JP6787545B2 - イオン発生器 - Google Patents

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Description

本発明は、イオン源と高電圧が印加されたイオン発生電極と引抜電極を備え、被注入体にイオンを注入するイオン発生器に関する。
材料中にイオン注入を行うと物性が著しく変化するため、近年では半導体関連産業などでイオンを電気的に加速するイオン加速器を利用したイオン注入処理が不可欠となっており、より局所域に任意量のイオンを注入する技術が求められている。
加速器などを用いたイオン注入装置は半導体産業等で使用されているが、大型かつ高額装置であり非汎用的である。また予めイオン発生器などで発生させたイオンを電気的に加速して利用するが、イオン発生器では一般に様々な質量のイオンやラジカルも同時に発生するため、目的とするイオンの生成効率が悪く、質量分離器を通して様々な種類の発生イオン種から目的とするイオンだけを選別するなど、イオン注入に複雑な処理工程が必要となる。
一方、市販のイオン銃は小型で取り扱いも容易であるが、被照射スポット径が1〜20mm程度と大きい、また電極の消耗などの理由によって最大で1000時間程度と寿命が短く、高価であるなどの欠点もある。これらのイオン銃はイオンの発生方法などによってコールドカソード型、エレクトロンボンバード型などがある。コールドカソード型イオン銃は、100ガウス程度の磁場と電界を利用してガスをイオン化してプラズマ状態にし、発生したイオンを利用する。多価イオンが発生しやすく、またラジカルイオンも50%程度発生することから、イオン加速器と同様に注入目的のイオンの生成効率が低い。
エレクトロンボンバード型イオン銃は加速エネルギが80〜100 eVと低エネルギのために1価のイオンが生成しやすく、またエネルギ分布も狭いために分析用途に用いられる。しかしフィラメントを利用するためにコールドカソード型よりもさらに寿命は短くなる。これら一般的なイオン銃では水素イオンH+の生成効率は特に低い。
以上に対して、比較的長寿命且つ被照射スポット径が1mm以下と小さいイオン放出装置として、電界電離型と呼ばれるイオン銃がある(特許文献1)。図15に従来例のイオン発生器として電界電離型イオン銃の構造を示す。
イオン発生電極110と引抜電極120は、直流高電圧124で高電圧が印加される。イオンはイオン発生電極110の先鋭化された端部から引抜電極120に向かって放出され、引抜電極120の孔121を抜けて被注入体122に注入される。イオン発生電極110、引抜電極120、および被注入体122は、チャンバ132内に設置され、注入チャンバ132内は、真空ポンプ144で真空にされる。真空にした後、イオン源をガスボンベ140から注入チャンバ132内へ入れる。イオン発生電極110は、冷却器127によりイオン発生電極110を約−250℃の極低温に冷却される。イオン発生電極110に、効率良くイオン源であるガスを吸着させるためである。
例えば、イオン源のガスを水素ガスとする。水素ガスはイオン発生電極110に吸着し、直流の高電圧印加によって水素ガスが水素イオンH+(以下、H+記す)と電子に解離する。イオン発生電極110には一般に仕事関数の大きいタングステンなどが利用される。イオン発生電極110の先端114は電界集中させるために100ナノメートル以下程度に先鋭化されている。このH+が引抜電極によってチャンバ内に飛び出して、被注入体122に注入される。イオン化領域が金属線先端の極めて狭い範囲に限られ、イオンビームのエネルギ幅が小さいので、被照射スポット径が最も小さいイオン銃である。
図16に、従来例のイオン発生器によるイオン注入の作用手順を示す。S901にて、注入チャンバ132内に被注入体122をセットして、注入チャンバ132の扉を閉める。S903にて、イオン発生電極110に接触している冷却器127に液体ヘリウムをいれてイオン発生電極110の先端114を極低温に冷却する。液体ヘリウムは貴重な資源である。S905にて、真空ポンプ144で注入チャンバ132内を真空にしてバルブ(図示せず)を閉める。S907にて、ガスボンベ140のバルブ142を開けてイオン源Gのガスを注入チャンバ132内にいれてバルブ142を閉める。S909にて、イオン発生電極110の先端114にイオン源のガスを吸着させる。S911にて、直流高圧電原124にてイオン発生電極110と引抜電極120に高電圧を印加して、イオン化したガスを被注入体122に注入する。S913にて、注入チャンバ132から被注入体122を取り出す。以上の7ステップを要する。
ここで、イオン発生部であるイオン発生電極110の先端114にイオン源のガス分子を効率良く吸着させるため、イオン発生電極110の先端114を−250℃程度の極低温まで冷却する必要がある。冷却に用いる液体ヘリウムは貴重な資源であり高価である。さらにイオン発生電極110の先端114の狭い面積にのみイオン源のガス分子が吸着させ、吸着させたガス分子をイオン化して放出されるため、放出イオン電流値が数ピコアンペア程度と小さい。またチャンバ内のイオン源ガスが無くなるとイオン放出できないことから、連続的なイオン放出が不可能である。
特開2015−076302
物部秀二ほか, 「近接場光学用プローブの作製法」. 精密工学会誌, 66巻、667ページ、2000年
