以下、この発明をより詳細に説明するために、この発明を実施するための形態について、添付の図面に従って説明する。
実施の形態1.
図1Aは、実施の形態1に係る電磁波発生器の要部を断面から見た状態を示す説明図である。図1Bは、実施の形態1に係る電磁波発生器における空洞共振部を含む部位を正面から見た状態を示す説明図である。図1を参照して、実施の形態1の電磁波発生器100について説明する。
図1に示す如く、導体板1に空洞共振部2が設けられている。より具体的には、1個の略円形状の貫通孔21が導体板1に穿たれており、かつ、貫通孔21の周囲に円環状に配列された複数個(N個)の略円形状の貫通孔22(共振空洞22)が導体板1に穿たれている。ここで、Nは2以上の任意の偶数であり、図1に示す例においてはN=6である。個々の貫通孔22は、貫通孔21に対する開口部23を有しており、貫通孔21と連通している。個々の貫通孔22の壁面部24の沿面長L1は、電磁波発生器100が発生させる電磁波W、すなわち空洞共振部2により生成される電磁波Wの波長λに対する1/2倍の値に設定されている。個々の貫通孔22により、共振空洞22が構成されている。以下貫通孔22を共振空洞22と記載することもある。
互いに隣接する各2個の共振空洞22間の導体により、すなわち導体板1のうちの互いに隣接する各2個の共振空洞22間の部位により、個々の電極25が形成されている。したがって、電極25の個数は共振空洞22の個数と同一であり、空洞共振部2はN個の共振空洞22及びN個の電極25を有するものである。
個々の共振空洞22は、開口部23を介して互いに対向配置された2個の電極25の先端部がキャパシタの機能を果たすとともに、いわゆる「表皮効果」により略環状の壁面部24がコイルの機能を果たすことにより、LC共振回路の機能を果たすものである。ここで、沿面長L1が波長λに対する1/2倍の値に設定されていることにより、このLC共振回路における共振周波数fはf=電磁波Wの速度/λ=電磁波Wの速度/2L1となるものである。すなわち、このLC共振回路における共振周波数fに応じて、空洞共振部2により生成される電磁波Wの周波数fが設定されるものである。
N個の電極25の先端部にN個のダイオード3のアノードが電気的にそれぞれ接続されている。N個のダイオード3のカソードは、導体棒4を介して基板5と電気的に共通接続されている。個々のダイオード3は、例えば、PN接合ダイオード、ショットキーバリアダイオード又はPINダイオード等により構成されている。基板5は導電性を有するものであり、容器6内にて導体板1と対向配置されている。基板5と導体板1間に設けられた絶縁部材7により、基板5と導体板1間に間隙8が形成されている。
ここで、N個の共振空洞22は、便宜的なN/2個の共振空洞(以下「第1共振空洞」ということがある。)22Aと残余のN/2個の共振空洞(以下「第2共振空洞」ということがある。)22Bとが交互に配置されたものである。N個の電極25は、便宜的なN/2個の電極(以下「第1電極」ということがある。)25Aと残余のN/2個の電極(以下「第2電極」ということがある。)25Bとが交互に配置されたものである。N個のダイオード3は、便宜的なN/2個のダイオード(以下「第1ダイオード」ということがある。)3Aと残余のN/2個のダイオード(以下「第2ダイオード」ということがある。)3Bとが交互に配置されたものである。
なお、電磁波発生器100においては、容器6内を真空状態にすることは不要である。このため、容器6は密封容器でなくとも良い。
容器6外にて、導体板1の片面側(すなわち基板5の片面側)に磁界印加部9が設けられている。図1に示す例において、磁界印加部9は永久磁石31により構成されている。磁界印加部9は、導体板1の板面(すなわち基板5の板面)に対する直交方向の磁束を発する磁界Bを空洞共振部2に印加するものである。
導体板1、空洞共振部2、ダイオード3、導体棒4、基板5、容器6、絶縁部材7及び磁界印加部9により、電磁波発生部10の要部が構成されている。
容器6外に電源11が設けられている。電源11における一方の端子は導体板1と電気的に接続されており、電源11における他方の端子は基板5と電気的に接続されている。これにより、N個のダイオード3のカソードは導体棒4及び基板5を介して電源11と電気的に共通接続されている。電源11は電磁波生成用の電力を供給するものであり、N個のダイオード3は電源11による電源電力を空洞共振部2に供給するものである。
容器6外に始動用電磁波発生器12が設けられている。始動用電磁波発生器12は、始動用の電磁波wを空洞共振部2に供給するものである。
容器6外に電磁波出力部13が設けられている。電磁波出力部13は、空洞共振部2により生成された電磁波Wを電磁波発生器100外に出力するものである。図1に示す例において、電磁波出力部13は電磁波W用の伝送線路41により構成されている。伝送線路41は、例えば、同軸ケーブル又は導波管により構成されている。
なお、空洞共振部2と電磁波出力部13間の接続線路には、電磁波Wの波長λに応じた部材を用いる必要がある。例えば、電磁波Wが可視光である場合、当該接続線路には可視光を透過する材料(透明なガラス、透明なセラミックス又は透明な樹脂など)と相応の伝送部材を用いる必要があり、電磁波Wが赤外線である場合、当該接続線路には赤外線を透過し伝送する材料を用いる必要がある。
電磁波発生部10、電源11、始動用電磁波発生器12及び電磁波出力部13により、電磁波発生器100の要部が構成されている。
電磁波発生器100は、個々の共振空洞22の寸法(大きさ)に応じて、より具体的には沿面長L1の値に応じて、任意の周波数fを有する電磁波Wを発生させることができる。例えば、沿面長L1が300マイクロメートル(μm)に設定されている場合、1テラヘルツ(THz)の周波数fを有する電磁波Wを発生させることができる。また、沿面長L1が0.3μmに設定されている場合、1000THzの周波数fを有する電磁波Wを発生させることができる。このように、沿面長L1を0.3〜300μmの範囲内の値に設定することにより、1〜1000THzの周波数領域(以下「テラヘルツ領域」という。)内の周波数fを有する電磁波Wを発生させることができる。
