JP6791724B2 - 内燃機関のエアクリーナ - Google Patents

Description

この発明は、内燃機関のエアクリーナ、特に、蛇腹状弾性部材を用いた吸気音低減装置を内蔵したエアクリーナに関する。

特許文献１は、本出願人が先に提案した新規な形式の内燃機関の吸気音低減装置を開示している。この吸気音低減装置は、弾性変形可能な蛇腹状の弾性部材によって容積室を画成し、この容積室をヘルムホルツ型共鳴要素の首管となる連通管を介して、内燃機関の吸気通路に接続した構成となっている。上記弾性部材は、大気開放された円筒状のケース内に収容されている。

特開２０１３−１２４５９９号公報

特許文献１においては、蛇腹状弾性部材が吸気管の側面等に分岐管のように接続された構成となっているため、車両のエンジンルーム内等において実質的な占有スペースが大きくなり、スペースの確保が困難になり易い、という問題がある。

この発明は、内燃機関の吸気系におけるエアクリーナが本質的に大きな内部空間を要求されることに着目し、蛇腹状弾性部材を利用した吸気音低減装置をエアクリーナの内部に内蔵するようにしたものである。

すなわち、この発明は、合成樹脂製のエアクリーナケースの内部空間をダーティサイド側とクリーンサイド側とに区画するようにエアクリーナエレメントが配設されてなる内燃機関のエアクリーナであって、
上記エアクリーナケースの一部として、上記内部空間に一端が開放された筒状に形成されるとともに、他端に外部に連通した連通孔を備えた吸気音低減装置用ケース部と、
この吸気音低減装置用ケース部内に収容され、基端が開口するとともに先端が封止された略円筒状をなし、かつ周壁が蛇腹状に屈曲形成されてなる弾性部材と、
上記吸気音低減装置用ケース部の一端の開口を覆うように取り付けられ、上記弾性部材の上記基端を保持するベースプレートと、
上記弾性部材の内部に形成される容積室を上記内部空間に連通させるように上記ベースプレートを貫通して設けられた連通管と、
からなる吸気音低減装置を内蔵したことを特徴としている。

内燃機関の吸気系において外気からダストを除去するエアクリーナにあっては、当業者によく知られているように、流速を低減して吸気騒音を抑制するとともにダストの捕集を確実なものとするために、エアクリーナケースの内部に比較的大きな内部空間が必要である。

上記の構成では、吸気音低減装置の弾性部材が一種の振動系として所定の共振周波数において共振するため、この共振周波数付近の帯域において、内燃機関の吸気脈動音が低減する。一方、弾性部材の内部に形成される容積室は、連通管を介して常にエアクリーナケースの内部空間に開放されているため、実質的にエアクリーナケースの内部空間の一部として流速低減等に寄与する。従って、エアクリーナケースを過度に大型化することなく吸気音低減装置を内蔵することが可能である。

本発明の好ましい一つの態様では、上記蛇腹状弾性部材の軸方向の伸縮による共振周波数が、３０〜２００Ｈｚの範囲内に設定されている。すなわち、比較的低周波の脈動音が蛇腹状弾性部材を用いた吸気音低減装置によって低減する。

また、本発明の好ましい一つの態様では、上記吸気音低減装置がダーティサイド側に配置されている。吸気の脈動音は、一般にエアクリーナを通して外気導入ダクトから外部へ漏洩する。エアクリーナケースのダーティサイド側に吸気音低減装置を備えることで、外気導入ダクトに近い位置で効果的な吸気音低減が図れる。また、エアクリーナは一般にクリーンサイド側に比較してダーティサイド側に大きな容積が必要であるので、より好ましい配置となる。

本発明の具体的な一つの態様では、上記エアクリーナケースは、上記エアクリーナエレメントが装着される矩形の開口部を備えたボディと、上記開口部を覆うように上記ボディに取り付けられるカバーと、から構成されており、
上記吸気音低減装置用ケース部は、上記ボディの底部に、上記開口部へ向かって一端が開口した筒状に成形されている。

従って、吸気音低減装置用ケース部を備えたボディを、例えば射出成形のような一般的な成形方法によって容易に形成することが可能である。

この発明によれば、内燃機関の吸気系に設けられるエアクリーナの内部に蛇腹状弾性部材を利用した吸気音低減装置を内蔵したことにより、例えば車両のエンジンルーム内等において吸気音低減装置の付加による実質的な占有スペースの増加を招来することなく、吸気脈動音の効果的な低減を実現することができる。

