以下、添付図面を参照して、超音波診断装置及び画像処理装置の実施形態を詳細に説明する。なお、以下の説明において、同様の構成要素には共通の符号を付与するとともに、重複する説明を省略する。
(第1の実施形態)
まず、第1の実施形態に係る超音波診断装置の構成について説明する。図1は、第1の実施形態に係る超音波診断装置の構成例を示すブロック図である。図1に例示するように、本実施形態に係る超音波診断装置は、超音波プローブ1と、ディスプレイ2と、入力部3と、装置本体10とを有する。
超音波プローブ1は、例えば、複数の圧電振動子を有し、これら複数の圧電振動子は、後述する装置本体10が有する送受信回路11から供給される駆動信号に基づき超音波を発生する。また、超音波プローブ1は、被検体Pからの反射波を受信して電気信号に変換する。また、超音波プローブ1は、圧電振動子に設けられる整合層と、圧電振動子から後方への超音波の伝播を防止するバッキング材等を有する。なお、超音波プローブ1は、装置本体10と着脱自在に接続される。
超音波プローブ1から被検体Pに超音波が送信されると、送信された超音波は、被検体Pの体内組織における音響インピーダンスの不連続面で次々と反射され、反射波信号として超音波プローブ1が有する複数の圧電振動子にて受信される。受信される反射波信号の振幅は、超音波が反射される不連続面における音響インピーダンスの差に依存する。なお、送信された超音波パルスが、移動している血流や心臓壁等の表面で反射された場合の反射波信号は、ドプラ効果により、移動体の超音波送信方向に対する速度成分に依存して、周波数偏移を受ける。
ここで、第1の実施形態に係る超音波プローブ1は、超音波により被検体Pを2次元で走査するとともに、被検体Pを3次元で走査することが可能な超音波プローブであってもよい。具体的には、第1の実施形態に係る超音波プローブ1は、一列に配置された複数の圧電振動子により、被検体Pを2次元で走査するとともに、複数の圧電振動子を所定の角度(揺動角度)で揺動させることで、被検体Pを3次元で走査するメカニカル4Dプローブや、複数の圧電振動子がマトリックス状に配置されることで、被検体Pを3次元で超音波走査することが可能な2Dプローブであってもよい。なお、2Dプローブは、超音波を集束して送信することで、被検体Pを2次元で走査することも可能である。ここで、本実施形態に係る超音波走査は、少なくとも1回の超音波送受信で1フレーム分のデータを収集することを示す。
入力部3は、マウス、キーボード、ボタン、パネルスイッチ、タッチコマンドスクリーン、フットスイッチ、トラックボール、ジョイスティック等を有し、超音波診断装置の操作者からの各種設定要求を受け付け、装置本体10に対して受け付けた各種設定要求を転送する。例えば、入力部3は、超音波画像に対する関心領域(ROI:Region Of Interest)の設定要求を受け付ける。
ディスプレイ2は、超音波診断装置の操作者が入力部3を用いて各種設定要求を入力するためのGUI(Graphical User Interface)を表示したり、装置本体10において生成された各種画像データ等を表示したりする。
装置本体10は、超音波プローブ1が受信した反射波信号に基づいて超音波画像データを生成する装置である。例えば、第1の実施形態に係る装置本体10は、超音波プローブ1が受信した2次元の反射波データに基づいて2次元の超音波画像データを生成可能な装置である。また、例えば、第1の実施形態に係る装置本体10は、超音波プローブ1が受信した3次元の反射波データに基づいて3次元の超音波画像データを生成可能な装置である。
装置本体10は、図1に示すように、送受信回路11と、Bモード処理回路12と、ドプラ処理回路13と、画像メモリ14と、処理回路15と、内部記憶回路16とを有する。図1に示す超音波診断装置においては、各処理機能がコンピュータによって実行可能なプログラムの形態で内部記憶回路16へ記憶されている。送受信回路11、Bモード処理回路12、ドプラ処理回路13、及び、処理回路15は、内部記憶回路16からプログラムを読み出して実行することで各プログラムに対応する機能を実現するプロセッサである。換言すると、各プログラムを読み出した状態の各回路は、読み出したプログラムに対応する機能を有することとなる。
なお、上記説明において用いた「プロセッサ」という文言は、例えば、CPU(Central Processing Unit)、GPU(Graphics Processing Unit)、或いは、特定用途向け集積回路(Application Specific Integrated Circuit:ASIC)、プログラマブル論理デバイス(例えば、単純プログラマブル論理デバイス(Simple Programmable Logic Device:SPLD)、複合プログラマブル論理デバイス(Complex Programmable Logic Device:CPLD)、及びフィールドプログラマブルゲートアレイ(Field Programmable Gate Array:FPGA)等の回路を意味する。プロセッサは記憶回路に保存されたプログラムを読み出し実行することで機能を実現する。なお、記憶回路にプログラムを保存する代わりに、プロセッサの回路内にプログラムを直接組み込むよう構成しても構わない。この場合、プロセッサは回路内に組み込まれたプログラムを読み出し実行することで機能を実現する。なお、本実施形態の各プロセッサは、プロセッサごとに単一の回路として構成される場合に限らず、複数の独立した回路を組み合わせて1つのプロセッサとして構成し、その機能を実現するようにしてもよい。
送受信回路11は、パルス発生器、送信遅延回路、パルサ等を有し、超音波プローブ1に駆動信号を供給する。パルス発生器は、所定のレート周波数で、送信超音波を形成するためのレートパルスを繰り返し発生する。また、送信遅延回路は、超音波プローブ1から発生される超音波をビーム状に集束し、かつ送信指向性を決定するために必要な圧電振動子ごとの遅延時間を、パルス発生器が発生する各レートパルスに対し与える。また、パルサは、レートパルスに基づくタイミングで、超音波プローブ1に駆動信号(駆動パルス)を印加する。すなわち、送信遅延部は、各レートパルスに対し与える遅延時間を変化させることで、圧電振動子面から送信される超音波の送信方向を任意に調整する。
なお、送受信回路11は、後述する処理回路15の指示に基づいて、所定のスキャンシーケンスを実行するために、送信周波数、送信駆動電圧等を瞬時に変更可能な機能を有している。特に、送信駆動電圧の変更は、瞬間にその値を切り替え可能なリニアアンプ型の発信回路、又は、複数の電源ユニットを電気的に切り替える機構によって実現される。