テラヘルツ領域内の周波数fを有する電磁波Wは、種々の技術分野に対する応用が進められている。例えば、人体用の透視装置、車載用のレーダ装置、生体分子の同定、電子材料の物性評価、非破壊計測及び医療機器などの技術分野に対する応用が進められている。したがって、電磁波発生器100は、これらの技術分野に応用することができる。
ちなみに、沿面長L1が300μmよりも大きい値に設定されている場合、1THzよりも低い周波数fを有する電磁波Wを発生させることができる。このように、沿面長L1を300μmよりも大きい値に設定することにより、テラヘルツ領域に比して低い周波数領域内の周波数fを有する電磁波Wを発生させることもできる。
なお、沿面長L1が2.5〜12.5μm程度の値に設定されている場合、発生する電磁波Wは遠赤外線となる。沿面長L1が0.2〜0.4μm程度の値に設定されている場合、発生する電磁波Wは可視光となる。沿面長L1が約300ナノメートル(nm)の値に設定されている場合、発生する電磁波Wは黄色の可視光となる。このように、電磁波発生器100は光を発生させることもできる。
これらの具体例において、空洞共振部2のサイズはマイクロメートル単位又はナノメートル単位である。かかる微小な空洞共振部2を有する導体板1は、例えば、いわゆる「3Dプリンタ」を用いて製造される。または、例えば、IC(Integrated Circuit)における導体パターン形成用の微細加工技術(メッキ、蒸着、折出又はエッチングなど)を用いて製造される。または、例えば、いわゆる「メタマテリアル」における導電性材料用の微細加工技術を用いて製造される。
また、空洞共振部2のサイズが微小であるため、導体板1の片面側に配置された永久磁石31を用いて板面に対する直交方向の磁束を発する磁界Bを印加することができる。なお、図1に示す例においては、磁界印加部9を容器6外に設けているが、効果的に磁界を印加するために、容器6の内側に設けて導体板1に接近させてもよい。
ただし、電磁波Wの周波数fを低くすることが要求される場合、個々の共振空洞22の寸法が大きくなり、空洞共振部2のサイズが上記の具体例に比して大きくなることがある。また、電磁波Wの出力を大きくすることが要求される場合、共振空洞22の個数が増加して、空洞共振部2のサイズが上記の具体例に比して大きくなることがある。これにより、導体板1の片面側に配置された永久磁石31を用いて板面に対する直交方向の磁束を発する磁界Bを印加することが困難となる可能性がある。この場合、2個の磁石により磁界印加部9が構成されており、当該2個の磁石間に容器6が配置されているものであっても良い。
次に、図2及び図3を参照して、電磁波発生器100の動作について、空洞共振部2による増幅作用を中心に説明する。なお、図2において、空洞共振部2の符号、ダイオード3の符号及び導体棒4の符号は図示を省略している。また、空洞共振部2における各部位の符号も図示を省略している。
図2におけるI1は、電源11による供給電力に対応する電流(以下「電源電流」ということがある。)の向きを示している。図2におけるI2(I2AB及びI2BA)は、空洞共振部2に流れる電流、より具体的には個々の共振空洞22に流れる電流(以下「共振電流」ということがある。)の向きを示している。図2におけるI3(I3A及びI3B)は、個々のダイオード3に流れる電流(以下「通電電流」ということがある。)の向きを示している。以下、図2における紙面時計回り方向を単に「時計回り方向」といい、図2における紙面反時計回り方向を単に「反時計回り方向」という。
始動用電磁波発生器12が始動用の電磁波wを出力することにより、当該出力された電磁波wに対応する電流が空洞共振部2に供給される。ここで、上記のとおり、個々の共振空洞22はLC共振回路の機能を果たすものである。仮に空洞共振部2に磁界Bが印加されていない場合、個々の共振空洞22の壁面部24に沿うようにして、各共振周期のうちの前半周期(以下「第1半周期」という。)にて第2電極25Bから第1電極25Aに向かう電流I2BAが流れるとともに、各共振周期のうちの後半周期(以下「第2半周期」という。)にて第1電極25Aから第2電極25Bに向かう電流I2ABが流れる状態となる。すなわち、個々の共振空洞22のそれぞれの壁面部24においては、壁面部24に沿う時計回り方向の電流I2と、反時計回り方向の電流I2とが、同じ壁面部24に交互に流れる状態となる。
これに対して、磁界B(紙面においては裏側から表面方向に向かう磁束を発する磁界)が印加されていることにより、空洞共振部2における導体内を移動する電子に反時計回り方向の力Fが加わる。これにより、電子の軌道Tが反時計回り方向に曲げられることにより、電流I2は時計回り方向の電流I2BA,I2ABが多く流れるようになる。この結果、図2Aに示す第1半周期においては個々の第1共振空洞22Aの壁面部24に沿う時計回り方向の電流I2BAが流れるとともに、図2Bに示す第2半周期においては個々の第2共振空洞22Bの壁面部24に沿う時計回り方向の電流I2ABが流れる状態となる。すなわち、図2Aに示す時計回り方向の電流I2BAと図2Bに示す時計回り方向の電流I2ABとが交互に流れる状態であって、反時計回り方向の電流I2は流れない状態となる。
また、電源11が供給する電磁波生成用の電源電流がダイオード3を介して空洞共振部2に供給される。この電源電流も上記のように振る舞う(すなわち、空洞共振部2の導体内を移動する電源電流の電子にも磁界Bによって、反時計回り方向の力Fが加わり、電源電流は個々の共振空洞22の壁面部24に沿うように偏って流れる)ため、第1と第2のそれぞれの半周期において、電源電流が共振電流と同じ壁面部24に同じ方向に流れる。共振電流と同じタイミングで同じ方向に電源電流が流れることによって、壁面部24に流れる共振電流に電源電流が加算される。
