従来の光伝送システムでは、光ファイバを伝搬して減衰した信号を再生するために、光信号を電気信号に変換し、ディジタル信号を識別後に光信号を再生する識別再生光中継器が用いられた。識別再生光中継器では、光−電気変換する電子部品の応答速度制限や、消費電力増大の問題があった。そこで、希土類元素を添加した光ファイバに励起光を入射して信号光を光のままで増幅するファイバレーザ増幅器や、半導体レーザ増幅器が登場した。これらレーザ増幅器は、劣化した信号光波形を整形する機能を有していなかった。逆に、不可避的かつランダムに発生する自然放出光が信号成分と全く無関係に混入され、増幅前後で信号光のS/Nが少なくとも3dB低下する。S/N低下は、ディジタル信号伝送時における伝送符号誤り率を上昇させ、伝送品質を低下させる。
レーザ増幅器の限界を打開する手段として、位相感応光増幅器(Phase Sensitive Amplifier:PSA)が検討されている。PSAは、伝送ファイバの分散の影響による劣化した信号光波形や位相信号を整形する機能を有する。信号とは無関係の直交位相をもった自然放出光を抑圧でき、同相の自然放出光も最小限で済む。このために原理的に増幅前後で信号光のS/Nを劣化させず同一に保つことができる。
図1は、従来技術のPSAの基本的な構成を示す図である。図1に示されるように、PSA100は、光パラメトリック増幅を用いた位相感応光増幅部101と励起光源102と励起光位相制御部103と、第1光分岐部104−1及び第2の光分岐部104−2とを備える。図1に示されるように、PSA100に入力された信号光110は、光分岐部104−1で2分岐されて、一方は位相感応光増幅部101に入射し、他方は励起光源102に入射する。励起光源102から出射した励起光111は、励起光位相制御部103を介して位相が調整され、位相感応光増幅部101に入射する。位相感応光増幅部101は、入力した信号光110及び励起光111に基づいて出力信号光112を出力する。
位相感応光増幅部101は、信号光110の位相および励起光111の位相が一致すると信号光110を増幅し、両者の位相が90度ずれた直交位相関係になると信号光110を減衰する特性を有する。この特性を利用して増幅利得が最大となるように励起光111―信号光110間の位相を一致させると、信号光110と直交位相の自然放出光が発生せず、また同相の成分に関しても信号光のもつ雑音以上に過剰な自然放出光を発生しない。このため、S/N比を劣化させずに信号光110を増幅できる。
信号光110および励起光111の位相同期を達成するために、励起光位相制御部103は、第1の光分岐部104−1で分岐された信号光110の位相と同期するように励起光111の位相を制御する。励起光位相制御部103は、第2の光分岐部104−2で分岐された出力信号光112の一部を狭帯域の検出器で検波し、出力信号光112の増幅利得が最大となるように励起光111の位相を制御する。
上述のパラメトリック増幅を行う非線形光学媒質には、周期分極反転LiNbO3(PPLN)導波路に代表される二次非線形光学材料と、石英ガラスファイバに代表される三次非線形光学材料がある。
図2は、PPLN導波路を用いた従来技術のPSAの構成を示す図である(非特許文献1参照)。図2に示したPSA200は、エルビウム添加ファイバレーザ増幅器(EDFA)201と、第1の二次非線形光学素子202及び第2の二次非線形光学素子204と、第1の光分岐部(光カプラ)203−1及び第2の光分岐部203−2(光カプラ)と、位相変調器205と、光ファイバ伸長器206と、偏波保持ファイバ207と、光検出器208と、位相同期ループ(PLL)回路209と、を備える。第1の二次非線形光学素子202は、第1の空間光学系211と、第1のPPLN導波路212と、第2の空間光学系213と、第1のダイクロイックミラー214と、を備える。第2の二次非線形光学素子204も、同様の構成を持ち詳細は説明を省略する。
図2のPSA200に入射した信号光250は、光分岐部203−1によって分岐されて、一方は第2の二次非線形光学素子204に入射する。分岐光の他方は励起基本波光251として位相変調器205及び光ファイバ伸長器206を介して、位相制御されてEDFA201に入射する。EDFA201は、入射した励起基本波光251を十分に増幅し、第1の二次非線形光学素子202に入射する。EDFA201により、微弱な励起基本波光251から非線形光学効果を得るのに十分なパワーを得ることができる。第1の二次非線形光学素子202では、入射した励起基本波光251から第2高調波(以下、SH光)252が発生する。発生したSH光252は、偏波保持ファイバ207を介して第2の二次非線形光学素子204に入射する。第2の二次非線形光学素子204では、入射した信号光250およびSH光252によって縮退パラメトリック増幅を行うことで、位相感応光増幅を行い、出力信号光253を出力する。
