JP6798809B2 - イオンミリング方法 - Google Patents

イオンミリング方法 Download PDF

Info

Publication number
JP6798809B2
JP6798809B2 JP2016143255A JP2016143255A JP6798809B2 JP 6798809 B2 JP6798809 B2 JP 6798809B2 JP 2016143255 A JP2016143255 A JP 2016143255A JP 2016143255 A JP2016143255 A JP 2016143255A JP 6798809 B2 JP6798809 B2 JP 6798809B2
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
observed
sample
ion milling
ions
composition
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Active
Application number
JP2016143255A
Other languages
English (en)
Other versions
JP2018014245A (ja
Inventor
健文 飯田
健文 飯田
智宏 河村
智宏 河村
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
Tokuyama Corp
Original Assignee
Tokuyama Corp
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by Tokuyama Corp filed Critical Tokuyama Corp
Priority to JP2016143255A priority Critical patent/JP6798809B2/ja
Publication of JP2018014245A publication Critical patent/JP2018014245A/ja
Application granted granted Critical
Publication of JP6798809B2 publication Critical patent/JP6798809B2/ja
Active legal-status Critical Current
Anticipated expiration legal-status Critical

Links

Landscapes

  • Sampling And Sample Adjustment (AREA)

Description

本発明は、イオンミリングする際の新規な方法に関する。
イオンミリングは、加速したイオンを被観察試料の表面に衝突させた際に、原子や分子が弾き飛ばされるスパッタリング現象を利用して該試料の表面等を加工するものである。イオンミリング法は、走査型電子顕微鏡(SEM)や透過型電子顕微鏡(TEM)による観察用の試料を作製するために、用いられている。
元来、イオンミリング装置は、半導体の配線不良の修繕目的に開発された装置であるため、一般的に被観察試料は、無機物質の高融点のものであった(例えば、特許文献1参照)。具体的には、特許文献1には、鋼板の断面をイオンミリングにより加工し、その断面を透過電子顕微鏡により観察している。
以上のような無機物質のイオンミリング加工においては、無機物質そのものを加工したり、樹脂で被覆した後、イオンミリング加工したりしている(例えば、特許文献1、2参照)。樹脂で被膜することにより、加工領域の特定が可能となる。加えて、金属粉末を含む樹脂で被覆した場合には、その後、電子顕微鏡で観察する際にチャージアップを低減できる(特許文献2参照)。
特開平10−281954号公報 特開2007−083262号公報
上記の通り、イオンミリング法は、被観察試料の表面を観察する際の加工方法として広く採用されている。
本発明者等は、イオンミリング法によって、様々な物質の断面・表面観察を試みた。そして、融点が比較的低い物質において、通常のイオンミリング法では、被観察試料自体が融解してしまい、試料そのものの断面・表面観察ができないという課題に直面した。特に、融点が300℃以下の有機物等においては、外部から間接的に冷却しても、そのもの自体が溶解してしまい、イオンミリング法で加工できないことが分かった。