第1半周期においては、共振電流に電源電流を加算してなる電流に対応する磁気エネルギーが個々の第1共振空洞22Aに蓄積されて、次いで、共振動作によって当該蓄積された磁気エネルギーが電荷エネルギーに変換される。このときの電源電流は第1ダイオード3Aに電流I3Aとなって流れる。続く第2半周期においては、当該変換された電荷エネルギーが共振動作によって個々の第2共振空洞22Bに流出することにより、個々の第2共振空洞22Bに共振電流が流れる。この共振電流に電源電流が更に加算されることにより、前回蓄積された磁気エネルギーよりも大きい磁気エネルギーが個々の第2共振空洞22Bに蓄積されて、次いで、共振動作によって当該蓄積された大きな磁気エネルギーが次の電荷エネルギーに変換される。このときの電源電流は第2ダイオード3Bに電流I3Bとなって流れる。以後また第1半周期の動作に至り上記が繰り返され、共振電流に電源電流が加算される毎に個々の共振空洞22に蓄積される磁気エネルギーが大きくなり、増幅作用が生ずる。
ここで、電極25の先端部の挙動について説明を加える。電流I2BAと電流I2ABが交互に流れて振動しているときには、個々の電極25の電位も振動する。すなわち、第1電極25Aの電位が第2電極25Bの電位に比して高い状態と第2電極25Bの電位が第1電極25Aの電位に比して高い状態とが交互に繰り返される。換言すれば、第2電極25Bの電位が第1電極25Aの電位に比して低い状態と第1電極25Aの電位が第2電極25Bの電位に比して低い状態とが交互に繰り返される。
これに対して、上記のとおり、N個の電極25の先端部にN個のダイオード3のアノードが電気的にそれぞれ接続されている。ダイオード3が有する電圧―電流特性により、第1電極25Aの電位が第2電極25Bの電位に比して高い状態においては、第1ダイオード3Aに電流I3Aが流れる一方、第2ダイオード3Bには電流I3B流がほとんど流れない(図2A参照)。また、第2電極25Bの電位が第1電極25Aの電位に比して高い状態においては、第2ダイオード3Bに電流I3Bが流れる一方、第1ダイオード3Aには電流I3Aがほとんど流れない(図2B参照)。
したがって、N個の電極25のうちの電源電流の加算対象となる電極25(すなわち各時刻における高電位側の電極25)に流れる電源電流を増長することができ、かつ、残余の電極25(すなわち各時刻における低電位側の電極25)に流れる電源電流を抑制することができる。このように、N個の電極25のそれぞれの先端部にN個のダイオード3が設けられていることにより、それぞれの電極25の電位によって通電電流を振り分けることができ、電源電流を適切に共振空洞22さらには空洞共振部2に供給することができる。
以上の動作により、始動用電磁波発生器12が注入した始動用の電磁波wをきっかけにして、自ら発した電磁波によって個々の共振空洞22における発振状態(すなわち個々のLC共振回路における発振状態)が維持されつつ、始動用の電磁波wに比して大きい電磁波Wが出力される。なお、共振空洞22を円環状に配置した構造によって自らの出力が周回して入力されるため、発振状態が維持できる状態(発振状態)に至れば、始動用の電磁波wの注入を停止しても構わない。
図3Aは、始動用の電磁波wに対応する電圧の値(図中I)及び始動用の電磁波wに対応する電流の値(図中II)を示すタイミング図である。
図3Bは、個々の第1電極25Aにおける電位の値(図中III)、個々の第1電極25Aにおける電流の値(図中IV)及び個々の第1ダイオード3Aにおけるバイアス電圧の値(図中V)を示すタイミング図である。なお、個々の第1電極25Aにおける電位の値(図中III)は、個々の第1ダイオード3Aにおける印加電圧の値に対応するものである。個々の第1電極25Aにおける電流の値(図中IV)は、個々の第1ダイオード3Aにおける通電電流の値に対応するものである。
図3Cは、個々の第2電極25Bにおける電位の値(図中VI)、個々の第2電極25Bにおける電流の値(図中VII)及び個々の第2ダイオード3Bにおけるバイアス電圧の値(図中VIII)を示すタイミング図である。なお、個々の第2電極25Bにおける電位の値(図中VI)は、個々の第2ダイオード3Bにおける印加電圧の値に対応するものである。個々の第2電極25Bにおける電流の値(図中VII)は、個々の第2ダイオード3Bにおける通電電流の値に対応するものである。
図3Dは、第1電極25Aから第2電極25Bに流れる電流I2ABの値(図中IX)を示すタイミング図である。図3Eは、第2電極25Bから第1電極25Aに流れる電流I2BAの値(図中X)を示すタイミング図である。図3Fは、第1電極25Aと第2電極25B間の電位差の値(図中XI)を示すタイミング図である。
図3Gは、電源電流の値(図中XII)及び電源電流の平均値(図中XIII)を示すタイミング図である。なお、電源電流の値(図中XII)は、N個のダイオード3における通電電流の合計値に対応するものである。電源電流の平均値(図中XIII)は、N個のダイオード3における通電電流の合計値の平均値に対応するものである。
以下、N個のダイオード3における通電電流の合計値の平均値を「合計平均通電電流」ということがある。また、個々のダイオード3における通電電流の平均値を「個別平均通電電流」ということがある。
ここで、図3B及び図3Cに示す如く、空洞共振部2の増幅作用により個々の電極25における電位の振幅が大きくなるにつれて、個々のダイオード3におけるバイアス電圧が次第に低下している。すなわち、個々のダイオード3における印加電圧の振幅が大きくなるにつれて、個々のダイオード3におけるバイアス電圧が順バイアス側から逆バイアス側に次第に変化している。これにより、時刻tにて、個々のダイオード3におけるバイアス電圧の極性が正電圧から負電圧に反転している。すなわち、時刻tにて、個々のダイオード3が順バイアス状態から逆バイアス状態に切り替えられている。
この結果、図3Gに示す如く、電源電流の振幅が次第に大きくなるにもかかわらず、合計平均通電電流が一定値に保たれている。これは、電源11が、個々のダイオード3に対するバイアス電圧を変化させることにより合計平均通電電流を一定値に保つ制御(以下「定電流制御」という。)を実行しているためである。
次に、図4及び図5を参照して、電磁波発生器100の動作について、電源11による定電流制御を中心に説明する。