また、送受信回路11は、プリアンプ、A/D(Analog/Digital)変換器、受信遅延部、加算器等を有し、超音波プローブ1が受信した反射波信号に対して各種処理を行って反射波データを生成する。プリアンプは、反射波信号をチャネル毎に増幅する。A/D変換器は、増幅された反射波信号をA/D変換する。受信遅延回路は、受信指向性を決定するために必要な遅延時間を与える。加算器は、受信遅延回路によって処理された反射波信号の加算処理を行なって反射波データを生成する。加算器の加算処理により、反射波信号の受信指向性に応じた方向からの反射成分が強調され、受信指向性と送信指向性とにより超音波送受信の総合的なビームが形成される。
第1の実施形態に係る送受信回路11は、被検体Pを2次元走査するために、超音波プローブ1から2次元の超音波ビームを送信させる。そして、第1の実施形態に係る送受信回路11は、超音波プローブ1が受信した2次元の反射波信号から2次元の反射波データを生成する。また、第1の実施形態に係る送受信回路11は、被検体Pを3次元走査するために、超音波プローブ1から3次元の超音波ビームを送信させる。そして、第1の実施形態に係る送受信回路11は、超音波プローブ1が受信した3次元の反射波信号から3次元の反射波データを生成する。
なお、送受信回路11からの出力信号の形態は、例えば、RF(Radio Frequency)信号と呼ばれる位相情報が含まれる信号である場合や、包絡線検波処理後の振幅情報である場合等、種々の形態が選択可能である。
Bモード処理回路12は、送受信回路11から反射波データを受信し、対数増幅、包絡線検波処理等を行なって、信号強度が輝度の明るさで表現されるデータ(Bモードデータ)を生成する。
ドプラ処理回路13は、送受信回路11から受信した反射波データから速度情報を周波数解析し、ドプラ効果による血流や組織、造影剤エコー成分を抽出し、速度、分散、パワー等の移動体情報を多点について抽出したデータ(ドプラデータ)を生成する。本実施形態の移動体は、血管内を流動する血液や、リンパ管内を流動するリンパ液等の流体である。
なお、第1の実施形態に係るBモード処理回路12及びドプラ処理回路13は、2次元の反射波データ及び3次元の反射波データの両方について処理可能である。すなわち、Bモード処理回路12は、2次元の反射波データから2次元のBモードデータを生成し、3次元の反射波データから3次元のBモードデータを生成する。また、ドプラ処理回路13は、2次元の反射波データから2次元のドプラデータを生成し、3次元の反射波データから3次元のドプラデータを生成する。3次元のBモードデータは、3次元走査範囲の各走査線上で設定された複数の点(サンプル点)それぞれに位置する反射源の反射強度に応じた輝度値が割り当てられたデータとなる。また、3次元のドプラデータは、3次元走査範囲の各走査線上で設定された複数の点(サンプル点)それぞれに、血流情報(速度、分散、パワー)の値に応じた輝度値が割り当てられたデータとなる。
画像メモリ14は、後述する処理回路15が生成した表示用の画像データを記憶するメモリである。また、画像メモリ14は、Bモード処理回路12やドプラ処理回路13が生成したデータを記憶することも可能である。画像メモリ14が記憶するBモードデータやドプラデータは、例えば、診断の後に操作者が呼び出すことが可能となっており、処理回路15を経由して表示用の超音波画像データとなる。
内部記憶回路16は、超音波送受信、画像処理及び表示処理を行なうための制御プログラムや、診断情報(例えば、患者ID、医師の所見等)や、診断プロトコルや各種ボディーマーク等の各種データを記憶する。また、内部記憶回路16は、必要に応じて、画像メモリ14が記憶する画像データの保管等にも使用される。また、内部記憶回路16が記憶するデータは、図示しないインターフェースを経由して、外部の装置へ転送することができる。
処理回路15は、超音波診断装置の処理全体を制御する。具体的には、処理回路15は、図1に示す画像生成機能151、制御機能152及び算出機能153に対応するプログラムを内部記憶回路16から読み出して実行することで、種々の処理を行う。例えば、処理回路15は、入力部3を介して操作者から入力された各種設定要求や、内部記憶回路16から読込んだ各種制御プログラム及び各種データに基づき、送受信回路11、Bモード処理回路12、ドプラ処理回路13の処理を制御する。また、処理回路15は、画像メモリ14や内部記憶部17が記憶する表示用の超音波画像データをディスプレイ2にて表示するように制御する。また、処理回路15は、画像生成機能151の処理結果をディスプレイ2にて表示するように制御する。例えば、処理回路15が制御機能152に対応するプログラムを読み出して実行することで、装置全体の制御を行い、上述したような処置を制御する。なお、画像生成機能151及び算出機能153は処理部とも呼ばれる。また、制御機能152は制御部とも呼ばれる。
画像生成機能151は、Bモード処理回路12及びドプラ処理回路13が生成したデータから超音波画像データを生成する。すなわち、画像生成機能151は、Bモード処理回路12が生成した2次元のBモードデータから反射波の強度を輝度にて表したBモード画像データを生成する。Bモード画像データは、超音波走査された領域内の組織形状が描出されたデータとなる。また、画像生成機能151は、ドプラ処理回路13が生成した2次元のドプラデータから移動体情報を表すドプラ画像データを生成する。ドプラ画像データは、速度画像データ、分散画像データ、パワー画像データ、又は、これらを組み合わせた画像データである。ドプラ画像データは、超音波走査された領域内を流動する流体に関する流体情報を示すデータとなる。
ここで、画像生成機能151は、一般的には、超音波走査の走査線信号列を、テレビ等に代表されるビデオフォーマットの走査線信号列に変換(スキャンコンバート)し、表示用の超音波画像データを生成する。具体的には、画像生成機能151は、超音波プローブ1による超音波の走査形態に応じて座標変換を行なうことで、表示用の超音波画像データを生成する。また、画像生成機能151は、スキャンコンバート以外に種々の画像処理として、例えば、スキャンコンバート後の複数の画像フレームを用いて、輝度の平均値画像を再生成する画像処理(平滑化処理)や、画像内で微分フィルタを用いる画像処理(エッジ強調処理)等を行なう。また、画像生成機能151は、超音波画像データに、種々のパラメータの文字情報、目盛り、ボディーマーク等を合成する。
すなわち、Bモードデータ及びドプラデータは、スキャンコンバート処理前の超音波画像データであり、画像生成機能151が生成するデータは、スキャンコンバート処理後の表示用の超音波画像データである。なお、Bモードデータ及びドプラデータは、生データ(Raw Data)とも呼ばれる。