通常、有機物の断面・表面観察を行う場合には、エポキシ樹脂等で包埋し、鏡面研磨法やミクロトーム法による切削等により直接断面を露出させる等の方法が使用されていた。これに対して、イオンミリング法は、イオンを衝突させて観察面を露出させるため、従来の方法よりも露出面を非常に平滑にすることができる。そのため、様々な被観察試料において、イオンミリング法で加工できれば、該被観察試料の状態をより詳細に観察できるようになる。そして、その被観察試料の製造方法、精製方法等の改良につなげることができると考えられる。
したがって、本発明の目的は、被観察試料をイオンミリングによって加工するに際し、該被観察試料自体を融解させず、良好な断面・表面を露出させる方法を提供することにある。
本発明者等は、上記課題を解決するため、鋭意検討を行った。そして、特定の熱伝導率を有する被膜を被観察試料の加工領域の少なくとも周囲に形成した後、イオンミリング加工することにより、高い平滑性を有する加工領域を露出できることを見出した。特に、該被膜を使用することにより、比較的融点の低いものであっても、被観察試料の加工ができることを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち、第1の本発明は、被観察試料にイオンを衝突させて、該被観察試料を削り取るイオンミリング方法において、該被観察試料のイオンを衝突させる領域の少なくとも周囲に、熱伝導率が0.2W/mK以上の被膜を形成した後、該領域にイオンを衝突させることを特徴とするイオンミリング方法である。以下、該被膜で被観察試料のイオンを衝突させる領域を含む範囲を被覆したものを「被観察体」とする場合もある。
第2の本発明は、前記第1の本発明の方法により、前記被観察試料のイオンを衝突させる領域の表面を露出させた後、該表面を電子顕微鏡で観察することを特徴とする被観察試料の観察方法である。
本発明によれば、電子顕微鏡観察用の被観察試料をイオンミリング法により加工することができる。そのため、特に、比較的融点が低い被観察試料、例えば、融点が300℃以下の材料を含む被観察試料であっても、該被観察試料そのもの、および融点の低い材料部分を融解させることなく、断面等の加工領域(観察面)を露出することができる。その結果、比較的融点が低い被観察試料の表面観察を詳細に行うことができ、該被観察試料の製造方法、精製方法等にフィードバックすることができる。
本発明において、被観察試料を被覆した際の被膜が形成された周囲を示す概略図である。イオンミリング加工領域(観察面)の平面図である(被観察試料が表面に露出された状態における平面図である。)。 本発明において、被観察試料を被覆する際の工程を示す概略図である。 実施例1の被観察試料の電子顕微鏡による2次電子像を示す。
本発明は、被観察試料にイオンを衝突させて、該被観察試料を削り取るイオンミリング方法において、該被観察試料のイオンを衝突させる領域の少なくとも周囲に、特定の熱伝導率を有する被膜を形成した後、該領域にイオンを衝突させることを特徴とするイオンミリング方法である。以下、順を追って説明する。
(被観察試料)
本発明において、被観察試料は、特に制限されるものではなく、無機物、有機物の何れであってもよい。中でも、本発明の方法によれば、比較的融点が低いものであっても、被観察試料自体を融解させずにイオンミリング法により加工できる。そのため、特に、融点が300℃以下の被観察試料の加工に適している。本発明の方法により適している被測定試料の融点は、100〜280℃であり、さらには、160〜260℃であることが好ましい。
本発明は、具体的には、高分子材料、有機化合物等の測定に好適であり、例えば、薬等の錠剤の観察を行うことも可能である。なお、融点は、示差走査熱量測定装置(リガク社製 DSC8230)の融解開始温度により測定した値である。測定条件を以下に示す。
・試料量:3mg。
・昇温速度:10℃/min。
・測定雰囲気:N2ガス。
・N2ガス流量:50cc/min。
(被観察試料を被覆する被膜)