図4Aは、ダイオード3が有する電圧―電流特性を示している。通常、ダイオード3は、図4Aに示す如く非線形な電圧―電流特性を有している。これにより、ダイオード3は、印加電圧が所定の順方向電圧VF(例えば0.7ボルト)以上の状態においては大きな電流が流れる一方、印加電圧が順方向電圧VF未満の状態においては電流がほとんど流れない。
これに対して、図4Bに示す如く、空洞共振部2の増幅作用により個々のダイオード3における印加電圧(図中XXI)の振幅が大きくなるにつれて、個々のダイオード3におけるバイアス電圧(図中XXII)を順バイアス側から逆バイアス側に次第に変化させる。より具体的には、印加電圧の波形における頭頂部が順方向電圧VFを超える状態となり、かつ、当該波形における残余の部位が順方向電圧VFを下回る状態となるように、バイアス電圧を次第に低下させる。なお、印加電圧の振幅が所定値を超えたタイミングにて、すなわち図4Bにおける(G)と(H)間のタイミングにて、バイアス電圧の極性が正電圧から負電圧に反転する。
これにより、図4Cに示す如く、空洞共振部2の増幅作用によりダイオード3における通電電流(図中XXIII)の振幅が次第に大きくなるにもかかわらず、個別平均通電電流(図中XXIV)がIFと同等の一定値(例えば0.1アンペア)に保たれる。この結果、合計平均通電電流(不図示)も一定値(例えばIFに対するN倍の値)に保たれる。
かかる定電流制御は、例えば、図5に示す回路により実現される。図5に示す回路は、電磁波発生部10の等価回路と電源11の内部構成を示す回路とを組み合わせてなるものであり、後述するフィルタ51を設けている。
なお、電磁波発生部10の等価回路における複数個の結節点Pは、複数個の電極25にそれぞれ対応するものである。また、電磁波発生部10の等価回路における複数個のF’の各々は、図2に示す磁界中の移動電子が受ける力Fによる整流作用に対応する回路要素、すなわち図2における時計回り方向の電流I2BA,I2ABを多く流す作用に対応する回路要素である。これらの回路要素F’により、図5Aに示す如く個々の第1ダイオード3Aに電流I3Aが流れる状態と、図5Bに示す如く個々の第2ダイオード3Bに電流I3Bが流れる状態とが交互に繰り返される。
図5に示す例において、電源11はフィルタ51、定電流制御部52、電源53及び電源54を有している。フィルタ51は、電源電流I1の平均値、すなわち合計平均通電電流を得るためのフィルタであり、キャパシタ55及びコイル56により構成されている。定電流制御部52は、電流検出用の抵抗器57、基準電圧生成用の電源58及び誤差増幅器59により構成されており、フィードバック制御による定電流制御を実現するものである。ここで、正電圧生成用の電源53及び負電圧生成用の電源54が設けられていることにより、バイアス電圧の極性の反転に対応することができる。なお、誤差増幅器59は単純なアナログ出力のものであっても良く、又は大電力の出力も可能なPWM式等のデジタル出力のものであっても良い。
次に、図6〜図9を参照して、N個のダイオード3の接続状態に係る変形例について説明する。
まず、図6に示す如く、N個の電極25の先端部にN個のダイオード3のカソードが電気的にそれぞれ接続されており、かつ、N個のダイオード3のアノードが導体棒4及び基板5を介して電源11と電気的に共通接続されている図1及び図2のダイオード3の極性を反転したものであっても良い。図7に示す回路は、この場合における、電磁波発生部10の等価回路と電源11の内部構成を示す回路とを組み合わせてなるもので、図5のダイオード3の極性と基準電圧生成用の電源58の極性を反転したものある。
または、図8に示す如く、N個の電極25の先端部にN個のダイオード3のアノードが電気的にそれぞれ接続され、N個のダイオード3のカソードが基板5を介して電源11と電気的に共通接続されているものであっても良い。この場合、図1に示す導体棒4は不要である。この場合における回路図は図5に示すものと同様であるため、図示を省略する。
または、図9に示す如く、N個の電極25の先端部にN個のダイオード3のカソードが電気的にそれぞれ接続され、N個のダイオード3のアノードが基板5を介して電源11と電気的に共通接続されている図8のダイオード3の極性を反転したものであっても良い。この場合も、図1に示す導体棒4は不要である。この場合における回路図は図7に示すものと同様であるため、図示を省略する。
すなわち、個々のダイオード3は、図1又は図6に示す如く、その通電方向が導体板1の板面に沿う向き(より具体的には導体棒4に対する放射方向に沿う向き)に設けられているものであっても良い。または、個々のダイオード3は、図8又は図9に示す如く、その通電方向が導体板1の板面に対する直交方向に沿う向きに設けられているものであっても良い。後者の場合、ICの製造技術を用いてダイオード3を生成した半導体のウェハ上に、一般的なICにおいては配線又は電極となる金属箔を導体板1として空洞共振部2を形成することができるため、ダイオード3さらには電磁波発生部10の製造を容易にすることができる。なお、一般的なICの構成ならば、ダイオード3をマウンティングするリードフレームが、基板5に対応する。
次に、図10〜図12を参照して、電磁波出力部13に係る変形例について説明する。
まず、図10に示す如く、N個の電極25のうちのいずれか1個の電極25の先端部に長手方向が導体板1の板面に沿う方向に向けられた突起42が設けられており、この突起42により電磁波出力部13が構成されているものであっても良い。突起42は、導体板1と一体に形成されたものでよく、突起42の突起長L2は、波長λに対する1/4倍の値に設定されている。これにより、突起42が電磁波W用の出力アンテナの機能を果たすものである。
または、図11に示す如く、N個の電極25のうちのいずれか1個の電極25の先端部に長手方向が導体板1に対する直交方向に向けられた突起43が設けられており、この突起43により電磁波出力部13が構成されているものであっても良い。突起43は、導体板1と一体に形成されたものでよく、突起43の突起長L3は、波長λに対する1/4倍の値に設定されている。これにより、突起43が電磁波W用の出力アンテナの機能を果たすものである。