更に、画像生成機能151は、Bモード処理回路12が生成した3次元のBモードデータに対して座標変換を行なうことで、3次元のBモード画像データを生成する。また、画像生成機能151は、ドプラ処理回路13が生成した3次元のドプラデータに対して座標変換を行なうことで、3次元のドプラ画像データを生成する。3次元Bモードデータ及び3次元ドプラデータは、スキャンコンバート処理前のボリュームデータとなる。すなわち、画像生成機能151は、「3次元のBモード画像データや3次元のドプラ画像データ」を「3次元の超音波画像データであるボリュームデータ」として生成する。
更に、画像生成機能151は、ボリュームデータをディスプレイ2にて表示するための各種の2次元画像データを生成するために、ボリュームデータに対してレンダリング処理を行なう。画像生成機能151が行なうレンダリング処理としては、断面再構成法(MPR:Multi Planer Reconstruction)を行なってボリュームデータからMPR画像データを生成する処理がある。また、画像生成機能151が行なうレンダリング処理としては、ボリュームデータに対して「Curved MPR」を行なう処理や、ボリュームデータに対して「Maximum Intensity Projection」を行なう処理がある。また、画像生成機能151が行なうレンダリング処理としては、3次元の情報を反映した2次元画像データを生成するボリュームレンダリング(VR:Volume Rendering)処理がある。
また、画像生成機能151は、後述する算出機能153による算出結果に基づいて、種々の情報を生成する。具体的には、画像生成機能151は、算出結果に基づくシャドー画像や、シャドーに関する計測結果を示す情報を生成する。なお、シャドー画像及び計測結果を示す情報については、後に詳述する。
制御機能152は、上述した装置全体における種々の制御を実行する。また、制御機能152は、画像生成機能151によって生成されたシャドー画像及び計測結果を示す情報をディスプレイ2に表示させる。算出機能153は、超音波走査の結果に基づいて、シャドー情報を生成する。なお、算出機能153による処理については、後に詳述する。
以上、第1の実施形態に係る超音波診断装置の全体構成について説明した。かかる構成のもと、第1の実施形態に係る超音波診断装置は、超音波画像におけるシャドーの抽出を精度よく行うことを可能にする。上述したように、超音波画像においては、例えば、疾患部位よりも深い位置に暗く示される音響陰影(シャドー)が生じる場合がある。例えば、肝硬変や脂肪肝などにより組織の性状が変化した場合、シャドーが生じる場合がある。従って、超音波画像上のシャドーを精度よく抽出することができれば、超音波画像による診断能を向上させることができると考えられる。
図2は、第1の実施形態に係る超音波画像の一例を示す図である。図2においては、肝臓の超音波画像を示す。例えば、図2に示すように、肝臓の超音波画像においては、画像の上側から下側に黒くスジが入ったような櫛状のシャドーが生じる場合がある。このような超音波画像から、例えば、定量的にシャドーを抽出することができれば、どのような疾患を有しているかを診断することも可能になると期待されている。そこで、第1の実施形態に係る超音波診断装置においては、以下、詳細に説明する処理回路15による処理により、超音波画像におけるシャドーを精度よく抽出することを可能にする。
図1に示す制御機能152は、被検体内に対する超音波走査を超音波プローブ1に実行させる。そして、図1に示す算出機能153は、超音波走査の結果を深さ毎に解析し、複数の深さについての解析結果に基づいて、超音波走査の結果に現れた音響陰影に関する情報であるシャドー情報を生成する。具体的には、算出機能153は、超音波走査によって収集された信号を深さごとに解析して、超音波画像に含まれるシャドーを抽出する。すなわち、算出機能153は、方位方向(ラテラル方向)に信号を解析してシャドーを抽出する。
図3A及び図3Bは、第1の実施形態に係る算出機能153の処理対象を説明するための図である。図3Aにおいては、超音波画像における走査線を示す。また、図3Bにおいては、縦軸に信号値を示し、横軸に方位方向の信号(走査線)を示したグラフを示す。例えば、算出機能153は、図3Aに示すように、超音波走査を行った際の走査線「1」〜「250」のそれぞれにおける深さ「d1」での各信号値「s1」〜「s250」を解析する。一例を挙げると、算出機能153は、深さ「d1」における信号値「s1」〜「s250」を抽出して、深さ毎の方位方向の信号値の変位を算出する。例えば、算出機能153は、図3Bに示すように、走査線ごとに深さ「d1」の信号値を抽出して、横軸を走査線とし、縦軸を信号値としたグラフを生成し、生成したグラフに基づいてシャドーを抽出する。なお、図3A及び図3Bでは、深さ「d1」についてのみ示しているが、実際には、算出機能153は、走査線上でのすべてのサンプル点に対応する深さごとに方位方向の信号を解析する。例えば、算出機能153は、図3Aに示す深さ「d1」よりも浅い位置及び深い位置での解析を実行する。
ここで、算出機能153によって扱われる信号値は、任意の信号を用いることができる。例えば、算出機能153によって扱われる信号値は、送受信回路11における加算器によって加算処理が実行された反射波データ、包絡線検波処理後の振幅データ、或いは、輝度値などが用いられる。なお、以下では、振幅データ或いは輝度値を用いる場合を一例に挙げて説明する。
上述したように、深さ毎の信号値を抽出すると、算出機能153は、抽出した信号値を解析することで、シャドー情報を生成する。例えば、算出機能153は、深さ毎に実行する解析の少なくとも一部として、超音波走査によって得られた同一深さにおける各信号の信号値と所定の閾値との比較、および前記超音波走査によって得られた同一深さにおける各信号の信号値と基準値との差と所定の閾値との比較のうち少なくとも一方を行うことで、シャドー情報を生成する。ここで、上述した基準値としては、例えば、各信号に同一深さで隣接する信号の信号値などである。