この発明に係るエアクリーナを備えた内燃機関の吸気系を示す斜視図。 エアクリーナの外観斜視図。 図２のＡ−Ａ線に沿った断面の斜視図。 図２のＢ−Ｂ線に沿った断面の斜視図。 図２のＣ−Ｃ線に沿った断面図。 カバーを取り外してボディ内部の構成を示した平面図。 吸気系の各部における脈動圧（２次成分）を対比して示した特性図。

以下、この発明の一実施例を図面に基づいて詳細に説明する。

図１は、この発明に係るエアクリーナ１を備えた自動車用内燃機関の吸気系の構成を示している。エアクリーナエレメント５（図５参照）を内部に備えたエアクリーナ１は、エアクリーナエレメント５の下流側いわゆるクリーンサイドが可撓性を有する吸気ダクト２を介して図外の内燃機関に接続されており、エアクリーナエレメント５の上流側いわゆるダーティサイドに硬質合成樹脂成形品からなる外気導入ダクト３が接続されている。外気導入ダクト３の先端は、外気導入口３ａとして開口しており、ここから取り込まれた外気がエアクリーナ１を通過した後、吸気ダクト２を介して内燃機関に導入される。

エアクリーナ１は、図２〜図６に示すように、ボディ１１とカバー１２との２部品を組み合わせてなる合成樹脂製のエアクリーナケース１０を備えている。ボディ１１は、上縁に矩形のフレーム状のボディ側フランジ部１４を備えるとともに、底壁１５ならびに周囲の側壁１６を備えた略直方体形状の容器状ないしバケツ状をなしている。エアクリーナ１の長手方向の一端部寄りにおける側壁１６の一部には、上記外気導入ダクト３が接続される角筒状の吸気入口１７が形成されている。上記ボディ側フランジ部１４は、矩形の開口部１４ａを構成しており、ここに、矩形状に構成されたエアクリーナエレメント５（図５参照）が装着されている。エアクリーナエレメント５は、例えば、濾紙もしくは不織布からなるシート状の濾材を複数回折り返して複数のプリーツを形成した構成となっており、上記開口部１４ａに上方から着脱可能に装着されている。なお、図３および図４においては、エアクリーナエレメント５は図示省略してある。

カバー１２は、上記開口部１４ａを覆うように取り付けられるものであり、ボディ側フランジ部１４に突き合わされる矩形のフレーム状のカバー側フランジ部１９を備えるとともに、頂部壁２０ならびに周囲の側壁２１を備えた逆向きの容器状をなしている。カバー１２の側壁２１の一部には、吸気ダクト２が接続される円筒状の吸気出口２２が形成されている。上記カバー１２のカバー側フランジ部１９から頂部壁２０までの高さは、上記ボディ１１のボディ側フランジ部１４から底壁１５までの深さに比較して、相対的に小さなものとなっている。なお、ボディ側フランジ部１４とカバー側フランジ部１９とは、図示しない金属製のバックルによって互いに締付固定されている。ボディ１１およびカバー１２は、硬質合成樹脂例えばポリプロピレン樹脂を用いて例えば射出成形によりそれぞれ一体に成形されている。

図５に示すように、ボディ１１とカバー１２とからなるエアクリーナケース１０の内部空間は、両者間に位置するエアクリーナエレメント５によって、いわゆるダーティサイド側空間２５とクリーンサイド側空間２６とに区画されている。この実施例では、実質的に、ボディ１１の内部がダーティサイド側空間２５となり、カバー１２の内部がクリーンサイド側空間２６となる。エアクリーナエレメント５に流入する吸気の流速を低減するために、ダーティサイド側空間２５はクリーンサイド側空間２６よりも大きなものとなっている。

吸気脈動音を低減する吸気音低減装置３１は、この実施例では、ボディ１１の長手方向の一端部（詳しくは吸気入口１７とは反対側となる端部）に内蔵されている。

上記吸気音低減装置３１は、ボディ１１の一部として該ボディ１１に一体に成形された吸気音低減装置用ケース部３２と、このケース部３２の中に収容された蛇腹状の弾性部材３３と、この弾性部材３３の基端を保持するとともにケース部３２の開口面を覆うベースプレート３４と、このベースプレート３４を貫通して設けられた円筒状の連通管３５と、から大略構成されている。

上記ケース部３２は、ボディ１１の底壁１５から垂直（ボディ側フランジ部１４が規定する矩形の開口面に対し直交する方向）に立ち上がった円筒状の周壁部３２ａと、底壁１５の一部ともなる円形の底壁部３２ｂと、によって、一端が開放されかつ他端が閉塞された、いわゆる有底円筒状ないしカップ状に成形されている。上記底壁部３２ｂの中心位置には、ケース部３２の内部空間を外部と連通させる連通孔３６が設けられている。この連通孔３６は、外部からの水滴等の進入を抑制するために、円筒部３６ａを備えている。また、周壁部３２ａの上縁は、半径方向に拡がったフランジ部３２ｃを備えている。