または、図12に示す如く、N個の共振空洞22のうちのいずれか1個の共振空洞22に代えて両隣の共振空洞22に隣接する溝44が導体板1に穿たれており、溝44の拡幅部45により電磁波出力部13が構成されているものであっても良い。拡幅部45の拡幅幅L4は、波長λに対する1/2倍の値に設定されている。溝44の壁面部のうち、電極25の先端部から拡幅部45の最大拡幅部までの部位の沿面長L5は、波長λに対するn/2倍の値に設定されている(nは1以上の任意の整数)。溝44の壁面部の全体に亘る沿面長L6は、波長λに対する(n´+1/2)倍の値に設定されている(n´は1以上の任意の整数)。これにより、溝44が1個の共振空洞22の機能を果たすものであり、かつ、拡幅部45が電磁波W用の出力アンテナの機能を果たすものである。
なお、図11に示す例においては、電磁波Wが突起43を中心軸とした全方向に、突起43の長手方向(すなわちL3方向)に対する直交面に沿う方向に電磁波Wを集中する指向性を有するものとなる。また、図10に示す例においては、電磁波Wが突起42の長手方向(すなわちL2方向)に対する直交面に沿う方向に電磁波Wを集中する指向性を有するものとなる。図12に示す例においても、電磁波Wが拡幅部45の長手方向(すなわちL4方向)に対する直交面に沿う方向に電磁波Wを集中する指向性を有するものとなる。このため、導体板1の板面に沿う方向に電磁波Wを出力する場合は、図11に示す突起43を用いる構成が好適である。これに対して、導体板1の板面の垂直方向に電磁波Wを出力する場合は、図10に示す突起42又は図12に示す拡幅部45を用いる構成が好適である。例えば、電磁波発生器100が電磁波Wとして光を出力するもので、いわゆる「ランバーシアン配光」の光を出力する場合に好適である。
ところで、仮に、電磁波発生器100が電磁波出力部13を有しないものである場合、以下のように電磁波Wの出力が困難となる。すなわち、上記のとおり、個々の電極25における電位は時間に対して振動するものである。しかしながら、図3B及び図3Cに示す如く、各時刻において、バイアス電圧に対する第1電極25Aの電位の正負とバイアス電圧に対する第2電極25Bの電位の正負とは互いに逆の関係にある。また、上記のとおり、空洞共振部2の大きさが微小であるため、個々の開口部23の開口幅、すなわち互いに隣接する各2個の電極25間の距離も微小なものである。この結果、互いに隣接する各2個の電極25間の電気的な相補性及び電気的な干渉により、巨視的には全ての電極25が同電位であるかのように観測される。すなわち、個々の電極25における電位が振動していないかのように観測される。このため、電磁波出力部13を設けなければ、空洞共振部2内にて生成された電磁波Wが空洞共振部2外に出力され難い状態となる。
なお、N個の電極25のうちのいずれか2個以上の電極25の各々の先端部に突起42が設けられているものであっても良い。すなわち、2個以上の突起42により電磁波出力部13が構成されているものであっても良い。同様に、N個の電極25のうちのいずれか2個以上の電極25の各々の先端部に突起43が設けられているものであっても良い。すなわち、2個以上の突起43により電磁波出力部13が構成されているものであっても良い。また、N個の共振空洞22のうちのいずれか2個以上の共振空洞22の各々に代えて溝44が設けられており、これらの溝44の各々が拡幅部45を有するものであっても良い。すなわち、2個以上の拡幅部45により電磁波出力部13が構成されているものであっても良い。
また、電磁波出力部13が伝送線路41により構成されている場合、電磁波出力部13が容器6外にあり、電磁波出力部13が電磁波発生部10に含まれないものであった。これに対して、電磁波出力部13が突起42、突起43又は拡幅部45により構成されている場合、電磁波出力部13が容器6内にあり、電磁波出力部13が電磁波発生部10に含まれるものである。すなわち、電磁波出力部13は電磁波発生部10に含まれるものであっても良く、又は含まれないものであっても良い。
次に、図13〜図14を参照して、磁界印加部9等に係る変形例について説明する。
図13に示す如く、磁界印加部9は、永久磁石32と、永久磁石32によって発生する磁束を空洞共振部2に集中させる磁束集中部材33とを有するものであっても良い。図13に示す例において、磁束集中部材33は略円錐台形状のヨーク、すなわち磁気レンズにより構成されている。磁束集中部材33を設けることにより、単位面積当たりの磁力が弱い安価な永久磁石32を用いて、増幅作用を生じさせるのに十分な強度を有する磁界Bを空洞共振部2に印加することがきる。
なお、そもそも、実施の形態1の電磁波発生器100は二極真空管構造を廃止したものである。そして、電源電流の制御を定電流制御部52を有した電源11に委ねたことで、従来のマグネトロンが採用していた陽極と陰極間の空間にて電子を周回させること、すなわち、いわゆる「電子雲」を発生させることで実現していた電流制御に必要な強力な磁界が不要である。このため、磁界Bを増幅作用に限定して使用する電磁波発生器100には、従来のマグネトロンに比して弱い磁界Bを発生する磁界印加部9を使用することができる。
または、図14に示す如く、磁界印加部9は、永久磁石32に代えて電磁石34を有するものであっても良い。図14に示す例において、電磁石34は略円柱状のヨークに電線を巻回してなる構造を有している。当該電線は、電源11と導体板1間の接続電線、又は電源11と基板5間の接続電線を用いたものであり、電源電流が自ら発生する磁界を増幅用の磁界Bとして使用するものである。
また、図13に示す如く、電磁波発生器100は、電磁波出力部13により出力された電磁波Wを収束させる電磁波収束部14を有するものであっても良い。図13に示す例において、電磁波収束部14は凸レンズ状の誘電体レンズ61により構成されている。
また、電磁波発生器100は、電磁波出力部13により出力された電磁波Wを拡散させる電磁波拡散部(不図示)を有するものであっても良い。電磁波拡散部は、例えば、凹レンズ状の誘電体レンズ(不図示)により構成されている。
