちらかである。
ステップS213において、2次側コントローラ66は、前回の処理がデューティアップ制御、すなわち、トランジスタ74のオン時間Tonを前回よりΔτだけインクリメントする制御であったか否かを判定する。前回の処理がデューティアップ制御であった場合の受電電力P2の状態は、受電電力P2が最大受電電力P2maxに向かってP2oldから単調に増加している状態である。
従って、ステップS213で肯定的な判定結果である場合(ステップS213:YES)、2次側コントローラ66は、受電電力P2を最大受電電力P2maxに近づけるように、トランジスタ74のオン時間Tonを前回よりもΔτだけインクリメントさせるべく、次のステップS214に進む。
ステップS214において、2次側コントローラ66は、バッテリ34の充電電圧V3と充電終止電圧V3objとを比較すると共に、充電電流I3とバッテリ34を安全に充電できる最大電流値I3objとを比較し、V3<V3obj且つI3<I3objであるか否かを判定する。ステップS214が肯定的な判定結果であった場合(ステップS214:YES)、2次側コントローラ66は、充電電流I3及び充電電圧V3が共にバッテリ34を安全に充電できる状態にあると判断し、次のS215に進む。
ステップS215において、2次側コントローラ66は、負荷抵抗値Rzを下げて、受電電流I2及び受電電力P2を増加させるべく、デューティアップ制御(オン時間Tonを前回よりもΔτだけインクリメントする制御)を行い、次のステップS216に進む。
ステップS216において、2次側コントローラ66は、受電電力P2の最小状態の経過時間、例えば、図9のt19〜t20の時間帯のようにP2≒0の状態が継続する時間が、規定時間以上であるか否かを判断する。最小状態の経過時間が規定時間未満である場合には(ステップS216:NO)、バッテリ34の充電完了と判断できない状態であるため、2次側コントローラ66は、ステップS210に戻り、バッテリ34への充電を継続させる。
従って、ステップS210、S212〜S216の処理を繰り返し行うことにより、例えば、図9の時点t11〜t13の時間帯において、時間経過に伴い、オン時間Tonのデューティを徐々に増加させながら、受電電力P2及び受電電流I2を増加させると共に、充電が進むにつれて充電電圧V3及びSOCを増加させることができる。受電電力P2等の増加に伴って、送電電力P1も増加する。
一方、ステップS210、S212、S213、S214の各判定処理において、否定的な判定結果(ステップS210、S212、S213、S214:NO)となった場合の処理について以下に説明する。
ステップS210で否定的な判定結果となった場合(ステップS210:NO)、2次側コントローラ66は、ステップS211に進み、PWM制御を停止する(トランジスタ74のオン時間Tonを0とする)。
ステップS212で否定的な判定結果となった場合(ステップS212:NO)、次のS217に進む。このような判定結果となる状態は、図3において、最大受電電力P2maxよりも右側の領域(負荷抵抗値Rzが高い領域)で、受電電力P2が前回値以下の状態、又は、最大受電電力P2maxよりも左側の領域(負荷抵抗値Rzが低い領域)で、受電電力P2が前回値以下の状態、のどちらかである。
ステップS217において、2次側コントローラ66は、前回の処理がデューティアップ制御であったか否かを判定する。デューティアップ制御であった場合(ステップS217:YES)、受電電力P2の状態は、図3の最大受電電力P2maxよりも左側の領域で、受電電力P2が前回値以下の状態である。
そこで、次のステップS218において、2次側コントローラ66は、受電電力P2が最大受電電力P2maxに近づくように、トランジスタ74のオン時間Tonを前回よりもΔτだけデクリメントし、ステップS216に進む。
一方、ステップS217において、前回の処理がデューティアップ制御でなかった場合(ステップS217:NO)、受電電力P2の状態は、図3の最大受電電力P2maxよりも右側の領域で、受電電力P2が前回値以下の状態である。