従来のイオン発生器は、極低温に冷却したイオン発生電極110の先端114の狭い面積にのみイオン源のガス分子が吸着し、吸着させたガス分子をイオン化して放出されるため、極低温とするため貴重な資源で高価な液体ヘリウムが必要になる。本発明は、この課題を解決し、液体ヘリウムを不要としたイオン発生器を提供する。
上記課題を解決するために以下の発明がある。
発明1は、イオン源と、一端に先鋭化部を有するイオン発生電極と、引抜電極とを有し、高電圧が印加されると、先鋭化部からイオンを放出させるイオン発生器において、イオン発生電極は、ガラス転移温度以上、融解温度未満に加熱されるとイオンが伝導されることを特徴とするイオン発生器である。
発明2は、先鋭化部の曲率はR1μm以下であることを特徴とする発明1に記載するイオン発生器である。
発明3は、イオン源を封入したチャンバの壁に、イオン発生電極を、一方の先鋭化部をチャンバ外に、他方のイオン伝導体をチャンバ内に設置されていることを特徴とする発明1または2に記載するイオン発生器である。
発明4は、チャンバ内のイオン発生電極は、イオン源を分解する触媒で覆われていることを特徴とする発明3に記載するイオン発生器である。
発明5は、イオン源は、イオン発生電極に含まれていることを特徴とする発明1または2に記載するイオン発生器である。
発明6は、イオン源は、一価である 、水素イオン、または銀イオン、またはリチウムイオン、またはナトリウムイオン、またはカリウムイオン、またはルビジウムイオン,またはセシウムイオン、またはフッ化物イオンのいずれかであることを特徴とする発明1乃至5のいずれか1つに記載するイオン発生器である。
発明7は、先鋭化部、引抜電極、および被注入体は、真空引きされた注入チャンバに収納されていることを特徴とする発明1乃至6のいずれか1つに記載するイオン発生器である。
発明1は、ガラス転移温度以上、融解温度未満に加熱されると内部をイオンが伝導するイオン発生電極を用い、イオンはイオン発生電極のイオン伝導体内を引抜電極により吸引され移動し、先鋭化部から放出される。イオン発生電極のイオン伝導性は、温度に伴い上昇するため、ガラス転移温度以上、融解温度未満の温度範囲で加温するのが良い。放出されたイオンは、引抜電極の孔を通り抜け、被注入体に注入される。伝導するイオンの種類に応じたイオンが発生する。従来行われていたイオン発生電極の極低温の冷却が不要なので、貴重な資源で高価な液体ヘリウムが不要となる。
また、従来の液体ヘリウムで冷却するイオン発生電極を用いるイオン発生器は、放出イオン電流値が数ピコアンペア程度と小さい。本発明によれば、加熱されたイオン発生電極により、放出イオン電流値を大きくすることができる。
発明2は、イオン発生電極の先鋭化部の先端を1μm以下に先鋭化することによって先端に電界が集中する効果があり、より低い数キロボルト/cmの電界でイオンが発生する。
発明3は、イオン発生電極のイオン伝導体はチャンバ内に設置され、チャンバ内にはイオン源のガス分子が充填されている。よって、イオン伝導体の表面でガス分子を分解してイオンを発生させることで、連続的にイオンを放出することができる。チャンバにガス導入用のバルブおよびイオン源のガス分子が充填されたガスボンベを接続する。ガスボンベよりイオン源のガス分子が供給されることで、連続的なイオン放出が可能となる。ガスボンベ内には、イオン源として液体を封入しても良い。
発明4は、チャンバ内に設置されたイオン伝導体の表面に触媒を有する。特に、水素ガスを触媒で分解してイオンを発生させることで、連続的にイオンを放出することができる。
発明5は、イオン源がイオン発生電極に含まれているイオン発生器である。本発明によれば、イオン源のガス分子をいれるチャンバ、ガスボンベ等を廃止することができる。よって、イオン発生器を大幅に小型軽量化することができ、人間の手のひらサイズにもできる。手に持ってイオン注入の作業が可能になるので、作業性が大幅に向上する。
発明6は、イオン源は、一価である 、水素イオン、または銀イオン、またはリチウムイオン、またはナトリウムイオン、またはカリウムイオン、またはルビジウムイオン,またはセシウムイオン、またはフッ化物イオンのいずれかであることを特徴とする。発明1乃至4のいずれか1つに記載するイオン発生器である。1価イオンは活性で生体活動に深く関わることから、アモルファスシリコンの水素化による物性制御や治療、抗菌処理などができる。
発明7は、イオン発生電極の先鋭化部、引抜電極、および被注入体は、真空引きされて注入チャンバに収納されている。この構造によって、放出されたイオンは、大気などの窒素分子、酸素分子などに妨げられることなく被注入体に注入される。
また、発明1から7のイオン発生器によれば、放出イオン電流値は、従来の数ピコアンペア程度と比べ、数10ピコアンペア以上と、約5倍大きくすることができる。更に、被注入体にイオンを注入する手順を簡素化することができる。