なお、図13に示す例は、電磁波出力部13が容器6に含まれる構成の電磁波発生部10を応用したもので、容器6内の各部材は図示を省略しており、電源11及び始動用電磁波発生器12も図示を省略している。
また、図14に示す例も、電磁波出力部13が容器6に含まれる構成の電磁波発生部10を応用したもので、容器6内の各部材は図示を省略しており、始動用電磁波発生器12も図示を省略している。
次に、空洞共振部2に係る変形例について説明する。
まず、空洞共振部2における共振空洞22の個数は2個以上であれば良く、6個に限定されるものではない。共振空洞22の個数を増やすことにより、空洞共振部2による増幅作用を強めることができ、より強い電磁波Wを発生させることができるため、必要に応じて共振空洞22の個数を設定すればよい。
また、個々の共振空洞22の形状は略円形状に限定されるものではない。個々の共振空洞22は略楕円形状であっても良く、又は略多角形状であっても良い。
次に、電磁波発生器100に係るそのほかの変形例について説明する。
電磁波発生器100は、始動用電磁波発生器12を有しないものであっても良い。この場合であっても、自然界における微小な電磁気的な振動、すなわち雑音レベルの電磁気的な振動が始動用の電磁波wと同様の機能を果たすことにより、図2及び図3を参照して説明したものと同様の原理により空洞共振部2を発振させることができる。ただし、サイズ又はコストに係る問題等が無ければ、電磁波発生器100の始動の高速化及び安定化を図る観点から、始動用電磁波発生器12を設けるのがより好適である。
以上のように、実施の形態1の電磁波発生器100は、導体板1に設けたN個の共振空洞22を有する空洞共振部2と、電磁波生成用の電力を供給する電源11と、電源11による電源電力を空洞共振部2に供給するダイオード3であって、アノード又はカソードのうちのいずれか一方がN個の空洞共振部2におけるそれぞれの電極25の先端部と電気的に接続され、アノード又はカソードのうちのいずれか他方が電源11と電気的に共通接続されているN個のダイオード3と、空洞共振部2に磁界Bを印加する磁界印加部9と、空洞共振部2により生成された電磁波Wを出力する電磁波出力部13と、を備える。二極真空管構造の廃止により、従来のマグネトロンに比して小型の電磁波発生器100を実現することができる。また、フィラメント加熱用の電源、すなわち電源11と異なる第2の電源を不要とすることができる。また、真空容器を不要とすることができる。また、個々の共振空洞22の寸法を適宜設定することで、任意の周波数fを有する電磁波Wを発生させることができる。特に、テラヘルツ領域内の周波数fを有する電磁波Wを発生させることができる。
また、ダイオード3は、空洞共振部2を有する導体板1の板面に対する直交方向に電流を流す向きに設けられている。これにより、ICの製造技術を用いてダイオード3の上に金属箔による導体板1及び空洞共振部2を形成することができるため、ダイオード3さらには電磁波発生部10の製造を容易にすることができる。なお、この「直交方向」の用語の意義は完全に直交した方向に限定されるものではなく、略直交した方向も包含するものである。
また、ダイオード3は、PINダイオードにより構成されている。一般に、PINダイオードは高い応答速度を有している。このため、高い周波数fを有する電磁波Wを発生させる場合、PINダイオードを用いるのが好適である。換言すれば、PINダイオードを用いることにより、高い周波数fに対応した電磁波発生器100を実現することができる。
また、電源11は、N個のダイオード3に流れる通電電流の合計値の平均値(すなわち合計平均通電電流)を一定値に保つ制御を実行する定電流制御部52を有する。これにより、ダイオード3が有する電圧―電流特性に応じて、空洞共振部2への通電電流の平均値(すなわち個別平均通電電流)を適切な値に保つことができる。なお、この「一定値」の用語の意義は完全に一定な値に限定されるものではなく、略一定な値も包含するものである。
また、定電流制御部52は、ダイオード3に対するバイアス電圧を変化させることにより平均値(すなわち合計平均通電電流)を一定値に保つ制御を実行する。図4及び図5を参照して説明したように、ダイオード3に対するバイアス電圧を変化させることにより定電流制御を実現することができる。
また、電源11は、ダイオード3に印加するバイアス電圧に応じて出力電圧の極性を反転させる。図5に例示する回路により、すなわち正電圧生成用の電源53及び負電圧生成用の電源54を用いることにより、バイアス電圧の極性の反転に対応することができる。
また、共振空洞22の大きさは、テラヘルツ領域内の周波数fに応じた値に設定されている。これにより、テラヘルツ領域内の周波数f、すなわち1〜1000THzの周波数領域内の周波数fを有する電磁波Wを発生させることができる。
また、電磁波発生器100は、空洞共振部2に始動用の電磁波wを供給する始動用電磁波発生器12を備える。これにより、電磁波発生器100の始動の高速化及び安定化を図ることができる。
また、電磁波出力部13は、空洞共振部2に設けられた突起42又は突起43により構成されている。突起42又は突起43が電磁波W用の出力アンテナの機能を果たすことにより、電磁波出力部13を実現することができる。
また、電磁波出力部13は、空洞共振部2に隣接した溝44の拡幅部45により構成されている。拡幅部45が電磁波W用の出力アンテナの機能を果たすことにより、電磁波出力部13を実現することができる。
また、磁界印加部9は、空洞共振部2を有する導体板1の片面側に配置されている。空洞共振部2の大きさが微小である場合、導体板1の片面側に配置された磁石を用いて、板面に対する直交方向の磁束を生じる磁界Bを印加することができる。これにより、略筒状の陽極の両端側にそれぞれ磁石が設けられている従来のマグネトロンに比して、電磁波発生器100の更なる小型化を図ることができる。
また、磁界印加部9は、磁束集中部材33を有する。これにより、単位面積当たりの磁力が弱い安価な磁石を用いて、増幅作用を生じさせるのに十分な強度を有する磁界Bを空洞共振部2に印加することがきる。
実施の形態2.