PSAにおいては、信号光と位相の合った光のみを増幅するために、上述のように信号光の位相と励起光の位相とが一致するか、または、πラジアンだけずれている必要がある。すなわち二次の非線形光学効果を用いる場合は、SH光に相当する波長である励起光の位相φ2ωsと、信号光の位相φωsとが以下の式(1)の関係を満たすことが必要となる。ここで、nは整数とする。
Δφ=1/2(φ2ωs−φωs)=nπ 式(1)
図3は、従来技術の二次非線形光学効果を利用したPSAにおける、入力信号光‐励起光間の位相差Δφと利得との関係を示す図である。横軸の位相差Δφが−π、0、またはπのときに、縦軸の利得(dB)が最大となっていることがわかる。
信号光250と励起基本波光251との間の位相同期のために、まず位相変調器205で微弱なパイロット信号により位相変調を励起基本波光251に施し、出力信号光253の一部を分岐して検出器208で検波する。このパイロット信号成分は、図3に示した位相差Δφが最小となって、位相同期が取れている状態で最小となる。したがって、パイロット信号が最小、つまり増幅出力信号が最大となるようにPLL回路209を用いて、光ファイバ伸長器206にフィードバックを行う。励起基本波光251の位相を光ファイバ伸長器206によって制御して、信号光250と励起基本波光251との間の位相同期を達成できる。
上述の従来技術のPSAは、縮退パラメトリック過程に基づくものである。縮退型PSAは後述する非縮退型PSAと比較して構成が簡単であり、強度変調信号や2値位相変調信号(BPSK)または差動位相偏移変調(DPSK)信号等の増幅に適用できる。縮退型PSAは、伝送容量への要求がそれほど高くない短・中距離向けの光伝送系に適用することでSN比の向上が期待できる。
縮退型PSAは、直交する位相成分を減衰させるので、直交位相成分にもデータ変調成分を含むQPSK変調(Quadrature Phase Shift Keying)や8PSK、QAM等で変調された信号を増幅はできない。直交位相成分にもデータ変調成分を含む変調フォーマットに対しては、非縮退型のPSAを構成できることが実証されている(非特許文献2、非特許文献3)。
光伝送システムにおける中継増幅器としてPSAを用いる場合、信号光の搬送波位相と同期した励起光を生成する必要がある。図1のように信号光光源が位相感応光増幅部の近くに配置されていれば、信号光用光源の一部を分岐して励起光として利用できる。PSAを中継増幅器として用いる場合は、1スパン約80kmの光ファイバを伝送するので信号光光源の一部を分岐できない。伝送されてきた信号光から搬送波位相を抽出する方法によって、PSAを構成することが重要となる。
図4は、従来技術の搬送波位相の抽出を含む中継型PSAの構成を示す図である。図4の中継型PSA400は、BPSK信号からの搬送波位相の抽出方法を行う励起光生成部430および位相感応光増幅部440に大別される。
図5の(a)〜(d)は、図4の従来技術の中継型PSAにおける各信号の波長軸上での関係を説明する図である。図5のいずれの図も横軸を波長として、各信号の波長軸上の相対位置関係を概念的に示している。以下、図5も参照しながら図4の中継型PSAの動作概要を説明する。図5の各図では横軸を波長軸としているため、周波数のより高い光は、図5ではより短い波長の光として示されることに留意されたい。したがって、光の周波数が高いほど、図5では横軸のより左側の短波長側に位置することになる。
光ファイバを伝送した信号光401は、PSA400へと入力され、信号光401の一部は光カプラ402により分岐され、励起光生成部430に入射される。励起光生成部430では、分岐した信号光をEDFA403によって増幅した後、第1のPPLN導波路モジュール404によって、信号光の波長に対して半分の波長を持つ第2高調波光(SH光)を生成する。一方で励起光生成部430では、局部発振光源407で生成された励起光(Lo1)451および上述の第1のPPLN導波路モジュール404からのSH光が、第2のPPLNモジュール405に入力される。第2のPPLNモジュール405では、励起光(Lo1)とSH光との間の差周波光(Lo2)が生成される。