本発明の第1実施形態のイオン発生器の構成を示す。 第1実施形態および第2実施形態のイオン発生器によるイオン注入の作業手順を示す。 第2実施形態によるイオン伝導体12の先鋭化部14を示す。 第3実施形態のイオン発生器1の構成を示す。 第3実施形態のイオン発生器1によるイオン注入の作業手順を示す。 第4実施形態のイオン発生器1の構成を示す。 第5実施形態のイオン発生器1の構成を示す。 第5実施形態のイオン発生器1によるイオン発生の測定結果を示す。 第7実施形態のイオン発生器1の構成を示す。 第7実施形態のイオン発生器1によるイオン注入の作業手順を示す。 第7施形態による印加電圧に対するイオン(プロトン)電流密度(イオン発生量)を示す。プロトン伝導性を示すイオン伝導性ガラス(55P・15SiO・10NaO・10KO・10Al:モル%)を使用した。 第第7施形態によるイオン発生電極10の温度の影響を示す。(a)は、イオン発生開始の電界強度。(b)は、電界強度3000V/cmにおけるイオン電流密度。 絶対温度の逆数に対するイオン電流の対数値を示す。 実施形態のイオン発生器の効果を示す。 従来例のイオン発生器の構成を示す。 従来例のイオン発生器によるイオン注入の作業手順を示す。
以下、図面を参照しつつ本発明の実施の形態について説明する。本発明は、以下の実施形態に限定されるものではなく、発明の範囲を逸脱しない限りにおいて、変更、修正、改良を加え得るものである。
(第1施形態)
第1施形態は、イオン源34と、一端に先鋭化部14を有するイオン発生電極10と、引抜電極20と、を有し、直流高圧電源24により高電圧が印加されると、先鋭化部14からイオンを放出させるイオン発生器において、イオン発生電極10は、イオン発生電極10を構成する材料のガラス転移温度以上、融解温度未満に加熱されるとイオン源34のガス分子がイオン化されて伝導されることを特徴とするイオン発生器1である。
図1に本発明の第1実施形態のイオン発生器1の構成を示す。イオン発生器1は、イオン発生電極10、イオン源34、引抜電極20、直流高圧電源24を有し、イオン発生電極10は、イオン伝導体12と先鋭化部14を有する。イオン発生電極10は、ヒータ26が取り付けられ、電源28により加熱される。
イオン発生電極10は、イオン発生電極10を構成する材料のガラス転移温度以上、融解温度未満に加熱されるが、その温度制御は、イオン発生電極10に取り付けられたセンサー(図示せず)により温度を計測し、コントローラ(図示ぜす)により、融解温度未満にてヒータ26への電源28の通電をOFFして冷却し、ガラス転移温度以上にてヒータ26へ電源28の通電をONして加熱しして制御する。また、電源28の通電をPWM制御等して一定温度で制御しても良い。
また、ヒータ26とセンサーは、イオン発生電極10に埋め込んで一体化して構成しても良い。
イオン発生電極10と引抜電極20の間に、直流高圧電源24により直流の高電圧を印加されると、イオン源34よりガス分子がイオン化されて、イオン伝導体12を通り、先鋭化部14よりイオンが引抜電極20に向かって放出される。放出されたイオンは、引抜電極20の孔21を通過して、被注入体22に注入される。
イオン伝導体12は、円柱形状が好ましく、外径Φ1〜5mm、長さ20〜100mmである。
ここで、イオン発生電極10がカチオン(陽イオン)伝導体の場合には、イオン発生電極10をプラス、引抜電極20をマイナスとして電圧印加するとカチオンが放出される。
一方、イオン発生電極10がアニオン(陰イオン)伝導体の場合には、イオン発生電極10をマイナス、引抜電極20をプラスとして電圧印加するとアニオンが放出される。
ここで、イオン源34のガス分子を水素とすると、イオン発生電極10では、式(1)の触媒反応で、イオン(プロトンH)を発生する。
→2H+2e- (1)
尚、イオン発生電極10は、イオンを伝導する材料であれば良く、例えばイオン伝導性ガラス、または銀イオン、またはリチウムイオン、またはナトリウムイオン、またはカリウムイオン、またはルビジウムイオン,またはセシウムイオン、またはフッ化物イオンが含まれるものを使用する。
図1の構成において直流高圧電源24によって高電圧を印加することで、イオン源34のガス分子を水素とした場合、式(1)で発生したH+が、イオン発生電極10である多孔質ガラスを伝導して先鋭化部14から放出され、引抜電極20の孔21を通り抜け、被注入体22に注入される。
また、イオン発生電極10として、水分を吸着した多孔質ガラスを用いることもできる。多孔質ガラスは吸着水を含み、この吸着水の中をイオンが伝導するため、0℃以上の室温で先端からイオンを放出させることができる。多孔質ガラスとして、例えばゾルーゲル法によって作製したプロトンを伝導するケイ酸塩ガラス(たとえばxP・(100-x)SiO:xはモルパーセント単位で0から70まで)やケイ酸塩ガラスと有機物との複合体などを用いることができる。
室温が0℃以下の場合、水分を吸着した多孔質ガラスをヒータ等で暖め水分を液状態とすると良い。
図2に、第1実施形態のイオン発生器1によるイオン注入の作業手順を示す。S101にて、被注入体22をセットする。S103にて、イオン発生電極10を電源28をオンにしヒータ26で加熱する。S105にて、直流高圧電源24により高電圧を印加して、イオン源34のガス分子をイオン化して被注入体22に注入する。S107にて、被注入体22を取り出す。以上の4ステップとなる。図16の従来例の7ステップに比べて3ステップ削減できる。
第1実施形態は、ガラス転移温度以上、融解温度未満に加熱されると内部をイオンが伝導するイオン発生電極10を用い、イオンはイオン発生電極10のイオン伝導体12内を引抜電極20により吸引され移動し、先鋭化部14から放出される。イオン発生電極10のイオン伝導性は、温度に伴い上昇するため、ガラス転移温度以上、融解温度未満の温度範囲で加温するのが良い。放出されたイオンは、引抜電極20の孔21を通り抜け、被注入体22に注入される。伝導するイオンの種類に応じたイオンが発生する。従来行われていたイオン発生電極の極低温の冷却が不要なので、貴重な資源で高価な液体ヘリウムが不要となる。