そこで、2次側コントローラ66は、受電電力P2が最大受電電力P2maxに近づくように、トランジスタ74のオン時間Tonを前回よりもΔτだけインクリメントさせるべく、ステップS214〜S216の処理を順に行う。
また、ステップS213で否定的な判定結果となった場合(ステップS213:NO)、ステップS218に進む。このような判定結果となる状態は、図3において、受電電力P2が最大受電電力P2maxに到達した後に低下し、その後、受電電力P2が増加傾向にあっても、最大受電電力P2maxに到達していない状態である。この場合、2次側コントローラ66は、ステップS218において、受電電力P2を最大受電電力P2maxに近づけるように、トランジスタ74のオン時間Tonを前回よりもΔτだけデクリメントし、その後、ステップS216に進む。
さらに、ステップS214で否定的な判定結果となった場合(ステップS214:NO)、ステップS218に進む。このような判定結果となる状態は、充電電圧V3が充電終止電圧V3objに到達した場合、又は、充電電流I3が最大電流値I3objに到達した場合、のいずれかである。
従って、ステップS218において、2次側コントローラ66は、充電電圧V3が充電終止電圧V3objに到達した場合には、充電電圧V3が充電終止電圧V3objよりも大きくならないように、トランジスタ74のオン時間Tonを前回よりもΔτだけデクリメントする。また、2次側コントローラ66は、充電電流I3が最大電流値I3objに到達した場合には、充電電流I3が最大電流値I3objよりも大きくならないように、オン時間Tonを前回よりもΔτだけデクリメントする。
このようにして、ステップS210、S212〜S218の処理を繰り返し行うことにより、すなわち、トランジスタ74のオン時間Tonを前回よりもΔτだけインクリメント又はデクリメントする処理を繰り返すことにより、図3及び図9に示すように、時点t11から時点t14にかけて、受電電力P2が最大受電電力P2maxに次第に近づいていき、時点t14から時点t15までの時間帯では、受電電力P2が最大受電電力P2max近傍で略一定となるように制御される。このような制御により、t11〜t15の時間帯では、時間が経過するにつれて、バッテリ34の充電が進み、SOC及び充電電圧V3は徐々に増加する。
なお、t11〜t13の時間帯では、図9において太い破線で示す最大電流値I3objを制御目標として充電電流I3を追従させる充電処理が行われ、t13〜t14の時間帯では、充電電流I3を最大電流値I3objで保持しながら充電電圧V3を増加させる充電処理が行われる。
その後、時点t14で、受電電力P2が最大受電電力P2max近傍にまで到達した場合、該受電電力P2を最大受電電力P2maxに追従させつつ、受電電圧V2及び受電電流I2がそれぞれ充電終止電圧V3obj及び最大電流値I3objを超えない程度に、バッテリ34が充電される。これにより、t14〜t15の時間帯において、充電電流I3は、最大電流値I3objから徐々に低下する。
一方、SOCが高い領域では、最大電流値I3objは、SOCの増加に対して、時点t15、t16、t17、t18において、ステップ状に低下する。そのため、バッテリ34への充電が継続されると、充電電流I3は、最大電流値I3objに追従するように変化する。一方、充電終止電圧V3objは、時点t15、t16、t17、t18の順に高い電圧値に設定される。
このような変化に伴い、トランジスタ74のオン時間Tonはデクリメントされ、受電電力P2は、時点t15以降、最大受電電力P2maxから低下し、図3の2次側データテーブル68における受電電力特性の右側にシフトしていく。その後、充電電圧V3は、100%付近のSOCにおける充電終止電圧V3objに到達する。
この結果、オン時間Tonはさらにデクリメントされ、時点t19で充電電流I3(受電電流I2)及び受電電力P2が最小値又は略0にまで減少する。そして、受電電力P2について、規定値以下(最小値又は略0)の状態が規定時間以上継続する場合、例えば、図9において、時点t19から所定時間経過した時点t20に到達した場合(ステップS216:YES)、2次側コントローラ66は、バッテリ34が満充電(SOC=100%)になったと判断し、次のステップS219でバッテリ34に対する充電処理を正常終了させる。