第2のPPLN導波路モジュール405から出力された信号光、励起光(Lo1)および差周波光(Lo2)は、バンドパスフィルタ406により、差周波光(Lo2)のみが取り出される。差周波光(Lo2)は、光サーキュレータ413を通過した後、例えばアレイ導波路格子(AWG)型の波長合分波器411を経由して半導体レーザ412に入力される。半導体レーザ412は、光注入同期により差周波光(Lo2)と同じ位相、同じ波長を持つ第2の励起光を生成する。第2の励起光の光強度は、半導体レーザ412の出力により決まるため、第2のPPLN導波路モジュール405からの数10μW程度の微弱な差周波数光(Lo2)を用いて、数10mW以上の第2の励起光(Lo2)を得ることができる。波長合分波器411の分波側ポートから、局部発振光源407より光カプラ408で分岐していた励起光(Lo1)を波長合分波器411の合波側ポートへ入射し、半導体レーザ410からの注入同期した第2の励起光(Lo2)と合波して、サーキュレータ413から励起光出力452が出力される。
ここで図5の(a)を参照すると、信号光sに対して、波長軸上における短波長側に励起光(Lo1)p1が示されている。信号光sは、変調を受けているのでスペクトルが広がっている。図5の(b)を参照すると、波長軸上で信号光sに対して励起光(Lo1)p1の反対側に、差周波数光(Lo2)p2が示されている。差周波数光(Lo2)p2は、半導体レーザ412への注入同期(インジェクションロック)により強度雑音が除去される。
図4の中継型PSAの各場所における信号光sの位相φs、励起光(Lo1)p1の位相φp1および差周波光(Lo2)p2の位相φp2の間では、以下の式を満たす。
2φs − φp1− φp2 = 0 式(2)
したがって、差周波光(Lo2)p2の位相φp2は次式のように、信号光sの位相φsと励起光(Lo1)p1の位相φp1を用いて表される。
φp2 = 2φs − φp1 式(3)
式(2)および式(3)からもわかるように、第1のPPLN導波路モジュール404において信号光sからSH光を発生させることによって、信号光sの位相φsを2倍とすることができる。通常、信号光には送信する情報データによって変調が掛かっているため、搬送波位相を抽出することは難しい。しかしながら、図4の励起光生成部430のように信号光sの位相φsを2倍にすることで、2値の位相変調を取り除くことができる。さらに図5の(b)に示したように、SH光および励起光(Lo1)の差周波数光である第2の励起光(Lo2)p2は、注入同期によって強度雑音が除去される。図4においては、信号光401の搬送波の位相情報を保持した純粋なS/N比の良い第2の励起光(Lo2)452が得られる。
局部発振光源407からの励起光(Lo1)451および注入同期した第2の励起光(Lo2)452は、位相感応光増幅部440において、EDFA414によって増幅される。さらにBPF415を用いて不要なASE光を除去した後に、第3のPPLN導波路モジュール416に入力される。第3のPPLN導波路モジュール416では、図5の(c)に示したように、励起光(Lo1)p1および第2の励起光(Lo2)p2の和周波(SF:Sum Frequency)を持つ励起光SFが生成される。この時、励起光(Lo1)p1の位相φp1、第2の励起光(Lo2)p2の位相φp2および和周波励起光SFの位相φSFの間では、次の式を満たす。
φSF= φp1 + φp2
= 2φs 式(4)
図4における第3のPPLN導波路モジュール416からの和周波励起光453を第4のPPLN導波路モジュール417に入射する。第4のPPLN導波路モジュール417内で、光カプラ402を経由した信号光401と、和周波励起光453とのパラメトリック増幅により位相感応光増幅が行われる。位相感応光増幅のためには、図5の(d)に示したように、信号光sの位相φsおよび和周波光SFの位相φSFの間で、次式を満たす必要がある。
ΔΦ=φSF − 2φs = nπ(nは整数) 式(5)
すなわち入力信号光と和周波励起光との間の位相差ΔΦが、−π、0、またはπの時に利得が最大になる。信号光と各励起光との間で位相同期するために、位相変調器409を用いて微弱な信号により位相変調を励起光451に施す。第4のPPLN導波路モジュール417を通過した出力光の一部は、光カプラ418により分岐される。光検出器419によって分岐光の光強度の変化を検出し、励起光451と信号光401との間で位相同期するように、PLL回路420を用いて光ファイバ伸長器421にフィードバックをかける。上述の位相同期によって、図4の中継型の縮退型PSA400を安定動作させることができる。各信号の波長の一例を挙げれば、信号光s1535.8nm、励起光p1(Lo1)1534.25nm、差周波数p2(Lo2)1537.4nm、和周波数SF767.9nmである。第3のPPLN導波路モジュール416への入力までのすべての信号の波長は、概ね信号光sと同じ波長帯にあり、上述のデバイスの利用可能性の問題を回避できている。
