以下、添付図面を参照しながら本実施形態について説明する。説明の理解を容易にするため、各図面において同一の構成要素に対しては可能な限り同一の符号を付して、重複する説明は省略する。
以下、添付図面を参照しながら本発明の実施形態について説明する。説明の理解を容易にするため、各図面において同一の構成要素に対しては可能な限り同一の符号を付して、重複する説明は省略する。
図1に示されるように、統合弁装置6は、車両に搭載され車室内の空調を行う車両用空調装置2に用いられる。車両用空調装置2は、冷凍サイクル装置3と、水サイクル装置4と、空調ユニット5と、を備えている。空調ユニット5は、車室内に温風を吹き出したり、冷風を吹き出したりするためのユニットである。冷凍サイクル装置3及び水サイクル装置4は、空調ユニット5から吹き出される空気の温度を調整するためのヒートポンプユニットとして構成されている。
冷凍サイクル装置3及び統合弁装置6について説明する。冷凍サイクル装置3は、冷媒流路30と、コンプレッサ31と、コンデンサ32と、第1熱交換器34と、第2熱交換器35と、貯液器36と、膨張弁37と、エバポレータ38と、統合弁装置6と、を備えている。第1熱交換器34と、第2熱交換器35と、貯液器36とは、本発明の熱交換器に相当する。
統合弁装置6は、固定絞り61と、第1弁62と、第2弁64と、第3弁63と、を備えている。水サイクル装置4は、水流路40と、ウォータポンプ41と、水側熱交換器42と、ヒータコア43と、を備えている。空調ユニット5は、ケーシング51と、エアミックスドア52と、送風ファン53と、内外気切替ドア54と、を備えている。
冷媒流路30は、コンプレッサ31と、コンデンサ32と、第1熱交換器34と、第2熱交換器35と、貯液器36と、膨張弁37と、エバポレータ38と、を繋ぎ、内部に冷媒を通す流路である。冷媒としては、例えばHFC系冷媒やHFO系冷媒を用いることができる。冷媒には、コンプレッサ31を潤滑するためのオイルが混入されている。
コンプレッサ31は、電動式圧縮機であって、吸入口311と吐出口312とを有する。コンプレッサ31は、吸入口311から冷媒を吸入して圧縮する。コンプレッサ31は、圧縮されることにより過熱状態となった冷媒を吐出口312から吐出する。吐出口312から吐出された冷媒は、コンデンサ32に流れる。
コンデンサ32は、周知の熱交換器であって、流入口321と流出口322とを有する。コンデンサ32は、水側熱交換器42と熱交換するように構成されている。コンデンサ32と水側熱交換器42とは、互いに熱交換可能なように構成されているので、水−冷媒熱交換器を構成している。コンプレッサ31から吐出された高温高圧の冷媒は、流入口321からコンデンサ32内に流入する。流入した冷媒は、水側熱交換器42を流れる水との間で熱交換し、温度が下がった状態で流出口322から流出する。流出口322から流出した冷媒は、統合弁装置6を構成する固定絞り61及び第1弁62に流れ込む。
第1弁62が閉じられていると、冷媒は固定絞り61を通って減圧され、低圧の冷媒となって第1熱交換器34に流れ込む。一方、第1弁62が開かれていると、冷媒は減圧されずに高圧の冷媒として第1熱交換器34に流れ込む。
第1熱交換器34は、車室外に配置される室外熱交換器であって、外気との間で熱交換するように構成されている。第1熱交換器34に流れ込んだ冷媒は、外気との間で熱交換して貯液器36に流れ込む。
貯液器36は、気相冷媒と液相冷媒とを分離し、液相冷媒を貯めるものである。分離された気相冷媒は、第3弁63に流れ込む。第3弁63に流れ込んだ気相冷媒は、第3弁63が開かれているとコンプレッサ31に向かって流れる。一方、分離された液相冷媒は、貯液器36内に溜められると共に、第2熱交換器35に流出する。
第2熱交換器35は、車室外に配置される室外熱交換器であって、外気との間で熱交換するように構成されている。第2熱交換器35は、流入する液相冷媒と外気との間で熱交換することにより、第1熱交換器34との協働によって冷媒の熱交換効率を更に高めるものである。第2熱交換器35から流出した冷媒は、第2弁64に流れ込む。