また、従来の液体ヘリウムで冷却するイオン発生電極を用いるイオン発生器は、放出イオン電流値が数ピコアンペア程度と小さい。第1実施形態によれば、後述のように加熱されたイオン発生電極により、放出イオン電流値を大きくすることができる。
(第2実施形態)
第2実施形態は、第1実施形態において先鋭化部の曲率はR1μm以下であることを特徴とする発明1に記載するイオン発生器である。
図3に、イオン発生電極10の先鋭化部14を示す。イオン発生電極10先鋭化は、メニスカスエッチングを用いて行った(非特許文献1)。フッ酸(HF)とシクロヘキサンの入った容器にイオン伝導体12を所定時間浸漬し、HFとシクロヘキサン溶液およびイオン伝導体界面のメニスカスを利用してガラスを溶解させ、先鋭化部14の先端を得た。
メニスカスエッチングによって先鋭化されたイオン伝導体12の先鋭化部14の形状はHF濃度や浸漬時間によっておよそ3°〜20°まで大きく変化した。また、元素(EDS)分析よりエッチング処理前後でイオン伝導体12の先鋭化部14の組成に変化の無いことを確認した。また、イオン発生電極10の先鋭化部14の曲率半径Rを、1μm(ミクロン)以下までエッチングした。
すなわち、イオン発生電極10の先鋭化部14の曲率半径をR、直流高圧電源の電圧をVとすると、電界強度はV/Rに比例するため、イオン伝導体12の先鋭化部14の曲率半径Rは小さい程良い。先鋭化した先端の電界(F)は式(2)の関係がある。
F = V / (k×R) (2)
ここでVは電圧、kは形状因子と呼ばれる定数で5程度の値である。R=1mmの場合と比較して、R=1μmでは同じ電圧でも電界強度は1000倍高くなる。
第2実施形態は、イオン発生電極10の先鋭化部14の先端を1μm以下に先鋭化することによって先端に電界が集中する効果があり、より低い数キロボルト/cmの電界でイオンが発生するイオン発生器1である。
(第3実施形態)
第3実施形態は、イオン源34を封入したチャンバ30の壁に、イオン発生電極10を、一方の先鋭化部14をチャンバ30外に、他方のイオン伝導体12をチャンバ内に設置されていることを特徴とする第1実施形態または第2実施形態に記載するイオン発生器1である。
図4に、第3実施形態のイオン発生器1の構成を示す。イオン発生器1は、イオン源34を封入したチャンバ30と、直流高圧電源24により高電圧が印加されたイオン発生電極10と引抜電極20を有する。イオン発生電極10が、構成する材料のガラス転移温度以上、融解温度未満に加熱されると、イオン源34のガス分子は、イオン発生電極10のイオン伝導体12を伝導し、イオン化して先鋭化部14から放出される。放出されたイオンは、被注入体22に注入される。
イオン発生電極10は、円柱形状が好ましく、外径Φ1〜5mm、長さ20〜100mmである。イオン発生電極10は、チャンバ30の壁に、先鋭化部14をチャンバ30外に、約30mm突出して設置される。イオン伝導体12は、チャンバ30内に設置される。イオン伝導体12は、イオン源34のガス分子と接触している。
イオン源チャンバ30内のイオン発生電極10と引抜電極20との間に直流高圧電源24によって数kVの高電圧を印加する。イオン伝導体12の先鋭化部14は、電界集中の効果があり、より低い電圧、例えば約1 kVの電圧を加えた印加電界でイオンが放出される。
また、イオン源チャンバ30にガス導入用のバルブ42およびイオン源34のガス分子が封入されているガスボンベ40を接続する。この際、予めイオン源チャンバ30内を真空ポンプ(図示せず)真空引きして、内部の窒素ガス、酸素ガス等を排気しておく。これは以下の実施形態でも同様である。
ガスボンベ40よりイオン源34のガス分子を連続して供給されることで、連続的なイオン放出が可能となる。ガスボンベ内には、イオン源として液体を封入しても良い。
図5に、第3実施形態のイオン発生器1によるイオン注入の作業手順を示す。S301にて、被注入体22をセットする。S303にて、ガスボンベ40からイオン源Gのガス分子をイオン源チャンバ30へ入れる。S305にて、ヒータ26にてイオン伝導体12をガラス転移温度Tg(℃)以上、融解温度(℃)未満に加熱する。S307にて、直流高圧電源24により高電圧を印加して、イオン源Gのガス分子をイオン化して被注入体22に注入する。S307にて、被注入体22を取り出す。以上の5ステップとなる。図16の従来例の7ステップに比べて2ステップ削減できる。
第3実施形態は、イオン発生電極10のイオン伝導体12はチャンバ30内に設置され、チャンバ30内にはイオン源34のガス分子が充填されている。よって、イオン伝導体12の表面でガス分子を分解してイオンを発生させることで、連続的にイオンを放出することができる。チャンバ30にガス導入用のバルブ42およびイオン源34のガス分子が充填されたガスボンベ40を接続する。ガスボンベ40よりイオン源34のガス分子が供給されることで、連続的なイオン放出が可能となる。ガスボンベ40内には、イオン源34として液体を封入しても良い。
(第4実施形態)