図15Aは、実施の形態2に係る電磁波発生器の要部を断面から見た状態を示す説明図である。図15Bは、実施の形態2に係る電磁波発生器における複数個の空洞共振部を含む部位を正面から見た状態を示す説明図である。図15を参照して、実施の形態2の電磁波発生器100aについて説明する。なお、図15において、図1に示す部材等と同様の部材等には同一符号を付して説明を省略する。
図15に示す如く、2枚の導体板1の各々に空洞共振部2が設けられている。すなわち、電磁波発生器100aは2個の空洞共振部2を有するものである。個々の空洞共振部2は、実施の形態1にて説明したものと同様の構造を有している。このため、個々の空洞共振部2についての詳細な説明は省略する。図15において、個々の空洞共振部2における各部位の符号は図示を省略している。
一方の空洞共振部2におけるN個の電極25の先端部にはN個のダイオード3のアノードが電気的にそれぞれ接続されており、これらのダイオード3のカソードは基板5と電気的に共通接続されている。また、他方の空洞共振部2におけるN個の電極25の先端部には他のN個のダイオード3のカソードが電気的にそれぞれ接続されており、これらのダイオード3のアノードは基板5と電気的に共通接続されている。電源11における一方の端子は一方の導体板1と電気的に接続されており、電源11における他方の端子は他方の導体板1と電気的に接続されている。
すなわち、電磁波発生器100aは、電気的には、実施の形態1にて説明したものと同様の増幅用の構造を2個直列に接続してなるものである。空洞共振部2の個数を増やすことにより、電磁波Wが生成される部位の面積を増やすことができるため、より強い電磁波Wを発生させることができる。また、電磁波Wが可視光である場合、より明るい光源を実現することができる。
図15に示す例において、電磁波出力部13は、個々の空洞共振部2に設けられた突起42により構成されている。このため、電磁波出力部13は電磁波発生部10aに含まれている。また、図15において、始動用電磁波発生器12は図示を省略している。
このようにして、電磁波発生器100aの要部が構成されている。
なお、2個の空洞共振部2における共振周波数fは互いに異なるものであっても良い。すなわち、一方の空洞共振部2における個々の共振空洞22の寸法(より具体的には沿面長L1)と他方の空洞共振部2における個々の共振空洞22の寸法(より具体的には沿面長L1)とが互いに異なるものであっても良い。これにより、互いに異なる周波数fを有する電磁波Wを同時に発生させることができる。
また、空洞共振部2の個数は2個に限定されるものではなく、3個以上であっても良い。すなわち、3枚以上の導体板1の各々に空洞共振部2が設けられているものであっても良い。
例えば、3枚の導体板1の各々に空洞共振部2が設けられているものであっても良い。この場合において、第1の空洞共振部2における個々の共振空洞22の寸法が赤色の可視光の波長λに応じた値に設定されており、かつ、第2の空洞共振部2における個々の共振空洞22の寸法が緑色の可視光の波長λに応じた値に設定されており、かつ、第3の空洞共振部2における個々の共振空洞22の寸法が青色の可視光の波長λに応じた値に設定されているものであっても良い。これにより、白色光の光源を実現することができる。
そのほか、電磁波発生器100aは、実施の形態1にて説明したものと同様の種々の変形例を採用することができる。
以上のように、実施の形態2の電磁波発生器100aは、空洞共振部2を複数個備える。空洞共振部2の個数を増やすことにより、電磁波Wが生成される部位の面積を増やすことができるため、より強い電磁波Wを発生させることができる。
また、複数個の空洞共振部2は、共振周波数fが互いに異なる空洞共振部2を含むものである。これにより、互いに異なる周波数fを有する電磁波Wを同時に発生させることができる。また、白色光の光源を実現することもできる。
実施の形態3.
図16Aは、実施の形態3に係る電磁波発生器の要部を断面から見た状態を示す説明図である。図16Bは、実施の形態3に係る電磁波発生器における複数個の空洞共振部を含む部位を正面から見た状態を示す説明図である。図17Aは、実施の形態3に係る電磁波発生器における個々の空洞共振部を含む部位を断面から見た状態を示す説明図である。図17Bは、実施の形態3に係る電磁波発生器における個々の空洞共振部を含む部位を正面から見た状態を示す説明図である。図16及び図17を参照して、実施の形態3の電磁波発生器100bについて説明する。なお、図16及び図17において、図1に示す部材等と同様の部材等には同一符号を付して説明を省略する。
図16に示す如く、導体板1に複数個(M個)の略円形状の貫通孔71が穿たれている。ここで、Mは2以上の任意の整数であり、図16に示す例においてはM=5である。
導体板1における個々の貫通孔71を含む部位には、抵抗層72を介して導体層73が積層されている。個々の抵抗層72には略円形状の貫通孔74が設けられており、個々の導体層73には空洞共振部2が設けられている。これにより、個々の空洞共振部2における共振空洞22は、M個の抵抗層72のうちの対応する抵抗層72を介して、導体板1に接続している。
すなわち、電磁波発生器100bはM個の空洞共振部2を有するものである。個々の空洞共振部2は、実施の形態1にて説明したものと同様の構造を有している。このため、個々の空洞共振部2についての詳細な説明は省略する。図16及び図17において、個々の空洞共振部2における各部位の符号は図示を省略している。
個々の空洞共振部2はN個の電極25を有しており、当該N個の電極25の先端部にN個のダイオード3のアノードが電気的にそれぞれ接続されている。当該N個のダイオード3のカソードは、基板5と電気的に共通接続されている。電源11における一方の端子は導体板1と電気的に接続されており、電源11における他方の端子は基板5と電気的に接続されている。
すなわち、電磁波発生器100bは、電気的には、実施の形態1にて説明したものと同様の増幅用の構造をM個並列に接続してなるものである。空洞共振部2の個数を増やすことにより、電磁波Wが生成される部位の面積を増やすことができるため、より強い電磁波Wを発生させることができる。例えば、電磁波Wが光である場合、空洞共振部2を増加(発光面積を拡大)することにより、個々の空洞共振部2(単位面積当たり)の発光量が少なくても、それぞれの発光を合計した総発光量を増加することができ、より明るい光源を実現することができる。
また、上記のとおり、図16及び図17に示す例において、電磁波発生器100bは抵抗層72を有している。この抵抗層72は、M個の空洞共振部2のうちの一部の空洞共振部2に電源電流が集中するのを防ぐ機能を果たすものである。換言すれば、この抵抗層72は、個々の空洞共振部2に対する電源電流の供給を制限することにより、電源電流をM個の空洞共振部2に分散させる機能を果たすものである。以下、電磁波発生器100bにおいて当該機能を果たす部位を「電流制限部」という。
図16及び図17に示す例において、電磁波出力部13は、個々の空洞共振部2に設けられた突起42により構成されている。このため、電磁波出力部13は電磁波発生部10bに含まれている。また、図16及び図17において、始動用電磁波発生器12は図示を省略している。