第2弁64は、流入した冷媒をコンプレッサ31側か膨張弁37側かに向けて選択的に流す三方弁として構成されている。膨張弁37は、流入した冷媒を減圧して吐出する。膨張弁37から吐出された冷媒は、エバポレータ38に向かって流れる。膨張弁37は、エバポレータ38から吐出される冷媒の過熱度が所定範囲内となるように、エバポレータ38に流入する冷媒を減圧膨張させる温度感応型の機械式膨張弁である。
エバポレータ38は、流入口381と流出口382とを有する。エバポレータ38に向かって流れる冷媒は、流入口381からエバポレータ38内に流入する。エバポレータ38は、ケーシング51内に配置されているので、ケーシング51内を流れる空気と熱交換する。エバポレータ38内を流れる冷媒は、ケーシング51内を流れる空気と熱交換して流出口382からコンプレッサ31に向けて流出する。
続いて、水サイクル装置4について説明する。水流路40は、ウォータポンプ41と、水側熱交換器42と、ヒータコア43と、を繋ぎ、内部に水を通す流路である。ウォータポンプ41は、吸入口411と吐出口412とを有する。ウォータポンプ41は、吸入口411から水を吸入し、吐出口412から吐出する。ウォータポンプ41を駆動することで、水流路40に水の流れを形成することができる。
ウォータポンプ41の駆動により吐出口412から吐出された水は、水側熱交換器42に向かって流れる。水側熱交換器42は、上記したようにコンデンサ32ととともに水−冷媒熱交換器を構成している。水側熱交換器42は、流入口421と流出口422とを有している。流入口421から水側熱交換器42の内部に流れこんだ水は、コンデンサ32を流れる冷媒と熱交換し、流出口422から流出する。コンデンサ32を流れる冷媒は、高温高圧の冷媒なので、水側熱交換器42を流れる水は加温されてヒータコア43に向かって流れる。
ヒータコア43は、空調ユニット5のケーシング51内に配置されている。ヒータコア43は、ケーシング51内を流れる空気と熱交換するためのものである。ヒータコア43は、流入口431と流出口432とを有している。流入口431には、水側熱交換器42を通って加温された水が流入する。ヒータコア43に流入した水は、ケーシング51内を流れる空気と熱交換する。ヒータコア43内を流れた水は、温度が降下して流出口432からウォータポンプ41に向かって流れ出る。
続いて、空調ユニット5について説明する。ケーシング51は、車室内に流れる空調風を流す流路を形成し、その内部に上流側から、内外気切替ドア54と、送風ファン53と、エバポレータ38と、エアミックスドア52と、ヒータコア43と、が配置されている。
内外気切替ドア54は、ケーシング51内を流れる空気を車室外から取り入れるか、車室内を循環させるかを切り替えるドアである。送風ファン53は、ケーシング51内に空気流を形成し、車室内に空調風を送り出すためのものである。エアミックスドア52は、ケーシング51内を流れる空気が、ヒータコア43を通るか否かを切り替えるためのドアである。
車両用空調装置2は、統合弁装置6の各弁を開閉して冷凍サイクル装置3を流れる冷媒を調整し、ウォータポンプ41を駆動して水サイクル装置4を流れる水を調整し、送風ファン53を駆動して空調ユニット5を流れる空気を調整することで、車室内を冷暖房する装置である。
図2を参照しながら、車両用空調装置2が冷房運転する場合の動作について説明する。図2においては、冷媒の流れをFLcで示している。冷房運転時においては、ウォータポンプ41は駆動されないので、水サイクル装置4内には水の流れが発生しない。従って、コンプレッサ31から吐出される高温高圧の気相冷媒は、そのまま統合弁装置6に向かって流れる。冷房運転時において、第1弁62は、開かれた状態となっている。従って、コンデンサ32から流れ込む冷媒は、減圧されずにそのまま第1熱交換器34に向かって流れる。
第1熱交換器34に流れ込む高温高圧の気相冷媒は、外気との間で熱交換して温度が低下し、冷却されて気液二相の冷媒となって貯液器36に流出する。貯液器36は、冷房運転の場合には主として液相冷媒を流出させるレシーバとして機能している。第3弁63は閉じられているので、貯液器36からは液相冷媒が第2熱交換器35に流出する。
冷房運転時において、第2熱交換器35は過冷却器として機能する。第2熱交換器35に流入した冷媒は、外気との熱交換により更に冷却される。冷房運転時においては、冷凍サイクル装置3の凝縮器としての機能は第1熱交換器34及び第2熱交換器35が果たしている。