一例を挙げると、算出機能153は、超音波走査によって収集された深さ毎の信号(同一深さにおける各信号)において所定の閾値を下回る信号、および深さ毎の隣接する信号間の差が所定の閾値を上回る信号のうち少なくともいずれか一つを抽出してシャドー情報を生成する。例えば、算出機能153は、図3Bに示す信号値のグラフにおいて、信号値が所定の閾値を下回る走査線の位置をシャドーとして抽出する。また、算出機能153は、図3Bに示す信号値のグラフにおいて、隣接する信号間の差が所定の閾値を上回る走査線の位置をシャドーとして抽出する。なお、信号間の差を所定の閾値と比較する場合、隣接する信号間だけではなく、隣接していない信号間の差を所定の閾値と比較する場合であってもよい。例えば、同一の深さにおいて所定の範囲内にある複数の信号において最大値を示す信号と最小値を示す信号との差を所定の閾値と比較する場合であってもよい。ここで、算出機能153は、上述した2つのシャドー抽出手法をそれぞれ単独で用いることもでき、組み合わせて用いることもできる。なお、図3Bにおいては、グラフを模式的に示しているため、信号値に大きな変化が見られないが、シャドーを含む実際のグラフでは信号値は大きく変化することとなる。
算出機能153は、上述した閾値による処理を深さ毎に実行する。すなわち、算出機能153は、超音波画像におけるシャドー部分を深さ毎に抽出する。ここで、超音波画像においては、画像のGain、Focus及び深部減衰によって深さ毎の信号値の強度が異なるため、信号値をそのまま用いた場合、深さ毎に閾値を設定することとなる。そこで、Gain、Focus及び深部減衰を除去するために、算出機能153は、上述した閾値による処理を行う前に信号値を規格化するための前処理を行うことができる。
図4は、第1の実施形態に係る前処理の一例を説明するための図である。ここで、図4においては、縦軸にラテラル方向の信号の平均値を示し、横軸に深さを示したグラフを示す。すなわち、図4においては、方位方向に抽出した信号値の深さごとの平均値を算出してグラフにしたものを示す。図4の(A)に示すように、深さごとの信号値の平均値は、例えば、フォーカスされた深さでの信号値の平均値が高くなり、深さが大きくなるにしたがって平均値が小さくなる。従って、このような信号値をそのまま用いる場合、深さ毎に適切な閾値を設定することとなる。
そこで、算出機能153は、深さ毎に実行する解析の少なくとも一部として、超音波走査によって得られた同一深さにおける複数の信号の信号値の平均値をそれぞれ算出し、深さ毎に複数の信号それぞれの信号値と平均値との差を算出することで、シャドー情報を生成する。換言すると、算出機能153は、深さ毎の信号の平均値をそれぞれ算出し、深さ毎の信号の値から対応する深さの平均値を差分した値を用いてシャドー情報を生成する。図3Aを用いて一例を説明すると、算出機能153は、深さ「d1」における信号値「s1」〜「s250」の平均値を算出して、信号値「s1」〜「s250」から算出した平均値をそれぞれ差分した値を算出する。算出機能153は、全ての深さについて、上述した処理を実行する。すなわち、算出機能153は、全ての深さについて、深さ毎の信号値から対応する深さの平均値をそれぞれ差分した値を算出する。これにより、超音波走査によって収集された信号の値が規格化され、図4の(B)に示すように、信号の平均値が「0」となり、深さに関係なく1つの閾値を用いて処理を行うことができる。
上述したように前処理を行うと、算出機能153は、前処理後の信号値を用いて閾値処理を行い、超音波画像におけるシャドー部分を抽出する。以下、図5A〜図5Cを用いて閾値処理の例について説明する。図5A〜図5Cは、第1の実施形態に係る算出機能153による閾値処理の例を説明するための図である。ここで、図5Aにおいては、同一深さのピクセルにおける前処理後の信号値のグラフを示す。また、図5B及び図5Cは、グラフの一部を示す。
例えば、算出機能153は、図5Aに示すように、深さ毎の信号において所定の閾値を下回る信号を抽出する「閾値法」、および、信号間の差が所定の閾値を上回る信号を抽出する「Dip&Peak法」を実行する。「閾値法」では、例えば、図5Aに示すように、前処理後の信号値に対する閾値が設定され、前処理後の信号値が閾値を下回った信号をシャドーとして抽出する。すなわち、算出機能153は、同一深さのピクセルにおいて、前処理後の信号値が閾値を下回ったピクセルをシャドー部分として抽出する。
例えば、算出機能153は、図5Bに示すように、前処理後の信号値のグラフにおいて、信号値が閾値aを下回った部分に対応するピクセル(サンプル点)をシャドーとして抽出する。ここで、算出機能153は、図5Bに示すように、シャドーの特徴として、閾値と信号値の「Dip」との差分である「振幅差」と、シャドーとして抽出した部分の「幅」とを算出する。
また、「Dip&Peak法」としては、例えば、図5Aに示すように、グラフ中の「Peak」と「Dip」との差が所定の閾値を超えた部分の信号をシャドーとして抽出する。すなわち、算出機能153は、同一深さのピクセルにおいて、前処理後の信号値の凹凸の程度が大きい部分のピクセルをシャドー部分として抽出する。ここで、シャドーが生じる部分は、必ずしもベースラインが低いわけではなく、単純な閾値によって抽出することができない場合がある。例えば、図5Aにおいて「見えていない」と示す位置では、信号値の「Dip」の部分は「閾値法」における閾値よりも値が上であるが、実際にはシャドーが生じている部分である。「Dip&Peak法」は、このような部分のシャドーを抽出することができる。なお、グラフ中の「Peak」と「Dip」は、信号が隣接している場合もあれば、信号が隣接していない場合もある。すなわち、隣接した2つの信号がそれぞれ「Peak」と「Dip」の場合もあれば、隣接していない2つの信号がそれぞれ「Peak」と「Dip」の場合(「Peak」と「Dip」に対応する信号の間に別の信号が含まれている場合)もある。算出機能153は、同一深さのピクセル(信号)において「Peak」と「Dip」に対応する信号値の差分を所定の閾値と比較することで、シャドーを抽出する。
例えば、算出機能153は、図5Cに示すように、「Peak」と「Dip」との差である「振幅差」を算出し、算出した「振幅差」が所定の閾値を超えた部分をシャドーとして抽出する。ここで、算出機能153は、例えば、図5Cに示すように、シャドーとして抽出した「Dip」と、両隣の「Peak」との「振幅差」の半値となる位置をそれぞれ算出し、算出した半値となる位置間の部分に対応するピクセル(サンプル点)をシャドーとして抽出して、シャドーとして抽出した部分の「幅」を算出する。
上述したように、算出機能153は、「閾値法」又は「Dip&Peak法」を用いて、深さ毎にシャドーの部分を抽出して、抽出したシャドーの特徴として、シャドーの「振幅差」及び「幅」を算出する。なお、上述した「閾値法」及び「Dip&Peak法」のうちどちらか一方によってシャドーを抽出する場合であってもよいが、「閾値法」及び「Dip&Peak法」の両方を用いてシャドーを抽出する場合であってもよい。係る場合には、算出機能153は、例えば、信号値において、「Dip&Peak法」によってシャドーとして抽出した部分のうち、「閾値法」の閾値を下回る部分をシャドーとして抽出する。また、上述したシャドーの抽出処理は、超音波画像全体を対象とする場合であってもよいが、所定の領域内を対象とする場合であってもよい。かかる場合には、例えば、入力部3がROIの設定を受け付け、処理回路15が受け付けたROI内のシャドーを抽出する。