一方、2次側14でステップS210、S212〜S218の処理が繰り返される間、1次側コントローラ26は、ステップS107において、1次側12の状態を確認し続ける。具体的には、1次側データテーブル28を用いて、送電電流I1に基づいた負荷抵抗値Rzを参照し、一方で、送電電力P1に基づいた負荷抵抗値Rzを参照し、両方の負荷抵抗値Rzが略等しいか否かを確認すると共に、送電電力P1の増加又は減少等の変化が、1次側データテーブル28の規定値(送電電力許容範囲ΔP1)内であるか否かを確認する。ステップS107で肯定的な判定結果である場合(ステップS107:YES)、次のステップS108に進む。
ステップS108において、1次側コントローラ26は、2次側14で受電電力P2の最小状態が規定時間以上継続していることにより、1次側12の送電電力P1についても最小状態が規定時間以上継続している状態にあるか否かを判定する。ステップS108で肯定的な判定結果である場合(ステップS108:YES)、次のステップS109に進む。ステップS109において、1次側コントローラ26は、バッテリ34への充電が終了したと判断し、1次側12での充電処理を正常終了させる。
なお、ステップS108において否定的な判定結果となった場合(ステップS108:NO)、1次側コントローラ26は、ステップS107、S108の処理を繰り返し実行する。
また、ステップS103、S106、S107において、否定的な判定結果であった場合(ステップS103、S106、S107:NO)、1次側コントローラ26は、1次側12が送電可能な状態にはない異常状態と判断し、ステップS110で、1次側12での充電処理を終了させる。
[本実施形態の効果]
以上説明したように、本実施形態に係る電力供給システム10によれば、1次側12が非共振回路であり、2次側14が共振回路を含む。また、電力供給システム10では、1次側12及び2次側14のうち、少なくとも一方に設けられ、2次側コイル32からバッテリ34を見たときの負荷抵抗値Rzが略無限大となる初期状態から出発し、時間経過に伴って負荷抵抗値Rzが低下するように、1次側コイル20から2次側コイル32を介したバッテリ34への非接触給電を制御する制御手段(1次側コントローラ26、2次側コントローラ66)を有する。
これにより、給電側の1次側12と受電側の2次側14との間で、給電情報等の情報交換を行うことなく、且つ、1次側12にインバータを用いることなく、簡単な構成で、且つ、低コストで、1次側12から2次側14の負荷への非接触給電を行うことができる。
また、1次側12では、インバータを使用しないので、該1次側12を設置するインフラに付帯するベース電源としての交流電源16の周波数や電圧をそのまま利用して、電気自動車30等の給電対象物に非接触給電を行うことができる。具体的には、一般インフラを利用して給電対象物に給電する際には、商用電源の周波数(商用周波数)をそのまま利用することができる。また、船舶や航空機内で給電対象物に給電する際には、該船舶及び航空機内のインフラ周波数をそのまま利用することができる。例えば、航空機内では、該航空機内のインフラ周波数である400Hzの周波数をそのまま利用することができる。
また、本実施形態に係る電力供給システム10では、1次側12及び2次側14のうち、少なくとも一方に設けられ、2次側コイル32からバッテリ34を見たときの負荷抵抗値Rzと、1次側コイル20から2次側コイル32を介したバッテリ34への非接触給電時に1次側12又は2次側14に生じる電流及び電力との関係を示すデータテーブル(1次側データテーブル28、2次側データテーブル68)を用いて、非接触給電を正常に行えているか否かを判定し、その判定結果に基づいて非接触給電を制御する制御手段(1次側コントローラ26、2次側コントローラ66)を有する。