上述の図4の中継型PSAでは、BPSK変調された信号光から搬送波の位相を抽出するために、第1のPPLN導波路モジュール404の非線形過程(SH光発生)を用いて位相方向の変調をキャンセルしている。一方、信号光が強度方向に多値化されている変調を利用する場合、強度変調成分をキャンセルできない。このため、図4のPSAの構成によって信号光から抽出した搬送波には強度変調成分が残留する。この抽出した搬送波から最終段のPPLN導波路モジュール417のための励起光SF453を生成すれば、残留した雑音成分からのエネルギー移行によって光増幅器のSN比も劣化する。
またシングルモードファイバを伝送されてきた信号光は、ファイバ中の分散や非線形光学効果の影響による位相歪を持っている。これらの位相歪も図4におけるSH光の発生の段階ではキャンセルできず、最終段のPPLN導波路モジュール417に対する励起光SFの位相雑音として残留する。従来技術のPSAのようにSH光生成の非線形過程を用いたり、励起光に注入同期を用いたりするだけでは、SN比の良い励起光を生成するのは難しい。
低雑音な位相感応光増幅器を実現するためには、信号光のSNRに比べて十分にSNRの高い励起光を用い、高い精度で位相同期を行う必要がある。励起光には高い品質が求められ、励起光を生成するための局部発振光等にも高いSNRが求められる。
本発明はこのような問題に鑑みてなされたものであって、その目的とするところは、強度方向に多値化された信号に対してもその搬送波位相抽出が可能な位相感応光増幅装置を提供することにある。
本発明は、このような目的を達成するために、請求項1に記載の発明は、信号光と、当該信号光の波長を中心として短波長側に離調されたパイロット信号光および長波長側に対称的に離調された当該パイロット信号光のアイドラ光を含むパイロットトーンのペアとからなる信号光群を位相感応光増幅する光増幅装置であって、前記信号光群の一部を分岐させる光分岐器と、前記光分岐器の出力光から前記パイロット信号光および前記アイドラ光を波長毎に取り出し、分波する光分波器と、前記パイロット信号光に位相同期した、第1の局部発振光を出力する第1の局部発振光源と、前記アイドラ光に位相同期した、第2の局部発振光を出力する第2の局部発振光源と、前記第1の局部発振光および前記第2の局部発振光の和周波光を発生する第1の二次非線形光学素子と、前記第1の二次非線形光学素子から出力された前記和周波光を励起光として、前記信号光に対して縮退パラメトリック増幅を行い、前記パイロットトーンのペアに対して非縮退パラメトリック増幅を行う第2の二次非線形光学素子と、前記信号光群の位相と、前記励起光の位相とを前記第2の二次非線形光学素子内において同期させる位相同期手段とを備えたことを特徴とする光増幅装置である。
請求項2に記載の発明は、請求項1の光増幅装置であって、前記第1の局部発振光源は、前記パイロット信号光に注入同期して発振し、前記パイロット信号光の位相に同期する半導体レーザであり、前記第2の局部発振光源は、前記アイドラ光に注入同期して発振し、前記アイドラ光の位相に同期する半導体レーザであることを特徴とする。
請求項3に記載の発明は、請求項1または2の光増幅装置であって、前記位相同期手段は、前記第2の二次非線形光学素子に入射する前の前記信号光群が伝搬する光ファイバを伸縮させる第1の光ファイバ伸縮器と、前記第2の二次非線形光学素子から出力される増幅された光の一部を取り出して電気信号に変換する第1の検出手段と、前記第1の検出手段の出力信号に基づいて、基準位相と、前記励起光の位相とが同期するように前記第1の光ファイバ伸縮器への制御信号を生成する制御手段とを含むことを特徴とする。
請求項4に記載の発明は、請求項1乃至3いずれかの光増幅装置であって、前記第1の二次非線形光学素子および前記第2の二次非線形光学素子は、それぞれ光導波路を含み、当該光導波路は、LiNbO3、KNbO3、LiTaO3、LiNbxTa(1-x)O3(0≦x≦1)、またはKTiOPO4のいずれかの材料か、または、これらの材料のいずれかにMg、Zn、Sc、Inからなる群から選ばれた少なくとも一種を添加物として加えた材料から構成されることを特徴とする。