第1の実施形態に係る超音波診断装置においては、抽出したシャドーの情報を用いて種々の情報を提供することができる。例えば、画像生成機能151は、シャドー情報に基づいて、シャドーの位置及び特徴のうち少なくともいずれか一つを示すシャドー画像を生成する。一例を挙げると、画像生成機能151は、シャドー画像を、超音波走査の結果に基づく形態画像に重畳させた重畳画像を生成する。図6は、第1の実施形態に係る重畳画像の一例を示す図である。図6においては、縦方向を深さとし、横方向を走査線としたスキャンコンバート前のBモード画像にシャドーの位置を示すシャドー画像を重畳させた重畳画像を示す。
例えば、算出機能153によって超音波画像におけるシャドーの領域(位置)が抽出されると、画像生成機能151は、図6に示すように、Bモード画像上にシャドーの位置を示した重畳画像を生成する。これにより、観察者は、超音波画像におけるシャドーの位置を一目で把握することができる。
また、画像生成機能151は、色相、彩度、および明度のうちの少なくとも一つを、シャドーの特徴に応じて割り当てることで、シャドー画像を生成することもできる。図7は、第1の実施形態に係るシャドー画像の一例を示す図である。ここで、図7においては、シャドーの特徴として「幅」を用いたシャドー画像を示す。例えば、画像生成機能151は、図7に示すように、シャドーの「幅:1〜10」に対して色を割り当て、シャドーの「幅」に応じてカラー化したシャドー画像を生成する。なお、図7においては、シャドーの特徴として「幅」を用いる場合を例に挙げたが、実施形態はこれに限定されるものではなく、例えば、「振幅差」を用いる場合や、「幅」と「振幅差」の両方を用いる場合であってもよい。
また、画像生成機能151は、シャドーの特徴を示すシャドー画像を形態画像に重畳した重畳画像を生成することもできる。図8は、第1の実施形態に係る重畳画像の一例を示す図である。ここで、図8は、シャドーの特徴として「振幅差」を用いたシャドー画像をスキャンコンバート前のBモード画像に重畳させた重畳画像を示す。例えば、画像生成機能151は、図8に示すように、振幅差の程度ごとに色を割り当て、抽出されたシャドーの「振幅差」に応じてカラー化したシャドー画像を生成する。例えば、画像生成機能151は、「振幅差」の程度に応じて3段階に色を割り当て、シャドーの「振幅差」に応じてカラー化する。
そして、画像生成機能151は、図8に示すように、生成したシャドー画像をBモード画像に重畳させた重畳画像を生成する。なお、図8においては、シャドーの特徴として「振幅差」を用いる場合を例に挙げたが、実施形態はこれに限定されるものではなく、例えば、「幅」を用いる場合や、「幅」と「振幅差」の両方を用いる場合であってもよい。
図6〜図8に示す重畳画像やシャドー画像が生成されると、制御機能152は、生成された重畳画像やシャドー画像をディスプレイ2に表示させるように制御する。観察者はこれらの画像を観察することで、シャドーの位置や、超音波画像における位置ごとのシャドーの特徴を一目で把握することができる。
上述した例では、シャドー画像を表示する場合について説明したが、第1の実施形態に係る超音波診断装置は、シャドーに関する種々の計測を行うこともできる。具体的には、算出機能153は、シャドー情報に基づいて、シャドーに関する計測を実行する。例えば、算出機能153は、シャドーの特徴を示す値、および超音波走査の結果に占めるシャドーの割合のうち少なくともいずれか一つを計測する。
上述したように、算出機能153は、シャドーの特徴として「振幅差」や「幅」を算出する。さらに、算出機能153は、算出した「振幅差」や「幅」に基づいて、シャドーのパターンを決定することができる。図9は、第1の実施形態に係るシャドーのパターンの一例を説明するための図である。図9においては、縦軸に「振幅差」を示し、横軸に「幅」を示した散布図(イメージ図)を示す。
例えば、算出機能153は、上述した「閾値法」及び「Dip&Peak法」のうちの少なくとも一方によりシャドー部分を抽出して「振幅差」と「幅」を算出する。そして、算出機能153は、図9に示すように、「振幅差」と「幅」に基づいて、抽出したシャドーについて、「Aパターン」のシャドー、「Bパターン」のシャドー及び「スペックルパターン」に分類する。
一例を挙げると、算出機能153は、シャドーとして抽出したもののうち、「振幅差」及び「幅」がともに低い値を示すものを「スペックルパターン」として分類する。また、算出機能153は、シャドーとして抽出したもののうち、「振幅差」が高い値を示し、かつ、「幅」が低い値を示すものを「Aパターン」のシャドーとして分類する。また、算出機能153は、シャドーとして抽出したもののうち、「振幅差」及び「幅」がともに高い値を示すものを「Bパターン」のシャドーとして分類する。
このように、算出機能153は、シャドーの特徴に基づいて、抽出したシャドーを種々のパターンに分類する。これにより、例えば、シャドーとして抽出したものの中から、シャドーとスペックルとをさらに分類することができる。また、例えば、櫛状のシャドーのような「幅」の狭いシャドーと、骨などによって生じる「幅」の広いシャドーとを、それぞれ「Aパターン」及び「Bパターン」として分類することができる。ここで、各パターンに分類するための「振幅差」及び「幅」の値は任意に設定することができる。すなわち、シャドーの特徴を示す値に基づいてシャドーを分類することができ、シャドーを定量的に解析することができる。
図10は、第1の実施形態に係るシャドーのパターン分類の一例を説明するための図である。図10においては、縦軸に「幅(ピクセル数)」を示し、横軸に「振幅差」を示した散布図を示す。例えば、算出機能153は、図10に示すように、散布図に「Aパターン」に対応する領域と、「Bパターン」に対応する領域と、「スペックルパターン」に対応する領域の3つの領域を設定することでシャドーを各パターンに分類する。ここで、図10において領域が重複している部分に含まれるものは、領域の境界からの距離に応じてどちらかに分類する場合であってもよく、或いは、どちらにも分類しないようにする場合であってもよい。