本発明において、被観察試料を被覆する被膜は、熱伝導率が0.2W/mK以上でなければならない。該被膜の熱伝導率が、0.2W/mK未満の場合には、加工中に被観察試料が融解するため好ましくない。また、被膜の熱伝導率の上限は、特に制限されるものではなく、高ければ高い方が好ましいが、工業的な被膜の形成を考慮すると、窒化アルミニウム(AlN)フィラー単体の熱伝導率である200W/mKと考えられる。ただし、安定して被膜を形成することができ、かつ被観察試料を融解させず、より安定してイオンミリング法で加工するためには、該被膜の熱伝導率は、0.5〜10W/mKとすることが好ましい。
イオンミリング法による被観察試料の加工においては、該被観察試料にイオンを衝突させて、該被観察試料を削り取るため、局所的に発熱するものと考えられる。そのため、該被観察試料を外部から冷却したとしても、イオンが衝突した局所部分が溶解する場合があるものと考えられる。そのため、熱伝導率が0.2W/mK以上の被膜を、少なくともその周囲に形成することにより、生じた熱を効率よく被観察試料から逃がすことができると考えられる。その結果、被観察試料自体の融解を防ぐことができるものと考えられる。
なお、被膜の熱伝導率は、被観察試料を被覆した後、測定することもできるが、予め被覆に用いる材質の熱伝導率を測定しておけばよい。
(被膜を構成する材質)
本発明において、熱伝導率が0.2W/mK以上である被膜は、特に制限されるものではなく、公知の材質から形成することができる。中でも、被観察試料を被覆する工程を容易とするためには、樹脂と無機フィラーとを含有する組成物を硬化して得られる硬化体からなる被膜とすることが好ましい。
被膜を形成する組成物に含まれる樹脂としては、エポキシ系、アクリル系又はポリエステル系が挙げられる。なお、この樹脂は、モノマーの状態で被観察試料に塗布し、塗布したモノマーを硬化して樹脂とすることもできる。
樹脂の物性に制限はないが、被観察試料に対し、化学的に安定であるものが好ましい。さらに、モノマーを用いる場合、その硬化中の温度が被観察試料の融点を超えないものが好ましい。
被膜を形成する組成物に含まれる無機フィラーとしては、窒化アルミニウム(AlN)、窒化ホウ素(BN)、酸化アルミニウム(AlO)、および/又は二酸化ケイ素(SiO2)に代表されるセラミックス系のフィラーが挙げられる。中でも、これらのセラミックスの中でも、特に熱伝導率の大きいAlN、BNが好ましい。
無機フィラーの粒子径や形状に制限はないが、樹脂中フィラーの充填率を高めるため、平均粒子径はより小さい方が好ましい。具体的には、フィラーの個数平均粒子径(D50)は500μm以下であることが好ましく、さらに50μm以下が好ましい。中でも、樹脂へ充填性、取り扱い易さ、被覆の熱伝導率等を考慮すると、フィラーの個数分布における個数平均粒子径(D50)は、1〜50μmであることが好ましい。
被膜を形成するに際し、樹脂と無機フィラーとを含有する組成物を使用する場合、該組成物を硬化して得られる硬化体からなる被膜の熱伝導率が0.2W/mK以上となれば、それらの配合割合は特に制限されるものではない。配合割合は、無機フィラーの種類、粒子径、使用する樹脂の種類等に応じて適宜決定すればよい。ただし、被膜の形成のし易さを考慮すると、該組成物に含まれる無機フィラーは、該組成物の硬化体からなる被膜の全体積を100体積%としたとき、無機フィラーが5〜60体積%含まれるようにすることが好ましく、10〜40体積%含まれるようにすることがさらに好ましい。
なお、被膜(硬化体)の全体積は、被膜(硬化体)の全質量を、実施例で説明する方法で測定した被膜(硬化体)の密度で除することにより算出できる。さらに、含有される無機フィラーの体積は、樹脂の体積を計算し、被膜(硬化体)の該全体積と、計算して求めた樹脂の該体積との差から算出できる。
本発明においては、無機フィラーの配合割合は前記の範囲が好ましい。個数平均粒子径が1〜50μmの無機フィラーを使用した場合には、被膜(硬化体)の全質量を100質量%としたとき、無機フィラーが10〜80質量%含まれるようにすることが好ましく、20〜65質量%含まれるようにすることがさらに好ましい。この状態であれば、被膜(硬化体)中に無機フィラーが十分に分散していると考えられる。
(被観察体;被観察試料に被膜を形成する方法)
本発明において、被観察試料に被膜を形成する方法(被観察体を準備する方法)は、特に制限されるものではなく、例えば、前記組成物をスプレー法、浸漬法等により被観察試料に被覆すればよい。