請求項5に記載の発明は、前記信号光群を出力する送信器と、上述のいずれかの光増幅装置と、前記送信器および前記光増幅装置を接続する伝送ファイバとから構成された光伝送システムであって、前記送信器は、前記信号光の搬送波光を出力する信号光源と、前記パイロット信号光を出力するパイロット信号光源と、一部が分岐された前記搬送波光を基本波励起光として入力し、当該基本波励起光の第二高調波光を発生させる第3の二次非線形光学素子と、前記第3の二次非線形光学素子から出力された前記第二高調波光を励起光として、前記搬送波光を変調した前記信号光を増幅し、前記パイロット信号光と前記第二高調波光との差周波光である前記アイドラ光を発生する第4の二次非線形光学素子と、前記第4の二次非線形光学素子に入射する前の前記信号光群の位相を制御することにより、前記信号光群の位相と前記基本波励起光の位相とを前記第4の二次非線形光学素子内において同期させる第2の位相同期手段とを含むことを特徴とする光伝送システムである。
請求項6に記載の発明は、請求項5の光伝送システムであって、前記第2の位相同期手段は、前記第4の二次非線形光学素子に入射する前の前記信号光群が伝搬する光ファイバを伸縮させる第2の光ファイバ伸縮器と、前記第4の二次非線形光学素子から出力された光の一部を取り出して電気信号に変換する第2の検出手段と、前記第2の検出手段の出力信号に基づいて、前記信号光群の位相と前記基本波励起光の位相とが同期するように前記第2の光ファイバ伸縮器への制御信号を生成する第2の制御手段とを含むことを特徴とする。
請求項7に記載の発明は、請求項5の光伝送システムであって、前記第4の二次非線形光学素子は、前記信号光を縮退パラメトリック増幅し、前記アイドラ光を非縮退パラメトリック過程により発生することを特徴とする。
請求項7に記載の発明は、請求項5乃至7いずれかの光伝送システムであって、前記光増幅装置が多段に接続されたことを特徴とする。
本発明により、変調方式によらない低雑音な位相感応光増幅を提供できる。
本発明の光増幅装置および光伝送システムでは、強度方向に多値化された信号に対しても低雑音な増幅が可能な位相感応光増幅器(以下PSA)の構成が開示される。光伝送システムで多段構成のPSAの中継増幅動作も実現する。送信器からの光信号群として、信号光を中心に周波数軸上で対称に離調した2周波数を持ち、互いに位相共役関係にあるパイロットトーンのペア(パイロット信号光およびそのアイドラ光)を用いる。変調フォーマットによらず、強度方向に多値化された信号光に対してもその搬送波位相の抽出が可能である。パイロットトーンのペアの和周波光を生成することで、信号光を縮退位相感応光増幅するための第2高調波励起光を生成する。光伝送システム内でパイロットトーンのペアは信号光と同送され、信号光と同様に低雑音なPSAによる中継増幅を受けて伝搬する。位相感応光増幅時にパイロットトーンのペア一部を分岐して励起光として用いるため、パイロットトーンもSN比の劣化の極めて少ない光伝送システムを提供できる。以下、図面を参照しながら本発明の実施形態について詳細に説明する。
[実施形態]
図6は、本発明に係る光伝送システムおよび光増幅装置の構成を示す図である。図6の光伝送システム600は、送信器700、伝送ファイバ601、分散・偏波補償器602および中継型PSAすなわち光増幅装置603からなる。光伝送システム600では、光増幅装置603に引き続いて、信号光は伝送ファイバ622によってさらに伝送される。図6における本発明の光増幅装置603を中継型PSAとして多段構成として用いることもできる。以下、まず送信器700の詳細な構成並びに信号光およびパイロットトーンのペアの生成動作について説明し、次に光増幅装置603の構成および搬送波位相抽出の動作を説明する。
図7は、本発明の光伝送システムにおける送信器の詳細な構成を示す図である。送信器700は、信号光およびパイロットトーンのペアを生成し送信する。送信器700の主な構成要素を列挙すれば、信号光源701と、変調器703と、第1の局部発振光源714と、EDFA705と、PPLN導波路モジュール707、708と、光カプラ(光分岐器)702、715、709と、位相変調器(PM)704と、バンドパスフィルタ(BPF)706、710と、光検出器711と、PLL回路712と、PZTによる光ファイバ伸長器713を備えている。