この場合でも、上記の構成と同様の効果が得られる。また、この構成では、1次側12と2次側14との間で、給電情報等の情報交換を行うことなく、非接触給電を正常に行えているか否かを判定することができるので、該非接触給電の異常を簡単且つ容易に検知し、検知結果に基づいて、適切に制御することが可能となる。
また、1次側12と2次側14のそれぞれに制御手段としての1次側コントローラ26及び2次側コントローラ66を設け、給電情報等の情報のやり取りを行うことなく、すなわち、相手方(給電側、受電側)の状況を知ることなく、監視対象(1次側12、2次側14)の電流及び電力に基づいて、非接触給電が正常に行えているか否かを判定する。これにより、非接触給電を簡単且つ適切に制御することができる。
さらに、1次側コントローラ26は、1次側データテーブル28内の送電電流許容範囲ΔI1を用いて、非接触給電時に生じる実際の送電電流I1から送電電流許容範囲ΔI1内となる負荷抵抗値Rzの範囲ΔRzi11、ΔRzi12を算出する。また、1次側コントローラ26は、1次側データテーブル28内の送電電力許容範囲ΔP1を用いて、非接触給電時に生じる実際の送電電力P1から送電電力許容範囲ΔP1内となる負荷抵抗値Rzの範囲ΔRzp1を算出する。そして、1次側コントローラ26は、送電電流I1から算出した負荷抵抗値Rzの範囲ΔRzi11、ΔRzi12と、送電電力P1から算出した負荷抵抗値Rzの範囲ΔRzp1との間に一致する領域があるときに、非接触給電を正常に行えていると判定する。
一方、2次側コントローラ66においても、2次側データテーブル68内の受電電流許容範囲ΔI2を用いて、非接触給電時に生じる実際の受電電流I2から受電電流許容範囲ΔI2内となる負荷抵抗値Rzの範囲ΔRzi2を算出する。また、2次側コントローラ66は、2次側データテーブル68内の受電電力許容範囲ΔP2を用いて、非接触給電時に生じる実際の受電電力P2から受電電力許容範囲ΔP2内となる負荷抵抗値Rzの範囲ΔRzp2を算出する。そして、2次側コントローラ66は、受電電流I2から算出した負荷抵抗値Rzの範囲ΔRzi2と、受電電力P2から算出した負荷抵抗値Rzの範囲ΔRzp2との間に、一致する領域があるときに、非接触給電を正常に行えていると判定する。
このように、正対している状態の正規の位置に対して1次側コイル20と2次側コイル32との位置ずれが発生する場合や、温度等の周辺環境を考慮して各許容範囲を設定することにより、例えば、多少の位置ずれがある場合でも、許容範囲内にあれば、非接触給電を正常に行えていると判定することができる。これにより、非接触給電の制御を一層容易に行うことができる。
また、1次側コントローラ26が1次側スイッチ18をオンオフさせることにより、所定のパターン配列のパルス状の電力が1次側コイル20から2次側コイル32に非接触で供給されたときに、2次側コントローラ66は、2次側14に生じる受電電力P2がパターン配列に応じたパルス状の電力であるか否かを判定するので、非接触給電が可能か否かを容易に判定することができる。
また、2次側コントローラ66は、2次側スイッチ50をオンさせた状態で、パルス状の電力が1次側コイル20から2次側コイル32に非接触で供給された場合、2次側14に生じる受電電力P2がパターン配列に応じたパルス状の電力であるか否かを判定し、受電電力P2がパターン配列に応じたパルス状の電力であったときに、2次側スイッチ50をオフさせる。このように、負荷抵抗値Rzの取り得る範囲内の値で任意の固定値に設定された抵抗値の抵抗器52を用いることにより、非接触給電が可能か否かの判定処理を精度よく行うことができる。
さらに、2次側コイル32と、該2次側コイル32に電気的に接続される共振コンデンサ36との共振回路を含み2次側14が構成されることにより、1次側12が非共振回路で、且つ、2次側14が2次側コイル32と共振コンデンサ36とが直列接続されたN−S方式、又は、2次側14が2次側コイル32と共振コンデンサ36とが並列接続されたN−P方式の非接触給電方式を実現することができる。
なお、本発明は、上述の実施形態に限らず、この明細書の記載内容に基づき、種々の構成を採り得ることは勿論である。