被膜を形成する領域は、被観察試料のイオンを衝突させる領域の少なくとも周囲であればよい。イオンを衝突させる領域(イオンミリングによる加工領域・観察面)の平面図を図1に示した。図1を用いて説明すると、平面図において、該加工領域の周囲(被観察試料1の加工領域の側面)に被膜2が形成されるようにすればよい。ここで該加工領域は、被観察試料1と同じ部分となる。被膜の厚み(W)は、特に制限されるものではない。中でも、より安定して被観察試料をイオンミリング法で加工するためには、被観察試料を覆う最も薄い部分(図1の厚み部分参照 被膜の厚み(W))において、被膜の厚さが、0.1〜4.0mmであることが好ましく、さらには0.5〜3.0mmであることが好ましい。なお、被膜の厚みは、準備した被観察体10を切断して顕微鏡等で確認できる。
また、該被膜は、被観察試料の周囲に少なくとも形成されれば、イオンミリング加工領域の表面には、被膜が存在していても、存在していなくともよい。また、イオンミリングによる加工領域とは反対側の面にも、被膜が存在していても、存在していなくともよい。すなわち、イオンミリング加工領域の周囲に被膜が形成されていれば、該被観察試料の加工領域、及びその反対側の面は、露出されていてもよいし、被膜が形成されていてもよい。中でも、イオンミリング加工による時間を短時間にするためには、該被観察試料の加工領域は表面に露出するか、薄膜状態、例えば、1〜50μm程度の被膜が存在する状態であることが好ましい。また、安定してイオンミリング加工時の熱を放出させるためには、加工領域以外の面(被観察試料の側面、および加工領域の反対側の面)には被膜が存在することが好ましい。このような状態とするためには、前記被観察試料の全体を前記組成物で被覆して、該被観察試料の全面を被膜で被覆するようにする。次いで、イオンミリングで加工しようとする面を切断、研磨等の手段により、表面に露出させればよい。ただし、イオンミリングで加工する領域に、多少の被膜が存在してもよいため、精密に表面に露出させなくともよい。
本発明において、被観察試料に被膜を形成する場合の好適な方法を例示する(図2参照)。硬化前の樹脂成分、及び硬化剤(硬化前のエポキシ樹脂、及び硬化剤)を併せて樹脂4とする。この樹脂4と無機フィラー3とを混合し、真空脱気等を実施して、組成物5の状態を一定にする。別途、被観察試料1を準備する。そして、前記組成物5、および前記被観察試料1を一定の型に入れる。その際、前記被観察試料1のイオンを衝突させる領域の周囲を、組成物5が被覆するように両者を型の中に入れる。操作を容易にするためには、前記被観察試料1の全面(全体)を前記組成物5が被覆するように型中に配置することが好ましい。そして、前記組成物5を硬化させることにより、前記被観察試料1のイオンを衝突させる領域の少なくとも周囲に被膜2が形成された被観察体10を準備できる。そして、必要に応じて、イオンミリングで加工する領域を、切断、及び/または研磨等の手段により、表面に被観察試料1が露出するように処理することもできる。この表面に露出した被観察試料1の部分が、イオンミリングで加工する領域となればよい。
(イオンミリング法)
本発明において、イオンミリング法は、特定の被膜で被観察試料を被覆する以外は、公知の方法の、公知の条件を採用することができる。
本発明において、被観察試料のイオンを衝突させる領域の周囲に、特定の被膜を形成した後、得られた被観察体にイオンを衝突させる場合には、該被観察体の外周を−170〜−50℃で冷却することが好ましい。本発明者等の検討によれば、被観察試料のイオンを衝突させる領域の周囲に、熱伝導率が0.2W/mK以上の被膜を形成しなければ、外周をこの温度範囲で冷却してとしても、該被観察試料が溶解することが分かった。
本発明において、被観察試料の冷却法は、公知の方法を採用することが出来る。例として、被観察体と接するように配置される冷却ステージを、液体窒素のような冷却媒により冷却して、該冷却ステージを介して被観察体を冷却する方法が挙げられる。具体的には、IM4000(日立ハイテクノロジーズ社製イオンミリング装置)付属の冷却装置が挙げられる。本装置の冷却機構は、冷却源、熱伝導部、試料ステージ冷却部から構成される。冷却源は、断熱容器(デュワー)であり、内部に液体窒素を充填することで熱伝導部の冷却を行う。熱伝導部は金属のワイヤーであり、冷却源と試料ステージ冷却部を繋ぐことで、試料ステージ冷却部の熱を冷却源に輸送する。試料ステージ冷却部は金属製のブロックであり、試料ステージに密着させることで、試料ステージの熱を熱伝導部に輸送する。被観察体は試料ステージに接触しているため、この機構により被観察体の外周が冷却される。