上記ベースプレート３４は、連通管３５と一体に硬質合成樹脂例えばポリアミド樹脂にて成形されているものであり、上記ケース部３２の径に対応した円形をなし、その中心部に上記連通管３５が配置されている。そして、外周縁部３４ａが例えば振動溶着あるいは接着剤によってケース部３２上縁のフランジ部３２ｃに接合されている。

弾性部材３３は、図５等に示すように、基端３３ａが開口するとともに先端３３ｂが封止された略円筒状をなし、周壁３３ｃが蛇腹状に屈曲形成されている。この弾性部材３３は、適宜な弾性を有するゴムないしエラストマー例えば熱可塑性エラストマーにて一体に成形されたものであって、封止端となる先端３３ｂは、平坦な円板状に形成されている。

弾性部材３３の開口端となる基端３３ａは、ベースプレート３４の内側面（ケース部３２内側となる面）に接着剤等によって接合されている。つまり、基端３３ａの開口面はベースプレート３４によって覆われており、これによって、弾性部材３３の内部に容積室３７が画成されている。この弾性部材３３とベースプレート３４との接合は、ケース部３２に対するベースプレート３４の取付に先だって行われる。換言すれば、弾性部材３３は予めベースプレート３４に取り付けられており、弾性部材３３をケース部３２内に挿入しつつベースプレート３４をケース部３２のフランジ部３２ｃ上に配置して、振動溶着等により接合することになる。

図５等に示すように、弾性部材３３の蛇腹状の周壁３３ｃの外径は、ケース部３２の周壁部３２ａの内径よりも僅かに小さく設定されている。また弾性部材３３の先端３３ｂは、ケース部３２の底壁部３２ｂから適宜に離れて位置している。従って、弾性部材３３は、基端３３ａがベースプレート３４に固定された状態でもって、先端３３ｂが自由端としてケース部３２内で自由に伸縮変形することが可能である。

ここで、図６に示すように、ボディ１１の開口部１４ａを下方へ投影してみたときに、ケース部３２の周壁部３２ａやベースプレート３４の外形は開口部１４ａの内側（つまり開口面）に包含される。従って、ボディ１１の射出成形に際してケース部３２を一体に成形することが可能であるとともに、開口部１４ａを通したベースプレート３４の取付作業が容易である。なお、ケース部３２の上縁部にベースプレート３４をいわゆるスナップフィットによって取り付けるようにしてもよい。

上記のように構成された吸気音低減装置３１は、ベースプレート３４により密閉された弾性部材３３の内部の容積室３７が、連通管３５を介してエアクリーナケース１０の内部空間（詳しくはダーティサイド側空間２５）に連通している。他方、ケース部３２内周と弾性部材３３外周面との間に構成される空間は、エアクリーナケース１０の内部空間とは連通しておらず、連通孔３６を介して大気開放されている。従って、エアクリーナケース１０内の音圧変化に応じて蛇腹状の弾性部材３３が変位する。

ここで、蛇腹状の弾性部材３３は、一種のバネとして振動系を構成し、所定の共振周波数において共振する。そのため、この共振周波数付近の帯域において、内燃機関の吸気脈動音が低減する。本実施例では、蛇腹状弾性部材３３の軸方向の伸縮による共振周波数が、３０〜２００Ｈｚの範囲内に設定されている。望ましくは、５０〜１００Ｈｚの範囲内に設定されている。すなわち、比較的低周波の脈動音が蛇腹状弾性部材３３を用いた吸気音低減装置３１によって低減する。

図７は、図１のように吸気ダクト２と外気導入ダクト３とがエアクリーナ１に接続されている吸気系の構成において、各々の位置における脈動圧（２次成分）を比較して示したものである。なお、ここではエアクリーナ１は吸気音低減装置３１を具備していない。この図７に示すように、内燃機関の回転数が高い領域では吸気ダクト２における脈動エネルギが最も高いが、本実施例が対象とする低周波脈動音に対応した回転数が低い領域では、エアクリーナ１の内部における脈動エネルギが最も高い。従って、このエアクリーナ１の内部空間に対し吸気音低減装置３１を配置することにより、効果的な脈動音低減が図れる。

また、上記実施例では、エアクリーナケース１０の中でも外気導入ダクト３に近いダーティサイド側空間２５に吸気音低減装置３１が配置されているため、外気導入ダクト３を通して外部へ漏洩する脈動音を、その直前の位置においてより効果的に低減できる。