図11は、第1の実施形態に係るシャドーの特徴のカラーマップの一例を示す図である。図11においては、縦軸に「幅(ピクセル数)」を示し、横軸に「振幅差」を示し、発生頻度の違いに色を割り当てたカラーマップを示す。例えば、算出機能153は、「振幅差」の値及び「幅」の値ごとの発生数をカウントし、カウントした値に対応する色をカラーバーから抽出してカラー化する。なお、図11に示すように、カラーマップに基づいてパターンの分類を行う場合であってもよい。
図9〜図11に示す情報が生成されると、制御機能152は、生成された情報をディスプレイ2に表示させるように制御する。観察者はこれらの情報を観察することで、抽出されたシャドーのパターンや、発生頻度の違いを一目で把握することができる。なお、図9〜図11においては、抽出したシャドーを3つのパターンに分類する場合を例に挙げて説明したが、実施形態はこれに限定されるものではなく、例えば、2つ或いは4つ以上のパターンに分類する場合であってもよい。
上述したように、算出機能153は、シャドーに関する種々の情報を計測することができる。画像生成機能151は、算出機能153によって計測された情報を用いて種々の画像を生成することができる。例えば、画像生成機能151は、色相、彩度、および明度のうちの少なくとも一つを、シャドーのパターンに応じて割り当てたシャドー画像を生成し、生成したシャドー画像を超音波走査の結果に基づく形態画像に重畳させた重畳画像を生成する。
図12は、第1の実施形態に係る重畳画像の一例を示す図である。ここで、図12は、図9〜図11を用いて説明した3つのパターンに色を割り当てたシャドー画像をスキャンコンバート前のBモード画像に重畳させた重畳画像を示す。例えば、画像生成機能151は、図12に示すように、「スペックルパターン」、「Aパターン」及び「Bパターン」にそれぞれ色を割り当て、抽出されたシャドーのパターンに応じてカラー化したシャドー画像を生成する。
そして、画像生成機能151は、図12に示すように、生成したシャドー画像をBモード画像に重畳させた重畳画像を生成する。制御機能152は、生成された重畳画像をディスプレイ2に表示させる。これにより、画像上のシャドーのパターンを一目で把握することができる。なお、図12においては、シャドーを3パターンに分類する場合を例に挙げたが、実施形態はこれに限定されるものではなく、例えば、シャドーが2つ又は4つ以上のパターンに分類される場合であってもよい。かかる場合には、それぞれのパターンが区別可能となるように色が割り当てられ、シャドー画像が生成される。
上述したように、画像生成機能151は、算出機能153によって算出された情報を用いて種々の画像を生成することができる。ここで、算出機能153は、上述した例の他にも種々の情報を計測することができる。例えば、算出機能153は、超音波画像におけるシャドーの割合を算出することもできる。図13A及び図13Bは、第1の実施形態に係るシャドーの割合の算出の一例を説明するための図である。ここで、図13Aにおいては、図8に示す重畳画像(振幅差の違いに応じてシャドーがカラー化された重畳画像)に領域「R1」が設定された図を示す。また、図13Bは、縦軸に発生数を示し、横軸に「振幅差」を示した頻度分布を示す。
例えば、図13Aに示すように、入力部3が領域「R1」の設定操作を受け付けると、算出機能153は、設定された領域「R1」におけるシャドーの割合を算出する。例えば、算出機能153は、領域「R1」に含まれる全てのピクセルについて「振幅差」をそれぞれ算出し、算出した「振幅差」を用いて図13Bに示す頻度分布を生成する。そして、算出機能153は、シャドーとして抽出されたピクセルの割合を算出する。例えば、算出機能153は、「振幅差」の程度によって3段階に分けられたシャドーのそれぞれの割合をそれぞれ算出する。
一例を挙げると、算出機能153は、図13Bに示すように、「振幅差:5〜7」で重畳画像上に「R(Red)」で示されたシャドーの割合「47.0%」を算出する。また、算出機能153は、図13Bに示すように、「振幅差:7〜9」で重畳画像上に「G(Green)」で示されたシャドーの割合「21.4%」を算出する。また、算出機能153は、図13Bに示すように、「振幅差:9以上」で重畳画像上に「B(Blue)」で示されたシャドーの割合「5.04%」を算出する。
また、算出機能153は、図13Bに示すように、領域「R1」における「振幅差」の平均「4.99」を算出することができる。また、図示していないが、算出機能153は、平均値だけではなく標準偏差などを算出することもできる。このように、算出機能153によってシャドーの割合が算出されると、制御機能152は、算出結果をディスプレイ2に表示させる。例えば、制御機能152は、図13Bに示す頻度分布及び割合の情報をディスプレイ2に表示させる。
なお、算出機能153は、上述したシャドーの割合として、シャドーのパターンごとの割合を算出することもできる。例えば、算出機能153は、領域「R1」について、「スペックルパターン」、「Aパターン」及び「Bパターン」の割合を算出して、頻度分布を生成することもできる。
次に、図14を用いて、第1の実施形態に係る超音波診断装置の処理について説明する。図14は、第1の実施形態に係る超音波診断装置の処理例を説明するためのフローチャートである。なお、図14においては、シャドー画像と計測結果が表示される場合の処理について示す。図14に示すステップS101は、処理回路15が内部記憶回路16から制御機能152に対応するプログラムを読み出して実行されるステップである。ステップS101では、処理回路15が、シャドー抽出モードに遷移されたか否かを判定する。ステップS102は、処理回路15が内部記憶回路16から算出機能153に対応するプログラムを読み出して実行されるステップである。ステップS102では、シャドー抽出モードであると判定された場合に(ステップS101肯定)、処理回路15が、方位方向の受信信号に基づいてシャドーを抽出する。
ステップS103は、処理回路15が内部記憶回路16から画像生成機能151に対応するプログラムを読み出して実行されるステップである。ステップS103では、処理回路15がシャドー画像を生成する。ステップS104は、処理回路15が内部記憶回路16から算出機能153に対応するプログラムを読み出して実行されるステップである。ステップS104では、処理回路15が、シャドーに関する情報を計測する。
ステップS105は、処理回路15が内部記憶回路16から制御機能152に対応するプログラムを読み出して実行されるステップである。ステップS105では、処理回路15が、シャドー画像及び計測結果をディスプレイ2に表示する。なお、上述した処理の例では、シャドー画像が生成された後にシャドーに関する情報が計測される場合を例に挙げて説明した。しかしながら、実施形態はこれに限定されるものではなく、シャドーに関する情報が計測された後にシャドー画像が生成される場合であってもよく、或いは、シャドー画像の生成と計測が同時に実行される場合であってもよい。