本発明において、被観察試料に衝突させるイオンに制限はないが、被観察試料へのダメージが少ないアルゴン(Ar)イオンが好ましい。このようなイオンを、被観察体におけるイオンミリング加工領域に衝突させる。衝突のさせ方は、公知の方法を採用することができる。条件等は、前記被観察体の状態等に応じて適宜決定すればよい。
(観察方法)
本発明において、上記方法により、前記被観察試料のイオンを衝突させる領域の表面を露出させた後、該表面を電子顕微鏡で観察することができる。観察方法には制限がなく、公知の方法の、公知の条件を採用することが出来る。
以下、本発明を、実施例を用いて具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。先ず、被膜の熱伝導率の測定方法について説明する。
(熱伝導率の測定)
被膜の熱伝導率は、以下のように実施した。すなわち、被観察試料を被覆するものと同じ組成物を硬化して得られる硬化体(被膜と同じもの)を準備し、その硬化体の熱伝導率を測定した。
先ず、熱伝導率測定に用いる試料は、以下の手法で作製した。被膜を形成するものと同じ組成物(例えば、モノマーと硬化剤、及び無機フィラー(AlNやBN)の種類、配合割合が同じ組成物)を準備し、各成分を均一に混合した。次いで、混合した組成物を脱気した後に、円柱形の型(φ10×3mm)に充填し硬化させた(硬化体を作製した。)。
さらに、得られた硬化体を耐水研磨紙で研磨し、直径10mm、厚み0.5mmの円柱状に加工した。研磨では、400番の耐水研磨紙を用いて硬化体の厚みを0.5mmに加工した後に、1000番の耐水研磨紙を用いて硬化体の表面を平滑にした。
そして、得られた硬化体の熱拡散係数を、ai−phase Mobile 1u(アイフェイズ社製)を用いて、温度波分析法により測定した。また、該硬化体の密度を、VIBRA DMA−220H(新光電子社製)を用いて、試料の空中重量と水中重量の差から測定した。また、硬化体の比熱を、無機フィラーの充填率と比熱の検量線とから算出した。グラフの縦軸を比熱(J/gK;y)、横軸を充填率(wt%(質量%);x)とすると、検量線は、y=−0.62x+1.43(今回したAlNフィラー)及び、y=−0.69x+1.43(今回使用したBNフィラー)となる。
以上のように硬化体の熱拡散係数、密度、及び比熱を求め、それぞれの積(熱拡散係数×密度×比熱)を該硬化体の熱伝導率(被膜の熱伝導率)として求めた。
実施例1
(被観察体、及び硬化体の作製)
硬化体作製の概略を図2に示す。まず、液状のエポキシ樹脂2g、エポキシ樹脂を硬化するための液状の硬化剤1g(53型 ベルノックス社製;これらエポキシ樹脂と硬化剤とが樹脂4に相当する)、及び、市販のBN粉末(無機フィラー3;レーザー回折式粒度分布測定装置(HORIBA社製 LA950V2)を用いて湿式法により測定した個数平均粒子径(D50)10μm)1.8gを紙コップに入れ、混合した後に真空脱気した。こうすることにより、前記エポキシ樹脂、前記硬化剤、及び前記BN粉末を含む液状の組成物5(エポキシ樹脂、及び硬化剤の合計質量100質量部に対して、BNを60質量部含む組成物)を準備した。別に、市販の錠剤(カンデサルタンシレキセチル 融点163℃を約10質量%含む市販の錠剤)をカミソリで切断し、2mm角の断片の錠剤(被観察試料1)を作製した。
準備した被観察試料1と前記組成物5を型(5×10×4mm)に入れ、72時間放置して、エポキシ樹脂を硬化させることにより、前記被観察試料1のイオンを衝突させる領域の周囲を、該組成物5を硬化して得られる硬化体からなる被膜2で被覆した被観察試料1(被観察体10)を作製した。また、同じ組成物5からなる、熱伝導率測定用の円柱形の硬化体を別途作製した。被膜の全体積を100体積%とした時、BNの占める割合は28体積%であった。また、被膜の全質量を100質量%とした時、BNの占める割合は38質量%であった。
(硬化体(被膜)の熱伝導率測定)
円柱形の硬化体の熱拡散率と密度を前述の方法で測定したところ、それぞれ0.83×10−6/s、1.34g/cmであった。さらに、硬化体の充填率(38.7質量%)と検量線から、比熱は1.19J/gKと計算された。これらの数値の積から、硬化体、すなわち被膜の熱伝導率は1.32W/mKと算出された。