第2熱交換器35から流出した液相冷媒は、第2弁64に流れ込む。冷房運転時において第2弁64は、流入する冷媒を膨張弁37に向かってのみ流すように切り替えられている。膨張弁37によって減圧された冷媒は、エバポレータ38に流れ込む。
冷房運転時においては、送風ファン53が駆動され、エアミックスドア52はヒータコア43側を塞ぐように位置している。従って、ケーシング51内を流れる空気は、エバポレータ38において低温の冷媒と熱交換し冷却される。冷却された空気は、ケーシング51内を流れて車室内に供給される。
図3を参照しながら、車両用空調装置2が暖房運転する場合の動作について説明する。図3においては、冷媒の流れをFLhで示している。暖房運転時においては、ウォータポンプ41が駆動されるので、水サイクル装置4内には水の流れが発生する。従って、コンプレッサ31から吐出される高温高圧の気相冷媒は、コンデンサ32において水側熱交換器42内を流れる水と熱交換し冷却され、統合弁装置6に向かって流れる。暖房運転時において、第1弁62は、閉じられた状態となっている。従って、コンデンサ32から流れ込む冷媒は、減圧されて第1熱交換器34に向かって流れる。
第1熱交換器34に流れ込む低圧の気液二相冷媒は、外気との間で熱交換して蒸発し、貯液器36に流出する。貯液器36は、暖房運転の場合は主として気相冷媒を流出させるアキュムレータとして機能している。第3弁63は開かれているので、気相冷媒がコンプレッサ31に向けて流出する。
貯液器36においては、流入した冷媒を気液分離し、液相冷媒を貯めている。液相冷媒は第2熱交換器35側に流出する。第2弁64は、吸入口311に向かう流路を開いているので、液相冷媒とオイルは徐々にコンプレッサ31に戻る。
暖房運転時においては、送風ファン53が駆動され、エアミックスドア52はヒータコア43側を開くように位置している。従って、ケーシング51内を流れる空気は、ヒータコア43において高温の水と熱交換し加温される。加温された空気は、ケーシング51内を流れて車室内に供給される。
統合弁装置6は、固定絞り61、第1弁62、第2弁64、及び第3弁63を一体のものとして形成すると共に、貯液器36の内部に収容することができるように構成されている。
図4に示されるように、貯液器36内に統合弁装置6を挿入配置する場合、挿入端部90が最も奥まで挿入される。挿入端部90から下方に延出するように、第4流出口74が設けられている。統合弁装置6の一側方に第1熱交換器34及び第2熱交換器35が配置されるので、第1熱交換器34及び第2熱交換器35と冷媒の授受を行う流出口及び流入口は第1熱交換器34及び第2熱交換器35側に配置することが好ましい。この観点から、第1熱交換器34に冷媒を流出させる第1流出口76は、第1熱交換器34側の上方に配置されている。第2熱交換器35から冷媒が流れ込む第2流入口75は、第2熱交換器35側であって、第1流出口76よりも下方に配置されている。第1流入口71、第2流出口72、及び第3流出口73は、第1熱交換器34及び第2熱交換器35に対向する側面とは反対側に設けられている。流入流路12、気相流出流路13、液相流出流路14、及び流出流路15については引き続いて説明する。
図5を参照しながら本開示の実施形態に係る貯液器36を含む熱交換器300について説明する。図5を参照しながら説明する熱交換器300は、図1から図4を参照しながら説明した第1熱交換器34、第2熱交換器35、及び貯液器36を簡略化して記述するためのものであって、説明の便宜上必要な部分以外は省略する。
熱交換器300は、上流側熱交換部である第1熱交換器34と、下流側熱交換部である第2熱交換器35と、貯液器36と、を備えている。第1熱交換器34は、ヘッダタンク341と、上流側コア342と、下流側コア343と、ヘッダタンク344と、ヘッダタンク345とを有している。
上流側コア342及び下流側コア343は、内部を流れる冷媒と外部を流れる空気との間で熱交換をする部分であって、冷媒が通るチューブと、チューブ間に設けられたフィンとを有する。