上述したように、第1の実施形態によれば、制御機能152が、被検体内に対する超音波走査を超音波プローブに実行させる。算出機能153が、超音波走査の結果を深さ毎に解析し、複数の深さについての解析結果に基づいて、超音波走査の結果に現れたシャドーに関する情報であるシャドー情報を生成する。従って、第1の実施形態に係る超音波診断装置は、超音波画像におけるシャドーの抽出を精度よく行うことを可能にする。
例えば、従来技術においては、超音波画像に対して深さ方向の解析をすることで画像内のシャドーを抽出する技術が知られている。しかしながら、かかる従来技術では、硬い組織を抽出したうえで、硬い組織の下側の組織をシャドーとして抽出するものであり、硬い組織の下が全てシャドーとして抽出されてしまうものである。例えば、肝臓をスキャンした際に生じるシャドーは肝臓内だけでなく、肝表面(付近を含む)や腹壁付近からも出現する。このため、従来技術のような距離方向の処理の場合、腹部表面から肝表面までの構造の影響を大きく受けてしまう。例えば、腹部表面に硬い組織があった場合、その組織よりも深い位置が全てシャドーとして抽出されてしまう。
しかしながら、第1の実施形態に係る超音波診断装置では、方位方向に対して処理を行っていることから、腹壁、肝表面、肝臓内からのシャドーなのか識別することも可能となる。さらに、第1の実施形態に係る超音波診断装置では、例えば、シャドーが深さ方向に段階的に生じていた場合でも、それぞれのシャドーを抽出することができる。
また、第1の実施形態によれば、画像生成機能151は、シャドー情報に基づいてシャドーの位置及び特徴のうち少なくともいずれか一つを示すシャドー画像を生成する。また、画像生成機能151は、色相、彩度、および明度のうちの少なくとも一つを、シャドーの特徴に応じて割り当てることで、シャドー画像を生成する。また、画像生成機能151は、シャドー画像を、超音波走査の結果に基づくBモード画像に重畳させた重畳画像を生成する。従って、第1の実施形態に係る超音波診断装置は、超音波画像におけるシャドーを観察しやすい画像を提供することを可能にする。
また、第1の実施形態によれば、算出機能153がシャドーの特徴に基づいてシャドーのパターンを決定し、画像生成機能151が色相、彩度、および明度のうちの少なくとも一つを、シャドーのパターンに応じて割り当てたシャドー画像を生成し、生成したシャドー画像を超音波走査の結果に基づくBモード画像に重畳させた重畳画像を生成する。従って、第1の実施形態に係る超音波診断装置は、シャドーの特徴を反映した情報を提供することを可能にする。
また、第1の実施形態によれば、算出機能153は、シャドー情報に基づいて、シャドーに関する計測を実行する。また、算出機能153は、シャドーの特徴を示す値、および超音波走査の結果に占めるシャドーの割合のうち少なくともいずれか一つを計測する。従って、第1の実施形態に係る超音波診断装置は、シャドーを定量的に解析することを可能にする。
また、第1の実施形態によれば、算出機能153は、深さ毎に実行する解析の少なくとも一部として、超音波走査によって得られた同一深さにおける各信号の信号値と所定の閾値の比較、および超音波走査によって得られた同一深さにおける各信号の信号値と基準値との差と所定の閾値との比較のうち少なくとも一方を行うことで、シャドー情報を生成する。従って、第1の実施形態に係る超音波診断装置は、方位方向でのシャドーの抽出を容易に行うことを可能にする。さらに、第1の実施形態に係る超音波診断装置は、「閾値法」では抽出することが困難なシャドーを抽出することもできる。
また、第1の実施形態によれば、算出機能153は、深さ毎に実行する解析の少なくとも一部として、超音波走査によって得られた同一深さにおける複数の信号の信号値の平均値をそれぞれ算出し、深さ毎に複数の信号それぞれの信号値と平均値との差を算出することで、シャドー情報を生成する。従って、第1の実施形態に係る超音波診断装置は、信号値を規格化して、処理を容易にすることを可能にする。
(第2の実施形態)
さて、これまで第1の実施形態について説明したが、上述した第1の実施形態以外にも、種々の異なる形態にて実施されてよいものである。
上述した第1の実施形態では、前処理として平均値の減算処理を行う場合について説明した。しかしながら、実施形態はこれに限定されるものではなく、前処理としてその他の処理を実行することもできる。例えば、超音波画像に含まれるスペックルパターンを除去する前処理を実行することもできる。具体的には、算出機能153は、超音波走査によって収集された信号に対して深さ方向の平滑化フィルタをかけた後、シャドー情報を生成する。図15A及び図15Bは、第2の実施形態に係る前処理の一例を模式的に示す図である。
例えば、算出機能153は、図15Aに示す超音波画像に対して深度方向に平滑化フィルタをかけることで、図15Bに示す超音波画像を得る。これによって、図15Bに示すように、スペックル成分が軽減され、シャドーの抽出をより精度よく行うことを可能にする。
また、上述した第1の実施形態では、超音波走査の結果として、振幅データ或いは輝度値を用いる場合を例に挙げて説明した。しかしながら、実施形態はこれに限定されるものではなく、包絡線検波処理前の位相情報を含む反射波データを用いることもできる。かかる場合には、算出機能153は、上述した「閾値法」とは異なる手法によりシャドーを抽出する。例えば、算出機能153は、位相情報を含む信号に対して解析を実行する場合、深さ毎に実行する解析の少なくとも一部として、位相情報を含む信号の振幅と複数の閾値で比較を行うことで、シャドー情報を生成する。一例を挙げると、算出機能153は、超音波走査によって収集された信号が位相情報を含む場合、深さ毎の信号において振幅が所定の範囲に含まれる信号を抽出してシャドー情報を生成する。
図16は、第2の実施形態に係る閾値設定の一例を説明するための図である。例えば、算出機能153は、図16に示すように、反射波データに対して設定された上側の閾値bと、下側の閾値cとを用いてシャドーを抽出する。一例を挙げると、算出機能153は、図16に示すように、反射波データが閾値bと閾値cの範囲内にある場合に、当該反射波データの位置をシャドーとして抽出する。一方、反射波データが閾値b及び閾値cのうちどちらか一方でも超えた場合、算出機能153は、シャドーではないと判定する。なお、閾値b及び閾値cは任意に設定することができる。
また、位相情報を含む反射波データを用いる場合、反射波データを2乗することで振幅情報にし、上述した「閾値法」及び「Dip&Peak法」を用いてシャドーを抽出する場合であってもよい。