一方、蛇腹状弾性部材３３の内部の容積室３７はエアクリーナケース１０の内部空間と常時連通しているため、実質的にエアクリーナケース１０の内部空間の一部となる。前述したように、一般的にエアクリーナ１にあっては、外気導入ダクト３を通して高速で流入する吸気の流速を低減して吸気騒音を抑制するとともにエアクリーナエレメント５各部に均一に流れてダストの捕集を確実なものとするために、エアクリーナケース１０の内部に比較的大きな内部空間が必要である。上記実施例では、ボディ１１に一体に成形された吸気音低減装置用ケース部３２の内部は、吸気が通過するエアクリーナケース１０の内部空間からは隔絶されたものとなるが、このケース部３２の内部に収容された弾性部材３３の内部の容積室３７がエアクリーナケース１０の内部空間の一部となるので、エアクリーナケース１０の外形寸法に比較した実質的な内部空間の減少は少ない。従って、吸気音低減装置３１を内蔵したことに伴うエアクリーナケース１０の外形寸法の増加は僅かなものとなる。換言すれば、エアクリーナ１を実質的に大型化することなく吸気音低減装置３１を吸気系に付加することが可能である。そのため、吸気ダクト２や外気導入ダクト３に蛇腹状弾性部材を接続した従来の構成に比較して、吸気系全体の占有スペースが小さくなり、吸気ダクト２や外気導入ダクト３の取り回しが蛇腹状弾性部材によって制限されるようなことがない。

しかも、上記実施例では、エアクリーナケース１０のダーティサイド側空間２５の底部に吸気音低減装置３１が配置されているので、仮にエアクリーナケース１０の外形寸法が僅かに大型化するとしても、ボディ１１の底壁１５の位置を下方へ拡大することで対応できる。つまり、車両のエンジンルームの平面視におけるエアクリーナ１の設置面積ないし占有面積を拡大させることがない。また一般にエアクリーナにあっては、クリーンサイド側空間２６に比較してダーティサイド側空間２５がより大きく必要であるので、この大きなダーティサイド側空間２５を利用して吸気音低減装置３１を収容することが可能である。

なお、上記の吸気音低減装置３１では、弾性部材３３の内部の容積室３７といわゆる首管となる連通管３５とによってヘルムホルツの共鳴要素が構成され、これによっても吸気音低減作用が得られる。このヘルムホルツの共鳴要素による吸気音低減は、蛇腹状弾性部材３３をバネとした振動系による上述した低周波脈動音の消音帯域に比較して、より高い周波数帯域で作用する。

１…エアクリーナ
２…吸気ダクト
３…外気導入ダクト
５…エアクリーナエレメント
１０…エアクリーナケース
１１…ボディ
１２…カバー
２５…ダーティサイド側空間
２６…クリーンサイド側空間
３１…吸気音低減装置
３２…吸気音低減装置用ケース部
３３…弾性部材
３４…ベースプレート
３５…連通管
３７…容積室

Claims (3)

1. 合成樹脂製のエアクリーナケースの内部空間をダーティサイド側とクリーンサイド側とに区画するようにエアクリーナエレメントが配設されてなる内燃機関のエアクリーナであって、
   上記エアクリーナケースの一部として、上記内部空間に一端が開放された筒状に形成されるとともに、他端に外部に連通した連通孔を備えた吸気音低減装置用ケース部と、
   この吸気音低減装置用ケース部内に収容され、基端が開口するとともに先端が封止された略円筒状をなし、かつ周壁が蛇腹状に屈曲形成されてなる弾性部材と、
   上記吸気音低減装置用ケース部の一端の開口を覆うように取り付けられ、上記弾性部材の上記基端を保持するベースプレートと、
   上記弾性部材の内部に形成される容積室を上記内部空間に連通させるように上記ベースプレートを貫通して設けられた連通管と、
   からなる吸気音低減装置を内蔵しており、
   上記エアクリーナケースは、上記エアクリーナエレメントが装着される矩形の開口部を備えたボディと、上記開口部を覆うように上記ボディに取り付けられるカバーと、から構成されており、
   上記吸気音低減装置用ケース部は、上記ボディの底部に、上記開口部へ向かって一端が開口した筒状に成形されている、ことを特徴とする内燃機関のエアクリーナ。
2. 上記蛇腹状弾性部材の軸方向の伸縮による共振周波数が、３０〜２００Ｈｚの範囲内に設定されている、ことを特徴とする請求項１に記載の内燃機関のエアクリーナ。
3. 上記吸気音低減装置がダーティサイド側に配置されている、ことを特徴とする請求項１または２に記載の内燃機関のエアクリーナ。

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