上流側コア342の上流側端には、ヘッダタンク341が取り付けられている。上流側コア342の下流側端には、ヘッダタンク345が取り付けられている。ヘッダタンク345には、下流側コア343の上流端側が繋がれている。ヘッダタンク345は、上流側コア342と下流側コア343とを繋ぐものである。
ヘッダタンク341には流入流路11が設けられている。ヘッダタンク344には流入流路12が設けられている。流入流路11から流入した冷媒は、ヘッダタンク341から上流側コア342に流入する。上流側コア342を流れた冷媒は、ヘッダタンク345に流入する。ヘッダタンク345に流入した冷媒は、下流側コア343に流出する。下流側コア343に流入した冷媒は、ヘッダタンク344に流出する。ヘッダタンク344に流入した冷媒は、流入流路12に流出する。流入流路12は貯液器36に繋がれている。流入流路12に流出した冷媒は、貯液器36の主貯留部81内部に流入する。
貯液器36は、主貯留部81と、副貯留部82と、流入流路12と、液相流出流路14と、気相流出流路13と、を有している。主貯留部81は、流入流路12から流入する気液二相冷媒を液相冷媒と気相冷媒とに分離し、液相冷媒を溜める部分である。
主貯留部81には、流入流路12と、液相流出流路14と、気相流出流路13と、が繋がれている。流入流路12は、第1熱交換器34と貯液器36とを繋ぐ流路である。液相流出流路14は、貯液器36と第2熱交換器35とを繋ぐ流路である。液相流出流路14から流出した液相冷媒は、第2熱交換器35に流入する。気相流出流路13は、貯液器36から気相冷媒を流出させる流路である。
貯液器36に対して、液相流出流路14は下方側に繋がれ、流入流路12は液相流出流路14よりも上方側に繋がれている。流入流路12は、貯液器36の長手方向において、半分よりも上方に繋がれている。貯液器36の高さは、図4においては第4流出口74下端90までの高さとなる。貯液器36の高さは、実質的に液冷媒を貯液できる限界の高さとして定義される。
第2熱交換器35は、ヘッダタンク351と、下流側コア352と、ヘッダタンク353と、を有している。ヘッダタンク351には、液相流出流路14が繋がれている。ヘッダタンク351は、下流側コア352の上流側端に設けられている。下流側コア352の下流側端には、ヘッダタンク353が設けられている。ヘッダタンク353には、流出流路15が繋がれている。
ヘッダタンク351から下流側コア352に液相冷媒が流入する。下流側コア352は、内部を流れる冷媒と外部を流れる空気との間で熱交換をする部分であって、冷媒が通るチューブと、チューブ間に設けられたフィンとを有する。従って、下流側コア352に流れこんだ液相冷媒は、過冷却されながらヘッダタンク353に向かう。
下流側コア352からヘッダタンク353に流れ込んだ液相冷媒は、流出流路15に流出する。流出流路15は、冷凍サイクル装置を構成する膨張弁に繋がっており、膨張弁より先にはエバポレータが繋がれている。
副貯留部82は、主貯留部81から流出する液相冷媒を貯留し、貯留した液相冷媒を主貯留部81に流出させる部分である。副貯留部82は、主貯留部81と共に液相冷媒を貯留することで、貯液器36の冷媒充填率を向上させるためのものである。
副貯留部82は、主貯留部81と、互いに離隔して配置されている第1連通路811及び第2連通路812によって繋がれている。第1連通路811は入口連通路である流入流路12側に配置され、第2連通路812は出口連通路である液相流出流路14側に配置されている。
第2連通路812の流路断面積よりも、第1連通路811の流路断面積が小さくなるように構成されている。流路断面積は、第1連通路811及び第2連通路812の通路内面積であって、冷媒が流れる方向に直交する断面の面積である。
図6を参照しながら、貯液器36のスペース効率について説明する。図6の(A)は、副貯留部82を設けない従来の貯液器36Fを車両に搭載した場合の一例を示すものである。貯液器36Fは、ラジエータスペースS1と、ラジエータサポートスペースS2と、グリル衝突回避ラインL1とで囲まれた領域に配置される。この制約から、貯液器36Fの貯留部81Fの内径d1はこれ以上大きくすることができない。