また、上述した第1の実施形態では、シャドーの特徴として「振幅差」及び「幅」を用いる場合を説明した。しかしながら、実施形態はこれに限定されるものではなく、例えば、シャドーの起点となる深さの情報や、シャドーとして抽出した信号の反射波データの周波数解析の解析結果を用いる場合であってもよい。
上述した第1の実施形態では、前処理として平均値の減算処理を行う場合について説明した。しかしながら、実施形態はこれに限定されるものではなく、平均値の減算処理を行わない場合であってもよい。かかる場合には、深さ毎に「閾値法」における閾値及び「Dip&Peak法」における閾値が設定される。そして、算出機能153は、深さ毎に対応する閾値を用いた「閾値法」及び「Dip&Peak法」を用いてシャドーを抽出する。
また、上述した第1の実施形態では、「振幅差」や、シャドーの情報に基づいて分類した「パターン」の割合を算出して、算出結果をディスプレイ2に表示させる場合について説明した。しかしながら、実施形態はこれに限定されるものではなく、算出結果に基づいて、さらに、種々の情報を表示させることも可能である。具体的には、算出機能153が、超音波走査の結果に占めるシャドーの割合を計測する。そして、制御機能152が、算出機能153によって計測されたシャドーの割合に基づいて、関連する疾患の情報を提示させる。一例を挙げると、算出機能153は、図13Bに示すように、超音波画像における領域「R1」に含まれる全てのピクセルについて「振幅差」をそれぞれ算出する。そして、算出機能153は、「振幅差:5〜7」のシャドーの割合「47.0%」、「振幅差:7〜9」のシャドーの割合「21.4%」、「振幅差:9以上」のシャドーの割合「5.04%」を算出する。制御機能152は、算出機能153によって算出された上記割合に基づいて、関連する疾患の情報をディスプレイ2に表示させる。
ここで、シャドーの割合と疾患との関連については、予め設定されて内部記憶回路16に格納される。一例を挙げると、内部記憶回路16は、「振幅差:5〜7」のシャドーの割合が「50%」を超えた場合の関連する疾患として、「疾患A」、「疾患B」及び「疾患C」を記憶する。また、内部記憶回路16は、「振幅差:7〜9」のシャドーの割合が「20%」を超えた場合の関連する疾患として、「疾患D」及び「疾患E」を記憶する。また、内部記憶回路16は、「振幅差:9以上」のシャドーの割合が「10%」を超えた場合の関連する疾患として、「疾患F」を記憶する。このように、内部記憶回路16は、割合に応じて予め設定された疾患の情報を記憶する。なお、内部記憶回路16によって記憶される疾患の情報は、操作者によって適宜格納される。すなわち、シャドーの割合と疾患との関連は、操作者によって任意に設定される。また、上記した例はあくまでも一例であり、その他、種々のシャドーの割合と疾患とが対応付けて記憶される。例えば、「振幅差」だけではなく、「幅」や、「パターン」について、割合と疾患とが対応付けて記憶される。
また、シャドーの割合と疾患との関連については、シャドーについて適宜組み合わせて用いられる場合であってもよい。一例を挙げると、シャドーの割合が「50%」を超えた場合、かつ、「振幅差:7〜9」のシャドーの割合が「20%」を超えた場合の疾患として、「疾患A」が対応付けられる場合であってもよい。同様に、「パターンA」の割合が「50%」を超えた場合、かつ、「パターンB」の割合が「10」を下回った場合の疾患として、「疾患G」が対応付けられる場合であってもよい。
制御機能152は、算出機能153によって割合が算出されると、内部記憶回路16に記憶された疾患の情報を参照して、ディスプレイ2に表示させる。例えば、算出機能153によって、「振幅差:5〜7」のシャドーの割合「47.0%」、「振幅差:7〜9」のシャドーの割合「21.4%」、「振幅差:9以上」のシャドーの割合「5.04%」と算出されると、制御機能152は、「振幅差:7〜9」のシャドーの割合が「20%」を超えていることから、関連する疾患の情報として、「疾患D」及び「疾患E」をディスプレイ2に表示させる。なお、上記した例はあくまでも一例であり、制御機能152は、その他、種々の割合について、関連する疾患の情報を表示させることができる。例えば、制御機能152は、シャドーの「幅」や、シャドーの「パターン」について、算出された割合に基づいて、関連する疾患の情報をディスプレイ2に表示させることができる。
また、上述した実施形態では、超音波診断装置が処理を実行する場合について説明した。しかしながら、実施形態はこれに限定されるものではなく、例えば、画像処理装置によって実行される場合であってもよい。かかる場合には、画像処理装置が、上述した処理回路15と、内部記憶回路16とを有し、画像生成機能151、制御機能152及び算出機能153を実行する。例えば、内部記憶回路16が被検体内に対して実行された超音波走査の結果と、画像生成機能151、制御機能152及び算出機能153に対応するプログラムとを記憶する。そして、処理回路15が、各機能に対応するプログラムを読み出して実行することで、内部記憶回路16に記憶された超音波走査の結果に対するシャドーの抽出処理を実行する。
なお、上記の実施形態の説明で図示した各装置の各構成要素は機能概念的なものであり、必ずしも物理的に図示の如く構成されていることを要しない。すなわち、各装置の分散・統合の具体的形態は図示のものに限られず、その全部又は一部を、各種の負荷や使用状況等に応じて、任意の単位で機能的又は物理的に分散・統合して構成することができる。更に、各装置にて行なわれる各処理機能は、その全部又は任意の一部が、CPUおよび当該CPUにて解析実行されるプログラムにて実現され、あるいは、ワイヤードロジックによるハードウェアとして実現され得る。
また、上述した実施形態で説明した処理方法は、あらかじめ用意された処理プログラムをパーソナルコンピュータやワークステーション等のコンピュータで実行することによって実現することができる。この処理プログラムは、インターネット等のネットワークを介して配布することができる。また、この処理プログラムは、ハードディスク、フレキシブルディスク(FD)、CD−ROM、MO、DVD、USBメモリ及びSDカードメモリ等のFlashメモリ等のコンピュータで読み取り可能な非一時的な記録媒体に記録され、コンピュータによって非一時的な記録媒体から読み出されることによって実行することもできる。
以上、説明したとおり、実施形態によれば、超音波画像におけるシャドーの抽出を精度よく行うことができる。
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。