(被観察体のイオンミリング加工)
上記方法で準備した被観察体は、そのままイオンミリング加工で被観察試料の表面を露出することもできるが、先ず、あらかた研磨により、該被観察試料を露出させておくことが好ましい。実施例1においては、最初に、被観察体10の側面(5×4mmの面;この研磨側面がイオンミリングによる加工領域となる)を400番の耐水研磨紙で研磨し、該被観察体10内部の被観察試料1(錠剤断面)を表面に露出させた。次に、錠剤部分が露出した面(イオンミリング加工領域を含む面)を1000番の耐水研磨紙で研磨し、該面を平滑にした。錠剤部分が露出した部分がイオンミリングにより加工する領域となる。このとき、試料ステージ冷却部と接する面における被膜の厚み(最も薄くなる被膜の厚み)は、1mmであった。
最後に、イオンミリング加工領域を含む面を平滑にして得られた被観察体10をイオンミリング装置(日立ハイテクノロジーズ社製イオンミリング装置;IM4000)にセットし、装置の冷却源に液体窒素を充填した後に加工を行った。加工条件を以下に示す。1000番の耐水研磨紙で研磨したイオンミリング加工領域に以下の加工条件でイオンを衝突させて観察面を平滑にした。
加工条件
・加速電圧:3.5kV。
・放電電圧:1.5kV。
・Arガス流量:0.08cm/min。
・加工時間:3時間。
・熱伝導部の温度:−140℃以下。(被観察体(被膜を形成した被観察試料)の外周の温度)
(被観察体におけるイオンミリング加工領域(観察面)の観察)
加工後の被観察体の加工領域(観察面)を電子顕微鏡にて観察した。被観察体中の被観察試料(錠剤の断片)は溶解しておらず、内部構造が確認された(図3参照)。この錠剤の内部に含まれる物質の内、最も融点が低いものはカンデサルタンシレキセチルであり、その融点は163℃である。錠剤の内部に含まれる物質の内、カンデサルタンシレキセチル以外の成分は、これよりも融点が高い。中でも最も融点が高いものはデンプンであり、その融点は256℃である。したがって、本発明により、低融点物質(300℃以下の融点の有機化合物)の断面加工が可能であることが証明できた。
実施例2
(硬化体の作製)
市販のエポキシ樹脂2gと硬化剤1g(53型 ベルノックス社製)、及び市販のAlN粉末(レーザー回折式粒度分布測定装置(日機装社製 MICROTRAC−HRA)を用いて湿式法により測定した個数平均粒子径(D50)1μm)2.7gを使用して組成物とした以外は、被観察試料等は実施例1と同じにして、同様の操作を行い、被観察体、および硬化体を作製した。
(硬化体(被膜)の熱伝導率測定)
硬化体の熱拡散率は、0.46×10−6/s、密度は、1.59g/cmであった。さらに、硬化体の充填率(47.6wt%)と検量線から、比熱は1.10J/gKと計算された。これらの数値の積から、硬化体の熱伝導率は0.80W/mKと算出された。
(被観察体のイオンミリング加工)
実施例1と同様の条件、操作を行い、イオンミリング加工を行った。
(被観察体におけるイオンミリング加工領域(観察面)の観察)
加工後の硬化体断面を電子顕微鏡にて観察した。実施例1と同様に、硬化体中の製剤は溶解しておらず、製剤の内部構造が確認された。
比較例1
(本発明に該当しない被観察体、及び硬化体の作製)
エポキシ樹脂2gと硬化剤1g(53型 べルノックス社製)を紙コップに入れ、混合した後に真空脱気して混合液を準備した。次に、実施例1で用いた同じ試験片を混合液と共に実施例1と同じ型に入れ、72時間放置して硬化させ、被観察体、及び硬化体を作製した。
(硬化体の熱伝導率測定)
硬化体の熱拡散率は、0.10×10−6/s、密度は、1.16g/cmであった。さらに、硬化体の充填率(0.0wt%)と検量線から、比熱は1.43J/gKと計算された。これらの数値の積から、硬化体の熱伝導率は0.17W/mKと算出された。
(被観察体のイオンミリング加工)
実施例1と同様の条件で加工を行ったところ、加工中に被観察体中の錠剤(被観察試料)が融解し始めた。この錠剤に含まれる物質の内、最も融点が高いものはデンプンであり、その融点は256℃である。つまり、被覆の熱伝導率が0.17W/mK以下であった場合、融点が256℃以下の試料が融解してしまうことが分かった。
1 被観察試料
2 被膜
W 被膜の厚み
3 無機フィラー
4 樹脂
5 組成物
10 被観察体