第4実施形態は、チャンバ30内のイオン発生電極10は、イオン源34を分解する触媒16で覆われていることを特徴とする第3実施形態に記載するイオン発生器1である。
図6に、第4実施形態のイオン発生器1の構成を示す。イオン発生電極10のイオン伝導体12は、外側にイオン源34のガス分子をイオンに分解する触媒16を有する。
触媒16は、イオン伝導体12の大きさ(ここでは長さ)に拘束されず、必要なイオン放出量(放出イオン電流)とする面積を確保できる。触媒16で発生したイオンは、イオン伝導体12を伝導して、先鋭化部14から放出される。放出されたイオンがチャンバ30の外部に設置された引抜電極20の孔21を通過して被注入体22に注入される。
ここで、イオン伝導体12がカチオン(陽イオン)伝導体の場合には、イオン発生電極10(触媒16)をプラス、引抜電極20をマイナスとして電圧印加するとカチオンが放出される。
一方、イオン伝導体12がアニオン(陰イオン)伝導体の場合には、イオン発生電極10(触媒16)をマイナス、引抜電極20をプラスとして電圧印加するとアニオンが放出される。
触媒16は、式(1)の反応を促す触媒であればなんでも良い。例えば、パラジウム、白金、ニッケルもしくはそれらの合金などである。
触媒16を用いることで、ガス分子を分解してイオンを発生させることができ、図15の従来例で用いられた、イオン発生電極110の先端部114を、極低温の−250℃に冷却する冷却器127(冷媒としてヘリウムを使用)を不要とすることができる。液体ヘリウムは貴重な資源であり高価であるのでコストダウンの効果が大きい。
第4実施形態は、チャンバ30内に設置されたイオン伝導体12の表面に触媒16を有する。特に、水素ガスを触媒16で分解してイオンを発生させることで、連続的にイオンを放出することができる。
(第5実施形態)
第5実施形態は、イオン源34は、イオン発生電極10に含まれていることを特徴とする第1実施形態または第2実施形態に記載するイオン発生器1である。
図7に本発明の第5実施形態のイオン発生器1の構成を示す。イオン発生器1は、内部にイオン源34を有するイオン発生電極10、引抜電極20、直流高圧電源24を有し、イオン発生電極10は、イオン伝導体12と先鋭化部14を有する。イオン発生電極10には、ヒータ26が取り付けられ、電源28により加熱される。
イオン発生電極10と引抜電極20の間に、直流高圧電源24により直流の高電圧を印加されると、イオン源34よりガス分子がイオン化されて、イオン伝導体12を通り、先鋭化部14よりイオンが引抜電極20に向かって放出される。放出されたイオンは、引抜電極20の孔21を通過して、被注入体22に注入される。
図8に、第5実施形態のイオン発生器1によるイオン発生の測定結果を示す。イオン源34に銀製の円柱(銀ロッド)、イオン伝導体12に銀イオン伝導体を接続して、イオン発生電極10と引抜電極20の間に4kVを印加した際のイオン電流の時間変化を示す。
図8より、40時間を超えて安定に銀イオンが放出されていることが分かる。
よって、イオン源34として例えば銀製の円柱、イオン伝導体12に銀イオン伝導体を接続すると、Ag+イオンが先鋭化部14の先端から放出され、また銀イオンは銀円柱よりイオン伝導体12に供給されることで連続的にAg+イオンが放出される。この実施形態では触媒16は無くてもよい。
イオン源34は、Li+イオンの場合にはリチウム金属、Na+イオンの場合にはナトリウム金属にそれぞれ変更する。
第5実施形態は、イオン源34がイオン発生電極10に含まれているイオン発生器1である。第5実施形態によれば、イオン源34のガス分子をいれるチャンバ30、ガスボンベ40等を廃止することができる。よって、イオン発生器1を大幅に小型軽量化することができ、人間の手のひらサイズにもできる。手に持ってイオン注入の作業が可能になるので、作業性が大幅に向上する。
(第6実施形態)
第6実施形態は、イオン源34は、一価である、水素イオン、または銀イオン、またはリチウムイオン、またはナトリウムイオン、またはカリウムイオン、またはルビジウムイオン,またはセシウムイオン、またはフッ化物イオンのいずれかであることを特徴とする第1実施形態乃至第5実施形態のいずれか1つに記載するイオン発生器1である。
イオン発生器1で放出されるイオンには、カチオンとアニオンがある。本発明においては多価イオンも可能性あるが、1価のカチオンあるいはアニオンが好ましい。カチオンの種類には水素イオンH+、銀イオンAg+、リチウムイオンLi+、ナトリウムイオンNa+、カリウムイオンK+、ルビジウムイオンRb+、セシウムイオンCs+などの1価イオンがある。また、アニオンの種類にはフッ化物イオンF−など1価イオンがある。
1価イオンは活性で生体活動に深く関わることから、アモルファスシリコンの水素化による物性制御や治療、抗菌処理などができる。
イオン伝導性ガラスの材料は、例えば放出されるイオンに対して以下のような材料がある。
「カチオンの1価イオン」の場合:
水素イオンH+のイオン伝導性ガラスは、構成および比率が(55P・15SiO・10NaO・10KO・10Al:モル%)の材料を溶融して作成する。ガラス転移温度Tg=350℃、融解温度=600℃である。水素イオンH+は、水酸基としてイオン伝導性ガラス中に含まれる。
銀イオンAg+のイオン伝導性ガラスは、構成および比率が(55P・15SiO・20AgO・10Al:モル%)の材料を溶融して作成する。ガラス転移温度Tg=410℃、融解温度=600℃である。銀イオンAg+は、イオンとして非架橋酸素(Si-O)と結合して含まれる。