送信器700において、信号光の搬送波は変調器703によってデータ変調された後、その変調による損失を補償するために、2つのPPLN導波路モジュール707、708によるパラメトリック過程により光増幅を受ける。すなわち励起光となる第2高調波(SH)光発生(SHG: Second Harmonic Generation)のための第1のPPLN導波路モジュール707、及びパラメトリック過程(OPA: Optical Parametric Amplification)のための第2のPPLN導波路モジュール708が用いられる。第1のPPLN導波路モジュール707は、入力側の空間光学系、PPLN導波路、出力側の空間光学系、およびダイクロイックミラーを備える。第2のPPLN導波路モジュール708は、入力側の空間光学系、PPLN導波路、出力側の空間光学系、および入力・出力側の双方にダイクロイックミラーを備える。
ここで、図7の送信器700および後に詳述する図6の光増幅装置で用いるPPLN導波路の作製方法について、以下に例示する。まず、Znを添加したLiNbO3上に周期が約17μmの周期的な電極を形成した。次に、電界印加法により上記の電極パターンに応じた分極反転グレーティングをZn:LiNbO3中に形成した。さらに、この周期分極反転構造を有するZn:LiNbO3基板をクラッドとなるLiTaO3上に直接接合を行い、500℃で熱処理を行うことにより両基板を強固に接合した。次に、コア層を研磨により5μm程度まで薄膜化し、ドライエッチングプロセスを用いてリッジ型の光導波路を形成した。この導波路はペルチェ素子により温度調整が可能である。導波路の長さを50mmとした。このようにして形成されたPPLN導波路を有する二次非線形光学素子を、1.5μm帯の偏波保持ファイバで光の入出力が可能なモジュール構成とした。本実施形態では、Znを添加したLiNbO3を用いたが、それ以外の非線形材料である、KNbO3、LiTaO3、LiNbxTa1-xO3(0≦x≦1)若しくはKTiOPO4、又はそれらにMg、Zn、Sc、Inからなる群から選ばれた少なくとも一種を添加物として含有している材料を用いても良い。
図7の送信器700において、説明の簡単のため信号光の波長は1550nmとする。信号光源701から出力された光は、光カプラ(光分岐器)702によって2つの経路に分岐される。分岐光の一方は4値パルス振幅変調(PAM4:Pulse Amplitude Modulation 4)された信号光721、他方はパラメトリック過程に用いる励起光生成のための基本波励起光725とした。局部発振光源714から、信号光の波長より0.8nm短波側に離調されたパイロット信号として用いる光を出力し、光カプラ715によって信号光721に合波させた。励起光の生成のために用いる基本波励起光725は、EDFA705により3Wまで増幅し、BPF706によりEDFA705の自然放出光を除去した後、第1のPPLN導波路モジュール707に入射した。第1のPPLN導波路707中のSH光発生(SHG)機構により、基本波励起光725の2倍の周波数を持ち、波長換算では1550nmの半分の775nmの波長を持つ励起光726を生成した。3Wの基本波光725により、1Wの強度の励起光726が得られた。
上述の励起光726とパイロット信号723を含む信号光とが、第2のPPLN導波路モジュール708に入射される。図7の右端に模式的に示したスペクトラムのように、パイロット信号723は、第2のPPLN導波路モジュール708におけるパラメトリック過程により、信号光721の波長1550nmを中心として概ね対称な位置にアイドラ光724を発生させる。以降、パイロット信号光723およびそのアイドラ光724を合わせて、パイロットトーンのペアと呼ぶ。また、信号光721およびパイロットトーンのペアを合わせて、信号光群722と呼ぶ。送信器700からはパイロットトーンのペアを含む信号光群722が出力される。図7では、パイロットトーンのペアを波長軸上で描いてあるので、パイロット信号光723およびアイドラ光724は波長軸上で厳密には対称な位置には無い。パイロットトーンのペアは、リニアの周波数軸上で表示したときに信号光721に対して厳密に対称な位置にあることに留意されたい。以降の説明では、簡単のため波長軸上で対称な位置にあるものとして説明する。
一方、信号光721については、その波長が、分岐して得られた基本波励起光725に一致する。このため、信号光721から発生するアイドラ光の波長(周波数)も信号光と同一となる。すなわち送信器700においては、信号光721に対してのみ縮退パラメトリック過程となる。縮退パラメトリック過程の場合、波長が同一であるため信号光およびそのアイドラ光がコヒーレントに干渉し、信号光およびアイドラ光の位相関係により光強度が変動してしまう。このため送信器700では、縮退パラメトリック過程の基準位相となる基本波励起光725の位相と、信号光群722の位相とが位相条件を満たすように、常に位相同期を掛けている。