Claims (3)

  1. 被観察試料にイオンを衝突させて、該被観察試料を削り取るイオンミリング方法において、
    該被観察試料のイオンを衝突させる領域の少なくとも周囲に、熱伝導率が0.2W/mK以上となる被膜を形成した後、該領域にイオンを衝突させることを特徴とするイオンミリング方法であって、
    前記被観察資料の融点が、300℃以下であり、
    前記被膜が、樹脂、並びに、窒化アルミニウム、及び窒化ホウ素から選ばれる無機フィラーを含み、
    前記被膜の最も薄い部分の厚さが、0.1〜4.0mmであり、
    前記被膜は、
    前記樹脂を形成する硬化前の樹脂成分および硬化剤と、前記無機フィラーとを混合して組成物とし、該被観察試料の全面を該組成物が被覆するように、該被観察試料と該組成物とを配置した後、該組成物を硬化することにより形成されたものである、
    イオンミリング方法。
  2. イオンを衝突させる際に、被膜を形成した該被観察試料の周囲の温度を−170〜−50℃に冷却する請求項1に記載のイオンミリング方法。
  3. 請求項1又は2に記載の方法により、前記被観察試料のイオンを衝突させた領域の表面を露出させた後、該表面を電子顕微鏡で観察することを特徴とする被観察試料の観察方法。
JP2016143255A 2016-07-21 2016-07-21 イオンミリング方法 Active JP6798809B2 (ja)