リチウムイオンLi+のイオン伝導性ガラスは、構成および比率が(55P・15SiO・20LiO・10Al:モル%)の材料を溶融して作成する。ガラス転移温度Tg=350℃、融解温度=600℃である。リチウムイオンLi+は、イオンとして非架橋酸素(Si-O)と結合して含まれる。
ナトリウムイオンNa+のイオン伝導性ガラスは、構成および比率が(55P・15SiO・20NaO・10Al:モル%)の材料を溶融して作成する。ガラス転移温度Tg=350℃、融解温度=600℃である。ナトリウムイオンNa+は、イオンとして非架橋酸素(Si-O)と結合して含まれる。
カリウムイオンK+のイオン伝導性ガラスは、構成および比率が(55P・15SiO・20KO・10Al:モル%)の材料を溶融して作成する。ガラス転移温度Tg=350℃、融解温度=600℃ある。カリウムイオンK+は、イオンとして非架橋酸素(Si-O)と結合して含まれる。
ルビジウムイオンRb+のイオン伝導性ガラスは、構成および比率が(55P・15SiO・20RbO・10Al:モル%)の材料を溶融して作成する。ガラス転移温度Tg=350℃、融解温度=600℃である。ルビジウムイオンRb+は、イオンとして非架橋酸素(Si-O)と結合して含まれる。
セシウムイオンCs+のイオン伝導性ガラスは、構成および比率が(55P・15SiO・20CsO・10Al:モル%)の材料を溶融して作成する。ガラス転移温度Tg=350℃、融解温度=600℃ある。セシウムイオンCs+は、イオンとして非架橋酸素(Si-O)と結合して含まれる。
「アニオンの1価イオン」の場合
フッ化物イオンF−のイオン伝導性ガラスは、構成および比率が(ZrF0.5(BaF0.35(CsF)0.15の材料を溶融して作成する。ガラス転移温度Tg=430℃、融解温度=600℃である。フッ化物イオンF−はカチオンと結合して含まれる。
尚、これらのイオン伝導性ガラスは、ガラス転移温度Tg(℃)以下であってもイオンの電導性はある。
放出イオンが水素イオンH+の場合にはプロトンを伝導するイオン伝導性ガラスを用いてイオン源チャンバ30に水素ガスを導入すると、連続的に水素イオンH+放出が可能である。
同様にフッ化物イオンF-の場合にはフッ化物イオンF-を伝導するイオン伝導性ガラスを用いてイオン源チャンバ30にフッ素ガスを導入することで、連続的にF-放出が可能である。
水素イオンH+以外のカチオンの1価イオン(銀イオンAg+、リチウムイオンLi+、ナトリウムイオンNa+、カリウムイオンK+、ルビジウムイオンRb+、セシウムイオンCs+)については、イオン源となるガスが無い。よってそれぞれのイオン種に応じた金属(銀イオンでは銀、リチウムイオンではリチウム、以下同様)をイオン源34として使用する。
ここで、イオン伝導体12は、イオンを伝導する材料であれば良く、水分を吸着した多孔質ガラスまたはイオン伝導性ガラスでも良い。
水分を吸着した多孔質ガラスイオン伝導体は、放出対象のイオンを、水分中を伝導するので特に組成を限定しない。即ち、水分中に、水素イオンH+または銀イオンAg+またはリチウムイオンLi+またはナトリウムイオンNa+またはカリウムイオンK+またはルビジウムイオンRb+またはセシウムイオンCs+またはフッ化物イオンF−を入れておれば良い。多孔質ガラスイオン伝導体は、常温で使用できる。
またはイオン発生器1のイオン伝導体12は、水分を吸着した多孔質ガラスまたはイオン伝導性ガラスにおいて、水素イオン、または銀イオン、またはリチウムイオン、またはナトリウムイオン、またはカリウムイオン、またはルビジウムイオン,またはセシウムイオン、またはフッ化物イオンのいずれかを含んでいるものを用いても良い。
第6実施形態は、イオン源34は、一価である 、水素イオン、または銀イオン、またはリチウムイオン、またはナトリウムイオン、またはカリウムイオン、またはルビジウムイオン,またはセシウムイオン、またはフッ化物イオンのいずれかであることを特徴とする。発明1乃至5のいずれか1つに記載するイオン発生器1である。1価イオンは活性で生体活動にも深く関わることから、アモルファスシリコンの水素化による物性制御のほか、治療、抗菌処理などができる。
(第7実施形態)
第7実施形態は、先鋭化部14、引抜電極20、および被注入体22は、真空引きされた注入チャンバ32に収納されていることを特徴とする第1実施形態乃至第6実施形態のいずれか1つに記載するイオン発生器1である。
図9に、第7実施形態のイオン発生器1の構成を示す。イオン発生器1は、イオン源34のガス分子を封入したチャンバ30と、直流高圧電源24により高電圧が印加されたイオン発生電極10と引抜電極20を有し、被注入体22にイオンを注入する。
引抜電極20および被注入体22は注入チャンバ32内に設置される。イオン源チャンバ30と注入チャンバ32は、中間壁を介して接触して設置される。中間壁には、触媒16およびイオン伝導体12はイオン源チャンバ30側に設置され、イオン伝導体12と先生化部14は注入チャンバ32側に突出して設置される。
触媒16は、水素イオン以外のイオンを使用する場合は無くても良い。
引抜電極20および被注入体22を注入チャンバ32内に設置し、真空ポンプ44によって注入チャンバ内を減圧する。この構造によって、大気などに妨げられることなく先鋭化部14から放出されるイオンが被注入体22に注入されるようになる。