図6の(B)は、本実施形態の貯液器36を車両に搭載した場合の一例を示すものであって、図5のVI-VI断面を示すものである。貯液器36は、ラジエータスペースS1と、ラジエータサポートスペースS2と、グリル衝突回避ラインL1とで囲まれた領域に配置される。貯液器36は、主貯留部81に連通するように副貯留部82を有している。副貯留部82は、主貯留部81と第1熱交換器34との間に儲けられている。主貯留部81は、副貯留部82が設けられているため、ラジエータサポートスペースS2側により近接して配置される。内径d2の副貯留部82を設けることで、内径d1の主貯留部81の大きさは変えずに貯液器36の内容積を増やすことができる。副貯留部82を設けることで、ラジエータスペースS1と、ラジエータサポートスペースS2と、グリル衝突回避ラインL1とで囲まれた領域に配置するという制約を守りつつ、貯液器36の冷媒充填率を向上させることができる。
副貯留部82は、主貯留部81を挟んで第1熱交換器34とは反対側に設けることもできる。このような配置の一例について、図7を参照しながら説明する。図7に示される貯液器36Aは、主貯留部81及び副貯留部82を有している。
主貯留部81は、第1熱交換器34と流入流路12によって繋がれている。主貯留部81は、第2熱交換器35と液相流出流路14によって繋がれている。
副貯留部82は、主貯留部81を挟んで第1熱交換器34とは反対側に設けられている。副貯留部82は、主貯留部81と第1連通路811及び第2連通路812によって繋がれている。
続いて、図8を参照しながら、本実施形態の貯液器36の効果について説明する。図8は、冷媒充填量とSC(Subcool)温度との関係を示す図である。
実線で示されているのは、比較例としての貯液器P1を用いた場合の冷媒充填量の変化である。貯液器P1は、主貯留部と副貯留部とを備えるものの、副貯留部は熱交換器からの冷媒流入路のみに繋がるように設けられているものである。熱交換器から流出する気液二相冷媒は、副貯留部にも流入し液相冷媒となる。しかしながら、一旦副貯留部に入った液相冷媒が流出することができず、副貯留部に液相冷媒が停滞したままとなる。このため、SC温度が略一定のまま冷媒充填量が増加するいわゆる「棚」の段階の前に副貯留部を液相冷媒が満たしてしまい、冷媒充填量は副貯留部を設けない場合とさほど変わらなくなる。
点線で示されているのは、比較例としての貯液器P2を用いた場合の冷媒充填量の変化である。貯液器P2は、主貯留部と副貯留部とを備え、副貯留部は熱交換器からの冷媒流入路には直接繋がれておらず、主貯留部と1つの連通路によって繋がれている。副貯留部と主貯留部とを繋ぐ連通路は、主貯留部から液相冷媒が流出する液相流出路側に設けられている。貯液器P2は、貯液器P1と比較して、副貯留部の下方から流入した液相冷媒が、副貯留部から主貯留部に戻るように流出し易くなっているため、液相冷媒の停滞が解消し冷媒充填量は増加する。
しかしながら、図9に示されるように、貯液器P2は、副貯留部82と主貯留部81とが、第2連通路812のみで繋がっている。主貯留部81に溜められた液相冷媒は、液相流出流路14から流出すると共に、第2連通路812から副貯留部82に流入する。副貯留部82への液相冷媒の出入口は第2連通路812のみとなり、第2連通路812は副貯留部82の下方に繋がっているため、副貯留部82の上方に液停滞域が生じる。より具体的には、第2連通路812のみで繋がれていることにより、第2連通路812から流入する冷媒の動圧に押され、液相冷媒が主貯留部81に排出されない現象が発生し液停滞域が生じる。
そこで、本実施形態の貯液器36,36Aでは、主貯留部81と副貯留部82とを第1連通路811及び第2連通路812で繋いでいる。第1連通路811と第2連通路812とは互いに独立して設けられているものであり、互いに離隔した位置に儲けられているので、液相冷媒の流れが滞ってしまう液停滞域が発生せず、冷媒充填量を増加させることができる。