図7の送信器700においては、信号光721を基本波励起光725に同期させるために、位相変調器704を用いて微弱な信号により基本波励起光に位相変調を施した。第2のPPLNモジュール708を通過した出力光の一部を光カプラ709により分岐した。BPF710により信号光721の波長のみを切り出し、光検出器711によって微弱な変調信号による光強度の変化を検出する。この微弱な変調信号成分は、図3に示したように信号光と基本波励起光との位相差Δφが最小の位相同期が取れている状態で最小となる。したがって、変調信号が最小であって、増幅器出力信号が最大となるようにPLL回路712を用いて光ファイバ伸長器713にフィードバックを掛ける。変調信号の位相を制御して、信号光721を含む信号光群722と基本波励起光725との間の位相同期を達成できる。したがって、光カプラ709からPLL回路712、光ファイバ伸長器713を含むループは、位相同期手段を構成する。すなわち、位相同期手段は、第2の二次非線形光学素子に入射する前の信号光群が伝搬する光ファイバを伸縮させる第1の光ファイバ伸縮器と、第2の二次非線形光学素子から出力される増幅された光の一部を取り出して電気信号に変換する第1の検出手段と、第1の検出手段の出力信号に基づいて、基準位相と、励起光の位相とが同期するように第1の光ファイバ伸縮器への制御信号を生成する制御手段とを含む。
図7で説明したように、本発明の光伝送システム600の送信器700側では、PPLN導波路を用いて、信号光のパラメトリック増幅およびパイロット信号光のアイドラ光生成を同時に行っている。本発明の光伝送システム600においては、図6の中継型PSAである光増幅装置603を多段構成で用いることも想定している。このため、信号光とパイロットトーンのペアを含む信号光群を中継型PSAで一括増幅し、常に伝送ファイバ中を同送する。送信器700では信号光源701から分岐した光をパラメトリック過程用の基本波励起光725として用いている。このため、パイロット信号光723およびそのアイドラ光724は、基準位相が基本波励起光725の位相と一致している。中継型PSAにおいて使用する励起光を、この基準位相に同期させることで、パイロット信号光およびアイドラ光の非縮退位相感応光増幅が可能となる。送信器700は、第2のPPLNモジュール708内で、信号光に対しては縮退位相感応光増幅を、パイロット信号光に対しては非縮退パラメトリック変換を同時に行う構成をとっている。信号光とパイロットトーンのペアを含む信号光群を送信器700から同送し、信号光およびパイロットトーンのペアの伝搬経路を同一にして位相が同期させることで、中継型PSAとして光増幅装置603を多段構成とすることも可能となる。
図6を再び参照すると、図7の送信器700と同様、光増幅装置603におけるパラメトリック過程は2つのPPLN導波路モジュールを用いて動作させる。励起光となるSH光発生(SHG)のための第3のPPLN導波路モジュール615、及び位相感応光増幅(OPA)のための第4のPPLN導波路モジュール616が用いられる。2つのPPLN導波路モジュール615、616の構成は、送信器700の2つのPPLN導波路モジュール707、708とそれぞれ同様である。
送信器700から伝送ファイバ601を伝送してきた信号光およびパイロットトーンのペアを含む信号光群722は、分散及び偏波補償器602により光ファイバ内の分散及び偏波を補償される。その後、光増幅装置603の第4のPPLN導波路モジュール616へと入力される。入力された信号光群722の一部は、光カブラ604により分波される。分岐された信号光群722は、光分波器605を用いてパイロットトーンのペアをパイロット信号光723およびアイドラ光724に切り出して分波される。分波されたパイロット信号光622は、光サーキュレータ607を用いて、局部発振光源(Lo2)609に入力され、光注入同期を行った。局部発振光源609が在る経路に、送信器700の局部発振光源から出力されたパイロット信号光723を伝搬させている。同様に、分波されたアイドラ光623は、光サーキュレータ606を用いて、局部発振光源(Lo3)610に入力され、光注入同期を行った。局部発振光源(Lo3)610が在る経路に、送信器700からのアイドラ光724を伝搬させている。局部発振光源609、610は、例えば半導体レーザによって構成することができる。