Priority Applications (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2016143255A JP6798809B2 (ja) 2016-07-21 2016-07-21 イオンミリング方法

Applications Claiming Priority (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2016143255A JP6798809B2 (ja) 2016-07-21 2016-07-21 イオンミリング方法

Publications (2)

Publication Number Publication Date
JP2018014245A JP2018014245A (ja) 2018-01-25
JP6798809B2 true JP6798809B2 (ja) 2020-12-09

Family

ID=61020387

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP2016143255A Active JP6798809B2 (ja) 2016-07-21 2016-07-21 イオンミリング方法

Country Status (1)

Country Link
JP (1) JP6798809B2 (ja)

Family Cites Families (8)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JPH10281954A (ja) * 1997-04-09 1998-10-23 Kawasaki Steel Corp 透過電子顕微鏡観察用試料の作製方法
JP2002232063A (ja) * 2001-02-05 2002-08-16 Ricoh Co Ltd 半導体レーザ装置及び光ピックアップ装置
US6723650B1 (en) * 2003-04-03 2004-04-20 Taiwan Semiconductor Manufacturing Co., Ltd. TEM sample preparation using transparent defect protective coating
JP4922632B2 (ja) * 2006-03-17 2012-04-25 日本電子株式会社 イオンビームを用いる断面試料作製方法
JP2009008657A (ja) * 2007-05-25 2009-01-15 Canon Inc 固体試料、固体試料作製方法及び固体試料作製装置
JP5857158B2 (ja) * 2013-06-10 2016-02-10 株式会社日立ハイテクノロジーズ イオンミリング装置
CN104089801B (zh) * 2014-06-26 2016-07-06 上海市计量测试技术研究院 一种氧化锆热障涂层的电子背散射衍射试样的制备方法
JP6363495B2 (ja) * 2014-12-25 2018-07-25 京セラ株式会社 電子素子実装用基板および電子装置

Also Published As

Publication number Publication date
JP2018014245A (ja) 2018-01-25

Similar Documents

Publication Publication Date Title
Spoerk et al. Polypropylene filled with glass spheres in extrusion‐based additive manufacturing: effect of filler size and printing chamber temperature
Hasegawa et al. Silicate layer exfoliation in polyolefin/clay nanocomposites based on maleic anhydride modified polyolefins and organophilic clay
JP7011548B2 (ja) セラミックス造形用粉体、セラミックス造形物、およびその製造方法
Nie et al. Femtosecond laser melting and resolidifying of high-temperature powder materials
TW201914712A (zh) 金屬積層造形用金屬粉及使用該金屬粉而製作之造形物
Rauchenecker et al. Additive manufacturing of aluminum nitride ceramics with high thermal conductivity via digital light processing
Chen et al. Effect of interface evolution on thermal conductivity of vacuum hot pressed SiC/Al composites
EA020231B1 (ru) Порошок бария-стронция-алюмосиликата
KR20160145474A (ko) 표면 피복 질화붕소 소결체 공구
CN116477627A (zh) 造型方法和造型粉末材料
JP6798809B2 (ja) イオンミリング方法
Gu et al. Intentional oxidation and laser remelting of highly reflective pure cu for its high‐quality additive manufacturing
Daneshmehr et al. The surface modification of boron nitride particles
Medina M et al. Effect of ZnO nanoparticles obtained by arc discharge on thermo‐mechanical properties of matrix thermoset nanocomposites
SE439264B (sv) Sett att pa en centrifugalgjutkokill for gjutning av koppar eller dess legeringar pafora en gasgenomslepplig, gasutvecklingsfri, vermeledande beleggning av ett bestrykningsmedel
García et al. Epoxy/montmorillonite nanocomposites for improving aircraft radome longevity
WO2016002943A1 (ja) 放熱部品及びその製造方法
Patil et al. Effect of graphite exfoliation through multipass friction stir processing on microstructure and mechanical properties of aluminium 7075‐silicon carbide‐graphite composites
JP4732430B2 (ja) アルミニウム−セラミックス複合体及びその製造方法
Fauziyah et al. Filler‐size‐dependent dynamic mechanical properties of polyethylene glycol/zircon composites
US4150709A (en) Process for applying a coating to a centrifugal casting mold
JP2002285259A (ja) 電子機器用放熱部材およびその製造方法
Zych et al. The research of desiccation rates selected protective coating used on mould and sand cores
JP2020158345A (ja) タングステン酸ジルコニウム粉末及びその製造方法並びに該タングステン酸ジルコニウム粉末を含む樹脂
Zych et al. Kinetics of hardening and drying of ceramic moulds with the new generation binder–colloidal silica

Legal Events

Date Code Title Description
A621 Written request for application examination

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A621

Effective date: 20190604

A977 Report on retrieval

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A971007

Effective date: 20200325

A131 Notification of reasons for refusal

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A131

Effective date: 20200508

A521 Request for written amendment filed

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523

Effective date: 20200619

TRDD Decision of grant or rejection written
A01 Written decision to grant a patent or to grant a registration (utility model)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A01

Effective date: 20201117

A61 First payment of annual fees (during grant procedure)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A61

Effective date: 20201119

R150 Certificate of patent or registration of utility model

Ref document number: 6798809

Country of ref document: JP

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R150