第4実施形態と比べ、放出されたイオンが、大気中の窒素分子、酸素分子などに妨げられることなく被注入体に注入される。
また、従来例における放射されたイオンが、その行路中に残留ガスと衝突して消滅する問題を解決することができる。よって、イオン伝導体12、引抜電極20および被注入体を注入チャンバ32に納めることにより、高いイオン電流密度が得られる。
また、イオン源チャンバ30にガス導入用のバルブ42およびイオン源Gのガス分子が封入されているガスボンベ40を接続する。ガスボンベ40よりイオン源Gのガス分子を連続して供給されることで、連続的なイオン放出が可能となる。ガスボンベ内には、イオン源として液体を封入しても良い。
図9に、第5実施形態のイオン発生器1によるイオン注入の作業手順を示す。S401にて、被注入体22をセットして扉を閉める。S403にて、真空ポンプ44にて注入チャンバ32内を真空引きする。S405にて、ガスボンベ40からイオン源Gのガス分子をイオン源チャンバ30へ入れる。S407にて、ヒータ26にてイオン伝導体12をガラス転移温度Tg(℃)以上、融解温度(℃)未満に加熱する。S409にて、直流高圧電源24により高電圧を印加して、オン源Gのガス分子をイオン化して被注入体22に注入する。S411にて、被注入体22を取り出す。以上の6ステップとなる。図16の従来例に比べて1スッテプ削減できる。
第7実施形態は、イオン発生電極10の先鋭化部14、引抜電極20、および被注入体21は、真空引きされて注入チャンバ32に収納されている。この構造によって、放出されたイオンは、大気などの窒素分子、酸素分子などに妨げられることなく被注入体21に注入される。
また、第1実施形態発明から第7実施形態のイオン発生器1によれば、後述するように放出イオン電流値は、従来の数ピコアンペア程度と比べ、数10ピコアンペア以上と、約5倍大きくすることができる。更に、被注入体にイオンを注入する手順を簡素化することができる。
(測定結果)
図11に図9の構成によって実施したイオン電流密度の測定結果を示す。イオン発生電極10は、プロトン伝導性を示すイオン伝導性ガラス(55P・15SiO・10NaO・10KO・10Al:モル%)を使用した。イオン発生電極10の先鋭化部14は、第2実施形態のエッチングで作成した。触媒16は、パラジウム管を用いて、内側にイオン伝導体12の先鋭化していない端部を挿入して固定した。先鋭化部14を550℃に加熱して引抜電極20と触媒16の間に高電圧を印加した。イオン源34のガス分子として水素ガスを用いた。
放出された水素イオンのイオン電流をピコアンメーターで測定し、機器制御・データ集録にはナショナルインスツルメンツ社のLabVIEWを用いた。被注入体22を置く注入チャンバ32は0.001Pa以下に減圧した。イオン源チャンバ30には水素ガスを導入した。イオン発生電極10の先端化部14と引抜電極20との間の距離を1cmとし、直流高圧電源24より印加した電圧を1cmで除して電界強度を算出した。縦軸に引抜電極20の孔21の直径(3 mm)で規格化したイオン電流密度、また横軸に印加電界強度をプロットした(図11)。
図11から電界強度1000 V/cm程度から直線的にイオン電流密度が増加していることがわかる。
よって、本実施形態の放出イオン電流値は、従来の数ピコアンペア程度と比べ、数10ピコアンペア以上と、約5倍大きくすることができる。
図12に、第7実施形態によるイオン発生電極10の先鋭化部14の温度の影響を示す。図12(a)は、イオン発生開始の電界強度であり、また図12(b)は、電界強度3000 V/cmにおけるイオン電流密度を表す。またTgは使用したイオン伝導体のガラス転移温度である。温度の上昇に伴い、より低い電界強度でイオンが放出され、またイオン電流密度が増大することがわかる。使用したイオン伝導体の融解温度未満まで温度上昇は可能である。
図13に、温度とイオン電流より計算した活性化エネルギを示す。
横軸は絶対温度の逆数(1/T)、縦軸は計測したイオン電流の対数値(i)である。
これらにはアレニウス式である式(3)の関係がある。
i = k × exp(- ΔE / RT)、 (3)
ここでkは定数、ΔEは活性化エネルギ、 Rは気体定数、Tは絶対温度を表す。
両辺対数をとると式(4)となる。
ln i = ln k - ΔE/RT (4)
ここで、ΔE/Rが図9の傾き(-1.985)に相当する。
R=8.31 J/mol・Kおよび自然対数(ln)から常用対数(log)の変換値(2.3)を用いると式4となり、活性化エネルギはおよそ40 kJ/molとなる。
ΔE = -1.985 ×8.31×2.3 (5)
実験によってややバラツキがあり、40〜60kJ/molの値が得られている。
よって、イオン発生電極10の先鋭化部14の温度が高い程、イオンの発生が多い。
図14に、イオン発生器1により、シリコンウエハに対して、水素イオン(プロトン)注入した前後の水滴の接触角を示す。接触角は、イオン注入前82.4°からイオン注入後101.4°へと19°上昇し、シリコンウエハの表面が撥水化した。Si−Hはシリコンに比べて撥水性を示すことから、シリコンウエハの表面に水素イオンH+が注入されたことを検証した。