局部発振光源(Lo2)609は、送信器700におけるパイロット信号光723と同一波長の光を出力し、局部発振光源(Lo3)610はアイドラ光と同一の波長の光を出力している。それぞれ光注入同期により、パイロット信号光723と同一波長および同一の位相情報を持つパイロット信号光に対応する局部発振光624を生成する。同様に、アイドラ光724と同一波長および同一の位相情報を持つアイドラ光724に対応する局部発振光625を生成した。光カプラ608によって2つの局部発振光624、625を合波し、合波した局部発振光611が得られる。局部発振光611をEDFA613により3Wまで増幅し、BPF614によりEDFA613の自然放出光を除去した後、第3のPPLN導波路モジュール615に入射した。
第3のPPLN導波路モジュール615内のPPLN導波路中の和周波数生成(SFG: Sum Frequency Generation)動作により、信号光(波長1550nm)から対称に離調されたパイロット信号光およびそのアイドラ光の和周波を持つ励起光626が生成される。すなわち、励起光の周波数=パイロット信号光の周波数+アイドラ光の周波数の関係が成り立つ。この励起光は信号光の2倍の周波数を持ち、信号光の波長の半分の775nmの波長を持つ。位相共役関係にあるパイロット信号光723およびそのアイドラ光724の和周波を発生させることで、信号光と同じ位相情報を持つ励起光626を生成できる。第3のPPLN導波路モジュール615では、トータルパワー3Wの合波した局部発振光611により、1Wのパワーを持つ励起光626が得られた。この励起光626を第4のPPLN導波路モジュール616に入射した。
第4のPPLN導波路モジュール616内のPPLN導波路内では信号光については縮退パラメトリック過程が、パイロットトーンのペアに対しては非縮退パラメトリック過程が引き起こされる。図7に示したように、信号光721およびパイロットトーンのペアは、それぞれ送信器700における基本励起光725の基準位相に同期されている。図6の光増幅装置603には、この送信器700から同送された信号光721およびパイロットトーンのペアを含む信号光群722が入力されている。図6の光増幅装置603においても、入力された信号光群から送信器700の基準位相に同期した励起光626を生成し利用することで、中継型PSAである光増幅装置603において信号光群の全波長を一括した位相感応光増幅を実現できる。
光増幅装置603において位相同期をするために、位相変調器612を用いて微弱な信号により位相変調を合波した局部発振光611に施し、第4のPPLNモジュール616を通過した出力光728の一部を光カプラ617により分岐した。BPF618により信号光の波長のみを切り出し、光検出器619により光強度の変化を検出する。PLL回路620を用いて、励起光626の位相と信号光721の位相とが同期するように光ファイバ伸長器621にフィードバックをかけた。ここでは、位相同期を掛けるために信号光721のみを切り出しているが、他のパイロットトーンのペアのいずれか1波長を切り出しても同様に位相同期を行い、信号光721およびパイロットトーンのペアを含む信号光群722の一括PSAが可能である。
上述のように、本発明の光増幅装置603では、変調の掛かった信号光から励起光626を生成するのではなく、信号光と同送された変調の掛かっていないパイロットトーンのペアから励起光626を生成する。したがって、変調フォーマットによらず、強度方向に多値化された信号に対してもその搬送波位相の抽出が可能である。
本実施形態では、中継型PASである光増幅装置603によって光増幅した後に、後段の光ファイバ622へ中継伝送する構成が示されているが、光増幅した後に受信器等に入力しても良い。第4のPPLN導波路モジュール616により光増幅した後の出力光をそれぞれ受信器に入力することで、図6の光増幅装置603を受信器前段のプリアンプとして用いることもできる。
本発明の光増幅装置により、信号光と一括位相感応光増幅が可能なパイロットトーンのペアを同送する光伝送システムを実現できる。位相感応光増幅に用いる励起光のSNRの劣化が抑えられる。中継型PSAとして使用するとき、データ変調された信号光から搬送波位相を抽出する従来技術の方法と比較して、PAM4のような多値の強度変調信号に対しても高品質の励起光を生成し、低雑音な位相感応光増幅が可能となる。従来技術の光伝送システムと比べて、中継段数が増えてもSNRの高い局部発振光を再生成可能で、低雑音な位相感応光増幅により多段構成の中継増幅を実現できる。