上記したように本実施形態に係る貯液器36,36Aは、冷凍サイクルに用いられる貯液器であって、主貯留部81及び副貯留部82を備える。主貯留部81は、冷凍サイクルを構成する第1熱交換器34から流出する気液二相冷媒を、入口連通路である流入流路12を介して受け入れて気液分離し、液相冷媒を一時的に貯留し、一時的に貯留した液相冷媒を、出口連通路である液相流出流路14を介して冷凍サイクルを構成する第2熱交換器35に流出させる。副貯留部82は、主貯留部81から流出する液相冷媒を貯留し、貯留した液相冷媒を主貯留部81に流出させる。主貯留部81と副貯留部82とは、互いに離隔して配置されている第1連通路811及び第2連通路812によって繋がれている。
主貯留部81と副貯留部82とを、互いに離隔して配置されている第1連通路811及び第2連通路812によって繋ぐことで、主貯留部81と副貯留部82との圧力差をキャンセルすることができる。このため、副貯留部82の略全容量を貯液空間として活用することが可能となり、液相冷媒の流れが滞ってしまう液停滞域が発生せず、冷媒充填量を増加させることができる。
本実施形態では、第1連通路811は入口連通路である流入流路12側に配置され、第2連通路812は出口連通路である液相流出流路14側に配置されている。第1連通路811が流入流路12側に配置される一方で、第2連通路812は液相流出流路14側に配置されているので、第1連通路811と第2連通路812との間の距離を十分に確保することができ、副貯留部82内の空間をより有効に貯液空間として確保することができる。
本実施形態では、第2連通路812の流路断面積よりも第1連通路811の流路断面積が小さくなるように構成されている。液相冷媒の流入側である第2連通路812の流路断面積を十分に確保することで、副貯留部82への液相冷媒の流入を促進することができる。また、副貯留部82に溜められた液相冷媒が、不必要に第1連通路811から主貯留部81に還流することを抑制することができる。
本実施形態では、主貯留部81から第2連通路812が延出する方向が、入口連通路である流入流路12から流入して気液分離された液相冷媒が出口連通路である液相流出流路14に向かって流れる主貯留部81内の主流と交わる方向となるように、主貯留部81に対して第2連通路812が繋がれている。図5に示されるように、主貯留部81から第2連通路812が延出する方向は、図中のx軸負方向である。主貯留部81内の主流の方向は、図中のz軸負方向である。このように、主貯留部81から第2連通路812が延出する方向が、主貯留部81内の主流の方向と交わるように構成することで、必要以上の液相冷媒が副貯留部82に流入することを抑制することができる。
本実施形態の貯液器36において、副貯留部82は、主貯留部81と第1熱交換器34及び第2熱交換器35との間に配置されている。図6を参照しながら説明したように、副貯留部82を主貯留部81と第1熱交換器34及び第2熱交換器35との間に配置することで、限られたスペース内で有効に貯液容積を確保することができる。
本実施形態の貯液器36において、副貯留部82の第1連通路811側に形成される副貯留端部821は入口連通路である流入流路12に接するように設けられている。図5に示されるように副貯留端部821を流入流路12に接するように配置することで、無駄なスペースを解消し、限られたスペース内で有効に貯液容積を確保することができる。
本実施形態の貯液器36において、副貯留端部821と入口連通路である流入流路12は共通の仕切り部材によって仕切られている。図5に示されるように、副貯留端部821は、流入流路12の壁面も構成している。従って、副貯留端部821は、流入流路12と副貯留部82とを仕切る共通の仕切り部材として機能している。このように構成することで、材料の使用量を低減しつつ無駄なスペースを解消し、限られたスペース内で有効に貯液容積を確保することができる。
尚、本開示と各具体例との対応関係は次の通りである。本開示における入口連通路の一例が、流入流路12である。本開示における出口連通路の一例が、液相流出流路14である。
以上、具体例を参照しつつ本実施形態について説明した。しかし、本開示はこれらの具体例に限定されるものではない。これら具体例に、当業者が適宜設計変更を加えたものも、本開示の特徴を備えている限り、本開示の範囲に包含される。前述した各具体例が備える各要素およびその配置、条件、形状などは、例示したものに限定されるわけではなく適宜変更することができる。前述した各具体例が備える各要素は、技術的な矛盾が生じない限り、適宜組み合わせを変えることができる。