このようにして、電磁波発生器100bの要部が構成されている。
なお、電流制限部は上記機能を果たすものであれば良く、図16及び図17に示す抵抗層72に限定されるものではない。
例えば、図18に示す如く、基板5に積層された抵抗層75により、すなわちダイオード3と基板5間に設けられた抵抗層75により電流制限部が構成されているものであっても良い。この場合、図16及び図17に示す抵抗層72は不要であるため、導体層73も不要である。すなわち、抵抗層72及び導体層73を除去して、図16及び図17のような構成においても図1のような導体板1に空洞共振部2が設けられているものであっても良い。
または、図19に示す如く、個々のダイオード3をPINダイオードにより構成することで、PINダイオードにおける抵抗成分が電流制限部の機能を果たすものであっても良い。具体的には、PINダイオードにおける真性半導体層(以下「I層」という。)が抵抗成分となって電流制限部の機能を果たす。
または、図20に示す如く、ICの製造技術を用いてN型半導体層(以下「N層」という。)81、I層82、及びI層の一部に設けたP型半導体層(以下「P層」という。)83から構成されたPINダイオードの上に、金属箔による導体層84が形成されており、導体層84(導体板1に相当)に空洞共振部2が設けられているものであっても良い。この場合において、ダイオード3における抵抗成分、すなわちPINダイオードにおけるI層82が電流制限部の機能を果たすものであっても良い。なお、一般的なICの構成であれば、導体層84となる金属箔は配線又は電極となるもので、基板5は半導体チップをマウンティングするリードフレームに相当する。また、図20に示す空洞部85、空洞共振部2、及び電磁波出力部13となる突起42は、例えば、エッチング加工又はFIB(Focused Ion Beam)加工によって形成されたものである。
または、図21に示す如く、ICの製造技術を用いてN層91、I層92、及びI層の全面に設けたP層93から構成されたPINダイオードの上に、絶縁層94及び金属箔による導体層95が形成されており、導体層95(導体板1に相当)に空洞共振部2が設けられているものであっても良い。なお、当該構成においては、共振空洞22の電極25の先端部をP層93に接続しながら、当該先端部を除く部位は絶縁層94によって絶縁されている。この場合においても、I層92が電流制御部の機能を果たす。なお、図21に示す空洞部96、空洞共振部2、及び電磁波出力部13となる突起42は、例えば、エッチング加工又はFIB加工によって形成されたものである。
なお、図20に示す例において、電磁波発生部10bにおいて空洞共振部2を形成する導体層84をM個に分割しても良く、又は分割せずに1個であっても良い。図21に示す例における導体層95についても同様である。
また、空洞共振部2の個数は2個以上であれば良く、5個に限定されるものではない。例えば、電磁波発生器100は2個の空洞共振部2を有するものであっても良く、又は3個の空洞共振部2を有するものであっても良く、さらには、6個以上の空洞共振部2を有するものであっても良い。
また、電磁波発生器100bにおける電磁波出力部13は、個々の空洞共振部2に設けられた突起42に限定されるものではない。例えば、個々の空洞共振部2に突起43が設けられており、これらの突起43により電磁波出力部13が構成されているものであっても良い。または、個々の空洞共振部2に隣接した溝44が設けられており、これらの溝44の拡幅部45により電磁波出力部13が構成されているものであっても良い。
ここで、突起43による電磁波出力部13が構成された空洞共振部2を複数個(M個)備える構成においては、空洞共振部2(詳細には電磁波出力部13となる突起43)を規則的に配置することにより、電磁波Wを出力する方向、すなわち指向性を任意に設定することができる。
例えば、図22に示す例においては、導体板1に2個の空洞共振部2が設けられており、当該2個の空洞共振部2の各々に突起43が設けられている。これらの2個の突起43は直線SL上に配置されており、当該2個の突起43間の間隔D1が波長λに対するn倍の値に設定されている。この場合、直線SLに沿う2方向及び直線SLと直交する2方向を含む合計4方向に対して電磁波Wを集中して出力する指向性を実現することができる。
また、図23に示す例においては、導体板1に2個の空洞共振部2が設けられており、当該2個の空洞共振部2の各々に突起43が設けられている。これらの2個の突起43は直線SL上に配置されており、当該2個の突起43間の間隔D2が波長λに対する(n−1/2)倍の値に設定されている(nは1以上の任意の整数)。この場合、直線SLに沿う2方向に対して電磁波Wを集中して出力する指向性を実現することができる。
また、図24に示す例においては、導体板1に3個の空洞共振部2が設けられており、当該3個の空洞共振部2の各々に突起43が設けられている。これらの3個の突起43は直線SL上に配置されており、当該3個の突起43のうちの互いに隣接する各2個の突起43間の間隔D3が波長λに対するn/2倍の値に設定されている。この場合、直線SLに沿う2方向に対して電磁波Wをさらに集中して出力する指向性を得ることができる。
このように、複数個の突起43が整列するように複数個の空洞共振部2を規則的に配置することにより、所定方向に対して電磁波Wを集中して出力する指向性を実現することができる。換言すれば、所定の指向性パターンを有する電磁波発生器100bを実現することができる。また、複数個の突起43が直線SL上に(すなわち一列に)整列する例において、空洞共振部2の個数をさらに増やすことにより、ビーム状の指向性を有する電磁波Wであって、いわゆる「コヒーレント」な電磁波Wを発生させることもできる。
なお、電磁波発生器100bは、実施の形態1にて説明したものと同様の種々の変形例を採用することができる。
また、電磁波発生器100bは、実施の形態2にて説明したものと同様の種々の変形例を採用することができる。例えば、複数個(M個)の空洞共振部2は、共振周波数fが互いに異なる空洞共振部2を含むものであっても良い。これにより、互いに異なる周波数fを有する電磁波Wを同時に発生させることができる。また、白色光の光源を実現することもできる。
以上のように、実施の形態3の電磁波発生器100bは、空洞共振部2を複数個(M個)備える。空洞共振部2の個数を増やすことにより、電磁波Wが生成される部位の面積を増やすことができるため、必要に応じてより強い電磁波Wを発生させることができる。
また、複数個(M個)の空洞共振部2は、共振周波数fが互いに異なる空洞共振部2を含むものである。これにより、互いに異なる周波数fを有する電磁波Wを同時に発生させることができる。また、白色光の光源を実現することもできる。
また、複数個(M個)の空洞共振部2が規則的に配置されている。これにより、所定の方向に電磁波Wを出力する指向性パターンを有する電磁波発生器100bを実現することができる。
なお、本願発明はその発明の範囲内において、各実施の形態の自由な組み合わせ、あるいは各実施の形態の任意の構成要素の変形、もしくは各実施の形態において任意の構成要素の省略が可能である。