水素イオンH+は電子殻をもたない非常に活性なイオンであり、H+注入による表面形状や極性、また電気・光学特性の変化などが期待される。たとえば太陽電池や液晶パネルなどに利用されるアモルファスシリコンは水素化されており、水素量によって電気特性が変化する。局所的に任意の量のH+を簡便に注入することで、アモルファスシリコンの物性制御への利用が考えられる。またポリアニリンは絶縁体であるがH+を注入することで半導体に転移する。化学薬品を用いずに導電性を付与することができ、局所的にH+をポリアニリンに注入することで多様な電子回路設計の可能性が広がる。そのほかガラスにH+を注入した場合は架橋酸素の結合が切れることで水酸基(OH基)が生成し、親水性を付与することが可能となる。
Na+やK+や生命活動に深く関係しており、Na+は体内の水分量の調整、またK+は筋肉や神経の働きに関係する。これらのイオンを局所的に注入可能となれば、新たな治療法の開発などが期待される。
Cs+イオンを注入すると、被注入体表面の仕事関数を下げる効果があり、被注入体から負イオンが出やすくなる。この原理は二次イオン質量分析法などで利用され、ppm〜ppb程度の不純物まで検出可能となる。
Ag+は抗菌性を付与することが可能であり、歯科治療などの応用が考えられる。また注入したAg+を還元すればAgナノ粒子が生成する。Agナノ粒子は表面増強ラマン散乱など光学活性に効果がある。これまでAgナノ粒子を作製する手法は様々開発されているが、Agナノ粒子を周期的に配列する汎用技術は無い。Ag+イオン銃によってAgナノ粒子配列が期待される。
一方、フッ素は表面エネルギを下げる効果がり、フッ化物イオンを注入することで表面の撥水化が期待される。また骨や歯の主成分であるハイドロキシアパタイトとフッ化物イオンが反応するとフルオロアパタイトが生成する。フルオロアパタイトはハイドロキシアパタイトに比べて酸に溶けにくく、フッ化物イオン注入による歯科治療の用途が広がる。
イオン発生器 1
イオン発生電極 10
イオン伝導体 12
先鋭化部 14
触媒 16
引抜電極 20
孔 21
被注入体 22
直流高圧電原 24
ヒータ 26
電源 28
チャンバ(イオン源) 30
注入チャンバ 32
イオン源 34
ガスボンベ 40
バルブ 42
真空ポンプ 44

Claims (8)

  1. イオン源と、一端に先鋭化部を有するイオン発生電極と、引抜電極と、を有し、
    高電圧が印加されると、
    前記先鋭化部からイオンを放出させるイオン発生器において、
    前記イオン源は、一価である、銀イオン、またはリチウムイオン、またはナトリウムイオン、またはカリウムイオン、またはルビジウムイオン,またはセシウムイオン、またはフッ化物イオンのいずれかであり、
    前記イオン発生電極は、ガラス転移温度以上、融解温度未満に加熱されるとイオンが伝導されることを特徴とするイオン発生器。
  2. イオン源と、一端に先鋭化部を有するイオン発生電極と、引抜電極と、を有し、
    高電圧が印加されると、
    前記先鋭化部からイオンを放出させるイオン発生器において、
    前記イオン源は、一価である、水素イオンであり、
    前記イオン発生電極は、構成および比率が55P ・15SiO ・10Na O・10K O・10Al :モル%の材料を溶融して作成されたイオン伝導ガラスであることを特徴とするイオン発生器。
  3. 前記イオン源がリチウムイオンであるときの前記イオン発生電極は、構成および比率が55P ・15SiO ・20Li O・10Al :モル%の材料を、前記イオン源がナトリウムイオンであるときの前記イオン発生電極は、構成および比率が55P ・15SiO ・20Na O・10Al :モル%の材料を、前記イオン源がカリウムイオンであるときの前記イオン発生電極は、構成および比率が55P ・15SiO ・20K O・10Al :モル%の材料を、前記イオン源がルビジウムイオンであるときの前記イオン発生電極は、構成および比率が55P ・15SiO ・20Rb O・10Al :モル%の材料を、前記イオン源がセシウムイオンであるときの前記イオン発生電極は、構成および比率が55P ・15SiO ・20Cs O・10Al :モル%の材料を、それぞれ溶融して作成されたイオン伝導ガラスであることを特徴とする請求項1に記載のイオン発生器。
  4. 前記先鋭化部は、曲率はR1μm以下であることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか一つに記載するイオン発生器。
  5. イオン源を封入したチャンバの壁に、イオン発生電極を、一方の先鋭化部をチャンバ外に、他方のイオン伝導体を前記チャンバ内に設置されたことを特徴とする請求項1乃至4のいずれか一つに記載するイオン発生器。
  6. 前記チャンバ内の前記イオン発生電極は、イオン源を分解する触媒で覆われていることを特徴とする請求項に記載するイオン発生器。
  7. 前記イオン源は、前記イオン発生電極に含まれていることを特徴とする請求項1乃至6のいずれか一つに記載するイオン発生器。
  8. 前記先鋭化部、前記引抜電極、および被注入体は、真空引きされた注入チャンバに収納されていることを特徴とする請求項1乃至のいずれか1つに記載するイオン発生器。
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